光素子実装体、光走査装置及び画像形成装置
【課題】コスト低下を実現できる樹脂シール方式において、温度や湿度等の環境変化に対する耐久性を有し、光素子の機能を長期に亘って良好に維持できる光素子実装体を提供する。
【解決手段】セラミックパッケージ101の開口部110に光素子104を電気的に接続した状態で搭載し、開口部110の上面側を透光性の蓋部材102で塞ぐとともに樹脂材料により気密に封止している。蓋部材102で気密に覆われるセラミックパッケージ101内の領域に、開口部110と連通する補助開口部111が設けられ、補助開口部111には水分ゲッター剤が設置されている。
【解決手段】セラミックパッケージ101の開口部110に光素子104を電気的に接続した状態で搭載し、開口部110の上面側を透光性の蓋部材102で塞ぐとともに樹脂材料により気密に封止している。蓋部材102で気密に覆われるセラミックパッケージ101内の領域に、開口部110と連通する補助開口部111が設けられ、補助開口部111には水分ゲッター剤が設置されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、面発光レーザー等の光素子をパッケージ部材の開口部内に収容して実装し、上面を透光性の蓋部材で気密封止してなる光素子実装体に係り、詳しくは、気密封止に樹脂材料を用いる光素子実装体、該光素子実装体を有する光走査装置、該光走査装置を有する複写機、プリンタ、ファクシミリ、プロッタ、これらのうち少なくとも1つを備えた複合機等の画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年においては、CCDセンサやCMOSセンサ等の受光素子、面発光レーザー等の発光素子、MEMSミラーを用いた光スキャナ素子・光スイッチング素子、等の光素子が実用化され、各種光学機器に利用されている。
より効率よく用いるため、これらの光素子は一般に2次元アレイ化して用いられる。2次元アレイ化した素子は、信号線が多くなり、一般のCANパッケージへの収納は困難となり、主にセラミックパッケージに収納される。素子を密封して耐環境性を得るため、ガラス、サファイア等の透光性の蓋を用いて密封される。
セラミックパッケージと蓋材の接合は、ハーメチックシール(ガラスと金属の封止技術)接合、ハンダ接合等の方法が用いられてきた。
【0003】
特許文献1には、その図1に示すように、透光性蓋材にハンダ付け可能な材料のパターンを形成することが記載されている。
パターン形成では、スパッタリングや真空蒸着等の真空技術を用いて上記ハンダ付け可能な材料の薄膜を蓋材に形成した後、写真製版、エッチング等の技術を用いて必要な形状に加工される。このため、蓋材の価格が高価となることを避けられない。
特許文献2には、その図1、2に示すように、パッケージ本体の上面周縁にキャップを落とし込むことができる凹部を形成し、凹部とキャップとの隙間に封止ガラスを充填して気密封止を行う構成が記載されている。
しかしながら、低融点硝子接合の場合は400℃程度の熱処理が必要であり、素子の耐熱性が問題となる。
【0004】
特許文献3には、その図3に示すように、セラミックパッケージ内に面発光レーザを収納し、パッケージ上に設置された透光性蓋材を樹脂によってシールする構成が記載されている。
このように、近年、コスト低下のためセラミックパッケージと蓋材の接合に樹脂を用いる場合が増えてきた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、樹脂は基本的にH2Oを透過するため、特に耐高温高湿性に劣るという問題があることが判明した。
特許文献3等に開示された一般的な光素子の実装構造を図13及び14に示す。図13は平面図、図14は図13の中央断面図である。
光素子104を搭載したセラミックパッケージ本体101の上面に凹部105を形成し、この凹部内に透光性蓋102を嵌装して樹脂103にて気密封止している。
図14において、符号110は光素子104を収容して実装するための開口部を示している。
【0006】
ところが、本発明者の実験によると、図13、14に示したセラミックパッケージにガラス蓋をエポキシ樹脂でシールした構造の光素子を、温度85℃、湿度85%の耐環境試験に投入したところ、100時間程度で、室温に戻した状態で、内部に結露が発生し透光性蓋材の内側が曇るという不良が発生してしまった。
光素子においては透光性蓋材の内側が曇ることは致命的欠陥となる。この原因を調査したところ、シール材であるエポキシ樹脂中をH2Oが透過したためであることが判明した。
特許文献1あるいは2に示された方法を用いれば、気密封止は完全になされ、H2Oの内部侵入は起こらないが、上記のようにコスト高になるという欠点がある。
【0007】
本発明は、このような現状に鑑みてなされたもので、コスト低下を実現できる樹脂シール方式において、温度や湿度等の環境変化に対する耐久性を有し、光素子の機能を長期に亘って良好に維持できる光素子実装体の提供を、その主な目的とする。
具体的には、樹脂シール方式において、温度85℃、湿度85%の耐環境試験にて500時間以上の耐久性を有する光素子実装体を得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は、樹脂シールでは本質的にH2Oのパッケージ内部への侵入を防止できないという認識の下、侵入したH2Oを除去することとした。
具体的には、請求項1に記載の発明は、パッケージ部材の開口部に光素子を電気的に接続した状態で搭載し、前記開口部の上面側を透光性の蓋部材で塞ぐとともに樹脂材料により気密に封止してなる光素子実装体において、前記蓋部材で気密に覆われる前記パッケージ部材の領域に、前記開口部と連通する補助開口部が設けられ、前記補助開口部には吸着剤が設置されていることを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の光素子実装体において、前記開口部の底面に前記光素子を搭載する導電性部材が設けられ、該導電性部材は前記パッケージ部材の電極と電気的に接続されていることを特徴とする。
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の光素子実装体において、前記導電性部材が金属であることを特徴とする。
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか1つに記載の光素子実装体において、前記吸着剤が水分を吸着する機能を有していることを特徴とする。
【0010】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれか1つに記載の光素子実装体において、前記補助開口部が異なる箇所に複数設けられていることを特徴とする。
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の光素子実装体において、上面から視たときの前記開口部が四角形の形状を有し、前記開口部の4隅に連通して前記補助開口部が設けられていることを特徴とする。
請求項7に記載の発明は、請求項5又は6に記載の光素子実装体において、前記複数の補助開口部に設置された吸着剤の吸着機能が異なることを特徴とする。
【0011】
請求項8に記載の発明は、請求項1〜7のいずれか1つに記載の光素子実装体において、前記光素子が面発光レーザーであることを特徴とする。
請求項9に記載の発明は、請求項1〜8のいずれか1つに記載の光素子実装体において、前記パッケージ部材がセラミックで形成され、前記蓋部材がガラスで形成されていることを特徴とする。
請求項10に記載の発明は、被走査面上で光を走査する光走査装置において、請求項1〜9のいずれか1つに記載の光素子実装体と、前記光素子実装体から発光された光を偏向する偏向器と、前記偏向器で偏向された光を前記被走査面上に集光する走査光学系と、を備えることを特徴とする。
請求項11に記載の発明は、画像形成装置において、請求項10に記載の光走査装置と、前記光走査装置により光が走査される前記被走査面を備える少なくとも一つの像担持体と、を備え、前記光走査装置は、前記像担持体の前記被走査面上で画像情報が含まれる光を走査し、前記像担持体の前記被走査面上に画像を形成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、耐環境性、特に耐高温高湿性を向上させることができ、光素子の良好な機能を長期に亘って維持することができる。これにより、樹脂シール方式の光素子実装体の信頼性を大幅に向上させることができる。
また、用いるゲッター剤を変更することにより、水素、酸素等を吸着除去可能であり、使用環境の物理的、化学的変化に対する耐久性をも向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る光素子実装体の概要平面図である。
【図2】図1の中央部位での概要断面図である。
【図3】図1のA−A線での断面図で、水分ゲッター剤を省略した状態を示す図である。
【図4】図1のA−A線での断面図で、水分ゲッター剤を省略していない状態を示す図である。
【図5】図1のB−B線での断面図で、水分ゲッター剤を省略した状態を示す図である。
【図6】図1のB−B線での断面図で、水分ゲッター剤を省略していない状態を示す図である。
【図7】図2のC−C線での概要断面図である。
【図8】図2のD−D線での概要断面図である。
【図9】図2のD−D線での変形例での概要断面図である。
【図10】第2の実施形態に係る画像形成装置の概要構成図である。
【図11】第3の実施形態に係る光走査装置の概要斜視図である。
【図12】面発光レーザアレイの配置状態を示す図である。
【図13】従来の光素子実装体を示す平面図である。
【図14】図13の中央部位における概要断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を図を参照して説明する。
まず、具体的な構成を説明する前に、市販物として容易に入手できる吸着剤(以下「ゲッター剤」ともいう)を簡単に適用できない点について説明する。
H2Oを除去するために一般的にシリカゲル等の除湿剤(吸着剤)が用いられている。シリカゲルをパッケージ内に封入する試験を行ったところ、内部に侵入したH2Oを吸着除去することができ、耐環境性を向上できることを確認できた。
ところが、光素子を密封したパッケージ内に除湿剤を封入するには各種制限が有り、シリカゲル等を直ちに用いることはできないことが分かった。
最近では水分ゲッター剤として各種製品が開発、販売されている。例えば以下のようなものがある。
(1)シート状に整形されたもの
1-1.ジャパンゴアテックス株式会社の有機ELデシカント
1-2.ダイニック(株)の水分ゲッター
1-3.サエス・ゲッターズ社のDryFlex
(2)ペースト状であり、塗布し、加熱固化して用いるもの
2-1.米国Cookson Semiconductor Packaging Materials社製の水分ゲッター剤HiCap2000
【0015】
これらの水分ゲッター剤を採用する場合にも収納場所という問題がある。まず、ボンディングワイヤ及び内部配線間を跨いで設置した場合には電気的短絡を起す懸念がある。
また、ボンディングワイヤに接触した場合には応力による断線、ショート等の懸念がある。
透光性蓋に設置する場合は、入出射光を妨げないという制限があるとともに、位置合わせを高精度に行う必要があるという制限がある。特にペースト状ゲッター剤を用いると濡れ性の問題が有り、にじみが発生するため入出射光を妨げる可能性が高くなり採用は困難である。
【0016】
そこで、本発明は、上記問題を解決するために、パッケージ内部に専用のゲッター剤収納場所を設ける構造とした。
【0017】
図1乃至図9に基づいて第1の実施形態(光素子実装体)を説明する。なお、従来例と同一部分は同一符号で示す。
図1は、本実施形態に係る光素子実装体100を上側から見た平面図、図2は図1の中央断面図である。
パッケージ部材としてのセラミックパッケージ101には、透光性の蓋部材としてのガラス蓋102を嵌合載置するための凹部105が形成されており、凹部105の中央部には、光素子104を収容するための開口部110が段差を有する状態に形成されている。
開口部110の底面には、金属よりなる導電性部材としての搭載部108が設けられており、光素子104は搭載部108上に搭載されている。
セラミックパッケージ101の内部にはパッケージ電極106が設けられており、搭載部108とパッケージ電極106は電気的に接続されている。また、光素子104はボンディングワイヤ107によりパッケージ電極106に接続されている。
【0018】
光素子104を実装した後、開口部110の上面はガラス蓋102で塞がれ、エポキシ樹脂等の樹脂材103で気密にシールされる。
図1に示すように、ガラス蓋102で覆われるセラミックパッケージ101の領域には、開口部110よりも容積の小さい補助開口部111がその4隅に形成されている。各補助開口部111は連通部113を介して開口部110に通気的に連通している。
各補助開口部111は、開口部110よりも容積が小さく、この観点から「小開口部」と称することもできる。但し、開口部110よりも容積が小さいということが本発明の条件ではない。
各補助開口部111には、水分ゲッター剤112が設置されている。
図3は、図1のA−A線での断面図で、補助開口部111の位置、形状を分かりやすくするために、水分ゲッター剤112を省略した状態を表示している。
補助開口部111に水分ゲッター剤112を設置した状態の図3相当の断面を図4に示す。
図5は図1におけるB−B線での断面図で、水分ゲッター剤112を省略した状態を示す図、図6は補助開口部111に水分ゲッター剤112を設置した状態の図5相当の断面を示している。
図7は図2のC−C線での断面の平面図である。パッケージ電極106が、小開口部111に接しないよう配線されている状態を示す。図7において、符号114は、搭載部108と貫通孔により接続した電極を示す。
図8は図2のD−D線での断面の平面図の一例である。小開口部の底面が金属よりなる搭載部108である状態を示す。
図9は図2のD−D線での断面の平面図の別の一例を示す。小開口部の底面に金属よりなる搭載部108を形成せず、パッケージ材料面とする状態を示している。図9において、符号115は、金属よりなる搭載部において小開口部周辺を除去した領域を示している。
【0019】
用いるゲッター剤はシート状のものを貼り付けても良いし、ペースト状のものを充填し、加熱硬化させても良い。
一例として図1、2に示したパッケージの形状において、本発明の効果を説明する。
図1、2のパッケージ形状において、内部容積(開口部110と小開口部111を合計した容積)を30mm3、小開口部111を1.2mm×1.2mmとした構造のパッケージを試作し、水分ゲッター剤としてペースト状のHiCap2000を用い評価した。
内部容積30mm3とした場合、25℃において結露する内部H2O量は0.7μgである。小開口部に水分ゲッター剤を0.2mmの厚さに充填すると、約1100μgとなる。HiCap2000は、自重の15%のH2Oを吸着除去可能なので、170μgのH2Oを吸着除去できる。
すなわち、耐環境性寿命を247倍(170/0.7)にできる。
【0020】
実際の効果を確認するため、図1、2のパッケージを用い、水分ゲッター剤充填の無いサンプルと、水分ゲッター剤充填の有るサンプルを作成し、温度85℃、湿度85%の環境で耐環境試験を行った。
水分ゲッター剤充填の無いサンプルの場合、50時間で内部結露を生じたが、水分ゲッター剤充填の有るサンプルでは1000時間経過しても内部結露は発生しなかった。
すなわち、実際の試験においても、水分ゲッター剤充填により耐環境性寿命を大幅に向上できることを確認できた。
【0021】
なお、本実施形態では、本発明の効果を、水分ゲッター剤を中心に説明したが、本発明の効果は水分ゲッター剤に限定されるものではない。
市販されている水分ゲッター剤以外のゲッター剤として以下のようなものがあり、目的に応じて本発明に用いることが可能である。
1.サエス・ゲッターズ社のPaGeフィルム
(O2、CO、H2O、CO2、N2、及びH2を含む全ての活性ガスの化学吸着)
2.米国Cookson Semiconductor Packaging Materials社製H2-3000
(水素・水分ゲッターフィルム)
すなわち、各小開口部111に吸着対象が異なるゲッター剤を設置すれば、種々の化学的環境変化に対する耐久性をも高めることができる。
【0022】
本実施形態では、ガラス蓋102で気密に覆われるセラミックパッケージ101の領域内において、開口部110に連通する小開口部111を形成する構成としたが、開口部110の側壁に横穴を開けて収容部を形成し、該収容部にゲッター剤を設置してもよい。この場合には、「蓋部材で気密に覆われるパッケージ部材の領域内」という限定は不要となる。
また、開口部110の底面に凹部を形成してゲッター剤を収容する収容部としてもよい。この場合、搭載部108を貫通する凹部としてもよい。
【0023】
図10に基づいて第2の実施形態(画像形成装置)を説明する。図10は、上記光素子実装体100を有する光走査装置を備えた画像形成装置としてのレーザプリンタ500の概略構成を示している。
レーザプリンタ500は、光走査装置900、像担持体としての感光体ドラム901、帯電手段としての帯電チャージャ902、現像ローラ903、トナーカートリッジ904、クリーニングブレード905、給紙トレイ906、給紙コロ907、レジストローラ対908、転写チャージャ911、除電ユニット914、定着ローラ909、排紙ローラ912、及び排紙トレイ910などを備えている。
【0024】
帯電チャージャ902、現像ローラ903、転写チャージャ911、除電ユニット914及びクリーニングブレード905は、それぞれ感光体ドラム901の表面近傍に配置されている。
感光体ドラム901の回転方向に関して、帯電チャージャ902、現像ローラ903、転写チャージャ911、除電ユニット914、クリーニングブレード905の順に配置されている。
感光体ドラム901の表面には、感光層が形成されている。ここでは、感光体ドラム901は、図10における面内で時計回り(矢印方向)に回転するようになっている。帯電チャージャ902は、感光体ドラム901の表面を均一に帯電させる。
【0025】
光走査装置900は、帯電チャージャ902で帯電された感光体ドラム901の表面に、上位装置(例えばパソコン)からの画像情報に基づいて変調された光を照射する。これにより、感光体ドラム901の表面では、画像情報に対応した潜像が感光体ドラム901の表面に形成される。ここで形成された潜像は、感光体ドラム901の回転に伴って現像ローラ903の方向に移動する。なお、この光走査装置900の構成については後述する。
トナーカートリッジ904にはトナーが格納されており、該トナーは現像ローラ903に供給される。現像ローラ903は、感光体ドラム901の表面に形成された潜像にトナーカートリッジ904から供給されたトナーを付着させて画像情報を顕像化させる。ここでトナーが付着された潜像は、感光体ドラム901の回転に伴って転写チャージャ911の方向に移動する。
【0026】
給紙トレイ906には記録紙913が格納されている。この給紙トレイ906の近傍には給紙コロ907が配置されており、該給紙コロ907は、記録紙913を給紙トレイ906から1枚づつ取り出し、レジストローラ対908に搬送する。
レジストローラ対908は、転写ローラ911の近傍に配置され、給紙コロ907によって取り出された記録紙913を一旦保持するとともに、該記録紙913を感光体ドラム901の回転に合わせて感光体ドラム901と転写チャージャ911との間隙に向けて送り出す。
転写チャージャ911には、感光体ドラム901の表面上のトナーを電気的に記録紙913に引きつけるために、トナーとは逆極性の電圧が印加されている。この電圧により、感光体ドラム901の表面の潜像が記録紙913に転写される。ここで転写された記録紙913は、定着ローラ909に送られる。
【0027】
定着ローラ909では、熱と圧力とが記録紙913に加えられ、これによってトナーが記録紙913上に定着される。ここで定着された記録紙913は、排紙ローラ912を介して排紙トレイ910に送られ、排紙トレイ910上に順次スタックされる。
除電ユニット914は、感光体ドラム901の表面を除電する。クリーニングブレード905は、感光体ドラム901の表面に残ったトナー(残留トナー)を除去する。なお、除去された残留トナーは、再度利用されるようになっている。残留トナーが除去された感光体ドラム901の表面は、再度帯電チャージャ902の位置に戻る。
【0028】
図11及び図12に基づいて第3の実施形態(光走査装置)を説明する。
図10で示した光走査装置900は、面発光レーザアレイLAを含む光源ユニット10、カップリングレンズ11、アパーチャ12、シリンドリカルレンズ13、偏向器としてのポリゴンミラー14、走査光学系としてのfθレンズ15、トロイダルレンズ16、2つのミラー(17、18)、及び上記各部を統括的に制御する不図示の主制御装置を備えている。
カップリングレンズ11は、光源ユニット10から出射された光ビームを略平行光に整形する。アパーチャ12は、カップリングレンズ11を介した光ビームのビーム径を規定する。
シリンドリカルレンズ13は、アパーチャ12を通過した光ビームをミラー17を介してポリゴンミラー14の反射面に集光する。
【0029】
ポリゴンミラー14は、高さの低い正六角柱状部材からなり、側面には6面の偏向面が形成されている。そして、不図示の回転機構により、図11に示される矢印の方向に一定の角速度で回転されている。したがって、光源ユニット10から出射され、シリンドリカルレンズ13によってポリゴンミラー14の偏向面に集光された光ビームは、ポリゴンミラー14の回転により一定の角速度で偏向される。
fθレンズ15は、ポリゴンミラー14からの光ビームの入射角に比例した像高をもち、ポリゴンミラー14により一定の角速度で偏向される光ビームの像面を、主走査方向に対して等速移動させる。
トロイダルレンズ16は、fθレンズ15からの光ビームをミラー18を介して、感光体ドラム901の表面上に結像する。
【0030】
この場合に、面発光レーザアレイLAが図12に示されるように配置されていると、面発光レーザアレイLAでは、各面発光レーザ素子(VCSEL)の中心から副走査方向に対応する方向に垂線を下ろした時の副走査方向に対応する方向における各面発光レーザ素子の位置関係が等間隔(間隔d2とする)となるので、点灯のタイミングを調整することで感光体ドラム901上では副走査方向に等間隔で光源が並んでいる場合と同様な構成と捉えることができる。例えば、副走査方向に対応した方向に関する面発光レーザ素子のピッチd1が26.5μmであれば、前記間隔d2は2.65μmとなる。
光学系の倍率を2倍とすれば、感光体ドラム901上では副走査方向に5.3μm間隔で書き込みドットを形成することができる。これは、4800dpi(ドット/インチ)に対応している。すなわち、4800dpi(ドット/インチ)の高密度書込みができる。もちろん、主走査方向に対応する方向の面発光レーザ数を増加したり、前記ピッチd1を狭くして間隔d2を更に小さくするアレイ配置としたり、光学系の倍率を下げる等を行えばより高密度化でき、より高品質の印刷が可能となる。なお、主走査方向の書き込み間隔は、光源の点灯のタイミングで容易に制御できる。
【0031】
また、この場合には、レーザプリンタ500では書きこみドット密度が上昇しても面発光レーザ素子は高い単一基本横モード出力を発生させる事ができるので、印刷速度を落とすことなく印刷することができる。また、同じ書きこみドット密度の場合には印刷速度を更に速くすることができる。
面発光レーザアレイLAでは、本発明の効果に基づいて耐湿性が向上しているので、レーザプリンタ500では熱帯多雨地帯等厳しい環境でも安定して稼働することが可能である。さらに、レーザプリンタ500内の通気設計、排熱設計にも余裕を持たせることが可能となる。
【0032】
以上説明したように、本実施形態に係る光走査装置900によると、光源ユニット10は面発光レーザアレイLAを含んでいるため、感光体ドラム901の表面上に高精彩な潜像を高速で走査形成することが可能となる。
また、本実施形態に係るレーザプリンタ500によると、面発光レーザアレイLAを含む光走査装置900を備えているため、高精細な画像を高速で形成することが可能となる。
また、上記実施形態では、画像形成装置としてレーザプリンタ500の場合について説明したが、これに限定されるものではない。要するに、図12に示す面発光レーザ素子と同様な構成を有する面発光レーザ素子あるいは前記面発光レーザアレイを有する画像形成装置であれば、高精細な画像を高速で形成することが可能となる。
また、カラー画像を形成する画像形成装置であっても、カラー画像に対応した光走査装置を用いることにより、高精細な画像を高速で形成することが可能となる。
また、画像形成装置として、カラー画像に対応し、例えばブラック(K)用の感光体ドラム、シアン(C)用の感光体ドラム、マゼンダ(M)用の感光体ドラム、イエロー(Y)用の感光体ドラムのように複数の感光体ドラムを備えるタンデムカラー機であっても良い。
【符号の説明】
【0033】
14 偏向器としてのポリゴンミラー
100 光素子実装体
101 パッケージ部材としてのセラミックパッケージ
102 透光性の蓋部材としてのガラス蓋
104 光素子
110 開口部
111 補助開口部
112 吸着剤としての水分ゲッター剤
900 光走査装置
901 像担持体としての感光体ドラム
【先行技術文献】
【特許文献】
【0034】
【特許文献1】特開2005−329532号公報
【特許文献2】特開平03−12951号公報
【特許文献3】特開2001−267681号公報
【技術分野】
【0001】
本発明は、面発光レーザー等の光素子をパッケージ部材の開口部内に収容して実装し、上面を透光性の蓋部材で気密封止してなる光素子実装体に係り、詳しくは、気密封止に樹脂材料を用いる光素子実装体、該光素子実装体を有する光走査装置、該光走査装置を有する複写機、プリンタ、ファクシミリ、プロッタ、これらのうち少なくとも1つを備えた複合機等の画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年においては、CCDセンサやCMOSセンサ等の受光素子、面発光レーザー等の発光素子、MEMSミラーを用いた光スキャナ素子・光スイッチング素子、等の光素子が実用化され、各種光学機器に利用されている。
より効率よく用いるため、これらの光素子は一般に2次元アレイ化して用いられる。2次元アレイ化した素子は、信号線が多くなり、一般のCANパッケージへの収納は困難となり、主にセラミックパッケージに収納される。素子を密封して耐環境性を得るため、ガラス、サファイア等の透光性の蓋を用いて密封される。
セラミックパッケージと蓋材の接合は、ハーメチックシール(ガラスと金属の封止技術)接合、ハンダ接合等の方法が用いられてきた。
【0003】
特許文献1には、その図1に示すように、透光性蓋材にハンダ付け可能な材料のパターンを形成することが記載されている。
パターン形成では、スパッタリングや真空蒸着等の真空技術を用いて上記ハンダ付け可能な材料の薄膜を蓋材に形成した後、写真製版、エッチング等の技術を用いて必要な形状に加工される。このため、蓋材の価格が高価となることを避けられない。
特許文献2には、その図1、2に示すように、パッケージ本体の上面周縁にキャップを落とし込むことができる凹部を形成し、凹部とキャップとの隙間に封止ガラスを充填して気密封止を行う構成が記載されている。
しかしながら、低融点硝子接合の場合は400℃程度の熱処理が必要であり、素子の耐熱性が問題となる。
【0004】
特許文献3には、その図3に示すように、セラミックパッケージ内に面発光レーザを収納し、パッケージ上に設置された透光性蓋材を樹脂によってシールする構成が記載されている。
このように、近年、コスト低下のためセラミックパッケージと蓋材の接合に樹脂を用いる場合が増えてきた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、樹脂は基本的にH2Oを透過するため、特に耐高温高湿性に劣るという問題があることが判明した。
特許文献3等に開示された一般的な光素子の実装構造を図13及び14に示す。図13は平面図、図14は図13の中央断面図である。
光素子104を搭載したセラミックパッケージ本体101の上面に凹部105を形成し、この凹部内に透光性蓋102を嵌装して樹脂103にて気密封止している。
図14において、符号110は光素子104を収容して実装するための開口部を示している。
【0006】
ところが、本発明者の実験によると、図13、14に示したセラミックパッケージにガラス蓋をエポキシ樹脂でシールした構造の光素子を、温度85℃、湿度85%の耐環境試験に投入したところ、100時間程度で、室温に戻した状態で、内部に結露が発生し透光性蓋材の内側が曇るという不良が発生してしまった。
光素子においては透光性蓋材の内側が曇ることは致命的欠陥となる。この原因を調査したところ、シール材であるエポキシ樹脂中をH2Oが透過したためであることが判明した。
特許文献1あるいは2に示された方法を用いれば、気密封止は完全になされ、H2Oの内部侵入は起こらないが、上記のようにコスト高になるという欠点がある。
【0007】
本発明は、このような現状に鑑みてなされたもので、コスト低下を実現できる樹脂シール方式において、温度や湿度等の環境変化に対する耐久性を有し、光素子の機能を長期に亘って良好に維持できる光素子実装体の提供を、その主な目的とする。
具体的には、樹脂シール方式において、温度85℃、湿度85%の耐環境試験にて500時間以上の耐久性を有する光素子実装体を得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は、樹脂シールでは本質的にH2Oのパッケージ内部への侵入を防止できないという認識の下、侵入したH2Oを除去することとした。
具体的には、請求項1に記載の発明は、パッケージ部材の開口部に光素子を電気的に接続した状態で搭載し、前記開口部の上面側を透光性の蓋部材で塞ぐとともに樹脂材料により気密に封止してなる光素子実装体において、前記蓋部材で気密に覆われる前記パッケージ部材の領域に、前記開口部と連通する補助開口部が設けられ、前記補助開口部には吸着剤が設置されていることを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の光素子実装体において、前記開口部の底面に前記光素子を搭載する導電性部材が設けられ、該導電性部材は前記パッケージ部材の電極と電気的に接続されていることを特徴とする。
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の光素子実装体において、前記導電性部材が金属であることを特徴とする。
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか1つに記載の光素子実装体において、前記吸着剤が水分を吸着する機能を有していることを特徴とする。
【0010】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれか1つに記載の光素子実装体において、前記補助開口部が異なる箇所に複数設けられていることを特徴とする。
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の光素子実装体において、上面から視たときの前記開口部が四角形の形状を有し、前記開口部の4隅に連通して前記補助開口部が設けられていることを特徴とする。
請求項7に記載の発明は、請求項5又は6に記載の光素子実装体において、前記複数の補助開口部に設置された吸着剤の吸着機能が異なることを特徴とする。
【0011】
請求項8に記載の発明は、請求項1〜7のいずれか1つに記載の光素子実装体において、前記光素子が面発光レーザーであることを特徴とする。
請求項9に記載の発明は、請求項1〜8のいずれか1つに記載の光素子実装体において、前記パッケージ部材がセラミックで形成され、前記蓋部材がガラスで形成されていることを特徴とする。
請求項10に記載の発明は、被走査面上で光を走査する光走査装置において、請求項1〜9のいずれか1つに記載の光素子実装体と、前記光素子実装体から発光された光を偏向する偏向器と、前記偏向器で偏向された光を前記被走査面上に集光する走査光学系と、を備えることを特徴とする。
請求項11に記載の発明は、画像形成装置において、請求項10に記載の光走査装置と、前記光走査装置により光が走査される前記被走査面を備える少なくとも一つの像担持体と、を備え、前記光走査装置は、前記像担持体の前記被走査面上で画像情報が含まれる光を走査し、前記像担持体の前記被走査面上に画像を形成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、耐環境性、特に耐高温高湿性を向上させることができ、光素子の良好な機能を長期に亘って維持することができる。これにより、樹脂シール方式の光素子実装体の信頼性を大幅に向上させることができる。
また、用いるゲッター剤を変更することにより、水素、酸素等を吸着除去可能であり、使用環境の物理的、化学的変化に対する耐久性をも向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る光素子実装体の概要平面図である。
【図2】図1の中央部位での概要断面図である。
【図3】図1のA−A線での断面図で、水分ゲッター剤を省略した状態を示す図である。
【図4】図1のA−A線での断面図で、水分ゲッター剤を省略していない状態を示す図である。
【図5】図1のB−B線での断面図で、水分ゲッター剤を省略した状態を示す図である。
【図6】図1のB−B線での断面図で、水分ゲッター剤を省略していない状態を示す図である。
【図7】図2のC−C線での概要断面図である。
【図8】図2のD−D線での概要断面図である。
【図9】図2のD−D線での変形例での概要断面図である。
【図10】第2の実施形態に係る画像形成装置の概要構成図である。
【図11】第3の実施形態に係る光走査装置の概要斜視図である。
【図12】面発光レーザアレイの配置状態を示す図である。
【図13】従来の光素子実装体を示す平面図である。
【図14】図13の中央部位における概要断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を図を参照して説明する。
まず、具体的な構成を説明する前に、市販物として容易に入手できる吸着剤(以下「ゲッター剤」ともいう)を簡単に適用できない点について説明する。
H2Oを除去するために一般的にシリカゲル等の除湿剤(吸着剤)が用いられている。シリカゲルをパッケージ内に封入する試験を行ったところ、内部に侵入したH2Oを吸着除去することができ、耐環境性を向上できることを確認できた。
ところが、光素子を密封したパッケージ内に除湿剤を封入するには各種制限が有り、シリカゲル等を直ちに用いることはできないことが分かった。
最近では水分ゲッター剤として各種製品が開発、販売されている。例えば以下のようなものがある。
(1)シート状に整形されたもの
1-1.ジャパンゴアテックス株式会社の有機ELデシカント
1-2.ダイニック(株)の水分ゲッター
1-3.サエス・ゲッターズ社のDryFlex
(2)ペースト状であり、塗布し、加熱固化して用いるもの
2-1.米国Cookson Semiconductor Packaging Materials社製の水分ゲッター剤HiCap2000
【0015】
これらの水分ゲッター剤を採用する場合にも収納場所という問題がある。まず、ボンディングワイヤ及び内部配線間を跨いで設置した場合には電気的短絡を起す懸念がある。
また、ボンディングワイヤに接触した場合には応力による断線、ショート等の懸念がある。
透光性蓋に設置する場合は、入出射光を妨げないという制限があるとともに、位置合わせを高精度に行う必要があるという制限がある。特にペースト状ゲッター剤を用いると濡れ性の問題が有り、にじみが発生するため入出射光を妨げる可能性が高くなり採用は困難である。
【0016】
そこで、本発明は、上記問題を解決するために、パッケージ内部に専用のゲッター剤収納場所を設ける構造とした。
【0017】
図1乃至図9に基づいて第1の実施形態(光素子実装体)を説明する。なお、従来例と同一部分は同一符号で示す。
図1は、本実施形態に係る光素子実装体100を上側から見た平面図、図2は図1の中央断面図である。
パッケージ部材としてのセラミックパッケージ101には、透光性の蓋部材としてのガラス蓋102を嵌合載置するための凹部105が形成されており、凹部105の中央部には、光素子104を収容するための開口部110が段差を有する状態に形成されている。
開口部110の底面には、金属よりなる導電性部材としての搭載部108が設けられており、光素子104は搭載部108上に搭載されている。
セラミックパッケージ101の内部にはパッケージ電極106が設けられており、搭載部108とパッケージ電極106は電気的に接続されている。また、光素子104はボンディングワイヤ107によりパッケージ電極106に接続されている。
【0018】
光素子104を実装した後、開口部110の上面はガラス蓋102で塞がれ、エポキシ樹脂等の樹脂材103で気密にシールされる。
図1に示すように、ガラス蓋102で覆われるセラミックパッケージ101の領域には、開口部110よりも容積の小さい補助開口部111がその4隅に形成されている。各補助開口部111は連通部113を介して開口部110に通気的に連通している。
各補助開口部111は、開口部110よりも容積が小さく、この観点から「小開口部」と称することもできる。但し、開口部110よりも容積が小さいということが本発明の条件ではない。
各補助開口部111には、水分ゲッター剤112が設置されている。
図3は、図1のA−A線での断面図で、補助開口部111の位置、形状を分かりやすくするために、水分ゲッター剤112を省略した状態を表示している。
補助開口部111に水分ゲッター剤112を設置した状態の図3相当の断面を図4に示す。
図5は図1におけるB−B線での断面図で、水分ゲッター剤112を省略した状態を示す図、図6は補助開口部111に水分ゲッター剤112を設置した状態の図5相当の断面を示している。
図7は図2のC−C線での断面の平面図である。パッケージ電極106が、小開口部111に接しないよう配線されている状態を示す。図7において、符号114は、搭載部108と貫通孔により接続した電極を示す。
図8は図2のD−D線での断面の平面図の一例である。小開口部の底面が金属よりなる搭載部108である状態を示す。
図9は図2のD−D線での断面の平面図の別の一例を示す。小開口部の底面に金属よりなる搭載部108を形成せず、パッケージ材料面とする状態を示している。図9において、符号115は、金属よりなる搭載部において小開口部周辺を除去した領域を示している。
【0019】
用いるゲッター剤はシート状のものを貼り付けても良いし、ペースト状のものを充填し、加熱硬化させても良い。
一例として図1、2に示したパッケージの形状において、本発明の効果を説明する。
図1、2のパッケージ形状において、内部容積(開口部110と小開口部111を合計した容積)を30mm3、小開口部111を1.2mm×1.2mmとした構造のパッケージを試作し、水分ゲッター剤としてペースト状のHiCap2000を用い評価した。
内部容積30mm3とした場合、25℃において結露する内部H2O量は0.7μgである。小開口部に水分ゲッター剤を0.2mmの厚さに充填すると、約1100μgとなる。HiCap2000は、自重の15%のH2Oを吸着除去可能なので、170μgのH2Oを吸着除去できる。
すなわち、耐環境性寿命を247倍(170/0.7)にできる。
【0020】
実際の効果を確認するため、図1、2のパッケージを用い、水分ゲッター剤充填の無いサンプルと、水分ゲッター剤充填の有るサンプルを作成し、温度85℃、湿度85%の環境で耐環境試験を行った。
水分ゲッター剤充填の無いサンプルの場合、50時間で内部結露を生じたが、水分ゲッター剤充填の有るサンプルでは1000時間経過しても内部結露は発生しなかった。
すなわち、実際の試験においても、水分ゲッター剤充填により耐環境性寿命を大幅に向上できることを確認できた。
【0021】
なお、本実施形態では、本発明の効果を、水分ゲッター剤を中心に説明したが、本発明の効果は水分ゲッター剤に限定されるものではない。
市販されている水分ゲッター剤以外のゲッター剤として以下のようなものがあり、目的に応じて本発明に用いることが可能である。
1.サエス・ゲッターズ社のPaGeフィルム
(O2、CO、H2O、CO2、N2、及びH2を含む全ての活性ガスの化学吸着)
2.米国Cookson Semiconductor Packaging Materials社製H2-3000
(水素・水分ゲッターフィルム)
すなわち、各小開口部111に吸着対象が異なるゲッター剤を設置すれば、種々の化学的環境変化に対する耐久性をも高めることができる。
【0022】
本実施形態では、ガラス蓋102で気密に覆われるセラミックパッケージ101の領域内において、開口部110に連通する小開口部111を形成する構成としたが、開口部110の側壁に横穴を開けて収容部を形成し、該収容部にゲッター剤を設置してもよい。この場合には、「蓋部材で気密に覆われるパッケージ部材の領域内」という限定は不要となる。
また、開口部110の底面に凹部を形成してゲッター剤を収容する収容部としてもよい。この場合、搭載部108を貫通する凹部としてもよい。
【0023】
図10に基づいて第2の実施形態(画像形成装置)を説明する。図10は、上記光素子実装体100を有する光走査装置を備えた画像形成装置としてのレーザプリンタ500の概略構成を示している。
レーザプリンタ500は、光走査装置900、像担持体としての感光体ドラム901、帯電手段としての帯電チャージャ902、現像ローラ903、トナーカートリッジ904、クリーニングブレード905、給紙トレイ906、給紙コロ907、レジストローラ対908、転写チャージャ911、除電ユニット914、定着ローラ909、排紙ローラ912、及び排紙トレイ910などを備えている。
【0024】
帯電チャージャ902、現像ローラ903、転写チャージャ911、除電ユニット914及びクリーニングブレード905は、それぞれ感光体ドラム901の表面近傍に配置されている。
感光体ドラム901の回転方向に関して、帯電チャージャ902、現像ローラ903、転写チャージャ911、除電ユニット914、クリーニングブレード905の順に配置されている。
感光体ドラム901の表面には、感光層が形成されている。ここでは、感光体ドラム901は、図10における面内で時計回り(矢印方向)に回転するようになっている。帯電チャージャ902は、感光体ドラム901の表面を均一に帯電させる。
【0025】
光走査装置900は、帯電チャージャ902で帯電された感光体ドラム901の表面に、上位装置(例えばパソコン)からの画像情報に基づいて変調された光を照射する。これにより、感光体ドラム901の表面では、画像情報に対応した潜像が感光体ドラム901の表面に形成される。ここで形成された潜像は、感光体ドラム901の回転に伴って現像ローラ903の方向に移動する。なお、この光走査装置900の構成については後述する。
トナーカートリッジ904にはトナーが格納されており、該トナーは現像ローラ903に供給される。現像ローラ903は、感光体ドラム901の表面に形成された潜像にトナーカートリッジ904から供給されたトナーを付着させて画像情報を顕像化させる。ここでトナーが付着された潜像は、感光体ドラム901の回転に伴って転写チャージャ911の方向に移動する。
【0026】
給紙トレイ906には記録紙913が格納されている。この給紙トレイ906の近傍には給紙コロ907が配置されており、該給紙コロ907は、記録紙913を給紙トレイ906から1枚づつ取り出し、レジストローラ対908に搬送する。
レジストローラ対908は、転写ローラ911の近傍に配置され、給紙コロ907によって取り出された記録紙913を一旦保持するとともに、該記録紙913を感光体ドラム901の回転に合わせて感光体ドラム901と転写チャージャ911との間隙に向けて送り出す。
転写チャージャ911には、感光体ドラム901の表面上のトナーを電気的に記録紙913に引きつけるために、トナーとは逆極性の電圧が印加されている。この電圧により、感光体ドラム901の表面の潜像が記録紙913に転写される。ここで転写された記録紙913は、定着ローラ909に送られる。
【0027】
定着ローラ909では、熱と圧力とが記録紙913に加えられ、これによってトナーが記録紙913上に定着される。ここで定着された記録紙913は、排紙ローラ912を介して排紙トレイ910に送られ、排紙トレイ910上に順次スタックされる。
除電ユニット914は、感光体ドラム901の表面を除電する。クリーニングブレード905は、感光体ドラム901の表面に残ったトナー(残留トナー)を除去する。なお、除去された残留トナーは、再度利用されるようになっている。残留トナーが除去された感光体ドラム901の表面は、再度帯電チャージャ902の位置に戻る。
【0028】
図11及び図12に基づいて第3の実施形態(光走査装置)を説明する。
図10で示した光走査装置900は、面発光レーザアレイLAを含む光源ユニット10、カップリングレンズ11、アパーチャ12、シリンドリカルレンズ13、偏向器としてのポリゴンミラー14、走査光学系としてのfθレンズ15、トロイダルレンズ16、2つのミラー(17、18)、及び上記各部を統括的に制御する不図示の主制御装置を備えている。
カップリングレンズ11は、光源ユニット10から出射された光ビームを略平行光に整形する。アパーチャ12は、カップリングレンズ11を介した光ビームのビーム径を規定する。
シリンドリカルレンズ13は、アパーチャ12を通過した光ビームをミラー17を介してポリゴンミラー14の反射面に集光する。
【0029】
ポリゴンミラー14は、高さの低い正六角柱状部材からなり、側面には6面の偏向面が形成されている。そして、不図示の回転機構により、図11に示される矢印の方向に一定の角速度で回転されている。したがって、光源ユニット10から出射され、シリンドリカルレンズ13によってポリゴンミラー14の偏向面に集光された光ビームは、ポリゴンミラー14の回転により一定の角速度で偏向される。
fθレンズ15は、ポリゴンミラー14からの光ビームの入射角に比例した像高をもち、ポリゴンミラー14により一定の角速度で偏向される光ビームの像面を、主走査方向に対して等速移動させる。
トロイダルレンズ16は、fθレンズ15からの光ビームをミラー18を介して、感光体ドラム901の表面上に結像する。
【0030】
この場合に、面発光レーザアレイLAが図12に示されるように配置されていると、面発光レーザアレイLAでは、各面発光レーザ素子(VCSEL)の中心から副走査方向に対応する方向に垂線を下ろした時の副走査方向に対応する方向における各面発光レーザ素子の位置関係が等間隔(間隔d2とする)となるので、点灯のタイミングを調整することで感光体ドラム901上では副走査方向に等間隔で光源が並んでいる場合と同様な構成と捉えることができる。例えば、副走査方向に対応した方向に関する面発光レーザ素子のピッチd1が26.5μmであれば、前記間隔d2は2.65μmとなる。
光学系の倍率を2倍とすれば、感光体ドラム901上では副走査方向に5.3μm間隔で書き込みドットを形成することができる。これは、4800dpi(ドット/インチ)に対応している。すなわち、4800dpi(ドット/インチ)の高密度書込みができる。もちろん、主走査方向に対応する方向の面発光レーザ数を増加したり、前記ピッチd1を狭くして間隔d2を更に小さくするアレイ配置としたり、光学系の倍率を下げる等を行えばより高密度化でき、より高品質の印刷が可能となる。なお、主走査方向の書き込み間隔は、光源の点灯のタイミングで容易に制御できる。
【0031】
また、この場合には、レーザプリンタ500では書きこみドット密度が上昇しても面発光レーザ素子は高い単一基本横モード出力を発生させる事ができるので、印刷速度を落とすことなく印刷することができる。また、同じ書きこみドット密度の場合には印刷速度を更に速くすることができる。
面発光レーザアレイLAでは、本発明の効果に基づいて耐湿性が向上しているので、レーザプリンタ500では熱帯多雨地帯等厳しい環境でも安定して稼働することが可能である。さらに、レーザプリンタ500内の通気設計、排熱設計にも余裕を持たせることが可能となる。
【0032】
以上説明したように、本実施形態に係る光走査装置900によると、光源ユニット10は面発光レーザアレイLAを含んでいるため、感光体ドラム901の表面上に高精彩な潜像を高速で走査形成することが可能となる。
また、本実施形態に係るレーザプリンタ500によると、面発光レーザアレイLAを含む光走査装置900を備えているため、高精細な画像を高速で形成することが可能となる。
また、上記実施形態では、画像形成装置としてレーザプリンタ500の場合について説明したが、これに限定されるものではない。要するに、図12に示す面発光レーザ素子と同様な構成を有する面発光レーザ素子あるいは前記面発光レーザアレイを有する画像形成装置であれば、高精細な画像を高速で形成することが可能となる。
また、カラー画像を形成する画像形成装置であっても、カラー画像に対応した光走査装置を用いることにより、高精細な画像を高速で形成することが可能となる。
また、画像形成装置として、カラー画像に対応し、例えばブラック(K)用の感光体ドラム、シアン(C)用の感光体ドラム、マゼンダ(M)用の感光体ドラム、イエロー(Y)用の感光体ドラムのように複数の感光体ドラムを備えるタンデムカラー機であっても良い。
【符号の説明】
【0033】
14 偏向器としてのポリゴンミラー
100 光素子実装体
101 パッケージ部材としてのセラミックパッケージ
102 透光性の蓋部材としてのガラス蓋
104 光素子
110 開口部
111 補助開口部
112 吸着剤としての水分ゲッター剤
900 光走査装置
901 像担持体としての感光体ドラム
【先行技術文献】
【特許文献】
【0034】
【特許文献1】特開2005−329532号公報
【特許文献2】特開平03−12951号公報
【特許文献3】特開2001−267681号公報
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パッケージ部材の開口部に光素子を電気的に接続した状態で搭載し、前記開口部の上面側を透光性の蓋部材で塞ぐとともに樹脂材料により気密に封止してなる光素子実装体において、
前記蓋部材で気密に覆われる前記パッケージ部材の領域に、前記開口部と連通する補助開口部が設けられ、前記補助開口部には吸着剤が設置されていることを特徴とする光素子実装体。
【請求項2】
請求項1に記載の光素子実装体において、
前記開口部の底面に前記光素子を搭載する導電性部材が設けられ、該導電性部材は前記パッケージ部材の電極と電気的に接続されていることを特徴とする光素子実装体。
【請求項3】
請求項2に記載の光素子実装体において、
前記導電性部材が金属であることを特徴とする光素子実装体。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1つに記載の光素子実装体において、
前記吸着剤が水分を吸着する機能を有していることを特徴とする光素子実装体。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1つに記載の光素子実装体において、
前記補助開口部が異なる箇所に複数設けられていることを特徴とする光素子実装体。
【請求項6】
請求項5に記載の光素子実装体において、
上面から視たときの前記開口部が四角形の形状を有し、前記開口部の4隅に連通して前記補助開口部が設けられていることを特徴とする光素子実装体。
【請求項7】
請求項5又は6に記載の光素子実装体において、
前記複数の補助開口部に設置された吸着剤の吸着機能が異なることを特徴とする光素子実装体。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1つに記載の光素子実装体において、
前記光素子が面発光レーザーであることを特徴とする光素子実装体。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1つに記載の光素子実装体において、
前記パッケージ部材がセラミックで形成され、前記蓋部材がガラスで形成されていることを特徴とする光素子実装体。
【請求項10】
被走査面上で光を走査する光走査装置において、
請求項1〜9のいずれか1つに記載の光素子実装体と、
前記光素子実装体から発光された光を偏向する偏向器と、
前記偏向器で偏向された光を前記被走査面上に集光する走査光学系と、を備えることを特徴とする光走査装置。
【請求項11】
請求項10に記載の光走査装置と、
前記光走査装置により光が走査される前記被走査面を備える少なくとも一つの像担持体と、を備え、
前記光走査装置は、前記像担持体の前記被走査面上で画像情報が含まれる光を走査し、前記像担持体の前記被走査面上に画像を形成することを特徴とする画像形成装置。
【請求項1】
パッケージ部材の開口部に光素子を電気的に接続した状態で搭載し、前記開口部の上面側を透光性の蓋部材で塞ぐとともに樹脂材料により気密に封止してなる光素子実装体において、
前記蓋部材で気密に覆われる前記パッケージ部材の領域に、前記開口部と連通する補助開口部が設けられ、前記補助開口部には吸着剤が設置されていることを特徴とする光素子実装体。
【請求項2】
請求項1に記載の光素子実装体において、
前記開口部の底面に前記光素子を搭載する導電性部材が設けられ、該導電性部材は前記パッケージ部材の電極と電気的に接続されていることを特徴とする光素子実装体。
【請求項3】
請求項2に記載の光素子実装体において、
前記導電性部材が金属であることを特徴とする光素子実装体。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1つに記載の光素子実装体において、
前記吸着剤が水分を吸着する機能を有していることを特徴とする光素子実装体。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1つに記載の光素子実装体において、
前記補助開口部が異なる箇所に複数設けられていることを特徴とする光素子実装体。
【請求項6】
請求項5に記載の光素子実装体において、
上面から視たときの前記開口部が四角形の形状を有し、前記開口部の4隅に連通して前記補助開口部が設けられていることを特徴とする光素子実装体。
【請求項7】
請求項5又は6に記載の光素子実装体において、
前記複数の補助開口部に設置された吸着剤の吸着機能が異なることを特徴とする光素子実装体。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1つに記載の光素子実装体において、
前記光素子が面発光レーザーであることを特徴とする光素子実装体。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1つに記載の光素子実装体において、
前記パッケージ部材がセラミックで形成され、前記蓋部材がガラスで形成されていることを特徴とする光素子実装体。
【請求項10】
被走査面上で光を走査する光走査装置において、
請求項1〜9のいずれか1つに記載の光素子実装体と、
前記光素子実装体から発光された光を偏向する偏向器と、
前記偏向器で偏向された光を前記被走査面上に集光する走査光学系と、を備えることを特徴とする光走査装置。
【請求項11】
請求項10に記載の光走査装置と、
前記光走査装置により光が走査される前記被走査面を備える少なくとも一つの像担持体と、を備え、
前記光走査装置は、前記像担持体の前記被走査面上で画像情報が含まれる光を走査し、前記像担持体の前記被走査面上に画像を形成することを特徴とする画像形成装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2011−187645(P2011−187645A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−50722(P2010−50722)
【出願日】平成22年3月8日(2010.3.8)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月8日(2010.3.8)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
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