説明

光記録方法及び光記録装置

【課題】
モードロックレーザを用いて媒体の適切な位置に適切な形状の記録マークを形成可能な光記録方法及び光記録装置を提供する。
【解決手段】
モードロックレーザ2から所定時間間隔でレーザ光を射出し(ST302)、射出されたレーザ光のパルスの振幅を、半導体光増幅器3により所定時間毎に変調し(ST303)、回転する記録媒体10に照射する(ST304)ので、強度の大きいレーザ光を照射したい記録媒体10の位置(図4の50〜70(nm))に強度の大きいレーザ光を照射し、強度の小さいレーザ光を照射したい記録媒体10の位置(図4の40〜50、70〜80(nm))には強度の小さいレーザ光を照射して、記録媒体10の適切な位置に適切な形状(記録面内方向Xの長さがL1、厚さ方向Zの長さがL2)の記録マークGを形成することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、媒体に光を照射し情報を媒体に記録する光記録方法及び光記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在のCD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disc)、Blu−ray Discの次世代の光ディスクとして、媒体に定在波を記録する方式が提案されている。
【0003】
例えば、照射された光強度によって屈折率が変化する媒体中に、一旦光を集光し、その後光ディスク裏面に設けられた反射装置を用いてもう一度逆方向から光を同一焦点位置に集光する。その結果、光スポットサイズの小さなホログラムを媒体に形成することにより、情報を記録する。
【0004】
再生時には、同じように光ディスク表面から照射した光の反射光を読み取ることにより情報を判別する。
【0005】
媒体中に層状に情報を記録することで通常の光ディスクを層数分まとめて記録することが可能である(例えば、非特許文献1参照。)。
【非特許文献1】(R. R. McLeod etal.,"Microholographicmultilayer optical disk data storage," Appl. Opt., Vol. 44, 2005, pp3197)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、モードロックレーザ(例えば、Ti:S超短パルスレーザ)を用い、パルス列を一定の露光時間で媒体に照射することにより、例えば媒体にボイドを形成するボイド形成型体積記録の場合には、媒体が回転している状態ではボイドの形状を適切に制御することが困難である、という問題がある。
【0007】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、モードロックレーザ光源を用いて媒体の適切な位置に適切な形状の記録マークを形成可能な光記録方法及び光記録装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明に係る光記録方法は、モードロックレーザ光源からレーザ光を射出し、媒体に一の記録マークを形成する期間で、前記レーザ光のパルスを変調し、前記変調されたレーザ光を前記媒体に照射する。
【0009】
モードロックレーザ光源は、所定の時間間隔で超短パルス光(例えばパルス幅がピコ秒〜フェムト秒のオーダー)を発生する機能を有するレーザである。モードロックレーザ光源から射出されるレーザ光は、パルス幅が非常に小さくパルスの振幅は非常に大きいので、媒体への記録マークの形成に適用可能である。
【0010】
本発明では、媒体に一の記録マークを形成する期間で、モードロックレーザ光源から射出されるレーザ光のパルスを変調して媒体に照射するので、強度の大きいレーザ光を照射したい媒体の位置に強度の大きいレーザ光を照射し、強度の小さいレーザ光を照射したい媒体の位置には強度の小さいレーザ光を照射して、媒体の適切な位置に適切な形状の記録マークを形成することができる。
【0011】
前記変調は前記パルスの振幅を変調する。これにより、モードロックレーザ光源から射出されたレーザ光の複数のパルス列により一の記録マークを形成するときに、パルス列の両端のパルスの振幅より中央のパルスの振幅を大きくすることで、記録マークの形状を適切に制御することができる。
【0012】
前記変調は前記パルスの周波数を変調する。これにより、モードロックレーザ光源から射出されたレーザ光の複数のパルス列により一の記録マークを形成するときに、所定時間当たりのパルス列のパルス数を減少させることで、記録マークの適切な形成を確保しつつレーザ発光に必要な電気エネルギー、発熱量及び消費電力を低減させることができる。
【0013】
前記変調されたレーザ光を回転する前記媒体に照射する。
【0014】
これにより、回転する媒体に対してレーザ光を照射し、記録マークを媒体に大量に形成することができる。
【0015】
前記変調は、前記記録マークを形成するパルス列のうち中央のパルスの振幅がピークとなるように変調する。
【0016】
これにより、記録マークの形状を中央が両端より大きくなった所望の記録マークを形成することができる。
【0017】
前記変調は、前記記録マークを形成するパルス列のうち両端のパルスの振幅がピークとなるように変調する。
【0018】
これにより、記録マークの形状を両端が中央より大きくなった両釣鐘形状とすることができ、記録マークの再生時に再生信号のエッジ反応を鋭くすることができる。
【0019】
前記変調は、前記モードロックレーザ光源から射出されたレーザ光を受光し増幅して出力可能な半導体光増幅器を用いる。
【0020】
これにより、モードロックレーザ光源から射出されたレーザ光の複数のパルス列により一の記録マークを形成するときに、パルス列の両端のパルスの振幅より他のパルスの振幅を大きくし、記録マークの形状を適切に制御することができる。
【0021】
前記変調は、前記モードロックレーザ光源から射出されたレーザ光の偏光状態を制御するための非線形結晶を用いる。
【0022】
これにより、非線形結晶に電圧を印加しレーザ光の偏光状態を制御し、モードロックレーザ光源から射出されたレーザ光の複数のパルス列により一の記録マークを形成するときに、パルス列の両端のパルスを媒体に照射せずに他のパルスを媒体に照射し、記録マークの形状を適切に制御することができる。
【0023】
前記変調は、前記モードロックレーザ光源から射出されたレーザ光を変調するときにファブリペロー干渉計を用いる。
【0024】
これにより、モードロックレーザ光源から射出されたレーザ光をファブリペロー干渉計に入射し、レーザ光を変調し、媒体の適切な位置に適切なレーザ光を照射し適切な形状の記録マークを形成することができる。
【0025】
本発明に係る光記録装置は、所定の時間間隔でレーザ光を射出するモードロックレーザ光源と、媒体に一の記録マークを形成する期間で、前記レーザ光のパルスを変調する変調手段と、前記変調されたレーザ光を媒体に照射する手段とを具備する。
【0026】
本発明では、モードロックレーザ光源から射出されるレーザ光のパルスを、変調手段により媒体に一の記録マークを形成する期間で変調し、媒体に照射するので、強度の大きいレーザ光を照射したい媒体の位置に強度の大きいレーザ光を照射し、強度の小さいレーザ光を照射したい媒体の位置には強度の小さいレーザ光を照射して、媒体の適切な位置に適切な形状の記録マークを形成することができる。
【0027】
前記変調手段は、前記パルスの振幅を変調する。
【0028】
これにより、モードロックレーザ光源から射出されたレーザ光の複数のパルス列により1つの記録マークを形成するときに、記録マークを形成する両端のパルスの振幅より他のパルスの振幅を大きくすることで、記録マークの形状を適切に制御することができる。
【0029】
前記変調手段は、前記パルスの周波数を変調する。
【0030】
これにより、モードロックレーザ光源から射出されたレーザ光の複数のパルス列により1つの記録マークを形成するときに、所定時間当たりのパルス列のパルス数を減少させることで、記録マークの適切な形成を確保しつつレーザ発光に必要な電気エネルギー、発熱量及び消費電力を低減させることができる。
【0031】
前記変調されたレーザ光が照射される前記媒体を回転させる手段を更に具備する。
【0032】
これにより、回転する媒体に対してレーザ光を照射し、記録マークを媒体に大量に形成することができる。
【発明の効果】
【0033】
以上のように、本発明によれば、モードロックレーザ光源を用いて媒体の適切な位置に適切な形状の記録マークを形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。
【0035】
図1は本発明の一実施形態に係る光記録装置のブロック図である。
図1に示すように、光記録装置1は、モードロックレーザ2、半導体光増幅器3、制御部4、レンズ5、リレーレンズ6、対物レンズ7、サーボ専用レーザ8、レンズ9、ビームスプリッタ11、ビームスプリッタ12、集光レンズ13、フォーカスサーボ用のフォトディテクタ14、対物レンズフォーカスサーボ装置15、対物レンズアクチュエータ16及びスピンドル17を備えている。
【0036】
モードロックレーザ2は、所定の時間間隔の超短パルス光を発生するレーザである。超短とは、例えばパルス幅がフェムト秒〜ピコ秒のオーダー範囲であることを意味する。このレーザ光は、例えば周波数が500MHz、波長が405nmの記録用のレーザ光である。レーザ媒質として、例えばTi:S(チタンドープサファイア)結晶が用いられている。これにより、パルス幅が非常に短く、ピークパワーが大きいパルスが得られる。
【0037】
半導体光増幅器3は、モードロックレーザ2から射出されたレーザ光を受光し、制御部4からの制御信号に基づいて、レーザ光を増幅したり周波数を変調したりして出力する。
【0038】
制御部4は、半導体光増幅器3が受光したレーザ光を増幅率を制御するための制御信号や周波数変調するための制御信号などを、所定時間毎に半導体光増幅器3に出力する。半導体光増幅器3と制御部4とによりモードロックレーザ2からのレーザ光を記録媒体10に照射するタイミング、増幅率を制御している。
【0039】
レンズ5は、半導体光増幅器3から出力されたレーザ光をリレーレンズ6に向けて照射する。
【0040】
リレーレンズ6は、レンズ5からのレーザ光を、ビームスプリッタ11及び12を介して対物レンズ7に照射する。リレーレンズ6は、記録媒体10の厚さ方向にレーザ光の焦点位置を調整するためにも用いられる。
【0041】
対物レンズ7は、入射したレーザ光が記録媒体10内で焦点を結ぶように集光する。対物レンズ7のNAは0.85である。記録媒体10に、例えば2光子吸収材料を用いる場合には、焦点の近傍の領域でエネルギーが大きいため2光子吸収が起こり、焦点位置にボイド(穴)が形成されるが、焦点から外れた領域ではエネルギーが低いため2光子吸収が起こらずボイド(穴)が形成されない。
【0042】
サーボ専用レーザ8は、例えば波長が630nmのフォーカスサーボ専用のフォーカスサーボ光Fをレンズ9に向けて射出する。
【0043】
レンズ9は、フォーカスサーボ光Fをビームスプリッタ11に照射する。
【0044】
ビームスプリッタ11は、フォーカスサーボ光Fをビームスプリッタ12に向けて反射する。
【0045】
ビームスプリッタ12は、ビームスプリッタ11からのフォーカスサーボ光Fを透過する。ビームスプリッタ12を透過したフォーカスサーボ光Fは、対物レンズ7で集光され、記録媒体10の基準面で反射する。記録媒体10の基準面は、フォーカスサーボ光Fは反射するが、記録用のレーザ光を透過する波長選択膜である。基準面で反射したフォーカスサーボ光Fは、対物レンズ7を透過してビームスプリッタ12に入射する。ビームスプリッタ12は、入射したフォーカスサーボ光Fを集光レンズ13に向けて反射する。
【0046】
集光レンズ13は、ビームスプリッタ12で反射されたフォーカスサーボ光Fをフォトディテクタ14に集光する。
【0047】
フォトディテクタ14は、集光レンズ13からのフォーカスサーボ光Fに基づき、例えば非点収差法により対物レンズフォーカスサーボ装置15に信号を出力する。
【0048】
対物レンズフォーカスサーボ装置15は、フォトディテクタ14からの信号に基づき、対物レンズアクチュエータ16を制御するための制御信号を出力する。
【0049】
対物レンズアクチュエータ16は、対物レンズフォーカスサーボ装置15からの制御信号に基づき、対物レンズ7をフォーカス制御するために移動させる。
【0050】
図2はレーザ光のビーム強度の2乗と記録マークサイズとの関係を示す図である。
図2に示すように、例えば記録媒体に照射するレーザ光の振幅(ビーム強度)を調整することで、記録媒体に形成される記録マークのサイズを調整することができる。
【0051】
例えば、記録媒体に2光子吸収材料を用い、対物レンズの開口数NAを0.85、レーザ光の波長を400nmとし、記録媒体に入射するレーザ光の振幅(ビーム強度)を1で規格化する。
【0052】
この場合、ビーム強度の2乗が閾値(例えば0.2)を超える場合にボイド(穴)が形成され、レーザ光の振幅が1(ビーム強度が1.0)の場合、記録マークサイズは0.48μm、レーザ光の振幅が0.8(ビーム強度が0.8)の場合、記録マークサイズは0.41μm、レーザ光の振幅が0.6(ビーム強度が0.6)の場合、記録マークサイズは0.29μmとなった。このように、記録媒体に2光子吸収材料を用いる場合には、2乗特性を有しており記録媒体の焦点位置でのみ励起を起こすことができる。
【0053】
次に、図1の光記録装置1を用いた記録媒体10への情報の光記録方法を説明する。
図3は図1の光記録装置1を用いた光記録方法を示すフローチャート、図4は半導体光増幅器3により増幅されたレーザ光の強度と照射位置との関係の図である。
図1に示すように、スピンドル17に記録媒体10をセットし図示しない駆動機構により記録媒体10を図示しない駆動部により回転させる(ST301)。例えば、線速度が5m/sとなるようにする。
【0054】
モードロックレーザ2から例えば所定の時間間隔の超短パルスのレーザ光を射出する(ST302)。
【0055】
制御部4は、半導体光増幅器3に入射したレーザ光の(パルスの)振幅の増幅率を制御するための制御信号を、半導体光増幅器3に所定時間間隔で出力する。これにより、モードロックレーザ2から射出されたレーザ光のパルスの振幅を所定時間毎に変調する(ST303)。
【0056】
例えば、図4に示すように、レーザ光の記録媒体10への照射位置が0〜40(nm)の間では半導体光増幅器3を透過するレーザ光の強度を0とし、照射位置が40〜50(nm)の間及び70〜80(nm)の間では半導体光増幅器3を透過するレーザ光の強度を0.1とし、照射位置が50〜70(nm)の間では半導体光増幅器3を透過するレーザ光を増幅しレーザ光の強度をほぼ0.9としている。つまり、1つの記録マークGを形成するためのパルス列の両端のパルスの振幅よりこれらの間のパルスの振幅が大きくなるようにしている。記録マークGを形成するパルス列のうち中央のパルスの振幅がピークとなる。これにより、例えば記録マークGの記録面内方向Xの長さが所望の長さL1(例えば120nm)となる。
【0057】
なお、図4に示すように、比較例1はモードロックレーザが所定時間間隔で強度がほぼ0.8のレーザ光を12個、記録媒体に照射する例であり、比較例2はモードロックレーザが所定時間間隔で強度がほぼ0.45のレーザ光を12個、記録媒体に照射する例である。
【0058】
そして、強度変調されたレーザ光を対物レンズ7で集光するなどして記録媒体10に照射し、記録マークを形成する(ST304)。
【0059】
図5(A)は本実施形態の記録マークの露光履歴を示す断面図、図5(B)は比較例1の記録マークの露光履歴を示す断面図及び図5(C)は比較例2の記録マークの露光履歴を示す断面図、図6(A)は本実施形態の記録マークを示す断面図、図6(B)は比較例1の記録マークを示す断面図及び図6(C)は比較例2の記録マークを示す断面図である。
【0060】
本実施形態では、図5(A)に示すようにボイドが記録媒体10の記録面内方向Xにずれて重なるように形成され、図6(A)に示すように記録媒体10の記録面内方向Xの長さが所望の長さL1、記録媒体10の厚さ方向Zの長さが所望の長さL2の記録マークGが形成される。
【0061】
比較例1では、図5(B)に示すようにボイドが記録媒体10の記録面内方向Xにずれて重なるように形成され、図6(B)に示すように記録媒体10の記録面内方向Xの長さがL1´、記録媒体10の厚さ方向Zの長さがL2の記録マークGbが形成される。つまり、厚さ方向Zには所望の長さL2であるが記録面内方向Xには所望の長さL1より長い長さL1´の記録マークGbが形成される。
【0062】
比較例2では、図5(C)に示すようにボイドが記録媒体10の記録面内方向Xにずれて重なるように形成され、図6(C)に示すように記録媒体10の記録面内方向Xの長さがL1、記録媒体10の厚さ方向Zの長さがL2´の記録マークGcが形成される。つまり、記録面内方向Xには所望の長さL1であるが厚さ方向Zには所望の長さL2より短い長さL2´の記録マークGcが形成される。
【0063】
このように本実施形態によれば、モードロックレーザ2から所定時間間隔でレーザ光を射出し(ST302)、射出されたレーザ光のパルスの振幅を、半導体光増幅器3により所定時間(記録媒体10に記録マークを形成する期間)毎に変調し(ST303)、回転する記録媒体10に照射する(ST304)ので、強度の大きいレーザ光を照射したい記録媒体10の位置(図4の50〜70(nm))に強度の大きいレーザ光を照射し、強度の小さいレーザ光を照射したい記録媒体10の位置(図4の40〜50、70〜80(nm))には強度の小さいレーザ光を照射して、記録媒体10の適切な位置に適切な形状(記録面内方向Xの長さがL1、厚さ方向Zの長さがL2)の記録マークGを形成することができる。
【0064】
従って、図6(B)に示すように、比較例1では記録マークGbの記録面内方向Xの長さがL1´となり記録マークGb同士の記録面内方向Xの間隔が狭まり安定した信号を検出できなくなる。これに対して、本実施形態では、図6(A)に示すように、記録マークGの記録面内方向Xの長さを所望の長さL1とすることができるので、記録面内方向Xに隣り合う記録マークGの間隔が所定の距離未満に狭まることを防止することができる。この結果、記録マークGから安定した再生信号を検出することができる。
【0065】
また、図6(C)に示すように、比較例2では記録マークGcの厚さ方向Zの長さがL2´と小さくなり再生時に記録マークGcに確実に再生用のレーザ光を照射することができなくなり、安定した信号を検出できなくなる。これに対して、本実施形態では、図6(A)に示すように、記録マークGの厚さ方向Zの長さを所望の長さL2と大きくすることができるので、再生時に記録マークGに確実に再生用のレーザ光を照射することができる。この結果、記録マークGから安定した再生信号を検出することができる。
【0066】
次に、第2の実施の形態の光記録方法について説明する。なお、本実施形態以降においては上記実施形態と同様の構成等には同様の符号を付しその説明を省略し、異なる箇所を中心に説明する。
図7は第2及び第3の実施形態の半導体光増幅器3により増幅されたレーザ光の強度と照射位置との関係の図、図8は第2及び第4の実施形態の半導体光増幅器3により増幅されたレーザ光の強度と照射位置との関係の図、図9(A)〜図9(C)は第2〜第4の実施形態の記録マークの断面図、図9(D)、図9(E)は比較例3、比較例4の記録マークの断面図である。
【0067】
第2の実施形態は、図7に示すように、第1の実施形態に比べてレーザ光の記録媒体10への照射位置の範囲が長くなっている(記録面内方向Xの長さが長い記録マークを形成する点)点が異なる。
【0068】
本実施形態では、制御部4は、半導体光増幅器3に入射したレーザ光の(パルスの)振幅の増幅率を制御するための制御信号を、半導体光増幅器3に所定時間間隔で出力する。これにより、モードロックレーザ2から射出されたレーザ光のパルスの振幅を所定時間毎に強度がほぼ0.8となるように変調すると共に、照射位置の範囲が0〜480nmになるように変調する。
【0069】
これにより、図9(A)に示すようにボイドが記録媒体20aの記録面内方向Xにずれて重なるように形成され、記録媒体20aの記録面内方向Xの長さが所望の長さL10、記録媒体20aの厚さ方向Zの長さが所望の長さL2の記録マークG2が形成される。
【0070】
なお、図9(D)は比較例1に比べて記録媒体20dの記録マークG5の記録面内方向Xの長さが長くなっている点が異なり、図9(A)に示す実施例2に比べて、記録マークG5の記録面内方向Xの長さが所望の長さL10より大きくなってしまう。また、図9(E)は比較例2に比べて記録媒体20eの記録マークG6の記録面内方向Xの長さが長くなっている点が異なり、図9(A)に示す実施例2に比べて、記録マークG6の厚さ方向Zの長さが所望の長さL2より小さくなってしまう。
【0071】
これに対して本実施形態では、図9(A)に示すように記録媒体20aの記録面内方向Xの長さが所望の長さL10の記録マークG2を形成することができる。
【0072】
第3の実施形態は、第2の実施形態に比べて、所定時間間隔でモードロックレーザ2から射出されたレーザ光のパルスの振幅を変調し、第2の実施形態の所定時間間隔の2倍の時間間隔で、記録媒体20bに強度が0.8のレーザ光を照射する点が異なる。
【0073】
これにより、図9(B)に示すようにボイドが第2の実施形態に比べて記録面内方向Xに2倍の間隔を空けてずれて重なるように記録媒体20bに形成され、記録媒体20bの記録面内方向Xの長さが所望の長さL10、記録媒体20aの厚さ方向Zの長さが所望の長さL2の記録マークG3が形成される。
【0074】
この結果、所定時間当たりのパルス列のパルス数を減少させることで、記録マークG3の適切な形成を確保しつつレーザ光の増幅に必要な電気エネルギー、発熱量及び消費電力を低減させることができる。
【0075】
第4の実施形態は、図8に示すように、第2の実施形態に比べて半導体光増幅器3により各パルスのパルス列の両端のパルスの振幅が他のパルスの振幅より大きくなるように変調し、両端のレーザ光の強度が大きくなっている点が異なる。
【0076】
これにより、図9(C)に示すように記録媒体20cの記録マークG4の形状を記録面内方向Xの両端部が中央部より大きくなった両釣鐘形状とすることができ、記録マークG4の再生時に再生信号のエッジ反応を鋭くすることができる。
【0077】
なお、本発明は以上説明した実施の形態には限定されるものではなく、本発明の技術思想の範囲内で種々の変形が可能である。
【0078】
上記実施形態では、モードロックレーザ2から射出されたレーザ光のパルスを変調するために半導体光増幅器3を用いる例を示した。しかし、半導体光増幅器3に限らず、例えば半導体光増幅器3の代わりに電気光学変調器や音響光学変調器などを用いてもよい。
【0079】
図10は電気光学変調器を用いた光記録装置の光学系を示す図である。
図10に示すように、電気光学変調器30及びポラライザ(偏向ビームスプリッタ)32は、図1の半導体光増幅器3の代わりにモードロックレーザ2と集光レンズ5との間に挿入されている。
【0080】
電気光学変調器30は、例えば制御部4からの制御信号に基づき、非線形光学結晶(例えばリン酸二水素カリウムKDP結晶)31に電圧を所定時間間隔で印加することができるように構成されている。これにより、非線形光学結晶31に電圧を所定時間間隔で印加することで、例えばレーザ光の偏光状態を制御し、非線形光学結晶31を透過する光の強度を変調することができる。この結果、上記実施形態と同様に、レーザ光のパルスを変調し記録媒体に照射し、記録マークの形状を適切に制御することができる。ポラライザ(偏向ビームスプリッタ)32は、非線形光学結晶31を透過した特定の偏向成分のみ出力する。
【0081】
ファブリペロー干渉計を用いてモードロックレーザから射出されたレーザ光を変調するようにしてもよい。これにより、モードロックレーザから射出されたレーザ光をファブリペロー干渉系に入射し、電気信号によりレーザ光を変調し、記録媒体の適切な位置に適切なレーザ光を照射し適切な形状の記録マークを形成することができる。
【0082】
図11は音響光学変調器を用いた光記録装置の光学系を示す図である。
図11に示すように、音響光学変調器40及びレンズ46は、図1の半導体光増幅器3の代わりにモードロックレーザ2と集光レンズ5との間に挿入されている。
【0083】
音響光学変調器40は、例えばモードロックレーザ2からのレーザ光が入射する位置に配置されたガリウムリンや水晶結晶などの音響光学材41と、オシレータ42と、オシレータ42からの信号をAM変調するミキサ43と、ミキサ43からの信号を増幅する増幅器44と、この増幅した信号に基づき駆動する圧電素子45とを備えている。圧電素子45の駆動により音響光学材41に音響波を入力することができるように構成されている。音響光学材料41に入力する音響波の強度に基づいて、音響光学材41を透過する光(回折光)の強度を変調することができる。これにより、上記実施形態と同様に、レーザ光のパルスを変調し記録媒体に照射し、記録マークの形状を適切に制御することができる。レンズ46は、モードロックレーザ2からのレーザ光を音響光学材41に集光する。
【0084】
上記実施形態では、モードロックレーザ2からのレーザ光のパルスの振幅が変調される例を示した。しかし、半導体光増幅器3の代わりに電気光学変調器を用いて、モードロックレーザ2からのレーザ光のパルスの周波数を変調してもよい。電気光学変調器は、上述した非線形光学結晶に電圧を印加することで、非線形光学結晶を透過するレーザ光の周波数を変調することができる。これにより、レーザ発光に必要な電気エネルギー、発熱量及び消費電力を低減しつつ例えば上述した第3の実施形態を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】本発明の一実施形態に係る光記録装置のブロック図である。
【図2】レーザ光のビーム強度の2乗と記録マークサイズとの関係を示す図である。
【図3】図1の光記録装置を用いた光記録方法を示すフローチャートである。
【図4】半導体光増幅器により増幅されたレーザ光の強度と照射位置との関係の図である。
【図5】(A)は本実施形態の記録マークの露光履歴を示す断面図、(B)は比較例1の記録マークの露光履歴を示す断面図及び(C)は比較例2の記録マークの露光履歴を示す断面図である。
【図6】(A)は本実施形態の記録マークを示す断面図、(B)は比較例1の記録マークを示す断面図及び(C)は比較例2の記録マークを示す断面図である。
【図7】第2及び第3の実施形態の半導体光増幅器により増幅されたレーザ光の強度と照射位置との関係の図である。
【図8】第2及び第4の実施形態の半導体光増幅器により増幅されたレーザ光の強度と照射位置との関係の図である。
【図9】(A)〜(C)は第2〜第4の実施形態の記録マークの断面図、(D)、(E)は比較例3、比較例4の記録マークの断面図である。
【図10】電気光学変調器を用いた光記録装置の光学系を示す図である。
【図11】音響光学変調器を用いた光記録装置の光学系を示す図である。
【符号の説明】
【0086】
G 記録マーク
1 光記録装置
2 モードロックレーザ
3 半導体光増幅器
4 制御部
7 対物レンズ
10 記録媒体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モードロックレーザ光源からレーザ光を射出し、
媒体に一の記録マークを形成する期間で、前記レーザ光のパルスを変調し、
前記変調されたレーザ光を前記媒体に照射する光記録方法。
【請求項2】
請求項1に記載の光記録方法であって、
前記変調は前記パルスの振幅を変調する光記録方法。
【請求項3】
請求項1に記載の光記録方法であって、
前記変調は前記パルスの周波数を変調する光記録方法。
【請求項4】
請求項1に記載の光記録方法であって、
前記変調されたレーザ光を回転する前記媒体に照射する光記録方法。
【請求項5】
請求項1に記載の光記録方法であって、
前記変調は、前記記録マークを形成するパルス列のうち中央のパルスの振幅がピークとなるように変調する光記録方法。
【請求項6】
請求項1に記載の光記録方法であって、
前記変調は、前記記録マークを形成するパルス列のうち両端のパルスの振幅がピークとなるように変調する光記録方法。
【請求項7】
請求項1に記載の光記録方法であって、
前記変調は、前記モードロックレーザ光源から射出されたレーザ光を受光し増幅して出力可能な半導体光増幅器を用いる光記録方法。
【請求項8】
請求項1に記載の光記録方法であって、
前記変調は、前記モードロックレーザ光源から射出されたレーザ光の偏光状態を制御するための非線形結晶を用いる光記録方法。
【請求項9】
請求項1に記載の光記録方法であって、
前記変調は、前記モードロックレーザ光源から射出されたレーザ光を変調するときにファブリペロー干渉計を用いる光記録方法。
【請求項10】
所定の時間間隔でレーザ光を射出するモードロックレーザ光源と、
媒体に一の記録マークを形成する期間で、前記レーザ光のパルスを変調する変調手段と、
前記変調されたレーザ光を前記媒体に照射する手段と
を具備する光記録装置。
【請求項11】
請求項10に記載の光記録装置であって、
前記変調手段は、前記パルスの振幅を変調する光記録装置。
【請求項12】
請求項10に記載の光記録方法であって、
前記変調手段は、前記パルスの周波数を変調する光記録装置。
【請求項13】
請求項10に記載の光記録方法であって、
前記変調されたレーザ光が照射される前記媒体を回転させる手段を更に具備する光記録装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2009−238285(P2009−238285A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−81532(P2008−81532)
【出願日】平成20年3月26日(2008.3.26)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】