説明

光電変換モジュール

【課題】光電変換モジュールの裏面電極の剥がれを抑制する。
【解決手段】基板20上に、透明導電層22、光電変換ユニット24及び裏面電極26を順に積層してなる光電変換素子と、光電変換素子で生成される電流を集電するための第1集電電極28とを設ける。このとき、第1集電電極28は、裏面電極26とパネル端部の除去領域Aの透明導電層22とに跨って形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光電変換モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
多結晶、微結晶またはアモルファスシリコンを用いた光電変換モジュールが知られている。特に、微結晶またはアモルファスシリコンの薄膜を積層した構造を有する光電変換モジュールは、資源消費の観点、コストの低下の観点および効率化の観点から注目されている。
【0003】
図7に、光電変換モジュール100の基本構成の断面模式図を示す。光電変換モジュール100は、一般的に、ガラス等の透明基板10上に透明電極12、光電変換ユニット14及び裏面電極16を積層した構造を有し、透明基板10から光を入射させることによって電力を発生させる。このような光電変換モジュールでは、光電変換素子が直列・並列に集積され、それらの素子から集電するための集電電極18が光電変換モジュール100のパネル端部の素子の裏面電極16上に形成される。また、集電電極18等に用いられるハンダ材の強度を高めるために、ハンダディップリードの高さを調整する技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−273908号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、裏面電極16と光電変換ユニット14との界面は接合力が弱く、裏面電極16上に集電電極18を形成した場合に集電電極18と共に裏面電極16が剥がれてしまうおそれがある。その結果、光電変換モジュール100の破損を招いたり、光電変換効率の低下を招いたりする可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の1つの態様は、光電変換モジュールであって、基板上に、透明導電層、発電層及び裏面電極を順に積層してなる光電変換素子と、光電変換素子で生成される電流を集電するための集電電極と、を備え、集電電極は、裏面電極と、透明導電層及び基板の少なくとも一方と、に跨って形成されている。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、光電変換モジュールの裏面電極の剥がれを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施の形態における光電変換モジュールの構成を示す平面図である。
【図2】本発明の実施の形態における光電変換モジュールの構成を示す断面図である。
【図3】本発明の実施の形態における光電変換モジュールの構成を示す断面図である。
【図4】本発明の実施の形態における光電変換モジュールの構成を示す断面図である。
【図5】本発明の実施の形態における光電変換モジュールの構成の別例を示す断面図である。
【図6】本発明の実施の形態における光電変換モジュールの構成の別例を示す断面図である。
【図7】従来の光電変換モジュールの構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本実施の形態における光電変換モジュール200は、図1の平面図及び図2,図3,図4の断面図に示すように、基板20、透明導電層22、光電変換ユニット24、裏面電極26、第1集電電極28及び第2集電電極30を含んで構成される。なお、図2は、図1のラインX−Xに沿った断面図である。図3は、図1のラインY−Yに沿った断面図である。図4は、図1のラインZ−Zに沿った断面図である。
【0010】
基板20は、光電変換ユニット24で光電変換に利用される波長の光を透過する光学特性を有する透明基板とする。基板20は、例えば、ガラス、プラスチック等を用いる。透明導電層22は、酸化錫(SnO)、酸化亜鉛(ZnO)、インジウム錫酸化物(ITO)等に錫(Sn)、アンチモン(Sb)、フッ素(F)、アルミニウム(Al)等をドープした透明導電性酸化物(TCO)を用いることができる。
【0011】
透明導電層22には、光電変換素子を直列に接続するためにスリットS1を形成する。スリットS1は、レーザ加工により形成することができる。レーザ加工は、波長1064nmのYAGレーザを用いることが好適である。レーザ装置から出射されるレーザビームのパワーを調整して透明導電層22側から照射し、連続してスリットS1の方向に走査することによってスリットS1を形成することができる。なお、スリットS1を形成するためのレーザは、基板20側から照射してもよい。
【0012】
また、透明導電層22には、図1に示すように、光電変換素子を並列に接続するためにスリットS2を形成する。スリットS2は、レーザ加工により形成することができる。レーザ加工は、波長1064nmのYAGレーザを用いることが好適である。レーザ装置から出射されるレーザビームのパワーを調整して透明導電層22側から照射し、連続してスリットS2の方向に走査することによってスリットS2を形成することができる。なお、スリットS2を形成するためのレーザは、基板20側から照射してもよい。
【0013】
光電変換ユニット24は、基板20及び透明導電層22を透過した光を受けて光電変換を行う。光電変換ユニット24は、PN接合又はPIN接合された半導体層で構成される。光電変換ユニット24は、特に限定されるものではないが、例えば、アモルファスシリコン(a−Si)光電変換ユニット、微結晶(μc−Si)光電変換ユニット又はそれらのタンデム構造が挙げられる。光電変換ユニット24は、プラズマCVD等を用いて形成することができる。
【0014】
光電変換ユニット24には、光電変換素子を直列に接続するためにスリットS3を形成する。スリットS3は、スリットS1の近傍であってスリットS1に重ならない位置にスリットS1の方向に沿って透明導電層22の表面まで形成する。スリットS3はレーザ処理により形成することができる。レーザ処理は、波長532nmのYAGレーザ(2倍高調波)を用いることが好適である。レーザビームのパワーを調整して基板20側から照射し、スリットS3の方向に走査することによってスリットS3を形成することができる。
【0015】
裏面電極26は、光電変換ユニット24から電力を出力するために光電変換モジュール200の裏面側に設けられる。裏面電極26は、光電変換ユニット24及びスリットS3を被うように形成される。裏面電極26は、反射性金属とすることが好適である。また、反射性金属と透明導電性酸化物(TCO)との積層構造とすることも好適である。反射性金属としては、銀(Ag)、アルミニウム(Al)等が使用できる。また、透明導電性酸化物(TCO)としては、酸化錫(SnO)、酸化亜鉛(ZnO)、インジウム錫酸化物(ITO)等が使用できる。
【0016】
裏面電極26には、光電変換素子を直列に接続するためにスリットS4を形成する。スリットS4は、スリットS3の近傍であってスリットS1及びS3に重ならない位置にスリットS1,S3の方向に沿って光電変換ユニット24及び裏面電極26を分割するように透明導電層22の表面まで形成される。スリットS4はレーザ処理にて形成する。レーザ処理は、波長532nmのYAGレーザ(2倍高調波)を用いることが好適である。レーザビームのパワーを調整して基板20側から照射し、スリットS4の方向に走査することによってスリットS4を形成することができる。
【0017】
また、裏面電極26には、図1に示すように、光電変換素子を並列に接続するためにスリットS5を形成する。スリットS5は、スリットS2に重ね合わせてスリットS2に沿って形成する。スリットS5は、スリットS2内に形成された光電変換ユニット24及び裏面電極26を分割するように基板20の表面まで形成される。スリットS5はレーザ処理にて形成する。レーザ処理は、波長532nmのYAGレーザ(2倍高調波)を用いることが好適である。レーザビームのパワーを調整して基板20側から照射し、スリットS5の方向に走査することによってスリットS5を形成することができる。
【0018】
また、スリットS1,S3,S4の方向に沿って、光電変換モジュール200のパネル端部の光電変換ユニット24及び裏面電極26も除去して透明導電層22を残すように除去領域Aを形成する。除去領域Aは、レーザ処理にて形成することができる。レーザ処理は、波長532nmのYAGレーザ(2倍高調波)を用いることが好適である。レーザビームのパワーを調整して基板20側から照射し、パネル縁の方向に走査することによって除去領域Aを形成することができる。
【0019】
第1集電電極28は、スリットS2,S5によって並列に分割された光電変換素子の出力電力を集電するために形成される。したがって、第1集電電極28は光電変換モジュール200のパネル端部の裏面電極26を並列に接続するようにスリットS2,S5に跨って形成する。このとき、第1集電電極28は、裏面電極26から除去領域Aに跨って形成される。すなわち、第1集電電極28は、裏面電極26の表面から裏面電極26及び光電変換ユニット24の側面を介して透明導電層22の表面まで形成される。このとき、第1集電電極28は、スリットS1,S3,S4(特にスリットS4)に到達しない程度に形成すればよい。
【0020】
第1集電電極28は、集電に十分な導電性を有する材料を含んで構成されればよい。第1集電電極28は、例えば、導電性物質が表面や内部に混入されている導電性テープ、ライン状のハンダ、スクリーン印刷法等で銀ペーストを塗布したもの等とすることができる。
【0021】
このように、第1集電電極28を裏面電極26から除去領域Aに跨って形成することによって、裏面電極26が光電変換ユニット24との界面から剥がれてしまうことを抑制することができる。これは、除去領域Aの透明導電層22と第1集電電極28との界面の密着性は良好であるので、第1集電電極28によって裏面電極26が光電変換ユニット24から引き剥がされることが抑制されるためであると推考される。特に、裏面電極26上の面積より透明導電層22の面積を広く形成することが好適である。これにより剥がれの抑制効果をより強く得ることができる。また、第1集電電極28を除去領域Aにおける透明導電層22の端部も覆うように形成することが好適である。これにより、光電変換モジュール200の外部からの水分等の浸入を第1集電電極28により防ぐことができ、透明導電層22が劣化することを抑制することができる。
【0022】
第2集電電極30は、図4に示すように、第1集電電極28をコネクタ202へ接続するための電極である。第2集電電極30は、第1集電電極28とコネクタ202とを電気的に接続するものであり、集電に十分な導電性を有する材料を含んで構成されればよい。第2集電電極30は、例えば、導電性物質が表面や内部に混入されている導電性テープやスクリーン印刷等で形成されたハンダ等とすることができる。第2集電電極30は、第1集電電極28とコネクタ202との間において裏面電極26や光電変換ユニット24と接触しないように絶縁材32を挟んで設けることが好適である。
【0023】
このとき、第2集電電極30を除去領域Aに形成された第1集電電極28上まで延設することが好適である。このような構成とすることで、第2集電電極30を裏面電極26上に形成された第1集電電極28までしか延設しなかった場合に比べて、裏面電極26と光電変換ユニット24との剥がれを抑制することができる。
【0024】
また、図5に示すように、除去領域Aは透明導電層22も除去して基板20のみを残したものとしてもよい。この場合、第1集電電極28は、裏面電極26から除去領域Aの基板20に跨って形成される。このような構成においても、裏面電極26が光電変換ユニット24との界面から剥がれてしまうことを抑制することができる。この場合も、除去領域Aの基板20と第1集電電極28との界面の密着性は良好であるので、第1集電電極28によって裏面電極26が光電変換ユニット24から引き剥がされることが抑制されるためであると推考される。
【0025】
さらに、図6に示すように、除去領域Aよりもパネル端部側に光電変換ユニット24及び裏面電極26の少なくとも一方を残して島部Bを形成してもよい。これにより、パネル端部から水分が侵入して第1集電電極28やパネル内部の光電変換ユニット24に劣化が及ぶことを抑制することができる。図5に示したように除去領域Aに基板20のみを残す場合にも、除去領域Aよりもパネル端部側に光電変換ユニット24及び裏面電極26の少なくとも一方を残して島部Bを形成することによって同様の効果が得られる。
【符号の説明】
【0026】
10 透明基板、12 透明電極、14 光電変換ユニット、16 裏面電極、18 集電電極、20 基板、22 透明導電層、24 光電変換ユニット、26 裏面電極、28 第1集電電極、30 第2集電電極、32 絶縁材、100,200 光電変換モジュール、202 コネクタ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に、透明導電層、発電層及び裏面電極を順に積層してなる光電変換素子と、
前記光電変換素子で生成される電流を集電するための集電電極と、を備え、
前記集電電極は、前記裏面電極と、前記透明導電層及び前記基板の少なくとも一方と、に跨って形成されていることを特徴とする光電変換モジュール。
【請求項2】
請求項1に記載の光電変換モジュールであって、
前記集電電極は、前記裏面電極上の面積より、前記透明導電層及び前記基板上の面積が広いことを特徴とする光電変換モジュール。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の光電変換モジュールであって、
前記集電電極の外側に前記透明導電層、前記発電層及び前記裏面電極の少なくとも1つが残された島部を有することを特長とする光電変換モジュール。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の光電変換モジュールであって、
前記集電電極は、前記透明導電層上に形成されている場合に前記透明導電層の端部も覆うように形成されていることを特徴とする光電変換モジュール。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1つに記載の光電変換モジュールであって、
前記集電電極からさらに集電を行う電極を備え、
当該電極は、前記透明導電層及び前記基板の少なくとも一方の上に形成された前記集電電極上に跨って形成されていることを特徴とする光電変換モジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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