説明

光硬化型接着剤、光学用部品及び液晶表示装置

【課題】接着性や柔軟性に優れ、硬化物の透明性、耐熱性及び耐光性に優れ、上記透明性が優れているだけでなく、硬化直後及び使用中において透明性を維持し得る光硬化型接着剤を提供する。
【解決手段】不飽和二重結合含有基を有するポリシロキサン化合物であって、下記の一般式(1)で表わされる第1の構造単位と、下記の一般式(2)で表わされる第2の構造単位とを主成分とするポリシロキサン化合物と、光ラジカル重合開始剤とを含むことを特徴とする。
SiO2/2 ………式(1)
SiO3/2 ………式(2)
一般式(1)及び(2)において、R、R及びRは、少なくとも1つが不飽和二重結合含有基であり、不飽和二重結合含有基以外のR、R、Rは、炭素数1〜8の炭化水素基またはそのフッ化物基を表わし、これらは互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光の照射により硬化する硬化型接着剤に関し、より詳細には、接着性や取り扱い性に優れ、硬化物が透明性、耐熱性及び耐光性に優れており、様々な環境下において透明性を維持し得る光硬化型接着剤、該光硬化型接着剤を用いた接着部分を有する光学用部品及び液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、レンズ、ミラー、プリズムもしくは波長板などの光学用部品または液晶表示装置などの表示装置を製造する際に、部材同士を接合するのに様々な接着剤が用いられている。このような接着剤として、アクリル系接着剤や、エポキシ系接着剤などが多用されている。
【0003】
上記光学用部品に用いられる接着剤では、硬化物の透明性、耐光性及び耐熱性に優れていることが求められ、また硬化物歪みが少ないことなども求められている。ところが、アクリル系接着剤を用いた場合、硬化物の透明性は優れているものの、接着力が十分でないことがあった。また、エポキシ系接着剤は、接着力に優れているものの、硬化物の透明性が十分でなかった。また、使用している内に、硬化物が着色しやすいという問題もあった。
【0004】
近年、波長400nm程度の光を用いた光学機器が種々提案されている。このような用途に用いられる接着剤では、硬化物がこのような短波長の光に対して透明性に優れており、かつ耐光性においても優れていることが求められる。
【0005】
下記の特許文献1には、透明性が高い硬化物を与える接着剤として、脂環式エポキシ化合物と光カチオン重合開始剤とを含有する紫外線硬化型接着剤組成物が開示されている。しかしながら、特許文献1に記載の紫外線硬化型接着剤組成物は、エポキシ系接着剤であるため、硬化直後または硬化物を長期間使用している内に、硬化物が着色しがちであるという問題があった。
【特許文献1】特開2000−109780号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上述した従来技術の現状に鑑み、十分な接着力を有し、柔軟性に優れているだけでなく、硬化物が透明性、耐熱性及び耐光性において優れており、硬化直後及び使用中に硬化物の着色が生じ難い、光硬化型接着剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、不飽和二重結合含有基を有するポリシロキサン化合物であって、下記の一般式(1)で表わされる第1の構造単位と、下記の一般式(2)で表わされる第2の構造単位とを主成分とし、第1,第2の構造単位の合計を100モル%としたときに、第1の構造単位の割合が50〜98モル%であり、第2の構造単位の含有割合が2〜50モル%であるポリシロキサン化合物と、光ラジカル重合開始剤とを含むことを特徴とする、光硬化型接着剤が提供される。
【0008】
SiO2/2 ………式(1)
SiO3/2 ………式(2)
【0009】
一般式(1)及び(2)において、R、R及びRは、少なくとも1つが不飽和二重結合含有基であり、不飽和二重結合含有基以外のR、R、Rは、炭素数1〜8の炭化水素基またはそのフッ化物基を表わし、これらは互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。ポリシロキサン化合物において、複数種の第1の構造単位が含有されていてもよく、複数種の第2の構造単位が含有されていてもよい。
【0010】
本発明に係る光硬化型接着剤は、上記特定の構造のポリシロキサン化合物を主成分として含有するため、硬化物の透明性、耐熱性及び耐光性が高められ、硬化直後及び経時による硬化物の着色が生じ難い。
【0011】
以下、本発明の詳細を説明する。
【0012】
本願発明者らは、上記課題を達成すべく鋭意検討した結果、不飽和二重結合含有基を有し、かつ複数種の特定の構造単位を有するポリシロキサン化合物と、光ラジカル重合開始剤を用いれば、硬化物の初期透明性が高められ、さらに、高温下や光照射環境下でも透明性が維持され得る、すなわち硬化物の耐熱性及び耐光性に優れた接着剤を提供し得ることを見出し、本発明をなすに至った。
【0013】
(ポリシロキサン化合物)
本発明に係る光硬化型接着剤は、上記特定のポリシロキサン化合物を含有する。このポリシロキサン化合物は、上記一般式(1)で表わされる第1の構造単位と、上記一般式(2)で表わされる第2の構造単位とを主成分として含有する。なお、ポリシロキサン化合物は、第1の構造単位と第2の構造単位以外の他の構造単位を有していてもよい。本明細書において、「主成分として含有する」とは、本発明の効果を発現し得る範囲内で第1,第2の構造単位が含有されていることを意味し、第1,第2の構造単位以外の他の構造単位を含有していてもよいことを意味する。通常、上記ポリシロキサン化合物を構成している全構造単位の内、第1,第2の構造単位の合計がモル分率で50モル%以上であれば、第1,第2の構造単位がポリシロキサン化合物中の主成分として含有されていることになる。
【0014】
なお、後述するように、第1,第2の構造単位の合計の含有割合は、好ましくは、ポリシロキサン化合物の全構造単位100モル%中、好ましくは80モル%以上、より好ましくは90モル%以上とすることが望ましい。
【0015】
また、上記ポリシロキサン化合物においては、第1,第2の構造単位の合計を100モル%としたとき、第1の構造単位の含有割合の下限は50モル%、好ましくは60モル%、上限は98モル%、好ましくは95モル%である。第2の構造単位の含有割合の下限は2モル%、好ましくは5モル%、上限は50モル%、好ましくは40モル%である。
【0016】
第1の構造単位の含有割合が低過ぎると、得られる硬化物の柔軟性が十分でなくなり、例えば光学用部品に用いられた場合、硬化物の応力緩和性が十分でなく、光学用部品に歪みが発生するおそれがある。第1の構造単位の含有割合が高過ぎると、第2の構造単位の含有割合が低くなり、十分な接着力が得られない。
【0017】
第2の構造単位の含有割合が低過ぎると、十分な接着力が得られない。また、第2の構造単位の含有割合が高過ぎると、硬化物の柔軟性が十分でなくなる。
【0018】
上記一般式(1)及び(2)における置換基R、R、及びRの少なくとも1つが、不飽和二重結合含有基を有する。不飽和二重結合含有基とは、不飽和二重結合を少なくとも一部に含有する官能基を広く含むものとする。このような不飽和二重結合含有基は、例えば、アルキル基やアルキルエーテル基などの鎖状骨格と、環状エーテル基のような環状構造とを含む官能基であってもよい。
【0019】
上記不飽和二重結合含有基の例としては、ビニル基、アリル基、(メタ)アクリロキシ基などが挙げられる。中でも、接着性を高めることができ、かつ反応性に優れているため、(メタ)アクリロキシ基が好ましい。(メタ)アクリロキシ基とは、アクリロキシ基またはメタクリロキシ基を意味する。
【0020】
上記ポリシロキサン化合物中における上記不飽和二重結合含有基の割合は、1〜40モル%の範囲であることが好ましい。不飽和二重結合含有基の含有割合が低過ぎると、硬化性が低くなることがあり、高過ぎると被着体に対する密着性が悪くなるおそれがある。より好ましくは、3〜35モル%であり、さらに好ましくは5〜30モル%である。
【0021】
上記不飽和二重結合含有基の含有割合とは、上記ポリシロキサン化合物の平均組成式中に含まれる不飽和二重結合含有基の割合を意味する。
【0022】
上記不飽和二重結合含有基以外のR、R、Rは、炭素数1〜8の炭化水素基またはそのフッ化物基である。
【0023】
上記炭素数1〜8の炭化水素としては特に限定されず、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、イソプロピル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、t−ペンチル基、イソへキシル基、シクロヘキシル基、またはフェニル基等が挙げられる。
【0024】
不飽和二重結合含有基以外の置換基R〜Rは、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。さらに、上記ポリシロキサン化合物においては、複数種の第1の構造単位が含有されていてもよく、また複数種の第2の構造単位が含有されていてもよい。すなわち、ポリシロキサン化合物の第1,第2の構造単位の繰り返し構造において、複数種のRが存在していてもよく、複数種のRが存在していてもよく、あるいは複数種のRが存在していてもよい。
【0025】
上記ポリシロキサン化合物において、上記第1の構造単位(以下、二官能構造単位ともいう)は、下記一般式(1−2)で表される構造、すなわち、二官能構造単位中のケイ素原子に結合した酸素原子の1つがヒドロキシル基又はアルコキシ基を構成する構造を含む。
【0026】
(RSiXO1/2) ………式(1−2)
【0027】
上記一般式(1−2)中、Xは、OH又はORを表し、ORは、直鎖状又は分岐状の炭素数1〜4のアルコキシ基を表す。
【0028】
上記ポリシロキサン化合物において、上記第2の構造単位(以下、三官能構造単位ともいう)は、下記一般式(2−2)又は(2−3)で表される構造、すなわち、三官能構造単位中のケイ素原子に結合した酸素原子の2つがそれぞれヒドロキシル基若しくはアルコキシ基を構成する構造、又は、三官能構造単位中のケイ素原子に結合した酸素原子の1つがヒドロキシル基若しくはアルコキシ基を構成する構造を含む。
【0029】
(RSiX1/2) ………式(2−2)
(RSiXO2/2) ………式(2−3)
【0030】
上記一般式(2−2)及び(2−3)中、Xは、OH又はORを表し、ORは、直鎖状又は分岐状の炭素数1〜4のアルコキシ基を表す。
【0031】
上記一般式(1−2)、(2−2)及び(2−3)において、直鎖状若しくは分岐状の炭素数1〜4のアルコキシ基としては特に限定されず、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、n−ブトキシ基、イソプロポキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、t−ブトキシ基等が挙げられる。
【0032】
上記ポリシロキサン化合物について、テトラメチルシラン(以下、TMS)を基準に29Si−核磁気共鳴分析(以下、NMR)を行うと、置換基の種類によって若干の変動は見られるものの、上記一般式(1)及び(1−2)の構造に由来する各ピークは−10〜−30ppm付近に現れ、上記一般式(2)、(2−2)及び(2−3)の構造に由来する各ピークは−50〜−70ppm付近に現れる。
【0033】
従って、29Si−NMRを測定し、各シグナルのピーク面積を比較することにより、上記ポリシロキサン化合物中における第1,第2の構造単位の比率を測定することができる。もっとも、上記TMSを基準とした29Si−NMR測定において、第1の構造単位の見分けがつかない場合においては、29Si−NMR測定だけでなく、1H−NMRや19F−NMRなどで測定した結果を必要に応じて用いることにより、各構造単位の比率を見分けることができる。
【0034】
上記ポリシロキサン化合物としては、特に限定されないが、例えば、下記の一般式(A)、(B)または(C)で表わされるポリシロキサン化合物が挙げられる。
【0035】
(R1617SiO2/2(R18SiO3/2 ………式(A)
【0036】
一般式(A)中、i、jは、i/(i+j)=0.5〜0.98、j/(i+j)=0.02〜0.5を満たし、R16〜R18は少なくとも一つが不飽和二重結合含有基であり、R16〜R18の不飽和二重結合以外の官能基は、炭素数1〜8の炭化水素或いはフッ化物であり、これらは互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0037】
(R1920SiO2/2(R2122SiO2/2(R23SiO3/2 ………式(B)
【0038】
一般式(B)中、k、l、mは、(k+l)/(k+l+m)=0.5〜0.98、m/(k+l+m)=0.02〜0.5を満たし、R19〜R23は少なくとも一つが不飽和二重結合含有基であり、R19〜R23の不飽和二重結合以外の官能基は、炭素数1〜8の炭化水素或いはフッ化物であり、これらは互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。ただし、(R1920SiO2/2)と(R2122SiO2/2)とは構造が異なるものである。
【0039】
(R2425SiO2/2(R26SiO3/2(R27SiO3/2 ………式(C)
【0040】
一般式(C)中、n、o、pは、n/(n+o+p)=0.5〜0.98を満たし、(o+p)/(n+o+p)=0.02〜0.5を満たし、R24〜R27は少なくとも一つが不飽和二重結合含有基であり、R24〜R27の不飽和二重結合以外の官能基は、炭素数1〜8の炭化水素或いはフッ化物であり、これらは互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0041】
上記ポリシロキサン化合物においては、上記一般式(2)で表わされる第2の構造単位が、不飽和二重結合含有基を有することが好ましい。この場合、不飽和二重結合含有基は、第1の構造単位にも含有されていてもよい。少なくとも第2の構造単位に不飽和二重結合含有基が含有されていると、不飽和二重結合含有基が、ポリシロキサン骨格の外側に出やすくなる。そのため、本発明の光硬化型接着剤の硬化物において、架橋構造が確実に形成され、硬化物の耐熱性をより一層高めることができる。また、硬化物における「膜減り」を抑制することができる。
【0042】
膜減りとは、長期間にわたって高温状態にさらされた場合に硬化物の厚みが徐々に減少してしまう現象のことを意味する。
【0043】
上記不飽和二重結合含有基が第2の構造単位に結合されているポリシロキサン化合物としては、好ましくは、下記の一般式(6)、(7)または(8)で表わされるポリシロキサン化合物が挙げられる。
【0044】
(R1617SiO2/2(R18SiO3/2 ………式(6)
【0045】
一般式(6)中、i、jは、i/(i+j)=0.5〜0.98、j/(i+j)=0.02〜0.5を満たし、R18が不飽和二重結合含有基であり、R16、R17は、炭素数1〜8の炭化水素或いはフッ化物であり、これらは互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0046】
(R1920SiO2/2(R2122SiO2/2(R23SiO3/2 ………式(7)
【0047】
一般式(7)中、k、l、mは、(k+l)/(k+l+m)=0.5〜0.98、m/(k+l+m)=0.02〜0.5を満たし、R23が不飽和二重結合含有基であり、R19〜R22は、炭素数1〜8の炭化水素或いはフッ化物であり、これらは互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。ただし、(R1920SiO2/2)と(R2122SiO2/2)とは構造が異なるものである。
【0048】
(R2425SiO2/2(R26SiO3/2(R27SiO3/2 ………式(8)
【0049】
一般式(8)中、n、o、pは、n/(n+o+p)=0.5〜0.98を満たし、(o+p)/(n+o+p)=0.02〜0.5を満たし、R26が不飽和二重結合含有基であり、R24、R25、R27は、炭素数1〜8の炭化水素或いはフッ化物であり、これらは互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0050】
上記ポリシロキサン化合物は、上記一般式(1)で表される第1の構造単位と上記一般式(2)で表される第2の構造単位とを主成分とするものであれば、これらの構造単位以外の構造単位を有していてもよい。この場合、ポリシロキサン化合物に含まれる構造単位の総数を100モル%としたときに、上記一般式(1)で表される構造単位及び上記一般式(2)で表される構造単位の合計の含有量の好ましい下限は80モル%である。80モル%未満であると、硬化物の耐熱性、耐光性及び密着性を高める効果が損なわれる場合がある。より好ましい下限は90モル%である。
【0051】
上記第1,第2の構造単位以外の構造単位について特に限定されず、例えば下記の一般式(9)または化学式(10)で表わされる構造単位を挙げることができる。
【0052】
(R282930SiO1/2) ………式(9)
【0053】
一般式(9)中、R28、R29及びR30は、二重結合性官能基、または、炭素数1〜8の炭化水素或いはそのフッ化物を表し、これらは、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0054】
(SiO4/2) ………式(10)
【0055】
なお、上記一般式(10)で表される構造単位(以下、四官能構造単位ともいう)は、下記一般式(10−2)、(10−3)又は(10−4)で表される構造、すなわち、四官能構造単位中のケイ素原子に結合した酸素原子の3つ若しくは2つがヒドロキシル基若しくはアルコキシ基を構成する構造、又は、四官能構造単位中のケイ素原子に結合した酸素原子の1つがヒドロキシル基若しくはアルコキシ基を構成する構造を含む。
【0056】
(SiX1/2) ………式(10−2)
(SiX2/2) ………式(10−3)
(SiXO3/2) ………式(10−4)
【0057】
上記一般式(10−2)、(10−3)及び(10−4)中、Xは、OH又はORを表し、ORは、直鎖状又は分岐状の炭素数1〜4のアルコキシ基を表す。
【0058】
上記一般式(10−2)〜(10−4)において、直鎖状若しくは分岐状の炭素数1〜4のアルコキシ基としては特に限定されず、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、n−ブトキシ基、イソプロポキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、t−ブトキシ基等が挙げられる。
【0059】
本発明の光硬化型接着剤において、上記ポリシロキサン化合物の数平均分子量(Mn)の好ましい範囲は1000〜100000である。1000未満であると、硬化時に揮発成分が多くなり、接着体に悪影響を及ぼすおそれがある。100000を超えると、粘度の調節が困難になるおそれが高くなる。より好ましい下限は1500、より好ましい上限は50000である。
【0060】
なお、本明細書において、数平均分子量(Mn)とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いてポリスチレンを基準にして求められた値であり、Waters社製の測定装置(カラム:昭和電工社製 Shodex GPC LF−804(長さ300mm)×2本、測定温度:40℃、流速:1mL/min、溶媒:テトラヒドロフラン、標準物質:ポリスチレン)を用いて測定した値を意味する。
【0061】
上記ポリシロキサン化合物を合成する方法については、特に限定されず、例えば、(1)ハイドロシリレーション反応によりポリシロキサン骨格に置換基を導入する方法、(2)アルコキシシラン化合物と二重結合性官能基を有するアルコキシシラン化合物とを縮合反応させる方法などが挙げられる。中でも、上述した第1,第2の構造単位の比率を調整しやすいため、(2)の方法が好ましい。
【0062】
(2)の方法において用いられるアルコキシシラン化合物としては、例えば、下記の一般式(11)及び(12)のシロキサン単位を有するアルコキシシランまたはその部分加水分解物を用いることができる。
【0063】
3132Si(OR) ………式(11)
33Si(OR) ………式(12)
【0064】
上記一般式(11)、(12)中、R31〜R33は、炭素数1〜8の炭化水素基或いはそのフッ化物基を表し、ORは、直鎖状または分岐状の炭素数1〜4のアルコキシ基を表す。
【0065】
上記一般式(11)、(12)中、R31〜R33が炭素数1〜8の炭化水素である場合の炭化水素基としては、具体的には、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、イソプロピル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、t−ペンチル基、イソへキシル基、シクロヘキシル基、フェニル基等が挙げられる。
【0066】
また、上記一般式(11)、(12)中、ORで表される直鎖状若しくは分岐状の炭素数1〜4のアルコキシ基としては、具体的には、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、n−ブトキシ基、イソプロポキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、t−ブトキシ基等が挙げられる。
【0067】
上記一般式(11)で表される化合物としては、具体的には、例えば、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、イソプロピル(メチル)ジメトキシシラン、シクロヘキシル(メチル)ジメトキシシラン、メチル(フェニル)ジメトキシシラン等が挙げられる。
【0068】
上記一般式(12)で表される化合物としては、具体的には、例えば、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0069】
上記二重結合性官能基を有するアルコキシシラン化合物としては、例えば、下記一般式(13)、(14)で表される二重結合性官能基を有するアルコキシシランまたはその部分加水分解物が挙げられる。
【0070】
3435Si(OR) ………式(13)
36Si(OR) ………式(14)
【0071】
上記一般式(13)、(14)中、R34及び/またはR35、R36は二重結合性官能基であり、R34またはR35のいずれか一方のみが二重結合性官能基である場合、他方は、炭素数1〜8の炭化水素基あるいはそのフッ化物基を表し、ORは、直鎖状または分岐状の炭素数1〜4のアルコキシ基を表す。
【0072】
一般式(13)、(14)中、R34及び/またはR35、R36で表される二重結合性官能基は上述したものが好ましい。
【0073】
上記一般式(13)または(14)で表されるアルコキシシラン化合物としては、ビニル基を含有する基を有するアルコキシシラン化合物としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、ビニル(メチル)ジメトキシシラン、ビニル(メチル)ジエトキシシラン等が挙げられる。
【0074】
アリル基を含有する基を有するアルコキシシラン化合物としてはアリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、アリル(メチル)ジメトキシシラン、アリル(メチル)ジエトキシシラン等が挙げられる。
【0075】
(メタ)アクリロキシ基を有するアルコキシシラン化合物としては、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピル(メチル)ジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピル(メチル)ジメトキシシラン等が挙げられる。
【0076】
上記方法(2)において、上記アルコキシシラン化合物と不飽和二重結合含有基を有するアルコキシシラン化合物とを縮合反応させる具体的な方法としては、例えば、上記アルコキシシラン化合物と不飽和二重結合含有基を有するアルコキシシラン化合物とを水と、酸または塩基性触媒との存在下で反応させてポリシロキサン化合物を合成する方法が挙げられる。
【0077】
また、上記アルコキシシラン化合物を水と、酸または塩基性触媒との存在下で予め反応させておき、その後に不飽和二重結合含有基を有するアルコキシシラン化合物を反応させてもよい。
【0078】
上記ポリシロキサンに一般式(9)、(10)含有する場合には例えば、下記の一般式(X)及び(Y)のシロキサン単位を有するアルコキシシランまたはその部分加水分解物を用いることができる。
【0079】
252627Si(OR) ………式(X)
Si(OR) ………式(Y)
【0080】
上記一般式(X)、(Y)中、R25〜R27は、不飽和二重結合含有基または直鎖状若しくは分岐状の炭素数1〜8の炭化水素或いはそのフッ素化物を表し、ORは、直鎖状又は分岐状の炭素数1〜4のアルコキシ基を表す。
【0081】
上記一般式(X)、(Y)中、R25〜R30が不飽和二重結合含有基である場合、具体的には、例えば、ビニル基、アリル基、(メタ)アクリロキシ基などが挙げられる。
【0082】
上記一般式(X)、(Y)中、R25〜R30が直鎖状若しくは分岐状の炭素数1〜8の炭化水素である場合、具体的には、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、イソプロピル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、t−ペンチル基、イソへキシル基、シクロヘキシル基、フェニル基等が挙げられる。
【0083】
上記一般式(X)、(Y)中、ORで表される直鎖状若しくは分岐状の炭素数1〜4のアルコキシ基は、具体的には、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、n−ブトキシ基、イソプロポキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、t−ブトキシ基等が挙げられる。
【0084】
上記一般式(X)で表されるものとしては、具体的には、例えば、トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、トリフェニルメトキシシラン、トリフェニルエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルジメチルメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルジメチルメトキシシラン等が挙げられる。
【0085】
上記一般式(Y)で表されるものとしては、具体的には、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン等が挙げられる。
【0086】
上記水の配合量としては、上記不飽和二重結合性官能基を有するアルコキシシラン化合物中のケイ素原子に結合したアルコキシ基を加水分解できる量であれば特に限定されず、適宜調整すればよい。
【0087】
上記酸または塩基性触媒は、上記アルコキシシラン化合物と不飽和二重結合性官能基を有するアルコキシシラン化合物とを反応させるための触媒であり酸触媒としては、例えば、リン酸、ホウ酸、炭酸等の無機酸;ギ酸、酢酸、プロピオン酸、ラク酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、フマル酸、マレイン酸、オレイン酸等の有機酸;これらの酸無水物又は誘導体等が挙げられる。塩基触媒としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化セシウム等のアルカリ金属の水酸化物;ナトリウム−t−ブトキシド、カリウム−t−ブトキシド、セシウム−t−ブトキシド等のアルカリ金属のアルコキシド;ナトリウムシラノレート化合物、カリウムシラノレート化合物、セシウムシラノレート化合物等のアルカリ金属のシラノール化合物等が挙げられる。中でも水酸化カリウムが好ましい。
【0088】
(光ラジカル重合開始剤)
本発明に係る光硬化型接着剤は、光ラジカル重合開始剤を含有している。光ラジカル重合開始剤としては、特に限定されないが、α―ヒドロキシケトン化合物、アセトフェノン化合物、ベンゾフェノン化合物、ベンゾイン化合物、ベンゾインエーテル化合物、ベンジルケタール化合物、アシルホスフィンオキシド化合物またはチオキサントン化合物等の紫外線を照射するとラジカルを発生する化合物が挙げられる。これらの化合物のうち市販されているものとしては、例えば、イルガキュア127、イルガキュア184、イルガキュア369、イルガキュア379、イルガキュア651、イルガキュア907、イルガキュア819、イルガキュア2959、ダロキュァ1173(いずれもチバ・スペシャリティーケミカルズ社製)、カヤキュァBP、カヤキュァDETX−S(いずれも日本化薬社製)、ESACURE KIP 150(Lamberti社製)、S−121(シンコー技研社製)、セイクオールBEE(精工化学社製)、ソルバスロンBIPE、ソルバスロンBIBE(いずれも黒金化成社製)等が挙げられる。上記光ラジカル重合開始剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0089】
好ましくは、硬化性と硬化物の透明性とを両立し得るので、上記光ラジカル重合開始剤として、α−ヒドロキシケトン化合物またはベンジルメチルケタール化合物が好適に用いられる。このような好ましい光ラジカル重合開始剤の市販品としては、例えば、イルガキュア127、イルガキュア184、イルガキュア651、イルガキュア2959、ダロキュァ1173(いずれもチバ・スペシャリティーケミカルズ社製)等が挙げられる。
【0090】
上記光ラジカル重合開始剤の添加量が少な過ぎると、反応性が不足することがあり、多過ぎると、未反応の光ラジカル重合開始剤が多く残り、硬化物が着色したり、硬化時にガスが抽出されたりすることがある。好ましい配合量は、上記不飽和二重結合含有基を有するポリシロキサン化合物100重量部に対して0.1〜5重量部である。
【0091】
(ウレタン(メタ)アクリレート化合物及び/または(メタ)アクリル酸変性エポキシ化合物)
本発明に係る光硬化型接着剤では、好ましくは、さらに、ウレタン(メタ)アクリレート化合物及び(メタ)アクリル酸変性エポキシ化合物の少なくとも1種が含有される。それによって、被着体に対する親和性が高められ、接着力がより一層高められ、かつ硬化物の柔軟性が高められる。
【0092】
上記ウレタン(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、イソシアネート化合物と活性水素基を有する(メタ)アクリレート化合物とを錫やアミン等の触媒を用いて反応させて得られた化合物が挙げられる。
【0093】
上記イソシアネート化合物としては特に限定されないが、例えば、イソホロンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート(MDI)、水添MDI、ポリメリックMDI、1,5−ナフタレンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシネート、トリジンジイソシアネート、キシリレンジイオシアネート(XDI)、水添XDI、リジンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、トリス(イソシアネートフェニル)チオフォスフェート、テトラメチルキシレンジイソシアネート、1,6,10−ウンデカントリイソシアネート等が挙げられる。
【0094】
上記活性水素基を有する(メタ)アクリレート化合物としては特に限定されないが、例えば、(メタ)アクリル酸、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0095】
市販品としては、例えば、M−1100、M−1200、M−1210、M−1600(いずれも東亞合成社製)、EB230、EB270、EB4858、EB8402、EB8804、EB8803、EB8807、EB9260、EB1290、EB5129、EB4842、EB210、EB4827、EB6700、EB220、EB2220(いずれもダイセル・サイテック社製)、アートレジンUN−9000H、アートレジンUN−9000A、アートレジンUN−7100、アートレジンUN−1255、アートレジンUN−330、アートレジンUN−3320HB、アートレジンUN−1200TPK、アートレジンSH−500B(いずれも根上工業社製)、U−122P、U−108A、U−340P、U−4HA、U−6HA、U−324A、U−15HA、UA−5201P、UA−W2A、U−1084A、U−6LPA、U−2HA、U−2PHA、UA−4100、UA−7100、UA−4200、UA−4400、UA−340P、U−3HA、UA−7200、U−2061BA、U−10H、U−122A、U−340A、U−108、U−6H、UA−4000(いずれも新中村化学工業社製)等が挙げられる。
【0096】
上記エポキシ(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、エポキシ化合物と(メタ)アクリル酸をアミンやリン触媒等を用いて反応させた反応物が挙げられる。
【0097】
上記エポキシ化合物としては特に限定されないが、例えば、ノボラック型としては、フェノールノボラック型、クレゾールノボラック型、ビフェニルノボラック型、トリスフェノールノボラック型、ジシクロペンタジエンノボラック型等、ビスフェノール型としてはビスフェノールA型、ビスフェノールF型、2,2’−ジアリルビスフェノールA型、水添ビスフェノール型、ポリオキシプロピレンビスフェノールA型環式脂肪族エポキシ等が挙げられる。
【0098】
市販品としては、例えば、EB3700、EB3600、EB3701、EB3703、EB3200、EB3201、EB3600、EB3702、EB3412、EB860、EBRDX63182、EB6040、EB3800(いずれもダイセル・サイテック社製)、EA−1020、EA−1010、EA−5520、EA−5323、EA−CHD、EMA−1020(いずれも新中村化学工業社製)、エポキシエステルM−600A、エポキシエステル40EM、エポキシエステル70PA、エポキシエステル200PA、エポキシエステル80MFA、エポキシエステル3002M、エポキシエステル3002A、エポキシエステル1600A、エポキシエステル3000M、エポキシエステル3000A、エポキシエステル200EA、エポキシエステル400EA(いずれも共栄社化学社製)、デナコールアクリレートDA−141、デナコールアクリレートDA−314、デナコールアクリレートDA−911(いずれもナガセケムテックス社製)等が挙げられる。
【0099】
上記ウレタン(メタ)アクリレート化合物及び/または(メタ)アクリル酸変性エポキシ化合物は芳香族化合物ではないことが好ましい。芳香族化合物の場合には、耐光性が悪化することがある。
【0100】
上記ウレタン(メタ)アクリレート化合物及びエポキシ(メタ)アクリレート化合物の少なくとも1種の化合物の配合量としては特に限定はされないが、上述した不飽和二重結合含有基を有するポリシロキサン化合物100重量部に対し、3〜100重量部が好ましい。少な過ぎると添加による効果が得られない場合があり、多過ぎると、耐熱性や耐光性が悪化することがあるとなる場合がある。より好ましくは5〜80重量部であり、さらに好ましくは10〜60重量部である。
【0101】
(任意に添加される他の成分)
本発明に係る光硬化型接着剤では、上記ポリシロキサン化合物及び光ラジカル重合開始剤、並びに好ましくは添加されるウレタン(メタ)アクリレート化合物及び/またはエポキシ(メタ)アクリレート化合物以外に、様々な成分を添加してもよい。
【0102】
本発明に係る光硬化型接着剤では、接着性を高めるために、カップリング剤がさらに含有されていてもよい。上記カップリング剤としては特に限定されず、例えば、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン等のシランカップリング剤等が挙げられる。これらカップリング剤は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0103】
上記カップリング剤の配合割合としては、上記ポリシロキサン100重量部に対して、好ましい下限が0.1重量部、好ましい上限が5重量部である。0.1重量部未満であると、カップリング剤の配合効果が充分発揮されないことがあり、5重量部を超えると、余剰のカップリング剤が揮発し、本発明の光半導体用熱硬化性組成物を硬化させたときに、膜減り等を起こすことがある。
【0104】
また、好ましくは、応力分散性を高めて接着性を改善したり、線膨張性を改善したり、線膨張率を改善したりするために、様々な充填剤が含有されてもよい。このような充填剤としては、特に限定されず、例えば、シリカ、珪藻土、アルミナ、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化マグネシウム、酸化錫、酸化チタン、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、石膏、珪酸カルシウム、タルク、ガラスビーズ、セリサイト活性白土、ベントナイト、窒化アルミニウム、窒化珪素等の無機フィラー等が挙げられる。
【0105】
また、本発明の光硬化型接着剤は、耐熱性や耐光性の向上ために光安定剤や酸化防止剤等の添加剤を適宜含有してもよい。
【0106】
(製造方法)
本発明の光硬化型接着剤を製造する方法としては特に限定されず、上記ポリシロキサン化合物及び光ラジカル重合開始剤等を、例えば、ホモディスパー、ホモミキサー、万能ミキサー、プラネタリウムミキサー、ニーダー、三本ロール、ビーズミル等の混合機を用いて、常温または加温下で、上述したシリコーン樹脂、熱硬化剤、微粒子及び硬化促進剤、添加剤等の各所定量を混合する方法等が挙げられる。
【0107】
(用途)
本発明の光硬化型接着剤の用途としては特に限定はされないが、接着性や柔軟性に優れ、初期透過率が高くかつ耐熱、耐光透明性も高いため、光学関連部品や表示装置関連部品に特に好適に用いることができる。具体的には例えば、波長板もしくはピックアップレンズ等の光ピックアップ用光学用部品の貼り合わせに用いる接着剤、液晶プロジェクターやDMDプロジェクター用のプリズムの貼り合わせに用いる接着剤、位相差フィルム等の各種光学フィルムの貼り合せに用いる接着剤、液晶パネル等の各種フラットパネルディスプレイの貼り合わせに用いる接着剤、DVDディスク等のメディアのコーティング剤や貼り合わせに用いる接着剤、タッチパネル用の接着剤、光ファイバーや光回路の接続に用いる接着剤等に好ましく用いられる。すなわち、光学用部品や液晶表示装置などの接着部分に本発明に係る光硬化型接着剤を好適に用いることができ、本発明によれば、本発明に係る光硬化型接着剤からなる接着部分を有する上記のような光学用部品や液晶表示装置が提供される。この場合、接着部分が接着性や柔軟性に優れ、透明性、耐熱性、及び耐光性に優れているため、高品質の光学用部品や液晶表示装置を提供することができる。
【発明の効果】
【0108】
本発明に係る光硬化型接着剤では、上記特定の構造のポリシロキサン化合物及び光ラジカル重合開始剤を含有しているため、接着性及び取り扱い性に優れており、さらに硬化物が透明性、耐熱性及び耐光性に優れており、さらに上記透明性に優れているだけでなく、経時による透明性の低下も生じ難い。
【0109】
よって、光学用部品や液晶表示装置などの透明性が要求される接着部分に本発明の光硬化型接着剤を好適に用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0110】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0111】
(メタクリロキシ基を有するポリシロキサンの合成)
(合成例1)
温度計と滴下装置とが取り付けられた2000mLのセパラブルフラスコに、ジメチルジメトキシシラン540g及び3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン60gを入れ、50℃で攪拌した。その中に水酸化カリウム水溶液〔水酸化カリウム(1.3g)/水(175g)〕をゆっくりと滴下し、滴下し終わってから50℃で6時間攪拌した。その中に、酢酸1.4gを入れ、減圧下で揮発成分を除去し、酢酸カリウムをろ過してポリマーを得た。得られたポリマーをヘキサン/水(容量比で1:1)を用いて洗浄し、減圧下で揮発成分を除去し、ポリマーAを得た。ポリマーAの分子量の後述の方法で求めたところ、Mn=2400、Mw=5000であった。次に、29Si−NMRにより構造を確認したところ、
(MeSiO2/20.95(MeAcSiO3/20.05
であった。なお、MeAcはメタクリロキシプロピル基であり、メタクリロキシプロピル基含有量は8モル%であった。
【0112】
なお、分子量は、ポリマーA(10mg)にテトラヒドロフラン(1mL)を入れ溶解するまで攪拌し、Waters社製の測定装置〔カラム:昭和電工社製 Shodex GPC LF−804(長さ300mm)×2本、測定温度:40℃、流速:1mL/min、溶媒:テトラヒドロフラン、標準物質:ポリスチレン〕を用いてGPC測定により測定した。
【0113】
(合成例2)
温度計及び滴下装置付の2000mLのセパラブルフラスコに、ジメチルジメトキシシラン485g、及び3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン115gを入れ、50℃で攪拌した。その中に水酸化カリウム水溶液〔水酸化カリウム(1.3g)/水(170g)〕をゆっくりと滴下し、滴下し終わってから50℃で6時間攪拌した。その中に、酢酸1.4gを入れ、減圧下で揮発成分を除去し、酢酸カリウムをろ過してポリマーを得た。得られたポリマーをヘキサン/水(容量比で1:1)を用いて洗浄し、減圧下で揮発成分を除去し、ポリマーBを得た。ポリマーBの分子量はMn=2800、Mw=5600であった。また、29Si−NMRにより構造を確認したところ、
(MeSiO2/20.90(MeAcSiO3/20.10
であった。なお、MeAcはメタクリロキシプロピル基であり、メタクリロキシプロピル基含有量は15モル%であった。
【0114】
〔実施例及び比較例で使用した材料の詳細〕
(1)IRGACURE184:チバ・スペシャリティーケミカルズ社製商品、α−ヒドロキシケトン系光ラジカル重合開始剤
(2)EB230:ダイセル・サイテック社製商品、脂肪族ウレタンアクリレート化合物
(3)S510:チッソ社製商品、シランカップリング剤
(4)セロキサイド2021:ダイセル化学工業社製商品、脂環エポキシ樹脂
(5)YX−8084:ジャパンエポキシレジン社製商品、水添ビスフェノールAエポキシ樹脂
(6)RP2074:ヨードニウム塩系光カチオン重合開始剤、ローディア社製商品
【0115】
(実施例1)
ポリマーAを100gと、IRGACURE184(光ラジカル重合開始剤、チバ・スペシャリティーケミカルズ製)1gと、EB230(脂肪族ウレタンアクリレート化合物、ダイセル・サイテック社製)10gと、S510(シランカップリング剤、チッソ社製)1gとを混合し、脱泡し、光硬化型接着剤を得た。
【0116】
(実施例2)
ポリマーBを100gと、IRGACURE184(光ラジカル重合開始剤、チバ・スペシャリティーケミカルズ製)1gと、EB230(脂肪族ウレタンアクリレート化合物、ダイセル・サイテック社製)10gと、S510(シランカップリング剤、チッソ社製)1gとを混合し、脱泡し、光硬化型接着剤を得た。
【0117】
(比較例1)
セロキサイド2021(脂環エポキシ樹脂、ダイセル化学工業社製)20gと、YX−8084(水添ビスフェノールAエポキシ樹脂、ジャパンエポキシレジン社製)80gと、RP2074(光カチオン重合開始剤、ローディア社製)1gと、S510(シランカップリング剤、チッソ社製)1gとを混合し、脱泡し、光硬化型接着剤を得た。
【0118】
(評価)
実施例1〜2、及び比較例1で作製した光硬化型接着剤について以下の評価を行った。結果を下記表1に示した。
【0119】
(1)初期光線透過率
ガラス基板に実施例及び比較例で調製した光硬化型接着剤を厚みが100μmになるように塗布し、別のガラス基板を貼り合わせ、2枚のガラス基板間に接着剤層が形成されたサンプルを得た。高圧水銀ランプに340nm以下をカットするフィルターを装着し、100mW/cmで30秒間、上記サンプルに光を照射し、試験片を得た(比較例1では、さらに試験片を80℃で30分間加熱した)。試験片400nmの光線透過率を日立製作所社製U−4000を用いて測定した。なお、各試験片のガラス基板自体の400nmの光線透過率、すなわちベースラインを、上記のようにして測定された光線透過率から差し引き、試験片の光線透過率とした。
【0120】
(2)耐光性試験後の光線透過率
ガラス基板に実施例及び比較例で調製した光硬化型接着剤を厚みが100μmになるように塗布し、別のガラス基板を貼り合わせ、サンプルを得た。高圧水銀ランプに340nm以下をカットするフィルターを装着し、100mW/cmで30秒間、上記サンプルに光を照射し、試験片を得た(比較例1ではさらに80℃で30分間加熱した)。高圧水銀ランプに340nm以下をカットするフィルターを装着し、上記30秒間を光を照射した後の試験片または80℃で30分間加熱した後の比較例1の試験片に対し、さらに、100mW/cmで24時間、光を照射した。次に、24時間照射後に、各試験片の400nmの光線透過率を日立製作所社製U−4000を用いて測定を行った。なお、各試験片のガラス基板自体の400nmの光線透過率、すなわちベースラインを、上記のようにして測定された光線透過率から差し引き、試験片の光線透過率とした。
【0121】
なお、表1中、初期からの光線透過率の低下率が3%未満の場合:◎、3%以上、5%未満の場合:○、5%以上、10%未満の場合:△、10%以上の場合:×とした。
【0122】
(3)耐熱性試験後の光線透過率
ガラス基板に実施例及び比較例で調製した光硬化型接着剤を厚みが100μmになるように塗布し、別のガラス基板を貼り合わせ、サンプルを得た。高圧水銀ランプに340nm以下をカットするフィルターを装着し、100mW/cmで30秒間サンプルに光を照射し、試験片を得た(比較例1ではさらに80℃で30分間加熱した)。次に、試験片を85℃のオーブンに500時間放置し、400nmの光線透過率を日立製作所社製U−4000を用いて測定を行った。なお、各試験片のガラス基板自体の400nmの光線透過率、すなわちベースラインを、上記のようにして測定された光線透過率から差し引き、試験片の光線透過率とした。
【0123】
なお、表1中、初期からの光線透過率の低下率が3%未満の場合:◎、3%以上、5%未満の場合:○、5%以上、10%未満の場合:△、10%以上の場合:×とした。
【0124】
(4)接着性試験
ガラス基板、アクリル基板またはポリカーボネート基板に実施例及び比較例で調製した光硬化型接着剤を厚みが100μmになるように塗布し、さらに、剥離剤付きポリエチレンテレフタレートフィルムを貼り合わせサンプルを得た。高圧水銀ランプに340nm以下をカットするフィルターを装着し、100mW/cmで30秒間、サンプルに光を照射し、試験片を得た(比較例1ではさらに80℃で30分間加熱した)。剥離剤付きポリエチレンテレフタレートフィルムを剥がし、JIS K−5400に準拠し、すきま間隔1mm及び100個のます目で碁盤目テープ法を用いて密着性試験を行った。
【0125】
なお、表1中、剥離個数0の場合:○、剥離個数1〜50の場合:△、剥離個数51〜100の場合:×とした。
【0126】
(5)柔軟性試験
剥離剤付きポリエチレンテレフタレートフィルムに実施例及び比較例で調製した光硬化型接着剤を厚みが100μmになるように塗布し、剥離剤付きポリエチレンテレフタレートフィルムを貼り合わせ、サンプルを得た。高圧水銀ランプに340nm以下をカットするフィルターを装着し、100mW/cmで30秒間、サンプルに光を照射し、硬化物からなる試験片を得た。ポリエチレンテレフタレートフィルムを剥がして試験片を手で曲げ、容易に曲がるものを○、曲がらないものまたは割れるものを×とした。
【0127】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
不飽和二重結合含有基を有するポリシロキサン化合物であって、下記の一般式(1)で表わされる第1の構造単位と、下記の一般式(2)で表わされる第2の構造単位とを主成分とし、第1,第2の構造単位の合計を100モル%としたときに、第1の構造単位の割合が50〜98モル%であり、第2の構造単位の含有割合が2〜50モル%であるポリシロキサン化合物と、光ラジカル重合開始剤とを含むことを特徴とする、光硬化型接着剤。
SiO2/2 ………式(1)
SiO3/2 ………式(2)
一般式(1)及び(2)において、R、R及びRは、少なくとも1つが不飽和二重結合含有基であり、不飽和二重結合含有基以外のR、R、Rは、炭素数1〜8の炭化水素基またはそのフッ化物基を表わし、これらは互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。ポリシロキサン化合物において、複数種の第1の構造単位が含有されていてもよく、複数種の第2の構造単位が含有されていてもよい。
【請求項2】
前記ポリシロキサン化合物において、前記不飽和二重結合含有基とポリシロキサン骨格とがケイ素−炭素結合を介して結合している、請求項1に記載の光硬化型接着剤。
【請求項3】
前記ポリシロキサン化合物が、一般式(2)で表わされる第2の構造単位に不飽和二重結合含有基を有する、請求項1または2に記載の光硬化型接着剤。
【請求項4】
前記不飽和二重結合含有基が、(メタ)アクリロキシ基である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の光硬化型接着剤。
【請求項5】
前記光ラジカル重合開始剤は、α−ヒドロキシアルキルフェノン化合物及びベンジルメチルケタール化合物の内の少なくとも一方である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の光硬化型接着剤。
【請求項6】
前記ポリシロキサン化合物100重量部に対し、さらにウレタン(メタ)アクリレート化合物及び/またはエポキシ(メタ)アクリレート化合物3〜100重量部を含有する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の光硬化型接着剤。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の光硬化型接着剤からなる接着部分を有する光学用部品。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の光硬化型接着剤からなる接着部分を有する液晶表示装置。

【公開番号】特開2009−197165(P2009−197165A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−41881(P2008−41881)
【出願日】平成20年2月22日(2008.2.22)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】