光走査装置および走査型観察装置
【課題】光学系のディストーションによる影響を補正し、解像力のばらつきを低減する。
【解決手段】光源22から発せられたレーザ光を一定周期で螺旋状の軌跡で走査させる照明ファイバ11と、照明ファイバ11により走査されたレーザ光を入射して体腔内壁Sに向けて射出する走査光学系13と、レーザ光の螺旋状の軌跡の中心から一半径方向に沿う方向の振幅を線形に変化させたときに、走査光学系13から射出されるレーザ光の一半径方向に沿う方向の振幅の時間変化を示す関数を記憶する記憶部26と、走査光学系13に入射させるレーザ光の一半径方向に沿う方向の振幅が記憶部26に記憶されている関数の逆数に比例して変化するように、照明ファイバ11によるレーザ光の走査を制御する走査制御部28とを備える光走査装置100を提供する。
【解決手段】光源22から発せられたレーザ光を一定周期で螺旋状の軌跡で走査させる照明ファイバ11と、照明ファイバ11により走査されたレーザ光を入射して体腔内壁Sに向けて射出する走査光学系13と、レーザ光の螺旋状の軌跡の中心から一半径方向に沿う方向の振幅を線形に変化させたときに、走査光学系13から射出されるレーザ光の一半径方向に沿う方向の振幅の時間変化を示す関数を記憶する記憶部26と、走査光学系13に入射させるレーザ光の一半径方向に沿う方向の振幅が記憶部26に記憶されている関数の逆数に比例して変化するように、照明ファイバ11によるレーザ光の走査を制御する走査制御部28とを備える光走査装置100を提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光走査装置および走査型観察装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、内視鏡挿入部の先端に照明光を伝達する照明ファイバに駆動信号を与えて照明ファイバの先端の位置を連続的に変位させることにより、内視鏡挿入部の先端から射出する照明光を走査する光走査型内視鏡装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。特許文献1に記載の光走査型内視鏡装置は、照明ファイバに与える駆動信号の振幅を線形に変化させて徐々に大きくしていくことで、照明ファイバの先端の位置を中心から外方に向かって渦巻き型に等ピッチで変位させることとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−142482号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、内視鏡装置は広画角(例えば、80〜130°)であることが要求されており、光学系のディストーションが大きい。光学系のディストーションとは、画角中心と画角周辺の倍率が異なる現象をいう。そのため、特許文献1に記載の走査型内視鏡装置のように、照明ファイバの先端の位置を渦巻き型に等ピッチで変位させたとしても、画角中心の照射スポットのピッチに対して画角周辺の照射スポットのピッチが粗くなる傾向がある。その結果、画角中心と比較して画角周辺の解像力が劣化してしまうという問題がある。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、光学系のディストーションによる影響を補正し、解像力のばらつきを低減することができる光走査装置および走査型観察装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は以下の手段を採用する。
本発明は、光源から発せられた照明光を一定周期で螺旋状の軌跡で走査させる走査部と、該走査部により走査された前記照明光を入射して観察対象部位に向けて射出する照明光学系と、前記照明光の前記螺旋状の軌跡の中心から一半径方向に沿う方向の振幅を線形に変化させたときに、前記照明光学系から射出される前記照明光の前記一半径方向に沿う方向の振幅の時間変化を示す関数を記憶する記憶部と、前記照明光学系に入射させる前記照明光の前記一半径方向に沿う方向の振幅が前記記憶部に記憶されている前記関数の逆数に比例して変化するように、前記走査部による前記照明光の走査を制御する走査制御部とを備える光走査装置を提供する。
【0007】
一般的に、照明光学系は、画角に対して倍率が変化する収差(以下、ディストーションという。)を有している。照明光学系に対して一定周期で螺旋状の軌跡で走査させた照明光を入射させると、照明光学系から射出される照明光も螺旋状に変位するが、照明光学系に入射させる照明光の螺旋状の軌跡の中心から一半径方向に沿う方向の振幅を線形に変化させたとしても、照明光学系から射出される照明光はディストーションの影響により一半径方向の振幅が変化し歪んだ螺旋状に変位してしまう。
【0008】
本発明によれば、記憶部に記憶する関数により、照明光の螺旋状の軌跡の中心から一半径方向に沿う振幅を線形に変化させたときに照明光学系から射出される照明光の一半径方向に沿う振幅の時間変化が分かるので、走査制御部により、照明光学系に入射させる照明光の一半径方向に沿う方向の振幅がその関数の逆数に比例して変化するように、走査部による照明光の走査を制御することで、照明光学系のディストーションによる影響を補正し、照射光学系により射出される照明光の一半径方向の振幅を均等化することができる。これにより、走査部によって走査された照明光を照明光学系を介して察対象部位上に等ピッチで照射させていくことができ、その結果、解像力のばらつきを低減することができる。
【0009】
上記発明においては、前記走査部が、前記光源から発せられた前記照明光を前記照明光学系に導光し、前記照明光を射出する射出端の位置を共振によって変位させることにより該照明光を走査せる照明ファイバであり、前記走査制御部が、前記照明ファイバを共振させる駆動信号の振幅の変化率を制御することとしてもよい。また、前記走査部が、前記照明光学系に入射させる前記照明光を透過させ、内部に屈折率分布を生じさせることにより前記照明光を走査せる電気光学素子であり、前記走査制御部が、前記電気光学素子に印加する電圧を制御することとしてもよい。また、前記走査部が、前記光源から発せられた前記照明光を照明光学系に向けて反射し、揺動角度を変化することにより前記照明光を走査せるガルバノミラーであり、前記走査制御部が、前記ガルバノミラーの揺動角度を制御することとしてもよい。
【0010】
本発明は、上記いずれかの光走査装置と、該光走査装置により前記照明光が走査された前記観察対象部位から戻る戻り光を検出して画像を構築する画像構築部を備える走査型観察装置を提供する。
本発明によれば、光走査装置により照明光学系のディストーションによる影響を補正し、画像構築部により解像力のばらつきを低減した画像を取得することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、光学系のディストーションによる影響を補正し、解像力のばらつきを低減することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態に係る走査型観察装置の縦断面図である。
【図2】図1の照明ファイバの概略構成図である。
【図3】走査光学系のディストーションが負の場合の照明ファイバの振幅と観察対象部位上の観察範囲との関係を示す図である。
【図4】近軸像高および実像高と物体高との関係を示す図である。
【図5】物体高と走査光学系のディストーションとの関係を示す図である。
【図6】ファイバの振幅と物体高との関係を示す図である。
【図7】物体高の照明位置と観察対象部位上のレーザ光の走査ピッチとの関係を示す図である。
【図8】照明ファイバの振幅と時間との関係を示す図である。
【図9】駆動信号の振幅を線形に変化させた様子を示す図である。
【図10】観察対象部位上のレーザ光の走査ピッチを示す図である。
【図11】一定周期の正弦波の駆動信号の振幅の変化率を徐々に小さくした様子を示す図である。
【図12】照明ファイバの先端の移動軌跡を示す図である。
【図13】観察対象部位上のレーザ光の走査ピッチと画像構成とを関連づけて示した図である。
【図14】走査範囲の一部においてのみ駆動信号の振幅を変化させた様子を示す図である。
【図15】観察対象部位上の走査範囲全体の内の一部の領域のみをディストーション補正した様子を示す図である。
【図16】所望のフレームのみディストーション補正する場合の駆動信号と時間との関係を示す図である。
【図17】走査部として、電気光学結晶を用いて電気制御により照明ファイバを共振させてレーザ光を走査させる構成を示す図である。
【図18】走査部として、永久磁石とコイルを用いて電磁駆動によりレーザ光を走査させる構成を示す図である。
【図19】図18の照明ファイバにおいて磁界が発生する様子を示す図である。
【図20】図18の照明ファイバが湾曲する様子を示す図である。
【図21】矩形波の駆動信号の振幅を示す図である。
【図22】のこぎり刃の駆動信号の振幅を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の一実施形態に係る光走査装置および走査型観察装置について、図面を参照して以下に説明する。
本実施形態においては、走査型観察装置として光走査型内視鏡装置を例示して説明する。本実施形態に係る光走査型内視鏡装置100は、図1に示されるように、体腔内に挿入される細長い形状の挿入部10を有する光走査装置50と、挿入部10の先端部10aから射出させるレーザ光(照明光)を発する光源22とを備えている。
【0014】
挿入部10は、光源22から発せられたレーザ光を基端部10bから導入し、先端部10aから射出することができるようになっている。この挿入部10には、基端部10bから導入されたレーザ光を先端部10aへ導光する照明ファイバ(走査部)11と、照明ファイバ11により導光されてきたレーザ光を透過させて観察対象部位S(例えば、体腔内壁S)に向けて射出する走査光学系(照明光学系)13と、走査光学系13によってレーザ光が照射されることにより体腔内壁Sの走査位置において散乱した反射光(戻り光)を受光する複数の検出ファイバ17とが備えられている。
【0015】
照明ファイバ11は、弾性変形可能な円筒状の部材であり、挿入部10の長手方向に沿って配置されている。この照明ファイバ11は、図2に示すように、円筒状の圧電素子15に挿通されて保持されている。図2において、照明ファイバ11の長手方向をZ軸方向とする。
【0016】
圧電素子15は、周方向に4分割した位置にそれぞれ相対して配された2対の電極を有している。電極が相対する方向をそれぞれX軸方向、Y軸方向とする。圧電素子15は、駆動信号が与えられることにより照明ファイバ11をX軸方向とY軸方向にそれぞれ共振させることができるようになっている。また、圧電素子15に与える駆動信号の振幅を徐々に大きくしていくことにより、照明ファイバ11の先端を中心から半径方向外方に向かって螺旋状に変位させることができるようになっている。これにより、照明ファイバ11は、光源22から発せられ走査光学系13に入射させるレーザ光を螺旋状の軌跡で走査させることができるようになっている。
【0017】
走査光学系13は、挿入部10の先端部10a付近に設けられ、照明ファイバ11の先端に対して挿入部10の長手方向に所定の間隔をあけて配置されている。この走査光学系13は、例えば、80°〜130°程度の画角を有している。
【0018】
検出ファイバ17は、挿入部10を同心的に囲むように、挿入部10の外周に沿って周方向に所定の間隔をあけて配列されている。この検出ファイバ17は、照明ファイバ11と同様に、挿入部10の長手方向に沿って設けられており、一端が挿入部10の先端部10aの周囲に配置されている。検出ファイバ17は、例えばNA=0.5とする。
【0019】
また、光走査型内視鏡装置100には、検出ファイバ17により受光された反射光を検出し2次元画像を構築するCCDのような画像構築部24と、所定の関数を記憶する記憶部26と、記憶部26に記憶されている関数に基づいて照明ファイバ11によるレーザ光の走査を制御する走査制御部28と、照明ファイバ11の圧電素子15に印加する駆動信号を出力する駆動部(図示略)とが備えられている。駆動部は、例えば、一定周期1/fの正弦波の駆動信号を出力するようになっている。走査制御部28と駆動部は互いに電気的に接続されている。
【0020】
画像構築部24は、検出ファイバ17の他端に接続されている。
記憶部26には、走査光学系13に入射させるレーザ光の螺旋状の軌跡における中心から一半径方向に沿う方向の振幅を線形に変化させたときに、走査光学系13から射出されるレーザ光の螺旋状の軌跡における一半径方向に沿う方向の振幅の時間変化を示す関数(以下、「照明位置の関数」とする。)gを記憶させるようになっている。
【0021】
走査制御部28は、記憶部26から照明位置の関数gを読み出し、照明ファイバ11の先端の螺旋状の軌跡における一半径方向に沿う方向の振幅が照明位置の関数gの逆数に比例して変化するように、駆動部から出力させる駆動信号の振幅を変化させるようになっている。本実施形態においては、走査制御部28は、以下のアルゴリズムに基づいて駆動信号を変化させるようになっている。
【0022】
図3は、走査光学系13のディストーションが負の場合の照明ファイバ11の振幅と観察対象部位S上の観察範囲との関係を示す図であり、図4は、近軸像高yおよび実像高(=照明ファイバ11の振幅)y´と物体高(=観察範囲)Yとの関係を示している。また、図5は物体高Yと走査光学系13のディストーションaとの関係を示し、図6はファイバ11の振幅y´と物体高Yとの関係を例示している。走査光学系13のディストーションとは、画角に対して倍率が変化する収差をいい、例えば、走査光学系13は画角中心に対して画角周辺程ディストーションが大きい特性を有している。
【0023】
図7に示すように、n周目の物体高の照明位置をY_n、観察対象部位S上のレーザ光の走査ピッチをpとし、Y_n+1=Y_n+pとなるように物体高を決定する。走査光学系13の近軸倍率をβとすると、近軸像高はy=β×Yと表すことができる。また、走査光学系13のディストーションはα={(y´−y)/y}×100と表される。
【0024】
上記の近軸像高yと走査光学系13のディストーションαの式により、y´={(100+a(Y))×β/100}×Yとなり、照明ファイバ11の振幅はy´=g(Y)というように、記憶部26に記憶されている照明位置の関数gで1対1に表すことができる。
【0025】
したがって、n周目の照明ファイバ11の振幅はy´_n=g(Y_n)、n+1周目の照明ファイバ11の振幅はY´_n+1=g(Y_n+1)というように一義的に求めることができる。一方、図8に示すように、n周目の時刻をt_nとし、照明ファイバ11の先端の振幅変調の関数をh(t)とすると、n周目の照明ファイバ11の振幅はy´_n=h(t_n)、n+1周目の照明ファイバ11の振幅はY´_n+1=h(t_n+1)・・・(1)の関係が成り立つ。また、照明ファイバ11の振動周波数をfとすると、t_n+1−t_n=1/f・・・(2)の関係が成り立つ。
【0026】
上記(1),(2)を満たすように振幅変調の関数h(t)をすべての周回数nについて定義すれば、走査光学系13から射出されるレーザ光の螺旋状の軌跡における一半径方向の振幅を等ピッチにすることができる。したがって、走査制御部28は、上記のようにして定まる振幅変調の関数h(t)により、駆動部から出力させる一定周期1/fの駆動信号の振幅を変化させて、照明ファイバ11によるレーザ光の走査を制御するようになっている。
【0027】
次に、このように構成された光走査型内視鏡装置100の作用について以下に説明する。
本実施形態に係る光走査型内視鏡装置100により、体腔内壁Sの画像情報を取得するには、生体の体腔内に光走査装置50の挿入部10を挿入し、挿入部10の先端部10aを体腔内壁Sに対向させて光源22によりレーザ光を発生させる。
【0028】
光源22から発せられたレーザ光は、挿入部10に導入されて照明ファイバ11により導光され、走査光学系13を透過して体腔内壁Sに照射される。このとき、駆動部の作動により、圧電素子15に対して一定周期1/fの駆動信号が与えられ、照明ファイバ11が共振させられる。そして、照明ファイバ11の先端が中心から半径方向外方に向かって螺旋状に変位させられることにより、走査光学系13を介してレーザ光が体腔内壁S上で螺旋状に走査される。
【0029】
レーザ光が照射されることにより体腔内壁Sの各走査位置において散乱した反射光は、複数の検出ファイバ17により受光され、画像構築部24に導光される。これにより、画像構築部24により反射光が検出され、体腔内壁Sの2次元画像が構築される。走査範囲の全体をレーザ光が走査されて1枚目のフレームの画像が構築されると、駆動部により圧電素子15に与えられる駆動信号が一旦ゼロに戻され、同様にして再び体腔内壁S上をレーザ光が螺旋状に走査されて2枚目のフレームの画像が構築される。
【0030】
ここで、走査光学系13に対して一定周期で螺旋状の軌跡で走査させたレーザ光を入射させると、走査光学系13から射出されるレーザ光も螺旋状に変位するが、図9に示すように駆動信号の振幅を線形に変化させ、走査光学系13に入射させるレーザ光の螺旋状の軌跡の中心から一半径方向に沿う方向の振幅を線形に変化させたとしても、走査光学系13から射出されるレーザ光はディストーションの影響により一半径方向の振幅が変化し歪んだ螺旋状に変位してしまう。具体的には、走査光学系13は画角中心に対して画角周辺程ディストーションが大きい特性を有しているため、走査光学系13に対して一定周期で螺旋状の軌跡で走査させたレーザ光を入射させると、走査光学系13から射出されるレーザ光の一半径方向の振幅は半径方向外方に向かうにつれて大きくなる。その結果、図10に示すように、体腔内壁S上のレーザ光の走査ピッチが画角周辺程粗くなる。
【0031】
本実施形態においては、走査制御部28の作動により、走査光学系13に入射させるレーザ光の螺旋状の軌跡における一半径方向に沿う方向の振幅が照射位置の関数gの逆数に比例して変化するように、駆動部により出力される駆動信号の振幅が振幅変調の関数h(t)に従って変化させられる。具体的には、走査制御部28により、図11に示すように、一定周期1/fの正弦波の駆動信号の振幅の変化率が徐々に小さくなるように駆動部が制御される。
【0032】
これにより、図12に示すように、照明ファイバ11の先端の移動軌跡は中心から半径方向外方に変位するにつれて徐々に密になり、走査光学系13に対して中心よりも周辺程細かいピッチで螺旋状に走査されたレーザ光が入射される。これにより、走査光学系13のディストーションによる影響を補正し、走査光学系13から射出されるレーザ光の螺旋状の軌跡における一半径方向の振幅を均等化することができる。
【0033】
したがって、本実施形態に係る光走査型内視鏡装置100によれば、走査光学系13のディストーションに関わらず、図13に示すように、照明ファイバ11によって走査されたレーザ光を走査光学系13を介して体腔内壁S上に等ピッチで照射せていくことができ、その結果、画像構築部24によって検出される反射光の解像力のばらつきを低減した画像を取得することができる。
【0034】
本実施形態においては、走査制御部28が、駆動部により出力される駆動信号の振幅の変化率を徐々に小さくすることとしたが、照明ファイバ11により走査光学系3に入射させるレーザ光の螺旋状の軌跡における中心から一半径方向に沿う方向の振幅が照射位置の関数gの逆数に比例するように、照明ファイバ11によるレーザ光の走査を制御することとすればよく、走査光学系13のディストーションに応じて、走査制御部28が、駆動部により出力される駆動信号の振幅の変化率を大きくしたり小さくしたりすることとしてもよい。
また、本実施形態においては、記憶部26により照明位置の関数gを記憶することとしたが、例えば、記憶部26により照明位置の関数gの逆数を記憶しておくこととしてもよい。
【0035】
本実施形態は以下のように変形することができる。
本実施形態においては、走査制御部28が走査範囲の全体にわたり、駆動部の駆動信号の振幅を変化させることとしたが、第1の変形例としては、例えば、走査範囲の一部においてのみ、走査制御部28が駆動部の駆動信号の振幅を変化させることとしてもよい。
【0036】
例えば、図14に示すように、走査範囲の開始地点(同図において時刻t1。)から途中位置(同じく時刻t2。)までは、走査制御部28により駆動部の駆動信号の振幅を変化させ、走査範囲の途中位置(時刻t2。)から終了地点までは、走査制御部28による制御を行わずに駆動部から振幅の変化率が一定の駆動信号を出力させることとしてもよい。
【0037】
このようにすることで、図15に示すように、走査範囲の開始地点(時刻t1。)から途中位置(時刻t2。)までは、走査光学系13のディストーションの影響を補正して体腔内壁S上でレーザ光を等ピッチで走査させることにより解像力のばらつきを低減し、走査範囲の途中位置(時刻t2。)から終了地点までは、走査光学系13のディストーションの影響によりも走査速度を優先させて、フレームレートの向上を図ることができる。
【0038】
本変形例においては、走査範囲の開始地点から途中位置までは走査制御部28により照明ファイバ11によるレーザ光の走査を制御することとしたが、走査範囲全体のうちの所望の範囲で走査制御部28により照明ファイバ11によるレーザ光の走査を制御することとすればよく、例えば、走査範囲の途中位置から終了地点までの間で走査制御部28により照明ファイバ11によるレーザ光の走査を制御することとしてもよい。
【0039】
また、第2の変形例としては、体腔内壁Sの画像の所望のフレームについてのみ、走査制御部28により照明ファイバ11によるレーザ光の走査を制御することとしてもよい。このようにすることで、所望のフレームのみ走査光学系13のディストーションの影響を補正して体腔内壁S上でレーザ光を等ピッチで走査せることにより解像力のばらつきを低減し、他のフレームは走査速度を優先して画像のフレームレートを向上させることができる。
【0040】
例えば、図16に示すように、1フレーム目は走査制御部28による制御は行わずに一定周期の駆動信号の振幅を線形に変化させ、1フレーム目の走査範囲の終了地点に達したら駆動信号の振幅を一旦ゼロに戻し、2フレーム目は走査制御部28により駆動信号の振幅の変化率を変化させることとしてもよい。このようにすることで、例えば、1フレーム目は動画モードとして走査周回数を低減してフレームレートを向上し、2フレーム目は静止画モードとして走査光学系13のディストーションの影響を補正し、体腔内壁S上でレーザ光を等ピッチで走査させることにより解像力のばらつきを低減して画像の質を向上させることができる。
【0041】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。例えば、上記一実施形態、第1変形例および第2変形例を組み合せてもよい。また、上記一実施形態においては、光走査型観察装置として光走査型内視鏡装置100を例示して説明したが、光源から発せられた照明光を走査させるガルバノミラーのような走査部と、走査部により走査された照明光を透過させて被写体に照射する照明光学系と、記憶部26と、走査制御部28とを備える通常の光走査型顕微鏡装置であってもよい。
【0042】
また、上記一実施形態においては、走査部として、照明ファイバ11を圧電素子15により共振させてレーザ光を走査させる構成を例示して説明したが、これに代えて、走査部として、例えば、走査光学系13から射出させるレーザ光を電気光学結晶を通過させて、電気制御によりレーザ光を走査させる構成を採用することとしてもよい。
【0043】
具体的には、図17に示すように、互いに直交する方向に偏向動作する2つの電気光学結晶115にレーザ光を入射させ、電気光学結晶115に電圧を印加し内部に屈折率分布を生じさせて、電気光学結晶115を通過するレーザ光を偏向させることにより、レーザ光を走査させることとしてもよい。図17においては、一方向(例えば、Y軸方向)の電気光学結晶115だけを示すが、これに直交する方向(例えば、X軸方向)の電気光学結晶についても同様である。
【0044】
また、走査部として、例えば、照明ファイバ11を永久磁石とコイルにより電磁駆動で共振させてレーザ光を走査させる構成を採用することとしてもよい。具体的には、図18に示すように、永久磁石116に照明ファイバ11を挿通させて照明ファイバ11を片持ち梁状に保持し、挿入部10の内面に永久磁石116の半径方向に間隔をあけてX軸駆動用Tiltedコイル117とY軸駆動用Tiltedコイル118とを配置し、これらのコイル17,118に電流を流すことによって電磁駆動により照明ファイバ11を共振させてレーザ光を走査させることとしてもよい。この場合、X軸駆動用Tiltedコイル117とY軸駆動用Tiltedコイル118とを挿入部10の長手方向に対して互いに異なる方向に傾斜させて配置することとすればよい。
【0045】
このように構成した場合、例えば、Y軸駆動用Tiltedコイル118に電流を流すと、図19に示すように、照明ファイバ11の長手方向に対して交差するY軸方向に磁界が発生し、図20に示すように、永久磁石116の磁気モーメントが磁界に沿うように照明ファイバ11が湾曲させられる。これにより、レーザ光をY軸方向に走査することができる。同様にして、X軸駆動用Tiltedコイル117に電流を流すと、照明ファイバ11をX軸方向に湾曲させ、レーザ光をX軸方向に走査することができる。したがって、X軸駆動用Tiltedコイル117とY軸駆動用Tiltedコイル118に駆動信号の位相を90°ずらして交互に加えることにより、照明ファイバ11の先端を螺旋状に変位させてレーザ光を2次元的に走査することができる。
また、走査部として、ガルバノミラーを採用することとしてもよい。
【0046】
また、上記実施形態においては、走査制御部28が、駆動部により出力される図9に示すような正弦波の駆動信号の振幅を変化させることとしたが、駆動部により出力される駆動信号は照明ファイバ11の共振周期1/fに一致する周期の駆動派形であればよく、例えば、走査制御部28が、図21に示すような矩形波の駆動信号の振幅を変化させることとしてもよいし、図22に示すようなのこぎり刃の駆動信号の振幅を変化させることとしてもよい。照明ファイバ11はいずれの波形の駆動信号でも正弦波周期で振動することとすればよい。
【符号の説明】
【0047】
11 照明ファイバ(走査部)
13 走査光学系
22 光源
26 記憶部
28 走査制御部
50 光走査装置
100 走査型観察装置
S 体腔内壁(観察対象部位)
【技術分野】
【0001】
本発明は、光走査装置および走査型観察装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、内視鏡挿入部の先端に照明光を伝達する照明ファイバに駆動信号を与えて照明ファイバの先端の位置を連続的に変位させることにより、内視鏡挿入部の先端から射出する照明光を走査する光走査型内視鏡装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。特許文献1に記載の光走査型内視鏡装置は、照明ファイバに与える駆動信号の振幅を線形に変化させて徐々に大きくしていくことで、照明ファイバの先端の位置を中心から外方に向かって渦巻き型に等ピッチで変位させることとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−142482号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、内視鏡装置は広画角(例えば、80〜130°)であることが要求されており、光学系のディストーションが大きい。光学系のディストーションとは、画角中心と画角周辺の倍率が異なる現象をいう。そのため、特許文献1に記載の走査型内視鏡装置のように、照明ファイバの先端の位置を渦巻き型に等ピッチで変位させたとしても、画角中心の照射スポットのピッチに対して画角周辺の照射スポットのピッチが粗くなる傾向がある。その結果、画角中心と比較して画角周辺の解像力が劣化してしまうという問題がある。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、光学系のディストーションによる影響を補正し、解像力のばらつきを低減することができる光走査装置および走査型観察装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は以下の手段を採用する。
本発明は、光源から発せられた照明光を一定周期で螺旋状の軌跡で走査させる走査部と、該走査部により走査された前記照明光を入射して観察対象部位に向けて射出する照明光学系と、前記照明光の前記螺旋状の軌跡の中心から一半径方向に沿う方向の振幅を線形に変化させたときに、前記照明光学系から射出される前記照明光の前記一半径方向に沿う方向の振幅の時間変化を示す関数を記憶する記憶部と、前記照明光学系に入射させる前記照明光の前記一半径方向に沿う方向の振幅が前記記憶部に記憶されている前記関数の逆数に比例して変化するように、前記走査部による前記照明光の走査を制御する走査制御部とを備える光走査装置を提供する。
【0007】
一般的に、照明光学系は、画角に対して倍率が変化する収差(以下、ディストーションという。)を有している。照明光学系に対して一定周期で螺旋状の軌跡で走査させた照明光を入射させると、照明光学系から射出される照明光も螺旋状に変位するが、照明光学系に入射させる照明光の螺旋状の軌跡の中心から一半径方向に沿う方向の振幅を線形に変化させたとしても、照明光学系から射出される照明光はディストーションの影響により一半径方向の振幅が変化し歪んだ螺旋状に変位してしまう。
【0008】
本発明によれば、記憶部に記憶する関数により、照明光の螺旋状の軌跡の中心から一半径方向に沿う振幅を線形に変化させたときに照明光学系から射出される照明光の一半径方向に沿う振幅の時間変化が分かるので、走査制御部により、照明光学系に入射させる照明光の一半径方向に沿う方向の振幅がその関数の逆数に比例して変化するように、走査部による照明光の走査を制御することで、照明光学系のディストーションによる影響を補正し、照射光学系により射出される照明光の一半径方向の振幅を均等化することができる。これにより、走査部によって走査された照明光を照明光学系を介して察対象部位上に等ピッチで照射させていくことができ、その結果、解像力のばらつきを低減することができる。
【0009】
上記発明においては、前記走査部が、前記光源から発せられた前記照明光を前記照明光学系に導光し、前記照明光を射出する射出端の位置を共振によって変位させることにより該照明光を走査せる照明ファイバであり、前記走査制御部が、前記照明ファイバを共振させる駆動信号の振幅の変化率を制御することとしてもよい。また、前記走査部が、前記照明光学系に入射させる前記照明光を透過させ、内部に屈折率分布を生じさせることにより前記照明光を走査せる電気光学素子であり、前記走査制御部が、前記電気光学素子に印加する電圧を制御することとしてもよい。また、前記走査部が、前記光源から発せられた前記照明光を照明光学系に向けて反射し、揺動角度を変化することにより前記照明光を走査せるガルバノミラーであり、前記走査制御部が、前記ガルバノミラーの揺動角度を制御することとしてもよい。
【0010】
本発明は、上記いずれかの光走査装置と、該光走査装置により前記照明光が走査された前記観察対象部位から戻る戻り光を検出して画像を構築する画像構築部を備える走査型観察装置を提供する。
本発明によれば、光走査装置により照明光学系のディストーションによる影響を補正し、画像構築部により解像力のばらつきを低減した画像を取得することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、光学系のディストーションによる影響を補正し、解像力のばらつきを低減することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態に係る走査型観察装置の縦断面図である。
【図2】図1の照明ファイバの概略構成図である。
【図3】走査光学系のディストーションが負の場合の照明ファイバの振幅と観察対象部位上の観察範囲との関係を示す図である。
【図4】近軸像高および実像高と物体高との関係を示す図である。
【図5】物体高と走査光学系のディストーションとの関係を示す図である。
【図6】ファイバの振幅と物体高との関係を示す図である。
【図7】物体高の照明位置と観察対象部位上のレーザ光の走査ピッチとの関係を示す図である。
【図8】照明ファイバの振幅と時間との関係を示す図である。
【図9】駆動信号の振幅を線形に変化させた様子を示す図である。
【図10】観察対象部位上のレーザ光の走査ピッチを示す図である。
【図11】一定周期の正弦波の駆動信号の振幅の変化率を徐々に小さくした様子を示す図である。
【図12】照明ファイバの先端の移動軌跡を示す図である。
【図13】観察対象部位上のレーザ光の走査ピッチと画像構成とを関連づけて示した図である。
【図14】走査範囲の一部においてのみ駆動信号の振幅を変化させた様子を示す図である。
【図15】観察対象部位上の走査範囲全体の内の一部の領域のみをディストーション補正した様子を示す図である。
【図16】所望のフレームのみディストーション補正する場合の駆動信号と時間との関係を示す図である。
【図17】走査部として、電気光学結晶を用いて電気制御により照明ファイバを共振させてレーザ光を走査させる構成を示す図である。
【図18】走査部として、永久磁石とコイルを用いて電磁駆動によりレーザ光を走査させる構成を示す図である。
【図19】図18の照明ファイバにおいて磁界が発生する様子を示す図である。
【図20】図18の照明ファイバが湾曲する様子を示す図である。
【図21】矩形波の駆動信号の振幅を示す図である。
【図22】のこぎり刃の駆動信号の振幅を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の一実施形態に係る光走査装置および走査型観察装置について、図面を参照して以下に説明する。
本実施形態においては、走査型観察装置として光走査型内視鏡装置を例示して説明する。本実施形態に係る光走査型内視鏡装置100は、図1に示されるように、体腔内に挿入される細長い形状の挿入部10を有する光走査装置50と、挿入部10の先端部10aから射出させるレーザ光(照明光)を発する光源22とを備えている。
【0014】
挿入部10は、光源22から発せられたレーザ光を基端部10bから導入し、先端部10aから射出することができるようになっている。この挿入部10には、基端部10bから導入されたレーザ光を先端部10aへ導光する照明ファイバ(走査部)11と、照明ファイバ11により導光されてきたレーザ光を透過させて観察対象部位S(例えば、体腔内壁S)に向けて射出する走査光学系(照明光学系)13と、走査光学系13によってレーザ光が照射されることにより体腔内壁Sの走査位置において散乱した反射光(戻り光)を受光する複数の検出ファイバ17とが備えられている。
【0015】
照明ファイバ11は、弾性変形可能な円筒状の部材であり、挿入部10の長手方向に沿って配置されている。この照明ファイバ11は、図2に示すように、円筒状の圧電素子15に挿通されて保持されている。図2において、照明ファイバ11の長手方向をZ軸方向とする。
【0016】
圧電素子15は、周方向に4分割した位置にそれぞれ相対して配された2対の電極を有している。電極が相対する方向をそれぞれX軸方向、Y軸方向とする。圧電素子15は、駆動信号が与えられることにより照明ファイバ11をX軸方向とY軸方向にそれぞれ共振させることができるようになっている。また、圧電素子15に与える駆動信号の振幅を徐々に大きくしていくことにより、照明ファイバ11の先端を中心から半径方向外方に向かって螺旋状に変位させることができるようになっている。これにより、照明ファイバ11は、光源22から発せられ走査光学系13に入射させるレーザ光を螺旋状の軌跡で走査させることができるようになっている。
【0017】
走査光学系13は、挿入部10の先端部10a付近に設けられ、照明ファイバ11の先端に対して挿入部10の長手方向に所定の間隔をあけて配置されている。この走査光学系13は、例えば、80°〜130°程度の画角を有している。
【0018】
検出ファイバ17は、挿入部10を同心的に囲むように、挿入部10の外周に沿って周方向に所定の間隔をあけて配列されている。この検出ファイバ17は、照明ファイバ11と同様に、挿入部10の長手方向に沿って設けられており、一端が挿入部10の先端部10aの周囲に配置されている。検出ファイバ17は、例えばNA=0.5とする。
【0019】
また、光走査型内視鏡装置100には、検出ファイバ17により受光された反射光を検出し2次元画像を構築するCCDのような画像構築部24と、所定の関数を記憶する記憶部26と、記憶部26に記憶されている関数に基づいて照明ファイバ11によるレーザ光の走査を制御する走査制御部28と、照明ファイバ11の圧電素子15に印加する駆動信号を出力する駆動部(図示略)とが備えられている。駆動部は、例えば、一定周期1/fの正弦波の駆動信号を出力するようになっている。走査制御部28と駆動部は互いに電気的に接続されている。
【0020】
画像構築部24は、検出ファイバ17の他端に接続されている。
記憶部26には、走査光学系13に入射させるレーザ光の螺旋状の軌跡における中心から一半径方向に沿う方向の振幅を線形に変化させたときに、走査光学系13から射出されるレーザ光の螺旋状の軌跡における一半径方向に沿う方向の振幅の時間変化を示す関数(以下、「照明位置の関数」とする。)gを記憶させるようになっている。
【0021】
走査制御部28は、記憶部26から照明位置の関数gを読み出し、照明ファイバ11の先端の螺旋状の軌跡における一半径方向に沿う方向の振幅が照明位置の関数gの逆数に比例して変化するように、駆動部から出力させる駆動信号の振幅を変化させるようになっている。本実施形態においては、走査制御部28は、以下のアルゴリズムに基づいて駆動信号を変化させるようになっている。
【0022】
図3は、走査光学系13のディストーションが負の場合の照明ファイバ11の振幅と観察対象部位S上の観察範囲との関係を示す図であり、図4は、近軸像高yおよび実像高(=照明ファイバ11の振幅)y´と物体高(=観察範囲)Yとの関係を示している。また、図5は物体高Yと走査光学系13のディストーションaとの関係を示し、図6はファイバ11の振幅y´と物体高Yとの関係を例示している。走査光学系13のディストーションとは、画角に対して倍率が変化する収差をいい、例えば、走査光学系13は画角中心に対して画角周辺程ディストーションが大きい特性を有している。
【0023】
図7に示すように、n周目の物体高の照明位置をY_n、観察対象部位S上のレーザ光の走査ピッチをpとし、Y_n+1=Y_n+pとなるように物体高を決定する。走査光学系13の近軸倍率をβとすると、近軸像高はy=β×Yと表すことができる。また、走査光学系13のディストーションはα={(y´−y)/y}×100と表される。
【0024】
上記の近軸像高yと走査光学系13のディストーションαの式により、y´={(100+a(Y))×β/100}×Yとなり、照明ファイバ11の振幅はy´=g(Y)というように、記憶部26に記憶されている照明位置の関数gで1対1に表すことができる。
【0025】
したがって、n周目の照明ファイバ11の振幅はy´_n=g(Y_n)、n+1周目の照明ファイバ11の振幅はY´_n+1=g(Y_n+1)というように一義的に求めることができる。一方、図8に示すように、n周目の時刻をt_nとし、照明ファイバ11の先端の振幅変調の関数をh(t)とすると、n周目の照明ファイバ11の振幅はy´_n=h(t_n)、n+1周目の照明ファイバ11の振幅はY´_n+1=h(t_n+1)・・・(1)の関係が成り立つ。また、照明ファイバ11の振動周波数をfとすると、t_n+1−t_n=1/f・・・(2)の関係が成り立つ。
【0026】
上記(1),(2)を満たすように振幅変調の関数h(t)をすべての周回数nについて定義すれば、走査光学系13から射出されるレーザ光の螺旋状の軌跡における一半径方向の振幅を等ピッチにすることができる。したがって、走査制御部28は、上記のようにして定まる振幅変調の関数h(t)により、駆動部から出力させる一定周期1/fの駆動信号の振幅を変化させて、照明ファイバ11によるレーザ光の走査を制御するようになっている。
【0027】
次に、このように構成された光走査型内視鏡装置100の作用について以下に説明する。
本実施形態に係る光走査型内視鏡装置100により、体腔内壁Sの画像情報を取得するには、生体の体腔内に光走査装置50の挿入部10を挿入し、挿入部10の先端部10aを体腔内壁Sに対向させて光源22によりレーザ光を発生させる。
【0028】
光源22から発せられたレーザ光は、挿入部10に導入されて照明ファイバ11により導光され、走査光学系13を透過して体腔内壁Sに照射される。このとき、駆動部の作動により、圧電素子15に対して一定周期1/fの駆動信号が与えられ、照明ファイバ11が共振させられる。そして、照明ファイバ11の先端が中心から半径方向外方に向かって螺旋状に変位させられることにより、走査光学系13を介してレーザ光が体腔内壁S上で螺旋状に走査される。
【0029】
レーザ光が照射されることにより体腔内壁Sの各走査位置において散乱した反射光は、複数の検出ファイバ17により受光され、画像構築部24に導光される。これにより、画像構築部24により反射光が検出され、体腔内壁Sの2次元画像が構築される。走査範囲の全体をレーザ光が走査されて1枚目のフレームの画像が構築されると、駆動部により圧電素子15に与えられる駆動信号が一旦ゼロに戻され、同様にして再び体腔内壁S上をレーザ光が螺旋状に走査されて2枚目のフレームの画像が構築される。
【0030】
ここで、走査光学系13に対して一定周期で螺旋状の軌跡で走査させたレーザ光を入射させると、走査光学系13から射出されるレーザ光も螺旋状に変位するが、図9に示すように駆動信号の振幅を線形に変化させ、走査光学系13に入射させるレーザ光の螺旋状の軌跡の中心から一半径方向に沿う方向の振幅を線形に変化させたとしても、走査光学系13から射出されるレーザ光はディストーションの影響により一半径方向の振幅が変化し歪んだ螺旋状に変位してしまう。具体的には、走査光学系13は画角中心に対して画角周辺程ディストーションが大きい特性を有しているため、走査光学系13に対して一定周期で螺旋状の軌跡で走査させたレーザ光を入射させると、走査光学系13から射出されるレーザ光の一半径方向の振幅は半径方向外方に向かうにつれて大きくなる。その結果、図10に示すように、体腔内壁S上のレーザ光の走査ピッチが画角周辺程粗くなる。
【0031】
本実施形態においては、走査制御部28の作動により、走査光学系13に入射させるレーザ光の螺旋状の軌跡における一半径方向に沿う方向の振幅が照射位置の関数gの逆数に比例して変化するように、駆動部により出力される駆動信号の振幅が振幅変調の関数h(t)に従って変化させられる。具体的には、走査制御部28により、図11に示すように、一定周期1/fの正弦波の駆動信号の振幅の変化率が徐々に小さくなるように駆動部が制御される。
【0032】
これにより、図12に示すように、照明ファイバ11の先端の移動軌跡は中心から半径方向外方に変位するにつれて徐々に密になり、走査光学系13に対して中心よりも周辺程細かいピッチで螺旋状に走査されたレーザ光が入射される。これにより、走査光学系13のディストーションによる影響を補正し、走査光学系13から射出されるレーザ光の螺旋状の軌跡における一半径方向の振幅を均等化することができる。
【0033】
したがって、本実施形態に係る光走査型内視鏡装置100によれば、走査光学系13のディストーションに関わらず、図13に示すように、照明ファイバ11によって走査されたレーザ光を走査光学系13を介して体腔内壁S上に等ピッチで照射せていくことができ、その結果、画像構築部24によって検出される反射光の解像力のばらつきを低減した画像を取得することができる。
【0034】
本実施形態においては、走査制御部28が、駆動部により出力される駆動信号の振幅の変化率を徐々に小さくすることとしたが、照明ファイバ11により走査光学系3に入射させるレーザ光の螺旋状の軌跡における中心から一半径方向に沿う方向の振幅が照射位置の関数gの逆数に比例するように、照明ファイバ11によるレーザ光の走査を制御することとすればよく、走査光学系13のディストーションに応じて、走査制御部28が、駆動部により出力される駆動信号の振幅の変化率を大きくしたり小さくしたりすることとしてもよい。
また、本実施形態においては、記憶部26により照明位置の関数gを記憶することとしたが、例えば、記憶部26により照明位置の関数gの逆数を記憶しておくこととしてもよい。
【0035】
本実施形態は以下のように変形することができる。
本実施形態においては、走査制御部28が走査範囲の全体にわたり、駆動部の駆動信号の振幅を変化させることとしたが、第1の変形例としては、例えば、走査範囲の一部においてのみ、走査制御部28が駆動部の駆動信号の振幅を変化させることとしてもよい。
【0036】
例えば、図14に示すように、走査範囲の開始地点(同図において時刻t1。)から途中位置(同じく時刻t2。)までは、走査制御部28により駆動部の駆動信号の振幅を変化させ、走査範囲の途中位置(時刻t2。)から終了地点までは、走査制御部28による制御を行わずに駆動部から振幅の変化率が一定の駆動信号を出力させることとしてもよい。
【0037】
このようにすることで、図15に示すように、走査範囲の開始地点(時刻t1。)から途中位置(時刻t2。)までは、走査光学系13のディストーションの影響を補正して体腔内壁S上でレーザ光を等ピッチで走査させることにより解像力のばらつきを低減し、走査範囲の途中位置(時刻t2。)から終了地点までは、走査光学系13のディストーションの影響によりも走査速度を優先させて、フレームレートの向上を図ることができる。
【0038】
本変形例においては、走査範囲の開始地点から途中位置までは走査制御部28により照明ファイバ11によるレーザ光の走査を制御することとしたが、走査範囲全体のうちの所望の範囲で走査制御部28により照明ファイバ11によるレーザ光の走査を制御することとすればよく、例えば、走査範囲の途中位置から終了地点までの間で走査制御部28により照明ファイバ11によるレーザ光の走査を制御することとしてもよい。
【0039】
また、第2の変形例としては、体腔内壁Sの画像の所望のフレームについてのみ、走査制御部28により照明ファイバ11によるレーザ光の走査を制御することとしてもよい。このようにすることで、所望のフレームのみ走査光学系13のディストーションの影響を補正して体腔内壁S上でレーザ光を等ピッチで走査せることにより解像力のばらつきを低減し、他のフレームは走査速度を優先して画像のフレームレートを向上させることができる。
【0040】
例えば、図16に示すように、1フレーム目は走査制御部28による制御は行わずに一定周期の駆動信号の振幅を線形に変化させ、1フレーム目の走査範囲の終了地点に達したら駆動信号の振幅を一旦ゼロに戻し、2フレーム目は走査制御部28により駆動信号の振幅の変化率を変化させることとしてもよい。このようにすることで、例えば、1フレーム目は動画モードとして走査周回数を低減してフレームレートを向上し、2フレーム目は静止画モードとして走査光学系13のディストーションの影響を補正し、体腔内壁S上でレーザ光を等ピッチで走査させることにより解像力のばらつきを低減して画像の質を向上させることができる。
【0041】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。例えば、上記一実施形態、第1変形例および第2変形例を組み合せてもよい。また、上記一実施形態においては、光走査型観察装置として光走査型内視鏡装置100を例示して説明したが、光源から発せられた照明光を走査させるガルバノミラーのような走査部と、走査部により走査された照明光を透過させて被写体に照射する照明光学系と、記憶部26と、走査制御部28とを備える通常の光走査型顕微鏡装置であってもよい。
【0042】
また、上記一実施形態においては、走査部として、照明ファイバ11を圧電素子15により共振させてレーザ光を走査させる構成を例示して説明したが、これに代えて、走査部として、例えば、走査光学系13から射出させるレーザ光を電気光学結晶を通過させて、電気制御によりレーザ光を走査させる構成を採用することとしてもよい。
【0043】
具体的には、図17に示すように、互いに直交する方向に偏向動作する2つの電気光学結晶115にレーザ光を入射させ、電気光学結晶115に電圧を印加し内部に屈折率分布を生じさせて、電気光学結晶115を通過するレーザ光を偏向させることにより、レーザ光を走査させることとしてもよい。図17においては、一方向(例えば、Y軸方向)の電気光学結晶115だけを示すが、これに直交する方向(例えば、X軸方向)の電気光学結晶についても同様である。
【0044】
また、走査部として、例えば、照明ファイバ11を永久磁石とコイルにより電磁駆動で共振させてレーザ光を走査させる構成を採用することとしてもよい。具体的には、図18に示すように、永久磁石116に照明ファイバ11を挿通させて照明ファイバ11を片持ち梁状に保持し、挿入部10の内面に永久磁石116の半径方向に間隔をあけてX軸駆動用Tiltedコイル117とY軸駆動用Tiltedコイル118とを配置し、これらのコイル17,118に電流を流すことによって電磁駆動により照明ファイバ11を共振させてレーザ光を走査させることとしてもよい。この場合、X軸駆動用Tiltedコイル117とY軸駆動用Tiltedコイル118とを挿入部10の長手方向に対して互いに異なる方向に傾斜させて配置することとすればよい。
【0045】
このように構成した場合、例えば、Y軸駆動用Tiltedコイル118に電流を流すと、図19に示すように、照明ファイバ11の長手方向に対して交差するY軸方向に磁界が発生し、図20に示すように、永久磁石116の磁気モーメントが磁界に沿うように照明ファイバ11が湾曲させられる。これにより、レーザ光をY軸方向に走査することができる。同様にして、X軸駆動用Tiltedコイル117に電流を流すと、照明ファイバ11をX軸方向に湾曲させ、レーザ光をX軸方向に走査することができる。したがって、X軸駆動用Tiltedコイル117とY軸駆動用Tiltedコイル118に駆動信号の位相を90°ずらして交互に加えることにより、照明ファイバ11の先端を螺旋状に変位させてレーザ光を2次元的に走査することができる。
また、走査部として、ガルバノミラーを採用することとしてもよい。
【0046】
また、上記実施形態においては、走査制御部28が、駆動部により出力される図9に示すような正弦波の駆動信号の振幅を変化させることとしたが、駆動部により出力される駆動信号は照明ファイバ11の共振周期1/fに一致する周期の駆動派形であればよく、例えば、走査制御部28が、図21に示すような矩形波の駆動信号の振幅を変化させることとしてもよいし、図22に示すようなのこぎり刃の駆動信号の振幅を変化させることとしてもよい。照明ファイバ11はいずれの波形の駆動信号でも正弦波周期で振動することとすればよい。
【符号の説明】
【0047】
11 照明ファイバ(走査部)
13 走査光学系
22 光源
26 記憶部
28 走査制御部
50 光走査装置
100 走査型観察装置
S 体腔内壁(観察対象部位)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源から発せられた照明光を一定周期で螺旋状の軌跡で走査させる走査部と、
該走査部により走査された前記照明光を入射して観察対象部位に向けて射出する照明光学系と、
前記照明光の前記螺旋状の軌跡の中心から一半径方向に沿う方向の振幅を線形に変化させたときに、前記照明光学系から射出される前記照明光の前記一半径方向に沿う方向の振幅の時間変化を示す関数を記憶する記憶部と、
前記照明光学系に入射させる前記照明光の前記一半径方向に沿う方向の振幅が前記記憶部に記憶されている前記関数の逆数に比例して変化するように、前記走査部による前記照明光の走査を制御する走査制御部とを備える光走査装置。
【請求項2】
前記走査部が、前記光源から発せられた前記照明光を前記照明光学系に導光し、前記照明光を射出する射出端の位置を共振によって変位させることにより該照明光を走査せる照明ファイバであり、
前記走査制御部が、前記照明ファイバを共振させる駆動信号の振幅の変化率を制御する請求項1に記載の光走査装置。
【請求項3】
前記走査部が、前記照明光学系に入射させる前記照明光を透過させ、内部に屈折率分布を生じさせることにより前記照明光を走査せる電気光学素子であり、
前記走査制御部が、前記電気光学素子に印加する電圧を制御する請求項1に記載の光走査装置。
【請求項4】
前記走査部が、前記光源から発せられた前記照明光を照明光学系に向けて反射し、揺動角度を変化することにより前記照明光を走査せるガルバノミラーであり、
前記走査制御部が、前記ガルバノミラーの揺動角度を制御する請求項1に記載の光走査装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4に記載の光走査装置と、
該光走査装置により前記照明光が走査された前記観察対象部位から戻る戻り光を検出して画像を構築する画像構築部を備える走査型観察装置。
【請求項1】
光源から発せられた照明光を一定周期で螺旋状の軌跡で走査させる走査部と、
該走査部により走査された前記照明光を入射して観察対象部位に向けて射出する照明光学系と、
前記照明光の前記螺旋状の軌跡の中心から一半径方向に沿う方向の振幅を線形に変化させたときに、前記照明光学系から射出される前記照明光の前記一半径方向に沿う方向の振幅の時間変化を示す関数を記憶する記憶部と、
前記照明光学系に入射させる前記照明光の前記一半径方向に沿う方向の振幅が前記記憶部に記憶されている前記関数の逆数に比例して変化するように、前記走査部による前記照明光の走査を制御する走査制御部とを備える光走査装置。
【請求項2】
前記走査部が、前記光源から発せられた前記照明光を前記照明光学系に導光し、前記照明光を射出する射出端の位置を共振によって変位させることにより該照明光を走査せる照明ファイバであり、
前記走査制御部が、前記照明ファイバを共振させる駆動信号の振幅の変化率を制御する請求項1に記載の光走査装置。
【請求項3】
前記走査部が、前記照明光学系に入射させる前記照明光を透過させ、内部に屈折率分布を生じさせることにより前記照明光を走査せる電気光学素子であり、
前記走査制御部が、前記電気光学素子に印加する電圧を制御する請求項1に記載の光走査装置。
【請求項4】
前記走査部が、前記光源から発せられた前記照明光を照明光学系に向けて反射し、揺動角度を変化することにより前記照明光を走査せるガルバノミラーであり、
前記走査制御部が、前記ガルバノミラーの揺動角度を制御する請求項1に記載の光走査装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4に記載の光走査装置と、
該光走査装置により前記照明光が走査された前記観察対象部位から戻る戻り光を検出して画像を構築する画像構築部を備える走査型観察装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図2】
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【図17】
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【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【公開番号】特開2012−231911(P2012−231911A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−101964(P2011−101964)
【出願日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】
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