説明

光配線、及び光伝送モジュール

【課題】電子機器内の配線への応用に際して要求される可動性を満たし、外部の構造体との接触による折れ・擦れ・磨耗の低減を実現する。
【解決手段】本発明の光配線4は、電子機器に搭載される光配線であって、光信号を伝送する光伝送路9を備え、電子機器内の構造体11との接触時に発生する摩擦を、光伝送路9と構造体11との接触時よりも低減させ、かつ光伝送路9の変形に応じて可撓する潤滑層10が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光信号を伝送する光配線、及び光伝送モジュールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、高速で大容量のデータ通信が可能な光通信網が拡大している。今後、この光通信網は民生機器への搭載が予想されている。そして、データ転送の高速大容量化、ノイズ対策、機器内の基板間をデータ伝送する基板間配線として、現在の電気ケーブルと変わりなく使用することができる光配線が求められている。この光配線としては、光ファイバ、プラスチック光ファイバ(POF)が挙げられる。
【0003】
従来、基板間配線として、光ファイバ、またはプラスチック光ファイバといった長距離データ伝送用途に適した加工法で作製可能な光ケーブルを採用することが主であった。また、従来の基板間配線は、外部からの機械衝撃による特性の劣化を防止するために、被覆層により周囲を保護する被覆構造を採用していた。
【0004】
また、フィルム光導波路は、材料・パターンを選ばない加工法で作製されるため、光機能を得ることに適している。それゆえ、光導波路は、主に光回路用途向けであった。光導波路とは、屈折率の大きいコアと、該コアの周囲に接して設けられる屈折率の小さいクラッドとにより形成され、コアに入射した光信号を該コアとクラッドとの境界で全反射を繰り返しながら伝搬するものである。また、フィルム光導波路は、コアおよびクラッドが柔軟な高分子材料からなるため柔軟性を有している。
【0005】
上記のフィルム光導波路として、例えば特許文献1には、クラッド部の主面が、酸化物、窒化物または酸窒化物からなる保護層で被覆されたフィルム光導波路が開示されている。
【0006】
また、高速で大容量のデータ通信が求められている中、従来の電気配線による伝送と、光配線による伝送とを共存させた電気−光伝送一体型モジュールが提案されている。この電気−光伝送一体型モジュールでは、基板間配線の一部として光導波路を採用した、電気/光混載基板が採用されている。
【0007】
上記電気/光混載基板では、電気配線の層を基板として、その上に光配線の層を積層することが困難である。また、光導波路形成の都合上、電気配線の層と光配線の層とを同一平面上に形成することが困難である。それゆえ、一般に、電気/光混載基板は、比較的積層数が多い多層構造となる。
【0008】
このような電気/光混載基板のフレキシブル性を向上させる技術が、例えば特許文献2に開示されている。特許文献2には、電気/光混載基板の屈曲部分でのみ、光配線と電気配線とを分離(離間)させ、これら配線間に空間(空気層)を形成する技術が記載されている。これにより、電気/光混載基板トータルの厚さを低減させている。また、電気/光混載基板において、光配線及び電気配線を平面的にずらし、光配線及び電気配線が重ならないようにする技術が記載されている。このような技術は、電気/光混載基板に限らず、通常の電気配線にて行われてきた技術の応用である。
【特許文献1】特開2005−156882号公報(平成17(2005)年 6月16日公開)
【特許文献2】特開2006−284925号公報(平成18(2006)年10月19日公開)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
近年、携帯電話やパソコン等の電子機器の発展により、基板間配線は、データ伝送距離の短距離化、及び省スペース化が要求されている。これに伴い、電子機器の基板間配線において、曲げや捻り等の可動性が重要視される領域が着目されてきている。従来の基板間配線の曲げ性では、電子機器内の配線への応用に際して要求される可動性を満たすことが困難である。
【0010】
一方、フィルム光導波路は、材料・パターンを選ばない加工法で作製されるため、材料として柔軟材料を用いることが可能である。それゆえ、フィルム光導波路単体は、電子機器内の配線への応用に際して要求される可動性を満たすことができる。
【0011】
しかしながら、実際に、フィルム光導波路を電子機器の基板間配線へ応用した場合、フィルム光導波路がフレキシブルな(柔軟性)光配線であることに起因する以下の課題がある。すなわち、基板間配線としてのフィルム光導波路が電子機器内に搭載されたとき、フィルム光導波路は、フィルム光導波路外部の構造体との間で接触が生じる。そして、この接触により、従来の基板間配線よりも、光学特性の劣化を受けやすくなるという課題がある。また、フィルム光導波路が、外部の構造体との接触により、折れる、擦れる、または磨耗するおそれがある。
【0012】
また、従来の基板間配線と同様に、フィルム光導波路に対し、被覆層により周囲(両面・全面)を保護する被覆構造を採用した場合であっても、以下の課題がある。すなわち、フィルム光導波路がどんなに屈曲性・柔軟性を有していても、上記被覆構造を有するフィルム光導波路は、曲げ弾性率が被覆層の曲げ弾性率に律束する。その結果、基板間配線としてのフィルム光導波路が著しく曲がりにくくなり、電子機器内の配線への応用に際して要求される可動性を満たすことが困難になる。
【0013】
また、特許文献2のように、光配線と電気配線とを分離(離間)させ、これら配線間に空間(空気層)を形成する技術では、通常の電気配線にて行われてきた技術では予想し得ない、以下の光配線独自の課題がある。
【0014】
すなわち、電気/光混載基板において屈曲性を重視する光導波路を形成する場合、PI(ポリイミド)を主材料とする電気配線と異なり、屈曲時の漏れ光を減少させるため、コアとクラッドとの間の屈折率差を大きくする必要がある。また、クラッドの材料選択においては、コアとの屈折率差を大きくするのに加え、屈曲時のせん断に耐えるために、より柔軟な材料が求められている。
【0015】
従来の光通信用の光導波路では、クラッドとコアとの屈折率差が極めて小さく精密な制御が必要であるため、コアに添加物を添加することで、クラッドを実現していた。すなわち、コアとクラッドとは、材料の主成分が同じであった。これに対し、電気/光混載基板(基板間配線)の光配線として光導波路を用いた場合、クラッドの材料は、従来の光通信用の光導波路のようにコアに添加物を添加することでクラッドを形成することなく、選択肢の幅が広がり、これまでの工業製品にて使用されてきた様々な材料が候補として考えられる。
【0016】
ただし、クラッドの材料として結果的に柔軟な樹脂が選択された場合、この樹脂はタック性を有することが多い。それゆえ、特許文献2のように、光配線と電気配線と間に空間(空気層)を形成しても、光配線表面がタック性を有しているため、屈曲時に電気配線と光配線とが接触し、(接着層がないにも関わらず)互いに貼り付いてしまうという問題がある。
【0017】
また、特許文献2のように、光配線と電気配線と間に空間(空気層)を形成した構成では、光導波路のにおけるクラッドが空気に露出している。このため、光導波路屈曲時にコアから漏れた光がクラッド内部に閉じこもり、光導波路端部まで伝播してしまうおそれがある。その結果、光導波路端部のクラッドから漏れ出た漏れ光は、受光素子と結合し、光伝送モジュールの誤動作の原因となる。クラッド内部を伝播する漏れ光は、コアを伝播する信号光に対し光路差があるため、受光される信号波形が崩れるおそれがある。
【0018】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、電子機器内の配線への応用に際して要求される可動性を満たし、外部の構造体との接触による折れ・擦れ・磨耗を低減できる光配線、及び光伝送モジュールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明に係る光配線は、上記の課題を解決するために、電子機器に搭載される光配線であって、光信号を伝送する光伝送路を備え、電子機器内の構造体との接触時に発生する摩擦を、光伝送路と構造体との接触時よりも低減させ、かつ光伝送路の変形に応じて可撓する機能層が設けられていることを特徴としている。
【0020】
上記の構成によれば、電子機器内の光伝送路が可動したときに、機能層が電子機器内の構造体と接触する。これにより、光伝送路が構造体と接触することが防止される。また、この機能層は、構造体との接触時に発生する摩擦を、光伝送路と構造体との接触時よりも低減させる。それゆえ、光伝送路は、電子機器内で構造体を滑るように可動する。これにより、光配線は、構造体との接触による折れ・擦れ・磨耗が低減され、光学特性の劣化が生じにくくなる。機能層は、光伝送路の変形に応じて可撓するので、光伝送路の屈曲性・捻回性を維持できる。
【0021】
以上のように、上記の構成によれば、電子機器内の配線への応用に際して要求される可動性を満たし、外部の構造体との接触による折れ・擦れ・磨耗を低減できる光配線を実現することができる。
【0022】
本発明に係る光配線では、上記機能層は、光伝送路における上記構造体との対向面を含む面に設けられていることが好ましい。
【0023】
これにより、確実に光伝送路が構造体と接触することが防止される。
【0024】
本発明に係る光配線では、上記光伝送路における機能層と反対側の部分、及び上記機能層における上記構造体との対向部分の少なくとも一方が、凹部と凸部とが交互に形成された凹凸構造になっていることが好ましい。
【0025】
これにより、機能層は、光導波路の可動性(変形)に応じた可撓性が向上する。その結果、電子機器内の配線への応用に際して要求される可動性を満たす光配線を実現することができる。
【0026】
本発明に係る光配線では、上記凹凸構造における凹部及び凸部が、光信号を伝送する光伝送方向と平行になるように形成されていることが好ましい。
【0027】
これにより、光伝送路の捻回に応じた可撓性が向上する。
【0028】
本発明に係る光配線では、上記凹凸構造における凹部及び凸部が、光信号を伝送する光伝送方向と垂直になるように形成されていることが好ましい。
【0029】
これにより、光伝送路の屈曲に応じた可撓性が向上する。
【0030】
本発明に係る光配線では、上記凹凸構造における凹部及び凸部が、光信号を伝送する光伝送方向に対し傾斜するように形成されていることが好ましい。
【0031】
これにより、光伝送路の捻回に応じた可撓性が向上する。
【0032】
本発明に係る光配線では、上記凹凸構造における凹部が、光信号を伝送する光伝送方向に対し、平行かつ垂直になるになるように形成されており、凹部と凸部とで格子形状を形成していることが好ましい。
【0033】
これにより、光伝送路の捻回及び屈曲に応じた可撓性が向上する。
【0034】
本発明に係る光配線では、上記機能層に、格子状のスリットが形成されていてもよい。
【0035】
本発明に係る光配線では、上記光伝送路が、透光性を有する材料から構成されるコア部と、該コア部の屈折率と異なる屈折率を有する材料から構成されるクラッド部とを備えた光導波路であることが好ましい。
【0036】
これにより、電子機器内の配線への応用に際して要求される可動性を満たす光伝送路を実現することができる。
【0037】
本発明に係る光配線では、機能層における上記構造体との対向部分が、凹部と凸部とからなる凹凸構造になっており、上記凸部が、光伝送方向に延びる上記コア部と重なるように形成されていることが好ましい。なお、「重なる」とは、構造体側から投影した正射影が一致することを指すものとする。
【0038】
上記の構成によれば、上記凸部が、光伝送方向に延びる上記コア部と重なるように形成されているので、上記凸部が光伝送方向に延びる上記コア部と重ならない構成と比較して、光導波路が捻回したとき、クラッド部にかかる応力がコア部に集中しにくくなるという効果を奏する。さらに、上記の構成によれば、コア部からの漏れ光が、上記凸部で複数回反射し、光伝送路外部へ抜けやすくなる。この結果、信号伝送のS/N比が向上するという効果がある。
【0039】
本発明に係る光配線では、上記クラッド部は、上記コア部の周囲を覆うように形成されているとともに、光導波路における機能層と反対側の部分が、クラッド部を構成する材料のみで構成される凹部とコア部を構成する材料を含む凸部とからなる凹凸構造になっていることが好ましい。
【0040】
これにより、光導波路自体の可動性が向上する。その結果、電子機器内の配線への応用に際して要求される可動性を満たす光配線を実現することができる。
【0041】
本発明に係る光配線では、上記機能層における光導波路側の部分が、凹部と凸部とが交互に形成された凹凸構造になっており、上記コア部は、上記凹部に収まるように形成されていることが好ましい。
【0042】
上記の構成によれば、光配線は、コア部に対し機能層側に形成されたクラッド部が省かれた構成になる。それゆえ、クラッド部がコア部の周囲を覆うように形成された光導波路を備えた光配線と比較して、厚さを薄くすることが可能になる。
【0043】
本発明に係る光配線では、上記コア部と上記機能層とが接しており、該コア部における機能層との接面が、上記クラッド部における機能層との接面と同一平面になっていることが好ましい。
【0044】
上記の構成によれば、光配線は、コア部に対し機能層側に形成されたクラッド部が省かれた構成になる。それゆえ、クラッド部がコア部の周囲を覆うように形成された光導波路を備えた光配線と比較して、厚さを薄くすることが可能になる。
【0045】
本発明に係る光配線では、上記コア部及び上記クラッド部における機能層と反対側の面が、同一平面になっていることが好ましい。
【0046】
上記の構成によれば、光配線は、コア部に対し機能層と反対側に形成されたクラッド部が省かれた構成になる。それゆえ、クラッド部がコア部の周囲を覆うように形成された光導波路を備えた光配線と比較して、厚さを薄くすることが可能になる。
【0047】
本発明に係る光配線では、上記光伝送路が、透光性を有する材料から構成されるコア部のみで構成されていることが好ましい。
【0048】
上記の構成によれば、コア部の周囲を覆うクラッド部が省かれた構成になっているので、光配線の厚さをさらに薄くすることが可能になる。
【0049】
本発明に係る光配線では、上記機能層が、引張強度が50MPa以上であり、かつ、弾性率が6500MPa以下または引張強度の80倍以下の有機材料から構成されており、その厚さが700μm以下であることが好ましい。
【0050】
上記機能層が有機材料から構成されている場合、引張強度が50MPa以下であり、かつ、弾性率が6500MPa以下または引張強度の80倍以下であり、機能層の厚さが700μm以下であれば、機能層は、光伝送路の屈曲に応じた曲げ特性を実現することができる。
【0051】
本発明に係る光配線では、上記機能層が、引張強度が100MPa以上であり、かつ、ヤング率が200GPa以下の金属材料から構成されており、その厚さが70μm以下であることが好ましい。
【0052】
上記機能層が金属材料から構成されている場合、引張強度が100MPa以下であり、かつ、ヤング率が200GPa以下であり、機能層の厚さが70μm以下であれば、機能層は、光伝送路の屈曲に応じた曲げ特性を実現することができる。
【0053】
本発明に係る光配線では、上記機能層は、光伝送路表面に存在する構成材料の未反応基をキャップするプライマ材料から構成されていることが好ましい。
【0054】
これにより、光伝送路表面のタック性が低下し、電子機器内の構造体との接触時に発生する摩擦を低減させることができる。
【0055】
本発明に係る光配線では、上記機能層が、コーティング材料と揮発溶剤との混合物の固化物から構成されたことが好ましい。
【0056】
コーティング材料と揮発溶剤との混合物の固化に際し、混合物中の揮発性溶剤が揮発し、複数のコーティング材料の凝集物が光導波路表面に形成される。それゆえ、光導波路表面には、複数のコーティング材料の凝集物が凸部となり、凹凸構造が形成される。したがって、機能層と構造体との接触面積を低減させることが可能になる。このため、機能層と構造体との摩擦をより低減させることができる。
【0057】
本発明に係る光配線では、上記機能層は、微粒子と、該微粒子を固定する固定樹脂の固化物からなる固定層とを備え、上記微粒子が上記固定層に対して突出していることが好ましい。
【0058】
上記の構成によれば、上記固定層に対して突出している凸部としての微粒子が球面を有しているので、構造体との接触面積を低減させることが可能になる。このため、機能層と構造体との摩擦をより低減させることができ、構造体に対する滑り性を向上させることができる。
【0059】
本発明に係る光伝送モジュールは、上記の課題を解決するために、上述の光配線を備えた光伝送モジュールであって、電気信号を光信号に変換する第1の光素子が搭載された第1の基板と、光信号を電気信号に変換する第2の光素子が搭載された第2の基板とを備え、上記光配線は、上記第1及び第2の光素子と光学的に結合して、第1及び第2の基板間で光信号を伝送するようになっていることを特徴としている。
【0060】
上記の構成によれば、電子機器内の配線への応用に際して要求される可動性を満たし、外部の構造体との接触による折れ・擦れ・磨耗を低減できる光伝送モジュールを実現することができる。
【発明の効果】
【0061】
本発明に係る光配線は、以上のように、光信号を伝送する光伝送路を備え、電子機器内の構造体との接触時に発生する摩擦を、光伝送路と構造体との接触時よりも低減させ、かつ光伝送路の変形に応じて可撓する機能層が設けられている構成である。
【0062】
本発明に係る光伝送モジュールは、以上のように、上記の光配線を備えた光伝送モジュールであって、電気信号を光信号に変換する第1の光素子が搭載された第1の基板と、光信号を電気信号に変換する第2の光素子が搭載された第2の基板とを備え、上記光配線は、上記第1及び第2の光素子と光学的に結合して、第1及び第2の基板間で光信号を伝送するようになっている構成である。
【0063】
それゆえ、電子機器内の配線への応用に際して要求される可動性を満たし、外部の構造体との接触による折れ・擦れ・磨耗を低減できるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0064】
本発明の一実施形態について図面に基づいて説明すると以下の通りである。
【0065】
(光伝送モジュールの構成)
図2は、本実施形態に係る光伝送モジュール1の概略構成を示している。同図に示すように、光伝送モジュール1は、光送信処理部2、光受信処理部3、および光配線4を備えている。
【0066】
光送信処理部2は、発光駆動部5および発光部6を備えた構成となっている。発光駆動部5は、外部から入力された電気信号に基づいて発光部6の発光を駆動する。この発光駆動部5は、例えば発光駆動用のIC(Integrated Circuit)によって構成される。なお、図示はしていないが、発光駆動部5には、外部からの電気信号を伝送する電気配線との電気接続部が設けられている。
【0067】
発光部6は、発光駆動部5による駆動制御に基づいて発光する。この発光部6は、例えばVCSEL(Vertical Cavity-Surface Emitting Laser)などの発光素子によって構成される。発光部6から発せられた光は、光信号として光配線4の光入射側端部に照射される。
【0068】
光受信処理部3は、増幅部7および受光部8を備えた構成となっている。受光部8は、光配線4の光出射側端部から出射された光信号としての光を受光し、光電変換によって電気信号を出力する。この受光部8は、例えばPD(Photo-Diode)などの受光素子によって構成される。
【0069】
増幅部7は、受光部8から出力された電気信号を増幅して外部に出力する。この増幅部7は、例えば増幅用のICによって構成される。なお、図示はしていないが、増幅部7には、外部へ電気信号を伝送する電気配線との電気接続部が設けられている。
【0070】
光配線4は、発光部6から出射された光を受光部8まで伝送する媒体である。この光配線4の構成の詳細については後述する。
【0071】
図3は、光配線4における光伝送の状態を模式的に示している。同図に示すように、光配線4は可撓性を有する柱状形状の部材によって構成される。また、光配線4の光入射側端部には光入射面4Aが設けられているとともに、光出射側端部には光出射面4Bが設けられている。
【0072】
発光部6から出射された光は、光配線4の光入射側端部に対して、光配線4の光伝送方向に対して垂直となる方向から入射される。入射された光は、光入射面4Aにおいて反射されることによって光配線4内を進行する。光配線4内を進行して光出射側端部に到達した光は、光出射面4Bにおいて反射されることによって、光配線4の光伝送方向に対して垂直となる方向へ出射される。出射された光は、受光部8に照射され、受光部8において光電変換が行われる。
【0073】
このような構成によれば、光配線4に対して、光伝送方向に対して横方向に光源としての発光部6を配置する構成とすることが可能となる。よって、例えば基板面に平行に光配線4を配置することが必要とされる場合に、光配線4と基板面との間に、該基板面の法線方向に光を出射するように発光部6を設置すればよいことになる。このような構成は、例えば発光部6を基板面に平行に光を出射するように設置する構成よりも、実装が容易であり、また、構成としてもよりコンパクトにすることができる。これは、発光部6の一般的な構成が、光を出射する方向のサイズよりも、光を出射する方向と垂直な方向のサイズの方が大きくなっていることによるものである。さらに同一面内に電極と発光部がある平面実装向け発光素子を使用する構成にも適用が可能である。
【0074】
なお、本実施形態の光伝送モジュール1は、光配線4を伝搬する信号光が光出射面4Bにおいて反射されることによって受光部8へ導くような構成(すなわち、光出射面4Bを光路を変換する反射面として利用した構成)であったが、光伝送モジュール1の構成は、この構成に限定されるものではなく、光出射面4Bから出射した信号光を受光部8で受光可能な構成であればよい。例えば、光配線4は、光出射面4Bが反射面として機能せず、光出射面4Bから光伝送方向に信号光が出射するような構成であってもよい。この場合、受光部8は、その受光面が基板面に対し垂直な方向(すなわち、光伝送方向に対し垂直な方向)に配され、光出射面4Bから光伝送方向に出射した信号光を受光するようになっている。
【0075】
(光配線の構成)
図1は、光配線4の概略構成を示した側面図である。この光配線4は、電子機器内に搭載可能な光配線である。同図に示すように、光配線4は、光信号を伝送する光伝送路9を備えている。光伝送路9には、潤滑層(機能層)10が設けられている。潤滑層10は、電子機器内の構造体11との接触時に発生する摩擦を、光伝送路9と構造体11との接触時よりも低減させる機能を有しており、光伝送路9の可動に応じて可撓する(可動する)ようになっている。そして、光伝送路9における構造体11との対向面9cを含む面に設けられている。
【0076】
図1に示された構成によれば、例えば、電子機器内の光伝送路9が矢印方向に可動したときに、潤滑層10が構造体11と接触する。これにより、光伝送路9が構造体11と接触することが防止される。また、この潤滑層10は、構造体11との接触時に発生する摩擦を低減させる。それゆえ、光伝送路9は、電子機器内で構造体11を滑るように可動する。これにより、光伝送路9は、構造体11との接触による折れ・擦れ・磨耗が低減され、光学特性の劣化が生じにくくなる。
【0077】
潤滑層10は、光伝送路9の可動に応じて可動可能になっているので、光伝送路9の屈曲性・捻回性を維持できる。特に、携帯電話等のモバイル機器内に搭載される場合、光伝送路9はR=4mm以下レベルの超柔軟性が要求される。そして、これに伴い、潤滑層10もR=4mm以下レベルの超柔軟性が要求される。
【0078】
潤滑層10は、光伝送路9の屈曲性・捻回性を維持する条件を満たすものであれば、構造・材質が限定されない。潤滑層10を構成する材料は、有機材料あるいは金属材料であってもよい。
【0079】
潤滑層10の膜厚をdとし、この膜厚中心での屈曲時の歪みを0とすると、直線時における潤滑層10の中心長さxは、以下の(1)式で表わされる。
=π(R−d/2) (1)
ただし、R;屈曲時における曲げ径
また、屈曲時における潤滑層10の外周長さxは、以下の(2)式で表わされる。
x=πR (2)
よって、潤滑層10の屈曲時における外周の伸びΔxは、以下の(3)式で表わされる。
Δx=x−x=πd/2 (3)
よって、潤滑層10の屈曲時における外周の歪みεは、以下の(4)式で表わされる。
ε=Δx/x=πd/(2πR−πd) (4)
よって、潤滑層10の屈曲時に発生する応力δは、以下の(5)式で表わされる。
δ=εE (5)
ただし、Eは潤滑層10のヤング率もしくは弾性率
光配線4においては、潤滑層10の引張強度が、上記(5)式に示される応力δよりも大きい場合、潤滑層10の曲げ特性がよいといえる。それゆえ、引張強度が低いほど、曲げ特性が悪い傾向にあるといえる。また、ヤング率もしくは弾性率Eが高いほど、曲げ特性が低い傾向にあるといえる。
【0080】
上記の傾向を考慮すると、潤滑層10を構成する材料が有機材料である場合、例えばR=4mm以下レベルの超柔軟性を満たすために、引張強度が50MPa以上であり、かつ、弾性率が6500MPa以下または引張強度の80倍以下の柔軟材料であることが好ましい。潤滑層10を構成する材料が有機材料である場合、該材料としては、例えば、ポリイミド(PI)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリアミド(PA)、ポリカーボネート(PC)等の材料が挙げられる。また、潤滑層10の厚さは、700μm以下であることが好ましい。
【0081】
また、潤滑層10を構成する材料が金属材料である場合、例えばR=4mm以下レベルの超柔軟性を満たすために、引張強度が100MPa以上であり、かつ、ヤング率が200GPa以下の材料であることが好ましい。潤滑層10を構成する材料が金属材料である場合、該材料としては、例えば、金、白金、銀、銅、アルミニウム、燐青銅等の材料が挙げられる。また、潤滑層10の厚さは、70μm以下であることが好ましい。
【0082】
また、光伝送路9の構成は、光信号を伝送可能であり、かつ、電子機器内の配線への応用に際して要求される可動性を満たす構成であれば、特に限定されるものではない。例えば、電子機器として携帯電話等のモバイル機器内の配線へ応用した場合、光伝送路9は、R=4mm以下レベルの超柔軟性を満たすことが好ましい。
【0083】
このような電子機器内の配線への応用に際して要求される可動性を満たす光伝送路9としては、例えばフィルム光導波路が挙げられる。以下、光伝送路としてフィルム光導波路を採用した場合における光伝送路の構成について説明する。図4(a)〜(c)は、光伝送路としての光導波路12の構成の一例を示し、図4(a)は側面図であり、図4(b)は断面図であり、図4(c)は斜視図である。なお、図4(b)は、図4(a)におけるAA'線断面図である。
【0084】
図4(a)〜(c)に示されるように、光導波路12は、光伝送方向を軸とする柱状形状の3つのコア部13と、コア部13周囲を囲むように設けられたクラッド部14とを備えた構成となっている。コア部13およびクラッド部14は透光性を有する材料によって構成されているとともに、コア部13の屈折率は、クラッド部14の屈折率よりも高くなっている。コア部13それぞれに入射した光信号は、コア部13内部で全反射を繰り返すことによって光伝送方向に伝送される。
【0085】
図4(a)〜(c)に示されるように、潤滑層10における構造体との対向部分が平坦な面(平面)10aになっている。以下、光伝送方向をx方向とし、平面10aの法線方向をy方向とし、光伝送方向及び法線方向に垂直な方向をz方向とする。
【0086】
コア部13およびクラッド部14を構成する材料としては、ガラスやプラスチックなどを用いることが可能であるが、十分な可撓性を有する光導波路12を構成するためには、曲げ弾性率1000MPa以下の柔軟な材料であることが好ましい。そして、光導波路12を構成する材料は、その前駆体の官能基に水素結合基を含む樹脂であることが好ましい。光導波路12を構成する材料としては、例えば、アクリル系、エポキシ系、ウレタン系、およびシリコーン系等の樹脂材料が挙げられる。また、クラッド部14を空気などの気体で構成してもよい。さらに、クラッド部14をコア部13よりも屈折率の小さい液体の雰囲気下において使用しても同様の効果が得られる。
【0087】
図4(a)〜(c)に示された構成では、光伝送方向に垂直な面でのコア部13の断面形状が長方形となっている。しかしながら、コア部13の断面形状は、長方形に限定されず、円であってもよい。
【0088】
なお、光導波路12は、コア部13が1本設けられた単芯構造であってもよいし、コア部13が複数本設けられた多芯構造であってもよい。単芯構造の場合、片方向伝送を実現するものであってもよいし、双方向伝送を実現するものであってもよい。多芯構造の場合、全ての芯で同じ方向の信号伝送を行う片方向伝送を実現するものであってもよいし、各芯で信号伝送方向を変えることによって双方向伝送を実現するものであってもよい。
【0089】
なお、図4(a)〜(c)に示された光配線4の製造手順として、例えば、作製用基板上に光伝送路9を所望の形状に成型した後、光伝送路9の上(作製基板と反対側)に潤滑層10を成型する、または事前に成型した潤滑層10を貼り付ける。そして、作製用基板を光伝送路9から剥離することにより、本実施形態の光配線4が完成する。
【0090】
なお、光伝送路9の作製方法としては、例えば、直接露光法、直接描画法、RIE法、スピンコート法、フォトブリーチング法、複製法、金型射出成形法、紡糸成形法等が好ましい。また、潤滑層10の作製方法として、光伝送路9の上に潤滑層10を成型する場合、直接露光法、直接描画法、RIE法、スピンコート法、複製法等の一般的な光導波路の作製方法や蒸着法、スプレーコート法等の薄膜作製方法を採用することができる。さらに、事前に成型した潤滑層10を貼り付ける場合、金型射出成形法、延伸法、インフレーション法、Tダイ法、カレンダー法等のフィルム作製方法を採用することができる。
【0091】
別の光配線4の製造手順として、潤滑層10を作製した後、潤滑層10の上に光伝送路9を所望の形状に成型する、または事前に成型した光伝送路9を貼り付ける手順を採用することができる。
【0092】
上記の製造手順の場合、潤滑層10を作製する方法は、金型射出成形法、延伸法、インフレーション法、Tダイ法、カレンダー法等のフィルム作製方法を採用することができる。また、光伝送路9の作製方法は、特に、直接露光法、直接描画法、RIE法、スピンコート法、フォトブリーチング法、複製法、金型射出成形法、紡糸成形法等が好ましい。これらの方法は、潤滑層10上に光伝送路9を作製可能な方法である。
【0093】
また、さらに別の光配線4の製造手順として、光伝送路9を所望の形状に成型した後、光伝送路9を基板として潤滑層10を成型する、または事前に成型した潤滑層10を貼り付ける手順を採用することができる。
【0094】
一般的に、モバイル機器等の電子機器に搭載される光配線は、省スペース化の観点から、光伝送性能と屈曲・捻回性能と耐磨耗・接触性能(電子機器内の構造体との接触)とが要求される。光伝送性能は、光信号を伝送する性能であり、高速光信号伝送のために必要な性能である。屈曲・捻回性能は、光配線の曲げ・捻り・繰り返し屈曲・繰り返し捻回特性であり、小さい空間内に光配線を搭載する(省スペース化)ために必要な性能である。また、耐磨耗・接触性能は、接触による変形しにくさ(折れにくさ)、構造体との摩擦の受けにくさ(擦れにくさ)、磨耗しにくさを示す性能であり、小さい空間内で構造体との接触に影響しないようにするために必要な性能である。
【0095】
従来の光伝送路においては、光伝送性能、屈曲・捻回性能、及び耐磨耗・接触性能の3つの性能を両立させる材料の選択が困難であった。すなわち、光伝送路の材料として、光伝送性能及び屈曲・捻回性能を向上させる材料を選択しても、この材料が耐磨耗・接触性能を向上させるとは限らなかった。換言すれば、光伝送路の材料選択において、1つの材料で屈曲・捻回性能及び耐磨耗・接触性能を両立させることが困難であった。
【0096】
本実施形態の光配線4は、耐磨耗・接触性能を担う部材として、別途潤滑層10が設けられた構成であるといえる。潤滑層10は、光伝送性能、屈曲・捻回性能、及び耐磨耗・接触性能のうち耐磨耗・接触性能を担っているので、光伝送路の材料を選択するに際し、光伝送性能及び屈曲・捻回性能を担う材料を選択すればよい。それゆえ、本実施形態の光配線4においては、従来よりも構成材料の選択の幅が広がるという利点がある。
【0097】
(変形例1−1)
本実施形態の光配線の構成において、図4に示す構成の変形例について説明する。図5(a)(b)は、この変形例1−1としての光配線4の構成の一例を示し、図5(a)は断面図であり、図5(b)は平面図である。なお、図5(a)は、図5(b)におけるBB'線断面図である。
【0098】
同図に示されるように、光配線4では、潤滑層10は、凹部10bと凸部10cとが交互に形成された凹凸構造になっている。この凹凸構造は、潤滑層10における構造体との対向部分に形成されている。そして、凹部10b及び凸部10cは、光導波路12の光伝送方向と平行になるように形成されている。
【0099】
潤滑層10に凹凸構造が形成されていることにより、潤滑層10は、光導波路12の可動性(変形)に応じた可撓性が向上する。その結果、電子機器内の配線への応用に際して要求される可動性を満たす光配線を実現することができる。特に、この変形例のように、凹部10b及び凸部10cが光導波路12の光伝送方向と平行になるように形成されている構成では、潤滑層10は、光導波路12の捻回に応じた可撓性が向上する。
【0100】
また、変形例1−1の光配線では、凹凸構造は、潤滑層10における構造体との対向部分に形成されている。それゆえ、潤滑層10における構造体との対向部分が平坦な面(平面)10aになっている図4(a)〜(c)の構成と比較して、潤滑層10と構造体との接触面積を低減させることが可能になる。このため、潤滑層10と構造体との摩擦をより低減させることができる。
【0101】
また、図5(a)・(b)に示された構成では、凸部10cは、光導波路12のコア部13を避けるように形成されていた。しかしながら、図6に示されるように、凸部10cは、光導波路12のコア部13と重なるように形成されていてもよい。
【0102】
凸部10cが、光伝送方向に延びるコア部13と重なるように形成されているので、凸部10cが光伝送方向に延びるコア部13と重ならない構成と比較して、光導波路12が捻回したとき、クラッド部14にかかる応力がコア部13に集中しにくくなるという効果を奏する。さらに、コア部13からの漏れ光が、凸部10cで複数回反射し、光伝送路9外部へ抜けやすくなる。この結果、信号伝送のS/N比が向上するという効果がある。
【0103】
(変形例1−2)
本実施形態の光配線の構成において、変形例1−1の構成のさらに他の変形例について説明する。図7(a)・(b)は、この変形例1−2としての光配線4の構成の一例を示し、図7(a)は側面図であり、図7(b)は平面図である。
【0104】
変形例1−1の構成では、凹部10b及び凸部10cが、光導波路12の光伝送方向と平行になるように形成されていた。これに対し、変形例1−2としての光配線4では、凹部10b及び凸部10cが光導波路12の光伝送方向と平行になるように形成されている。これにより、潤滑層10は、光導波路12の屈曲に応じた可撓性が向上する。
【0105】
(変形例1−3)
本実施形態の光配線の構成において、上記変形例の構成のさらに他の変形例について説明する。図8は、この変形例1−3としての光配線4の構成の一例を示す平面図である。
【0106】
上記変形例の構成では、凹部10b及び凸部10cが、光導波路12の光伝送方向と平行または垂直になるように形成されていた。これに対し、変形例1−3としての光配線4では、凹部10b及び凸部10cが光導波路12の光伝送方向に対し傾斜するように形成されている。これにより、特に、潤滑層10は、光導波路12の屈曲に応じた可撓性が向上する。
【0107】
(変形例1−4)
本実施形態の光配線の構成において、上記変形例の構成のさらに他の変形例について説明する。図9は、この変形例1−4としての光配線4の構成の一例を示す平面図である。
【0108】
変形例1−3としての光配線4では、凹部10bが光導波路12の光伝送方向に対し平行かつ垂直になるように形成されている。そして、凹部10bと凸部10cとで格子形状を形成している。これにより、潤滑層10は、光導波路12の捻回及び屈曲に応じた可撓性が向上する。
【0109】
変形例1−1〜1−4の光配線の製造手順としては、例えば、凹凸構造を有する金型に、潤滑層10を構成する材料を充填し硬化した後、潤滑層10を構成する材料の硬化物の上に光導波路12を作製する、または別工程で作製した光導波路12を貼り付ける。そして、金型を剥離することで、変形例1−1〜1−4の光配線が完成する。別工程で作製した光導波路は、作製用基板上に成型された光導波路であってもよい。この場合、作製用基板上に成型された光導波路を、潤滑層10を構成する材料の硬化物の上に貼り付けた後、作製用基板及び金型を剥離することで、変形例1−1〜1−4の光配線が完成する。
【0110】
また、別の製造手順として、まず、上記図4(a)〜(c)に示された光配線4の製造手順で光配線を作製した後、潤滑層10を凹凸状にカッティングする手順を採用することができる。
【0111】
さらに別の製造手順として、まず、事前に作製された光導波路12に、潤滑層10の材料として感光性樹脂を塗布する。そして、感光性樹脂に凹凸構造が形成されるように感光させた後、現像することで、変形例1−1〜1−4の光配線が完成する。
【0112】
また、さらに別の製造手順として、まず、事前に作製された光導波路12に、潤滑層10の材料として熱可塑性樹脂を塗布する。その後、熱可塑性樹脂に凹凸構造を有する金型を押し付け、熱転写させる。そして、凹凸構造を有する金型を剥離することで、変形例1−1〜1−4の光配線が完成する。
【0113】
また、さらに別の製造手順として、まず、事前に作製された光導波路12に、潤滑層10の材料として熱硬化性樹脂または感光性樹脂を塗布する。その後、熱硬化性樹脂または感光性樹脂に凹凸構造を有する金型を押し付け転写し、熱硬化させる。そして、凹凸構造を有する金型を剥離することで、変形例1−1〜1−4の光配線が完成する。
【0114】
また、さらに別の製造手順として、まず、ダミー基板上に潤滑層10の材料を塗布後、凹凸構造を形成する。その後、潤滑層10の凹凸構造を保持できるように、保持基板を成型する。このとき、成型により得られた保持基板の凹凸構造と潤滑層10の凹凸構造とが嵌め合う関係になっている。すなわち、保持基板は、潤滑層10を、凹凸構造側から保持するようになっている。そして、ダミー基板を剥離した後、潤滑層10の保持基板と反対側の面に光導波路12を作製する、または別工程で作製した光導波路12を貼り付ける。そして、金型を剥離することで、変形例1−1〜1−4の光配線が完成する。そして、保持基板を剥離することで、変形例1−1〜1−4の光配線が完成する。
【0115】
また、さらに別の製造手順として、事前に金型射出成形法、延伸法、インフレーション法、Tダイ法、カレンダー法等のフィルム作製方法で凹凸構造を形成した潤滑層10を準備し、この潤滑層10に光導波路12を作製する、または別工程で作製した光導波路12を貼り付ける手順を採用することができる。
【0116】
(変形例1−5)
本実施形態の光配線の構成において、上記変形例の構成のさらに他の変形例について説明する。図10(a)・(b)は、この変形例1−5としての光配線4の構成の一例を示し、図10(a)は平面図であり、図10(b)はCC'線断面図である。
【0117】
上記変形例では、この凹凸構造が潤滑層10における構造体との対向部分に形成されていた。これに対し、変形例1−5の光配線4では、凹凸構造が光導波路12における潤滑層10と反対側の部分に形成されている。
【0118】
図10(a)・(b)に示されるように、光導波路12は、コア部13と、コア部13を取り囲むクラッド部14とを備えている。そして、光導波路12における潤滑層10と反対側の部分は、凹部12aと凸部12bとが交互に形成された凹凸構造になっている。凹部12aを形成する側壁は、クラッド部14を構成する材料からなっている。すなわち、凹部12aは、クラッド部14を構成する材料のみで構成されている。一方、凸部12bは、クラッド部14を構成する材料とコア部13を構成する材料とからなっており(つまり、凸部12bはコア部14を構成する材料を含む)、クラッド部14がコア部13を取り囲む構成になっている。換言すれば、変形例1−5の光配線4における光導波路12は、潤滑層10と反対側の部分において、凹部12aがコア部13を避けるように形成された構成である。
【0119】
このような構成であっても、光導波路12自体の可動性が向上する。その結果、電子機器内の配線への応用に際して要求される可動性を満たす光配線を実現することができる。
【0120】
上記変形例1−1〜1−5に示した構成では、潤滑層10は、電子機器内の構造体との接触時に発生する摩擦を、光導波路12と構造体との接触時よりも低減させるとともに、その表面が凹凸構造になっている。このため、変形例1−1〜1−5に示した構成を採用した場合、光配線4は、構造体との接触面積が低減し、構造体との滑りが発生することで、光導波路12の屈曲性を阻害しないという効果に加え、以下の効果を奏する。
【0121】
すなわち、光導波路12の屈曲時に発生するコア部13からの漏れ光をクラッド部14外部の空気へ逃がすため、ノイズの発生を抑え、S/N比の低下を防ぐことができる。
【0122】
さらに、上記凹凸構造を、光導波路12の屈曲・捻回方向に合わせて、潤滑層10内での応力が弱まるように構成することで、図4に示された潤滑層10としての平坦層が設けられた構成と比較して、大幅に潤滑層10の可撓性(フレキシブル性)が向上するという利点がある。
【0123】
(変形例2)
本実施形態の光配線の構成において、図4に示す構成のさらに他の変形例について説明する。図11は、この変形例2としての光配線4の構成の一例を示す断面図である。
【0124】
図4(a)〜(c)に示された構成では、光導波路12は、光伝送方向を軸とする柱状形状の3つのコア部13と、コア部13周囲を囲むように設けられたクラッド部14とを備えた構成となっていた。そして、コア部13は、潤滑層10と直接接することがなく、クラッド部14が潤滑層10と接する構成であった。
【0125】
これに対し、変形例2の光配線4は、コア部13が潤滑層10と直接接する構成になっている。また、潤滑層10における光導波路12側の面が平坦な面(平面)になっている。そして、コア部13における潤滑層10との接面13aは、クラッド部14における潤滑層10との接面14aと同一平面になっている。
【0126】
変形例2−1の光配線4は、コア部13に対し潤滑層10側に形成されたクラッド部14が省かれた構成になっている。それゆえ、図4(a)〜(c)に示された光配線4と比較して、y方向(法線方向)の厚さを薄くすることが可能になる。
【0127】
また、y方向の厚さを薄くするために、光配線4は、例えば図12に示されるように、コア部13及びクラッド部14における潤滑層10と反対側の面13b・14bが、同一平面になっている構成になっていてもよい。
【0128】
(変形例3)
本実施形態の光配線の構成において、図4に示す構成のさらに他の変形例について説明する。図13(a)・(b)は、この変形例3としての光配線4の構成の一例を示し、図13(a)は平面図であり、図13(b)はCC'線断面図である。
【0129】
図4(a)〜(c)に示された構成では、潤滑層10における構造体との対向部分が平坦な面(平面)10aになった構成であった。これに対し、変形例3の光配線4では、潤滑層10に格子状のスリット10dが形成されている。このような構成であっても、潤滑層10は、光導波路12の捻回及び屈曲に応じた可撓性が向上する。
【0130】
(変形例4)
本実施形態の光配線の構成において、図4に示す構成のさらに他の変形例について説明する。図14は、この変形例4としての光配線4の構成の一例を示す断面図である。
【0131】
図4(a)〜(c)に示された構成では、潤滑層10における光導波路12との接面が平坦な面(平面)になった構成であった。これに対し、変形例4の光配線4は、潤滑層10における光導波路12側の部分が、凹部10eと凸部10fとが交互に形成された凹凸構造になっている。そして、コア部13は、凹部10eに収まるように形成されている。
【0132】
変形例4の光配線4は、コア部13に対し潤滑層10側に形成されたクラッド部14が省かれた構成になっている。それゆえ、図4(a)〜(c)に示された光配線4と比較して、y方向(法線方向)の厚さを薄くすることが可能になる。
【0133】
(変形例5)
本実施形態の光配線の構成において、図4に示す構成のさらに他の変形例について説明する。図15は、変形例5としての光配線4の構成の一例を示す断面図である。
【0134】
図4(a)〜(c)に示された構成では、光伝送方向を軸とする柱状形状の3つのコア部13と、コア部13周囲を囲むように設けられたクラッド部14とを備えた構成となっていた。これに対し、変形例5の光配線4は、光伝送路が柱状形状の3つのコア部13のみで構成されている。すなわち、変形例5の光配線4は、柱状形状の3つコア部がただ1つの潤滑層10に設けられた構成になっている。
【0135】
(変形例6)
本実施形態の光配線の構成において、図4に示す構成のさらに他の変形例について説明する。図16は、この変形例6としての光配線4の構成の一例を示す断面図である。
【0136】
図4(a)〜(c)に示された構成では、潤滑層10を構成する材料が、有機材料あるいは金属材料であった。これに対し、変形例6の光配線4は、潤滑層が、光導波路12表面に存在する構成材料(すなわち、クラッド部14を構成する材料)の未反応基をキャップするプライマ材料から構成されたプライマ層10'になっている。
【0137】
光導波路12は、上述のように樹脂材料で構成されているので、その表面がタック性(粘着性)を有している。このタック性により、光導波路12は、電子機器内の構造体と接触すると、折れ・擦れ・磨耗が発生する。また、このタック性は、光導波路12表面に残存する未反応基が原因になっている。
【0138】
変形例6の光配線4では、プライマ層10'が光導波路12表面に存在する上記未反応基をキャップする。それゆえ、光導波路12表面のタック性が低下し、電子機器内の構造体との接触時に発生する摩擦を低減させることができる。
【0139】
また、プライマ層10'は、光導波路12における構造体との対向面に形成されていてもよいし、光導波路12における構造体と反対側の面に形成されていてもよい。さらに、プライマ層10'は、上記対向面及び上記反対側の面の両面に形成されていてもよい。
【0140】
また、プライマ層10'を構成するプライマ材料は、タック性の元となる光導波路12表面の未反応基と反応する材料であれば特に限定されないが、例えば、シランカップリング剤、フッ素カップリング剤、またはフッ素化物が挙げられる。
【0141】
なお、変形例6の光配線4の製造手順として、例えば、溶剤中でプライマ材料が溶解したプライマ溶液を、事前に作製した光導波路12にスピンコートまたはスプレーコートする。その後、プライマ溶液を乾燥することで、変形例6の光配線4が完成する。
【0142】
また、別の製造手順として、まず、プライマ溶液を基板に塗布後、この基板を事前に作製した光導波路12に載置する。このとき、基板におけるプライマ溶液塗布面が光導波路12と向かい合うように載置し、プライマ溶液を光導波路12に転写する。その後、プライマ溶液を乾燥することで、変形例6の光配線4が完成する。
【0143】
また、さらに別の製造手順として、まず、底部に微細孔が形成された容器にプライマ溶液を入れ、該微細孔から漏れ出たプライマー溶液を、事前に作製した光導波路12に載置する。その後、プライマ溶液を乾燥することで、変形例6の光配線4が完成する。
【0144】
また、さらに別の製造手順として、プライマ溶液中に事前に作製した光導波路12を浸漬した後、光導波路12を取り出し乾燥する手順を採用することができる。
【0145】
(変形例7)
本実施形態の光配線の構成において、図4に示す構成のさらに他の変形例について説明する。図17は、この変形例7としての光配線4の構成の一例を示し、図17(a)は平面図であり、図17(b)は断面図である。
【0146】
図4(a)〜(c)に示された構成では、潤滑層10を構成する材料が、有機材料あるいは金属材料であった。これに対し、変形例7の光配線4は、潤滑層が、コーティング材料と揮発溶剤との混合物の固化物から構成されたコーティング層10''になっている。
【0147】
変形例7の光配線4の製造手順として、例えば、コーティング材料を揮発性溶剤で溶解したコーティング溶液を、事前に作製した光導波路12にスピンコート、スプレーコートスクリーン印刷、フレキソ印刷、またはバーコートする。その後、上記の混合物を乾燥することで、変形例7の光配線4が完成する。
【0148】
コーティング材料と揮発性溶剤との混合物を乾燥したとき、混合物中の揮発性溶剤が揮発し、複数のコーティング材料の凝集物10''aが光導波路12表面に形成される。変形例7の光配線4では、複数の凝集物10''aが凸部となり、凹凸構造が形成される。それゆえ、コーティング層10''と構造体との接触面積を低減させることが可能になる。このため、コーティング層10''と構造体との摩擦をより低減させることができる。
【0149】
また、コーティング層10''における凹凸構造では、複数の凝集物10''aが凸部なり、凹部は揮発性溶剤の揮発により形成される。つまり、凹部の底面は、実質的に光導波路12表面と同じなる。それゆえ、変形例7では、光配線4の厚さを小さくすることができ、光導波路12の屈曲性を阻害することなく、光配線4の構造体に対する滑り性を向上させることができる。
【0150】
また、コーティング層10''を構成する材料に含まれる上記コーティング材料としては、例えば、アミノ系シランカップリング剤が挙げられる。特に、アミノ系シランカップリング剤にフッ素系コーティング材を混合すると、コーティング材料の滑り効果が増す。また、上記の揮発性溶剤は、揮発性を有しているものであれば特に限定されない。例えばIPA(イソプロピルアルコール)が挙げられる。
【0151】
また、変形例7では、光導波路12の表面を構成する材料(例えば、クラッド部を構成する材料)の撥水性が高ければ高いほど、コーティング層10''の凹凸構造が顕著になる(凹凸構造における高低差が大きくなる)。その一方で、光導波路12の表面を構成する材料の親水性が高ければ高いほど、コーティング層10''の凹凸構造における高低差が小さくなる。それゆえ、コーティング材料と揮発性溶剤との混合物をコートする対象を、親水性材料から構成されたコア部とすることで、コーティング層10''自体をクラッド部とすることができる。そして、このとき、コア部の親水性に応じた高低差を有する凹凸構造が、クラッド部としてのコーティング層10''に形成されることになる。
【0152】
(変形例8)
本実施形態の光配線の構成において、図4に示す構成のさらに他の変形例について説明する。図18は、この変形例8としての光配線4の構成の一例を示し、図18(a)は断面図であり、図18(b)は光配線4の一部を拡大した断面図である。
【0153】
図18(a)及び(b)に示されるように、変形例8の光配線4における潤滑層は、滑り性を有する微粒子10'''aと、微粒子10'''aを固定する柔軟樹脂10'''bの固化物からなる固定層とを備え、微粒子10'''aが固定層に対して突出したコンポジット層10'''になっている。コンポジット層10'''では、固定層に対して突出した微粒子10'''aにより凹凸構造が形成されている。
【0154】
変形例8の光配線4の製造手順として、例えば、溶剤に柔軟樹脂10'''bを溶解した樹脂溶液を準備し、この樹脂溶液に微粒子10'''aを混合した微粒子混合液を調整しておく。そして、この微粒子混合液を、事前に作製した光導波路12にスピンコート、スプレーコート、またはバーコートする。その後、微粒子混合液を乾燥することで、変形例8の光配線4が完成する。
【0155】
微粒子混合液を乾燥させると、溶剤の蒸発に伴い、微粒子混合液中の柔軟樹脂10'''bが固化し固定層となり、微粒子10'''aが固定層に対して突出する。図18(b)に示されるように、微粒子10'''a間には、柔軟樹脂10'''bの固化物により凹部が形成されている。柔軟樹脂10'''bの固化物は、スピンコート、スプレーコート、またはバーコートといった方法で形成されるので、凹部の膜厚を薄くすることができ、光導波路12の屈曲性を阻害しない。なお、コンポジット層10'''においては、固定層に対し突出した微粒子10'''aと上記凹部とにより凹凸構造が形成される。
【0156】
変形例8の光配線4において、コンポジット層10'''は、凸部としての微粒子10'''aが球面を有しているので、構造体との接触面積を低減させることが可能になる。このため、コンポジット層10'''と構造体との摩擦をより低減させることができ、構造体に対する滑り性を向上させることができる。
【0157】
なお、微粒子10'''aの粒径は、大きければ大きいほど、構造体に対する摩擦が低減する効果が高くなる。本願発明者は、微粒子10'''aの粒径を変えて、構造体に対する摩擦を検討した結果、微粒子10'''aの粒径は、大きければ大きいほど、構造体に対する摩擦が低減する効果が高くなるが、粒径が450nm以上になると微粒子10'''a間の凹部としての柔軟樹脂10'''bの固化物にクラックが発生することが判明した。それゆえ、微粒子10'''aの粒径は、450nmよりも小さいことが好ましい。
【0158】
微粒子10'''aの材料は、構造体に対し滑り性を有する材料であれば、特に限定されないが、例えば、湿式シリカ、乾式シリカ、アルミナ、銅(Cu)、銀(Ag)、または金(Au)が挙げられる。微粒子10'''aとして、銅(Cu)、銀(Ag)、または金(Au)から構成される金属ナノ粒子を用いてもよい。
【0159】
また、柔軟樹脂10'''bとしては、例えば、水溶性ウレタン樹脂、シリコーン、フッ素系樹脂、シランカップリング剤、またはエポキシ樹脂が挙げられる。
【0160】
なお、上記の微粒子混合液をコートする対象をコア部とすることで、コンポジット層10'''自体をクラッド部とすることができる。
【0161】
(変形例9)
本実施形態の光配線の構成において、図4に示す構成のさらに他の変形例について説明する。図19は、この変形例9としての光配線4の構成の一例を示す側面図である。
【0162】
変形例7は、潤滑層10が金属材料からなる場合における変形例である。光導波路12における端面は光伝送方向(x方向)に対して垂直とならず、斜めに切断されて光路変換ミラー面12dが形成されている。変形例9の光配線4は、光導波路12の光路変換ミラー面12dに金属材料で構成された潤滑層10が設けられた構成になっている。
【0163】
潤滑層10は金属材料からなっているので、光路変換ミラー面12cに設けられた潤滑層を金属ミラーとして利用することが可能になる。それゆえ、変形例7の光配線4は、その端面で、効率的にコア部13を伝送する光の光路を変換することができる。
【0164】
(応用例)
本実施形態の光配線4は、例えば以下のような応用例に適用することが可能である。
【0165】
まず、第一の応用例として、折り畳み式携帯電話,折り畳み式PHS(Personal Handyphone System),折り畳み式PDA(Personal Digital Assistant),折り畳み式ノートパソコン等の折り畳み式の電子機器におけるヒンジ部に用いることができる。
【0166】
図20(a)〜図20(c)は、光配線4を折り畳み式携帯電話40に適用した例を示している。すなわち、図20(a)は光配線4を内蔵した折り畳み式携帯電話40の外観を示す斜視図である。
【0167】
図20(b)は、図20(a)に示した折り畳み式携帯電話40における、光配線4が適用されている部分のブロック図である。この図に示すように、折り畳み式携帯電話40における本体40a側に設けられた制御部41と、本体の一端にヒンジ部を軸として回転可能に備えられる蓋(駆動部)40b側に設けられた外部メモリ42,カメラ部(デジタルカメラ)43,表示部(液晶ディスプレイ表示)44とが、それぞれ光配線4によって接続されている。
【0168】
図20(c)は、図20(a)におけるヒンジ部(破線で囲んだ部分)の透視平面図である。この図に示すように、光配線4は、ヒンジ部における支持棒に巻きつけて屈曲させることによって、本体側に設けられた制御部と、蓋側に設けられた外部メモリ42,カメラ部43,表示部44とをそれぞれ接続している。
【0169】
光配線4を、これらの折り畳み式電子機器に適用することにより、限られた空間で高速、大容量の通信を実現できる。したがって、例えば、折り畳み式液晶表示装置などの、高速、大容量のデータ通信が必要であって、小型化が求められる機器に特に好適である。
【0170】
第2の応用例として、光配線4は、印刷装置(電子機器)におけるプリンタヘッドやハードディスク記録再生装置における読み取り部など、駆動部を有する装置に適用できる。
【0171】
図21(a)〜図21(c)は、光配線4を印刷装置50に適用した例を示している。図21(a)は、印刷装置50の外観を示す斜視図である。この図に示すように、印刷装置50は、用紙52の幅方向に移動しながら用紙52に対して印刷を行うプリンタヘッド51を備えており、このプリンタヘッド51に光配線4の一端が接続されている。
【0172】
図21(b)は、印刷装置50における、光配線4が適用されている部分のブロック図である。この図に示すように、光配線4の一端部はプリンタヘッド51に接続されており、他端部は印刷装置50における本体側基板に接続されている。なお、この本体側基板には、印刷装置50の各部の動作を制御する制御手段などが備えられる。
【0173】
図21(c)および図21(d)は、印刷装置50においてプリンタヘッド51が移動(駆動)した場合の、光配線4の湾曲状態を示す斜視図である。この図に示すように、光配線4をプリンタヘッド51のような駆動部に適用する場合、プリンタヘッド51の駆動によって光配線4の湾曲状態が変化するとともに、光配線4の各位置が繰り返し湾曲される。
【0174】
したがって、本実施形態にかかる光配線4は、これらの駆動部に好適である。また、光配線4をこれらの駆動部に適用することにより、駆動部を用いた高速、大容量通信を実現できる。
【0175】
図22は、光配線4をハードディスク記録再生装置60に適用した例を示している。
【0176】
この図に示すように、ハードディスク記録再生装置60は、ディスク(ハードディスク)61、ヘッド(読み取り、書き込み用ヘッド)62、基板導入部63、駆動部(駆動モータ)64、光配線4を備えている。
【0177】
駆動部64は、ヘッド62をディスク61の半径方向に沿って駆動させるものである。ヘッド62は、ディスク61上に記録された情報を読み取り、また、ディスク61上に情報を書き込むものである。なお、ヘッド62は、光配線4を介して基板導入部63に接続されており、ディスク61から読み取った情報を光信号として基板導入部63に伝搬させ、また、基板導入部63から伝搬された、ディスク61に書き込む情報の光信号を受け取る。
【0178】
このように、光配線4をハードディスク記録再生装置60におけるヘッド62のような駆動部に適用することにより、高速、大容量通信を実現できる。
【0179】
(実用例)
ここで、本実施形態の光配線4を電子機器としての折り畳み式携帯電話40に適用した場合の実用例について説明する。図23は、折り畳み式携帯電話40における、本実施形態の光配線4の適用箇所を示す模式図である。
【0180】
図23に示されるように、光配線4は、ヒンジ部における支持棒に巻きつけて屈曲した状態で搭載される。このため、本実施形態の光配線4は、電子機器内の構造体としてのヒンジ部との接触箇所で効力を発揮する。
【0181】
また、折り畳み式携帯電話40内での信号伝送において、従来の電気配線による伝送と、光配線による伝送とを共存させた電気−光伝送一体型モジュール(以下、一体型モジュールと記す)が提案されている。一体型モジュールは、電気配線と光配線とが1つのユニットとして可動(変形)するモジュールである。そして、信号の伝送方向は、双方向、単方向、またはその組み合わせであってもよい。図24は、一体型モジュールの概略構成を示す斜視図である。
【0182】
図24に示されるように、一体型モジュールは、光配線4と、電気配線15と、実装外郭16と、基板17と、パッケージ18とを備えている。光配線4及び電気配線15は、互いに対向しかつ平行になるように配置されている。実装外郭16は、電気配線15を伝送する電気信号を受信または送信する電気素子と、光配線4を伝送する光信号を受信または送信する光素子とを実装する部材である。実装外郭16は、基板17に設けられたパッケージ18に収容されるようになっている。
【0183】
また、上記の一体型モジュールは、例えば、図25(a)・(b)に示された構成であってもよい。図25(a)は、一体型モジュールの他の構成例を示す機能図である。
【0184】
図25(a)に示された一体型モジュールは、電気配線としてフレキシブルプリント配線基板が用いられた構成になっている。同図に示されるように、一体型モジュール1’は、発光側モジュール部21と、受光側モジュール部31と、光配線4と、電気配線としてのフレキシブルプリント配線基板(FPC)15’とを備えている。
【0185】
発光側モジュール部21は、図2に示された光送信処理部2を備え、外部から入力された電気信号を光信号としての光に変換し、光配線4の光入射側端部へ照射するようになっている。また、受光側モジュール部31は、図2に示された光受信処理部3を備え、光配線4の光出射側端部から出射された光信号としての光を受光し、光電変換によって電気信号を出力するようになっている。
【0186】
一体型モジュール1’において、外部から発光側モジュール部31へ入力される電気信号のうち、比較的高速な電気信号は、光送信処理部2により光信号に変換され、光配線4を介して伝送する。一方、比較的低速な電気信号(例えば電源または接地電極(GND)からの電気信号)は、フレキシブルプリント配線基板15’を介して伝送される。このような構成とすることにより、電気配線との共存、及び低コスト化が可能な一体型モジュールを実現することができる。
【0187】
図25(b)は、図25(a)に示された一体型モジュールの構成の一例を示した側面図である。図25(b)に示された一体型モジュール1’では、フレキシブルプリント配線基板15’上に、発光側モジュール部21及び受光側モジュール部31が載置されている。そして、光配線4は、フレキシブルプリント配線基板15’の基板面に平行になるように配されている。
【0188】
図25(b)に示された構成では、フレキシブルプリント配線基板15’を介して伝送された比較的高速な電気信号は、受光側モジュール部31にて光信号に変換され、光配線4を介して発光側モジュール部21へ伝送されるようになっている。
【0189】
上述の一体型モジュールにおいて、本実施形態の光配線4は、電気配線15との接触箇所で効力を発揮する。図26(a)〜(c)は、一体型モジュールにおける光配線4の可動(変形)例を模式的に示した図である。図26(a)は、光配線4及び電気配線15が共に屈曲したときの可動例を示す側面図であり、図26(b)は、電気配線15が捩れたときの光配線4の可動例を示す断面図であり、図26(c)は、電気配線15がスライドしたときの光配線4の可動例を示す側面図である。
【0190】
図26(a)〜(c)に示されるように、何れの光配線4の可動例においても、光配線4と電気配線15との接触が起こっている。本実施形態の光配線4は、このような接触箇所で効力を発揮する。
【0191】
図24〜図26(a)〜(c)に示された一体型モジュールに本実施形態の光配線4を搭載した場合における、潤滑層について説明する。潤滑層は、光伝送路9と電気配線15とが1つのユニットとして可動(変形)したときに、光伝送路9の屈曲性を阻害しない構成であればよく、例えば上記変形例に示された構成が挙げられる。
【0192】
また、潤滑層は、光伝送路のラミネート加工または作製に使用される基板であってもよい。また、潤滑層を構成する材料は、光伝送路表面のタック性を低減させる材料であることが好ましい。潤滑層を構成する材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、粉末、ポリイミド、金属材料、プライマ材料、水蒸気処理材料等が挙げられる。また、潤滑層を構成する材料が粉末である場合、該粉末として、小麦粉、ベビーパウダ等が挙げられる。
【0193】
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。すなわち、請求項に示した範囲で適宜変更した技術的手段を組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0194】
本発明は、各種機器間の光通信路にも適用可能であるとともに、小型、薄型の民生機器内に搭載される機器内配線として適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0195】
【図1】本発明の一実施形態に係る光配線の概略構成を示す側面図である。
【図2】本実施形態に係る光伝送モジュールの概略構成を示す図である。
【図3】光配線における光伝送の状態を模式的に示す図である。
【図4】光伝送路としての光導波路の構成の一例を示し、(a)は側面図であり、(b)は断面図であり、(c)は斜視図である。
【図5】変形例1−1としての光配線の構成の一例を示し、(a)は断面図であり、(b)は平面図である。
【図6】図5の光配線のさらに他の変形例を示す断面図である。
【図7】変形例1−2としての光配線の構成の一例を示し、(a)は側面図であり、(b)は平面図である。
【図8】変形例1−3としての光配線の構成の一例を示す平面図である。
【図9】変形例1−4としての光配線の構成の一例を示す平面図である。
【図10】変形例1−5としての光配線の構成の一例を示し、(a)は平面図であり、(b)はCC'線断面図である。
【図11】変形例2としての光配線の構成の一例を示す断面図である。
【図12】図11の光配線のさらに他の変形例を示す断面図である。
【図13】変形例3としての光配線の構成の一例を示し、図13(a)は平面図であり、図13(b)はCC'線断面図である。
【図14】変形例4としての光配線の構成の一例を示す断面図である。
【図15】変形例5としての光配線の構成の一例を示す断面図である。
【図16】変形例6としての光配線の構成の一例を示す断面図である。
【図17】変形例7としての光配線の構成の一例を示し、(a)は平面図であり、(b)は断面図である。
【図18】変形例8としての光配線の構成の一例を示し、(a)は断面図であり、(b)は光配線の一部を拡大した断面図である。
【図19】変形例9としての光配線の構成の一例を示す側面図である。
【図20】(a)は、本実施形態に係る光配線を備えた折り畳み式携帯電話の外観を示す斜視図であり、(b)は、(a)に示した折り畳み式携帯電話における、上記光配線が適用されている部分のブロック図であり、(c)は、(a)に示した折り畳み式携帯電話における、ヒンジ部の透視平面図である。
【図21】(a)は、本実施形態に係る光配線を備えた印刷装置の外観を示す斜視図であり、(b)は、(a)に示した印刷装置の主要部を示すブロック図であり、(c)および(d)は、印刷装置においてプリンタヘッドが移動(駆動)した場合の、光配線の湾曲状態を示す斜視図である。
【図22】本実施形態に係る光配線を備えたハードディスク記録再生装置の外観を示す斜視図である。
【図23】折り畳み式携帯電話における、本実施形態の光配線の適用箇所を示す模式図である。
【図24】一体型モジュールの概略構成を示す斜視図である。
【図25】(a)は、一体型モジュールの他の構成例を示す機能図であり、(b)は、(a)に示された一体型モジュールの構成の一例を示した側面図である。
【図26】一体型モジュールにおける光配線の可動(変形)例を模式的に示し、(a)は光配線及び電気配線が共に屈曲したときの可動例を示す側面図であり、(b)は、電気配線が捩れたときの光配線の可動例を示す断面図であり、(c)は、電気配線がスライドしたときの光配線の可動例を示す側面図である。
【符号の説明】
【0196】
1 光伝送モジュール
2 光送信処理部
3 光受信処理部
4 光配線
5 発光駆動部
6 発光部
7 増幅部
8 受光部(光素子)
9 光伝送路
9c 対向面
10 潤滑層(機能層)
10a 平面
10b 凹部
10c 凸部
10d スリット
10e 凹部
10f 凸部
10' プライマ層
11 構造体
12 光導波路
12a 凹部
12b 凸部
12c 光路変換ミラー面
13 コア部
14 クラッド部
13a,14a 接面
13b,14b 面
15 電気配線
16 実装外郭
17 基板
18 パッケージ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子機器に搭載される光配線であって、
光信号を伝送する光伝送路を備え、
電子機器内の構造体との接触時に発生する摩擦を、光伝送路と構造体との接触時よりも低減させ、かつ光伝送路の変形に応じて可撓する機能層が設けられていることを特徴とする光配線。
【請求項2】
上記機能層は、光伝送路における上記構造体との対向面を含む面に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の光配線。
【請求項3】
上記光伝送路における機能層と反対側の部分、及び上記機能層における上記構造体との対向部分の少なくとも一方が、凹部と凸部とが交互に形成された凹凸構造になっていることを特徴とする請求項1または2に記載の光配線。
【請求項4】
上記凹凸構造における凹部及び凸部が、光信号を伝送する光伝送方向と平行になるように形成されていることを特徴とする請求項3に記載の光配線。
【請求項5】
上記凹凸構造における凹部及び凸部が、光信号を伝送する光伝送方向と垂直になるように形成されていることを特徴とする請求項3に記載の光配線。
【請求項6】
上記凹凸構造における凹部及び凸部が、光信号を伝送する光伝送方向に対し傾斜するように形成されていることを特徴とする請求項3に記載の光配線。
【請求項7】
上記凹凸構造における凹部が、光信号を伝送する光伝送方向に対し、平行かつ垂直になるになるように形成されており、
凹部と凸部とで格子形状を形成していることを特徴とする請求項3に記載の光配線。
【請求項8】
上記機能層に、格子状のスリットが形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の光配線。
【請求項9】
上記光伝送路が、透光性を有する材料から構成されるコア部と、該コア部の屈折率と異なる屈折率を有する材料から構成されるクラッド部とを備えた光導波路であることを特徴とする請求項1〜8の何れか1項に記載の光配線。
【請求項10】
機能層における上記構造体との対向部分が、凹部と凸部とからなる凹凸構造になっており、
上記凸部が、光伝送方向に延びる上記コア部と重なるように形成されていることを特徴とする請求項9に記載の光配線。
【請求項11】
上記クラッド部は、上記コア部の周囲を覆うように形成されているとともに、
光導波路における機能層と反対側の部分が、クラッド部を構成する材料のみで構成される凹部とコア部を構成する材料を含む凸部とからなる凹凸構造になっていることを特徴とする請求項9に記載の光配線。
【請求項12】
上記機能層における光導波路側の部分が、凹部と凸部とが交互に形成された凹凸構造になっており、
上記コア部は、上記凹部に収まるように形成されていることを特徴とする請求項9に記載の光配線。
【請求項13】
上記コア部と上記機能層とが接しており、
該コア部における機能層との接面が、上記クラッド部における機能層との接面と同一平面になっていることを特徴とする請求項9に記載の光配線。
【請求項14】
上記コア部及び上記クラッド部における機能層と反対側の面が、同一平面になっていることを特徴とする請求項9に記載の光配線。
【請求項15】
上記光伝送路が、透光性を有する材料から構成されるコア部のみで構成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の光配線。
【請求項16】
上記機能層が、引張強度が50MPa以上であり、かつ、弾性率が6500MPa以下または引張強度の80倍以下の有機材料から構成されており、その厚さが700μm以下であることを特徴とする請求項1〜15の何れか1項に記載の光配線。
【請求項17】
上記機能層が、引張強度が100MPa以上であり、かつ、ヤング率が200GPa以下の金属材料から構成されており、その厚さが70μm以下であることを特徴とする請求項1〜15の何れか1項に記載の光配線。
【請求項18】
上記機能層は、光伝送路表面に存在する構成材料の未反応基をキャップするプライマ材料から構成されていることを特徴とする請求項1〜15の何れか1項に記載の光配線。
【請求項19】
上記機能層が、コーティング材料と揮発溶剤との混合物の固化物から構成されたことを特徴とする請求項1〜15の何れか1項に記載の光配線。
【請求項20】
上記機能層は、
微粒子と、該微粒子を固定する固定樹脂の固化物からなる固定層とを備え、
上記微粒子が上記固定層に対して突出していることを特徴とする請求項1〜15の何れか1項に記載の光配線。
【請求項21】
請求項1〜20の何れか1項に記載の光配線を備えた光伝送モジュールであって、
電気信号を光信号に変換する第1の光素子が搭載された第1の基板と、
光信号を電気信号に変換する第2の光素子が搭載された第2の基板とを備え、
上記光配線は、上記第1及び第2の光素子と光学的に結合して、第1及び第2の基板間で光信号を伝送するようになっていることを特徴とする光伝送モジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【公開番号】特開2009−75365(P2009−75365A)
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−244311(P2007−244311)
【出願日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)
【Fターム(参考)】