説明

光硬化性・熱硬化性樹脂組成物及びそれを用いて得られるプリント配線板

【課題】紫外線及びレーザー露光において高感度であって、しかも硬化深度が良好であり、さらに保存安定性、作業性に優れると共に、希アルカリ水溶液による現像性に優れ、ソルダーレジストに好適な光硬化性・熱硬化性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】光硬化性・熱硬化性樹脂組成物は、(A)カルボキシル基含有樹脂、(B)メルカプトブタン酸又はその誘導体、(C)光重合開始剤、(D)分子中に2個以上のエチレン性不飽和基を有する化合物、及び(E)エポキシ樹脂を含有する。好適には、カルボキシル基含有樹脂(A)は、ラジカル重合可能な不飽和二重結合を有するカルボキシル基含有樹脂であることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、希アルカリ水溶液により現像可能な光硬化性・熱硬化性樹脂組成物、その硬化物及びそれを用いて得られるレジストパターンを有するプリント配線板に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、プリント配線板用ソルダーレジストの露光において、優れた位置合わせ精度の観点からレーザー走査露光が普及している。
レーザー露光は、フォトマスクを使用せずパターン形成された配線板上のソルダーレジストを走査しながら画像形成するため、従来市販されているソルダーレジストを用いた場合、その適正露光量が200mJ/cm以上であるため、露光に非常に時間がかかるという欠点を有している。そのため、レーザー露光に対応するソルダーレジストには非常に高感度化が要求されている。
【0003】
上記の点から、これまで、高い光重合能力を発揮することができるオキシム系光重合開始剤やその光重合開始剤を用いた組成物の提案がなされてきた(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。しかしながら、これらの技術は、確かに十分な光重合能力を発揮することができるが、熱処理後に回路上での光重合開始剤の(オキシムエステルと金属銅の反応による)失活が原因で、部分的に光反応が著しく低下し、銅回路上で塗膜の剥離が生じるという問題を抱えている。
【0004】
一方、光反応を促進する手法として、メルカプト化合物の連鎖移動反応を利用してフォトレジストを高感度化する手法が提案されている(特許文献3、特許文献4参照)。しかしながら、開示されているメルカプトプロピオン酸誘導体は、プリント配線板上に存在する銅配線に対して非常に活性が高く、銅と反応してしまうため、本来現像されるべき部分であっても残渣が残るという現象が起こってしまうことが確認された。また、レジスト保管中においても、これら文献に使用されるメルカプトプロピオン酸由来のメルカプト基は反応性に富んでいるため、不飽和二重結合を有する化合物と反応することが確認され、レジストの現像性を著しく低下させることが確認された。
【特許文献1】特開2001−235858号公報(特許請求の範囲)
【特許文献2】国際公開WO02/096969公報(特許請求の範囲)
【特許文献3】特開2006−10793号公報(特許請求の範囲)
【特許文献4】特開2006−259150号公報(特許請求の範囲)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、前記したような従来技術の問題を解消すべくなされたものであり、その主たる目的は、紫外線及びレーザー露光において高感度であって、しかも硬化深度が良好であり、さらに従来の保存安定性、作業性に優れると共に、希アルカリ水溶液による現像性に優れ、ソルダーレジストに好適な光硬化性・熱硬化性樹脂組成物を提供することにある。
さらに本発明の目的は、このような光硬化性・熱硬化性樹脂組成物を用いることによって得られる、諸特性に優れる硬化物、及びパターン精度に優れるレジストパターンを有するプリント配線板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために、本発明によれば、(A)カルボキシル基含有樹脂、(B)メルカプトブタン酸又はその誘導体、(C)光重合開始剤、(D)分子中に2個以上のエチレン性不飽和基を有する化合物、及び(E)エポキシ樹脂を含有することを特徴とする光硬化性・熱硬化性樹脂組成物が提供される。
【0007】
好適な態様においては、前記カルボキシル基含有樹脂(A)は、ラジカル重合可能な不飽和二重結合を有するカルボキシル基含有樹脂(A1)であり、特に不飽和二重結合の一部もしくはすべてがメタアクリル酸又はその誘導体に由来するものであることが好ましい。また、前記光重合開始剤(C)は、オキシム系光重合開始剤(C’)であることが好ましく、特に後述する一般式(I)で表されるオキシムエステル系光重合開始剤(C1)、又は、該オキシムエステル系光重合開始剤(C1)と、後述する一般式(II)で表されるアミノアセトフェノン系光重合開始剤(C2)及び/又は一般式(III)で表されるアシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤(C3)との混合物であることが好ましい。
【0008】
別の好適な態様においては、前記メルカプトブタン酸又はその誘導体(B)は、1分子内に2個以上の2−メルカプトイソブタン酸もしくは3−メルカプトブタン酸又はそれらの誘導体を有するものが好ましい。
また、前記エポキシ樹脂(E)は、前記メルカプトブタン酸又はその誘導体(B)が配合された混合物とは別の混合物に配合されている2液型組成物、あるいは少なくとも前記カルボキシル基含有樹脂(A)と前記メルカプトブタン酸又はその誘導体(B)の混合物と、前記光重合開始剤(C)とエポキシ樹脂(E)の混合物からなる2液型組成物であることが好ましい。尚、分子中に2個以上のエチレン性不飽和基を有する化合物(D)は、上記いずれの混合物に添加されていてもよい。
さらに、着色剤を含有するソルダーレジスト、特に緑色もしくは青色ソルダーレジストであることが好ましい。
【0009】
さらに本発明によれば、前記光硬化性・熱硬化性樹脂組成物を、キャリアフィルムに塗布・乾燥して得られる光硬化性・熱硬化性のドライフィルムが提供される。
さらに本発明の別の態様においては、前記光硬化性・熱硬化性樹脂組成物又はドライフィルムを、銅上にて光硬化して得られる硬化物、特に350nm〜410nmのレーザー発振光源にてパターン状に光硬化して得られる硬化物が提供される。さらにまた、前記光硬化性・熱硬化性樹脂組成物又はドライフィルムを、波長が350nm〜410nmの紫外線の直接描画にてパターン状に光硬化させた後、熱硬化して得られるレジストパターンを有するプリント配線板が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明の光硬化性・熱硬化性樹脂組成物は、(A)カルボキシル基含有樹脂、(C)光重合開始剤、(D)分子中に2個以上のエチレン性不飽和基を有する化合物、及び(E)エポキシ樹脂と共に、(B)メルカプトブタン酸又はその誘導体を含有するものであるため、この化合物の連鎖移動反応を利用して光硬化性・熱硬化性樹脂組成物の塗膜の高感度化が図れる。特に、光重合開始剤としてのオキシム系開始剤と組み合わせて用いることにより、高い光重合能力を発揮することができると共に、メルカプトブタン酸又はその誘導体はプリント配線板上に存在する銅配線に対してマイルドに反応するため、熱処理後に回路上でのこの光重合開始剤の(オキシムエステルと金属銅の反応による)失活を抑制することができる。従って、紫外線及びレーザー露光において高感度であって、しかも硬化深度が良好であり、さらに保存安定性、作業性に優れると共に、希アルカリ水溶液による現像性に優れており、現像の際に現像残りを生じることがない。
また、このような光硬化性・熱硬化性樹脂組成物を用いることによって、諸特性に優れる硬化物、及びパターン精度に優れるレジストパターンを有するプリント配線板を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明者らは、前記した課題を達成するために鋭意研究した結果、同じように連鎖移動反応の開始剤ではあっても、メルカプトプロピオン酸誘導体と本発明で用いるメルカプトブタン酸又はその誘導体(B)との間には、プリント配線板上に存在する銅配線や不飽和二重結合を有する化合物に差異があることを見出した。すなわち、メルカプトプロピオン酸誘導体は、銅配線に対して非常に活性が高く、銅と反応してしまうため、本来現像されるべき部分であっても残渣が残るという現象が起こってしまうのに対し、本発明で用いるメルカプトブタン酸又はその誘導体(B)は銅配線に対してマイルドに反応するため、このような問題を抑制することができ、また、レジスト保管中においても、メルカプトプロピオン酸由来のメルカプト基は反応性に富んでいるため、不飽和二重結合を有する化合物と反応し、レジストの現像性を著しく低下させるが、メルカプトブタン酸又はその誘導体(B)を用いることによってこのような問題を抑制できることを見出し、本発明を完成するに至ったものである。
【0012】
以下、本発明の光硬化性・熱硬化性樹脂組成物の各構成成分について詳しく説明する。
まず、本発明で用いるメルカプトブタン酸又はその誘導体(B)とは、2−メルカプトイソブタン酸もしくは3−メルカプトブタン酸もしくはそれらの誘導体であり、さらに詳しくはその酸がエステル化又はアミド化された化合物である。好ましくはエステル化することにより一分子内に2個以上のメルカプト基が存在するものがよい。具体的には、特開2004−149755号公報に挙げられているようなエチレングリコールビス(3−メルカプトブチレート)、プロピレングリコールビス(3−メルカプトブチレート)、ジエチレングリコールビス(3−メルカプトブチレート)、ブタンジオールビス(3−メルカプトブチレート)、オクタンジオールビス(3−メルカプトブチレート)、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトブチレート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトブチレート)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3−メルカプトブチレート)や、1,3,5−トリス(3−メルカブトブチルオキシエチル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン等が挙げられる。これらの中でも、1,3,5−トリス(3−メルカブトブチルオキシエチル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオンのような脂環式構造を有するものを用いることにより、はんだ耐熱、無電解金めっき、さらには保存安定性にも優れる光硬化性・熱硬化性樹脂組成物が得られる。
【0013】
ここで、これらメルカプトブタン酸又はその誘導体の効果を挙げると(1)感度の向上、(2)オキシム系開始剤の銅上での失活の低減による剥がれの防止、(3)レジストの現像ライフ(現像可能な乾燥時間)の向上(延長)がある。特に、上記(2)と(3)の効果は、従来全く知られていない新規な効果である。
【0014】
上記(2)の効果について説明すると、オキシム系光重合開始剤は、金属との接触に対して安定性が悪く、ソルダーレジストに使用すると、回路基板上の銅配線に接触した部分の感度が低くなることがある。この現象は加熱すればするほど顕著に表れ、さらにソルダーレジストが薄くなる部分(回路のきわ)などは現像後に剥がれが生じてしまうことが確認される。これは、銅とオキシム化合物の接触によるオキシム化合物の分解によるものと考えられ、オキシム化合物が分解したことによる光重合開始能力の低下(失活)はソルダーレジストにとって重大な問題であった。しかしながら、銅に対して比較的マイルドに反応もしくは配位するメルカプトブタン酸由来のメルカプト基の存在が一種の保護膜的な働きをしてオキシム化合物の失活を防止し、ソルダーレジストの剥がれを防止していると推測している。
【0015】
上記(3)の効果について説明すると、ソルダーレジストに用いる熱硬化成分がエポキシ樹脂であるときに、特にその効果が見られた。つまり、ソルダーレジスト組成物中にエポキシ樹脂が存在している場合と、ソルダーレジスト組成物中にエポキシ樹脂とメルカプトブタン酸誘導体が共に存在している場合では、明らかにメルカプトブタン酸の存在する組成物の方が現像ライフが延長していた。その詳細な理由は必ずしも明らかではないが、現像ライフの低下は一般にカルボキシル基含有樹脂のカルボキシル基とエポキシ樹脂のエポキシ基が徐々に反応することにより引き起こされる。ここにメルカプトブタン酸誘導体を添加した場合、おそらくカルボキシル基とエポキシ基の反応の前にメルカプト基がエポキシ基と反応を開始し始めると考えられる。よって、現像性に影響を与えるカルボキシル基が消費されないためであると推測される。
【0016】
上記メルカプトブタン酸又はその誘導体(B)の適正な配合量は、以下に述べるカルボキシル基含有樹脂(A)100質量部に対して0.05質量部以上、3.0質量部以下の割合であり、さらに好ましくは0.1質量部以上、2.0質量部以下の割合である。
【0017】
次に、本発明の光硬化性・熱硬化性樹脂組成物に含まれるカルボキシル基含有樹脂(A)としては、分子中にカルボン酸を含有している公知慣用の樹脂化合物が使用できる。さらに分子中にエチレン性不飽和二重結合を有するカルボン酸含有感光性樹脂(A’)が、光硬化性や耐現像性の面からより好ましい。そして、その不飽和基は、アクリル酸もしくはメタアクリル酸又はそれらの誘導体由来のものが好ましく、保存安定性の観点からはメタアクリル酸由来のものが有効である。(メルカプトブタン酸又はその誘導体(B)は、アクリル酸由来のエチレン性不飽和二重結合とはマイケル付加反応する傾向があるが、メタアクリル酸由来のエチレン性不飽和二重結合とは反応し難いため)。しかしながら、メタアクリル酸由来のものはアクリル酸由来のものに対して感度の点で劣るため、アクリル酸由来のものとメタアクリル酸由来のもの両方を有している化合物が好ましい。本発明者らの研究によれば、アクリル酸の部分的な導入は保存安定性にあまり影響なく高感度化が可能であった。また、メタアクリル酸の部分的な導入も感度の低下が少なく保存安定性に効果があったので、メタアクリル酸由来のエチレン性不飽和二重結合とアクリル酸由来のエチレン性不飽和二重結合をそれぞれ有している構造が最も好ましいと考えられる。この場合、感度と安定性のバランスの面から、アクリル酸由来のエチレン性不飽和二重結合:メタアクリル酸由来のエチレン性不飽和二重結合の比率は、95〜50:5〜50の割合が好ましい。
【0018】
カルボキシル基含有樹脂(A)具体的には、下記に列挙するような樹脂が挙げられる。
(1)(メタ)アクリル酸などの不飽和カルボン酸と、それ以外の不飽和二重結合を有する化合物の1種類以上との共重合することにより得られるカルボキシル基含有樹脂、
(2)(メタ)アクリル酸などの不飽和カルボン酸と、それ以外の不飽和二重結合を有する化合物の1種類以上との共重合体に、グリシジル(メタ)アクリレートや3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレートなどのエポキシ基と不飽和二重結合を有する化合物や(メタ)アクリル酸クロライドなどによって、エチレン性不飽和基をペンダントとして付加させることによって得られる感光性のカルボキシル基含有樹脂、
(3)グリシジル(メタ)アクリレートや3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート等のエポキシ基と不飽和二重結合を有する化合物と、それ以外の不飽和二重結合を有する化合物との共重合体に、(メタ)アクリル酸などの不飽和カルボン酸を反応させ、生成した二級の水酸基に多塩基酸無水物を反応させて得られる感光性のカルボキシル基含有樹脂、
(4)無水マレイン酸などの不飽和二重結合を有する酸無水物と、それ以外の不飽和二重結合を有する化合物との共重合体に、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートなどの水酸基と不飽和二重結合を有する化合物を反応させて得られる感光性のカルボキシル基含有樹脂、
(5)多官能エポキシ化合物と不飽和モノカルボン酸を反応させ、生成した水酸基に飽和又は不飽和多塩基酸無水物を反応させて得られる感光性のカルボキシル基含有樹脂、
(6)ポリビニルアルコー誘導体などの水酸基含有ポリマーに、飽和又は不飽和多塩基酸無水物を反応させた後、生成したカルボン酸に一分子中にエポキシ基と不飽和二重結合を有する化合物を反応させて得られる感光性の水酸基及びカルボキシル基含有樹脂、
(7)多官能エポキシ化合物と、不飽和モノカルボン酸と、一分子中に少なくとも1個のアルコール性水酸基と、エポキシ基と反応するアルコール性水酸基以外の1個の反応性基を有する化合物との反応生成物に、飽和又は不飽和多塩基酸無水物を反応させて得られる感光性のカルボキシル基含有樹脂、
(8)一分子中に少なくとも2個のオキセタン環を有する多官能オキセタン化合物に不飽和モノカルボン酸を反応させ、得られた変性オキセタン樹脂中の第一級水酸基に対して飽和又は不飽和多塩基酸無水物を反応させて得られる感光性のカルボキシル基含有樹脂、及び
(9)(a)多官能エポキシ樹脂に(b)不飽和モノカルボン酸を反応させた後、(c)多塩基酸無水物を反応させて得られるカルボキシル基含有樹脂に、さらに、(f)分子中に1個のオキシラン環と1個以上のエチレン性不飽和基を有する化合物を反応させて得られる感光性のカルボキシル基含有樹脂などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0019】
上記に例示したカルボキシル基含有樹脂の中で好ましいものとしては、上記(2)、(5)、(7)のカルボキシル基含有樹脂であり、特に上記(9)のカルボン酸含有感光性樹脂が、光硬化性、硬化塗膜特性の面から好ましい。
なお、本明細書において、(メタ)アクリレートとは、アクリレート、メタクリレート及びそれらの混合物を総称する用語で、他の類似の表現についても同様である。
上記のようなカルボキシル基含有樹脂(A)は、バックボーン・ポリマーの側鎖に多数の遊離のカルボキシル基を有するため、希アルカリ水溶液による現像が可能になる。
【0020】
上記カルボキシル基含有樹脂(A)の酸価は、40〜200mgKOH/gの範囲であり、より好ましくは45〜120mgKOH/gの範囲である。カルボキシル基含有樹脂の酸価が40mgKOH/g未満であるとアルカリ現像が困難となり、一方、200mgKOH/gを超えると現像液による露光部の溶解が進むために、必要以上にラインが痩せたり、場合によっては、露光部と未露光部の区別なく現像液で溶解剥離してしまい、正常なレジストパターンの描画が困難となるので好ましくない。
【0021】
また、上記カルボキシル基含有樹脂(A)の重量平均分子量は、樹脂骨格により異なるが、一般的に2,000〜150,000、さらには5,000〜100,000の範囲にあるものが好ましい。重量平均分子量が2,000未満であると、タックフリー性能が劣ることがあり、露光後の塗膜の耐湿性が悪く現像時に膜減りが生じ、解像度が大きく劣ることがある。一方、重量平均分子量が150,000を超えると、現像性が著しく悪くなることがあり、貯蔵安定性が劣ることがある。
【0022】
このようなカルボキシル基含有樹脂(A)の配合量は、全組成物中に、20〜60質量%、好ましくは30〜50質量%である。上記範囲より少ない場合、塗膜強度が低下したりするので好ましくない。一方、上記範囲より多い場合、粘性が高くなったり、塗布性等が低下するので好ましくない。
【0023】
光重合開始剤(C)としては、下記一般式(I)で表される基を有するオキシムエステル系光重合開始剤(C1)、下記一般式(II)で表される基を有するα−アミノアセトフェノン系光重合開始剤(C2)、及び下記式(III)で表される基を有するアシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤(C3)からなる群から選択される1種以上の光重合開始剤を使用することが好ましい。特に、オキシムエステル系光重合開始剤(C1)、又は、該オキシムエステル系光重合開始剤(C1)と、α−アミノアセトフェノン系光重合開始剤(C2)及び/又はアシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤(C3)との混合物が好ましい。
【化1】

(式中、Rは、水素原子、フェニル基(炭素数1〜6のアルキル基、フェニル基、若しくはハロゲン原子で置換されていてもよい)、炭素数1〜20のアルキル基(1個以上の水酸基で置換されていてもよく、アルキル鎖の中間に1個以上の酸素原子を有していてもよい)、炭素数5〜8のシクロアルキル基、炭素数2〜20のアルカノイル基又はベンゾイル基(炭素数が1〜6のアルキル基若しくはフェニル基で置換されていてもよい)を表し、
は、フェニル基(炭素数1〜6のアルキル基、フェニル基若しくはハロゲン原子で置換されていてもよい)、炭素数1〜20のアルキル基(1個以上の水酸基で置換されていてもよく、アルキル鎖の中間に1個以上の酸素原子を有していてもよい)、炭素数5〜8のシクロアルキル基、炭素数2〜20のアルカノイル基又はベンゾイル基(炭素数が1〜6のアルキル基若しくはフェニル基で置換されていてもよい)を表し、
及びRは、それぞれ独立に、炭素数1〜12のアルキル基又はアリールアルキル基を表し、
及びRは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、又は2つが結合した環状アルキルエーテル基を表し、
及びRは、それぞれ独立に、炭素数1〜10の直鎖状又は分岐状のアルキル基、炭素数1〜10の直鎖状又は分岐状のアルコキシ基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、アリール基、又はハロゲン原子、アルキル基若しくはアルコキシ基で置換されたアリール基を表し、但し、R及びRの一方は、R−C(=O)−基(ここでRは、炭素数1〜20の炭化水素基)を表してもよい)。
【0024】
前記一般式(I)で表される基を有するオキシムエステル系光重合開始剤(C1)としては、好ましくは、下記式(IV)で表される2−(アセチルオキシイミノメチル)チオキサンテン−9−オン、下記一般式(V)で表される化合物、及び下記一般式(VI)で表される化合物が挙げられる。
【化2】

【0025】
【化3】

(式中、Rは、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜12のアルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、フェニル基、ベンジル基、ベンゾイル基、炭素数2〜12のアルカノイル基、炭素数2〜12のアルコキシカルボニル基(アルコキシル基を構成するアルキル基の炭素数が2以上の場合、アルキル基は1個以上の水酸基で置換されていてもよく、アルキル鎖の中間に1個以上の酸素原子を有していてもよい)、又はフェノキシカルボニル基を表し、
10、R12は、それぞれ独立に、フェニル基(炭素数1〜6のアルキル基、フェニル基若しくはハロゲン原子で置換されていてもよい)、炭素数1〜20のアルキル基(1個以上の水酸基で置換されていてもよく、アルキル鎖の中間に1個以上の酸素原子を有していてもよい)、炭素数5〜8のシクロアルキル基、炭素数2〜20のアルカノイル基又はベンゾイル基(炭素数が1〜6のアルキル基若しくはフェニル基で置換されていてもよい)を表し、
11は、水素原子、フェニル基(炭素数1〜6のアルキル基、フェニル基若しくはハロゲン原子で置換されていてもよい)、炭素数1〜20のアルキル基(1個以上の水酸基で置換されていてもよく、アルキル鎖の中間に1個以上の酸素原子を有していてもよい)、炭素数5〜8のシクロアルキル基、炭素数2〜20のアルカノイル基又はベンゾイル基(炭素数が1〜6のアルキル基若しくはフェニル基で置換されていてもよい)を表す)、
【0026】
【化4】

(式中、R13及びR14は、それぞれ独立に、炭素数1〜12のアルキル基を表し、
15、R16、R17及びR18は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表し、及び
nは0〜5の整数を表す)
【0027】
前記したオキシムエステル系光重合開始剤(C1)の中でも、前記式(IV)で表される2−(アセチルオキシイミノメチル)チオキサンテン−9−オン、及び式(V)で表される化合物がより好ましい。市販品としては、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製のCGI−325、イルガキュアー OXE01、イルガキュアー OXE02等が挙げられる。これらのオキシムエステル系光重合開始剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0028】
前記一般式(II)で表される基を有するα−アミノアセトフェノン系光重合開始剤(C2)としては、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパノン−1、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタン−1−オン、2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノン、N,N−ジメチルアミノアセトフェノンなどが挙げられる。市販品としては、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製のイルガキュアー907、イルガキュアー369、イルガキュアー379などが挙げられる。
【0029】
前記一般式(III)で表される基を有するアシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤(C3)としては、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルホスフィンオキサイドなどが挙げられる。市販品としては、BASF社製のルシリンTPO、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製のイルガキュアー819などが挙げられる。
【0030】
このような光重合開始剤(C)の配合量は、前記カルボキシル基含有樹脂(A)100質量部に対して、0.01〜30質量部、好ましくは0.5〜15質量部の範囲が適当である。0.01質量部未満であると、銅上での光硬化性が不足し、塗膜が剥離したり、耐薬品性等の塗膜特性が低下するので好ましくない。一方、30質量部を超えると、光重合開始剤(C)のソルダーレジスト塗膜表面での光吸収が激しくなり、深部硬化性が低下する傾向があるために好ましくない。
なお、前記式(I)で表される基を有するオキシムエステル系光重合開始剤(C1)の場合、その配合量は、前記カルボキシル基含有樹脂(A)100質量部に対して、好ましくは0.01〜20質量部、より好ましくは0.01〜5質量部の範囲から選ぶことが望ましい。
【0031】
前記光重合開始剤(C)の他に本発明の光硬化性・熱硬化性樹脂組成物に好適に用いることができる光重合開始剤、光開始助剤及び増感剤としては、ベンゾイン化合物、アセトフェノン化合物、アントラキノン化合物、チオキサントン化合物、ケタール化合物、ベンゾフェノン化合物、キサントン化合物、及び3級アミン化合物等を挙げることができる。
【0032】
ベンゾイン化合物の具体例を挙げると、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテルである。
アセトフェノン化合物の具体例を挙げると、例えば、アセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1,1−ジクロロアセトフェノンである。
【0033】
アントラキノン化合物の具体例を挙げると、例えば、2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−t−ブチルアントラキノン、1−クロロアントラキノンである。
チオキサントン化合物の具体例を挙げると、例えば、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントンである。
【0034】
ケタール化合物の具体例を挙げると、例えば、アセトフェノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタールである。
ベンゾフェノン化合物の具体例を挙げると、例えば、ベンゾフェノン、4−ベンゾイルジフェニルスルフィド、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルスルフィド、4−ベンゾイル−4’−エチルジフェニルスルフィド、4−ベンゾイル−4’−プロピルジフェニルスルフィドである。
【0035】
3級アミン化合物の具体例を挙げると、例えば、エタノールアミン化合物、ジアルキルアミノベンゼン構造を有する化合物、例えば、4,4’−ジメチルアミノベンゾフェノン(日本曹達社製ニッソキュアーMABP)、4,4’−ジエチルアミノベンゾフェノン(保土ヶ谷化学社製EAB)などのジアルキルアミノベンゾフェノン、7−(ジエチルアミノ)−4−メチル−2H−1−ベンゾピラン−2−オン(7−(ジエチルアミノ)−4−メチルクマリン)等のジアルキルアミノ基含有クマリン化合物、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル(日本化薬社製カヤキュアーEPA)、2−ジメチルアミノ安息香酸エチル(インターナショナルバイオ−シンセエティックス社製Quantacure DMB)、4−ジメチルアミノ安息香酸(n−ブトキシ)エチル(インターナショナルバイオ−シンセエティックス社製Quantacure BEA)、p−ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエチルエステル(日本化薬社製カヤキュアーDMBI)、4−ジメチルアミノ安息香酸2−エチルヘキシル(Van Dyk社製Esolol 507)、4,4’−ジエチルアミノベンゾフェノン(保土ヶ谷化学社製EAB)である。
【0036】
前記した化合物の中でも、チオキサントン化合物及び3級アミン化合物が好ましい。本発明の組成物には、チオキサントン化合物が含まれることが深部硬化性の面から好ましく、中でも、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン等のチオキサントン化合物が好ましい。
【0037】
このようなチオキサントン化合物の配合量としては、上記カルボキシル基含有樹脂(A)100質量部に対して、好ましくは20質量部以下、より好ましくは10質量部以下の割合である。チオキサントン化合物の配合量が多すぎると、厚膜硬化性が低下して、製品のコストアップに繋がるので、好ましくない。
【0038】
3級アミン化合物としては、ジアルキルアミノベンゼン構造を有する化合物が好ましく、中でも、ジアルキルアミノベンゾフェノン化合物、最大吸収波長が350〜410nmにあるジアルキルアミノ基含有クマリン化合物が特に好ましい。ジアルキルアミノベンゾフェノン化合物としては、4,4’−ジエチルアミノベンゾフェノンが、毒性も低く好ましい。最大吸収波長が350〜410nmにあるジアルキルアミノ基含有クマリン化合物は、最大吸収波長が紫外線領域にあるため、着色が少なく、無色透明な光硬化性・熱硬化性樹脂組成物はもとより、着色顔料を用い、着色顔料自体の色を反映した着色ソルダーレジスト膜を提供することが可能となる。特に、7−(ジエチルアミノ)−4−メチル−2H−1−ベンゾピラン−2−オンが波長400〜410nmのレーザー光に対して優れた増感効果を示すことから好ましい。
【0039】
このような3級アミン化合物の配合量としては、上記カルボキシル基含有樹脂(A)100質量部に対して、好ましくは0.1〜20質量部、より好ましくは0.1〜10質量部の割合である。3級アミン化合物の配合量が0.1質量部以下であると、十分な増感効果を得ることができない傾向にある。一方、20質量部を超えると、3級アミン化合物による乾燥ソルダーレジスト塗膜の表面での光吸収が激しくなり、深部硬化性が低下する傾向がある。
【0040】
前記したような光重合開始剤、光開始助剤及び増感剤は、単独で又は2種類以上の混合物として使用することができる。
このような光重合開始剤、光開始助剤、及び増感剤の総量は、前記カルボキシル基含有樹脂(A)100質量部に対して35質量部以下となる範囲であることが好ましい。35質量部を超えると、これらの光吸収により深部硬化性が低下する傾向にある。
【0041】
本発明の光硬化性・熱硬化性樹脂組成物に用いられる分子中に2個以上のエチレン性不飽和基を有する化合物(D)は、活性エネルギー線照射により、光硬化して、未露光部をアルカリ水溶液に不溶化させ、又は不溶化を助けるものである。このような化合物としては、エチレングリコール、メトキシテトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコールなどのグリコールのジアクリレート類;ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリス−ヒドロキシエチルイソシアヌレートなどの多価アルコール又はこれらのエチレオキサイド付加物もしくはプロピレンオキサイド付加物などの多価アクリレート類;フェノキシアクリレート、ビスフェノールAジアクリレート、及びこれらのフェノール類のエチレンオキサイド付加物もしくはプロピレンオキサイド付加物などの多価アクリレート類;グリセリンジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、トリグリシジルイソシアヌレートなどのグリシジルエーテルの多価アクリレート類;及びメラミンアクリレート、及び/又は上記アクリレートに対応する各メタクリレート類などが挙げられる。
【0042】
さらに、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂などの多官能エポキシ樹脂に、アクリル酸を反応させたエポキシアクリレート樹脂や、さらにそのエポキシアクリレート樹脂の水酸基に、ペンタエリスリトールトリアクリレートなどのヒドロキシアクリレートとイソホロンジイソシアネートなどのジイソシアネートのハーフウレタン化合物を反応させたエポキシウレタンアクリレート化合物などが、挙げられる。このようなエポキシアクリレート系樹脂は、指触乾燥性を低下させることなく、光硬化性を向上させることができる
【0043】
このような分子中に2個以上のエチレン性不飽和基を有する化合物(D)の配合量は、前記エチレン性不飽和基含有カルボキシル基含有樹脂(A)100質量部に対して、5〜100質量部、より好ましくは、1〜70質量部の割合である。前記配合量が、5質量部未満の場合、光硬化性が低下し、活性エネルギー線照射後のアルカリ現像により、パターン形成が困難となるので、好ましくない。一方、100質量部を超えた場合、アルカリ水溶液に対する溶解性が低下して、塗膜が脆くなるので、好ましくない。
【0044】
本発明の光硬化性・熱硬化性組成物には、耐熱性を付与するために、熱硬化性成分を加えることができる。熱硬化性成分として特に好ましいものは、エポキシ樹脂(E)であるが、分子中に2個以上の環状エーテル基及び/又は環状チオエーテル基(以下、環状(チオ)エーテル基と略す)を有する熱硬化性樹脂を用いることもできる。
このような分子中に2つ以上の環状(チオ)エーテル基を有する熱硬化性樹脂は、分子中に3、4又は5員環の環状エーテル基、又は環状チオエーテル基のいずれか一方又は2種類の基を2個以上有する化合物であり、例えば、分子内に少なくとも2つ以上のエポキシ基を有する化合物、すなわち多官能エポキシ化合物(E−1)、分子内に少なくとも2つ以上のオキセタニル基を有する化合物、すなわち多官能オキセタン化合物(E−2)、分子内に2個以上のチオエーテル基を有する化合物、すなわちエピスルフィド樹脂(E−3)などが挙げられる。
【0045】
前記多官能エポキシ化合物(E−1)としては、例えば、ジャパンエポキシレジン社製のJER828、JER834、JER1001、JER1004、大日本インキ化学工業社製のエピクロン840、エピクロン850、エピクロン1050、エピクロン2055、東都化成社製のエポトートYD−011、YD−013、YD−127、YD−128、ダウケミカル社製のD.E.R.317、D.E.R.331、D.E.R.661、D.E.R.664、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社のアラルダイド6071、アラルダイド6084、アラルダイドGY250、アラルダイドGY260、住友化学工業社製のスミ−エポキシESA−011、ESA−014、ELA−115、ELA−128、旭化成工業社製のA.E.R.330、A.E.R.331、A.E.R.661、A.E.R.664等(何れも商品名)のビスフェノールA型エポキシ樹脂;ジャパンエポキシレジン社製のYL903、大日本インキ化学工業社製のエピクロン152、エピクロン165、東都化成社製のエポトートYDB−400、YDB−500、ダウケミカル社製のD.E.R.542、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製のアラルダイド8011、住友化学工業社製のスミ−エポキシESB−400、ESB−700、旭化成工業社製のA.E.R.711、A.E.R.714等(何れも商品名)のブロム化エポキシ樹脂;ジャパンエポキシレジン社製のJER152、JER154、ダウケミカル社製のD.E.N.431、D.E.N.438、大日本インキ化学工業社製のエピクロンN−730、エピクロンN−770、エピクロンN−865、東都化成社製のエポトートYDCN−701、YDCN−704、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製のアラルダイドECN1235、アラルダイドECN1273、アラルダイドECN1299、アラルダイドXPY307、日本化薬社製のEPPN−201、EOCN−1025、EOCN−1020、EOCN−104S、RE−306、住友化学工業社製のスミ−エポキシESCN−195X、ESCN−220、旭化成工業社製のA.E.R.ECN−235、ECN−299等(何れも商品名)のノボラック型エポキシ樹脂;大日本インキ化学工業社製のエピクロン830、ジャパンエポキシレジン社製JER807、東都化成社製のエポトートYDF−170、YDF−175、YDF−2001、YDF−2004、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製のアラルダイドXPY306等(何れも商品名)のビスフェノールF型エポキシ樹脂;東都化成社製のエポトートST−2004、ST−2007、ST−3000(商品名)等の水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂;ジャパンエポキシレジン社製のJER604、東都化成社製のエポトートYH−434、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製のアラルダイドMY720、住友化学工業社製のスミ−エポキシELM−120等(何れも商品名)のグリシジルアミン型エポキシ樹脂;チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製のアラルダイドCY−350(商品名)等のヒダントイン型エポキシ樹脂;ダイセル化学工業社製のセロキサイド2021、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製のアラルダイドCY175、CY179等(何れも商品名)の脂環式エポキシ樹脂;ジャパンエポキシレジン社製のYL−933、ダウケミカル社製のT.E.N.、EPPN−501、EPPN−502等(何れも商品名)のトリヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂;ジャパンエポキシレジン社製のYL−6056、YX−4000、YL−6121(何れも商品名)等のビキシレノール型もしくはビフェノール型エポキシ樹脂又はそれらの混合物;日本化薬社製EBPS−200、旭電化工業社製EPX−30、大日本インキ化学工業社製のEXA−1514(商品名)等のビスフェノールS型エポキシ樹脂;ジャパンエポキシレジン社製のJER157S(商品名)等のビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂;ジャパンエポキシレジン社製のYL−931、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製のアラルダイド163等(何れも商品名)のテトラフェニロールエタン型エポキシ樹脂;チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製のアラルダイドPT810、日産化学工業社製のTEPIC等(何れも商品名)の複素環式エポキシ樹脂;日本油脂社製ブレンマーDGT等のジグリシジルフタレート樹脂;東都化成社製ZX−1063等のテトラグリシジルキシレノイルエタン樹脂;新日鉄化学社製ESN−190、ESN−360、大日本インキ化学工業社製HP−4032、EXA−4750、EXA−4700等のナフタレン基含有エポキシ樹脂;大日本インキ化学工業社製HP−7200、HP−7200H等のジシクロペンタジエン骨格を有するエポキシ樹脂;日本油脂社製CP−50S、CP−50M等のグリシジルメタアクリレート共重合系エポキシ樹脂;さらにシクロヘキシルマレイミドとグリシジルメタアクリレートの共重合エポキシ樹脂;エポキシ変性のポリブタジエンゴム誘導体(例えばダイセル化学工業製PB−3600等)、CTBN変性エポキシ樹脂(例えば東都化成社製のYR−102、YR−450等)等が挙げられるが、これらに限られるものではない。これらのエポキシ樹脂は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも特にノボラック型エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂又はそれらの混合物が好ましい。
【0046】
前記多官能オキセタン化合物(E−2)としては、ビス[(3−メチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]エーテル、ビス[(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]エーテル、1,4−ビス[(3−メチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、1,4−ビス[(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、(3−メチル−3−オキセタニル)メチルアクリレート、(3−エチル−3−オキセタニル)メチルアクリレート、(3−メチル−3−オキセタニル)メチルメタクリレート、(3−エチル−3−オキセタニル)メチルメタクリレートやそれらのオリゴマー又は共重合体等の多官能オキセタン類の他、オキセタンアルコールとノボラック樹脂、ポリ(p−ヒドロキシスチレン)、カルド型ビスフェノール類、カリックスアレーン類、カリックスレゾルシンアレーン類、又はシルセスキオキサンなどの水酸基を有する樹脂とのエーテル化物などが挙げられる。その他、オキセタン環を有する不飽和モノマーとアルキル(メタ)アクリレートとの共重合体なども挙げられる。
【0047】
前記分子中に2個以上の環状チオエーテル基を有する化合物(E−3)としては、例えば、ジャパンエポキシレジン社製のビスフェノールA型エピスルフィド樹脂 YL7000などが挙げられる。また、同様の合成方法を用いて、ノボラック型エポキシ樹脂のエポキシ基の酸素原子を硫黄原子に置き換えたエピスルフィド樹脂なども用いることができる。
【0048】
前記分子中に2つ以上の環状(チオ)エーテル基を有する熱硬化性成分、特にエポキシ樹脂(E)の配合量は、前記カルボキシル基含有樹脂(A)のカルボキシル基1当量に対して、好ましくは0.6〜2.5当量、より好ましくは、0.8〜2.0当量となる範囲にある。分子中に2つ以上の環状(チオ)エーテル基を有する熱硬化性成分、特にエポキシ樹脂(E)の配合量が0.6未満である場合、ソルダーレジスト膜にカルボキシル基が残り、耐熱性、耐アルカリ性、電気絶縁性などが低下するので、好ましくない。一方、2.5当量を超える場合、低分子量の環状(チオ)エーテル基が乾燥塗膜に残存することにより、塗膜の強度などが低下するので、好ましくない。
【0049】
上記分子中に2つ以上の環状(チオ)エーテル基を有する熱硬化性成分、特にエポキシ樹脂(E)を使用する場合、熱硬化触媒を含有することが好ましい。そのような熱硬化触媒としては、例えば、イミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、4−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−(2−シアノエチル)−2−エチル−4−メチルイミダゾール等のイミダゾール誘導体;ジシアンジアミド、ベンジルジメチルアミン、4−(ジメチルアミノ)−N,N−ジメチルベンジルアミン、4−メトキシ−N,N−ジメチルベンジルアミン、4−メチル−N,N−ジメチルベンジルアミン等のアミン化合物、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド等のヒドラジン化合物;トリフェニルホスフィン等のリン化合物など、また市販されているものとしては、例えば四国化成工業社製の2MZ−A、2MZ−OK、2PHZ、2P4BHZ、2P4MHZ(いずれもイミダゾール系化合物の商品名)、サンアプロ社製のU−CAT3503N、U−CAT3502T(いずれもジメチルアミンのブロックイソシアネート化合物の商品名)、DBU、DBN、U−CATSA102、U−CAT5002(いずれも二環式アミジン化合物及びその塩)などが挙げられる。特に、これらに限られるものではなく、エポキシ樹脂やオキセタン化合物の熱硬化触媒、もしくはエポキシ基及び/又はオキセタニル基とカルボキシル基の反応を促進するものであればよく、単独で又は2種以上を混合して使用してもかまわない。また、グアナミン、アセトグアナミン、ベンゾグアナミン、メラミン、2,4−ジアミノ−6−メタクリロイルオキシエチル−S−トリアジン、2−ビニル−4,6−ジアミノ−S−トリアジン、2−ビニル−4,6−ジアミノ−S−トリアジン・イソシアヌル酸付加物、2,4−ジアミノ−6−メタクリロイルオキシエチル−S−トリアジン・イソシアヌル酸付加物等のS−トリアジン誘導体を用いることもでき、好ましくはこれら密着性付与剤としても機能する化合物を前記熱硬化触媒と併用する。
【0050】
これら熱硬化触媒の配合量は、通常の量的割合で充分であり、例えばカルボキシル基含有樹脂(A)又は分子中に2つ以上の環状(チオ)エーテル基を有する熱硬化性成分、特にエポキシ樹脂(E)100質量部に対して、好ましくは0.1〜20質量部、より好ましくは0.5〜15.0質量部である。
【0051】
本発明の光硬化性・熱硬化性樹脂組成物は、その塗膜の物理的強度等を上げるために、必要に応じて、フィラーを配合することができる。このようなフィラーとしては、公知慣用の無機又は有機フィラーが使用できるが、特に硫酸バリウム、球状シリカ及びタルクが好ましく用いられる。さらに、1個以上のエチレン性不飽和基を有する化合物や前記多官能エポキシ樹脂(D−1)にナノシリカを分散したHanse−Chemie社製のNANOCRYL(商品名) XP 0396、XP 0596、XP 0733、XP 0746、XP 0765、XP 0768、XP 0953、XP 0954、XP 1045(何れも製品グレード名)や、Hanse−Chemie社製のNANOPOX(商品名) XP 0516、XP 0525、XP 0314(何れも製品グレード名)も使用できる。これらを単独で又は2種以上配合することができる。
【0052】
これらフィラーの配合量は、上記カルボキシル基含有樹脂(A)100質量部に対して、好ましくは300質量部以下、より好ましくは0.1〜300質量部、特に好ましくは、0.1〜150質量部である。フィラーの配合量が、300質量部を超えた場合、光硬化性・熱硬化性樹脂組成物の粘度が高くなり印刷性が低下したり、硬化物が脆くなるので好ましくない。
【0053】
さらに、本発明の光硬化性・熱硬化性樹脂組成物は、上記カルボキシル基含有樹脂(A)の合成や組成物の調製のため、又は基板やキャリアフィルムに塗布するための粘度調整のため、有機溶剤を使用することができる。
【0054】
このような有機溶剤としては、ケトン類、芳香族炭化水素類、グリコールエーテル類、グリコールエーテルアセテート類、エステル類、アルコール類、脂肪族炭化水素、石油系溶剤などが挙げることができる。より具体的には、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素類;セロソルブ、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、カルビトール、メチルカルビトール、ブチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールブチルエーテルアセテートなどのエステル類;エタノール、プロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルコール類;オクタン、デカン等の脂肪族炭化水素;石油エーテル、石油ナフサ、水添石油ナフサ、ソルベントナフサ等の石油系溶剤などである。このような有機溶剤は、単独で又は2種以上の混合物として用いられる。
【0055】
本発明の光硬化性・熱硬化性樹脂組成物は、さらに必要に応じて、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、t−ブチルカテコール、ピロガロール、フェノチアジンなどの公知慣用の熱重合禁止剤、微粉シリカ、有機ベントナイト、モンモリロナイトなどの公知慣用の増粘剤、シリコーン系、フッ素系、高分子系などの消泡剤及び/又はレベリング剤、イミダゾール系、チアゾール系、トリアゾール系等のシランカップリング剤、酸化防止剤、防錆剤などのような公知慣用の添加剤類を配合することができる。
【0056】
本発明の光硬化性・熱硬化性樹脂組成物は、キャリアフィルムと、該キャリアフィルム上に形成された上記光硬化性・熱硬化性樹脂組成物からなる層とを備えたドライフィルムの形態とすることもできる。
ドライフィルム化に際しては、本発明の光硬化性・熱硬化性樹脂組成物を適切な粘度に前記有機溶剤で希釈し、コンマコーター、ブレードコーター、リップコーター、ロッドコーター、スクイズコーター、リバースコーター、トランスファロールコーター、グラビアコーター、スプレーコーター等で支持体上に均一な厚さに塗布し、通常、50〜130℃の温度で1〜30分間乾燥して膜を得ることができる。塗布膜厚については特に制限はないが、一般に、乾燥後の膜厚で、10〜150μm、好ましくは20〜60μmの範囲で適宜選択される。
【0057】
キャリアフィルムとしては、プラスチックフィルムが用いられ、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステルフィルム、ポリイミドフィルム、ポリアミドイミドフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリスチレンフィルム等のプラスチックフィルムを用いることが好ましい。キャリアフィルムの厚さについては特に制限はないが、一般に、10〜150μmの範囲で適宜選択される。
【0058】
キャリアフィルム上に成膜した後、さらに、膜の表面に塵が付着するのを防ぐなどの目的で、膜の表面に剥離可能なカバーフィルムを積層することが望ましい。
剥離可能なカバーフィルムとしては、例えば、ポリエチレンフィルム、ポリテトラフルオロエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、表面処理した紙等を用いることができ、カバーフィルムを剥離するときに膜と支持体との接着力よりも膜とカバーフィルムとの接着力がより小さいものであればよい。
【0059】
以上のような組成を有する本発明の光硬化性・熱硬化性樹脂組成物は、必要に応じて希釈して塗布方法に適した粘度に調整し、これを例えば、回路形成されたプリント配線板にスクリーン印刷法、カーテンコート法、スプレーコート法、ロールコート法等の方法により塗布し、例えば約60〜100℃の温度で組成物中に含まれる有機溶剤を揮発乾燥させることにより、タックフリーの塗膜を形成できる。
【0060】
回路形成されたプリント配線板上に塗膜を形成した後(上記ドライフィルムを用いた場合は、回路形成されたプリント配線板上にラミネート後、支持体を剥がさず)、レーザー光等の活性エネルギー線をパターン通りに直接照射するか、又はパターンを形成したフォトマスクを通して選択的に活性エネルギー線により露光し、未露光部を希アルカリ水溶液により現像してレジストパターンを形成できる(上記ドライフィルムを用いた場合、露光後、支持体を剥がし、現像する)。その後さらに、加熱硬化のみ、又は活性エネルギー線の照射後加熱硬化もしくは加熱硬化後活性エネルギー線の照射で最終硬化(本硬化)させることにより、電気絶縁性、PCT耐性,密着性、はんだ耐熱性、耐薬品性、無電解金めっき耐性などに優れた硬化膜(硬化物)が形成される。
【0061】
本発明の光硬化性・熱硬化性樹脂組成物は、例えば前記有機溶剤で塗布方法に適した粘度に調整し、基材上に、ディップコート法、フローコート法、ロールコート法、バーコーター法、スクリーン印刷法、カーテンコート法等の方法により塗布し、約60〜100℃の温度で組成物中に含まれる有機溶剤を揮発乾燥(仮乾燥)させることにより、タックフリーの塗膜を形成できる。また、前記ドライフィルムの形態の場合、基材上にホットロールラミネーター等を用いて貼り合わせる(前記光硬化性・熱硬化性樹脂組成物層と基材とが接触するように貼り合わせる)。上記フィルムの光硬化性・熱硬化性樹脂組成物層上に、さらに剥離可能なカバーフィルムを備えたドライフィルムの場合、カバーフィルムを剥がした後、上記光硬化性・熱硬化性樹脂組成物層と基材とが接触するようにホットロールラミネーター等を用いて貼り合わせる。
【0062】
その後、得られた塗膜(光硬化性・熱硬化性樹脂組成物層)に対し、露光(活性エネルギー線の照射)を行う。露光は、接触式(又は非接触方式)により、パターンを形成したフォトマスクを通して選択的に活性エネルギー線により露光する方法、あるいはレーザーダイレクト露光機により直接パターン露光する方法のいずれでもよい。この露光により、塗膜は、露光部(活性エネルギー線により照射された部分)が硬化する。次いで、未露光部を希アルカリ水溶液(例えば0.3〜3%炭酸ソーダ水溶液)により現像してレジストパターンが形成される。さらに、例えば約140〜180℃の温度に加熱して熱硬化させることにより、前記カルボキシル基含有樹脂(A)のカルボキシル基と、分子中に2個以上の環状エーテル基及び/又は環状チオエーテル基を有する熱硬化性成分が反応し、耐熱性、耐薬品性、耐吸湿性、密着性、電気特性などの諸特性に優れた硬化塗膜を形成することができる。
【0063】
上記基材としては、紙−フェノール樹脂、紙−エポキシ樹脂、ガラス布−エポキシ樹脂、ガラス−ポリイミド、ガラス布/不繊布−エポキシ樹脂、ガラス布/紙−エポキシ樹脂、合成繊維−エポキシ樹脂、フッ素樹脂・ポリエチレン・PPO・シアネートエステル等の複合材を用いた全てのグレード(FR−4等)の銅張積層板や、ポリイミドフィルム、PETフィルム、ガラス基板、セラミック基板、ウエハ板等を用いることができる。
【0064】
本発明の光硬化性・熱硬化性樹脂組成物を塗布した後に行う揮発乾燥は、熱風循環式乾燥炉、IR炉、ホットプレート、コンベクションオーブンなど(蒸気による空気加熱方式の熱源を備えたものを用い、乾燥機内の熱風を向流接触せしめる方法や、ノズルより支持体に吹き付ける方式)を用いて行うことができる。
【0065】
上記活性エネルギー線照射に用いられる露光機としては、直接描画装置(例えば、コンピューターからのCADデータにより直接レーザーで画像を描くレーザーダイレクトイメージング装置)を用いることができる。活性エネルギー線としては、最大波長が350〜410nmの範囲にあるレーザー光を用いていれば、ガスレーザー、固体レーザーのどちらでもよい。また、その露光量は膜厚等によって異なるが、一般には5〜200mJ/cm、好ましくは5〜100mJ/cm、さらに好ましくは5〜50mJ/cmの範囲内とすることができる。上記直接描画装置としては、例えば日本オルボテック社製、ペンタックス社製等のものを使用することができ、最大波長が350〜410nmのレーザー光を発振する装置であればいずれの装置を用いてもよい。
【0066】
前記現像方法としては、ディッピング法、シャワー法、スプレー法、ブラシ法等によることができ、現像液としては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、リン酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、アンモニア、アミン類などのアルカリ水溶液が使用できる。
【実施例】
【0067】
以下に実施例及び比較例を示して本発明について具体的に説明するが、本発明が下記実施例に限定されるものではないことはもとよりである。
【0068】
合成例1
攪拌機、温度計、環流冷却管、滴下ロート及び窒素導入管を備えた2リットルのセパラブルフラスコに、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(日本化薬(株)製、EOCN−104S、軟化点92℃、エポキシ当量220)660g、カルビトールアセテート 421.3g、及びソルベントナフサ 180.6gを導入し、90℃に加熱・攪拌し、溶解した。次に、一旦60℃まで冷却し、アクリル酸 216g、トリフェニルホスフィン 4.0g、メチルハイドロキノン1.3gを加えて、100℃で12時間反応させ、酸価が0.2mgKOH/gの反応生成物を得た。これにテトラヒドロ無水フタル酸 241.7gを仕込み、90℃に加熱し、6時間反応させた。これにより、酸価50mgKOH/g、二重結合当量(不飽和基1モル当りの樹脂のg重量)400、重量平均分子量7,000のカルボキシル基含有樹脂(A)の溶液を得た。以下、このカルボキシル基含有樹脂の溶液を、A−1ワニスと称す。
【0069】
合成例2
攪拌機、温度計、環流冷却管、滴下ロート及び窒素導入管を備えた2リットルのセパラブルフラスコに、o−クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(エポキシ当量215、1分子中に平均して6個のフェノール核を有する)430g及びアクリル酸144g(2モル)を仕込んだ。撹拌しつつ120℃まで加熱し、120℃を保ったまま10時間反応を続けた。いったん反応生成物を室温まで冷却し、無水コハク酸190g(1.9モル)を加え、80℃に加熱して4時間反応した。ふたたび、この反応生成物を室温まで冷却した。この生成物固形分の酸価は、139mgKOH/gであった。
この溶液にグリシジルメタクリレート85.2g(0.6モル)及びプロピレングリコールメチルエーテルアセテート45.9gを加え、撹拌しつつ110℃まで加熱し、110℃を保ったまま6時間反応を続けた。この反応生成物を室温まで冷却したところ、粘調な溶液が得られた。このようにして、不揮発分65質量%、固形分酸価86mgKOH/gのカルボキシル基含有樹脂(A)の溶液を得た。以下、このカルボキシル基含有樹脂の溶液を、A−2ワニスと称す。
【0070】
合成例3
上記合成例1のアクリル酸をメタアクリル酸に代える以外は同様にして、カルボキシル基含有樹脂(A)の溶液を得た。以下、このカルボキシル基含有樹脂の溶液を、A−3ワニスと称す。
【0071】
実施例1〜7、比較例1,2
上記各合成例の樹脂溶液を用い、表1に示す種々の成分と共に表1に示す割合(質量部)にて配合し、攪拌機にて予備混合した後、3本ロールミルで混練し、ソルダーレジスト用光硬化性・熱硬化性樹脂組成物を調製した。ここで、得られた光硬化性・熱硬化性樹脂組成物の分散度をエリクセン社製グラインドメータによる粒度測定にて評価したところ15μm以下であった。
【表1】

【0072】
性能評価:
<最適露光量>
前記実施例及び比較例の光硬化性・熱硬化性樹脂組成物を、銅厚35μmの回路パターン基板をバフロール研磨後、水洗し、乾燥してからスクリーン印刷法により全面に塗布し、80℃の熱風循環式乾燥炉で60分間乾燥させる。乾燥後、最大波長355nmの半導体レーザーを搭載した直接描画装置、高圧水銀灯ランプを搭載した直描露光機又は高圧水銀灯搭載の露光装置を用いてステップタブレット(コダックNo.2)を介して露光し、現像(30℃、0.2MPa、1質量%炭酸ナトリウム水溶液)を60秒で行った際残存するステップタブレットのパターンが7段の時を最適露光量とした。
【0073】
<解像性>
実施例及び比較例の光硬化性・熱硬化性樹脂組成物を、ライン/スペースが300/300μm、銅厚35μmの回路パターン基板をバフロール研磨後、水洗し、乾燥してからスクリーン印刷法により塗布し、80℃の熱風循環式乾燥炉で30分間乾燥させる。乾燥後、最大波長355nmの半導体レーザーを搭載した直接描画装置を用いて露光した。露光パターンはスペース部に20/30/40/50/60/70/80/90/100μmのラインを描画させる直描用データを使用した。露光量は光硬化性・熱硬化性樹脂組成物の最適露光量となるように活性エネルギー線を照射した。露光後、30℃の1質量%炭酸ナトリウム水溶液によって現像を行ってパターンを描き、150℃×60分の熱硬化をすることにより硬化塗膜を得た。
得られたソルダーレジスト用光硬化性・熱硬化性樹脂組成物の硬化塗膜の最小残存ラインを200倍に調整した光学顕微鏡を用いて求めた(解像性)。
【0074】
特性試験:
上記各実施例及び比較例の組成物を、パターン形成された銅箔基板上にスクリーン印刷で全面塗布し、80℃で20分乾燥し、室温まで放冷する。この基板に最大波長355nmの半導体レーザーを搭載した直接描画装置をもちいて最適露光量でソルダーレジストパターンを露光し、30℃の1%NaCO水溶液をスプレー圧0.2MPaの条件で60秒間現像を行い、レジストパターンを得た。この基板を、UVコンベア炉にて積算露光量1000mJ/cmの条件で紫外線照射した後、150℃で60分加熱して硬化した。得られたプリント基板(評価基板)に対して以下のように特性を評価した。
【0075】
<塗膜の色>
上記実施例及び比較例のアルカリ現像型ソルダーレジストを、硬化物の色を目視にて、判断した。
【0076】
<はんだ耐熱性>
ロジン系フラックスを塗布した評価基板を、予め260℃に設定したはんだ槽に浸漬し、変性アルコールでフラックスを洗浄した後、目視によるレジスト層の膨れ・剥がれについて評価した。判定基準は以下のとおりである。
◎:10秒間浸漬を6回以上繰り返しても剥がれが認められない。
○:10秒間浸漬を3回以上繰り返しても剥がれが認められない。
△:10秒間浸漬を3回以上繰り返すと少し剥がれる。
×:10秒間浸漬を3回以内にレジスト層に膨れ、剥がれがある。
【0077】
<耐無電解金めっき性>
評価基板に、市販品の無電解ニッケルめっき浴及び無電解金めっき浴を用いて、ニッケル0.5μm、金0.03μmの条件でめっきを行い、テープピーリングにより、レジスト層の剥がれの有無やめっきのしみ込みの有無を評価した後、テープピーリングによりレジスト層の剥がれの有無を評価した。判定基準は以下のとおりである。
◎:染み込み、剥がれが見られない。
○:めっき後に少し染み込みが確認されるが、テープピール後は剥がれない。
△:めっき後にほんの僅かしみ込みが見られ、テープピール後に剥がれも見られる。
×:めっき後に剥がれが有る。
【0078】
<電気特性>
銅箔基板に代えてIPC B−25のクシ型電極Bクーポンを用い、上記の条件で評価基板を作製し、このクシ型電極にDC100Vのバイアス電圧を印加し、85℃、85%R.H.の恒温恒湿槽にて1,000時間後のマイグレーションの有無を確認した。判定基準は以下のとおりである。
○:全く変化が認められないもの
△:ほんの僅か変化したもの
×:マイグレーションが発生しているもの
【0079】
<耐酸性>
評価基板を10vol%HSO水溶液に室温で30分間浸漬し、染み込みや塗膜の溶け出し、さらにテープビールによる剥がれを確認した。判定基準は以下のとおり。
○:染み込み、溶け出し、剥がれなし。
△:染み込み、溶け出し、もしくは剥がれが少し確認される。
×:染み込み、溶け出し、もしくは剥がれが大きく確認される。
【0080】
<最大現像ライフ>
各実施例及び比較例の組成物を、パターン形成された銅箔基板上にスクリーン印刷で全面塗布し、80℃で乾燥し20分から80分まで10分おきに基板を取り出し室温まで放冷する。この基板に30℃の1%NaCO水溶液をスプレー圧0.2MPaの条件で60秒間現像を行い、残渣が残らない最大許容乾燥時間を最大現像ライフとした。
【0081】
前記各評価試験の結果を表2にまとめて示す。
【表2】

尚、比較例1は光重合開始剤の失活によると思われるレジストの剥がれが現像後銅回路上に発生していた。
【0082】
安定性試験:
表3に示す配合例に従い、主剤と硬化剤に分けて、各成分を表3に示す割合(質量部)にて配合し、攪拌機にて予備混合した後、3本ロールミルで混練し、ソルダーレジスト用光硬化性・熱硬化性樹脂組成物を調製した。ここで、得られた光硬化性・熱硬化性樹脂組成物の分散度をエリクセン社製グラインドメータによる粒度測定にて評価したところ15μm以下であった。
【表3】

【0083】
得られた主剤と硬化剤に関して、表4のように355nmレーザー露光機による感度と最大現像ライフの評価を行った。保存安定性に関しては、得られた主剤と硬化剤をそれぞれポリエチレン製の密封容器に入れ30℃の恒温機に入れて30日後60日後の評価を行った。
得られた結果を表4に示す。
【0084】
【表4】

【0085】
比較例4
表3に示す配合例5において、主剤と硬化剤を調整後、直ちに混合し、30℃で60日保管したものは、現像ライフが30分と著しく短くなっていた。
【0086】
比較例5
表3に示す配合例5において、(B2)ペンタエリスリトール テトラキス(3−メルカプトブチレート)を硬化剤側に配合して調整したものは、30℃で30日保管した後、混合して試験したが、現像が出来なかった。
【0087】
実施例18
表1に示す実施例3に従って調製した光硬化性・熱硬化性樹脂組成物をメチルエチルケトンで希釈し、キャリアフィルム上に塗布し、加熱乾燥して、厚さ20μmの光硬化性・熱硬化性樹脂組成物層を形成し、その上にカバーフィルムを貼り合わせてドライフィルムを得た。その後、カバーフィルムを剥がし、パターン形成された銅箔基板に、フィルムを貼り合わせ、次いで、キャリアフィルムを剥がし、80℃の熱風乾燥器で30分、乾燥させ、その後、150℃の熱風乾燥器で60分加熱硬化を行ない、試験基板を作製した。得られた硬化皮膜を有する試験基板について、前述した試験方法及び評価方法にて、各特性の評価試験を行なった。結果は、実施例3と同等であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)カルボキシル基含有樹脂、(B)メルカプトブタン酸又はその誘導体、(C)光重合開始剤、(D)分子中に2個以上のエチレン性不飽和基を有する化合物、及び(E)エポキシ樹脂を含有することを特徴とする光硬化性・熱硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
前記カルボキシル基含有樹脂(A)が、ラジカル重合可能な不飽和二重結合を有するカルボキシル基含有樹脂(A1)であること特徴とする請求項1に記載の光硬化性・熱硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
前記カルボキシル基含有樹脂(A1)の不飽和二重結合の一部もしくはすべてがメタアクリル酸又はその誘導体に由来するものであることを特徴とする請求項2に記載の光硬化性・熱硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
前記メルカプトブタン酸又はその誘導体(B)が、1分子内に2個以上の2−メルカプトイソブタン酸もしくは3−メルカプトブタン酸又はそれらの誘導体を有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の光硬化性・熱硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
前記エポキシ樹脂(E)が、前記メルカプトブタン酸又はその誘導体(B)が配合された混合物とは別の混合物に配合されている2液型組成物であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の光硬化性・熱硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
少なくとも前記カルボキシル基含有樹脂(A)と前記メルカプトブタン酸又はその誘導体(B)の混合物と、前記光重合開始剤(C)とエポキシ樹脂(E)の混合物からなる2液型組成物であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の光硬化性・熱硬化性樹脂組成物。
【請求項7】
さらに着色剤(F)を含有するソルダーレジストであることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の光硬化性・熱硬化性樹脂組成物。
【請求項8】
前記請求項1乃至7のいずれか一項に記載の光硬化性・熱硬化性樹脂組成物を、キャリアフィルムに塗布・乾燥して得られる光硬化性・熱硬化性のドライフィルム。
【請求項9】
前記請求項1乃至7のいずれか一項に記載の光硬化性・熱硬化性樹脂組成物、又は前記請求項8に記載のドライフィルムを、銅上にて光硬化して得られる硬化物。
【請求項10】
前記請求項1乃至7のいずれか一項に記載の光硬化性・熱硬化性樹脂組成物、又は前記請求項8に記載のドライフィルムを、350nm〜410nmのレーザー発振光源にてパターン状に光硬化して得られる硬化物。
【請求項11】
前記請求項1乃至7のいずれか一項に記載の光硬化性・熱硬化性樹脂組成物、又は前記請求項8に記載のドライフィルムを、波長が350nm〜410nmの紫外線の直接描画にてパターン状に光硬化させた後、熱硬化して得られるレジストパターンを有するプリント配線板。

【公開番号】特開2012−78869(P2012−78869A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−1891(P2012−1891)
【出願日】平成24年1月10日(2012.1.10)
【分割の表示】特願2007−148648(P2007−148648)の分割
【原出願日】平成19年6月4日(2007.6.4)
【出願人】(591021305)太陽ホールディングス株式会社 (327)
【Fターム(参考)】