説明

光配線プリント基板の製造方法

【課題】ミラー部と配線コアを相対的に高い位置精度で形成でき、工程を簡略化できる製造方法を提供する。
【解決手段】(A)基材11上に第1クラッド層12を形成する工程、(B)第1クラッド層12上に該クラッド層12よりも屈折率の高い材料からなるコア層14を積層する工程、(C)フォトマスクを用いて該コア層14を加工し、嵌合用バンプ15、ミラー用バンプ16、及び配線コアパターン17を同時に形成する工程、(D)ミラー用バンプ16に傾斜部を形成する工程、(E)前記嵌合用バンプ16を基準に位置決めを行いながらミラー反射膜形成用マスク19を用いて前記配線コアパターン17を保護し、ミラー用バンプ16に反射膜20を選択的にコーティングしてミラー部21を形成する工程、及び(F)前記ミラー部21と前記配線コアパターン17とを含む領域上に第2クラッド層22を形成する工程を有する光配線プリント基板の製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光配線プリント基板の製造方法に関する。さらに詳しくは、本発明は、伝送装置などの機器内において、チップ間やボード間で送受信される高速光信号を伝送する光配線プリント基板の光配線部と光接続部の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子素子間や配線基板間の高速・高密度信号伝送において、従来の電気配線による伝送では、信号の相互干渉や減衰が障壁となり、高速・高密度化の限界が見え始めている。これを打ち破るため電子素子間や配線基板間を光で接続する技術、いわゆる光インタコネクションが検討されている。光の伝送路として加工の容易さ、低コスト、配線の自由度が高く、かつ高密度化が可能な点からポリマー光導波路が注目を集めている。
このような光通信を用いるデバイスでは、電気信号から変換された光信号を光導波路に結合させる必要があり、光導波路と受発光素子との光軸を合致させる必要がある。光信号を光導波路に結合させる方法としては、例えば、コアの端部にコアの長手方向に対して45度の角度を持つ傾斜面を形成しておき、光導波路のコアと空気との屈折率差を利用して光を全反射させる光路変換ミラーが用いられる(特許文献1、図1参照)。
しかしながら、特許文献1に示されるような構造の場合、ミラー周囲に空洞ができるため、異物が付着する可能性があり、また熱膨張等による変形等によって信頼性の確保が困難な場合がある。
【0003】
そこで、別途ミラー部材を作製しておき、これを基板上に実装して光導波路に埋め込んだ構造の光・電気配線基板が提案されている(特許文献2参照)。特許文献2に開示される配線基板は、基材上の任意の位置にミラー部材を配置でき、実装レイアウトのフレキシブル性が向上するとともに、ミラー部材として金属又は金属を製膜したガラスなどの材料を用いることができるため、光を高効率で反射させることができるという利点がある。
しかしながら、特許文献2に開示される配線基板では、数十ミクロン程度の大きさの微小なミラー部材を、高精度に位置決めし、基板上に搭載することが困難である。また、ミラー部材を埋め込んだ光導波路の線膨張係数差や金属界面での密着不良によるコアの剥離などによって歩留まりや信頼性を悪化させる場合がある。
【0004】
これに対して、ミラー部を形成するための部材(以下「ミラー用バンプ」と称することがある。)をクラッド層上にパターン形成すると同時に、同部材によってクラッド層の任意の位置に少なくとも2つ以上のミラー反射膜形成用マスク及び配線コアの位置合わせマークを形成しておき、前記ミラー用バンプを物理切断によって傾斜部を形成し、前記位置合わせマークによってミラー反射膜形成用マスクの位置決めを行い、該傾斜部表面にコーティングによって反射用の金属膜を形成してミラー部を形成した後、前記位置合わせマークを用い、該ミラー部と隣接したクラッド層上に配線コアパターンを形成する方法が提案されている(特許文献3参照)。
この方法を用いることで、ミラー部と配線コアを相対的にμmオーダーの高い位置精度で形成でき、異物の付着や熱膨張による変形等による信頼性及び性能劣化を回避することができる。しかしながら、特許文献3に開示される方法では、ミラー用バンプと配線コアパターンを異なるフォトマスクを用いて順に形成する必要があるため、両者の位置合わせにおいて小さいながらもずれが発生すること、また、ラミネートや露光、現像の工程を2回繰り返さなければならず、工程が煩雑であることが課題であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許3748528号公報
【特許文献2】特開2003−50329号公報
【特許文献3】国際公開2009/098834号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上述の特許文献3に開示される技術を改良したものであり、ミラー部と配線コアの相対位置精度を、フォトマスクの寸法精度自体と同等とし、かつさらに簡便で効率良い製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、クラッド層上に設けられたコア層の加工において、嵌合用バンプ、ミラー用バンプ、及び配線コアパターンを同一のフォトマスクにて同時に形成し、ミラー部形成の際の反射膜コーティング工程において、配線コアパターンをミラー反射膜形成用マスクに設けた凹形状の窪み部分により保護することで、上記課題を解決し得ることを見出した。
本発明は、かかる知見に基づいて完成したものである。
【0008】
すなわち、本発明は、(A)基材上に第1クラッド層を形成する工程、(B)第1クラッド層上に該クラッド層よりも屈折率の高い材料からなるコア層を積層する工程、(C)フォトマスクを用いて該コア層を加工し、嵌合用バンプ、ミラー用バンプ、及び配線コアパターンを形成する工程、(D)ミラー用バンプに傾斜部を形成する工程、(E)前記嵌合用バンプを基準に位置決めを行いながらミラー反射膜形成用マスクを用いて前記配線コアパターンを保護し、ミラー用バンプの傾斜部に反射膜を選択的にコーティングしてミラー部を形成する工程、及び(F)前記ミラー部と前記配線コアパターンとを含む領域上に第2クラッド層を形成する工程を有する光配線プリント基板の製造方法、を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ミラー部と配線コアの相対位置精度をフォトマスク自体と同等の精度で形成することができ、異物の付着や熱膨張による変形等による信頼性及び性能劣化がなく、かつ従来よりも工程を簡略化できる高い生産効率を有する製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の製造方法を示す概念図である。
【図2】本発明の製造方法の途中の過程での光配線プリント基板を示す図である。
【図3】本発明の製造方法の途中の過程での光配線プリント基板を示す図である。
【図4】本発明の製造方法の途中の過程で、ミラー反射膜形成用マスクを施した状態の光配線プリント基板を示す図である。
【図5】本発明の製造方法の途中の過程で、ミラー反射膜形成用マスクを施した状態の光配線プリント基板を示す図である。
【図6】光路変換ミラーを内蔵した光プリント基板の光損失を測定するためのセットアップを示す図である。
【図7】光プリント配線板の光損失を測定する装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の製造方法は、以下の(A)〜(F)工程を有するものである。以下、図面を参照しつつ各工程について詳細に説明する。
本発明の(A)工程は、基材11上に第1クラッド層12を形成する工程である(図1(a)参照)。ここで用いられる基材としては、通常、光配線プリント基板に用いられるものであれば特に制限はなく、例えば、ガラスエポキシ、ポリイミド、シリコン、石英、セラミックなどを用いることができる。基材の厚さとしては、通常0.01〜1mm程度である。なお、後述する嵌合用バンプ、ミラー用バンプ、及び配線コアパターンを形成する工程において、これらの位置決めのために、基材11上に位置合わせ用マーカー13を形成しておいてもよい。
【0012】
第1クラッド層12を形成する材料としては、作製工程の簡略化及びプリント基板との親和性の面から、紫外線(UV)で硬化し、フォトリソグラフィにてパターニング可能な感光性ポリマー材料(感光性樹脂)を用いることが好ましい。第1クラッド層の厚さとしては特に制限はないが、2〜50μmであることが好ましい。2μm以上であると、伝搬光をコア内部に閉じ込めるのが容易となり、50μm以下であると、光導波路全体の厚さが大きすぎることがない。なお、第1クラッド層の厚さとは、コア部と第1クラッド層との境界から第1クラッド層の下面までの値である。
第1クラッド層12の形成方法としては、形成材料をワニス化して基材に塗布するか、又はあらかじめ形成材料でフィルムを作製しておき、該フィルムを積層した後、光又は加熱により硬化して、クラッド層12を得る。
【0013】
次に、本発明の(B)工程は、第1クラッド層12上に該クラッド層よりも屈折率の高い材料からなるコア層14を積層する工程である(図1(b)参照)。コア層の形成材料としては、通常は、クラッド層形成材料と同種のものを用いることが、屈折率の制御及び層間密着の観点から好ましい。すなわち、紫外線(UV)で硬化し、フォトリソグラフィにてパターニング可能な感光性ポリマー材料(感光性樹脂)を用いることが好ましい。また、コア層の形成方法としては、第1クラッド層の形成方法と同様である。
コア層の厚さについては、特に制限はないが、10〜150μmであることが好ましい。コア層の厚さが10μm以上であると、後に製造される配線コアパターンの受発光素子又は光ファイバーとの結合において位置合わせトレランスが小さくなることがなく、150μm以下であると、配線コアパターンの受発光素子又は光ファイバーとの結合において、結合効率が小さくなることがない。以上の観点から、コア層の厚さは、20〜100μmの範囲であることがより好ましい。
【0014】
次いで、本発明の(C)工程は、コア層14に対して、フォトマスクを用いて該コア層を加工し、嵌合用バンプ15、ミラー用バンプ16、及び配線コアパターン17を同時に形成する工程である(図1(c)参照)。より具体的には、アートワークと呼ばれるネガ又はポジマスクパターンを通して活性光線を画像状に照射して露光し、ウエット現像、ドライ現像等で未露光部を除去して現像し、嵌合用バンプ、ミラー用バンプ、及び配線コアパターンを形成する。なお、図1(c)を上面からみたものを図2に示す。本工程では嵌合用バンプ15、ミラー用バンプ16、及び配線コアパターン17が同一のフォトマスクによって形成されるため、これらの相対位置精度はフォトマスク自体の精度と同等となり、極めて高い精度で位置決めができる。
ここで用いるフォトマスクの材質には特に制限はなく、樹脂フィルム、ソーダガラス、石英ガラスなどが挙げられるが、寸法安定性、パターン精度、露光光線透過率の点から石英ガラスが好ましい。
活性光線の光源としては、例えば、カーボンアーク灯、水銀蒸気アーク灯、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、キセノンランプ等の紫外線を有効に放射する公知の光源が挙げられる。また、他にも写真用フラッド電球、太陽ランプ等の可視光を有効に放射するものも用いることができる。
現像液としては、有機溶剤、アルカリ性水溶液等の安全かつ安定であり、操作性が良好なものが好ましく用いられる。
【0015】
上記嵌合用バンプ15は、(E)工程において、ミラー反射膜形成用マスクの位置決めをするために用いるものである。その形成位置については、特に制限はないが、図1(c)及び図2に示すように、ミラー用バンプ16の近傍に位置することが好ましい。ミラー反射膜形成用マスクの位置決めに際し、嵌合用バンプ15にミラー反射膜形成用マスクの位置決め部をはめ込む形とすることで簡便に位置決めが可能だからである。なお、ここで位置決め部とは、ミラー反射膜形成用マスク19にあらかじめ設けられるもので、嵌合用バンプ15の位置に合致するように形成される。
また、図1(c)及び図2に示す態様では、ミラー用バンプ16と配線コアパターン17は連続したものとなっているが、これらの間に間隙を設けることもできる。また、ミラー用バンプ16は図2に示すように連続的につながった状態で形成してもよいし、図3に示すように、コアパターン17の各光配線に合わせて、その光配線の部分にのみ設けてもよい。
【0016】
次に、本発明の(D)工程は、ミラー用バンプに傾斜部を形成する工程である(図1(d)参照)。該傾斜部は、基板の表面に対して順テーパをなすように形成される。傾斜部の角度としては、基材の表面に対して、43〜47度の角度であることが好ましい。
該傾斜部を形成する方法としては、図1(d)に示すように、直方体のミラー用バンプ16に対して、金属ブレード18を用いたダイシングによって形成することができる。なお、傾斜部形成の手法としては、ダイシングによる切削の他に、高出力レーザー照射による物理加工を用いることもできる。
【0017】
次いで、本発明の(E)工程は、前記嵌合用バンプ15を基準に位置決めを行いながら、ミラー反射膜形成用マスク19を用いて前記配線コアパターン17を保護し、ミラー用バンプの傾斜部に反射膜20を選択的にコーティングしてミラー部21を形成する工程である(図1(e)参照)。なお、図1(e)を上面からみたものを図4に、図4の点線a及び点線bの断面図を図5(g)及び図5(h)にそれぞれ示す。
ミラー反射膜形成用マスク19は、図4に示すように、ハーフエッチング部23とフルエッチング部24を有するものであることが肝要である。ここで、フルエッチング部とは、ミラー反射膜形成用マスク素材を抜き加工し設けた開口部のことであり、ハーフエッチング部とは、マスク素材の途中までエッチングした加工部のことである。フルエッチング部はミラー反射膜を形成するために、ハーフエッチング部は配線コアパターンを覆い、ミラー反射膜形成時に反射膜が付かないように保護するために設ける。
従来、ミラー反射膜形成用マスクとして、フルエッチング部のみを有するメタルマスクを用いていた。しかしながら、このようなマスクを用いた場合、嵌合用バンプ、ミラー用バンプおよび配線コアパターンが形成された基板にミラー反射膜を形成しようとすると、図6(i)に示すように、配線コアパターン上にマスクが単に置かれる形態となり、位置合わせ用の嵌合パターンを利用したマスクの位置決めが行えない。また、第1クラッド層12とマスクの間にコア層分の高さのギャップができるため、ミラー反射膜形成材料の回り込みが大きくなり、配線コアパターンにも反射膜が付いてしまう場合がある。
これらの課題を解決するため、本発明では、フルエッチング部とハーフエッチング部を有するマスクを用いる方法を見出した。すなわち、図6(j)に示すように嵌合用バンプ15を用いてマスクの位置決めを行い、ミラー用バンプへの反射膜形成にはフルエッチング部を使用し、配線コアパターンの保護にはハーフエッチング部を使用することにより、上述の課題を解決したものである。
【0018】
ミラー反射膜形成用マスク19の位置決めは、ミラー反射膜形成用マスクに上述の位置決め部、例えば、マスクの端部に嵌合用の溝又は穴を形成しておき、これに嵌合用バンプ15を嵌め込むことで行うことができる。したがって、顕微鏡等を用いなくても、容易に位置決めをすることができる。ここでは、ミラー反射膜形成用マスクとして、樹脂、ガラス、金属製の素材を加工したものを用いることができるが、加工精度や寸法安定性、ハンドリングのしやすさ等の観点から、金属製の板を加工したもの、いわゆるメタルマスクを用いることが好ましい。本発明の製造方法では、フォトマスクによって形成した嵌合用バンプ15を用いてミラー反射膜形成用マスクを位置決めする。嵌合用バンプ15とミラー用バンプ16は、同一フォトマスクで同一工程によって形成されるため、極めて高い精度でミラー反射膜の位置を決めることができる。
また、ミラー反射膜形成用マスク19の配線コアパターン17を保護する部分は、配線コアパターンよりもわずかに大きめに作製しておき、反射膜20をコーティングする際に配線コアパターン17に接しないようにすることが好ましい。
反射膜のコーティングは、蒸着法やスパッタ法などを用いることができる。また、反射膜の種類としては誘電体多層膜や金、銀、銅、アルミニウムなどの種々の金属材料を用いることができるが、反射率、安定性の点から金が好ましい。また、ミラー用バンプとの密着性向上のため、下地層としてクロム、ニッケル、チタンなどを用いてもよい。
【0019】
次に、本発明の(F)工程は、前記ミラー部と前記配線コアパターンとを含む領域上に第2クラッド層22を形成する工程である(図1(f)参照)。第2クラッド層の厚さは、コアの埋込みが可能であれば特に制限はないが、通常20〜200μmである。
また、第2クラッド層22を形成するための材料及び形成方法については、第1クラッド層と同様である。
【実施例】
【0020】
次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
実施例1
(1)クラッド層形成用樹脂フィルムの作製
(A)バインダポリマーとして、フェノキシ樹脂(商品名:フェノトートYP−70、東都化成(株)製)48質量部、(B)光又は熱重合性化合物として、アリサイクリックジエポキシカルボキシレート(商品名:KRM−2110、分子量:252、(株)アデカ製)49.6質量部、(C)光又は熱重合開始剤として、トリフェニルスルホニウムヘキサフロロアンチモネート塩(商品名:SP−170、(株)アデカ製)2質量部、増感剤として、SP−100(商品名、(株)アデカ製)0.4質量部、有機溶剤としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート40質量部を広口のポリ瓶に秤量し、メカニカルスターラ、シャフト及びプロペラを用いて、温度25℃、回転数400rpmの条件で、6時間撹拌し、クラッド層形成用樹脂ワニスAを調合した。その後、孔径2μmのポリフロンフィルタ(商品名:PF020、アドバンテック東洋(株)製)を用いて、温度25℃、圧力0.4MPaの条件で加圧濾過し、さらに真空ポンプ及びベルジャーを用いて減圧度50mmHgの条件で15分間減圧脱泡した。
上記で得られたクラッド層形成用樹脂ワニスAを、PETフィルム(商品名:コスモシャインA4100、東洋紡績(株)製、厚さ:50μm)の非処理面上に塗工機(マルチコーターTM−MC、(株)ヒラノテクシード製)を用いて塗布し、80℃、10分、その後100℃、10分乾燥し、次いで保護フィルムとして離型PETフィルム(商品名:ピューレックスA31、帝人デュポンフィルム(株)、厚さ:25μm)を離型面が樹脂側になるように貼り付け、クラッド層形成用樹脂フィルムを得た。このとき樹脂層の厚さは、塗工機のギャップを調節することで、任意に調整可能であり、本実施例では、下部クラッド用フィルムが25μm、上部クラッド用フィルムが66μmとなるように調節した。
【0021】
(2)コア層形成用樹脂フィルムの作製
(A)バインダポリマーとして、フェノキシ樹脂(商品名:フェノトートYP−70、東都化成(株)製)26質量部、(B)光又は熱重合性化合物として、9,9−ビス[4−(2−アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン(商品名:A−BPEF、新中村化学工業(株)製)36質量部、およびビスフェノールA型エポキシアクリレート(商品名:EA−1020、新中村化学工業(株)製)36質量部、(C)光又は熱重合開始剤として、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド(商品名:イルガキュア819、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製)1質量部、及び1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン(商品名:イルガキュア2959、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製)1質量部、有機溶剤としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート40質量部を用いたこと以外は上記製造例と同様の方法及び条件でコア層形成用樹脂ワニスBを調合した。その後、上記製造例と同様の方法及び条件で加圧濾過さらに減圧脱泡した。
上記で得られたコア層形成用樹脂ワニスBを、PETフィルム(商品名:コスモシャインA1517、東洋紡績(株)製、厚さ:16μm)の非処理面上に、上記製造例と同様な方法で塗布乾燥し、次いで保護フィルムとして離型PETフィルム(商品名:ピューレックスA31、帝人デュポンフィルム(株)、厚さ:25μm)を離型面が樹脂側になるように貼り付け、コア層形成用樹脂フィルムを得た。本実施例では膜厚が50μmとなるよう、塗工機のギャップを調整した。
【0022】
(3)光配線プリント基板の作製
以下の方法により、光導波路長(ミラー間距離)4cm、コアサイズ50μm、コアピッチ250μm、コア本数4本を有する、光路変換ミラーを内蔵した光配線プリント基板を作製した。
基材として、ガラスエポキシ基板(日立化成工業(株)製「MCL−E679FGB」、厚さ0.6mm)を準備した。基材には、後のダイシングによる斜面ミラー形成用のアライメントマークを銅パターンにより形成した。該基材上に厚さ25μmのクラッド層形成用樹脂フィルムを真空加圧式ラミネータ((株)名機製作所製「MVLP−500」)を用い、500Pa以下にて7秒間真空引きした後、圧力0.4MPa、温度50℃、加圧時間30秒の条件で貼付して第1クラッド層を設け、紫外線照射装置(日立ビアメカニクス(株)製、「EV0800」)を用い、365nmの紫外線を1000mJ/cm2照射した後、オーブン中で80℃で12分加熱し第1クラッド層を形成した。次いで第1クラッド層上に、厚さ50μmのコア層形成用樹脂フィルムを、同ラミネータを用い、500Pa以下にて7秒間真空引きした後、圧力0.4MPa、温度50℃、加圧時間30秒の条件で積層した。
【0023】
次に、該コア材料に所定のパターンを有するフォトマスクを用いて、露光・現像により嵌合用バンプ、ミラー用バンプ、及び配線コアパターンを同時に形成した。露光には、上記紫外線照射装置を用い、800mJ/cm2の紫外線を照射した。また、現像液としては、N,N−ジメチルアセトアミドとプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを7対3(質量比)の混合液を用い、室温にて90秒の条件で現像を行った。その後2−プロパノールにてリンスし、80℃で10分、次いで100℃で10分乾燥した。
次に、ガラスエポキシ基材上に形成したダイシング用マークを基準に位置決めを行いながら、ダイシングブレード((株)ディスコ製「NBC−ZB226J」)を用い、ミラー用バンプに傾斜部を形成してミラー部を形成した。
次いで、前記嵌合用バンプを基準に位置決めを行いながらミラー反射膜形成用マスクを用いて前記配線コアパターンを保護しつつ、ミラー用バンプに反射膜を選択的にコーティングしてミラー部を形成した。ミラー反射膜形成用マスクとしては、厚さが150μmのメタルマスクを用いた。本メタルマスクは、嵌合用バンプを嵌め合わせるための開口部と、配線コアパターン保護のためのハーフエッチング部を有し、ハーフエッチング部の凹部の深さは75μmとした。
【0024】
反射膜のコーティングには、電子線加熱式蒸着装置((株)ファースト技研製、「RE0025」)を用いた。まず、下地層としてチタンを0.05μm蒸着し、次いで反射膜として金を0.25μm蒸着した。
次に、前記ミラー部と前記配線コアパターンとを含む領域上に、厚さ66μmのクラッド層形成用樹脂フィルムをラミネータによって貼付し、第2クラッド層を形成した。第2クラッド層の材質及び形成方法は、第1クラッド層と同様の方法である。コア上部の第2クラッド層の厚さは、25μmであった。作製した光配線プリント基板では、ミラー用バンプと光配線コアパターンを同一のマスクにより形成したため、両者の位置ずれはなかった。
作製した光プリント配線板の光損失を図7に示すセットアップにて測定した。光源に850nmの面発光レーザー(VCSEL(EXFO社製、「FLS−300−01−VCL」)を、受光センサ(PD)に株式会社アドバンテスト製「Q82214」を用いた。入射ファイバーとして、GI−50/125マルチモードファイバー(GI50−MMF、NA=0.20)、出射ファイバーとしてSI−114/125マルチモードファイバー(SI−114−MMF、NA=0.22))用い、ミラー損失を含む光損失を測定した結果、4ch平均で3.2dBであった。なお、光ファイバーと光導波路界面には、20μmのエアギャップを設けて測定した。別途測定した光導波路の伝搬損失は光路長4cmで0.4dBであったので、ミラー損失は片側1.4dBと求められる。
【0025】
比較例1
従来の方法、すなわち、ミラー用バンプと配線コアパターンをそれぞれのフォトマスクを用いて別工程で作製した。この場合、ミラー用バンプと配線コアパターンとの間に、1〜10μm程度の位置ずれが生じた。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明によれば、ミラー部と配線コアの相対位置精度を、従来法と比較して、同等以上のものとし、かつさらに簡便で効率良い製造方法を提供することができる。
【符号の説明】
【0027】
11.基材
12.第1クラッド層
13.位置合わせ用マーカー
14.コア層
15.嵌合用バンプ
16.ミラー用バンプ
17.配線コアパターン
18.金属ブレード
19.ミラー反射膜形成用マスク
20.反射膜
21.ミラー部
22.第2クラッド層
23.ハーフエッチング部
24.フルエッチング部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)基材上に第1クラッド層を形成する工程、(B)第1クラッド層上に該クラッド層よりも屈折率の高い材料からなるコア層を積層する工程、(C)フォトマスクを用いて該コア層を加工し、嵌合用バンプ、ミラー用バンプ、及び配線コアパターンを同時に形成する工程、(D)ミラー用バンプに傾斜部を形成する工程、(E)前記嵌合用バンプを基準に位置決めを行いながらミラー反射膜形成用マスクを用いて前記配線コアパターンを保護し、ミラー用バンプに反射膜を選択的にコーティングしてミラー部を形成する工程、及び(F)前記ミラー部と前記配線コアパターンとを含む領域上に第2クラッド層を形成する工程を有する光配線プリント基板の製造方法。
【請求項2】
前記ミラー反射膜形成用マスクの配線コアパターンを保護する領域が、凹形状の窪みによって形成されている請求項1に記載の光配線プリント基板の製造方法。
【請求項3】
前記第1クラッド層及び前記コア層にそれぞれ感光性ポリマー材料を用い、前記ミラー用バンプ及び前記配線コアパターンは、紫外光を用いたリソグラフィによって形成する請求項1又は2に記載の光配線プリント基板の製造方法。
【請求項4】
前記傾斜部がダイシング又はレーザー照射によって前記ミラー用バンプの側面に、前記基板の表面に対して順テーパをなすように形成する請求項1〜3のいずれか1項に記載の光配線プリント基板の製造方法。
【請求項5】
前記傾斜部が、前記基材の表面に対して43〜47度の角度をなす請求項1〜4のいずれか1項に記載の光配線プリント基板の製造方法。

【図7】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−73290(P2012−73290A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−215957(P2010−215957)
【出願日】平成22年9月27日(2010.9.27)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】