説明

光送信回路、光受信回路及び光結合型絶縁回路

【課題】光結合部の試験が容易な光送信回路、光受信回路及び光結合型絶縁回路を提供する。
【解決手段】アナログ信号をデジタル信号に変換するアナログデジタル変換回路と、クロックに基づく信号に前記アナログデジタル変換回路の出力を重畳して、平均デューティ比が0よりも大きくかつ1未満に符号化した送信信号を生成する符号化回路と、前記アナログ信号の入力レベルに応じて、前記送信信号または前記アナログ信号を出力する送信制御回路と、前記送信制御回路の出力を光信号に変換して出力する電気光変換素子と、を有する光送信回路と、前記光信号を受信して電気信号に変換する光電気変換回路と、前記光電気変換回路の出力を復号して再生デジタル信号と再生クロックを出力する復号回路と、前記光電気変換回路の出力の平均デューティ比に応じて前記復号回路の出力または前記光電気変換回路の出力を出力する受信制御回路と、を有する光受信回路と、を備えたことを特徴とする光結合型絶縁回路が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光送信回路、光受信回路及び光結合型絶縁回路に関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車やFA機器など、大電力の電気機器と高感度の電子機器とが混在する環境においては、ノイズ耐量の大きな絶縁回路、例えば絶縁型増幅器が用いられる。フォトカプラなど光学的に信号を伝送する光結合型絶縁回路は、入出力間が電気的に完全に絶縁されるため、ノイズ耐量に優れる。
【0003】
また、光結合型絶縁回路においては、アナログ信号の検出後にデジタル信号に変換して光伝送することにより、フォトカプラなどの非直線性を回避して高精度なアナログ信号情報の伝送が可能である。さらに、伝送路数を少なくするため、デジタル信号とクロックとを符号化して、フォトカプラなどで伝送する光結合型絶縁回路が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
光結合型絶縁回路の光結合部については、規定された保証期間は、例えば温度やLEDなどの発光素子の経年劣化が発生しても、正常に信号伝送されることを確かめる必要がある。そのための製品試験工程は、簡便な試験方法が望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−303663号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、光結合部の試験が容易な光送信回路、光受信回路及び光結合型絶縁回路を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様によれば、アナログ信号をデジタル信号に変換するアナログデジタル変換回路と、クロックに基づく信号に前記アナログデジタル変換回路の出力を重畳して、平均デューティ比が0よりも大きくかつ1未満に符号化した送信信号を生成する符号化回路と、前記アナログ信号の入力レベルに応じて、前記送信信号または前記アナログ信号を出力する送信制御回路と、前記送信制御回路の出力を光信号に変換して出力する電気光変換素子と、を備えたことを特徴とする光送信回路が提供される。
【0008】
また、本発明の他の一態様によれば、平均デューティ比が0よりも大きくかつ1未満に符号化された光信号または平均デューティ比が0または1であるアナログ信号の光信号を受信して電気信号に変換する光電気変換回路と、前記光電気変換回路の出力を復号して、再生デジタル信号と再生クロックを出力する復号回路と、前記光電気変換回路の出力の平均デューティ比に応じて、前記復号回路の出力または前記光電気変換回路の出力を出力する受信制御回路と、を備えたことを特徴とする光受信回路が提供される。
【0009】
また、本発明の他の一態様によれば、上記の光送信回路と、前記光信号を受信して電気信号に変換する光電気変換回路と、前記光電気変換回路の出力を復号して再生デジタル信号と再生クロックを出力する復号回路と、前記光電気変換回路の出力の平均デューティ比に応じて前記復号回路の出力または前記光電気変換回路の出力を出力する受信制御回路と、を有する光受信回路と、を備えたことを特徴とする光結合型絶縁回路が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、光結合部の試験容易な光送信回路、光受信回路及び光結合型絶縁回路が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態に係る光送信回路及び光受信回路を含む光結合型絶縁回路の構成を例示するブロック図である。
【図2】本発明の実施形態に係る光送信回路の他の構成を例示するブロック図である。
【図3】本発明の実施形態に係る光送信回路の他の構成を例示するブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、本願明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
また、論理値ローレベルをLで表し、論理値ハイレベルをHで表す。
【0013】
図1は、本発明の実施形態に係る光送信回路及び光受信回路を含む光結合型絶縁回路の構成を例示するブロック図である。
図1に表したように、光結合型絶縁回路1は、光送信回路2及び光受信回路3を備える。
【0014】
まず、光送信回路2について説明する。
光送信回路2は、アナログデジタル変換回路4、符号化回路5、発光素子駆動回路6、電気光変換素子7、送信制御回路8を備える。そして、アナログデジタル変換回路4、符号化回路5、発光素子駆動回路6、送信制御回路8を同じ半導体基板に形成して1チップ化した構造を備える。
【0015】
アナログデジタル変換回路4は、入力されたアナログ信号をクロックで決まる標本化周期で標本化し、デジタル信号に変換する。アナログデジタル変換回路4は、入力されたアナログ信号を所望の精度でデジタル化し、例えばnビット(nは正の整数)のデジタル信号として出力する。また、アナログデジタル変換回路4は、例えばΔΣADC(デルタシグマ型アナログデジタル変換回路)を用いることができる。この場合、出力されるデジタル信号は低ビット、例えば1ビットのデータとなり、符号化回路5の構成が簡単になる。
【0016】
アナログデジタル変換回路4の出力は、クロックに同期して、符号化回路5に入力される。
符号化回路5は、アナログデジタル変換回路4の出力のデジタル信号とクロックとを1つの伝送路の送信信号、例えば、PWM信号に符号化する。すなわち、クロックにアナログデジタル変換回路4の出力を重畳した送信信号を生成する。送信信号は、平均デューティ比が0よりも大きくかつ1未満に符号化されている。なお、図示しないクロックは、同一半導体基板上のクロック発生回路(図示せず)または外部クロック回路(図示せず)により生成され、アナログデジタル変換回路4に供給される。このクロックにより、標本化周期が規定される。
【0017】
アナログデジタル変換回路4の出力は、Lの連続からHの連続まで任意の値を取り得る。しかし、符号化回路5の出力の送信信号は、後述するように光受信回路3において、再生デジタル信号と再生クロックとして復号される。そのため、符号化回路5は、送信信号からクロックを再生できるように符号化する。
【0018】
そのため、送信信号の平均デューティ比Dは、符号化方式により定まる0と1との間の規定値内の値となり、0及び1にならない。また、クロックの再生を容易にするために、クロックの周期に対して、送信信号のLまたはHの連続する期間(ランレングス)が長くならないように符号化される。従って、送信信号の平均デューティ比Dの規定値は、0〜1の中央近傍の値となり、0または1近傍の値にはならない。
【0019】
電気光変換素子7は、送信制御回路8の出力を光信号に変換して出力する。例えば、LEDなどの発光素子で構成される。
電気光変換素子7は、後述するように、送信制御回路8を介して、符号化回路5から出力される送信信号、または入力されたアナログ信号を光信号に変換する。
【0020】
発光素子駆動回路6は、符号化回路5の出力の送信信号を入力して、送信制御回路8に出力する。なお、図1においては、電気光変換素子7としてLEDが接続されており、発光素子駆動回路6が、LEDのカソード側から電流を吸い込む構成を例示している。しかし発光素子駆動回路6としては、例えばLEDのアノード側に電流を流し込む構成とすることもできる。また、発光素子駆動回路6は、符号化回路5に含めることもできる。
【0021】
送信制御回路8は、スイッチ素子9とスイッチ制御回路10とを有する。スイッチ素子9は、発光素子駆動回路6の出力または入力されたアナログ信号を選択して出力する。スイッチ制御回路10は、アナログ信号の入力レベルVINに応じて通常動作または光結合試験状態を判別してスイッチ素子9を制御する。
【0022】
例えば、アナログデジタル変換回路4の入力レベルの最大値(入力フルスケール)VIN_MAXに対するアナログ信号の入力レベルVINに応じて、通常状態または光結合試験の状態に制御する。通常動作時は、アナログ信号の入力レベルは、VIN<IN_MAXに制限される。このとき、スイッチ制御回路10は、通常動作の状態として、発光素子駆動回路6を介して符号化回路5の出力を出力するように、スイッチ素子9を制御する。また、光結合試験時は、アナログ信号の入力レベルは、VIN>VIN_MAXに設定される。このとき、スイッチ制御回路10は、光結合試験の状態として、入力されたアナログ信号を出力するように、スイッチ素子9を制御する。
【0023】
従って、送信制御回路8は、通常動作の状態においては、発光素子駆動回路6を介して、符号化回路5の出力を電気光変換素子7に出力する。光結合試験の状態においては、入力されたアナログ信号を電気光変換素子7に出力する。
このように、光送信回路2においては、送信制御回路8により、アナログ信号の入力レベルVINに応じて、通常状態または光結合試験の状態に制御される。
【0024】
また、光送信回路2の耐圧をVMAXとすると、VIN_MAX<VMAXである。例えば、ΔΣADC(デルタシグマ型アナログデジタル変換回路)の場合、入力レベルの最大値VIN_MAXは、内部の参照電圧VREFと等しい値となるが、参照電圧VREFはバンドギャップ電圧とアンプを用いて生成される。従って、電源電圧VDDに対して、VREF<VDDとなり、VIN_MAX<VMAXが担保される。すなわち、通常動作の状態のときは、VIN<VIN_MAX=VREF<VMAXとなる。光結合試験の状態のときは、VIN_MAX=VREF<VIN<VMAXとなる。
【0025】
従って、通常動作時には、入力されたアナログ信号は、アナログデジタル変換回路4により、サンプリング周期で標本化され、nビットのデジタル信号に変換される。例えば、ΔΣADCの場合、1ビットのデジタル信号に変換される。
【0026】
その後、符号化回路5でデジタル信号とクロックとは1つの送信信号に符号化される。そして、符号化回路5の出力、すなわち送信信号は、送信制御回路8を介して、発光素子駆動回路6にて電気光変換素子7、例えばLEDを駆動し、光信号として発出される。このとき、スイッチ素子9は、発光素子駆動回路6の出力を選択して出力しているので、送信制御回路8は、通常動作には影響を及ぼさない。
【0027】
また、光結合試験時には、スイッチ素子9は、入力されるアナログ信号を出力しているので、発光素子駆動回路6の出力は、電気光変換素子7、例えばLEDに到達しない。このとき、電気光変換素子7には、アナログ信号がそのまま入力されるため、電気光変換素子7には、光送信回路2に入力されるアナログ信号がそのまま入力される。従って、入力信号を制御することによって電気光変換素子7に流れる電流を制御することができる。
【0028】
次に、光受信回路3について説明する。
光受信回路3は、光電気変換回路11、復号回路12、出力バッファ13、受信制御回路14を備える。そして、これらを同じ半導体基板に形成して1チップ化した構造を備える。
【0029】
光電気変換回路11は、受光した光信号を電気信号に変換し、受信信号として出力する。光電気変換回路11は、光信号を受光するPDなどの受光素子11aと、受光素子11aから出力される電流を電圧に変換して出力するトランスインピーダンス型増幅回路11bとを有する。
復号回路12は、光電気変換回路11の出力、すなわち受信信号から、クロックを再生するクロック再生回路12aと、アナログデジタル変換回路4の出力を再生するデータ復号回路12bで構成される。すなわち、復号回路12は、再生デジタル信号と再生クロックを出力する。なお、光送信回路2のアナログデジタル変換回路4がΔΣADCの場合、再生デジタル信号は、1ビットのデジタル信号となり、再生デジタル信号をローパスフィルタに通して、再生アナログ信号として出力することもできる。なお、クロック再生回路12aは、例えばDLL、PLLなどにより構成される。
【0030】
出力バッファ13は、出力負荷を駆動するための回路であり、再生デジタル信号VOUT、再生クロックCLKを出力する。復号化回路12の入出力及び出力バッファ13の入力は、受信制御回路14により制御される。
受信制御回路14は、光電気変換回路11の出力の平均デューディ比に応じて、復号化回路12の出力または光電気変換回路11の出力を選択して出力する。
【0031】
すなわち、受信制御回路14は、光電気変換回路11の出力の平均デューティ比が判定値(しきい値)内のときは、光電気変換回路11の出力を復号化回路12を介して出力バッファ13に出力する。また、光電気変換回路11の出力の平均デューティ比が判定値(しきい値)内にないときは、光電気変換回路11の出力を出力バッファ13に出力する。
【0032】
ここで、光電気変換回路11の出力の平均デューティ比は、光電気変換回路11の出力、すなわち受信信号のデューティ比の時間平均であり、例えば受信信号をローパスフィルタに通すことにより得られる。ローパスフィルタのカットオフ周波数により平均する時間を設定することができる。
【0033】
また、判定値とは、符号化回路5の出力の送信信号の平均デューティ比Dの規定値を、電気光変換素子7及び光電気変換回路11のパルス幅歪み量で補正した値である。しきい値とは、判定値の上限値及び下限値である。上記のとおり符号化回路5の出力の送信信号の平均デューティ比Dの規定値は、光送信回路2の符号化方式により定まる値である。また、パルス幅歪み量とは、送信信号と光電気変換回路11の出力、すなわち受信信号とにおける、Hの期間の差であり、デューティ比の変化量である。
【0034】
受信制御回路14は、スイッチ素子15、16とスイッチ制御回路17とを有する。
スイッチ素子15は、光電気変換回路11の出力を復号化回路12またはスイッチ素子16に出力する。スイッチ素子16は、復号化回路12の出力またはスイッチ素子15を介して光電気変換回路11の出力を出力する。スイッチ素子15、16は、スイッチ制御回路17により制御される。
【0035】
スイッチ制御回路17は、光電気変換回路11の出力の平均デューティ比に応じて、スイッチ素子15、16を制御する。すなわち、平均デューティ比が判定値内のときは、光電気変換回路11の出力が復号化回路12に入力され、復号化回路12の出力が出力バッファ13に入力されるようにスイッチ素子15、16を制御する。また、平均デューティ比が判定値内にないときは、光電気変換回路11の出力が出力バッファ13に入力されるようにスイッチ素子15、16を制御する。
【0036】
上記の平均デューティ比が判定値内にないときの光電気変換回路11の出力は、再生デジタル信号VOUT、再生クロックCLKのいずれに出力してもよい。以下では、再生クロックCLKに出力するものとして説明する。
【0037】
そして、光結合型絶縁回路1は、光送信回路2と光受信回路3とを備える。光送信回路2と光受信回路3とは、それぞれ半導体基板に形成され、これらを1つのデバイスとしてパッケージングした構造を備える。光送信回路2の接地と光受信回路3の接地とは独立しているため、光結合型絶縁回路1の入出力は、電気的には絶縁される。
【0038】
また、光送信回路2の電気光変換素子7と、光受信回路3の光電気変換回路11とは、光信号で結合されている。すなわち、光結合部18は、電気光変換素子7と、受光素子11a及びトランスインピーダンス型増幅回路11bを有する光電気変換回路11とから構成される。
【0039】
光電気変換回路11の受光素子11aに到達する光信号の光強度Pは、種々の原因により変化する。例えば、温度、発光素子の経年変化などにより変化する。
例えば、電気光変換素子7の発光素子がLED、受光素子がPDの場合、PDが受光する光強度Pは、(1)式のように定式化できる。
【0040】
【数1】

【0041】
ここで、If(A)はLEDに流れる電流、η(W/A)はLEDの発光効率、CE(%)はLEDとPDとの結合効率である。
【0042】
例えば、LEDに流れる電流Ifは、ICプロセスのばらつきの影響を受ける。また、発光効率ηは高温状態、及び経年劣化により低下する。結合効率CEは、アセンブリやモールド及び樹脂の経年変化等のばらつきの影響を受ける。このため、受光素子11aに到達する光強度Pは様々な値となり得る。
【0043】
光受信回路3に誤りなく信号を伝送させるためには、受光素子11aに到達する光強度Pをある値以上にする必要がある。受光素子11aの変換効率をSe(A/W)、光受信回路3が誤りなく動作させるのに必要な入力電流をIIN(A)とすると、(2)式で表されるような関係が必要になる。
【0044】
【数2】

【0045】
(2)式を満たさない場合、誤りなく光伝送を行うことができないため、試験工程において、光結合部18を試験する必要がある。光結合部18の試験は、温度やLED経年劣化等が発生しても、誤りなく光伝送を行うことができるのを確かめるのが目的である。なお、ここで「誤りなく光伝送を行う」とは、送信信号の符号誤り率が十分に小さいことを意味している。
【0046】
試験工程では、簡便な試験方法が望ましい。簡便な試験方法として、温度変化や経年劣化による光強度変化を模擬して、光送信回路2から光受信回路3にデータ伝送ができるかを試験する方法がある。すなわち、電気光変換素子7の電流を外部から強制的に制御して、光電気変換回路11の出力を測定する方法である。すなわち、電気光変換素子7に通常動作時よりも小さい電流を流して、光電気変換回路11の出力が規格値以内の製品のみを出荷する方法である。なお、上記の試験工程は直流的に行われるのが望ましい。
【0047】
本発明の実施形態に係る光結合型絶縁回路1の光送信回路2においては、上記のとおり、入力されるアナログ信号の入力レベルに応じて、通常動作または光結合試験の状態になる。例えば、アナログ信号の入力レベルVIN<VIN_MAXのときには通常動作の状態になり、アナログ信号の入力レベルVIN>VIN_MAXのときには光結合試験の状態になる。ここで、VIN_MAXはアナログデジタル変換回路4の入力レベルの最大値である。
【0048】
上記のとおり、通常動作時においては、送信信号の平均デューティ比Dは、符号化方式により定まる規定値内の値となる。また、光結合試験時は、入力されるアナログ信号は直流的なため、平均デューティ比Dは、0または1となる。
光受信回路3においては、光電気変換回路11の出力、すなわち受信信号の平均デューティ比に応じて、通常動作または光結合試験の状態へ制御される。受信信号の平均デューティ比が、判定値内か否かにより、通常動作または光結合試験の状態へ自動的に制御される。
【0049】
従って、光結合型絶縁回路1の入力レベルを光結合試験時のレベルに設定することにより、光送信回路2は、光結合試験の状態になり、直流的なアナログ信号を出力することができる。そのとき、光受信回路3は、光電気変換回路11の出力の平均デューティ比が判定値内にならないため、光結合試験の状態へ制御される。すなわち、光電気変換回路11の出力がそのまま出力される。
【0050】
このように、光結合試験の状態においては、光結合型絶縁回路1に入力されたアナログ信号に応じて電気光変換素子7が応答し、光電気変換回路11の出力が、出力バッファ13を介してそのまま出力される。光結合型絶縁回路1の出力は、入力されたアナログ信号に対して、直流的な出力となる。
【0051】
従って、入力電流を制御することによって電気光変換素子7に流れる電流を制御することができる。また、光結合型絶縁回路1の出力電圧から、そのときの光電気変換回路11の出力電圧を調べて、規格値以内か検査することができる。この光結合試験は、直流的に行うことができる。
【0052】
光結合型絶縁回路1の入力レベルが通常動作時のレベルの場合、光送信回路2は、通常動作の状態になる。通常動作の状態においては、入力されたアナログ信号はデジタル信号に変換され、クロックとともに符号化が行われて、電気光変換素子7により光信号として発出される。
【0053】
このとき、光受信回路3は、光電気変換回路11の出力の平均デューティ比が判定値内のため、通常動作の状態へ制御される。
このように、本発明の実施形態に係る光結合型絶縁回路1の光受信回路3においては、光結合試験または通常動作への制御は、光電気変換回路11の出力の平均デューティ比に応じて、受信制御回路14により自動的に行われる。
【0054】
例えば、送信制御回路8を用いない場合、電気光変換素子7の電流を外部から強制的に制御することができない。そのため、上記試験方法の直流試験に適さない。すなわち、光送信回路2にある符号化回路5は、エッジパルス信号及びPWM信号を出力するが直流動作をすることができないため、製品試験工程において上記の試験を実施することができない。
【0055】
また、受信制御回路14を用いない場合、光受信回路3においては、まず、光送信回路2が通常動作の状態か、光結合試験の状態かを判別する必要がある。上記のとおり、光送信回路2においては、入力レベルにより動作状態を外部から変更することができるが、光受信回路3の動作状態を外部で制御することは、一般的には難しい。
【0056】
すなわち、通常動作の場合、光受信回路3においては、出力バッファ13から出力される再生デジタル信号VOUT、再生クロックCLKは、ともにデジタルの信号である。そのため、両信号の電位は、光受信回路3の最低電位から最高電位、すなわち電源電圧VDDまで変化する。
従って、光受信回路3の動作モードを外部で制御しようとすると、電源電圧VDD以上、耐圧VMAX以下の電圧が出力バッファ13に入力されたときに、光結合試験の状態にする必要がある。
【0057】
上記のように、外部信号を用いて光受信回路3の動作状態を制御する場合、電源電圧VDDと耐圧VMAX及び制御電圧VCNTとは、VDD<VCNT<VMAXを満足する必要がある。しかし、左記の耐圧VMAXを満足するためには微細なプロセスを使用することができず、半導体回路のコスト上昇を招く。そのため、光受信回路3の動作状態を外部で制御することは、一般的には難しい。
【0058】
これに対して、本発明の実施形態に係る光結合型絶縁回路1においては、光受信回路3は受信制御回路14を有し、受光した光信号から動作状態を自動的に決定することができる。
従って、本発明の実施形態に係る光結合型絶縁回路1によれば、容易に光結合部18、すなわち電気光変換素子7と受光素子11aとの光結合部分の試験を行うことができる。
なお、上記のとおり、アナログデジタル変換回路4としてΔΣADCを用いた場合は、再生デジタル信号VOUTをローパスフィルタに通すことにより、再生アナログ信号として出力することもできる。
【0059】
図2は、本発明の実施形態に係る光送信回路の他の構成を例示するブロック図である。
図2に表したように、光送信回路2Aは、アナログデジタル変換回路4A、符号化回路5、発光素子駆動回路6、電気光変換素子7、送信制御回路8Aを備える。そして、アナログデジタル変換回路4A、符号化回路5、発光素子駆動回路6、送信制御回路8Aは同じ半導体基板に形成して1チップ化した構造を備える。
【0060】
すなわち、光送信回路2Aは、図1に表した光送信回路2のアナログデジタル変換回路4及び送信制御回路8を、それぞれアナログデジタル変換回路4A及び送信制御回路8Aに置き換えた構成である。符号化回路5、発光素子駆動回路6、電気光変換素子7については、図1に表した光送信回路2と同様である。
【0061】
アナログデジタル変換回路4Aは、正相及び逆相入力を有する差動入力の構成である点が図1に表したアナログデジタル変換回路4と異なる。
送信制御回路8Aは、スイッチ素子9とスイッチ制御回路10とを有する。スイッチ素子9は、発光素子駆動回路6の出力またはアナログ信号の逆相入力を出力する。スイッチ制御回路10は、アナログ信号の正相入力の入力レベルVIN+に応じてスイッチ素子9を制御する。
【0062】
例えば、アナログ信号の正相入力レベルVIN+<VIN_MAXのときには通常動作、アナログ信号の正相入力レベルVIN+>VIN_MAXのときには光結合試験の状態になるように制御することができる。ここで、VIN_MAXはアナログデジタル変換回路4Aの入力レベルの最大値(フルスケール)である。
送信制御回路8Aは、通常動作時においては発光素子駆動回路6の出力を、光結合試験時においてはアナログ信号の逆相入力を、それぞれ選択して電気光変換素子7に出力する。
【0063】
従って、通常動作時には、入力されたアナログ信号は、アナログデジタル変換回路4Aによりデジタル信号に変換され、符号化回路5により、クロック信号にアナログデジタル変換回路4Aの出力を重畳した送信信号に符号化される。そして、符号化回路5の出力、すなわち送信信号は、送信制御回路8Aを介して、発光素子駆動回路6にて電気光変換素子7、例えばLEDを駆動し、光信号として発出される。このとき、スイッチ素子9は、発光素子駆動回路6の出力を選択して出力しているので、送信制御回路8Aは、通常動作には影響を及ぼさない。
【0064】
また、光結合試験時には、スイッチ素子9は、アナログ信号の逆相入力を選択して出力しているので、発光素子駆動回路6の出力は、電気光変換素子7、例えばLEDに到達しない。このとき、電気光変換素子7には、逆相入力側から吸い込まれる電流が流れる。従って、逆相入力電流を制御することによって電気光変換素子7に流れる電流を制御することができる。
【0065】
光送信回路2Aにおいては、差動入力の構成のため、光結合試験時の電気光変換素子7の電流制御が容易となる。
従って、光送信回路2Aを用いて、光結合型絶縁回路1Aを構成することができる。
【0066】
光結合型絶縁回路1Aは、光送信回路2Aと光受信回路3とを備える。ここで、光受信回路3については、図1に表した光受信回路3と同様である。光送信回路2Aと光受信回路3とは、それぞれ半導体基板に形成され、これらを1つのデバイスとしてパッケージングした構造を備える。光送信回路2Aの接地と光受信回路3の接地とは独立しているため、光結合型絶縁回路1Aの入出力は、電気的には絶縁される。
【0067】
また、光送信回路2Aの電気光変換素子7と、光受信回路3の光電気変換回路11とは、光結合部18で結合されている。
【0068】
光結合試験時及び通常動作時に電気光変換素子7からそれぞれ発出される光信号は、光送信回路2と同様である。
アナログ信号の正相入力レベルVIN+を光結合試験時のレベル、例えば、VIN+>VIN_MAXとすることにより、光結合試験の状態に制御することができる。また、通常動作時のレベル、例えば、VIN+<VIN_MAXとすることにより、通常動作の状態に制御することができる。光受信回路3は、上記のとおり通常動作、または光結合試験の状態へ自動的に制御される。
【0069】
光結合試験の状態においては、光結合型絶縁回路1の逆相入力が、電気光変換素子7に接続され、光受信回路3の光電気変換回路11を介してそのまま出力される。例えば、再生クロックCLKに出力される。光結合試験の状態においては、光結合型絶縁回路1の出力は、入力されたアナログ信号に対して、直流的な出力となる。
【0070】
従って、逆相入力電流を制御することによって電気光変換素子7に流れる電流を制御することができる。また、光結合型絶縁回路1の逆相入力電流と、そのときの光電気変換回路11の出力電圧を調べて、規格値以内か検査することができる。この光結合試験は、直流的に行うことができる。例えば、LEDに通常動作の状態より小さな電流を流し、LED発光強度が低い場合でも良好に光結合するか、試験をすることができる。すなわち、温度上昇や経年劣化等により、LED発光効率が低下しても動作するか、製品試験を行うことができる。
【0071】
通常動作の状態においては、入力されたアナログ信号はデジタル信号に変換され、クロックとともに符号化され、電気光変換素子7により光信号として発出される。
また、この光信号を受光した光受信回路3は、通常動作の状態へ自動的に制御され、再生デジタル信号VOUT、再生クロックCLKを出力する。なお、上記のとおり、ローパスフィルタを用いて再生デジタル信号VOUTを平滑化して、再生アナログ信号を出力してもよい。
【0072】
本発明の実施形態に係る光結合型絶縁回路1Aによれば、正相入力のレベルVIN+により、通常動作の状態と光結合試験の状態とに切り替えることができ、容易に光結合部18の試験を行うことができる。
また光結合型絶縁回路1Aにおいては、差動入力の構成のため、光結合試験時の電気光変換素子7の電流制御がより容易となる。
【0073】
なお、上記の説明では正相入力のレベルVIN+により送信制御回路8Aのスイッチ制御回路10を制御している。しかし、逆相入力のレベルVIN−によりスイッチ制御回路10を制御して、スイッチ素子9を介して正相入力を電気光変換素子7に入力してもよい。
【0074】
上記のとおり、光受信回路3、3Aは、光電気変換回路11の出力の平均デューディ比に応じて通常動作または光結合試験の状態へ制御される。そのため、送信信号の平均デューティ比Dが適切な値になるような符号化方式が望ましい。
アナログデジタル変換回路4、4Aから出力されるデジタル信号に依存して、符号化回路5の出力、すなわち送信信号の平均デューティ比Dは変化する。
【0075】
アナログデジタル変換回路4、4Aとして、例えば、1ビットのデータを出力するΔΣADCを用いる場合について説明する。すなわち、ΔΣADCの出力のデジタル信号は、HまたはLの1ビットである。
符号化回路5の符号化方式を、標本化周期においてデジタル信号がHまたはLのとき、デューティ比DまたはDのパルスにそれぞれ変換するものとする。また、光結合部18におけるパルス幅歪み量をΔtpとする。すなわち、光結合部18に入力されたデジタルデータのHの期間が、光結合部18の出力においてパルス幅歪み量Δtpだけ変化するとする。
【0076】
上記の場合、デジタル信号がすべてHのときに、光結合部18の出力の平均デューディ比Dは、(3)式となる。
【数3】

【0077】
また、デジタル信号がすべてLのときに、光結合部18の出力の平均デューディ比Dは、(4)式となる。
【数4】

【0078】
従って、光結合部18の出力、すなわち受信信号の平均デューディ比は、(3)〜(4)式のD〜Dの間の値になる。
例えば、D=25%、D=75%のパルスで符号化する場合、パルス幅歪み量Δtp=0としても、平均デューティ比は、25〜75%になる。さらに、クロックの周波数(標本化周波数)f=10MHzとして、パルス幅歪み量Δtp=±10nsと仮定すると、平均デューティ比は、15〜85%になる。
【0079】
光結合部18の出力の平均デューディ比を判定するために、上記の平均デューティ比の信号をローパスフィルタに通過させる。上記の場合、ローパスフィルタの出力は、0.15VDD〜0.85VDDなり、アナログデジタル変換回路4、4Aの出力パターンによって大きく変動することが分かる。ここで、VDDは、電源電圧である。
【0080】
従って、光受信回路3の受信制御回路14における、平均デューティ比の判定値は、0.15VDD〜0.85VDDとなる。光受信回路3は、平均デューティ比が判定値内の場合、すなわち0.15VDD〜0.85VDDの場合は、通常動作の状態になる。また平均デューティ比が判定値内でない場合、すなわち0.15VDD未満の場合、及び0.85VDDを越えている場合は、光結合試験の状態になる。
【0081】
一方、受信制御回路14は、消費電力・面積の関係より、アナログ回路ではなくデジタル回路で構成されることが望ましい。しかし、しきい値が0.15VDD〜0.85VDD内にない場合のデジタル回路となると面積が大きくなり、コスト的に不利になる。従って、アナログデジタル変換回路4、4Aの出力のデジタル信号に平均デューティ比Dが依存しない符号化方式が望ましい。
【0082】
デジタル信号のデータパターンに対して平均デューティ比Dが変動しない符号化方式として、例えば、マンチェスタ符号による符号化方式が考えられる。この符号化方式では、標本化周期に入力されるデジタル信号がHのとき、標本化周期の前半でH、後半でLとなる信号HLを割り当てる。また、デジタル信号がLのとき、上記の信号HLを反転した、標本化周期の前半でL、後半でHとなる信号LHを割り当てる。
【0083】
上記の信号HL、LHは、ともにデューティ比が50%であり、伝送速度は倍になるが、平均デューティ比Dは、データパターンに依存せず50%となる。ここで、標本化周期は、標本化周波数=クロックの周波数fとして、1/fである。
【0084】
従って、マンチェスタ符号を用いたときの光結合部18の出力の平均デューティ比は、50±Δtp×f×100%となる。例えば、上記の数値例を当てはめると、平均デューティ比は40〜60%となり、受信制御回路14のスイッチ制御回路17をデジタル回路で構成することが容易となる。
【0085】
しかし、復号化回路12において、光結合部18の出力、すなわち受信信号から再生クロックを再生する場合に、受信信号の立上がりを用いる場合は、上記のマンチェスタ符号は不適である。
【0086】
図3は、本発明の実施形態に係る光送信回路の他の構成を例示するブロック図である。
図3に表したように、光送信回路2Bは、アナログデジタル変換回路4A、符号化回路5A、発光素子駆動回路6、電気光変換素子7、送信制御回路8A、スクランブル信号生成回路19を備える。そして、光送信回路2Bは、アナログデジタル変換回路4A、符号化回路5A、発光素子駆動回路6、送信制御回路8A、スクランブル信号生成回路19を同じ半導体基板に形成して1チップ化した構造を備える。
【0087】
すなわち、光送信回路2Bは、図2に表した光送信回路2Aの符号化回路5を符号化回路5Aに置き換え、さらにスクランブル信号生成回路19を追加した構成である。アナログデジタル変換回路4A、発光素子駆動回路6、電気光変換素子7、送信制御回路8Aについては、図2に表した光送信回路2Aと同様である。
【0088】
スクランブル信号生成回路19は、スクランブル信号、すなわち標本化周期に同期してHまたはLを出力する回路である。例えば、クロックの立上がりに同期した交番信号、またはクロックにより生成される擬似ランダム信号(PRBS、Pseudo Random Binary bit Sequence)を出力する。
符号化回路5Aは、アナログデジタル変換回路4Aの出力及びスクランブル信号生成回路19の出力の2つの情報に応じて送信信号を生成する回路である。
【0089】
アナログデジタル変換回路4Aとして、例えば、1ビットのデータを出力するΔΣADCを用いる場合について説明する。ΔΣADCの出力のデジタル信号は、HまたはLの1ビットである。
符号化回路5Aは、スクランブル信号及びΔΣADCの出力の2ビットデータを、クロックに同期したパルス幅のデューティ比がそれぞれW、W、W、Wの4種のパルスに符号化するPWMエンコーダである。送信信号は、クロックに基づく信号に、ΔΣADCの出力とさらにスクランブル信号とが重畳された信号となる。
表1は、符号化回路5Aの入出力の真理値表である。なお、復号も表1に表した真理値表に基づいて行うことができる。
【0090】
【表1】

【0091】
ここで、ΔΣADCの出力のデジタル信号がHになる確率をx、スクランブル信号がHになる確率をyとおくと、符号化回路5Aの出力の平均デューティ比D=D(x、y)は、(5)式となる。
【0092】
【数5】

【0093】
(5)式から、平均デューティ比Dは、ΔΣADCの出力のデジタル信号がHになる確率xに依存する形となっている。平均デューティ比Dが、確率xに依存しないためには、(6)式を満足する必要がある。
【0094】
【数6】

【0095】
従って、確率yのスクランブル信号に対して、(6)式の関係を満たすパルス幅のデューティ比W、W、W、Wの組合せに設定すれば、平均デューティ比Dは確率xに依存しない。
さらに、スクランブル信号の確率yが変化した場合に、符号化回路5Aに与える影響を最小にするためには、(7)式を最小にする必要がある。
【0096】
【数7】

【0097】
従って、(6)式の関係を満たし、さらに望ましくは、(7)式が最小になるように、パルス幅のデューティ比W、W、W、Wの組合せを用いれば、ΔΣADCの出力がいかなる場合であっても、符号化回路5Aの出力の平均デューティ比Dは一定値に保たれる。
【0098】
ここで、(6)式を満たすパルス幅のデューディ比について具体例を挙げて説明する。
例えば、スクランブル信号のH、Lの発生確率をそれぞれ50%、すなわちx=0.5とし、パルス幅のデューティ比をそれぞれW=20%、W=40%、W=80%、W=60%とすると、(6)式の関係を満たす。
従って、この組合せにより、ΔΣADCの出力がいかなる状態でも、符号化回路5Aの出力の平均デューティ比Dは一定値に保たれる。この一定値に保たれる平均デューティ比D=D(x、y)は、(5)式を変形して、(8)式のように求められる。
【0099】
【数8】

【0100】
(8)式より、符号化回路5Aの出力の平均デューティ比Dは、スクランブル信号のHの確率yと、パルス幅のデューティ比W、Wとによってのみ決まる。上記の数値例の場合、(8)式は50%となるので、符号化回路5Aの出力の平均デューティ比Dは、50%の一定値に保たれる。従って、上記のマンチェスタ符号を用いた場合と同等の効果が得られる。
【0101】
なお、上記に例示したパルス幅のデューディ比をW=20%、W=40%、W=80%、W=60%の設定の場合、最小パルス幅は、クロックの20%になる。符号化回路5A及び復号回路12を、例えば同期式回路で構成すると、動作速度はクロックの5場合になる。
【0102】
パルス幅のデューティ比をW=W=0.5として、W+W=1に設定しても、(6)式の関係を満たす。例えば、W=0.25、W=0.75とすることができる。この設定の場合は、ΔΣADCの出力がLのとき、デューディ比が50%のパルスに符号化される。また、ΔΣADCの出力がHのとき、スクランブル信号のLまたはHに応じてデューディ比がそれぞれ25%、75%のパルスに符号化される。
【0103】
パルス幅のデューディ比をW=W=0.5、W=0.25、W=0.75に設定した場合も、上記のとおり、(6)式の関係を満たすため、ΔΣADCの出力のいかなる状態でも、符号化回路5Aの出力の平均デューディ比Dは50%の一定値に保たれる。さらに、この設定の場合は、最小パルス幅がクロックの25%になる。そのため、符号化回路5A及び復号回路12の動作速度は、クロックの4倍に低減される。
【0104】
なお、上記のとおり、スクランブル信号は、クロックの立上がりに同期した交番信号、またはクロックにより生成される擬似ランダム信号を用いることができる。例えば、スクランブル信号生成回路19は、1クロックごとに出力が反転するTFF(Togle-Flip Flop)、またはm個(mは2以上の整数)のFF(Flip Flop)を用いた疑似ランダム信号発生回路により構成できる。
ΔΣADCの出力がH、Lの繰り返しになる場合などを考慮すると、スクランブル信号としては交番信号よりも擬似ランダム信号がより望ましい。ただし、二次以上のΔΣADCを用いている場合はこの限りではない。
【0105】
光結合型絶縁回路1Bは、光送信回路2Bと光受信回路3とを備える。ここで、光受信回路3については、図1に表した光受信回路3と同様である。光送信回路2Bと光受信回路3とは、それぞれ半導体基板に形成され、これらを1つのデバイスとしてパッケージングした構造を備える。光送信回路2Bの接地と光受信回路3の接地とは独立しているため、光結合型絶縁回路1Bの入出力は、電気的には絶縁される。
【0106】
また、光送信回路2Bの電気光変換素子7と、光受信回路3の光電気変換回路11とは、光信号で結合されている。すなわち、光結合型絶縁回路1Bの入出力は、光結合部18の光信号により結合される。
【0107】
電気光変換素子7から発出される光信号は、光送信回路2、2Aと同様である。
アナログ信号の正相入力レベルVIN+に応じて光送信回路2Bを通常動作の状態または光結合試験の状態に制御することができる。光受信回路3は、通常動作の状態または光結合試験の状態へ自動的に制御される。
【0108】
光結合試験の状態においては、光結合型絶縁回路1の逆相入力が、電気光変換素子7に接続され、光受信回路3の光電気変換回路11を介してそのまま出力される。例えば、再生クロックCLKに出力される。光結合試験の状態においては、光結合型絶縁回路1の出力は、入力されたアナログ信号に対して、直流的な出力となり、光結合試験を直流的に行うことができる。
【0109】
通常動作の状態においては、入力されたアナログ信号はデジタル信号に変換され、クロックとともに符号化されて、電気光変換素子7により光信号として発出される。
また、この光信号を受光した光受信回路3は、通常動作の状態へ自動的に制御され、再生デジタル信号VOUT、再生クロックCLKを出力する。なお、上記のとおりローパスフィルタを用いて出力デジタル信号を平滑化して、再生アナログ信号を出力してもよい。
【0110】
本発明の実施形態に係る光結合型絶縁回路1Bによれば、正相入力のレベルVIN+により、通常動作の状態と光結合試験の状態とに切り替えることができ、容易に光結合部18の試験を行うことができる。
また、光結合型絶縁回路1Bにおいては、通常動作の状態における符号化回路5Aの出力の平均デューティ比Dは一定値に保たれる。そのため、光受信回路3において平均デューティ比の判定値としては、狭い範囲の値を設定することができ、光受信回路3の受信制御回路14の構成が容易となる。
【0111】
以上、具体例を参照しつつ本発明の実施形態について説明した。しかし、本発明は、それらに限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づいて種々の変形が可能である。
【符号の説明】
【0112】
1、1A、1B 光結合型絶縁回路
2、2A、2B 光送信回路
3 光受信回路
4、4A アナログデジタル変換回路
5、5A 符号化回路
6 発光素子駆動回路
7 電気光変換素子
8、8A 送信制御回路
9、15、16 スイッチ素子
10、17 スイッチ制御回路
11 光電気変換回路
11a 受光素子
11b トランスインピーダンス型増幅回路
12 復号回路
12a クロック再生回路
12b データ復号回路
13 出力バッファ
14 受信制御回路
18 光結合部
19 スクランブル信号生成回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アナログ信号をデジタル信号に変換するアナログデジタル変換回路と、
クロックに基づく信号に前記アナログデジタル変換回路の出力を重畳して、平均デューティ比が0よりも大きくかつ1未満に符号化した送信信号を生成する符号化回路と、
前記アナログ信号の入力レベルに応じて、前記送信信号または前記アナログ信号を出力する送信制御回路と、
前記送信制御回路の出力を光信号に変換して出力する電気光変換素子と、
を備えたことを特徴とする光送信回路。
【請求項2】
前記クロックに同期したスクランブル信号を生成するスクランブル信号生成回路をさらに備え、
前記アナログデジタル変換回路は、1ビットのデジタル信号を出力する回路であり、
前記符号化回路は、前記アナログデジタル変換回路の出力と前記クロックに同期した前記スクランブル信号との2ビットデータを、前記クロックに同期したパルス幅のデューティ比がそれぞれW、W、W、Wのパルスに符号化することにより、前記送信信号を生成する回路であり、前記アナログデジタル変換回路の出力のハイレベルの確率をx、前記スクランブル信号のハイレベルの確率をyとしたとき、
−W+y(W−W−W+W)=0
の関係を満たすように、y、W〜Wが設定されていることを特徴とする請求項1記載の光送信回路。
【請求項3】
前記スクランブル信号は、前記クロックに同期した交番信号、または前記クロックにより生成された擬似ランダム信号であることを特徴とする請求項2記載の光送信回路。
【請求項4】
平均デューティ比が0よりも大きくかつ1未満に符号化された光信号または平均デューティ比が0または1であるアナログ信号の光信号を受信して電気信号に変換する光電気変換回路と、
前記光電気変換回路の出力を復号して、再生デジタル信号と再生クロックを出力する復号回路と、
前記光電気変換回路の出力の平均デューティ比に応じて、前記復号回路の出力または前記光電気変換回路の出力を出力する受信制御回路と、
を備えたことを特徴とする光受信回路。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか1つに記載の光送信回路と、
前記光信号を受信して電気信号に変換する光電気変換回路と、前記光電気変換回路の出力を復号して再生デジタル信号と再生クロックを出力する復号回路と、前記光電気変換回路の出力の平均デューティ比に応じて前記復号回路の出力または前記光電気変換回路の出力を出力する受信制御回路と、を有する光受信回路と、
を備えたことを特徴とする光結合型絶縁回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−160096(P2011−160096A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−18769(P2010−18769)
【出願日】平成22年1月29日(2010.1.29)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】