説明

光送信装置

【課題】従来の光送信装置で問題となっていた位相変調光の平均値変動による直交制御最適点の誤検出を防ぐことにより、安定した位相シフト量(動作点)の調整を行うことができる光送信装置を提供する。
【解決手段】分岐部39とLPF32と加算器(減算器)33とを有する構成の信号補正手段40を、光送信装置の制御ループ22に設ける。分岐部39ではモニタPD31で得られた電気信号b3を、第1の分岐信号b3−1と、第2の分岐信号b3−2とに分岐する。LPF32では第2の分岐信号b3−2の低周波成分を通過させて、第2の分岐信号b3−2から高周波成分を除去することにより、第2の分岐信号b3−2の平均値b4を得る。加算器33では、第1の分岐信号b3−1から、LPF32で得られた第2の分岐信号b3−2の平均値b4を差し引くことにより、補正モニタ信号b5を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光送信装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年の光通信システムの大容量化・長距離化に伴い、高感度化や多値化が容易で、且つ、光スペクトルの有効活用や長距離伝送特性にも優れる、位相変調を利用したシステムが広く普及し始めている。これまでにも4値の差動位相シフトキーイング(DQPSK)方式が実用化されている。また、多値の強度変調信号を直交位相変調することで、位相情報と振幅情報を組み合わせた直交位相振幅変調(QAM)方式も活発に研究されている。
直交位相変調方式は、並列に配置された位相変調器で2値の位相変調をかけ、各々の光位相が直交(π/2の位相差を持つ)するように合成することで、1シンボル当たり2ビットの情報を割り当てる伝送符号である。この直交制御方法としていくつかの先行例が提案されている(特許文献1)。
【0003】
図8は従来の光送信装置の構成を示すブロック図である。同図に示すように、光送信装置は、光位相変調器1と、制御ループ2とを有している。
【0004】
光位相変調器1は、光分岐部(導波路分岐部)3と、光結合部(導波路結合部)4と、光分岐部3と光結合部4とに挟まれた第1の光導波路5及び第2の光導波路6と、第1の光導波路5上に設けられた第1の光位相変調部7と、第2の光導波路6上に設けられた第2の光位相変調部8と、第2の光導波路6上に設けられた光位相シフト部9とを有している。
【0005】
光分岐部3では、光源10から出射された光a1を入力し、この入力光a1を第1の入力光a1−1と第2の入力光a1−2とに分岐する。第1の入力光a1−1は第1の光導波路5を伝搬し、第2の入力光a1−2は第2の光導波路6を伝搬する。
第1の位相変調部7では、第1のデータ信号a2に基づいて第1の入力光a1−1の位相を変調することにより、第1の位相変調光a1−3を得る。第2の光位相変調部8では、第2のデータ信号a3に基づいて第2の入力光a1−2の位相を変調することにより、第2の位相変調光a1−4を得る。即ち、第1の光位相変調部7では、第1のデータ信号a2の0/1に対応して第1の入力光a1−1の位相を0/πに変調し、第2の光位相変調部8では、第2のデータ信号a3の0/1に対応して第2の入力光a1−2の位相を0/πに変調する。
光位相シフト部9では、位相シフト量制御信号a10に基づいて、第2の光位相変調部8から出力された第2の位相変調光a1−4の位相をシフトさせることにより、位相シフトされた第2の位相変調光a1−5を得る。この光位相シフト部9における最適な位相シフト量はπ/2である。
光結合部4では、第1の光位相変調部7で位相変調された第1の位相変調光a1−3と、第2の光位相変調部8で位相変調され且つ光位相シフト部9で位相シフトされた第2の位相変調光a1−5とを再び合成して出力する。
【0006】
この光位相変調器1(光結合部4)の出力光信号である位相変調光a4は、光通信システムの伝送路へ出力される伝送光信号a4−1と、制御ループ2で用いられるモニタ光信号a4−2とに分岐される。
【0007】
制御ループ2は、光電変換手段であるモニタフォトダイオード(PD)10と、ピーク検出部11と、同期検波部12と、制御回路13と、周波数foの微小変調信号a5を出力する微小変調信号発生器14と、加算器15とを有している。
【0008】
モニタPD10では、モニタ光信号a4−2を光電変換することにより電気信号a6を得て、この電気信号a6をピーク検出部11へ出力する。
ピーク検出部11では、モニタPD10で得られた電気信号a6を入力し、この電気信号a6の振幅を検出して、この振幅の検出信号a7を同期検波部12へ出力する。
同期検波部12では、ピーク検出部11の検出信号a7を入力し、この検出信号a7を、微小変調信号発生器14から出力された微小変調信号a5で同期検波して、同期検波出力a8を制御回路13へ出力する。
制御回路13では、同期検波部12の同期検波出力a8を入力し、この同期検波出力a8に基づき、光位相シフト部9の位相シフト量(動作点)を制御するための位相シフト量制御信号a9を得て、この位相シフト量制御信号a9を加算器15へ出力する。
加算器15では、制御回路13で得られた位相シフト量制御信号a9と、微小変調信号発生器14から出力された微小変調信号a5とを入力して、これらの位相シフト量制御信号a9と微小変調信号a5とを合成し、この合成後の位相シフト量制御信号a10を、光位相シフト部9へ印加する。光位相シフト部9では、この微小変調信号a5が重畳された位相シフト量制御信号a10に基づいて制御されることにより、前述のとおり、第2の光位相変調部8で位相変調後の第2の位相変調光a1−4の位相をシフトさせるとともに、この第2の位相変調光a1−4の位相シフト量がπ/2(制御最適点)となるように調整する。
【0009】
つまり、制御ループ2では、周波数foの微小変調信号a5が、直交点すなわち制御最適点を知るために用いられ、加算器15によって制御回路13からの制御信号a9と合成されて、光位相シフト部9に印加される。
そして、直交変調をするため、制御ループ2では、第1の光位相変調部7で位相変調された第1の位相変調光a1−3の光位相と、第2の光位相変調部8で位相変調され且つ光位相シフト部9で位相シフトされた第2の位相変調光a1−5の光位相とが、光結合部4で互いに直交するように光位相シフタ部9の位相シフト量を調整する。これによって、2つのデータ入力(第1のデータ信号a2、第2のデータ信号a3)の4通りの組み合わせ、即ち(0,0)、(1,0)、(1,1)、(0,1)が、それぞれ、π/4、3π/4、5π/4、7π/4の4通りの光位相に割り当てられる。これらは、互いにπ/2の位相差をもって結合されるので、結合後の光強度は、結合前の各々の光強度の1/2となる。
【0010】
従来構成における直交制御の動作原理を、図9と図10を用いて説明する。図9は、光位相シフト部9によって与えられた、第1の光位相変調部7と第2の光位相変調部8の出力の光位相シフト量が、2/5π、π/2(制御最適点)、3/5πの状態における位相変調光a4の出力波形と、微小変調信号a5の波形とを示したものである。光位相シフト量が最適であるπ/2の場合には、結合後の位相変調光a4の強度は一致しているが、光位相シフト量が最適点からずれた2/5πと3/5πの状態では、位相変調光a4の強度が2つに分離する(図9中のA)ことがわかる。光位相シフト量が最適点(π/2)の場合には、図8で説明したように、2つの位相変調光a1−3,a1−5が互いにπ/2の位相差をもって結合することで、結合前の1/2の強度を持つ4通りの位相状態が得られていたが、光位相シフト量が最適点からずれた場合には、この直交関係が崩れることで、位相差がπ/2より小さくなる光信号間((0,0)と(1,1))では強度が強め合い、逆に、位相差がπ/2より大きくなる光信号間((1,0)と(0,1))では強度が弱め合うことで光強度の分離が生じる。
【0011】
ここで、図9の3つの位相変調光波形の強度の分離部Aに見られる周期的な変動は、微小変調信号a5によるものである。制御最適点(位相シフト量=π/2)では、微小変調信号a5の周波数foの2倍である2foの変動が見られ、制御最適点でない動作点(位相シフト量=2/5π,位相シフト量=3/5π)では、微小変調信号a5の周波数foと同じfoの変動が見られる。また、この変動の位相は、光位相シフト量がπ/2より小さい領域では微小変調信号a5と逆相、π/2より大きい領域では微小変調信号a5と同相と、制御最適点を挟んで反転することがわかる。従って、微小変調信号a5によって変動する信号のピーク強度(図9中のAもしくはB)の変動位相が、微小変調信号a5と同相か逆相かを知ることで、現在の制御点が、最適点に対してどちら側にずれているかがわかる。そして、周波数foの変動のピーク強度が最小となるように光位相シフト部9の位相シフト量(動作点)を制御すれば、最適な直交制御点に収束する。
【0012】
以上に述べた説明を模式的に示したものが図10である。検出されるピーク強度は、光位相シフト部9の位相シフト量が制御最適点であるπ/2に近づくに従い小さくなる。従って、ある位相シフト点(動作点)において、微小変調信号a5を重畳させると、ピーク強度が、微小変調信号a5と同相か逆相、或いは2foで変動する。即ち、位相シフト量が最適点より小さい(1)の状態では逆相で、最適点である(2)の状態では2foで、最適点より大きい(3)の状態では同相で変動する。これらの変動の位相状態を知るには、得られたピーク強度を微小変調信号a5で同期検波をかければよい。図10に示すように、ピーク強度変動が同相、2fo、逆相のそれぞれに対し、同期検波出力a8は、負の値、零、正の値をとる。従って、位相シフト量を、同期検波出力a8が負であれば大きく、正であれば小さくすることで、制御最適点にロックさせることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2007−163941号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
従来技術は、図9で説明したように、位相シフト量が最適点であるπ/2からずれることで生じる位相変調光a4の強度の分離をピーク強度として検出し、これを最小にすることで位相シフト量の最適制御を行うものであった。この位相変調光a4の強度分離は、位相シフト量に対応して、データ信号a2,a3の(0,0)と(1,1)の組み合わせと、(1,0)と(0,1)の組み合わせで生じることを前述した。それぞれの組み合わせの発生確率が一致していれば、強度の増大と減衰が相殺されるので、位相変調光a4の平均強度は位相シフト量によらず一定となる。しかし、この発生確率が異なる場合、相殺が不完全となり、位相変調光a4の平均強度が位相シフト量によって変動してしまう。これは相殺の不完全さに起因する現象であるので、位相変調光a4の平均強度は、位相シフト量の制御最適点で中間値を採り、最適点からずれるに従い、大きく、あるいは小さくなる。
【0015】
位相シフト量によって位相変調光a4の平均強度が変動する場合の課題を、図11と図12を用いて説明する。図11は、位相シフト量と、ピーク強度ならびに平均強度との関係を示す図である。前述のとおり、光位相シフト部9への微小変調により、ピーク強度は制御最適点で微小変調信号a5の2倍周波数2foの変動を示す。しかし、平均強度は微小変調信号a5と同一周波数foで変動するため、観察される強度変動は、ピーク強度変動と平均強度変動とが加算されたものとなる。このため、見かけ上の最適制御点は、真の最適点からずれたところに現れる。
【0016】
平均強度変動が、ピーク強度のモニタ波形に及ぼす影響を図12に示す。図12(a)と(b)は、それぞれ、計算により求めた、モニタ光信号a4−2の波形と微小変調信号a5の波形である。ここで、直交制御点はπ/2とした。モニタ回路で本来検出すべき情報は、図12(a)に示す帯状のピーク強度の振幅の変動であり、これは前述のとおり位相変調光強度が2つに分離することで生じる高周波成分である。ここで、直交制御点がπ/2であるので、ピーク強度の振幅変動は、微小変調信号a5(図12(b))の2倍の周波数2foで変動するはずである。確かにピーク強度振幅は、微小変調信号a5の最大・最小と一致するタイミングで最大となっており、周波数2foで変動していることがわかる。しかし、図12(a)から明らかなように、検出波形には、微小変調によって生じた周波数foの平均強度変動が重畳されている。本来の制御最適点で、微小変調fo成分が検出されるため、図11に示すような最適点のずれが生じることになる。
【0017】
光通信システムにおいては、データ0と1の発生確率(マーク率)を同じにするよう疑似ランダム信号によるスクランブルをかけることが一般的であるが、スクランブルの不完全性による発生確率の不均一が生じた場合、位相シフト量が最適点からずれたところに制御される。
【0018】
スクランブルの不完全さの他にも、平均値変動をもたらす要因として、第1の位相変調部7を駆動する第1のデータ信号a2と第2の位相変調部8を駆動する第2のデータ信号a3の非対称性、計測器やシステム導入時に用いられる固定長のテスト信号がもつマーク率50%からのずれなどが挙げられる。
【0019】
従って本発明は上記の事情に鑑み、従来の光送信装置で問題となっていた位相変調光の平均値変動による直交制御最適点の誤検出を防ぐことにより、安定した位相シフト量(動作点)の調整を行うことができる光送信装置を提供することを課題としている。
【0020】
なお、上記特許文献1に記載された発明の特徴は、特許文献1の段落[0018]に記載されているとおり、直交位相制御部の位相差によって変化しないDC成分及び周波数のクロック成分をバンドパスフィルタでフィルタリングして除去し、位相の影響を受けているRF信号のみを抽出することにある。
一方、詳細は後述するが、本発明の特徴は、DC成分を除去するのではなく、直交位相制御部の位相差によってDC成分が実際には信号の不完全さによって変化してしまう影響を可能な限り除去することにある。特許文献1の図9(ここでは図示省略)に基づいて言い換えると、制御最適点では特許文献1の図9のAの状態を検出したいが、実際にはDC成分の変化が重畳されることによりA+B(もしくはA+C)のような波形が検出されて制御誤差が生じてしまうため、本発明では制御ループに信号補正手段(例えばローパスフィルタと減算器の組み合わせたものなど)を設けることにより、A+BからBを差し引いて(もしくはA+CからCを差し引いて)Aのみを取り出している。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上記課題を解決する第1発明の光送信装置は、光分岐部と、光結合部と、前記光分岐部と前記光結合部とに挟まれた第1の光導波路及び第2の光導波路と、前記第1の光導波路上に設けられた第1の光位相変調部と、前記第2の光導波路上に設けられた第2の光位相変調部と、前記第1の光導波路と前記第2の光導波路の何れか片方に設けられた光位相シフト部とを備えた光位相変調器と、
前記光位相変調器の出力光信号を分岐して得られるモニタ光信号に基づいて、前記光位相シフト部の位相シフト量を制御する制御ループと、
を有する光送信装置において、
前記制御ループは、
微小変調信号を出力する微小変調信号発生器と、
前記モニタ光信号を光電変換して電気信号を得る光電変換手段と、
前記光電変換手段で得られた電気信号の平均値を得て、前記光電変換手段で得られた電気信号から前記平均値を差し引いた補正モニタ信号を得る信号補正手段と、
前記信号補正手段で得られた補正モニタ信号の振幅を検出するピーク検出部と、
前記ピーク検出部の検出信号を、前記微小変調信号発生器から出力された微小変調信号によって同期検波する同期検波部と、
前記同期検波部の同期検波出力に基づいて、前記光位相シフト部の位相シフト量を制御するための位相シフト量制御信号を得る制御回路と、
前記制御回路で得られた位相シフト量制御信号と、前記微小変調信号発生器から出力された微小変調信号とを合成し、この合成後の位相シフト量制御信号を前記光位相シフト部へ印加する加算器と、
を有する構成であることを特徴とする。
【0022】
また、第2発明の光送信装置は、光分岐部と、光結合部と、前記光分岐部と前記光結合部とに挟まれた第1の光導波路及び第2の光導波路と、前記第1の光導波路上に設けられた第1の光位相変調部と、前記第2の光導波路上に設けられた第2の光位相変調部と、前記第1の光導波路上に設けられた第1の光位相シフト部と、前記第2の光導波路上に設けられた第2の光位相シフト部とを備えた光位相変調器と、
前記光位相変調器の出力光信号を分岐して得られるモニタ光信号に基づいて、前記第1の光位相シフト部の位相シフト量と前記第2の光位相シフト部の位相シフト量とを制御する制御ループと、
を有する光送信装置において、
前記制御ループは、
微小変調信号を出力する微小変調信号発生器と、
前記モニタ光信号を光電変換して電気信号を得る光電変換手段と、
前記光電変換手段で得られた電気信号の平均値を得て、前記光電変換手段で得られた電気信号から前記平均値を差し引いた補正モニタ信号を得る信号補正手段と、
前記信号補正手段で得られた補正モニタ信号の振幅を検出するピーク検出部と、
前記ピーク検出部の検出信号を、前記微小変調信号発生器から出力された微小変調信号によって同期検波する同期検波部と、
前記同期検波部の同期検波出力に基づいて、前記第1の光位相シフト部の位相シフト量を制御するための第1の位相シフト量制御信号と、前記第2の光位相シフト部の位相シフト量を制御するための第2の位相シフト量制御信号とを得て、前記第1の位相シフト量制御信号を前記第1の光位相シフト部へ印加する、又は、前記第2の位相シフト量制御信号を前記第2の光位相シフト部へ印加する制御回路と、
前記制御回路で得られた第1の位相シフト量制御信号と、前記微小変調信号発生器から出力された微小変調信号とを合成し、この合成後の位相シフト量制御信号を前記第1の光位相シフト部へ印加する、又は、前記制御回路で得られた第2の位相シフト量制御信号と、前記微小変調信号発生器から出力された微小変調信号とを合成し、この合成後の位相シフト量制御信号を前記第2の光位相シフト部へ印加する加算器と、
を有する構成であることを特徴とする。
【0023】
また、第3発明の光送信装置は、第1又は第2発明の光送信装置において、
前記信号補正手段は、
前記光電変換手段で得られた電気信号を、第1の分岐信号と、第2の分岐信号とに分岐する分岐部と、
前記第2の分岐信号の低周波成分を通過させて、当該第2の分岐信号から高周波成分を除去することにより、当該第2の分岐信号の平均値を得るローパスフィルタと、
前記第1の分岐信号から、前記ローパスフィルタで得られた第2の分岐信号の平均値を差し引く減算器と、
を有する構成であることを特徴とする。
【0024】
また、第4発明の光送信装置は、第1又は第2発明の光送信装置において、
前記信号補正手段は、
前記光電変換手段で得られた電気信号を、第1の分岐信号と、第2の分岐信号とに分岐する分岐部と、
前記第2の分岐信号の低周波成分を通過させて、当該第2の分岐信号から高周波成分を除去することにより、当該第2の分岐信号の平均値を得るローパスフィルタと、
前記第1の分岐信号が正相入力部に入力され、前記ローパスフィルタで得られた第2の分岐信号の平均値が逆相入力部に入力されることにより、前記第1の分岐信号から、前記ローパスフィルタで得られた第2の分岐信号の平均値を差し引く差動増幅器と、
を有する構成であることを特徴とする。
【0025】
また、第5発明の光送信装置は、第1又は第2発明の光送信装置において、
前記信号補正手段は、
前記光電変換手段で得られた電気信号を増幅して、正相出力と反転出力とを得る差動出力増幅器と、
前記差動出力増幅器の反転出力の低周波成分を通過させて、当該反転出力から高周波成分を除去することにより、当該反転出力の平均値を得るローパスフィルタと、
前記差動出力増幅器の正相出力と、前記ローパスフィルタで得られた反転出力の平均値とを加算する他の加算器と、
を有する構成であることを特徴とする。
【0026】
また、第6発明の光送信装置は、第1又は第2発明の光送信装置において、
前記信号補正手段は、
前記光電変換手段で得られた電気信号を、デジタル信号に変換して出力するADコンバータと、
前記ADコンバータの出力信号を、第1の分岐信号と、第2の分岐信号とに分岐する分岐部と、
前記第2の分岐信号を、予め設定した一定のサンプリング回数にわたりサンプリングして、前記第2の分岐信号の移動平均値を算出する移動平均算出部と、
前記第1の分岐信号を、前記移動平均算出部で移動平均の算出に要する時間だけ遅延させて出力する遅延部と、
前記遅延部から出力された第1の分岐信号から、前記移動平均算出部で算出された第2の分岐信号の移動平均値を差し引く減算器と、
を有する構成であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0027】
第1発明又は第2発明の光送信装置によれば、光電変換手段で得られた電気信号の平均値を得て、光電変換手段で得られた電気信号から前記平均値を差し引いた補正モニタ信号を得る信号補正手段を、制御ループに備えたことを特徴としているため、微小変調周波数の平均強度変動分が除去され、ピーク強度変動成分のみの補正モニタ信号を得ることができる。このため、従来の光送信装置で問題となっていた位相変調光の平均値変動による直交制御最適点の誤検出を防ぐことが可能となり、安定した位相シフト量(動作点)の調整を行うことができる。
【0028】
また、第3発明の光送信装置によれば、前記信号補正手段は、前記光電変換手段で得られた電気信号を、第1の分岐信号と、第2の分岐信号とに分岐する分岐部と、前記第2の分岐信号の低周波成分を通過させて、当該第2の分岐信号から高周波成分を除去することにより、当該第2の分岐信号の平均値を得るローパスフィルタと、前記第1の分岐信号から、前記ローパスフィルタで得られた第2の分岐信号の平均値を差し引く減算器とを有する構成であることを特徴としているため、比較的簡易な構成で、確実に微小変調周波数の平均強度変動の成分が除去され、ピーク強度変動成分のみの補正モニタ信号を得ることができる。
【0029】
また、第4発明の光送信装置によれば、前記信号補正手段は、前記光電変換手段で得られた電気信号を、第1の分岐信号と、第2の分岐信号とに分岐する分岐部と、前記第2の分岐信号の低周波成分を通過させて、当該第2の分岐信号から高周波成分を除去することにより、当該第2の分岐信号の平均値を得るローパスフィルタと、前記第1の分岐信号が正相入力部に入力され、前記ローパスフィルタで得られた第2の分岐信号の平均値が逆相入力部に入力されることにより、前記第1の分岐信号から、前記ローパスフィルタで得られた第2の分岐信号の平均値を差し引く差動増幅器とを有する構成であることを特徴としているため、比較的簡易な構成で、確実に微小変調周波数の平均強度変動の成分が除去され、ピーク強度変動成分のみの補正モニタ信号を得ることができる。
【0030】
また、第5発明の光送信装置によれば、前記信号補正手段は、前記光電変換手段で得られた電気信号を増幅して、正相出力と反転出力とを得る差動出力増幅器と、前記差動出力増幅器の反転出力の低周波成分を通過させて、当該反転出力から高周波成分を除去することにより、当該反転出力の平均値を得るローパスフィルタと、前記差動出力増幅器の正相出力と、前記ローパスフィルタで得られた反転出力の平均値とを加算する他の加算器と、
を有する構成であることを特徴としているため、比較的簡易な構成で、確実に微小変調周波数の平均強度変動の成分が除去され、ピーク強度変動成分のみの補正モニタ信号を得ることができる。
【0031】
また、第6発明の光送信装置によれば、前記信号補正手段は、前記光電変換手段で得られた電気信号を、デジタル信号に変換して出力するADコンバータと、前記ADコンバータの出力信号を、第1の分岐信号と、第2の分岐信号とに分岐する分岐部と、前記第2の分岐信号を、予め設定した一定のサンプリング回数にわたりサンプリングして、前記第2の分岐信号の移動平均値を算出する移動平均算出部と、前記第1の分岐信号を、前記移動平均算出部で移動平均の算出に要する時間だけ遅延させて出力する遅延部と、前記遅延部から出力された第1の分岐信号から、前記移動平均算出部で算出された第2の分岐信号の移動平均値を差し引く減算器とを有する構成であることを特徴としているため、比較的簡易な構成で、確実に微小変調周波数の平均強度変動の成分が除去され、ピーク強度変動成分のみの補正モニタ信号を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の実施の形態例1に係る光送信装置の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明による平均値変動除去の原理を説明する図である。
【図3】本発明の実施の形態例2に係る光送信装置の構成を示すブロック図である。
【図4】本発明の実施の形態例3に係る光送信装置のモニタ回路部の構成を示すブロック図である。
【図5】本発明の実施の形態例4に係る光送信装置のモニタ回路部の構成を示すブロック図である。
【図6】本発明の実施の形態例5に係る光送信装置のモニタ回路部の構成を示すブロック図である。
【図7】本発明の実施の形態例5に係る光送信装置のモニタ回路部における平均値算出と遅延の関係を説明する図である。
【図8】従来の光送信装置の構成を示すブロック図である。
【図9】微小変調信号によって変調された位相変調光の波形及び微小変調信号の波形を示す図である。
【図10】従来の光送信装置の動作原理を説明する図である。
【図11】従来の光送信装置の課題を説明する図である。
【図12】従来の光送信装置の構成におけるモニタ光信号の波形を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の実施の形態例を図面に基づいて詳細に説明する。
【0034】
<実施の形態例1>
図1,図2に基づき、本発明の実施の形態例1に係る光送信装置について説明する。
【0035】
図1に示すように、本実施の形態例1の光送信装置は、モニタPD31の出力信号(電気信号)b3を分岐し、そのうちの一方の分岐信号b3−2から、ローパスフィルタ(LPF)32によって高周波成分であるピーク強度変動分を除去して、平均値の信号b4を抽出し、この平均値信号b4を、もう一方の分岐信号b3−1から差し引くことで、ピーク強度変動成分のみのモニタ信号b5を得るものである。
【0036】
詳述すると、本実施の形態例1の光送信装置は、光位相変調器21と、制御ループ22とを有している。
【0037】
光位相変調器21は、光分岐部(導波路分岐部)24と、光結合部(導波路結合部)25と、光分岐部24と光結合部25とに挟まれた第1の光導波路26及び第2の光導波路27と、第1の光導波路26上に設けられた第1の光位相変調部28と、第2の光導波路27上に設けられた第2の光位相変調部29と、第2の光導波路27上に設けられた光位相シフト部30とを有している。
【0038】
光分岐部24では、光源23から出射された光b1を入力し、この入力光b1を第1の入力光b1−1と第2の入力光b1−2とに分岐する。第1の入力光b1−1は第1の光導波路26を伝搬し、第2の入力光b1−2は第2の光導波路27を伝搬する。
第1の位相変調部28では、第1のデータ信号b11に基づいて第1の入力光b1−1の位相を変調することにより、第1の位相変調光b1−3を得る。第2の光位相変調部29では、第2のデータ信号b12に基づいて第2の入力光b1−2の位相を変調することにより、第2の位相変調光b1−4を得る。即ち、第1の光位相変調部28では、第1のデータ信号b11の0/1に対応して第1の入力光b1−1の位相を0/πに変調し、第2の光位相変調部29では、第2のデータ信号b12の0/1に対応して第2の入力光b1−2の位相を0/πに変調する。
光位相シフト部30では、位相シフト量制御信号b10に基づいて、第2の光位相変調部29から出力された第2の位相変調光b1−4の位相をシフトさせることにより、位相シフトされた第2の位相変調光b1−5を得る。この光位相シフト部30における最適な位相シフト量はπ/2である。
光結合部25では、第1の光位相変調部28で位相変調された第1の位相変調光b1−3と、第2の光位相変調部29で位相変調され且つ光位相シフト部30で位相シフトされた第2の位相変調光b1−5とを再び合成して出力する。
【0039】
この光位相変調器21(光結合部25)の出力光信号である位相変調光b2は、光通信システムの伝送路へ出力される伝送光信号b2−1と、制御ループ22で用いられるモニタ光信号b2−2とに分岐される。
【0040】
制御ループ22は、光電変換手段であるモニタPD31と、信号補正手段40と、ピーク検出部34と、同期検波部35と、制御回路36と、周波数foの微小変調信号b9を出力する微小変調信号発生器37と、第1の加算器38とを有している。そして、信号補正手段40は、分岐部39と、LPF32と、第2の加算器33とを有する構成となっている。
【0041】
モニタPD31では、モニタ光信号b2−2を光電変換することにより電気信号b3を得て、この電気信号b3を信号補正手段40へ出力する。
【0042】
そして、この信号補正手段40において、分岐部39では、モニタPD31で得られた電気信号b3を、第1の分岐信号b3−1と、第2の分岐信号b3−2とに分岐する。
LPF32では、第2の分岐信号b3−2の低周波成分を通過させて、第2の分岐信号b3−2から高周波成分を除去することにより、第2の分岐信号b3−2の平均値b4を得る。
第2の加算器33(ここでは減算器として機能する)では、第1の分岐信号b3−1から、LPF32で得られた第2の分岐信号b3−2の平均値b4を差し引くことにより、補正モニタ信号b5を得る。即ち、微小変調周波数foの平均強度変動の成分が除去され、ピーク強度変動成分のみの補正モニタ信号b5が得られる。この補正モニタ信号b5はピーク検出部34へ出力される。
【0043】
ピーク検出部34では、信号補正手段40で得られた補正モニタ信号b5を入力し、この補正モニタ信号b5の振幅を検出して、この振幅の検出信号b6を同期検波部35へ出力する。
同期検波部35では、ピーク検出部34の検出信号b6を入力し、この検出信号b6を、微小変調信号発生器37から出力された微小変調信号b9で同期検波して、同期検波出力b7を制御回路36へ出力する。
制御回路36では、同期検波部35の同期検波出力b7を入力し、この同期検波出力b7に基づき、光位相シフト部30の位相シフト量(動作点)を制御するための位相シフト量制御信号b8を得て、この位相シフト量制御信号b8を加算器38へ出力する。
加算器38では、制御回路36で得られた位相シフト量制御信号b8と、微小変調信号発生器37から出力された微小変調信号b9とを入力して、これらの位相シフト量制御信号b8と微小変調信号b9とを合成し、この合成後の位相シフト量制御信号b10を、光位相シフト部30へ印加する。光位相シフト部30では、この微小変調信号b9が重畳された位相シフト量制御信号b10に基づいて制御されることにより、前述のとおり、第2の光位相変調部29で位相変調後の第2の位相変調光b1−4の位相をシフトさせるとともに、この第2の位相変調光b1−4の位相シフト量がπ/2(制御最適点)となるように調整する。
【0044】
図2は、計算によって得られた本発明によるモニタ信号波形である。図2(a)は、モニタPD31の出力信号b3を分岐した一方の分岐信号b3−1の波形(従来構成によるモニタ信号波形に相当)、図2(b)は分岐したもう一方の分岐信号b3−2をLPF32を通過させた後の波形(即ち平均値b4の波形)、そして図2(c)は第2の加算器33の出力、即ち補正後のモニタ信号b5の波形である。ここで、光位相シフト部30のシフト量はπ/2とした。この結果から明らかなように、本発明によって、モニタ信号(分岐信号)b3−1の波形から、微小変調周波数foの平均強度変動分が除去され、周波数2foのピーク強度変動の成分のみの補正モニタ信号b5が得られることがわかる。この補正モニタ信号b5をピーク検出部34でピーク検出し同期検波部35で周波数foの微小変調信号b9により同期検波した出力b7は零となり、最適制御点である位相シフト量π/2に対応する。
【0045】
なお、上記では第2の光導波路27上に光位相シフト部30を設けているが、これに限定するものではなく、第1の光導波路26上に位相シフト部30を設けてもよい。この場合には、第1の光導波路26上の位相シフト部30に位相シフト量制御信号b10を印加する。
また、検出感度を向上するために、モニタPD31の出力部にトランスインピーダンス増幅器を配置して、或いはピーク検出部34の入力部に利得可変増幅器を配置して、信号の増幅を行うことも可能である。
【0046】
<実施の形態例2>
図3に基づき、本発明の実施の形態例2に係る光送信装置について説明する。
【0047】
図3に示すように、本実施の形態例2の光送信装置は、第1の光導波路46と第2の光導波路47の両方に光位相シフト部50,51を設けた場合の例である。この場合には2つの光位相シフト部50,51の相対的な位相差を制御することになる。なお、本実施の形態例2の信号補正手段70については、上記実施の形態例1の信号補正手段40と同様である。また、制御ループ42での信号検出の原理は、上記実施の形態例1の制御ループ22と基本的に同じである。
【0048】
詳述すると、本実施の形態例2の光送信装置は、光位相変調器41と、制御ループ42とを有している。
【0049】
光位相変調器41は、光分岐部(導波路分岐部)44と、光結合部(導波路結合部)45と、光分岐部44と光結合部45とに挟まれた第1の光導波路46及び第2の光導波路47と、第1の光導波路46上に設けられた第1の光位相変調部48と、第2の光導波路47上に設けられた第2の光位相変調部49と、第1の光導波路46上に設けられた第1の光位相シフト部50と、第2の光導波路47上に設けられた第2の光位相シフト部51とを有している。
【0050】
光分岐部44では、光源43から出射された光c1を入力し、この入力光c1を第1の入力光c1−1と第2の入力光c1−2とに分岐する。第1の入力光c1−1は第1の光導波路46を伝搬し、第2の入力光c1−2は第2の光導波路47を伝搬する。
第1の位相変調部48では、第1のデータ信号c11に基づいて第1の入力光c1−1の位相を変調することにより、第1の位相変調光c1−3を得る。第2の光位相変調部49では、第2のデータ信号c12に基づいて第2の入力光c1−2の位相を変調することにより、第2の位相変調光c1−4を得る。即ち、第1の光位相変調部48では、第1のデータ信号c11の0/1に対応して第1の入力光c1−1の位相を0/πに変調し、第2の光位相変調部49では、第2のデータ信号c12の0/1に対応して第2の入力光c1−2の位相を0/πに変調する。
第1の光位相シフト部50では、位相シフト量制御信号c8−1に基づいて、第1の光位相変調部48から出力された第1の位相変調光c1−3の位相をシフトさせることにより、位相シフトされた第1の位相変調光c1−5を得る。第2の光位相シフト部51では、位相シフト量制御信号c10に基づいて、第2の光位相変調部49から出力された第2の位相変調光c1−4の位相をシフトさせることにより、位相シフトされた第2の位相変調光c1−6を得る。
光結合部45では、第1の光位相変調部48で位相変調され且つ第1の光位相シフト部50で位相シフトされた第1の位相変調光c1−5と、第2の光位相変調部49で位相変調され且つ第2の光位相シフト部51で位相シフトされた第2の位相変調光c1−6とを再び合成して出力する。
【0051】
この光位相変調器41(光結合部45)の出力光信号である位相変調光c2は、光通信システムの伝送路へ出力される伝送光信号c2−1と、制御ループ42で用いられるモニタ光信号c2−2とに分岐される。
【0052】
制御ループ42は、光電変換手段であるモニタPD53と、信号補正手段70と、ピーク検出部56と、同期検波部57と、制御回路58と、周波数foの微小変調信号c9を出力する微小変調信号発生器59と、第1の加算器60とを有している。そして、信号補正手段70は、分岐部61と、LPF54と、第2の加算器55とを有する構成となっている。
【0053】
モニタPD53では、モニタ光信号c2−2を光電変換することにより電気信号c3を得て、この電気信号c3を信号補正手段70へ出力する。
【0054】
そして、この信号補正手段70において、分岐部61では、モニタPD31で得られた電気信号b3を、第1の分岐信号c3−1と、第2の分岐信号c3−2とに分岐する。
LPF54では、第2の分岐信号c3−2の低周波成分を通過させて、第2の分岐信号c3−2から高周波成分を除去することにより、第2の分岐信号c3−2の平均値c4を得る。
第2の加算器55(ここでは減算器として機能する)では、第1の分岐信号c3−1から、LPF54で得られた第2の分岐信号c3−2の平均値c4を差し引くことにより、補正モニタ信号c5を得る。即ち、微小変調周波数foの平均強度変動の成分が除去され、ピーク強度変動成分のみの補正モニタ信号c5が得られる。この補正モニタ信号c5はピーク検出部56へ出力される。
【0055】
ピーク検出部56では、信号補正手段70で得られた補正モニタ信号c5を入力し、この補正モニタ信号c5の振幅を検出して、この振幅の検出信号c6を同期検波部57へ出力する。
同期検波部57では、ピーク検出部56の検出信号c6を入力し、この検出信号c6を、微小変調信号発生器59から出力された微小変調信号c9で同期検波して、同期検波出力c7を制御回路58へ出力する。
制御回路58では、同期検波部57の同期検波出力c7を入力し、この同期検波出力c7に基づき、第1の光位相シフト部50の位相シフト量(動作点)を制御するための第1の位相シフト量制御信号c8−1と、第2の光位相シフト部51の位相シフト量(動作点)を制御するための第2の位相シフト量制御信号c8−2とを得る。第1の位相シフト量制御信号c8−1は、制御回路58から第1の光位相シフト部50へ印加する。このため、前述のとおり、第1の光位相シフト部50では、この第1の位相シフト量制御信号c8−1に基づいて位相シフト量が制御される。一方、第2の位相シフト量制御信号c8−2は、制御回路58から第1の加算器60へ出力される。
第1の加算器60では、制御回路58で得られた第2の位相シフト量制御信号c8−2と、微小変調信号発生器59から出力された微小変調信号c9とを入力して、これらの第2の位相シフト量制御信号c8−2と微小変調信号c9とを合成し、この合成後の位相シフト量制御信号c10を、第2の光位相シフト部51へ印加する。このため、前述のとおり、第2の光位相シフト部51では、この微小変調信号c5が重畳された位相シフト量制御信号c10に基づいて位相シフト量が制御される。
【0056】
なお、上記では第1の位相シフト量制御信号c8−1を第1の光位相シフト部50へ印加し、第1の加算器60で第2の位相シフト量制御信号c8−2に微小変調信号c9を合成後の位相シフト量制御信号c10を、第2の光位相シフト部51へ印加したが、これに限定するものではなく、第2の位相シフト量制御信号c8−2を第2の光位相シフト部51へ印加し、第1の加算器60で第1の位相シフト量制御信号c8−1に微小変調信号c9を合成後の位相シフト量制御信号を、第1の光位相シフト部50へ印加するようにしてもよい。どちらの構成においても、位相シフトされた第1の位相変調光c1−5と位相シフトされた第2の位相変調光c1−6との位相差がπ/2となる、第1の位相シフト量制御信号c8−1と第2の位相シフト量制御信号c8−2とを制御回路58から出力すればよい。
【0057】
<実施の形態例3>
図4に基づき、本発明の実施の形態例3に係る光送信装置について説明する。図4にはモニタPD31(又はモニタPD53)からピーク検出部34(又はピーク検出部56)までのモニタ回路の構成を示している。
【0058】
図4に示すように、本実施の形態例3の光送信装置は、上記実施の形態例1(又は実施の形態例2)の光送信装置において、信号補正手段40(又は信号補正手段70)の代わりに信号補正手段80を、制御ループ22(又は制御ループ42)のモニタPD31(又はモニタPD53)とピーク検出部34(又はピーク検出部56)の間に設けた構成となっている。その他の構成については、上記実施の形態例1(又は実施の形態例2)の光送信装置と同様であるため、ここでの詳細説明及び図示を省略する。
【0059】
信号補正手段80は、分岐部83と、LPF84と、差動増幅器82とを有する構成となっている。
【0060】
この信号補正手段80において、分岐部83では、モニタPD31(又はモニタPD53)で得られる電気信号b3(又は電気信号c3)を、第1の分岐信号d1−1と、第2の分岐信号d1−2とに分岐する。
LPF81では、第2の分岐信号d1−2の低周波成分を通過させて、第2の分岐信号d1−2から高周波成分を除去することにより、第2の分岐信号d1−2の平均値d2を得る。
差動増幅器82では、第1の分岐信号d1−1が正相入力部に入力され、LPF81で得られた第2の分岐信号d1−2の平均値d2が逆相入力部に入力されることにより、第1の分岐信号d1−1から、LPF81で得られた第2の分岐信号d1−2の平均値d2を差し引くことにより、補正モニタ信号b5(又は補正モニタ信号c5)を得る。このとき、第1の分岐信号d1−1に重畳されている平均値変動が同相信号として除去される。従って、微小変調周波数foの平均強度変動の成分が除去され、ピーク強度変動成分のみの補正モニタ信号b5(又は補正モニタ信号c5)が得られる。この補正モニタ信号b5(又は補正モニタ信号c5)はピーク検出部34(又はピーク検出部56)へ出力される。
【0061】
<実施の形態例4>
図5に基づき、本発明の実施の形態例4に係る光送信装置について説明する。図5にはモニタPD31(又はモニタPD53)からピーク検出部34(又はピーク検出部56)までのモニタ回路の構成を示している。
【0062】
図5に示すように、本実施の形態例4の光送信装置は、上記実施の形態例1(又は実施の形態例2)の光送信装置において、信号補正手段40(又は信号補正手段70)の代わりに信号補正手段90を、制御ループ22(又は制御ループ42)のモニタPD31(又はモニタPD53)とピーク検出部34(又はピーク検出部56)の間に設けた構成となっている。その他の構成については、上記実施の形態例1(又は実施の形態例2)の光送信装置と同様であるため、ここでの詳細説明及び図示を省略する。
【0063】
信号補正手段90は、差動出力増幅器91と、LPF92と、第2の加算器93とを有する構成となっている。
【0064】
この信号補正手段90において、差動出力増幅器91では、モニタPD31(又はモニタPD53)で得られた電気信号b3(又は電気信号c3)を増幅して、正相出力e1と反転出力e2とを得る。
LPF92では、差動出力増幅器91の反転出力e2の低周波成分を通過させて、当該反転出力e2から高周波成分を除去することにより、当該反転出力e2の平均値e3を得る。
第2の加算器93では、差動出力増幅器91の正相出力e1と、LPF92で得られた反転出力e2の平均値e3とを加算することにより、補正モニタ信号b5(又は補正モニタ信号c5)を得る。このとき、正相出力e1に重畳されている平均値変動が同相信号として除去される。従って、微小変調周波数foの平均強度変動の成分が除去され、ピーク強度変動成分のみの補正モニタ信号b5(又は補正モニタ信号c5)が得られる。この補正モニタ信号b5(又は補正モニタ信号c5)はピーク検出部34(又はピーク検出部56)へ出力される。
【0065】
<実施の形態例5>
図6及び図7に基づき、本発明の実施の形態例5に係る光送信装置について説明する。図6にはモニタPD31(又はモニタPD53)からピーク検出部34(又はピーク検出部56)までのモニタ回路の構成を示している。
【0066】
図6に示すように、本実施の形態例5の光送信装置は、上記実施の形態例1(又は実施の形態例2)の光送信装置において、信号補正手段40(又は信号補正手段70)の代わりに信号補正手段100を、制御ループ22(又は制御ループ42)のモニタPD31(又はモニタPD53)とピーク検出部34(又はピーク検出部56)の間に設けた構成となっている。その他の構成については、上記実施の形態例1(又は実施の形態例2)の光送信装置と同様であるため、ここでの詳細説明及び図示を省略する。
【0067】
信号補正手段100は、アナログ・デジタル(AD)コンバータ101と、分岐部105と、移動平均算出部102と、遅延部103と、第2の加算器104とを有する構成となっている。
【0068】
この信号補正手段100において、ADコンバータ101では、モニタPD31(又はモニタPD53)で得られたアナログの電気信号b3(又は電気信号c3)を、デジタル信号g1に変換して出力する。
分岐部105では、ADコンバータ101の出力信号g1を、第1の分岐信号g1−1と、第2の分岐信号g1−2とに分岐する。
移動平均算出部102では、第2の分岐信号g1−2を、予め設定した一定のサンプリング回数にわたりサンプリングして、第2の分岐信号g1−2の移動平均値g4を算出する。
遅延部103では、第1の分岐信号g1−1を、移動平均算出部102で移動平均の算出に要する時間だけ遅延させて出力する(即ち第1の分岐信号g3を出力する)。
第2の加算器104(ここでは減算器として機能する)では、遅延部103から出力された第1の分岐信号g3から、移動平均算出部102で算出された第2の分岐信号g1−2の移動平均値g4を差し引くことにより、補正モニタ信号b5(又は補正モニタ信号c5)を得る。このため、微小変調周波数foの平均強度変動の成分が除去され、ピーク強度変動成分のみの補正モニタ信号b5(又は補正モニタ信号c5)が得られる。この補正モニタ信号b5(又は補正モニタ信号c5)はピーク検出部34(又はピーク検出部56)へ出力される。
【0069】
移動平均値算出処理に有する時間と遅延との関係を図7に示す。光電変換されたアナログ信号{Xn}をΔT間隔でサンプリングし、下記の(式1)のように、時刻Tnにおけるサンプリング値Xnと、Xn-kからXn+kの範囲で算出した移動平均値との差を求めることで、ピーク強度XPnを得る。移動平均値は、下記の(式2)によって算出する。
【数1】

【0070】
移動平均値の算出が完了するのは、Xnをサンプリングしてから少なくともk・ΔT時間が経過した後であるから、(式1)の演算にはこの分の遅延を持たせる必要がある。デジタルの演算処理ではこの遅延は厳密に制御可能であるので、精度良くピーク強度が算出できる。
【0071】
なお、本実施の形態例の他にも、デジタルフィルタによって構成されたLPFを用いて同様の計算を行うことも可能である。また、実施の形態例1から4のアナログのLPF32,54,81,92を用いた回路での演算の場合も、厳密にはLPF32,54,81,92をを通過する際の遅延が生じるので、これを見積もって、LPFを用いない経路に遅延器を入れることで、ピーク強度をより高精度に算出できる。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明は光送信装置に関するものであり、従来の光送信装置で問題となっていた位相変調光の平均値変動による直交制御最適点の誤検出を防ぐ場合に適用して有用なものである。
【符号の説明】
【0073】
21 光位相変調器
22 制御ループ
23 光源
24 光分岐部
25 光結合部
26 第1の光導波路
27 第2の光導波路
28 第1の光位相変調部
29 第2の光位相変調部
30 光位相シフト部
31 モニタPD
32 LPF
33 第2の加算器
34 ピーク検出部
35 同期検波部
36 制御回路
37 微小変調信号発生器
38 第1の加算器
39 分岐部
40 信号補正手段
41 光位相変調器
42 制御ループ
43 光源
44 光分岐部
45 光結合部
46 第1の光導波路
47 第2の光導波路
48 第1の光位相変調部
49 第2の光位相変調部
50 第1の光位相シフト部
51 第2の光位相シフト部
53 モニタPD
54 LPF
55 第2の加算器
56 ピーク検出部
57 同期検波部
58 制御回路
59 微小変調信号発生器
60 第1の加算器
61 分岐部
70 信号補正手段
80 信号補正手段
81 LPF
82 差動増幅器
83 分岐部
90 信号補正手段
91 差動出力増幅器
92 LPF
93 第2の加算器
100 信号補正手段
101 ADコンバータ
102 移動平均算出部
103 遅延部
104 第2の加算器
105 分岐部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光分岐部と、光結合部と、前記光分岐部と前記光結合部とに挟まれた第1の光導波路及び第2の光導波路と、前記第1の光導波路上に設けられた第1の光位相変調部と、前記第2の光導波路上に設けられた第2の光位相変調部と、前記第1の光導波路と前記第2の光導波路の何れか片方に設けられた光位相シフト部とを備えた光位相変調器と、
前記光位相変調器の出力光信号を分岐して得られるモニタ光信号に基づいて、前記光位相シフト部の位相シフト量を制御する制御ループと、
を有する光送信装置において、
前記制御ループは、
微小変調信号を出力する微小変調信号発生器と、
前記モニタ光信号を光電変換して電気信号を得る光電変換手段と、
前記光電変換手段で得られた電気信号の平均値を得て、前記光電変換手段で得られた電気信号から前記平均値を差し引いた補正モニタ信号を得る信号補正手段と、
前記信号補正手段で得られた補正モニタ信号の振幅を検出するピーク検出部と、
前記ピーク検出部の検出信号を、前記微小変調信号発生器から出力された微小変調信号によって同期検波する同期検波部と、
前記同期検波部の同期検波出力に基づいて、前記光位相シフト部の位相シフト量を制御するための位相シフト量制御信号を得る制御回路と、
前記制御回路で得られた位相シフト量制御信号と、前記微小変調信号発生器から出力された微小変調信号とを合成し、この合成後の位相シフト量制御信号を前記光位相シフト部へ印加する加算器と、
を有する構成であることを特徴とする光送信装置。
【請求項2】
光分岐部と、光結合部と、前記光分岐部と前記光結合部とに挟まれた第1の光導波路及び第2の光導波路と、前記第1の光導波路上に設けられた第1の光位相変調部と、前記第2の光導波路上に設けられた第2の光位相変調部と、前記第1の光導波路上に設けられた第1の光位相シフト部と、前記第2の光導波路上に設けられた第2の光位相シフト部とを備えた光位相変調器と、
前記光位相変調器の出力光信号を分岐して得られるモニタ光信号に基づいて、前記第1の光位相シフト部の位相シフト量と前記第2の光位相シフト部の位相シフト量とを制御する制御ループと、
を有する光送信装置において、
前記制御ループは、
微小変調信号を出力する微小変調信号発生器と、
前記モニタ光信号を光電変換して電気信号を得る光電変換手段と、
前記光電変換手段で得られた電気信号の平均値を得て、前記光電変換手段で得られた電気信号から前記平均値を差し引いた補正モニタ信号を得る信号補正手段と、
前記信号補正手段で得られた補正モニタ信号の振幅を検出するピーク検出部と、
前記ピーク検出部の検出信号を、前記微小変調信号発生器から出力された微小変調信号によって同期検波する同期検波部と、
前記同期検波部の同期検波出力に基づいて、前記第1の光位相シフト部の位相シフト量を制御するための第1の位相シフト量制御信号と、前記第2の光位相シフト部の位相シフト量を制御するための第2の位相シフト量制御信号とを得て、前記第1の位相シフト量制御信号を前記第1の光位相シフト部へ印加する、又は、前記第2の位相シフト量制御信号を前記第2の光位相シフト部へ印加する制御回路と、
前記制御回路で得られた第1の位相シフト量制御信号と、前記微小変調信号発生器から出力された微小変調信号とを合成し、この合成後の位相シフト量制御信号を前記第1の光位相シフト部へ印加する、又は、前記制御回路で得られた第2の位相シフト量制御信号と、前記微小変調信号発生器から出力された微小変調信号とを合成し、この合成後の位相シフト量制御信号を前記第2の光位相シフト部へ印加する加算器と、
を有する構成であることを特徴とする光送信装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の光送信装置において、
前記信号補正手段は、
前記光電変換手段で得られた電気信号を、第1の分岐信号と、第2の分岐信号とに分岐する分岐部と、
前記第2の分岐信号の低周波成分を通過させて、当該第2の分岐信号から高周波成分を除去することにより、当該第2の分岐信号の平均値を得るローパスフィルタと、
前記第1の分岐信号から、前記ローパスフィルタで得られた第2の分岐信号の平均値を差し引く減算器と、
を有する構成であることを特徴とする光送信装置。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の光送信装置において、
前記信号補正手段は、
前記光電変換手段で得られた電気信号を、第1の分岐信号と、第2の分岐信号とに分岐する分岐部と、
前記第2の分岐信号の低周波成分を通過させて、当該第2の分岐信号から高周波成分を除去することにより、当該第2の分岐信号の平均値を得るローパスフィルタと、
前記第1の分岐信号が正相入力部に入力され、前記ローパスフィルタで得られた第2の分岐信号の平均値が逆相入力部に入力されることにより、前記第1の分岐信号から、前記ローパスフィルタで得られた第2の分岐信号の平均値を差し引く差動増幅器と、
を有する構成であることを特徴とする光送信装置。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の光送信装置において、
前記信号補正手段は、
前記光電変換手段で得られた電気信号を増幅して、正相出力と反転出力とを得る差動出力増幅器と、
前記差動出力増幅器の反転出力の低周波成分を通過させて、当該反転出力から高周波成分を除去することにより、当該反転出力の平均値を得るローパスフィルタと、
前記差動出力増幅器の正相出力と、前記ローパスフィルタで得られた反転出力の平均値とを加算する他の加算器と、
を有する構成であることを特徴とする光送信装置。
【請求項6】
請求項1又は2に記載の光送信装置において、
前記信号補正手段は、
前記光電変換手段で得られた電気信号を、デジタル信号に変換して出力するADコンバータと、
前記ADコンバータの出力信号を、第1の分岐信号と、第2の分岐信号とに分岐する分岐部と、
前記第2の分岐信号を、予め設定した一定のサンプリング回数にわたりサンプリングして、前記第2の分岐信号の移動平均値を算出する移動平均算出部と、
前記第1の分岐信号を、前記移動平均算出部で移動平均の算出に要する時間だけ遅延させて出力する遅延部と、
前記遅延部から出力された第1の分岐信号から、前記移動平均算出部で算出された第2の分岐信号の移動平均値を差し引く減算器と、
を有する構成であることを特徴とする光送信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−26758(P2013−26758A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−158592(P2011−158592)
【出願日】平成23年7月20日(2011.7.20)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【出願人】(591230295)NTTエレクトロニクス株式会社 (565)
【Fターム(参考)】