説明

光源装置及び車両前照灯

【課題】 本発明は、簡単な構成により、所望の配光パターンが容易に形成されると共に、薄型で軽量に構成され得るようにしたLED光源装置と、このLED光源装置を用いた照明装置及び車両前照灯を提供することを目的とする。
【解決手段】 表面を光出射面11bとする扁平な板状の可視光領域で透明な材料から成る導光板11と、上記導光板の端面に対向して配置された点状の光源12と、を含んでおり、上記導光板の裏面が、光出射面における輝度分布を制御する輝度制御要素14を有しており、上記輝度制御要素が、上記導光板の端面から入射する光源からの光を制御して、光出射面上にて、照射すべき配光パターンを縮小反転した輝度分布を構成し、上記導光板が、光源からの光のうち、p偏光による平行偏光のみを光出射面から出射させる偏光フィルム17を備えるように、光源装置10を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数個のLED素子等の光源を利用した光源装置と、この光源装置を使用した前照灯,補助前照灯等の車両前照灯に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、LED素子を利用した光源装置として、例えば特許文献1〜3による車両ヘッドランプ,灯具光源用LEDランプ及びヘッドランプが知られている。
【0003】
特許文献1による車両ヘッドランプは、図11に示すように、例えば複数の発光ダイオード1を並べて配置した光源と、この光源の前面に配置されたレンズ等の光学部材(図示せず)と、から構成されている。
この構成によれば、各発光ダイオード1から出射した光が、その前面に配置されたレンズ等の光学部材により配光特性を付与されて、外部に出射する。これにより、所定の配光特性が得られるようになっている。
【0004】
また、特許文献2によるLEDランプを備えた灯具は、図12(A)に示すように、フィラメント式の発光源と類似の発光パターンを有するように基板2a上に並んで配置された複数個のLED2bから成るLEDランプ2(図12(B)参照)と、その焦点位置がLEDランプ2の発光点付近に位置するような凹状の反射面3と、から構成されている。
この構成によれば、LEDランプ2から出射した光が反射面3により反射して光照射方向前方に向かって照射される。これにより、LEDランプ2の発光部が前方に向かって投影され、所定の配光特性が得られるようになっている。
【0005】
これに対して、特許文献3によるヘッドランプは、図13に示すように、一般的なプロジェクタタイプのヘッドランプとして構成されている。即ち、ヘッドランプ4は、光源としてのバルブ5と、反射面6と、投影レンズ7と、遮光部材8と、から構成されている。
上記反射面6は、バルブ2を第一焦点(後側の焦点)とし且つ長軸が光照射方向前方に向かってほぼ水平に延びる楕円系反射面から構成されており、その内面が反射面として形成されている。
上記投影レンズ7は、凸レンズ、好ましくは非球面レンズから構成されており、その光源側(後側)の焦点が、上記反射面6の第二の焦点位置付近に配置されている。
上記遮光部材8は、光照射方向前方に向かって照射される光に対して所定のすれ違いビーム用の配光パターンを付与するためのものであり、上記反射面6の第二の焦点位置付近に配置されている。また、上記遮光部材8は、上記配光パターンにカットオフラインを形成するために、その上縁8aが所定形状に形成されている。
【0006】
このような構成のヘッドランプ4によれば、バルブ2から出射した光は、直接に、または上記反射面6で反射して、この反射面6の第二焦点付近に結像し、この虚像が投影レンズ7により反転して光照射方向前方に向かって投影される。
その際、上記虚像の一部が遮光部材8により遮断され、遮光部材8の上縁8aによりカットオフラインC(図14参照)を形成される。これにより、上記虚像は、すれ違いビームとして前方に向かって投影されることになる。
尚、図14に示した虚像を投影レンズ7により投影した配光パターンは、図14の虚像を上下左右反転させたものであり、右側通行用のヘッドランプの配光パターンとなる。即ち、配光パターンは、対向車への防眩のためのカットオフラインCが中央から左側を照射しない輝度分布となっている。
このように、車両前照灯として通常用いられるすれ違いビーム用の配光パターンや走行ビーム用の配光パターン等が照射すべき配光パターンであり、特にカットオフラインCを持つ配光パターンをカットオフパターンと定義する。
【0007】
さらに、特許文献4による車両用灯火装置は、当該公報の図5に示されているように、光源からの光を光照射方向前方に向かって照射する光学系に加えて、この光学系中に配置された二つの偏光ビームスプリッタ,二つの1/2波長板等を備えており、光源から出射した光(無偏光)を、偏光ビームスプリッタによりp偏光とs偏光とに分離し、s偏光を第一の垂直偏光とし、またp偏光を1/2波長板により第二の垂直偏光として、これら二つの垂直偏光を光照射方向前方に向かって照射するようになっている。
これにより、光源からの光をp偏光とs偏光に分離して、それぞれ垂直偏光に変換して、光照射方向前方に向かって照射し、濃霧時や雨天時における水の粒子における反射を低減して、車両の前方視界を良好にすることができる。
【特許文献1】特表2003−503815号
【特許文献2】特開2006−048934号
【特許文献3】特開2001−076510号
【特許文献4】特開2004−233936号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、特許文献1による車両ヘッドランプにおいては、灯具として必要な光量を得るために、複数個の発光ダイオード1が並んで配置されている。
しかしながら、このような並置された発光ダイオードから成る光源のみでは、所望の配光パターンが得られない。
従って、所望の配光パターンを得るためには、このような光源の前面に配光制御を行なうための光学部材を配置する必要があった。
また、この車両ヘッドランプは、車両周囲の可視性を改善するためのものであり、光照射方向前方に向かって光を照射して、自動車の運転者の視界を確保するためのものではない。
【0009】
また、特許文献2によるLEDランプを備えた灯具においては、灯具として必要な光量を得るために、パッケージ内に複数個のLEDチップが組み込まれている。
このような複数個のLEDチップから成るLEDランプは、その発光部の形状を従来のフィラメント形状と同様に形成し、従来のプロジェクタタイプ等のヘッドランプの反射面を使用して、所望の配光パターンを得るようにしている。
【0010】
このため、所望の配光パターンを得るためには、このような光源の後方に配光制御を行なうためのリフレクタを配置し、必要に応じて前方に遮光部材を配置する必要があった。
しかしながら、この場合、一つのLEDランプにより所定の配光パターンを得ることは困難である。このため、ヘッドランプが複数個のLEDランプを使用した所謂複眼式のヘッドランプ構成となり、ヘッドランプの灯具全体が大型化してしまう。また、ヘッドランプが反射面を備えていることから、ヘッドランプの灯具全体の重量が増大してしまう。
【0011】
これは、近年採用されるようになってきている所謂AFS(Adaptive Front−Lighting System)機能の実現のためには、駆動機構に大きな負担がかかることになるので、好ましくない。
また、LEDランプ内に複数個のLEDチップが配置されていることから、場合によっては個々のLEDチップの発光点が視認される。従って、ヘッドランプの輝度分布が細かく変化し、見栄えが悪くなってしまう。
【0012】
また、特許文献3によるヘッドランプにおいては、同様に反射面が必要であり、場合によっては灯具内部に遮光部材が必要である。このため、ヘッドランプの灯具全体が大きく且つ重くなり、奥行きも例えば130mm程度と大きくなってしまう。
さらに、このヘッドランプにおける反射面は、光源としてのバルブの発光部の形状に合わせて設計する必要がある。従って、このような反射面の設計には、比較的長い時間がかかってしまう。
【0013】
ところで、上述した特許文献1から3による車両前照灯を含む一般的な車両前照灯においては、配光法規等により、雨天時の対向車へのグレア光が規制されるようになってきている。
具体的には、欧州規格であるECE(Reg No.98)やFMVSSでは、雨天時の対向車へのグレア光を規制するための測定ポイントが定められている。即ち、ECEでは4.29Dのライン上、またFMVSSでは4D−4Rである。
これらは、路面上の距離で表わすと、ECEでは9.3m先、FMVSSでは10m先となる。
【0014】
これに対して、通常、雨天時には、路面が水膜により覆われた状態であり、自動車Vの車両前照灯から照射された光Lは、図15(A)に示すように、路面上の水膜Wの表面で前方に反射する。
ここで、水膜表面の光Lの入射位置では、図15(B)に示すように、水膜Wの表面における入射位置にて、入射角θ1と反射角θ2がほぼ同じである。従って、上述した反射光L1は、やや上向きとなって前方に照射されることになる。 他方、図15(B)に示すように、水膜Wの表面の入射位置にて、水膜Wの内部に進入する光L2は、水の屈折率に基づいて、所定の屈折角θ3で入射し、路面に達する。そして、この光L2は、路面の凹凸形状によって乱反射し、その一部が自動車Vの方向に戻って、運転者に届くことになる。
これにより、運転者は、路面状況を把握することができる。
【0015】
しかしながら、実際には、照射光Lは、図15(A)に示すように、その殆どが水膜Wの表面で反射して、反射光L1が前方に向かってやや上向きに照射されることになり、対向車や歩行者等に対してグレア光となってしまう。
このため、前述したグレア光に対する規制をクリアすることが困難になってしまう。
【0016】
また、特許文献4による車両用灯火装置においては、光照射方向前方に向かって垂直偏光を照射して、濃霧時や雨天時の霧滴,雨滴等の水の粒子における散乱を低減して、前方視界を良好にすることができる。
しかしながら、垂直偏光を得るために、低屈折率膜及び光屈折率膜の交互積層膜から成る複数のビームスプリッタや複数の1/2波長板が必要である。従って、部品点数が多く、構造が複雑になり、灯具全体が大型化してしまう。また、組立の際に、光学部品の光軸合わせ等の煩雑な作業が多くなり、部品コスト及び組立コストが高くなってしまう。
【0017】
本発明は、以上の点から、簡単な構成により、所望の配光パターンが容易に形成され且つ薄型で軽量に構成され得、また雨天時の路面上の水膜表面での反射によるグレア光を低減し、この水膜下の路面状況を容易に視認し得るようにしたLED光源装置と、このLED光源装置を用いた照明装置及び車両前照灯を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記目的は、本発明の第一の構成によれば、表面を光出射面とする扁平な板状の可視光領域で透明な材料から成る導光板と、上記導光板の端面に対向して配置された点状または線状の光源と、を含んでおり、上記導光板の裏面が、光出射面における輝度分布を制御する輝度制御要素を有しており、上記輝度制御要素が、上記導光板の端面から入射する光源からの光を制御して、光出射面上にて、照射すべき配光パターンを縮小反転した輝度分布を構成していて、上記導光板が、光源からの光のうち、出射方向である光軸と、地面からの法線を含む平面と平行な振動面をもつp偏光による平行偏光のみを光出射面から出射させるように構成されていることを特徴とする、光源装置により、達成される。
【0019】
本発明による光源装置は、好ましくは、上記導光板が、その光出射面の少なくとも一部に設けられた偏光フィルムを備えている。
【0020】
本発明による光源装置は、好ましくは、上記偏光フィルムが、上記導光板の光出射面の配光パターンの少なくとも一部の領域に設けられている。
【0021】
本発明による光源装置は、好ましくは、上記導光板が、その内部に、屈折率が異なる楕円状の微小領域を形成した偏光選択散乱性を有する延伸高分子フィルムを備えている。
【0022】
本発明による光源装置は、好ましくは、上記延伸高分子フィルムが、その少なくとも片側の面に、光を法線方向に出射させるための所定ピッチで形成された凹凸形状を備えている。
【0023】
本発明による光源装置は、好ましくは、上記フィルムが、光源からの導光板を介して出射する光路から退避可能に配置されている。
【0024】
また、上記目的は、本発明の第二の構成によれば、前述したLED光源装置と、この光源装置からの出射光を光照射方向前方に向かって照射する凸状の投影レンズと、を備えており、上記投影レンズが、その光源装置側の焦点位置が上記光源装置の導光板の光出射面上に位置するように、配置されていることを特徴とする、車両前照灯により、達成される。
【発明の効果】
【0025】
上記第一の構成によれば、上記各光源から出射した光は、それぞれ上記導光板の端面から入射し、上記導光板内面にて反射を繰り返した後、上記導光板の表面から外部に出射する。
その際、上記導光板の裏面に入射した光は、上記輝度制御要素で反射することにより、輝度が制御される。これにより、上記導光板の表面から出射する光は、所定の輝度分布に調整されることになる。
また、上記導光板から出射する光は、上記導光板の構成に基づいて、p偏光のみが出射することになる。
【0026】
従って、上記導光板の表面には、所定の輝度分布が形成され、この輝度分布がp偏光の配光パターンとして外部に照射されることになる。
例えば、上記導光板の表面に形成された輝度分布が、例えば投影レンズを使用して、その光軸方向に沿って照射される。これにより、所定の配光パターンのp偏光による照射光が得られることになる。
【0027】
この場合、照射すべき配光パターンを縮小反転した輝度分布が光源装置の導光板の表面に形成される。このため、この配光パターンを照射する場合、従来のような反射面が不要である。これにより、反射面の設計が不要となり、灯具の設計が容易に且つ短時間で実施され得ることになる。
【0028】
また、配光パターンが、上記導光板の裏面に備えられた輝度制御要素により、任意に制御可能である。従って、任意の輝度分布を備えた車両前照灯等の灯具が容易に構成され得ることになる。例えば、連続的に輝度が変化するような、つなぎ目のない輝度分布を備えた車両前照灯等の灯具が構成され得る。
これにより、所望の配光パターンを得るために、複数個の灯具を並べて配置する必要がない。従って、車両前照灯等の灯具が全体として小型に且つ低コストで構成され得ることになる。
【0029】
さらに、p偏光による平行偏光は、水膜表面における反射率がs偏光による垂直偏光と比べ低い。従って、雨天時等に路面が水膜により覆われた状態の場合に、p偏光による平行偏光による照射光が路面上の水膜表面に入射すると、従来の無偏光の場合と比較して、反射光がより低減し、また水膜内部への入射光が増大する。
従って、反射光即ち対向車や歩行者等に対するグレア光が低減し、グレア光に関する規制をクリアすることが容易になる。
また、水膜内への入射光が路面表面に照射され、路面表面で反射・散乱して、当該自動車の運転者に視認され得る。これにより、雨天時等における路面の視認性が向上することになる。
【0030】
さらに、屋外照明用の光源として使用し、路面等における水膜下方に光を効率良く照射することができる。
【0031】
上記導光板が、その光出射面の少なくとも一部に設けられた偏光フィルムを備えている場合には、上記導光板の光出射面から出射する光の少なくとも一部が、上記偏光フィルムを透過する。これにより、p偏光による平行偏光となって外部に出射することになる。
【0032】
上記偏光フィルムが、上記導光板の光出射面の配光パターンの少なくとも一部の領域に設けられている場合には、例えば車両前照灯から前方4m以上にて、水膜表面に対する入射角が70度より大きくなる領域に対して照射される光を選択的にp偏光による平行偏光として、照射することができる。これにより、水膜表面における反射によるグレア光が効果的に低減され得ることになる。
【0033】
上記導光板が、その内部に、屈折率が異なる楕円状の微小領域を形成した偏光選択散乱性を有する延伸高分子フィルムを備えている場合には、上記導光板中を進む光の少なくとも一部が、上記延伸高分子フィルムを透過する。これにより、p偏光による平行偏光となって外部に出射することになる。
【0034】
上記延伸高分子フィルムが、その少なくとも片側の面に、光を法線方向に出射させるための所定ピッチで形成された凹凸形状を備えている場合には、この凹凸形状により光を反射して、この光を容易に法線方向に導くことができる。
【0035】
上記フィルムが、光源からの導光板を介して出射する光路から退避可能に配置されている場合には、晴天時など路面に水膜が存在せず水膜表面による反射光がグレア光とならないようなときには、上記フィルムを光路から退避させる。これにより、無偏光の光を、フィルムによる損失なく照射することができる。
【0036】
上記第二の構成によれば、光源装置の各光源からの光は、それぞれ上記導光板の端面から入射し、上記導光板内面にて反射を繰り返した後、上記導光板の表面から外部に出射する。
その際、上記導光板の裏面に入射した光は、上記輝度制御要素で反射することにより、輝度が制御される。これにより、上記導光板の表面から出射する光は、所定の輝度分布に調整されることになる。
【0037】
従って、上記導光板の表面には、所定の輝度分布が形成され、この輝度分布が投影レンズにより光照射方向前方に向かって照射され、上記輝度分布を拡大・反転した配光パターンが形成されることになる。
この場合、上記光源装置の導光板の光出射面自体が、配光パターンに対応した輝度分布を有している。これにより、従来の車両前照灯における反射面が不要となり、車両前照灯の灯具全体が小型且つ軽量に構成され、またコストが低減され得ることになる。このため、例えばAFS機能を備えた車両前照灯に好適な車両前照灯が構成され得ることになる。
ここで、上記導光板の光出射面がカットオフパターンの形状を有している場合には、従来のカットオフパターンを形成する遮光部材が不要である。これにより、車両前照灯全体が軽量に、そして低コストで構成され得ることになる。
【0038】
さらに、上記導光板の光出射面から出射する光は、p偏光による平行偏光となる。従って、雨天時等に路面が水膜により覆われた状態の場合に、p偏光による平行偏光による照射光が路面上の水膜表面に入射すると、従来の無偏光の場合と比較して、反射光がより低減し、また水膜内部への入射光が増大する。
これにより、反射光即ち対向車や歩行者等に対するグレア光が低減するので、グレア光に関する規制をクリアすることが容易になる。
また、水膜内への入射光が路面表面に照射され、路面表面で反射・散乱して、当該自動車の運転者に視認され得て、雨天時等における路面の視認性が向上することになる。
【0039】
このようにして、本発明によれば、簡単な構成により、所望の配光パターンが容易に形成され、また水膜表面で反射したグレア光が低減され、水膜下方の視認性が向上し、薄型で軽量に構成され得るようにしたLED光源装置と、このLED光源装置を用いた照明装置及び車両前照灯を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
以下、この発明の好適な実施形態を図1〜図10を参照しながら、詳細に説明する。
尚、以下に述べる実施形態は、本発明の参考例及び好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。
【0041】
[実施例1]
図1は、本発明による車両前照灯用の光源装置の第一の実施形態の構成を示している。
図1において、光源装置10は、導光板11と、光源としての複数個のLED12と、から構成されている。
【0042】
上記導光板11は、図示の場合、扁平な平板状の透光性材料、即ち可視光領域で透明な材料から構成されている。
ここで、上記導光板11は、例えばポリカーボネイト,アクリル樹脂等の一般的に光学用途に使用される透明樹脂またはガラスが使用される。
【0043】
上記導光板11は、その一側、図1にて手前側の端面が入射面11aとして、また上面が光出射面11bとして、構成されており、その裏面(底面)及び左右両側面が、遮光性材料から成る筐体13により覆われている。
尚、上記導光板11は、図1の図示の場合、上述した入射面11aから反対側の端面に向かって徐々に薄くなるように、断面楔形状に形成されているが、その厚さが一定であってもよい。また、入光面は図1の通りカットオフパターン形成端でもよいし、その他の端面であってもよい。光源位置にあわせて適宜に導光体の断面形状、輝度制御要素の配置を行なうことで、所望の配光を得ることができる。
【0044】
ここで、上記導光板11は、その入射面11aが、入射効率を向上させるために、例えばプリズムや円弧列等から成る微細形状を備え、あるいは粗面化されていてもよい。
これに対して、上記導光板11は、その光出射面11bが、輝度向上または配光を整えるために、プリズムやレンチキュラー等の形状を備えていてもよい。
【0045】
また、上記導光板11は、図2に示すように、その光出射面11bが、照射すべき配光パターンに対応する形状、即ちこの配光パターンを縮小反転した形状になるように、例えば車両前照灯のすれ違いビームのカットオフパターンの形状になるように、形成されている。
このために、上記導光板11は、その手前側の端面11aが、図1または図2に示すように、中央付近にて段部を形成するようになっている。
【0046】
さらに、上記導光板11は、図3に示すように、その裏面(底面)に、所定の配光パターンを形成するような輝度制御要素14を有している。
この輝度制御要素14は、ドット状または溝状の微細構造または高反射率インクから構成されている。
そして、上記導光板11内に入射した光のうち、これらの輝度制御要素14に内側から入射した光が、全反射条件が成立しないとき、全反射せずに、上記導光板11の反対側の光出射面11bから外部に出射するようになっている。
その際、上記導光板11の光出射面11bから出射する光が、上記輝度制御要素14の形状,大きさ及び分布密度に基づいて、照射すべき配光パターンを縮小反転した輝度分布を備えるようになっている。
【0047】
このような導光板11は、上述した透明樹脂材料から、所望の形状を備えた金型を使用して、射出成形,プレス成形または押出成形により成形され得、あるいはガラスから、所望の金型を使用してプレス成形により製造され得る。
また、上記導光板11は、射出成形または押出成形により成形された透明樹脂から成る板状材料に対して、輝度制御要素を微細加工することによって、製造され得る。
【0048】
このような微細構造は、具体的には、例えばドーム状、または底面が矩形,菱形または平行四辺形である四角錐台状、または底面が楕円である円錐台状、または底面が任意形状である錐台状、あるいはこれらの組合せによる微小凹凸ドットから構成されている。
隣接する微小凹凸ドット間の間隔、即ち各微小凹凸ドットの底面積と周囲の空き領域の面積比が、微小凹凸ドット即ち輝度制御要素の濃度となり、この濃度が高い程、対応する光出射面11b上における輝度が高くなり、濃度が低い程、対応する光出射面11b上における輝度が低くなる。
加えて、同じ輝度制御要素の濃度であっても、各微小凹凸ドットの高さ(深さ)が高い(深い)程、対応する光出射面11b上における輝度が高くなり、各微小凹凸ドットの高さ(深さ)が低い(浅い)程、対応する光出射面11b上における輝度が低くなる。
【0049】
また、このような微細構造は、例えば断面三角形または楕円弧または自由曲面を入射面11aに平行に押出成形されたプリズムまたはローレット状の微細形状であってもよい。
この場合、隣接するプリズムまたはローレットの底幅とその間の平面幅の比が輝度制御要素の濃度となり、この濃度が高い程、対応する光出射面11b上における輝度が高くなり、濃度が低い程、対応する光出射面11b上における輝度が低くなる。
加えて、同じ輝度制御要素の濃度であっても、プリズムまたはローレットの高さ(深さ)が高い(深い)程、対応する光出射面11b上における輝度が高くなり、プリズムまたはローレットの高さ(深さ)が低い(浅い)程、対応する光出射面11b上における輝度が低くなる。
これらのプリズムまたはローレットは、上記導光板11に対して凸状でも凹状でもよく、その底面幅が望ましくは50μm以下に選定されている。
【0050】
あるいは、上記導光板11は、射出成形または押出成形により成形された透明樹脂から成る板状材料に対して、高反射率インクをスクリーン印刷等により円形,楕円形または矩形等のドット模様または縞模様等に印刷することによって、製造され得る。
ここで、輝度制御要素14は、このような印刷パターンの密度、即ち印刷部分と非印刷部分の面積比が高い程、対応する光出射面11b上における輝度が高くなり、密度が低い程、対応する光出射面11b上における輝度が低くなる。
この場合、上記ドット模様の径または縞模様の幅は、0.5mm以下であることが望ましい。
【0051】
このようにして、輝度制御要素14の濃度または密度が適宜に選定されることによって、上記導光板11の光出射面11bにおいて所望の輝度分布が得られることになる。
【0052】
ここで、上記導光板11は、表面から出射する光の輝度を向上させたり、配光特性を整えるために、その表面に光学シート15(図示の場合、二枚の光学シート15a,15b)を備えていてもよい。
ここで、前述した導光板11の裏面に備えられた輝度制御要素14による反射光は、例えば導光板11の表面の法線方向に対して例えば50から70度程度の角度で出射することになる。このため、この導光板11の表面における出射光の出射角度を法線方向に補正するために、例えば50μm程度の大きさの下向き三角プリズムを備えた光学シートが使用され得る。
【0053】
このような光学シート15a,15bは、一般的な面光源装置で使用されるプリズムシートや拡散フィルムが使用され得る。
プリズムシートは、一般的に光学用途で使用される熱可塑性の透明樹脂から成るフィルムに対して、金型によるプレス成形または押出成形によりプリズム形状を付与することにより、あるいは一般的に光学用途で使用される紫外線硬化性の透明樹脂から成るフィルムに対して、2P法等の成形方法で、プリズム形状を付与することにより、製造され得る。
【0054】
また、拡散フィルムは、一般的に光学用途で使用される熱可塑性の透明樹脂から成る押出成形によるフィルムに対して、その両面または片面に屈折率の異なる樹脂またはガラスビーズを成膜することにより、あるいは一般的に光学用途で使用される熱可塑性の透明樹脂に、屈折率の異なる樹脂またはガラスビーズを混入して、押出成形等によりフィルム状に成形することにより、製造され得る。
【0055】
また、上記導光板11は、光源としての各LED12からの光利用効率を向上させるために、上記入射面11aとは反対側の端面11c,裏面11d及び左右両側面11e,11fに対向して、それぞれ反射フィルム16が配置されていてもよい。
ここで、反射フィルム16は、好ましくは高反射率部材であって、例えば押出成形等により形成された樹脂部材上に、蒸着またはスパッタ法等によりアルミニウム,銀等の金属が成膜された高反射率金属反射フィルムや、ポリカーボネイト樹脂等に酸化チタン等の可視光拡散反射剤を添加した樹脂フィルムまたは樹脂板、あるいは超臨界流体や微細発泡成形または化学発泡成剤による発泡成形等による微小空孔を分布させることにより成形された樹脂フィルムまたは樹脂板から製造され得る。
【0056】
尚、前記筐体13の内面が反射面として構成されている場合には、この筐体13の内面の少なくとも一部を、上記反射フィルム16の代わりに利用することができる。
上記筐体13の内面を反射面として構成するためには、例えば樹脂または金属から成る筐体13の内面に対して、蒸着またはスパッタ法により直接に高反射率金属薄膜を成膜してもよい。
【0057】
さらに、上記導光板11は、その表面、特に光学シート15の上に、偏光フィルム17を備えている。
この偏光フィルム17は、例えば3M社の多層型ミラー膜(DFEF),日東電工の輝度向上偏光フィルムNIPOCS等の反射型偏光フィルムが使用され、上記導光板11の表面に設けられた光学シート15上に貼着等により配置される。
これにより、導光板11の表面から出射した光は、この偏光フィルム17を透過することによって、直線偏光となる。
【0058】
ここで、上記偏光フィルム17は、本光源装置10を後述する車両前照灯に組み込んだとき、その照射光の光線軸と路面からの法線を含む面に対して、平行な振動面を持つ偏光をp偏光(平行偏光)とし、この面に垂直な振動面を持つ偏光をs偏光(垂直偏光)としたとき、偏光フィルム17を透過した直線偏光がp偏光となるように、配置されるようになっている。
【0059】
上記偏光フィルム17は、図4(A)に示すように、前述した輝度制御要素14による配光パターンの一部領域に対応して配置されている。
ここで、この一部領域とは、本光源装置10を後述する車両前照灯に組み込んだとき、その照射光の光線軸が路面となす角(路面への入射角)が70度より大きい、好ましくは82度より大きくなるような領域である。
【0060】
尚、上記偏光フィルム17は、図4(B)に示すように、前述した輝度制御要素14による配光パターン全面を覆うように、あるいは導光板11の表面全体に、配置されていてもよい。
【0061】
上記各LED12は、上記導光板11の入射面11aに対向して、線状に並んで配置されている。
ここで、各LED12は、等間隔で配置される必要はなく、上記導光板11の光出射面11b上に所定の輝度分布が得られるように、上記導光板11の入射面11aに沿って、適宜の間隔で配置されている。
尚、各LED12は、図示の場合、一列に配置されているが、これに限らず、複数列に配置されていてもよい。
【0062】
本発明による光源装置は、以上のように構成されており、使用の際には、各LED12が図示しない外部の駆動回路から駆動電流を流され、駆動され、発光する。
各LED12から出射した光は、上記導光板11の入射面11aから内部に入射し、この導光板11の表面,裏面及び両側面で全反射を繰り返しながら、反対側の端面まで進み、さらに反対側の端面で全反射し、逆向きに進むことになる。 これにより、上記光が、上記導光板11の内部にて、実質的にその全体に拡散されることになる。
【0063】
上記導光板11内に入射した光のうち、上記導光板11の裏面に入射した光は、一部が輝度制御要素14に入射する。このため、この光は、全反射せずに、上方に向かって反射し、上記導光板11の表面に達し、他の一部が平面部に入射することにより、全反射される。
これにより、上記導光板11の表面に達する光は、上記輝度制御要素14により輝度制御されて、図2に示すように、上記導光板11の表面が、所定の輝度分布を有することになる。
さらに、上記光は、上記偏光フィルム17を透過し、直線偏光(p偏光)となって、上方に出射することになる。
【0064】
この場合、上記導光板11の光出射面(表面)の入射面11a側の端縁が、図2に示すように、カットオフパターンに対応した形状を備えている。これにより、車両前照灯におけるすれ違いビームに適した配光パターンに対応する輝度分布を画成することになる。
従って、この導光板11の光出射面11bを投影レンズにより光照射方向前方に向かって投影すると、自動車のすれ違いビームに適した配光パターンが形成され得ることになる。
【0065】
また、照射光が偏光フィルム17を透過してp偏光となる。従って、路面上の水膜表面における反射率が低減する。このため、水膜表面での反射光L1(図15(B)参照)、即ち対向車や歩行者等に対するグレア光が低減する。これにより、グレア光に関する規制をクリアすることが容易になる。
さらに、水膜内への入射光L2(図15(B)参照)が増大し、路面表面が良好に照明されることになり、運転者が水膜下の路面を確実に視認することができる。
【0066】
[構成例]
図5は、上述した光源装置10を使用した車両前照灯の一構成例を示している。
図5(A)において、車両前照灯20は、光学シート15及び偏光フィルム17を含む光源装置10と、光源装置10からの光を集束させる投影レンズ21と、から構成されている。
【0067】
ここで、上記光源装置10は、車両前照灯20の前方に向かって開放した箱状の筐体22の後端面中央付近にて、上記光学シート15及び偏光フィルム17を介して、光照射方向前方(矢印A方向)に向かって光Lを出射するように配置されている。
【0068】
上記投影レンズ21は、凸レンズから構成されており、上記光源装置10の導光板11の入射面11a側のカットオフパターンを画成する端縁の中心付近が、その光源装置10側の焦点位置Fと一致するように、配置されている。
【0069】
このような構成の車両前照灯20によれば、光源装置10の各LED12が給電されて発光する。これにより、導光板11の光出射面11bが、図5(B)に示すように、所定の輝度分布で発光することになる。
この導光板11の光出射面11b上に画成された輝度分布が、投影レンズ21により光照射方向前方に向かって投影される。
これにより、光照射方向前方にて、この輝度分布が拡大・反転して投影され、所定のすれ違いビーム用の配光パターンが形成されることになる。
【0070】
この場合、光源装置10自体が、その導光板11の光出射面11b上に所望の輝度分布を画成することから、従来のプロジェクタタイプの車両前照灯のような配光パターンを生成する反射面及びカットオフラインを形成する遮光部材が不要になる。
従って、車両前照灯20の全体が前後方向に関して奥行きが大幅に短縮され、小型且つ軽量に構成され得ると共に、遮光部材も不要である。このため、部品点数が少なくて済み、部品コスト及び組立コストが大幅に低減され得ることになる。
【0071】
また、上記導光板11の光出射面11bの入射面11a側がカットオフパターンの形状を有している場合、これにより、上記光出射面11bの入射面11aが容易に高輝度を得ることができる。従って、この入射面11a側により形成される配光パターンのカットオフラインの明暗境界線が高輝度で明瞭に投影され得ることになる。
上記導光板11の光出射面11bの入射面11a側がカットオフパターン形成端以外に配置された場合においても、導光板11の断面形状を適宜に設計し、また輝度制御要素の濃度分布を適宜に調整することで、配光パターンのカットオフラインの明暗境界線を高輝度で明確に投影することも可能である。
【0072】
さらに、上記LED12が、配光パターンにおける高輝度が必要な領域にて、より短い間隔で配置されている。これにより、容易に高輝度が得られることになる。
【0073】
また、光源装置10から出射する光が、偏光フィルム17を透過することにより、p偏光となる。このため、路面上の水膜表面における反射率が低減するので、水膜表面での反射光L1(図15(B)参照)、即ち対向車や歩行者等に対するグレア光が低減する。これにより、グレア光に関する規制をクリアすることができる。
さらに、水膜内への入射光L2(図15(B)参照)が増大し、路面表面が良好に照明されることになり、運転者が水膜下の路面を確実に視認することが容易になる。
【0074】
より詳細には、p偏光(平行偏光)とs偏光(垂直偏光)の水膜表面に対する入射角と反射率との関係は、図6に示すように、p偏光の反射率がs偏光の反射率よりも低くなっている。
また、p偏光の反射率は、入射角が70度以上で急激に大きくなっている。
【0075】
従って、図6のグラフに基づいて、入射角に対するp偏光及びs偏光の反射率を求めて、水膜下に入射する入射光量(p偏光の入射光量Ip及びs偏光の入射光量Is)を求めて、その光量差(Ip−Is)を計算すると、図7のグラフが在られる。
これにより、入射光量差(Ip−Is)は、入射角80度付近で最大となることが分かる。
【0076】
ところで、車両前照灯における路面に対する入射角度は、図8に示すように、路面から車両前照灯中心までの前照灯高さと、照射位置までの距離により決まる。従って、前照灯高さを0.7mとすると、上記距離と入射角度との関係は、図9に示すようになる。図9によれば、距離4m以上では、路面への入射角度が80度以上になることが分かる。
ところで、図7によれば、水膜下に進入する光量差(Ip−Is)は、入射角が60度から88度の範囲で大きい。
従って、走行中の運転者が路面状況を判断するための情報を得る距離等を含めて検討した結果、距離が2mから40mまでの範囲(入射角が70度から89度)、好ましくは距離が5mから20mまでの範囲(入射角が82度から88度)の範囲に対して、p偏光を照射することにより、運転者が路面状況をより把握しやすいことが分かる。
【0077】
このような距離範囲でのp偏光の照射を行なうためには、前述した偏光フィルム17は、上記導光板11の表面において、例えば図1及び図4(A)に示すように、少なくともこれらの距離範囲に対応する配光パターンに相当する領域に、配置すればよい。
これにより、水膜があったとしても、照射光の水膜表面による反射光がより効果的に低減され、グレア光も低減される。また、照射光の水膜内への入射光がより効果的に増大し、運転者が水膜下の路面表面をより確実に視認することができる。
このようにして、前述したECE,FMVSS等の配光法規におけるグレア光規制のための測定ポイントにおいて、水膜表面における反射光、即ちグレア光が低減され、規制をクリアすることが容易になる。
【0078】
[実施例2]
図9は、本発明による車両前照灯用の光源装置の第二の実施形態の要部の構成を示している。
図9において、光源装置30は、図1から図3に示した光源装置10とほぼ同様の構成であるので、同じ構成要素には同じ符号を付して、その説明を省略する。
上記光源装置30は、図1に示した光源装置10と比較して、偏光フィルム17の代わりに、導光板11中に取り付けられた延伸高分子フィルム31を備えている点で異なる。
【0079】
この延伸高分子フィルム31は、例えば図10に示すようにして作成されるようになっている。
まず、図10(A)に示すコアシェルを含むPETフィルム32を、図10(B)の矢印A方向に延伸して、このA方向に延びた楕円率の大きな楕円形の領域31a(void)を形成する。
これにより、延伸高分子フィルム31は、図10(C)に示すように、光源からの光が、延伸高分子フィルム31内で領域31aに入射すると、p偏光のみが反射して、例えば上面から出射するようになっている。
このようにして偏光選択散乱性を備えた延伸高分子フィルム31は、例えば360μmの厚さのPET膜に5%のコアシェルを含んだフィルム32を使用することにより、作成され得る。
【0080】
ここで、上記延伸高分子フィルム31においては、図10(C)に示すように、光出射方向が、法線方向にはならず、光源とは反対側に僅かに傾斜している。 これに対して、光出射方向を法線方向に合わせるためには、図10(D)に示すように、延伸高分子フィルム31の光出射面と反対側の面に、溝部31bを備えることも可能である。
この溝部31bは、例えば深さ50μm程度で、頂角50度程度の二等辺三角形の断面形状を有しており、上記A方向に関して、100〜200μm程度のピッチで並んで配置されている。
尚、このような溝部31bの代わりに、光源側では垂直に、反対側で斜めに傾斜して形成された断面が非対称形状のライン状の突起を備えていてもよい。
この突起は、例えば高さ10μm程度で、直角三角形の断面形状を有しており、同様に上記A方向に関して、100〜200μm程度のピッチで並んで配置されている。
これにより、これらの溝部31b(あるいは突起)に入射した光が、図10(D)に示すように、溝部31b(あるいは突起)の表面で全反射し、法線方向に導かれて、上方に出射することになる。
【0081】
上記延伸高分子フィルム31は、図9に示すように、導光板11の表面に配置され、あるいは導光板11内部の適宜位置あるいは入射面11aに配置され得る。
これにより、LED12から導光板11内に入射し、導光板11の光出射面11bから出射する光が、p偏光となる。
【0082】
このような構成の光源装置30によれば、図1から図3に示した光源装置10と同様に作用する。即ち、上記導光板11の表面から出射する光は、上記輝度制御要素14により輝度制御されて、上記導光板11の表面が、所定の輝度分布を有することになる。
また、上記光は、上記延伸高分子フィルム31を透過し、直線偏光(p偏光)となって、上方に出射することになる。
【0083】
上述した実施形態においては、車両前照灯に関して、すれ違いビーム用の配光特性として、左側通行の場合に限定して、自動車の前方に向かって右側に関して、対向車に幻惑光を与えないように、カットオフパターンが水平線より上への光を照射しないようになっているが、これに限らず、右側通行の場合には、車両前照灯において、カットオフパターンの配置が左右逆転され、同様の効果が得られることになる。
【0084】
また、上述した実施形態においては、偏光フィルムとして、反射型偏光フィルムが使用されているが、これに限らず、同等の機能を有する光学フィルムが使用されてもよい。
【0085】
さらに、上述した実施形態においては、偏光フィルムは、導光板11の表面に貼着等により固定されているが、これに限らず、導光板の表面に対向して、退避可能に配置されていてもよい。
これにより、例えば雨滴センサーの検出信号に基づいて、偏光フィルムが導光板の表面に対向する位置に移動し、前述した水膜表面での反射光の低減及び水膜内への入射光量の増大が実現でき、また退避時には、導光板から出射した光が偏光フィルムを介さずに直接に照射される。これにより、配光パターンにおける輝度がより高められ得ることになる。
【0086】
また、上述した実施形態においては、光源として複数個の点光源であるLED12を導光体11の一端辺に配置し使用されているが、これに限らず、他の点光源、例えば半導体レーザ素子等も使用され得る。また、上記導光板11内にて輝度制御要素14により、その光出射面11bにて所望の輝度分布を画成することができれば、線状光源が使用されても、複数の端面を入射面として使用してもよいことは明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明による光源装置は、車両前照灯の光源として使用することができるだけでなく、水膜下の物質等を効率よく照明することができる。このため、例えば屋外照明用の光源としても使用することができる。車両用前照灯以外の用途では、カットオフラインは不要であるため、導光板11の形状は用途に応じた任意の形状とすることができる。
また、本発明による光源装置は、水膜に限らず、空気とは異なる屈折率を有する膜の下方に存在する物質等を効率よく照明することも可能である。
従って、本発明による光源装置は、例えば二輪自動車,四輪自動車の車両前照灯の光源として、また画像認識,画像処理と組み合わせた照明用光源として、あるいは外部から水中を照明する照明光源として、あるいは屋外照明として、使用することが可能である。
特に、水中を照明する照明光源の場合には、水中への入射光量が多くなり、照明効率が向上することになる。
また、屋外照明の場合には、雨天時等に濡れた表面での光の反射が低減され、より視認性が高く、広告等の表示がより見易くなる。
【0088】
このようにして、本発明によれば、簡単な構成により、所望の配光パターンが容易に形成され、薄型で軽量に構成され得るようにしたLED光源装置と、このLED光源装置を用いた照明装置及び車両前照灯が提供され得ることになる。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】本発明による車両前照灯用の光源装置の第一の実施形態の構成を示す概略斜視図である。
【図2】図1の光源装置における導光板の全体形状を示す上側から見た概略斜視図である。
【図3】図1の光源装置における輝度制御要素を示す導光板の底面図である。
【図4】図1の光源装置における偏光フィルタの(A)第一の配置例及び(B)第二の配置例を示す導光板の底面図である。
【図5】図1の光源装置を使用した車両前照灯の第一の構成例を示す(A)概略断面図及び(B)導光板の光出射面の輝度分布を示す概略図である。
【図6】p偏光とs偏光の水膜表面に対する入射角と反射率との関係を示すグラフである。
【図7】車両前照灯における前照灯高さと距離,入射角を示す概略図である。
【図8】前照灯高さ0.7mの場合の距離と入射角度との関係を示すグラフである。
【図9】本発明による光源装置の第二の実施形態の要部の構成を示す概略図である。
【図10】図9の光源装置における延伸高分子フィルムの作成方法及び変形例を示す概略図である。
【図11】従来の車両ヘッドランプの一例の構成を示す光源の平面図である。
【図12】従来のLEDランプを備えた灯具の一例の構成を示す(A)全体の断面図及び(B)LEDランプの拡大断面図である。
【図13】従来のヘッドランプの一例の構成を示す概略断面図である。
【図14】図13のヘッドランプによる配光パターンを示すグラフである。
【図15】図13のヘッドランプにおける(A)水膜表面での反射光を示す概略図及び水膜表面付近における照射光に対する反射光及び入射光を示す部分拡大断面図である。
【符号の説明】
【0090】
10,30 光源装置
11 導光板
11a 入射面
11b 光出射面
11c 端面
11d 裏面
11e,11f 側面
12 LED(光源)
13 筐体
14 輝度制御要素
15,15a,15b 光学シート
16 反射フィルム
17 偏光フィルム
20 車両前照灯
21 投影レンズ
22 筐体
31 延伸高分子フィルム
31a 領域
31b 溝部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面を光出射面とする扁平な板状の可視光領域で透明な材料から成る導光板と、上記導光板の端面に対向して配置された点状または線状の光源と、を含んでおり、
上記導光板の裏面が、光出射面における輝度分布を制御する輝度制御要素を有しており、
上記輝度制御要素が、上記導光板の端面から入射する光源からの光を制御して、光出射面上にて、照射すべき配光パターンを縮小反転した輝度分布を構成していて、
上記導光板が、光源からの光のうち、p偏光による平行偏光のみを光出射面から出射させるように構成されている
ことを特徴とする、光源装置。
【請求項2】
上記導光板が、その光出射面の少なくとも一部に設けられた偏光フィルムを備えていることを特徴とする、請求項1に記載の光源装置。
【請求項3】
上記偏光フィルムが、上記導光板の光出射面の配光パターンの少なくとも一部の領域に設けられていることを特徴とする、請求項2に記載の光源装置。
【請求項4】
上記導光板が、その内部に、屈折率が異なる楕円状の微小領域を形成した偏光選択散乱性を有する延伸高分子フィルムを備えていることを特徴とする、請求項1に記載の光源装置。
【請求項5】
上記延伸高分子フィルムが、その少なくとも片側の面に、光を法線方向に出射させるための所定ピッチで形成された凹凸形状を備えていることを特徴とする、請求項4に記載の光源装置。
【請求項6】
上記フィルムが、光源からの導光板を介して出射する光路から退避可能に配置されていることを特徴とする、請求項2から5の何れかに記載の光源装置。
【請求項7】
請求項1から6の何れかに記載の光源装置と、この光源装置からの出射光を光照射方向前方に向かって照射する凸状の投影レンズと、を備えており、
上記投影レンズが、その光源装置側の焦点位置が上記光源装置の導光板の光出射面上に位置するように、配置されていることを特徴とする、車両前照灯。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2008−293852(P2008−293852A)
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−139481(P2007−139481)
【出願日】平成19年5月25日(2007.5.25)
【出願人】(000002303)スタンレー電気株式会社 (2,684)
【Fターム(参考)】