説明

光硬化性組成物、その色素増感型太陽電池用シーリング材としての使用、及び色素増感型太陽電池

【課題】色素増感型太陽電池の電解液を封止するのに適した光硬化性組成物を提供すること、特に、電解液で濡れている基板に対する接着性に優れた光硬化性組成物を提供すること。
【解決手段】炭素数10〜22の単官能(メタ)アクリレート100質量部に対して、液状飽和エラストマー70〜180質量部、及び光重合開始剤0.1〜10質量部を含有する光硬化性組成物、該光硬化性組成物の色素増感型太陽電池用シーリング材としての使用、並びに該光硬化性組成物から形成された光硬化物層が電解液を封入するためのシーリング層として配置されている色素増感型太陽電池。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光硬化性組成物に関し、さらに詳しくは、色素増感型太陽電池における電解液のシーリング材として優れた特性を示す光硬化性組成物に関する。また、本発明は、該光硬化性組成物の色素増感型太陽電池用シーリング材としての使用に関する。さらに、本発明は、該光硬化性組成物から形成された光硬化物層をシーリング層とする色素増感型太陽電池に関する。
【背景技術】
【0002】
色素増感型太陽電池は、従来の太陽電池のようにシリコン半導体を使用せず、色素を用いて太陽光から電気を取り出す新しい太陽電池である。色素増感型太陽電池は、低コストで製造することができることに加えて、プラスチックフィルム基板を用いることにより薄型化や屈曲性の付与が可能なこと、様々な色素分子を使用することによりカラフルな太陽電池を作製することができること、自動車や衣類、カーテンなどに簡単に装着できることなど、多彩な特徴を有している。
【0003】
近年、色素増感型太陽電池の実用化に向けて、エネルギー変換効率の向上に関する研究開発が進められているが、その実用化を進める上で、電解液を封入するのに適したシーリング材の開発が欠かせない重要課題のひとつとなっている。色素増感型太陽電池は、一般に、2枚の導電性基板間に電解液が封入された構造を有している。電解液の封入には、シーリング材が用いられるため、シーリング材の封止性や電解液に対する耐性の向上が、色素増感型太陽電池の信頼性と耐久性を高める上で不可欠である。
【0004】
より具体的に説明すると、代表的な色素増感型太陽電池は、図1に示す構造を有している。図1は、色素増感型太陽電池の基本構造を示す断面図である。ガラスまたはプラスチックフィルムからなる透明基板1の片面に、透明導電膜2が形成されており、該透明導電膜2の上に、二酸化チタン粒子などの金属酸化物半導体粒子を焼き付けた金属酸化物半導体層4が形成されている。金属酸化物半導体層4は、通常、多孔質構造を有しており、その表面及び多孔質構造の内部に多数の色素3が吸着されている。
【0005】
上記の「透明基板/透明導電膜/色素を吸着した金属酸化物半導体膜」の層構成を有する第一導電性基板(作用電極基板)に対向して、基板8上に導電膜(導電層)7を形成した「導電膜/基板」の層構成を有する第二導電性基板(対極基板)が配置されている。両導電性基板は、各導電膜側で対向して、これらの導電性基板の周辺部に枠状に設けられたシーリング層6を介して配置されている。
【0006】
導電膜(導電層)7自体が第二導電性基板としての役割を果たす場合には、基板8を省略することができる。色素増感型太陽電池が1枚の透明基板に直列構造セルを形成させたモノリシック型である場合には、第二導電性基板に代えて、導電膜を有しない第二基板を用いることができる。モノリシック型で用いる第二基板は、透明であっても、不透明であってもよい。
【0007】
シーリング層は、一般に、シーリング材により形成されているが、固体のスペーサーが用いられたり、固体のスペーサーと接着剤とが併用されたりすることがある。シーリング層6により形成された両導電性基板間の隙間に、様々な方法により電解液5を封入する。電解液5としては、一般に、有機溶媒に電解質を溶解した溶液が用いられている。このような電解液としては、例えば、ヨウ素とヨウ化リチウムとを含有するアセトニトリル/エチレンカーボネート混合溶液が代表的なものである。
【0008】
色素増感型太陽電池に光を当てると、先ず、色素3が光を吸収して、電子を放出する。電子は、金属酸化物半導体層4に素早く移動し、そこから透明導電膜2を伝わり、さらに回路9及び11を経て、対極の導電膜7に伝わる。対極の導電膜7に伝わった電子は、電解液中の三ヨウ化物イオン(I)を還元して、ヨウ化物イオン(I)に変換する。ヨウ化物イオンは、色素3上で再び酸化されて三ヨウ化物イオンとなる。このようにして、色素増感型太陽電池内では、酸化−還元反応のサイクルが繰り返される。
【0009】
このサイクルを繰り返すことにより、回路9及び11に電流が流れる。回路9及び11を負荷(例えば、モーター、照明機器)10に接続すれば、色素増感型太陽電池から電気エネルギーを取り出すことができる。充放電過程で電荷輸送に関与する電解質としては、ヨウ素/ヨウ素化合物の組み合わせ以外にも、様々なレドックス系を用いることができるが、その場合にも、同様の酸化−還元反応のサイクルが繰り返される。
【0010】
シーリング層6の封止性が悪いと、電解液が漏れやすくなる。初期の封止性が良好であっても、シーリング層6の電解液に対する耐性が不十分であると、経時により電解液によって膨潤したり、電解質との反応によって劣化したりする。その結果、電解液が漏れたり、電解質濃度が低下したりするため、色素増感型太陽電池の信頼性と耐久性が著しく低下する。
【0011】
色素増感型太陽電池の基本原理や構造については、例えば、特許第2664194号公報(特許文献1)及び特公平8−15097号公報(特許文献2)に詳細な開示がある。電解液の封止方法について、特許文献1には、合成樹脂やガラスなどの電気絶縁材料からなる枠を用いて封止する方法が記載されている。特許文献2には、シーラントとして、シリコン接着剤、ポリエチレン及びエポキシ樹脂を用いることが記載されている。
【0012】
特開2000−30767号公報(特許文献3)には、色素増感型太陽電池の電解液注入用開口部をシリコン樹脂やエポキシ樹脂で封止する方法が記載されている。特開2000−150005号公報(特許文献4)には、色素増感型半導体電極が形成されたチタン基板と、白金が蒸着されたITO薄膜の付いたガラス基板とを、スペーサー(ポリエステルフィルム)を介して張り合わせ、その隙間にヨウ素電解液をいれ、周囲にエポキシ樹脂を塗布し硬化させて接合した構造を有する色素増感型太陽電池が記載されている。特開2000−294814号公報(特許文献5)には、色素増感型太陽電池の電極間の4辺の端部にスペーサー(ポリテトラフルオロエチレンシート)を挟み、注入口2箇所を残し周囲をエポキシ接着剤でシールした構造を有する色素増感型太陽電池が記載されている。
【0013】
しかし、固体のスペーサーは、2枚の導電性基板間に圧縮された状態で配置されているため、経時により弾力性が損なわれて、シールとしての信頼性が低下しやすい。シリコン樹脂やエポキシ樹脂などのシーラントは、色素増感型太陽電池の電解液により侵されやすく、長期間にわたって電解液と接触することにより、膨潤したり、劣化したりして、電解液が漏れることがある。
【0014】
特開2000−186114号公報(特許文献6)には、エチレン−不飽和カルボン酸共重合体またはそのアイオノマーを太陽電池素子封止材料として使用する方法が提案されている。同様に、特開2001−144313号公報(特許文献7)には、エチレン−極性モノマー共重合体にカップリング剤を配合した樹脂組成物を太陽電池素子封止材料として使用する方法が提案されている。
【0015】
特許文献6及び7に開示されている封止方法は、樹脂材料を押出成形またはプレス成形によりシートに成形し、該シートを所定形状に打抜き加工し、次いで、打抜き加工品を樹脂材料の溶融温度に加熱して基板に圧着させるというものである。特許文献6及び7には、太陽電池モジュールとして、シリコン、ガリウム−砒素、銅−インジウム−セレンなどの半導体を用いたものが開示されているだけであって、電解液を用いる湿式太陽電池である色素増感型太陽電池については記載されていない。
【0016】
特許文献6及び7に開示されているアイオノマーの如き樹脂材料は、シーリング材として使用するために、予め所定形状に打抜き加工する必要がある。該樹脂材料は、固体でかつ溶剤に難溶性であることから、スクリーン印刷などのパターン印刷技術により導電性基板上に塗工してシーリングパターンを形成することができない。そのため、該樹脂材料を使用する方法は、製造工程が多く、打抜き加工による歩留まりの低下もある。
【0017】
しかも、該樹脂材料の打抜き加工品を基板に接着させるには、該打ち抜き加工品を樹脂材料の溶融温度にまで加熱する必要がある。色素増感型太陽電池における導電性基板の封止は、各導電性基板の導電膜側で行われるが、作用電極基板の導電膜上には、色素を吸着した金属酸化物半導体膜が存在している。色素増感型太陽電池に使用する色素は、必ずしも高度の耐熱性を有するものだけではないので、封止加工の際の加熱により色素が劣化もしくは破壊されないようにする必要がある。そのため、樹脂材料の打ち抜き加工品を用いて封止する方法は、実際の適用が困難である。
【0018】
色素増感型太陽電池では、電解質としてヨウ素/ヨウ素化合物の組み合わせが用いられることが多い。ヨウ素は、電解液中ではヨウ素イオンの形で存在しているが、金属イオンで架橋したアイオノマーは、ヨウ素イオンと反応する。そのため、アイオノマーを封止材料として用いると、経時により電解液中のヨウ素イオン濃度が低下するおそれがある。
【0019】
特開2004−311036号公報(特許文献8)には、少なくとも1つの(メタ)アクリレート基を有するイソプレン重合体を主成分とする色素増感型太陽電池用封止組成物が開示されている。特許文献8には、該封止組成物に、希釈剤としてイソボルニルアクリレートを添加することや、光重合開始剤を添加することが記載されている。そのため、該封止組成物は、導電性基板上に所望の形状に塗布し、光硬化させることができる。しかし、該封止組成物は、光硬化後にも、イソプレンに由来する炭素−炭素二重結合が主鎖中に存在するため、この二重結合と電解液中のヨウ素が反応して、ヨウ素濃度の低下による色素増感型太陽電池の性能低下や封止層の接着性低下が生じるおそれがある。
【0020】
特開2005−154528号公報(特許文献9)には、炭素数18〜25の鎖状脂肪族単官能(メタ)アクリレート100重量部、イソボルニル(メタ)アクリレート5〜10重量部、スチレン−イソブチレン−スチレンブロック共重合体5〜30重量部、及びラジカル開始剤1〜10重量部からなる硬化性組成物が開示されている。特許文献9には、該硬化性組成物を色素増感型太陽電池などの封止剤に適用することが記載されている。しかし、該硬化性組成物は、粘度が高く、かつ、チキソトロピー化剤の添加が困難であるため、スクリーン印刷などのパターン印刷技術を適用して、導電性基板上に所望の形状のシーリングパターンを形成することが困難である。
【0021】
特開2005−302564号公報(特許文献10)には、分子内に炭素数10〜20の直鎖脂肪族炭化水素を有する(メタ)アクリレート100重量部、脂環式(メタ)アクリレート5〜15重量部、無水マレイン酸変性水添スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体10重量部以上、及び光重合開始剤を含有する光硬化性の色素増感型太陽電池用シール剤が開示されている。しかし、該光硬化性組成物は、電解液で濡れている基板上に塗布し、光硬化を行った場合、基板に対する接着力が弱いため、光硬化後でないと電解液を注入することができず、色素増感型太陽電池の製造方法が制限を受ける。
【0022】
特開2007−106822号公報(特許文献11)には、イソボルニルアクリレートとアルキル基の炭素数が4〜18のアルキル(メタ)アクリレートとを含むモノマー成分、飽和熱可塑性エラストマー、及び光重合開始剤を含有する光硬化性組成物が開示されている。特許文献11には、該光硬化性組成物を色素増感型太陽電池のシーリング材として使用することが記載されている。しかし、該光硬化性組成物も、電解液で濡れている基板上に塗布し、光硬化を行った場合、基板に対する接着力が弱く、シーリング材の光硬化後でないと電解液を注入することができない。
【0023】
【特許文献1】特許第2664194号公報
【特許文献2】特公平8−15097号公報
【特許文献3】特開2000−30767号公報
【特許文献4】特開2000−150005号公報
【特許文献5】特開2000−294814号公報
【特許文献6】特開2000−186114号公報
【特許文献7】特開2001−144313号公報
【特許文献8】特開2004−311036号公報
【特許文献9】特開2005−154528号公報
【特許文献10】特開2005−302564号公報
【特許文献11】特開2007−106822号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
本発明の課題は、色素増感型太陽電池の電解液を封止するのに適した光硬化性組成物を提供することにある。特に、本発明の課題は、電解液で濡れている基板に対する接着性に優れた光硬化性組成物を提供することにある。
【0025】
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意研究した結果、炭素数10〜22の単官能(メタ)アクリレート、液状飽和エラストマー、及び光重合開始剤を含有する光硬化性組成物が、色素増感型太陽電池の電解液を封止するのに適したシーリング材となり得ることに加えて、電解液で濡れている基板に対する接着性に優れていることを見出した。
【0026】
本発明者らは、多くの(メタ)アクリレートの中でも、炭素数10〜22の単官能(メタ)アクリレートが、電解液に含まれるヨウ素などの電解質や溶剤に対する耐性に優れた光硬化物を与えることを見出した。しかし、該単官能(メタ)アクリレートの光硬化物は、電解液で濡れている基板に対する接着性が不十分であることが判明した。
【0027】
そこで、本発明者らは、炭素数10〜22の単官能(メタ)アクリレートと他の材料との組み合わせによる改良の可能性について更なる検討を行った。その結果、炭素数10〜22の単官能(メタ)アクリレートとラジカル反応に実質的に関与しない液状飽和エラストマーを特定割合で組み合わせて用いることにより、電解液に対する耐性を損なうことなく、電解液で濡れている基板に対する接着性が向上した光硬化性組成物の得られることを見出した。
【0028】
前記特許文献10及び11に開示されている光硬化性組成物を用いたのでは、電解液で濡れている基板上に塗布し、光硬化を行った場合、基板に対する接着力が弱く、光硬化後でないと電解液を注入することができないことからみて、本発明の光硬化性組成物が前記の如き優れた諸特性を有することは、当業者といえども予測できないことであった。本発明の光硬化性組成物は、電離放射線を照射することにより、加熱することなく硬化させることができるため、色素増感型太陽電池の色素を劣化させることがない。本発明は、これらの知見に基づいて完成するに至ったものである。
【課題を解決するための手段】
【0029】
本発明によれば、炭素数10〜22の単官能(メタ)アクリレート100質量部に対して、液状飽和エラストマー70〜180質量部、及び光重合開始剤0.1〜10質量部を含有する光硬化性組成物が提供される。
【0030】
また、本発明によれば、該光硬化性組成物の色素増感型太陽電池用シーリング材としての使用が提供される。
【0031】
さらに、本発明によれば、「透明基板/透明導電膜/色素を吸着した金属酸化物半導体膜」の層構成を持つ第一導電性基板と該第一導電性基板に対向する第二基板とが、これら両基板の周辺部に枠状に設けたシーリング層を介して配置され、該シーリング層によって形成された両基板間の隙間に電解液が封入された構造を有する色素増感型太陽電池において、該シーリング層が、前記の光硬化性組成物から形成された光硬化物層であることを特徴とする色素増感型太陽電池が提供される。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、色素増感型太陽電池の電解液を封止するのに適した光硬化性組成物が提供される。本発明の光硬化性組成物は、電解液で濡れている基板に対する接着性に優れており、色素増感型太陽電池のシーリング材として用いた場合に、光硬化前に電解液を注入する製造方法にも対応することが可能である。
【0033】
本発明の光硬化性組成物を色素増感型太陽電池のシーリング材として用いることにより、色素を劣化させることなく、封止性と電解液に対する耐性に優れたシーリング層を有する色素増感型太陽電池を提供することができる。本発明の色素増感型太陽電池は、シーリング層に起因する電解液の漏洩や電解質濃度の低下が抑制されているため、信頼性と耐久性が顕著に向上したものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
本発明では、光重合性モノマーとして、炭素数10〜22の単官能(メタ)アクリレートを使用する。炭素数10〜22とは、単官能(メタ)アクリレートを構成する全炭素数が10〜22個の範囲内であることを意味する。単官能とは、光重合性の炭素−炭素二重結合の数が1つであること、換言すれば、(メタ)アクリロイル基が1つであることを意味する。(メタ)アクリレートとは、アクリレートまたはメタクリレート若しくはこれらの混合物を意味する。すなわち、本発明において、(メタ)アクリレートとは、アクリレート及び/またはメタクリレートを意味する。
【0035】
炭素数が少なすぎる単官能(メタ)アクリレートは、その沸点が低すぎるため、光硬化性組成物の製造工程や光硬化性組成物の塗布を含む色素増感型太陽電池の製造工程などを低温条件下で行う必要があり、これらの製造条件が制約を受ける。また、炭素数が少なすぎる単官能(メタ)アクリレートを用いると、光硬化性組成物の光硬化時にアウトガスが多くなりすぎるおそれがある。他方、炭素数が多すぎる単官能(メタ)アクリレートを用いると、光硬化性組成物の基板への接着性が低下する傾向にある。
【0036】
単官能(メタ)アクリレートの炭素数は、10〜22の範囲内であり、好ましくは12〜22、より好ましくは13〜21の範囲内である。単官能(メタ)アクリレートの炭素数が上記範囲内にあることによって、光硬化性組成物の基板に対する接着性とシーリング材としての信頼性を十分なものとすることができる。
【0037】
炭素数10〜22の単官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、2−エチルヘキシルアクリレート(炭素数11)、イソノニルアクリレート(炭素数12)、イソデシルアクリレート(炭素数13)、イソボルニルアクリレート(炭素数13)、ジシクロペンタニルアクリレート(炭素数13)、n−ラウリルアクリレート(炭素数15)、イソミリスチルアクリレート(炭素数17)、n−ステアリルアクリレート(炭素数21)、イソステアリルアクリレート(炭素数21)などのアクリレート類;2−エチルヘキシルメタクリレート(炭素数12)、イソノニルメタクリレート(炭素数13)、イソデシルメタクリレート(炭素数14)、イソボルニルメタクリレート(炭素数14)、ジシクロペンタニルメタクリレート(炭素数14)、n−ラウリルメタクリレート(炭素数16)、イソミリスチルメタクリレート(炭素数18)、n−ステアリルメタクリレート(炭素数22)、イソステアリルメタクリレート(炭素数22)などのメタクリレート類;が含まれる。
【0038】
これらの単官能(メタ)アクリレートの中でも、上記のアクリレート類が好ましい。アクリレート類の中でも、イソボルニルアクリレート及びイソステアリルアクリレートが好ましく、これらは、それぞれ単独で、あるいは両者を組み合わせて用いることができる。
【0039】
さらに、アクリレート類としては、イソボルニルアクリレートとアルキル基の炭素数が8〜18のアルキルアクリレートとを、20:80〜100:0の質量比で含有する単官能アクリレートまたは単官能アクリレートモノマー混合物であることが好ましい。アルキル基の炭素数が8〜18のアルキルアクリレートとしては、例えば、2−エチルヘキシルアクリレート、イソデシルアクリレート、n−ラウリルアクリレート、イソミリスチルアクリレート、n−ステアリルアクリレート、イソステアリルアクリレートなどが挙げられる。
【0040】
イソボルニルアクリレートとアルキル基の炭素数が8〜18のアルキルアクリレートとの質量比は、好ましくは30:70〜100:0、より好ましくは40:60〜100:0、特に好ましくは50:50〜100:0の範囲内である。イソボルニルアクリレートとアルキル基の炭素数が8〜18のアルキルアクリレートとを組み合わせて使用する場合には、両者の質量比を、好ましくは20:80〜99:1、より好ましくは30:70〜97:3、さらに好ましくは30:70〜95:5、特に好ましくは50:50〜90:10の範囲内とすることにより、末端官能基を持たない液状飽和エラストマーを用いた場合であっても、電解液で濡れた基板に対する接着性を更に高めることができる。アルキルアクリレートとしては、前述のイソステアリルアクリレートが好ましい。
【0041】
本発明の光硬化性組成物には、炭素数10〜22の単官能(メタ)アクリレートに加えて、所望により、少量の多官能(メタ)アクリレートを含有させてもよい。多官能(メタ)アクリレートを含有させることにより、光硬化性組成物から形成されたシーリング層の耐溶剤性が更に向上する。多官能(メタ)アクリレートとは、二官能以上の多官能アクリレート及び/またはメタクリレートを意味する。
【0042】
多官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,3−ブタンジオールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート、1,10−デカンジオールジアクリレート、ジメチロール−トリシクロデカンジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレートなどのジアクリレート類;1,4−ブタンジオールジメタクリレート、1,3−ブタンジオールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、1,9−ノナンジオールジメタクリレート、1,10−デカンジオールジメタクリレート、ジメチロール−トリシクロデカンジメタクリレート、トリプロピレングリコールジメタクリレートなどのジメタクリレート類;トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレートなどのトリアクリレート類;トリメチロールエタントリメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレートなどのトリメタクリレート類;ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ポリメチロールプロパンポリアクリレートなどの四官能以上のアクリレート類;が挙げられる。これらの多官能(メタ)アクリレートの中でも、ジアクリレート類やジメタクリレート類などの二官能(メタ)アクリレートが好ましい。
【0043】
多官能(メタ)アクリレートは、炭素数10〜22の単官能(メタ)アクリレート100質量部に対して、10質量部までの割合で添加する。多官能(メタ)アクリレートを使用する場合には、その添加割合は、前記単官能(メタ)アクリレート100質量部に対して、好ましくは0.01〜10質量部、より好ましくは0.1〜7質量部、特に好ましくは0.3〜5質量部である。多官能(メタ)アクリレートの添加割合が過小であると、耐溶剤性の改善効果が少なく、過大であると、接着強度が低下したり、光硬化物の柔軟性が低下したりする。本発明の光硬化性組成物は、通常、多官能(メタ)アクリレートを含有させなくても、良好な諸特性を発揮することができる。
【0044】
本発明で使用する液状飽和エラストマーは、ラジカル反応に関与する炭素−炭素二重結合を実質的に含有することがなく、かつ、室温(23±2℃)で流動性を示す低分子量ポリマーである。
【0045】
液状飽和エラストマーの数平均分子量は、好ましくは700〜30,000、より好ましくは800〜20,000、特に好ましくは900〜15,000の範囲内である。数平均分子量は、N−メチル−2−ピロリドンを溶媒とするゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)測定により、標準ポリスチレン換算値として得ることができる。
【0046】
液状飽和エラストマーの具体例としては、例えば、水添ポリブタジエン、末端水酸基含有水添ポリブタジエン、末端カルボキシル基含有水添ポリブタジエン、水添ポリイソプレン、末端水酸基含有ポリイソプレン、末端カルボキシル基含有ポリイソプレン、水添ブタジエン−イソプレン共重合体、及びポリイソブチレンが挙げられる。これらは、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。すなわち、本発明で使用する液状飽和エラストマーは、前記ポリマーからなる群より選ばれる少なくとも一種であることが好ましい。
【0047】
液状飽和エラストマーは、末端に官能基を持たないものを使用することができるが、その末端に水酸基やカルボキシル基などの官能基(末端官能基)が存在するものも使用することができる。末端にカルボキシル基などの官能基を有する液状飽和エラストマーを含有する光硬化性組成物は、電解液で濡れている基板に対する接着性が特に優れている。また、末端官能基を有する液状飽和エラストマーを含有する光硬化性組成物は、未硬化状態及び硬化状態の炭素数10〜22の単官能(メタ)アクリレートとの相溶性に優れている。
【0048】
液状飽和エラストマーが、ラジカル反応に関与する炭素−炭素二重結合を実質的に含有することがないものであることは、例えば、ポリイソブチレンのように分子構造から明らかな場合がある。液状飽和エラストマーの多くは、一般にエラストマー(ゴム)を形成することが可能なジエン系モノマーを出発原料とし、その(共)重合体中の炭素−炭素二重結合を水素添加したものである。水素添加率が低いと、分子中に炭素−炭素二重結合が多量に残存することになる。
【0049】
本発明で使用する液状飽和エラストマーは、水素添加率(H−NMR法により測定)が95%以上、好ましくは98%以上、特に好ましくは99%以上で、炭素−炭素二重結合が実質的に残存しない通常の液状飽和エラストマーである。
【0050】
液状飽和エラストマーが水素添加ポリマー(水添ポリマー)である場合、その不飽和度は、ヨウ素価によって判定することができる。ヨウ素価とは、試料100gに結合するハロゲンの量をヨウ素のg数に換算した値であり、試料の不飽和度を表わすものである(JIS K 6235)。ヨウ素価(mg/100g)が小さいほど、試料の不飽和度が小さいことを示す。本発明で使用する液状飽和エラストマーのヨウ素価は、好ましくは70mg/100g以下、より好ましくは50mg/100g以下、特に好ましくは30mg/100g以下である。
【0051】
液状飽和エラストマーは、該飽和エラストマーに対応する高分子量の飽和エラストマーはゴム的性質を持つものであるが、液状かつ低分子量物であるため、それ自体が必ずしもゴム的性質を持つものでなくてもよい。高分子量ポリイソブチレンは、ゴム状半固体の飽和エラストマーであるが、数平均分子量が30,00以下、特に15,000以下の低分子量ポリイソブチレンは、流動性を有する粘稠な液体である。
【0052】
好ましい液状飽和エラストマーの例としては、日本曹達株式会社製の「NISSO−PB 水素添加型PB樹脂」(水添ポリブタジエン類)に属するGIシリーズ、CIシリーズ、BIシリーズなどがある。より具体的には、GI−1000(数平均分子量=約1500、ヨウ素価21mg/100g以下、45℃での粘度=8〜14Pa・s)、GI−2000(数平均分子量=約2100、ヨウ素価21mg/100g以下、45℃での粘度=12〜25Pa・s、末端官能基=水酸基)、GI−3000(数平均分子量=約3000、ヨウ素価21mg/100g以下、45℃での粘度=25〜45Pa・s)などのGIシリーズ;CI−1000(数平均分子量=約1400、ヨウ素価21mg/100g以下、45℃での粘度=10〜30Pa・s、末端官能基=カルボキシル基)などのCIシリーズ;BI−2000(数平均分子量=約2100、ヨウ素価21mg/100g以下、45℃での粘度=5〜10Pa・s)、BI−3000(数平均分子量=約3100、ヨウ素価21mg/100g以下、45℃での粘度=10〜30Pa・s)などのBIシリーズ;が挙げられる。これらの液状飽和エラストマーの45℃で測定した粘度は、3〜50Pa・sの範囲内にあることが好ましい。
【0053】
液状飽和エラストマーの含有割合は、炭素数10〜22の単官能(メタ)アクリレート100質量部に対して、70〜180質量部、好ましくは80〜170質量部、より好ましくは80〜150質量部の範囲内である。液状飽和エラストマーの割合が低すぎると、光硬化性組成物の電解液で濡れた基板に対する接着性が低下する。液状飽和エラストマーの割合が高すぎると、光硬化性組成物からなる光硬化物の性状が柔らかくなりすぎて、シーリング層の密封性が低下する。シーリング層を構成する光硬化物の接着性と柔軟性とを高度にバランスさせる観点からは、液状飽和エラストマーの単官能(メタ)アクリレート100質量部に対する割合を80〜150質量部、さらには100〜140質量部の範囲内にすることが特に好ましい。
【0054】
単官能(メタ)アクリレートを光重合により硬化させるために、光硬化性組成物に光重合開始剤を含有させる。光重合開始剤の具体例としては、アセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、m−クロロアセトフェノン、p−tert−ブチルトリクロロアセトフェノン、4−ジアルキルアセトフェノンなどのアセトフェノン類;ベンゾフェノンなどのベンゾフェノン類;ミヒラーケトンなどのミヒラーケトン類;ベンジル、ベンジルメチルエーテルなどのベンジル類;ベンゾイン、2−メチルベンゾインなどのベンゾイン類;ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインブチルエーテルなどのベンゾインエーテル類;ベンジルジメチルケタールなどのベンジルジメチルケタール類;チオキサントンなどのチオキサントン類;プロピオフェノン、アントラキノン、アセトイン、ブチロイン、トルオイン、ベンゾイルベンゾエート、α−アシロキシムエステル;などの各種カルボニル化合物を挙げることができる。
【0055】
光重合開始剤としては、上記カルボニル化合物以外に、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラメチルチウラムモノスルフィド、チオキサントン、2−クロロチオキサントン、ジフェニルジスルフィドなどの硫黄化合物;アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリルなどのアゾ化合物;ベンゾイルパーオキサイド、ジ−tert−ブチルパーオキサイドなどの過酸化物;が挙げられる。さらに、光重合開始剤として、フェニルグリオキシレート類;ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキシドなどのアシルホスフィンオキシド類;有機色素系化合物、鉄−フタロシアニン系化合物などが挙げられる。
【0056】
これらの光重合開始剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。光重合開始剤として、これらの中でも、ベンゾイン類、アセトフェノン類、及びアシルホスフィンオキシド類が好ましく、アシルホスフィンオキシド類が特に好ましい。
【0057】
色素増感型太陽電池の作用電極基板上に形成された透明導電膜(「透明電極」ともいう)は、基板が紫外線をカットする場合があるので、光硬化性組成物を色素増感型太陽電池用シーリング材として用いる場合には、好ましくは400nm付近または400nm以上の波長領域で光の吸収がある光重合開始剤を使用するのが望ましい。このような光重合開始剤としては、アシルホスフィンオキシド類が好ましい。
【0058】
光重合開始剤は、炭素数10〜22の単官能(メタ)アクリレート100質量部に対して、0.1〜10質量部、好ましくは0.2〜8質量部、より好ましくは0.3〜5質量部、特に好ましくは0.5〜3質量部の範囲内で用いられる。光重合開始剤の含有割合が過小であると、光硬化性組成物の光硬化に時間を要することになり、過大であると、光硬化物の接着強度が低下する。
【0059】
本発明の光硬化性組成物の粘度は、測定治具として直径25mmのコーンプレートを備えた粘弾性測定装置を用いて、温度23℃で該コーンプレートの回転数2rpmの条件下に測定したとき、好ましくは0.3〜20Pa・s、より好ましくは0.4〜15Pa・s、さらに好ましくは0.5〜10Pa・s、特に好ましくは0.5〜5Pa・sの範囲内にある。本発明では、粘弾性測定装置として、Anton Paar社製のPhysica MCR301を用いた。測定治具としては、半径方向に一様な剪断力を与えることができるコーンプレートを用いた。
【0060】
本発明の光硬化性組成物は、測定治具として直径25mmのコーンプレートを備えた粘弾性測定装置を用いて、温度23℃で該コーンプレートの回転数2rpmの条件下に測定した光硬化性組成物の粘度(V)が0.3〜20Pa・sの範囲にあり、かつ、温度23℃で該コーンプレートの回転数20rpmの条件下に測定した光硬化性組成物の粘度(V20)に対する該粘度(V)の比(V/V20)が2.0以下であることが好ましい。該比(V/V20)は、より好ましくは1.8以下、さらに好ましくは1.5以下、特に好ましくは1.3以下である。この比の下限値は、1.0である。
【0061】
光硬化性組成物の粘度が低すぎると、光硬化性組成物を電解液で濡れている基板に塗布した際、電解液に弾かれてしまい、所望のシーリングパターンを形成することが困難になる。他方、光硬化性組成物の粘度が高すぎると、シーリング材の流れが悪くなり、電解液で濡れている基板に対する接着力が弱くなる。前記比(V/V20)の値が高すぎると、流動性が低下し、光硬化性組成物からなるシーリング材の電解液で濡れている基板に対する接着性が低下する。
【0062】
本発明の光硬化性組成物には、本発明の目的を損なわない範囲内で、必要に応じて各種添加剤(その他の添加剤)を含有させることができる。その他の添加剤としては、例えば、接着性を向上させるために、カルボキシル基やリン酸エステル基など極性基を持つモノマー;耐熱性を付与するために、多官能モノマーやオリゴマーなどの架橋剤;低温柔軟性を付与するために、フタル酸エステルなどの可塑剤;線膨張係数を小さくするために、炭酸カルシウム、タルク、シリカ、カーボンブラックなどの充填剤;界面活性剤、吸油性樹脂、有機顔料、無機顔料、安定剤、シランカップリング剤、スペーサー粒子などを適宜適量で添加することができる。
【0063】
本発明の光硬化性組成物の粘度を調整するために、充填剤を含有させることが好ましい。充填剤としては、光硬化性組成物の粘度を調整できるものであれば、特に限定されない。充填剤として、チキソトロピー性を付与することができる充填剤を含有させることができる。チキソトロピー性を付与することができる充填剤は、チキソトロピー化剤として作用し、それによって、光硬化性組成物の粘度を調製することができる。チキソトロピー性を付与することができる充填剤としては、ステアリン酸アマイドなどの有機ゲル化剤;ヒュームドシリカ、アエロジルシリカ、沈降性炭酸カルシウム、ベントナイトなどの無機系チキソトロピー化剤;などが挙げられるが、これらに限定されない。充填剤としては、無機充填剤であっても、有機充填剤であってもよい。
【0064】
無機充填剤としては、シーリング層の表面平滑性の観点からは、一次粒子の平均径が100nm以下の微粒子を用いるのが好ましく、40nm以下のものを用いるのがより好ましい。防湿性の観点からは、表面を疎水化処理した無機充填剤を用いるのが好ましい。具体的には、表面をメチル基などの有機基で覆って疎水化したシリカ(例えば、日本アエロジル社製、アエロジルR972)を挙げることができる。充填剤は、単官能(メタ)アクリレート100質量部に対して、40質量部までの範囲内で使用することが好ましい。
【0065】
本発明の光硬化性組成物は、多くの場合、前記した各種添加剤成分(その他の添加剤)を含有させなくても、所望の優れた諸特性を発揮することができる。
【0066】
光硬化性組成物を光の届きにくい部位に塗布したり、厚手の塗布を行ったりする場合には、硬化反応を十分に進行させるために、有機過酸化物などの熱重合開始剤を添加してもよい。熱重合開始剤を添加した場合には、電離放射線の照射と同時、あるいは照射前及び/または照射後に、加熱工程を配置することが好ましい。
【0067】
本発明の光硬化性組成物は、各成分を、サンドミル、ディスパー、コロイドミルなどの混合装置で撹拌分散させることにより調製することができる。本発明の光硬化性組成物は、常温で液状を呈し、適度の粘度を有するため、塗工法により所望の箇所に塗布することができる。本発明の光硬化性組成物をパターン状に塗布するには、スクリーン印刷法を適用することができる。本発明の光硬化性組成物は、プラスチックフィルムに対する接着性に優れるため、プラスチックフィルム基板を用いた色素増感型太陽電池のシーリング材として有用である。
【0068】
本発明の光硬化性組成物は、被着体に塗付した後、得られた塗膜に電離放射線を照射することにより硬化させることができる。電離放射線としては、紫外線、電子線(ベータ線)、ガンマ線、アルファ線が好ましく、紫外線及び電子線がより好ましい。電離放射線を照射するには、それぞれの線源を発生する装置を用いればよい。例えば、電子線を照射するには、通常20〜2000kVの電子線加速器から取り出される加速電子線を照射する。電子線は、加速電圧によって浸透する深さが変わる。電子線は、加速電圧が高いほど、塗膜中に深く浸透する。電子線の照射線量は、通常1〜300kGy、好ましくは5〜200kGy程度であるが、硬化塗膜が得られる限りにおいて、この範囲に限定されない。
【0069】
紫外線を照射するには、殺菌灯、紫外用蛍光灯、カーボンアーク、キセノンランプ、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライドランプ、無電極ランプなどのUV照射装置を用いて、200〜400nmの範囲内の波長を含む光を照射する。UV照射装置のランプ出力は、発光長1cm当りの出力ワット数(W/cm)で表示する。単位長当りのワット数が大きくなれば、発生する紫外線強度が大きくなる。ランプ出力は、通常30〜300W/cmの範囲内から選択される。発光長は、通常40〜2500mmの範囲内から選ばれる。紫外線の照射エネルギーは、通常0.1〜10J/cm、好ましくは0.5〜5J/cmの範囲内であるが、硬化塗膜が得られる限りにおいて、この範囲に限定されない。
【0070】
硬化塗膜を形成するに際し、酸素による重合禁止効果を除去する必要がある場合には、電離放射線の照射処理を、窒素ガス、炭酸ガス、希ガスなどの不活性ガス雰囲気下とすることが好ましい。
【0071】
本発明の光硬化性組成物は、色素増感型太陽電池用シーリング材として好ましい諸特性を有している。色素増感型太陽電池としては、前記した図1に示す基本的構造を有するものを挙げることができる。
【0072】
透明基板としては、ガラス板やプラスチックフィルムが用いられる。プラスチックフィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリエチレンナフタレート(PEN)などの熱可塑性ポリエステルフィルムが代表的なものであるが、透明で耐熱性のある他のフィルムを使用することもできる。透明導電膜(透明電極)としては、95%酸化インジウムと5%酸化スズからなる化合物を基板に薄く焼き付けたITO膜が代表的なものである。この他、透明導電膜としては、酸化スズにフッ素をドーピングした膜(FTO)が知られている。対極基板も、これと同様の導電性基板を用いることができるが、これに限定されない。例えば、対極基板として、ガラスなどの透明基板を用いても、該基板上に白金を蒸着して導電膜を形成すると、導電性基板全体の透明性が低下することがある。
【0073】
金属酸化物半導体としては、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、ストロンチウム、亜鉛、インジウム、イットリウム、ランタン、バナジウム、ニオブ、タンタル、クロム、モリブデン、タングステンなどの酸化物が挙げられるが、これらの中でも二酸化チタンが代表的なものである。二酸化チタンは、例えば、直径が10〜30nmという超微粒子が好ましく、それによって、色素を吸着させるのに適した広大な比表面積を有する二酸化チタン膜を形成することができる。
【0074】
色素としては、ルテニウム錯体〔RuL(NCS)、L=4,4′−ジカルボキシ−2,2′−ビピリジン〕、ポルフィリン系色素、シアニン系色素、C60誘導体、スチリルベンゾチアゾリウムプロピルスルフォネート(BTS)、植物の色素などが挙げられる。
【0075】
電解液は、一般に、電解質を有機溶剤に溶解した溶液である。このような電解液としては、例えば、ヨウ素とヨウ化リチウムとを含有するアセトニトリル/エチレンカーボネート溶液が代表的なものである。電解質としては、ヨウ素/ヨウ素化合物、臭素/臭素化合物などの酸化還元対(レドックス系)が用いられているが、これらの中でも、ヨウ素/ヨウ素化合物の組み合わせが汎用されている。
【0076】
電解質を溶解または分散させる有機溶剤としては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ポリエチレングリコール(例えば、PEG#220)、アセトニトリル、3−メトキシプロピオニトリル、これらの2種以上の混合物などが用いられている。電解液には、電解質に加えて、増粘剤(例えば、PEG#600)、粘性を低下させてイオンの拡散を円滑にする常温溶融塩(1−プロピルー2,3−ジメチルイミダゾリウムイオダイド)、逆電流を防ぎ開放起電力を高める4−tert−ブチルピリジンなどの各種添加剤を含有させてもよい。
【0077】
本発明の光硬化性組成物を用いて色素増感型太陽電池を作製するには、下記工程1乃至4:
(1)「透明基板/透明導電膜/色素を吸着した金属酸化物半導体膜」の層構成を持つ第一導電性基板と、「導電膜/基板」の層構成を持つ第二導電性基板のいずれか一方の導電性基板(A)の導電膜側の周辺部に、本発明の光硬化性組成物をスクリーン印刷により塗布して、枠状の光硬化性組成物層を形成する工程1;
(2)導電性基板(A)の上に、他方の導電性基板(B)を、各導電膜側で対向させて、該光硬化性組成物層を介して配置する工程2;
(3)電離放射線を照射して、該光硬化性組成物を硬化させる工程3;及び
(4)該光硬化性組成物の硬化物からなるシーリング層により形成された両導電性基板間の隙間に電解液を封入する工程4;
を採用することができる。
【0078】
第二基板として、前記「導電膜/基板」の層構成を持つ第二導電性基板に代えて、「導電膜」からなる導電性基板または導電膜を有しない基板を用いることができる。
【0079】
本発明の光硬化性組成物は、電解液で濡れている基板に対する接着性に優れているため、前記工程2乃至4に代えて、枠状の光硬化性組成物層を形成した導電性基板(A)の上に電解液を注入し、次いで、該導電性基板(A)上に他方の導電性基板(B)を、各導電膜側で対向させて、該光硬化性組成物層を介して配置し、しかる後、電離放射線を照射して、該光硬化性組成物を硬化させることができる。あるいは、前記工程2の後に、両導電性基板間の隙間に電解液を注入し、次いで、電離放射線を照射して、該光硬化性組成物を硬化させることができる。
【0080】
光硬化性組成物の塗布厚みは、電解液の所望の厚みに応じて適宜調整することができるが、通常は5〜100μm、多くの場合5〜30μm程度である。導電性基板上に光硬化性組成物を塗布する際のパターンとしては、環状、長方形、矩形など、色素増感型太陽電池の形状に合わせたものとする。
【0081】
両導電性基板間の隙間に電解液を注入する場合、硬化または未硬化のシーリング層の一部に開口部を設けるか、あるいは基板の一部に開口部を設けて、シーリング層により形成された両導電性基板間の隙間に電解液を注入する方法を採用することができる。開口部(電解液注入孔)は、同じ光硬化性組成物または他の常温硬化性接着剤などを用いて封止する。これによって、電解液を両導電性基板間に封入することができる。ガラス基板の場合には、その端部(シーリング層の内側)に電解液の液溜めを設けて、その中に電解液を入れておき、シーリング層により形成された両導電性基板間の隙間に、毛管現象を利用して電解液を注入させてもよい。
【0082】
本発明によれば、「透明基板/透明導電膜/色素を吸着した金属酸化物半導体膜」の層構成を持つ第一導電性基板と該第一導電性基板に対向する第二基板とが、これら両基板の周辺部に枠状に設けたシーリング層を介して配置され、該シーリング層によって形成された両基板間の隙間に電解液が封入された構造を有する色素増感型太陽電池において、該シーリング層が、本発明の光硬化性組成物から形成された光硬化物層である色素増感型太陽電池を得ることができる。第二基板は、通常、「導電膜/基板」または「導電膜」の層構成を有する第二導電性基板である。色素増感型太陽電池がモノリシック型である場合には、第二基板として導電膜のない基板を用いることができる。
【0083】
本発明の色素増感型太陽電池は、シーリング層を形成する光硬化性組成物が電解液で濡れた基板に対する接着性に優れるため、その製造工程の自由度が高く、しかも組立て後には、電解液がシーリング層から漏れることがない。
【実施例】
【0084】
以下、本発明について、実施例及び比較例を挙げて詳細に説明する。諸特性の測定方法は、次の通りである。
【0085】
(1)粘度
光硬化性組成物の粘度は、測定治具として直径25mmのコーンプレートを備えた粘弾性測定装置(Anton Paar社製「Physica MCR301」)を用いて、温度23℃で該コーンプレートの回転数2rpmの条件下に測定した。
【0086】
上記方法で得られた光硬化性組成物の粘度を「粘度(V)」としたとき、温度23℃で該コーンプレートの回転数20rpmの条件下に測定した光硬化性組成物の粘度(V20)に対する該粘度(V)の比(V/V20)を求めた。
【0087】
(2)電解液で濡れている基板に対する接着性
ガラス板上に、電解液(3−メトキシプロピオニトリルに、ヨウ素0.5M、ヨウ化リチウム0.1M、及び4−tert−ブチルピリジン0.5Mを溶解させた電解液)を滴下し、次いで、光硬化性組成物を電解液で濡れているガラス板上に滴下した。高圧水銀灯(270mW/cm)で5秒間の条件で紫外線を照射して、光硬化性組成物を硬化させた。ガラス板から電解液を除去するために、ガラス板をメタノールで洗浄し、その後、ガラス板上の光硬化性組成物の形状を観察し、光硬化性組成物の残存面積の割合に基づいて、以下の基準で評価した。
【0088】
A:滴下した光硬化性組成物の90%以上がガラス板上に接着している。
B:滴下した光硬化性組成物の50%以上90%未満がガラス板上に接着している。
C:滴下した光硬化性組成物の50%未満がガラス板上に接着している。
D:滴下した光硬化性組成物が電解液除去のためのメタノールによるガラス板洗浄により全て剥離した。
【0089】
[実施例1]
イソボルニルアクリレート100質量部に対して、液状飽和エラストマー(水添ポリブタジエン;日本曹達社製NISSO−PB(登録商標) BI−2000;数平均分子量=約2100、ヨウ素価=21mg/100g以下、45℃での粘度=5〜10Pa・s)120質量部、及び光重合開始剤〔1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン;チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製イルガキュア(登録商標)184〕1質量部を加えて、高速攪拌機で攪拌し、光硬化性組成物を得た。
【0090】
該光硬化性組成物の組成と特性の評価結果を表1に示す。表1の結果から明らかなように、該光硬化性組成物は、電解液で濡れている基板に対する接着性が良好であった(評価=B)。
【0091】
[実施例2]
液状飽和エラストマーを、「NISSO−PB BI−2000」から日本曹達社製NISSO−PB(登録商標) GI−3000(水添ポリブタジエン;数平均分子量=約3000、ヨウ素価=21mg/100g以下、45℃での粘度=25〜45Pa・s)に代えたこと以外は、実施例1と同様にして光硬化性組成物を調製した。
【0092】
該光硬化性組成物の組成と特性の評価結果を表1に示す。表1の結果から明らかなように、該光硬化性組成物は、電解液で濡れている基板に対する接着性が良好であった(評価=B)。
【0093】
[実施例3]
液状飽和エラストマーを、「NISSO−PB BI−2000」から日本曹達社製NISSO−PB(登録商標) CI−1000(末端カルボキシル基含有水添ポリブタジエン;数平均分子量=約1400、ヨウ素価=21mg/100g以下、45℃での粘度=10〜30Pa・s)に代えたこと以外は、実施例1と同様にして光硬化性組成物を調製した。光硬化性組成物の組成と評価結果を表1に示す。
【0094】
該光硬化性組成物の組成と特性の評価結果を表1に示す。表1の結果から明らかなように、該光硬化性組成物は、電解液で濡れている基板に対する接着性が特に良好であった(評価=A)。
【0095】
[実施例4]
イソボルニルアクリレート100質量部を、イソボルニルアクリレート80質量部とイソステアリルアクリレート20質量部との混合物に代え、「NISSO−PB GI−3000」の割合を120質量部から100質量部に変え、かつ、光重合開始剤を、イルガキュア184からビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド〔チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製イルガキュア(登録商標)819〕に代えたこと以外は実施例2と同様にして光硬化性組成物を調製した。
【0096】
該光硬化性組成物の組成と特性の評価結果を表1に示す。表1の結果から明らかなように、該光硬化性組成物は、電解液で濡れている基板に対する接着性が特に良好であった(評価=A)。
【0097】
[実施例5]
「NISSO−PB GI−3000」の割合を100質量部から140質量部に変えたこと以外は実施例4と同様にして光硬化性組成物を調製した。
【0098】
該光硬化性組成物の組成と特性の評価結果を表1に示す。表1の結果から明らかなように、該光硬化性組成物は、電解液で濡れている基板に対する接着性が特に良好であった(評価=A)。
【0099】
[比較例1]
アイオノマーである亜鉛イオン架橋エチレン−メタクリル酸共重合体〔三井・デュポンケミカル製ハイミラン(登録商標)1652〕を加熱押出し塗工して、厚さ100μmのシートを作製した。ガラス板に電解液(3−メトキシプロピオニトリルに、ヨウ素0.5M、ヨウ化リチウム0.1M、及び4−tert−ブチルピリジン0.5Mを溶解させた電解液)を滴下し、次いで、得られたシートを電解液で濡れているガラス板上に貼付した後、120℃で加熱接着させた。ガラス板から電解液を除去するためにガラス板をメタノールで洗浄したところ、アイオノマーのシートは、ガラス板上から剥離した(評価=D)。結果を表2に示す。
【0100】
[比較例2]
イソステアリルアクリレート100質量部に対して、イソボルニルアクリレート8質量部、光重合開始剤(イルガキュア184)3質量部、及びマレイン酸変性水添スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体〔クレイトンポリマージャパン社製クレイトン(登録商標)FG1901X〕20質量部を加えて、高速攪拌機で攪拌し、光硬化性組成物を得た。該光硬化性組成物の組成と特性の評価結果を表2に示す。該光硬化性組成物は、電解液で濡れている基板に対する接着性が不十分であった(評価=C)。
【0101】
[比較例3]
イソボルニルアクリレート30質量%とイソノニルアクリレート70質量%との混合物100質量部に対して、多官能(メタ)アクリレートとしてジメチロール−トリシクロデカンジアクリレート1質量部、光重合開始剤(イルガキュア819)0.5質量部、水添スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体〔クレイトンポリマージャパン社製クレイトン(登録商標)G1657〕5質量部、及び疎水性シリカ〔日本アエロジル社製アエロジル(登録商標)R976S〕15質量部を加えて、高速攪拌機で攪拌し、光硬化性組成物を得た。該光硬化性組成物の組成と特性の評価結果を表2に示す。該光硬化性組成物は、電解液で濡れている基板に対する接着性が劣悪であった(評価=D)。
【0102】
[比較例4]
液状飽和エラストマー(NISSO−PB BI−2000)の割合を120質量部から40質量部に変えたこと以外は実施例1と同様にして光硬化性組成物を調製した。該光硬化性組成物の組成と特性の評価結果を表2に示す。表1の結果から明らかなように、該光硬化性組成物は、電解液で濡れている基板に対する接着性が劣悪であった(評価=D)。その理由は、液状飽和エラストマーの含有割合が過小であるためと考えることができる。
【0103】
[比較例5]
液状飽和エラストマー(NISSO−PB BI−2000)の割合を120質量部から200質量部に変えたこと以外は実施例1と同様にして光硬化性組成物を調製した。該光硬化性組成物の組成と特性の評価結果を表2に示す。該光硬化性組成物は、その光硬化物が柔らかすぎてシーリング材として機能しないものであるため、電解液で濡れている基板に対する接着性の評価を行うことができなかった。その理由は、液状飽和エラストマーの含有割合が過大であるためと考えることができる。
【0104】
[比較例6]
イソボルニルアクリレート60質量%とラウリルアクリレート40質量%との混合物100質量部に対して、多官能(メタ)アクリレートとしてジメチロール−トリシクロデカンジアクリレート1質量部、光重合開始剤(イルガキュア819)1質量部、ポリアクリレート(ノーテープ工業製4580)15質量部、及び疎水性シリカ〔日本アエロジル社製アエロジル(登録商標)R976S〕15質量部を加えて、高速攪拌機で攪拌し、光硬化性組成物を得た。該光硬化性組成物の組成と特性の評価結果を表2に示す。該光硬化性組成物は、電解液で濡れている基板に対する接着性が不十分であった(評価=C)。
【0105】
[比較例7]
イソボルニルアクリレート40質量%と2−エチルヘキシルアクリレート60質量%との混合物100質量部に対して、多官能(メタ)アクリレートとしてジメチロール−トリシクロデカンジアクリレート2質量部、光重合開始剤(イルガキュア819)1質量部、水添スチレンブタジエンラバー〔JSR社製ダイナロン1320(登録商標)〕20質量部、及び疎水性シリカ〔日本アエロジル社製アエロジル(登録商標)R976S〕20質量部を加えて、高速攪拌機で攪拌し、光硬化性組成物を得た。該光硬化性組成物の組成と特性の評価結果を表2に示す。該光硬化性組成物は、電解液で濡れている基板に対する接着性が劣悪であった(評価=D)。
【0106】
[比較例8]
ステアリルアクリレート100質量部に対して、イソボルニルアクリレート8質量部、光重合開始剤(イルガキュア184)3質量部、及びスチレン−イソブチレン−スチレントリブロック共重合体〔(株)カネカ製SIBSTAR073T(登録商標)〕30質量部を加えて、高速攪拌機で攪拌し、光硬化性組成物を得た。該光硬化性組成物の組成と特性の評価結果を表2に示す。該光硬化性組成物は、電解液で濡れている基板に対する接着性が劣悪であった(評価=D)。
【0107】

【表1】

【0108】
【表2】

【0109】
(脚注)
(*1)水添ポリブタジエン(数平均分子量=約2100、ヨウ素価=21mg/100g以下、45℃での粘度=5〜10Pa・s)
(*2)水添ポリブタジエン(数平均分子量=約3000、ヨウ素価=21mg/100g以下、45℃での粘度=25〜45Pa・s)
(*3)末端カルボキシル基含有水添ポリブタジエン(数平均分子量=約1400、ヨウ素価=21mg/100g以下、45℃での粘度=10〜30Pa・s)
(*4)1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン
(*5)ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド
(*6)マレイン酸変性水添スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体
(*7)水添スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体
(*8)亜鉛イオン架橋エチレン−メタクリル酸共重合体
(*9) 水添スチレンブタジエンラバー
(*10)ポリアクリレート
(*11)スチレン−イソブチレン−スチレントリブロック共重合体
(*12)疎水性シリカ
(*13)光硬化物が柔らかすぎてシーリング材として機能しないため、電解液で濡れている基板に対する接着性の評価を行うことができなかった。
【産業上の利用可能性】
【0110】
本発明の光硬化性組成物は、封止性、被着物に対する密着性、耐薬品性などが要求されるシーリング材をはじめとする各種用途に利用することができる。本発明の光硬化性組成物は、色素増感型太陽電池用シーリング材として特に好適に利用することができる。本発明の光硬化性組成物により電解液を封入した色素増感型太陽電池は、信頼性及び耐久性に優れており、新しい太陽電池の電解液を封入するためのシーリング層の用途に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0111】
【図1】色素増感型太陽電池の基本構造の一例を示す断面略図である。
【符号の説明】
【0112】
1 透明基板
2 透明導電膜
3 色素
4 金属酸化物半導体層
5 電解液
6 シーリング層
7 導電膜
8 基板
9 回路
10 負荷
11 回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素数10〜22の単官能(メタ)アクリレート100質量部に対して、液状飽和エラストマー70〜180質量部、及び光重合開始剤0.1〜10質量部を含有する光硬化性組成物。
【請求項2】
該単官能(メタ)アクリレートが、イソボルニルアクリレートとアルキル基の炭素数が8〜18のアルキルアクリレートとを、20:80〜100:0の質量比で含有する単官能アクリレートまたは単官能アクリレートモノマー混合物である請求項1記載の光硬化性組成物。
【請求項3】
該液状飽和エラストマーの数平均分子量が、700〜30,000の範囲内である請求項1記載の光硬化性組成物。
【請求項4】
該液状飽和エラストマーのヨウ素価が、70mg/100g以下である請求項1記載の光硬化性組成物。
【請求項5】
該液状飽和エラストマーが、水添ポリブタジエン、末端水酸基含有水添ポリブタジエン、末端カルボキシル基含有水添ポリブタジエン、水添ポリイソプレン、末端水酸基含有ポリイソプレン、末端カルボキシル基含有ポリイソプレン、水添ブタジエン−イソプレン共重合体、及びポリイソブチレンからなる群より選ばれる少なくとも一種の液状飽和エラストマーである請求項1記載の光硬化性組成物。
【請求項6】
測定治具として直径25mmのコーンプレートを備えた粘弾性測定装置を用いて、温度23℃で該コーンプレートの回転数2rpmの条件下に測定した光硬化性組成物の粘度(V)が0.3〜20Pa・sの範囲にあり、かつ、温度23℃で該コーンプレートの回転数20rpmの条件下に測定した光硬化性組成物の粘度(V20)に対する該粘度(V)の比(V/V20)が2.0以下である請求項1記載の光硬化性組成物。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の光硬化性組成物の色素増感型太陽電池用シーリング材としての使用。
【請求項8】
「透明基板/透明導電膜/色素を吸着した金属酸化物半導体膜」の層構成を持つ第一導電性基板と該第一導電性基板に対向する第二基板とが、これら両基板の周辺部に枠状に設けたシーリング層を介して配置され、該シーリング層によって形成された両基板間の隙間に電解液が封入された構造を有する色素増感型太陽電池において、該シーリング層が、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の光硬化性組成物から形成された光硬化物層であることを特徴とする色素増感型太陽電池。

【図1】
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【公開番号】特開2010−138290(P2010−138290A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−316098(P2008−316098)
【出願日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【出願人】(000004020)ニチバン株式会社 (80)
【出願人】(591282205)島根県 (122)
【Fターム(参考)】