説明

光触媒活性を有する顆粒体およびその製造方法

本発明は、光触媒活性を有する顆粒体であって、建材中または建材上に光触媒活性を導入するための、光触媒活性化合物で被覆された無機粒子材料の粒子を含む顆粒体を対象とする。本発明はさらに、このような顆粒体の製造に関し、また、セメント、コンクリート、石膏および/または石灰石などの建材中もしくは建材上における、また水性塗料またはペイントにおけるその使用であって、このような材料上の微生物および環境汚染物質の蓄積および生長を低減し、したがって汚れの傾向を小さくする一方、色の鮮やかさを保持し、また空気の質を向上させるための使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光触媒活性を有する顆粒体であって、少なくとも1種の無機粒子材料を含み、その無機粒子材料の粒子が、光触媒活性化合物で少なくとも一部被覆されている顆粒体に関する。本発明はさらに、このような顆粒体の製造方法、ならびに、セメント、コンクリート、モルタル、石灰石および石膏に基づく建材または水性塗料およびペイント中に光触媒活性を導入するためのそれらの顆粒体の使用に関する。
【0002】
今日、例えばコンクリートなどのセメント系建材中にまたは建材上に光触媒活性および/または着色を導入するために、主としてペーストまたは粉末が使用されている。この点に関して、顆粒体、ペレット、タブレットなどの成形した形態の材料は、例えば、それらの材料の取扱いおよび使用量の点、粉じんの防止などだけでなく、それらの材料の分散性状に関しても、粉末およびペーストと比較して、実質的な利点を示す。さらに、光触媒活性は、建材上の微生物および環境汚染物質の蓄積および生長を軽減させることを示しており、したがってこの材料の汚れの傾向を小さくする一方、色の鮮やかさを保持する。光触媒活性は、環境における環境汚染物質の濃度を低下させることをさらに示しており、したがって空気および水の質を向上させる。すなわち、光触媒活性は、スモッグ防止効果をもたらす。
【0003】
日本特許出願、特開2001−179109は、二酸化チタンおよびシリカ粒子などの光触媒粒子の混合物を含み、さらに炭酸カルシウム、石灰または無機繊維などの充填材をさらに含むことができる光触媒顆粒に関する。米国特許出願公開第2007/0181167号は、TiO、ZnO、Fe、FeまたはNiFeなどの、ドーパントおよび顔料と組み合わせた光触媒組成物を含むペレットまたは固体棒について記述している。米国特許出願公開第2003/0066458号は、酸化鉄および二酸化チタンからなる群から選択される少なくとも1種の顔料の混合物を含む顔料顆粒に関する。
【0004】
WO2006/000565は、基層と、樹脂および補強材料を含む中間層と、光触媒性セメント組成物を含む表層とを備える複合舗装について記述している。特開2004−130156は、セラミック製担体と無機中空体とで作った粒状担体を含み、その粒状担体上に光触媒を堆積させた光触媒担持顆粒に関する。特開2004−161978は、シリカおよび光触媒で被覆した顔料粒子のコロイド状粒子について記述している。WO 01/053228は、着色性を高め、エフロレセンス性状を低減し、膨れ傾向を小さくした成形顔料粒子を得るための、噴霧乾燥、押出し、圧密などによる、結合剤、分散剤、湿潤剤、シリカ成分および脂肪族塩を含有する顔料顆粒体の製造について記述している。顆粒体の製造方法は、例えば、DE−A1 2940156、EP−A2 0191278、DE−A1 3619363、DE−A1 3918694、EP−A1 0567882、EP−A1 0657511、米国特許第6,562,120号、米国特許出願公開第2004/0040469号およびEP−A1 1620512から、さらに知られる。
【0005】
したがって、建材中にまたは建材上に光触媒活性を導入する適切な材料への必要性が依然として存在する。
【0006】
本発明の1つの目標は、セメント、コンクリート、モルタル、石灰石および石膏などの建材中に組み込むことができる顆粒体、ならびに、水性塗料およびペイントの形態における、建材上に塗布することができる顆粒体を提供することである。本発明の他の目標は、建材上での微生物および環境汚染物質の蓄積および生長、したがってこれらの材料の汚れの傾向を軽減する一方、色の鮮やかさを保持するための顆粒体を提供することである。さらなる目標は、環境における環境汚染物質の濃度を低下させ、こうしてスモッグ防止効果の形で空気および水の質を向上させるための顆粒体を提供することである。本発明の他の目標は、優れた着色性状を光触媒活性と結び付けている、建材を着色するための顆粒体を提供することである。他の目標は、高度に濃縮された、省コストの、かつ取扱いが容易な顆粒体を提供することである。
【0007】
これらおよび他の本発明の目標は、本発明において記述される顆粒体であって、少なくとも1種の無機粒子材料を含み、その無機粒子材料の粒子が、光触媒活性化合物で少なくとも一部被覆されている顆粒体によって解決することができる。
【0008】
本発明の一実施形態において、顆粒体の無機粒子材料の粒子は、光触媒活性化合物で一部被覆されている。他の実施形態において、顆粒体の無機粒子材料の粒子は、光触媒活性化合物で完全に被覆されている。本顆粒体は、添加剤および/または、充填材例えば石膏、セメント、モルタル、石灰石またはコンクリートなどの形態における他の無機粒子材料をさらに含むことができる。本顆粒体を、任意の所望の比率で建材と混合して配合し、所望の光触媒活性を達成することが好ましい。さらに、本顆粒体を、任意の所望の比率で着色するため建材と混合して配合し、所望の光触媒活性および色を達成することが好ましい。その上、本顆粒体を、水性塗料またはペイントの形態で建材上に塗布して配合し、所望の光触媒活性を達成することが好ましい。
【0009】
本発明の例示的実施形態の顆粒体は、建材中にまたは建材上に光触媒活性を導入するため、光触媒活性化合物、好ましくは二酸化チタンで被覆された無機粒子材料の粒子例えば無機顔料、石灰石、石膏、コンクリート、モルタルおよび/またはセメントなどを含む。
【0010】
光触媒活性を有する顆粒体の使用は、いくつかの改良された性状をもたらす。まず第一に、本発明の顆粒体は、セメント、コンクリート、モルタル、石灰石および石膏などの建材中に組み込まれた場合に、優れた光触媒活性をもたらすことに注目されたい。さらに、本顆粒体は、水性塗料またはペイントの形態で建材上に塗布された場合に、優れた光触媒活性をもたらす。驚くべきことに、光触媒活性化合物で被覆された無機粒子材料を含む本顆粒体は、相乗効果を有し得ること、すなわち、水性塗料またはペイントの形態で建材上に塗布され、あるいは石灰石、石膏、コンクリート、モルタルまたはセメントなどの建材中に組み込まれた場合に、混合物が、強化された光触媒活性、または延長された期間の間少なくとも一定の活性を示すことが判明した。さらに、本発明の顆粒体は、無機顔料が無機粒子材料として使用されて、これらの建材または水性塗料およびペイント中に組み込まれた場合に、優れた着色性状をもたらす。これにより、これらの建材の微生物および環境汚染物質の蓄積および生長の軽減がもたらされ、またこれらの建材の汚れの傾向が小さくなる一方、色の鮮やかさがより長期間保持される。その上、環境における環境汚染物質の濃度低下は、空気および水の質の向上をもたらし、スモッグ防止効果を提供する。
【0011】
本顆粒体中の顔料は高度に濃縮され、したがって大量の材料を貯蔵する必要がない。さらに、種々の型のセメントすなわち光触媒活性化合物を含むセメントおよび含まないセメントを貯蔵する追加のサイロを必要としないので、本顆粒体は省コスト的である。その上、本顆粒体は、粉じんの生成を防止し、かつ取扱いが容易である利点を有し、セメント、コンクリート、モルタル、石灰石および/または石膏などの建材ならびに水性塗料またはペイントに所望の比率で添加することができ、本顆粒体は、所望の光触媒活性を達成するのに十分な量で存在する。さらに、本顆粒体は、水性塗料またはペイントの形態で建材中に組込み、または建材上に塗布することができる利点を有する。
【0012】
本発明によれば、無機粒子材料は、無機顔料、セメント、コンクリート、モルタル、石灰石および石膏またはこれらの混合物からなる群から選択される無機粒子を指す。好ましい実施形態において、無機粒子材料は無機顔料であるが、一方他の実施形態においてセメント、コンクリート、モルタル、石灰石および石膏またはこれらの混合物が、無機粒子材料として好ましい。他の実施形態において、無機粒子材料は、無機顔料と、セメント、コンクリート、モルタル、石灰石および石膏またはこれらの混合物などの他の無機粒子材料との混合物を含む。
【0013】
無機顔料の形態における無機粒子材料の粒子は、顔料粉末および/または顔料フィルターケーキ(pigment filter cake)であることが好ましい。無機顔料は、酸化鉄、酸化コバルト、(二)酸化チタン、酸化クロム、酸化亜鉛、混合金属酸化物および/もしくはカーボンブラックまたはこれらの混合物からなる群から、特に選択することができる。好ましくは鉄黄(yellow iron oxide)、べんがら(red iron oxide)、鉄黒(black iron oxide)などの酸化鉄、例えば針鉄鉱(goethite)、赤鉄鉱(hematite)、磁鉄鉱(magnetite)など、ならびにこれらの任意の混合物が、無機顔料として好ましい。一実施形態において、光触媒活性化合物で少なくとも一部被覆された無機顔料が好ましい。他の実施形態において、光触媒活性化合物で完全に被覆された無機顔料が好ましい。
【0014】
酸化鉄顔料は、0.01〜100ミクロンの範囲にある粒径を有することができ、約5〜200m/gの範囲にある表面積を有することができる。本発明の顆粒体に適する酸化鉄粒子の例は、Rockwood社から市販されている酸化鉄、例えば、Ferroxide(登録商標)イエロー48、Ferroxide(登録商標)49(鉄黄)、Ferroxide(登録商標)レッド212(べんがら)、Ferroxide(登録商標)ブラック77(鉄黒)またはAC2544P(透明な鉄黄)などである。Ferroxide(登録商標)イエローについての平均粒径は100×500nmであり、べんがらおよび鉄黒の両方について粒径は90〜100nmであるが、透明な鉄黄は10×100nmの粒径を有する。
【0015】
セメントの形態における無機粒子材料の粒子は、例えばDIN−EN 197−1中に記載される全てのセメントを含み、この場合ポルトランドセメント(CEM I)、ポルトランド複合セメント(CEM II)、高炉セメント(CEM III)、ポゾランセメント(CEM IV)、複合セメント(CEM V)などの主分類、および全ての副分類が、本発明の無機粒子材料として適している。道路用セメント、白色セメント、耐水性セメントまたは耐硫酸塩セメントなどの特殊ニーズ用セメントも、本発明によって包含される。さらに、セメント製造処方または粒度のいずれかを変更することによって、特定の性状を強調することができ、それによるこれらの粒子も、本発明の無機粒子材料の粒子として適している。一実施形態において、光触媒活性化合物で少なくとも一部被覆されたセメント粒子が好ましい。他の実施形態において、光触媒活性化合物で完全に被覆されたセメント粒子が好ましい。
【0016】
無機粒子材料の粒子は、コンクリートをも含む。このコンクリートは、ポルトランドセメントなどのセメントと、フライアッシュおよびスラグセメントなどの他のセメント系材料と、一般に粗骨材、例えば砂利、石灰石または花崗岩などである骨材と、さらに砂または砕砂などの細骨材と、水と、化学混和剤、例えば流動化剤、硬化促進剤、凝結遅延剤および防錆剤などとからなる建設材料である。本発明において、普通コンクリート、レディーミクストコンクリート、高強度コンクリート、高性能コンクリート、高流動コンクリート(self-compacting concrete)、吹付けコンクリート、透水コンクリート、気泡コンクリート、コルク−セメント複合体、ローラー転圧コンクリート、ガラス繊維コンクリート、アスファルトコンクリート、早強コンクリート、ポリマーコンクリートおよびこれらの混合物からなる群から選択されるコンクリートが、本発明の無機粒子材料の粒子として適している。一実施形態において、光触媒活性化合物で少なくとも一部被覆されたコンクリート粒子が好ましい。他の実施形態において、光触媒活性化合物で完全に被覆されたコンクリート粒子が好ましい。
【0017】
モルタルの形態における無機粒子材料の粒子は、本質的にポルトランドセメントと砂および水との混合物であるが、このモルタルは、他のセメント/結合剤タイプに基づき、他の材料例えば石灰またはAE剤(air-entraining admixtures)などを含有することもできる。本発明の無機粒子材料として適しているモルタルは、ポルトランドセメントモルタルおよびセメント−砂モルタル;セメント−砂(流動化)モルタル;メーソンリーセメント−砂モルタル;セメント−石灰−砂モルタル、石灰モルタル、水硬性石灰モルタル、ポゾランモルタル、ファイアストップ(firestop)モルタルならびにこれらの混合物からなる群から選択されるモルタルを含む。一実施形態において、光触媒活性化合物で少なくとも一部被覆されたモルタル粒子が好ましい。他の実施形態において、光触媒活性化合物で完全に被覆されたモルタル粒子が好ましい。
【0018】
石灰石または石膏も、本発明の顆粒体のための無機粒子材料の適切な粒子である。一実施形態において、光触媒活性化合物で少なくとも一部被覆された石灰石および/または石膏粒子が好ましい。他の実施形態において、光触媒活性化合物で完全に被覆された石灰石および/または石膏粒子が好ましい。
【0019】
本発明に従う顆粒体は、顆粒体の全重量に対して約80重量%以下、好ましくは約20〜80重量%、より好ましくは約40〜80重量%、最も好ましくは約60〜80重量%の量における無機粒子材料の粒子を含むことができる。
【0020】
本発明に従って、光触媒活性化合物は、さもなければその材料の汚れを招くであろう建材上の菌類、苔、地衣類および藻状微生物などの微生物の蓄積および生長を防止するため、水および/または放射線、例えばU.V.もしくは可視光などによって活性化される光触媒機能を示すことが可能である粒子を指す。建材は、車または産業廃棄物の排気フュームのために、ベンゼン、揮発性有機化合物、農薬、多環式芳香族炭化水素または窒素酸化物などの環境汚染物質にも曝露されている。窒素酸化物(NO)および揮発性有機化合物(VOC)は、2つの主要な環境汚染物質である。特に、これらの化合物は、二次汚染物質の形成を開始する場合に危険なものである。日光および一酸化炭素の存在する状態で大気中においてNOおよびVOCが反応する場合に、大部分の対流圏オゾン形成が起こるので、NOおよびVOCはオゾン前駆体とも呼ばれる。その上、日光の存在におけるNOおよびVOCの反応は、なかんずく硝酸ペルオキシアセチル(PAN)を含有する光化学スモッグの原因となり、光化学スモッグは、特に夏季における大気汚染の顕著な形態である。子供、喘息などの肺疾患を有する人々、および屋外で作業もしくは運動する人々は、肺組織への被害および肺機能低下などの光化学スモッグの悪影響を受け易い。例えば、多環式芳香族炭化水素(PAH)は、炭素、油、燃料、木材などの有機材料の不完全燃焼から由来する。いくつかの実験的研究において実証されるように、PAHは突然変異誘発性および発癌性活性を示し、さらにフェナントロキノン(phenanthroquinone)などのいくつかの汚染物質は建材の変色の原因となる恐れがある。
【0021】
光触媒活性化合物が存在すると、それが汚染物質と相互作用するラジカルおよび/または他の活性化学種を生成させ、例えば、水および/または日光に曝露される際に、このような環境汚染物質を酸化させることができる。これが、これらの分子の崩壊または分解反応をもたらし、例えば窒素酸化物ガスが硝酸塩まで酸化され、このような汚染物質の濃度を実質的に低下させることができる。したがって、建材上のこのような物質の濃度が低下して、延長された期間の間色の鮮やかさが保持される結果となり、さらに環境における環境汚染物質の濃度低下につながる。こうして、空気の質を向上させ、スモッグ防止効果をもたらすことができる。
【0022】
光触媒活性化合物は、放射線、例えばU.V.、可視光などまたは湿度さえも存在する状態で、環境汚染物質を酸化させ、または微生物の生長および蓄積を防止することができる任意の化合物とすることができる。使用しようとする光触媒活性化合物は、金属酸化物、混合金属酸化物および/または金属硫化物の1種もしくは2種以上の組合せを含むことが好ましい。光触媒活性化合物は、二酸化チタンなどの酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、酸化鉄(II)などの反応性酸化鉄、チタン酸ストロンチウム、酸化タングステンおよび二酸化スズ、またはこれらの混合物からなる群から選択されることがより好ましい。
【0023】
特に、化学的安定性と組み合わせて高い光触媒活性を有し、かつ毒性のない二酸化チタンなどの酸化チタンが好ましい。本発明の一実施形態の顆粒体は、主としてアナターゼ形態の二酸化チタンを含む、すなわち少量は、板チタン石 (brookit)および/またはルチル(rutil)形態で存在できる。例えば、適切な二酸化チタンの塗料は、二酸化チタンの全重量に対して少なくとも10重量%、好ましくは少なくとも25重量%、より好ましくは少なくとも50重量%、最も好ましくは少なくとも80重量%のアナターゼ構造を含み、この場合二酸化チタンは少なくとも一部結晶性であり、好ましくはナノ微結晶の形態にある。
【0024】
好ましい二酸化チタンの結晶化度は、二酸化チタンの全重量に対して10と100重量%の間、好ましくは20と100重量%の間の範囲にあり、より好ましくは約30重量%を超え、最も好ましくは約50重量%を超える。それらの大きな表面積および高い光触媒活性のため、本発明の好ましい実施形態は、300nm未満、好ましくは1と200nmの間、最も好ましくは1と100nmの間の粒径、および約5〜350m/gの範囲にある、より好ましくは50と250m/gの間の表面積を有するナノメートル寸法の二酸化チタンを含む。
【0025】
本発明に従う顆粒体は、顆粒体の全重量の約20〜99重量%、好ましくは約20〜60重量%、またより好ましくは約20〜40重量%の量における光触媒活性化合物を含む。
【0026】
光触媒活性化合物を有する無機粒子材料の粒子の被覆物は、出願人の同時係属出願第PCT/EP2006/068245号中において記述される方法によって製造することができ、その場合酸化鉄などの無機顔料分散物が、少なくとも1種の金属塩例えばチタニル塩(硫酸チタニル、塩化チタンまたはシュウ酸チタニル)の水溶液と混合され、アルカリを添加することにより二酸化チタンなどの光触媒活性化合物を、前記無機顔料粒子上に析出させる。この場合、金属酸化物が少なくとも部分的に析出される。最後に、光触媒活性化合物で被覆された無機顔料粒子は、例えば濾過により反応混合物から単離され、その後洗浄され、低温で乾燥される。
【0027】
無機顔料分散物のための適切な溶媒もしくは溶媒混合物は、水と、アルコールまたは炭化水素などの有機溶媒と、それらの任意の混合物とを含むことができる。光触媒活性化合物を、前記無機顔料粒子上に析出させるためのアルカリは、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、水酸化マグネシウム、水酸化アンモニウムまたはこれらの混合物の水溶液からなる群から選択される。溶液の濃度は、比較的濃いことが好ましいが、任意の適切な範囲で選択できる。被覆された無機顔料は、次いで成形して、本発明による顆粒体とすることができる。
【0028】
本発明に従って、無機粒子材料の粒子は、光触媒活性化合物により少なくとも一部被覆される。このことは、表面が、光触媒活性化合物により少なくとも一部覆われることを意味する。光触媒活性化合物は、例えば、ある程度密に分布された結晶性スポット、好ましくは二酸化チタンのナノサイズ微結晶または他の光触媒活性化合物の形態で、無機粒子材料の表面上に無作為に分布させることができる。別法として、より高い充填量では、光触媒活性化合物は、実質的に完全に被覆するまで、担体粒子の表面上における結晶材料のより大きな領域を構成することもできる。好ましい実施形態において、無機粒子材料の粒子の表面が、10%と100%の間で、光触媒活性化合物により覆われ、無機粒子材料の粒子の表面が、好ましくは30と100%の間、より好ましくは50と100%の間、最も好ましくは70と100%の間で、光触媒活性化合物により覆われる。
【0029】
本発明により、「顆粒体(granulate)」は、処理ステップ、例えば成形操作によって、その平均粒径が、その原料と比較して増加しているあらゆる材料を意味する。したがって、「顆粒体(granulates)」は、噴霧顆粒体および圧密顆粒体、ならびに、例えば、その後の硬化および粉砕を伴う水分処理から得られる生成物、乾燥または本質的乾燥処理ステップによって得られ、約10重量%以下の残留水分含量を有する乾燥生成物をもたらす生成物を含む。このような処理生成物の例は、無機粒子材料の粒子が、少なくとも1種の光触媒活性化合物で被覆される顆粒体、ブリケット、タブレット、ペレットなどである。
【0030】
顆粒体は、粉末、ペーストなどと比較したそれらのかなりの利点のため、数十年間大規模に工業的に使用されており、また顔料の処理にも受け入れられている。しかし、他の領域の顆粒体について得られた経験を、光触媒活性を有する顆粒体に単純に移転することはできない。それは、ほとんど完全に適切に見える顆粒体も、種々の理由のためしばしば不適当と判明するからである。
【0031】
顆粒体は主として2つの相反する特性、一方では機械的安定性または固形性を、また他方では選択された媒質中への良好な分散性状を必要とする。調製した顆粒体の大部分について、優れた固形性が達成されており、それが、例えば包装および輸送中の顆粒体の破壊を妨げ、さらに粉じんの生成を限定している。しかし、選択された媒質中への分散が損なわれる可能性があり、それが、望ましくない不均質な光触媒活性および光触媒活性強度をもたらす。
【0032】
他方、良好な分散性状をもたらす顆粒体は、しばしば柔らか過ぎ、それらをセメントなどの建材または水性塗料もしくはペイントにうまく組み込むまでに砕解される。このため、粉じん生成の増加を、包装における残渣を、流動性の低下を、またこれに対応してしばしば不正確な使用量を招く恐れがある。
【0033】
顆粒体の固形性は、強い付着力によってもたらされ、主として、結合剤の特性および量によって、かつ/または顆粒体製造中それらを成形するため加えられる圧力によって決まる。他方、分散性状は、例えば、造粒前の摩砕品質によって、製造に提供される機械的エネルギーによって、また分散剤によって影響されて、建材、水性塗料またはペイント中に組み込む間の、乾燥顆粒体の付着力を低下させる。しかし、このような添加剤の含量が増加すると、それだけ顔料濃度が低下し、したがって添加剤の添加は限定される。このような添加剤は、選択された材料の特性を不利に修正すべきものではなく、したがって添加剤の利益が、不利になる可能性に優るかどうかを注意深く評価しなければならない。
【0034】
本発明において組み込むことができる添加剤は、結合剤、分散剤、崩壊剤、シリカ、シリカ成分および/もしくは脂肪族塩、またはこれらの添加剤の任意の組合せからなる群から選択される。
【0035】
本発明による添加剤には、場合によって結合剤および/または分散剤、例えばポリアルキレングリコール、プロピレンオキシド/エチレンオキシドブロックポリマー、ポリアクリレート、スチレンスルホン酸ポリマー、スチレンスルホン酸とアルファ,ベータ−エチレン性不飽和モノマーとのコポリマー、ヒドロキシカルボキシレート、ポリエチレンスルホネート、アルファ,ベータ−エチレン性不飽和カルボン酸と直鎖オレフィンとのコポリマー、強洗浄用(heavy-duty)芳香族炭化水素およびそれらのホルマリン縮合物のスルホン酸塩、リグニンスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ノニルフェニル−エチレンオキシド縮合物、ジ−オクチルスルホコハク酸塩、ナフタレンスルホネート(naphthalenesulfonate)−ホルマリン縮合物の塩およびメラミンスルホネート(melamine sulfonate)−ホルマリン縮合物の塩、ラクトースおよび糖などが含まれる。本発明の顆粒体のための他の成分は、結合剤として働く水ガラス、特にカリ水ガラス、および造粒用出発混合物に添加される場合の増粘剤である。シリカ、好ましくは粒子シリカおよび/または粒子アルミノケイ酸塩の形態におけるシリカも、本発明において使用することができる。本発明において使用できる他の種類の有用な添加剤は、長鎖脂肪酸の塩である。適切な脂肪酸は、飽和もしくは不飽和とすることができ、C12〜C18脂肪酸を含む。
【0036】
崩壊剤、例えば天然および/もしくは球状セルロースを含むセルロース誘導体、デキストランおよび/または架橋ポリビニルピロリドンなどを使用することができる。その上、特に好ましい実施形態において石鹸、例えば軟石鹸およびカリ石鹸が使用され、その際植物油系カリ石鹸が特に好ましい。
【0037】
しかし添加剤は、顆粒体が建材中に、または建材上に塗布される水性塗料またはペイント中に十分急速にかつ完全に懸濁および/または分散されるような形で選択される。この点に関して、無機粒子材料のタイプ、造粒方法、およびさらなる処理ステップも役割を果たし、したがってそれぞれの場合に適した混合物が、対応する単純な試験により決定される。
【0038】
本顆粒体の添加剤は、顆粒体の全重量の約0.1〜10重量%、好ましくは約2〜5重量%とすることができる。
【0039】
さらなる成分として、本発明の顆粒体は、光触媒活性化合物で被覆された無機粒子材料の粒子と混合することができる充填材として、他の無機粒子材料の粒子を含むこともできる。
【0040】
本発明の充填材の形態における無機粒子材料の粒子は、石灰石、石膏、セメント、コンクリート、モルタルまたはこれらの混合物からなる群から選択される。好ましい実施形態は、顆粒体の全重量の80重量%以下の充填材を含み、より好ましいのは約60〜80重量%の量である。
【0041】
光触媒活性を有する顆粒体は、建物の内装および/または外装に使用される全ての建材について光触媒活性を導入するために使用できる。光触媒活性を有する顆粒体は、やはり光触媒活性が所望される場所で、建物の内装および/または外装に使用される全ての建材を着色するために使用することもできる。本顆粒体は、セメント、コンクリート、石膏、モルタルおよび/または石灰石に基づく建材中に、または建材上に塗布される水性塗料またはペイント中に使用されることが好ましく、そこでは、菌類、苔、地衣類および藻状微生物などの微生物の蓄積および生長を抑制し、こうして材料の汚れが少なくなる一方、建材の色の鮮やかさが保持されるであろう。本顆粒体は、環境における環境汚染物質の濃度を低下させ、こうして空気および水の質を向上させるため、セメント、コンクリート、石膏、モルタルおよび/もしくは石灰石またはこれらの混合物などの建材中に、または建材上に塗布される水性塗料またはペイント中に光触媒活性を導入するのに使用することもできる。したがって、本発明の顆粒体の使用は、建材中にまたは建材上に光触媒活性を導入して、建材上の汚れの傾向を小さくし、かつ/または延長された期間の間色の鮮やかさを保持し、かつ/または環境における環境汚染物質の濃度を低下させるため特に好ましい。
【0042】
例えば、建材またはペイント中に本発明の顆粒体を使用する場合、これらは大気汚染物質、特に窒素酸化物(NO)および揮発性有機化合物(VOC)の高度に有効な光触媒分解に適するものとすることができる。また、NOおよび/またはVOCを分解する光触媒として本発明の顆粒体を使用すると、NOを分解する間に常に起こるNO生成も著しく低減される。NOが存在して、UVおよび可視光を照射する間に起こる可能性のあるオゾン生成が測定されており、またこれらの光触媒材料によりこのオゾン生成が制限されることが観察される。いかなる理論にも制約されないが、日光に曝露される際、本発明の顆粒体が存在すると、汚染物質である窒素酸化物(NO)および揮発性有機化合物(VOC)を分解することができ、本発明の顆粒体が、これらの汚染物質と相互作用するラジカルおよび/または活性化学種を生成させると考えられる。これにより、これらの分子の崩壊または分解反応をもたらし、例えば窒素酸化物ガスを硝酸塩まで酸化することができ、このような汚染物質の濃度を実質的に低下させることができる。
【0043】
本発明の顆粒体は、従来の方法によって製造することができる。
【0044】
本発明に従って、顆粒体の製造は、少なくとも1種の光触媒活性化合物で無機粒子材料を被覆して、建材の光触媒活性を高めるステップを含む。他のステップは、結合剤、分散剤、崩壊剤、湿潤剤、シリカ、シリカ成分および/または脂肪族塩からなる群から選択される少なくとも1種の添加剤の添加を含むことができる。本発明の方法は、造粒するステップ、例えば圧密、噴霧乾燥、押出し、圧縮、ペレット化(pelletizing)、ブリケッティングもしくは流動床乾燥によって、またはこれらの方法の任意の組合せによって顆粒体を形成するステップをさらに含む。造粒するために、噴霧方法(例えば、噴霧または流動床乾燥)を使用することが好ましい。
【0045】
本発明に従って、全ての前述の本発明の実施形態において、本顆粒体を建材と混合する前に顆粒体の表面を処理することによって、取扱い、建材または水性塗料およびペイントへの組込み、光触媒活性、色密度などに有利な影響を、さらに及ぼすことができる。特に、顆粒体は、分離剤および/または湿潤剤で被覆することができる。これらの薬剤は、包装時に顆粒体の凝集および固化(clumping and caking)を招かないように、すなわち顆粒体が、例えば吸湿性になり過ぎないように選択される。他方で、これらの薬剤は、濡れを増進させることを所望される。
【0046】
建材または水性塗料およびペイントと混合する間、顆粒体の使用は、慣例的な、知られている手順に対応している。
【実施例】
【0047】
光触媒活性なTiO(特許出願第PCT/EP2006/068245号中において記述されるように調製した)で被覆した酸化鉄黄色顔料を使用し、噴霧乾燥造粒方法によって光触媒活性を有する顆粒体を製造した。これらの球状顆粒体は、100〜300μmの範囲にある主粒度を示し、500μmを超える顆粒体は存在しない。
【0048】
【表1】

【0049】
光触媒活性を有する本顆粒体の使用によって着色したコンクリートブロックを調製し、窒素酸化物変換活性に関して試験した。セメント濃度に対するTiO濃度は、1.8%と計算された。NO変換率12.9%が観察され、NOへの変換率は0.6%に限定された。
【0050】
比較の目的で、光触媒活性成分を含まない顆粒体で着色したコンクリートブロックを調製し、窒素酸化物変換活性に関して試験した。顕著なNOおよびNO変換は観察されなかった。
【0051】
このようにして製造された顆粒体を混合した建材は、光触媒活性の増大、または延長された期間一定の活性、したがって建材の汚れが少ない傾向を示している。同時に、これらの建材は、色により特徴付けられ、その鮮やかさがより長期間保持された。このことは、通常の鉄黄(Yellow Iron Oxide)3%(セメントに対して計算した)で着色した光触媒活性セメント(Italcementi社TX)で調製したコンクリートストーンと、普通セメントおよび光触媒活性な鉄黄5%で調製したコンクリートストーン(ストーン中の酸化鉄含量はセメントに対し3%と計算された。)との色調の長期安定性を比較する屋外風化実験によって確認された。比較の基準として、最も重要な色パラメータ「黄色」を表すCIE−Lab系のb−値を選択した。屋外風化12カ月後、着色したTXストーンは、負の差デルタb −1.77(すなわち、鮮やかさの低下)を示したが、光触媒活性な鉄黄で調製したストーンは、デルタbの僅かな上昇+0.27さえも示し、すなわち幾分より良好な鮮やかさを示し、または少なくとも変化していない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光触媒活性を有する顆粒状材料であって、少なくとも1種の無機粒子材料を含み、前記無機粒子材料の粒子が、光触媒活性化合物で少なくとも一部被覆されている顆粒状材料。
【請求項2】
前記無機粒子材料の粒子が、前記光触媒活性化合物で完全に被覆されている、請求項1に記載の顆粒体。
【請求項3】
前記無機粒子材料の粒子が、無機顔料、石灰石、石膏、コンクリート、モルタルおよびセメントまたはこれらの混合物からなる群から選択される、請求項1または2に記載の顆粒体。
【請求項4】
前記無機顔料が、酸化鉄、酸化コバルト、(二)酸化チタン、酸化クロム、酸化亜鉛、および/またはカーボンブラックからなる群から選択される、請求項3に記載の顆粒体。
【請求項5】
前記無機顔料が、酸化鉄からなる群から選択される、請求項3または4に記載の顆粒体。
【請求項6】
前記無機顔料が、顔料粉末および顔料フィルターケーキを含む、請求項3から5に記載の顆粒体。
【請求項7】
前記無機粒子材料の粒子が、顆粒体の全重量の80重量%以下、好ましくは20〜80重量%、より好ましくは40〜80重量%、最も好ましくは60〜80重量%である、請求項1から6に記載の顆粒体。
【請求項8】
前記光触媒活性化合物が、(二)酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、酸化鉄(II)、チタン酸ストロンチウム、酸化タングステンおよび二酸化スズ、またはこれらの混合物からなる群から選択される、請求項1から7に記載の顆粒体。
【請求項9】
前記光触媒活性化合物が、アナターゼおよび/またはルチル形態における二酸化チタンを含む、請求項1または8に記載の顆粒体。
【請求項10】
前記二酸化チタンが少なくとも一部結晶性であり、好ましくはナノ微結晶の形態にある、請求項9に記載の顆粒体。
【請求項11】
前記光触媒活性化合物が、顆粒体の全重量の20〜99重量%、より好ましくは20〜60重量%、最も好ましくは20〜40重量%である、請求項1から10に記載の顆粒体。
【請求項12】
充填材、結合剤、分散剤、崩壊剤、シリカ、シリカ成分および/または脂肪族塩からなる群から選択される添加剤をさらに含む、請求項1から11に記載の顆粒体。
【請求項13】
前記添加剤が、顆粒体の全重量の0.1〜10重量%、好ましくは2〜5重量%である、請求項12に記載の顆粒体。
【請求項14】
請求項1〜13のうちの一項に記載の光触媒活性を有する顆粒体の調製方法であって、光触媒活性化合物で無機粒子材料の粒子を少なくとも一部被覆するステップを含む方法。
【請求項15】
結合剤、分散剤、崩壊剤、湿潤剤、シリカ成分および/または脂肪族塩からなる群から選択される少なくとも1種の添加剤を添加するステップをさらに含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
圧密、噴霧乾燥、押出し、圧縮、ペレット化、ブリケッティングもしくは流動床乾燥によって、またはこれらの方法の任意の組合せによって前記顆粒体を形成するステップをさらに含む、請求項14または15に記載の方法。
【請求項17】
分離剤および/または湿潤剤で前記顆粒体を被覆するステップをさらに含む、請求項14から16に記載の方法。
【請求項18】
セメント、コンクリート、石膏および/または石灰石に基づく建材、水性塗料またはペイント中に、光触媒活性を導入するための、請求項1から13の一項に記載の顆粒体の使用。
【請求項19】
水性塗料またはペイントの形態で、セメント、コンクリート、石膏および/または石灰石に基づく建材上に光触媒活性を導入するための、請求項1から13の一項に記載の顆粒体の使用。
【請求項20】
請求項1から13の一項に記載の顆粒体の使用によって製造される、光触媒活性を有する建材。
【請求項21】
環境における環境汚染物質の濃度を低下させるための、請求項20に記載の建材の使用。
【請求項22】
前記汚染物質が、窒素酸化物(NO)または揮発性有機化合物(VOC)から選択される、請求項21に記載の使用。

【公表番号】特表2011−518656(P2011−518656A)
【公表日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−502233(P2011−502233)
【出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【国際出願番号】PCT/EP2008/053852
【国際公開番号】WO2009/121395
【国際公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【出願人】(509127550)
【Fターム(参考)】