説明

光触媒機能を有する紙

【課題】充分な強度を保持し、均質且つ速乾性の塗膜を安全且つ安価に形成できる紙用塗料、及び紙用塗料の製造方法等を提供すること。
【解決手段】紙の表面に塗布される紙用塗料は、粒子状の酸化チタンと、コロイド状の酸化ケイ素と、以下の一般式(1)で示される有機シラン化合物の加水分解物と、アルミニウム系キレート剤とを含有する水系塗料である。
Si(OR・・・・(1)
(式中、Rは炭素数2〜8のアルケニル基、炭素数6〜8のアリール基、メトキシ基、エトキシ基、ハロゲン基、グリシドキシ基、エポキシ基、アミノ基、フェニル基、メルカプト基、メタクリロキシ基及びシアノ基からなる群より選ばれる少なくとも1種の有機基であり、Rは炭素数2〜4の炭化水素基である。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙用塗料、紙製品、及び紙用塗料の製造方法に関し、特に、紙表面に光触媒機能を付与する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、酸化チタンは、光の照射により物質を分解又は酸化する光触媒として機能することが知られている。この機能を活用して、室内や屋外の空間に存在する微量有害成分、とりわけ微生物を含む有機系有害成分を除去し、生活環境の浄化を行う試みがなされている。また、酸化チタンは、無毒且つ抗菌性である(特許文献1参照)ことから、衛生製品にも使用されている。
【0003】
即ち、酸化チタンを含有する塗料を衛生用品に塗布し、高温下で乾燥することにより、光触媒作用を有する塗膜が形成される。ここで、充分な塗膜の強度を得るためには、塗膜の厚みを増やす必要があるが、これに伴って酸化チタンの使用量が必然的に増加する。
【0004】
しかし、酸化チタンは高価であることから、衣類収納や食品包装用の紙製品といった低価格が要求される商品に使用することは困難である。このため、酸化チタンの使用量を低減しつつ充分な厚みの塗膜を形成する技術が要求される。
【0005】
そこで、固形成分として、粒子状の酸化チタンとともに、コロイド状の酸化ケイ素を含有し、これら固形成分が有機溶媒(イソプロピルアルコール)に溶解された塗料が開発されている(特許文献2参照)。この塗料によれば、酸化チタンの粒子よりも粒子径の大きい酸化ケイ素のコロイドを使用したので、酸化チタンの使用量を低減しても、塗料が嵩張る。よって、強度を維持するのに充分な厚みの塗膜を安価に形成できる。
【0006】
また、特許文献2に示される塗料は、酸化チタンの結合を促進する結合剤として、テトラエトキシシラン等の有機シラン化合物も開示されている。この塗料によれば、結合剤を含有するので、酸化チタンの結合が促進され、塗膜の強度が向上する。このため、酸化チタンの使用量を減らしつつ、充分な強度の塗膜を備える紙製品を製造できる。
【0007】
しかし、結合剤として有機物を使用すると、酸化チタンの光触媒作用によって有機物が自己分解するため、塗膜の強度が損なわれるという問題があった。そこで、ケイ素化合物の加水分解物からなる結合剤を、溶媒中で酸化チタンに混合して得られる塗料が開示されている(特許文献3参照)。この塗料を紙等の基材上に塗布し、100℃以上の温度で乾燥することにより、酸化チタンを含有する塗膜が基材上に形成される。
この技術によれば、結合剤をケイ素化合物の加水分解物で構成したので、酸化チタンの光触媒作用に対する耐久性が大幅に向上する。よって、塗膜の強度の低下を抑制できる。
【特許文献1】特開平6−256540号公報
【特許文献2】特開平8−259891号公報
【特許文献3】特開平8−164334号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献2に示される塗料では、結合剤として使用される有機シラン化合物が、互いの反応性に乏しい。このため、紙に塗布された後の硬化に高温下で多大な時間(例えば、100℃にて1時間以上)を要し、紙の変形等を誘発する。そこで、硬化時間を短縮化するためには、溶媒として有機溶媒を使用せざるを得ず、製造現場における安全性の向上が要請される。
【0009】
そこで、溶媒として水を採用するべく、水溶性の高い特許文献3に示されるケイ素化合物の加水分解物を、結合剤として使用することも考えられる。しかし、水中では、ケイ素化合物の加水分解物が分子内に有するシラノール基が、酸化ケイ素のコロイドの粒子表面に存在する水酸基と反応する。これにより、酸化ケイ素のコロイドがゲル化して沈殿するため、均質な塗膜を形成することができない。
【0010】
本発明は、以上の実情に鑑みてなされたものであり、充分な強度を保持し、均質且つ速乾性の塗膜を安全且つ安価に形成できる紙用塗料、及び紙用塗料の製造方法を提供することを第1の目的とする。
【0011】
また、本発明は、充分な強度を保持し、均質且つ速乾性の塗膜が安全に形成された安価な紙製品を提供することを第2の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、アルミニウム系キレート剤を使用することで、ケイ素化合物の加水分解物が分子内に有するシラノール基と、酸化ケイ素のコロイドの粒子表面に存在する水酸基との反応が抑制されることを見出し、本発明を完成するに至った。具体的には、本発明は以下のようなものを提供する。
【0013】
(1) 粒子状の酸化チタンと、コロイド状の酸化ケイ素と、以下の一般式(1)で示される有機シラン化合物の加水分解物と、アルミニウム系キレート剤とを含有し、紙の表面に塗布される紙用水系塗料。
Si(OR・・・・(1)
(式中、Rは炭素数2〜8のアルケニル基、炭素数6〜8のアリール基、メトキシ基、エトキシ基、ハロゲン基、グリシドキシ基、エポキシ基、アミノ基、フェニル基、メルカプト基、メタクリロキシ基及びシアノ基からなる群より選ばれる少なくとも1種の有機基であり、Rは炭素数2〜4の炭化水素基である。)
【0014】
(1)の発明によれば、酸化チタンの粒子よりも粒子径の大きい酸化ケイ素のコロイドを使用したので、酸化チタンの使用量を低減しても、塗料が嵩張る。よって、充分な厚みの塗膜が形成されるので、塗膜の強度を安価に向上できる。
【0015】
また、結合剤として機能する有機シラン化合物の誘導体を添加したので、酸化チタンが結合される。しかも、誘導体として加水分解物を採用したので、酸化チタンの光触媒作用に対する耐久性が向上し、塗膜の強度の低下を抑制できる。また、加水分解物は、分子内にシラノール基を有するため、互いの反応性に優れ、紙への塗布後の硬化時間を短縮化できる。
【0016】
更に、アルミニウム系キレート剤を添加したので、ケイ素化合物の加水分解物が分子内に有するシラノール基と、酸化ケイ素のコロイドの粒子表面に存在する水酸基との反応が抑制される。これにより、酸化ケイ素のゲル化及び沈殿が抑制されるので、塗膜を均質化できる。
【0017】
従って、(1)記載の塗料は水系を採用できるため、塗膜を安全に形成できる。
【0018】
本発明における「アルミニウム系キレート剤」とは、アルミニウム原子に電子吸引基が配位したアルミニウム系キレート試薬である限りにおいて特に限定されない。具体的には、アルミニウムアセチルアセトネート、アルミニウム(s−ブトキシド)アセト酢酸エステル、酢酸アルミニウム、乳酸アルミニウムが挙げられ、アルミニウムアセチルアセトネートが好ましい。
【0019】
(2) 以下の一般式(2)で示される化合物を含む界面活性剤を更に含有する(1)記載の紙用水系塗料。
【化1】

・・・・(2)
(式中、R及びRは、同一又は異なってよいメチル基又はエチル基であり、R及びRは、同一又は異なってよい直鎖又は分岐のアルキル基であり、m及びnは、同一又は異なってよい100以下の自然数である。)
【0020】
インク等で印刷処理されていると、紙表面が疎水性になるため、水系塗料の紙表面への濡れ性が低下する。これにより、水系塗料が紙表面に均一に塗布されず、均一な塗膜を形成するのが困難になることが懸念される。
しかし、疎水性表面への濡れ性のみを追求すると、酸化チタン及び酸化ケイ素という固形成分の水系中での分散性が低下する。これにより、均質な塗膜を形成するのが困難になることが懸念される。
【0021】
そこで、(2)の発明によれば、分子内に、ポリエチレングリコール構造及びアセチレングリコール構造を兼ね備える界面活性剤を添加した。ポリエチレングリコール構造によって、水と疎水性の紙表面との相溶性が向上するため、疎水性の紙表面への水系塗料の濡れ性を向上できる。同時に、アセチレングリコール構造によって、酸化チタン及び酸化ケイ素の水への分散性が向上する。
従って、紙表面が疎水性であっても、均一且つ均質な塗膜を形成できる。
【0022】
(3) 一般式(2)におけるm又はnは、4以上である(2)記載の紙用水系塗料。
【0023】
一般式(2)におけるm又はnが小さすぎると、水と疎水性の紙表面との相溶性が充分に向上しないために、疎水性の紙表面への水系塗料の濡れ性を充分に向上できないことが懸念される。
【0024】
そこで、(3)の発明によれば、m又はnを4以上としたので、疎水性の紙表面への水系塗料の濡れ性を充分に向上でき、より均一な塗膜を形成できる。
【0025】
(4) (1)から(3)いずれか記載の紙用水系塗料が紙の表面に塗布された紙製品。
【0026】
(5) 紙の表面に塗布される紙用水系塗料の製造方法であって、
以下の一般式(1)で示される有機シラン化合物の加水分解物の水分散液に、アルミニウム系キレート剤を添加して加水分解物水溶液を調製する調製手順と、
前記加水分解物水溶液に酸化ケイ素及び酸化チタンを分散させる分散手順と、を含む製造方法。
Si(OR・・・・(1)
(式中、Rは炭素数2〜8のアルケニル基、炭素数6〜8のアリール基、メトキシ基、エトキシ基、ハロゲン基、グリシドキシ基、エポキシ基、アミノ基、フェニル基、メルカプト基、メタクリロキシ基及びシアノ基からなる群より選ばれる少なくとも1種の有機基であり、Rは炭素数2〜4の炭化水素基である。)
【0027】
(6) 以下の一般式(2)で示される化合物を含む界面活性剤を添加する添加手順を更に含む(5)記載の製造方法。
【化2】

・・・・(2)
(式中、R及びRは、同一又は異なってよいメチル基又はエチル基であり、R及びRは、同一又は異なってよい直鎖又は分岐のアルキル基であり、m及びnは、同一又は異なってよい100以下の自然数である。)
【0028】
(7) 一般式(2)におけるm又はnは、4以上である(6)記載の製造方法。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、充分な強度及び均質性を有し且つ強度の経時的低下が抑制された塗膜を安全且つ安価に形成できる。
【実施例】
【0030】
<実施例1>
有機シラン化合物としてのテトラエトキシシラン9.1質量部を、蒸留水3質量部及び0.5N塩酸0.3質量部からなる液に分散し、ガラス容器内で室温にて撹拌することで、テトラエトキシシランの加水分解反応を行った。加水分解反応の完了を確認した後、水分散液に、メタノール7.5質量部、アルミニウム系キレート剤としてのアルミニウムアセチルアセトネート0.2質量部、及び蒸留水45質量部を加えることで、加水分解物水溶液を調製した(調整手順)。
【0031】
この加水分解物水溶液に、コロイド状の酸化ケイ素「スノーテックスZL」(日産化学社製)4質量部、粒子状(ゾル状)の酸化チタン「TKS−203」(テイカ社製)50質量部を順次加え、室温にて3時間撹拌して分散させた(分散手順)。
【0032】
続いて、分散後の液に、一般式(2)に示される界面活性剤としての「サーフィノール485」(日信化学工業社製)0.3質量部を加え(添加手順)、室温にて3時間撹拌することで、紙用水系塗料を製造した。
【0033】
この紙用水系塗料を、紙「コートボール紙(商品名)」(丸善社製)の表面に12g/mの塗布量で、塗装用エアーガンを用いて塗布した(塗布手順)。塗布後の紙を、120℃にて10秒間に亘って熱風乾燥し、続いて室温にて12時間乾燥させる(硬化手順)ことで、紙製品を得た。
【0034】
<実施例2>
120℃での10秒間の乾燥を行わなかった点を除き、実施例1と同様の手順で、紙製品を得た。
【0035】
<実施例3>
コロイド状の酸化ケイ素「スノーテックスZL」(日産化学社製)の添加量を10質量部とし、粒子状(ゾル状)の酸化チタン「TKS−203」(テイカ社製)の添加量を20質量部とした点を除き、実施例1と同様の手順で、紙製品を得た。
【0036】
(比較例1)
コロイド状の酸化ケイ素「スノーテックスZL」(日産化学社製)を添加せず、粒子状(ゾル状)の酸化チタン「TKS−203」(テイカ社製)の添加量を30質量部とした点を除き、実施例1と同様の手順で、紙製品を得た。
【0037】
(参考例1)
「サーフィノール485」(日信化学工業社製)を添加しない点を除き、実施例1と同様の手順で、紙製品を得た。
【0038】
(参考例2)
「サーフィノール485」(日信化学工業社製)を添加しない点を除き、実施例1と同様の手順で、紙用水系塗料を製造した。この紙用水系塗料に、一般式(2)に該当しないシリコン系界面活性剤「Y−7006」(日本ユニカー社製)を添加したところ、塗料中で酸化ケイ素のゲル化が生じる好ましくない結果が得られた。この結果は、シリコン系界面活性剤がアルミニウム系キレート剤の作用を阻害したことによるものと推測される。
【0039】
[評価]
(塗膜の均一性:濡れ性)
実施例1〜3、比較例1、及び参考例1における硬化手順の前に、紙表面への各塗料の塗れ具合を観察し、以下の基準で評価した。この結果を表1に示す。
評価基準
△:塗料がやや弾かれ、紙表面には被覆されない部分も散在する
○:塗料がなじみ、紙表面の大部分が被覆される
◎:塗料が完全になじみ、紙表面の全体が被覆される
【0040】
【表1】

【0041】
表1に示されるように、実施例1〜3で製造した紙用水系塗料は、参考例1で製造した紙用水系塗料に比べ、優れた濡れ性を示し、より均一な塗膜を形成できることが期待された。この結果及び参考例2の結果から、一般式(2)に示される界面活性剤を添加することで、塗膜の均一性及び均質性を向上できることが確認された。
【0042】
(光触媒機能)
試験ガス調整用テドラーパック内で、アセトアルデヒド標準ガス(ガス濃度約6000ppm)を普通空気で希釈して体積3Lとした。次に、ミニコックを閉じ、パックの両端を交互に押してパック内のガスを混合することで、パック内のアセトアルデヒド濃度を均一化させた後、速やかに遮光箱でパックを覆い、30分間放置した。同様の手順で、合計4個のガス入りパックを作製した。
【0043】
実施例1〜3及び比較例1で得た紙製品を50mm±1mm角の正方形状に切断したものを、4個ずつ用意した。各切断物に対し、前処理として、紫外線照射装置を用いて3時間以上に亘り紫外線照射(1.0mw/cm)を行うことで、試料を作製した。この試料を、前述したものとは別の4個のテドラーパックの各々の中に載置し、パック内の空気をできる限り排出した。これらパックに、前述したガス入りパック内のアセトアルデヒドガスを移送した。
【0044】
2個の試料については、パックを密閉し、室温にて30分間以上放置した後、紫外線照射(1.0mw/cm)を2時間行った。その後、検知管を用いて、パック内のアセトアルデヒドガス濃度を2回測定し、測定値の平均値(明条件試験値)を算出した。
【0045】
残る2個の試料については、ガスの移送後、速やかに遮光板で覆い、室温で2時間静置した。その後、検知管を用いて、パック内のアセトアルデヒドガス濃度を2回測定し、測定値の平均値(暗条件試験値)を算出した。
【0046】
このようにして算出した平均値を用い、以下の数式に基づいて、各試料のアセトアルデヒドガス除去率を求めた。この結果を表2に示す。
アセトアルデヒドガス除去率(%)
=(暗条件試験値−明条件試験値)/(暗条件試験値)×100
【0047】
【表2】

【0048】
表2に示されるように、実施例1〜3及び比較例1で得た紙製品は、いずれも、高いアセトアルデヒド除去率を示し、優れた光触媒機能を有していた。この結果から、実施例1〜3及び比較例1で調整した紙用水系塗料には、塗膜に光触媒機能を付与するために充分な量の酸化チタンが含有されていることが確認された。
【0049】
(塗膜強度)
実施例1〜3及び比較例1で得た紙製品について、塗膜強度を以下の基準で評価した。この結果を表3に示す。
評価基準
×:塗膜を爪で擦ると、大きく傷が付く
○:塗膜を爪で擦っても、一部分を除き傷は付かない
◎:塗膜を爪で擦っても、全く傷が付かない
【0050】
【表3】

【0051】
表3に示されるように、比較例1で得た紙製品は、塗膜の強度が低い一方、実施例1〜3で得た紙製品は、優れた塗膜強度を示した。この結果から、コロイド状の酸化ケイ素を添加することにより、粒子状の酸化チタンの添加量にかかわらず、塗膜強度を飛躍的に向上できることが確認された。
【0052】
特に、酸化チタンの添加量が最も少ない実施例3の紙製品が最も優れた塗膜強度を示していることから、コロイド状の酸化ケイ素の添加量を適切に増やすことで、塗膜強度を安価に向上できることが確認された。
【0053】
また、実施例1、3では120℃での乾燥時間が10秒間と短く、特に実施例2では120℃での乾燥を行わずに、充分な強度の塗膜が形成された。この結果から、実施例1〜3の紙用水系塗料は、優れた速乾性を有することが確認された。
【0054】
<変形例>
本発明は前記実施例に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
【0055】
例えば、紙表面への塗料の塗布は、前記実施例では塗装用エアーガンを用いて行ったが、これに限られず、グラビア印刷機の印刷面が平らな印刷用ロールを用いてもよい。この場合、印刷面に紙用塗料を塗布したロール間に紙表面を通すことにより、塗料が紙表面に転写されて塗布される。
【0056】
また、紙表面に塗布された塗料の乾燥時間は、前記実施例では120℃にて10分間としたが、これに限られず、通常、70〜120℃にて5〜60秒間であってよい。この範囲内とすることで、紙に与える損傷を抑制でき且つ充分に硬化できる。
【0057】
なお、紙表面に塗布された塗料の乾燥は、前記実施例では熱風乾燥により行ったが、これに限られず、活性エネルギー線(例えば、遠赤外線)照射により行ってもよい。活性エネルギー線照射は、熱による紙製品の損傷を抑制できる点で好ましい。なお、熱風乾燥は、硬化方式として最も広く使用されているため、製造ラインの新設や変更の必要がなく、経済的である点で好ましい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒子状の酸化チタンと、コロイド状の酸化ケイ素と、以下の一般式(1)で示される有機シラン化合物の加水分解物と、アルミニウム系キレート剤とを含有し、紙の表面に塗布される紙用水系塗料。
Si(OR・・・・(1)
(式中、Rは炭素数2〜8のアルケニル基、炭素数6〜8のアリール基、メトキシ基、エトキシ基、ハロゲン基、グリシドキシ基、エポキシ基、アミノ基、フェニル基、メルカプト基、メタクリロキシ基及びシアノ基からなる群より選ばれる少なくとも1種の有機基であり、Rは炭素数2〜4の炭化水素基である。)
【請求項2】
以下の一般式(2)で示される化合物を含む界面活性剤を更に含有する請求項1記載の紙用水系塗料。
【化1】

・・・・(2)
(式中、R及びRは、同一又は異なってよいメチル基又はエチル基であり、R及びRは、同一又は異なってよい直鎖又は分岐のアルキル基であり、m及びnは、同一又は異なってよい100以下の自然数である。)
【請求項3】
一般式(2)におけるm又はnは、4以上である請求項2記載の紙用水系塗料。
【請求項4】
請求項1から3いずれか記載の紙用水系塗料が紙の表面に塗布された紙製品。
【請求項5】
紙の表面に塗布される紙用水系塗料の製造方法であって、
以下の一般式(1)で示される有機シラン化合物の加水分解物の水分散液に、アルミニウム系キレート剤を添加して加水分解物水溶液を調製する調製手順と、
前記加水分解物水溶液に酸化ケイ素及び酸化チタンを分散させる分散手順と、を含む製造方法。
Si(OR・・・・(1)
(式中、Rは炭素数2〜8のアルケニル基、炭素数6〜8のアリール基、メトキシ基、エトキシ基、ハロゲン基、グリシドキシ基、エポキシ基、アミノ基、フェニル基、メルカプト基、メタクリロキシ基及びシアノ基からなる群より選ばれる少なくとも1種の有機基であり、Rは炭素数2〜4の炭化水素基である。)
【請求項6】
以下の一般式(2)で示される化合物を含む界面活性剤を添加する添加手順を更に含む請求項5記載の製造方法。
【化2】

・・・・(2)
(式中、R及びRは、同一又は異なってよいメチル基又はエチル基であり、R及びRは、同一又は異なってよい直鎖又は分岐のアルキル基であり、m及びnは、同一又は異なってよい100以下の自然数である。)
【請求項7】
一般式(2)におけるm又はnは、4以上である請求項6記載の製造方法。

【公開番号】特開2008−174852(P2008−174852A)
【公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−7290(P2007−7290)
【出願日】平成19年1月16日(2007.1.16)
【出願人】(592167411)香川県 (40)
【出願人】(397034316)株式会社丸善 (6)
【Fターム(参考)】