説明

光触媒体担持製品の製造方法

【課題】 高い初期性能を示す光触媒体担持製品を製造しうる方法を提供する。
【解決手段】 本発明の製造方法は、光触媒体をバインダーにより担体に担持させた後、有機溶媒または水と接触させることを特徴とする。例えばバインダーは、アクリルエマルジョン、酢酸ビニルエマルジョン、エチレン−酢酸ビニルエマルジョン、ポリウレタンエマルジョン、ポリエステルエマルジョン、ポリオレフィンエマルジョン、シラン系樹脂エマルジョン、フッ素樹脂エマルジョンなどのエマルジョン型バインダーである。担体は、繊維または紙である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光触媒体担持製品の製造方法に関し、詳しくは、光触媒体をバインダーにより担体に担持させた製品を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光触媒体を繊維、紙などの担体に担持させた光触媒体担持製品は、消臭作用、抗菌作用などを示す物品として知られている。担持にはバインダーが使用できる。
しかし、バインダーにより担持すると、担持された光触媒体の初期活性が低いという問題があった。
【0003】
【特許文献1】WO98/15600号公報
【特許文献2】特開2003−105262号公報
【特許文献3】特開平9−328336号公報
【特許文献4】特開2004−59686号公報
【特許文献5】WO01/023483パンフレット
【特許文献6】特開平11−209691号公報
【特許文献7】特開2001−72419号公報
【特許文献8】特開2001−190953号公報
【特許文献9】特開2001−316116号公報
【特許文献10】特開2001−322816号公報
【特許文献11】特開2001−29749号公報
【特許文献12】特開2002−97019号公報
【特許文献13】WO01/10552パンフレット
【特許文献14】特開2001−212457号公報
【特許文献15】特開2002−239395号公報
【特許文献16】WO03/080244パンフレット
【特許文献17】WO02/053501パンフレット
【特許文献18】特開2001−278625号公報
【特許文献19】特開2001−278626号公報
【特許文献20】特開2001−278627号公報
【特許文献21】特開2001−302241号公報
【特許文献22】特開2001−335321号公報
【特許文献23】特開2001−354422号公報
【特許文献24】特開2002−29750号公報
【特許文献25】特開2002−47012号公報
【特許文献26】特開2002−60221号公報
【特許文献27】特開2002−193618号公報
【特許文献28】特開2002−249319号公報
【非特許文献1】「酸化チタン」清野学著、技報堂出版
【非特許文献2】Chemistry Letters, Vol.32, No.2, P.196−197(2003)
【非特許文献3】Chemistry Letters, Vol.32, No.4, P.364−365(2003)
【非特許文献4】Chemistry Letters, Vol.32, No.8, P.772−773(2003)
【非特許文献5】Angewandte Chemie, Internationaol Edition, 42, P.4908−4911(2003)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで本発明者は、高い初期性能を示す光触媒体担持製品を製造しうる方法を開発するべく鋭意検討した結果、バインダーにより光触媒体を担持させたのち、有機溶剤または水と接触させることにより、初期活性に優れた製品が得られることを見出し、本発明に至った。
【課題を解決するための手段】
【0005】
すなわち本発明は、光触媒体をバインダーにより担体に担持させた後、有機溶媒または水と接触させることを特徴とする光触媒体担持製品の製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明の製造方法によれば、高い初期活性の光触媒体担持製品を容易に製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明のの製造方法に用いる光触媒体とは、例えば紫外線や可視光線の照射により光触媒活性を発現する物質であり、具体的には、X線回折で求められる結晶構造を示し、金属元素と酸素、窒素、イオウ及び弗素との化合物の粉末が挙げられる。例えばTi、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Tc、Re、Fe、Co、Ni、Ru、Rh、Pd、Os、Ir、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Ga、In、Tl、Ge、Sn、Pb、Bi、La、Ceのような金属元素の1種または2種以上の酸化物、窒化物、硫化物、酸窒化物、酸硫化物、窒弗化物、酸弗化物、酸窒弗化物などが挙げられる。中でも、Ti、WまたはNbの酸化物が好ましく、とりわけアナターゼ型酸化チタン、ブルッカイト型酸化チタン、ルチル型酸化チタン〔TiO2〕などが好ましい。
【0008】
光触媒体として使用しうる酸化チタンは、例えば非特許文献1〔「酸化チタン」(清野学著、技報堂出版)に記載されている硫酸法や塩素法により製造することができる。また、チタン化合物と塩基を反応させ、生成物にアンモニアを添加し、熟成した後、固液分離し、ついで固形分を焼成する方法などで製造することができる。この方法では、チタン化合物として、例えば三塩化チタン〔TiCl3〕、四塩化チタン〔TiCl4〕、硫酸チタン〔Ti(SO42・mH2O、0≦m≦20〕、オキシ硫酸チタン〔TiOSO4・nH2O、0≦n≦20〕、オキシ塩化チタン〔TiOCl2〕を用いることができる。チタン化合物と反応させる塩基としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、アンモニア、ヒドラジン、ヒドロキシルアミン、モノエタノールアミン、非環式アミン化合物、環式脂肪族アミン化合物を用いることができる。チタン化合物と塩基の反応は、pH2以上、好ましくは3以上、また7以下、好ましくはpH5以下で行われ、そのときの温度は、通常90℃以下、好ましくは70℃以下、さらに好ましくは55℃以下である。更に製造された酸化チタンの粉砕性を向上させるために、チタン化合物と塩基の反応を過酸化水素存在下で行ってもよい。熟成は、例えばアンモニアが添加された生成物を、攪拌しながら、0℃以上、好ましくは10℃以上、また110℃以下、好ましくは80℃以下、より好ましくは55℃以下の温度範囲に、1分以上、好ましくは10分以上、また10時間以内、好ましくは2時間以内の条件で保持する方法で行うことができる。反応と熟成に用いられるアンモニアの総量は、水の存在下でチタン化合物を水酸化チタンに変えるのに必要な塩基の化学量論量を超える量であることが好ましく、例えば1.1モル倍以上であることが好ましい。塩基の量が多いほど、可視光照射によって高い光触媒活性を示す膜を形成できるコーティング液が得られやすいので好ましく、例えば1.5モル倍以上がさらに好ましい。一方、塩基の量があまり多くなっても、量に見合った効果が得られないので、20モル倍以下、さらには10モル倍以下が適当である。熟成された生成物の固液分離は、加圧濾過、減圧濾過、遠心分離、デカンテーションなどで行うことができる。また固液分離では、得られる固形分を洗浄する操作をあわせて行うことが好ましい。固液分離された固形分または任意の洗浄を行った固形分の焼成は、気流焼成炉、トンネル炉、回転炉などを用いて、通常250℃以上、好ましくは270℃以上、また600℃以下、好ましくは500℃以下、より好ましくは400℃以下の温度条件で行うことができる。このときの時間は、焼成温度や焼成装置の種類により異なり一義的ではないが、通常10分以上、好ましくは30分以上、また30時間以内、好ましくは5時間以内である。焼成して得られる酸化チタンには、必要に応じて、タングステン、ニオブ、鉄、ニッケルの酸化物や水酸化物などのような固体酸性を示す化合物またはランタン、セリウムの酸化物や水酸化物などのような固体塩基性を示す化合物、またインジウム酸化物やビスマス酸化物のような可視光線を吸収する金属化合物を担持してもよい。
【0009】
光触媒体として使用しうる酸化タングステン〔WO3〕は、例えばメタタングステン酸アンモニウムのようなタングステン化合物を焼成する方法で製造することができる。焼成は、タングステン化合物を酸化タングステンにすることができる条件で行えばよく、例えば250℃〜600℃の空気中で行うことができる。
【0010】
光触媒体として用い得る酸化ニオブ〔Nb25〕は、例えばシュウ酸水素ニオブのようなニオブ化合物を焼成する方法で製造することができる。またニオブペンタエトキシド、ニオブペンタイソプロポキシドのようなニオブアルコキシドをアルコールに溶解し、この溶液に無機酸とアルコールとからなる酸性溶液を混合し、濃縮して粘稠溶液を得、これを焼成する方法で得ることもできる。
【0011】
これら酸化チタン、酸化タングステンおよび酸化ニオブ以外の酸化物を光触媒体として用いる場合、この酸化物は、例えばセラミックスを構成する金属の塩化物、硫酸塩、オキシ硫酸塩もしくはオキシ塩化物とアンモニアを反応させ、この生成物を空気中で焼成する方法、または光触媒体を構成する金属のアンモニウム塩を空気中で焼成する方法などで調製することができる。
【0012】
本発明で用いる光触媒体としては、上記の他に、
(a)X線光電子分光法で酸化チタンの結合エネルギー458eV〜460eVの間にあるチタンのピークの半価幅を4回測定した時の1回目と2回目のチタンのピークの半価幅の平均値をAとし、3回目と4回目のチタンのピークの半価幅の平均値をBとし、前記半価幅AおよびBから下式(I)
X=B/A (I)
で示される指数Xが0.97以下であり、かつ紫外可視拡散反射スペクトルを測定したときの、波長220nm〜800nmでのスペクトルの吸光度の積分値をCとし、波長400nm〜800nmでのスペクトルの吸光度の積分値をDとし、前記積分値CおよびDから下式(II)
Y=D/C (II)
で示される指数Yが0.14以上である酸化チタン(特許文献7:特開2001−72419号公報)、
【0013】
(b)電子スピン共鳴スペクトルにおいてg値1.930〜2.030の間に3つ以上のピークを有し、かつそれらピークの内の極大となるピークがg値1.990〜2.020の間に存在する酸化チタン(特許文献8:特開2001−190953号公報)、
【0014】
(c)可視光線照射後に測定した電子スピン共鳴スペクトルから求められるスピン濃度Xが1.50×1016spin/g以上であり、可視光線照射後に測定した電子スピン共鳴スペクトルから求められるスピン濃度Xと、可視光線照射前に測定した電子スピン共鳴スペクトルから求められるスピン濃度Yとの比(X/Y)が1.00を超える酸化チタン(特許文献9:特開2001−316116号公報)、
【0015】
(d)X線光電子分光法により8回分析し、チタンの電子状態について、1回目と2回目の分析の積算スペクトル及び7回目と8回目の分析の積算スペクトルを求め、それぞれの積算スペクトルのうち結合エネルギー458eV〜460eVにあるピークを求め、1回目と2回目の分析の積算スペクトルにあるピークの半価幅をA1とし、7回目と8回目の分析の積算スペクトルにあるピークの半価幅をB1としたとき、下式(III)
X1=B1/A1 (III)
により算出される指数X1が0.9以下であり、かつ、紫外可視拡散反射スペクトルを測定して、波長250nm〜550nmの吸光度の積分値をC1とし、波長400nm〜550nmの吸光度の積分値をD1としたとき、下式(IV)
Y1=D1/C1 (IV)
により算出される指数Y1が0.075以上である酸化チタン(特許文献10:特開2001−322816号公報)、
【0016】
(e)X線光電子分光法により8回分析し、チタンの電子状態について、1回目と2回目の分析の積算スペクトルおよび7回目と8回目の分析の積算スペクトルを求めたときに、1回目と2回目の分析の積算スペクトルにおける少なくとも1つのピークの位置が結合エネルギー459〜460eVにあり、7回目と8回目の分析の積算スペクトルにおける少なくとも1つのピークの位置が結合エネルギー458〜459eVにあり、遷移金属の含有量が元素換算で酸化チタン中のチタンに対し0.005〜3.0mol%である酸化チタン(特許文献11:特開2001−29749号公報)、
【0017】
(f)熱天秤質量分析同時測定法により求められるマスクロマトグラムについて、質量数mとイオンの電荷数eの比m/eが28である成分の脱離ピークが600℃以上にある酸化チタン、もしくは熱天秤質量分析同時測定法により求められるマスクロマトグラムについて、質量数mとイオンの電荷数eの比m/eが28である成分の脱離ピークが600℃以上、950℃以下にあり、m/eが14である成分の脱離ピークが600℃以上、950℃以下にある酸化チタン(特許文献12:特開2002−97019号公報)、
【0018】
(g)酸化チタン結晶の酸素サイトの一部を窒素原子で置換した酸化チタン、酸化チタン結晶の格子間に窒素を原子をドーピングした酸化チタン、酸化チタンの結晶粒界に窒素原子をドーピングしたもの(特許文献13:WO01/10552パンフレット)、
【0019】
(h)安定した酸素欠陥を有する酸化チタンであって、真空中、77K、暗黒下で測定された電子スピン共鳴スペクトルにおいて、g値が2.003〜2.004であるシグナルが観測され、かつこのg値が2.003〜2.004であるシグナルは、真空中、77Kにおいて少なくとも420〜600nmの光を照射下で測定したとき、暗黒下で測定された場合よりシグナル強度が大きい酸化チタン(特許文献14:特開2001−212457公報)、
【0020】
(i)表面にPtCl2、PtCl4、PtCl2・2H2O、H2[Pt(OH)2Cl4]・nH2O、PtBr2、PtBr2、PtI2、PtI4、PtF4、塩化白金酸、塩化白金酸塩、ブロモ白金錯塩、ヨウ化白金酸塩などのハロゲン化白金化合物を有している紡錘形状酸化チタン(特許文献15:特開2002−239395号公報)、
【0021】
(j)表面に金属ハロゲン化物(TiCl4等)、金属錯体(ヘテロポリ酸及びイソポリ酸等)、を含有している酸化チタン(特許文献16:WO03/080244パンフレット)、
【0022】
(k)表面にアルカリ土類金属、遷移金属及びAlを含有している酸化チタン(特許文献17:WO02/053501パンフレット)、
【0023】
(l)窒素とフッ素を酸素の位置に置換した酸化チタン(非特許文献2:Chemistry Letters, Vol.32, No.2, P.196-197(2003))、
【0024】
(m)硫黄をTiの位置に置換した酸化チタン(非特許文献3:Chemistry Letters, Vol.32, No.4, P.364-365(2003))、
【0025】
(n)炭素をドープした酸化チタン(非特許文献4:Chemistry Letters, Vol.32, No.8, P.772-773(2003)、非特許文献5:Angewandte Chemie, Internationaol Edition, 42, P.4908-4911(2003))などが挙げられる。
【0026】
(o)また特許文献18(特開2001−278625号公報)、特許文献19(特開2001−278626号公報)、特許文献20(特開2001−278627号公報)、特許文献21(特開2001−302241号公報)、特許文献22(特開2001−335321号公報)、特許文献23(特開2001−354422号公報)、特許文献4(特開2002−29750号公報)、特許文献25(特開2002−47012号公報)、特許文献26(特開2002−60221号公報)、特許文献27(特開2002−193618号公報)、特許文献28(特開2002−249319号公報)などに記載の方法により得られる酸化チタンなども挙げられる。
これらの光触媒体は、それぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて用いられる。
【0027】
光触媒体として、市販のものを用いることもできる。市販の光触媒体としては、例えば住友化学工業(株)から「TPS−201」、「TPS−4110」、「TSS−4210」として、デグッサ社から「P−25」として、石原産業(株)から「ST−01」、「STー21」、「ST−31」、「ST−41」、「ST−30L」、「STS−01」、「STS−02」、「STS−02」、「STS−21」、「STS−230」、「STS240」としてそれぞれ市販されているものが挙げられる。
【0028】
担体としては、繊維、紙などが挙げられる。繊維として具体的には、例えばカーテン、カーペット、布団カバー、シーツ、衣料、カーシート(自動車用のイス)の表皮材、エアコンや空気清浄機のフィルター、マスクなどが挙げられ、織布であってもよいし、不職布であってもよい。紙としては、壁紙、電気掃除機の集塵袋などが挙げられる。
【0029】
光触媒体を担体に担持させるに用いられるバインダーとしては、例えばエマルジョン型バインダーが用いられ、具体的には、例えばアクリル酸エステル単位を主成分とし、これとメタクリル酸エステル、スチレン、シリコーンなどとの共重合体などのようなアクリルエマルジョン、
酢酸ビニル単位を主成分とする重合体からなる酢酸ビニルエマルジョン、
エチレン単位と酢酸ビニル単位とを主成分とするエチレン−酢酸ビニルエマルジョン、
ポリウレタンを主成分とするポリウレタンエマルジョン、
ポリエステルを主成分とするポリエステルエマルジョン、
ポリエチレン、ポリプロピレンを主成分とするポリオレフィンエマルジョン、
シリコーンや、シラン系樹脂を主成分とするシラン系樹脂エマルジョン、
フッ素樹脂を主成分とするフッ素樹脂エマルジョンなどからなるバインダーが挙げられる。かかるエマルジョン型バインダーの粒子径は通常0.1〜1μm、好ましくは0.2μm以下程度である。
【0030】
バインダーの使用量は、固形分に換算して光触媒体に対して通常0.01質量倍〜1質量倍、好ましくは0.02質量倍〜0.5質量倍程度である。
【0031】
バインダーは通常、水などの溶媒に分散された状態で使用される。水の使用量はバインダーの固形分に対して通常1質量倍〜10質量倍、好ましくは1質量倍〜3質量倍程度である。
【0032】
光触媒体を担体に担持させるには、例えば光触媒体をエマルジョン型バインダーおよび水と混合し、担体に塗布すればよい。エマルジョン型バインダーは通常、水に分散された状態で入手されるので、この水に分散された状態のエマルジョンバインダーを光職媒体と混合すればよい。塗布方法は特に限定されるものではなく、用いる担体の種類、形状などに応じて適宜選択され、例えば刷毛塗り法、ディップコート法、フローコート法、スピンコート法、スプレーコート法、バーコート法などの通常の方法で塗布することができる。
【0033】
塗布後、溶媒を揮発させることで、エマルジョン型バインダーにより光触媒体が担体に担持される。
【0034】
本発明の製造方法では、かくして光触媒体を担持したのち、有機溶媒または水と接触させる。有機溶媒としては、例えばエタノール、イソプロパノールなどのアルコール類、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテルなどのエーテル類、ベンゼン、トルエンなどの芳香族炭化水素類、ヘキサンなどの炭化水素類、アセトニトリルなどのニトリル類、アセトンなどのケトン類などが挙げられ、アクリルバインダーや担体を溶解したり、変質させることがないよう、用いたアクリルバインダーおよび担体に応じて適宜選択して使用される。有機溶媒は、それぞれ単独で用いられてもよいし、2種以上を混合して用いられてもよい。また水に可溶の有機溶媒を用いる場合には、水と混合して用いられてもよい。
【0035】
接触させるには、例えば担持後の担体を有機溶媒または水に浸漬すればよい。接触させる際の接触温度は通常0℃〜100℃程度、好ましくは40℃〜60℃である。接触時間は通常1分〜1時間程度である。
【0036】
接触後、乾燥させることにより、目的の光触媒体担持製品を得ることができる。
【実施例】
【0037】
以下、実施例により本発明を拠り詳細に説明するが、本発明は、かかる実施例によって限定されるものではない。
【0038】
実施例1
〔光触媒体の担持〕
水に分散されたゾルとして市販されている光触媒体〔「TSS−4210」、住友化学工業(株)製、酸化チタン粉末〕およびアクリルエマルジョン〔「ライトエポック AX−45」、共栄社化学(株)製〕を混合し、水で希釈して、酸化チタン粉末濃度1.8重量%、アクリルエマルジョンの固形分濃度0.3質量%の混合液を得た。この混合液に、ポリエステル布(目付け194g/m2)を浸漬し、マングルで絞った後、110℃で5分間乾燥し、さらに180℃で1分間熱処理して、酸化チタン粉末をアクリルエマルジョンで担持させた。酸化チタン粉末の担持量は3.84g/m2、アクリルエマルジョンの担持量は0.64g/m2であった。
【0039】
〔有機溶媒との接触〕
酸化チタン粉末を担持させた後のポリエステル布を10cm×10cmに裁断し、50℃のイソプロパノール(500mL)中に30分間浸漬して接触させた。その後、室温(約25℃)のイソプロパノールで洗浄し、さらに室温の純水で洗浄したのち、110℃で10分間乾燥させて、光触媒体がポリエステル布に担持された製品を得た。
【0040】
〔光触媒体担持製品の評価〕
上記で得た製品をテドラーバック(内容積1L)に入れ、大気圧下に、純窒素ガスおよび純酸素ガスを分圧比8:2で混合し、相対湿度50%に調整した混合ガス600mLと、濃度(分圧比)1%でアセトアルデヒドを含む窒素ガス3mLを封入し、テドラーバックの上部から、18W蛍光灯〔「ライフライン」、直管状、白色(グロースターター形)20形〕2本により照明した。このときの照度は18000Lxであった。テドラーバッグ内のアセトアルデヒド濃度をガスクロマトグラフにて経時的に測定したところ、アセトアルデヒドを濃度0ppmまで分解するのに要した時間は20時間であった。
【0041】
実施例2
実施例1と同様に操作して、アクリルエマルジョンによりポリエステル布に酸化チタン粉末を担持させたのち、50℃の純水(30L)中に30分間浸漬して接触させた。その後、室温(約25℃)の純水で2回洗浄し、110℃で10分間乾燥させて、光触媒体がポリエステル布に担持された製品を得た。
【0042】
上記で得た製品を実施例1と同様にして評価したところ、アセトアルデヒドを濃度0ppmまで分解するのに要した時間は45時間であった。
【0043】
比較例1
実施例1と同様に操作して、アクリルエマルジョンによりポリエステル布に酸化チタン粉末を担持させ、そのまま実施例1と同様にして評価したところ、アセトアルデヒドを濃度0ppmまで分解するのに要した時間は65時間であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光触媒体をバインダーにより担体に担持させた後、有機溶媒または水と接触させることを特徴とする光触媒体担持製品の製造方法。
【請求項2】
バインダーがエマルジョン型バインダーである請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
エマルジョン型バインダーが、アクリルエマルジョン、酢酸ビニルエマルジョン、エチレン−酢酸ビニルエマルジョン、ポリウレタンエマルジョン、ポリエステルエマルジョン、ポリオレフィンエマルジョン、シラン系樹脂エマルジョンまたはフッ素樹脂エマルジョンからなるバインダーである請求項2に記載の製造方法。
【請求項4】
担体が、繊維または紙である請求項1に記載の製造方法。

【公開番号】特開2006−28688(P2006−28688A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−211131(P2004−211131)
【出願日】平成16年7月20日(2004.7.20)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【出願人】(000162076)共栄社化学株式会社 (67)
【Fターム(参考)】