説明

光硬化型粘接着剤製造用の光硬化型組成物及び光硬化型粘接着シート

【課題】無溶剤で塗工性に優れ、紫外線を照射した後の半硬化の制御が容易で、本硬化後の接着力に優れ、被着体を貼り合せて本硬化する際に空気が存在する部分でも硬化性に優れた光硬化型粘接着剤製造のための光硬化型組成物、及びこれを使用した光硬化型粘接着シートの提供。
【解決手段】不飽和二重結合に置換基を有することもあるマレイミド基及び当該マレイミド基以外のエチレン性不飽和基を有する化合物(A)、(A)成分以外のエチレン性不飽和基を有する化合物(B)及び光重合開始剤(C)を含む光硬化型粘接着剤製造用の光硬化型組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光硬化型粘接着剤製造用の光硬化型組成物に関し、これを使用した光硬化型粘接着シートに関するものであり、これら技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
2つの材料を接着するための剤として、粘着剤は、液状の接着剤にはない特長を有している。
その特長の一つは流動しないことである。例えば、シート状の材料を別の固体に接着させる場合、予めシート状材料の接着させたい面に粘着剤を塗布しておけば、その状態で保管、運送及び加工することが可能となる。例えば、自動車の窓ガラスに貼り付ける紫外線カットフィルムは、その一方の面に予め粘着剤が塗布された形態で市販されている。このため、保管や運送が容易であり、又様々な形状に加工して、貼り付けることが可能である。
又、流動しないため、2つの材料を貼りあわせた際、隅の部分から液がはみ出さないという特長も有する。例えば、液晶ディスプレイやプロジェクションテレビ等の用途で光学フィルムを板状の材料に接着する場合、液状の接着剤を使用すると、隅の部分から接着剤がはみ出したり、逆に接着剤が足りないために隅の部分が接着されなかったりするといった問題が発生する。はみ出した場合、両方の材料がフィルム状であれば、隅の欠陥部分を切断して捨てることが比較的容易であるが、板状の場合は容易でなく、切断部分近傍での剥離や割れ等の欠陥を防ぐことが困難になる。しかし、このような光学フィルムに予め粘着剤を塗布しておき、離型フィルムを貼り付けて保護したものを使用すれば、フィルムの隅まで均一に貼り付けることができる。しかも、任意の時に、任意のサイズに切り出すことも可能となる。
さらに、流動しないため、凹凸を有する形状の凸部分のみを貼り付けることができるという特長を有する。粘着状態であれば、凸面の先端部が粘着剤の表面に接した状態、或いは粘着剤に少し食い込んだ状態で固定化することが可能であるが、液状の場合、凹面にも液が染み込むため、凹凸形状を残したまま貼り付ける場合には不向きである。
【0003】
しかしながら、粘着剤は、貼り付け可能であるという本質的な性能を有するがために、必然的に軟らかい材料である。そのため、硬い接着剤に比べると、せん断方向の力に対して強度に劣ることが多い。
又、光学フィルムの接着等で、微細な凹凸形状の凸部分のみを別の被着体と貼り合せる場合、粘着剤では、荷重又は熱による力によって凹凸形状が粘着剤に埋没してしまい、希望する光学性能を発現することができなくなってしまう。そこで、貼り付け後に光照射すると硬くなる、所謂、光硬化型粘接着剤が必要とされる。例えば、液晶ディスプレイのレンズシートの凸面を、レンズ形状を保持したまま、導光板や拡散板等の板に接着する場合の好ましい方法として、板に粘接着剤を塗布した後、レンズの凸面を貼り合せ、最後に光照射して硬化させ、接着する方法が挙げられる。
このような背景から、近年、初期は粘着剤であるが、熱や光により硬くなって接着剤となる、いわゆる粘接着剤が注目されている。中でも、光照射で硬化する光硬化型粘接着剤は、熱硬化型に比べて、低エネルギー及び高生産性等の利点がある。
【0004】
粘接着剤用光硬化型組成物としては、具体的には、水酸基含有(メタ)アクリレート、エポキシ樹脂及び光カチオン重合開始剤からなる光カチオン硬化型粘接着剤組成物(特許文献1)や、ポリアクリレート等の粘着性重合体、エポキシ樹脂等のカチオン硬化性の化合物及び光カチオン重合開始剤からなる光カチオン硬化型粘接着剤組成物(特許文献2)が知られている(特許文献1及び特許文献2)。これら組成物は、光を照射するとカチオン重合が開始して硬化し、接着剤となるものである。
しかし、光カチオン硬化型粘接着剤組成物では、光カチオン重合そのものの欠点が避けられなかった。その欠点としては、高湿度環境下や吸水性又は親水性基材上では硬化性が悪くなること、光カチオン重合開始剤由来の酸、イオンに起因する腐食の問題等が挙げられる。
【0005】
光ラジカル硬化型粘接着剤用の組成物としては、具体的には、アクリル系樹脂、ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマー、光重合開始剤及び架橋剤からなる組成物が知られている(特許文献3)。これは、光照射前は粘着剤であり、光照射により硬化して接着剤となる組成物である。すなわち、光照射前は粘着剤であるため、基材に室温で塗工するためには溶剤が必要である。しかし、溶剤を使用することは、環境問題や作業環境の点から好ましくないため、無溶剤の光硬化型粘接着剤が求められている。
【0006】
室温で塗工可能な粘度の無溶剤の光硬化型粘接着剤を製造する方法としては、光硬化型組成物を基材に塗布した後、光を適量照射して半硬化状態とすることで、粘着状態を得る方法がある。この状態は半硬化状態であるため、被着体と貼り合せて再度光照射すると、残存モノマーが重合して硬化し(本硬化し)、接着剤となる。
本発明者らは、このようないわゆる粘接着剤としての機能を有し、かつ型転写工程にも使用可能な無溶剤(メタ)アクリル系光硬化型組成物を発明した(特許文献4)。この組成物は、半硬化の制御が容易で、本硬化後のせん断接着力に優れるという特長があり、型転写を必要としない光硬化型粘接着剤としても使用することができる。しかしながら、凹凸形状の凸部を接着する場合、半硬化工程での反応率が低いと、本硬化時に空気が存在する凹部の硬化性が悪くなるという問題があった。
【0007】
【特許文献1】特許3043292号公報(特許請求の範囲)
【特許文献2】特開平10−120995号公報(特許請求の範囲)
【特許文献3】特開2003−138234号公報(特許請求の範囲)
【特許文献4】特開2007−56162号公報(特許請求の範囲)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明者らは、無溶剤で塗工性に優れ、紫外線を照射した後の半硬化の制御が容易で、本硬化後の接着力に優れ、被着体を貼り合せて本硬化する際に空気が存在する部分でも硬化性に優れた光硬化型粘接着剤製造のための光硬化型組成物、及びこれを使用した光硬化型粘接着シートを見出すため、鋭意検討を行ったのである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、前記課題を解決するためには、マレイミド基及びエチレン性不飽和基を含有する化合物、エチレン性不飽和基を含有する化合物及び光重合開始剤を含む組成物が有効であることを見出し、本発明を完成した。
以下、本発明を詳細に説明する。
尚、本明細書においては、アクリロイル基又はメタクリロイル基を(メタ)アクリロイル基と表し、アクリレート又はメタクリレートを(メタ)アクリレートと表す。
【発明の効果】
【0010】
本発明の組成物によれば、被着体の接着や光硬化型粘接着シートの製造において、塗工性に優れる。又、この場合において、溶剤や熱を使用することなく、適量の光照射によって被着体の接着を行うことができ、又光硬化型粘接着シートを製造することができる。このとき、本発明の組成物は半硬化の制御が容易であるため、製造時の安定性に優れる。さらに、被着体を貼り合せて再度光照射し本硬化したものの接着力に優れるため、様々な接着用途に使用可能である。しかも、空気が存在する部分の硬化性にも優れるため、凹凸形状を有する被着体の凸部分のみを接着させる用途に対して、特に好適に使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明は、不飽和二重結合に置換基を有することもあるマレイミド基及び当該マレイミド基以外のエチレン性不飽和基を有する化合物(A)〔以下、(A)成分という〕、(A)成分以外のエチレン性不飽和基を有する化合物(B)〔以下、(B)成分という〕及び光重合開始剤(C)〔以下、(C)成分という〕を含む光硬化型粘接着剤製造用の光硬化型組成物に関する。
以下、(A)成分〜(C)成分について説明する。
【0012】
1.(A)成分
(A)成分は、不飽和二重結合に置換基を有することもあるマレイミド基(以下、単にマレイミド基という)及びマレイミド基以外のエチレン性不飽和基を有する化合物である。
【0013】
前記(A)成分におけるマレイミド基としては、下記一般式(1)で表される基が好ましい。
【0014】
【化1】

【0015】
〔但し、一般式(1)において、R1及びR2は、それぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、アルキル基若しくはアリール基を表すか、又はR1及びR2は一つとなって5員環若しくは6員環を形成する炭化水素基を表す。〕
【0016】
アルキル基としては、炭素数4以下のアルキル基が好ましい。
アルケニル基としては、炭素数4以下のアルケニル基が好ましい。
アリール基としてはフェニル基等を挙げることができる。
一つとなって5員環若しくは6員環を形成する炭化水素基としては、基−CH2CH2CH2−、基−CH2CH2CH2CH2−、基−CH=CH−CH2CH2−等が挙げられる。
【0017】
一般式(1)におけるマレイミド基の好ましい具体例を、以下の式(3)〜式(8)に示す。
【0018】
【化2】


【0019】
【化3】


【0020】
【化4】

【0021】
アルキル基としては、炭素数4以下のアルキル基が好ましい。一つとなって5員環若しくは6員環を形成する飽和の炭化水素基としては、基−CH2CH2CH2−、基−CH2CH2CH2CH2−が挙げられ、不飽和の炭化水素基としては、基−CH=CHCH2−、基−CH2CH=CHCH2−等が挙げられる。尚、不飽和の炭化水素基において、マレイミド基が2量化反応するためには、最終的に得られる5員環又は6員環が芳香族性を有しないものを選択する必要がある。当該炭化水素基としては、飽和の炭化水素基が好ましい。
【0022】
1及びR2としては、一方が水素原子で他方が炭素数4以下のアルキル基、R1及びR2の両方が炭素数4以下のアルキル基、並びにそれぞれが一つとなって炭素環を形成する飽和炭化水素基が、半硬化の制御が容易である点で好ましい。
【0023】
さらに、これらの中でも、それぞれが一つとなって炭素環を形成する飽和炭化水素基が
半硬化の制御が特に容易であり、接着力にも優れる点でより好ましい。
【0024】
マレイミド基以外のエチレン性不飽和基としては、(メタ)アクリロイル基、ビニル基及びビニルエーテル基等が挙げられ、(メタ)アクリロイル基が好ましい。
【0025】
本発明の(A)成分としては、前記したマレイミド基とマレイミド基以外のエチレン性不飽和基を有する化合物であれば種々の化合物を使用することができるが、下記一般式(2)で表される化合物が、製造が容易で、硬化性に優れるため好ましい。
【0026】
【化5】

【0027】
〔但し、式(2)において、R1及びR2は前記と同様の意味を示す。又、R3はアルキレン基を表し、R4は水素原子又はメチル基を表し、nは1から6の整数を表す。〕
【0028】
3のアルキレン基としては、直鎖状であっても又は分岐状を有していても良い。より好ましくは炭素数1〜6のアルキレン基である。
【0029】
(A)成分の好ましい配合割合は、組成物中に10〜70重量%であり、より好ましくは20〜60重量%、特に好ましくは30〜50重量%である。配合割合が上記範囲であると、半硬化の制御が容易であること、本硬化後の接着力に優れること、及び被着体を貼り合せて再度光照射する際の空気存在部分の硬化性に優れることから好ましい。
【0030】
2.(B)成分
(B)成分は、(A)成分以外のエチレン性不飽和基を有する化合物である。
(B)成分としては、エチレン性不飽和基を有する化合物であれば種々の化合物を使用することができ、(メタ)アクリロイル基を有する化合物、ビニル系化合物及び(A)成分以外の不飽和二重結合に置換基を有することもあるマレイミド基を含有する化合物〔以下、その他マレイミド化合物という〕等が挙げられる。
【0031】
(メタ)アクリロイル基を有する化合としては、(メタ)アクリレートが好ましい。
(メタ)アクリレートとしては、1個の(メタ)アクリロイル基を有する化合物〔以下、単官能(メタ)アクリレートという〕及び2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物〔以下、多官能(メタ)アクリレートという〕を挙げることができる。
【0032】
単官能(メタ)アクリレートの具体的としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート及び2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート;シクロヘキシル(メタ)アクリレート及びイソボロニル(メタ)アクリレート等の脂環式アルキル(メタ)アクリレート;ベンジル(メタ)アクリレート等のアラルキル(メタ)アクリレート;フェノキシエチルアクリレート等のフェノールのアルキレンオキシド付加物の(メタ)アクリレート;ノニルフェノキシプロピルアクリレート、p−クミルフェノキシエチル(メタ)アクリレート等の置換基を有するフェノールのアルキレンオキシド付加物の(メタ)アクリレート;2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシロキシエトキシエチル(メタ)アクリレート、等のアルコキシアルキル(メタ)アクリレート;ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート及びヒドロキシブチルアクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−ブトキシプロピル(メタ)アクリレート等の所謂単官能エポキシ(メタ)アクリレート;(メタ)アクリル酸、クロトン酸、桂皮酸又は(メタ)アクリル酸等の不飽和カルボン酸のマイケル付加反応生成物である2量体以上のオリゴマー;ω−カルボキシポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート、フタル酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート及びコハク酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等のカルボキシル基含有(メタ)アクリレート;アルコキシシリル基含有(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0033】
多官能(メタ)アクリレートとしては、モノマー及びオリゴマーが挙げられる。
【0034】
モノマーとしては、エチレングリコールのジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールのジ(メタ)アクリレート及びトリプロピレングリコールのジ(メタ)アクリレート等のグリコールのジ(メタ)アクリレート;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリヒドロキシエチルイソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート及びジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等のポリオールの(メタ)アクリレート、並びにこれらポリオールのアルキレンオキサイド付加物の(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0035】
オリゴマーとしては、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート及びエポキシ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0036】
ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーとしては、ポリオールと有機ポリイソシアネート反応物に対して、さらにヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートを反応させた反応物等が挙げられる。ここで、ポリオールとしては、低分子量ポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール及びポリカーボネートポリオール等がある。低分子量ポリオールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノール及び3−メチル−1,5−ペンタンジオール等が挙げられる。ポリエーテルポリオールとしては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等が挙げられる。ポリエステルポリオールとしては、これら低分子量ポリオール又は/及びポリエーテルポリオールと、アジピン酸、コハク酸、フタル酸、ヘキサヒドロフタル酸及びテレフタル酸等の二塩基酸又はその無水物等の酸成分との反応物が挙げられる。ポリカーボネートポリオールとしては、1,6−ヘキサンジオールのポリカーボネートジオール等が挙げられる。有機ポリイソシアネートとしては、トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート及びイソホロンジイソシアネート等が挙げられる。ヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートとしては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート及び2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0037】
ポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマーとしては、ポリエステルポリオールと(メタ)アクリル酸との脱水縮合物が挙げられる。ポリエステルポリオールとしては、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,6−ヘキサンジオール及びトリメチロールプロパン等の低分子量ポリオール、並びにこれらのアルキレンオキシド付加物等のポリオールと、アジピン酸、コハク酸、フタル酸、ヘキサヒドロフタル酸及びテレフタル酸等の二塩基酸又はその無水物等の酸成分とからの反応物等が挙げられる。
【0038】
エポキシアクリレートは、エポキシ樹脂に(メタ)アクリル酸を付加反応させたもので、ビスフェノールA型エポキシ樹脂の(メタ)アクリレート、フェノール又はクレゾールノボラック型エポキシ樹脂の(メタ)アクリレート及びポリエーテルのジグリシジルエーテルの(メタ)アクリル酸付物等が挙げられる。
【0039】
(メタ)アクリレート以外の(メタ)アクリロイル基を有する化合物としては、(メタ)アクリロイルモルホリン、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド等を挙げることができる。
【0040】
ビニル系化合物の例としては、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、無水マレイン酸、スチレン、ジアリルフタレート及びジビニルエーテル等が挙げられる。
ジビニルエーテルとしては、トリエチレングリコールジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル等が挙げられる。
【0041】
その他マレイミド化合物としては、シトラコンイミドアルコール、シトラコンイミドアルコールとポリイソシアネートからなるウレタン化合物、シトラコンイミドアルコールとポリイソシアネートとポリオールからなるウレタン化合物等が挙げられる。
【0042】
(B)成分としては、(メタ)アクリレートを主成分とするものが好ましい。この場合、(メタ)アクリレート以外のエチレン性不飽和基を有する化合物の割合としては、組成物中に0〜30重量%であることが好ましく、より好ましくは0〜20重量%、さらに好ましくは0〜10重量%である。
【0043】
(B)成分が(メタ)アクリレートである場合において、アクリレートが50モル%以上であることが好ましく、80モル%以上であることがより好ましく、90モル%以上であることが特に好ましい。(B)成分としてアクリレートが50モル%以上であると、被着体を貼り合せて再度光照射する際の空気存在部分の硬化性に優れるため好ましい。
【0044】
さらに、(B)成分としては、(B)成分中に、単官能アクリレートを50重量%以上含むことが好ましく、80重量%以上であることがより好ましく、90重量%以上であることが特に好ましい。(B)成分中に単官能アクリレートを50重量%以上含むものは、半硬化状態を制御しやすく、本硬化後の接着力にも優れるため好ましい。
【0045】
(B)成分の好ましい配合割合は、組成物中に20〜70重量%であり、より好ましくは30〜60重量%である。配合割合が上記範囲であると、半硬化の制御が容易であること、及び被着体を貼り合せて再度光照射する際の空気存在部分の硬化性に優れることから好ましい。
【0046】
3.(C)成分
本発明の(C)成分は、光ラジカル重合開始剤であり、光照射でラジカルを発生する化合物であれば種々の化合物が使用できる。光としては紫外線又は可視光が使用される。
【0047】
(C)成分の具体例としては、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、1−〔4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル〕−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−メチル−1−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン、ジエトキシアセトフェノン、オリゴ〔2−ヒドロキシ−2−メチル−1−〔4−(1−メチルビニル)フェニル〕プロパノン〕及び2−ヒドロキシ−1−{4−〔4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル〕−フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン等のアセトフェノン系化合物;ベンゾフェノン、4−フェニルベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾフェノン及び4−ベンゾイル−4’−メチル−ジフェニルスルファイド等のベンゾフェノン系化合物;メチルベンゾイルフォルメート、オキシ−フェニル−アセチックアシッド2−〔2−オキソ−2−フェニル−アセトキシ−エトキシ〕−エチルエステル及びオキシ−フェニル−アセチックアシッド2−〔2−ヒドロキシ−エトキシ〕−エチルエステル等のα−ケトエステル系化合物;2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルフォスフィンオキサイド等のフォスフィンオキサイド系化合物;ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル及びベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾイン系化合物;チタノセン系化合物;1−(4−(4−ベンゾイルフェニルスルファニル)フェニル〕−2−メチル−2−(4−メチルフェニルスルフィニル)プロパン−1−オン等のアセトフェノン/ベンゾフェノンハイブリッド系光開始剤;1,2−オクタンジオン、1−〔4−(フェニルチオ)−,2−(O−ベンゾイルオキシム))等のオキシムエステル系光開始剤;並びにカンファーキノン等が挙げられる。
【0048】
これらのうち、より好ましい化合物はフォスフィンオキサイド系化合物であり、特に好ましくはビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド等のビスアシルフォスフィンオキサイドである。
【0049】
(C)成分の好ましい配合割合は、組成物中に0.01〜10重量%であり、より好ましくは0.1〜5重量%、特に好ましくは0.5〜3重量%である。配合割合が上記範囲であると、半硬化の制御が容易であること、及び被着体を貼り合せて再度光照射する際の硬化性に優れることから、好ましい。
【0050】
4.(D)成分
本発明の組成物は、前記(A)〜(C)成分を必須とするものであるが、空気による硬化阻害を受ける用途においては、光二量化反応を増感する化合物〔(D)成分〕を配合することが好ましい。これにより、空気による硬化阻害を受ける被着体の接着用途、具体的には、凹凸部を有する被着体の接着に使用する場合、優れた硬化性を発揮する。
(D)成分は、(A)成分の光二量化反応を増感する化合物である。好適な具体例としては、ジエチルチオキサントン及びジイソプロピルチオキサントン等のチオキサントン、並びにアセトフェノン及びベンゾフェノン等のフェニルケトンが挙げられる。これらの中でも、(A)成分の光二量化反応を増感する効果が大きいため、チオキサントン系化合物がより好ましい。
【0051】
(D)成分の好ましい配合割合は、組成物中に0.1〜3重量%であり、特に好ましくは0.3〜2重量%である。配合割合が3重量%以下であると、硬化後の黄変が目立たなくなるため好ましい。又、配合割合が0.1重量%以上であると、被着体を貼り合せて再度光照射する際の空気存在部分の硬化性に優れるため好ましい。
【0052】
5.(E)成分
本発明の組成物には、接着力を低下させることなく粘度を適度に増加させること等を目的として、(メタ)アクリル系のポリマー〔(E)成分〕を配合することが好ましい。
(E)成分の重量平均分子量としては、1,000〜500,000が好ましく、より好ましくは10,000〜150,000である。ここで重量平均分子量とは、GPCのポリスチレン換算の重量平均分子量である。
【0053】
(E)成分の構成モノマーとしては、(メタ)アクリレートを主成分とするものであれば良く、具体例としては、前記した単官能(メタ)アクリレートと同様のものが挙げられる。モノマーとしては、メチルメタクリレートを含むものが好ましい。
【0054】
(E)成分の好ましい配合割合は、組成物中に2〜40重量%であり、より好ましくは5〜30重量%、特に好ましくは10〜25重量%である。配合割合が上記範囲であると、塗工性、半硬化の制御しやすさ、本硬化後の接着力、及び被着体を貼り合せて再度光照射する際の空気存在部分の硬化性がさらに優れたものとなるため、好ましい。
【0055】
6.その他の成分
本発明の組成物には、必要に応じて後記するその他の成分を配合することもできる。具体的には、無機材料、レベリング剤、シランカップリング剤、重合禁止剤又は/及び酸化防止剤、耐光性向上剤、並びに有機溶剤及び/又は水等を挙げることができる。
以下これらの成分について説明する。
【0056】
●無機材料
無機材料は、組成物の硬化時のひずみを緩和させたり、接着力を向上させる目的で配合することもできる。
無機材料としては、コロイダルシリカ、シリカ、アルミナ、タルク及び粘土等が挙げられる。
無機材料の配合割合は、組成物中に0〜50重量%であることが好ましく、より好ましくは0〜30重量%、さらに好ましくは0〜10重量%である。
【0057】
●レベリング剤
レベリング剤としては、シリコン系化合物及びフッ素系化合物等が挙げられる。
レベリング剤の配合割合は、組成物中に0.5重量%以下であることが、接着性能への悪影響が小さいため好ましい。
【0058】
●シランカップリング剤
シランカップリング剤は、ガラス、金属、金属酸化物等の無機物への接着性能を高める目的等で添加することもできる。
シランカップリング剤は、1分子中に1個以上のアルコキシシリル基と1個以上の有機官能基を有する化合物であり、有機官能基としては、(メタ)アクリロイル基、エポキシ基、アミノ基、チオール基が好ましく、より好ましくは(メタ)アクリロイル基である。
シランカップリング剤の配合割合は、組成物中に5重量%以下であることが、アウトガス低減の点から好ましい。
【0059】
●重合禁止剤又は/及び酸化防止剤
本発明の組成物には、重合禁止剤又は/及び酸化防止剤を添加することが、本発明の組成物及び光硬化型粘接着シートの保存安定性を向上させことができ、好ましい。
重合禁止剤としては、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、並びに種々のフェノール系酸化防止剤が好ましいが、イオウ系二次酸化防止剤、リン系二次酸化防止剤、クロペン系酸化防止剤等を添加することもできる。
これら重合禁止剤又は/及び酸化防止剤の総配合割合は、組成物中に0.001〜3重量%であることが好ましく、さらに好ましくは0.01〜0.5重量%である。
【0060】
●耐光性向上剤
本発明の組成物には、用途に応じて、紫外線吸収剤や光安定剤を添加することができる。
耐光性向上剤の配合割合は、組成物中に0〜10重量%であることが好ましく、さらに好ましくは0〜5重量%である。
【0061】
●有機溶剤及び/又は水
本発明の組成物には、塗工性や密着性を高める目的で少量添加しても良いが、本発明の組成物の特長である「無溶剤」であることが損なわれるため、添加しないことが好ましい。
【0062】
7.光硬化型粘接着剤製造用の光硬化型組成物
本発明の光硬化型粘接着剤製造用の光硬化型組成物は、上記必須成分及び必要に応じてその他の成分を常法に従い、攪拌・混合することにより得ることができる。本発明の組成物は、均一透明であるものが好ましい。
本発明の組成物の粘度は、室温で厚さ数μm〜数10μmに塗布することが容易な粘度であることが好ましく、具体的には、25℃の粘度が50〜20,000mPa・sであることが好ましく、より好ましくは100〜10,000mPa・sである。
【0063】
8.光硬化型粘接着シート
本発明の組成物は、接着を目的とする材料(以下、被着体という)の一方に直接塗布して使用することが可能であるが、光硬化型粘接着シート(以下、粘接着シートということもある)の製造にも使用できる。
【0064】
光硬化型粘接着シートの製造方法としては、常法に従えば良く、基材に組成物を塗布した後、光照射により半硬化させ、粘接着性硬化膜を形成する方法等が挙げられる。
光硬化型粘接着シートは、製造工程上液体を使用したくない場合等で好適に使用できる。
【0065】
基材としては、被着体であっても良く、被着体とは無関係の剥離可能な材料(以下、剥離材という)であっても良い。
【0066】
被着体としては、ポリマー材料、ガラス、金属や金属酸化物が蒸着されたポリマーやガラス、セラミックス、金属、シリコン、木、紙等、種々のものが適用できる。
ポリマー材料としては、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリカーボネート、ユリア・メラミン樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン、ポリ乳酸、ポリエチレン、ポリプロピレン、シクロオレフィンポリマー、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリビニルアセテート、ポリビニルアルコール、トリアセチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリエーテルサルホン、セロハン、液晶ポリマー、上記ポリマーの共重合体やブレンド材料等が挙げられる。ポリマーが難接着性である場合は、密着性を高めるために、コロナ処理等の易接着処理をすることが好ましい。
【0067】
剥離材としては、シリコン剥離処理PETフィルムが特に好ましいが、テフロン(登録商標)、ポリオレフィン等の難接着性フィルムや、シリコン剥離処理した紙等も使用可能である。
【0068】
本発明の組成物の半硬化及び本硬化に使用する光の光源としては、種々のものが使用可能である。好適な光源としては、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、UV無電極ランプ及び紫外線及び/又は可視光を放射するLED等が挙げられる。
光照射における、照射強度等の照射条件は、使用する組成物、基材及び目的等に応じて適宜設定すれば良い。
【0069】
光硬化型粘接着シートの具体例を挙げる。
例えば、被着体/粘接着性硬化膜/剥離材から構成される粘接着シートが挙げられる。
当該粘接着シートの製造方法としては、主に以下の2つの方法がある。まず、本発明の組成物を被着体に塗布し、塗布面に光を適量照射して粘接着性硬化膜を形成し、この上に剥離材をラミネートして製造する方法が挙げられる。又、本発明の組成物を被着体に塗布し、塗布面に剥離材をラミネートした後、光を適量照射して製造する方法が挙げられる。
又、剥離材/粘接着性硬化膜/剥離材から構成される粘接着シートが挙げられる。
当該粘接着シートの製造方法としては、本発明の組成物を剥離材に塗布し、塗布面に別の剥離材をラミネートして光を適量照射して製造する方法が挙げられる。
【0070】
粘接着性硬化膜の厚さとしては、2〜40μmが好ましく、より好ましくは5〜30μm、特に好ましくは8〜20μmである。粘接着性硬化膜の厚さを上記範囲とすると、貼り易さ、接着力、硬化性等の性能が優れるため、好ましい。
【0071】
9.接着方法
本発明の組成物を使用した好ましい接着方法の一例を以下に示す。但し、以下に示した接着方法に限定されるものではない。
【0072】
●被着体に、組成物を直接塗布して使用する場合
本発明の組成物を使用して基材(被着体)を接着する方法としては、好ましくは下記工程1〜工程4を含む基材(被着体)の接着方法が挙げられる。
工程1:基材(被着体)に、本発明の組成物を塗布する。
工程2:基材(被着体)側又は塗布面側から光照射して、前記組成物を半硬化させ粘接着性硬化膜を形成させる。
工程3:粘接着性硬化膜と他の基材(被着体)を密着させる。
工程4:基材(被着体)のいずれか一方から光照射して、前記硬化膜を完全硬化させる。
【0073】
工程1において、被着体の一方に、本発明の組成物を塗布する方法としては、ロールコータやダイコータ等が挙げられる。
工程2においては、被着体側又は塗布面側から光を適量照射して、粘着状態を有する粘接着性硬化膜を形成させる。
この場合、塗布面に剥離材でラミネートし、光を照射する方法が好ましい。粘接着性硬化膜を形成した後、直ちに被着体を貼り合せる場合には、剥離材のラミネート工程は省略しても良い。透明な剥離材でラミネートした場合、剥離材側から光を照射することができる。
このときの厚さとしては、2〜40μmが好ましく、より好ましくは5〜30μm、特に好ましくは8〜20μmである。
工程3においては、工程2で形成した粘接着性硬化膜ともう一方の被着体を貼り合せる。剥離材を使用した場合は剥離材を剥離した後、もう一方の被着体を貼り合せる。
工程4においては、被着体のいずれか一方から再度光照射して、前記硬化膜を完全硬化させる(本硬化)。光照射は、紫外線をより透過する被着体の側から照射することが好ましい。
【0074】
●光硬化型粘接着シートを使用する場合
被着体/粘接着性硬化膜/剥離材から構成される光硬化型粘接着シートの場合、剥離材を剥がして、粘接着シートをもう一方の被着体を貼り付け、最後に、再度光照射して硬化させる(本硬化)方法が挙げられる。
剥離材/粘接着性硬化膜/剥離材から構成される光硬化型粘接着シートの場合、剥離材を剥がして、被着体の一方に、粘接着シートを貼り付け、もう一方の剥離材を剥がして、粘接着シートの他方の面に、もう一方の被着体を貼り付ける。最後に、再度光照射して硬化させる(本硬化)方法が挙げられる。
【0075】
被着体の一方は、光を透過する材料であることが好ましい。被着体の両方が光を透過しない場合、粘接着剤の断面方向から光を入れる必要があるが、この場合、小さな部品の接着に限られてしまうため、あまり好適ではない。
被着体の形状としては種々のものが使用可能であるが、板やフィルム形状の被着体に対して、より好適に使用できる。とりわけ、一方の被着体が平滑な板又はフィルム、他方の被着体が1mm以下(より好ましくは5〜100μm)の凹凸形状を有する場合に特に好適に使用できる。
【0076】
本発明の組成物の半硬化及び本硬化に使用する光の光源としては、前記と同様のものが挙げられ、前記と同様のものが好ましい。
光照射における、照射強度等の照射条件は、使用する組成物、基材及び目的等に応じて適宜設定すれば良い。
【0077】
10.用途
本発明の組成物は、一方の被着体が光を透過する材料である場合、様々な部品の接着に使用することができる。とりわけ、凹凸形状を有する被着体の凸部分の接着に特に適している。
具体的には、以下の用途が挙げられる。液晶ディスプレイやプロジェクションテレビ等のレンズシートのレンズ部分を他の板或いはフィルムに接着する用途に特に好適である。又、レンズ以外のパターン形状を有する光学フィルムを、液晶ディスプレイの拡散板や導光板等に、パターン形状を埋没させることなく接着させる用途に特に好適である。
【実施例】
【0078】
以下に、実施例及び比較例を示し、本発明をより具体的に説明する。尚、本発明は、これらの実施例によって限定されるものではない。
尚、以下において「部」とは、重量部を意味する。
【0079】
●実施例及び比較例における略号
実施例及び比較例における略号の意味を、以下に記載する。
(A)成分
・TO−1534:下記式(7)で表される化合物、東亞合成(株)製アロニックスTO−1534。
【0080】
【化6】


【0081】
(B)成分
・ビスコート190:エトキシエトキシエチルアクリレート、大阪有機化学工業(株)製ビスコート190。
・M−240:ポリエチレングリコール(平均繰り返し数4)ジアクリレート、東亞合成(株)製アロニックスM−240。
・BzMA:ベンジルメタクリレート、三菱レイヨン(株)製アクリエステルBZ。
・M−1600:ポリエーテル系ウレタンアクリレート、東亞合成(株)製アロニックスM−1600。
・M−402:ジペンタエリスリトールペンタ及びヘキサアクリレート、東亞合成(株)製アロニックスM−402。
【0082】
(C)成分
・Irg819:ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製イルガキュア819。
・Irg184:1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製イルガキュア184。
【0083】
(D)成分
・DETX:2,4−ジエチルチオキサントン、日本化薬(株)製カヤキュアDETX−S。
【0084】
(E)成分
・BR−60:メタクリル系ポリマー(分子量70,000)、三菱レイヨン(株)製ダイヤナールBR−60。
【0085】
<実施例1〜4、比較例1>
●組成物の調製と塗工性の評価
表1に示す成分を常法に従い撹拌・混合して光硬化型組成物を調製した。尚、表中の配合組成の数値は、部数を表す。
得られた組成物を室温でバーコータにより塗布し、8〜12μm厚さに容易に塗工可能であったものを○と評価した。
【0086】
【表1】

【0087】
●粘接着性硬化膜の作成と評価
得られた組成物の光照射後の粘接着性硬化膜について、光硬化型粘接着シート(被着体/粘接着性硬化膜/剥離材)を製造して評価した。
表1記載の組成物を、一方の被着体としてのPETフィルム(東洋紡(株)製コスモシャインA4300、厚さ50μm)に、バーコータ#7で塗布した後、シリコン剥離処理PETフィルム(シリコンPET)をラミネートした。次いで、シリコンPETの上から、アイグラフィックス(株)製のコンベア式UV照射機(80W/cm高圧水銀ランプ、平行光コールドミラー付き、ランプ高さ30cm、UV−Aの照射強度140mW/cm2(EIT社製UV POWER PUCKの測定値))により、コンベア速度を調整して表2記載の照射量(mJ/cm2)を照射した。得られた粘接着シートの粘接着性硬化膜の厚さは、8〜12μmであった。
得られた粘接着シートを1インチ幅の短冊状に切り出し、シリコンPETを剥離し、もう一方の被着体としてのコロナ処理PMMAに貼り付け、貼り付け直後の剥離強度(N/インチ)を測定した(引張速度200mm/分)。
剥離強度の測定結果を、照射量と共に、表2に示した。但し、照射量が少なすぎてシリコンPETに液移りした場合や、逆に照射量が多すぎてタックフリーとなった場合には、測定を省略した。
半硬化制御性について、貼り付け可能な照射量幅に基づき、下記基準に従い評価した。
○:300mJ/cm2以上であるもの
△:100〜300mJ/cm2であるもの
×:100mJ/cm2未満又は場所による不均一性が見られたもの
【0088】
【表2】

【0089】
表2の組成物はすべて、半硬化状態を制御することが可能であった。特に、(B)成分の全てが単官能アクリレートである実施例1〜3の組成物は、半硬化の制御が特に容易であった。
【0090】
●本硬化後の接着力
粘接着シートの粘接着性硬化膜を被着体に貼り付け、再度光照射して硬化させたもの(本硬化させたもの)の接着力を、以下のようにして評価した。
表2において、粘接着性硬化膜の剥離強度が最大となる照射量で粘接着シートを作成した(基材は先の実験と同じPETフィルム)。この粘接着シートを、シリコンPETを剥離してコロナ処理PMMA板に貼り付けた。このとき、接着部分が1インチ四方となるようにした。
次いで、PET基材の側より、先の実験と同様に紫外線照射して本硬化させた。但し、コンベア速度は、1パスで1,000mJ/cm2となるよう調整し、3パス照射した(UV−Aで合計3,000mJ/cm2)。
得られた接着物のせん断接着力を、引張速度10mm/分で測定し、以下の基準で評価した。結果を表3に示す。
○:一方の被着体であるPETフィルムが伸びるまで剥離しなかったもの(130N/平方インチ以上)、
△:100〜130N/平方インチのもの
×:100N/平方インチ未満のもの
【0091】
●空気が存在する部分の硬化性
本発明の組成物を使用して、微細な凹凸形状を有する光学フィルムの凸面を接着する場合、凹部には空気が存在する。光学フィルムの基材としてよく使用されるPETフィルムは、エネルギーの高い低波長の紫外線(UV−B及びUV−C)をほぼ完全に吸収する。そのため、凹部の硬化条件は、「空気下PET越し」という(メタ)アクリル系光硬化型接着剤組成物にとって非常に不利な条件であるが、ここではこの条件下における硬化性を、以下のようにして評価した。
表2において、粘接着性硬化膜の剥離強度が最大となる照射量で粘接着シートを作成し、シリコンPETを剥離し、粘接着性硬化膜を上にしてトレイの上に置いた。この上に、PETフィルムを、PETフィルムが粘接着性硬化膜に接しないように覆い被せ、先の粘接着性硬化膜の作成実験と同様にして紫外線を照射した。但し、コンベア速度は、1パスで500mJ/cm2となるよう調整し、1パスごとに塗膜の硬化性を指触で評価した。そして、タックフリーとなったときの照射量に基づき、以下の基準で評価し、結果を表3に記載した。
◎:1,000mJ/cm2以下であったもの
○:1,000〜2,000mJ/cm2であったもの
△:2,000〜3,000mJ/cm2であったもの
×:3,000mJ/cm2以上であったもの
表3の結果は、次のことを示している。すなわち、本発明である実施例の組成物は、(A)成分が有するマレイミド基の二量化反応は空気阻害を受けないため、空気下PET越しの硬化性が良好になり、マレイミドの二量化反応を増感する化合物を含む組成物(実施例2〜4)では、空気下PET越しの硬化性が特に良好になる。
【0092】
●粘接着剤としての評価結果のまとめ
表3に、凹凸形状を有する被着体の接着に使用する場合の総合評価を付記した。総合評価は、以下の基準で評価した。
◎:△も×もないもの
○:△が1つのもの
△:×はないが△が複数あるもの
×:1項目でも×があったもの
【0093】
【表3】

【0094】
表3の結果から、本発明の組成物は、凹凸形状を有する被着体の接着に好適であった。特に、成分(D)を含む実施例2〜実施例4は、空気存在部分の硬化性が優れていた。又、成分(B)の全てが単官能アクリレートである実施例2及び実施例3は、半硬化制御性や本硬化後の接着力の点でも優れていた。
【0095】
<実施例5>
●光硬化型粘接着シート(剥離材/粘接着性硬化膜/剥離材)の製造
実施例3の組成物を、シリコンPETにバーコータ#7で塗布した後、シリコンPETをラミネートし、アイグラフィックス(株)製のコンベア式UV照射機(80W/cm高圧水銀ランプ、平行光コールドミラー付き、ランプ高さ30cm、UV−Aの照射強度140mW/cm2(EIT社製UV POWER PUCKの測定値))により、コンベア速度を調整して300mJ/cm2UV照射し、本発明の光硬化型粘接着シートを作成した。得られた粘接着シートの厚さは、8〜12μmであった。
【0096】
●PETフィルムとPMMA板の接着と評価
まず、上記した光硬化型粘接着シートの一方のシリコンPETを剥離した後、PETフィルム(東洋紡(株)製コスモシャインA4300、厚さ50μm)にローラーで貼り付けた。これを、1インチ幅の短冊状に切り出し、残ったもう一方のシリコンPETを剥離し、コロナ処理PMMA板にローラーで貼り付けた。このとき、接着部分が1インチ四方となるようにした。最後に、実施例1等と同様にして3,000mJ/cm2のUV照射を行って硬化し接着した。
得られた接着物のせん断接着力を、実施例1等と同様に評価した。その結果、一方の被着体であるPETフィルムが伸びるまで剥離せず、表3で「○」と表記される良好な接着力であった。
【0097】
●空気が存在する部分の硬化性
上記した光硬化型粘接着シートの一方のシリコンPETを剥離した後、PETフィルムに貼り付け、残ったもう一方のシリコンPETを剥離した。この上に、PETフィルムを、PETフィルムが粘着塗膜に接しないように覆い被せ、実施例1等と同様にUV照射して硬化性を評価した。その結果、タックフリーとなったときの照射量は1,000mJ/cm2以下であり、表3で「◎」と表記される良好な硬化性であった。
【産業上の利用可能性】
【0098】
本発明の光硬化型粘接着剤製造用の光硬化型組成物及び光硬化型粘接着シートは、広範な接着用途に使用でき、特に、凹凸形状を有する被着体の凸部分の接着に好適に使用できる。より具体的には、ディスプレイ材料等の光学部品の製造に好ましく使用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
不飽和二重結合に置換基を有することもあるマレイミド基及び当該マレイミド基以外のエチレン性不飽和基を有する化合物(A)、(A)成分以外のエチレン性不飽和基を有する化合物(B)及び光重合開始剤(C)を含む光硬化型粘接着剤製造用の光硬化型組成物。
【請求項2】
前記(A)成分における前記マレイミド基が、下記一般式(1)で表される基である請求項1記載の光硬化型粘接着剤製造用の光硬化型組成物。
【化1】



〔但し、一般式(1)において、R1及びR2は、それぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、アルキル基若しくはアリール基を表すか、又はR1及びR2は一つとなって5員環若しくは6員環を形成する炭化水素基を表す。〕
【請求項3】
前記(A)成分が、下記一般式(2)で表される化合物である請求項2記載の光硬化型粘接着剤製造用の光硬化型組成物。
【化2】


〔但し、式(2)において、R1及びR2は前記と同様の意味を示す。又、R3はアルキレン基を表し、R4は水素原子又はメチル基を表し、nは1から6の整数を表す。〕
【請求項4】
前記(B)成分が、(メタ)アクリレートである請求項1〜請求項3のいずれかに記載の光硬化型粘接着剤製造用の光硬化型組成物。
【請求項5】
前記(A)、(B)及び(C)成分を、組成物中にそれぞれ10〜70重量%、20〜70重量%及び0.01〜10重量%含有する請求項1〜請求項4のいずれかに記載の光硬化型粘接着剤製造用の光硬化型組成物。
【請求項6】
(A)成分の光二量化反応を増感する化合物(D)をさらに含有する請求項1〜請求項5のいずれかに記載の光硬化型粘接着剤製造用の光硬化型組成物。
【請求項7】
(メタ)アクリル系のポリマー(E)をさらに含有する請求項1〜請求項6のいずれかに記載の光硬化型粘接着剤製造用の光硬化型組成物。
【請求項8】
(B)成分の50重量%以上が1個のアクリロイル基を有する化合物である請求項1〜請求項7のいずれかに記載の光硬化型粘接着剤製造用の光硬化型組成物。
【請求項9】
凹凸形状を有する基材の凸部分の接着に使用する請求項1〜請求項8のいずれかに記載の光硬化型粘接着剤製造用の光硬化型組成物。
【請求項10】
下記工程1〜工程4を含む基材の接着方法。
工程1:基材に、請求項1〜請求項9のいずれかに記載の組成物を塗布する。
工程2:基材側又は塗布面側から光照射して、前記組成物を半硬化させ粘接着性硬化膜を形成させる。
工程3:粘接着性硬化膜と他の基材を密着させる。
工程4:基材のいずれか一方から光照射して、前記硬化膜を完全硬化させる。
【請求項11】
基材に、請求項1〜請求項9のいずれかに記載の組成物の粘接着性硬化膜が形成されてなる光硬化型粘接着シート。
【請求項12】
基材に、請求項1〜請求項9のいずれかに記載の組成物を塗布した後、光照射して粘接着性硬化膜を形成させる光硬化型粘接着シートの製造方法。
【請求項13】
基材に、請求項1〜請求項9のいずれかに記載の組成物を塗布した後、光照射して前記組成物を半硬化させて粘接着性硬化膜を形成させる請求項12記載の光硬化型粘接着シートの製造方法。

【公開番号】特開2009−127023(P2009−127023A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−306854(P2007−306854)
【出願日】平成19年11月28日(2007.11.28)
【出願人】(000003034)東亞合成株式会社 (548)
【Fターム(参考)】