説明

光量調整装置及びこれを用いた投光装置並びにプロジェクタ装置

【課題】 プロジェクタ等の使用する装置内の温度環境が、光源ランプの影響で高温であっても常に適正な光量に調整することが可能な光量調整装置及び投光装置並びにプロジェクタ装置の提供。
【解決手段】 光源からの光を透過する光路開口を有する基板と、上記光路開口に配置され該光路開口を通過する光量を調節する羽根部材と、この羽根部材を駆動する駆動手段とを備えた光量調整装置の構成において、上記光路開口を通過した光の光路を主副2方向に分岐する光路分岐手段を設ける。この光路分岐手段はハーフミラー、ダイクロイックミラーなどの分岐ミラーで構成する。そして上記光路分岐手段で分岐した副方向の光路中に光電センサを配置し、この光電センサからの出力信号に基づいて上記駆動手段を制御する制御手段を設ける。これによって光源ランプの熱を帯びた光はハーフミラー、ダイクロイックミラーなどの光路分岐手段で分岐されて光電センサに至るため光の熱は低減され誤検出を招くことが少ないなど前述の課題を達成することが出来る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はプロジェクタなどの投影装置で光源からの光量を大小調節する光量調整装置に係わり、詳細には光量を絞る羽根部材の開閉制御が、主に光源ランプから発生する熱の影響を受けない光量調整装置及びこれを用いた投光装置並びにプロジェクタ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般にプロジェクタなどの投写装置はブラウン管(CRT)或いは液晶パネル等の像形成部で文字、映像などの画像を形成し、これにハロゲンランプなどの光源からの光を照射し、投影レンズでスクリーンに投写する装置として広く知られている。そして、文字画像などの静止画をスクリーンに投写して各種プレゼンテーションに用いられ、或いは映像などの動画をスクリーンに投写するホームシアター等として用いられている。
【0003】
プレゼンテーション用、映像鑑賞用いずれの用途にあっても使用する環境が明るい部屋であるのか、暗い部屋であるのかによって視聴者の視覚にあたえる影響は大きく、例えば明るい部屋で画像の輝度が低いと鮮明な画像が得られず、逆に暗い部屋で輝度が高いと眩しく感ずる。これと同時に順次変化する画像の輝度が例えば暗い画面から明るい画面に変化するなど大きな輝度変化が長時間繰り返されると目に疲労や光学的な刺激を及ぼす恐れがある。
【0004】
従って、スクリーン上に投射する画像の明るさは適正に調整する必要があり、暗い部屋で投写する場合には光量を小さく抑制し、明るい部屋では光量を大きくするように調整することが使用者にとって見易く、また画像が明暗激しく変化する場合には使用者の目に与える刺激を和らげるように光量を画面毎に調整する必要がある。
【0005】
従来このような光量の調整には、例えば特許文献1に開示されているように光源からの光をダイクロックミラーでR、G、B三原色に分岐して液晶などの像形成パネルに照射する際に、この光源とダイクロックミラーとの間に光量絞り装置を配置している。
【0006】
同特許文献2のプロジェクタ装置は光源ランプからの光をダイクロイックミラーなどの分光器でR、G、B三原色に分光し、この三原色の光をそれぞれ液晶パネルからなる像形成パネルに照射し、パネルを通過した光を集光して投影レンズで外部のスクリーン上に投写している。
【0007】
そして像形成の手段としては液晶パネルの他ブラウン管で走査線を発光する方法(CRTプロジェクタ)或いはR、G、B三原色のビーム光を微細なミラー面で走査光に変換するデジタル映像方法(デジタルライトプロセッシングプロジェクタ)等が知られている。
【0008】
そこで上記光量絞り装置は光源からミラーに至る光路に光軸中心を一致させた開口(光路開口)を有する基板を配置し、この基板の光路開口周縁に複数枚の羽根を順次重ね合わせてそれぞれ回動自在に配置している。
【0009】
そして各羽根の輪郭縁部は互いに鱗状に重なり合うように光路開口の周縁に所定間隔で取付けられ、各羽根の先端部が光路開口に臨むように配置され、それぞれの羽根の基端部を中心に回動すると先端部が光路開口を大口径から小口径に覆う構造が光量調整装置として広く知られている。
【0010】
そこで先端部を光路開口に臨ませた羽根部材は基端部をピンなどで基板に回動自在に支持され伝動部材で駆動モータに連結されている。駆動モータとしては種々の物が知られているがマグネットロータの外周に励磁コイルを巻回し、このコイルに電流を供給することによってロータを所定角度回転し、このロータの回転を伝動部材で羽根に伝達する構造が広く用いられている。
【0011】
そこで光量の調整は、まず外部環境の明るさ(プロジェクタの場合、使用する部屋の明るさ)を光電センサで検出し、予め設定された基準の明るさと比較し投影する画像の明るさを設定する。この設定された明るさ(輝度)情報に基づいて羽根部材を開方向若しくは閉方向に移動して最適な光量に調整する。このときの光量調整は従来、上述のマグネットロータの回転位置をロータの周囲に配置したホール素子で検出し、このホール素子からの位置検出値が設定された明るさと一致するか否かで励磁コイルへの通電を制御している。
【0012】
つまりマグネットロータを回転自在に支持したコイル枠にマグネットの磁極と直交する方向にコイルを巻廻し、このコイル枠にホール素子を取付けてマグネットロータの回転による磁界の変化をホール素子で検出する。そしてホール素子の検出値(出力電流値)でロータに連結された羽根部材の位置を検知し、設定された明るさ(輝度)と比較し、羽根位置が暗いときには羽根を開き方向に駆動する電流を励磁コイルに印加し、両者が一致したとき通電を停止する。逆に羽根位置が明るいときには羽根を閉じ方向に駆動する逆電流を印加し一致したときその通電を停止するように制御している。
【特許文献1】特許第3397899号公報
【特許文献2】特開2003−241311号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
ところが従来技術として上述したカメラ装置などに広く用いられる光量調整装置をプロジェクタ装置などの投光部に使用すると次の問題が生ずる。
【0014】
光源としてランプ、特に高輝度のハロゲン、キセノンなどのランプを使用するとランプで発生する熱が光と一緒に伝播し、熱の影響で誤動作が頻発する。通常のプロジェクタでは光源ランプの近傍は200℃程度の高温となり、この光源ランプからの光を大小口径に絞る光量調整装置はこの高温にさらされる。この温度の影響はホール素子に著しく、現在市販されているホール素子では誤検出が激しく使用することができない。
【0015】
そこで本発明は、内部に組込まれ使用する温度環境が高温であっても常に適正な光量に調整することが可能な光量調整装置及び投光装置並びにプロジェクタ装置の提供をその主な課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は上記課題を解決するため以下の構成を採用する。
光源からの光を透過する光路開口を有する基板と、上記光路開口に配置され該光路開口を通過する光量を調節する羽根部材と、この羽根部材を駆動する駆動手段とを備えた光量調整装置の構成において、上記光路開口を通過した光の光路を主副2方向に分岐する光路分岐手段を設ける。
【0017】
この光路分岐手段はハーフミラー、ダイクロイックミラーなどの分岐ミラーで構成する。そして上記光路分岐手段で分岐した副方向の光路中に光電センサを配置し、この光電センサからの出力信号に基づいて上記駆動手段を制御する制御手段を設ける。これによって光源ランプの熱を帯びた光はハーフミラー、ダイクロイックミラーなどの光路分岐手段で分岐されて光電センサに至るため光の熱は低減され誤検出を招くことが少ないなど前述の課題を達成することが出来る。
【0018】
また、前記駆動手段はマグネットを有するロータと、このマグネットの周囲に磁界を生起する励磁コイルとで構成し、前記制御手段は上記励磁コイルに正負電流を供給することによって上記ロータを正逆方向に所定角度回転するように構成する。そして前記光電センサは検知した光量に応じた出力値を上記制御手段に伝達するように構成する。
【0019】
次に、本発明の投光装置は、光源ランプと、この光源ランプからの光の赤外線を減衰するフィルタと、このフィルタからの光が通過する光路開口を有する基板と、この基板に基端部を支持され先端部が上記光路開口に臨むように配置された羽根部材と、この羽根部材を開閉駆動する駆動手段とを備えた構成において、上記光路開口を通過した光の光路を主副2方向に分離する光路分岐手段を設け、この光路分岐手段で分岐した副方向の光路中に光電センサを配置する。
【0020】
そしてこの光電センサからの出力信号に基づいて上記駆動手段を駆動制御する制御手段を設け、上記光路分岐手段で分岐した主方向の光を目的物に照射するように構成する。前記構成と同様に前記課題を達成することが可能となる。
【0021】
また、前記光路分岐手段はダイクロイックミラー若しくはハーフミラーなどの分岐ミラーで構成し、分岐された副方向の光量が主方向の光量より小さく設定する。これによって光電センサに及ぼす熱の影響を更に低減することが可能となる。
【0022】
画像を形成する像形成手段と、この像形成手段に光を照射する光源ランプと、上記像形成手段からの光を投射する投影手段と、上記光源から投影手段に至る光路中に配置され光路開口を有する基板と、上記基板に回動自在に支持され上記光路開口の光量を規制する少なくともひとつの羽根部材と、上記羽根部材に連結され該羽根部材を開閉駆動する駆動手段とを備えた構成において、上記光路開口を通過した光の光路を主副2方向に分岐する光路分岐手段を設け、この光路分岐手段で分岐した副方向の光路中に光電センサを配置しこの光電センサからの出力信号に基づいて上記駆動手段を駆動制御する制御手段を設ける。
【発明の効果】
【0023】
本発明は、光源からの光の光路を主副2方向に分岐し、副方向の光路に光電センサを配置して羽根部材を駆動制御するものであるから、光源ランプの熱は副方向に分配される際に軽減され光電センサが誤検出することが少ない。
【0024】
従って、高輝度化の為に光源ランプが高熱を発生しても、また装置を小型コンパクトに構成しても光量調整の為の光電センサへの熱の影響を抑えることが出来、常に適正な光量に調整することが可能である。また、光源ランプと光電センサとの間に赤外線フィルタを配置することによって、更に温度低下をもたらし熱の影響を少なくすることが可能である。
【0025】
そしてハーフミラー、ダイクロイックミラー等の光路分岐手段で分岐した主方向の光路に対し、副方向の光路の光量を小さく選定することによって光電センサへの熱の影響を軽減することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下本発明を図示の好適な実施の形態に基づいて詳述する。
図1は本発明に係わるプロジェクタ装置のシステム構成を示す。
プロジェクタ装置はコンピュータ、DVDプレイヤ、テレビジョン、ビデオデッキなどの表示装置として使用される。コンピュータと接続した場合はRGB信号、DVDプレイヤはコンポーネント信号、テレビジョンの場合はビデオ信号或いはハイビジョン信号で画像情報を入力する。これ等の入力信号は画像信号変換部から像形成部に転送される。像形成部は液晶パネル、ブラウン管、DMD(デジタルマイクロミラーディバイス)などで画面を形成し、この画面に光源ランプから光を照射し投影レンズでスクリーン上に投影する。
【0027】
図2には画像形成部として液晶パネル(画像形成手段)を用いた場合のプロジェクタ装置の構成を示す。プロジェクタ装置Hはケーシング内に光源ランプ1と、この光源ランプ1からの光をRGBに分光する分光ミラー10と、画像形成パネル8と、画像合成(合成プリズム11)と、投影レンズ9とで構成される。この他装置構成としては電源部、制御回路などがケーシング内に組み込まれ、通常ケーシングには冷却ファンが取付けられる。
【0028】
光源ランプ1としてはメタルハイライドランプ、高圧水銀ランプ、NSHランプ、キセノンランプ、VIPランプ等が目的に応じた明るさ、耐久性によって選択されている。これ等の光源ランプ1は放物面の反射鏡2でほぼ平行光として発光される。光源ランプ1からの光はフィルタ3に至るが、フィルタ3にはレンズアレーの一種である例えばインテグレータレンズが一般に用いられ、このインテグレータレンズにより赤外線や紫外線をカットする。このフィルタ3で不要な赤外線をカット(減衰)することによって光源ランプ1から発生する熱も抑えられる。
【0029】
フィルタ3を通過した光は後述する光量調整装置Eにより光量調節されインテグレータレンズ4に送られる。このインテグレータレンズ4は液晶パネルへの集光効率と周辺光量比を改善し輝度ムラを修正する。インテグレータレンズ4を通過した光は反射ミラー12aにより直角に折り曲げられる。この光は分光ミラーによってR、G、B三原色に分光されるが、まずG光とR光を透過させB光のみを反射させる特性を持ったダイクロイックミラー(分光ミラー)10aにより反射分離されたB光は、反射ミラー12bを介して集光レンズ5aに導かれ平行光に集光されて液晶パネル8aを透過しB光の画像として合成プリズム11に至るように構成されている。
【0030】
次に、1段目のダイクロイックミラー(分光ミラー)10aを透過したG光とR光は、R光を透過させG光を反射させる特性を持った2段目のダイクロイックミラー(分光ミラー)10bにより反射分離される。この光は、集光レンズ5bで平行光に集光され液晶パネル8bを透過しG光の画像として合成プリズム11に至る。同様に2段目のダイクロイックミラー(分光ミラー)10bを透過したR光は、2枚の反射ミラー12c、12dを介して集光レンズ5cに導かれ平行光に集光されて液晶パネル8cを透過しR光の画像として合成プリズム11に至る。そこで合成プリズム11ではR、G、B三原色の画像が1つに合成されカラー画像として投影レンズ9に導かれ、この投影レンズ9で適宜拡大され前方のスクリーンSに投写される。
【0031】
そこで本発明は上述のフィルタ3とインテグレータレンズ4との間に次の構成の光量調整装置Eと光路分岐手段(分岐ミラー)50を組込む。この光量調整装置Eは光源1からの光が通過する光路開口に開口径を大小変更する羽根部材200を備え、光路分岐手段50は光路開口を通過した光を主副方向に分岐する分岐ミラー50と、分岐された副方向の光路に配置した光電センサ70を備えている。そして羽根部材200を通過した光を光電センサ70で検出し、その検出値に基づいて羽根部材200を移動して光量調節する。順次その構成について説明すると、光源ランプ1からの光の光路には赤外線フィルタ3、光量調整用の羽根部材200、分岐ミラー50、インデグレータレンズ4の順に配置される。
【0032】
フィルタ3は前述のように赤外線や紫外線をカットすると共に、中央部に光を透過させる矩形領域3aを形成するように、矩形領域外の表面には反射コーティングが施してある。従って射出照射された光束は矩形領域3aでスクリーン投写に不要な周辺光をカットされて光量調整装置Eに照射される。この光量調整装置Eの光路開口510は、羽根部材200が全開放時の開口径より大きく、また羽根部材200の最大開口径は前記の矩形領域3aを透過する領域より小さく設定されている。
【0033】
羽根部材200は基板の光路開口510に1枚若しくは複数枚の羽根で構成され、駆動モータ700によって開閉動する。そこで羽根部材200を通過した光の光路を主副2方向に分岐する分岐ミラー50を設ける。この分岐ミラー50はハーフミラー、ダイクロイックミラーなどで光の一部を透過し、一部を反射する。
【0034】
図2に示す装置はダイクロイックミラーで構成する場合を示し、光源ランプ1からの光を直線方向の主光路と、これと直交する副光路に分岐する。この場合ミラーの構成は透過率の大きい素材で主光路方向の光量が副光路方向の光量より大きくなるように設定してある。そして副光路には主光路から距離を隔てた位置に集光レンズ60と光電センサ70を配置する。
【0035】
光電センサ70としては、フォトトランジスタ、フォトダイオード等が知られ図示のものはフォトダイオードを使用している。従って、光源ランプ1からの光は分岐ミラー50で主副2方向に分岐され、副方向の光路の光量は集光レンズ60で集光され光電センサ70に照射される。この光電センサ70からは光量に応じた電流が検出値として出力される。尚、光電センサ70の出力値に応じて前記羽根部材200を制御する制御回路については後述する。
【0036】
次に図3に基づいて羽根部材の構造について説明する。
羽根部材200は後述するように基板に形成した光路開口510に複数枚の羽根部材を開閉調整自在に配置して構成されるが、この羽根部材はステンレス材、SK材等の金属材を用いると共に、光源からの熱を吸収しないように表面にクロムメッキ、ニッケルメッキ等の光沢メッキが施されている。このように羽根部材を金属薄板で構成したのは矩形領域3aを通過した光はフィルタ3で赤外線カットされるがまだ相当に高温である為に熱による変形を防止する為である。
【0037】
図4に示すように光量調整装置Eは円板形状など適宜形状の基板(以下地板という)に、羽根部材200と、この羽根部材200を開閉する伝動部材(図示のものはリング板)400と、この伝動部材400を駆動する駆動モータ700をそれぞれ取付け、この地板500に押え板100を取付けて構成する。従って上記各構成部品は地板500と押え板100との間に組み込まれる。
【0038】
前記地板500は中央に光路開口510を形成し、その光路開口510の外側同心円上に凹溝520を設けその溝底に突起ガイドレール525を形成し、リング板(伝動部材)400を回動自在に支持する。さらにその外側同心円上の等分割された位置にそれぞれ植設された羽根部材200の回転中心となる支軸530と、それぞれの支軸530の近傍で光量調整手段(羽根部材)200の作動を妨げることが無い位置に押え板100をネジ止めするための止め孔550と、外部に突出した駆動モータ700を支持するための止め孔542と、逃げ孔544及び作動レバー600の後述する作動ピン620が貫通する扇形スリット546を形成した支持部540を備えている。尚、図中同一形状で示す支軸530は同一機能を有しており符号は省略している。
【0039】
リング板400は、中央に開口410を有し、地板500の凹溝520に回動可能に嵌合されている。また羽根部材200を揺動するためにリング平面上で円周等分割された位置に植設された作動ピン420と、地板500の支持部540側に突出したアーム430と、そのアーム430の先端部にスリット孔440を形成し、後述する作動レバー600の作動ピン620が嵌合する。
【0040】
図示の羽根部材200は6枚で構成され、各羽根部材の端部に地板500の支軸530と嵌合し回動自在となる嵌合孔210と、リング板400の作動ピン420が嵌合するスリット孔220と、図示の様に積層される各羽根部材先端部に相互の羽根部材を所定の間隔で支える突起230とを備えている。尚、図4に示す同一形状は同一機能を有しており符号は省略している。
【0041】
押え板100は、中央に地板500の光路開口510と同等径の光路開口110を有したリング形状に形成され、リング板400と羽根部材200を地板500に対し回動可能に保持及び保護するために地板500から一定の間隔を保って地板500に固定するための取付け部120と、リング板400の作動ピン420の逃げ用スリット孔130と、地板500の支軸530の逃げ孔140を形成している。
【0042】
作動レバー600は一端に駆動モータ700の支軸710に嵌合固定する嵌合孔610と、他端先端部に形成された作動ピン620を有し、作動ピン620はリング板400のスリット孔440に嵌合し駆動モータ700の駆動をリング板400に伝達する。
【0043】
駆動モータ700は、図5で説明すると前述の作動レバー600と外部中央で嵌合する回転軸710と、回転軸710が貫通するマグネットロータ720と、マグネットロータ720を回転可能に支持する回転軸方向上下又は左右に二分割されたコイル枠730と、コイル枠730の外周に巻廻された伝導コイル740と、外部との磁気的影響をカットするヨーク750と、カバー770、780と、カバー770と一体成形され、地板500に固定支持される固定部760を備えている。この他、駆動モータ700としては種々の電磁モータが採用可能であるが、図示のものはマグネットロータ720の周囲にその磁極方向と直交する方向に励磁コイルを巻回し、励磁コイルに電流を印加して生起した磁界でマグネットロータ720を所定角度回転させる。
【0044】
そして印加する電流の方向で時計方向か反時計方向かに回転させる。上記コイル枠730には駆動コイルと制動コイルを巻回し反対方向の電流を印加することによって、駆動コイルで回転したロータを制動コイルで停止することも可能であり、また上記コイル枠730には1個所若しくは数個所にホール素子を埋設することによってロータの磁極(磁界)を検出してロータの角波位置を検出することも可能である。従って羽根部材200は、駆動コイルへの通電によって所定方向に回転し、制動コイルへの通電によって所定の位置に正確に停止され、羽根部材によって形成された口径に光量が大小調整されることとなる。
【0045】
保護カバー300は、押え板100で覆われず露出するリング板400のアーム430と作動レバー600の作動ピン620の連結関係を保護するもので、止めねじ310により地板500に駆動モータ700と共に取付けられる。
【0046】
次に、図4のような6枚の羽根部材で構成される光量調整ユニット部の組立工程を説明する。最初に地板500の凹溝520にリング板400を図4で示す状態位置で嵌め込みセットする。そしてその上から羽根部材200の第1の光量調整羽根部材A1を対向する位置にある地板500の支軸530に嵌合孔210を嵌合すると共にリング板400の作動ピン420にスリット孔220を嵌め込み、以下同様に順次上に各羽根部材を重ね合わせる。
【0047】
次に、上から押え板100を図示の状態で止めねじ160により6箇所をねじ止めして光量調整ユニット部を完成させる。つまり各羽根部材は地板500と押え板100との間に開閉(回動)自在に支持されることとなり、基板はそれぞれ扁平部材である地板500と押え板100とで構成されることとなる。
【0048】
また駆動モータ700の組立工程について図5で説明すると、最初に予め支軸710と焼結成形のマグネットロータ720をインサート成形で一体化したロータを外周凹溝に伝導コイル740が巻廻された上下若しくは左右二分割のコイル枠730により回動可能に包み込み、カバー770とカバー780で挟み込んだ状態でヨーク750を嵌合させた後に、支軸710の適宜位置に作動レバー600を嵌合固定して駆動モータ700を完成させる。
【0049】
そして、図4で示すように地板500の駆動モータ700の支持部540に位置するリング板400のスリット孔440に駆動モータ700に取付けられた作動レバー600の作動ピン620を嵌め込むと共に、保護カバー300を支持部540に対しリング板400と相対する反対面から、止めねじ310により駆動モータ700の固定部760と共に地板500に取付け固定することにより図5で示す装置が組み上げられる。
【0050】
そこで図示の羽根部材は重なり合う羽根相互の摩擦を軽減する為次の配慮が施されている。つまり上述の基板を構成する地板500及び押え板100には少なくともその一方に羽根の運動を規制(案内)する案内面が設けられ、この面に沿って羽根が開閉運動するように構成する。そしてこの案内面は前記支軸の周縁部(近傍)に形成した第1案内面と前記光路開口の周縁部に形成された第2案内面とを備え、この第1案内面と第2案内面との間に光路の方向と直交する方向に一方が高く他方が低くなるような高低差を形成する。この高低差は基板表面を傾斜した平面或いは段差面に形成することによって構成する。これによって各羽根部材は光路の方向に所定角度傾斜して開閉することとなる。
【0051】
従って地板500と押え板100は、第1案内面と第2案内面の一方を高く形成したときには他方は低く形成する。図6に従って羽根部材200の組み込み状態について説明すると、まず光路開口510を形成する凹溝520の円周縁部で羽根部材200に接触する先端部が、地板500の平面基準X−Xに対し高さh1だけ突出し、また支軸530を植設する部分で羽根部材200に接触する段部が、平面基準X−Xに対し高さh2(h2>h1)だけ突出している。
【0052】
一方、前記地板500の円周縁部の突出先端部に対峙し絞り加工で形成された規制突起150で羽根部材200に接触する先端部が、平面基準X−Xに平行な押え板100の平面基準Y−Yに対し高さh3だけ突出し、また支軸530が嵌合する絞り加工で形成された逃げ孔140で羽根部材200に接触する先端部が、平面基準Y−Yに対し高さh4(h4>h3)だけ突出している。
【0053】
従って、羽根部材200の各光量調整羽根部材は地板500の平面基準X−Xに対し、傾き方向は異なるが、絶対値は等しい傾斜αだけ傾いた姿勢で地板500にセットされ、それぞれ異なる平面上で回動動作する。この結果、羽根部材200の各光量調整羽根部材の6枚は密着すること無く間隔は一様ではないが、ある間隔を隔て保持され回動することになり、各光量調整羽根部材同士の接触部分が激減し、作動時に互いの面が密着して擦れることで発生する騒音を抑えることが出来る。
【0054】
次に上述の羽根部材200を開閉駆動する制御回路について説明する。
まず羽根部材200は1枚若しくは複数枚の組み合せで構成され、基板(地板500)の光路開口510の周縁に基端部が支軸530に回動自在に支持され、先端部が光路開口510に臨むように組込まれている。そして各羽根部材には光路開口510の周囲に回動自在に配置したリング状の伝動部材400が連結してあり、この伝動部材400には前述の駆動モータ700が連結されている。
【0055】
そこで駆動モータ700を構成する伝導コイル740に電源を供給するとマグネットロータ720が所定方向に回転し、ロータの回転軸710に取付けた作動レバー600が上記伝動部材400を回動するようになっている。そこで上記伝導コイル740への電源制御回路について図10に基づいて説明する。伝導コイル740への電源制御回路は前記マグネットロータ720の角度位置を検出した検出値と、後述するプロジェクタ装置の適正な光量調整レベル値と、この両者を比較して羽根位置を移動する光量調整信号と、この光量調整信号とロータの位置検出値とを比較する作動増幅器とこの作動増幅器によって前記伝導コイル740に駆動電流を供給する電源回路とから構成されている。
【0056】
図10においてINはプロジェクタ装置のコントロール回路から伝達された光量調整信号の入力端子を示し、OUTは前記光電センサ70の検出値を増幅器Q3で増幅して上記コントロール回路に伝達する出力端子である。+Vは電源制御回路Dの印加電圧、Gは接地端子で励磁コイルに接地されたグランドとの間で所定電圧を印加する。図中Q1乃至Q3は作動増幅器、L1は励磁コイルを構成する駆動コイル、L2は制動コイルを示す。この駆動コイルL1には両端にバイパス接続されたコンデンサC0を設ける。
【0057】
そして、上記各回路の構成について説明すると、プロジェクタHのコントロール回路から投影する画像の光量を調整するための光量調整信号が入力端子INに入力される。一方、PH(光電センサ70)によりその時点での光量調整装置Eの光量調整レベル信号が検出され作動増幅器Q3で増幅され出力されている。この結果、この二つの光量調整信号が回路点E1において比較され、その電位差により作動増幅器Q1及び作動増幅器Q2の電位差分に相当する正負いずれかの駆動電流が駆動コイルL1に流れ、図5の駆動モータ700が回転される。
【0058】
この際に、制動コイルL2にマグネットロータ720の回転に伴って変化する磁気特性により、その変化量に応じた制動電流が制動コイルL2に流れマグネットロータ720の回転に制動をかけると同時に、PH(光電センサ70)の検出値はロータの回転に伴って変化し、先の回路点E1の電位差が無くなったところで駆動モータ700の回転が停止し羽根部材はその位置に停止する。この駆動に際し、駆動コイルL1の両端間に接続されたコンデンサC0<バイパスフィルタ>により駆動コイルL1への駆動電流の立上がり変化が抑えられる。これによって、駆動開始直後の駆動モータ700の回転は除々に増大し、羽根部材は緩やかに作動し、作動音が軽減される。
【0059】
以上説明した光量調整装置を図2に示すプロジェクタ装置に採用した場合の光量制御について説明する。前述の光量調整手段は使用する環境の明るさに応じて光量を調整するように制御する場合、或いは連続する投影画像の輝度変化に応じて制御する場合がある。前者の環境の明るさに応じて光量調整をする場合はプロジェクタ装置にラインセンサ、CCDセンサ、などの光電センサを設けて外部光を検出する。
【0060】
この光電センサの取付位置はプロジェクタ装置の外崖ケースにセンサを取付けて部屋の明るさを検出するか、予め定めた輝度のテスト画像をスクリーンに投射し、スクリーンから反射した光をプロジェクタに内蔵した光電センサで検出するかいずれかの方法を採る。このような方法で検出した光量に基づいて光量調整する。この光量調整は例えば外部光の検出値と予め定めた基準値とを比較しCPUなどの演算回路で光量の絞り量を算出して光量調整信号を光量調整装置に伝達する。一方投影画像の輝度変化に応じて光量調整する場合は例えば前述の像形成部に伝達される画像信号から輝度を算出し基準値と比較して光量調整信号を光量調整装置に伝達する。
【0061】
光量調整装置では前述のように励磁コイル(駆動コイルと制動コイル)に電流が印加され、所定の位置に羽根部材が移動する。かかる過程で本発明は、光路開口に臨ませた羽根部材を開閉制御して開口径を大小調整する駆動装置(駆動モータ)には次のように電源が供給される。
【0062】
まず前記構成の駆動コイルL1には電源電圧が印加されている。この電源電圧は光センサなどの位置検出センサでロータの角度位置(羽根部材の開閉位置)を検出した検出値と、この検出値とプロジェクタ装置で所定の光量調節値とを比較し両者が異なる場合には光量調節信号を発し作動増幅器Q1、Q2を介して駆動コイルL1に駆動電流を供給する。このとき図10の回路では作動増幅器Q1に結線された駆動コイルL1の一方の端子と、作動増幅器Q2に結線された他方の端子との間にコンデンサC0がバイパス接続されている。従って、駆動コイルL1にはコンデンサC0によって駆動コイルに供給される電流が除々に増大することとなる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本願発明に係わるプロジェクタ装置のシステム構成を示す説明図。
【図2】本願発明に係わるプロジェクタ装置の概略構成図。
【図3】本願発明に係わる光量調整装置のレイアウト説明図。
【図4】図3の装置における組立分解斜視図。
【図5】図4の装置の側断面を示す説明図。
【図6】図5の装置の一部の拡大を示す説明図。
【図7】図5の装置の羽根部材の重ね合せ状態の説明図とその一部の断面を示す説明図。
【図8】図3の装置の伝動部材を示す斜視図であり、(a)はスリット孔の断面形状を示し、(b)はスリット孔の異なった形状を示す断面図。
【図9】図8の伝動部材と異なる構造を示す説明図。
【図10】本願発明に係る光量調整装置を駆動する光量調整回路図。
【符号の説明】
【0064】
1 光源ランプ
2 反射鏡
3 フィルタ
4 インテグレータレンズ
5a、5b、5c 集光レンズ
8a、8b、8c 液晶パネル
9 投影レンズ
10a、10b ダイクロイックミラー
11 合成プリズム
12a、12b、12c、12d 反射ミラー
50 分岐ミラー(光路分岐手段)
60 集光レンズ
70 光電センサ
100 保持板(押え板)
200 光量調整手段(光量調整羽根部材)
300 保護カバー
400 リング板(伝動手段)
500 地板(基板)
510 光路開口
600 作動アーム
700 駆動源(駆動モータ)
C0 コンデンサ<バイパスフィルタ(ハイパスフィルタ)>
D 光量調整回路
E 光量調整装置
H プロジェクタ
S スクリーン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源からの光を透過する光路開口を有する基板と、
上記光路開口に配置され該光路開口を通過する光量を調節する羽根部材と、
この羽根部材を駆動する駆動手段と、
上記光路開口を通過した光の光路を主副2方向に分岐する光路分岐手段と、
上記光路分岐手段で分岐した副方向の光路中に配置された光電センサと、
この光電センサからの出力信号に基づいて上記駆動手段を制御する制御手段を設けたことを特徴とする光量調整装置。
【請求項2】
前記光路分岐手段は、前記光路開口を通過した光の一部を所定角度方向に分岐するハーフミラー、ダイクロイックミラーなどの分岐ミラーで構成されていることを特徴とする請求項1記載の光量調整装置。
【請求項3】
前記駆動手段はマグネットを有するロータと、このマグネットの周囲に磁界を生起する励磁コイルとで構成され、
前記制御手段は上記励磁コイルに正負電流を供給することによって上記ロータを正逆方向に所定角度回転するように構成され、
前記光電センサは検知した光量に応じた出力値を上記制御手段に伝達するように構成されていることを特徴とする請求項1記載の光量調整装置。
【請求項4】
光源ランプと、
この光源ランプからの光の赤外線を減衰するフィルタと、
このフィルタからの光が通過する光路開口を有する基板と、
この基板に基端部を支持され先端部が上記光路開口に臨むように配置された羽根部材と、
この羽根部材を開閉駆動する駆動手段と、
上記光路開口を通過した光を主副2方向に分離する光路分岐手段と、
この光路分岐手段で分岐した副方向の光路中に配置された光電センサと、
この光電センサからの出力信号に基づいて上記駆動手段を駆動制御する制御手段とを備え、
上記光路分岐手段で分岐した主方向の光を目的物に照射する投光装置。
【請求項5】
前記光路分岐手段はダイクロイックミラーで構成され副方向の光量が主方向の光量より小さく設定されていることを特徴とする請求項4記載の投光装置。
【請求項6】
前記光路分岐手段はハーフミラーで構成され、該ハーフミラーは副方向の光量が主方向の光量より小さく設定されている請求項4記載の投光装置。
【請求項7】
画像を形成する像形成手段と、
この像形成手段に光を照射する光源ランプと、
上記像形成手段からの光を投射する投影手段と、
上記光源から投影手段に至る光路中に配置され光路開口を有する基板と、
上記基板に回動自在に支持され上記光路開口の光量を規制する少なくともひとつの羽根部材と、
上記羽根部材に連結され該羽根部材を開閉駆動する駆動手段と、
上記光路開口を通過した光の光路を主副2方向に分岐する光路分岐手段と、
上記光路分岐手段で分岐した副方向の光路中に配置された光電センサと、
この光電センサからの出力信号に基づいて上記駆動手段を駆動制御する制御手段とを設けたプロジェクタ装置。
【請求項8】
前記制御手段は、前記像形成手段で形成される画像の輝度情報によって前記羽根部材を作動するように前記励磁コイルに電源を供給することを特徴とする請求項7に記載のプロジェクタ装置。
【請求項9】
前記光路分岐手段は前記副方向の光量が主方向の光量より小さくなるように分光することを特徴とする請求項7記載のプロジェクタ装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2006−23364(P2006−23364A)
【公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−199262(P2004−199262)
【出願日】平成16年7月6日(2004.7.6)
【出願人】(000231589)ニスカ株式会社 (568)
【Fターム(参考)】