光通信システム、光通信装置、及び、通信方法
【課題】スリープ制御によって下位装置から誤発光信号が発生した場合において、下位装置から上位装置への正確なデータ送信を確保する。
【解決手段】上位装置と、これに光信号で通信する少なくとも第一と第二の下位装置と、を含む光通信システムにおいて、前記上位装置は、各下位装置に対して送信許可通知を送信する処理部と、スリープ設定通知及びスリープ解除通知を前記第二の下位装置に送信するスリープ制御部と、前記第一の下位装置から受信したデータにおいて誤り区間を検出する誤り検出部と、を備える。前記スリープ制御部がスリープ設定通知又はスリープ解除通知を送信した後に前記誤り区間が検出された場合に、前記上位装置の前記処理部は、前記第一の下位装置に、少なくとも前記誤り区間に対応するデータを再度送信させるための再送信許可通知を送信する。
【解決手段】上位装置と、これに光信号で通信する少なくとも第一と第二の下位装置と、を含む光通信システムにおいて、前記上位装置は、各下位装置に対して送信許可通知を送信する処理部と、スリープ設定通知及びスリープ解除通知を前記第二の下位装置に送信するスリープ制御部と、前記第一の下位装置から受信したデータにおいて誤り区間を検出する誤り検出部と、を備える。前記スリープ制御部がスリープ設定通知又はスリープ解除通知を送信した後に前記誤り区間が検出された場合に、前記上位装置の前記処理部は、前記第一の下位装置に、少なくとも前記誤り区間に対応するデータを再度送信させるための再送信許可通知を送信する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光通信システム、通信装置、及び、通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
通信網の高速・広帯域化に対応するために光ネットワーク又は光通信システムの導入が図られている。受動光網システム(Passive Optical Network:以下PONと称する)において、1つの光伝送路終端装置(Optical Line Terminal:以下OLTと称する)が、光ファイバ及び光ファイバを分岐する光スプリッタを介して複数の光回線終端装置(Optical Network Unit:以下ONUと称する)とスター型のポイントツーマルチポイントの光ネットワークを形成する。PONの代表的な規格として、IEEE802.3で標準化されたEPON(Ethernet(登録商標)PON)と、ITU−T G.984で標準化されたGPON(Gigabit Capable PON)がある。
【0003】
PONにおいて、ONU(下位装置)からOLT(上位装置)に向かって送信される上りフレーム(パケット)と、OLTからONUに向かって送信される下りフレーム(パケット)は、波長分割多重(Wave Division Multiplexing:以下WDMと称する)によって多重化される。下りフレームについて、OLTから光ファイバで接続された全てのONUに対して同じデータが送信される。データを受信したONUが、信号中に含まれる宛先情報を参照して自分宛のフレーム以外を破棄し、自分宛のデータのみをユーザ側へ転送する。一方で、上りフレームについて、ONUがOLTからの送信許可に従って指定された時間にデータを出力する時分割多重(Time Division Multiple Access:以下TDMAと称する)によって多重化された通信を行なう。
【0004】
また、PONの通信速度の向上に関して、64kbit/秒のような低速信号を扱うシステム、固定長のATMセルを最大約600Mbit/で送受信するBPON(Broadband PON)、Ethernetの可変長フレームを最大約1Gbit/秒で送受信するEPON、又は、より高速な2.4Gbit/秒程度の信号を扱うGPONの導入が進められている。また、更に今後は10Gbit/秒から40Gbit/秒の信号を扱うことが可能な高速PONの実現が求められている。
【0005】
このようなPONの通信速度の向上に伴い伝送路上の中継装置の消費電力が増大する傾向にある。中継装置としてONUは、加入者宅に設置されることからネットワーク上に多数設置される。一方、ONUはOLTや上位スイッチ群と比較して利用できる帯域を必要とする時間が短い。従って、ONUは非通信時においても無駄な電力を使用しながら放置されている。
【0006】
この状況からONUの省電力化の要請が高まると共に、OLTがONUに対して省電力制御としてスリープ制御を行うシステムやそのプロトコルが提案されている(例えば、非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】黒田、「スリープモードによる次世代PON省電力化の検討」、電子情報通信学会総合大会講演論文集、社団法人電子情報通信学会2010年_通信(2)、2010年3月、p.292
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、スリープ制御において、ONUがスリープ状態(スリープモード)から復帰する場合、または、ONUがスリープ状態に移行する場合に、光信号送信回路への電力供給が開始又は停止されるので、意図しない光信号(以下、誤発光信号と称する)が発生する可能性がある。具体的には、スリープ状態にあるONUがOLTによって起動される場合に、ONUの光信号送信部に対する電力供給が開始する過渡期間が存在する。正常状態にあるONUがOLTによってスリープ状態に移行する場合に、ONUの光信号送信部に対する電力供給が停止する過渡期間が存在する。これら過渡期間において、急峻な電圧変動により光信号送信部の状態が不安定となり、誤発光が発生する可能性がある。この結果、スリープ制御の対象でない他のONUの上り信号に誤発光信号が干渉し、この上り信号において、ONU(下位装置)からOLT(上位装置)へフレーム(パケット)が正確に送信されないフレームロス(パケットロス)を発生する危険性がある。
【0009】
従って、スリープ制御の導入に伴いフレームロスを発生する危険性が高まり、さらにスリープ状態からの起動に要する時間の短縮の要請により、さらにこの危険性が高まる。しかしながら、現在のところ、スリープ制御によって、スリープ制御の対象でない他のONUの上り信号に誤発光信号が干渉する危険性は指摘されておらず、また、フレームロスに対する対策も開示されていない。
【0010】
本発明の目的は、上位装置が実行するスリープ制御によって、下位装置から誤発光信号が発生した場合において、下位装置から上位装置への正確なデータ送信を確保することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の代表的な一例を示せば以下の通りである。すなわち、上位網と通信する上位装置と、前記上位装置と光信号で通信する少なくとも第一と第二の下位装置と、を含む光通信システムであって、前記上位装置は、前記第一の下位装置と前記第二の下位装置の各々に対して、前記上位装置へデータを送信させる時間を設定するための送信許可通知を送信する処理部と、前記第二の下位装置が前記上位装置へデータを送信することを停止するスリープ状態に移行させるスリープ設定通知、及び、スリープ状態から復帰させるスリープ解除通知を、前記第二の下位装置に送信するスリープ制御部と、前記第一の下位装置から受信したデータにおいて誤りが発生した誤り区間を検出する誤り検出部と、を備え、前記スリープ制御部がスリープ設定通知又はスリープ解除通知を送信した後に前記誤り区間が検出された場合に、前記上位装置の前記処理部は、前記第一の下位装置に、少なくとも前記誤り区間に対応するデータを再度送信させるための再送信許可通知を送信し、前記第一の下位装置は、前記再送信許可通知に応答して、少なくとも前記誤り区間に対応するデータを再度送信することを特徴とする光通信システムである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の実施形態によると、下位装置をスリープ状態へ移行又はスリープ状態から復帰する場合に、この下位装置から意図しない誤発光が発生して他の下位装置から上位装置へ送信されるデータに誤りが発生しても、少なくとも誤りのある区間のデータを再送信することによって、下位装置から上位装置への正確なデータ送信を確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】PONを含む光アクセス網の構成を示す構成図である。
【図2】上位装置としてのOLTの構成を示すブロック図である。
【図3】下位装置としてのONUの構成を示すブロック図である。
【図4】PONの通常の動作を示すシーケンス図である。
【図5】スリープ状態からの復帰動作を示すフローチャートである。
【図6】スリープ状態への移行動作を示すフローチャートである。
【図7】ONUがスリープ状態から復帰する場合のPONの動作の一例を示すシーケンス図である。
【図8】ONUがスリープ状態へ移行する場合のPONの動作の一例を示すシーケンス図である。
【図9】第一実施形態に係る再送制御を例示するフローチャートである。
【図10】(a)ONUからの通常の光出力信号を例示するタイムチャートである。(b)ONUからの誤発光信号を例示するタイムチャートである。(c)OLTへの光入力信号を例示するタイムチャートである。
【図11】(a)再送要求前において、再送用送信バッファ部に格納されているフレームを示す図である。(b)ONUからOLTに再送信されるフレームを示す図である。
【図12】フレームが再送信される場合のPONの動作の一例を示すシーケンス図である。
【図13】第二実施形態に係るMACフレームの概要図である。
【図14】第三実施形態に係る8B/10B符号変換表を示す図である。
【図15】第三実施形態において再送用送信バッファ部に格納されているフレームを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は、後述の各実施形態に係る光アクセス網の構成を示すブロック図である。光アクセス網1は、例えば、PON(受動光網システム)10を介して、上位の通信網である公衆通信網に接続されて、データを送受信する。例えば、公衆通信網は、PSTN/インターネット20(以下、上位網と称することがある)である。光通信システムとしてのPON10は、光スプリッタ120、幹線光ファイバ130、支線光ファイバ140、OLT100(光伝送路終端装置)、及び、複数のONU110(光回線終端装置)を備える。ONU110は、加入者の端末(電話(TEL)180、PC190等)に接続して通信する。OLT100と各ONU110は、幹線光ファイバ130と光スプリッタ120と支線光ファイバ140を介して互いに光信号を送受信する。これにより、上位網20と加入者端末との通信、または、加入者端末同士の通信が行われる。なお、ONU110は、上位装置(又は上位の光通信装置)としてのOLT100と光通信する下位装置(又は下位の光通信装置)の一例を示すものでこれに限定されるものではない。
【0015】
OLT100には、1本の幹線光ファイバ130、光スプリッタ120および支線光ファイバ140を介して、複数台(n台、例えば32台等)のONU110が接続可能である。図1は、一例として、5台(n=5)のONU110が示しており、OLT100から各ONU110までのファイバ長が異なる。図1において、OLT100からONU110−1までのファイバ長は1km、OLT100からONU110−2までのファイバ長が10km、OLT100からONU110−3までのファイバ長が20km、OLT100からONU110−4までのファイバ長が10km、OLT100からONU110−nまでのファイバ長は15kmである。なお、図1において、各ONU110の下のかっこ内(xxKm)は、OLTとONU間のファイバ長を示す。
【0016】
下りフレーム150について、OLT100から光ファイバで接続された全てのONUに対して同じデータが送信される。データを受信したONU110が、信号中に含まれる宛先情報を参照して自分宛のフレーム以外を破棄し、自分宛のデータのみを端末側へ転送する。一方で、上りフレーム160、170について、ONU110がOLT100からの送信許可通知で指定された時間にデータを出力する時分割多重(Time Division Multiple Access:以下TDMAと称する)によって多重化された通信を行なう。
【0017】
なお、各実施形態において、ONU110−1、110−2、・・・、110−nのいずれにも共通する説明をする場合、これらを総称してONU110と記載する。支線光ファイバ140、上りフレーム170、電話180、PC190に関しても、同じである。
【0018】
図2は、各実施形態に係るOLT100の構成を示すブロック図である。
【0019】
OLT100は、電気側送受信部(第一のインターフェース部)200、電気/光変換部(第二のインターフェース部)210、アクセス制御部220、制御部230、受信バッファ部(第一の受信バッファ部)270、再送用受信バッファ部(第二の受信バッファ部)271、及び、受信パワー検出部290を備える。電気側送受信部200は、上位網20側の中継装置と電気信号により通信する。電気/光変換部210は、ONUと光信号により通信を行う。アクセス制御部220は、ONUの正常状態(非スリープ状態)及びスリープ状態において、データ通信を制御する。制御部230は、OLT100内にある各部を制御する。受信バッファ部270と再送用受信バッファ部271は、ONUから送られてきた上りフレーム(又はデータ)を一時的に格納しておく。受信パワー検出部290は、ONU毎に上り光信号の受信パワーを検出する。制御部230は、ONU毎の受信パワーの検出値に応じて、各部を制御する。
【0020】
電気側送受信部200と電気/光変換部210は、電気回路で構成され、受信バッファ部270と再送用受信バッファ部271は、DRAM等のメモリまたはメモリの領域から構成される。例えば、アクセス制御部220は、FPGAやASIC等の演算処理回路、又は、CPU(中央演算処理装置)とメモリを備えたマイクロコンピュータから構成されてよい。受信パワー検出部290は、フォトダイオード等の光センサから構成される。
【0021】
制御部230は、スリープ制御部240、グラント処理部250、誤り検出部260、及び、バッファ制御部280を備える。スリープ制御部240は、スリープ制御を実行する。ここで、スリープ制御は、ONUを正常状態(正常モード)からスリープ状態(スリープモード)に移行させること、及び、ONUをスリープ状態から正常状態に復帰させることを含む。グラント処理部250は、動的帯域割当部として機能し、各ONUの送信許可時間を設定し各ONUに送信の許可を与える送信許可通知(送信許可信号)を送る。誤り検出部260は、ONUから送られてきた上りフレーム(データ)の誤り(ビット誤り等)を検出する。バッファ制御部280は、受信バッファ部270と再送用受信バッファ部271を制御する。スリープ制御部240、グラント処理部250、誤り検出部260、バッファ制御部280の各部(又は、制御部230全体)は、FPGAやASIC等の演算処理回路、又は、CPU(中央演算処理装置)とメモリを備えたマイクロコンピュータから構成されてよい。
【0022】
上りフレームが電気・光変換部210で受信される場合に、アクセス制御部220は、上りフレームのMACアドレスと、上りフレームのプリアンブル部に付与されている送信元のONUの識別情報とを、経路情報として関連付けて蓄積し、さらに、上りフレームを電気側送受信部200を介して送信する。下りフレームが電気側送受信部200で受信されると、アクセス制御部220は、下りフレームのMACアドレスを参照し、予め保持された経路情報から送信先のONUの識別情報を下りフレームのプリアンブル部に付与して、電気/光変換部210から送信する。アクセス制御部220は、このようなスイッチング機能を保持している。
【0023】
図3は、各実施形態に係るONU110の構成を示すブロック図である。
【0024】
ONU110は、電気/光変換部300、アクセス制御部310、キューバッファ部320、キューバッファ管理部330、電気側送受信部340、制御部350、及び、電源390を備える。電気/光変換部300は、OLT100と光信号により通信する。また、電気/光変換部300は、電源390からの電力の供給を可能又は不可能(オン又はオフ)にするスイッチ300aを備えてよい。アクセス制御部310は、ONU110の正常状態(非スリープ状態)及びスリープ状態にデータ通信を制御する。キューバッファ部320は、フレームやトラフィックデータを格納する。キューバッファ管理部330は、キューバッファ部320の状態を管理する。電気側送受信部340は、加入者の端末などと電気信号により通信する。制御部350は、ONU110にある各部や機能ブロックを制御する。電源390は、ONU110内に電力を供給する。
【0025】
電気/光変換部300と電気側送受信部340は、電気回路で構成され、キューバッファ部320は、DRAM等のメモリまたはメモリの領域から構成される。例えば、アクセス制御部310とキューバッファ管理部330は、FPGAやASIC等の演算処理回路、又は、CPU(中央演算処理装置)とメモリを備えたマイクロコンピュータから構成されてよい。
【0026】
制御部350は、スリープ制御部360、再送用送信バッファ部370、及び、グラント処理部380を備える。例えば、スリープ制御部360とグラント処理部380(又は、これら全体)は、FPGAやASIC等の演算処理回路、又は、CPU(中央演算処理装置)を備えたマイクロコンピュータから構成されてよい。再送用送信バッファ部370は、DRAM等のメモリまたはメモリの領域から構成される。
【0027】
再送用送信バッファ部370は、再送要求前に、再送信する上りフレーム(又はデータ)を、一時的に蓄積して格納する。詳細には、再送用送信バッファ部370は、再送要求前にOLT100から送られた送信許可通知400に含まれる送信許可時刻STと送信可能時間L(後述)に対応する上りフレームを蓄積しておく。再送要求時に、再送用送信バッファ部370に一時的に蓄積された上りフレーム(データ)から、送信許可通知1030(再送信許可通知とも呼ばれる)に含まれる送信許可時刻STと送信可能時間Lに対応する部分が選択されて、OLT100に送信される。
【0028】
グラント処理部380は、OLT100からの送信許可通知に含まれる送信許可時刻STと送信可能時間Lに対応して、送信のタイムスロットを設定し帯域を割り当てる。グラント処理部380は、通常時にキューバッファ部320のフレーム(データ)に帯域を割り当て、再送要求時に、再送用送信バッファ部370のフレーム(データ)に帯域を割り当てる。スリープ制御部360は、OLT100から送られたスリープ制御信号(スリープ制御に関する指示信号)を解析し、ONU110を正常状態からスリープ状態に移行させる停止処理と、ONU110をスリープ状態から正常状態に復帰させる起動処理を行う。
【0029】
ここで、ONU110のスリープ状態とは、電源390から電気/光変換部300への電力の供給は停止してOLT100と電気/光変換部300との通信が中断し、且つ、アクセス制御部310は、電気側送受信部340にて受信された上りフレームをキューバッファ部320に蓄積する機能のみを継続し他の機能を停止している状態である。スリープ制御において、スリープ制御部360は、OLT100のスリープ制御部240から指示された正常状態への復帰時刻又はスリープ状態への移行時刻に達しているか監視している。
【0030】
スリープ状態へ移行する移行時刻に達した場合に、スリープ制御部360は、電気/光変換部300を休止するため、電気/光変換部300のスイッチ300aをオフして、電源390から電気/光変換部300への電力の供給を停止する。正常状態へ復帰する復帰時刻に達した場合に、スリープ制御部360は、電気/光変換部300を起動するため、電気/光変換部300のスイッチ300aをオンして、電源390から電気/光変換部300への電力を供給する。
【0031】
図4は、PON10の通常の動作を示すシーケンス図である。図4は、グラント処理部250のDBA動作(動的帯域割当)およびDBA周期と、各DBAの結果に基づくグラント動作およびグラント周期の関係を例示する。
【0032】
OLT100は、例えば、周期125μ秒のグラント周期毎に、グラント指示(送信タイミングの指示)を含む送信許可通知400を各ONU110−1〜110−3に向けて送信する。この送信許可通知400は、送信許可時刻STと送信可能時間Lを含む。なお、代わりに、送信許可通知400は、送信開始時刻Startと終了時刻Endを含んでもよい。
【0033】
各ONUが備えた送信キュー(キューバッファ部320)に溜まっている送信待ちのデータ量の報告を要求する情報(報告要求:Request report)も含まれている。各ONU110−1〜3は、送信開始時刻Start(=ST)と終了時刻End(=ST+L)によって画定される期間(タイムスロット)で送信キューに溜まったデータを送信する。同時に、各ONU110−1〜3は、送信待ちのデータ量を上り通知410に含まれるキュー長(送信待ちのデータ量に対応する)を用いてOLT100に報告する(例えば、特開2010−81278等参照)。
【0034】
図5は、スリープ状態から正常状態への復帰動作のルーチンを例示するフローチャートである。
【0035】
ステップS500において、OLT100は、スリープ状態から正常状態に復帰させるためONU110に対してスリープ解除通知を送信する。ステップS510において、ONU110は、OLT100から送信されたスリープ解除通知を受信する。ステップS520において、スリープ解除通知を受信したONU110は起動を開始する。ステップS530において、ONU110は、すべての機能が回復し起動が完了した後、ステップS540において、OLT100に起動完了通知を送信する。ステップS550において、OLT100は、ONU110から送信された起動完了通知を受信することによって、このONU110のスリープ状態からの復帰を確認する。
【0036】
図6は、正常状態からスリープ状態への移行動作のルーチンを例示するフローチャートである。
【0037】
ステップS600において、OLT100は、スリープ状態に移行させようとするONU110に対してスリープ設定通知(スリープ許可通知)を送信する。ステップS610において、ONU110は、OLT100から送信されたスリープ設定通知を受信する。ステップS620において、スリープ設定通知を受信したONU110は、スリープ状態への移行を開始する。ステップS630において、ONU110は、スリープ状態となり、キューバッファ部320に上がりフレームを蓄積する機能のみを継続させ、他の機能を停止した状態となり、スリープ状態への移行を完了する。ステップS640において、OLT100は、該ONU110との光回線の遮断を確認することによって、該ONU110のスリープ状態への移行を確認する。
【0038】
図7は、ONUがスリープ状態から復帰する場合のPON10の動作の一例を示すシーケンス図である。この場合に、スリープ状態から復帰するONUに誤発光が発生する可能性がある。
【0039】
OLT100は、グラント指示を含む送信許可通知400と同じタイミングで、スリープ状態から復帰させようとするONU110−2(ONU#2)にスリープ解除通知700を送付する。スリープ解除通知を受信したONU110−2は、スリープ状態から起動を開始する。ONU110の起動期間720(例えば5ミリ秒)に、ONU110−2の状態が不安定となり意図しない誤発光が発生した場合、他のONU(ONU110−1又はONU110−3)の上り通知710と誤発光信号とが干渉して上りフレームがOLT100に正確に伝達できないフレームロス(パケットロス)が発生する可能性がある。
【0040】
図8は、ONUがスリープ状態へ移行する場合のPON10の動作の一例を示すシーケンス図である。この場合に、スリープ状態へ移行するONUに誤発光が発生する可能性がある。
【0041】
OLT100は、グラント指示を含む送信許可通知400と同じタイミングで、スリープ状態へ移行させようとするONU110−2(ONU#2)にスリープ設定通知800を送付する。スリープ設定通知を受信したONU110−2は、スリープ状態へ移行を開始する。ONU110のスリープ移行期間820(例えば5ミリ秒)にONU110の状態が不安定となり意図しない誤発光が発生した場合、他のONU(ONU110−1又はONU110−3)の上り通知810と誤発光信号とが干渉して上りフレームのロスが発生する。
【0042】
ONU110にこのように誤発光信号が発生する場合でも、他のONU110からの上り信号にフレームロスを補償する制御について三つの実施形態で説明する。各実施形態において、OLT100は、フレームロスを補償するため、グラント指示を含む送信許可通知を利用して、誤りが検出された区間(箇所)に対応するデータ又はその区間を含むフレーム(パケット)をONU110に再送信させる。
【0043】
[第一実施形態]
図9は、第一実施形態において、OLT100の制御部230が実行する再送制御のルーチンを例示するフローチャートである。
【0044】
ステップS910において、OLT100の制御部230は、各ONU110へグラント指示を含む送信許可通知400を送るとともに、特定のONU110(ここではONU#2)へスリープ解除通知700又はスリープ設定通知800を送る。さらに、制御部230は、特定のONU110(ここではONU#2)以外の他のONU110に、OLT100に送信するフレーム(パケット)を再送用送信バッファ部370に格納しておくよう格納指令を送る。なお、再送用送信バッファ部370がOLT100に送信すべきフレーム(パケット)を常に格納する構成においては、OLT100はこの格納指示は送る必要ない。
【0045】
ステップS920において、制御部230は、ONUからデータを受信した場合に、その誤り検出部260を使用して、ONUからの受信したデータに誤り区間(データの誤りが発生した区間又は期間)があるか判断する。ONU110からの受信したデータに誤り区間がない場合に、ルーチンはステップS950に進む。ONU110からの受信したデータに誤り区間がある場合に、ルーチンは、ステップS930に進む。第一実施形態において、制御部230の誤り検出部260は、受信パワー検出部290を介して通信中のONU110から送られた光信号の光出力を監視する。ステップS920において、誤り検出部260は、平均の光出力が所定の割合以上変動した場合に、該ONU110の誤発光に起因してデータに誤り(エラー)があると判断し、データの誤りが発生した区間又は期間を誤り区間として検出する。ここで、所定の割合は数十%である。
【0046】
ステップS930において、OLT100の制御部230は、そのグラント処理部250を使用して、誤りがあるフレームを送信したONU110のグラント処理部380に対して、再送用送信バッファ部370に蓄積されているデータの一部(少なくとも誤り区間に対応する部分)を再送信するように再送要求(再送要求信号)を送信する。誤りがあるフレームを送信したONU110は、フレーム中の送信元アドレスから判定されてよい。なお、ここでは、誤りが発生したフレーム(パケット)が再送信されるように、再送信はフレーム(パケット)単位で行われる。再送用送信バッファ部370に蓄積されているフレーム(パケット)のうち誤り区間に対応する部分を含むように選択された一つ又は複数のフレーム(パケット)が再送信される。ステップS940において、制御部230は、そのバッファ制御部280を使用して、再送要求を受信したONU110から送信されたデータを再送用受信バッファ部271に格納する。ステップS950において、通常のDBA動作を再開する。その後、ルーチンは終了する。
【0047】
図10(a)−(c)は、誤発光時のONU110とOLT100の光入出力のレベル(大きさ)を例示するタイムチャートである。図10(a)のように、ONU110(例えばONU#1)の光出力レベル900が一定であれば、平均光出力910も一定になる。OLT100がONU110(例えば、ONU#2)をスリープ状態から復帰又はスリープ状態へ移行させた場合に、図10(b)のように、ONU110(例えば、ONU#2)が、ある誤発光期間の間に、誤発光信号930を生じる。そして、図10(c)のように、誤発光信号930は、通信中のONU110(例えばONU#1)の光信号920と干渉して、OLT100の光入力レベル940が上昇する。
【0048】
ステップS920において、誤り検出部260は、受信パワー検出部290を介して、平均光入力950が通常と比べ、所定の割合以上(例えば30%)変動していることを検出し、通信中のONU110(例えばONU#1)のデータに誤り区間があると判断する。また、誤り検出部260は、誤発光期間に対応する誤り区間を特定して、グラント処理部250に通知する。そして、ステップS930において、グラント処理部250は、通信中のONU110(例えばONU#1)に再送要求を行う。これにより、あるONU110がスリープ状態へ移行またはスリープ状態から起動する間に意図しない誤発光が発生しても、他のONU110からの上り信号にフレームロスを補償できる。
【0049】
図11(a)は、再送要求前において、再送用送信バッファ部370に格納されたフレーム(データ)を示す。OLT100があるONU110へスリープの解除/設定通知を送信したときに、他のONU110は、OLT100からの再送要求に備え、OLT100に送信するフレームを再送用送信バッファ部370に格納する。再送要求前にOLT100から送られた送信許可通知400の送信許可時刻STと送信可能時間Lに割り当てられたフレーム(パケット)が、再送用送信バッファ部370に格納されている。例として、ONU#1への送信許可通知400において、送信許可時刻STは1000、送信可能時間Lは500に設定されている。
【0050】
図11(a)のハッチング領域は、2つのフレームに相当する時刻t=1100から時刻t=1200までの100の時間の間に誤りONU#2から誤発光930があり、誤りが発生したことを示す。例えば、誤り区間(図10(c)の誤発光期間に対応)は、時刻t=1120から時刻t=1180まである。OLT100の誤り検出部260は、ONU#2が誤発光によるデータの誤り区間を検出して、グラント処理部250に通知する。この場合、OLT100のバッファ制御部280は、受信バッファ部270に、誤りの生じていないデータ(ハッチング部分以外のフレーム)だけを格納する。
【0051】
図11(b)は、OLT100からの送信許可通知1030(再送信許可通知)に対応して、ONU110からOLT100に再送信されるフレーム(データ)を示す。ONU#2の誤発光が検出された直後の送信許可通知1030の送信時(グラント発行時)に、グラント処理部250は、送信許可時刻STと送信可能時間Lを含む送信許可通知1030とともに、ONU#1に対して再送要求を送信する。送信許可時刻STと送信可能時間Lは、誤り区間に対応するデータを含む一つ又は複数のフレームが再送信されるよう設定される。ここでは、送信許可通知1030において、送信許可時刻STは1100、送信可能時間Lは100となる。
【0052】
再送要求を受信したONU110のグラント処理部380は、送信許可通知1030を再送用送信バッファ部370に格納されたフレーム(パケット)に関連付け、帯域を割り当て再送信を行う。具体的には、図11(b)のように、グラント処理部380は、再送用送信バッファ部370に格納されたフレーム(データ)から、送信許可通知1030に含まれる送信許可時刻STと送信可能時間Lに対応する部分を選択して、OLT100に送信する。
【0053】
OLT100は、再送信されたフレーム(パケット)を受信して再送用受信バッファ部271に格納する。さらに、OLT100のバッファ制御部280は、再送要求前に受信バッファ部270に格納していたフレーム(パケット)と、再送信され再送用受信バッファ部271に格納されたフレーム(パケット)を結合させ、電気側送受信部200へ送る。なお、受信バッファ部270が、誤りの生じたフレームも格納する場合には、バッファ制御部280は、誤りの生じたフレームを削除して、再送要求前に受信バッファ部270に格納していたフレームと、再送用受信バッファ部271に格納されたフレームを結合させてよい。
【0054】
図12は、フレームが再送信される場合のシーケンス図を示す。図12は、例としてスリープ状態からONUが起動する場合を説明する。
【0055】
OLT100は、グラント指示を含む送信許可通知400と同タイミングで、スリープ状態から復帰させようとするONU110(ここでは、ONU#2)にスリープ解除通知700を送付する。正常状態にある他のONU110(ここでは、ONU#1とONU#3)は、グラント指示に従って送信を行い、スリープ解除通知700を受信したONU#2は、スリープ状態から起動を開始する。
【0056】
ONU#2の起動期間720(例えば5ミリ秒)に、ONU#2の状態が不安定となり意図しない誤発光信号930が発生し、例えばONU#1のフレームに干渉する。各ONU110の信号を受信したOLT100は、受信パワー検出部290により各ONUの平均光出力を検出し、誤り検出部260へ送信する。なお、誤り検出部260が誤りを検出しない場合に、ONU#1とONU#3からの信号は、そのままアクセス部220と受信バッファ部270を介して、電気側送受信部200へと送信される。
【0057】
図10(c)のようにOLT100の平均光入力950が変動し、図11(a)の時刻t=1100から時刻t=1200までの範囲でONU#1のフレームに誤りが検出される場合に、ONU#1のフレーム(パケット)をこの範囲を除いて、アクセス部220を介して受信バッファ部270へと格納する。直後のグラント指示では、ONU#1以外の他のONU110(ONU#2とONU#3)には帯域割り当てを行わず、送信許可通知(ST:1100,L:100)と再送要求をONU#1に対して行い、ONU#1がOLT100の要求に応じて再送信する。再送信されたフレーム(パケット)を受信したOLT100は、再送用受信バッファ部271へ格納し、受信バッファ部270に格納していたフレーム(パケット)と再送信されたフレーム(パケット)を結合し、電気側送受信部200へ送る。その後、OLT100は、通常のDBA動作を再開する。
【0058】
−作用効果−
第一実施形態によると、OLT100(即ち上位装置)のグラント処理部250は、第一のONU110(第一の下位装置:例えばONU#1)と第二のONU110(第二の下位装置:例えばONU#2)の各々に対して、OLT100へデータを送信させる時間を設定するための送信許可通知を送信する。OLT100のスリープ制御部240は、第二のONU110(例えばONU#2)がOLT100へデータを送信することを停止するスリープ状態に移行させるスリープ設定通知、及び、スリープ状態から復帰させるスリープ解除通知を、第二のONU110に送信する。OLT100の誤り検出部260は、第一のONU110から受信したデータにおいて誤りが発生した誤り区間を検出する。OLT100のグラント処理部250は、スリープ制御部240がスリープ設定通知又はスリープ解除通知を送信した後に誤り区間が検出された場合に、第一のONU110に、少なくとも誤り区間に対応するデータを再度送信させるための再送信許可通知(送信許可通知1030)を送信する。第一のONU110は、再送信許可通知に応答して、少なくとも誤り区間に対応するデータを再度送信する。
【0059】
これにより、第二のONU110がOLT100の制御によりスリープ状態へ移行またはスリープ状態から起動する場合に、第二のONU110から意図しない誤発光が発生しても、他の第一のONU110が少なくとも誤りのある区間に対応するデータを再送信することによって、フレームロス等のデータのロスを補償できる。従って、スリープ移行/スリープ解除の対象でないONU110からOLT100への正確なデータ送信を確保できる。
【0060】
第一のONU110は、OLT100に向けて既に送信した送信データを一時的に蓄積する再送用送信バッファ部370と、再送用送信バッファ部を制御する制御部350とを備える。第一のONU110の制御部350は、再送信許可通知に対応して、再送用送信バッファ部370に蓄積された送信データのうちから少なくとも誤り区間に対応するデータを選択して、再度送信する。これにより、簡便に誤り区間に対応するデータを再度送信できる。
【0061】
OLT100は、再送信許可通知の送信前に第一のONU110から受信したデータを格納する受信バッファ270(第一の受信バッファ)と、第一のONU110から再度送信されたデータを格納する再送用受信バッファ部271(第二の受信バッファ部)と、を備える。OLT100は、第一の受信バッファ270に格納されたデータと第二の受信バッファ271に格納されたデータを結合して上位網に送る。これにより、誤りを除去したデータを上位網に送ることができる。
【0062】
誤り検出部260は、第一のONU110から受信したデータ信号のレベルを監視することによって、誤り区間を検出する。これにより、既存の受信パワー検出部290を利用して、簡易に誤りを検出できる。
【0063】
OLT100のグラント処理部250は、第一のONU110に、前記誤り区間が検出されたフレームに対応するフレームを再度送信させるための再送信許可通知を送信し、第一のONU110は、再送信許可通知に応答して、この対応するフレームを再度送信してよい。これにより、誤りのあるフレーム(パケット)の単位で、データを再度送信でき簡便である。
【0064】
[第二実施形態]
第二実施形態は、OLT100の誤り検出処理とONU110の再送処理に関して、第一実施形態と異なる。他の構成は、第一実施形態と第二実施形態で共通する。
【0065】
図13は、IEEE802.3規格で使用されているMACフレームの概要を示す。OLT100の誤り検出部260は、フレーム内のFCS(フレームチェックシーケンス)を用いて誤りを検出する。
【0066】
IEEE802.3規格に従うと、宛先アドレスからユーザデータまでの範囲についてチェックサム計算を行った結果が、FCS1200に格納されている。OLT100が受信したフレームは、アクセス制御部220を介して、誤り検出部260に送られる。そして、誤り検出部260は、チェックサムを再計算した結果をFCS1200に記載されているチェックサムと比較し、これらが異なる場合にフレームの誤りを検出する。OLT100があるONU110へスリープの解除/設定通知を送る場合に、これ以外の他のONU110は、OLT100からの再送要求に備え、送信するフレーム(パケット)を再送用送信バッファ部370へ格納しておく。誤りが検出されたフレームを送信したONU110は、再送用送信バッファ部370へ格納されたフレームのうち誤りが検出されたフレームに対応するフレームを、再送要求に応じてOLT100に再送信する。送信許可通知1030(再送信許可通知)において、送信許可時刻STと送信可能時間Lは、誤りが検出されたフレームに対応するフレームが再送信されるように設定される。
【0067】
第二実施形態によると、誤り検出部は、第一のONUから受信したデータ内のフレームチェックシーケンス情報を用いて、誤り区間を検出する。これにより、誤りをフレーム単位で簡単に検出し、誤りが検出されたフレームに対応するフレームを再送信できる。
【0068】
[第三実施形態]
第三実施形態は、OLT100の誤り検出処理とONU110の再送処理に関して、第一実施形態と異なる。他の構成は、第一実施形態と第三実施形態で共通する。
【0069】
ONU110は、8B/10B符号化回路(図示しない)を用いて、送信するデータに伝送符号化方式である8B/10B符号化を行って、OLT100に送信する。なお、IEEE802.3規格の符号化方式において、8B/10B符号化が採用されている。OLT100の誤り検出部260は、8B/10B符号化のランニングディスパリティRDを用いて誤りを検出し、通信中のONU110のフレームに誤りがある場合に、このONU110が誤発光をしているとみなす。そして、OLT100の制御部230は、通信中のONU110に対して、誤り箇所(又は誤り区間)より広くこれを含むような所定の範囲にあるデータを再送するための再送要求を送る。所定の範囲は、誤り箇所(又は誤り区間)の前後数バイトである。なお、データは、フレーム単位で送らなくてもよい。
【0070】
図14に8B/10B符号変換表の一部を示す。8B/10B符号化において、8ビットの元データ1300は、3ビット/5ビットに分けられ、それぞれに1ビットを付加され、図14の完全なテーブルによって4ビット/6ビットの合計10ビットのデータに変換される。8B/10B符号化回路は、変換の際に、符号化直前のデータの1/0の個数に応じて、RD+/−を出力する。
【0071】
例えば、8ビットの元データ1300が00hの場合において、ONU110の8B/10B符号化回路は、符号化直前のデータに"0"の個数が多いなら、図14のCurrent RD−(1310)のビットパターンを選択して出力し、符号化直前のデータが"1"の方が多いなら、Current RD+(1320)のビットパターンを選択して出力する。これにより、OLT100の誤り検出部260は、直前のデータから推定されるランニングディスパリティRD+/−に対して、実際のビットパターンの選択が合致しなければ、OLT100に送信されたデータに誤りがあった事を検出できる。
【0072】
OLT100は、ONU110から送られてきたデータを、アクセス制御部220を介して、誤り検出部260に送る。OLT100の誤り検出部260は、8B/10B変換テーブルを備え、ビット誤りを検出する。しかし、この方法ではすべてのビット誤りを検出する事が保証出来ない為、例として、誤った箇所又は区間の前後5ByteをOLT100の再送要求範囲とする。
【0073】
図15は、再送要求前において、再送用送信バッファ部370に格納されているフレーム(データ)を示す。OLT100があるONU110へスリープの解除/設定通知を送信したときに、他のONU110は、OLT100からの再送要求に備え、OLT100に送信するフレームを再送用送信バッファ部370に格納する。再送要求前にOLT100から送られた送信許可通知400の送信許可時刻STと送信可能時間Lに割り当てられたフレームが、再送用送信バッファ部370に格納されている。例として、図15では、ONU#1への送信許可通知400において、送信許可時刻STは1000、送信可能時間Lは500に設定されている。
【0074】
図15のハッチング領域は、ONU#2から誤発光930があったことを示す。OLT100の誤り検出部260は、ONU#2が誤発光によってデータの誤りが生じた箇所を検出して、グラント処理部250に通知する。上述したように、ランニングディスパリティRDはすべてのフレームの誤りを検出する事が保証されていないため、例として、グラント処理部250は、誤りが生じた箇所又は区間の前後5Byteを、再送要求のデータ範囲1420に設定する。
【0075】
ONU#2の誤発光が検出された直後の送信許可通知1030の送信時(グラント発行時)に、グラント処理部250は、再送要求のデータ範囲1420に相当する送信許可時刻STと送信可能時間Lに設定し、ONU#1に対して再送要求を行う。ここでは、送信許可通知1030(再送信許可通知)において、送信許可時刻STは1100、送信可能時間Lは100となる。
【0076】
第三実施形態によると、誤り検出部は、8B/10B符号化のランニングディスパリティを用いて、前記誤り区間を検出する。これにより、簡便にデータの誤りを検出できる。
【0077】
本発明は各実施形態に限定されずに、その技術的な思想の範囲内において種々の変更がなしうることは明白である。
【符号の説明】
【0078】
10 PON(光通信システム)
100 OLT(上位装置)
110 ONU(下位装置)
120 スプリッタ
130、140 光ファイバ
150 下り信号
160、170 上り信号
180、190 端末
230 OLTの制御部
240 OLTのスリープ制御部
250 OLTのグラント処理部
260 誤り検出部
270 受信バッファ部
271 再送用受信バッファ部
300 電気/光変換部
300a スイッチ
320 キューバッファ部
350 ONUの制御部
370 再送用送信バッファ部
380 ONUのグラント処理部
390 電源
【技術分野】
【0001】
本発明は、光通信システム、通信装置、及び、通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
通信網の高速・広帯域化に対応するために光ネットワーク又は光通信システムの導入が図られている。受動光網システム(Passive Optical Network:以下PONと称する)において、1つの光伝送路終端装置(Optical Line Terminal:以下OLTと称する)が、光ファイバ及び光ファイバを分岐する光スプリッタを介して複数の光回線終端装置(Optical Network Unit:以下ONUと称する)とスター型のポイントツーマルチポイントの光ネットワークを形成する。PONの代表的な規格として、IEEE802.3で標準化されたEPON(Ethernet(登録商標)PON)と、ITU−T G.984で標準化されたGPON(Gigabit Capable PON)がある。
【0003】
PONにおいて、ONU(下位装置)からOLT(上位装置)に向かって送信される上りフレーム(パケット)と、OLTからONUに向かって送信される下りフレーム(パケット)は、波長分割多重(Wave Division Multiplexing:以下WDMと称する)によって多重化される。下りフレームについて、OLTから光ファイバで接続された全てのONUに対して同じデータが送信される。データを受信したONUが、信号中に含まれる宛先情報を参照して自分宛のフレーム以外を破棄し、自分宛のデータのみをユーザ側へ転送する。一方で、上りフレームについて、ONUがOLTからの送信許可に従って指定された時間にデータを出力する時分割多重(Time Division Multiple Access:以下TDMAと称する)によって多重化された通信を行なう。
【0004】
また、PONの通信速度の向上に関して、64kbit/秒のような低速信号を扱うシステム、固定長のATMセルを最大約600Mbit/で送受信するBPON(Broadband PON)、Ethernetの可変長フレームを最大約1Gbit/秒で送受信するEPON、又は、より高速な2.4Gbit/秒程度の信号を扱うGPONの導入が進められている。また、更に今後は10Gbit/秒から40Gbit/秒の信号を扱うことが可能な高速PONの実現が求められている。
【0005】
このようなPONの通信速度の向上に伴い伝送路上の中継装置の消費電力が増大する傾向にある。中継装置としてONUは、加入者宅に設置されることからネットワーク上に多数設置される。一方、ONUはOLTや上位スイッチ群と比較して利用できる帯域を必要とする時間が短い。従って、ONUは非通信時においても無駄な電力を使用しながら放置されている。
【0006】
この状況からONUの省電力化の要請が高まると共に、OLTがONUに対して省電力制御としてスリープ制御を行うシステムやそのプロトコルが提案されている(例えば、非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】黒田、「スリープモードによる次世代PON省電力化の検討」、電子情報通信学会総合大会講演論文集、社団法人電子情報通信学会2010年_通信(2)、2010年3月、p.292
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、スリープ制御において、ONUがスリープ状態(スリープモード)から復帰する場合、または、ONUがスリープ状態に移行する場合に、光信号送信回路への電力供給が開始又は停止されるので、意図しない光信号(以下、誤発光信号と称する)が発生する可能性がある。具体的には、スリープ状態にあるONUがOLTによって起動される場合に、ONUの光信号送信部に対する電力供給が開始する過渡期間が存在する。正常状態にあるONUがOLTによってスリープ状態に移行する場合に、ONUの光信号送信部に対する電力供給が停止する過渡期間が存在する。これら過渡期間において、急峻な電圧変動により光信号送信部の状態が不安定となり、誤発光が発生する可能性がある。この結果、スリープ制御の対象でない他のONUの上り信号に誤発光信号が干渉し、この上り信号において、ONU(下位装置)からOLT(上位装置)へフレーム(パケット)が正確に送信されないフレームロス(パケットロス)を発生する危険性がある。
【0009】
従って、スリープ制御の導入に伴いフレームロスを発生する危険性が高まり、さらにスリープ状態からの起動に要する時間の短縮の要請により、さらにこの危険性が高まる。しかしながら、現在のところ、スリープ制御によって、スリープ制御の対象でない他のONUの上り信号に誤発光信号が干渉する危険性は指摘されておらず、また、フレームロスに対する対策も開示されていない。
【0010】
本発明の目的は、上位装置が実行するスリープ制御によって、下位装置から誤発光信号が発生した場合において、下位装置から上位装置への正確なデータ送信を確保することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の代表的な一例を示せば以下の通りである。すなわち、上位網と通信する上位装置と、前記上位装置と光信号で通信する少なくとも第一と第二の下位装置と、を含む光通信システムであって、前記上位装置は、前記第一の下位装置と前記第二の下位装置の各々に対して、前記上位装置へデータを送信させる時間を設定するための送信許可通知を送信する処理部と、前記第二の下位装置が前記上位装置へデータを送信することを停止するスリープ状態に移行させるスリープ設定通知、及び、スリープ状態から復帰させるスリープ解除通知を、前記第二の下位装置に送信するスリープ制御部と、前記第一の下位装置から受信したデータにおいて誤りが発生した誤り区間を検出する誤り検出部と、を備え、前記スリープ制御部がスリープ設定通知又はスリープ解除通知を送信した後に前記誤り区間が検出された場合に、前記上位装置の前記処理部は、前記第一の下位装置に、少なくとも前記誤り区間に対応するデータを再度送信させるための再送信許可通知を送信し、前記第一の下位装置は、前記再送信許可通知に応答して、少なくとも前記誤り区間に対応するデータを再度送信することを特徴とする光通信システムである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の実施形態によると、下位装置をスリープ状態へ移行又はスリープ状態から復帰する場合に、この下位装置から意図しない誤発光が発生して他の下位装置から上位装置へ送信されるデータに誤りが発生しても、少なくとも誤りのある区間のデータを再送信することによって、下位装置から上位装置への正確なデータ送信を確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】PONを含む光アクセス網の構成を示す構成図である。
【図2】上位装置としてのOLTの構成を示すブロック図である。
【図3】下位装置としてのONUの構成を示すブロック図である。
【図4】PONの通常の動作を示すシーケンス図である。
【図5】スリープ状態からの復帰動作を示すフローチャートである。
【図6】スリープ状態への移行動作を示すフローチャートである。
【図7】ONUがスリープ状態から復帰する場合のPONの動作の一例を示すシーケンス図である。
【図8】ONUがスリープ状態へ移行する場合のPONの動作の一例を示すシーケンス図である。
【図9】第一実施形態に係る再送制御を例示するフローチャートである。
【図10】(a)ONUからの通常の光出力信号を例示するタイムチャートである。(b)ONUからの誤発光信号を例示するタイムチャートである。(c)OLTへの光入力信号を例示するタイムチャートである。
【図11】(a)再送要求前において、再送用送信バッファ部に格納されているフレームを示す図である。(b)ONUからOLTに再送信されるフレームを示す図である。
【図12】フレームが再送信される場合のPONの動作の一例を示すシーケンス図である。
【図13】第二実施形態に係るMACフレームの概要図である。
【図14】第三実施形態に係る8B/10B符号変換表を示す図である。
【図15】第三実施形態において再送用送信バッファ部に格納されているフレームを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は、後述の各実施形態に係る光アクセス網の構成を示すブロック図である。光アクセス網1は、例えば、PON(受動光網システム)10を介して、上位の通信網である公衆通信網に接続されて、データを送受信する。例えば、公衆通信網は、PSTN/インターネット20(以下、上位網と称することがある)である。光通信システムとしてのPON10は、光スプリッタ120、幹線光ファイバ130、支線光ファイバ140、OLT100(光伝送路終端装置)、及び、複数のONU110(光回線終端装置)を備える。ONU110は、加入者の端末(電話(TEL)180、PC190等)に接続して通信する。OLT100と各ONU110は、幹線光ファイバ130と光スプリッタ120と支線光ファイバ140を介して互いに光信号を送受信する。これにより、上位網20と加入者端末との通信、または、加入者端末同士の通信が行われる。なお、ONU110は、上位装置(又は上位の光通信装置)としてのOLT100と光通信する下位装置(又は下位の光通信装置)の一例を示すものでこれに限定されるものではない。
【0015】
OLT100には、1本の幹線光ファイバ130、光スプリッタ120および支線光ファイバ140を介して、複数台(n台、例えば32台等)のONU110が接続可能である。図1は、一例として、5台(n=5)のONU110が示しており、OLT100から各ONU110までのファイバ長が異なる。図1において、OLT100からONU110−1までのファイバ長は1km、OLT100からONU110−2までのファイバ長が10km、OLT100からONU110−3までのファイバ長が20km、OLT100からONU110−4までのファイバ長が10km、OLT100からONU110−nまでのファイバ長は15kmである。なお、図1において、各ONU110の下のかっこ内(xxKm)は、OLTとONU間のファイバ長を示す。
【0016】
下りフレーム150について、OLT100から光ファイバで接続された全てのONUに対して同じデータが送信される。データを受信したONU110が、信号中に含まれる宛先情報を参照して自分宛のフレーム以外を破棄し、自分宛のデータのみを端末側へ転送する。一方で、上りフレーム160、170について、ONU110がOLT100からの送信許可通知で指定された時間にデータを出力する時分割多重(Time Division Multiple Access:以下TDMAと称する)によって多重化された通信を行なう。
【0017】
なお、各実施形態において、ONU110−1、110−2、・・・、110−nのいずれにも共通する説明をする場合、これらを総称してONU110と記載する。支線光ファイバ140、上りフレーム170、電話180、PC190に関しても、同じである。
【0018】
図2は、各実施形態に係るOLT100の構成を示すブロック図である。
【0019】
OLT100は、電気側送受信部(第一のインターフェース部)200、電気/光変換部(第二のインターフェース部)210、アクセス制御部220、制御部230、受信バッファ部(第一の受信バッファ部)270、再送用受信バッファ部(第二の受信バッファ部)271、及び、受信パワー検出部290を備える。電気側送受信部200は、上位網20側の中継装置と電気信号により通信する。電気/光変換部210は、ONUと光信号により通信を行う。アクセス制御部220は、ONUの正常状態(非スリープ状態)及びスリープ状態において、データ通信を制御する。制御部230は、OLT100内にある各部を制御する。受信バッファ部270と再送用受信バッファ部271は、ONUから送られてきた上りフレーム(又はデータ)を一時的に格納しておく。受信パワー検出部290は、ONU毎に上り光信号の受信パワーを検出する。制御部230は、ONU毎の受信パワーの検出値に応じて、各部を制御する。
【0020】
電気側送受信部200と電気/光変換部210は、電気回路で構成され、受信バッファ部270と再送用受信バッファ部271は、DRAM等のメモリまたはメモリの領域から構成される。例えば、アクセス制御部220は、FPGAやASIC等の演算処理回路、又は、CPU(中央演算処理装置)とメモリを備えたマイクロコンピュータから構成されてよい。受信パワー検出部290は、フォトダイオード等の光センサから構成される。
【0021】
制御部230は、スリープ制御部240、グラント処理部250、誤り検出部260、及び、バッファ制御部280を備える。スリープ制御部240は、スリープ制御を実行する。ここで、スリープ制御は、ONUを正常状態(正常モード)からスリープ状態(スリープモード)に移行させること、及び、ONUをスリープ状態から正常状態に復帰させることを含む。グラント処理部250は、動的帯域割当部として機能し、各ONUの送信許可時間を設定し各ONUに送信の許可を与える送信許可通知(送信許可信号)を送る。誤り検出部260は、ONUから送られてきた上りフレーム(データ)の誤り(ビット誤り等)を検出する。バッファ制御部280は、受信バッファ部270と再送用受信バッファ部271を制御する。スリープ制御部240、グラント処理部250、誤り検出部260、バッファ制御部280の各部(又は、制御部230全体)は、FPGAやASIC等の演算処理回路、又は、CPU(中央演算処理装置)とメモリを備えたマイクロコンピュータから構成されてよい。
【0022】
上りフレームが電気・光変換部210で受信される場合に、アクセス制御部220は、上りフレームのMACアドレスと、上りフレームのプリアンブル部に付与されている送信元のONUの識別情報とを、経路情報として関連付けて蓄積し、さらに、上りフレームを電気側送受信部200を介して送信する。下りフレームが電気側送受信部200で受信されると、アクセス制御部220は、下りフレームのMACアドレスを参照し、予め保持された経路情報から送信先のONUの識別情報を下りフレームのプリアンブル部に付与して、電気/光変換部210から送信する。アクセス制御部220は、このようなスイッチング機能を保持している。
【0023】
図3は、各実施形態に係るONU110の構成を示すブロック図である。
【0024】
ONU110は、電気/光変換部300、アクセス制御部310、キューバッファ部320、キューバッファ管理部330、電気側送受信部340、制御部350、及び、電源390を備える。電気/光変換部300は、OLT100と光信号により通信する。また、電気/光変換部300は、電源390からの電力の供給を可能又は不可能(オン又はオフ)にするスイッチ300aを備えてよい。アクセス制御部310は、ONU110の正常状態(非スリープ状態)及びスリープ状態にデータ通信を制御する。キューバッファ部320は、フレームやトラフィックデータを格納する。キューバッファ管理部330は、キューバッファ部320の状態を管理する。電気側送受信部340は、加入者の端末などと電気信号により通信する。制御部350は、ONU110にある各部や機能ブロックを制御する。電源390は、ONU110内に電力を供給する。
【0025】
電気/光変換部300と電気側送受信部340は、電気回路で構成され、キューバッファ部320は、DRAM等のメモリまたはメモリの領域から構成される。例えば、アクセス制御部310とキューバッファ管理部330は、FPGAやASIC等の演算処理回路、又は、CPU(中央演算処理装置)とメモリを備えたマイクロコンピュータから構成されてよい。
【0026】
制御部350は、スリープ制御部360、再送用送信バッファ部370、及び、グラント処理部380を備える。例えば、スリープ制御部360とグラント処理部380(又は、これら全体)は、FPGAやASIC等の演算処理回路、又は、CPU(中央演算処理装置)を備えたマイクロコンピュータから構成されてよい。再送用送信バッファ部370は、DRAM等のメモリまたはメモリの領域から構成される。
【0027】
再送用送信バッファ部370は、再送要求前に、再送信する上りフレーム(又はデータ)を、一時的に蓄積して格納する。詳細には、再送用送信バッファ部370は、再送要求前にOLT100から送られた送信許可通知400に含まれる送信許可時刻STと送信可能時間L(後述)に対応する上りフレームを蓄積しておく。再送要求時に、再送用送信バッファ部370に一時的に蓄積された上りフレーム(データ)から、送信許可通知1030(再送信許可通知とも呼ばれる)に含まれる送信許可時刻STと送信可能時間Lに対応する部分が選択されて、OLT100に送信される。
【0028】
グラント処理部380は、OLT100からの送信許可通知に含まれる送信許可時刻STと送信可能時間Lに対応して、送信のタイムスロットを設定し帯域を割り当てる。グラント処理部380は、通常時にキューバッファ部320のフレーム(データ)に帯域を割り当て、再送要求時に、再送用送信バッファ部370のフレーム(データ)に帯域を割り当てる。スリープ制御部360は、OLT100から送られたスリープ制御信号(スリープ制御に関する指示信号)を解析し、ONU110を正常状態からスリープ状態に移行させる停止処理と、ONU110をスリープ状態から正常状態に復帰させる起動処理を行う。
【0029】
ここで、ONU110のスリープ状態とは、電源390から電気/光変換部300への電力の供給は停止してOLT100と電気/光変換部300との通信が中断し、且つ、アクセス制御部310は、電気側送受信部340にて受信された上りフレームをキューバッファ部320に蓄積する機能のみを継続し他の機能を停止している状態である。スリープ制御において、スリープ制御部360は、OLT100のスリープ制御部240から指示された正常状態への復帰時刻又はスリープ状態への移行時刻に達しているか監視している。
【0030】
スリープ状態へ移行する移行時刻に達した場合に、スリープ制御部360は、電気/光変換部300を休止するため、電気/光変換部300のスイッチ300aをオフして、電源390から電気/光変換部300への電力の供給を停止する。正常状態へ復帰する復帰時刻に達した場合に、スリープ制御部360は、電気/光変換部300を起動するため、電気/光変換部300のスイッチ300aをオンして、電源390から電気/光変換部300への電力を供給する。
【0031】
図4は、PON10の通常の動作を示すシーケンス図である。図4は、グラント処理部250のDBA動作(動的帯域割当)およびDBA周期と、各DBAの結果に基づくグラント動作およびグラント周期の関係を例示する。
【0032】
OLT100は、例えば、周期125μ秒のグラント周期毎に、グラント指示(送信タイミングの指示)を含む送信許可通知400を各ONU110−1〜110−3に向けて送信する。この送信許可通知400は、送信許可時刻STと送信可能時間Lを含む。なお、代わりに、送信許可通知400は、送信開始時刻Startと終了時刻Endを含んでもよい。
【0033】
各ONUが備えた送信キュー(キューバッファ部320)に溜まっている送信待ちのデータ量の報告を要求する情報(報告要求:Request report)も含まれている。各ONU110−1〜3は、送信開始時刻Start(=ST)と終了時刻End(=ST+L)によって画定される期間(タイムスロット)で送信キューに溜まったデータを送信する。同時に、各ONU110−1〜3は、送信待ちのデータ量を上り通知410に含まれるキュー長(送信待ちのデータ量に対応する)を用いてOLT100に報告する(例えば、特開2010−81278等参照)。
【0034】
図5は、スリープ状態から正常状態への復帰動作のルーチンを例示するフローチャートである。
【0035】
ステップS500において、OLT100は、スリープ状態から正常状態に復帰させるためONU110に対してスリープ解除通知を送信する。ステップS510において、ONU110は、OLT100から送信されたスリープ解除通知を受信する。ステップS520において、スリープ解除通知を受信したONU110は起動を開始する。ステップS530において、ONU110は、すべての機能が回復し起動が完了した後、ステップS540において、OLT100に起動完了通知を送信する。ステップS550において、OLT100は、ONU110から送信された起動完了通知を受信することによって、このONU110のスリープ状態からの復帰を確認する。
【0036】
図6は、正常状態からスリープ状態への移行動作のルーチンを例示するフローチャートである。
【0037】
ステップS600において、OLT100は、スリープ状態に移行させようとするONU110に対してスリープ設定通知(スリープ許可通知)を送信する。ステップS610において、ONU110は、OLT100から送信されたスリープ設定通知を受信する。ステップS620において、スリープ設定通知を受信したONU110は、スリープ状態への移行を開始する。ステップS630において、ONU110は、スリープ状態となり、キューバッファ部320に上がりフレームを蓄積する機能のみを継続させ、他の機能を停止した状態となり、スリープ状態への移行を完了する。ステップS640において、OLT100は、該ONU110との光回線の遮断を確認することによって、該ONU110のスリープ状態への移行を確認する。
【0038】
図7は、ONUがスリープ状態から復帰する場合のPON10の動作の一例を示すシーケンス図である。この場合に、スリープ状態から復帰するONUに誤発光が発生する可能性がある。
【0039】
OLT100は、グラント指示を含む送信許可通知400と同じタイミングで、スリープ状態から復帰させようとするONU110−2(ONU#2)にスリープ解除通知700を送付する。スリープ解除通知を受信したONU110−2は、スリープ状態から起動を開始する。ONU110の起動期間720(例えば5ミリ秒)に、ONU110−2の状態が不安定となり意図しない誤発光が発生した場合、他のONU(ONU110−1又はONU110−3)の上り通知710と誤発光信号とが干渉して上りフレームがOLT100に正確に伝達できないフレームロス(パケットロス)が発生する可能性がある。
【0040】
図8は、ONUがスリープ状態へ移行する場合のPON10の動作の一例を示すシーケンス図である。この場合に、スリープ状態へ移行するONUに誤発光が発生する可能性がある。
【0041】
OLT100は、グラント指示を含む送信許可通知400と同じタイミングで、スリープ状態へ移行させようとするONU110−2(ONU#2)にスリープ設定通知800を送付する。スリープ設定通知を受信したONU110−2は、スリープ状態へ移行を開始する。ONU110のスリープ移行期間820(例えば5ミリ秒)にONU110の状態が不安定となり意図しない誤発光が発生した場合、他のONU(ONU110−1又はONU110−3)の上り通知810と誤発光信号とが干渉して上りフレームのロスが発生する。
【0042】
ONU110にこのように誤発光信号が発生する場合でも、他のONU110からの上り信号にフレームロスを補償する制御について三つの実施形態で説明する。各実施形態において、OLT100は、フレームロスを補償するため、グラント指示を含む送信許可通知を利用して、誤りが検出された区間(箇所)に対応するデータ又はその区間を含むフレーム(パケット)をONU110に再送信させる。
【0043】
[第一実施形態]
図9は、第一実施形態において、OLT100の制御部230が実行する再送制御のルーチンを例示するフローチャートである。
【0044】
ステップS910において、OLT100の制御部230は、各ONU110へグラント指示を含む送信許可通知400を送るとともに、特定のONU110(ここではONU#2)へスリープ解除通知700又はスリープ設定通知800を送る。さらに、制御部230は、特定のONU110(ここではONU#2)以外の他のONU110に、OLT100に送信するフレーム(パケット)を再送用送信バッファ部370に格納しておくよう格納指令を送る。なお、再送用送信バッファ部370がOLT100に送信すべきフレーム(パケット)を常に格納する構成においては、OLT100はこの格納指示は送る必要ない。
【0045】
ステップS920において、制御部230は、ONUからデータを受信した場合に、その誤り検出部260を使用して、ONUからの受信したデータに誤り区間(データの誤りが発生した区間又は期間)があるか判断する。ONU110からの受信したデータに誤り区間がない場合に、ルーチンはステップS950に進む。ONU110からの受信したデータに誤り区間がある場合に、ルーチンは、ステップS930に進む。第一実施形態において、制御部230の誤り検出部260は、受信パワー検出部290を介して通信中のONU110から送られた光信号の光出力を監視する。ステップS920において、誤り検出部260は、平均の光出力が所定の割合以上変動した場合に、該ONU110の誤発光に起因してデータに誤り(エラー)があると判断し、データの誤りが発生した区間又は期間を誤り区間として検出する。ここで、所定の割合は数十%である。
【0046】
ステップS930において、OLT100の制御部230は、そのグラント処理部250を使用して、誤りがあるフレームを送信したONU110のグラント処理部380に対して、再送用送信バッファ部370に蓄積されているデータの一部(少なくとも誤り区間に対応する部分)を再送信するように再送要求(再送要求信号)を送信する。誤りがあるフレームを送信したONU110は、フレーム中の送信元アドレスから判定されてよい。なお、ここでは、誤りが発生したフレーム(パケット)が再送信されるように、再送信はフレーム(パケット)単位で行われる。再送用送信バッファ部370に蓄積されているフレーム(パケット)のうち誤り区間に対応する部分を含むように選択された一つ又は複数のフレーム(パケット)が再送信される。ステップS940において、制御部230は、そのバッファ制御部280を使用して、再送要求を受信したONU110から送信されたデータを再送用受信バッファ部271に格納する。ステップS950において、通常のDBA動作を再開する。その後、ルーチンは終了する。
【0047】
図10(a)−(c)は、誤発光時のONU110とOLT100の光入出力のレベル(大きさ)を例示するタイムチャートである。図10(a)のように、ONU110(例えばONU#1)の光出力レベル900が一定であれば、平均光出力910も一定になる。OLT100がONU110(例えば、ONU#2)をスリープ状態から復帰又はスリープ状態へ移行させた場合に、図10(b)のように、ONU110(例えば、ONU#2)が、ある誤発光期間の間に、誤発光信号930を生じる。そして、図10(c)のように、誤発光信号930は、通信中のONU110(例えばONU#1)の光信号920と干渉して、OLT100の光入力レベル940が上昇する。
【0048】
ステップS920において、誤り検出部260は、受信パワー検出部290を介して、平均光入力950が通常と比べ、所定の割合以上(例えば30%)変動していることを検出し、通信中のONU110(例えばONU#1)のデータに誤り区間があると判断する。また、誤り検出部260は、誤発光期間に対応する誤り区間を特定して、グラント処理部250に通知する。そして、ステップS930において、グラント処理部250は、通信中のONU110(例えばONU#1)に再送要求を行う。これにより、あるONU110がスリープ状態へ移行またはスリープ状態から起動する間に意図しない誤発光が発生しても、他のONU110からの上り信号にフレームロスを補償できる。
【0049】
図11(a)は、再送要求前において、再送用送信バッファ部370に格納されたフレーム(データ)を示す。OLT100があるONU110へスリープの解除/設定通知を送信したときに、他のONU110は、OLT100からの再送要求に備え、OLT100に送信するフレームを再送用送信バッファ部370に格納する。再送要求前にOLT100から送られた送信許可通知400の送信許可時刻STと送信可能時間Lに割り当てられたフレーム(パケット)が、再送用送信バッファ部370に格納されている。例として、ONU#1への送信許可通知400において、送信許可時刻STは1000、送信可能時間Lは500に設定されている。
【0050】
図11(a)のハッチング領域は、2つのフレームに相当する時刻t=1100から時刻t=1200までの100の時間の間に誤りONU#2から誤発光930があり、誤りが発生したことを示す。例えば、誤り区間(図10(c)の誤発光期間に対応)は、時刻t=1120から時刻t=1180まである。OLT100の誤り検出部260は、ONU#2が誤発光によるデータの誤り区間を検出して、グラント処理部250に通知する。この場合、OLT100のバッファ制御部280は、受信バッファ部270に、誤りの生じていないデータ(ハッチング部分以外のフレーム)だけを格納する。
【0051】
図11(b)は、OLT100からの送信許可通知1030(再送信許可通知)に対応して、ONU110からOLT100に再送信されるフレーム(データ)を示す。ONU#2の誤発光が検出された直後の送信許可通知1030の送信時(グラント発行時)に、グラント処理部250は、送信許可時刻STと送信可能時間Lを含む送信許可通知1030とともに、ONU#1に対して再送要求を送信する。送信許可時刻STと送信可能時間Lは、誤り区間に対応するデータを含む一つ又は複数のフレームが再送信されるよう設定される。ここでは、送信許可通知1030において、送信許可時刻STは1100、送信可能時間Lは100となる。
【0052】
再送要求を受信したONU110のグラント処理部380は、送信許可通知1030を再送用送信バッファ部370に格納されたフレーム(パケット)に関連付け、帯域を割り当て再送信を行う。具体的には、図11(b)のように、グラント処理部380は、再送用送信バッファ部370に格納されたフレーム(データ)から、送信許可通知1030に含まれる送信許可時刻STと送信可能時間Lに対応する部分を選択して、OLT100に送信する。
【0053】
OLT100は、再送信されたフレーム(パケット)を受信して再送用受信バッファ部271に格納する。さらに、OLT100のバッファ制御部280は、再送要求前に受信バッファ部270に格納していたフレーム(パケット)と、再送信され再送用受信バッファ部271に格納されたフレーム(パケット)を結合させ、電気側送受信部200へ送る。なお、受信バッファ部270が、誤りの生じたフレームも格納する場合には、バッファ制御部280は、誤りの生じたフレームを削除して、再送要求前に受信バッファ部270に格納していたフレームと、再送用受信バッファ部271に格納されたフレームを結合させてよい。
【0054】
図12は、フレームが再送信される場合のシーケンス図を示す。図12は、例としてスリープ状態からONUが起動する場合を説明する。
【0055】
OLT100は、グラント指示を含む送信許可通知400と同タイミングで、スリープ状態から復帰させようとするONU110(ここでは、ONU#2)にスリープ解除通知700を送付する。正常状態にある他のONU110(ここでは、ONU#1とONU#3)は、グラント指示に従って送信を行い、スリープ解除通知700を受信したONU#2は、スリープ状態から起動を開始する。
【0056】
ONU#2の起動期間720(例えば5ミリ秒)に、ONU#2の状態が不安定となり意図しない誤発光信号930が発生し、例えばONU#1のフレームに干渉する。各ONU110の信号を受信したOLT100は、受信パワー検出部290により各ONUの平均光出力を検出し、誤り検出部260へ送信する。なお、誤り検出部260が誤りを検出しない場合に、ONU#1とONU#3からの信号は、そのままアクセス部220と受信バッファ部270を介して、電気側送受信部200へと送信される。
【0057】
図10(c)のようにOLT100の平均光入力950が変動し、図11(a)の時刻t=1100から時刻t=1200までの範囲でONU#1のフレームに誤りが検出される場合に、ONU#1のフレーム(パケット)をこの範囲を除いて、アクセス部220を介して受信バッファ部270へと格納する。直後のグラント指示では、ONU#1以外の他のONU110(ONU#2とONU#3)には帯域割り当てを行わず、送信許可通知(ST:1100,L:100)と再送要求をONU#1に対して行い、ONU#1がOLT100の要求に応じて再送信する。再送信されたフレーム(パケット)を受信したOLT100は、再送用受信バッファ部271へ格納し、受信バッファ部270に格納していたフレーム(パケット)と再送信されたフレーム(パケット)を結合し、電気側送受信部200へ送る。その後、OLT100は、通常のDBA動作を再開する。
【0058】
−作用効果−
第一実施形態によると、OLT100(即ち上位装置)のグラント処理部250は、第一のONU110(第一の下位装置:例えばONU#1)と第二のONU110(第二の下位装置:例えばONU#2)の各々に対して、OLT100へデータを送信させる時間を設定するための送信許可通知を送信する。OLT100のスリープ制御部240は、第二のONU110(例えばONU#2)がOLT100へデータを送信することを停止するスリープ状態に移行させるスリープ設定通知、及び、スリープ状態から復帰させるスリープ解除通知を、第二のONU110に送信する。OLT100の誤り検出部260は、第一のONU110から受信したデータにおいて誤りが発生した誤り区間を検出する。OLT100のグラント処理部250は、スリープ制御部240がスリープ設定通知又はスリープ解除通知を送信した後に誤り区間が検出された場合に、第一のONU110に、少なくとも誤り区間に対応するデータを再度送信させるための再送信許可通知(送信許可通知1030)を送信する。第一のONU110は、再送信許可通知に応答して、少なくとも誤り区間に対応するデータを再度送信する。
【0059】
これにより、第二のONU110がOLT100の制御によりスリープ状態へ移行またはスリープ状態から起動する場合に、第二のONU110から意図しない誤発光が発生しても、他の第一のONU110が少なくとも誤りのある区間に対応するデータを再送信することによって、フレームロス等のデータのロスを補償できる。従って、スリープ移行/スリープ解除の対象でないONU110からOLT100への正確なデータ送信を確保できる。
【0060】
第一のONU110は、OLT100に向けて既に送信した送信データを一時的に蓄積する再送用送信バッファ部370と、再送用送信バッファ部を制御する制御部350とを備える。第一のONU110の制御部350は、再送信許可通知に対応して、再送用送信バッファ部370に蓄積された送信データのうちから少なくとも誤り区間に対応するデータを選択して、再度送信する。これにより、簡便に誤り区間に対応するデータを再度送信できる。
【0061】
OLT100は、再送信許可通知の送信前に第一のONU110から受信したデータを格納する受信バッファ270(第一の受信バッファ)と、第一のONU110から再度送信されたデータを格納する再送用受信バッファ部271(第二の受信バッファ部)と、を備える。OLT100は、第一の受信バッファ270に格納されたデータと第二の受信バッファ271に格納されたデータを結合して上位網に送る。これにより、誤りを除去したデータを上位網に送ることができる。
【0062】
誤り検出部260は、第一のONU110から受信したデータ信号のレベルを監視することによって、誤り区間を検出する。これにより、既存の受信パワー検出部290を利用して、簡易に誤りを検出できる。
【0063】
OLT100のグラント処理部250は、第一のONU110に、前記誤り区間が検出されたフレームに対応するフレームを再度送信させるための再送信許可通知を送信し、第一のONU110は、再送信許可通知に応答して、この対応するフレームを再度送信してよい。これにより、誤りのあるフレーム(パケット)の単位で、データを再度送信でき簡便である。
【0064】
[第二実施形態]
第二実施形態は、OLT100の誤り検出処理とONU110の再送処理に関して、第一実施形態と異なる。他の構成は、第一実施形態と第二実施形態で共通する。
【0065】
図13は、IEEE802.3規格で使用されているMACフレームの概要を示す。OLT100の誤り検出部260は、フレーム内のFCS(フレームチェックシーケンス)を用いて誤りを検出する。
【0066】
IEEE802.3規格に従うと、宛先アドレスからユーザデータまでの範囲についてチェックサム計算を行った結果が、FCS1200に格納されている。OLT100が受信したフレームは、アクセス制御部220を介して、誤り検出部260に送られる。そして、誤り検出部260は、チェックサムを再計算した結果をFCS1200に記載されているチェックサムと比較し、これらが異なる場合にフレームの誤りを検出する。OLT100があるONU110へスリープの解除/設定通知を送る場合に、これ以外の他のONU110は、OLT100からの再送要求に備え、送信するフレーム(パケット)を再送用送信バッファ部370へ格納しておく。誤りが検出されたフレームを送信したONU110は、再送用送信バッファ部370へ格納されたフレームのうち誤りが検出されたフレームに対応するフレームを、再送要求に応じてOLT100に再送信する。送信許可通知1030(再送信許可通知)において、送信許可時刻STと送信可能時間Lは、誤りが検出されたフレームに対応するフレームが再送信されるように設定される。
【0067】
第二実施形態によると、誤り検出部は、第一のONUから受信したデータ内のフレームチェックシーケンス情報を用いて、誤り区間を検出する。これにより、誤りをフレーム単位で簡単に検出し、誤りが検出されたフレームに対応するフレームを再送信できる。
【0068】
[第三実施形態]
第三実施形態は、OLT100の誤り検出処理とONU110の再送処理に関して、第一実施形態と異なる。他の構成は、第一実施形態と第三実施形態で共通する。
【0069】
ONU110は、8B/10B符号化回路(図示しない)を用いて、送信するデータに伝送符号化方式である8B/10B符号化を行って、OLT100に送信する。なお、IEEE802.3規格の符号化方式において、8B/10B符号化が採用されている。OLT100の誤り検出部260は、8B/10B符号化のランニングディスパリティRDを用いて誤りを検出し、通信中のONU110のフレームに誤りがある場合に、このONU110が誤発光をしているとみなす。そして、OLT100の制御部230は、通信中のONU110に対して、誤り箇所(又は誤り区間)より広くこれを含むような所定の範囲にあるデータを再送するための再送要求を送る。所定の範囲は、誤り箇所(又は誤り区間)の前後数バイトである。なお、データは、フレーム単位で送らなくてもよい。
【0070】
図14に8B/10B符号変換表の一部を示す。8B/10B符号化において、8ビットの元データ1300は、3ビット/5ビットに分けられ、それぞれに1ビットを付加され、図14の完全なテーブルによって4ビット/6ビットの合計10ビットのデータに変換される。8B/10B符号化回路は、変換の際に、符号化直前のデータの1/0の個数に応じて、RD+/−を出力する。
【0071】
例えば、8ビットの元データ1300が00hの場合において、ONU110の8B/10B符号化回路は、符号化直前のデータに"0"の個数が多いなら、図14のCurrent RD−(1310)のビットパターンを選択して出力し、符号化直前のデータが"1"の方が多いなら、Current RD+(1320)のビットパターンを選択して出力する。これにより、OLT100の誤り検出部260は、直前のデータから推定されるランニングディスパリティRD+/−に対して、実際のビットパターンの選択が合致しなければ、OLT100に送信されたデータに誤りがあった事を検出できる。
【0072】
OLT100は、ONU110から送られてきたデータを、アクセス制御部220を介して、誤り検出部260に送る。OLT100の誤り検出部260は、8B/10B変換テーブルを備え、ビット誤りを検出する。しかし、この方法ではすべてのビット誤りを検出する事が保証出来ない為、例として、誤った箇所又は区間の前後5ByteをOLT100の再送要求範囲とする。
【0073】
図15は、再送要求前において、再送用送信バッファ部370に格納されているフレーム(データ)を示す。OLT100があるONU110へスリープの解除/設定通知を送信したときに、他のONU110は、OLT100からの再送要求に備え、OLT100に送信するフレームを再送用送信バッファ部370に格納する。再送要求前にOLT100から送られた送信許可通知400の送信許可時刻STと送信可能時間Lに割り当てられたフレームが、再送用送信バッファ部370に格納されている。例として、図15では、ONU#1への送信許可通知400において、送信許可時刻STは1000、送信可能時間Lは500に設定されている。
【0074】
図15のハッチング領域は、ONU#2から誤発光930があったことを示す。OLT100の誤り検出部260は、ONU#2が誤発光によってデータの誤りが生じた箇所を検出して、グラント処理部250に通知する。上述したように、ランニングディスパリティRDはすべてのフレームの誤りを検出する事が保証されていないため、例として、グラント処理部250は、誤りが生じた箇所又は区間の前後5Byteを、再送要求のデータ範囲1420に設定する。
【0075】
ONU#2の誤発光が検出された直後の送信許可通知1030の送信時(グラント発行時)に、グラント処理部250は、再送要求のデータ範囲1420に相当する送信許可時刻STと送信可能時間Lに設定し、ONU#1に対して再送要求を行う。ここでは、送信許可通知1030(再送信許可通知)において、送信許可時刻STは1100、送信可能時間Lは100となる。
【0076】
第三実施形態によると、誤り検出部は、8B/10B符号化のランニングディスパリティを用いて、前記誤り区間を検出する。これにより、簡便にデータの誤りを検出できる。
【0077】
本発明は各実施形態に限定されずに、その技術的な思想の範囲内において種々の変更がなしうることは明白である。
【符号の説明】
【0078】
10 PON(光通信システム)
100 OLT(上位装置)
110 ONU(下位装置)
120 スプリッタ
130、140 光ファイバ
150 下り信号
160、170 上り信号
180、190 端末
230 OLTの制御部
240 OLTのスリープ制御部
250 OLTのグラント処理部
260 誤り検出部
270 受信バッファ部
271 再送用受信バッファ部
300 電気/光変換部
300a スイッチ
320 キューバッファ部
350 ONUの制御部
370 再送用送信バッファ部
380 ONUのグラント処理部
390 電源
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上位網と通信する上位装置と、前記上位装置と光信号で通信する少なくとも第一と第二の下位装置と、を含む光通信システムであって、
前記上位装置は、
前記第一の下位装置と前記第二の下位装置の各々に対して、前記上位装置へデータを送信させる時間を設定するための送信許可通知を送信する処理部と、
前記第二の下位装置が前記上位装置へデータを送信することを停止するスリープ状態に移行させるスリープ設定通知、及び、スリープ状態から復帰させるスリープ解除通知を、前記第二の下位装置に送信するスリープ制御部と、
前記第一の下位装置から受信したデータにおいて誤りが発生した誤り区間を検出する誤り検出部と、を備え、
前記スリープ制御部がスリープ設定通知又はスリープ解除通知を送信した後に前記誤り区間が検出された場合に、前記上位装置の前記処理部は、前記第一の下位装置に、少なくとも前記誤り区間に対応するデータを再度送信させるための再送信許可通知を送信し、
前記第一の下位装置は、前記再送信許可通知に応答して、少なくとも前記誤り区間に対応するデータを再度送信することを特徴とする光通信システム。
【請求項2】
前記第一の下位装置は、
前記上位装置に向けて既に送信した送信データを一時的に蓄積する再送用送信バッファ部と、
前記再送用送信バッファ部を制御する制御部と、を備え、
前記第一の下位装置の前記制御部は、前記再送信許可通知に対応して、前記再送用送信バッファ部に蓄積された送信データのうちから少なくとも前記誤り区間に対応するデータを選択して、再度送信することを特徴とする請求項1に記載の光通信システム。
【請求項3】
前記上位装置は、
前記再送信許可通知の送信前に前記第一の下位装置から受信したデータを格納する第一の受信バッファと、
前記第一の下位装置から再度送信されたデータを格納する第二の受信バッファと、を備え、
前記上位装置は、前記第一の受信バッファに格納されたデータと前記第二の受信バッファに格納されたデータを結合して前記上位網に送ることを特徴とする請求項2に記載の光通信システム。
【請求項4】
前記誤り検出部は、前記第一の下位装置から受信したデータ信号のレベルを監視することによって、前記誤り区間を検出することを特徴とする請求項1に記載の光通信システム。
【請求項5】
前記誤り検出部は、前記第一の下位装置から受信したデータ内のフレームチェックシーケンス情報を用いて、前記誤り区間を検出することを特徴とする請求項1に記載の光通信システム。
【請求項6】
前記誤り検出部は、8B/10B符号化のランニングディスパリティを用いて、前記誤り区間を検出することを特徴とする請求項1に記載の光通信システム。
【請求項7】
前記上位装置の前記処理部は、前記第一の下位装置に、前記誤り区間が検出されたフレームに対応するフレームを再度送信させるための前記再送信許可通知を送信し、
前記第一の下位装置は、前記再送信許可通知に応答して、前記対応するフレームを再度送信することを特徴とする請求項1に記載の光通信システム。
【請求項8】
光通信システムにおいて、少なくとも第一と第二の下位装置と光信号で通信する光通信装置であって、
前記第一の下位装置と前記第二の下位装置の各々に対して、前記光通信装置へデータを送信させる時間を設定するための送信許可通知を送信する処理部と、
前記第二の下位装置が前記光通信装置へデータを送信することを停止するスリープ状態に移行させるスリープ設定通知、及び、スリープ状態から復帰させるスリープ解除通知を、前記第二の下位装置に送信するスリープ制御部と、
前記第一の下位装置から受信したデータにおいて誤りが発生した誤り区間を検出する誤り検出部と、を備え、
前記スリープ制御部がスリープ設定通知又はスリープ解除通知を送信した後に前記誤り区間が検出された場合に、前記処理部は、前記第一の下位装置に、少なくとも前記誤り区間に対応するデータを再度送信させるための再送信許可通知を送信することを特徴とする光通信装置。
【請求項9】
上位網と通信する上位装置と、前記上位装置と光信号で通信する少なくとも第一と第二の下位装置と、を含む光通信システムにおいて実行される通信方法であって、
前記上位装置が、前記第一の下位装置と前記第二の下位装置の各々に対して、前記上位装置へデータを送信させる時間を設定するための送信許可通知を送信するステップと、
前記上位装置が、前記第二の下位装置が前記上位装置へデータを送信することを停止するスリープ状態に移行させるスリープ設定通知、及び、スリープ状態から復帰させるスリープ解除通知を、前記第二の下位装置に送信するステップと、
前記上位装置が、前記スリープ設定通知又はスリープ解除通知が送信された後に、前記第一の下位装置から受信したデータにおいて誤りが発生した誤り区間を検出するステップと、
前記上位装置が、前記誤り区間を検出した場合に、前記第一の下位装置に、少なくとも前記誤り区間に対応するデータを再度送信させるための再送信許可通知を送信するステップと、
前記第一の下位装置が、前記再送信許可通知に応答して、少なくとも前記誤り区間に対応するデータを再度送信するステップと、
を含むことを特徴とする通信方法。
【請求項1】
上位網と通信する上位装置と、前記上位装置と光信号で通信する少なくとも第一と第二の下位装置と、を含む光通信システムであって、
前記上位装置は、
前記第一の下位装置と前記第二の下位装置の各々に対して、前記上位装置へデータを送信させる時間を設定するための送信許可通知を送信する処理部と、
前記第二の下位装置が前記上位装置へデータを送信することを停止するスリープ状態に移行させるスリープ設定通知、及び、スリープ状態から復帰させるスリープ解除通知を、前記第二の下位装置に送信するスリープ制御部と、
前記第一の下位装置から受信したデータにおいて誤りが発生した誤り区間を検出する誤り検出部と、を備え、
前記スリープ制御部がスリープ設定通知又はスリープ解除通知を送信した後に前記誤り区間が検出された場合に、前記上位装置の前記処理部は、前記第一の下位装置に、少なくとも前記誤り区間に対応するデータを再度送信させるための再送信許可通知を送信し、
前記第一の下位装置は、前記再送信許可通知に応答して、少なくとも前記誤り区間に対応するデータを再度送信することを特徴とする光通信システム。
【請求項2】
前記第一の下位装置は、
前記上位装置に向けて既に送信した送信データを一時的に蓄積する再送用送信バッファ部と、
前記再送用送信バッファ部を制御する制御部と、を備え、
前記第一の下位装置の前記制御部は、前記再送信許可通知に対応して、前記再送用送信バッファ部に蓄積された送信データのうちから少なくとも前記誤り区間に対応するデータを選択して、再度送信することを特徴とする請求項1に記載の光通信システム。
【請求項3】
前記上位装置は、
前記再送信許可通知の送信前に前記第一の下位装置から受信したデータを格納する第一の受信バッファと、
前記第一の下位装置から再度送信されたデータを格納する第二の受信バッファと、を備え、
前記上位装置は、前記第一の受信バッファに格納されたデータと前記第二の受信バッファに格納されたデータを結合して前記上位網に送ることを特徴とする請求項2に記載の光通信システム。
【請求項4】
前記誤り検出部は、前記第一の下位装置から受信したデータ信号のレベルを監視することによって、前記誤り区間を検出することを特徴とする請求項1に記載の光通信システム。
【請求項5】
前記誤り検出部は、前記第一の下位装置から受信したデータ内のフレームチェックシーケンス情報を用いて、前記誤り区間を検出することを特徴とする請求項1に記載の光通信システム。
【請求項6】
前記誤り検出部は、8B/10B符号化のランニングディスパリティを用いて、前記誤り区間を検出することを特徴とする請求項1に記載の光通信システム。
【請求項7】
前記上位装置の前記処理部は、前記第一の下位装置に、前記誤り区間が検出されたフレームに対応するフレームを再度送信させるための前記再送信許可通知を送信し、
前記第一の下位装置は、前記再送信許可通知に応答して、前記対応するフレームを再度送信することを特徴とする請求項1に記載の光通信システム。
【請求項8】
光通信システムにおいて、少なくとも第一と第二の下位装置と光信号で通信する光通信装置であって、
前記第一の下位装置と前記第二の下位装置の各々に対して、前記光通信装置へデータを送信させる時間を設定するための送信許可通知を送信する処理部と、
前記第二の下位装置が前記光通信装置へデータを送信することを停止するスリープ状態に移行させるスリープ設定通知、及び、スリープ状態から復帰させるスリープ解除通知を、前記第二の下位装置に送信するスリープ制御部と、
前記第一の下位装置から受信したデータにおいて誤りが発生した誤り区間を検出する誤り検出部と、を備え、
前記スリープ制御部がスリープ設定通知又はスリープ解除通知を送信した後に前記誤り区間が検出された場合に、前記処理部は、前記第一の下位装置に、少なくとも前記誤り区間に対応するデータを再度送信させるための再送信許可通知を送信することを特徴とする光通信装置。
【請求項9】
上位網と通信する上位装置と、前記上位装置と光信号で通信する少なくとも第一と第二の下位装置と、を含む光通信システムにおいて実行される通信方法であって、
前記上位装置が、前記第一の下位装置と前記第二の下位装置の各々に対して、前記上位装置へデータを送信させる時間を設定するための送信許可通知を送信するステップと、
前記上位装置が、前記第二の下位装置が前記上位装置へデータを送信することを停止するスリープ状態に移行させるスリープ設定通知、及び、スリープ状態から復帰させるスリープ解除通知を、前記第二の下位装置に送信するステップと、
前記上位装置が、前記スリープ設定通知又はスリープ解除通知が送信された後に、前記第一の下位装置から受信したデータにおいて誤りが発生した誤り区間を検出するステップと、
前記上位装置が、前記誤り区間を検出した場合に、前記第一の下位装置に、少なくとも前記誤り区間に対応するデータを再度送信させるための再送信許可通知を送信するステップと、
前記第一の下位装置が、前記再送信許可通知に応答して、少なくとも前記誤り区間に対応するデータを再度送信するステップと、
を含むことを特徴とする通信方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2013−17129(P2013−17129A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−150187(P2011−150187)
【出願日】平成23年7月6日(2011.7.6)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年7月6日(2011.7.6)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】
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