光記録媒体駆動装置、フォーカスオン方法
【課題】例えば2層BDのL0層をターゲット層とした場合のフォーカスオン動作の高速化を図る。
【解決手段】L0層をターゲット層としたフォーカスオン動作を、L1層とL0層との中間点に合わせた球面収差補正値に対し、例えばRF信号振幅値が最大となるようにして求めた補正シフト値bを加算した球面収差補正値を設定した状態で行う。これにより、ディスク個々のカバー厚誤差が生じる場合にもL1層とL0層でのフォーカスエラー信号の歪みを良好に改善でき、L1層のS字を適正に検出することが可能となることで対物レンズを1方向を駆動するフォーカスオンの手法を採ることができる。
【解決手段】L0層をターゲット層としたフォーカスオン動作を、L1層とL0層との中間点に合わせた球面収差補正値に対し、例えばRF信号振幅値が最大となるようにして求めた補正シフト値bを加算した球面収差補正値を設定した状態で行う。これにより、ディスク個々のカバー厚誤差が生じる場合にもL1層とL0層でのフォーカスエラー信号の歪みを良好に改善でき、L1層のS字を適正に検出することが可能となることで対物レンズを1方向を駆動するフォーカスオンの手法を採ることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光の照射により信号の記録再生が行われる光記録媒体について記録又は再生を行う光記録媒体駆動装置と、上記光記録媒体に形成される所定の記録層にフォーカスオンする際のフォーカスオン方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
デジタルデータを記録・再生するための技術として、例えばCD(Compact Disc),MD(Mini-Disc),DVD(Digital Versatile Disc)などの、光ディスク記録媒体(光磁気ディスクを含む)を記録メディアに用いたデータ記録技術がある。光ディスク記録媒体(単に光ディスクとも言う)は、ピットやマークによって信号が記録される円盤にレーザ光を照射し、その反射光の変化で信号が読み取られる記録メディアの総称である。
【0003】
このような光ディスク記録媒体では、記録容量の拡大などを目的として、記録層を多層化するということが行われている。現状においても、例えばDVDなどでは記録層を2層有するディスクが広く普及している。
【0004】
記録層が多層とされる場合、それぞれの記録層に選択的にフォーカスオンして各記録層での信号読み出しを行うようにされる。
図12は、このような多層ディスクにおけるフォーカスオンの手法について例示している。この図12では、一例として、レーザ光が入射する側から順に第1記録層、第2記録層の2つの記録層が形成された2層ディスクについて、第2記録層にフォーカスオンする際の動作例について示している。
なお図12では、フォーカスオン時の全光量信号(例えば4分割ディテクタの場合にはプルイン(PI)信号)、FOK信号、フォーカスエラー信号、フォーカスドライブ信号の各波形と、各種閾値thとによりフォーカスオン動作を模式的に示している。
【0005】
先ず、フォーカスオンを行うにあたっては、図示する「on point」に至るまでの波形により示されるようなフォーカスドライブ信号により、対物レンズを光ディスクに近づく方向に駆動するようにされる。
そして、このように対物レンズが光ディスク方向に駆動されるときの全光量信号を所定の閾値th-FOKでスライスしたFOK信号を生成し、このKOF信号がHとなる期間内で、フォーカスエラー信号のS字を検出する。具体的には、フォーカスエラー信号が図中の閾値th−1を超えた後にさらに閾値th−2を下回ることを条件としてS字の検出を行う。
この場合は、奥側に位置する第2記録層にフォーカスオンするので、2個目のS字が検出された時点でフォーカスオンを行う。つまりは、図示するようにしてFOK信号が再びHとなる期間内で、フォーカスエラー信号が閾値th−1を超えた後に閾値th−2を下回った時点でフォーカスオンを行うものである。
【0006】
ところで、光ディスクとしては、先に例示したCD、DVDなどの他にも 近年ではBD(Blu-ray Disc:登録商標)などの高密度光ディスクが開発され、著しい大容量化が図られている。
このBDについては、ディスク厚み方向に0.1mm程度のカバー層を有するディスク構造において、波長405nmのレーザ(いわゆる青色レーザ)とNA(Numerical Aperture)が0.85の対物レンズの組み合わせという条件下で、データを記録又は再生するものとされている。
【0007】
ここで、上記BDのような高密度ディスクの場合、記録層より上層のカバー層の厚みの違いによって球面収差が生じることが知られている。特に、記録層を多層有する光ディスクでは、各層においてカバー層の厚さが異なることになるので、球面収差補正を行うことが必須とされる。
【0008】
このようにして球面収差補正が必須とされる場合においては、上述したフォーカスオン時においても何らかの球面収差補正値を設定しておく必要がある。
従来、フォーカスオン時に設定されるべき球面収差補正値については、フォーカスオンを行う対象となるターゲット層に合わせた球面収差補正値を設定するものとされていた。
【0009】
しかしながら、球面収差補正値をターゲット層に合わせた値に設定していると、他の記録層についてのフォーカスエラー信号のS字を適正に検出できないことがある。例えば、第2記録層をターゲット層としてフォーカスオンを行う場合には、第1記録層でのフォーカスエラー信号振幅を充分に得ることができなくなってしまうことになる。
【0010】
このようにして第2記録層をターゲット層とした場合に第1記録層でのフォーカスエラー信号振幅が充分に得られなくなってしまうと、先の図12に示したようなフォーカスオンの手法では、ターゲット層への適正なフォーカスオンができなくなってしまう。つまり、第1記録層についてのフォーカスエラー信号のS字を検出することができなければ、第2記録層についてのS字が第1記録層についてのS字と誤認されてしまい、適正に第2記録層にフォーカスオンすることができなくなってしまうものである。
【0011】
なお、確認のために述べておくと、第1記録層をターゲット層としたフォーカスオンを行う場合には、フォーカスエラー信号の歪みは問題にはならない。つまり、第1記録層にフォーカスオンする場合は、対物レンズを光ディスクに近づく方向に駆動させたときに始めに得られる記録層反射を捉えればよいので、この場合は第2記録層でのフォーカスエラー信号振幅は問題とはならず、第1記録層でのフォーカスエラー信号振幅のみが適正に得られていれば適正にフォーカスオンを行うことができる。
【0012】
上記のようにして球面収差補正が必須とされる場合は、第2記録層をターゲット層としたフォーカスオン時に第1記録層のS字を検出できずフォーカスオン動作を適正に行うことができない可能性があるので、これを改善するために、現状では次の図13に示すような手法によるフォーカスオン動作を行うようにされている。
【0013】
図13では、第2記録層をターゲット層とした場合のフォーカスオン動作が行われる場合の、全光量信号(PI信号)、FOK信号、フォーカスエラー信号、フォーカスドライブ信号の各波形を示している。なお、この図13では第1記録層を「L1層」、第2記録層を「L0層」として表している。
【0014】
先ず、この場合は、第2記録層へのフォーカスオンにあたり球面収差補正値を第2記録層に合わせた値に設定していることに伴い、図示するようにして第1記録層(L1層)でのフォーカスエラー信号振幅が、第2記録層(L0層)でのフォーカスエラー信号振幅に対して小さくなるようにしてフォーカスエラー信号に歪みが生じている。
これに対し全光量信号は、L1層においても充分な信号振幅が得られており、球面収差による影響が非常に少ないことがわかる。
【0015】
この図13に示す手法としても、図中のフォーカスドライブ信号として示されるように、先ずは対物レンズを光ディスクに近づく方向に駆動するようにされる。
この際、全光量信号について図示する閾値thP-H、閾値thP-Lの2つの閾値を設け、全光量信号が閾値thP-Hを上回ったらH、その後閾値thP-Lを下回ったらLとなるようにしてFOK信号を生成するようにされる。
【0016】
そして、この手法では、FOK信号がLとなった時点からタイムカウントを開始し、その時点から所定時間X以内にフォーカスエラー信号のS字が検出されるか否かを判別する。この場合のS字の検出は、フォーカスエラー信号が図中に示すような閾値thF-Hを上回ったことを条件として行うようにされる。
所定時間X以内にS字が検出された場合には、その時点から再度タイムカウントをやり直し、再度所定時間X以内にS字が検出されるか否かを判別する。そして、所定時間X以内にS字が検出されなかった場合には、対物レンズをこれまでと逆方向(つまり光ディスクから離れる方向)に駆動し、1つ目のS字が検出されたらそのタイミングでフォーカスオンを行う。この1つ目のS字については、FOK信号がHの期間内で、フォーカスエラー信号が図中閾値thF-ZLを下回った後にさらに閾値thF-Lを上回ったことを条件として検出する。
【0017】
第2記録層以降は記録層がないので、上記のようにしてS字の検出後における所定時間X以内に再度S字が検出されなければ、最後に検出したS字が第2記録層のS字であるということがわかる。従ってその場合に、上記のようにして対物レンズを逆方向に駆動して1つの目のS字でフォーカスオンを行えば、ターゲット層である第2記録層に適正にフォーカスオンすることができるものである。
【0018】
但し、図13に示した手法は、第2記録層へのフォーカスオンの際に、必ず対物レンズを光ディスクに接離する方向に往復させなければならないことになる。先の図12に示した従来の一般的な手法では、第2記録層にフォーカスオンするにあたっても対物レンズを1方向にのみ駆動すればよかったのと比較すると、この図13の手法は、その分フォーカスオンに要する時間を多く要するものとなってしまうものとなる。
【0019】
なお、関連する従来技術については下記特許文献を挙げることができる。
【特許文献1】特開2006−155792号公報
【特許文献2】特開2003−22545号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
ここで、そもそも図13に示すようなフォーカスオン手法を採るのは、ターゲット層でのフォーカスサーボの引き込み安定化を意図して、第2記録層に合わせた球面収差補正値を設定していることで、第1記録層で充分なフォーカスエラー信号振幅が得られなくなってしまうからである。
そこで、第1記録層にてフォーカスエラー信号振幅が増すように、第1記録層と第2記録層との中間点に合わせた球面収差補正値を設定した状態で第2記録層へのフォーカスオンを実行することが考えられる。すなわち、このように中間点に設定することで、第1記録層と第2記録層のフォーカスエラー信号の歪みの防止を図り、第2記録層へのフォーカスオン時に第1記録層のS字が検出できないといった事態の防止を図ろうというものである。
【0021】
しかしながら、実際において、このように第1記録層と第2記録層との中間点に合わせた球面収差補正値を設定したとしても、フォーカスエラー信号振幅特性の充分な改善は図られないことが明らかとなった。
この点について、本出願人が実験を行った結果を図14に示す。
図14において、図14(a)はL0層(第2記録層)に合わせた球面収差補正値を設定した場合、図14(b)はL1層(第1記録層)に合わせた球面収差補正値を設定した場合、図14(c)はL0層とL1層の中間点に合わせた球面収差補正値を設定した場合のプルイン信号(PI)、フォーカスエラー信号(FE)の波形を示している。なお各図において、図中の縦破線より左側は対物レンズを光ディスクに近づく方向に駆動した際の波形を示し、同縦破線より右側では光ディスクから離れる方向に駆動した際の波形を示している。
【0022】
図示するようにして、図14(c)に示す中間点に合わせた球面収差補正値を設定した場合は、図14(a),(b)に示す場合との比較ではフォーカスエラー信号の歪み具合は低減されるものの、依然としてこれを改善しきれていないことがわかる。
【0023】
このようにして中間点に合わせて球面収差補正値を設定した場合にもフォーカスエラー信号に歪みが残るのは、光ディスクの個体ごとのカバー厚の誤差に起因して、光ディスクごとに最適な球面収差補正値がばらつくためである。
このため、単に第1記録層と第2記録層との中間点に合わせた球面収差補正値に設定したのでは、装填される光ディスクごとにフォーカスオン動作時に得られるフォーカスエラー信号の振幅特性がばらついてしまい、結果として第2記録層へのフォーカスオン時に第1記録層のS字が検出できなくなるといった事態の防止を完全に図ることができないものとなる。
【0024】
第1記録層のフォーカスエラー信号のS字が検出できないのであれば、上述した図13のような対物レンズを往復させる手法を採らざるを得ず、結果として第2記録層へのフォーカスオンに要する時間の短縮化は図られなくなってしまう。
【課題を解決するための手段】
【0025】
そこで、本発明では以上のような問題点に鑑み、光記録媒体駆動装置として以下のように構成することとした。
つまり、本発明の光記録媒体駆動装置は、複数の記録層を有する光記録媒体について記録又は再生を行う光記録媒体駆動装置であって、先ず、少なくとも信号読出のために上記光記録媒体に対するレーザ光照射及び反射光検出を行うとともに、少なくともレーザ光のフォーカス機構及び球面収差補正機構を有するヘッド手段を備える。
また、上記ヘッド手段で得られる反射光情報に基づき上記フォーカス機構を駆動して、上記光記録媒体の上記記録層へのフォーカスオン制御を実行するフォーカス制御手段と、球面収差補正値に基づいて上記球面収差補正機構を駆動して球面収差補正を実行する球面収差補正手段とを備える。
さらに、上記光記録媒体における上記レーザ光の入射する側に最も近い第1記録層以外の記録層をターゲット層としたフォーカスオン動作を行うべき状態となったことに応じ、上記ターゲット層と上記第1記録層との中間点に合わせた球面収差補正値を所要の値だけシフトさせた球面収差補正値が上記球面収差補正手段に設定されるように制御すると共に、上記所要の値だけシフトさせた球面収差補正値の設定状態で上記フォーカス制御手段による上記ターゲット層へのフォーカスオン制御が実行されるように制御する制御手段を備えるものである。
【0026】
このようにしてターゲット層と上記第1記録層との中間点に合わせた球面収差補正値を所要の値だけシフトさせた球面収差補正値の設定状態でターゲット層へのフォーカスオン制御が実行されれば、中間点に合わせた球面収差補正値に対し、何らかの補正値を与えた球面収差補正値を設定した状態でターゲット層へのフォーカスオンを行うことができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、第1記録層とターゲット層との中間点の球面収差補正値に何らかの補正値を与えた球面収差補正値の設定状態で上記ターゲット層へのフォーカスオン動作を実行することができるので、例えば記録媒体個々のカバー厚誤差に対応するための補正値を与えた球面収差補正値の設定状態でフォーカスオン動作を行うなどといったことが可能となる。すなわち、これによって記録媒体個々のカバー厚誤差が生じる場合においても、ターゲット層以外でフォーカスエラー信号のS字が検出されなくなってしまうといった事態の防止を図ることができ、この結果として従来の対物レンズを往復させる手法を採る必要がなくなり、フォーカスオン動作の高速化が図られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、発明を実施するための最良の形態(以下実施の形態とする)について説明していく。
図1は、本発明の実施の形態としてのディスクドライブ装置の内部構成について示すブロック図である。
このディスクドライブ装置としては、図示する光ディスクDとして、CD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disc)、BD(Blu-ray Disc:登録商標)のそれぞれに対応可能に構成される。また、これに伴い、図中光ピックアップ1としては、波長λ=780nm、650nm、405nmのそれぞれ波長の異なるレーザ光を共通の対物レンズを用いて照射するように構成された、いわゆる3波長単眼式のピックアップが採用されている。
また、このディスクドライブ装置は、データ再生のみが可能な再生専用装置とされる。この場合、ピット・ランドの組み合わせでデータが記憶される再生専用のROMディスクとしての光ディスクDのみでなく、記録可能型として、ライトワンス型やリライタブル型の光ディスクDについての再生も可能とされる。
【0029】
また、本実施の形態のディスクドライブ装置としては、記録層を多層有する多層ディスクにも対応可能に構成される。
ここで一例として、次の図2には2つの記録層を有する2層BDによる光ディスクDの断面構造を示す。
2層BDの場合、図示するようにしてレーザ光が入射する側から順にカバー層→L1層→L0層→基板の順に各層が形成される。この場合、レーザ光の入射側に最も近いL1層(第1記録層とも呼ぶ)は、カバー層の表面からおよそ75μmとなる位置に形成される。また、奥側のL0層(第2記録層とも呼ぶ)は、カバー層の表面からおよそ100μmの位置に形成される。
図1に示すディスクドライブ装置では、このようにして光ディスクDに形成されるL1層、L0層に対して選択的にフォーカスオンすることが可能に構成されることで、各層に記録される情報の読み出しが可能とされている。
【0030】
図1において、光ディスクDは、ディスクドライブ装置に装填されると図示しないターンテーブルに積載され、記録/再生動作時においてスピンドルモーター2によって一定線速度(CLV)で回転駆動される。
そして再生時には、光ピックアップ(光学ヘッド)1によって光ディスクD上のトラックにピット或いはマークで記録された情報の読出が行われる。
なお、光ディスクDには、再生専用の管理情報として、例えばディスクの物理情報等がエンボスピット又はウォブリンググルーブによって記録されるが、これらの情報の読出も光ピックアップ1により行われる。さらに記録可能型の光ディスクDに対しては、グルーブトラックのウォブリングとして埋め込まれたADIP情報が記録されているが、その読み出しも光ピックアップ1によって行うことができる。
【0031】
光ピックアップ1内には、レーザ光源となるレーザダイオードや、反射光を検出するためのフォトディテクタ、レーザ光の出力端となる対物レンズ、レーザ光を対物レンズを介してディスク記録面に照射し、またその反射光をフォトディテクタに導く光学系等が形成される。この場合のレーザダイオードは、波長780nm、650nmのCD、DVD系のレーザ光を出力するレーザダイオードと、BD系に対応する波長405nmのレーザ光を出力するレーザダイオードとの2つが設けられている。但し、この場合は先に述べた3波長単眼式として、これら2つのレーザダイオードから出力される各波長のレーザ光がそれぞれ共通の対物レンズを介して光ディスクDに対し照射されるように構成されている。
【0032】
光ピックアップ1内において、上記対物レンズは2軸機構によってトラッキング方向及びフォーカス方向に移動可能に保持されている。
また光ピックアップ1全体はスレッド機構3によりディスク半径方向に移動可能とされている。
また光ピックアップ1におけるレーザダイオードはレーザードライバ9からのドライブ信号(ドライブ電流)によってレーザ発光駆動される。
【0033】
また、本実施の形態の場合、光ディスクDとしてはBDにも対応するので、光ピックアップ1内には球面収差を補正するための球面収差補正機構も備えられる。この球面収差補正機構は、図中のSA(球面収差)補正ドライバ14によって駆動され、これによって球面収差が補正される。
なお、上記球面収差補正機構を含めた光ピックアップ1内の構成については後述する。
【0034】
光ディスクDからの反射光情報は上述したフォトディテクタによって検出され、受光光量に応じた電気信号とされてマトリクス回路4に供給される。
マトリクス回路4には、フォトディテクタとしての複数の受光素子からの出力電流に対応して電流電圧変換回路、マトリクス演算/増幅回路等を備え、マトリクス演算処理により必要な信号を生成する。
例えば再生データに相当するRF信号(再生データ信号)、サーボ制御のためのフォーカスエラー信号FE、トラッキングエラー信号TEなどを生成する。
また、グルーブのウォブリングに係る信号、即ちウォブリングを検出する信号としてプッシュプル信号PPを生成する。
さらに本実施の形態の場合、後述するフォーカスオン動作時に用いられるプルイン(Pull in)信号PIも生成する。
【0035】
マトリクス回路4から出力される再生データ信号(RF信号)はデータ信号処理回路5へ、フォーカスエラー信号FE及びトラッキングエラー信号TE、プルイン信号PIはサーボ回路11へ、プッシュプル信号PPはウォブル信号処理回路6へそれぞれ供給される。
【0036】
また、本実施の形態の場合、RF信号はデータ信号処理回路5に対して供給されると共に、分岐して図示するA/D変換器15を介しその振幅値の情報がシステムコントローラ10に対して供給される。このようにしてシステムコントローラ10に対して供給されるRF信号振幅値の情報は、後述する球面収差補正値の自動調整処理時において、再生信号品質の評価指標(評価値)として用いられることになる。
【0037】
データ信号処理回路5は、再生データ信号の2値化処理を行う。また、PLL処理を行って再生クロックを生成する。さらには、上記2値化処理後の2値データ列から同期信号を検出する処理なども行う。
データ信号処理回路5において、上記2値化処理により得られた2値データ列は後段のデコード部7に対して供給される。また、生成された上記再生クロックは、図示は省略したが各部の動作クロックとして供給される。また検出された同期信号はデコード部7に対して供給される。
【0038】
デコード部7は、上記2値データ列についての復調処理を行う。即ち、再生データの復調、デインターリーブ、ECCデコード、アドレスデコード等の各種復調処理を行う。
再生時においては、上記データ信号処理回路5で復号された2値データ列、及び同期信号に基づく復調タイミングで示されるタイミングで、上記2値データ列に対する復調処理を行い、再生データを得る。デコード部7で再生データにまでデコードされたデータは、ホストインタフェース8に転送され、システムコントローラ10の指示に基づいてホスト機器100に転送される。ホスト機器100とは、例えばコンピュータ装置やAV(Audio-Visual)システム機器などである。
また、デコードされたアドレスデータは、システムコントローラ10に対して供給される。
【0039】
光ディスクDが記録可能型ディスクである場合、光ディスクDにはウォブリンググルーブによってディスクの物理情報などの管理情報やADIP情報などが記録されている。
ウォブル信号処理回路6は、システムコントローラ10からの指示に基づき、マトリクス回路4からのプッシュプル信号PPからこのように光ディスクDのウォブリンググルーブによって記録された情報を検出し、これをシステムコントローラ10に対して供給する。
【0040】
サーボ回路11は、マトリクス回路4からのフォーカスエラー信号FE、トラッキングエラー信号TEから、フォーカス、トラッキング、スレッドの各種サーボドライブ信号を生成しサーボ動作を実行させる。
即ちフォーカスエラー信号FE、トラッキングエラー信号TEに応じてフォーカスドライブ信号FD、トラッキングドライブ信号TDを生成し、光ピックアップ1内の2軸機構のフォーカスコイル、トラッキングコイルを駆動することになる。これによって光ピックアップ1、マトリクス回路4、サーボ回路11、2軸機構によるトラッキングサーボループ及びフォーカスサーボループが形成される。
またサーボ回路11は、システムコントローラ10からのトラックジャンプ指令に応じて、トラッキングサーボループをオフとし、ジャンプドライブ信号を出力することで、トラックジャンプ動作を実行させる。
【0041】
またサーボ回路11は、トラッキングエラー信号TEの低域成分として得られるスレッドエラー信号や、システムコントローラ10からのアクセス実行制御などに基づいてスレッドドライブ信号SDを生成し、これによりスレッド機構3を駆動する。スレッド機構3には、図示しないが、光ピックアップ1を保持するメインシャフト、スレッドモータ、伝達ギア等による機構を有し、スレッドドライブ信号に応じてスレッドモータを駆動することで、光ピックアップ1の所要のスライド移動が行なわれる。
【0042】
また、サーボ回路11は、マトリクス回路4からのフォーカスエラー信号FE、及びプルイン信号PIに基づき、光ディスクDに形成される記録層にフォーカスオンするためのフォーカスオン制御を行う。
また、特に多層ディスクとしての光ディスクDに対応したフォーカス制御として、サーボ回路11は、フォーカスエラー信号FEに基づきフォーカスジャンプ制御も行う。
【0043】
またサーボ回路11は、SA補正ドライバ14に対する球面収差補正値の設定を行うことが可能に構成される。すなわち、サーボ回路11は、システムコントローラ10からの指示に基づく球面収差補正値をSA補正ドライバ14に対して設定することができる。SA補正ドライバ14は、設定された球面収差補正値に応じた駆動信号Sdにより光ピックアップ1内の球面収差補正機構を駆動する。
また、サーボ回路11は、フォーカスバイアスの設定も可能に構成される。すなわち、システムコントローラ10からの指示に基づくフォーカスバイアスを上述したフォーカスサーボループに対して加算することができる。
【0044】
スピンドルサーボ回路12はスピンドルモーター2をCLV回転させる制御を行う。
スピンドルサーボ回路12は、データ信号処理回路5にて生成される再生クロックを現在のスピンドルモーター2の回転速度情報として得て、これを所定のCLV基準速度情報と比較することでスピンドルエラー信号を生成する。
なお、光ディスクDが記録可能型ディスクである場合には、ウォブル信号に対するPLL処理で生成されるクロックを現在のスピンドルモーター2の回転速度情報として得ることができるので、これを所定のCLV基準速度情報と比較することでスピンドルエラー信号を生成することもできる。
そしてスピンドルサーボ回路12は、スピンドルエラー信号に応じて生成したスピンドルドライブ信号を出力し、スピンドルドライバ13によりスピンドルモーター2のCLV回転を実行させる。
またスピンドルサーボ回路12は、システムコントローラ10からのスピンドルキック/ブレーキ制御信号に応じてスピンドルドライブ信号を発生させ、スピンドルモーター2の起動、停止、加速、減速などの動作も実行させる。
【0045】
以上のようなサーボ系及び再生系の各種動作はマイクロコンピュータによって形成されたシステムコントローラ10により制御される。
システムコントローラ10は、ホストインタフェース8を介して与えられるホスト機器100からのコマンドに応じて各種処理を実行する。
例えば、ホスト機器100から光ディスクDに記録されている或るデータの転送を求めるリードコマンドが供給された場合、システムコントローラ10は、まず指示されたアドレスを目標としてシーク動作制御を行う。即ちサーボ回路11に指令を出し、シークコマンドにより指定されたアドレスをターゲットとする光ピックアップ1のアクセス動作を実行させる。
その後、その指示されたデータ区間のデータをホスト機器100に転送するために必要な動作制御を行う。即ち光ディスクDから読み出される信号(再生データ信号)についてデータ信号処理回路5、デコード部7における再生処理を実行させ、要求されたデータを転送する。
【0046】
また、この場合のシステムコントローラ10は、球面収差補正値についての自動調整処理を行うが、これについては後述する。
また、後に説明する本実施の形態としてのフォーカスオン動作を実現するための処理動作も行うが、これについても後述する。
【0047】
なお、この図1の例では、ホスト機器100に接続されるディスクドライブ装置として説明したが、本発明の光記録媒体駆動装置としては他の機器に接続されない形態もあり得る。その場合は、操作部や表示部が設けられたり、データ入出力のインタフェース部位の構成が、図1とは異なるものとなる。つまり、ユーザ操作に応じて記録や再生が行われるとともに、各種データの入出力のための端子部が形成されればよい。
もちろん光記録媒体駆動装置の構成例としては他にも多様に考えられ、例えば記録が可能な構成とすることもできる。すなわち、本発明のディスクドライブ装置としては、記録再生装置、及び記録専用装置の形態もあり得る。
【0048】
図3は、図1に示した光ピックアップ1が備える球面収差補正機構の一例について示している。なお、この図3においては光ピックアップ1内の光学系の構成について主に示している。
図3において、半導体レーザ(レーザダイオード)81から出力されるレーザ光は、コリメータレンズ82で平行光とされ、ビームスプリッタ83を透過して、球面収差補正レンズ群としての可動レンズ87、固定レンズ88を介して進行し、対物レンズ84から光ディスクDに照射される。なお球面収差補正レンズ群87,88についてはエキスパンダと呼ばれる。可動レンズ87を駆動することで球面収差補正が行われることから、以下、特に可動レンズ87については球面収差補正レンズ87とも呼ぶ。
【0049】
光ディスクDからの反射光は、対物レンズ84、固定レンズ88、可動レンズ87を通ってビームスプリッタ83で反射され、コリメータレンズ(集光レンズ85)を介してディテクタ86に入射される。
【0050】
このような光学系においては、対物レンズ84が二軸機構91によってフォーカス方向及びトラッキング方向に移動可能に支持されており、フォーカスサーボ、トラッキングサーボ動作が行われる。
また球面収差補正レンズ87は、レーザ光の波面をデフォーカスする機能を持つ。即ち球面収差補正レンズ87は、図示するようにして駆動信号Sdが供給されるアクチュエータ90によって光軸方向であるJ方向に移動可能とされており、この移動によって、対物レンズ84の物点を調整する。
つまり、アクチュエータ90に対して上記駆動信号Sdにより前後移動を実行させる制御を行うことで、球面収差補正を実行させることができる。
【0051】
なお、図3においては、いわゆるエキスパンダによって球面収差補正を行う場合に対応した構成を例示したが、他にも液晶パネルを用いて球面収差補正を行う構成を採ることもできる。
即ち、半導体レーザ81から対物レンズ84までの光路中において挿入した液晶パネルにおいて、レーザ光を透過させる領域と遮蔽する領域の境界を可変調整することで、レーザ光の径を可変して球面収差補正を行うものである。
この場合には、液晶パネルを駆動する液晶ドライバに対して、透過領域を可変させるように制御を行うことになる。
【0052】
また、球面収差補正機構としては、図3に示したように可動レンズ87、固定レンズ88を設けて可動レンズ87を駆動する構成とする以外にも、これら可動レンズ87、固定レンズ88は省略し、代わりにコリメータレンズ82をJ方向に駆動する構成によっても実現できる。その場合、コリメータレンズ82に対してアクチュエータ90を設け、このアクチュエータ90に対して駆動信号Sdを供給してコリメータレンズ82のJ方向への駆動制御を実行すればよい。
【0053】
また、次の図4には、図1に示したサーボ回路11の内部構成を示す。なお、図4ではサーボ回路11内における、主にフォーカス制御系の部分についてのみ抽出して示している。
図4において、図1に示したマトリクス回路4からのフォーカスエラー信号FEは、サーボ回路11内におけるA/D変換器21によりデジタルデータに変換されて、フォーカスサーボ演算部22に入力される。
フォーカスサーボ演算部22では、デジタルデータとされて入力されるフォーカスエラー信号FEに対して位相補償等のためのフィルタリングやループゲイン処理などの所定の演算を行ってフォーカスサーボ信号を生成する。
このフォーカスサーボ信号は、図示するスイッチSWにおける端子t2に供給される。
【0054】
ここで、スイッチSWは、端子t1に対して上記端子t2、端子t3、端子t4を択一的に選択可能に構成される。端子t3に対しては固定電圧23が供給され、端子t4にはHold電圧24が供給される。
また、端子t1に対してはD/A変換器25が接続され、図示するようにしてこのD/A変換器25の出力がフォーカスドライバ26を介してフォーカスドライブ信号FDとして出力されるようになっている。
【0055】
サーボ回路11では、上記スイッチSWの端子切り換え制御を行ってフォーカスオン制御、フォーカスジャンプ制御を実行する。
フォーカスオン制御については、先ずはスイッチSWにおいて端子t3を選択させ、固定電圧23を出力させることで、二軸機構91によって対物レンズ84を光ディスクDに近づく方向に駆動させることができる。そして、その後、プルイン信号PIやフォーカスエラー信号FEについて、所定閾値に基づく条件判定を行い、その結果フォーカスオンすべき状態となった場合には、端子t2に切り換え、フォーカスサーボの引き込みを行う。つまり、これによってターゲット層へのフォーカスオン制御が行われる。
【0056】
また、フォーカスジャンプ時には、先ずは端子t3に切り換えを行い、キック電圧としての固定電圧23を印加した上で、端子t4への切り換えを行いHold電圧24を印加することで、対物レンズ84をジャンプ先の記録層側へと移動させる。なお、上記Hold電圧24は、CD、DVD、DBでの記録層位置の違いからそれぞれ対物レンズ84のHold位置に対応させた値が計算され、その値に応じた電圧が出力される。
上記キック電圧の印加開始後、フォーカスエラー信号FEと所定閾値とに基づく条件判定からフォーカスサーボの引き込みがOKとされる状態となったとされた場合は、端子t3を選択してブレーキ電圧としての固定電圧23を出力させ、その後において端子t2を選択することで、ジャンプ先の記録層におけるフォーカスサーボの引き込みが行われる。これによってフォーカスジャンプ動作が行われる。
なお、本実施の形態が採用するフォーカスジャンプ動作の具体例については後述する。
【0057】
ここで、これまでで説明してきた実施の形態としてのディスクドライブ装置としては、光ディスクDとしてBDにも対応可能に構成される。
先にも述べたようにBDについては、高NA化に伴いカバー層の厚みの差に起因した球面収差が生じることから、その補正を行うことが必須となる。本実施の形態のディスクドライブ装置としても、このような球面収差補正を行うために、先の図3に示したような球面収差補正機構(固定レンズ88、可動レンズ87、アクチュエータ90)やSA補正ドライバ14を備えている。
【0058】
具体的に、球面収差の補正については、上記SA補正ドライバ14に対し球面収差補正値を設定することで行うものとなるが、このような球面収差補正値については、各記録層において基準となる初期値が予めディスクドライブ装置に対して設定されている。つまり、L1層(第1記録層:カバー厚75μm)位置で最適とされる球面収差補正値SA_L1と、L0層(第2記録層:カバー厚100μm)位置で最適とされる球面収差補正値SA_L0とが各記録層における球面収差補正値の初期値として設定されているものである。
【0059】
理想的には、各記録層にて対応する初期値を設定して球面収差補正を行うものとすれば、適正に球面収差を補正することができるということになるが、実際には、光ディスクDの個体ごとにカバー層の厚みに誤差が生じるため、光ディスクDごとに球面収差補正値を自動調整するといったことが行われている。
【0060】
このような球面収差補正値の自動調整処理としては、所定の記録層に初回にフォーカスオンすべき状態となったことに応じ、その記録層について予め設定された球面収差補正値の初期値を基準としてその値をそれぞれ異なる値に変化させたときに得られた評価値を取得し、その結果に基づき、評価値を最良としたときの上記初期値からのシフト値を決定し、そのシフト値を補正シフト値として取得するようにして行う。
例えばL0層(第2記録層)についての初回のフォーカスオン時において、一度フォーカスサーボをオンできたときに、このように初期値を基準として球面収差補正値の設定を変えながら光ピックアップ1による信号読み出しを実行させ、そのとき得られたRF信号振幅値を評価値としてその値を最良(この場合は最大)とする上記初期値からのシフト値を補正シフト値として決定する。
【0061】
このような手法が採られる場合における、具体的な自動調整処理の内容について説明しておくと、先ずシステムコントローラ10は、L0層にてフォーカスサーボをオンできたことに応じ、例えば内部のROM等に格納されるL0層についての初期値を読み出し、この初期値からそれぞれ値を変化させた球面収差補正値を順次サーボ回路11に指示してSA補正ドライバ14に設定させ、それぞれの球面収差補正値の設定状態でマトリクス回路4にて得られるRF信号の振幅値をA/D変換器15を介して取得し、この結果、RF信号振幅値を最大としたときの上記初期値からのシフト値を補正シフト値として決定する。
以降、各記録層での信号読み出し時には、その記録層についての初期値に当該補正シフト値bを加算(或いは減算)した球面収差補正値を設定する。
【0062】
このような自動調整処理が行われることで、球面収差補正値は実測したRF信号振幅値(つまり再生信号品質の評価値)に基づき最適とされる値に設定されるので、個々の光ディスクDのカバー層の厚みに誤差が生じる場合にも、最適とされる球面収差補正状態で信号読み出しを行うことができる。
【0063】
なお、ここでは評価値を最良としたときの球面収差補正値から補正シフト値bを求めるものとしたが、少なくとも評価値が所定以上良好となる球面収差補正値から補正シフト値bを求めるものとすれば、光ディスクDのカバー層の厚み誤差を補正することのできるシフト補正値bを求めることができる。
【0064】
ここで、上記のようにして本実施の形態のディスクドライブ装置としても、BDとしての光ディスクDに対応して球面収差補正を行うものとされるが、先にも述べたように球面収差補正が行われる場合、フォーカスオンを行う場合にも、安定したフォーカスサーボの引き込みが可能となるように球面収差補正値を適切とされる値に調整するということが行われている。
【0065】
従来では、フォーカスオン時にはフォーカスオンの対象となるターゲット層に合わせた球面収差補正値を設定するものとしていた。例えば、L0層にフォーカスオンする場合には、L0層についての初期値を設定した状態でフォーカスオン動作を行うものとされていた。
【0066】
しかしながら、球面収差補正値をターゲット層に合わせた値に設定していると、先に説明したようにして他の記録層についてのフォーカスエラー信号のS字を適正に検出できなくなる可能性があり、例えば第2記録層をターゲット層としてフォーカスオンを行う場合には、第1記録層でのフォーカスエラー信号振幅を充分に得ることができなくなってしまう。これによると、先の図12に示したような対物レンズを一方向のみに駆動するフォーカスオンの手法では、第1記録層についてのフォーカスエラー信号のS字を検出することができず、適正に第2記録層にフォーカスオンすることができなくなってしまう。
【0067】
このようにターゲット層に合わせた球面収差補正値を設定すると、ターゲット層より前の記録層でフォーカスエラー信号のS字を適正に検出できない可能性があることから、現状では対物レンズを光ディスクに接離する方向に往復させる手法が採られている(図13参照)。
しかし、この手法は対物レンズを往復させなければならないという点でフォーカスオンに要する時間を多く要してしまうという問題があった。
【0068】
このような問題を回避するにあたっては、第1記録層と第2記録層とでフォーカスエラー信号振幅に偏り(歪み)が生じないようにするということが挙げられる。すなわち、第1記録層と第2記録層との中間点に合わせた球面収差補正値を設定することで、何れの層においても均等にフォーカスエラー信号振幅が得られるようにするといったものである。具体的には、第1記録層(L1層)と第2記録層(L0層)とについて予め設定された初期値をそれぞれ初期値SA_L1,初期値SA_L0とした場合、「SA_L1+SA_L0/2」で求まる球面収差補正値を設定するものである。
【0069】
しかしながら、このようにして第1記録層と第2記録層との中間点に合わせた球面収差補正値を設定したとしても、実際にはフォーカスエラー信号振幅特性の充分な改善は図られないことになる。つまり、先の図14に示したように、図14(c)の中間点に合わせた球面収差補正値を設定することによっては、図14(a),(b)のL0層、L1層に合わせた場合との比較ではフォーカスエラー信号の歪み具合は低減されるものの、これを完全には改善しきれないものとなる。
このようにして中間点に合わせて球面収差補正値を設定した場合にもL0層とL1層でのフォーカスエラー信号に歪みが残るのは、光ディスクDの個体ごとのカバー厚の誤差に起因して、光ディスクDごとに最適な球面収差補正値がばらつくためである。
【0070】
このようにして、単に第1記録層と第2記録層との中間点に合わせた球面収差補正値に設定したのでは、第2記録層へのフォーカスオン時に第1記録層のS字が検出できなくなるといった事態の防止を完全に図ることができないことになる。第1記録層のフォーカスエラー信号のS字が検出できないのであれば、先の図13のような対物レンズを往復させる手法を採らざるを得ず、結果として第2記録層へのフォーカスオンに要する時間の短縮化が図られなくなってしまう。
【0071】
そこで、上記のような問題に鑑み、本実施の形態では、第2記録層(L0層)をターゲット層としたフォーカスオン時において、L0層とL1層との中間点に合わせた球面収差補正値を基準とした上で、さらにこの中間点の球面収差補正値を所要の値だけシフトした値を設定した状態でフォーカスオン動作を実行するものとしている。
具体的には、中間点の球面収差補正値(SA_L1+SA_L0/2)を、先の球面収差補正値の自動調整時に求められた補正シフト値bに基づきシフトさせた値をL0層へのフォーカスオン時の球面収差補正値として設定するものである。
【0072】
図5は、このような本実施の形態としてのフォーカスオン動作について説明するための図である。なお、図5では、先の図3に示した球面収差補正レンズ87の可動範囲(図中一点鎖線で示すSAレンズ可動範囲)と、L1層についての球面収差補正値(初期値SA_L1)、L0層についての球面収差補正値(初期値SA_L0)、中間点についての球面収差補正値(SA_L1+SA_L0/2)との関係を模式的に示している。
【0073】
本実施の形態では、SA_L1+SA_L0/2による中間点の球面収差補正値に対し、先の球面収差補正値の自動調整によって求まった補正シフト値bを加算した値を設定するものとしている。すなわち、L0層をターゲット層とするフォーカスオン動作時に設定されるべき球面収差補正値(以下、球面収差補正値SA_FOと呼ぶ)について、SA_FO=SA_L1+SA_L0/2+bを設定するものである。
そして、この球面収差補正値SA_FOの設定状態でL0層をターゲット層としたフォーカスオン動作を実行するものである。
【0074】
図6は、このような本実施の形態としてのフォーカスオン動作を実現するために行われるべき処理動作を示したフローチャートである。なお、この図に示す処理動作は図1に示したシステムコントローラ10が例えば内蔵するROM等に格納されるプログラムに従って実行するものである。
また、この図に示す処理動作を実行するのに先立っては、先に説明したような球面収差補正値の自動調整処理によって既に補正シフト値bが求まっている状態にあることを前提とする。
【0075】
先ず、ステップS101では、L0をターゲットとしたフォーカスONコマンドを待機する。すなわち、フォーカスオンにあたってはホスト機器100からのフォーカスONコマンドによる指示が為されるので、このフォーカスONコマンドとして、L0層をターゲット層とするコマンドを待機するようにされる。
【0076】
L0層をターゲット層とするフォーカスONコマンドがあった場合、ステップS102においてSA_FO=SA_L1+SA_L0/2+bを計算する。つまり、L1層とL0層について予め設定されている初期値SA_L1、SA_L0と、自動調整処理によって既に求められている補正シフト値bとを用いて上記の計算を行う。
【0077】
続くステップS103では、SA_FOの設定指示処理として、算出した球面収差補正値SA_FOをサーボ回路11に指示し、当該球面収差補正値SA_FOをSA補正ドライバ14に設定させる。これにより、球面収差補正レンズ87が当該球面収差補正値SA_FOに応じた位置に駆動される。
【0078】
さらに、次のステップS104では、フォーカスON実行制御を行う。すなわち、サーボ回路11に対する指示を行ってL0層をターゲット層としたフォーカスオン動作を実行させる。
【0079】
続くステップS105では、フォーカスONの完了待機処理として、サーボ回路11からのフォーカスオン動作の完了通知を待機し、フォーカスオンが完了したとされた場合はステップS106において、球面収差補正値SA_L0+bの設定指示を行う。
このステップS106の処理として、球面収差補正値SA_L0+bの設定指示がサーボ回路11に対して行われることで、L0層へのフォーカスオン完了後は、L0層にとって最適とされる球面収差補正値を設定することができ、最適な球面収差補正値の設定状態でL0層における信号読み出し動作を実行させることができる。
【0080】
上記のようにして本実施の形態のフォーカスオン動作によれば、中間点に合わせた球面収差補正値を、光ディスクD個々のカバー厚誤差を吸収するための補正シフト値bに基づきシフトさせた球面収差補正値の設定状態でL0層へのフォーカスオン動作を実行することができ、これによって光ディスクD個々のカバー厚誤差が生じる場合にも、L1層でフォーカスエラー信号FEのS字が検出されなくなってしまうといった事態の防止を図ることができる。すなわち、この結果として先の図13に示したような対物レンズを往復させる従来手法を採る必要がなくなり、フォーカスオン動作の高速化が図られる。
【0081】
ところで、上記により説明したような実施の形態のフォーカスオン動作としては、球面収差補正値をL1層とL0層との中間点を基準とした値に設定するという性質上、各記録層に合わせた値を設定する場合と比較すれば、各記録層でのフォーカスエラー信号FEの振幅値がわずかであっても低下する傾向にはなる。
ここで、このようなフォーカスエラー信号FEの振幅値低下の面でみると、特に本実施の形態の場合のように、光ピックアップ1として例えば3波長など複数の波長のレーザ光を共通の対物レンズ84を介して照射する複数波長単眼式のピックアップが採用される場合には、その構成上、フォーカスエラー信号FEの振幅値が低下する傾向となってしまうことが明らかとなった。
【0082】
フォーカスエラー信号FEの振幅値の低下は、それが微少ではあってもフォーカスオン動作の安定化にとって不利に作用するものと考えられる。
上記もしているように、補正シフト値bに基づき中間点の球面収差補正値をシフトさせた図5の手法によれば、充分な安定性をもってL0層へのフォーカスオン動作を行うことができるが、このような複数波長単眼式の光ピックアップとした場合の振幅低下を考慮し、さらなるフォーカスオン動作の安定化を図るとする場合には、次の図7に示すようなフォーカスオン動作とすることもできる。
【0083】
図7は、上記のようなフォーカスエラー信号FEの振幅低下を考慮した場合のフォーカスオン動作について説明するための図として、先の図5と同様に球面収差補正レンズ87の可動範囲(図中一点鎖線で示すSAレンズ可動範囲)と、L1層についての球面収差補正値(初期値SA_L1)、L0層についての球面収差補正値(初期値SA_L0)、中間点についての球面収差補正値(SA_L1+SA_L0/2)との関係を模式的に示している。
【0084】
図示するようにしてこの場合は、L0層をターゲット層とするフォーカスオン動作時に設定されるべき球面収差補正値SA_FOとして、中間点の球面収差補正値(SA_L1+SA_L0/2)を、補正シフト値bと、さらに予め定められた所定のオフセット値Δとに基づきシフトさせた値を設定するものとしている。
具体的には、球面収差補正値SA_FO=SA_L1+SA_L0/2+b+Δを設定する。
ここで、オフセット値Δとしては、上述したような複数波長単眼式の光ピックアップ1を採用したことに伴うフォーカスエラー信号FEの振幅値の低下を改善することのできる値を、例えば実際に球面収差補正値の設定をそれぞれ変化させたときのフォーカスエラー信号FEの振幅値を測定した結果に基づき決定しておき、それを工場出荷時などの所定の段階で個々のディスクドライブ装置に対して設定しておく。
【0085】
中間点の球面収差補正値を、このようなオフセット値Δに基づきシフトさせた値とすることで、複数波長単眼式の光ピックアップ1が採用される場合におけるフォーカスエラー信号FEの振幅値低下を改善することができ、L0層へのフォーカスオン動作をより安定的に行うことができる。
【0086】
図8は、図7に示したフォーカスオン動作を実現するための処理動作を示したフローチャートである。なお、この図に示す処理動作としてもシステムコントローラ10が例えば内蔵するROM等に格納されるプログラムに従って実行するものであり、また、この場合も図示する処理動作を実行するのに先立っては、球面収差補正値の自動調整処理によって既に補正シフト値bが求まっている状態にあることを前提とする。
【0087】
この場合のフォーカスオン動作を実現するにあたっては、先ずはステップS201にて先の図5のステップS101と同様にL0層をターゲット層としたフォーカスON指示を待機し、このフォーカスON指示があった場合には、ステップS202において、この場合のシステムコントローラ10に予め設定されるオフセット値Δを用いて、SA_FO=SA_L1+SA_L0/2+b+Δを計算する。
以降のステップS203〜S206については、先の図5に示したステップS103〜S106と同様の処理を実行する。
【0088】
図9は、図7に示した手法の有効性を実証するための図として、図5の手法による球面収差補正値SA_FOが設定された場合(図9(a))と、図7の手法による球面収差補正値SA_FOが設定された場合(図9(b))とでそれぞれ得られるプルイン信号PIの波形とフォーカスエラー信号FEの波形とを対比して示している。
なお、これら図9(a)(b)の各図においては、縦軸の目盛が振幅値のレベルを表している。また、中心の目盛を境に右側の波形は対物レンズ84を光ディスクDに近づく方向に駆動した場合の波形を、また左側は遠ざける方向に駆動した場合の波形を示している。
【0089】
これら図9(a)(b)について、特に図中の丸印で囲うように図7の手法による球面収差補正値SA_FOが設定された場合の方が、図5の手法による球面収差補正値SA_FOが設定された場合よりも、L0層とL1層の双方でフォーカスエラー信号FEの振幅値のレベルが上昇していることがわかる。
この点からも、図7に示した手法が採られる場合にはより安定してL0層へのフォーカスオン動作を実行できることが理解できる。
【0090】
なお、このようにして所定のオフセット値Δに基づき球面収差補正値をシフトさせた場合の方がフォーカスエラー信号FEの振幅値を上昇させることができるのは、RF信号振幅値としての、再生信号品質についての評価値を最良値とするとして求められた補正シフト値bが、必ずしもサーボの面でも最も有利にはたらくという保証がないことに依る。
つまり、図7に示した手法としては、オフセット値Δの加算によってサーボにとって良い方向に球面収差補正値をシフトさせることでフォーカスエラー信号FEの振幅値を上昇させることができ、これによってより安定したフォーカスオン動作を実現することができるというものである。
【0091】
なお、上記説明では、オフセット値Δはフォーカスエラー信号FEの振幅低下を抑制するような値を設定するものとしたが、このオフセット値Δの設定如何では、フォーカスエラー信号FEのS字の上下波形レベルの均等化を図ることも可能となる。すなわち、球面収差補正が最適でない記録層でのS字は、光ピックアップ1の製造バラツキなどによりフォトディテクタ上のスポット形状の最適化が図られない場合に、その上下の波形レベルが均等とはならないことがあるが、その場合の対策として、オフセット値Δの加算によって球面収差補正値を所定方向に所定量だけシフトさせるものとすれば、S字の上下波形レベルの均等化を図ることができる。
【0092】
ここで、これまでの説明では、フォーカスオン動作時における球面収差補正値SA_FOの設定について主に説明してきたが、同様の考えに基づきフォーカスジャンプ動作時の球面収差補正値を設定することで、フォーカスジャンプ動作についても安定化を図ることができる。
以下、この点について説明する。
【0093】
先ず、図10には、従来より採用されているフォーカスジャンプ動作の具体例を示す。この図10では、L0層をターゲット層としたフォーカスジャンプ動作をフォーカスエラー信号FE、フォーカスドライブ信号FD、及びフォーカスエラー信号FEについて設定される各種閾値とにより模式的に示している。
【0094】
先ず、L1層からL0層へのフォーカスジャンプ動作にあたっては、先の図4に示したサーボ回路11内において、スイッチSWの端子選択状態を端子t2→端子t3に切り換え、フォーカスサーボループをオフとすると共に、固定電圧23としてキック電圧を出力させる。
これに応じ対物レンズ84の光ディスクDに近づく方向への駆動が開始され、フォーカスエラー信号FEとしては図のようにL1層におけるS字の片方の波形(振幅値が低下する方向の波形)が得られることになる。
【0095】
このとき、サーボ回路11においては、このようにしてキック電圧の印加に応じて得られるフォーカスエラー信号FEの波形について、予め図のような閾値thFJ-1とthFJ-2が設定されており、フォーカスエラー信号FEの振幅値が閾値thFJ-1を下回った後、閾値thFJ-2を上回ったことを条件として、キック電圧の印加状態からHold電圧の印加状態に移行するようにされる。すなわち、この条件成立に応じ、スイッチSWにおいて端子t3→端子t4への切り換えを行い、Hold電圧24を出力させる。
【0096】
Hold電圧24が出力される間、対物レンズ84の光ディスクDに近づく方向への移動状態が継続されるので、所定時間後にフォーカスエラー信号FEにはL0層でのS字の片方の波形(振幅値が上昇する方の波形)が得られる。サーボ回路11においては、このL0層についての波形についても図のような閾値thFJ-3、閾値thFJ-4が設定されており、フォーカスエラー信号FEの振幅値が上記閾値thFJ-3を上回ったことに応じ、スイッチSWの端子選択状態を端子t4→端子t3に切り換え、固定電圧23の極性を反転させたブレーキ電圧の出力を開始させる。そして、フォーカスエラー信号FEの振幅値が上記閾値thFJ-4を下回ったことに応じ、スイッチSWの端子選択状態を端子t3→端子t2に切り換え、これによってL0層におけるフォーカスサーボの引き込みを行う。すなわち、これによってL1層からL0層へのフォーカスジャンプ動作が行われたことになる。
【0097】
なお、ここではL1層→L0層のフォーカスジャンプ動作について例示したが、L0層→L1層のフォーカスジャンプ動作についても、フォーカスエラー信号FEと上記各種閾値thとに基づき同様に行うことができる。
【0098】
ここで、このようなフォーカスジャンプ動作についても、従来ではターゲット層においてフォーカスサーボの引き込みが安定的に行われるように、ターゲット層に合わせた球面収差補正値を設定した上で行うものとされていた。
しかし、このように球面収差補正値をターゲット層に合わせた状態でフォーカスジャンプ動作を開始すると、例えば上記の例のようにL0層にフォーカスジャンプを行う場合は、ジャンプ動作に入る前のL1層でのフォーカスサーボが非常に不安定となってしまい、最悪の場合サーボが外れてしまう可能性がある。
また、ターゲット層に合わせた球面収差補正値を設定していると、ジャンプ前の層でのフォーカスエラー信号FEの振幅値が低下することに伴って閾値thFJ-1,thFJ-2による条件が成立しない可能性があり、これによってジャンプ動作を行うことができなくなってしまう虞があった。
このようにして球面収差補正値をターゲット層に合わせていた従来では、フォーカスジャンプ動作の安定化が図られないことになる。
【0099】
この場合としても、球面収差補正値をL1層とL0層の中間点に合わせた値に設定して、フォーカスエラー信号FEの歪みを解消することがその解決策として有効であると考えられるが、先の図14に示した特性を考慮すると、この場合としても中間点の球面収差補正値(SA_L1+SA_L0/2)に対し、球面収差補正値の自動調整によって求められた補正シフト値bを加算した値を設定するのが好ましい。
そこで、本実施の形態では、フォーカスジャンプを行うにあたって設定されるべき球面収差補正値SA_FJとして、SA_FJ=SA_L1+SA_L0/2+bを計算し、これを設定した状態でフォーカスジャンプ動作を実行するものとしている。
【0100】
図11のフローチャートは、このような本実施の形態としてのフォーカスジャンプ動作を実現するための処理動作について示している。この図11に示す処理動作としてもシステムコントローラ10が例えば内蔵するROM等に格納されるプログラムに従って実行するものであり、また、この図に示す処理動作を実行するのに先立っては、先に説明したような球面収差補正値の自動調整処理によって既に補正シフト値bが求まっている状態にあることを前提とする。
【0101】
先ず、ステップS301では、フォーカスジャンプコマンドの待機処理として、ホスト機器100からのフォーカスジャンプ指示を待機する。
そして、このようなフォーカスジャンプ指示があった場合は、ステップS302において、球面収差補正値SA_FJ=SA_L1+SA_L0/2+bを計算する。
以下、ステップS303では球面収差補正値SA_FJの設定指示として、算出した球面収差補正値SA_FJをサーボ回路11に指示することで、SA補正ドライバ14に当該球面収差補正値SA_FJを設定させ、続くステップS304ではフォーカスジャンプ実行制御として、サーボ回路11に先の図10にて説明したフォーカスジャンプ動作を実行させる。
【0102】
次のステップS305ではフォーカスジャンプ完了待機処理として、サーボ回路11からのフォーカスジャンプ動作の完了通知を待機し、当該完了通知があった場合にはステップS306にてターゲット層の初期値+bの設定指示を行う。すなわち、フォーカスジャンプ指示がL0層をターゲット層とした指示であった場合は、L0層の初期値SA_L0に補正シフト値bを加算した値をサーボ回路11に指示し、SA補正ドライバ14にSA_L0+bを設定させる。また、フォーカスジャンプ指示がL1層をターゲット層とした指示であった場合は、初期値SA_L1に補正シフト値bを加算したSA_L1+bによる値をサーボ回路11に指示し、これをSA補正ドライバ14に設定させる。
これにより、ターゲット層へのフォーカスジャンプ完了後において、その層にとって最適とされる球面収差補正値を設定することができ、最適な球面収差補正値の設定状態で信号読み出し動作を行うことができる。
【0103】
上記のような本実施の形態としてのフォーカスジャンプ動作とすることで、光ディスクD個々のカバー厚誤差が生じる場合においても、各層へのフォーカスジャンプ動作を安定して行うことができる。
【0104】
なお、このようなフォーカスジャンプ動作時においても、先の図7に示した手法と同様にさらにオフセット値Δにも基づく球面収差補正値のシフトを行うことで、光ディスクD個々のカバー厚誤差に対する安定性と共に、複数波長単眼式の光ピックアップ1を採用する場合のフォーカスエラー信号FEの振幅低下に対しても安定性を確保することができる。
【0105】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明としてはこれまでに説明した具体例に限定されるべきものではない。
例えば、これまでの説明では、記録層を2層有する場合において、レーザ光の入射側に最も近い第1記録層以外の第2記録層をターゲット層としたフォーカスオン動作(及びフォーカスジャンプ動作)を行う場合について説明したが、本発明としては、記録層が3層以上とされる場合において、上記第1記録層以外の任意の記録層をターゲット層としたフォーカスオン動作を行う場合にも適用できる。
具体的に、記録層が3層以上とされる場合としても、第1記録層とターゲット層との中間点に合わせた球面収差補正値を、所要の値だけシフトさせた球面収差補正値を設定した状態でターゲット層へのフォーカスサーボオン動作を行うものとすれば、実施の形態で例示したように 個々のカバー厚ムラや複数波長単眼式の光ピックアップが採用される場合のフォーカスエラー信号振幅の低下に対応した適正なフォーカスオン動作を行うことができる。
【0106】
また、フォーカスジャンプ動作についても同様に、3層以上とされる場合は、第1記録層とターゲット層との中間点に合わせた球面収差補正値を所要の値だけシフトさせた値を設定するものとすれば先に説明した2層の場合と同様の効果を得ることができる。
【0107】
また、これまでの説明では、球面収差補正レンズ87を用いた球面収差補正機構とする場合を例示したが、例えば液晶パネルを用いた球面収差補正機構とするなど、他の例も考えられる。
液晶パネルを用いた球面収差補正機構とする場合には、液晶ドライバに対し、液晶パネルの所要のセルに電圧印加を指示する駆動信号Sdを供給するように構成すればよい。このとき、補正シフト値bやオフセット値Δは遮蔽率で換算した値となり、これら補正シフト値bやオフセット値Δの加算(或いは減算)に応じて遮蔽率が変化するように電圧を印加すべきセルの個数が制御されることになる。
【0108】
また、これまでの説明では、補正シフト値の算出にあたり、RF信号の振幅値を評価値とする場合を例示し、RF信号を生成するマトリクス回路4とA/D変換器15とで評価値生成手段が実現される場合を例示したが、このように補正シフト値を求める際の評価値としては、ジッタ(Jitter)値を用いることもできる。或いは、RF信号の2値化処理にPRML(Partial Response Maximum Likelihood)の手法が採用される場合には、例えば差メトリックについての評価値(理想値からの誤差や偏差を表した値)を用いることもできる。例えばこれらの場合には、データ信号処理部5内にそれらの評価値を生成する評価器を設けるものすればよい。
なお、何れにせよ補正シフト値を求めるにあたり用いる評価値としては、記録媒体からの反射光情報に基づき生成されて再生信号品質の評価指標となる値であればよく、特にこれまでで例示したものに限定されるべきものではない。
【0109】
また、これまでの説明では、本発明がディスク状の光記録媒体に対応する場合を例示したが、本発明としては、光記録媒体(光の照射により信号の記録再生が行われる記録媒体)に対する記録及び/又は再生を行う光記録媒体駆動装置であれば広く適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0110】
【図1】本発明の実施の形態としての光記録媒体駆動装置の内部構成について示したブロック図である。
【図2】2層BDとしての光ディスクの断面構造について説明するための断面図である。
【図3】球面収差補正機構を備えた光ピックアップの構成例について示した図である。
【図4】実施の形態としての光記録媒体駆動装置が備えるサーボ回路の内部構成として、主にフォーカス制御系に係る構成部分を抽出して示したブロック図である。
【図5】実施の形態としてのフォーカスオン動作について説明するための図である。
【図6】実施の形態としてのフォーカスオン動作を実現するために行われるべき処理動作について示したフローチャートである。
【図7】実施の形態の他のフォーカスオン動作について説明するための図である。
【図8】図7に示すフォーカスオン動作を実現するために行われるべき処理動作について示したフローチャートである。
【図9】図7に示すフォーカスオン動作の有効性を実証するための図として、図5の動作とした場合と図7の動作とした場合のプルイン信号、フォーカスエラー信号の波形を対比して示した図である。
【図10】フォーカスジャンプ動作について説明するための図である。
【図11】実施の形態としてのフォーカスジャンプ動作を実現するために行われるべき処理動作について示したフローチャートである。
【図12】従来のフォーカスオン動作について説明するための図である。
【図13】フォーカスエラー信号に歪みが生じる場合に対応して行われる従来手法としてのフォーカスオン動作について説明するための図である。
【図14】L0層(第2記録層)、L1層(第1記録層)、それらの中間点、のそれぞれに合わせた球面収差補正値を設定した場合のプルイン信号(PI)、フォーカスエラー信号(FE)の波形を示した図である。
【符号の説明】
【0111】
1 光ピックアップ、2 スピンドルモーター、3 スレッド機構、4 マトリクス回路、5 データ信号処理回路、6 ウォブル信号処理回路、7 デコード部、8 ホストインタフェース、9 レーザードライバ、10 システムコントローラ、11 サーボ回路、12 スピンドルサーボ回路、13 スピンドルドライバ、14 SA補正ドライバ、15 A/D変換器、100 ホスト機器、D 光ディスク、22 フォーカスサーボ演算部、23 固定電圧、24 Hold電圧、SW スイッチ、26 フォーカスドライバ、84 対物レンズ、87 球面収差補正レンズ、91 二軸機構
【技術分野】
【0001】
本発明は、光の照射により信号の記録再生が行われる光記録媒体について記録又は再生を行う光記録媒体駆動装置と、上記光記録媒体に形成される所定の記録層にフォーカスオンする際のフォーカスオン方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
デジタルデータを記録・再生するための技術として、例えばCD(Compact Disc),MD(Mini-Disc),DVD(Digital Versatile Disc)などの、光ディスク記録媒体(光磁気ディスクを含む)を記録メディアに用いたデータ記録技術がある。光ディスク記録媒体(単に光ディスクとも言う)は、ピットやマークによって信号が記録される円盤にレーザ光を照射し、その反射光の変化で信号が読み取られる記録メディアの総称である。
【0003】
このような光ディスク記録媒体では、記録容量の拡大などを目的として、記録層を多層化するということが行われている。現状においても、例えばDVDなどでは記録層を2層有するディスクが広く普及している。
【0004】
記録層が多層とされる場合、それぞれの記録層に選択的にフォーカスオンして各記録層での信号読み出しを行うようにされる。
図12は、このような多層ディスクにおけるフォーカスオンの手法について例示している。この図12では、一例として、レーザ光が入射する側から順に第1記録層、第2記録層の2つの記録層が形成された2層ディスクについて、第2記録層にフォーカスオンする際の動作例について示している。
なお図12では、フォーカスオン時の全光量信号(例えば4分割ディテクタの場合にはプルイン(PI)信号)、FOK信号、フォーカスエラー信号、フォーカスドライブ信号の各波形と、各種閾値thとによりフォーカスオン動作を模式的に示している。
【0005】
先ず、フォーカスオンを行うにあたっては、図示する「on point」に至るまでの波形により示されるようなフォーカスドライブ信号により、対物レンズを光ディスクに近づく方向に駆動するようにされる。
そして、このように対物レンズが光ディスク方向に駆動されるときの全光量信号を所定の閾値th-FOKでスライスしたFOK信号を生成し、このKOF信号がHとなる期間内で、フォーカスエラー信号のS字を検出する。具体的には、フォーカスエラー信号が図中の閾値th−1を超えた後にさらに閾値th−2を下回ることを条件としてS字の検出を行う。
この場合は、奥側に位置する第2記録層にフォーカスオンするので、2個目のS字が検出された時点でフォーカスオンを行う。つまりは、図示するようにしてFOK信号が再びHとなる期間内で、フォーカスエラー信号が閾値th−1を超えた後に閾値th−2を下回った時点でフォーカスオンを行うものである。
【0006】
ところで、光ディスクとしては、先に例示したCD、DVDなどの他にも 近年ではBD(Blu-ray Disc:登録商標)などの高密度光ディスクが開発され、著しい大容量化が図られている。
このBDについては、ディスク厚み方向に0.1mm程度のカバー層を有するディスク構造において、波長405nmのレーザ(いわゆる青色レーザ)とNA(Numerical Aperture)が0.85の対物レンズの組み合わせという条件下で、データを記録又は再生するものとされている。
【0007】
ここで、上記BDのような高密度ディスクの場合、記録層より上層のカバー層の厚みの違いによって球面収差が生じることが知られている。特に、記録層を多層有する光ディスクでは、各層においてカバー層の厚さが異なることになるので、球面収差補正を行うことが必須とされる。
【0008】
このようにして球面収差補正が必須とされる場合においては、上述したフォーカスオン時においても何らかの球面収差補正値を設定しておく必要がある。
従来、フォーカスオン時に設定されるべき球面収差補正値については、フォーカスオンを行う対象となるターゲット層に合わせた球面収差補正値を設定するものとされていた。
【0009】
しかしながら、球面収差補正値をターゲット層に合わせた値に設定していると、他の記録層についてのフォーカスエラー信号のS字を適正に検出できないことがある。例えば、第2記録層をターゲット層としてフォーカスオンを行う場合には、第1記録層でのフォーカスエラー信号振幅を充分に得ることができなくなってしまうことになる。
【0010】
このようにして第2記録層をターゲット層とした場合に第1記録層でのフォーカスエラー信号振幅が充分に得られなくなってしまうと、先の図12に示したようなフォーカスオンの手法では、ターゲット層への適正なフォーカスオンができなくなってしまう。つまり、第1記録層についてのフォーカスエラー信号のS字を検出することができなければ、第2記録層についてのS字が第1記録層についてのS字と誤認されてしまい、適正に第2記録層にフォーカスオンすることができなくなってしまうものである。
【0011】
なお、確認のために述べておくと、第1記録層をターゲット層としたフォーカスオンを行う場合には、フォーカスエラー信号の歪みは問題にはならない。つまり、第1記録層にフォーカスオンする場合は、対物レンズを光ディスクに近づく方向に駆動させたときに始めに得られる記録層反射を捉えればよいので、この場合は第2記録層でのフォーカスエラー信号振幅は問題とはならず、第1記録層でのフォーカスエラー信号振幅のみが適正に得られていれば適正にフォーカスオンを行うことができる。
【0012】
上記のようにして球面収差補正が必須とされる場合は、第2記録層をターゲット層としたフォーカスオン時に第1記録層のS字を検出できずフォーカスオン動作を適正に行うことができない可能性があるので、これを改善するために、現状では次の図13に示すような手法によるフォーカスオン動作を行うようにされている。
【0013】
図13では、第2記録層をターゲット層とした場合のフォーカスオン動作が行われる場合の、全光量信号(PI信号)、FOK信号、フォーカスエラー信号、フォーカスドライブ信号の各波形を示している。なお、この図13では第1記録層を「L1層」、第2記録層を「L0層」として表している。
【0014】
先ず、この場合は、第2記録層へのフォーカスオンにあたり球面収差補正値を第2記録層に合わせた値に設定していることに伴い、図示するようにして第1記録層(L1層)でのフォーカスエラー信号振幅が、第2記録層(L0層)でのフォーカスエラー信号振幅に対して小さくなるようにしてフォーカスエラー信号に歪みが生じている。
これに対し全光量信号は、L1層においても充分な信号振幅が得られており、球面収差による影響が非常に少ないことがわかる。
【0015】
この図13に示す手法としても、図中のフォーカスドライブ信号として示されるように、先ずは対物レンズを光ディスクに近づく方向に駆動するようにされる。
この際、全光量信号について図示する閾値thP-H、閾値thP-Lの2つの閾値を設け、全光量信号が閾値thP-Hを上回ったらH、その後閾値thP-Lを下回ったらLとなるようにしてFOK信号を生成するようにされる。
【0016】
そして、この手法では、FOK信号がLとなった時点からタイムカウントを開始し、その時点から所定時間X以内にフォーカスエラー信号のS字が検出されるか否かを判別する。この場合のS字の検出は、フォーカスエラー信号が図中に示すような閾値thF-Hを上回ったことを条件として行うようにされる。
所定時間X以内にS字が検出された場合には、その時点から再度タイムカウントをやり直し、再度所定時間X以内にS字が検出されるか否かを判別する。そして、所定時間X以内にS字が検出されなかった場合には、対物レンズをこれまでと逆方向(つまり光ディスクから離れる方向)に駆動し、1つ目のS字が検出されたらそのタイミングでフォーカスオンを行う。この1つ目のS字については、FOK信号がHの期間内で、フォーカスエラー信号が図中閾値thF-ZLを下回った後にさらに閾値thF-Lを上回ったことを条件として検出する。
【0017】
第2記録層以降は記録層がないので、上記のようにしてS字の検出後における所定時間X以内に再度S字が検出されなければ、最後に検出したS字が第2記録層のS字であるということがわかる。従ってその場合に、上記のようにして対物レンズを逆方向に駆動して1つの目のS字でフォーカスオンを行えば、ターゲット層である第2記録層に適正にフォーカスオンすることができるものである。
【0018】
但し、図13に示した手法は、第2記録層へのフォーカスオンの際に、必ず対物レンズを光ディスクに接離する方向に往復させなければならないことになる。先の図12に示した従来の一般的な手法では、第2記録層にフォーカスオンするにあたっても対物レンズを1方向にのみ駆動すればよかったのと比較すると、この図13の手法は、その分フォーカスオンに要する時間を多く要するものとなってしまうものとなる。
【0019】
なお、関連する従来技術については下記特許文献を挙げることができる。
【特許文献1】特開2006−155792号公報
【特許文献2】特開2003−22545号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
ここで、そもそも図13に示すようなフォーカスオン手法を採るのは、ターゲット層でのフォーカスサーボの引き込み安定化を意図して、第2記録層に合わせた球面収差補正値を設定していることで、第1記録層で充分なフォーカスエラー信号振幅が得られなくなってしまうからである。
そこで、第1記録層にてフォーカスエラー信号振幅が増すように、第1記録層と第2記録層との中間点に合わせた球面収差補正値を設定した状態で第2記録層へのフォーカスオンを実行することが考えられる。すなわち、このように中間点に設定することで、第1記録層と第2記録層のフォーカスエラー信号の歪みの防止を図り、第2記録層へのフォーカスオン時に第1記録層のS字が検出できないといった事態の防止を図ろうというものである。
【0021】
しかしながら、実際において、このように第1記録層と第2記録層との中間点に合わせた球面収差補正値を設定したとしても、フォーカスエラー信号振幅特性の充分な改善は図られないことが明らかとなった。
この点について、本出願人が実験を行った結果を図14に示す。
図14において、図14(a)はL0層(第2記録層)に合わせた球面収差補正値を設定した場合、図14(b)はL1層(第1記録層)に合わせた球面収差補正値を設定した場合、図14(c)はL0層とL1層の中間点に合わせた球面収差補正値を設定した場合のプルイン信号(PI)、フォーカスエラー信号(FE)の波形を示している。なお各図において、図中の縦破線より左側は対物レンズを光ディスクに近づく方向に駆動した際の波形を示し、同縦破線より右側では光ディスクから離れる方向に駆動した際の波形を示している。
【0022】
図示するようにして、図14(c)に示す中間点に合わせた球面収差補正値を設定した場合は、図14(a),(b)に示す場合との比較ではフォーカスエラー信号の歪み具合は低減されるものの、依然としてこれを改善しきれていないことがわかる。
【0023】
このようにして中間点に合わせて球面収差補正値を設定した場合にもフォーカスエラー信号に歪みが残るのは、光ディスクの個体ごとのカバー厚の誤差に起因して、光ディスクごとに最適な球面収差補正値がばらつくためである。
このため、単に第1記録層と第2記録層との中間点に合わせた球面収差補正値に設定したのでは、装填される光ディスクごとにフォーカスオン動作時に得られるフォーカスエラー信号の振幅特性がばらついてしまい、結果として第2記録層へのフォーカスオン時に第1記録層のS字が検出できなくなるといった事態の防止を完全に図ることができないものとなる。
【0024】
第1記録層のフォーカスエラー信号のS字が検出できないのであれば、上述した図13のような対物レンズを往復させる手法を採らざるを得ず、結果として第2記録層へのフォーカスオンに要する時間の短縮化は図られなくなってしまう。
【課題を解決するための手段】
【0025】
そこで、本発明では以上のような問題点に鑑み、光記録媒体駆動装置として以下のように構成することとした。
つまり、本発明の光記録媒体駆動装置は、複数の記録層を有する光記録媒体について記録又は再生を行う光記録媒体駆動装置であって、先ず、少なくとも信号読出のために上記光記録媒体に対するレーザ光照射及び反射光検出を行うとともに、少なくともレーザ光のフォーカス機構及び球面収差補正機構を有するヘッド手段を備える。
また、上記ヘッド手段で得られる反射光情報に基づき上記フォーカス機構を駆動して、上記光記録媒体の上記記録層へのフォーカスオン制御を実行するフォーカス制御手段と、球面収差補正値に基づいて上記球面収差補正機構を駆動して球面収差補正を実行する球面収差補正手段とを備える。
さらに、上記光記録媒体における上記レーザ光の入射する側に最も近い第1記録層以外の記録層をターゲット層としたフォーカスオン動作を行うべき状態となったことに応じ、上記ターゲット層と上記第1記録層との中間点に合わせた球面収差補正値を所要の値だけシフトさせた球面収差補正値が上記球面収差補正手段に設定されるように制御すると共に、上記所要の値だけシフトさせた球面収差補正値の設定状態で上記フォーカス制御手段による上記ターゲット層へのフォーカスオン制御が実行されるように制御する制御手段を備えるものである。
【0026】
このようにしてターゲット層と上記第1記録層との中間点に合わせた球面収差補正値を所要の値だけシフトさせた球面収差補正値の設定状態でターゲット層へのフォーカスオン制御が実行されれば、中間点に合わせた球面収差補正値に対し、何らかの補正値を与えた球面収差補正値を設定した状態でターゲット層へのフォーカスオンを行うことができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、第1記録層とターゲット層との中間点の球面収差補正値に何らかの補正値を与えた球面収差補正値の設定状態で上記ターゲット層へのフォーカスオン動作を実行することができるので、例えば記録媒体個々のカバー厚誤差に対応するための補正値を与えた球面収差補正値の設定状態でフォーカスオン動作を行うなどといったことが可能となる。すなわち、これによって記録媒体個々のカバー厚誤差が生じる場合においても、ターゲット層以外でフォーカスエラー信号のS字が検出されなくなってしまうといった事態の防止を図ることができ、この結果として従来の対物レンズを往復させる手法を採る必要がなくなり、フォーカスオン動作の高速化が図られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、発明を実施するための最良の形態(以下実施の形態とする)について説明していく。
図1は、本発明の実施の形態としてのディスクドライブ装置の内部構成について示すブロック図である。
このディスクドライブ装置としては、図示する光ディスクDとして、CD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disc)、BD(Blu-ray Disc:登録商標)のそれぞれに対応可能に構成される。また、これに伴い、図中光ピックアップ1としては、波長λ=780nm、650nm、405nmのそれぞれ波長の異なるレーザ光を共通の対物レンズを用いて照射するように構成された、いわゆる3波長単眼式のピックアップが採用されている。
また、このディスクドライブ装置は、データ再生のみが可能な再生専用装置とされる。この場合、ピット・ランドの組み合わせでデータが記憶される再生専用のROMディスクとしての光ディスクDのみでなく、記録可能型として、ライトワンス型やリライタブル型の光ディスクDについての再生も可能とされる。
【0029】
また、本実施の形態のディスクドライブ装置としては、記録層を多層有する多層ディスクにも対応可能に構成される。
ここで一例として、次の図2には2つの記録層を有する2層BDによる光ディスクDの断面構造を示す。
2層BDの場合、図示するようにしてレーザ光が入射する側から順にカバー層→L1層→L0層→基板の順に各層が形成される。この場合、レーザ光の入射側に最も近いL1層(第1記録層とも呼ぶ)は、カバー層の表面からおよそ75μmとなる位置に形成される。また、奥側のL0層(第2記録層とも呼ぶ)は、カバー層の表面からおよそ100μmの位置に形成される。
図1に示すディスクドライブ装置では、このようにして光ディスクDに形成されるL1層、L0層に対して選択的にフォーカスオンすることが可能に構成されることで、各層に記録される情報の読み出しが可能とされている。
【0030】
図1において、光ディスクDは、ディスクドライブ装置に装填されると図示しないターンテーブルに積載され、記録/再生動作時においてスピンドルモーター2によって一定線速度(CLV)で回転駆動される。
そして再生時には、光ピックアップ(光学ヘッド)1によって光ディスクD上のトラックにピット或いはマークで記録された情報の読出が行われる。
なお、光ディスクDには、再生専用の管理情報として、例えばディスクの物理情報等がエンボスピット又はウォブリンググルーブによって記録されるが、これらの情報の読出も光ピックアップ1により行われる。さらに記録可能型の光ディスクDに対しては、グルーブトラックのウォブリングとして埋め込まれたADIP情報が記録されているが、その読み出しも光ピックアップ1によって行うことができる。
【0031】
光ピックアップ1内には、レーザ光源となるレーザダイオードや、反射光を検出するためのフォトディテクタ、レーザ光の出力端となる対物レンズ、レーザ光を対物レンズを介してディスク記録面に照射し、またその反射光をフォトディテクタに導く光学系等が形成される。この場合のレーザダイオードは、波長780nm、650nmのCD、DVD系のレーザ光を出力するレーザダイオードと、BD系に対応する波長405nmのレーザ光を出力するレーザダイオードとの2つが設けられている。但し、この場合は先に述べた3波長単眼式として、これら2つのレーザダイオードから出力される各波長のレーザ光がそれぞれ共通の対物レンズを介して光ディスクDに対し照射されるように構成されている。
【0032】
光ピックアップ1内において、上記対物レンズは2軸機構によってトラッキング方向及びフォーカス方向に移動可能に保持されている。
また光ピックアップ1全体はスレッド機構3によりディスク半径方向に移動可能とされている。
また光ピックアップ1におけるレーザダイオードはレーザードライバ9からのドライブ信号(ドライブ電流)によってレーザ発光駆動される。
【0033】
また、本実施の形態の場合、光ディスクDとしてはBDにも対応するので、光ピックアップ1内には球面収差を補正するための球面収差補正機構も備えられる。この球面収差補正機構は、図中のSA(球面収差)補正ドライバ14によって駆動され、これによって球面収差が補正される。
なお、上記球面収差補正機構を含めた光ピックアップ1内の構成については後述する。
【0034】
光ディスクDからの反射光情報は上述したフォトディテクタによって検出され、受光光量に応じた電気信号とされてマトリクス回路4に供給される。
マトリクス回路4には、フォトディテクタとしての複数の受光素子からの出力電流に対応して電流電圧変換回路、マトリクス演算/増幅回路等を備え、マトリクス演算処理により必要な信号を生成する。
例えば再生データに相当するRF信号(再生データ信号)、サーボ制御のためのフォーカスエラー信号FE、トラッキングエラー信号TEなどを生成する。
また、グルーブのウォブリングに係る信号、即ちウォブリングを検出する信号としてプッシュプル信号PPを生成する。
さらに本実施の形態の場合、後述するフォーカスオン動作時に用いられるプルイン(Pull in)信号PIも生成する。
【0035】
マトリクス回路4から出力される再生データ信号(RF信号)はデータ信号処理回路5へ、フォーカスエラー信号FE及びトラッキングエラー信号TE、プルイン信号PIはサーボ回路11へ、プッシュプル信号PPはウォブル信号処理回路6へそれぞれ供給される。
【0036】
また、本実施の形態の場合、RF信号はデータ信号処理回路5に対して供給されると共に、分岐して図示するA/D変換器15を介しその振幅値の情報がシステムコントローラ10に対して供給される。このようにしてシステムコントローラ10に対して供給されるRF信号振幅値の情報は、後述する球面収差補正値の自動調整処理時において、再生信号品質の評価指標(評価値)として用いられることになる。
【0037】
データ信号処理回路5は、再生データ信号の2値化処理を行う。また、PLL処理を行って再生クロックを生成する。さらには、上記2値化処理後の2値データ列から同期信号を検出する処理なども行う。
データ信号処理回路5において、上記2値化処理により得られた2値データ列は後段のデコード部7に対して供給される。また、生成された上記再生クロックは、図示は省略したが各部の動作クロックとして供給される。また検出された同期信号はデコード部7に対して供給される。
【0038】
デコード部7は、上記2値データ列についての復調処理を行う。即ち、再生データの復調、デインターリーブ、ECCデコード、アドレスデコード等の各種復調処理を行う。
再生時においては、上記データ信号処理回路5で復号された2値データ列、及び同期信号に基づく復調タイミングで示されるタイミングで、上記2値データ列に対する復調処理を行い、再生データを得る。デコード部7で再生データにまでデコードされたデータは、ホストインタフェース8に転送され、システムコントローラ10の指示に基づいてホスト機器100に転送される。ホスト機器100とは、例えばコンピュータ装置やAV(Audio-Visual)システム機器などである。
また、デコードされたアドレスデータは、システムコントローラ10に対して供給される。
【0039】
光ディスクDが記録可能型ディスクである場合、光ディスクDにはウォブリンググルーブによってディスクの物理情報などの管理情報やADIP情報などが記録されている。
ウォブル信号処理回路6は、システムコントローラ10からの指示に基づき、マトリクス回路4からのプッシュプル信号PPからこのように光ディスクDのウォブリンググルーブによって記録された情報を検出し、これをシステムコントローラ10に対して供給する。
【0040】
サーボ回路11は、マトリクス回路4からのフォーカスエラー信号FE、トラッキングエラー信号TEから、フォーカス、トラッキング、スレッドの各種サーボドライブ信号を生成しサーボ動作を実行させる。
即ちフォーカスエラー信号FE、トラッキングエラー信号TEに応じてフォーカスドライブ信号FD、トラッキングドライブ信号TDを生成し、光ピックアップ1内の2軸機構のフォーカスコイル、トラッキングコイルを駆動することになる。これによって光ピックアップ1、マトリクス回路4、サーボ回路11、2軸機構によるトラッキングサーボループ及びフォーカスサーボループが形成される。
またサーボ回路11は、システムコントローラ10からのトラックジャンプ指令に応じて、トラッキングサーボループをオフとし、ジャンプドライブ信号を出力することで、トラックジャンプ動作を実行させる。
【0041】
またサーボ回路11は、トラッキングエラー信号TEの低域成分として得られるスレッドエラー信号や、システムコントローラ10からのアクセス実行制御などに基づいてスレッドドライブ信号SDを生成し、これによりスレッド機構3を駆動する。スレッド機構3には、図示しないが、光ピックアップ1を保持するメインシャフト、スレッドモータ、伝達ギア等による機構を有し、スレッドドライブ信号に応じてスレッドモータを駆動することで、光ピックアップ1の所要のスライド移動が行なわれる。
【0042】
また、サーボ回路11は、マトリクス回路4からのフォーカスエラー信号FE、及びプルイン信号PIに基づき、光ディスクDに形成される記録層にフォーカスオンするためのフォーカスオン制御を行う。
また、特に多層ディスクとしての光ディスクDに対応したフォーカス制御として、サーボ回路11は、フォーカスエラー信号FEに基づきフォーカスジャンプ制御も行う。
【0043】
またサーボ回路11は、SA補正ドライバ14に対する球面収差補正値の設定を行うことが可能に構成される。すなわち、サーボ回路11は、システムコントローラ10からの指示に基づく球面収差補正値をSA補正ドライバ14に対して設定することができる。SA補正ドライバ14は、設定された球面収差補正値に応じた駆動信号Sdにより光ピックアップ1内の球面収差補正機構を駆動する。
また、サーボ回路11は、フォーカスバイアスの設定も可能に構成される。すなわち、システムコントローラ10からの指示に基づくフォーカスバイアスを上述したフォーカスサーボループに対して加算することができる。
【0044】
スピンドルサーボ回路12はスピンドルモーター2をCLV回転させる制御を行う。
スピンドルサーボ回路12は、データ信号処理回路5にて生成される再生クロックを現在のスピンドルモーター2の回転速度情報として得て、これを所定のCLV基準速度情報と比較することでスピンドルエラー信号を生成する。
なお、光ディスクDが記録可能型ディスクである場合には、ウォブル信号に対するPLL処理で生成されるクロックを現在のスピンドルモーター2の回転速度情報として得ることができるので、これを所定のCLV基準速度情報と比較することでスピンドルエラー信号を生成することもできる。
そしてスピンドルサーボ回路12は、スピンドルエラー信号に応じて生成したスピンドルドライブ信号を出力し、スピンドルドライバ13によりスピンドルモーター2のCLV回転を実行させる。
またスピンドルサーボ回路12は、システムコントローラ10からのスピンドルキック/ブレーキ制御信号に応じてスピンドルドライブ信号を発生させ、スピンドルモーター2の起動、停止、加速、減速などの動作も実行させる。
【0045】
以上のようなサーボ系及び再生系の各種動作はマイクロコンピュータによって形成されたシステムコントローラ10により制御される。
システムコントローラ10は、ホストインタフェース8を介して与えられるホスト機器100からのコマンドに応じて各種処理を実行する。
例えば、ホスト機器100から光ディスクDに記録されている或るデータの転送を求めるリードコマンドが供給された場合、システムコントローラ10は、まず指示されたアドレスを目標としてシーク動作制御を行う。即ちサーボ回路11に指令を出し、シークコマンドにより指定されたアドレスをターゲットとする光ピックアップ1のアクセス動作を実行させる。
その後、その指示されたデータ区間のデータをホスト機器100に転送するために必要な動作制御を行う。即ち光ディスクDから読み出される信号(再生データ信号)についてデータ信号処理回路5、デコード部7における再生処理を実行させ、要求されたデータを転送する。
【0046】
また、この場合のシステムコントローラ10は、球面収差補正値についての自動調整処理を行うが、これについては後述する。
また、後に説明する本実施の形態としてのフォーカスオン動作を実現するための処理動作も行うが、これについても後述する。
【0047】
なお、この図1の例では、ホスト機器100に接続されるディスクドライブ装置として説明したが、本発明の光記録媒体駆動装置としては他の機器に接続されない形態もあり得る。その場合は、操作部や表示部が設けられたり、データ入出力のインタフェース部位の構成が、図1とは異なるものとなる。つまり、ユーザ操作に応じて記録や再生が行われるとともに、各種データの入出力のための端子部が形成されればよい。
もちろん光記録媒体駆動装置の構成例としては他にも多様に考えられ、例えば記録が可能な構成とすることもできる。すなわち、本発明のディスクドライブ装置としては、記録再生装置、及び記録専用装置の形態もあり得る。
【0048】
図3は、図1に示した光ピックアップ1が備える球面収差補正機構の一例について示している。なお、この図3においては光ピックアップ1内の光学系の構成について主に示している。
図3において、半導体レーザ(レーザダイオード)81から出力されるレーザ光は、コリメータレンズ82で平行光とされ、ビームスプリッタ83を透過して、球面収差補正レンズ群としての可動レンズ87、固定レンズ88を介して進行し、対物レンズ84から光ディスクDに照射される。なお球面収差補正レンズ群87,88についてはエキスパンダと呼ばれる。可動レンズ87を駆動することで球面収差補正が行われることから、以下、特に可動レンズ87については球面収差補正レンズ87とも呼ぶ。
【0049】
光ディスクDからの反射光は、対物レンズ84、固定レンズ88、可動レンズ87を通ってビームスプリッタ83で反射され、コリメータレンズ(集光レンズ85)を介してディテクタ86に入射される。
【0050】
このような光学系においては、対物レンズ84が二軸機構91によってフォーカス方向及びトラッキング方向に移動可能に支持されており、フォーカスサーボ、トラッキングサーボ動作が行われる。
また球面収差補正レンズ87は、レーザ光の波面をデフォーカスする機能を持つ。即ち球面収差補正レンズ87は、図示するようにして駆動信号Sdが供給されるアクチュエータ90によって光軸方向であるJ方向に移動可能とされており、この移動によって、対物レンズ84の物点を調整する。
つまり、アクチュエータ90に対して上記駆動信号Sdにより前後移動を実行させる制御を行うことで、球面収差補正を実行させることができる。
【0051】
なお、図3においては、いわゆるエキスパンダによって球面収差補正を行う場合に対応した構成を例示したが、他にも液晶パネルを用いて球面収差補正を行う構成を採ることもできる。
即ち、半導体レーザ81から対物レンズ84までの光路中において挿入した液晶パネルにおいて、レーザ光を透過させる領域と遮蔽する領域の境界を可変調整することで、レーザ光の径を可変して球面収差補正を行うものである。
この場合には、液晶パネルを駆動する液晶ドライバに対して、透過領域を可変させるように制御を行うことになる。
【0052】
また、球面収差補正機構としては、図3に示したように可動レンズ87、固定レンズ88を設けて可動レンズ87を駆動する構成とする以外にも、これら可動レンズ87、固定レンズ88は省略し、代わりにコリメータレンズ82をJ方向に駆動する構成によっても実現できる。その場合、コリメータレンズ82に対してアクチュエータ90を設け、このアクチュエータ90に対して駆動信号Sdを供給してコリメータレンズ82のJ方向への駆動制御を実行すればよい。
【0053】
また、次の図4には、図1に示したサーボ回路11の内部構成を示す。なお、図4ではサーボ回路11内における、主にフォーカス制御系の部分についてのみ抽出して示している。
図4において、図1に示したマトリクス回路4からのフォーカスエラー信号FEは、サーボ回路11内におけるA/D変換器21によりデジタルデータに変換されて、フォーカスサーボ演算部22に入力される。
フォーカスサーボ演算部22では、デジタルデータとされて入力されるフォーカスエラー信号FEに対して位相補償等のためのフィルタリングやループゲイン処理などの所定の演算を行ってフォーカスサーボ信号を生成する。
このフォーカスサーボ信号は、図示するスイッチSWにおける端子t2に供給される。
【0054】
ここで、スイッチSWは、端子t1に対して上記端子t2、端子t3、端子t4を択一的に選択可能に構成される。端子t3に対しては固定電圧23が供給され、端子t4にはHold電圧24が供給される。
また、端子t1に対してはD/A変換器25が接続され、図示するようにしてこのD/A変換器25の出力がフォーカスドライバ26を介してフォーカスドライブ信号FDとして出力されるようになっている。
【0055】
サーボ回路11では、上記スイッチSWの端子切り換え制御を行ってフォーカスオン制御、フォーカスジャンプ制御を実行する。
フォーカスオン制御については、先ずはスイッチSWにおいて端子t3を選択させ、固定電圧23を出力させることで、二軸機構91によって対物レンズ84を光ディスクDに近づく方向に駆動させることができる。そして、その後、プルイン信号PIやフォーカスエラー信号FEについて、所定閾値に基づく条件判定を行い、その結果フォーカスオンすべき状態となった場合には、端子t2に切り換え、フォーカスサーボの引き込みを行う。つまり、これによってターゲット層へのフォーカスオン制御が行われる。
【0056】
また、フォーカスジャンプ時には、先ずは端子t3に切り換えを行い、キック電圧としての固定電圧23を印加した上で、端子t4への切り換えを行いHold電圧24を印加することで、対物レンズ84をジャンプ先の記録層側へと移動させる。なお、上記Hold電圧24は、CD、DVD、DBでの記録層位置の違いからそれぞれ対物レンズ84のHold位置に対応させた値が計算され、その値に応じた電圧が出力される。
上記キック電圧の印加開始後、フォーカスエラー信号FEと所定閾値とに基づく条件判定からフォーカスサーボの引き込みがOKとされる状態となったとされた場合は、端子t3を選択してブレーキ電圧としての固定電圧23を出力させ、その後において端子t2を選択することで、ジャンプ先の記録層におけるフォーカスサーボの引き込みが行われる。これによってフォーカスジャンプ動作が行われる。
なお、本実施の形態が採用するフォーカスジャンプ動作の具体例については後述する。
【0057】
ここで、これまでで説明してきた実施の形態としてのディスクドライブ装置としては、光ディスクDとしてBDにも対応可能に構成される。
先にも述べたようにBDについては、高NA化に伴いカバー層の厚みの差に起因した球面収差が生じることから、その補正を行うことが必須となる。本実施の形態のディスクドライブ装置としても、このような球面収差補正を行うために、先の図3に示したような球面収差補正機構(固定レンズ88、可動レンズ87、アクチュエータ90)やSA補正ドライバ14を備えている。
【0058】
具体的に、球面収差の補正については、上記SA補正ドライバ14に対し球面収差補正値を設定することで行うものとなるが、このような球面収差補正値については、各記録層において基準となる初期値が予めディスクドライブ装置に対して設定されている。つまり、L1層(第1記録層:カバー厚75μm)位置で最適とされる球面収差補正値SA_L1と、L0層(第2記録層:カバー厚100μm)位置で最適とされる球面収差補正値SA_L0とが各記録層における球面収差補正値の初期値として設定されているものである。
【0059】
理想的には、各記録層にて対応する初期値を設定して球面収差補正を行うものとすれば、適正に球面収差を補正することができるということになるが、実際には、光ディスクDの個体ごとにカバー層の厚みに誤差が生じるため、光ディスクDごとに球面収差補正値を自動調整するといったことが行われている。
【0060】
このような球面収差補正値の自動調整処理としては、所定の記録層に初回にフォーカスオンすべき状態となったことに応じ、その記録層について予め設定された球面収差補正値の初期値を基準としてその値をそれぞれ異なる値に変化させたときに得られた評価値を取得し、その結果に基づき、評価値を最良としたときの上記初期値からのシフト値を決定し、そのシフト値を補正シフト値として取得するようにして行う。
例えばL0層(第2記録層)についての初回のフォーカスオン時において、一度フォーカスサーボをオンできたときに、このように初期値を基準として球面収差補正値の設定を変えながら光ピックアップ1による信号読み出しを実行させ、そのとき得られたRF信号振幅値を評価値としてその値を最良(この場合は最大)とする上記初期値からのシフト値を補正シフト値として決定する。
【0061】
このような手法が採られる場合における、具体的な自動調整処理の内容について説明しておくと、先ずシステムコントローラ10は、L0層にてフォーカスサーボをオンできたことに応じ、例えば内部のROM等に格納されるL0層についての初期値を読み出し、この初期値からそれぞれ値を変化させた球面収差補正値を順次サーボ回路11に指示してSA補正ドライバ14に設定させ、それぞれの球面収差補正値の設定状態でマトリクス回路4にて得られるRF信号の振幅値をA/D変換器15を介して取得し、この結果、RF信号振幅値を最大としたときの上記初期値からのシフト値を補正シフト値として決定する。
以降、各記録層での信号読み出し時には、その記録層についての初期値に当該補正シフト値bを加算(或いは減算)した球面収差補正値を設定する。
【0062】
このような自動調整処理が行われることで、球面収差補正値は実測したRF信号振幅値(つまり再生信号品質の評価値)に基づき最適とされる値に設定されるので、個々の光ディスクDのカバー層の厚みに誤差が生じる場合にも、最適とされる球面収差補正状態で信号読み出しを行うことができる。
【0063】
なお、ここでは評価値を最良としたときの球面収差補正値から補正シフト値bを求めるものとしたが、少なくとも評価値が所定以上良好となる球面収差補正値から補正シフト値bを求めるものとすれば、光ディスクDのカバー層の厚み誤差を補正することのできるシフト補正値bを求めることができる。
【0064】
ここで、上記のようにして本実施の形態のディスクドライブ装置としても、BDとしての光ディスクDに対応して球面収差補正を行うものとされるが、先にも述べたように球面収差補正が行われる場合、フォーカスオンを行う場合にも、安定したフォーカスサーボの引き込みが可能となるように球面収差補正値を適切とされる値に調整するということが行われている。
【0065】
従来では、フォーカスオン時にはフォーカスオンの対象となるターゲット層に合わせた球面収差補正値を設定するものとしていた。例えば、L0層にフォーカスオンする場合には、L0層についての初期値を設定した状態でフォーカスオン動作を行うものとされていた。
【0066】
しかしながら、球面収差補正値をターゲット層に合わせた値に設定していると、先に説明したようにして他の記録層についてのフォーカスエラー信号のS字を適正に検出できなくなる可能性があり、例えば第2記録層をターゲット層としてフォーカスオンを行う場合には、第1記録層でのフォーカスエラー信号振幅を充分に得ることができなくなってしまう。これによると、先の図12に示したような対物レンズを一方向のみに駆動するフォーカスオンの手法では、第1記録層についてのフォーカスエラー信号のS字を検出することができず、適正に第2記録層にフォーカスオンすることができなくなってしまう。
【0067】
このようにターゲット層に合わせた球面収差補正値を設定すると、ターゲット層より前の記録層でフォーカスエラー信号のS字を適正に検出できない可能性があることから、現状では対物レンズを光ディスクに接離する方向に往復させる手法が採られている(図13参照)。
しかし、この手法は対物レンズを往復させなければならないという点でフォーカスオンに要する時間を多く要してしまうという問題があった。
【0068】
このような問題を回避するにあたっては、第1記録層と第2記録層とでフォーカスエラー信号振幅に偏り(歪み)が生じないようにするということが挙げられる。すなわち、第1記録層と第2記録層との中間点に合わせた球面収差補正値を設定することで、何れの層においても均等にフォーカスエラー信号振幅が得られるようにするといったものである。具体的には、第1記録層(L1層)と第2記録層(L0層)とについて予め設定された初期値をそれぞれ初期値SA_L1,初期値SA_L0とした場合、「SA_L1+SA_L0/2」で求まる球面収差補正値を設定するものである。
【0069】
しかしながら、このようにして第1記録層と第2記録層との中間点に合わせた球面収差補正値を設定したとしても、実際にはフォーカスエラー信号振幅特性の充分な改善は図られないことになる。つまり、先の図14に示したように、図14(c)の中間点に合わせた球面収差補正値を設定することによっては、図14(a),(b)のL0層、L1層に合わせた場合との比較ではフォーカスエラー信号の歪み具合は低減されるものの、これを完全には改善しきれないものとなる。
このようにして中間点に合わせて球面収差補正値を設定した場合にもL0層とL1層でのフォーカスエラー信号に歪みが残るのは、光ディスクDの個体ごとのカバー厚の誤差に起因して、光ディスクDごとに最適な球面収差補正値がばらつくためである。
【0070】
このようにして、単に第1記録層と第2記録層との中間点に合わせた球面収差補正値に設定したのでは、第2記録層へのフォーカスオン時に第1記録層のS字が検出できなくなるといった事態の防止を完全に図ることができないことになる。第1記録層のフォーカスエラー信号のS字が検出できないのであれば、先の図13のような対物レンズを往復させる手法を採らざるを得ず、結果として第2記録層へのフォーカスオンに要する時間の短縮化が図られなくなってしまう。
【0071】
そこで、上記のような問題に鑑み、本実施の形態では、第2記録層(L0層)をターゲット層としたフォーカスオン時において、L0層とL1層との中間点に合わせた球面収差補正値を基準とした上で、さらにこの中間点の球面収差補正値を所要の値だけシフトした値を設定した状態でフォーカスオン動作を実行するものとしている。
具体的には、中間点の球面収差補正値(SA_L1+SA_L0/2)を、先の球面収差補正値の自動調整時に求められた補正シフト値bに基づきシフトさせた値をL0層へのフォーカスオン時の球面収差補正値として設定するものである。
【0072】
図5は、このような本実施の形態としてのフォーカスオン動作について説明するための図である。なお、図5では、先の図3に示した球面収差補正レンズ87の可動範囲(図中一点鎖線で示すSAレンズ可動範囲)と、L1層についての球面収差補正値(初期値SA_L1)、L0層についての球面収差補正値(初期値SA_L0)、中間点についての球面収差補正値(SA_L1+SA_L0/2)との関係を模式的に示している。
【0073】
本実施の形態では、SA_L1+SA_L0/2による中間点の球面収差補正値に対し、先の球面収差補正値の自動調整によって求まった補正シフト値bを加算した値を設定するものとしている。すなわち、L0層をターゲット層とするフォーカスオン動作時に設定されるべき球面収差補正値(以下、球面収差補正値SA_FOと呼ぶ)について、SA_FO=SA_L1+SA_L0/2+bを設定するものである。
そして、この球面収差補正値SA_FOの設定状態でL0層をターゲット層としたフォーカスオン動作を実行するものである。
【0074】
図6は、このような本実施の形態としてのフォーカスオン動作を実現するために行われるべき処理動作を示したフローチャートである。なお、この図に示す処理動作は図1に示したシステムコントローラ10が例えば内蔵するROM等に格納されるプログラムに従って実行するものである。
また、この図に示す処理動作を実行するのに先立っては、先に説明したような球面収差補正値の自動調整処理によって既に補正シフト値bが求まっている状態にあることを前提とする。
【0075】
先ず、ステップS101では、L0をターゲットとしたフォーカスONコマンドを待機する。すなわち、フォーカスオンにあたってはホスト機器100からのフォーカスONコマンドによる指示が為されるので、このフォーカスONコマンドとして、L0層をターゲット層とするコマンドを待機するようにされる。
【0076】
L0層をターゲット層とするフォーカスONコマンドがあった場合、ステップS102においてSA_FO=SA_L1+SA_L0/2+bを計算する。つまり、L1層とL0層について予め設定されている初期値SA_L1、SA_L0と、自動調整処理によって既に求められている補正シフト値bとを用いて上記の計算を行う。
【0077】
続くステップS103では、SA_FOの設定指示処理として、算出した球面収差補正値SA_FOをサーボ回路11に指示し、当該球面収差補正値SA_FOをSA補正ドライバ14に設定させる。これにより、球面収差補正レンズ87が当該球面収差補正値SA_FOに応じた位置に駆動される。
【0078】
さらに、次のステップS104では、フォーカスON実行制御を行う。すなわち、サーボ回路11に対する指示を行ってL0層をターゲット層としたフォーカスオン動作を実行させる。
【0079】
続くステップS105では、フォーカスONの完了待機処理として、サーボ回路11からのフォーカスオン動作の完了通知を待機し、フォーカスオンが完了したとされた場合はステップS106において、球面収差補正値SA_L0+bの設定指示を行う。
このステップS106の処理として、球面収差補正値SA_L0+bの設定指示がサーボ回路11に対して行われることで、L0層へのフォーカスオン完了後は、L0層にとって最適とされる球面収差補正値を設定することができ、最適な球面収差補正値の設定状態でL0層における信号読み出し動作を実行させることができる。
【0080】
上記のようにして本実施の形態のフォーカスオン動作によれば、中間点に合わせた球面収差補正値を、光ディスクD個々のカバー厚誤差を吸収するための補正シフト値bに基づきシフトさせた球面収差補正値の設定状態でL0層へのフォーカスオン動作を実行することができ、これによって光ディスクD個々のカバー厚誤差が生じる場合にも、L1層でフォーカスエラー信号FEのS字が検出されなくなってしまうといった事態の防止を図ることができる。すなわち、この結果として先の図13に示したような対物レンズを往復させる従来手法を採る必要がなくなり、フォーカスオン動作の高速化が図られる。
【0081】
ところで、上記により説明したような実施の形態のフォーカスオン動作としては、球面収差補正値をL1層とL0層との中間点を基準とした値に設定するという性質上、各記録層に合わせた値を設定する場合と比較すれば、各記録層でのフォーカスエラー信号FEの振幅値がわずかであっても低下する傾向にはなる。
ここで、このようなフォーカスエラー信号FEの振幅値低下の面でみると、特に本実施の形態の場合のように、光ピックアップ1として例えば3波長など複数の波長のレーザ光を共通の対物レンズ84を介して照射する複数波長単眼式のピックアップが採用される場合には、その構成上、フォーカスエラー信号FEの振幅値が低下する傾向となってしまうことが明らかとなった。
【0082】
フォーカスエラー信号FEの振幅値の低下は、それが微少ではあってもフォーカスオン動作の安定化にとって不利に作用するものと考えられる。
上記もしているように、補正シフト値bに基づき中間点の球面収差補正値をシフトさせた図5の手法によれば、充分な安定性をもってL0層へのフォーカスオン動作を行うことができるが、このような複数波長単眼式の光ピックアップとした場合の振幅低下を考慮し、さらなるフォーカスオン動作の安定化を図るとする場合には、次の図7に示すようなフォーカスオン動作とすることもできる。
【0083】
図7は、上記のようなフォーカスエラー信号FEの振幅低下を考慮した場合のフォーカスオン動作について説明するための図として、先の図5と同様に球面収差補正レンズ87の可動範囲(図中一点鎖線で示すSAレンズ可動範囲)と、L1層についての球面収差補正値(初期値SA_L1)、L0層についての球面収差補正値(初期値SA_L0)、中間点についての球面収差補正値(SA_L1+SA_L0/2)との関係を模式的に示している。
【0084】
図示するようにしてこの場合は、L0層をターゲット層とするフォーカスオン動作時に設定されるべき球面収差補正値SA_FOとして、中間点の球面収差補正値(SA_L1+SA_L0/2)を、補正シフト値bと、さらに予め定められた所定のオフセット値Δとに基づきシフトさせた値を設定するものとしている。
具体的には、球面収差補正値SA_FO=SA_L1+SA_L0/2+b+Δを設定する。
ここで、オフセット値Δとしては、上述したような複数波長単眼式の光ピックアップ1を採用したことに伴うフォーカスエラー信号FEの振幅値の低下を改善することのできる値を、例えば実際に球面収差補正値の設定をそれぞれ変化させたときのフォーカスエラー信号FEの振幅値を測定した結果に基づき決定しておき、それを工場出荷時などの所定の段階で個々のディスクドライブ装置に対して設定しておく。
【0085】
中間点の球面収差補正値を、このようなオフセット値Δに基づきシフトさせた値とすることで、複数波長単眼式の光ピックアップ1が採用される場合におけるフォーカスエラー信号FEの振幅値低下を改善することができ、L0層へのフォーカスオン動作をより安定的に行うことができる。
【0086】
図8は、図7に示したフォーカスオン動作を実現するための処理動作を示したフローチャートである。なお、この図に示す処理動作としてもシステムコントローラ10が例えば内蔵するROM等に格納されるプログラムに従って実行するものであり、また、この場合も図示する処理動作を実行するのに先立っては、球面収差補正値の自動調整処理によって既に補正シフト値bが求まっている状態にあることを前提とする。
【0087】
この場合のフォーカスオン動作を実現するにあたっては、先ずはステップS201にて先の図5のステップS101と同様にL0層をターゲット層としたフォーカスON指示を待機し、このフォーカスON指示があった場合には、ステップS202において、この場合のシステムコントローラ10に予め設定されるオフセット値Δを用いて、SA_FO=SA_L1+SA_L0/2+b+Δを計算する。
以降のステップS203〜S206については、先の図5に示したステップS103〜S106と同様の処理を実行する。
【0088】
図9は、図7に示した手法の有効性を実証するための図として、図5の手法による球面収差補正値SA_FOが設定された場合(図9(a))と、図7の手法による球面収差補正値SA_FOが設定された場合(図9(b))とでそれぞれ得られるプルイン信号PIの波形とフォーカスエラー信号FEの波形とを対比して示している。
なお、これら図9(a)(b)の各図においては、縦軸の目盛が振幅値のレベルを表している。また、中心の目盛を境に右側の波形は対物レンズ84を光ディスクDに近づく方向に駆動した場合の波形を、また左側は遠ざける方向に駆動した場合の波形を示している。
【0089】
これら図9(a)(b)について、特に図中の丸印で囲うように図7の手法による球面収差補正値SA_FOが設定された場合の方が、図5の手法による球面収差補正値SA_FOが設定された場合よりも、L0層とL1層の双方でフォーカスエラー信号FEの振幅値のレベルが上昇していることがわかる。
この点からも、図7に示した手法が採られる場合にはより安定してL0層へのフォーカスオン動作を実行できることが理解できる。
【0090】
なお、このようにして所定のオフセット値Δに基づき球面収差補正値をシフトさせた場合の方がフォーカスエラー信号FEの振幅値を上昇させることができるのは、RF信号振幅値としての、再生信号品質についての評価値を最良値とするとして求められた補正シフト値bが、必ずしもサーボの面でも最も有利にはたらくという保証がないことに依る。
つまり、図7に示した手法としては、オフセット値Δの加算によってサーボにとって良い方向に球面収差補正値をシフトさせることでフォーカスエラー信号FEの振幅値を上昇させることができ、これによってより安定したフォーカスオン動作を実現することができるというものである。
【0091】
なお、上記説明では、オフセット値Δはフォーカスエラー信号FEの振幅低下を抑制するような値を設定するものとしたが、このオフセット値Δの設定如何では、フォーカスエラー信号FEのS字の上下波形レベルの均等化を図ることも可能となる。すなわち、球面収差補正が最適でない記録層でのS字は、光ピックアップ1の製造バラツキなどによりフォトディテクタ上のスポット形状の最適化が図られない場合に、その上下の波形レベルが均等とはならないことがあるが、その場合の対策として、オフセット値Δの加算によって球面収差補正値を所定方向に所定量だけシフトさせるものとすれば、S字の上下波形レベルの均等化を図ることができる。
【0092】
ここで、これまでの説明では、フォーカスオン動作時における球面収差補正値SA_FOの設定について主に説明してきたが、同様の考えに基づきフォーカスジャンプ動作時の球面収差補正値を設定することで、フォーカスジャンプ動作についても安定化を図ることができる。
以下、この点について説明する。
【0093】
先ず、図10には、従来より採用されているフォーカスジャンプ動作の具体例を示す。この図10では、L0層をターゲット層としたフォーカスジャンプ動作をフォーカスエラー信号FE、フォーカスドライブ信号FD、及びフォーカスエラー信号FEについて設定される各種閾値とにより模式的に示している。
【0094】
先ず、L1層からL0層へのフォーカスジャンプ動作にあたっては、先の図4に示したサーボ回路11内において、スイッチSWの端子選択状態を端子t2→端子t3に切り換え、フォーカスサーボループをオフとすると共に、固定電圧23としてキック電圧を出力させる。
これに応じ対物レンズ84の光ディスクDに近づく方向への駆動が開始され、フォーカスエラー信号FEとしては図のようにL1層におけるS字の片方の波形(振幅値が低下する方向の波形)が得られることになる。
【0095】
このとき、サーボ回路11においては、このようにしてキック電圧の印加に応じて得られるフォーカスエラー信号FEの波形について、予め図のような閾値thFJ-1とthFJ-2が設定されており、フォーカスエラー信号FEの振幅値が閾値thFJ-1を下回った後、閾値thFJ-2を上回ったことを条件として、キック電圧の印加状態からHold電圧の印加状態に移行するようにされる。すなわち、この条件成立に応じ、スイッチSWにおいて端子t3→端子t4への切り換えを行い、Hold電圧24を出力させる。
【0096】
Hold電圧24が出力される間、対物レンズ84の光ディスクDに近づく方向への移動状態が継続されるので、所定時間後にフォーカスエラー信号FEにはL0層でのS字の片方の波形(振幅値が上昇する方の波形)が得られる。サーボ回路11においては、このL0層についての波形についても図のような閾値thFJ-3、閾値thFJ-4が設定されており、フォーカスエラー信号FEの振幅値が上記閾値thFJ-3を上回ったことに応じ、スイッチSWの端子選択状態を端子t4→端子t3に切り換え、固定電圧23の極性を反転させたブレーキ電圧の出力を開始させる。そして、フォーカスエラー信号FEの振幅値が上記閾値thFJ-4を下回ったことに応じ、スイッチSWの端子選択状態を端子t3→端子t2に切り換え、これによってL0層におけるフォーカスサーボの引き込みを行う。すなわち、これによってL1層からL0層へのフォーカスジャンプ動作が行われたことになる。
【0097】
なお、ここではL1層→L0層のフォーカスジャンプ動作について例示したが、L0層→L1層のフォーカスジャンプ動作についても、フォーカスエラー信号FEと上記各種閾値thとに基づき同様に行うことができる。
【0098】
ここで、このようなフォーカスジャンプ動作についても、従来ではターゲット層においてフォーカスサーボの引き込みが安定的に行われるように、ターゲット層に合わせた球面収差補正値を設定した上で行うものとされていた。
しかし、このように球面収差補正値をターゲット層に合わせた状態でフォーカスジャンプ動作を開始すると、例えば上記の例のようにL0層にフォーカスジャンプを行う場合は、ジャンプ動作に入る前のL1層でのフォーカスサーボが非常に不安定となってしまい、最悪の場合サーボが外れてしまう可能性がある。
また、ターゲット層に合わせた球面収差補正値を設定していると、ジャンプ前の層でのフォーカスエラー信号FEの振幅値が低下することに伴って閾値thFJ-1,thFJ-2による条件が成立しない可能性があり、これによってジャンプ動作を行うことができなくなってしまう虞があった。
このようにして球面収差補正値をターゲット層に合わせていた従来では、フォーカスジャンプ動作の安定化が図られないことになる。
【0099】
この場合としても、球面収差補正値をL1層とL0層の中間点に合わせた値に設定して、フォーカスエラー信号FEの歪みを解消することがその解決策として有効であると考えられるが、先の図14に示した特性を考慮すると、この場合としても中間点の球面収差補正値(SA_L1+SA_L0/2)に対し、球面収差補正値の自動調整によって求められた補正シフト値bを加算した値を設定するのが好ましい。
そこで、本実施の形態では、フォーカスジャンプを行うにあたって設定されるべき球面収差補正値SA_FJとして、SA_FJ=SA_L1+SA_L0/2+bを計算し、これを設定した状態でフォーカスジャンプ動作を実行するものとしている。
【0100】
図11のフローチャートは、このような本実施の形態としてのフォーカスジャンプ動作を実現するための処理動作について示している。この図11に示す処理動作としてもシステムコントローラ10が例えば内蔵するROM等に格納されるプログラムに従って実行するものであり、また、この図に示す処理動作を実行するのに先立っては、先に説明したような球面収差補正値の自動調整処理によって既に補正シフト値bが求まっている状態にあることを前提とする。
【0101】
先ず、ステップS301では、フォーカスジャンプコマンドの待機処理として、ホスト機器100からのフォーカスジャンプ指示を待機する。
そして、このようなフォーカスジャンプ指示があった場合は、ステップS302において、球面収差補正値SA_FJ=SA_L1+SA_L0/2+bを計算する。
以下、ステップS303では球面収差補正値SA_FJの設定指示として、算出した球面収差補正値SA_FJをサーボ回路11に指示することで、SA補正ドライバ14に当該球面収差補正値SA_FJを設定させ、続くステップS304ではフォーカスジャンプ実行制御として、サーボ回路11に先の図10にて説明したフォーカスジャンプ動作を実行させる。
【0102】
次のステップS305ではフォーカスジャンプ完了待機処理として、サーボ回路11からのフォーカスジャンプ動作の完了通知を待機し、当該完了通知があった場合にはステップS306にてターゲット層の初期値+bの設定指示を行う。すなわち、フォーカスジャンプ指示がL0層をターゲット層とした指示であった場合は、L0層の初期値SA_L0に補正シフト値bを加算した値をサーボ回路11に指示し、SA補正ドライバ14にSA_L0+bを設定させる。また、フォーカスジャンプ指示がL1層をターゲット層とした指示であった場合は、初期値SA_L1に補正シフト値bを加算したSA_L1+bによる値をサーボ回路11に指示し、これをSA補正ドライバ14に設定させる。
これにより、ターゲット層へのフォーカスジャンプ完了後において、その層にとって最適とされる球面収差補正値を設定することができ、最適な球面収差補正値の設定状態で信号読み出し動作を行うことができる。
【0103】
上記のような本実施の形態としてのフォーカスジャンプ動作とすることで、光ディスクD個々のカバー厚誤差が生じる場合においても、各層へのフォーカスジャンプ動作を安定して行うことができる。
【0104】
なお、このようなフォーカスジャンプ動作時においても、先の図7に示した手法と同様にさらにオフセット値Δにも基づく球面収差補正値のシフトを行うことで、光ディスクD個々のカバー厚誤差に対する安定性と共に、複数波長単眼式の光ピックアップ1を採用する場合のフォーカスエラー信号FEの振幅低下に対しても安定性を確保することができる。
【0105】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明としてはこれまでに説明した具体例に限定されるべきものではない。
例えば、これまでの説明では、記録層を2層有する場合において、レーザ光の入射側に最も近い第1記録層以外の第2記録層をターゲット層としたフォーカスオン動作(及びフォーカスジャンプ動作)を行う場合について説明したが、本発明としては、記録層が3層以上とされる場合において、上記第1記録層以外の任意の記録層をターゲット層としたフォーカスオン動作を行う場合にも適用できる。
具体的に、記録層が3層以上とされる場合としても、第1記録層とターゲット層との中間点に合わせた球面収差補正値を、所要の値だけシフトさせた球面収差補正値を設定した状態でターゲット層へのフォーカスサーボオン動作を行うものとすれば、実施の形態で例示したように 個々のカバー厚ムラや複数波長単眼式の光ピックアップが採用される場合のフォーカスエラー信号振幅の低下に対応した適正なフォーカスオン動作を行うことができる。
【0106】
また、フォーカスジャンプ動作についても同様に、3層以上とされる場合は、第1記録層とターゲット層との中間点に合わせた球面収差補正値を所要の値だけシフトさせた値を設定するものとすれば先に説明した2層の場合と同様の効果を得ることができる。
【0107】
また、これまでの説明では、球面収差補正レンズ87を用いた球面収差補正機構とする場合を例示したが、例えば液晶パネルを用いた球面収差補正機構とするなど、他の例も考えられる。
液晶パネルを用いた球面収差補正機構とする場合には、液晶ドライバに対し、液晶パネルの所要のセルに電圧印加を指示する駆動信号Sdを供給するように構成すればよい。このとき、補正シフト値bやオフセット値Δは遮蔽率で換算した値となり、これら補正シフト値bやオフセット値Δの加算(或いは減算)に応じて遮蔽率が変化するように電圧を印加すべきセルの個数が制御されることになる。
【0108】
また、これまでの説明では、補正シフト値の算出にあたり、RF信号の振幅値を評価値とする場合を例示し、RF信号を生成するマトリクス回路4とA/D変換器15とで評価値生成手段が実現される場合を例示したが、このように補正シフト値を求める際の評価値としては、ジッタ(Jitter)値を用いることもできる。或いは、RF信号の2値化処理にPRML(Partial Response Maximum Likelihood)の手法が採用される場合には、例えば差メトリックについての評価値(理想値からの誤差や偏差を表した値)を用いることもできる。例えばこれらの場合には、データ信号処理部5内にそれらの評価値を生成する評価器を設けるものすればよい。
なお、何れにせよ補正シフト値を求めるにあたり用いる評価値としては、記録媒体からの反射光情報に基づき生成されて再生信号品質の評価指標となる値であればよく、特にこれまでで例示したものに限定されるべきものではない。
【0109】
また、これまでの説明では、本発明がディスク状の光記録媒体に対応する場合を例示したが、本発明としては、光記録媒体(光の照射により信号の記録再生が行われる記録媒体)に対する記録及び/又は再生を行う光記録媒体駆動装置であれば広く適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0110】
【図1】本発明の実施の形態としての光記録媒体駆動装置の内部構成について示したブロック図である。
【図2】2層BDとしての光ディスクの断面構造について説明するための断面図である。
【図3】球面収差補正機構を備えた光ピックアップの構成例について示した図である。
【図4】実施の形態としての光記録媒体駆動装置が備えるサーボ回路の内部構成として、主にフォーカス制御系に係る構成部分を抽出して示したブロック図である。
【図5】実施の形態としてのフォーカスオン動作について説明するための図である。
【図6】実施の形態としてのフォーカスオン動作を実現するために行われるべき処理動作について示したフローチャートである。
【図7】実施の形態の他のフォーカスオン動作について説明するための図である。
【図8】図7に示すフォーカスオン動作を実現するために行われるべき処理動作について示したフローチャートである。
【図9】図7に示すフォーカスオン動作の有効性を実証するための図として、図5の動作とした場合と図7の動作とした場合のプルイン信号、フォーカスエラー信号の波形を対比して示した図である。
【図10】フォーカスジャンプ動作について説明するための図である。
【図11】実施の形態としてのフォーカスジャンプ動作を実現するために行われるべき処理動作について示したフローチャートである。
【図12】従来のフォーカスオン動作について説明するための図である。
【図13】フォーカスエラー信号に歪みが生じる場合に対応して行われる従来手法としてのフォーカスオン動作について説明するための図である。
【図14】L0層(第2記録層)、L1層(第1記録層)、それらの中間点、のそれぞれに合わせた球面収差補正値を設定した場合のプルイン信号(PI)、フォーカスエラー信号(FE)の波形を示した図である。
【符号の説明】
【0111】
1 光ピックアップ、2 スピンドルモーター、3 スレッド機構、4 マトリクス回路、5 データ信号処理回路、6 ウォブル信号処理回路、7 デコード部、8 ホストインタフェース、9 レーザードライバ、10 システムコントローラ、11 サーボ回路、12 スピンドルサーボ回路、13 スピンドルドライバ、14 SA補正ドライバ、15 A/D変換器、100 ホスト機器、D 光ディスク、22 フォーカスサーボ演算部、23 固定電圧、24 Hold電圧、SW スイッチ、26 フォーカスドライバ、84 対物レンズ、87 球面収差補正レンズ、91 二軸機構
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の記録層を有する光記録媒体について記録又は再生を行う光記録媒体駆動装置であって、
少なくとも信号読出のために上記光記録媒体に対するレーザ光照射及び反射光検出を行うとともに、少なくともレーザ光のフォーカス機構及び球面収差補正機構を有するヘッド手段と、
上記ヘッド手段で得られる反射光情報に基づき上記フォーカス機構を駆動して、上記光記録媒体の上記記録層へのフォーカスオン制御を実行するフォーカス制御手段と、
球面収差補正値に基づいて上記球面収差補正機構を駆動して球面収差補正を実行する球面収差補正手段と、
上記光記録媒体における上記レーザ光の入射する側に最も近い第1記録層以外の記録層をターゲット層としたフォーカスオン動作を行うべき状態となったことに応じ、上記ターゲット層と上記第1記録層との中間点に合わせた球面収差補正値を所要の値だけシフトさせた球面収差補正値が上記球面収差補正手段に設定されるように制御すると共に、上記所要の値だけシフトさせた球面収差補正値の設定状態で上記フォーカス制御手段による上記ターゲット層へのフォーカスオン制御が実行されるように制御する制御手段と、
を備えることを特徴とする光記録媒体駆動装置。
【請求項2】
さらに、上記ヘッド手段で得られる反射光に基づき再生信号品質の評価指標となる評価値を生成する評価値生成手段を備え、
上記制御手段は、
上記光記録媒体の所定の記録層に初回にフォーカスオンすべき状態となったことに応じ、上記所定の記録層について予め設定された球面収差補正値の初期値を基準としてその値をそれぞれ異なる値に変化させてそれらを上記球面収差補正値にそれぞれ設定させたときに上記評価値生成手段で得られた評価値をそれぞれ取得した結果に基づき、上記評価値が所定以上良好となったときの上記初期値からのシフト値を決定し、そのシフト値を補正シフト値として取得すると共に、上記第1記録層以外の記録層をターゲット層としたフォーカスオン動作を行うべき状態となったことに応じては、上記ターゲット層と上記第1記録層との中間点に合わせた球面収差補正値を上記補正シフト値に基づきシフトさせた球面収差補正値が上記球面収差補正手段に設定されるように制御する、
ことを特徴とする請求項1に記載の光記録媒体駆動装置。
【請求項3】
上記制御手段は、
上記第1記録層以外の記録層をターゲット層としたフォーカスオン動作を行うべき状態となったことに応じては、上記ターゲット層と上記第1記録層との中間点に合わせた球面収差補正値を固定のオフセット値に基づきシフトさせた球面収差補正値が上記球面収差補正手段に設定されるように制御する、
ことを特徴とする請求項1に記載の光記録媒体駆動装置。
【請求項4】
上記制御手段は、
上記第1記録層以外の記録層をターゲット層としたフォーカスオン動作を行うべき状態となったことに応じては、上記ターゲット層と上記第1記録層との中間点に合わせた球面収差補正値を上記補正シフト値と固定のオフセット値とに基づきシフトさせた球面収差補正値が上記球面収差補正手段に設定されるように制御する、
ことを特徴とする請求項2に記載の光記録媒体駆動装置。
【請求項5】
上記フォーカス制御手段は、上記光記録媒体の上記記録層へのフォーカスジャンプ制御も実行するように構成されると共に、
上記制御手段は、
フォーカスジャンプ動作を行うべき状態となった場合にも、上記ターゲット層と上記第1記録層との中間点に合わせた球面収差補正値を所要の値だけシフトさせた球面収差補正値が上記球面収差補正手段に設定されるように制御した上で、上記所要の値だけシフトさせた球面収差補正値の設定状態で上記フォーカス制御手段によるフォーカスジャンプ制御が実行されるように制御する、
ことを特徴とする請求項1に記載の光記録媒体駆動装置。
【請求項6】
複数の記録層を有する光記録媒体について記録又は再生を行う光記録媒体駆動装置として、少なくとも信号読出のために上記光記録媒体に対するレーザ光照射及び反射光検出を行うとともに、少なくともレーザ光のフォーカス機構及び球面収差補正機構を有するヘッド手段と、上記ヘッド手段で得られる反射光情報に基づき上記フォーカス機構を駆動して、上記光記録媒体の上記記録層へのフォーカスオン制御を実行するフォーカス制御手段と、球面収差補正値に基づいて上記球面収差補正機構を駆動して球面収差補正を実行する球面収差補正手段とを備えた光記録媒体駆動装置におけるフォーカスオン方法であって、
上記光記録媒体における上記レーザ光の入射する側に最も近い第1記録層以外の記録層をターゲット層としたフォーカスオン動作を行うべき状態となったことに応じ、上記ターゲット層と上記第1記録層との中間点に合わせた球面収差補正値を所要の値だけシフトさせた球面収差補正値が上記球面収差補正手段に設定されるように制御すると共に、上記所要の値だけシフトさせた球面収差補正値の設定状態で上記フォーカス制御手段による上記ターゲット層へのフォーカスオン制御が実行されるように制御するようにした、
ことを特徴とするフォーカスオン方法。
【請求項1】
複数の記録層を有する光記録媒体について記録又は再生を行う光記録媒体駆動装置であって、
少なくとも信号読出のために上記光記録媒体に対するレーザ光照射及び反射光検出を行うとともに、少なくともレーザ光のフォーカス機構及び球面収差補正機構を有するヘッド手段と、
上記ヘッド手段で得られる反射光情報に基づき上記フォーカス機構を駆動して、上記光記録媒体の上記記録層へのフォーカスオン制御を実行するフォーカス制御手段と、
球面収差補正値に基づいて上記球面収差補正機構を駆動して球面収差補正を実行する球面収差補正手段と、
上記光記録媒体における上記レーザ光の入射する側に最も近い第1記録層以外の記録層をターゲット層としたフォーカスオン動作を行うべき状態となったことに応じ、上記ターゲット層と上記第1記録層との中間点に合わせた球面収差補正値を所要の値だけシフトさせた球面収差補正値が上記球面収差補正手段に設定されるように制御すると共に、上記所要の値だけシフトさせた球面収差補正値の設定状態で上記フォーカス制御手段による上記ターゲット層へのフォーカスオン制御が実行されるように制御する制御手段と、
を備えることを特徴とする光記録媒体駆動装置。
【請求項2】
さらに、上記ヘッド手段で得られる反射光に基づき再生信号品質の評価指標となる評価値を生成する評価値生成手段を備え、
上記制御手段は、
上記光記録媒体の所定の記録層に初回にフォーカスオンすべき状態となったことに応じ、上記所定の記録層について予め設定された球面収差補正値の初期値を基準としてその値をそれぞれ異なる値に変化させてそれらを上記球面収差補正値にそれぞれ設定させたときに上記評価値生成手段で得られた評価値をそれぞれ取得した結果に基づき、上記評価値が所定以上良好となったときの上記初期値からのシフト値を決定し、そのシフト値を補正シフト値として取得すると共に、上記第1記録層以外の記録層をターゲット層としたフォーカスオン動作を行うべき状態となったことに応じては、上記ターゲット層と上記第1記録層との中間点に合わせた球面収差補正値を上記補正シフト値に基づきシフトさせた球面収差補正値が上記球面収差補正手段に設定されるように制御する、
ことを特徴とする請求項1に記載の光記録媒体駆動装置。
【請求項3】
上記制御手段は、
上記第1記録層以外の記録層をターゲット層としたフォーカスオン動作を行うべき状態となったことに応じては、上記ターゲット層と上記第1記録層との中間点に合わせた球面収差補正値を固定のオフセット値に基づきシフトさせた球面収差補正値が上記球面収差補正手段に設定されるように制御する、
ことを特徴とする請求項1に記載の光記録媒体駆動装置。
【請求項4】
上記制御手段は、
上記第1記録層以外の記録層をターゲット層としたフォーカスオン動作を行うべき状態となったことに応じては、上記ターゲット層と上記第1記録層との中間点に合わせた球面収差補正値を上記補正シフト値と固定のオフセット値とに基づきシフトさせた球面収差補正値が上記球面収差補正手段に設定されるように制御する、
ことを特徴とする請求項2に記載の光記録媒体駆動装置。
【請求項5】
上記フォーカス制御手段は、上記光記録媒体の上記記録層へのフォーカスジャンプ制御も実行するように構成されると共に、
上記制御手段は、
フォーカスジャンプ動作を行うべき状態となった場合にも、上記ターゲット層と上記第1記録層との中間点に合わせた球面収差補正値を所要の値だけシフトさせた球面収差補正値が上記球面収差補正手段に設定されるように制御した上で、上記所要の値だけシフトさせた球面収差補正値の設定状態で上記フォーカス制御手段によるフォーカスジャンプ制御が実行されるように制御する、
ことを特徴とする請求項1に記載の光記録媒体駆動装置。
【請求項6】
複数の記録層を有する光記録媒体について記録又は再生を行う光記録媒体駆動装置として、少なくとも信号読出のために上記光記録媒体に対するレーザ光照射及び反射光検出を行うとともに、少なくともレーザ光のフォーカス機構及び球面収差補正機構を有するヘッド手段と、上記ヘッド手段で得られる反射光情報に基づき上記フォーカス機構を駆動して、上記光記録媒体の上記記録層へのフォーカスオン制御を実行するフォーカス制御手段と、球面収差補正値に基づいて上記球面収差補正機構を駆動して球面収差補正を実行する球面収差補正手段とを備えた光記録媒体駆動装置におけるフォーカスオン方法であって、
上記光記録媒体における上記レーザ光の入射する側に最も近い第1記録層以外の記録層をターゲット層としたフォーカスオン動作を行うべき状態となったことに応じ、上記ターゲット層と上記第1記録層との中間点に合わせた球面収差補正値を所要の値だけシフトさせた球面収差補正値が上記球面収差補正手段に設定されるように制御すると共に、上記所要の値だけシフトさせた球面収差補正値の設定状態で上記フォーカス制御手段による上記ターゲット層へのフォーカスオン制御が実行されるように制御するようにした、
ことを特徴とするフォーカスオン方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2008−123566(P2008−123566A)
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−302740(P2006−302740)
【出願日】平成18年11月8日(2006.11.8)
【出願人】(306025075)ソニーNECオプティアーク株式会社 (46)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年11月8日(2006.11.8)
【出願人】(306025075)ソニーNECオプティアーク株式会社 (46)
【Fターム(参考)】
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