説明

光走査装置及びこれを備えた画像形成装置

【課題】簡単な構成で光学素子を高精度に接着固定することができる光走査装置を提供すること。
【解決手段】レーザーダイオード(光源)22から出射される光を筐体21に接着固定されたシリンドリカルレンズ(光学素子)23を経て偏向手段に入射させ、該偏向手段によって偏向された光を走査レンズによって結像させて像担持体を露光走査する光走査装置において、前記筐体21の前記シリンドリカルレンズ23を接着固定する箇所に円環状の凸部21aを形成し、該凸部21a内に接着剤31を滴下し、所定時間の経過によって前記凸部21a内で所要の塗布形状を形成する前記接着剤31によって前記シリンドリカルレンズ23を筐体21に接着固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光ドラム等の像担持体上を露光走査する光走査装置をこれを備えた複写機やプリンター等の画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式によって用紙等の記録材に画像を形成する複写機やプリンター等の画像形成装置においては、帯電器によって表面が一様に帯電された感光ドラム等の像担持体が光走査装置によって露光走査され、その表面に画像情報に応じた静電潜像が形成される。そして、像担持体上に形成された静電潜像は、現像装置によって現像剤であるトナーを用いて現像されてトナー像として顕像化され、このトナー像が記録材上に転写される。このようにトナー像が転写された記録材は、定着装置へと搬送され、該定着装置によって加熱及び加圧されてトナー像の定着を受け後に機外に排出され、これによって一連の画像形成動作が完了する。
【0003】
ところで、光走査装置は、レーザーダイオード(LD)等の光源から出射される光をコリメータレンズやシリンドリカルレンズ等の光学素子を経てポリゴンミラー等の偏向手段に入射させ、該偏向手段によって偏向された光を走査レンズによって結像させて感光ドラム等の像担持体を露光走査するものである。斯かる光走査装置において、コリメータレンズ等の光学素子123は、省部品化等のために図5の部分断面図に示すように筐体121に接着剤131によって直接固定されている。尚、図4において122は光源であるレーザーダイオードである。
【0004】
而して、光走査装置に高い走査性能を確保するためには、光学素子123を筐体121に高い位置精度で接着固定する必要があるが、図5に示すように接着剤131に偏りがある場合、接着剤131の硬化収縮によって光学素子123が図示矢印方向に動き、該光学素子123に高い位置精度を確保することができないという問題がある。
【0005】
そこで、特許文献1には、高い位置精度が求められるコリメータレンズの下に接着剤溜り部を形成する構成が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−158784号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1において提案された接着構造によれば、厚さの薄いコリメータレンズに対しては、その側面を保持する方法しか採ることができず、コリメータレンズの下側に接着剤が回り込む保持(チャック)構造を採ることができないために接着剤塗布部の形状が複雑化するという問題がある。
【0008】
本発明は上記問題に鑑みてなされたもので、その目的とする処は、簡単な構成で光学素子を高精度に接着固定することができる光走査装置及びこれを備えた画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、光源から出射される光を筐体に接着固定された光学素子を経て偏向手段に入射させ、該偏向手段によって偏向された光を走査レンズによって結像させて像担持体を露光走査する光走査装置において、前記筐体の前記光学素子を接着固定する箇所に円環状の凸部を形成し、該凸部内に接着剤を滴下し、所定時間の経過によって前記凸部内で所要の塗布形状を形成する前記接着剤によって前記光学素子を筐体に接着固定したことを特徴とする光走査装置。
【0010】
請求項2記載の画像形成装置は、請求項1記載の光走査装置を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1記載の発明によれば、筐体の光学素子を接着固定する箇所に形成された円環状の凸部内に滴下した接着剤の位置が多少ズレても、所定時間が経過する間に接着剤が表面張力によって凸部内で均一に広がって所要の塗布形状を形成するため、この接着剤によって光学素子が筐体に位置精度良く接着固定され、光走査装置に高い走査性能が確保される。
【0012】
請求項2記載の発明によれば、光走査装置に高い走査性能が確保される結果、高質画像が常に安定的に得られる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る画像形成装置の断面図である。
【図2】本発明に係る光走査装置の斜視図である。
【図3】(a)〜(e)はコリメータレンズの接着要領をその工程順に示す図である。
【図4】図3(a)のA−A線断面図である。
【図5】従来の光走査装置におけるコリメータレンズの接着構造を示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0015】
[画像形成装置]
図1は本発明に係る画像形成装置の縦断面図であり、図示の画像形成装置1はレーザープリンターであって、装置本体1Aの内部上方には、画像形成部2が配され、装置本体1A内の下半部には用紙収納部3が配されている。
【0016】
上記画像形成部2は、電子写真方式によって画像を形成するものであって、回転可能に配された像担持体としての感光ドラム4と、その周囲に配された帯電器5、現像装置6、転写ローラー7及びクリーニング装置8の他、現像装置6に現像剤であるトナーを補給するためのトナーホッパー9を備えている。そして、画像形成部2の横には、本発明に係る光走査装置(レーザースキャナーユニット(LSU))10が配置されている。
【0017】
前記用紙収納部3は、複数枚の用紙が積層収容された着脱可能な上下2段の給紙カセット11,12を備えており、各給紙カセット11,12の近傍には、各給紙カセット11,12内の用紙を上位のものから順次取り出すピックローラー13と、取り出された用紙を1枚ずつ分離して送り出すフィードローラー14及びリタードローラー15がそれぞれ配設されている
又、装置本体1A内には、用紙収納部3から画像形成部2に至る第1搬送経路S1と、画像形成部2から排紙トレイ16に至る第2搬送路S2が配置されており、第1搬送路S1にはレジストローラー17と前記転写ローラー7が設けられ、第2搬送路S2には定着装置18と搬送ローラー19及び排紙ローラー20が設けられている。ここて、定着装置18は、圧接状態で互いに回転する定着ローラー18aと加圧ローラー18bを備えている。
【0018】
次に、以上のように構成された画像形成装置1の画像形成動作について説明する。
【0019】
画像形成動作が開始されると、画像形成部2においては感光ドラム4が不図示の駆動手段によって図1の矢印方向(時計方向)に回転駆動され、その表面が帯電器5によって所定の電位に一様に帯電される。そして、パソコン等から送信される電気信号に基づくレーザービームが光走査装置10から出力されて感光ドラム4の表面が露光走査されると、該感光ドラム4上に画像情報に応じた静電潜像が形成される。そして、この感光ドラム4上に形成された静電潜像は、現像装置6によって現像剤であるトナーを用いて現像されてトナー像として可視像化される。
【0020】
ところで、カセット給紙を行う場合、用紙収納部3の例えば上段の給紙カセット11内に収容された用紙は、ピックローラー13によって最上位のものからピックアップされ、フィードローラー14とリタードローラー15によって1枚ずつ分離されて第1搬送経路路S1をレジストローラー17へと搬送される。そして、レジストローラー17においては、用紙は、一時待機状態とされた後、感光ドラム4上のトナー像に同期する所定のタイミングで画像形成部2へと供給される。
【0021】
画像形成部2においては、感光ドラム4と転写ローラー7との間の転写ニップへと供給された用紙は、転写ローラー7によって感光ドラム4に押し付けられながら搬送されることによって、その表面に感光ドラム4上のトナー像が転写される。そして、トナー像が転写された用紙は、定着装置18へと搬送され、この定着装置18の定着ローラー18aと加圧ローラー18b間の定着ニップを通過する過程で加熱及び加圧されてトナー像の定着を受ける。尚、用紙へのトナー像の転写後に感光ドラム4の表面に残留するトナー(転写残トナー)はクリーニング装置8によって除去され、表面が清掃された感光ドラム4は次の画像形成動作に備えられる。
【0022】
而して、定着装置18にて表面にトナー像が定着された用紙は、第2搬送経路S2を搬送ローラー19によって排紙ローラー20に向かって搬送され、排紙ローラー20によって排紙トレイ16へと排出され、これによって一連の画像形成動作が終了する。
【0023】
[光走査装置]
次に、本発明に係る前記光走査装置10を図2に基づいて説明する。
【0024】
図2は本発明に係る光走査装置の斜視図であり、図示の光走査装置10の筐体21には光源であるレーザーダイオード(LD)22が備えられており、筐体21内には、レーザーダイオード22からの光ビームLの出射方向に沿ってコリメータレンズ23とシリンドリカルレンズ24及び偏向器としてのポリゴンミラー25が一直線上に配置されている。
【0025】
又、筐体21内には、ポリゴンミラー25によって偏向される光ビームLの進行方向に沿って2つのfθレンズ26,27と折り返しミラー28が配設されている。又、光ビームLの有効走査範囲(実際にプリント幅として使用する走査範囲)Rを外れた位置の左右には光検知素子であるBDセンサー29と、ポリゴンミラー25によって偏向されて有効走査範囲Rを外れた光路を進む光ビームL1を折り返して前記BDセンサー29へと導くBDミラー30が配置されている。
【0026】
而して、図2に示す光走査装置10において、レーザーダイオード22が画像信号に応じてON/OFF制御されると、該レーザーダイオード22から画像データに対応して変調された光ビームLが出射され、この光ビームLは、コリメータレンズ23によって平行光束とされ、この平行光束Lは、副走査方向にのみパワーを有するシリンドリカルレンズ24によってポリゴンミラー25の反射面に結像され、高速で回転するポリゴンミラー25によって偏向される。そして、偏向された光ビームLは、fθレンズ26,27によって等速度で集光され、折り返しミラー28によって折り返されて被走査面である感光ドラム4上に集光スポットを形成し、これによって感光ドラム4上が主走査方向に露光走査され、各感光ドラム4上には各色のカラー画像信号に応じた静電潜像が形成される。
【0027】
ここで、有効走査範囲R外に配置されたBDセンサー29には光ビームL1がBDミラー30によって折り返されて入射し、この光ビームL1がBDセンサー29によって検知されることによって光ビームLによる感光ドラム4上への露光走査(書き出し)開始タイミングが決定される。
【0028】
次に、コリメータレンズ23の接着構造と接着要領を図3(a)〜(e)及び図4に基づいて以下に説明する。尚、図3(a)〜(e)はコリメータレンズの接着要領をその工程順に示す図であり、上段は平面図、下段は側断面図、図4は図3(a)のA−A線断面図である。
【0029】
図3(a)に示すように、筐体21の底面のコリメータレンズ23が接着固定される箇所には円環状の凸部21aが突設されており、この凸部21aで囲まれる部分は図4に示すように凹部21bを形成している。
【0030】
而して、コリメータレンズ23の筐体21への接着に際しては図3(b)に示すように筐体21の凸部21aで囲まれた凹部21bに接着剤31が滴下される。このとき、接着剤31が筐体21の凸部21a内の凹部21bの中心から偏った位置に滴下されても、所定時間が経過すると接着剤31は図3(c),(d)に示すように表面張力によって凸部21aで囲まれた凹部21bで次第に均一に広がって所要の塗布形状を形成する。このため、接着剤31が硬化収縮してもコリメータレンズ23が動くことがなく、図3(e)に示すようにコリメータレンズ23が接着剤31によって筐体21に位置精度良く接着固定され、光走査装置10に高い走査性能が確保される。このように光走査装置10に高い走査性能が確保される結果、図1に示す画像形成装置1において高質画像が常に安定的に得られる。
【0031】
尚、以上はコリメータレンズ23を筐体21に接着固定する構造と固定要領について説明したが、シリンドリカルレンズ24や他の光学素子も同様の固定構造及び固定要領によって筐体21に接着固定することができることは勿論である。
【符号の説明】
【0032】
1 画像形成装置
1A 画像形成装置本体
2 画像形成部
3 用紙収納部
4 感光ドラム
5 帯電器
6 現像装置
7 転写ローラー
8 クリーニング装置
9 トナーホッパー
10 光走査装置
11,12 給紙カセット
13 ピックローラー
14 フィードローラー
15 リタードローラー
16 排紙トレイ
17 レジストローラー
18 定着装置
18a 定着ローラー
18b 加圧ローラー
19 搬送ローラー
20 排紙ローラー
21 光走査装置の筐体
21a 筐体の凸部
21b 筐体の凹部
22 レーザーダイオード(光源)
23 コリメータレンズ(光学素子)
24 シリンドリカルレンズ(光学素子)
25 ポリゴンミラー
26,27 fθレンズ
28 折り返しミラー
29 BDセンサー
30 BDミラー
31 接着剤
S1 第1搬送路
S2 第2搬送路


【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源から出射される光を筐体に接着固定された光学素子を経て偏向手段に入射させ、該偏向手段によって偏向された光を走査レンズによって結像させて像担持体を露光走査する光走査装置において、
前記筐体の前記光学素子を接着固定する箇所に円環状の凸部を形成し、該凸部内に接着剤を滴下し、所定時間の経過によって前記凸部内で所要の塗布形状を形成する前記接着剤によって前記光学素子を筐体に接着固定したことを特徴とする光走査装置。
【請求項2】
請求項1記載の光走査装置を備えることを特徴とする画像形成装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−247716(P2012−247716A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−121173(P2011−121173)
【出願日】平成23年5月31日(2011.5.31)
【出願人】(000006150)京セラドキュメントソリューションズ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】