説明

光送信機

【課題】駆動回路の周囲温度の変化に対応して、変調信号の駆動振幅の変動を抑制するように精度良く制御することができる光送信機を提供する。
【解決手段】光源からの出射光を入力信号に基づいて変調する外部変調器の駆動回路において、前記外部変調器に対し、直流バイアス電圧に重畳させて、前記入力信号に応じた駆動電圧を供給する電圧供給手段と、前記駆動電圧の振幅を設定する制御手段と、前記電圧供給手段により前記外部変調器に供給される駆動電圧を検出する電圧検出手段とを有し、前記制御手段は、前記電圧検出手段の検出出力を取り込み、該検出出力に基づいて前記駆動電圧が予め定められた振幅値になるように、前記電圧供給手段を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光通信システムに使用される光送信機に係り、特に電界吸収型の外部変調器を備えた光送信機に関する。
【背景技術】
【0002】
光通信システムに適用される変調方式としては、光源からの出射光を直接的に、強度変調する直接変調方式と、光源からの出射光を外部変調器により変調する外部変調方式とが知られている。
直接変調方式の光変調部の構成例を図3に示す。
【0003】
図4において、直接変調方式の変調部は、レーザダイオード(LD)30の出力を検出するフォトダイオード(PD)31と、フォトダイオード31の検出出力を取り込み、該検出出力に基づいてレーザダイオード30の順方向電流を所望の値に制御する自動出力制御(APC)回路32と、入力信号に基づいてレーザダイオード30の注入電流を変化させるレーザダイオード(LD)駆動回路33と、信号重畳部34とから構成されている。
【0004】
上記構成からなる直接変調方式の光変調部では、自動出力制御回路32による直流バイアス電圧と、レーザダイオード駆動回路33からの出力信号を重畳させた信号を印加してレーザダイオード30を駆動する。
自動出力制御回路32は、フォトダイオード31により検出されたレーザダイオード30の出力を取り込み、レーザダイオード30に印加する直流バイアス電圧を、レーザダイオード30の順方向電流が所望の値になるように制御するとともに、レーザダイオード駆動回路33により入力信号に基づいて前記順方向電流を変調する。この結果、レーザダイオード30からは、レーザダイオード駆動回路33により変調された信号光が集光レンズ35を介し光ファイバ36に出射される。
【0005】
直接変調方式では、レーザダイオードの注入電流を変調のために変化させると、出力光の周波数も変化してしまうので、大容量長距離光ファイバ通信システムでは、外部変調方式が採用されている。
次に、外部変調方式の光変調部の構成例を図4に示す(特許文献1参照)。本例では、外部変調方式の光変調部に、電界吸収型(EA)変調器(以下、EA変調器と記す。)を用い、レーザダイオード(LD)40AとEA変調器40Bとを集積化したEA−LDモジュール40を用いている。
【0006】
図5において、外部変調方式の光変調部は、レーザダイオード40Aの出力を検出するフォトダイオード(PD)41と、フォトダイオード41の検出出力を取り込み、該検出出力に基づいてレーザダイオード40Aの順方向電流を所望の値に制御する自動出力制御(APC)回路42と、EA変調器40B直流バイアス電圧を印加するEAバイアス回路43と、入力信号に応じて電界吸収型(EA)変調器40Bへの入射光を変調するEA駆動回路44とを有している。
【0007】
上記構成からなる、外部変調方式の光変調器では、自動出力制御回路42は、フォトダイオード41により検出されたレーザダイオード40Aの出力を取り込み、レーザダイオード40Aに印加する直流バイアス電圧を、レーザダイオード40Aの順方向電流が所望の値になるように制御する。
【0008】
また、EAバイアス回路43は、波長チャープの小さい領域でEA変調器40Bを動作させるための直流バイアス電圧(固定値)をEA変調器40Bに印加し、EA駆動回路44は、入力信号に応じた電圧信号を信号重畳部45に出力し、信号重畳部45により前記出力信号に応じた電圧信号にEAバイアス回路43から出力される直流バイアス電圧に重畳させて、EA変調器40Bに印加する。
この結果、レーザダイオード40Aの出射光がEA変調器40Bにより変調され、その変調光が集光レンズ45を介して光ファイバ46に出射される。
【0009】
次に、図5におけるEA−LDモジュール40の具体的構成を図5に示す。図5において、EA−LDモジュール40は、レーザダイオード400と、EA変調器401と、EA変調器401に並列接続された終端抵抗402とを有している。
EA変調器401のカソードは接地され、EA変調器401のアノードはカップリングコンデンサ403を介して入力端子411に接続されるとともに、インダクタ404を介して入力端子410に接続されている。
【0010】
上記構成において、入力端子410には、直流バイアス電圧が印加され、入力端子411には、伝送する入力信号(データ信号)である変調信号(交流的信号)が入力される。EA変調器401は、入力端子410から供給される直流バイアス電圧(負電圧)により、チャーピングが少ない領域で駆動され、カップリングコンデンサ403を介して入力端子411より入力される変調信号により駆動される。この結果、レーザダイオード400からの出射光の光吸収量が変化し、上記入力信号により変調された変調光がEA変調器401より出射される。
【0011】
ところで、EA変調器40Bに供給する直流バイアス電圧は、EAバイアス回路43の温度特性や回路素子の特性の経時変化により、また変調信号電圧は、EA駆動回路44の温度特性や回路素子の特性の経時変化により、それぞれ、変動する。図6に、EA変調器の入出力特性を示す。
【0012】
EA変調器の光出力は、曲線Pで示すように、EA変調器に印加されるバイアス電圧(駆動信号)に応じて、すなわち、直流バイアス電圧及び変調信号に応じて非線形に変化する。図6において、V0はEA駆動回路44より出力される変調信号のローレベルを、V1は変調信号のハイレベルを、VdcはEAバイアス回路43よりEA変調器に印加される直流バイアス電圧を、VmodはEA変調器の駆動振幅を、夫々示している。
【0013】
EA駆動回路44より出力される変調信号がV0のとき、EA変調器から出力される光出力はP0(ローレベル)であり、EA駆動回路44より出力される変調信号がV1のとき、EA変調器から出力される光出力はP1(ハイレベル)になる。ここで、EA変調器40Bの光出力の平均値Paveは、Pave=(P1+P0)/2であり、消光比ERはER=P1/P0である。
【0014】
上述したEA変調器の入出力特性から、EA変調器の駆動振幅Vmodは、直流バイアス電圧Vdcを中心にして、変化する。したがって、EA変調器の駆動振幅Vmodが大きくなると、変調信号のハイレベルV1は高くなり、EA変調器の光出力P1は、増加する。このとき光出力はP0(ローレベル)の変化量ΔP0は小さいので、光出力の平均値Paveは、増加する。
【0015】
また、EA変調器の駆動振幅Vmodが小さくなると、変調信号のハイレベルV1は低くなり、変調信号のローレベルV0は高くなるので、光出力の平均値Paveは減少し、消光比ERは低下する。
【特許文献1】特開2005−45548号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
上述したように、温度特性、あるいは回路素子の特性の経時変化に起因するEAバイアス回路及びEA駆動回路44の出力変動、特に入力信号に基づく変調信号を出力するEA駆動回路44の出力が変動すると、EA変調器の光出力が変動するために、これを抑制する必要がある。
【0017】
EA変調器の光出力を安定させる方法としては、EA変調器の温度の安定化を図ることが一般的である。従来のこの種の光送信器の構成を図8に示す。同図において、光送信器500は、入力される電気信号に応じて変調された信号光を発生する機能を有する。光送信器500は駆動回路503と、バイアス回路504と、加算器505と、光源506と、波長制御回路507と、電界吸収型光変調器508と、制御手段509と、温度制御回路510とを有している。
【0018】
駆動回路503は、入力される電気信号に応じた変調信号を発生し、バイアス回路504は、バイアス電圧を発生し、加算器505は、バイアス電圧に電気信号に応じた変調信号を重畳して印加電圧を生成する機能を有している。
光源506は、複数の波長のうちの任意に選択された波長のキャリア光を出力する、例えばDFB(Distributed Feedback Laser)等が適用される半導体レーザからなるものである。波長制御回路507は、光源6から波長設定情報に応じた波長のキャリア光が出力されるように、その光源6を制御するものである。
【0019】
EA変調器(電界吸収型光変調手段)508は、加算器505からの印加電圧に応じて光源506により発生されたキャリア光を吸収することにより強度変調された信号光を出力する機能を有している。
制御手段509は、波長制御回路507に所定の波長に応じた波長設定情報を出力すると共に、その所定の波長に応じたEA変調器508の最適な温度条件となる温度設定情報を出力するものである。
温度制御回路510は、温度設定情報に応じてEA変調器508の温度を調整する機能を有している。
【0020】
駆動回路503は、電気信号入力端子502から入力される電気信号に対応した変調信号を発生する。バイアス回路504は、EA変調器508に印加するバイアス電圧を発生し、加算器505では、バイアス電圧に電気信号に応じた変調信号を重畳して印加電圧を生成し、その印加電圧をEA変調器508に供給する。
制御手段509は、光源506から発生されるキャリア光が所定の波長になるように、波長制御回路507にその所定の波長に応じた波長設定情報を出力する。また、制御手段9は、EA変調器8に入力されるキャリア光の波長に最も適した温度となるような温度設定情報を温度制御回路10に出力する。
【0021】
図9は選択波長・最適温度テーブルを示す説明図である。制御手段509には、このような選択波長・最適温度テーブルが記憶されており、選択波長の中から所望の波長を一つ選択し(例えばλ3)、その選択波長λ3に応じた波長設定情報を波長制御回路507に出力する。また、制御手段509では、その選択波長λ3に応じた最適温度T3を抽出し、その最適温度T3に応じた温度設定情報を温度制御回路510に出力する。
【0022】
光源506は、例えば、内部温度に応じて発生する出力光の波長が変化する半導体レーザと、波長の変化により透過率の異なる複数の波長ロッカーと、各波長ロッカーから出力される光パワーを検出するモニタPD(Photo Diode)と、供給電流に応じて半導体レーザを吸熱または加熱するヒータ(ペルチェ素子)とを備えたものである。
波長制御回路507では、制御手段509からの波長設定情報(例えばλ3)に応じた制御電流をヒータに供給し、ヒータにより半導体レーザを吸熱または加熱する。内部温度の変化により半導体レーザから発生される出力光の波長が変化するので、各波長ロッカーを透過する出力光の光パワーも変化する。
【0023】
モニタPDでは、各波長ロッカーを透過する出力光の光パワーを検出し、波長制御回路507にフィードバックする。波長制御回路507では、複数の波長ロッカーのうち、波長設定情報に応じた波長λ3を透過する波長ロッカーの光パワー検出信号が一定になるように、ヒータに供給する制御電流を調整し、光源6から所望の波長λ3のキャリア光が発生されるように制御する。
このようにして、光源506からは、波長設定情報λ3に応じた波長のキャリア光が出力される。
【0024】
また、EA変調器508は、例えば、供給電流に応じてEA変調器8を吸熱または加熱するヒータ(ペルチェ素子)と、EA変調器8の内部温度を検出するセンサ(サーミスタ)とを備えたものである。
温度制御回路510では、制御手段509からの温度設定情報(例えばT3)に応じた制御電流をヒータに供給し、ヒータにより半導体レーザを吸熱または加熱する。温度制御回路510では、センサからのEA変調器8の内部温度に応じた温度検出信号が温度設定情報T3に一定になるように、ヒータに供給する制御電流を調整する。
【0025】
このようにして、EA変調器508は、温度制御回路510により制御手段509からの温度設定情報T3に応じて温度調整される。
EA変調器508では、加算器505からの印加電圧に応じて光源506により発生されたキャリア光を吸収することにより強度変調された信号光を出力するが、この時、温度制御回路510により、そのキャリア光の波長に最も適した温度になるように調整され、出力される信号光キャリア光の波長、バイアス条件によらずチャープ係数の変化を最小限とすることができる。
【0026】
上述したように、従来の光送信機にあっては、EA変調器の光出力を安定させる方法としては、EA変調器の温度の安定化を図ることが一般的であり、EA変調器の駆動回路の温度特性の安定化については考慮されていなかった。
このため、駆動回路の周囲温度の変化に対応して、変調信号の駆動振幅の変動を精度良く制御することができないという問題が有った。
【0027】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、駆動回路の周囲温度の変化に対応して、変調信号の駆動振幅の変動を抑制するように精度良く制御することができる光送信機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0028】
上記目的を達成するために本発明の光送信機は、光源からの出射光を入力信号に基づいて変調する外部変調器と、該外部変調器を駆動する駆動回路とを備えた光送信機において、前記駆動回路は、前記外部変調器に対し、直流バイアス電圧に重畳させて、前記入力信号に応じた駆動電圧を供給する電圧供給手段と、前記駆動回路の周辺温度に基づいて前記駆動電圧の振幅値を制御する制御手段とを有することを特徴とする。
【0029】
上記構成の本発明の光送信機は、前記駆動回路において、電圧供給手段により前記外部変調器に対し、直流バイアス電圧に重畳させて、前記入力信号に応じた駆動電圧が供給され、制御手段により前記駆動回路の周辺温度に基づいて前記駆動電圧の振幅値が制御される。
これにより、駆動回路の周囲温度の変化に対応して、変調信号の駆動振幅の変動を抑制するように精度良く制御することが可能となる。
【0030】
また、本発明の光送信機は、光源からの出射光を入力信号に基づいて変調する外部変調器と、該外部変調器を駆動する駆動回路とを備えた光送信機において、前記駆動回路は、前記駆動回路の周囲温度を検出する温度検出手段と、前記外部変調器に対し、直流バイアス電圧に重畳させて、前記入力信号に応じた駆動電圧を供給する電圧供給手段と、前記温度検出手段の検出出力を取り込み、該検出出力に基づいて予め記憶している前記駆動回路の周囲温度と駆動電圧の振幅値との関係を示すデータを参照して、前記駆動電圧の振幅値を制御する制御手段とを有することを特徴とする。
【0031】
上記構成の本発明の光送信機は、前記駆動回路において、温度検出手段により前記が検出され、電圧供給手段により前記外部変調器に対し、直流バイアス電圧に重畳させて、前記入力信号に応じた駆動電圧が供給される。
制御手段は、前記温度検出手段の検出出力を取り込み、該検出出力に基づいて予め記憶している前記駆動回路の周囲温度と駆動電圧の振幅値との関係を示すデータを参照して、前記駆動電圧の振幅値を制御する。
これにより、検出された駆動回路の周囲温度に基づいて実験的に求めた駆動振幅値と周囲温度との関係を示すデータ、例えば、テーブルを参照して、一義的にフィードフォワード制御を行うことにより、駆動回路の周囲温度の変化に対し、変調信号の駆動振幅の変動を抑制するように制御することができる。
【0032】
また、本発明の光送信機は、光源からの出射光を入力信号に基づいて変調する外部変調器の駆動回路において、前記外部変調器に対し、直流バイアス電圧に重畳させて、前記入力信号に応じた駆動電圧を供給する電圧供給手段と、前記駆動電圧の振幅を設定する制御手段と、前記電圧供給手段により前記外部変調器に供給される駆動電圧を検出する電圧検出手段とを有し、前記制御手段は、前記電圧検出手段の検出出力を取り込み、該検出出力に基づいて前記駆動電圧が予め定められた振幅値になるように、前記電圧供給手段を制御することを特徴とする。
【0033】
上記構成の外部変調器の駆動回路では、電圧供給手段により、外部変調器に対し、直流バイアス電圧に重畳させて、入力信号に応じた駆動電圧が供給される。
電圧検出手段により前記電圧供給手段が前記外部変調器に供給する駆動電圧が検出され、制御手段は、前記電圧検出手段の検出出力を取り込み、該検出出力に基づいて前記駆動電圧が予め定められた振幅値になるように、前記電圧供給手段を制御する。
これにより、駆動回路の周囲温度の変化に応じて、常時、外部変調器の駆動電圧(変調信号)の駆動振幅が予め定められた振幅値になるように制御され、駆動回路の周囲温度の変化に対し、変調信号の駆動振幅の変動を抑制するように精度良く制御することができる。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、制御手段により、駆動回路の周囲温度の変化に応じて、常時、外部変調器の駆動電圧(変調信号)の駆動振幅が予め定められた振幅値になるように制御されるようにしたので、駆動回路の周囲温度の変化に対し、変調信号の駆動振幅の変動を抑制するように精度良く制御することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。
[第1実施形態]
図1に本発明の実施形態に係る光送信機の構成を示す。光送信機に使用される外部変調回路としてEA変調器を例にとり、説明する。図1において、1は、レーザダイオード10とEA変調器11が集積化されたEA−LDモジュール、2は入力信号に応じてEA変調器11への入射光を変調するEA駆動回路である。R1は終端抵抗である。
【0036】
EA駆動回路2の駆動信号(変調信号)は、カップリングコンデンサC22を介してEA変調器11に印加される。
また、EA変調器11には、入力端子100よりインダクタL1を介して直流バイアス電圧が印加されるようになっている。
【0037】
EA駆動回路2は差動対のNPNトランジスタQ1、Q2と、定電流源20を有している。NPNトランジスタQ1のコレクタは終端抵抗R2を介して、NPNトランジスタQ2は終端抵抗R3を介してそれぞれ駆動電源VDRが供給される電源端子101に接続されている。NPNトランジスタQ1、Q2のエミッタは共通接続され、定電流源20を介して接地されている。
【0038】
NPNトランジスタQ1のコレクタはインダクタL2を介してプルアップ電源VPが供給される電源端子102に、NPNトランジスタQ2のコレクタはインダクタL3を介してプルアップ電源VPが供給される電源端子103にそれぞれ、接続されている。
【0039】
また、NPNトランジスタQ1のベースには入力端子104よりデータ信号(N)が、NPNトランジスタQ2のベースには入力端子105よりデータ信号(P)が入力される。データ信号(N)とデータ信号(P)は論理1、論理0の2値信号であり、互いに逆相の信号である。
【0040】
EA駆動回路2からEA変調器11に出力される変調信号の駆動振幅は、制御端子107より定電流源20に入力される制御電圧VCにより設定されるようになっている。この制御電圧VCは、制御回路3により設定される。
また、出力端子106からは、定電流源20より、変調信号の駆動振幅を示すモニタ電流IMが出力されるようになっている。抵抗R5はモニタ電流検出抵抗であり、抵抗R5によりモニタ電圧VMが出力されるようになっている。
【0041】
制御回路3は、出力端子106より駆動振幅を示すモニタ電圧VMを取り込み、駆動振幅の目標設定電圧V0と比較し、その差分に応じた制御電圧VCをEA駆動回路60の制御端子107に出力する。
したがって、EA駆動回路2の周囲温度(環境温度)が変動しても、常時、EA駆動回路2からEA変調器11に出力される変調信号の駆動振幅が所望の振幅V0に維持されるように制御される。
【0042】
図2に本発明の実施形態に係るEA駆動回路において、制御回路3により変調信号の駆動振幅の設定制御を行った場合と、制御を行わない場合について、変調器11における光出力パワー(dBm)の変動量と、消光比の変動量を夫々、比較して示す。同図から明らかなように、制御回路3により、変調信号の駆動振幅の設定制御を行った場合には、光出力パワー及び消光比とも、大幅に改善されていることが判る。
【0043】
このように、本発明の第1実施形態によれば、EA駆動回路の周囲温度の変化に対応して、変調信号の駆動振幅の変動を抑制するように精度良く制御することができる。
【0044】
[第2実施形態]
本発明の第2実施形態に係る光送信機は、検出された、外部変調器の駆動回路の周囲温度に基づいて、予め記憶されている実験的に求めた駆動回路の駆動振幅値と周囲温度との関係を示すデータ(例えば、テーブル)を参照して、駆動電圧の振幅値をフィードフォワード制御するようにしたことを特徴とするものである。
本発明の第2実施形態に係る光送信機の構成を図3に示す。
図3において、50は、レーザダイオード51とEA変調器52が集積化されたLD−EAモジュール、60は入力信号に応じてEA変調器52への入射光を変調するEA駆動回路である。R12は終端抵抗である。
EA駆動回路60の駆動信号(変調信号)は、カップリングコンデンサ54を介してEA変調器52に印加される。
また、EA変調器52には、入力端子55よりインダクタL10を介して直流バイアス電圧が印加されるようになっている。
【0045】
EA駆動回路60は差動対のNPNトランジスタQ10、Q11と、定電流源61を有している。NPNトランジスタQ10のコレクタは終端抵抗R10を介して、NPNトランジスタQ11は終端抵抗R11を介してそれぞれ駆動電源が供給される電源端子62に接続されている。NPNトランジスタQ10、Q11のエミッタは共通接続され、定電流源61を介して接地されている。
【0046】
NPNトランジスタQ10のコレクタはインダクタL11を介してプルアップ電源が供給される電源端子66に、NPNトランジスタQ11のコレクタはインダクタL12を介してプルアップ電源が供給される電源端子67にそれぞれ、接続されている。
また、NPNトランジスタQ10のベースには入力端子63よりデータ信号(N)が、NPNトランジスタQ11のベースには入力端子64よりデータ信号(P)が入力される。データ信号(N)とデータ信号(P)は論理1、論理0の2値信号であり、互いに逆相の信号である。
【0047】
EA駆動回路60から出力されるEA変調器52に出力される変調信号の振幅は、制御端子65より定電流源61に入力される制御電圧により設定されるようになっている。この制御電圧は、温度検出回路70と、A/D変換器71と、制御部(MPU)72と、D/A変換器73とからなる変調信号振幅設定部により設定される。制御部72には、予め、EA駆動回路60の温度特性、すなわち、EA駆動回路60の周囲温度と、駆動振幅値(駆動電圧の振幅値)との関係を示す温度特性を示すデータが内蔵するメモリに記憶されている。
【0048】
上記構成において、温度検出回路70によりEA駆動回路60の周囲温度(環境温度)が検出され、該検出出力がA/D変換器71によりディジタル信号に変換されて制御部72に入力される。制御部72では、温度検出回路70により検出された温度と、制御部72に内蔵されたメモリに記憶されている温度特性を参照して、定電流源61に設定すべき駆動振幅値を示すデータをD/A変換器73に出力する。駆動振幅を示すデータはD/A変換器73でアナログの制御電圧に変換され、制御端子65より定電流源61に出力される。この結果、EA駆動回路60より、カップリングコンデンサ54を介してEA変調器52に温度特性を考慮した変調信号が供給される。
【0049】
このように、本発明の第2実施形態によれば、検出された駆動回路の周囲温度に基づいて、予め記憶されている実験的に求めた駆動振幅値と周囲温度との関係を示すデータ(例えば、テーブル)を参照して、フィードフォワード制御を行うことにより、駆動回路の周囲温度の変化に対し、変調信号の駆動振幅の変動を抑制するように制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の第1実施形態に係る光送信機の構成を示す回路図。
【図2】図1に示した本発明の第1実施形態に係る光送信機の効果を説明するための図。
【図3】本発明の第2実施形態に係る光送信機の構成を示す回路図。
【図4】レーザ出力の直接変調方式における駆動回路の構成を示すブロック図。
【図5】レーザ出力の外部変調方式における外部変調器の駆動回路の構成を示すブロック図。
【図6】図5におけるEA−LDモジュールの具体的構成を示す回路図。
【図7】EA変調器の入出力特性を示す特性図。
【図8】従来の光送信機の具体的構成を示すブロック図。
【図9】選択波長・最適温度テーブルを示す説明図。
【符号の説明】
【0051】
1…EA−LDモジュール、2…EA駆動回路、3…制御回路、10…レーザダイオード、11…EA変調器、20…電流源、L1、L2、L3…インダクタ、20、21…コンデンサ、Q1、Q2…NPNトランジスタ、R1、R2、R3、R4…終端抵抗

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源からの出射光を入力信号に基づいて変調する外部変調器と、該外部変調器を駆動する駆動回路とを備えた光送信機において、
前記駆動回路は、前記外部変調器に対し、直流バイアス電圧に重畳させて、前記入力信号に応じた駆動電圧を供給する電圧供給手段と、
前記駆動回路の周辺温度に基づいて前記駆動電圧の振幅値を制御する制御手段と、
を有することを特徴とする光送信機。
【請求項2】
光源からの出射光を入力信号に基づいて変調する外部変調器と、該外部変調器を駆動する駆動回路とを備えた光送信機において、
前記駆動回路は、
前記駆動回路の周囲温度を検出する温度検出手段と、
前記外部変調器に対し、直流バイアス電圧に重畳させて、前記入力信号に応じた駆動電圧を供給する電圧供給手段と、
前記温度検出手段の検出出力を取り込み、該検出出力に基づいて予め記憶している前記駆動回路の周囲温度と駆動電圧の振幅値との関係を示すデータを参照して、前記駆動電圧の振幅値を制御する制御手段と、
を有することを特徴とする光送信機。
【請求項3】
光源からの出射光を入力信号に基づいて変調する外部変調器と、該外部変調器を駆動する駆動回路とを備えた光送信機において、
前記外部変調器に対し、直流バイアス電圧に重畳させて、前記入力信号に応じた駆動電圧を供給する電圧供給手段と、
前記駆動電圧の振幅を設定する制御手段と、
前記電圧供給手段により前記外部変調器に供給される駆動電圧を検出する電圧検出手段と、
を有し、
前記制御手段は、前記電圧検出手段の検出出力を取り込み、該検出出力に基づいて前記駆動電圧が予め定められた振幅値になるように、前記電圧供給手段を制御することを特徴とする光送信機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−188758(P2009−188758A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−26816(P2008−26816)
【出願日】平成20年2月6日(2008.2.6)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】