説明

光送受信システム

【課題】低コヒーレンス光源を用いても位相に信号を重畳することを可能にし、通常の光通信と同様なビットレートと信号重畳フォーマットを可能にする。
【解決手段】送信機100に非対称干渉計120やアンチスクイズド光生成器を設置してパルス列510を2重パルス列520に変換し、受信機300にも非対称干渉計320を設置し、受信機内の非対称干渉計が与える遅延時間を2重パルスの遅延時間に一致させ、受信機においては起源を一にするパルス同士を干渉させることで低コヒーレンス光源を用いた場合でも位相に信号を重畳すること可能にする。非対称干渉計の遅延時間(光路長差)はパルス光源からの周期の半分よりも長く設定し、2重パルスの後ろ側のパルスと次の2重パルスの前側のパルスを一組にして送信機で変調する。受信機では平衡型検出器で受信し、干渉パルスのみが出力され、非干渉パルスは出力されない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光送受信システム、より詳細には光通信における信号の重畳法に関し、量子通信においても有効なものである。
【背景技術】
【0002】
通信における秘匿性の要求は古来より未来に亘る永遠のテーマであり、近年のネットワーク社会においては暗号学の発展によりその要求を確保してきた。現在普及している公開鍵暗号等は、高速なコンピュータを用いても解読に非現実的な時間が掛かることを拠り所にしたソフト的な暗号であるが、現在研究が活発な量子暗号は物理法則的な原理を用いたもので、暗号の分野においてハード的な要素が加わる可能性が出てきている。
【0003】
いわゆる量子暗号とは趣が異なるが、光通信そのものを安全にしようとするハード的な考え方もある。現在、通信における中長距離伝送は主として光ファイバを伝送路とし、レーザーダイオード(LD)からの出力光が信号光として用いられている。LDからの出力光はコヒーレント状態と呼ばれる状態でよく記述され、2つの直交位相成分の揺らぎの大きさが等しく、真空揺らぎと同じ大きさである。電磁場の揺らぎは制御することが可能で、直交位相成分の片側の揺らぎを小さくし、もう一方を大きくしたものはスクイズド状態と呼ばれ、この大きくなった側の揺らぎ(アンチスクイズド成分)に信号を隠すことにより安全な通信を実現しようとした研究が非特許文献1である。スクイズド状態とは小さくなった側の(スクイーズした)揺らぎが真空揺らぎ以下になった状態に対する呼称であるが、アンチスクイーズを用いた方式ではスクイーズした成分が真空揺らぎ以下になっているかどうかは大きな問題ではなく、真空揺らぎ以上になっていてもアンチスクイーズした成分の揺らぎが十分に大きければ良い。一般に直交位相空間上で一方の成分の揺らぎが他方よりも大きい光をアンチスクイズド光と呼ぶ。即ち、スクイズド光はアンチスクイズド光の一種である(非特許文献1)。アンチスクイズド光は光ファイバのカー効果等を用いて生成することができる(特許文献1)。
【0004】
【特許文献1】特開2006−191410号公報
【非特許文献1】T. Tomaru and M. Ban, Phys. Rev. A 74, 032312 (2006).
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
アンチスクイズド光を用いた光通信では、位相に信号を重畳する。位相に信号を重畳した方式では局発光と干渉させて受信するか(Phase shift keying: PSK)、隣り合うビット間で干渉させて受信する(Differential phase shift keying)等の手段が必要である。しかしながら、アンチスクイジングはノイズを拡大する過程であり、信号光のコヒーレンスは低下している。そのためアンチスクイズド光を用いてPSKやDPSKを実施するのは一般に困難であるが、低コヒーレンス光でも自分自身を2つに分岐しそれら同士を干渉させるならば位相に信号を重畳することが可能である。したがって、送信機内に光源からのパルス光を2分岐させる手段を設け、同じ光路長差の非対称干渉計を受信機内に設ければ、起源を一にするパルス光同士が受信機内で干渉し、位相に信号を重畳した通信が可能になる(M. Hanna, H. Porte, J.-P. Goedgebuer, and W.T. Rhodes, Electron. Lett. 37, 644 (2001))。しかしこの方法では干渉するパルス部の前後に非干渉なパルスが現れ、受信した光パルスの1/3にしか信号が載っておらず、高速に出来ないと共に信号処理も複雑になる。
【0006】
したがって、起源を一にするパルス光同士を干渉させる方式においても高速に、且つ信号処理も通常の光通信と同じ程度の単純さにすることが課題である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一般に、電気回路を高速化することに比べて光領域での高速化は容易である。非対称干渉計により光パルスの総数は増加するが、電気回路のクロックは増加させないことを考える。
【0008】
送信機内に非対称干渉計を設置したりアンチスクイズド光生成器を用いることにより、出力パルス列を2つのパルス列に変換する。その2つのパルス列の遅延時間を、パルス光源からの出力パルス列の半周期よりも長くする。すると、2分割されて2重パルスになった後ろ側のパルスは、対である前方のパルスよりも、1周期後ろのパルスとの間隔の方が小さくなる。送信機内の位相変調器では、これら間隔が狭くなった2つのパルスをひとまとめにして変調する。即ち、パルスの数が倍になっているが、変調器の動作としては倍にしない。受信機には非対称干渉計を設置して、そのアーム長差が与える遅延時間が2重パルスの遅延時間に等しくなるように設定し、2重パルス列を干渉させる。干渉するパルスの前後には従来技術と同様に非干渉なパルスが現れるが、平衡型検出器を用いて出力信号をゼロにする。受信機における電気回路は干渉する光パルスの周期に同期して駆動させ、非干渉なパルスは電気回路的には無視して扱う。平衡型検出器からの非干渉なパルスによる出力はゼロなので問題にならない。
【0009】
送受信機内の非対称干渉計によりパルス数は3倍になるが、情報を持たない非干渉パルスが平衡型検出器出力時には出力されないので、電気回路的にはパルス光源出力時のレートで駆動できればよく、通常の光通信で利用するビットレートでDPSKやDQPSKのコーディングが可能になる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、アンチスクイズド光のような低コヒーレンス光を用いても、位相に信号を重畳した方式で高速且つ簡便な処理が可能になる。量子力学的光通信を実現可能にすると共に、量子力学的なものに限らず低コヒーレンス光の場合においても位相変調方式が可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
【実施例1】
【0012】
図1は、本発明による光送受信システムの一例を示すブロック図である。上の図はシステム構成図、その下の波形図はパルス列が伝播する様子を示す模式図である。光源110から出力された光パルス列510は、非対称干渉計120に入力して各パルスが2分割され、2重パルス列520に変換される。例えば、パルス511はパルス521と522に分割される。非対称干渉計120によって生じた各2重パルスの間隔(例えば、パルス521と522の間隔)は、光源110出力時のパルス列の間隔(例えば、パルス521と525の間隔)の半分よりも長くする。その結果、各2重パルスの後ろ側のパルスは、対である前方のパルスよりも、1周期後ろのパルスとの間隔の方が小さくなる。例えばパルス522は、対であるパルス521よりも1周期後ろのパルス525との間隔の方が小さい。位相変調器130は、これら間隔が狭くなった2つのパルスをひとまとめにして変調する。例えば、パルス522と525をひとまとめにする。即ち、パルスの数は2重パルス列にしたために倍になっているが、変調器の動作速度は元もとのパルス列の周期と同じである。変調の位相は、2重パルス間の位相差で与える。例えば、パルス521と522との間の位相差である。0と1の2値信号に対応させた場合、この方式はDPSKの変調フォーマット、4値に対応させればDifferential quaternary phase shift keying(DQPSK)の変調フォーマットになる。本実施例ではDPSKを想定する。
【0013】
変調後、信号光である2重パルス列は、伝送路200を通って受信機300に導かれる。受信機300内では、送信機100内の非対称干渉計120と同じ光路長差を持つ非対称干渉計320に2重パルス列が入力される。両非対称干渉計120と320は位相を合わせて光路長差が正しく設定され、非対称干渉計120の短いアームと非対称干渉計320の長いアームを経由したパルスと、非対称干渉計120の長いアームと非対称干渉計320の短いアームを経由したパルスは、等しい光路長を経由したことになり干渉し、重畳された信号に応じて光検出器331と332のどちらかでのみ検出される。非対称干渉計120と320の両者において短いアーム、あるいは長いアームを経由したパルスは非対称干渉計320内の50:50のビームスプリッタ322で干渉する相手が無く、ビームスプリッタ322で単純に2分割されて光検出器331と332の両者で検出される。
【0014】
例えば、光パルス521と522がそれぞれ50:50のビームスプリッタ321により2分割され、ビームスプリッタ322において干渉し、光検出器331において干渉パルス532が検出される。干渉パルスの前後には非干渉パルス531と533が現れる。非干渉パルスは、光検出器332側にも非干渉パルス541と543として現れる。これらの干渉パルス及び非干渉パルスは光検出器331と332で電気信号に変換され、電気回路333により差分されて出力信号となる。非干渉パルスは、光検出器331と332の両者で等しく検出されるので、差分の結果、出力信号はゼロになる。一方、ビームスプリッタ322で干渉したパルスは、光検出器331と332のどちらかでのみ検出されるので、差分の結果は正又は負のパルスとして現れる。その結果、例えば出力信号系列550に示されるように、正負のパルスからなるパルス列が出力される。
【0015】
光検出器331及び332には光源110出力時に比べて3倍の数のパルスが入力することになるが、最終出力結果は光源110出力時のビットレートに戻る。光検出器331と332には不必要な光パルスも入力するが、それら不必要な光パルスに追従して光検出器やその他の電気回路系が動作する必要はなく、干渉パルスのビットレートで動作すればよい。即ち、光パルスの数が増えるので見かけ上高速な処理が必要になるかのように見えるが、実際の処理速度は通常通り光源110出力時のビットレートでよい。
【0016】
低コヒーレンス光源110からの出力パルス列は、低コヒーレンスゆえにパルス間でほとんど干渉しない。例えば、パルス511と515、即ち、パルス522と525はほとんど干渉しない。したがって、例えばパルス521と522は十分に分離している必要があるが、パルス522と525の分離は不十分でも構わない。
【0017】
以上の実施例では、非対称干渉計120及び320の遅延時間Tifが光源110からの出力パルス列の周期Trよりも小さい場合を述べた。本発明は、逆にTifがTrよりも大きくても良い。その例を示したのが図1の最下段のパルス列の図である。例えば、パルス522と525の前後関係が入れ替わり、パルス622と625として示すような前後関係になる。いずれの場合も、信号のビットレートは光源110からの出力パルス列の繰り返しレートfrで決まり、出力信号のパルス列550と650はfrが同じならば同じものになる。
【実施例2】
【0018】
低コヒーレンス光としてアンチスクイズド光(スクイズド光も含む)を用いる場合を考える。アンチスクイズド光は、光ファイバのカー効果等を用いて生成することが可能である(特開2006−191410号公報)。光ファイバを用いた方法では、励起光を光ファイバに入射し、出力としてアンチスクイーズした光と使用済みの励起光が得られる。実施例1においては送信機に非対称干渉計を設けて2重パルスに変換したが、2重パルスの一方をアンチスクイズド光、もう一方を使用済みの励起光にして2重パルスにすることもできる。本発明の2重パルスの一方は受信機における参照光の働きをしており、使用済みの励起光はアンチスクイズド光よりも位相揺らぎが小さく、参照光として適している。
【0019】
図2は、アンチスクイズド光と使用済みの励起光によって2重パルスを構成した本実施例の光送受信システムのブロック図である。励起光源110からの出力光がアンチスクイズド光生成器150に入力し、アンチスクイズド光と使用済みの励起光のそれぞれが光路151と152に出力され、ビームスプリッタ153で合波されて2重パルスとなる。光路151と152の光路長差は、受信機内の非対称干渉計320の光路長差と等しくなるように設定する。本実施例では、実施例1の送信機内の非対称干渉計120を、アンチスクイズド光生成器150とビームスプリッタ153で構成していることになる。
【0020】
一般にアンチスクイズド光生成器では、アンチスクイズド光よりも使用済みの励起光の方が出力強度が大きく、ビームスプリッタ153はその点を考慮して反射率を50%にしない。例えば、アンチスクイズド光と使用済み励起光の強度比が1:99ならば、ビームスプリッタ153の反射率を99%にすると2重パルスが等しい強度比になる。
【0021】
光源110とアンチスクイズド光生成器150を具体的に実現する構成を図3に示す。レーザーダイオード(LD)111の出力光が強度変調器112によりパルス化され、光アンプ113により増幅され、帯域透過フィルタ114により光アンプで発生したASE(Amplified spontaneous emission)を除去して高いピーク強度のパルス光になる。LD光に直接変調型を用いた場合は変調器112が不要であり、帯域透過フィルタ114はASEの除去だけでなく直接変調LD光の不用なスペクトル成分も除去する。また、直接変調型LDは十分に深く変調することにより、パルス間のコヒーレンスを完全に失くすことができる。変調器112に位相変調器を用いる方法もある。この場合は、位相変調された光がパルスになるように光ファイバ等を用いてチャープ補償する必要がある。
【0022】
高ピークパワーのパルス光は、アンチスクイズド光生成器150に入力される。アンチスクイズド光生成器150に入力されたパルス光は、λ/2波長板1511とλ/4波長板1512により直線偏波(p偏波)にされて、偏光ビームスプリッタ(PBS)1521を透過する。LD111から偏光ビームスプリッタ1521までが偏波保存ファイバで構成されている場合は、λ/2波長板1511とλ/4波長板1512は不要である。偏光ビームスプリッタ1521を透過後はファラデー回転器1513で偏波が45°回転され、λ/2波長板1514によりp偏波にされて、偏光ビームスプリッタ1522を透過する。透過後はλ/2波長板1515により45°偏波が回転され、偏光ビームスプリッタ1523により2分割される。2分割されたビームは、偏光ビームスプリッタ1524により再度同じ光路に戻される。この際、光路長差のために偏波の直交する2重パルスになる。2重パルスは光ファイバ1530を伝播し、カー効果のためにアンチスクイーズされる。その後、ファラデーミラー1516により偏波が90°回転して反射し、光ファイバ1530を逆行する。ファラデーミラーのために2重パルスの偏波は往路と復路で入れ替わるので、偏光ビームスプリッタ1523まで戻った2重パルスの各偏波成分は往復で完全に同じ光路を辿ることになり、元の1つのパルスに戻る。但し、偏波は元のパルスに対して90°回転している。その結果、逆行してきたパルスは偏光ビームスプリッタ1522で反射し、光路152に出力される。これが使用済みの励起光である。
【0023】
光ファイバ1530にカー効果が無く理想的にこの光学系が働けば、逆行してきた光は偏光ビームスプリッタ1522で100%反射し、透過光は真空である。しかし、光ファイバ1530のカー効果と2重パルスの偏光ビームスプリッタ1523での干渉の結果、偏光ビームスプリッタ1522を透過する成分が現れる。これは真空がアンチスクイーズ(スクイーズ)されたもの、即ちアンチスクイズド光である。また、光学系の不完全性のため僅かに振幅を持つ。偏光ビームスプリッタ1522を透過したアンチスクイズド光は偏光ビームスプリッタ1521で反射され、光路151に出力される。偏光ビームスプリッタ1522からビームスプリッタ153までが、実施例1における非対称干渉計120に相当することになる。
【0024】
先行するパラグラフで述べたように、アンチスクイズド光と使用済み励起光は一般に出力強度が異なる。ビームスプリッタ153は、その点を考慮して反射率が設定される。強度のバランスを取るためにNDフィルタ(光アッテネータ)154を設置するのも有効である。アンチスクイージングは非線形効果を用いて達成するので、一般にアンチスクイージング後のスペクトルは入力光よりも広がっている。余分なスペクトル成分をカットするために帯域透過フィルタ155を加えるのも有効である。
【実施例3】
【0025】
図1の受信機300はDPSKの変調フォーマットで信号が重畳される場合の構成であり、非対称干渉計320と平衡型検出器330を一組具備している。DQPSKの変調フォーマットで信号を重畳する場合は、非対称干渉計と平衡型検出器の組み合わせがもう一組必要になり、図4に示すような構成になる。平衡型検出器330と335は、互いに異なる直交位相成分を検出するように、非対称干渉計320と325とは位相差を90°ずらせた設定にする。互いに異なる直交位相成分の出力を信号合成回路340で合成し、最終的な出力信号とする。尚、非対称干渉計と平衡型検出器の組み合わせが2組あれば、DQPSKに限らずさらに多値化した信号重畳も可能である。
【0026】
同様に、図2のアンチスクイズド光を用いた実施例に対しても、受信機内の非対称干渉計と平衡型検出器の組み合わせをもう一組増やすことにより、DQPSKやさらに多値化した信号重畳が可能である。
【実施例4】
【0027】
アンチスクイズド光を用いた光通信のひとつの形態では、送信機において信号に対応した変調をするだけでなく、乱数や擬似乱数を用いて信号基底も合わせて変調する。これにより盗聴を困難にするわけである。送信側で付加された乱数や擬似乱数に基づく変調を相殺するために受信機にも位相変調器310が具備される。その具体例を示したのが図5である。
【0028】
送信機102内に(擬似)乱数発生器135と、入力信号と(擬似)乱数を合成する信号合成器136が具備される。受信機302内にも(擬似)乱数発生器315が具備される。擬似乱数を用いた場合に送受信機で同じシードキー、同じアルゴリズムを用いれば信号基底の付加的変調は相殺されて、受信後の信号処理は通常の光通信と同じである。乱数を用いた場合でも送受信機間で予め乱数を共有しておけば擬似乱数の場合と同様である。送受信機間で予め共有することなしに乱数を用いた場合は、送受信機間で乱数の値が一致した場合のみ受信が成功したとする後処理が必要になる。
【0029】
本実施例は図2のシステムに対して位相変調器310、(擬似)乱数発生器135及び315、信号合成器136を付加するものであった。同様な構成は図1のシステムに対しても行うことができる。
【0030】
上記各実施例の非対称干渉計120、320、325は、マッハツェンダ型、マイケルソン型等、光パルス列を2重パルス列に変換するものであればいずれの型のものでも良い。また部品構成も、自由空間型、PLC (Planar Lightwave Circuit)等を用いた導波路型のいずれでも良い。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明は、アンチスクイズド光のような低コヒーレンス光に対してもDPSK等のコーディングで位相に信号を重畳することを可能にする。アンチスクイズド光は、巨視的な光強度に対しても物理法則的に安全性が向上した通信を可能にする場合の鍵となる要素であり、本発明は安全な通信方法を現実的な条件下で実現するための鍵となる光源を利用するための技術であり、利用可能性は高い。また、本発明は、アンチスクイズド光に限らず如何なる低コヒーレンス光に対しても有効な技術であり、利用可能性は高い。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明による光送受信システムの一例を示すブロック図と、その動作原理を示す図。
【図2】アンチスクイズド光と使用済みの励起光によって2重パルスを構成した本実施例の光送受信システムのブロック図。
【図3】光源とアンチスクイズド光生成器の具体的な構成例を示す図。
【図4】DQPSKや多値通信を行なう場合の原理を示す構成図。
【図5】安全な光通信を実施するための原理を示す構成図。
【符号の説明】
【0033】
100…送信機、102…送信機、110…光源、111…レーザーダイオード、112…強度変調器、113…光アンプ、114…帯域透過フィルタ、120…非対称干渉計、130…位相変調器、135…(擬似)乱数発生器、136…信号合成器、150…アンチスクイズド光生成器、151…光路、152…光路、153…ビームスプリッタ、154:NDフィルタ、155:帯域透過フィルタ、
200…光伝送路、
300…受信機、301…受信機、302…受信機、310…位相変調器、315…(擬似)乱数発生器、320…非対称干渉計、321…50:50のビームスプリッタ、322…50:50のビームスプリッタ、325…非対称干渉計、330…平衡型検出器、331…光検出器、332…光検出器、333…差動出力器、335…平衡型検出器、340…出力信号合成回路、510…パルス光源出力直後のパルス列、511…パルス光、515…パルス光、520…非対称干渉計により生じた2重パルス列、521…511を起源にする2重パルスの前側のパルス、522…511を起源にする2重パルスの後ろ側のパルス、525…515を起源にする2重パルスの前側のパルス、530…光検出器331側に現れる3重光パルス列、531…521を起源にして2分割された前側のパルス、532…521を起源にして2分割された後ろ側のパルスと522を起源にして2分割された前側のパルスが干渉したパルス、533…522を起源にして2分割された後ろ側のパルス、540…光検出器332側に現れる3重光パルス列、541…521を起源にして2分割された前側のパルス、543…522を起源にして2分割された後ろ側のパルス、550…平衡型検出器からの出力パルス列、552…511を起源にした受信後のパルス、
610…パルス光源出力直後のパルス列、611…パルス光、615…パルス光、620…非対称干渉計により生じた2重パルス列、621…611を起源にする2重パルスの前側のパルス、622…611を起源にする2重パルスの後ろ側のパルス、625…615を起源にする2重パルスの前側のパルス、630…光検出器331側に現れる3重光パルス列、640…光検出器332側に現れる3重光パルス列、650…平衡型検出器からの出力パルス列、
1511:λ/2波長板、1512:λ/4波長板、1513:ファラデー回転器、1514:λ/2波長板、1515:λ/2波長板、1516:ファラデーミラー、1521:偏光ビームスプリッタ、1522:偏光ビームスプリッタ、1523:偏光ビームスプリッタ、1524:偏光ビームスプリッタ、1530…光ファイバ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光送信機と、光受信機と、前記光送信機と光受信機を接続する光伝送路とを有する光送受信システムにおいて、
前記光送信機は、パルス光源と、前記パルス光源からの出力パルス列を遅延時間が前記出力パルス列の半周期よりも長い2重パルス列に変換する第1の非対称干渉計と、前記第1の非対称干渉計のひとつのアームを経由してきた光パルスと当該光パルスとは前記パルス光源の出力パルス列における位置が異なり前記第1の非対称干渉計の他のアームを経由してきた光パルスとをひとまとめにして変調する位相変調器とを備え、
前記光受信機は、前記第1の非対称干渉計と光路長差の等しい第2の非対称干渉計と、平衡型検出器とを備え、
前記光伝送路を伝播してきた前記光送信機からの信号光が、前記光受信機の前記第2の非対称干渉計を通過して前記平衡型検出器で受光されることを特徴とする光送受信システム。
【請求項2】
請求項1記載の光送受信システムにおいて、前記位相変調器はDPSKの変調フォーマットで前記光パルスを変調することを特徴とする光送受信システム。
【請求項3】
請求項1記載の光送受信システムにおいて、前記位相変調器はDQPSKあるいはDQPSKよりも多値化した変調フォーマットで前記光パルスを変調することを特徴とする光送受信システム。
【請求項4】
請求項1記載の光送受信システムにおいて、前記平衡型検出器は2つの光検出器を有し、前記2つの光検出器の出力の差信号を出力信号とすることを特徴とする光送受信システム。
【請求項5】
請求項1記載の光送受信システムにおいて、前記光受信機は前記第2の非対称干渉計の手前に位相変調器を備え、前記光送信機の位相変調器は乱数あるいは擬似乱数で決まる位相を信号に付加して変調し、前記光受信機の位相変調器は前記付加された位相を打ち消すような変調を信号光に加えることを特徴とする光送受信システム。
【請求項6】
光送信機と、光受信機と、前記光送信機と光受信機を接続する光伝送路とを有する光送受信システムにおいて、
前記光送信機は、パスル光源と、前記パルス光源の出力パルス列からアンチスクイズド光を生成するアンチスクイズド光生成器と、前記アンチスクイズド光のパルス列と使用済みの前記パルス列を合波して遅延時間が前記パルス光源からの出力パルス列の半周期よりも長い2重パルス列を形成する合波手段と、前記アンチスクイズド光のパルスと当該アンチスクイズド光のパルスが生成された前記パルス光源の出力パルスとは前記パルス光源出力時におけるパルス列上の位置が異なる前記使用済みパルスとをひとまとめにして変調する位相変調器とを備え、
前記光受信機は、前記2重パルス列の遅延時間と等しい遅延時間を与えるアーム長差を有する非対称干渉計と、平衡型検出器とを備え、
前記光伝送路を伝播してきた前記光送信機からの信号光が、前記光受信機の前記非対称干渉計を通過して前記平衡型検出器で受光されることを特徴とする光送受信システム。
【請求項7】
請求項6記載の光送受信システムにおいて、前記位相変調器はDPSKの変調フォーマットで前記光パルスを変調することを特徴とする光送受信システム。
【請求項8】
請求項6記載の光送受信システムにおいて、前記位相変調器はDQPSKあるいはDQPSKよりも多値化した変調フォーマットで前記光パルスを変調することを特徴とする光送受信システム。
【請求項9】
請求項6記載の光送受信システムにおいて、前記平衡型検出器は2つの光検出器を有し、前記2つの光検出器の出力の差信号を出力信号とすることを特徴とする光送受信システム。
【請求項10】
請求項6記載の光送受信システムにおいて、前記光受信機は前記非対称干渉計の手前に位相変調器を備え、前記光送信機の位相変調器は乱数あるいは擬似乱数で決まる位相を信号に付加して変調し、前記光受信機の位相変調器は前記付加された位相を打ち消すような変調を信号光に加えることを特徴とする光送受信システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−310146(P2008−310146A)
【公開日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−158949(P2007−158949)
【出願日】平成19年6月15日(2007.6.15)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】