説明

光電センサ

【課題】複数の検出対象物のうちから遮光率の最も悪かった検出対象物の最悪値を求めることができ、ひいては閾値設定が容易な微分検出型の光電センサを提供する。
【解決手段】変化量演算部3が受光量の単位時間当たりの変化量を求め、最大変化量決定部5が検出対象物当たりの最大変化量を求める。最悪値決定部6は、複数の検出対象物の最大変化量のうち、最も小さい値を決定する。この値は、複数の検出対象物のうち、遮光率が最も悪かったワーストケース、即ち、最大変化量の最小値であるため、検出対象物の検出用閾値の設定に有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、受光量の変化に基づいて検出対象物を検出する光電センサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
受光量の時間当たりの変化量(即ち、微分値)を検出する微分検出型光電センサでは、検出対象物の有無を判定するための閾値として適切な値を設定する必要がある。一般的にユーザは、検出対象物の検出状態を光電センサの表示器にデジタル表示された微分値で確認し、それに応じた閾値を模索して設定している。
【0003】
ユーザによる閾値設定を支援する表示機能として、例えば特許文献1のホールド表示機能がある。ただし、特許文献1に係る光電センサは微分値の大小ではなく受光量の大小に応じて検出対象物の有無を判定する構成である。この光電センサは、閾値設定に有用な情報として、所定期間中の受光量の最大値、最小値などをホールド表示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許4009838号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
微分検出型の光電センサの場合、閾値として、受光量の変化が最も小さいワーストケース(遮光率の最も悪かった検出対象物)を想定した値を設定することが望ましい。
しかしながら、電子部品通過検出などのシステムにおいて、高速に通過する微小な検出対象物を検出する場合には、以下の事項などが問題となって、微分値表示値による状況把握が困難になる課題があった。
・通過時間が極端に短い(0.1ミリ秒以下)
・通過時の検出対象物の姿勢によって遮光量が異なるため微分値が一定でない
・検出対象物未検知の状態であっても、回路の自己ノイズによって微分値がゼロとならない
【0006】
また、上記特許文献1の構成を微分検出型光電センサに適用してそのボトムホールド表示をさせる場合、例えば検出対象物を1000個通過させると各々の微分値のうちの最大の微分値を保持して表示することになる。この最大の微分値とは、ベストケース(遮光率の最も良かった検出対象物)の微分値である。従って、閾値設定に重要な情報となるワーストケースの値をユーザが知ることができないという課題があった。対策として、検出対象物が1個通過する都度、最大微分値を確認する方法があるが、信頼のあるデータ点数を確保するためには多大な労力が必要となる。
【0007】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、複数の検出対象物のうちから遮光率の最も悪かった検出対象物の最悪値、即ち、複数の検出対象物についてのワーストケースを求めることができ、ひいては閾値設定が容易な微分検出型の光電センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明の請求項1に係る光電センサは、検出領域に投光する投光部と、検出領域を通過した光を受光し、受光量に基づいた出力を行う受光部と、受光部の出力の単位時間当たりの変化量を求める変化量演算部と、変化量演算部が求めた変化量を所定の閾値と比較し、検出領域における検出対象物の有無を判定する検出部と、変化量演算部が求めた変化量のうち、1個の検出対象物当たりの最大変化量を決定する最大変化量決定部と、最大変化量決定部が求めた最大変化量のうち、最も小さい値を決定する最悪値決定部とを備えるものである。
【0009】
この発明の請求項2に係る光電センサは、最悪値決定部が記憶部を有し、最大変化量決定部から最大変化量が与えられると当該記憶部に記憶している最大変化量と比較してより小さい方の値に上書きするものである。
【0010】
この発明の請求項3に係る光電センサは、最悪値決定部が記憶部を有し、最大変化量決定部から与えられる最大変化量を記憶していき、複数の最大変化量間で比較して最も小さい値を求めるものである。
【0011】
この発明の請求項4に係る光電センサは、最悪値決定部が決定した値を出力する出力部を備えるものである。
【発明の効果】
【0012】
この発明の請求項1から請求項3によれば、検出対象物当たりの最大変化量を決定すると共に、複数の検出対象物の最大変化量のうちの最も小さい値を決定するようにしたので、複数の検出対象物のうちから遮光率の最も悪かった検出対象物の最悪値を求めることができる。
【0013】
この発明の請求項4によれば、最悪値決定部が決定した値を出力するようにしたので、ユーザは出力される最悪値を参考にして容易に閾値を設定できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】この発明の実施の形態1に係る光電センサの構成を示すブロック図である。
【図2】この発明の実施の形態1に係る光電センサの設置例を示す図である。
【図3】この発明の実施の形態1に係る光電センサの動作を示すフローチャートである。
【図4】この発明の実施の形態1に係る光電センサの動作を説明するためのグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1に係る光電センサの構成を示すブロック図であり、設置例を図2に示す。この光電センサは微分検出型であり、投光部1、受光部2、変化量演算部3、検出部4、最大変化量決定部5、最悪値決定部6、記憶部7、および出力部8を備えることとする。
【0016】
投光部1と受光部2とは、検出領域9を間に挟んで対向するように配置される。投光部1から投光された光は検出領域9を通過して、受光部2で受光される。投光部1は発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)などの発光素子を有し、他方の受光部2はフォトダイオードなどの受光素子を有する構成である。または、発光素子および受光素子に光ファイバを接続してファイバ型光電センサにしてもよい。
【0017】
投光部1と受光部2とは別体に構成しても、一体に構成してもよい。また、検出対象物10が微小な電子部品などの場合、検出領域9に光透過性のパイプなどを設置して、パイプ内に検出対象物10を落下させる構成にしてもよい。さらに、図2では、投光部1と受光部2とを対向配置する透過型光電センサを例示しているが、これに限定されるものではなく、例えば投光部1と受光部2とを同じ側に配置し、対向位置に反射部材を配置する反射型光電センサなどにしてもよい。
【0018】
変化量演算部3、検出部4、最大変化量決定部5、最悪値決定部6、記憶部7および出力部8は電子回路などで構成される。特に出力部8は、表示器を有して検出部4および最悪値決定部6の出力を表示したり、外部出力端子を有して前記出力を外部出力したりできる。なお、表示器はどのような形態であってもよく、例えば7セグメント式のデジタル数値表示器を用いる。
【0019】
これら変化量演算部3、検出部4、最大変化量決定部5、最悪値決定部6、記憶部7および出力部8は、投光部1および受光部2(または受光部2のみ)と一体に構成してもよいし、別体に構成してもよい。さらに、出力部8の表示器を別体で構成してもよい。
【0020】
次に、図3に示すフローチャートおよび図4のグラフを用いて、光電センサの動作を説明する。
投光部1が検出領域9に向けて投光を開始し、受光部2が検出領域9を通過した光を受光する(ステップST1)。図4(a)に、受光部2の受光量を示す。グラフの横方向は時間、縦方向は受光量を示し、検出領域9を検出対象物10が通過するとその検出対象物10によって投光が遮光され、受光量が低下する。
【0021】
変化量演算部3は、受光部2から入力される受光量のサンプリング時間当たりの変化量、即ち、微分値を求める(ステップST2)。変化量演算部3は、変化量に代えて、変化率を求めてもよい。図4(b)に、変化量演算部3が演算した変化量のグラフを示す。グラフの横方向は時間、縦方向は変化量を示す。Thは、検出対象物10の有無を判定するために用いる閾値であり、ユーザにより設定される値である。
【0022】
以下では、変化量演算部3がサンプリングのタイミング毎に変化量を算出して、順次ステップST3以降の処理を行うものとする。
検出部4には閾値Thが与えられ、この閾値Thと変化量演算部3から入力される受光量の変化量とを比較して、検出対象物10の有無を判定する(ステップST3)。検出部4は、変化量が閾値Thより小さければ(ステップST4“YES”)、検出領域9を通過する光が検出対象物10に遮蔽されていないと判断して、検出対象物10が存在しないと判定する。一方、受光量の変化量が閾値Th以上になれば(ステップST4“NO”)、検出部4は、検出領域9を通過する光が検出対象物10に遮蔽されていると判断して、検出対象物10が存在すると判定する。続いて検出部4は、検出対象物10を検出したタイミングから所定時間のワンショット出力を開始する(ステップST5)。図4(c)に、検出部4のワンショット出力のグラフを示す。図示例では、所定時間Toneshot(例えば1〜10ミリ秒)だけオン状態が維持するパルス信号が検出部4から出力されている。
【0023】
検出部4のワンショット出力は最大変化量決定部5および出力部8へ出力される。出力部8は、ワンショット出力が入力されると、表示および/または外部出力によってユーザに検出対象物10の検出を知らせる。
【0024】
続いて、最大変化量決定部5が、受変化量演算部3の求めた変化量のうち、1個の検出対象物10当たりの最大変化量Vmaxを決定する。
最大変化量決定部5は、今回のサンプリングタイミングがワンショット出力期間中か否かを確認する(ステップST6)。今回のサンプリングタイミングがワンショット出力中であれば(ステップST6“NO”)、最大変化量決定部5は今回のサンプリングタイミングで算出された変化量とホールド値を比較する(ステップST8)。このホールド値は、最大変化量決定部5が有するパラメータであり、最大変化量Vmaxを一時的に保持する。ホールド値の推移は図4(b)に細線で示す。
【0025】
最大変化量決定部5は、今回のサンプリングタイミングの変化量がホールド値より小さければ(ステップST9“YES”)、ホールド値を更新せずにステップST11へ進む。一方、この変化量がホールド値以上であれば(ステップST9“NO”)、最大変化量決定部5はホールド値をこの変化量に更新する。このように、最大変化量決定部5はワンショット出力期間中にホールド値をより小さい変化量に更新していき、ワンショット出力期間が終了した時点のホールド値を最大変化量Vmaxとする。
他方、今回のサンプリングタイミングがワンショット出力期間中でなければ(ステップST6“YES”)、最大変化量決定部5は、ホールド値を最大変化量Vmaxとして取得して、ホールド値をゼロに更新する。
【0026】
続いて、最悪値決定部6が、最大変化量決定部5の求めた複数の検出対象物10についての最大変化量Vmaxのうち、最も小さい値を最悪値Vworstに決定する。図4(b)に最悪値Vworstの一例を示す。
最大変化量Vmaxがゼロの場合(ステップST12“YES”)、即ち、検出対象物10が未検出の場合、最悪値決定部6はそのまま処理を終了する。
一方、ホールド値から取得した最大変化量Vmaxがゼロ以外の場合(ステップST12“NO”)、即ち、検出対象物10が検出された場合、最悪値決定部6はこの最大変化量Vmaxを記憶部7が記憶している最悪値Vworstと比較する(ステップST13)。この記憶部7は、最悪値Vworstを一時的に保持する記憶手段である。最悪値決定部6は、今回検出中の検出対象物10の最大変化量Vmaxが記憶部7の記憶している最悪値Vworst以上であれば(ステップST14“YES”)、最悪値Vworstを上書き更新せずに処理を終了する。また、今回検出中の検出対象物10の最大変化量Vmaxが記憶部7の記憶している最悪値Vworstより小さければ(ステップST14“NO”)、最悪値決定部6は、記憶部7の記憶している最悪値Vworstを最大変化量Vmaxに上書き更新して処理を終了する。
【0027】
光電センサは、以上の処理終了後、再びステップST1から次の検出対象物10の検出動作を開始する。このように次々と検出動作を行っていき、最悪値決定部6が記憶部7の記憶する最悪値Vworstをより小さい値の最大変化量Vmaxに上書き更新していく。そして、所定個数(例えば1000個)の検出対象物10について検出動作が終了した時点で、最悪値決定部6は、記憶部7の記憶している最悪値Vworstを出力部8へ出力する。
【0028】
出力部8は、最悪値Vworstが入力されると、表示および/または外部出力によって、所定個数の検出領域9のうちの最悪値Vworstを知らせる。ユーザは、この最悪値Vworstを確認することによって、遮光量が最も少なくなるワーストケースを想定した閾値Thを設定することができ、結果的に検出漏れ等の不具合を防止することができる。
【0029】
なお、最悪値決定部6が出力部8に最悪値Vworstを出力するタイミングは、上述したような所定個数すべての検出動作が終わったタイミングに限定されるものではない。
例えば、最悪値決定部6は、ステップST15にて記憶部7を更新するタイミングで出力部8に最悪値Vworstを出力してもよい。この構成の場合、最悪値Vworstがより小さい値に更新される都度、出力部8の値が推移するので、ユーザは最悪値の推移を見ながら閾値Thを設定することができる。さらに、出力部8は最悪値Vworstが入力されてから所定時間(例えば2〜5秒)、その値をホールド表示するようにしてもよい。そして、所定時間中に新たな最悪値Vworstが入力されれば表示を更新し、一方、所定時間中に新たな入力がなければ所定時間後にゼロを表示して検出対象物10が検出されていないことを通知する。
【0030】
以上より、実施の形態1に係る光電センサは、検出領域9に投光する投光部1と、検出領域9を通過した光を受光し、受光量に基づいた出力を行う受光部2と、受光部2の出力の単位時間当たりの変化量(または変化率)を求める変化量演算部3と、変化量演算部3が求めた変化量を閾値Thと比較し、検出領域9における検出対象物10の有無を判定する検出部4と、変化量演算部3が求めた変化量のうち、1個の検出対象物10当たりの最大変化量Vmaxを決定する最大変化量決定部5と、最大変化量決定部5が求めた最大変化量Vmaxのうち、最も小さい値を最悪値Vworstに決定する最悪値決定部6と、最悪値決定部6が決定した最悪値Vworstを出力する出力部8とを備えるように構成した。このため、複数の検出対象物のうちから遮光率の最も悪かった検出対象物の最悪値を求めることができる。また、この最悪値は閾値設定に有用な情報であるため、ユーザは容易に閾値設定できるようになる。
【0031】
なお、上記実施の形態1では、最悪値決定部6が記憶部7を有し、最大変化量決定部5から最大変化量Vmaxが与えられると、記憶部7に記憶している最大変化量Vmaxと比較してより小さい方の値に上書きするようにして、最終的に、記憶部7が記憶している最大変化量Vmaxを最悪値Vworstにする構成としたが、これに限定されるものではない。
例えば、図3に示すステップST7、ステップST9“YES”、またはステップST10のいずれかにて求めた検出対象物10の最大変化量Vmaxを記憶部7に記憶していき、最悪値決定部6は所定個数(例えば1000個)の検出対象物10について検出動作が終了した時点で、記憶部7に記憶されている所定個数分の最大変化量Vmax間で比較して、最も小さい値を求めて最悪値Vworstにする構成でもよい。この構成の場合には、所定個数の検出対象物10の検出動作終了後に最悪値Vworstが出力部8に入力され、ユーザに通知されることになる。
どちらの構成であっても、複数の検出対象物のうちから遮光率の最も悪かった検出対象物の最悪値を求めることができ、ひいては、ユーザが容易に閾値設定できるようになる。
【0032】
また、上記実施の形態1の変化量演算部3が、図4(b)のグラフについて正負が反転した変化量を求める場合には、最大変化量決定部5は検出対象物10当たりの変化量の最小値(最小変化量)を求め、最悪値決定部6は複数の検出対象物10の最小変化量のうち、最も大きい値を求めて最悪値とすればよい。
なお、本願発明はその発明の範囲内において、実施の形態の任意の構成要素の変形、もしくは実施の形態の任意の構成要素の省略が可能である。
【符号の説明】
【0033】
1 投光部
2 受光部
3 変化量演算部
4 検出部
5 最大変化量決定部
6 最悪値決定部
7 記憶部
8 出力部
9 検出領域
10 検出対象物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検出領域に投光する投光部と、
前記検出領域を通過した光を受光し、受光量に基づいた出力を行う受光部と、
前記受光部の出力の単位時間当たりの変化量を求める変化量演算部と、
前記変化量演算部が求めた変化量を所定の閾値と比較し、前記検出領域における検出対象物の有無を判定する検出部と、
前記変化量演算部が求めた変化量のうち、1個の検出対象物当たりの最大変化量を決定する最大変化量決定部と、
前記最大変化量決定部が求めた最大変化量のうち、最も小さい値を決定する最悪値決定部とを備える光電センサ。
【請求項2】
前記最悪値決定部は記憶部を有し、前記最大変化量決定部から最大変化量が与えられると当該記憶部に記憶している最大変化量と比較してより小さい方の値に上書きすることを特徴とする請求項1記載の光電センサ。
【請求項3】
前記最悪値決定部は記憶部を有し、前記最大変化量決定部から与えられる最大変化量を記憶していき、複数の最大変化量間で比較して最も小さい値を求めることを特徴とする請求項1記載の光電センサ。
【請求項4】
前記最悪値決定部が決定した値を出力する出力部を備えることを特徴とする請求項1から請求項3のうちのいずれか1項記載の光電センサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−83195(P2012−83195A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−229502(P2010−229502)
【出願日】平成22年10月12日(2010.10.12)
【出願人】(000006666)株式会社山武 (1,808)
【Fターム(参考)】