説明

光結合器の製造方法および光結合器

【課題】コアとその周囲に所定の形状のクラッドを形成することが可能な量産性の高い光結合器の製造方法および光結合器を提供する。
【解決手段】本実施形態の光結合器の製造方法は、コア製造工程とクラッド製造工程からなる。また、コア111a、クラッド112a、および堰止部141aを形成するための成型手段として、第1の露光マスク142および第2の露光マスク143を用いて光硬化性樹脂であるコア材料114およびクラッド材料115に光を照射する。コア111aと堰止部141aとを同一のコア材料114を用いて同時に形成しており、製造工程の短縮化を図るとともに、光導波路110aを所定の形状に作製可能な量産性の高い製造方法となっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光回路基板に備えられた光伝送路と光素子とを光結合させるための光結合器およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体からなる集積素子の分野では、高速・高密度化への進展が著しく、従来の電気的な配線による相互接続では、信号の遅延、減衰、干渉等により、十分な特性が期待できなくなることが問題となっている。この問題は、IOボトルネックといわれ、これを解決するために光インターコネクション技術が注目されている。光インターコネクション技術は、通信機器相互間や通信機器内のボード間にとどまらず、1つのボード内の集積回路素子間にも適用することが検討されている。
【0003】
従来のボード内光インターコネクションを実現するための光回路基板として、例えば特許文献1に開示されている光導波路が形成された多層プリント基板が知られている。特許文献1に開示された光回路基板は、基板表面に実装された面発光型光素子(VCSEL)から基板に垂直な方向に出射された信号光を、光配線に形成された光路変換ミラーで反射させることで光伝送路を導波させ、導波した信号光を別の光路変換ミラーで反射させて面受光型光素子(プレーナー型フォトダイオード)によって受光するものである。
【0004】
光信号を用いた光伝送システムでは、発光素子や受光素子等に加えて、光信号を伝播させるための光伝送路が必要となり、各受発光素子を光伝送路に光結合させて用いている。光信号は、光強度の高低で表されることから、光伝送システムでは光強度を維持することが重要である。また、受発光素子を実装するには電気回路基板が必要となり、これが受発光素子と光伝送路との間に実装されるため、受発光素子と光伝送路とが離れた構造となっている。その結果、受発光素子と光伝送路との間で十分な光強度が確保できなくなってしまうといった問題があった。
【0005】
このような構造の光伝送システムにおいて、十分な光強度を確保するには受発光素子と光伝送路との間を高い光結合効率で光結合する手段が必要となる。高い光結合効率を実現する光結合手段として、受発光素子と光伝送路との間に光を伝搬させるための光導波路を用いるものが従来から知られている(特許文献2)。光導波路を用いた光結合手段を図7に示す。ここでは、光素子901と光伝送路902との間を、光導波路(光ピン)903を用いて光結合した例を示している。
【0006】
また、非特許文献1には、光素子と光伝送路との間を光結合させるための光導波路が、いわゆる自己形成法という方法で形成されるものが開示されている。自己形成法により光結合器の光導波路を形成する方法を図8に示す。ここでは、光素子911の受発光面にコア用樹脂として未硬化の紫外線硬化樹脂913を配置し、その上に所定のパターンが形成されたマスク914を載置し、その上から紫外線等の光を照射することによりコア912を形成している。
【特許文献1】特許公開2006−120956号公報
【特許文献2】特許公開2004−157438号公報
【非特許文献1】第20回エレクトロニクス実装学会講演大会、22C−07、「マスク転写法光ロッドとファイバの光接続」東海大学 久保宏行他、2006.3.22
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記従来の光結合器およびその製造方法では、以下のような問題があった。上記の光ピン等のように光ファイバを加工して光導波路を形成する方法では、量産性に欠けるといった問題があった。また、自己形成法(紫外線露光法)によりコアを形成する方法では、量産性を高めることは可能なものの、クラッドが形成されていないため信頼性が低いという問題があり、信頼性を向上させるためにコア周囲にクラッドを形成しようにも、未硬化のクラッド材をコアを覆うように配置することが困難といった問題があった。
【0008】
すなわち、コアの周りにクラッド材を多く供給すると溢れて周囲に影響を及ぼしたり、界面における光軸が曲がってしまうといった問題がある一方、クラッド材が少ないとコアを十分に覆うことができない等の問題があった。
【0009】
さらに、クラッドを所定の形状に形成するのが困難といった問題があった。コアおよびクラッドを形成する前に、コア材やクラッド材を供給するための堰止部を市販のダム剤を用いてコアの周りに設けることも可能であるが、ディスペンサを用いて形成しているため、堰止部を所定の位置に所定の形状で精度良く形成するといったことができない。クラッドの形状は堰止部の形状に影響されるため、堰止部を所定通りに形成できないと、クラッドの形状も所定通りに形成することができないといった問題があった。
【0010】
そこで、本発明はこれらの問題を解決するためになされたものであり、コアとその周囲に所定の形状のクラッドを形成することが可能な量産性の高い光結合器の製造方法および光結合器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明の光結合器の製造方法の第1の態様は、電気回路基板と、前記電気回路基板に略平行に設けられた光伝送路とを備えた光回路基板に、光素子を光結合させるための光導波路を備えた光結合器の製造方法であって、前記光素子の受発光面または前記電気回路基板の開口部に前記光導波路のコアおよび該コアを取り囲む堰止部を同時に作製するコア製造工程と、前記堰止部の内部にクラッドを形成するクラッド製造工程と、を含むことを特徴とする。
【0012】
この発明の光結合器の製造方法の他の態様は、前記コアと前記堰止部とを同一の材料で形成することを特徴とする。
【0013】
この発明の光結合器の製造方法の他の態様は、前記コアのコア材料は、光硬化性樹脂であることを特徴とする。
【0014】
この発明の光結合器の製造方法の他の態様は、前記コア製造工程は、前記コアおよび前記堰止部に対応するパターンを有する第1の露光マスクを通して前記コア材料に光を照射することで、前記コアおよび前記堰止部を前記所定の形状に形成することを特徴とする。
【0015】
この発明の光結合器の製造方法の他の態様は、前記コア製造工程は、前記光硬化樹脂が硬化する光を透過する型を用いて前記コア材料に光を照射することで、前記コアおよび前記堰止部を前記所定の形状に形成することを特徴とする。
【0016】
この発明の光結合器の製造方法の他の態様は、前記クラッド製造工程は、前記クラッドを、光硬化性のクラッド材料で形成することを特徴とする。
【0017】
この発明の光結合器の製造方法の他の態様は、記クラッド製造工程は、前記堰止部のすくなくとも内部に前記クラッド材料を供給するステップと、前記クラッド材料上部に第2の露光マスクを配置するステップと、前記第2の露光マスクを介して前記クラッド材料に光を照射するステップと、を含むことを特徴とする。
【0018】
この発明の光結合器の製造方法の他の態様は、前記クラッド製造工程は、前記堰止部のすくなくとも内部に前記クラッド材料を供給するステップと、前記クラッド材料上部に前記クラッドに対応するパターンを有する第2の露光マスクを配置するステップと、前記第2の露光マスクを介して前記クラッド材料に光を照射するステップと、未硬化の前記クラッド材料を除去するステップと、を含むことを特徴とする。
【0019】
この発明の光結合器の製造方法の他の態様は、前記クラッド製造工程は、前記クラッドを、熱硬化性もしくは熱可塑性のクラッド材料で形成することを特徴とする。
【0020】
この発明の光結合器の製造方法の他の態様は、前記クラッド製造工程は、前記堰止部のすくなくとも内部に前記クラッド材料を供給するステップと、前記クラッド材料上部に前記クラッドに対応する形状を有する型を配置するステップと、型が配置された状態で熱硬化するステップと、型を離型するステップと、を含むことを特徴とする。
【0021】
この発明の光結合器の第1の態様は、電気回路基板と、前記電気回路基板に略平行に設けられた光伝送路とを備えた光回路基板に、光素子を光結合させるための光導波路を備えた光結合器であって、前記光素子の受発光面および前記電気回路基板の開口部の少なくともいずれか一方に形成された所定の形状の前記光導波路のコアと、前記コアを取り囲むように前記コアと同時に所定の形状に形成された堰止部と、前記堰止部の内部に形成されたクラッドと、を備えることを特徴とする。
【0022】
この発明の光結合器の他の態様は、前記堰止部は、所定の位置に開口部を有することを特徴とする。
【0023】
この発明の光結合器の他の態様は、前記堰止部は、複数の柱状体を配列して形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、コアとその周囲に所定の形状のクラッドを形成することが可能な量産性の高い光結合器の製造方法および光結合器を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
図面を参照して本発明の好ましい実施の形態における光結合器の製造方法および光結合器について詳細に説明する。なお、同一機能を有する各構成部については、図示及び説明簡略化のため、同一符号を付して示す。
【0026】
本発明の第1の実施形態に係る光結合器の製造方法、およびこの製造方法を用いて製造された光結合器を、図1、2を用いて以下に説明する。図1は、本実施形態に係る光結合器の製造方法を説明するための概略工程図であり、図2は、本実施形態に係る光結合器の製造方法により製造された光結合器を用いて、光回路基板と光素子とを光結合させた実施例を示す断面図および光素子搭載基板の下面図を示している。
【0027】
図2では、本実施形態の光結合器100が、光素子搭載用基板121に搭載された光素子120と、光回路基板130に備えられた光伝送路131とを高効率で光結合するために用いられている。光回路基板130は、電気回路基板132と、これに略平行に設置された光伝送路131とを備えている。光結合器100は、光素子120の受発光面120aに設置された素子側光導波路110aと、光伝送路131の上面に形成された電気回路基板132の開口部133に設置された基板側光導波路110bとで構成されている。
【0028】
素子側光導波路110aおよび基板側光導波路110bは、それぞれコア111a、111bとその外周面に形成されたクラッド112a、112bとで構成されており、それぞれが光素子120の受発光面120aおよび電気回路基板132の開口部133に別々に形成されている。光素子搭載用基板121は、はんだ151で電気回路基板132に電気的に接続されている。素子側光導波路110aおよび基板側光導波路110bは、はんだ151とともに接着剤152で一体に固定されている。
【0029】
図2に示す光素子搭載基板121の下面図は、光素子搭載基板121に形成された素子側光導波路110aを下側から見た図であるが、素子側光導波路110aの周りに堰止部141aが形成されている。同様に、光回路基板130にも基板側光導波路110bの周りに堰止部141bが形成されている。
【0030】
光素子120と光回路基板130とを光結合器100を用いて光結合することにより、光素子120と光伝送路131に設けられた反射面134との間で、コア111aと111bの内部を光が伝送するように構成され、これにより光の減衰を抑えて高い光結合を実現することができる。
【0031】
上記のような光結合器100を製造するための本発明の実施形態に係る光結合器の製造方法を以下に説明する。図1では、光素子120の受発光面120aに素子側光導波路110aを形成する例を示しているが、電気回路基板132の開口部133に基板側光導波路110bを形成する場合も、図1と同様の製造方法を用いることができる。
【0032】
本実施形態の光結合器の製造方法では、図1(a)に示すコア製造工程と同図(b)に示すクラッド製造工程により素子側光導波路110aを形成している。ここでは、コア111a、クラッド112a、および堰止部141aを形成するための成型手段として、第1の露光マスク142および第2の露光マスク143を用いており、これを介して光硬化性樹脂であるコア材料114およびクラッド材料115に光を照射する手段を用いている。
【0033】
コア製造工程では、まず第1段階としてコア111aと堰止部141aとを形成する位置にコア材料114を供給する。次の第2段階では、コア材料114の上部に第1の露光マスク142を配置し、その上部から光を照射することで、コア111aと堰止部141aとを形成する。さらに第3段階では、未硬化のまま残ったコア材料114を除去する。
【0034】
上記のコア製造工程において、第1段階ではコア111aと堰止部141aを形成するのに十分な量のコア材料114を光素子搭載基板121上に供給している。第2段階では、コア111aと堰止部141aを形成する位置のみで光を透過させるように光透過パターンが形成された第1の露光マスク142を用い、これをコア材料114の上部に配置する。このとき、コアの形成位置が光素子120の受発光部の位置に一致するように位置合わせする。その後、第1の露光マスク142の上部から光を照射し、第1の露光マスク142を透過した光がコア材料114を硬化させる。これによって、光素子搭載基板121上にコア111aと堰止部141aが形成される。このとき、光は平行光が望ましい。
【0035】
上記のコア製造工程により形成されるコア111aおよび堰止部141aは、第1の露光マスク142に形成された光透過パターンに対応する形状に形成される。従って、第1の露光マスク142の光透過パターンを適切に形成することで、所定の形状のコア111aおよび堰止部141aを形成することができる。
【0036】
コア製造工程の第1段階では、光素子搭載基板121上にコア材料114を供給しているが、図1(a)ではコア材料114を堰き止める部材を特に用いていない。堰止部141aを形成する位置を取り囲むように適当な部材を配置し、その内部にコア材料114を供給するようにした場合には、より少ない量のコア材料114でコア111aおよび堰止部141aを形成することができる。
【0037】
図1(a)では、第2段階において第1の露光マスク142をコア材料114の上部で支える手段を特に使用しない場合について、記載している。
【0038】
コア製造工程の第3段階では、コア111aおよび堰止部141aの形成に用いられたものを除く未硬化のコア材料114を、たとえばエタノールを用いて除去している。これにより、コア材料114を所定の形状に硬化して形成されたコア111aおよび堰止部141aが光素子搭載基板121上に残される。
【0039】
上記のコア製造工程に続いてクラッド製造工程が実行される。クラッド製造工程では、まず第1段階としてコア製造工程で形成されたコア111aおよび堰止部141a上にクラッド材料115を供給する。次の第2段階では、コア111aおよび堰止部141aの上部に第2の露光マスク143を配置し、その上部から光を照射することでクラッド112aを形成する。さらに第3段階では、未硬化のまま残ったクラッド材料115を除去する。
【0040】
上記のクラッド製造工程において、第1段階ではコア111aと堰止部141aを覆うように十分な量のクラッド材料115を供給している。クラッド材料115が十分に供給されていない場合には、コア111aの先端までクラッド112aを形成できないおそれがある。本実施形態の光結合器の製造方法では、コア製造工程において堰止部141aが形成されていることから、その内部にクラッド材料115を充填させることで、コア111aの先端までクラッド112aを形成することが可能となる。また、クラッド材料115が周囲に拡がるのを防止することができることから、より少ない量のクラッド材料115でクラッド112aを形成することができる。
【0041】
クラッド製造工程の第2段階では、第2の露光マスク143に光透過パターンを適切に形成することで、所定の形状のクラッド112aを形成することができる。図1(b)では、堰止部141aの内部だけでなくその外部にも所定幅のクラッド材料115を硬化させるようにしている。別の実施例として、堰止部141aの内部のみに光を透過するように光透過パターンを形成することで、堰止部141aの内部のみにクラッド112aを形成するようにすることもできる。
【0042】
第3段階では、堰止部141aの外部等に残された未硬化のクラッド材料115を、たとえばエタノールを用いて除去している。これにより、所定の形状のコア111aとクラッド112aを備えた素子側光導波路110aが形成される。
【0043】
上記説明のように、本実施形態の光結合器の製造方法では、コア111aと堰止部141aとを同一のコア材料114を用いて同時に形成しており、製造工程の短縮化を図っている。また、第1の露光マスク142および第2の露光マスク143を用いた成型手段により、コア111aおよびクラッド112aを所定の位置に所定の形状で形成することが可能な量産性の高い製造方法となっている。
【0044】
本実施形態のコア製造工程を、図3を用いてさらに詳細に説明する。図3では第2段階において、第1の露光マスクをコア材料114の上部で支える支持台144を使う場合について、記載している。図3(a)の第1ステップでは、光素子搭載用基板121を水平に設置する。なお、図3では光素子120の表示を省略している。つぎの第2ステップでは、支持台144を光素子搭載用基板121上の所定の位置に配置する。支持台144は、少なくとも堰止部141aの設置位置よりも広い領域を取り囲むように配置する。
【0045】
図3(c)の第3ステップでは、支持台144で囲まれた領域内にコア材料114を供給する。このとき、コア111aおよび堰止部141aを形成する位置および高さ以上にコア材料114を供給する。第4ステップでは、支持台144の上に第1の露光マスク142を載置する。第1の露光マスク142は、コア111aおよび堰止部141aを形成する位置のみで光を透過するように光透過パターンが形成されている。
【0046】
図3(e)の第5ステップでは、第1の露光マスク142の上部からライトガイド145を用いて光を照射する。照射する光として、たとえばUV光を用いることができる。第1の露光マスク142の光透過パターンに従って透過した光がコア材料114に達し、光に照射された部分のコア材料114が硬化する。このように硬化されたコア材料114がコア111aおよび堰止部141aとなる。
【0047】
図3(f)の第6ステップで第1の露光マスク142と支持台144を取り除き、未硬化のコア材料114を除去する。除去方法としては、たとえばエタノールで洗浄することで未硬化のコア材料114を除去することができる。図3(g)は、光素子搭載用基板121上にコア111aおよび堰止部141aが完成した状態を示している。
【0048】
つぎに、本実施形態のクラッド製造工程を、図4を用いてさらに詳細に説明する。図4(a)の第1ステップでは、上記のコア製造工程で作製されたコア111aおよび堰止部141aを備えた光素子搭載用基板121を水平に設置する。。
【0049】
図4(b)の第2ステップでは、堰止部141aで囲まれた領域内にクラッド材料115を供給する。このとき、少なくとも堰止部141aの内部にコア111aの高さ以上にクラッド材料115を供給する。第3ステップでは、堰止部141aの上に第2の露光マスク143を載置する。第2の露光マスク143には、所望のクラッド112aの形状が光透過パターンとして形成されている。
【0050】
図4(d)の第4ステップでは、第2の露光マスク143の上部からライトガイド145を用いて光を照射する。ここでも、照射する光としてたとえばUV光を用いることができる。第2の露光マスク143の光透過パターンに従って透過した光がクラッド材料115に達し、光に照射された部分のクラッド材料115が硬化する。このように硬化されたクラッド材料115がクラッド112aとなる。
【0051】
図4(e)の第5ステップで第2の露光マスク143および支持台144を取り除き、未硬化のコア材料114を除去する。除去方法としては、たとえばエタノールで洗浄することで未硬化のクラッド材料115を除去することができる。図4(f)は、光素子搭載用基板121上にコア111aとクラッド112aからなる素子側光導波路110aおよび堰止部141aが完成した状態を示している。
【0052】
上記説明のように、本実施形態によれば、コアの形成と同時に所定の位置に所定の形状の堰止部を形成することで、コアとその周囲に所定の形状のクラッドを形成することが可能な量産性の高い光結合器の製造方法および光結合器を提供することが可能となる。
【0053】
本発明の光結合器の製造方法の別の実施形態として、クラッド材料として熱硬化性樹脂または、熱可塑性樹脂を用い、所定の形状をした型に熱硬化性クラッド材料を入れ、加熱して硬化させたり、加熱した状態の中で、所定の形状をした型に熱可塑性クラッド材料を入れ、冷却することにより、クラッドを形成することができる。
また、加熱方法に熱風を用いることも可能である。所定の形状をした型に熱風を当て、通過した熱によりクラッド材料を硬化させ、クラッドを形成することも可能である。
【0054】
本発明の光結合器の製造方法によれば、好ましい形状の堰止部を適宜形成することが可能である。図2に示した実施例では、堰止部141aがコア111aおよびクラッド112aを取り囲む矩形状に形成されていた。このようなクラッド112aの全周を取り囲む形状だけでなく、たとえば図5に示すような複数の柱状体203をコア201の周りに配列したものを堰止部202とすることもできる。
【0055】
図5に示す堰止部202では、柱状体203の間に複数の隙間が形成されているが、このような形状であってもコア材料114およびクラッド材料の粘性により、それぞれを堰止部202の内部に閉じ込めることが可能である。柱状体203の本数や配置間隔等は、クラッドの径やコア材料114およびクラッド材料の粘性等から適宜決めることができる。また、未硬化のコア材料114およびクラッド材料をたとえばエタノールで除去するには、堰止部202のように隙間が設けられている形状が好ましい。
【0056】
堰止部のさらに別の実施例を図6に示す。本実施例の堰止部302は、図2に示した堰止部141aと同様のコア301を取り囲む矩形形状を有しており、さらに開口部303が設けられている。このような開口部303を適宜設けることにより、未硬化のコア材料114あるいはクラッド材料115を容易に除去することが可能となる。開口部303の大きさ等は、コア材料114およびクラッド材料115の粘性や洗浄の容易さ等から決めることができる。
【0057】
なお、本実施の形態における記述は、本発明に係る光結合器及びその製造方法の一例を示すものであり、これに限定されるものではない。本実施の形態における光結合器及びその製造方法の細部構成及び詳細な動作等に関しては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の実施形態に係る光結合器の製造方法を説明する概略工程図である。
【図2】本発明の実施形態に係る光結合器を用いて光回路基板と光素子とを光結合した実施例を示す平面図および断面図である。
【図3】本実施形態のコア製造工程を説明する詳細工程図である。
【図4】本実施形態のクラッド製造工程を説明する詳細工程図である。
【図5】堰止部の別の実施例を示す斜視図である。
【図6】堰止部のさらに別の実施例を示す斜視図である。
【図7】従来の光結合手段の一例を示す図である。
【図8】従来の光結合用の光導波路を形成する例を示す図である。
【符号の説明】
【0059】
100 光結合器
110a、110b 光導波路
111a、111b、201,301 コア
112a、112b クラッド
114 コア材料
115 クラッド材料
120、901、911 光素子
120a 受発光面
121 光素子搭載用基板
130 光回路基板
131、902 光伝送路
132 電気回路基板
133 開口部
134 反射面
141a、141b 堰止部
142 第1の露光マスク
143 第2の露光マスク
144 支持台
145 ライトガイド
151 はんだ
152 接着剤
202、302 堰止部
203 柱状体
303 開口部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気回路基板と、前記電気回路基板に略平行に設けられた光伝送路とを備えた光回路基板に、光素子を光結合させるための光導波路を備えた光結合器の製造方法であって、
前記光素子の受発光面または前記電気回路基板の開口部に前記光導波路のコアおよび該コアを取り囲む堰止部を同時に作製するコア製造工程と、
前記堰止部のすくなくとも内部にクラッドを形成するクラッド製造工程と、を含む
ことを特徴とする光結合器の製造方法。
【請求項2】
前記コア製造工程は、前記コアと前記堰止部とを同一の材料で形成する
ことを特徴とする請求項1に記載の光結合器の製造方法。
【請求項3】
前記コアのコア材料は、光硬化性樹脂である
ことを特徴とする請求項1または2に記載の光結合器の製造方法。
【請求項4】
前記コア製造工程は、前記コアおよび前記堰止部に対応するパターンを有する第1の露光マスクを通して前記コア材料に光を照射することで、前記コアおよび前記堰止部を前記所定の形状に形成する
ことを特徴とする請求項3に記載の光結合器の製造方法。
【請求項5】
前記コア製造工程は、前記光硬化樹脂が硬化する光を透過する型を用いて前記コア材料に光を照射することで、前記コアおよび前記堰止部を前記所定の形状に形成する
ことを特徴とする請求項3に記載の光結合器の製造方法。
【請求項6】
前記クラッド製造工程は、前記クラッドを光硬化性のクラッド材料で形成する
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の光結合器の製造方法。
【請求項7】
前記クラッド製造工程は、前記堰止部のすくなくとも内部に前記クラッド材料を供給するステップと、前記クラッド材料上部に第2の露光マスクを配置するステップと、前記第2の露光マスクを介して前記クラッド材料に光を照射するステップと、を含む
ことを特徴とする請求項6に記載の光結合器の製造方法。
【請求項8】
前記クラッド製造工程は、前記堰止部のすくなくとも内部に前記クラッド材料を供給するステップと、前記クラッド材料上部に前記クラッドに対応するパターンを有する第2の露光マスクを配置するステップと、前記第2の露光マスクを介して前記クラッド材料に光を照射するステップと、未硬化の前記クラッド材料を除去するステップと、を含む
ことを特徴とする請求項6に記載の光結合器の製造方法。
【請求項9】
前記クラッド製造工程は、前記クラッドを、熱硬化性もしくは熱可塑性のクラッド材料で形成する
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の光結合器の製造方法。
【請求項10】
前記クラッド製造工程は、前記堰止部のすくなくとも内部に前記クラッド材料を供給するステップと、前記クラッド材料上部に前記クラッドに対応する形状を有する型を配置するステップと、型が配置された状態で熱硬化するステップと、型を離型するステップと、を含む
ことを特徴とする請求項9に記載の光結合器の製造方法。
【請求項11】
電気回路基板と、前記電気回路基板に略平行に設けられた光伝送路とを備えた光回路基板に、光素子を光結合させるための光導波路を備えた光結合器であって、
前記光素子の受発光面および前記電気回路基板の開口部の少なくともいずれか一方に形成された所定の形状の前記光導波路のコアと、
前記コアを取り囲むように前記コアと同時に所定の形状に形成された堰止部と、
前記堰止部の内部に形成されたクラッドと、を備える
ことを特徴とする光結合器。
【請求項12】
前記堰止部は、所定の位置に開口部を有する
ことを特徴とする請求項13に記載の光結合器。
【請求項13】
前記堰止部は、複数の柱状体を配列して形成されている
ことを特徴とする請求項13に記載の光結合器。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−175475(P2009−175475A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−14428(P2008−14428)
【出願日】平成20年1月25日(2008.1.25)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【出願人】(000125369)学校法人東海大学 (352)
【Fターム(参考)】