説明

光触媒担持発泡リサイクルガラスおよびそれを用いた水処理方法

【課題】製造コストが低く、水面に浮く担持体により、太陽光の紫外線によりで、水が自然に対流し、エネルギーをあまり必要とせず、有機物や細菌を効率よく分解、殺菌、除去し、水処理費用を低く抑えることが可能な水処理方法提供する。
【解決手段】比重が水より軽い発泡リサイクルガラスに、光触媒を担持させた光触媒担持発泡リサイクルガラスを、被処理水に浮遊させて、太陽光により、前記被処理水中の有機物や細菌を効率よく分解、殺菌、除去することを特徴とする水処理方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光触媒を用いた水処理方法に関し、光触媒を担持した発泡リサイクルガラスを被処理水に浮遊させ、被処理水中の有機物や細菌を効果的に分解、殺菌、除去することが可能な光触媒担持発泡リサイクルガラスおよびそれを用いた水処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光触媒を担持させた固定化光触媒を用いると、繰り返し使用できる利点がある。光触媒フィルタ(例えば、特許文献1、2参照)や光触媒性粒子(特許文献3参照)の固定化光触媒が開発されているが、分解速度を上げるために、大量の水をポンプで移動させる必要があり、コストが高いという問題点があった。
【0003】
この問題点を解決するために、管理費がかからない光触媒を固定化した水処理装置があるが(例えば、特許文献4参照)、紫外線ランプを照射する必要がある。
【0004】
太陽光の紫外線を使用できる平板状光触媒担持多孔質体(例えば、特許文献5参照)が知られているが、シリカガラス不織布は、水より重く、水中で使用すると水に沈むので、光が届く深さが問題になり、水浴の深さに制限がある。
【0005】
太陽光の紫外線を使用でき、また、導電性ダイヤモンド電極を備えたハイブリッド型水浄化装置(特許文献6)が知られているが、コストが高い。
【0006】
太陽光の紫外線を使用でき、水に浮く光触媒を担持させたポリオレフィン繊維からなるプリーツ構造体(特許文献7)が知られているが、コストが高いという問題点があった。
【特許文献1】特開平11−347417号公報
【特許文献2】特開2004−230296号公報
【特許文献3】特開2007−69124号公報
【特許文献4】特開平8−155445号公報
【特許文献5】特開2006−289315号公報
【特許文献6】特開2010−64045号公報
【特許文献7】特開2006−192427号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、かかる現状に鑑み、製造コストが低く、水面に浮く担持体により、太陽光の紫外線によりで、水が自然に対流し、エネルギーをあまり必要とせず、有機物を効率よく分解し、除去し、水処理費用を低く抑えることが可能な水処理方法提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の課題を解決するために、本発明者が鋭意研究した結果、発泡リサイクルガラスに光触媒を担持させることが好ましいことが解明された。
【0009】
発泡リサイクルガラスとは、使用済みガラスを粉砕して粉にし、アルミニウム粉などの発泡剤をまぜて、高温の720〜880℃で焼結することにより、内部に空隙が形成された多孔質の素材である([特許文献8]特開2006−76823号公報 参照)。
【0010】
この解明結果に基づき、上述の課題を解決するための、本発明に係る第1の手段は、発泡リサイクルガラスに、光触媒を担持させ、被処理水に浮遊させて、光を照射することで、前記被処理水中の有機物や細菌を分解、殺菌、除去することを特徴とする光触媒担持発泡リサイクルガラスである。
【0011】
第2の手段は、前記光触媒を担持した発泡リサイクルガラスの密度が0.2〜0.8g/cm3で、粒径5mm〜30mmであることを特徴とする、光触媒担持発泡リサイクルガラスである。
【0012】
第3の手段は、前記光触媒が酸化チタンからなる、第1〜2の手段のいずれかに記載の光触媒担持発泡リサイクルガラスである。
【0013】
第4の手段は、被処理水中に、光触媒を担持した発泡リサイクルガラスを浮遊させ、光を照射することで、前記被処理水中の有機物や細菌を分解、殺菌、除去することを特徴とする光触媒を用いた水処理方法である。
【0014】
第5の手段は、前記光触媒を担持した発泡リサイクルガラスの密度が0.2〜0.8g/cm3で、粒径5mm〜30mmであることを特徴とする、第4の手段の光触媒を用いた水処理方法である。
【0015】
第6の手段は、前記光触媒が酸化チタンからなる、第4〜5の手段のいずれかに記載の光触媒を用いた水処理方法
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
本発明に用いる発泡リサイクルガラスとしては、被処理水に浮遊させるために、密度が0.8g/cm3よりも小さいものを使用する。より好ましくは、密度が0.2g/cm3から0.3g/cm3のものを使用する。
【0017】
発泡リサイクルガラスの粒径は、3mmから50mmのものを使用する。より好ましくは、10mmから20mmのものを使用する。
【0018】
発泡リサイクルガラスは、事前に、水に浮くことを確かめる。当初浮いていても、太陽光に当たる室外で、1週間から2週間経過すると、水中に沈んでしまう物がある。原因は発泡リサイクルガラスの内部に閉じこめられた空孔の部分に、水が浸透するからである。
【0019】
発泡リサイクルガラスの内部の空孔の部分にヒビが入っているために、水が浸透する。発泡リサイクルガラスにヒビが生じる原因は、高温で製造した後、急激に冷却すると、ガラスにヒビが内部まで進行する。冷やす時に、徐々に冷却する。また、10mmから20mmの粒径に篩いを使って型抜きするときに、圧力が内部に伝わって、ヒビが入る。ヒビが入るのを避けるために、篩いを使って型抜きするときに、ゆっくり行って作った発泡リサイクルガラスを使用する。
【0020】
発泡リサイクルガラスに光触媒を担持する方法としては、光触媒ゾル液を用いる。発泡リサイクルガラスを容器に入れ、光触媒ゾル液を注ぐ。液から浮いてくるので、上から押さえて、液につける。容器を傾けて、光触媒ゾル液を取り出す。
【0021】
光触媒ゾル液を付着させた発泡リサイクルガラスを電気炉で焼結することにより、担持させる。焼結温度は200℃から450℃で、焼結は1時間から3時間行う。焼結時に発泡リサイクルガラスにヒビが入らないように、昇温は時間をかけ、好ましくは5時間から10時間行う。降温も時間をかけ、好ましくは5時間から10時間、除々に温度を下げる。
【0022】
内部にヒビのない、光触媒を担持させた発泡リサイクルガラスは、水に入れた場合に、水面に浮くため、効率よく光を照射でき、光触媒作用により、水を浄化できる。
【0023】
また、発泡リサイクルガラスは、肉眼で見て、表面に凸凹が観察できる。水が懸濁している場合に、発泡リサイクルガラスの凹の部分に、懸濁物が付着されやすくい。このことにより、水の透明度を上げ、有機物や細菌を分解、殺菌、除去することができる効果があり、水質が改善される。
【0024】
以下、実施例を参照しながら、本発明を具体的に説明する。
【実施例】
実施例1
株式会社アベックスの比重0.3の発泡リサイクルガラスを使用した。ガラス瓶をパウダー状になるまで粉砕した後、発泡材を配合した混合粉体を約850度で焼成・発泡して生産したものである。
【0025】
(光触媒酸化チタンの発泡リサイクルガラスへの担持)
15mmの篩いの方で砕いたものを、1Lビーカーに入れた。質量は300gであった。光触媒酸化チタンのゾル液(石原産業株式会社 STS−01)を水で2倍に薄めた液を注いで、吸収させた。
【0026】
発泡リサイクルガラスが液から浮いてくるので、上から押さえて、液につけた。1Lビーカーを傾けて、光触媒酸化チタンゾル液を取り出した。
【0027】
光触媒酸化チタンゾル液が付いた発泡リサイクルガラスを、陶器の入れ物に入れて電気炉で焼結した。室温から300℃に昇温に10時間かけ、300℃で4時間維持し、8時間かけて除々に室温に戻した。焼結後の質量増加量は、4.9gであった。
【0028】
(色素溶液の分解実験)
光触媒酸化チタンを付けた発泡リサイクルガラスの光触媒効果をメチレンブルーの色素を使って確認した。
【0029】
3.7Lのパット(320×230×50mm)に600mLの光触媒酸化チタンを付けた発泡リサイクルガラスを入れた。2.0mg/Lのメチレンブルーの水溶液を1.5L入れた。15Wのブラックライト4本を照射し、送液ポンプで400mL/分の速さで水溶液を循環させた。紫外線の照射強度は液面で0.5mW/cm2であった。照射後の水溶液について、664nm吸光度を分光光度計で測定し、吸光度より濃度を求め、メチレンブルーの濃度が減少する様子を測定した。光触媒酸化チタンによる吸着の影響があるので、光触媒作用を確認するため、光照射しない暗状態と光照射した状態を比較した。当該実験結果を表1に示す。
【0030】
【表1】


【0031】
暗状態で、吸着の影響がみられた。光照射により、光触媒作用を確認できた。また、濃度の対数を縦軸に、横軸を照射時間にしたグラフにすると、ほぼ直線関係が得られることから、光触媒による分解反応が一次反応であることがわかった。
【0032】
実施例2
(光触媒酸化チタンの発泡リサイクルガラスへの担持)
株式会社アベックスの比重0.3の発泡リサイクルガラスを使用した。15mmの篩いの方で砕いたものを、1Lビーカーに入れた。質量は300gであった。光触媒酸化チタンのゾル液(石原産業株式会社 STS−01)を水で4倍に薄めた液を注いで、吸収させた。
【0033】
発泡リサイクルガラスが液から浮いてくるので、上から押さえて、液につけた。1Lビーカーを傾けて、光触媒酸化チタンゾル液を取り出した。
【0034】
光触媒酸化チタンゾル液が付いた発泡リサイクルガラスを、陶器の入れ物に入れて電気炉で焼結した。室温から300℃に昇温に10時間かけ、300℃で4時間維持し、8時間かけて除々に室温に戻した。焼結後の質量増加量は、2.5gであった。
【0035】
焼結後、再度、光触媒酸化チタンゾル液を付け、電気炉で焼結した。室温から300℃に昇温に10時間かけ、300℃で4時間維持し、8時間かけて除々に室温に戻した。焼結後の質量増加量は、2.5gであった。2回の質量増加量は、全体で5.0gであった。
【0036】
(懸濁液の浄化実験)
光触媒酸化チタンを付けた発泡リサイクルガラスの水浄化作用を、懸濁液を使って確認した。
【0037】
53Lの大型水槽(W580×D270×H340mm)2個にそれぞれ、手賀沼の水30Lを入れ、水深が20cmになった。片方の水槽(A)に光触媒を付けた発泡リサイクルガラスを1.6L入れた。屋上に設置し、太陽光が当たるようにした。濁りが沈殿しないように、ポンプで空気を入れて自然に対流するようにした。さらにマグネチックスターラーで沈殿しないように攪拌した。光触媒を入れない水槽(B)で対照実験を行った。
実験開始後と6日後と10日後に、それぞれCODを測定した。
【0038】
【表2】

【0039】
対照の水槽のCODは少しずつ減少した。これは、やはり浮遊物が沈殿したためである。光触媒を入れた方の水槽のCODは、対照と比較してさらに減少していた。光触媒の効果が確かめられた。
【0040】
発泡リサイクルガラスをよく観察すると、発泡した凸凹部分に、濁りである浮遊物が付着していた。浮遊物がリサイクルガラスで除去されたため、濁りが減ったことがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明に係る光触媒を担持した発泡リサイクルガラスおよびそれを用いた水処理方法は、生活排水、下水処理場排水、廃棄物処理施設排水、農業排水等の有機物や細菌を分解、殺菌、除去処理に好適であり、汚濁した湖沼の水の処理に好適なものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発泡リサイクルガラスに、光触媒を担持させ、被処理水に浮遊させて、光を照射することで、前記被処理水中の有機物や細菌を分解、殺菌、除去することを特徴とする光触媒担持発泡リサイクルガラス。
【請求項2】
前記光触媒を担持した発泡リサイクルガラスの密度が0.2〜0.8g/cm3で、粒径5mm〜30mmであることを特徴とする、光触媒担持発泡リサイクルガラス。
【請求項3】
前記光触媒が酸化チタンからなる、請求項1〜2のいずれかに記載の光触媒担持発泡リサイクルガラス。
【請求項4】
被処理水中に、光触媒を担持した発泡リサイクルガラスを浮遊させ、光を照射することで、前記被処理水中の有機物や細菌を分解、殺菌、除去することを特徴とする光触媒を用いた水処理方法。
【請求項5】
前記光触媒を担持した発泡リサイクルガラスの密度が0.2〜0.8g/cm3で、粒径5mm〜30mmであることを特徴とする、請求項4に記載の光触媒を用いた水処理方法。
【請求項6】
前記光触媒が酸化チタンからなる、請求項4〜5のいずれかに記載の光触媒を用いた水処理方法。

【公開番号】特開2012−6003(P2012−6003A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−159112(P2010−159112)
【出願日】平成22年6月28日(2010.6.28)
【出願人】(591270682)
【Fターム(参考)】