説明

光電デバイスおよびその製造方法

−第1の電極(22)と第2の電極(32)との間に光電活性材料の層(10)を設けるステップ(S1)と、−パターン化電気絶縁層構造(60)を前記電極の少なくとも1つ(32)に設けるステップであって、パターン化電気絶縁層構造(60)が開口部(62)を有するステップ(S2)と、−前記開口部(62)に電解液(70)を提供するステップ(S3)と、−金属層を前記開口部に電解液から電気めっきにより堆積させるステップ(S4)とを含む、光電デバイスを製造するための方法であって、電解液(70)がイオン液体により形成されることを特徴とする方法が説明される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光電デバイスを製造するための方法に関する。さらに、本発明は、光電デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
光電デバイスは、光を供給、検出または制御するデバイスである。例として、LED、光電池、およびエレクトロクロミックデバイスがある。これらのデバイスは、少なくとも1つが透明である導電層を必要とし、それによって、デバイスの光電活性層により発生される光が、周囲に放出されることが可能であり、または、周囲からの光が、光電活性層に到達することが可能である。フレキシブルプラスチック基板上の大面積のOLED照明のような大面積のLEDに対しては、システムを駆動するために、大電流が必要とされる。現在の薄膜材料で、アノード用に使用されるもの(例えばITO)、およびカソード用に使用されるもの(例えばBa/Al)は、抵抗率が大きく、大電流がかなりの電圧降下を引き起こし、今度はそれにより、不均質な発光が生じる。プラスチック基板上に大面積のフレキシブルOLEDデバイスを製造する場合には、プラスチック基板の追加的なメタライゼーション構造が求められる。製造コストを削減するために、好ましくは、そのような構造化メタライゼーションのコーティングが、インラインのロールツーロールのウェブのコーティング処理を利用して、プラスチック箔のロールに付与されることになる。したがって、(O)LEDに対してだけでなく、エレクトロクロミックデバイス、および光起電製品のような他の光電デバイスに対しても、一方では良好な導電率を有し、他方では放射に対する高い透過率を有するメタライゼーション構造が求められる。最新技術のロールツーロールのウェブのコーティング技法による、連続的な基板の完全なメタライゼーションまたはパターン化メタライゼーションの領域のためのシステムが報告されている。
【0003】
メタライゼーション構造を付与するための既知の方法は、金属線を蒸着で付与し、一方で、構造をシャドウマスクで規定することである。この方法は、実際には、数百nmのメタライゼーション構造を付与した後で、シャドウマスクを洗浄しなければならず、一方で、数μm、例えば5から20μmの厚さが求められるので、手間がかかり、低速である。十分な導電性をさらに達成するために、メタライゼーション構造は、比較的大きな線幅で付与されなければならず、それは、透明電極をシャントする場合には不都合である。さらに、シャドウマスクが単一の接続構造であること、および、それによって付与される金属シャントが単一の接続構造であることの両方を可能にするために、シャドウマスクは3Dでの構築を必要とする。
【0004】
別の既知の方法が、WO2007/036850で説明されている。そこで説明されている方法によれば、第1の開口部を有するバリア層構造が、第1の電極と第2の電極との間の電気活性材料を含む構造の第1の面を覆って形成される。バリア層構造は、比較的適度な厚さであり得るので、蒸着で効率的に堆積され得る。その後、めっきベースが、バリア層構造上に堆積される。めっきベースは、電極のコンタクト領域に接触する。第2の開口部を有するパターン化絶縁体が、めっきベースを伴う前記バリア層構造上に、第2の開口部が第1の開口部に位置合わせされるように付与される。開口部内では、めっきベースと接触する金属導体が、電気めっきされる。バリア層構造を伴うこの構造を電気めっきする際に、めっきベースおよびレジスト層は、Cuイオンのような適切なイオンを含む電気めっき浴槽に沈められる。バリア層構造およびめっきベースは、電気めっき浴槽の液体、主に水と、その構造との間のいかなる接触も、効率的に防止する。このことは、カソード用に使用される材料が液体により腐食される可能性があるので、必須である。電極は、それ自体が腐食されない場合でも、その下にある有機材料に対しては十分な保護をもたらさない。パターン化絶縁体により規定される構造内の電気めっきの処理により、その幅と比較して比較的大きな高さを有し得る、導電性のシャント構造が得られる。このようにして、導電構造は、良好な導電率を有し、一方で、光に対する良好な全体の透明度を有する。
【0005】
WO2007/036850では、金属導体の電気めっきが、めっきベースがない場合でも行われ得るということが述べられている。しかしながら、そのような場合、電気めっき処理は、アノード層およびカソード層の高い抵抗率に起因して、きわめて低速になる。さらにWO2007/036850では、アノード層またはカソード層のいずれかに接続される、ただ1つの金属導体を有する発光デバイスを設計することもまた可能であるということが述べられている。しかしながら、これは、実際には、WO2007/036850で開示される技術では可能ではない。実際には、めっきベースは、液体による、電極と、その下にある有機材料との間の界面の腐食に対して十分な保護をもたらさない。透明電極もまた、保護を提供することはできない、というのは、この電極は、光の十分な透過を可能にするために、比較的薄くなければならないからである。したがって、WO2007/036850の設計では、有機層は、シャント構造が透明電極に接触する場所で、分断されなければならない。したがって、対向する電極もまた、電極間の短絡を防止するために、分断されるべきである。対向する電極は、分断されることにより、今度はそれが透明電極構造を分断する第2のシャント構造を必要とする。2つのシャント構造は、WO2007/036850の図1で示すように、相互に絡み合い、しかし相互に電気的に絶縁されている第1および第2の格子として、すなわち、相互に相補的なくしの形状で形成される必要がある。したがって、これらの構造は、構造の縁部とそこから離れた位置との間に、高い初期抵抗値を有する。これによって、めっきベースは、十分に急速な電気めっき処理を考慮することが必要になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】WO2007/036850
【特許文献2】EP1983592
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
減少したステップ数で光電デバイスを効率的に製造することが、求められている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の態様によれば、
- 第1の電極と第2の電極との間に光電活性材料(optoelectric active material)の層を設けるステップと、
- パターン化電気絶縁層構造を前記電極の少なくとも1つに設けるステップであって、パターン化電気絶縁層が開口部を有するステップと、
- 前記開口部に電解液を提供するステップと、
- 金属層を前記開口部に電解液から電気めっきにより堆積させるステップと
を含む、光電デバイスを製造するための方法であって、
電解液がイオン液体により形成されることを特徴とする方法が提供される。
【0009】
イオン液体が、電解液として使用されるので、水のような溶媒は必須ではない。それによって、光電材料を含む構造が、溶媒に対して保護されることは必須ではない。したがって、シャント構造のために必要な金属は、電極でイオン液体から直接堆積され得る。それによって、めっきベースを付与するステップのような中間のステップが除去される。さらに、シャント構造と電極との間の直接の接触は、電気伝導にとって好都合である。堆積処理は、最初は比較的低速である場合があるが、少量の金属が電極に堆積されると、急速に加速する。このようにして、水溶液から堆積され得ない、アルミニウムのような材料が堆積され得るということが、さらなる利点である。本発明による方法は、特に、光電材料が有機材料である場合に有用であるが、別法として、無機材料が、光電材料として付与され得る。
【0010】
EP1983592が、有機電子デバイス(用の電極)を製造するための方法であって、電極を電気活性材料の表面に対して設けるステップを含み、電気活性材料は、有機電気活性化合物を含み、イオン液体ならびに金属もしくは半金属のイオンを含むめっき液を使用し、金属または半金属のイオンが、還元かつ堆積されて電極を形成する電着による方法を開示していることに留意されたい。EP1983592は、格子の形状のシャント構造の使用を開示してはいない。
【0011】
本発明による方法では、電解液としてイオン液体を使用することにより、有機(活性)層が連続的であることが可能になる、というのは、液体による、透明電極と前記有機層との間の界面の腐食がなくなり得るからである。それによって、不透明電極もまた、連続的であることが可能であり、その結果、それは、分離したシャント構造を必要としない。したがって、単一のシャント構造が、透明電極に対して使用され得るとともに、透明電極は、連続的であり得る。したがって、電極は、それ自体が、OLEDでの均質な発光をもたらすのに十分な導電性を有しない場合でも、それ自体にとって、イオン液体から金属シャント層が堆積するためのめっきベースとして役立つのに十分な導電性を有することになる。
【0012】
さらなる層が、カソードとシャント構造との間に存在する場合がある。一実施形態では、例えば、カソードは、ワイドバンドギャップ半導体の層により被覆される。カルシウムは、金属に対してその光透過性が比較的高いので、および、材料に対して良好な電子注入コンタクトを形成するその能力が証明されているので、カソード用の金属として好適である。ZnSe、ZnSまたはこれらの材料の合金は、その導電率が発光の方向と同方向に良好であり、その下にある低い仕事関数の金属および有機の薄膜を保護する能力があり、発光に対する透過度を有するため、好適な半導体である。
【0013】
このように、シャント構造を伴う少なくとも1つの電極を設けることに加えて、シャント構造を伴う他の電極もまた設けられ得る。他の電極が、光電活性材料の少なくとも1つの層が付与される前に設けられる場合、上述の方法が、シャント構造を前記他の電極に付与するために使用されるということは必須ではない。その場合、他の電極は、従来の電気めっきにより、例えば、銀または銅の層を電気めっきすることにより付与され得る。
【0014】
一実施形態では、パターン化電気絶縁層構造は、シャドウマスクにより規定される。電気絶縁層構造は、比較的薄くてよく(例えば100から200nm)、それによって、それは、CVD処理により効率的に堆積され得る。必要なシャドウマスクは、2Dの接続構造であってよい。
【0015】
一実施形態では、電気絶縁層構造は、印刷により付与される。電気絶縁層の開口部内の金属層は、イオン液体により形成されるので、電気絶縁層が、バリア機能をさらに有するということは、必須ではない。これにより、スクリーン印刷、インクジェット印刷、ジェット印刷、グラビア印刷、オフセット印刷のような印刷技法の使用が可能になる。
【0016】
一実施形態では、パターン化電気絶縁層構造は、バリア層構造である。これには、電気絶縁層構造が、二重の機能で働くという利点がある。製造の際に、それは、イオン液体から付与される金属層の形状を規定する働きをし、完成した製品では、それは、光電活性材料を保護する。良好なバリア機能を備えるために、バリア層構造を形成するパターン化電気絶縁層構造は、一続きの層、具体的には、一続きの、無機層、または有機層により分離される無機層を含む場合がある。
【0017】
別の実施形態では、バリア層構造が、金属層の上部上に付与される。その実施形態では、パターン化電気絶縁層構造が、バリア層構造であるということは、必須ではない。同様に、金属層の上部上のバリア層構造は、一続きの層、具体的には、一続きの、無機層、または有機層により分離される無機層を含む場合がある。
【0018】
さらなる実施形態では、第1のさらなる電極と第2のさらなる電極との間に挟まれる光電活性材料のさらなる層が設けられ、第1のさらなる電極は、金属層を伴うパターン化電気絶縁層構造に付与される。このようにして、OLEDの一連の接続が実現され得る。
【0019】
前記実施形態の第1の変形例では、光電活性材料の層および光電活性材料のさらなる層の両方が、発光層である。このように、2つの発光デバイスが、直列に配置され、それによって、同じ供給電流で光出力を2倍にすることが可能になる。所望であれば、より多くの発光デバイスが、このように積層され得る。
【0020】
さらに、ハイブリッドの光電デバイスが、このようにして構成され得る。光電活性材料のさらなる層を有する実施形態の第2の変形例では、光電活性材料の層が発光層であり、光電活性材料のさらなる層が光起電力層である。第3の変形例では、光電活性材料の層が発光層であり、光電活性材料のさらなる層がエレクトロクロミック層である。
【0021】
第2および第3の変形例は、特に、窓ガラスまたはサイネージのデバイスに適している。第2の変形例は、日中に第1のモードで、入来する光の一部を電気エネルギーに変換するエネルギー源として利用され得るものであり、それによって、同時に、入来する光の強度を緩和する。夜間には、窓ガラスは、第2のモードで光源として使用され得る。発光層は、例えば、サイネージのデバイスとして使用される窓ガラスにおいてパターン化され得る。金属層は、共通の電力供給導体の働きをするので、効率的に使用される。第1のモードでは、それは、光起電力層から外側の窓ガラスへの電力供給線の働きをする。第2のモードでは、それは、発光層に対する電力供給線の働きをする。
【0022】
前記第3の変形例では、エレクトロクロミック層は、入来する光をより制御可能に緩和することに備えるものである。エレクトロクロミック層と発光層との組み合わせにより、例えば、1日の時間に関係なく一定の強度を供給するために、制御可能な光量をもたらす窓ガラスを提供することが可能になる。さらに、この変形例では、金属層は、この場合では発光層に対する、およびエレクトロクロミック層に対する、共通の電力供給導体の働きをする。
【0023】
光電デバイスの実施形態では、金属構造は、電着のために使用される微量のイオン液体を含む場合がある。
【0024】
これらおよび他の態様は、以下の図面を参照して、より詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】光電デバイスの基本的な構造を示す図である。
【図2】従来の方法により得られる半完成品を示す図である。
【図3】本発明による方法の実施形態を概略的に示す図である。
【図4】この方法の第1および第2のステップで得られる半完成品を示す図である。
【図5】図3に示す方法の第3のステップをより詳細に示す図である。
【図6】この第3のステップで得られる半完成品を示す図である。
【図7】図6のVIIによるこの第3のステップで得られる金属層の上面図である。
【図7A】図7の7Aによる金属層の細部を示す図である。
【図7B】この方法の別の実施形態で得られる金属層の対応する細部を示す図である。
【図8】この方法の第4のステップが適用された後で得られる製品を示す図である。
【図9】少なくとも1つが図3による方法で得られる、相互に積層される2つの光電デバイスを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下の詳細説明では、本発明の完全な理解をもたらすために、数多くの特定の詳細が示される。しかしながら、当業者であれば、これらの特定の詳細なしに、本発明が実施され得ることが理解されよう。他の例では、本発明の態様を不明瞭にしないように、周知の方法、手順、および構成要素は、詳細には説明されていない。
【0027】
本発明は、本発明の実施形態が示される添付図面を参照して、以下でより十分に説明される。しかしながら、本発明は、多くの様々な形態で実施され得るものであり、本明細書で示される実施形態に限定されると解釈されるべきではない。むしろ、これらの実施形態は、本開示が、完全かつ完璧なものとなり、当業者に対して本発明の範囲を十分に伝えることになるように提供されるものである。図面において、層および領域のサイズならびに相対的なサイズは、見やすいように拡大される場合がある。本発明の実施形態は、本発明の理想化された実施形態(および中間構造)の概略図である断面図を参照して、本明細書で説明される。したがって、例えば、製造技法および/または許容差の結果として説明図の形状からの変形が見込まれることになる。したがって、本発明の実施形態は、本明細書で示される領域の個別の形状に限定されると解釈されるべきではなく、例えば、製造に起因する形状の外れを含むことになる。このように、図に示される領域は、本質的には概略的であり、その形状は、デバイスの領域の実際の形状を示すことは意図されておらず、本発明の範囲を限定することは意図されていない。
【0028】
要素または層が、別の要素または層に対して、「上にある」、「接続される」または「結合される」と表されるとき、それが、他の要素もしくは層に対して、直接、上にある、接続される、もしくは結合される場合があり、または、介在する要素もしくは層が存在する場合があるということが理解されよう。一方、要素が、別の要素または層に対して、「直接上にある」「直接接続される」または「直接結合される」と表されるとき、介在する要素または層は存在しない。本明細書を通して、同じ番号が同じ要素を表す。本明細書では、「および/または」という用語は、関連する列挙された項目の1つまたは複数の、任意の、およびすべての組み合わせを含む。
【0029】
第1の、第2の、第3の、等の用語が、様々な要素、構成要素、領域、層および/または部分を説明するために、本明細書で使用される場合があるが、これらの要素、構成要素、領域、層および/または部分は、これらの用語により限定されるべきではないと理解されよう。これらの用語は、単に、ある要素、構成要素、領域、層または部分を、別の領域、層または部分と区別するために使用される。したがって、下記で考察される第1の要素、構成要素、領域、層または部分は、本発明の教示から逸脱することなしに、第2の要素、構成要素、領域、層または部分と呼ばれる場合がある。
【0030】
「下に」、「下方に」、「下側の」、「上方に」、「上側の」などのような空間的な相対関係の用語が、図に示されるような、ある要素またはフィーチャの、別の要素またはフィーチャに対する関係を説明するための説明を容易にするために、本明細書で使用される場合がある。空間的な相対関係の用語は、図で示される方向に加えて、使用または動作の際のデバイスの様々な方向を包含することが意図されているということが理解されよう。例えば、図のデバイスがひっくり返される場合、他の要素またはフィーチャに対して、「下方に」または「下に」と説明される要素は、今度は、他の要素またはフィーチャに対して「上方に」向けられることになる。したがって、例示的な用語「下方に」は、上方および下方の両方の方向を包含し得る。デバイスは、別方向に向けられる(90度、または他の方向に回転される)場合があり、本明細書で使用される空間的な相対関係の記述語は、それに応じて解釈され得る。
【0031】
別段の定義がない限り、本明細書で使用される(技術的および科学的な用語を含む)すべての用語は、本発明が属する技術分野の当業者により共通に理解されるのと同じ意味を有する。一般に使用されている辞書で定義されているような用語は、関連する技術を背景とするその意味と矛盾しない意味を有すると解釈されるべきであり、本明細書で明確にそのように定義しない限り、理想化された、すなわち、あまりにも形式的な意味では解釈されないことになるということが、さらに理解されよう。対立がある場合は、定義を含めて、本明細書により調整されることになる。さらに、材料、方法、および例は、単に例示的であり、限定的であることは意図されていない。
【0032】
図1は、光電デバイスの基本的な構造を示す。デバイスは、第1の電極22と第2の電極32との間に挟まれる光電活性材料の層10を含む。第1の電極22は、基板40に付与される導電層20の第1の部分により形成される。導電層は、第1の部分22から電気的に絶縁される第2の部分24を含む。第2の電極32は、導電層20のこの第2の部分24の上方に延在する。
【0033】
図2は、既知の方法の結果を概略的に示し、メタライゼーション構造50が、蒸着により、シャドウマスクを通して付与されている。この既知の方法は、実際には単に金属の数百nmの層を堆積させるために使用され得るが、一方で、数μm以上の程度の層が求められているので、興味を引くものではない。
【0034】
本発明による方法の実施形態が、図3に概略的に示される。その中に示される方法の実施形態は、第1のステップS1を含み、そこでは、光電活性材料の層が、第1の電極と第2の電極との間に付与される。第1の電極は、高い仕事関数を有し得るので、通常はアノードである。これにより、さらなる処理ステップが促進される。一部の処理では、カソードは、例えば、ドープされた小分子のOLED材料を使用する処理で、第1の電極として付与され得る。第1のステップS1は、例えば基板に第1の電極を設ける第1のサブステップS11、光電活性材料の層を設ける第2のサブステップS12、および第2の電極を設ける第3のサブステップS13を含む。第1の電極、例えばアノードは、例えば、湿式化学電着、スパッタリング、印刷の方法などにより付与され得る。光電活性材料、または材料の積層体は、例えば印刷技法により付与され得る。蒸着、例えば物理蒸着は、カソードを付与する好適な方法である。図3に示す実施形態は、第2のステップS2をさらに含む。第1および第2のステップの結果が、図4に示される。第2のステップS2では、パターン化電気絶縁層構造60が、ここではカソードである、前記電極の少なくとも1つ32に付与される。パターン化電気絶縁層構造60が前記電極上に直接付与されることは、必須ではない。1つまたは複数の中間層が、前記電極の少なくとも1つに付与される場合がある。この場合、例えば、半導電層が、パターン化電気絶縁層構造を付与する前に、カソード32に付与される場合がある。堆積されるパターン化電気絶縁層構造60は、ここでは第2の電極32である、電極の少なくとも1つの部分を空いた状態にする開口部62を有する。パターン化電気絶縁層構造60を堆積させるための様々なオプションが可能であり、例えば、層は、例えばエッチングにより、またはインプリンティングにより後でパターン化される、連続的な層として付与され得る。別法として、層は、例えば印刷により、そのパターン化形態で直接付与され得る。最も好ましくは、層は、例えば、熱化学蒸着(CVD)、光化学蒸着(PACVD)、プラズマ化学蒸着(PECVD)などのようなCVD処理による蒸着により付与され、マスクを使用してパターン化される。
【0035】
実施形態は、第3のステップS3をさらに含む。このステップS3のこの実行は、図5に詳細に示され、一方、その結果は、図6に示される。図5に示すように、図4に示す中間製品は、イオン液体70を含む浴槽に沈められる。それによって、電解液70が、パターン化電気絶縁層構造60の開口部62に提供される。ステップS4では、金属層80が、電気めっきにより、第2の電極32の空いた部分に、イオン液体70から堆積される。その最後まで、金属堆積物が与えられるべき電極32が、電池72の陰極に結合される。電池の陽極は、補助電極74に結合される。半完成品を、イオン液体を含む浴槽に沈める代わりに、イオン液体が、表面全体に伸ばされ、補助電極74と接触させられる場合がある。ステップS4を実行した後、第2の電極32の空いた部分に堆積される金属層80が、金属構造80を形成する。これは、図6の上面図VIIによる図7に概略的に示される。図7Aは、図7の7Aによるこの構造の細部を示す。図示の実施形態では、金属構造80は、(図6に示す)第2の電極32の空いた部分に直接堆積される。金属堆積処理は、金属構造80が、数μmから数十μmの程度、例えば約10μmの高さhを有するまで続く場合がある。金属構造は横方向にも成長するが、横方向の大きさは、実質的に目につかないのに十分に小さな状態にとどまる。例えば、(図6に示す)パターン化電気絶縁層構造60は、数mmの距離で相互に隔置される、50から100μmの程度の幅を有する溝を有する場合がある。金属構造が実質的に等方的に成長することを考慮に入れると、構造は、図7Aに概略的に示されるように、この例では、70から120μmの範囲の幅w、および、数mm、例えば3mmのピッチPを有することになる。これによって、金属構造80は、実質的に人間の目につかず、OLEDの場合に、または光起電力デバイスの場合に、光電デバイスにより発生される放射、周囲からの放射の入射(impingent)の小さな部分を単に吸収することになる。図7、7Aに示すような六角形の構造の代わりに、他の構造、例えば、図7Bの長方形の構造もまた使用され得る。
【0036】
ステップS3の後に、さらにステップS5が続く場合があり、そこでは、バリア層構造90が、金属層の上部上に付与される。それによって、図8に示す結果が得られる。バリア層構造90は、NONONとも表される、一続きのSiN、SiO、SiN、SiO、SiNのような、一続きの無機層を含む場合がある。あるいは、この構造は、一続きの交互の有機層および無機層、例えば、第1の無機層と第2の無機層との間に挟まれる有機層を含む場合がある。パターン化電気絶縁層構造は、そのような一続きの無機層、または、無機層および有機層を含む場合もある。バリア層構造90は、電気絶縁層構造60により形成されるバリア層構造に加えて付与される場合がある。あるいは、バリア層構造90が付与されるとき、電気絶縁層構造60は、バリア機能を有する必要はない。その場合、例えば、有機材料の単一の層が、電気絶縁層構造60用に使用され得る。
【0037】
図9に示すように、金属構造80は、図6に示すような、ステップS1〜S3により形成される光電デバイス上に付与される、さらなる光電デバイスに対するコンタクトとして使用され得る。それによって、ステップS5では、光電活性材料のさらなる層110が、さらなる導電層120により形成される第1のさらなる電極122と、第2のさらなる電極132との間に挟まれる。この第2のさらなる電極132は、さらなる導電層120の部分124に電気的に接続される。光電活性材料は、有機または無機の材料であってよい。有機材料には、低温で処理され得るという利点がある。第1のさらなる電極122は、金属層80を伴うパターン化電気絶縁層構造60に付与される。ステップS5の完了の後で、ステップS2およびS3が繰り返される場合があり、その結果、さらなる光電デバイスもまたシャント構造を有する。明らかなように、図9で説明した処理は、複数回繰り返され得るものであり、さらに、複数の異なる光電デバイスが、相互の上部上に積層され得る。
【0038】
光電活性材料の層10と光電活性材料のさらなる層110との以下の組み合わせが、特に有用である。
【0039】
第1の変形例では、有機光電活性材料の層10および光電活性材料のさらなる層110の両方が、発光層である。このように、2つの発光デバイスが、直列に配置され、それによって、同じ供給電流で光出力を2倍にすることが可能になる。所望であれば、より多くの発光デバイスが、このように積層され得る。
【0040】
さらに、ハイブリッドの光電デバイスが、このようにして構成され得る。第2の変形例では、層10が発光層であり、さらなる層110が光起電力層である。第3の変形例では、層10が発光層であり、さらなる層110がエレクトロクロミック層である。
【0041】
第2および第3の変形例は、特に、窓ガラスまたはサイネージのデバイスに適している。第2の変形例は、日中に第1のモードで、入来する光の一部を電気エネルギーに変換するエネルギー源として利用され得るものであり、それによって、同時に、入来する光の強度を緩和する。夜間には、窓ガラスは、第2のモードで光源として使用され得る。発光層10は、例えば、サイネージのデバイスとして使用される窓ガラスにおいてパターン化され得る。金属層120は、共通の電力供給導体の働きをするので、効率的に使用される。第1のモードでは、それは、光起電力層110から外側の窓ガラスへの電力供給線の働きをする。第2のモードでは、それは、発光層10に対する電力供給線の働きをする。第3の変形例では、エレクトロクロミック層110は、光起電力層と比較して、入来する光をより制御可能に緩和することに備えるものである。エレクトロクロミック層110と発光層10との組み合わせにより、例えば、1日の時間に関係なく一定の強度を供給するために、制御可能な光量をもたらす窓ガラスを提供することが可能になる。さらに、この変形例では、金属層120は、この場合では発光層10に対する、およびエレクトロクロミック層110に対する、共通の電力供給導体の働きをする。
【0042】
用語「含む(comprises)」および/または「含む(comprising)」は、本明細書で使用される場合、決められたフィーチャ、整数、ステップ、動作、要素、および/または構成要素の存在を明示するが、1つまたは複数の他のフィーチャ、整数、ステップ、動作、要素、構成要素、および/もしくはそれらの群の存在あるいは追加を排除しない。特許請求の範囲では、単語「含む」は、他の要素またはステップを除外せず、不定冠詞「1つの(a)」または「1つの(an)」は、複数を除外しない。単一の構成要素または他のユニットが、特許請求の範囲に記載される複数の項目の機能を充足する場合がある。ある手段が、相互に異なる請求項に記載されているという単なる事実は、これらの手段の組み合わせが、有利に使用され得ないということを示すものではない。請求項内のいかなる参照符号も、その範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
【0043】
さらに、それと反対であることが明確に言明されない限り、「または」は、包含的論理和を表し、排他的論理和を表さない。例えば、条件AまたはBは、以下のいずれか1つにより満たされる:Aが真(または存在する)かつBが偽(または存在しない)、Aが偽(または存在しない)かつBが真(または存在する)、ならびに、AおよびBの両方が真(または存在する)。
【符号の説明】
【0044】
10 光電活性材料の層、発光層、層
20 導電層
22 第1の電極、第1の部分
24 第2の部分
32 第2の電極、カソード、前記電極の少なくとも1つ
40 基板
60 パターン化電気絶縁層構造、電気絶縁層構造
62 開口部
70 イオン液体、電解液
72 電池
74 補助電極
80 金属層、金属構造
90 バリア層構造
110 光電活性材料のさらなる層、光起電力層、エレクトロクロミック層
120 さらなる導電層、金属層
122 第1のさらなる電極
124 部分
132 第2のさらなる電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
−第1の電極と第2の電極との間に光電活性材料の層を設けるステップ(S1)と、
−パターン化電気絶縁層構造を前記電極の少なくとも1つの上に設けるステップであって、前記パターン化電気絶縁層が開口部を有するステップ(S2)と、
−前記開口部に電解液を提供するステップ(S3)と、
−金属層を前記開口部に前記電解液から電気めっきにより堆積させるステップ(S4)と
を含む、光電デバイスを製造するための方法であって、
前記電解液がイオン液体により形成されることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記パターン化電気絶縁層構造は、バリア層構造である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記パターン化電気絶縁層構造は、シャドウマスクにより規定されることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記パターン化電気絶縁層構造は、印刷技法で規定される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
バリア層構造が、前記金属層の上部上に付与される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項6】
第1のさらなる電極と第2のさらなる電極との間に挟まれる光電活性材料のさらなる層が設けられ、前記第1のさらなる電極が、前記金属層が設けられる前記パターン化電気絶縁層構造上に付与される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
−第1の電極(22)と第2の電極(32)との間の光電活性材料の層(10)と、
−前記電極の少なくとも1つ(32)の上にあり、開口部(62)を有するパターン化電気絶縁層構造(60)と、
−前記パターン化電気絶縁層構造(60)の上にあり、前記パターン化電気絶縁層の前記開口部(62)を通って前記電極の前記少なくとも1つ(32)に延在し、それによって、前記電極の前記少なくとも1つ(32)に直接接触する金属構造(80)と
を含む、光電デバイス。
【請求項8】
光電活性材料のさらなる層(110)が第3の電極(122)と第4の電極(132)との間にある積層体を含み、前記積層体(110、132、122)が、前記金属構造(80)が設けられる前記パターン化電気絶縁層構造(60)上に配置される、請求項7に記載の光電デバイス。
【請求項9】
光電活性材料の前記層(10)および光電活性材料の前記さらなる層(110)の両方が、発光層である、請求項8に記載の光電デバイス。
【請求項10】
光電活性材料の前記層(10)が発光層であり、光電活性材料の前記さらなる層(110)が光起電力層である、請求項8に記載の光電デバイス。
【請求項11】
光電活性材料の前記層(10)が発光層であり、光電活性材料の前記さらなる層(110)がエレクトロクロミック層である、請求項8に記載の光電デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2012−524973(P2012−524973A)
【公表日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−507172(P2012−507172)
【出願日】平成22年4月23日(2010.4.23)
【国際出願番号】PCT/NL2010/050221
【国際公開番号】WO2010/123362
【国際公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【出願人】(511095850)ネーデルランドセ・オルガニサティ・フォール・トゥーヘパスト−ナトゥールウェテンスハッペライク・オンデルズーク・テーエヌオー (16)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】