説明

光透過性導電シート

【課題】可撓性に優れ、かつ光透過性が高く低抵抗な導電シートを提供する。
【解決手段】可撓性を有する透明基材上に、透明導電性層を有することなく、まず開口部を有する、膜厚が0.5μm以下の金属膜が設けられ、少なくとも該開口部に透明導電性層を設けた光透過性導電シートであって、該開口部の中の任意の点から、最も近接する金属膜部までの距離が100μm以下であるのが好ましく、また、該金属膜は、銀塩拡散転写法により形成される物理現像銀であると、より好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種ディスプレイ、タッチパネル、太陽電池、無機ELパネル、OLED発光等に用いられる、可撓性を有する光透過性導電シートに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、各種ディスプレイやタッチパネルにおいて、曲面への対応や軽量化の目的で、フレキシブル化への試みが盛んに進められている。これらにおける重要部材である光透過性導電シートに関しても、現在中心的に使用されるガラスTCO(ITO、FTOなどの透明導電性酸化物)に替えて、フィルム上にTCO層を形成し、フレキシブル化が図られている。
【0003】
一方、TCOによらない導電性膜形成も盛んで、例えば特許文献1に記載されているような導電性高分子による導電性フィルムの製造や、特許文献2に記載されているような金属ナノワイヤによる導電性フィルムの製造、または導電性繊維としてカーボンナノチューブを用いる方法などが検討されている。
【0004】
しかし上記のような取り組みにもかかわらず、可撓性を有する透明基材上に形成された光透過性導電シートは、いずれも導電性が十分とはいえず、実際の応用における大面積化を行おうとする際、高い内部抵抗のため、効率の低下や動作の不具合が生じてしまう欠点があった。
【0005】
このようなシートの低抵抗化を図るため、櫛形あるいは格子型の金属細線からなる補助電極を導電性シート上に配置することは知られている。これらの補助電極は、銀ペーストなどをスクリーン印刷法により設けることができるが、パタンの細線化に限界があり、上記補助電極の視認性を低減することが困難である。特許文献3に記載された方法で視認性が低い補助電極を作ることは可能であるが、補助電極と導電性シートの密着性が保たれにくいなどの問題があった。
【0006】
一方、あらかじめ補助電極を形成し、その上にTCOや導電性高分子、導電性繊維などを配置しようとした場合、補助電極の凹凸などに起因するTCOのひび割れで導電性が損なわれやすく、凹凸を無くすために例えば特許文献4に電極層を転写する方法が開示されているが、細かなパタンを有する電極層を断線なく基材から剥離し転写することは容易ではない。
【0007】
また特許文献5に記載されているように、補助電極を構成した後、透明樹脂で開口部を埋め、その上にTCOや導電性高分子、導電性繊維などを配置する方法が記載されているが、開口部のみを埋めることが困難であり、十分な厚みのある補助電極と透明樹脂膜との境目の凹凸が大きすぎる等の課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006−302561号公報
【特許文献2】特開2009−299162号公報
【特許文献3】国際公開第04/007810号パンフレット
【特許文献4】特開2006−236626号公報
【特許文献5】特開2005−332705号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、可撓性に優れ、かつ光透過性が高く低抵抗な導電シートを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の上記目的は、以下の導電シートにより達成された。
1.可撓性を有する透明基材上に、透明導電性層を有することなく、開口部を有する金属膜が設けられ、さらに少なくとも該開口部に透明導電性層が設けられた光透過性導電シートであって、該金属膜の膜厚が0.5μm以下であることを特徴とする光透過性導電シート。
2.前記開口部の中の任意の点から、最も近接する金属膜部までの距離が100μm以下であることを特徴とする上記1に記載の光透過性導電シート。
3.前記金属膜が、銀塩拡散転写法により形成された物理現像銀であることを特徴とする上記1または2に記載の光透過性導電シート。
【発明の効果】
【0011】
本発明の上記手段により、各種ディスプレイ、タッチパネル、太陽電池、無機ELパネル、OLED発光等に好適に用いられる、可撓性に優れ、かつ光透過性が高く低抵抗な導電シートを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
可撓性を有する透明基材としては例えばポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、ジアセテート樹脂、トリアセテート樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリイミド樹脂、セロハン、セルロイド等のプラスチック樹脂フィルムなどが挙げられる。ここでいう透明とは、できあがった導電シートに求められる透明性が確保されるために必要な透過率、ヘイズ値を有していることである。具体的には50%以上、好ましくは80%以上の全光線透過率を有し、ヘイズ値が15%以下、好ましくは5%以下の支持体を意味する。さらに本発明においては、透明基材は下引き層、帯電防止層、反射防止層、ガスバリア層、ハードコート層などの機能層を必要に応じて有していても良い。
【0013】
本発明において開口部を有する、膜厚が0.5μm以下の金属膜は様々な方法により形成が可能で、具体的な手順としては、
(I)透明基材上にスパッタ法あるいは蒸着法により形成された金属薄膜を、フォトリソグラフィー・エッチング法により、櫛形あるいは格子型パタンを形成する、
(II)平均粒径が1μm未満の金属ナノ粒子を含むインクをパタン印刷し、加熱などにより導電性を高める、
(III)無電解めっき触媒を含むインクをパタン印刷し、金属を無電解めっきする、
(IV)銀塩拡散転写法により、直接像様露光して現像することにより導電性銀パタン膜を得る、
等の方法がある。中でもパタンの精細さや工程の簡易さから(IV)の銀塩拡散転写法によることが好ましい。
【0014】
銀塩拡散転写法により導電性銀パタンを得る方法は、特開2003−77350号公報や特開2005−250169号公報等に詳しく記載されているが、概説すると、
(I)基材上に物理現像核を有する層を設ける、
(II)上記物理現像核層の上に設けられた、あるいは別に準備されたハロゲン化銀写真乳剤層をパタン露光する、
(III)上記物理現像核層に露光されたハロゲン化銀写真乳剤層、可溶性銀錯塩形成剤、及び還元剤をアルカリ液中で作用させ、金属銀をパタン状に析出させる、
(IV)ハロゲン化銀写真乳剤層をウオッシュオフする、あるいは剥離する、
ことにより、導電性銀パタンを得る。
【0015】
かようにして得られた導電性銀パタンは、その導電性を高める目的で、特開2008−34366号公報に記載された処理を行うことも好ましい。具体的には、銀画像を形成した後に下記(I)〜(III)のいずれかに記載の化合物を少なくとも1種類以上含有する後処理液で処理する。
(I)還元性物質
(II)水溶性リンオキソ酸化合物
(III)水溶性ハロゲン化合物。
【0016】
銀塩拡散転写法により得られる導電性銀パタンの膜厚は、一般に0.1μm程度であり、さらに高い導電性が求められる場合は、総厚が0.5μmを超えない限りにおいてさらに金属をめっきしても良い。
【0017】
めっき処理には、電解法と無電解法があるが、本発明で実施するめっき処理としては、無電解めっき法、あるいは中性、あるいは塩基性の銅めっき浴が好ましい。無電解めっき技術に関しては「無電解めっき」電気鍍金研究会編、日刊工業新聞社(1994年)に記載されている。本発明で特に好ましいのは無電解銅めっきである。
【0018】
無電解銅めっきには、プリント基板のスルーホールめっきに用いられる薄付け用のめっき浴や、フルアディティブ法のための厚付けのめっき浴などがある。前者は、めっき膜厚は0.1〜0.3μmと薄いが、浴温度が低く安定であり、総厚が0.5μmを超えないパタン形成を行う本発明に特に適している。めっき浴は自身で調製しても良いが、メルテックス(株)や奥野製薬工業(株)などから市販されているものが安定に用いられる。
【0019】
中性、あるいは塩基性の銅めっき浴は、めっきの業界ではよくストライクめっきとよばれ、主に基材との密着性を改良するために用いられる。本発明で用いることができる具体的な銅ストライクめっき浴としては、ピロリン酸銅ストライクめっき浴、シアン化銅ストライクめっき浴などが挙げられるが、最近では有害性の観点からノーシアンのアルカリストライクめっき浴が市販されるようになってきており、これを用いることが好ましい。
【0020】
本発明において、開口部を有する金属膜としては、視認性(開口部を有する金属膜の見えやすさ)を低減させる意味で、メッシュパタンが好ましい。メッシュパタンの形状に関しては、様々なものが開示されている。特開平10−41682号公報では、正三角形、二等辺三角形、直角三角形などの三角形、正方形、長方形、菱形、平行四辺形、台形などの四角形、(正)六角形、(正)八角形、(正)十二角形、(正)二十角形などの(正)n角形、円、楕円、星形などを組み合わせた模様でありこれらの単位の単独の繰り返しあるいは2種類以上の組み合わせパタンが開示されている。国際公開第2006/040989号パンフレットでは不規則な網目構造の導電部が存在するパタンが開示されている。特開2002−223095号公報では、ストライプ状、煉瓦積み模様状のパタンが開示されている。これらのパタンの中でも、正方形、菱形及び正六角形のパタンが多用されている。本発明ではこれらいずれの形状も用いることができる。
【0021】
金属膜の線幅については、十分低い視認性を得るために、20μm以下の金属細線が好ましい。パタンピッチは必要な全光線透過率と導電性を考慮して任意に選択することができる。ただ補助電極としての機能を十分発揮させるためには、開口部の中の任意の点から、最も近接する金属膜部までの距離が100μm以下であることが特に好ましい。
【0022】
本発明における透明導電性層としては、ITO、FTOなどのTCO類、ポリアニリン、ポリピロールなどのπ共役系高分子、カーボンナノチューブや金属ナノワイヤなどの導電性繊維などが好ましく用いられる。
【0023】
TCO類としては、酸化インジウム、スズをドープした酸化インジウム(ITO)、亜鉛をドープした酸化インジウム(IZO)、酸化スズ、アンチモンをドープした酸化スズ(ATO)、フッ素をドープした酸化スズ(FTO)、酸化亜鉛、アルミニウムをドープした酸化亜鉛(AZO)等が用いられるが、透明性と導電性を両立したITOが特に好ましい。但しクラックが生じやすいため、膜厚は可撓性を確保するために200nm以下とすることが好ましく、特に好ましくは100nm以下である。TCO類を用いた透明導電性層は、真空蒸着法やスパッタ法などの気相堆積法、あるいはTCO類微粒子分散物の塗布や、いわゆるゾル−ゲル法などの湿式堆積法により形成される。さらに導電性を向上させる目的で、可撓性を有する透明基材が耐えうる範囲において、加熱・加圧などの工程を加えても良い。
【0024】
π共役系高分子としては、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリピロールなどが挙げられるが、透明性と高い導電性から、特開2003−286336号公報などに記載のポリ−3,4−アルキレンジオキシチオフェンなどが特に好ましく用いられる。これらはすでにH.C.Starck社、あるいはAgfa社など多くのメーカーから水系分散物として市販されており、リップダイレクト法、コンマコーター法、スリットリバース法、ダイコーター法、グラビアロールコーター法、ブレードコーター法、スプレイコーター法、エアナイフコーター法、ディップコーター法、バーコーター法などの公知の湿式塗布法により透明導電層を形成することができる。
【0025】
導電性繊維としては、金属をコーティングした樹脂繊維や繊維状無機物、導電性金属酸化物繊維、金属ナノワイヤ、炭素繊維、カーボンナノチューブなどがある。これらは長さ/直径の比率(アスペクト比)が大きい繊維状の形状を有し、アスペクト比が10以上、好ましくは20以上である。また透明性の観点から、直径は300nm以下であることが好ましく、透明性と導電性を併せて満足するという点では、特に金属ナノワイヤやカーボンナノチューブが好ましい。
【0026】
金属ナノワイヤの金属元素としては、特に制限はないが、Ag、Cu、Au、Rh、Ir、Pd、Pt、Al、Co、Ni、Feなどが挙げられるが、導電性からの観点からAgが特に好ましい。耐候性やエレクトロケミカルマイグレーション耐性などを改善する目的で、Ag以外の貴金属元素を含有させることは好ましい。平均直径としては10〜100nm、長さは3〜30μmのものが本発明で好ましく用いられる。
【0027】
上記の金属ナノワイヤの製法には特に制限はなく、例えば特開2009−299162号公報及び同公報に記載の特許文献あるいは非特許文献等に記載の方法で得ることができる。
【0028】
カーボンナノチューブは、数原子の厚みの層のグラファイト炭素原子面が筒状に巻かれた形状からなる炭素系繊維であり、その壁面の構成数から単層ナノチューブ(SWNT)、多層ナノチューブ(MWNT)に分類される。また炭素原子面の構造の違いから、数多くの種類が知られている。本発明に用いられるカーボンナノチューブは上記いずれの種類でも良いが、アスペクト比が大きい単層ナノチューブを用いることが好ましい。
【0029】
上記カーボンナノチューブの製法には特に制限はなく、アーク放電法、レーザー蒸発法、CVD法など公知の方法を用いることができる。また米国Brewer Science社、あるいは三菱マテリアル電子化成(株)などから入手することが可能である。
【0030】
上記のごとき導電性繊維は、一般的に水、及び/または親水性有機溶媒中の分散物として得られ、既述のπ共役系高分子分散物の場合と同様に、公知の方法で塗布することにより、透明導電層を形成することができる。
【0031】
本発明における透明導電性層部分の導電性は高いことが好ましいが、光透過性導電シート全体の導電性は開口部を有する、膜厚が0.5μm以下の金属膜に支配されるため、十分に可撓性と透明性を確保できる程度で十分であり、具体的には50〜500Ω/□の範囲とすることが好ましい。
【実施例】
【0032】
以下実施例によって本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。なお実施例中、百分率及び部は特に断りのない限り、質量基準である。
【0033】
(実施例1)
<銀蒸着による方法>
透光性支持体として片面にポリウレタン樹脂の下地層を有する、厚み100μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(全光線透過率90%)の下地層上に、真空蒸着法により0.1μmの厚みに銀を蒸着した。さらにこのフィルムにフォトリソグラフィー用ドライフィルムをラミネートし、公知の方法により、フォトリソグラフィー・エッチングを行い、線幅が18μmの細線からなる、開口率88%(300μmピッチ)の銀格子パタンフィルムAを得た。
【0034】
<銀ナノインクによる方法>
デキストリン3.5gをイオン交換水31.5gに溶解した水溶液と、硝酸銀8.5gをイオン交換水41.5gに溶解した水溶液とを混ぜ合わせ、撹拌しながら2規定の水酸化ナトリウム水溶液38gを1分かけゆっくりと滴下した。1時間後、撹拌を停止し、12時間放置した。その後、デカンテーションを行い、得られた沈殿物25gにイオン交換水25gを加え、再分散を行った後、遠心分離を行い、固形沈殿物を得た。この固形沈殿物に7gのイオン交換水を添加し、固形分38%、比重1.4の平均粒径30nmの銀コロイド液を得た。
【0035】
上記銀コロイド液の粘度を、濃度の調整と高沸点溶媒の添加により行い、産業用ピエゾ方式インクジェットヘッドにより、片面にポリウレタン樹脂の下地層を有する、厚み100μmのポリエチレンテレフタレートフィルムの下地層上に、50μmの細線からなる開口率79%(450μmピッチ)の銀格子パタン印字を行った。
【0036】
得られた印字済みフィルムを、50℃の5%塩化ナトリウム水溶液に1分間浸漬した後、十分に水洗し、銀格子パタンフィルムBを得た。銀格子パタンの膜厚は平均0.25μmであった。
【0037】
<銀塩拡散転写法による方法>
両面にポリウレタン樹脂の下地層を有する、厚み100μmのポリエチレンテレフタレートフィルムの片面に、硬化させないゼラチンをバインダーとし、400nmでの吸光度が約0.7であるアンチハレーション裏層を設け、この裏層とは反対の面に硫化パラジウムを含有する塗液を塗布・乾燥し、固形分で0.4mg/mの物理現像核を設けた。続いて5モル%の臭化物を含む塩臭化銀粒子からなるハロゲン化銀乳剤に、カブリ防止剤、塗布助剤を加えたハロゲン化銀感光層を、銀量で3.0g/mとなるように、さらに保護層をゼラチン量で1.0g/mとなるように、上記物理現像核の上に塗布することにより、感光材料1を得た。
【0038】
このようにして得た感光材料1を、水銀灯を光源とする密着プリンターで、幅15μmで格子間隔200μmの細線格子パタンを有する透過原稿を密着させて露光し、続いて下記の組成の現像液Aで20℃、60秒間現像した後、40℃の温水で不要になったハロゲン化銀感光層及び保護層を水洗除去した。さらに50℃の5%塩化ナトリウム水溶液に1分間浸漬することにより、膜厚が0.1μm、線幅が15μmの細線からなる、開口率86%の銀格子パタンフィルムCを得た。
<現像液>
水酸化ナトリウム 20g
ハイドロキノン 20g
1−フェニル−3−ピラゾリドン 2g
亜硫酸ナトリウム 30g
モノメチルエタノールアミン 10g
全量を水で1000ml
pH=13に調整する。
【0039】
<無電解めっきによる方法>
上記銀格子パタンフィルムCに、メルテックス(株)製 アクチベーター350で触媒付与した後、下記組成の無電解銅めっき液によりパタン上に約0.2μmの厚みの銅めっき層を設け、金属格子パタンフィルムDを得た。なお、めっきによる線幅の太りは1μm以下で開口率はほとんど低下しなかった。
<銅めっき液>
硫酸銅5水和物 10g
EDTA・2Na 40g
ホルマリン(37%) 3ml
水酸化ナトリウム 9g
ビピリジル 0.01g
ポリエチレングリコール 0.01g
全量を水で1000ml
pH=12.2に調整する。
【0040】
<電解めっきによる方法>
上記銀格子パタンフィルムCを、アルカリ脱脂、酸活性化した後、下記組成の銅ストライクめっき浴で、銀格子パタン上に各々0.3μm、0.5μm、0.9μmの銅めっき層を形成し、金属格子パタンフィルムE、F、Gを得た。なお、めっきによる線幅の太りの最大(フィルムGの場合)は2μmとなり、開口率は84%に低下した。
<銅ストライクめっき浴>
メルテックス社製ノーシアンアルカリ電気銅ストライク、メルカパー CF−2120
陰極電流密度 0.5A/dm
【0041】
以上の方法により作製したフィルムA〜Gの、開口部を有する金属膜の厚みは、共焦点顕微鏡(レーザーテック(株)社製、オプテリクスC130)により測定した。これらフィルムA〜Gの金属膜上に、In−Sn(5%)金属ターゲットを用いて、DC反応性スパッタ法でITO膜を成膜することで、光透過性導電シートを得た。さらに比較例として、ポリウレタン樹脂の下地層を有する、厚み100μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(全光線透過率90%)上に直接、同様の方法でITO膜のみからなり、各種厚み(25nm、50nm、120nm)を有する光透過性導電シートを得た。設けられたITO膜厚は、断面をSEM観察することにより求め、表1に記載した。
【0042】
表1にまとめた形態の光透過性導電シート試料について、導電性はダイアインスツルメンツ社製、ロレスターGP/ESPプローブを用いて、JIS K 7194に従い測定した。また全光線透過率はJIS K 7361−1に従い測定した。可撓性については、該光透過性導電シートを直径100mmφの丸棒に巻き付けた後、あらためてシート抵抗を測定し、さらに顕微鏡で観察して透明導電膜にひび割れが発生しているかを確認し、ほとんど発生していない場合は○、多少発生している場合は△、著しく発生している場合は×として評価することで行った。これらの結果を表1にまとめた。
【0043】
【表1】

【0044】
表1の結果より、本発明の光透過性導電シートは、光透過性と導電性が高く、かつ可撓性に優れ、曲げた際にひび割れが生じにくく開口部の導電性が保たれている導電シートであることがわかる。特に銀塩拡散転写法を用いたものが優れている。
【0045】
(実施例2)
実施例1の銀格子パタンフィルムCと同じ方法で、線幅とピッチを変えて作製した銀格子パタンフィルムの金属膜(金属膜厚0.1μm)上に、下記の透明導電性膜を形成した。
【0046】
<透明導電膜I>
実施例1と同じITO膜を50nmの厚みで形成する。
【0047】
<透明導電膜II>
ミライミル社製PEDOT/PSS分散液、TIRを1mあたり20g(固形分量220mg)となるようにスピンコート法により塗布、乾燥させ、さらに150℃、30分間加熱することにより形成した。
【0048】
<透明導電膜III>
銀ナノワイヤの分散液を、Adv.Mater.2002,14,833〜837に記載の方法を参考に、還元剤としてエチレングリコールを、保護コロイドとして平均分子量130万のポリビニルピロリドンを用い、あらかじめ作製した銀ナノ粒子を、ダブルジェット法を用い、あらたな核生成を抑制しつつ成長方向を制御しながら成長させることにより、平均軸長30μm、短軸平均粒径100nmの銀ナノワイヤ分散物を得た。この分散物を、銀量が1mあたり0.3gとなるようにスピンコート法により形成した。
【0049】
上記に従い形成した、表2にまとめた形態の光透過性導電シートを用い、下記の手順で無機EL発光素子を形成した。
【0050】
<蛍光体ペーストの作製>
蛍光体粒子(オスラムシルバニア製、GG45)とシアノレジン(信越化学(株)製、CR―S)をジメチルホルムアミド溶媒中に各々60部、10部添加し、遊星型撹拌脱泡機(シンキー製、AR−250)にて分散し、スクリーン印刷用ペーストを得た。
【0051】
<高誘電体ペーストの作製>
高純度ペロブスカイト(堺化学工業(株)製、BT−05)とシアノレジン(同上)をジメチルホルムアミド溶媒中に各々90部、30部添加し、遊星型撹拌脱泡機にて分散し、スクリーン印刷用ペーストを得た。
【0052】
<無機EL発光素子の作製>
準備した光透過性導電シート上に蛍光体層を、乾燥膜厚が30μmとなるように、上記蛍光体ペーストをスクリーン印刷法により印刷、120℃で乾燥し形成した。続いて上記蛍光体層上に高誘電体層を、上記高誘電体ペーストを同じくスクリーン印刷法により、乾燥膜厚が20μmとなるように印刷し、120℃で乾燥し形成した。最後に背面電極として銀ペーストを印刷、乾燥し、全体をフィルムで封止して、無機EL発光素子を形成した。
【0053】
上記の手順で作製された無機EL素子の、背面電極と光透過性導電シートの間にインバータ電源にて100V、400Hzの交流電圧を印加し、発光させた。発光面全体で均一に発光する場合は○、目視で僅かに発光の格子パタンが確認できる場合は△、明らかに格子パタン状しか発光しない場合は×、全く発光しない場合は−とした。さらに無機EL素子を、直径100mmφの丸棒に沿わせたままの曲面時で発光させ、同様に発光状態を確認した。結果は表2にまとめた。
【0054】
【表2】

【0055】
表2の結果より、本発明の光透過性導電シートを用いた無機EL発光素子は、発光面内で比較的均一な発光を得ることができ、かつ屈曲時にも均一な発光が維持されることがわかる。
【0056】
(実施例3)
<OLED発光素子の作製>
厚み100μmのポリエチレンナフタレートフィルムの片面に、SiONバリアコート層をCVD法により設け、さらに該バリアコートの反対の面に易接着加工を施したフィルムに、実施例1で示した銀塩拡散転写法による方法により、表3に記載の線幅とピッチを有する銀格子パタンと給電部を配置した金属膜を形成した。
【0057】
得られた銀格子パタン上に、以下に示す各層を記載の順に、記載の厚みに成膜した。さらに比較のため、厚み100μmのポリエチレンナフタレートフィルムの片面に、SiON系バリアコート層をCVD法により設け、該バリアコートの反対の面にITOをスパッタリング法により100nm設けただけの導電性フィルムにも、同様の各層を形成した。下記層を全て成膜した後、バリアコート付きのポリエチレンナフタレートフィルムを重ね、OLED用シール剤にて封止して、フレキシブルなOLED発光素子を作製した。
【0058】
PEDOT/PSS層 40nm
ビス・ナフチル・フェニルアミノ・ビフェニル 50nm
クマリンC545を1%含むトリス・ヒドロキシキノリナート・アルミニウム
30nm
トリス・ヒドロキシキノリナート・アルミニウム 30nm
フッ化リチウム 0.8nm
アルミニウム(背面電極) 150nm
【0059】
作製したOLED発光素子における光透過性導電シート(基材、銀格子パタンとPEDOT/PSS層に対応)と背面電極間に、定電圧定電流電源を用いて直流電圧を印加し、発光させた。その際の発光状態を肉眼で観察し、さらにOLED素子を、直径300mmφの筒に沿わせて発光させ、同様に発光状態を確認した。結果は表3にまとめた。
【0060】
【表3】

【0061】
表3の結果より、本発明の光透過性導電シートを用いたOLED発光素子(試験番号21〜23)は、屈曲時にも回路開放が起こらず発光が得られることがわかる。発光の均一性は、金属膜開口部の中の任意の点から、最も近接する金属膜部までの距離が100μm以下である、試験番号22、23の場合に高く、OLED発光素子への応用には特に好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明の光透過性導電シートは、その優れた光透過性と高い導電性、可撓性から、条規発光素子に限らず、タッチパネル、各種ディスプレイ、電子ペーパー、各種太陽電池などに応用が可能で、特に曲面が求められる際にその効果が発揮される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性を有する透明基材上に、透明導電性層を有することなく、開口部を有する金属膜が設けられ、さらに少なくとも該開口部に透明導電性層が設けられた光透過性導電シートであって、該金属膜の膜厚が0.5μm以下であることを特徴とする光透過性導電シート。
【請求項2】
前記開口部の中の任意の点から、最も近接する金属膜部までの距離が100μm以下であることを特徴とする請求項1に記載の光透過性導電シート。
【請求項3】
前記金属膜が、銀塩拡散転写法により形成された物理現像銀であることを特徴とする請求項1または2に記載の光透過性導電シート。

【公開番号】特開2011−198686(P2011−198686A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−66243(P2010−66243)
【出願日】平成22年3月23日(2010.3.23)
【出願人】(000005980)三菱製紙株式会社 (1,550)
【Fターム(参考)】