説明

光画像撮像装置および光画像の撮像方法

【課題】偏光状態に依らず測定光あるいは戻り光のすくなくともいずれかを変調することができ、収差を補正して光画像のSN比の向上が可能となる光画像撮像装置を提供する。
【解決手段】光源からの光を測定光とし、被検査物に照射された該測定光による戻り光の強度により前記被検査物の画像を撮像する光画像撮像装置であって、
測定光を異なる偏光の成分に分岐すると共に、戻り光を結合する第一の偏光分岐手段と、
第一の偏光分岐手段によって分岐された測定光を結合すると共に、戻り光を分岐する第二の偏光分岐手段と、
第一あるいは第二の偏光分岐手段を透過した偏光の偏光調整を行う偏光調整手段と、
測定光あるいは戻り光の少なくともいずれかを変調する一つの空間光変調手段と、
被検査物で発生した収差を測定する収差測定手段と、
測定結果に基づいて、空間光変調手段における変調量を制御する制御手段と、を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光画像撮像装置および光画像の撮像方法に関し、特に眼科診療等に用いられる光画像撮像装置および光画像の撮像方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
多波長光波干渉を利用した光コヒーレンストモグラフィ(OCT:Optical Coherence Tomography)は、試料(特に眼底)の断層画像を高分解能に得る方法である。
以下、このようなOCTによる光断層画像を撮像する光断層画像撮像装置をOCT装置と記す。
近年、フーリエドメイン方式のOCT装置において測定光のビーム径を大きくすることにより、高横分解能な網膜の断層画像を取得することが可能になっている。
測定光のビーム径の大径化に伴い、網膜の断層画像の取得において、被検眼における曲面のゆがみや屈折率の不均一性などによって発生する収差による断層画像のSN比及び分解能の低下が問題になってきた。
それを解決するために、被検眼の収差を波面センサでリアルタイムに測定し、波面補正デバイスで補正する補償光学系を有する補償光学OCT装置が開発され、高横分解能な断層画像の取得を可能にしている。
【0003】
このような補償光学系を用いた装置として、特許文献1においては、走査型レーザー検眼鏡(SLO装置)において、補償光学系及び液晶空間位相変調器、ポリゴンミラー、ガルバノミラー等を用い、眼底画像を取得可能とした眼科撮影装置が提案されている。
この眼科撮影装置では、被検眼で発生する収差を液晶空間位相変調器を用いて補正することで、横分解能の劣化を防ぐように構成されている。
また、補償光学系を構成するための空間変調器として、非特許文献1においては、液晶の配向方向の異なる2枚の液晶素子を張り合わせて構成した、透過型の液晶空間位相変調器が提案されている。この空間位相変調器では、偏光状態に依らずに、入射光を変調することが可能なように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−14569号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】¨Progress report of USAF Research Laboratory liquid crystal AO program¨, Proc. SPIE, Vol. 3353, 776 (1998)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1の補償光学系を有する眼科撮影装置は、上記したように被検眼で発生する収差を液晶空間位相変調器を用いて補正することにより、高横分解能な画像の取得が可能とされている。
しかし、該液晶空間位相変調器は、液晶の配向方向に沿った向きの特定の偏光の成分のみを変調するものであり、その他の偏光の成分は変調することができない。
そのため、該眼科撮影装置は、眼底にて反射した反射光の偏光状態に依らずに、偏光の成分を補正することは難しく、高横分解能な画像を取得するうえで、改善の余地を残している。
また、上記非特許文献1の透過型の液晶空間位相変調器は、上記したように偏光状態に依らずに、入射光を変調することが可能とされている。
しかし、該変調器の構造上、2枚の液晶素子を光学的に共役に配置することが難しく、該変調器は、補償光学OCT装置の光学設計に制限をもたらすことになる。
すなわち、2つの偏光に対してそれぞれの共役関係が液晶デバイス面のずれを含んで保たれるように設計をしなければならず、その結果、光学系の複雑化や大型化を招く。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑み、空間光変調手段を用いた補償光学系により、偏光状態に依らず測定光あるいは戻り光の少なくともいずれかを変調することができ、収差を補正して光画像のSN比を高くすることが可能となる光画像撮像装置および光画像の撮像方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、つぎのように構成した光画像撮像装置および光画像の撮像方法を提供するものである。
本発明の光画像撮像装置は、光源からの光を測定光とし、被検査物に照射された該測定光による戻り光の強度により前記被検査物の画像を撮像する光画像撮像装置であって、
前記測定光を互いに異なる偏光の成分に分岐すると共に、当該偏光分岐手段よりも被検査物側に位置する第二の偏光分岐手段によって異なる偏光の成分に分岐された戻り光を結合する第一の偏光分岐手段と、
前記第一の偏光分岐手段によって互いに異なる偏光の成分に分岐された測定光を結合すると共に、前記戻り光を互いに異なる偏光の成分に分岐する第二の偏光分岐手段と、
前記第一及び前記第二の偏光分岐手段で分岐された偏光の偏光調整を行う偏光調整手段と、
該測定光あるいは該戻り光の少なくともいずれかを変調する一つの空間光変調手段と、
前記被検査物で発生した収差を測定する収差測定手段と、
前記収差を補正するため、前記収差測定手段の測定結果に基づいて、前記空間光変調手段における変調量を制御する制御手段と、
を有することを特徴とする。
また、本発明の光断層画像の撮像方法は、光源からの光を測定光とし、被検査物に照射された該測定光による戻り光の強度により、前記被検査物の画像を撮像する光画像の撮像方法であって、
前記測定光あるいは前記戻り光における互いに異なる偏光の成分に分岐された偏光を、偏光調整手段を介して入出射させることにより、
前記測定光あるいは前記戻り光の偏光状態に依らず、該測定光あるいは該戻り光の少なくともいずれかを変調する一つの空間光変調手段と、
前記被検査物で発生した前記戻り光の収差を測定する収差測定手段と、
を前記光源から前記被検査物までの光路に備え、
前記収差測定手段を用い、該被検査物の収差を測定する第1の工程と、
前記収差を補正するため、前記収差測定手段の測定結果に基づいて、前記空間光変調手段における変調量を算出し、
前記空間光変調手段における変調量を制御する制御手段を用いて、前記空間光変調手段における変調量を制御する第2の工程と、
を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、空間光変調手段を用いた補償光学系により、偏光状態に依らず測定光あるいは戻り光の少なくともいずれかを変調することができ、収差を補正して光画像のSN比を高くすることが可能となる光画像撮像装置および光画像の撮像方法を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施例1におけるOCT装置の全体の構成について説明する図である。
【図2】本発明の実施例1におけるOCT装置の断層画像の取得方法を説明する図である。
【図3】本発明の実施例1におけるOCT装置の断層画像の取得手順を説明する図である。
【図4】本発明の実施例2におけるOCT装置の全体の構成について説明する図である。
【図5】本発明の実施例3におけるOCT装置の全体の構成について説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明を実施するための形態を、以下の実施例により説明する。
【実施例】
【0012】
つぎに、本発明の実施例1について、図面を用いて詳細に説明する。
ここでは、光画像撮像装置として、被検査物を眼とした際の被検眼の撮像を行うOCT装置について説明するが、光を用いて画像を撮像する撮像装置であれば、走査型レーザー検眼鏡(SLO装置)等の他の装置にも適用できる。
[実施例1]
実施例1においては、本発明を適用したOCT装置(光断層画像撮像装置)について説明する。
本実施例では、特に、被検眼の断層画像(OCT像)を撮像する高横分解能の補償光学系を備えたOCT装置について説明する。
本実施例では、被検眼の収差を反射型の空間光変調器を用いて補正して断層画像を取得するフーリエドメイン方式のOCT装置が構成され、被検眼の視度や収差によらず良好な断層画像が得られるように構成されている。
また、測定光が偏光毎に2つに分岐され、さらに、その2つの測定光が1つの反射型の空間光変調器に入射していることを特徴としている。
ここでは、空間光変調器は液晶の配向を利用した反射型の液晶空間位相変調器である。
空間光変調器は光の位相を変調できればよく、液晶以外の材料を使用してもよい。
【0013】
まず、図1を用いて、本実施例におけるOCT装置の全体の構成について説明する。
本実施例のOCT装置100は、図1(a)に示されるように、全体としてマイケルソン干渉系を構成している。
図1(a)において、光源101から出射された光は、光ファイバー130−1と光カプラー131とを介して、参照光105と測定光106とに、90:10の割合で分割される。
測定光106は、シングルモードファイバー130−4を介して測定光路102に導かれる。測定光路102の構成については、図1(b)に示す。
測定光106は、第一のウォラストンプリズム166−1、空間光変調器159、XYスキャナ119、球面ミラー160−1〜11等を介して、観察対象である被検眼107に導かれる。
なお、測定光106は、第一のウォラストンプリズム166−1にて、偏光毎に2つに分岐された後、空間光変調器159に入射され、第二のウォラストンプリズム166−2により1つに合波される。
【0014】
測定光106は、観察対象である被検眼107によって反射あるいは散乱された戻り光108となって戻され、光カプラー131によって、参照光105と合波される。
153−1〜4は偏光コントローラであり、測定光106と参照光105との偏光の状態を調整する。
参照光105と戻り光108とは合波された後、透過型グレーティング141によって波長毎に分光され、ラインセンサ139に入射される。
ラインセンサ139は位置(波長)毎に光強度を電圧に変換し、その信号を用いて、被検眼107の断層画像が構成される。
戻り光108の有する収差は波面センサ155にて計測される。本実施例においては、該収差を、空間光変調器159を制御して低減する機能を有し、被検眼の視度や収差によらず良好な断層画像が得られるように構成されている。
【0015】
つぎに、光源101の周辺について説明する。
光源101は代表的な低コヒーレント光源であるSLD(Super Luminescent Diode)である。
波長は830nm、バンド幅50nmである。
ここで、バンド幅は、得られる断層画像の光軸方向の分解能に影響するため、重要なパラメーターである。
また、光源の種類は、ここではSLDを選択したが、低コヒーレント光が出射できればよく、ASE(Amplified Spontaneous Emission)等も用いることができる。
また、波長は眼を測定することを鑑みると、近赤外光が適する。さらに波長は、得られる断層画像の横方向の分解能に影響するため、なるべく短波長であることが望ましく、ここでは830nmとする。
観察対象の測定部位によっては、他の波長を選んでも良い。
【0016】
つぎに、参照光105の光路について説明する。
光カプラー131にて分割された参照光105はシングルモードファイバー130−2を通して、レンズ135−1に導かれ、ビーム径3mmの平行光になるよう、調整される。
次に、参照光105は、ミラー157−1〜2によって、参照ミラーであるミラー114に導かれる。参照光105の光路長は、測定光106の光路長と略同一に調整されているため、参照光105と測定光106とを干渉させることができる。
次に、ミラー114にて反射され、再び光カプラー131に導かれる。ここで、参照光105が通過した分散補償用ガラス115は、被検眼107に測定光106が往復した時の分散を、参照光105に対して補償するものである。
分散補償用ガラス115の長さはL1であり、ここでは、日本人の平均的な眼球の直径として代表的な値を想定し、L1=23mmとする。
さらに、117−1は電動ステージであり、矢印で図示している方向に移動することができ、参照光105の光路長を、調整し制御することができる。
また、電動ステージ117−1はパソコン125の制御の下に駆動される。
【0017】
つぎに、本実施例の特徴的な構成である測定光106の光路について、主に図1(b)を用いて説明する。
光カプラー131によって分割された測定光106は、シングルモードファイバー130−4を介して、レンズ135−4に導かれ、ビーム径3mmの平行光になるよう調整される。
また、偏光コントローラ153−4は、測定光106の偏光状態を調整することができる。
ここでは、測定光106の偏光状態は円偏光であることが望ましい。
測定光106は、ビームスプリッタ158を通過し、球面ミラー160−1、160−2にて反射され、第一のウォラストンプリズム(第一の偏光分岐手段)166−1に入射される。
ここで、測定光106はS偏光(紙面に垂直)の成分からなる第一の測定光(第一の光路)106−1と、P偏光(紙面に平行)の成分からなる第二の測定光(第二の光路)106−2とに分岐され、測定光106−1と106−2とがなす角度は10°になっている。
【0018】
第一の測定光106−1は球面ミラー160−3を介し、第一の偏光調整手段を構成するλ/2板(第一のλ/2板)168−1に入射して偏光方向が90°回転し、紙面に平行な方向の直線偏光となる。さらに、球面ミラー160−4に導かれる。
第二の測定光106−2は球面ミラー160−3と光路補償板(第一の補償板)169−1を介し、球面ミラー160−4に導かれる。
そして、一方の偏光である第一の測定光106−1と他方の偏光である第二の測定光106−2とは、球面ミラー160−4に導かれた後、空間光変調器159の同一の位置に入射し、変調される。
ここで、空間光変調器159はP偏光(紙面に平行)の位相を変調する向きに配置されている。
次に、第一の測定光106−1は球面ミラー160−5と光路補償板(第二の補償板)169−2とを介し、球面ミラー160−6に導かれる。
第二の測定光106−2は球面ミラー160−5を介し、第二の偏光調整手段を構成するλ/2板(第二のλ/2板)168−2に入射して偏光方向が90°回転し、紙面に垂直な方向の直線偏光となる。さらに、球面ミラー160−6に導かれる。
【0019】
さらに、第一の測定光106−1と第二の測定光106−2とは球面ミラー160−6を介し、第一のウォラストンプリズムよりも被検査物側に位置する第二のウォラストンプリズム(第二の偏光分岐手段)166−2のビーム分離面の同一の位置に入射する。そして、合波(結合)され、再び一つの測定光106となる。
ここで、光路補償板169−1〜2のそれぞれは、λ/2板168−1〜2のそれぞれに対して、光路長あるいは分散を補償するものである。
ここで、空間光変調器159は、液晶の配向性を利用して変調を行うため、特定の方向の偏光の成分のみを変調する。
そのため、上述のように、測定光106を偏光毎に第一の測定光106−1と第二の測定光106−2に分割する。
そして、第一の測定光106−1の偏光の方向を90°回転させ、測定光106−1と106−2との偏光の方向を合わせることで、測定光106の偏光状態に依らず、測定光106の変調を行うことを可能にしている。
【0020】
ここで、空間光変調器159の第一のウォラストンプリズム166−1に対する横倍率は2になっており、測定光106−1、2のそれぞれはビーム径6mmで、空間光変調器159に入射する。
また、測定光106−1と106−2のなす角度は5°となっている。同様に、空間光変調器159の第二のウォラストンプリズム166−2に対する横倍率も2となっている。
上記したように、測定光106−1と106−2との偏光の方向が互いに垂直であることが望ましいが、実際には垂直に限らず、互いの配向方向が異なっていればよい。
【0021】
次に、測定光106は、球面ミラー160−7〜8を介して、XYスキャナ119のミラーに入射される。
ここでは、簡単のため、XYスキャナ119は一つのミラーとして記したが、実際にはXスキャン用ミラーとYスキャン用ミラーとの2枚のミラーが近接して配置されていてもよく、網膜127上を光軸に垂直な方向にラスタースキャンするものである。
また、測定光106の中心はXYスキャナ119のミラーの回転中心と一致するように調整されている。
球面ミラー160−9〜11は網膜127を走査するための光学系であり、測定光106を角膜126の付近を支点として、網膜127をスキャンする役割がある。
ここで、測定光106の角膜への入射ビーム径は4mmであるが、より高横分解能な断層画像を取得するために、ビーム径はより大径化してもよい。
また、117−2は電動ステージであり、矢印で図示している方向に移動することができ、付随する球面ミラーである球面ミラー160−10の位置を、パソコン125の制御の下に調整することができる。
球面ミラー160−10の位置を調整することで、被検眼107の網膜127の所定の層に測定光106を合焦し、観察することが可能になる。
また、被検眼107が屈折異常を有している場合にも対応できる。
測定光106は被検眼107に入射すると、網膜127からの反射や散乱により戻り光108となり、再び光カプラー131に導かれ、ラインセンサ139に到達する。
ここで、戻り光108は、第二のウォラストンプリズム166−2において第三の光路と第四の光路とによってS偏光とP偏光とに分割され、空間光変調器159でそれぞれ変調され、第一のウォラストンプリズム166−1にて合波される。
【0022】
また、ビームスプリッタ158にて分割される戻り光108の一部は、波面センサ155に入射され、戻り光108の収差が測定される。波面センサ155はパソコン125に電気的に接続されている。
ここで、角膜126、XYスキャナ119、波面センサ155、空間光変調器159、ウォラストンプリズム166−1、166−2のビーム分離面とは光学的に共役になるよう、球面ミラー160−1〜9が配置されている。
互いに共役な位置には「P」の文字を付した。そのため、波面センサ155は被検眼107の収差を測定することが可能になっている。
また、空間光変調器159は被検眼107の収差を補正することが可能になっており、また分離した各偏光成分のビームを再度合波することが可能となっている。
さらに、得られた収差に基づいて、空間光変調器159をリアルタイムに制御することで、被検眼107で発生する収差を補正し、より高横分解能な断層画像の取得を可能にしている。
ここで、ウォラストンプリズム166の性質上、分離された後の第一の測定光106−1と第二の測定光106−2とのそれぞれのビーム径が異なるが、空間光変調器159上では同一のビーム径となるよう球面ミラー160−3〜6が構成されている。
【0023】
ここで、球面ミラー160−1〜11の代わりに、非球面ミラーや自由曲面ミラーを用いてもよい。
ここでは、球面ミラー160−3〜6のそれぞれは第一の測定光106−1と第二の測定光106−2との2つの測定光を反射する役割を担っているが、それぞれを2つのミラーで構成してもよい。
ここでは、ウォラストンプリズム166−1、166−2を用いて、測定光106を偏光毎に分割しているが、偏光毎に分割できれば、他の素子を用いてもよい。例えば、偏光ビームスプリッタ、ニコルプリズム、サバール板等を用いることができる。
ここでは、λ/2板168−1、168−2を用いて測定光106の偏光の回転を行っているが、偏光が回転できればよく、他の素子を用いてもよい。
ここでは、球面ミラー160−8は、被検眼107の収差(屈折異常)によっては、代わりにシリンドリカルミラーを用いてもよい。
また、新たなレンズを測定光106の光路に追加してもよい。
ここでは、測定光106を用いて、波面センサ155を用いた収差の測定を行っているが、収差の測定のために他の光源を用いてもよい。また、収差の測定のために他の光路を構成してもよい。例えば、球面ミラー160−11と角膜126の間から、ビームスプリッタを用いて、収差の測定のための光を入射することができる。
【0024】
また、ここでは、球面ミラー160−1の後で、ウォラストンプリズム166−1を用いて、測定光106をS偏光の成分からなる第一の測定光106−1と、P偏光の成分からなる第二の測定光106−2とに分岐した。
しかし、これに限られることなく、他の箇所で分岐して測定光路を構成してもよい。
ここでは、空間光変調器159に反射型の液晶空間位相変調器を用いたが、透過型の液晶空間位相変調器を用いてもよい。
例えば、図1(c)に示すように、空間光変調器159として透過型の液晶空間位相変調器を用いることができる。
空間光変調器159の種類以外は図1(b)と同じ構成であるため、同じ番号を付し、説明を省略する。
【0025】
つぎに、本実施例のOCT装置における測定系の構成について説明する。
OCT装置100は、マイケルソン干渉系による干渉信号の強度から構成される断層画像(OCT像)を取得することができる。
その測定系について説明すると、網膜127にて反射や散乱された光である戻り光108は、参照光105と光カプラー131にて合波される。
そして、合波された光142は光ファイバー130−3とレンズ135−2とを介して、透過型グレーティング141に入射される。
そして、合波された光142は透過型グレーティング141によって波長毎に分光され、レンズ135−3で集光され、ラインセンサ139にて光の強度が位置(波長)毎に電圧に変換される。
具体的には、ラインセンサ139上には波長軸上のスペクトル領域の干渉縞が観察されることになる。
ラインセンサ139で得られた電圧信号群はフレームグラバー140にてデジタル値に変換されて、パソコン125にてデータ処理を行い断層画像を形成する。
【0026】
ここでは、ラインセンサ139は1024画素を有し、合波された光142の波長毎(1024分割)の強度を得ることができる。
また、ビームスプリッタ158にて分割される戻り光108の一部は、波面センサ155に入射され、戻り光108の収差が測定される。
波面センサ155はシャックハルトマン方式の波面センサである。
得られた収差はツェルニケ多項式を用いて表現され、これは被検眼107の収差を示している。
ツェルニケ多項式は、チルト(傾き)の項、デフォーカス(defocus)の項、アスティグマ(非点収差)の項、コマの項、トリフォイルの項等からなる。
【0027】
つぎに、OCT装置を用いた断層画像の取得方法について説明する。
OCT装置100は、XYスキャナ119を制御し、ラインセンサ139で干渉縞を取得することで、網膜127の断層画像を取得することができる(図1)。ここでは、図2を用いて網膜127の断層画像(光軸に平行な面)の取得方法について説明する。
図2(a)は被検眼107の模式図であり、OCT装置100によって観察されている様子を示している。
図2(a)に示すように、測定光106は角膜126を通して、網膜127に入射すると様々な位置における反射や散乱により戻り光108となり、それぞれの位置での時間遅延を伴って、ラインセンサ139に到達する。
ここでは、光源101のバンド幅が広く、コヒーレンス長が短いために、参照光路の光路長と測定光路の光路長とが略等しい場合に、ラインセンサ139にて、干渉縞が検出できる。
上述のように、ラインセンサ139で取得されるのは波長軸上のスペクトル領域の干渉縞となる。
次に、波長軸上の情報である該干渉縞を、ラインセンサ139と透過型グレーティング141との特性を考慮して、光周波数軸の干渉縞に変換する。
さらに、変換された光周波数軸の干渉縞を逆フーリエ変換することで、深さ方向の輝度情報が得られる。
【0028】
さらに、図2(b)に示すように、XYスキャナ119のX軸を駆動しながら、該干渉縞を検知すれば、X軸の位置毎に干渉縞が得られ、つまり、X軸の位置毎の深さ方向の輝度情報を得ることができる。
結果として、XZ面での戻り光108の強度の2次元分布が得られ、それはすなわち断層画像132である(図2(c))。
本来は、断層画像132は上記説明したように、該戻り光108の強度をアレイ状に並べたものであり、例えば該強度をグレースケールに当てはめて、表示されるものである。
ここでは得られた断層画像の境界のみ強調して表示している。ここで、146は網膜色素上皮層、147は視神経線維層である。
【0029】
つぎに、OCT装置を用いた断層画像の取得の手順について図1〜図3を用いて説明する。
図3はOCT装置100の断層画像の取得の手順について説明する図である。ここでは、図3には、空間光変調器159を用いて、近視及び乱視の被検眼107が有する収差を補正し、高横分解能な網膜127の断層画像を取得する手順が示されている。
もちろん、被検眼107が単なる近視や遠視であっても同様の手順を用いることができる。
断層画像の取得方法は以下の(1)〜(9)の手順で、例えば連続して行うものである。
或いは、適宜工程を戻って行うこともできる。また、コンピュータ等を用いて、以下の工程を自動的に行うように構成してもよい。
【0030】
図3に、上記断層画像の取得方法を説明するフロー図を示す。
(1)ステップ1(図3のS1)において、被検眼107に固視灯(不図示)を注視させた状態で、測定光106を被検眼107に対して入射させる。
ここでは、測定光106は平行光の状態で、被検眼107に対して入射するように、球面ミラー160−10の位置が電動ステージ117−2によって調整されている。
(2)ステップ2(図3のS2)において、XYスキャナ119のX軸を駆動しながら、ラインセンサ139にて干渉縞を検知して、断層画像(不図示)を得る。
(3)ステップ3(図3のS3)において、(2)の工程を行いながら、断層画像のコントラストが高くなるように、電動ステージ117−2を用いて球面ミラー160−10の位置を調整する。
(4)ステップ4(図3のS4)において、戻り光108を波面センサ155で測定し、戻り光108の収差を得る。
(5)ステップ5(図3のS5)において、得られた収差をパソコン125にてツェルニケ多項式の表現に変換し、そのデータをパソコン125内のメモリーに記録する。
(6)ステップ6(図3のS6)において、得られた収差が最小になるような変調量を算出し、空間光変調器159を変調する。
(7)ステップ7(図3のS7)収差が最小になるように、波面センサ155、空間光変調器159、パソコン125を用いてフィードバック制御を行い、リアルタイムに空間光変調器159を制御する。
(8)ステップ8(図3のS8)収差が設定値以下か判断し、収束するまで、ステップ4〜7を繰り返す。該設定値は0.1μm(RMS)程度が望ましい。
(9)ステップ9(図3のS9)において、XYスキャナ119のX軸を駆動しながら、ラインセンサ139にて干渉縞を検知して、再び断層画像を得る。
【0031】
以上のように、本実施例によれば、
偏光状態に依らず、1つの空間光変調器で測定光あるいは戻り光を変調することができ、収差を補正することが可能となる。結果として、断層画像のSN比を高くすることが可能となる。
また、収差に基づいて、測定光と戻り光との少なくともいずれかの収差の補正を行うことで、被検査物(ここでは被検眼)自身が有する収差を補正し、結果として、断層画像の分解能とSN比を高くすることが可能となる。
また、空間光変調器と、波面センサとが光学的に共役に配置されていることで、効率的に収差を補正することが可能となる。
また、第一のウォラストンプリズムと第二のウォラストンと空間光変調器とが、光学的に共役であることで、第一の測定光と第二の測定光とを再度合波しやすくなる。
また、第一のウォラストンプリズムと第二のウォラストンプリズムとの少なくともいずれかに対する、空間光変調器の横倍率が1より大きいことで、第一の測定光と第二の測定光とのなす角度を小さくしやすくなる。従って、空間光変調器の角度依存性の影響を最低限に抑えることが可能となる。
また、第一の測定光の光路と第二の測定光の光路のそれぞれに、λ/2板を配置することで、第一の測定光と第二の測定光との偏光の方向を回転することができる。
よって、第一の測定光と第二の測定光とのそれぞれを所望の偏光状態で空間光変調器に入射し、変調の効率を上げることが可能となる。また、第一の測定光と第二の測定光とのそれぞれを所望の偏光状態でλ/2板に入射し、第一の測定光と第二の測定光とを再度合波することが可能となる。
【0032】
また、第一の測定光の光路の、第一のウォラストンプリズムと空間光変調器との間と、第二の測定光の光路の、第二のウォラストンプリズムと空間光変調器との間とのそれぞれに、λ/2板を配置ことで、簡単な構成で光路を構成することが可能となる。
また、第一の測定光の光路の、第二のウォラストンプリズムと空間光変調器との間と、前記第二の測定光の光路の、第一のウォラストンプリズムと空間光変調器との間とのそれぞれに、光路補償板を配置する。
これにより、第一の測定光の光路と第二の測定光の光路との光路長あるいは分散を補償し、測定光路が分岐していることによる分解能の劣化等を防ぐことが可能となる。
また、第一のウォラストンプリズムと第二のウォラストンプリズムとの少なくともいずれかを一般的な偏光ビームスプリッタに置き換えることで、光路を構成することが可能となる。
また、偏光分岐手段として、ウォラストンプリズムを用いることで、簡単な構成で光路を構成することが可能となる。
また、第一のウォラストンプリズムと第二のウォラストンプリズムとの少なくともいずれかをニコルプリズム、サバール板のいずれかに置き換えることで、光路を構成することが可能となる。
また、光源からの光を測定光と参照光とに分割し、被検査物に照射された測定光による戻り光と、参照光路を経由した参照光とを干渉させ、干渉による干渉信号の強度により被検査物の断層画像を撮像するように構成する。
これにより、測定光あるいは戻り光の偏光状態に依らず、SN比が高い光断層画像を取得することが可能となる。
【0033】
また、本実施例では、光源からの光を測定光と参照光とに分割し、被検査物に照射された該測定光による戻り光と、参照光路を経由した該参照光とを干渉させた干渉信号を用い、前記被検査物の断層画像を撮像する光画像の撮像方法を構成することができる。
まず、第1の工程において、被検査物で発生した前記戻り光の収差を測定する収差測定手段を用いて、被検査物の収差を測定する。
この収差測定手段は、前記測定光あるいは前記戻り光における互いに異なる偏光の成分に分岐された偏光を、偏光調整手段を介して入出射させることによって、 前記測定光あるいは前記戻り光の偏光状態に依らず、該測定光あるいは該戻り光の少なくともいずれかを変調する液晶の配向制御を利用した一つの空間光変調手段と共に、光源から前記被検査物までの光路に配置されている。
次に、第2の工程において、前記収差を補正するため、前記収差測定手段の測定結果に基づいて、前記空間光変調手段における変調量を算出する。
そして、この算出された変調量に基づいて前記空間光変調手段における変調量を制御する制御手段を用いて、前記空間光変調手段における変調量を制御する。
これにより、偏光状態に依らず、測定光あるいは戻り光を変調することができ、収差を補正することが可能となる。結果として、断層画像のSN比を高くすることが可能となる。
【0034】
[実施例2]
次に、実施例2について、説明する。
実施例2においては、被検眼の断層画像(OCT像)を撮像する高横分解能の補償光学系を備えたOCT装置について説明する。
本実施例では、実施例1と同様に、被検眼の収差を反射型の空間光変調器を用いて補正して断層画像を取得するフーリエドメイン方式のOCT装置が構成され、被検眼の視度や収差によらず良好な断層画像が得られるようにされている。
また、測定光が偏光毎に2つに分岐され、さらに、その2つの測定光が1つの反射型の空間光変調器に入射していることを特徴としている。実施例1では、光学系の全体を主に球面ミラーを用いた反射光学系を用いて構成しているが、ここでは、球面ミラーの代わりにレンズを用いた屈折光学系を用いて構成している。
【0035】
まず、図4を用いて、本実施例におけるOCT装置の全体の構成について説明する。
本実施例において、図1と同じ構成には同じ番号を付し、その説明を省略する。図4(b)は、図4(a)の測定光路102の構成を示す図である。
図4(b)において、測定光106は、第一のウォラストンプリズム166−1、空間光変調器159、第二のウォラストンプリズム166−2、XYスキャナ119、レンズ135−4〜14等を介して、観察対象である被検眼107に導かれる。
なお、測定光106は、第一のウォラストンプリズム166−1にて、偏光毎に2つに分岐された後、空間光変調器159に入射され、第二のウォラストンプリズム166−2により1つに合波される。
戻り光108の有する収差は波面センサ155にて計測される。ここでは、該収差を、空間光変調器159を制御して低減する機能を有し、被検眼の視度や収差によらず良好な断層画像が得られるようにされている。
本実施例では反射型の空間光変調器を用いたが、透過型の空間光変調器を用いても構成することができる。
なお、光源101および参照光路に関しては、実施例1と同様のため説明を省略する。
【0036】
つぎに、本実施例の特徴的な構成である測定光106の光路について、主に図4(b)を用いて説明する。
光カプラー131によって分割された測定光106は、シングルモードファイバー130−4を介して、レンズ135−4に導かれ、ビーム径3mmの平行光になるよう調整される。
測定光106は、ビームスプリッタ158を通過し、レンズ135−5〜6を介して、第一のウォラストンプリズム166−1に入射される。
ここで、測定光106はS偏光(紙面に垂直)の成分からなる第一の測定光106−1と、P偏光(紙面に平行)の成分からなる第二の測定光106−2とに分岐され、測定光106−1と106−2とがなす角度は10°になっている。
【0037】
第一の測定光106−1はレンズ135−7を介し、λ/2板168−1に入射して偏光が回転し、紙面に平行な方向の直線偏光となる。
さらに、レンズ135−8に導かれる。第二の測定光106−2はレンズ135−7と光路補償板169−1を介し、レンズ135−8に導かれる。
次に、第一の測定光106−1と第二の測定光106−2とは、空間光変調器159の同一の位置に入射し変調される。
ここで、空間光変調器159はP偏光(紙面に平行)の位相を変調する向きに配置されている。
次に、第一の測定光106−1はレンズ135−9と光路補償板169−2とを介し、レンズ135−10に導かれる。
第二の測定光106−2はレンズ135−9を介し、λ/2板168−2に入射して偏光が回転し、紙面に垂直な方向の直線偏光となる。さらに、レンズ135−10に導かれる。
さらに、第一の測定光106−1と第二の測定光106−2とは第二のウォラストンプリズム166−2のビーム分離面の同一の位置に入射して合波され、再び一つの測定光106となる。
ここで、光路補償板169−1〜2のそれぞれは、λ/2板168−1〜2のそれぞれに対して、光路長あるいは分散を補償するものである。
【0038】
次に、測定光106は、レンズ135−11〜12を介して、XYスキャナ119のミラーに入射される。
レンズ135−13〜14は網膜127を走査するための光学系であり、測定光106を角膜126の付近を支点として、網膜127をスキャンする役割がある。
また、117−2は電動ステージであり、矢印で図示している方向に移動することができ、付随するレンズ135−14の位置を、パソコン125の制御の下に調整し制御することができる。
レンズ135−14の位置を調整することで、被検眼107の網膜127の所定の層に測定光106を合焦し、観察することが可能になる。
また、被検眼107が屈折異常を有している場合にも対応できる。
測定光106は被検眼107に入射すると、網膜127からの反射や散乱により戻り光108となり、再び光カプラー131に導かれ、ラインセンサ139に到達する。
ここで、戻り光108は、第二のウォラストンプリズム166−2において、S偏光とP偏光とに分割され、空間光変調器159でそれぞれ変調され、第一のウォラストンプリズム166−1にて合波される。
また、ビームスプリッタ158にて分割される戻り光108の一部は、波面センサ155に入射され、戻り光108の収差が測定される。波面センサ155はパソコン125に電気的に接続されている。
【0039】
ここで、角膜126、XYスキャナ119、波面センサ155、空間光変調器159、ウォラストンプリズム166−1、166−2のビーム分離面とは光学的に共役になるよう、レンズ135−4〜14が配置されている。互いに共役な位置には「P」の文字を付した。
そのため、波面センサ155は被検眼107の収差を測定することが可能になっている。また、空間光変調器159は被検眼107の収差を補正することが可能になっており、また分離した各偏光成分のビームを再度合波することが可能となっている。
さらに、得られた収差に基づいて、空間光変調器159をリアルタイムに制御することで、被検眼107で発生する収差を補正し、より高横分解能な断層画像の取得を可能にしている。
ここで、ウォラストンプリズム166−1、166−2の性質上、分離された後の第一の測定光106−1と第二の測定光106−2とのそれぞれのビーム径が異なるが、空間光変調器159上では同一のビーム径となるようレンズ135−4〜14が構成されている。
ここでは、レンズ135−7〜10のそれぞれは第一の測定光106−1と第二の測定光106−2との2つの測定光を反射する役割を担っているが、それぞれを2つのレンズで構成してもよい。
ここでは、レンズ135−14に球面レンズを用いているが、被検眼107の収差(屈折異常)によっては、レンズ135−14にシリンドリカルレンズを用いてもよい。
また、新たなレンズを測定光106の光路に追加してもよい。
ここでは、レンズ135−6後で、ウォラストンプリズム166−1を用いて、測定光106をS偏光の成分からなる第一の測定光106−1と、P偏光の成分からなる第二の測定光106−2とに分岐したが、他の箇所で分岐して測定光路を構成してもよい。
ここでは、空間光変調器159に反射型の液晶空間位相変調器を用いたが、透過型の液晶空間位相変調器を用いてもよい。
なお、測定系の構成および断層画像の取得方法に関しては、実施例1と同様のため説明を省略する。
また、断層画像の取得の手順に関しては、レンズ135−14の位置を調整することで、被検眼107の網膜127の所定の層に測定光106を合焦し、観察を行っている以外は、実施例1と同様のため説明を省略する。
【0040】
[実施例3]
つぎに、実施例3について説明する。
実施例3においては、被検眼の断層画像(OCT像)を撮像する高横分解能の補償光学系を備えたOCT装置について説明する。
本実施例では、実施例1および実施例2と同様に、被検眼の収差を反射型の空間光変調器を用いて補正して断層画像を取得するフーリエドメイン方式のOCT装置が構成され、被検眼の視度や収差によらず良好な断層画像が得られるようにされている。
また、測定光が偏光毎に2つに分岐され、さらに、その2つの測定光が1つの反射型の空間光変調器に入射していることを特徴としている。
実施例2では、2つのウォラストンプリズムを用いて測定光路を構成しているが、ここでは、ウォラストンプリズムを共通とし、1つのウォラストンプリズムを用いることで、測定光路を小型化して構成している。
【0041】
まず、図5を用いて、本実施例におけるOCT装置の全体の構成について説明する。
本実施例において、図4と同じ構成には同じ番号を付し、その説明を省略する。測定光106は、ビームスプリッタ158−2によって反射され、ウォラストンプリズム166にて、偏光毎に2つに分岐された後、空間光変調器159に入射し変調される。
さらに、測定光106はビームスプリッタ158−2を通過し、XYスキャナ119、レンズ135−12〜14等を介して、観察対象である被検眼107に導かれる。
戻り光108の有する収差は波面センサ155にて計測される。ここでは、該収差を、空間光変調器159を制御して低減する機能を有し、被検眼の視度や収差によらず良好な断層画像が得られるようにされている。
本実施例では反射型の空間光変調器を用いたが、透過型の空間光変調器を用いても構成することができる。
なお、光源101及び参照光路に関しては、実施例1と同様のため説明を省略する。
【0042】
つぎに、本実施例の特徴的な構成である測定光106の光路について図5を用いて説明する。
光カプラー131によって分割された測定光106は、シングルモードファイバー130−4を介して、レンズ135−4に導かれ、ビーム径3mmの平行光になるよう調整される。
測定光106は、ビームスプリッタ158−1を通過し、レンズ135−5を介して、ビームスプリッタ158−2に導かれる。
ここで、測定光106の一部が反射され、レンズ135−11を介して、ウォラストンプリズム166に入射される。
ここで、測定光106はS偏光(紙面に垂直)の成分からなる第一の測定光106−1と、P偏光(紙面に平行)の成分からなる第二の測定光106−2とに分岐され、測定光106−1と2とがなす角度は10°になっている。
第一の測定光106−1はレンズ135−10を介し、λ/2板168に入射して偏光が回転し、紙面に平行な方向の直線偏光となる。さらに、レンズ135−9に導かれる。
第二の測定光106−2はレンズ135−10と光路補償板169とを介し、レンズ135−9に導かれる。
【0043】
次に、第一の測定光106−1と第二の測定光106−2とは、空間光変調器159の同一の位置に入射し変調される。
ここで、空間光変調器159はP偏光(紙面に平行)の位相を変調する向きに配置されている。
ここで、空間光変調器159のウォラストンプリズム166に対する横倍率は2になっており、測定光106−1、2はそれぞれビーム径6mmで、空間光変調器159に入射する。
また、測定光106−1と106−2のなす角度は5°となっている。
次に、第一の測定光106−1は入射時とは異なる光路(図5における下側)を通り、レンズ135−9〜10と光路補償板169とを介し、再びウォラストンプリズム166に導かれる。
第二の測定光106−2はレンズ135−9を介し、λ/2板168に入射して偏光が回転し、紙面に垂直な方向の直線偏光となる。さらに、レンズ135−10を介し、再びウォラストンプリズム166に導かれる。
【0044】
さらに、第一の測定光106−1と第二の測定光106−2とはウォラストンプリズム166の同一の位置に入射し合波され、再び一つの測定光106となる。
次に、測定光106は、レンズ135−11〜12を介して、XYスキャナ119のミラーに入射される。
XYスキャナ119、レンズ135−13〜14等の測定光106で網膜127をスキャンする光学系に関しては、実施例2と同様であるため、説明を省略する。
測定光106は被検眼107に入射すると、網膜127からの反射や散乱により戻り光108となる。
戻り光108は、ウォラストンプリズム166において、S偏光(紙面に垂直)の成分からなる第一の戻り光108−1と、P偏光(紙面に平行)の成分からなる第二の戻り光108−2とに分岐される。
戻り光108−1〜2のそれぞれは、上記説明した測定光106−1〜2のそれぞれと、同様の光路を通って、空間光変調器159の同一の位置に入射し変調される。
【0045】
さらに、戻り光108−1〜2は、再びウォラストンプリズム166の同一の位置に入射し合波され、再び一つの戻り光108となる。
戻り光108の一部は、ビームスプリッタ158−2にて反射され、レンズ135−4〜5を介して、再び光カプラー131に導かれ、ラインセンサ139に到達する。
ここで、角膜126、XYスキャナ119、波面センサ155、空間光変調器159、ウォラストンプリズム166−1、166−2のビーム分離面とは光学的に共役になるよう、球面ミラー160−1〜9が配置されている。
互いに共役な位置には「P」の文字を付した。そのため、波面センサ155は被検眼107の収差を測定することが可能になっている。
また、空間光変調器159は被検眼107の収差を補正することが可能になっており、また分離した各偏光成分のビームを再度合波することが可能となっている。
さらに、得られた収差に基づいて、空間光変調器159をリアルタイムに制御することで、被検眼107で発生する収差を補正し、より高横分解能な断層画像の取得を可能にしている。
ここで、ウォラストンプリズム166の性質上、分離された後の第一の測定光106−1と第二の測定光106−2とのそれぞれのビーム径が異なるが、空間光変調器159上では同一のビーム径となるよう球面ミラー160−3〜6が構成されている。
【0046】
なお、測定系の構成及び断層画像の取得方法に関しては、実施例1と同様のため説明を省略する。
また、断層画像の取得の手順に関しては、実施例2と同様のため説明を省略する。
以上のように、1つのウォラストンプリズムを用いて、異なる偏光に対応する構成とすることで、小型な光路を構成することが可能となる。
【符号の説明】
【0047】
100:OCT装置
101:光源
102:測定光路
105:参照光
106:測定光
107:被検眼
108:戻り光
114、157:ミラー
115:分散補償用ガラス
117:電動ステージ
119:XYスキャナ
125:パソコン
126:角膜
127:網膜
130:光ファイバー
131:光カプラー
135:レンズ
139:ラインセンサ
140:フレームグラバー
141:透過型グレーティング
142:合波された光
153:偏光コントローラ
155:波面センサ
158:ビームスプリッタ
159:空間光変調器
160:球面ミラー
166:ウォラストンプリズム
168:λ/2板
169:光路補償板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源からの光を測定光とし、被検査物に照射された該測定光による戻り光の強度により前記被検査物の画像を撮像する光画像撮像装置であって、
前記測定光を互いに異なる偏光の成分に分岐すると共に、当該偏光分岐手段よりも被検査物側に位置する第二の偏光分岐手段によって異なる偏光の成分に分岐された戻り光を結合する第一の偏光分岐手段と、
前記第一の偏光分岐手段によって互いに異なる偏光の成分に分岐された測定光を結合すると共に、前記戻り光を互いに異なる偏光の成分に分岐する第二の偏光分岐手段と、
前記第一及び前記第二の偏光分岐手段で分岐された偏光の偏光調整を行う偏光調整手段と、
該測定光あるいは該戻り光の少なくともいずれかを変調する一つの空間光変調手段と、
前記被検査物で発生した収差を測定する収差測定手段と、
前記収差を補正するため、前記収差測定手段の測定結果に基づいて、前記空間光変調手段における変調量を制御する制御手段と、
を有することを特徴とする光画像撮像装置。
【請求項2】
前記光源から前記被検査物への光路が、
第一の偏光分岐手段によって、第一の光路と第二の光路とに分岐され、
第一の光路と前記第二の光路とに前記空間光変調手段を有し、
前記光路が、
第二の偏光分岐手段によって、第三の光路と第四の光路とに分岐され、
前記第一の光路と前記第三の光路とを前記空間光変調手段を介して光学的に結合するための第一の結合手段と、
前記第二の光路と前記第四の光路とを前記空間光変調手段を介して光学的に結合するための第二の結合手段とを有することを特徴とする請求項1に記載の光画像撮像装置。
【請求項3】
前記収差測定手段が、
前記測定光が前記被検査物に照射することにより発生した前記戻り光の収差を測定するように構成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の光画像撮像装置。
【請求項4】
前記被検査物の収差を測定するための収差測定光をさらに有し、
前記収差測定手段が、
前記収差測定光が前記被検査物に照射することにより発生した戻り光の収差を測定するように構成されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の光画像撮像装置。
【請求項5】
前記偏光調整手段は、前記第一の偏光分岐手段と前記空間光変調手段との間に配置された第一の偏光調整手段と、前記第二の偏光分岐手段と前記空間光変調手段との間に配置された第二の偏光調整手段と、によって構成され、
前記第一の偏光調整手段によって、前記第一の偏光分岐手段で分岐された測定光における一方の偏光の方向を他方に合わせ、
前記第二の偏光調整手段によって、前記第二の偏光分岐手段で分岐された戻り光における一方の偏光の方向を他方に合わせることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の光画像撮像装置。
【請求項6】
前記空間光変調手段と前記収差測定手段とが、光学的に共役に配置されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の光画像撮像装置。
【請求項7】
前記第一の偏光分岐手段と前記第二の偏光分岐手段と前記空間光変調手段とが、光学的に共役であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の光画像撮像装置。
【請求項8】
前記空間光変調手段の、
前記第一の偏光分岐手段と前記第二の偏光分岐手段との少なくともいずれかに対する横倍率が、1より大きいことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の光画像撮像装置。
【請求項9】
前記第一の偏光調整手段が第一のλ/2板で構成され、
前記第二の偏光調整手段が第二のλ/2板で構成されていることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の光画像撮像装置。
【請求項10】
前記第一の偏光分岐手段と前記空間光変調手段との間に、前記第一のλ/2板に対する光路あるいは分散を補償する第一の補償板が配置され、
前記第二の偏光分岐手段と前記空間光変調手段との間に、前記第二のλ/2板に対する光路あるいは分散を補償する第二の補償板が配置されていることを特徴とする請求項9に記載の光画像撮像装置。
【請求項11】
前記第一の偏光分岐手段と前記第二の偏光分岐手段とが、共通の分岐手段で構成されていることを特徴とする請求項1乃至10のいずれか1項に記載の光画像撮像装置。
【請求項12】
前記空間光変調手段が、液晶の配向制御を利用した空間光変調手段で構成されていることを特徴とする請求項1乃至11のいずれか1項に記載の光画像撮像装置。
【請求項13】
前記第一の偏光分岐手段と前記第二の偏光分岐手段との少なくともいずれかが、偏光ビームスプリッタからなることを特徴とする請求項1乃至12のいずれか1項に記載の光画像撮像装置。
【請求項14】
前記第一の偏光分岐手段と前記第二の偏光分岐手段との少なくともいずれかが、ウォラストンプリズムからなることを特徴とする請求項1乃至13のいずれか1項に記載の光画像撮像装置。
【請求項15】
前記第一の偏光分岐手段と前記第二の偏光分岐手段との少なくともいずれかが、ニコルプリズム、サバール板のいずれかからなることを特徴とする請求項1乃至14のいずれか1項に記載の光画像撮像装置。
【請求項16】
前記光画像撮像装置が、
前記光源からの光を前記測定光と参照光とに分割する手段と、
被検査物に照射された該測定光による戻り光と、参照光路を経由した該参照光とを干渉させる手段と、
干渉による干渉信号の強度を検出する手段と、を備え、
前記被検査物の断層画像を撮像する光断層画像撮像装置であることを特徴とする請求項1乃至15のいずれか1項に記載の光画像撮像装置。
【請求項17】
光源からの光を測定光とし、被検査物に照射された該測定光による戻り光の強度により、前記被検査物の画像を撮像する光画像の撮像方法であって、
前記測定光あるいは前記戻り光における互いに異なる偏光の成分に分岐された偏光を、偏光調整手段を介して入出射させることにより、
前記測定光あるいは前記戻り光の偏光状態に依らず、該測定光あるいは該戻り光の少なくともいずれかを変調する一つの空間光変調手段と、
前記被検査物で発生した前記戻り光の収差を測定する収差測定手段と、
を前記光源から前記被検査物までの光路に備え、
前記収差測定手段を用い、該被検査物の収差を測定する第1の工程と、
前記収差を補正するため、前記収差測定手段の測定結果に基づいて、前記空間光変調手段における変調量を算出し、
前記空間光変調手段における変調量を制御する制御手段を用いて、前記空間光変調手段における変調量を制御する第2の工程と、
を有することを特徴とする光画像の撮像方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−87829(P2011−87829A)
【公開日】平成23年5月6日(2011.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−244956(P2009−244956)
【出願日】平成21年10月23日(2009.10.23)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】