説明

光通信システム及び光通信方法

【課題】非同期系のシステムにおいて、上り/下りの波長の組み合わせを自由に変更しながら、上り信号の衝突を回避する1対Nの光通信システムを提供することを目的とする。
【解決手段】光通信システム301は、光送受信機(21、22)を有するOLT200と、光送受信機(21、22)にODN50を介して接続され、OLT200との間で波長分割多重且つ時分割多重で光信号を送受する複数の加入者側装置ONUと、を備える。OLT200は、光送受信機22の信号を受信するONUへ光送信機21への送信許可を通知する際に、光送受信機21が光送受信機22に送信許可の送信依頼を行い、光送受信機22が光送受信機21の送信依頼時刻t1に送信依頼を受信してから送信許可を送出するまでの時間を加算した時刻を記載した送信許可を送信する。ONUは、OLT200からの送信許可を受信したときに自装置の時計を記載された時刻に合わせる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対向ごとに波長又は方路又はその組合せの経路が異なる光通信システム及び光通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、インターネットやイントラネットの急成長を背景に,大容量通信の需要が高まっており,高速光通信システムの普及が急ピッチで進んでいる中、経済的な高速光アクセスネットワークを実現するためのシステムとして、PON(Passive Optical Network)が知られている。また、PONに用いる受動素子(光スプリッタ等)の代わりに、光スイッチを備える光アクセスネットワークも多くの提案がなされている(例えば、非特許文献3を参照。)。
【0003】
高速光アクセスネットワークで従来用いられている安価なSiGe−BiCMOSプロセスを利用して強度変調−直接検波で時分割多重(TDM:Time Division Multiplexing)技術を上述の光アクセスネットワークに適用することを想定すると、電子デバイスの制約により10Gbit/sが上限と考えられている。
【0004】
そこで、波長分割多重(WDM:Wavelength Division Multiplexing)や芯線多重を適用することで更なる高速化/広帯域化を実現する提案もなされている。しかし、ユーザ毎に異なる波長を用いるWDMを適用すると、局側装置であるOLT(Optical Line Terminal)には加入者側装置であるONU(Optical Network Unit)の数に応じた光送受信機が必要となる。これは既存のONUやOLTの更改を要し、コスト上昇という課題が発生する。また、芯線多重も、方路である芯線分だけ光送光受信機と方路が必要になるため、コスト上昇という課題が発生する。
【0005】
この課題に対して、ONU毎に異なる波長を用いる代わりに、ONUを複数のグループにグルーピングし、グループ間でWDMとグループ内でTDMを適用するWDM/TDM−PON(例えば、非特許文献1を参照。)がある。これは、波長を複数のONUで共用することで、総帯域拡張に伴うコスト上昇を抑えている。
【0006】
総帯域拡張のために新規の芯線と送受信機を備える代わりに、冗長構成のための予備芯線を現用芯線として利用する方式(例えば、非特許文献2を参照。)がある。この方式は、冗長芯線を活用することで、総帯域拡張に伴う芯線と送受信器追加によるコスト上昇という課題を解決している。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】「総帯域拡張型WDM/TDM−PONと動的波長帯域割当の一提案」、吉野學、原一貴、中村浩崇、木村俊二、吉本直人、雲崎清美、2009年電子情報通信学会総合大会講演論文集 通信(2)、p.426、B−10−107
【非特許文献2】「ATM−PONのプロテクション方式及び動的帯域割当との連携動作の検討」、吉田俊和、向井宏明、岩崎充佳、浅芝慶弘、一番ケ瀬広、横谷哲也、2001年5月通信方式研究会電子情報通信学会技術研究報告vol.101(53):CS2001−21,pp.25−30
【非特許文献3】「光パケットスイッチを適用したアクセスネットワークにおける効率的なディスカバリ方法の提案」、上田裕巳、坪井利憲、河西宏之、2009年4月通信方式研究会電子情報通信学会技術研究報告Vol.109(4):CS2009−12,pp.69−74
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
WDMを使って、総帯域を拡張する非特許文献1を例にとって課題を説明する。本課題は非特許化文献2に示される方路を多重する場合も波長を方路に読み替えれば同様である。非特許文献1のシステムは、図2に示すように、ONUをグループ化し、各グループに複数波長から選択した一波長を割当て、グループ間でWDMとグループ内でTDMを適用する方式である。図2のシステムは、波長λ1’の下り信号を送信する送信器Txと波長λ1の上り信号を受信する受信器Rxで構成される送受信器TxRx1、波長λ2’の下り信号を送信する送信器Txと波長λ2の上り信号を受信する受信器Rxで構成される送受信器TxRx2を含むOLT、及び波長λ1’、λ2’の一方を受信する受信器Rx、波長λ1、λ2の一方を送信する送信器Txを含むONUで構成される。図の構成は、全体の帯域の有効利用やONU間の公平性の観点から、波長間で通信量を平準化することが望ましい。しかし、各ONUの上り方向の通信量と下り方向の通信量は通常比例関係に無いため、上り方向で通信量を波長間で平準化できるONUのグルーピングと下り方向で通信量を平準化できるONUのグルーピングは一致しない。そのため、各送受信器TxRxから送信された下り信号(λ1’、λ2’)と、OLTによって送信許可された各ONUからの上り信号(λ1、λ2)は、上り/下りで独立して波長を設定し、上り方向と下り方向のそれぞれで通信量を平準化するための最適な組み合わせとするのが望ましい。ここで、単一の送受信器TxRxを含むOLTとONU間で送受信を行う場合に適用できる従来の上り信号送信許可方法と、その前段で行なわれるディスカバリ処理について(図2では、例えば送受信器TxRx1とONU[A、B,C])IEEE 802.3に示される手法を用いて説明する。
【0009】
ディスカバリ操作は、OLTに新たに接続されたONUのOLT−ONU間の往復時間RTT(Round Trip Time)の測定と未登録のONUにフレーム取捨選択に必要な識別番号LLID(Logical Link ID)の付与を行う処理である。OLTは新たにONUがいつPONに接続されてもよいように、定期的にONUに対して、ディスカバリゲートメッセージ(Discovery_GATE Message)を送信する。ディスカバリゲートメッセージは、送信可能な時間を通知するゲートメッセージ(GATE Message)の一種であり、当該メッセージの送信時刻t1、送信を許可する送信開始時刻t2とディスカバリタイムウインドウ(Discovery Time Window)の長さSが示されている。ディスカバリゲートメッセージを受け取った未登録ONUは、このメッセージのタイムスタンプで示される当該メッセージの送信時刻t1に自分の時計を合わせる。ONUは上り時の衝突を避けるためディスカバリゲートメッセージで指示された送信開始時刻t2にランダム時間d(0≦d≦D、D:ランダム時間の最大値)加えた時刻t2*(=t2+d)に、タイムスタンプをt2*としたレジスタリクエストメッセージ(Register_REQ Message)で応答する。レジスタリクエストメッセージはONUのMACアドレスが示されている。OLTは、受け取ったレジスタリクエストメッセージの到着時刻t3を測定するとともに、タイムスタンプからt2*を取得し、ONUまでの往復時間Tx(=t3−t2*)を求める。OLTは、LLIDを決定し、そのLLIDをレジスタメッセージ(Register Message)によりONUに通知する。
【0010】
またOLTは、次の上りタイミングをこのLLIDで指定したゲートメッセージ(GATE Message)により当該ONUに通知する。ゲートメッセージには、当該ゲートメッセージの送信時刻t1と、送信を許可する送信開始時刻t2と送信許可の継続時間Kが示されている。ゲートメッセージを受け取った当該ONUは、このメッセージのタイムスタンプで示される当該メッセージの送信時刻t1に自分の時計を合わせる。ONUはゲートメッセージで指示された送信開始時刻t2から継続時間Kが経過するまでの間に、レジスタAckメッセージ(Register ACK Message)で応答する。以上で、ディスカバリ処理は終了となる。
【0011】
上り信号許可は、ONUからのレポートメッセージ(Report Message)によりOLTが把握したONUの上り蓄積データ量に基づいて、ゲートメッセージで当該ONUに通知する。ゲートメッセージには、当該ゲートメッセージの送信時刻t1と、送信を許可する送信開始時刻t2と送信許可の継続時間Kが示されている。ゲートメッセージを受け取った当該ONUは、このメッセージのタイムスタンプで示される当該メッセージの送信時刻t1に自分の時計を合わせる。ONUは送信開始時刻t2から継続時間Kが経過するまでの間に上り信号を送信する。
【0012】
このようにすることで、各ONUから送信された上り信号は、ONUから送信された上り信号同士が時間軸上で衝突することなくOLTで受信される。上記で述べた送信許可通知方法を図2に示されるようなWDM/TDM−PON方式にも適用させるためには、OLT同士の時刻が一致している必要がある。しかし、IEEE 802.3に規定されるシステムは、通常、非同期系であり、OLT間の時刻が一致していない。
【0013】
そのため、異なる波長の下り信号を受信するONUが同一の波長として受信される波長の上り信号を送出する場合、同一の波長として受信される上り信号同士が時間軸上で衝突する恐れがある。例えば、図2の構成において、波長λ1の上り信号に注目すると、ONU[A]は、送受信器TxRx1から下り信号λ1’で上り信号λ1の送信許可を受け、ONU[D]、ONU[E]は、送受信器TxRx2から下り信号λ2’で上り信号λ1の送信許可を受けるので、OLT1とOLT2が非同期の場合、時刻が一致していない恐れがあり、波長λ1として受信する波長の上り信号同士が時間軸長で衝突が生じ、受信できない可能性がある。
【0014】
OLT間を同期系にすることで、上記課題を解決することも可能であるが、同期系にするためには、クロックの精度、時刻の配信の方法、時刻の配信のシステム、マスタースレーブの設定等の様々な変更が必要となり、装置ならびにシステム運用上のコストが増大する恐れがある。
【0015】
このように、非同期系かつ、送受する波長、方路、又は波長と方路の組合せが任意である場合にONUに対して、上り信号間の衝突を抑止した送信許可を通知する手段が確立されていない。そこで、本発明は、非同期系のシステムにおいて、上り/下りの波長、方路または、波長と方路の組み合わせを自由に変更しながら、上り信号の衝突を回避する1対Nの光通信システム及び光通信方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成するために、本発明に係る光通信システム及び光通信方法は、送信許可で通知し許可を受ける側で同期する時刻の値を、当該送信許可を通知する波長、方路又は波長と方路の組合せを送信する送受信機が送信許可を送信する送信時刻ではなく、送信許可を受けた装置からの信号を受信する一の送受信機の時刻に、送信許可を送信する他の送受信機が一の送受信器から送信許可の送信依頼を受けてから送信許可を通知するまでの時間を加えた時刻とすることとした。
【0017】
具体的には、本発明に係る光通信システムは、波長、方路、又は波長と方路の組合せの異なる光送受信機を少なくとも2つ有するOLTと、前記OLTに光伝送路を介して接続され、前記OLTとの間で波長分割多重且つ時分割多重、芯線多重且つ時分割多重、又は波長分割多重、芯線多重且つ時分割多重で光信号を送受する複数のONUと、を備えており、前記OLTは、一の前記光送受信機で受信する信号の送信許可を他の前記光送受信機からの信号で前記ONUへ通知する際に、一の前記光送受信機が他の前記光送受信機に前記送信許可の送信依頼を行い、他の前記光送受信機が一の前記光送受信機の送信依頼時刻に送信依頼を受信してから送信許可を送出するまでの時間を加算した時刻を前記送信許可の通知する時刻としており、前記ONUは、前記OLTからの前記送信許可を受信したときに自装置の時刻を前記送信許可の通知する時刻に合わせることを特徴とする。
【0018】
本発明に係る光通信方法は、波長、方路、又は波長と方路の組合せの異なる光送受信機を少なくとも2つ有するOLTと、前記OLTに光伝送路を介して接続され、前記OLTとの間で波長分割多重且つ時分割多重、芯線多重且つ時分割多重、又は波長分割多重、芯線多重且つ時分割多重で光信号を送受する複数のONUと、の間の光通信方法において、前記OLTから、一の前記光送受信機で受信する信号の送信許可を他の前記光送受信機からの信号で前記ONUへ通知する際に、一の前記光送受信機が他の前記光送受信機に前記送信許可の送信依頼を行い、他の前記光送受信機が一の前記光送受信機の送信依頼時刻に送信依頼を受信してから送信許可を送出するまでの時間を加算した時刻を前記送信許可の通知する時刻とし、前記OLTからの前記送信許可を受信したときに該ONUの時刻を前記送信許可の通知する時刻に合わせる
ことを特徴とする。
【0019】
ゲートメッセージに記載するタイムスタンプをt1+I1とすることで、ONUは他の送受信機からゲートメッセージを受け取っても一の送受信機の時刻を知ることができる。従って、本発明は、非同期系のシステムにおいて、上り/下りの波長、または、方路の組み合わせを自由に変更しながら、上り信号の衝突を回避する1対Nの光通信システム及び光通信方法を提供することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明は、非同期系のシステムにおいて、上り/下りの波長、または、方路の組み合わせを自由に変更しながら、上り信号の衝突を回避する1対Nの光通信システム及び光通信方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係る光通信システムを説明するブロック図である。
【図2】従来の光通信システムを説明するブロック図である。
【図3】本発明に係る光通信方法を説明する時間ダイヤグラムである。
【図4】本発明に係る光通信システムを説明するブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
添付の図面を参照して本発明の実施形態を説明する。以下に説明する実施形態は本発明の実施例であり、本発明は、以下の実施形態に制限されるものではない。なお、本明細書及び図面において符号が同じ構成要素は、相互に同一のものを示すものとする。
【0023】
(実施形態1)
図1は、実施形態1の光通信システム301を説明する概念図である。光通信システム301は、異なる波長をそれぞれ送受信する光送受信機(21、22)を有するOLT200と、光送受信機(21、22)に光伝送路である光分配網(ODN:Optical Distribution Network)ODN50を介して接続され、OLT200との間で複数の波長(例えば、OLTからONUへの下り方向がλ1、λ2、ONUからOLTへの上り方向がλ1’、λ2’)を用いて波長分割多重且つ時分割多重で光信号を送受する光送受信機を有する複数のONU(100A、100B、100C)と、を備える。光通信システム301は、例えば、PONであり、波長分割多重且つ時分割多重で光信号を伝達する。
【0024】
ONU(100A、100B、100C)は各加入者宅に設置されており、送信する上り信号で使用するために各ONUの光送受信機は割当てられた波長の信号光を出力する。割当てられた波長は、送信する波長として選択可能な複数の波長のうちの1波長である。
【0025】
ODN50は、各ONUの光送受信機からの上り信号光を合流してOLT200の光合分波器25を介してOLT200の光送受信機(21、22)へ結合し、OLT200の光合分波器25を介して、OLT200の光送受信機(21、22)からの信号光を分岐して各ONUの光送受信機へ結合する。ここで、各ONUの光送受信機から出力された上り信号光が同一波長として受信される波長が同時にOLT200に到着すると受信できなくなるため、OLT200は、各ONUの光送受信機の当該波長における伝搬時間の差を考慮して同一波長として受信される信号光同士がOLT200の光送受信機(21、22)で重ならないように送信許可する。送信許可は、各ONU側の光送受信機で受信中の波長にてOLT200から通知される。受信中の波長は、ONUで受信する波長として選択可能な複数の波長のうちの1波長である。
【0026】
OLT200は、ODN50からの光を波長ごとに分波し、光送受信機(21,22)からの光を合波してODN50に受け渡す光合分波器25と、光合分波器25から分波された信号光をそれぞれ受光して電気信号として出力する複数の光送受信機(21、22)と、を有する。光合分波器25は、例えば、波長フィルタ等を適用することができる。光送受信機(21、22)の受光部は、例えば、フォトダイオードを使用することができる。
【0027】
ここで、話を簡略化するために適用する波長を上り下りそれぞれ2波長とすれば、光合分波器25は、ODN50を介したONUからの上り信号光を波長λ1’と波長λ2’に分波し、それぞれ光送受信機(21、22)に結合する。光送受信機(21、22)は、それぞれ受光した信号光を電気信号として出力する。このため、OLT200は、波長(λ1、λ2)ごとに信号光を受信することができる。光送受信機(21、22)は、それぞれ波長λ1と波長λ2の下り信号光を出力し、光合分波器25で合波しODN50を介してONUに結合する。
【0028】
次に光通信システム301の行う上り送信許可の例を示す。本実施例では、例えば、光送受信機22からの下り信号を受信し、光送受信機21へ上り信号を送信するONUへ光送受信機22の下り信号で光送受信機21に対する送信許可をOLT200が通知する際に、光送受信機21が光送受信機22に送信許可の送信依頼を行い、光送受信機22が光送受信機21の送信依頼時刻t1に送信依頼を受信してから送信許可を送出するまでの時間を加算した時刻を送信許可に記載する時刻としている。
【0029】
ONU(100A、100B、100C)は、OLT200からの送信許可を受信したときに自装置の時刻を送信許可に記載の時刻に合わせる。光通信システム301は、例えば、PONであり、波長分割多重且つ時分割多重で光信号を伝達する。
【0030】
次に、光通信システム301の行う上り送信許可とその前段のディスカバリ操作の例を
示す。ここで、光送受信機22の下り信号を受信しかつ光送受信機21に上り信号を送信するONUに着目する。ディスカバリ操作は、ODN50に新たに接続されたONUのOLT−ONU間の往復時間RTT(Round Trip Time)の測定と未登録のONUにフレーム取捨選択に必要な識別番号LLID(Logical Link ID)の付与を行う処理である。以下、ディスカバリ処理を図3の時間ダイヤグラムに従って説明する。
【0031】
(1)光送受信機21から光送受信機22へのディスカバリゲートメッセージ送信依頼
所定時に光送受信機21は光送受信機21に送信するONUに対するディスカバリのための送信許可であるディスカバリゲートメッセージ(Discovery_GATE Message)の送出を当該ONUに送信する光送受信機22に依頼する。ここで、所定時とは、未登録のONUが接続したことを周期的に観測するための定期的な周期の時刻であってもよいし、加入者側装置ONU登録等のイベントが生起した時刻であってもよいし、ONU側又はOLT側又はその両方のバッファ内の未送信データが所定の量以上又は以下となった等のデータ量や割当帯域やONU間の割当帯域比が所定の範囲になった時刻でもよい。
【0032】
光送受信機21は、光送受信機22に、現在の自分の時刻t1と送信を許可する送信開始時刻t2とディスカバリタイムウインドウ(Discovery Time Window)の長さSを伝え、ディスカバリゲートメッセージの送信依頼をする。ここで、t1に対するt2の時刻差が一定であったり、Sの値が一定値であったりして、他の値から確定できる値は光送受信機22への受け渡しを省略しても良い。
【0033】
(2)光送受信機22から光送受信機21に送信するONUへのディスカバリゲートメッセージ
送信依頼を受けた光送受信機22は、依頼を受けてからディスカバリゲートメッセージを送信するまでの時間I1を時刻t1に加算して、現在の時刻t1をt1+I1とする。光送受信機22は時刻t1、送信を許可する送信開始時刻t2とディスカバリタイムウインドウの長さSが示されているディスカバリゲートメッセージを送信する。ここで、I1の値は、光送受信機22における他の下り情報伝送と衝突しないような光送受信機22において当該ディスカバリゲートメッセージを送信可能な時間とし、伝搬遅延やランダム時間を考慮し、ONUにおいてt1<t2となる範囲にある。この範囲で送信できない場合は、光送受信機21に送信不能と通知することが望ましい。送信不能通知に応じて光送受信機21は(1)に戻るか終了する。
【0034】
(3)ONUからのレジスタリクエストメッセージ
ディスカバリゲートメッセージを受け取った未登録ONUは、このメッセージのタイムスタンプで示される当該メッセージの送信時刻t1に自分の時計を合わせる。ONUは上り時の衝突を避けるためディスカバリゲートメッセージで指示された送信開始時刻t2にランダム時間d(0≦d≦D、D:ランダム時間の最大値)加えた時刻t2*(=t2+d)に、タイムスタンプをt2*としたレジスタリクエストメッセージ(Register_REQ Message)で応答する。レジスタリクエストメッセージはONUのMACアドレスが示されている。
【0035】
光送受信機21は、受け取ったレジスタリクエストメッセージの到着時刻t3を測定するとともに、タイムスタンプからt2*を取得し、ONUまでの往復時間Tx(=t3−t2*)を求める。
【0036】
(4)光送受信機21から光送受信機22へのレジスタメッセージ依頼
光送受信機21は、レジスタリクエストメッセージ受け取った未登録ONUのLLIDを決定し、そのLLIDを通知するレジスタメッセージ(Register Message)の送信を光送受信機22に依頼する。
【0037】
(5)光送受信機22からONUへのレジスタメッセージ
光送受信機22は、レジスタメッセージによりONUのLLIDを通知する。本通知は下の(7)の到着以前であり、ONUが当該LLIDに応じた動作を準備する時間以前に実施される。
【0038】
(6)光送受信機21から光送受信機22へのゲートメッセージ送信依頼
光送受信機21は、次の上りタイミングを、当該ONUに通知するためにLLIDで指定したゲートメッセージの送信を光送受信機22に依頼する。依頼に際して、現在の自分の時刻t1と送信を許可する送信開始時刻t2と送信許可を継続する時間Kを伝える。なお、依頼する時刻t1、時刻t2は(1)と値が異なる。
【0039】
(7)光送受信機22からONUへのゲートメッセージ
送信依頼を受けた光送受信機22は、依頼を受けてからゲートメッセージを送信するまでの時間I1を時刻t1に加算して、現在の時刻t1をt1+I1とする。光送受信機22は時刻t1、送信を許可する送信開始時刻t2と送信許可を継続する時間Kが示されているゲートメッセージを送信する。ここで、I1の値は、光送受信機22において当該ゲートメッセージを送信可能な時間によって異なり、(2)と値は必ずしも一致しない。I1の値は、光送受信機22における他の下り情報伝送と衝突しないような光送受信機22において当該ディスカバリゲートメッセージを送信可能な時間とし、伝搬遅延やランダム時間を考慮し、ONUにおいてt1<t2となる範囲にある。この範囲では送信できない場合又は(5)のレジスタメッセージがONUに到着してLLIDに応じた動作を準備する時間以前にt2となる場合は、光送受信機21に送信不能と通知する。送信不能通知に応じて光送受信機21は(6)に戻る。(6)に戻るのは、例えばゲートメッセージの未着によりレジスタによる登録が解除される時間までが望ましい。
【0040】
(8)ONUからのレジスタACKメッセージ
ゲートメッセージを受け取った当該ONUは、このメッセージのタイムスタンプで示される当該メッセージの送信時刻t1に自分の時計を合わせる。ONUはゲートメッセージで指示された送信開始時刻t2から継続時間が経過するまでの間に、レジスタAckメッセージ(Register ACK Message)で応答する。
以上で、ディスカバリ処理は終了となる。
【0041】
その後の上り信号許可の通知は、ONUからのレポートメッセージ(Report Message)によりOLT200側が把握したONUの上り蓄積データ量や使用帯域等に基づいて、図の(6)〜(7)と同様にゲートメッセージで当該ONUに通知する。ゲートメッセージには、当該ONUに割り当てる上り波長を受信する送受信機における当該ゲートメッセージの送信時刻t1と、送信を許可する送信開始時刻t2と継続時間Kが示されている。ゲートメッセージを受け取った当該ONUは図の(8)と同様に、このメッセージのタイムスタンプで示される当該メッセージの送信時刻t1に自分の時計を合わせる。ONUは送信開始時刻t2から継続時間が経過するまでの間に上り信号を送信する。
【0042】
以上説明したように、光通信システム301は、非同期システムのままで、任意の下り波長を受信するONUに対して、任意の上り波長で送信する送信許可を通知することが可能であるので、波長間における上下の組合せを自由に変更しながら、同一の波長として受信する波長の上り信号間での衝突を回避する1対Nの光アクセスシステムを提供することができる。
【0043】
なお、光通信システム301を、3つのONU(100A、100B、100C)と2波長で説明したが、ONUの数が増減してもよいし、波長分割多重する波長の数も2以上であってよい。また、ONU毎の送受する波長はそれぞれ1波長としたが、複数波長としてもよい。また、光通信システム301をPONとして説明したが、光スイッチを光スプリッタに代替した光アクセスネットワークでも同様である。これは以降の実施形態でも同様である。
【0044】
(実施形態2)
図4は、実施形態2の光通信システム302を説明する概念図である。光通信システム302は、方路(H1、H2)毎の光送受信機(21、22)を有するOLT200と、光送受信機(21、22)に光伝送路である光分配網ODNを構成する方路(50(H1)、50(H2))を介して接続され、OLT200との間で芯線多重且つ時分割多重で光信号を送受する複数のONU(100A、100B、100C)と、を備える。光通信システム302は、例えば、PONであり、芯線多重且つ時分割多重で光信号を伝達する。光通信システム302は、図1の光通信システム301が各ONUを波長(λ1、λ2)に振り分けて収容することに対して、各ONUを複数の方路(H1、H2)に振り分けて収容する点において相違する。なお、実施形態2では、すでに実施形態1で説明した部分と同一あるいは略同一である部分の説明を省略する。
【0045】
ONU(100A、100B、100C)及びOLT200は、実施形態1で説明したONU(100A、100B、100C)及びOLT200について波長を方路に置き換えたものである。
【0046】
各ONUは(100A、100B、100C)は各加入者宅に設置されており、送信する上り信号で使用するために各ONUの光送受信機は割当てられた方路で信号光を出力する。割当てられた方路は、選択可能な複数の方路(H1、H2)のうちの1方路である。
【0047】
ODN(50(H1)、50(H2))は、各ONUの光送受信機からの信号光を方路(H1、H2)ごとに合流してOLT200の光送受信機(21、22)へ結合し、OLT200の光送受信機(21、22)からの信号光を方路(H1、H2)ごとに分岐して各ONUの光送受信機へ結合する。ここで、各ONUの光送受信機から出力された上り信号光が同一方路で同時にOLT200に到着すると受信できなくなるので、OLT200は、各ONUの光送受信機の当該方路における伝搬時間の差を考慮してOLT200の光送受信機(21、22)で重ならないように送信許可する。送信許可は、各ONU側の光送受信機で受信中の方路にてOLT200から通知される。受信中の方路は、ONUで受信する方路として選択可能な複数の方路のうちの1方路である。
【0048】
OLT200の光送受信機は、ODN(50(H1)、50(H2))からの光を方路ごとに受光する複数の受光器を有する。OLT200の光送受信機は、方路(H1、H2)ごとに信号光を受信する。
【0049】
光通信システム302のディスカバリレンジング処理は、実施形態1の光通信システム301のディスカバリレンジング処理の波長λ1及び波長λ2をそれぞれ方路H1及び方路H2と置き変えたものである。具体的には、本ディスカバリレンジング処理は、新たにONUを収容可能な方路でOLTが所定時にディスカバリゲートメッセージを送出し、ONUがOLTからの前記ディスカバリゲートメッセージに対してレジスタリクエストメッセージで応答し、OLTが前記レジスタリクエストメッセージで応答したONUに対して、レジスタメッセージと次の上り光信号の送信タイミング等の指示を含むゲートメッセージを該ONUへ通知し、該ONUは、前記ゲートメッセージに従い前記光信号を送信する。
【0050】
以上説明したように、光通信システム302は、非同期システムにおいて、任意の下り方路からの信号光を受信するONUに対して、任意の上り方路で送信する送信許可を通知することが可能であるので、方路間における上下の組合せを自由に変更しながら上り信号の衝突を回避する1対Nの光アクセスシステムを提供することができる。
【0051】
なお、光通信システム302を、3つのONU(100A、100B、100C)と2つの方路で説明したが、ONUの数が増減してもよいし、方路の数も2以上であってよい。また、ONU毎の送受する方路はそれぞれ1方路としたが、複数方路としてもよい。また、光通信システム302の方路のそれぞれで波長分割多重を行い、実施形態1の光通信システムの処理と実施形態2の光通信システムの処理とを組み合わせてもよい。
【0052】
(他の実施形態)
なお、以上説明した実施態様は、本発明の一態様を示したものであって、本発明は、前記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の構成を備え、目的及び効果を達成できる範囲内での変形や改良が、本発明の内容に含まれるものであることはいうまでもない。また、本発明を実施する際における具体的な構造及び形状等は、本発明の目的及び効果を達成できる範囲内において、他の構造や形状等としても問題はない。本発明は前記各実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形や改良は、本発明に含まれるものである。
【0053】
例えば、情報伝達媒体は、光通信システム301では波長、光通信システム302では方路であったが、他の分割多重の技術、例えば、光符号、OFDMの一つのビン、偏波、位相であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は、PONに適用される光通信システム関連の技術分野に利用することができる。
【符号の説明】
【0055】
21、22:光送受信機
25:光合分波器
50、50(H1)、50(H2):ODN
55:光スプリッタ
H1、H2:方路
100A、100B、100C:ONU
200:OLT
301、302:光通信システム
GM:送信許可

【特許請求の範囲】
【請求項1】
波長、方路、又は波長と方路の組合せの異なる光送受信機を少なくとも2つ有する局側装置(OLT:Optical Line Terminal)と、
前記OLTに光伝送路を介して接続され、前記OLTとの間で波長分割多重且つ時分割多重、芯線多重且つ時分割多重、又は波長分割多重、芯線多重且つ時分割多重で光信号を送受する複数の加入者側装置(ONU:Optical Network Unit)と、
を備えており、
前記OLTは、
一の前記光送受信機で受信する信号の送信許可を他の前記光送受信機からの信号で前記ONUへ通知する際に、一の前記光送受信機が他の前記光送受信機に前記送信許可の送信依頼を行い、他の前記光送受信機が一の前記光送受信機の送信依頼時刻に送信依頼を受信してから送信許可を送出するまでの時間を加算した時刻を前記送信許可の通知する時刻としており、
前記ONUは、
前記OLTからの前記送信許可を受信したときに自装置の時刻を前記送信許可の通知する時刻に合わせる
ことを特徴とする光通信システム。
【請求項2】
波長、方路、又は波長と方路の組合せの異なる光送受信機を少なくとも2つ有するOLTと、
前記OLTに光伝送路を介して接続され、前記OLTとの間で波長分割多重且つ時分割多重、芯線多重且つ時分割多重、又は波長分割多重、芯線多重且つ時分割多重で光信号を送受する複数のONUと、
の間の光通信方法において、
前記OLTから、一の前記光送受信機で受信する信号の送信許可を他の前記光送受信機からの信号で前記ONUへ通知する際に、一の前記光送受信機が他の前記光送受信機に前記送信許可の送信依頼を行い、他の前記光送受信機が一の前記光送受信機の送信依頼時刻に送信依頼を受信してから送信許可を送出するまでの時間を加算した時刻を前記送信許可の通知する時刻とし、
前記OLTからの前記送信許可を受信したときに該ONUの時刻を前記送信許可の通知する時刻に合わせる
ことを特徴とする光通信方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−223406(P2011−223406A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−91641(P2010−91641)
【出願日】平成22年4月12日(2010.4.12)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】