説明

光記録媒体

【課題】記録再生の品質が良好となる光記録媒体を提供する。
【解決手段】トラッキング制御用の凹凸又は溝を有するサーボ層18と、トラッキング制御用の凹凸を有しない記録再生層14とを備えており、サーボ層18に第1波長のトラッキング用ビーム270を照射してトラッキング制御を行いながら、記録再生層14に対して第1波長よりも短い第2波長の記録再生用ビーム170を照射して情報が記録又は再生される光記録媒体であって、記録再生層14を通過させてサーボ層18に対して第1波長の光を照射した際のサーボ層18の反射率と比較して、記録再生層14を透過させてサーボ層18に対して第2波長の光を照射した際のサーボ層18の反射率が小さくなるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の記録再生層を有する光記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ディジタル動画コンテンツの視聴や、ディジタルデータの記録のために、CD−DA、CD−ROM、CD−R、CD−RW、DVD−ROM、DVD−R、DVD+/−RW、DVD−RAM、Blu−ray Disc(BD)などの光記録媒体が広く利用されている。この中でも、次世代型DVD規格の一つとされるBDは、記録再生に用いるレーザー光の波長を405nmと短くし、対物レンズの開口数を0.85に設定している。BD規格に対応した光記録媒体側は、0.32μmのピッチでトラックが形成される。このようにすることで、光記録媒体の1つの記録再生層に対して25GB以上の記録再生を可能にしている。
【0003】
ところで、動画やデータの容量は今後益々増大することが予想される。従って、光記録媒体における記録再生層を多層化することで光記録媒体の容量を増大させる方法が検討されている。BD規格の光記録媒体では、6層〜8層の記録再生層を設けることで、200GBもの超大容量を実現する技術も報告されている(非特許文献1、2参照)。
【0004】
一方、光記録媒体において記録再生層を多層化する場合、各記録再生層に対してグルーブ/ランド等のトラッキング制御用の凹凸を形成しようとすると、媒体構成が複雑となり、偏芯調整などの作業が困難になることが懸念される。また、記録再生層を設けるごとに凸凹を形成するための母型となるスタンパが必要となり、多層化すればするほど、このスタンパを使う回数が増え製作コストが増大する。
【0005】
そこで近年、光記録媒体において、凹凸や溝を有するサーボ層と、凹凸や溝を有しない記録再生層を別々に設けるようにし、トラッキング制御専用のビームを用いてサーボ層からトラッキング信号を得ながら、記録再生専用のビームによって記録再生層に情報を記録する技術が提案されている(特許文献1、2参照)。
【0006】
また、2層同時読み取りを目的として、凹凸や溝を有する記録層と、凹凸や溝を有しない記録層を交互に積層する技術も提案されている(特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−97693号公報
【特許文献2】特開2008−97694号公報
【特許文献3】国際公開WO2008/099708
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】I. Ichimura et. al., Appl. Opt, 45, 1974-1803 (2006)
【非特許文献2】K. Mishima et. al., Proc. of SPIE, 6282, 62820I (2006)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1〜3の技術の場合、例えば、記録再生専用のビームが所望の記録再生層から漏れ出した際に、この漏れ出した光がサーボ層で反射してクロストークを生じさせるという問題があった。特に、記録再生層の層数を増大させると、各記録再生層の反射率を低下させなければならないので、記録再生専用のビームの漏れ出し量が増大するという問題があった。
【0010】
本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、サーボ層と記録再生層を有する光記録媒体において、記録再生時の信号品質を向上させることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らの鋭意研究によって、上記目的は以下の手段によって達成される。
【0012】
即ち、上記目的を達成する本発明は、トラッキング制御用の凹凸又は溝を有するサーボ層と、予め積層され又は事後的に形成されてトラッキング制御用の凹凸を有しない記録再生層と、を備えており、前記サーボ層に第1波長のトラッキング用ビームを照射してトラッキング制御を行いながら、前記記録再生層に対して前記第1波長よりも短い第2波長の記録再生用ビームを照射して情報が記録又は再生される光記録媒体であって、前記記録再生層を通過させて前記サーボ層に対して前記トラッキング用ビームの前記第1波長の光を照射した際の前記サーボ層の反射率と比較して、前記記録再生層を透過させて前記サーボ層に対して前記記録再生用ビームの前記第2波長の光を照射した際の前記サーボ層の反射率が小さいことを特徴とする、光記録媒体である。
【0013】
上記目的を達成する上記光記録媒体は、前記記録再生層に前記記録再生用ビームを照射した際の前記記録再生層からの反射光量と比較して、前記記録再生層を透過させて前記サーボ層に対して前記記録再生用ビームを照射した際の前記サーボ層からの反射光量が5倍以下となることを特徴とする。
【0014】
上記目的を達成する上記光記録媒体は、前記記録再生層に前記記録再生用ビームを照射した際の前記記録再生層からの反射光量と比較して、前記記録再生層を透過させて前記サーボ層に対して前記記録再生用ビームを照射した際の前記サーボ層からの反射光量が小さいことを特徴とする。
【0015】
上記目的を達成する上記光記録媒体は、前記記録再生層と前記サーボ層の層間距離が、10μm〜200μmであることを特徴とする。
【0016】
上記目的を達成する上記光記録媒体は、前記記録再生層を通過させて前記サーボ層に対して前記トラッキング用ビームを照射した際の前記サーボ層の反射率が40%〜95%であり、前記記録再生層を透過させて前記サーボ層に対して前記記録再生用ビームを仮に照射した際の前記サーボ層の反射率が60%以下であることを特徴とする。
【0017】
上記目的を達成する上記光記録媒体の前記サーボ層は、金属を主成分として含む反射膜と、前記反射膜に接して配置され且つ該反射膜と屈折率の異なる補助膜と、を有することを特徴とする。
【0018】
上記目的を達成する上記光記録媒体の前記サーボ層は、2層以上の前記反射膜と、3層以上の前記補助膜と、を有することを特徴とする。
【0019】
上記目的を達成する上記光記録媒体は、前記サーボ層と前記記録再生層の間に、色素を分散又は結合させたフィルタ層を備えており、前記フィルタ層は、前記トラッキング用ビームの前記第1波長の吸光度が低く、前記記録再生用ビームの前記第2波長の吸光度が高いことを特徴とする。
【0020】
上記目的を達成する上記光記録媒体は、前記記録再生層を第1記録再生層とした場合に、前記前記サーボ層における前記第1記録再生層と反対側には、予め積層され又は事後的に形成され、トラッキング制御用の凹凸を有しない第2記録再生層を更に備え、前記第2記録再生層は、前記サーボ層を利用してトラッキング制御を行いながら情報が記録されることを特徴とする。
【0021】
上記目的を達成する上記光記録媒体の前記サーボ層は、基板における前記第1記録再生層側に直接形成され、前記第2記録再生層は、前記基板における前記サーボ層と反対側に形成されることを特徴とする。
【0022】
上記目的を達成する上記光記録媒体の前記基板は、光透過性材料によって構成されることを特徴とする。
【0023】
上記目的を達成する上記光記録媒体の前記第1記録再生層と前記第2記録再生層は、前記基板の厚み方向の中心を基準に対称となる位置に予め積層又は事後的に形成されることを特徴とする。
【0024】
上記目的を達成する上記光記録媒体は、前記基板の厚さが10μm〜600μmであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、サーボ層と記録再生層を有する光記録媒体において、記録再生時の信号品質を向上させることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の第1実施形態に係る光記録媒体と、その光記録再生を実現する光ピックアップの内部構成を示すブロック図である。
【図2】同光記録媒体の積層構造を示す断面図である。
【図3】(A)は同光記録媒体に対する光記録再生方法の記録手順を拡大して示す断面図であり、(B)は再生手順を拡大して示す断面図である。
【図4】(A)は第2実施形態に係る光記録媒体の積層構造を示す断面図であり、(B)は同光記録媒体に対する記録再生手順を拡大して示す断面図である。
【図5】(A)は第2実施形態に係る光記録媒体の積層構造の他の例を示す断面図であり、(B)は同光記録媒体に対する記録再生手順を拡大して示す断面図である。
【図6】第3実施形態に係る光記録媒体の積層構造を示す断面図である。
【図7】同光記録再生を実現する光ピックアップの全体構成を示す図である。
【図8】実施例に光記録媒体の積層構造を部分的に拡大して示す断面図である。
【図9】実施例と比較例の評価結果を示す表図である。
【図10】実施例と比較例の再生信号の出力波形を示す図である。
【図11】本発明の第1実施形態に係る光記録媒体の他の構成例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照して説明する。
【0028】
図1には、本発明の第1実施形態に係る光記録媒体10と、この光記録媒体10の記録再生に用いられるピックアップ90の構成が示されている。
【0029】
図2に示されるように、光ピックアップ90は、記録再生用光学系100と、トラッキング用光学系200を備える。記録再生用光学系100は、光記録媒体10の記録再生層群14に対して記録・再生を行う光学系となる。トラッキング用光学系200は、記録再生用光学系100を利用して記録再生層群14に情報を記録する際に、サーボ層18を利用してトラッキング制御を行う光学系となる。
【0030】
記録再生用光学系100の光源101から出射された発散性の記録再生用のビーム170は、球面収差補正手段193を備えたコリメートレンズ153を透過し、偏光ビームスプリッタ152に入射する。なお、ビーム170は青色波長380〜450nm(ここでは405nm)となっている。偏光ビームスプリッタ152に入射したビーム170は、この偏光ビームスプリッタ152を透過して、更に4分の1波長板154の透過によって円偏光に変換された後、トラッキング用光学系200のビームスプリッタ260に入射する。このビームスプリッタ260は、透過率が大きく、且つ反射率が小さく設定されている。具体的に反射率に対する透過率の比率が10倍又はそれ以上に設定される。従って、ビーム170はビームスプリッタ260を透過して、対物レンズ156で収束ビームに変換される。このビーム170は、光記録媒体10の内部に形成された、記録再生対象となる記録再生層群14又はサーボ層18のいずれかに集光される。
【0031】
対物レンズ156の開口はアパーチャ155で制限され、開口数NAを0.70〜0.90(ここでは0.85)としている。例えば、記録再生層群14で反射されたビーム170は、対物レンズ156、ビームスプリッタ260、及び4分の1波長板154を透過して往路とは90度異なる直線偏光に変換された後、偏光ビームスプリッタ152で反射される。
【0032】
偏光ビームスプリッタ152で反射されたビーム170は、集光レンズ159を透過して収束光に変換され、シリンドリカルレンズ157を経て、光検出器132に入射する。ビーム170には、シリンドリカルレンズ157を透過する際、非点収差が付与される。
【0033】
光検出器132は、図示しない4つの受光部を有し、それぞれ受光した光量に応じた電流信号を出力する。これら電流信号から、非点収差法によるフォーカス誤差(以下FEとする)信号、再生時に限定されるプッシュプル法によるトラッキング誤差(以下TEとする)信号、光記録媒体10に記録された情報の再生信号等が生成される。FE信号およびTE信号は、所望のレベルに増幅および位相補償が行われた後、アクチュエータ191および192にフィードバック供給されて、フォーカス制御およびトラッキング制御がなされる。なお、記録再生用光学系100によるトラッキング制御は再生時のみ利用される。
【0034】
トラッキング用光学系200の光源201から出射された、赤色波長630〜680nm(ここでは650nm)となる発散性のトラッキング制御用のビーム270は、球面収差補正手段293を備えたコリメートレンズ253を透過し、偏光ビームスプリッタ252に入射する。偏光ビームスプリッタ252に入射したビーム270は、偏光ビームスプリッタ252を透過して、更に4分の1波長板254を透過して円偏光に変換された後、ビームスプリッタ260で反射される。このビーム270は更に対物レンズ156で収束ビームに変換されて、光記録媒体10の内部に形成されたサーボ層18に集光される。サーボ層18で反射されたビーム270は、対物レンズ156を透過してビームスプリッタ260で反射し、4分の1波長板254において往路とは90度異なる直線偏光に変換された後、偏光ビームスプリッタ252で更に反射される。偏光ビームスプリッタ252で反射されたビーム270は、集光レンズ259を透過して収束光に変換され、シリンドリカルレンズ257を経て、光検出器232に入射する。ビーム270には、シリンドリカルレンズ257を透過する際、非点収差が付与される。
【0035】
光検出器232は、図示しない4つの受光部を有し、それぞれ受光した光量に応じた電流信号を出力する。これら電流信号から、プッシュプル法によるトラッキング誤差(TE)信号が生成される。なお、サーボ層18にも情報が記録されている場合は、この電流信号から再生信号を生成してもよい。この光検出器232側では、フォーカス誤差(FE)信号を生成する必要はないが、勿論、フォーカス誤差(FE)信号を生成しても良い。
【0036】
なお、既に述べたように、ビームスプリッタ260は、透過率が大きく且つ反射率が小さく設定されいる。従って、記録再生用光学系100の光源101から出射され、記録再生層群14のいずれかで反射した戻り光の一部は、ビームスプリッタ260で反射してトラッキング用光学系200側に進む。反対に、トラッキング用光学系200の光源201から出射され、サーボ層18で反射した戻り光の大部分は、ビームスプリッタ260を透過して記録再生用光学系100側に進む可能性がある。記録再生用光学系100とトラッキング用光学系200において、両者の戻り光が混合する場合であっても、記録再生用光学系100とトラッキング用光学系200は、光記録媒体10内において互いに異なる焦点位置となるため、各ビーム170、270の拡がり角度が異なる。従って、特に図示しない一定形状のスリットやアパーチャを用いてビーム170、270の一方のみを抽出してから、各光検出器132、232に入射させることで、混合による影響を除去する。もちろん、波長依存性を有するフィルタによってビーム170、270を分離しても良い。
【0037】
とりわけ、記録再生用光学系100におけるビーム170の光記録媒体10内の焦点位置と、トラッキング用光学系200のビーム270の光記録媒体10内の焦点位置の差が、常に一定の範囲内に収まるようにすると、上述のスリットやアパーチャを簡潔な構造にできるので、より簡便にビームの分離が可能となる。焦点距離の差を安定させるためには、記録再生用のビーム170の焦点位置と、サーボ用のビーム270の焦点位置が近い方が、誤差が小さくなるので好ましいと言える。
【0038】
記録再生用光学系100による記録再生層群14への情報の記録時は、トラッキング用光学系200のTE信号について、所望のレベルに増幅および位相補償が行われた後、アクチュエータ191および192にフィードバック供給されてトラッキング制御がなされる。この結果、トラッキング用光学系200のトラッキング制御に基づいて、記録再生用光学系100が記録再生層群14に情報を記録するようになっている。なお、本実施形態では、記録再生層群14に記録済みの情報を再生する際は、記録再生層群14上の記録マークを利用して記録再生用光学系100が独自にトラッキング制御するようにしている。一方、トラッキング用光学系200のトラッキング制御を利用しながら再生することも勿論可能である。
【0039】
図2には、本実施形態の光記録媒体10の断面構造が拡大して示されている。
【0040】
光記録媒体10は、外径が約120mm、厚みが約1.2mmの円盤形状となっている。この光記録媒体10は、光入射面10A側から、カバー層11、記録再生層群14及び中間層群16、バッファ層17、サーボ層18、支持基板12を備えて構成される。
【0041】
記録再生層群14は、ここでは第1〜第6記録再生層14A〜14Fを備えて構成されており、それぞれに情報を記録できる構造となっている。この第1〜第6記録再生層14A〜14Fは、トラッキング制御用の凹凸や溝を有しない平面構造となっており、第1光学系100から高エネルギーとなる記録用のビーム170が照射されると、記録マークが形成される。なお、この記録再生層群14の種類として、情報の追記が出来るが書き換えが出来ない追記型記録再生層と、情報の書換が可能な書換型記録再生層がある。
【0042】
支持基板12は、光記録媒体に求められる厚み(約1.2mm)を確保するための、厚さ約1.0mmで直径120mmとなる円盤形状の基板であり、この支持基板12の光入射面10A側の面にサーボ層18が形成される。具体的には、支持基板12における光入射面10A側に、その中心部近傍から外縁部に向けてランド18Aおよびグルーブ18Bが螺旋状に形成される。このランド18Aおよびグルーブ18Bが、トラッキング制御用の凹凸(溝)となり、第2光学系200のビーム270がガイドされるようになっている。
【0043】
なお、支持基板12の材料としては種々の材料を用いることが可能であり、例えば、ガラス、セラミックス、樹脂を利用できる。これらのうち成型の容易性の観点から樹脂が好ましい。樹脂としてはポリカーボネイト樹脂、オレフィン樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、シリコーン樹脂、フッ素系樹脂、ABS樹脂、ウレタン樹脂等が挙げられる。これらの中でも、加工性などの点からポリカーボネイト樹脂やオレフィン樹脂が特に好ましい。
【0044】
サーボ層18は、支持基板12のトラッキング制御用の凹凸(グルーブおよびランド)の上に反射性の層を形成することによって構成される。記録再生層群14に対して記録再生用のビーム170を照射した際の反射光量と比較して、記録再生用のビーム170をサーボ層18に仮に照射した際の反射光量が5倍以下となるように設定されている。このようにすると、記録再生層群14に対して記録再生用のビーム170を照射した際に、このビーム170がサーボ層18側に漏れ出したとしても、この漏れ光のサーボ層18における反射光量が減衰されるので、クロストークの影響を極めて小さくすることができる。
【0045】
更に本実施形態では、トラッキング用ビーム270をサーボ層18に照射した際の反射率と比較して、記録再生用ビーム170をサーボ層18に仮に照射した際のサーボ層18の反射率が小さく設定されている。即ち、サーボ層18は、長い波長となる赤色のビーム270が照射されると反射率が高くなり、短い波長となる青色のビーム170が照射されると反射率が低くなるような波長依存特性を有している。
【0046】
具体的に、サーボ層18に対してトラッキング用ビーム270を照射した際のサーボ層18の反射率が40%〜95%であり、サーボ層18に対して記録再生用ビーム170を仮に照射した際のサーボ層18の反射率が60%以下となるように設定されている。
【0047】
このような光学特性を有するサーボ層18の構成例として、少なくともAg、Al、Au、Cuのいずれかを主成分として含む反射膜(金属膜)と、この反射膜に隣接して積層される補助膜を備えるようにする。反射膜と補助膜の屈折率と厚みを異ならせることで、長波長(赤色波長)のビーム270に関する反射率を高く、短波長(青色波長)のビーム170に関する反射率を低くすることができる。サーボ層18は、金属膜となる反射膜を1層以上積層し、更に補助膜を2層以上積層する事によって3層以上の構造とすることが好ましい。この際、反射膜を支持基板12側に積層し、補助膜をその上に積層する。例えば、Agの反射膜、Siの補助膜、ZnS−SiO2の補助膜を支持基板12側から順番に積層した3層構造も可能である。
【0048】
更にサーボ層18は、反射膜を2層以上積層し、補助膜を3層以上積層することによって5層以上の構造とすることも好ましい。この際、第1の反射膜と第2の反射膜の間に、少なくとも1層の補助膜を介在させる。例えば、Agの反射膜、ZnS−SiO2の補助膜、Cuの反射膜、Siの補助膜、ZnS−SiO2の補助膜を支持基板12側から順番に積層した5層構造が好ましい。この5層構造にすると、サーボ層18にも情報を記録する事が可能となる。なお、本実施形態では、ここで例示した5層構造のサーボ層18を採用している。
【0049】
このサーボ層18によれば、長波長のビーム270の反射率を高く、短波長のビーム170の反射率を低くすることができる。
【0050】
サーボ層18における隣接するランド18A同士又はグルーブ18B同士のピッチP1は、ここでは0.74μm未満に設定される。具体的にピッチP1は0.6μm〜0.7μmの範囲内に設定することが望ましく、より好ましくは0.64μm近傍に設定される。一方で、記録マークのトラックピッチP2は、ランド18A及びグルーブ18BのピッチP1の半分(1/2)に設定される。即ち、記録マーク間のトラックピッチP2は、0.37μm未満に設定され、望ましくは0.26μm〜0.35μmの範囲内に設定され、より好ましくは0.32μm近傍に設定される。結果、記録マーク間のトラックピッチP2は、BD規格との互換性のある0.32μm前後となる。
【0051】
サーボ層18のランド18A同士/グルーブ18B同士のピッチP1(0.64μm前後)は、比較的長い赤色波長領域のビーム270で十分なトラッキングができる大きさとなる。本実施形態では、ランド18Aとグルーブ18Bの双方を利用してトラッキングを行う。結果、サーボ層18のピッチP1に対して、記録マークのトラックピッチP2は、その半分の0.32μm前後となる。このように、ランド18Aとグルーブ18Bをそれぞれ利用してトラッキング制御することで、サーボ層18のピッチP2を小さくしなくても、記録再生層群14の記録マークのトラックピッチP2を小さくできる。
【0052】
バッファ層17は、光透過性のアクリル系の紫外線硬化型樹脂により構成されている。このバッファ層17の厚みは、10μm〜200μmに設定されることが好ましい。なお、このバッファ層17の厚みが10μm以下であると、サーボ層18と記録再生層群14が接近しすぎてしまい、互いに悪影響を及ぼしやすくなる。一方、バッファ層17の厚みが200μm以上になると、バッファ層17を成膜する工程において厚みの均一性が悪化しやすくなる。ここでは30μmに設定されている。
【0053】
バッファ層17の光入射面10A側に積層される第1〜第6記録再生層14A〜14Fは、それぞれ、追記型記録膜の両外側に誘電体膜を積層した3層構造となっている(図示省略)。なお、この第1〜第6記録再生層14A〜14Fは、第1光学系100における青色波長領域(短い波長)のビーム170に対して光反射率・吸収率・透過率等が最適化されている。
【0054】
各記録再生層の誘電体膜は、追記型記録膜を保護するという基本機能に加えて、記録マークの形成前後における光学特性の差を拡大させる役割も果たす。
【0055】
なお、ビーム170を照射した場合に、誘電体膜に吸収されるエネルギーが大きいと記録感度が低下しやすい。従って、これを防止するためには、これらの誘電体膜の材料として、380nm〜450nm(特に405nm)の波長領域において低い吸収係数(k)を有する材料を選択することが好ましい。なお、本実施の形態においては、誘電体膜の材料としてTiO2を用いている。
【0056】
誘電体膜に挟まれる追記型記録膜は不可逆的な記録マークが形成される膜であり、記録マークが形成された部分とそれ以外の部分(ブランク領域)は、ビーム170に対する反射率が大きく異なる。この結果、データの記録・再生を行うことができる。
【0057】
追記型記録膜は、Bi及びOを含む材料を主成分として形成される。この追記型記録膜は、無機反応膜として機能し、レーザー光の熱による化学的又は物理的な変化で反射率が大きく異なるようになっている。具体的な材料としては、Bi−Oを主成分とするか、又は、Bi−M−O(ただしMは、Mg、Ca、Y、Dy、Ce、Tb、Ti、Zr、V、Nb、Ta、Mo、W、Mn、Fe、Zn、Al、In、Si、Ge、Sn、Sb、Li、Na、K、Sr、Ba、Sc、La、Nd、Sm、Gd、Ho、Cr、Co、Ni、Cu、Ga、Pbの中から選択される少なくとも1種の元素)を主成分とすることが好ましい。なお、本実施形態では、追記型記録膜の材料として、Bi−Ge−Oを用いている。
【0058】
なお、ここでは第1〜第6記録再生層14A〜14Fにおいて追記型記録膜を採用する場合を示したが、繰り返し記録が可能な相変化記録膜を採用することも可能である。この場合の相変化記録膜は、SbTeGeを主成分とすることが好ましい。
【0059】
中間層群16は、光入射面10Aから遠い側から順番に第1〜第5中間層16A〜16Eを有しており、第1〜第6記録再生層14A〜14Fの間に積層される。各中間層16A〜16Eは、アクリル系またはエポキシ系の紫外線硬化型樹脂によって構成される。この中間層16A〜16Eの膜厚は、積層数を増大させるためには20μm以下に設定することが好ましく、第1中間層16Aが16μm、第2中間層16Bが12μm、第3中間層16Cが16μm、第4中間層16Dが12μm、第5中間層16Eが16μmとなる。つまり、2種類の膜厚(16μm、12μm)の中間層が交互に積層されている。この結果、第1〜第6記録再生層14A〜14Fの層間距離として、光入射面側から順番に第1距離(16μm)と、この第1距離と異なる第2距離(12μm)が交互に設定されることになる。また、第1距離と第2距離の差は4μmに設定される。このようにすると、層間クロストークが低減される。勿論、全ての中間層群16の膜厚を同じに設定しても良い。
【0060】
カバー層11は、中間層群16と同様に光透過性のアクリル系の紫外線硬化型樹脂により構成されており、38μmの膜厚に設定されている。
【0061】
光記録媒体10は、上記のように構成される結果、サーボ層18は、光入射面10Aから0.140mm(140μm)の距離に位置しており、また、記録再生層群14の中で光入射面10Aから最も遠い第1記録再生層14Aは、光入射面10Aから0.11mm(110μm)の距離に位置しており、第2記録再生層14Bは光入射面10Aから94μm、第3記録再生層14Cは光入射面10Aから82μm、第4記録再生層14Dは光入射面10Aから66μm、第5記録再生層14Eは光入射面10Aから54μm、そして、光入射面10Aに最も近い第6記録再生層14Fは、光入射面10Aから38μmの距離に位置することになる。また、記録再生層群14の全体的な厚み(第1記録再生層14A〜第6記録再生層14F間の距離)は72μmとなる。
【0062】
また、本実施形態の光記録媒体10では、サーボ層18が、記録再生層群14と比較して光入射面10Aから遠い位置に配置されている。このようにすると、トラッキング用のランド18A及びグルーブ18Bが、記録再生層群14に照射される記録再生用のビーム170に悪影響を与えることを低減できる。
【0063】
次に、本実施形態の光記録媒体10の製作方法について説明する。
【0064】
まず、金属スタンパを用いることによる、ポリカーボネイト樹脂の射出成型法により、グルーブおよびランドが形成された支持基板12を作製する。射出成形の型を利用して、この支持基板12には、記録再生層群14のアドレス情報、記録再生パワー等を含む記録条件、記録再生層14A〜14Fの位置又は層間距離など、媒体製作時に予め保持させておくべき基本情報がプリフォーマットされる。具体的には、ランド18A又はグルーブ18Bのウォブルを利用して、基本情報がプリフォームされる。なお、支持基板12の作製は射出成型法に限られず、2P法や他の方法によって作製しても構わない。
【0065】
その後、支持基板12におけるランド18A又はグルーブ18Bの表面にサーボ層18を形成する。サーボ層18は、スパッタリング法や気相成長法を用いて、反射膜及び補助膜を積層する事によって行う。
【0066】
次に、このサーボ層18の上にバッファ層17を形成する。バッファ層17は、例えば、粘度調整された紫外線硬化型樹脂をスピンコート法等により皮膜し、これに対して紫外線を照射して硬化することにより形成する。なお、紫外線硬化性樹脂の代わりに、光透過性樹脂からなる光透過性シートを接着剤や粘着剤等を用いてサーボ層18の上に貼り付けることで形成することもできる。また必要に応じて、このバッファ層17に対して、記録に必要とするグルーブやピットを形成する際は、2P法によって、スピンコートされる紫外線硬化性樹脂に光透過性樹脂スタンパーを貼りあわせて、この状態で紫外線を照射して硬化させることで、グルーブやピットを形成することが出来る。
【0067】
次に、第1記録再生層14Aを形成する。具体的には、誘電体膜、追記型記録膜、誘電体膜の順に気相成長法を用いて形成する。中でもスパッタリング法を用いることが好ましい。その後、第1記録再生層14Aの上に第1中間層16Aを形成する。第1中間層16Aは、例えば、粘度調整された紫外線硬化型樹脂をスピンコート法等により皮膜し、その後、この紫外線硬化性樹脂に紫外線を照射して硬化することにより形成する。この手順を繰り返すことで、第2記録再生層14B、第2中間層16B・・・と順番に積層していく。
【0068】
第6記録再生層14Fまで完成したら、その上にカバー層11を形成してこの光記録媒体10が完成する。なおカバー層11は、例えば、粘度調整されたアクリル系またはエポキシ系の紫外線硬化型樹脂をスピンコート法等により皮膜し、これに対して紫外線を照射して硬化することにより形成する。なお、本実施形態では上記製作方法を説明したが、本発明は上記製作方法に特に限定されるものではなく、他の製作技術を採用することもできる。
【0069】
次に、図3を参照して、光ピックアップ90を用いて、第1実施形態の光記録媒体10を用いた記録再生方法及びその作用について説明する。
【0070】
<記録再生層群への記録>
【0071】
例えば、サーボ層18に隣接する第1記録再生層14Aに情報を記録する場合、まず、第2光学系200の赤色波長領域のビーム270をサーボ層18に照射してトラッキングを行う。具体的には、図3(A)に示されるように、サーボ層18におけるグルーブ18Bとランド18Aの双方に対して交互にビーム270のスポットを照射してトラッキングを行う。この作業と同時に、第1光学系100の青色波長領域の記録再生用ビーム170を第1記録再生層14Aに照射する。
【0072】
その結果、グルーブ18B及びランド18Aをトラッキングしながら、このグルーブ18B又はランド18Aに沿って、第1記録再生層14Aに情報が記録される。この際、第1記録再生層14Aに照射される記録再生用ビーム170の一部は、この第1記録再生層14Aを透過してサーボ層18に到達する。しかしながら、既に述べたように、記録再生層群14に記録再生用ビーム170を照射した際の反射光量と比較して、サーボ層18に記録再生用ビーム170を照射した際の反射光量が5倍以下となるように設定されている。従って、第1記録再生層14Aから漏れ出したビーム170が、サーボ層18で反射しても、その反射光の光量は大幅に減衰される。結果、第1記録再生層14Aに形成される記録マークに悪影響を及ぼすことを抑制できる。また、サーボ層18は、記録再生用ビーム170の反射を抑制しながらも、トラッキング用ビーム270は十分に反射する。具体的には、サーボ層18において、トラッキング用ビーム270の反射率が40%〜95%と高く維持しされる。一方、記録再生用ビーム170の反射率は60%以下に抑制している。結果、安定したトラッキング制御が実現される。
【0073】
なお、サーボ層18には、光記録媒体10に関する基本仕様や、情報記録層群14の積層枚数に関する情報が、記録ピットやBCA(バーストカッティングエリア)に予め記録されており、トラッキング制御を開始する前に常に読み出すようになっている。光記録媒体に関する基本情報としては、サーボ層18の位置、第1〜第6記録再生層14A〜14Fの位置、記録再生層群の層間距離に関するルールを含むようになっている。
【0074】
第1記録再生層14Aに対して、必要な情報の記録が完了した後は、今回の追記情報(記録に関するアドレス情報、コンテンツ情報等)を第1記録再生層14Aに記録して完了する。その後、第1記録再生層14Aに対する情報の記録を再開する場合は、先ず、この第1記録再生層14Aに記録されている管理情報を再生して、前回の記録が完了した位置を確認し、その位置から記録を継続する。このようにして、第1記録再生層14A〜第6記録再生層14Fのデータ領域の全てに対して情報を記録できる。
【0075】
<記録再生層群の再生>
【0076】
例えば、サーボ層18に隣接する第1記録再生層14Aに記録されている情報を再生する場合、まず、第2光学系200の赤色波長領域のビーム270をサーボ層18に照射してトラッキングを行う。具体的には、図3(B)に示されるように、サーボ層18におけるグルーブ18B及びランド18Aに対して、ビーム270のスポットを照射してトラッキングを行う。この作業と同時に、第1光学系100の青色波長領域の記録再生用ビーム170を第1記録再生層14Aに照射する。
【0077】
その結果、グルーブ18B及びランド18Aをトラッキングしながら、このグルーブ18B又はランド18Aに沿って、第1記録再生層14Aに記録されている情報が再生される。この際、第1記録再生層14Aに照射される記録再生用ビーム170の一部は、この第1記録再生層14Aを透過してサーボ層18に到達する。しかしながら、既に述べたように、記録再生層群14にビーム170を照射した際の反射光量と比較して、サーボ層18にビーム170を仮に照射した際の反射光量が5倍以下となるように設定されている。従って、第1記録再生層14Aから漏れ出したビーム170が、サーボ層18で反射しても、その反射光の光量が大幅に減衰されるので、再生信号とのクロストークを大幅に抑制できる。また、サーボ層18は、記録再生用ビーム170の反射を抑制しながらも、トラッキング用ビーム270は十分に反射する。具体的には、サーボ層18において、トラッキング用ビーム270の反射率が40%〜95%と高く維持しながらも、記録再生用ビーム170の反射率が60%以下に抑制している。結果、記録再生用ビーム170の一部がサーボ層18に漏れ出しても、トラッキング信号の品質は低下しないで済む。このようにして、第1記録再生層14A〜第6記録再生層14Fのデータ領域に記録されている情報が再生される。
【0078】
以上、本実施形態の光記録媒体10によれば、記録再生層群14に記録再生用ビーム170を照射した際の反射率と比較して、サーボ層18に記録再生用ビーム170を仮に照射した際のサーボ層18の反射率が小さく設定されている。結果、記録再生層群14に記録再生用ビーム170を照射した際、その一部が奥側のサーボ層18に漏れ出しても、サーボ層18の反射光量が小さくなるので、記録再生動作に悪影響を及ぼすことを回避できる。
【0079】
また、本実施形態では、記録再生層群14に記録再生用ビーム170を照射した際の反射光量と比較して、サーボ層18に記録再生用ビーム170を仮に照射した際の反射光量が5倍以下に設定されるので、記録再生層群14に照射される記録再生用ビーム170が奥側のサーボ層18に漏れ出しても、このサーボ層18で殆ど吸収又は透過されるようになっている。
【0080】
一方、この光記録媒体10では、記録再生層群14を通過させてサーボ層18に対してトラッキング用ビーム270を照射した際の反射率と比較して、記録再生層群14を透過させてサーボ層18に記録再生用ビーム170を仮に照射した際の反射率が小さく設定されている。このサーボ層18を採用すれば、記録再生用ビーム170の反射を抑制しながらも、トラッキング用ビーム270を十分に反射するので、トラッキング信号の品質低下を防ぐことが可能となる。
【0081】
特に本実施形態では、上述のように、サーボ層18の光学特性を波長に依存して変化させるため、金属材料を主たる成分とする反射膜(金属膜)と、この反射膜と屈折率及び膜厚の異なる補助膜を積層した構造となっている。このようにすることで、トラッキング時に必要としない特定波長(ここでは青色波長)の反射光強度を光学的に低減させることができる。
【0082】
更に光記録媒体10を上記のように構成する結果、記録再生層群14とサーボ層18の層間距離を10μm〜200μmまで小さくすることが出来、記録再生層群14の積層数を増大させることが可能となる。
【0083】
次に、図4(A)(B)を参照して、本発明の第2実施形態に係る光記録媒体310について説明する。なお、この光記録媒体310に関して、第1実施形態の光記録媒体10と同一又は類似する部分は、図面及び説明中の符号の下二桁を一致させることで、個々の部材の説明を省略し、異なる点を中心に説明する。
【0084】
この光記録媒体310は、光入射面310A側から、カバー層311、記録再生層群314及び中間層群316、バッファ層317、サーボ層318、支持基板312を備えて構成される。
【0085】
サーボ層318は、少なくともAg、Al、Au、Cuのいずれかを主成分として含む単層の金属膜を備えて構成される。従って、補助膜は備えていない。
【0086】
バッファ層317は、サーボ層318と記録再生層群314の間に設けられ、光透過性樹脂に対して色素を混練させたり、均一に溶解させたりした材料によって構成される。具体的にバッファ層317は、トラッキング用ビーム170の第1波長(ここでは650nm)の吸光度が低く、記録再生用ビーム270の第2波長(ここでは405nm)の吸光度が高い材料が採用され、波長依存特性を有するフィルタ層として機能するようになっている。ここでは、その材料として、アゾ、ジアゾ、アゾメチンといった黄色となる発色団、助色団をもつ一般的な色素を透明樹脂に分散又は結合させたものを用いている。
【0087】
この光記録媒体310によれば、記録再生層群314に照射された記録再生用ビーム170が、サーボ層318側に漏れ出しても、この漏れ光がサーボ層318に到達する前にバッファ層317で吸収される。また、この漏れ光が仮にサーボ層318で反射しても、その反射光は再びバッファ層317で吸収される。
【0088】
また、この光記録媒体310は、サーボ層318に対してトラッキング用ビーム270を照射した際の反射率と比較して、記録再生用ビーム170を照射した際の反射率が小さくなるように設定される。記録再生用ビーム170の場合は、サーボ層318に到達する前に、バッファ層317で吸収されてしまうからである。
【0089】
以上の結果、本光記録媒体310は、再生信号とトラッキング信号の双方の品質を高めることができる。また本光記録媒体310では、バッファ層317が、記録再生層群314よりも奥側に配置される。このようにすると、色素材料に対して漂白を生じさせる紫外線等の外光は、手前側の記録再生層群314で吸収されるので、バッファ層317に到達しにくい。従って、バッファ層317の長期安定性が確保でき、光記録媒体310の経時的な劣化を抑制できる。特に有機色素を採用する場合は紫外線の影響が大きいことから、この光記録媒体310の構造が好ましい。
【0090】
なお、本実施形態では、バッファ層317が、波長帯域によって吸収率又は透過率が異なるような波長依存特性を有する材料を用いる場合を例示したが、例えば、図5(A)(B)に示されるように、バッファ層317とは別にフィルタ層317Bを配置し、このフィルタ層317Bの光透過性樹脂に色素を混練させたりすることで、フィルタ層317Bに波長依存特性を付加するようにしても良い。
【0091】
次に、図6を参照して、本発明の第3実施形態に係る光記録媒体410について説明する。なお、この光記録媒体410に関して、第1実施形態の光記録媒体410と同一又は類似する部分は、図面及び説明中の符号の下二桁を一致させることで、個々の部材の説明を省略し、異なる点を中心に説明する。
【0092】
光記録媒体410は第1表面410A側から順番に、第1カバー層411、第1記録再生層群414及び第1中間層群416、第1バッファ層417、サーボ層418、支持基板412、第2バッファ層437、第2記録再生層群434及び第2中間層群436、第2カバー層431、第2表面430Aを備えて構成される。即ち、第1実施形態の光記録媒体10と比較すると、この光記録媒体410は、支持基板412を基準とした第2表面430A側にも第2バッファ層437、第2記録再生層群434及び第2中間層群436、第2カバー層431を備えた構造となる点で異なっている。
【0093】
支持基板412は、ここでは厚みが900μmに設定されており、第1表面410A側には、その中心部近傍から外縁部に向けてランド418Aおよびグルーブ418Bが螺旋状に形成される。
【0094】
サーボ層418は、少なくともAg、Al、Au、Cuのいずれかを主成分として含む単層の金属膜を備えて構成される。従って、補助膜は備えていない。サーボ層418のランド418A同士又はグルーブ418B同士のピッチP1は、0.64μm近傍に設定される。一方で、記録マークのトラックピッチP2は、ランド418A及びグルーブ418BのピッチP1の半分(1/2)に設定される。即ち、記録マーク間のトラックピッチP2は0.32μm近傍に設定される。結果、記録マーク間のトラックピッチP2は、BD規格との互換性のある0.32μm前後となる。
【0095】
本実施形態では、ランド418Aとグルーブ418Bの双方を利用してトラッキングを行う。結果、サーボ層418のピッチP1に対して、記録マークのトラックピッチP2は、その半分の0.32μm前後となる。
【0096】
第1バッファ層417は、膜厚が30〜40μmに設定されており、光透過性樹脂に対して色素を混練させたり、均一に溶解濃させたりして、分散又は結合させた材料によって構成される。具体的に第1バッファ層417は、トラッキング用ビームとなる第1波長(ここでは650nm)の吸光度が低く、記録再生用ビームとなる第2波長(ここでは405nm)の吸光度が高い材料が採用される。ここでは、その材料として、アゾ、ジアゾ、アゾメチンといった黄色となる発色団、助色団をもつ一般的な色素を透明樹脂に分散又は結合させたものを採用している。
【0097】
第1カバー層411は、光透過性のアクリル系の紫外線硬化型樹脂により構成されており、40μmの膜厚に設定されている。
【0098】
第2バッファ層437は、膜厚が20〜40μmに設定されており、光透過性樹脂に対して色素を混練させたり、均一に溶解させたりした材料によって構成される。具体的に第2バッファ層437は、トラッキング用ビームとなる第1波長(ここでは650nm)の吸光度が低く、記録再生用ビームとなる第2波長(ここでは405nm)の吸光度が高い材料が採用される。ここでは、その材料として、アゾ、ジアゾ、アゾメチンといった黄色となる発色団、助色団をもつ一般的な色素を透明樹脂に分散又は結合させたものを採用している。
【0099】
第2バッファ層437の第2表面430A側に積層される第2記録再生層群434(L0〜L5記録再生層434A〜434F)、及び第2中間層群436は、第1記録再生層群414及び第2中間層群416と殆ど同じ構造となっている。
【0100】
第2カバー層431は、光透過性のアクリル系の紫外線硬化型樹脂により構成されており、40μmの膜厚に設定されている。
【0101】
上記のように構成される結果、光記録媒体410における支持基板412と第1バッファ層417との境界(サーボ層418)は、第1表面410Aから約150μmの距離に位置する。また、第1記録再生層群414の中で第1表面410Aから最も遠いL0記録再生層414Aは、第1表面410Aから112μmの距離に位置しており、L1記録再生層414Bは第1表面410Aから96μm、L2記録再生層414Cは第1表面410Aから84μm、L3記録再生層414Dは第1表面410Aから68μm、L4記録再生層414Eは第1表面410Aから56μm、そして、第1表面410Aに最も近いL5記録再生層414Fは、第1表面410Aから40μmの距離に位置する。また、第1記録再生層群414の全体的な厚み(L0記録再生層414A〜L5記録再生層414F間の距離)は72μmとなる。
【0102】
また、第2記録再生層群434の中で第2表面430Aから最も遠いL0記録再生層434Aは、第2表面430Aから112μmの距離に位置しており、L1記録再生層434Bは第2表面430Aから96μm、L2記録再生層434Cは第2表面430Aから84μm、L3記録再生層434Dは第2表面430Aから68μm、L4記録再生層434Eは第2表面430Aから56μm、そして、第2表面430Aに最も近いL5記録再生層434Fは、第2表面430Aから40μmの距離に位置する。また、第2記録再生層群434の全体的な厚み(L0記録再生層434A〜L5記録再生層434F間の距離)は72μmとなる。
【0103】
この光記録媒体410は、サーボ層418が非対称に配置されることを除けば、厚さ方向に対称構造となっている。結果、光記録媒体410を製作時に生じる内部応力が、厚さ方向に対称に発生することから、反りや変形を小さくすることが可能になる。特に、支持基板412を600μm以下、例えば100μmまで薄くしても、光記録媒体410の反りや変形量を抑制することが可能となる。
【0104】
図7には、第3実施形態の光記録媒体410の記録再生に用いられる第1、第2光ピックアップ90A、90Bの構成が示されている。第1光ピックアップ90Aは、光記録媒体410の一方の第1表面410A側からビームを照射する。第2光ピックアップ90Bは、光記録媒体410の他方の第2表面430A側からビームを照射する。なお、第1、第2光ピックアップ90A、90Bの内部構成は、第1実施形態で示した光ピックアップ90と略同じであることから、第1光ピックアップ90A側は図中又は文章中の符号の末尾にAを付し、第2光ピックアップ90B側は図中又は文章中の符号の末尾にBを付することで、これらの図示及び説明を省略する。
【0105】
第1光ピックアップ90Aは、記録再生用光学系100Aと、トラッキング用光学系200Aを備える。記録再生用光学系100Aは、光記録媒体410の第1記録再生層群414に対して記録再生用ビーム170Aを照射して、記録・再生を行う光学系となる。トラッキング用光学系200Aは、記録再生用光学系100Aを利用して第1記録再生層群414に情報を記録する際に、サーボ層418に対してトラッキング用ビーム270Aを照射してトラッキング制御を行う光学系となる。
【0106】
第2光ピックアップ90Bは、記録再生用光学系100Bと、トラッキング用光学系200Bを備える。記録再生用光学系100Bは、光記録媒体410の第2記録再生層群434に対して記録再生用ビーム170Bを照射して、記録・再生を行う光学系となる。トラッキング用光学系200Aは、記録再生用光学系100Aを利用して第1記録再生層群414に情報を記録する際に、サーボ層418に対してトラッキング用ビーム270Bを照射してトラッキング制御を行う光学系となる。
【0107】
次に、第1、第2光ピックアップ90A、90Bを用いて、光記録媒体410に情報を記録再生する方法について説明する。
【0108】
<第1記録再生層群の記録再生>
【0109】
例えば、第1記録再生層群414のL0記録再生層414Aに対して情報の記録再生を行う場合、まず、第1光ピックアップ90Aの赤色波長領域のトラッキング用ビーム270Aをサーボ層18に照射してトラッキングを行う。具体的には、図6に示されるように、サーボ層418におけるグルーブ418B及びランド418Aに対して、トラッキング用ビーム270Aのスポットを照射してトラッキングを行う。この作業と同時に、第1光ピックアップ90Aの青色波長領域の記録再生用ビーム170Aを、L0記録再生層414Aに照射することで、L0記録再生層414Aに対して記録又は再生を行う。
【0110】
この際、第1記録再生層群414に照射された記録再生用ビーム170Aが、サーボ層418側に漏れ出しても、この漏れ光がサーボ層418に到達する前に第1バッファ層417で吸収される。また、この漏れ光が仮にサーボ層418で反射しても、その反射光は再び第1バッファ層417で吸収される。一方、第1バッファ層417は、赤色波長のトラッキング用ビーム270Aを積極的に透過することで、トラッキング信号の光量を増大させる。結果、安定したトラッキング制御が実現される。
【0111】
<第2記録再生層群の記録再生>
【0112】
第2記録再生層群434のL0記録再生層434Aに情報を記録する場合、まず、第2光ピックアップ90Bの赤色波長領域のトラッキング用ビーム270Bを、この支持基板412を透過しながらサーボ層418に照射してトラッキングを行う。具体的には、図6に示されるように、サーボ層418におけるランド18A及びグルーブ418Bに対して、トラッキング用ビーム270Bのスポットを照射してトラッキングを行う。この作業と同時に、第2光ピックアップ90Bの青色波長領域の記録再生用ビーム170BをL0記録再生層434Aに照射することで、L0記録再生層434Aに対して記録又は再生を行う。
【0113】
この際、第2記録再生層群434に照射された記録再生用ビーム170Bが、サーボ層418側に漏れ出しても、この漏れ光がサーボ層418に到達する前に第2バッファ層437で吸収される。また、この漏れ光が仮にサーボ層418で反射しても、その反射光は再び第2バッファ層437で吸収される。一方、第2バッファ層437は、赤色波長のトラッキング用ビーム270Bを積極的に透過することで、トラッキング信号の光量を増大させる。結果、安定したトラッキング制御が実現される。
【0114】
なお、第1記録再生層群414と第2記録再生層群416に対して、同時に記録又は再生を行うことも可能である。これにより記録又は再生の転送レートが2倍になる。
【0115】
以上、第3実施形態の光記録媒体410によれば、支持基板412の一方の面のみにサーボ層418が形成され、更に、この支持基板412の両面に第1記録再生層群414と第2記録再生層群434が配置されている。結果、第1、第2記録再生層群414、434を形成する際の内部応力が、支持基板412の両側に分散されるので、光記録媒体410の反りや変形を抑制することができる。なお、このように内部応力を分散させることにより、支持基板12の厚さを10μm〜1000μmの範囲内、好ましくは10μm〜600μmの範囲内に設定しても、光記録媒体410の反りを抑制することが可能となる。
【0116】
この際、支持基板412の両側にトラッキング用の凹凸を形成しようとすると、この支持基板412の製作工程自体が複雑化し、支持基板412の精度が悪化しやすくなる。そこで本実施形態では、トラッキング用の凹凸を支持基板412の片面側に形成し、支持基板412の製作を簡潔化することで精度を高めている。また、サーボ層418を両側の第1、第2記録再生層群414、434で共用するようにしているので、第1、第2記録再生層群414、434の各記録再生層に対して、トラッキング用の凹凸を形成する必要が無くなる。結果、光記録媒体410の形状精度を一層高めることが可能となる。支持基板412の両側に第1記録再生層群414と第2記録再生層群434を配置しているので、記録容量を増大させることも可能になる。
【0117】
更に光記録媒体410では、トラッキング用の赤色波長のビーム270A、270Bを照射した場合のサーボ層418の反射率は、仮に記録再生用のビーム170A、170Bをサーボ層418に照射した場合の反射率と比較して大きく設定されている。具体的にこれを実現する為に、第1、第2バッファ層417、437に関して、ビームの波長が短いほど光吸収量が大きくなる材料が用いられている。このようにすると、青色波長となる記録再生用のビーム170A、170Bが、仮にサーボ層18側に入射しても、第1、第2バッファ層417、437で吸収されるので、サーボ層418に到達する漏れ光の光量及びサーボ層418から反射される反射光量を減衰できる。一方、赤色波長となるトラッキング用のビーム270A、270Bは、第1、第2バッファ層417、437を積極的に透過できるので、サーボ層418からの反射光量を増大させることができる。結果、記録再生用のビーム170A、170Bとトラッキング用のビーム270A、270Bのクロストークが低減され、再生信号の品質を高められると同時に、安定したトラッキング制御が実現される。
【0118】
また、ここで示したように、記録再生用のビーム170A、170Bをサーボ層418に仮に照射した場合の反射率が小さくすることは、結果として、第1、第2バッファ層417、437の厚みを薄くできることに繋がる。本実施形態では、具体的に、好ましくは200μm以下、望ましくは100μm以下、更に望ましくは50μm以下にすることが可能になる。このように第1、第2バッファ層417、437の厚みを薄くできると、その分だけ、第1、第2バッファ層417、437を成膜する時の膜厚誤差を小さくできる。同時に、支持基板412の厚みを大きくすることができるので、光記録媒体410の製作時の反りを一層低減させることが可能となる。
【0119】
更にこの光記録媒体410では、第1バッファ層417と第2バッファ層437の厚みが、略同じに設定されている。結果、第1、第2バッファ層417、437の形成工程中の支持基板412の反りを抑制することができる。これは、支持基板412を薄くしたり、剛性の低い材料で構成したりできることを意味し、その分だけ第1記録再生層群414と第2記録再生層群434の層数を増大させることが可能となる。
【0120】
また光記録媒体410の第1記録再生層群414と第2記録再生層群434は、支持基板412の中心を基準として、厚み方向に対称位置に積層されている。従って、第1、第2記録再生層群414、434に生じる内部応力も対称になるので、光記録媒体410の反りを抑制できることになる。
【0121】
なお、本第3実施形態の光記録媒体410を製作する際は、第1バッファ層417と第2バッファ層437、第1記録再生層群414と第2記録再生層群434、第1中間層群416と第2中間層群436を、両側の面において同時に形成していくことが好ましい。結果、紫外線硬化時の発生する内部応力が、支持基板412の両側に均等に作用するので、光記録媒体410の反りを一層低減できることになる。
【0122】
なお、本実施形態では、第1、第2バッファ層417、437において、赤色波長と青色波長で光吸収率が異なる特性を付与し、結果的に、サーボ層418の反射率が、トラッキング用ビームと記録再生用ビームで異なるようにしたが、本発明はこれに限定されない。例えば、サーボ層418に形成される反射膜自体に、波長によって反射率が異なるような波長依存特性を付与するようにしても良い。また、第1、第2バッファ層417、437とは別に、光透過率や吸収率の波長依存特性を有するフィルタ層を別途形成するようにしても良く、また、基板材料に波長依存特性を付与させても良い。
【実施例】
【0123】
第1実施形態の光記録媒体10の特性を簡易的に確認することを目的として、この光記録媒体を実際に作成し、一般的なスペクトロメーターとしての機能をもつ光ディスク業界で標準的な光ディスク用測定機ETA−optic(独Steag社製)を用いて評価を行った。具体的には、この光記録媒体のサーボ層に対して、記録再生用のレーザーダイオードの波長405nm付近の反射率と、トラッキング用のレーザーダイオードの波長650nm付近の反射率の測定を行った。この結果、青色波長(405nm)の反射率は9%、赤色波長(650nm)の反射率は52%となり、サーボ層に対して記録再生用ビームの波長の光を照射した際のサーボ層の反射率が、トラッキング用ビームの波長の光を照射した時よりも小さいことを確認した。
【0124】
更に、このサーボ層の反射率をより詳細に確認する為に、サーボ層の各金属膜及び補助膜を形成しない(透明サーボ層となる)計算用ディスクを別途作成し、同じように反射率を評価した。この計算用ディスクと上記通常の光記録媒体の反射率の差分をとれば、サーボ層独自の反射率特性を分析できる。この計算用ディスクによる反射率の測定では、青色波長(405nm)が14%、赤色波長(650nm)では32%となった。更に、通常の光記録媒体と計算用ディスクとの光学的な差分(これは単純な引き算ではなく、様々な状況を想定した光学的な差分を意味している)を算定すると、サーボ層からの独自の反射率の成分は、青色波長で1%以下、赤色波長20%程度となった。即ち、実際の光記録媒体におけるサーボ層からの反射に関しては、トラッキング用ビームの波長の反射率に対して、記録再生用ビームの波長の反射率が大幅に小さいことを確認した。
【0125】
次に、更に実際の信号処理特性に近い状態での検証を行うために、実施例1、2に係る光記録媒体として、第1実施形態で示した光記録媒体10の記録再生層群14の積層数を単層としたものを製作した。即ち、この光記録媒体10は、図8に示されるように、カバー層11と、記録再生層14と、バッファ層17と、サーボ層18と、支持基板12を備えるようにした。
【0126】
なお、実施例1のサーボ層18は、Agの反射膜、ZnS−SiO2の補助膜、Cuの反射膜、Siの反射膜、ZnS−SiO2の補助膜を積層した5層構造膜を採用し、全体の膜厚を119nmとした。なお、そのうちのAgの反射膜及びCuの反射膜の合計厚みを91nmとした。また実施例1では、バッファ層17の厚みを30μmとした。実施例2では、サーボ層18におけるAgの反射膜及びCuの反射膜の合計厚みは同じく91nmとする一方で他の補助膜の厚みを変えた。また、バッファ層17の厚みも40μmに変更した。
【0127】
また、実施例3に係る光記録媒体として、第2実施形態で示した光記録媒体310の記録再生層群14の積層数を単層としたものを製作した。この実施例3のサーボ層18には、膜厚80nmのAg合金の単層金属膜を採用し、バッファ層17には、アゾ骨格などといった黄色の発色団、助色団をもつ一般的な色素を、上記透明アクリル系樹脂材料に混合したものを用いた。この材料は、トラッキング用ビーム170の第1波長(ここでは650nm)の吸光度が低く、記録再生用ビーム270の第2波長(ここでは405nm)の吸光度が高い材料とした。
【0128】
なお、実施例1〜3の全てにおいて、記録再生層14はBi−Ge−Oを材料に用いて構成した。また、記録再生層14の再生信号の評価を行うために、記録再生層14に敢えて信号品質評価用のランド19A及びグルーブ19Bを形成し、このランド19A及びグルーブ19Bを利用したトラッキング信号の品質を評価することで、再生信号の品質を間接的に評価する手法を採用した。
【0129】
一方、比較例1〜3の光記録媒体として、バッファ層17に光吸収機能を付加せずに、サーボ層18を金属の単層膜を採用した光記録媒体を製作した。比較例1のサーボ層18は膜厚80nmのAg合金の金属膜とし、比較例2のサーボ層18は膜厚20nmのAg合金の金属膜とし、比較例3のサーボ層18は膜厚10nmのAg合金の金属膜とした。
【0130】
各光記録媒体の評価方法として、青色波長となる記録再生用ビーム170を記録再生層14に照射し、ランド19A又はグルーブ19Bのトラッキング信号を含む反射光を光検出器132による電圧変動で検出し、トラッキング制御の可否と、トラッキング信号中のノイズ量について判定を行った。記録再生層14の反射光に含まれるトラッキング信号でランド19A又はグルーブ19Bを追従できれば、記録再生層14の再生信号の品質も良好であると推測できる。同様に、このトラッキング信号に含まれるノイズが少なければ、再生信号の品質が良好であると推測できる。なお、記録再生層14に照射される青色波長の記録再生用ビーム170の一部はサーボ層18側に漏れ出し、この漏れ光がサーボ層18で強く反射すると、トラッキング信号に含まれるノイズが増大する。
【0131】
また、参考として、記録再生用ビーム170を記録再生層14に照射した場合の反射光量と、この記録再生用ビーム170サーボ層18に直接照射した場合の反射光量を確認し、両者の倍率を評価した。また、サーボ層18に対して、青色波長(405nm)の記録再生用ビーム170と赤色波長(650nm)のトラッキング用ビーム270を照射して、ぞれぞれの反射率を確認し、高い・中間・低いの3段階で評価した。なお、評価装置には、光ディスク業界で標準的な検査器であるパルステック工業性光ディスク検査器ODU1000を用いた。
【0132】
以上の評価結果を図9に示す。実施例1では、記録再生用ビーム170をサーボ層18に照射した際の反射光量が74.0mVとなり、記録再生用ビーム170を記録再生層14に照射した際の反射光量が84.5mVとなり、記録再生層14の反射光量に対するサーボ層18の反射光量の比率が0.9倍となった。更に、この反射光(トラッキング信号)を利用したトラッキングは良好であり、このトラッキング信号に含まれるノイズも少なかった。なお、サーボ層18に対して、青色波長(405nm)の記録再生用ビーム170を照射した場合の反射率は低くなり、赤色波長(650nm)のトラッキング用ビーム270を照射した場合の反射率は高くなった。
【0133】
実施例2では、記録再生用ビーム170をサーボ層18に照射した際の反射光量が112.0mVとなり、記録再生用ビーム170を記録再生層14に照射した際の反射光量が160.0mVとなり、記録再生層14の反射光量に対するサーボ層18の反射光量の比率が0.7倍となった。更に、この反射光(トラッキング信号)を利用したトラッキングは良好であり、このトラッキング信号に含まれるノイズも極めて少なかった。なお、サーボ層18に対して、青色波長(405nm)の記録再生用ビーム170を照射した場合の反射率は低くなり、赤色波長(650nm)のトラッキング用ビーム270を照射した場合の反射率は高くなった。
【0134】
実施例3では、記録再生用ビーム170をサーボ層18に照射した際の反射光量が740.0mVとなり、記録再生用ビーム170を記録再生層14に照射した際の反射光量が160.5mVとなり、記録再生層14の反射光量に対するサーボ層18の反射光量の比率が4.5倍となった。更に、この反射光(トラッキング信号)を利用したトラッキングは良好であり、このトラッキング信号に含まれるノイズも少なかった。なお、サーボ層18に対して、青色波長(405nm)の記録再生用ビーム170を照射した場合の反射率は低くなり、赤色波長(650nm)のトラッキング用ビーム270を照射した場合の反射率は高くなった。この実施例3から、記録再生層14の反射光量に対するサーボ層18の反射光量の比率が5倍以下であれば、信号品質を良好に維持できることが分かる。また実施例1、2からこの比率が1倍以下であれば非常に良好に維持できることが分かる。
【0135】
比較例1では、記録再生用ビーム170をサーボ層18に照射した際の反射光量が5000.0mVとなり、記録再生用ビーム170を記録再生層14に照射した際の反射光量が216.0mVとなり、記録再生層14の反射光量に対するサーボ層18の反射光量の比率が23.1倍となった。更に、この反射光(トラッキング信号)を利用したトラッキングは不可であり、このトラッキング信号に含まれるノイズも極めて大きかった。なお、サーボ層18に対して、青色波長(405nm)の記録再生用ビーム170を照射した場合の反射率は高くなり、赤色波長(650nm)のトラッキング用ビーム270を照射した場合の反射率も高くなった。
【0136】
比較例2では、記録再生用ビーム170をサーボ層18に照射した際の反射光量が1615.0mVとなり、記録再生用ビーム170を記録再生層14に照射した際の反射光量が216.0mVとなり、記録再生層14の反射光量に対するサーボ層18の反射光量の比率が19.7倍となった。更に、この反射光(トラッキング信号)を利用したトラッキングは悪い状態であり、このトラッキング信号に含まれるノイズも極めて大きかった。なお、サーボ層18に対して、青色波長(405nm)の記録再生用ビーム170を照射した場合の反射率は中程度なり、赤色波長(650nm)のトラッキング用ビーム270を照射した場合の反射率も中程度なった。
【0137】
比較例3では、記録再生用ビーム170をサーボ層18に照射した際の反射光量が930.0mVとなり、記録再生用ビーム170を記録再生層14に照射した際の反射光量が174.5mVとなり、記録再生層14の反射光量に対するサーボ層18の反射光量の比率が5.3倍となった。更に、この反射光(トラッキング信号)を利用したトラッキングは可能であったが、このトラッキング信号に含まれるノイズが極めて大きかった。なお、サーボ層18に対して、青色波長(405nm)の記録再生用ビーム170を照射した場合の反射率は極めて低くなるが、赤色波長(650nm)のトラッキング用ビーム270を照射した場合の反射率も低くなってしまった。即ち、実施例3と比較例3を比較すると、記録再生層14の反射光量に対するサーボ層18の反射光量の比率が5倍を超えると、比較例3のように信号特性が悪化し、5倍以下になると実施例3のように信号特性が良好になることが分かる。
【0138】
なお、図10(A)の画面出力の下段に示される信号波形は、実施例1のトラッキング信号であり、ノイズ成分が少なく信号品質が極めて良好であることが分かる。一方、図10(B)の画面出力の下段に示される信号波形は、比較例1のトラッキング信号であり、ノイズ成分が多く信号品質が悪いことが分かる。
【0139】
以上の全ての実施形態では、各記録再生層として、予め記録膜が成膜されている場合に限って示したが、本発明はこれに限定されない。例えば図11に示される光記録媒体510のように、将来の記録再生層群となり得る場所の全体を、所定の厚みを有するバルク層513とすることができる。このバルク層513に記録用ビーム170が照射されると、ビームスポットの焦点部分のみが状態変化をおこして記録マークが形成される。即ち、本発明における光記録媒体は、ビームが照射される記録再生層が予め形成されたものに限られず、平面領域に記録マークが随時形成され、この記録マークの集合体として、記録再生層群514が事後的に多層構成される場合も含んでいる。光記録媒体510にバルク層513の構造を採用することにより、バルク層513の範囲内であれば、記録再生層の位置を自由に設定できる。第3実施形態で示した光記録媒体410でも同様のバルク構造を採用することができる。
【0140】
また本実施形態では、トラッキング用のビームの波長が赤色帯域と、記録再生用のビーム波長が青色帯域となる場合を示したが、本発明はこれに限定されず、他の波長領域のビームを採用しても良い。
【0141】
また本実施形態では、記録再生層群において、2種類の層間距離(16μm、12μm)を交互に設定する場合を示したが、本発明はこれに限定されず、3種類以上の層間距離を組み合わせても良い。勿論、全て同じ膜厚に設定しても良い。

【産業上の利用可能性】
【0142】
本発明の光記録媒体等は、サーボ層と記録再生層を有する各種光記録媒体に適用することができる。
【符号の説明】
【0143】
10、310、410、510 光記録媒体
11、311 カバー層
12、312 支持基板
14、314 記録再生層群
16、316 中間層群
17、317 バッファ層
18、318 サーボ層
412 支持基板
414 第1記録再生層群
416 第1中間層群
417 第1バッファ層
418 サーボ層
431 第2カバー層
434 第2記録再生層群
436 第2中間層群
437 第2バッファ層
90 光ピックアップ
90A 第1光ピックアップ
90B 第2光ピックアップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トラッキング制御用の凹凸又は溝を有するサーボ層と、予め積層され又は事後的に形成されてトラッキング制御用の凹凸を有しない記録再生層と、を備えており、前記サーボ層に第1波長のトラッキング用ビームを照射してトラッキング制御を行いながら、前記記録再生層に対して前記第1波長よりも短い第2波長の記録再生用ビームを照射して情報が記録又は再生される光記録媒体であって、
前記記録再生層を通過させて前記サーボ層に対して前記トラッキング用ビームの前記第1波長の光を照射した際の前記サーボ層の反射率と比較して、前記記録再生層を透過させて前記サーボ層に対して前記記録再生用ビームの前記第2波長の光を照射した際の前記サーボ層の反射率が小さいことを特徴とする、光記録媒体。
【請求項2】
前記記録再生層に前記記録再生用ビームを照射した際の前記記録再生層からの反射光量と比較して、前記記録再生層を透過させて前記サーボ層に対して前記記録再生用ビームを照射した際の前記サーボ層からの反射光量が5倍以下となることを特徴とする、
請求項1に記載の光記録媒体。
【請求項3】
前記記録再生層に前記記録再生用ビームを照射した際の前記記録再生層からの反射光量と比較して、前記記録再生層を透過させて前記サーボ層に対して前記記録再生用ビームを照射した際の前記サーボ層からの反射光量が小さいことを特徴とする、
請求項1又は2に記載の光記録媒体。
【請求項4】
前記記録再生層と前記サーボ層の層間距離が、10μm〜200μmであることを特徴とする、
請求項1乃至3のいずれかに記載の光記録媒体。
【請求項5】
前記記録再生層を通過させて前記サーボ層に対して前記トラッキング用ビームを照射した際の前記サーボ層の反射率が40%〜95%であり、前記記録再生層を透過させて前記サーボ層に対して前記記録再生用ビームを仮に照射した際の前記サーボ層の反射率が60%以下であることを特徴とする、
請求項1乃至4のいずれかに記載の光記録媒体。
【請求項6】
前記サーボ層は、金属を主成分として含む反射膜と、前記反射膜に接して配置され且つ該反射膜と屈折率の異なる補助膜と、を有することを特徴とする、
請求項1乃至5のいずれかに記載の光記録媒体。
【請求項7】
前記サーボ層は、2層以上の前記反射膜と、3層以上の前記補助膜と、を有することを特徴とする、
請求項6のいずれかに記載の光記録媒体。
【請求項8】
前記サーボ層と前記記録再生層の間に、色素を分散又は結合させたフィルタ層を備えており、
前記フィルタ層は、前記トラッキング用ビームの前記第1波長の吸光度が低く、前記記録再生用ビームの前記第2波長の吸光度が高いことを特徴とする、
請求項1乃至7のいずれかに記載の光記録媒体。
【請求項9】
前記記録再生層を第1記録再生層とした場合に、
前記前記サーボ層における前記第1記録再生層と反対側には、予め積層され又は事後的に形成され、トラッキング制御用の凹凸を有しない第2記録再生層を更に備え、
前記第2記録再生層は、前記サーボ層を利用してトラッキング制御を行いながら情報が記録されることを特徴とする、
請求項1乃至8のいずれかに記載の光記録媒体。
【請求項10】
前記サーボ層は、基板における前記第1記録再生層側に直接形成され、
前記第2記録再生層は、前記基板における前記サーボ層と反対側に形成されることを特徴とする、
請求項9に記載の光記録媒体。
【請求項11】
前記基板は、光透過性材料によって構成されることを特徴とする、
請求項10に記載の光記録媒体。
【請求項12】
前記第1記録再生層と前記第2記録再生層は、前記基板の厚み方向の中心を基準に対称となる位置に予め積層又は事後的に形成されることを特徴とする、
請求項9乃至11のいずれかに記載の光記録媒体。
【請求項13】
前記基板の厚さが10μm〜600μmであることを特徴とする、
請求項9乃至12のいずれかに記載の光記録媒体

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図11】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−208991(P2012−208991A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−73934(P2011−73934)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】