光電変換素子、光電変換素子の製造方法、及び撮像素子
【課題】画素電極の段差に起因するクラックが抑えられ、ノイズが少ない光電変換素子、光電変換素子の製造方法、及び撮像素子を提供する。
【解決手段】基板の上方に設けられた一対の電極と、一対の電極間に配された複数の有機層と、を備え、複数の有機層が光電変換層を含み、一対の電極のうち一方の電極の上に有機層が形成され、一方の電極が、2次元に複数配列された画素電極の一つである光電変換素子の製造方法であって、基板の上に絶縁層を形成し、絶縁層上に複数の画素電極をパターン形成し、複数の画素電極を覆うように有機層を蒸着し、有機層上に他の層を形成する前に、加熱することによって該有機層における画素電極間の段差の上方に対応する位置に形成された凹部の形状がなだらかになるようにアニールする。
【解決手段】基板の上方に設けられた一対の電極と、一対の電極間に配された複数の有機層と、を備え、複数の有機層が光電変換層を含み、一対の電極のうち一方の電極の上に有機層が形成され、一方の電極が、2次元に複数配列された画素電極の一つである光電変換素子の製造方法であって、基板の上に絶縁層を形成し、絶縁層上に複数の画素電極をパターン形成し、複数の画素電極を覆うように有機層を蒸着し、有機層上に他の層を形成する前に、加熱することによって該有機層における画素電極間の段差の上方に対応する位置に形成された凹部の形状がなだらかになるようにアニールする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光電変換素子、光電変換素子の製造方法、及び撮像素子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、基板上に、一対の電極と、この一対の電極の間に配された光電変換層とを備える積層型の光電変換素子が知られている。また、この光電変換素子を備えた撮像素子が知られている。積層型の光電変換素子としては、特許文献1に示すものがある。
【0003】
特許文献1には、基板上方に複数の画素電極と、光電変換層と、対向電極とがこの順に形成された光電変換素子が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−273555号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、積層型の光電変換素子においては、光電変換層にクラックが生じてしまう場合がある。すると、光電変換素子を備える撮像素子においては、暗時出力画像を表示させた際に白傷等のノイズが増加してしまう。
【0006】
クラックの発生の要因としては、画素電極の端部の段差が影響していると考えられる。
【0007】
積層型の光電変換素子を作製する場合、複数の画素電極が基板上方に形成される。このとき、各画素電極は、端部に切り立った段差が形成される。続いて、複数の画素電極上に、光電変換層を含む複数の有機層を順次に蒸着し、更に、複数の有機層の上方にITO等からなる対向電極を形成する。こうして作製された光電変換素子には、画素電極の上方に蒸着した各有機層において、段差の形状に反映されて窪んでなる凹部が形成される。そして、このような光電変換素子においては、複数の有機層全体にわたってクラックが発生してしまう場合がある。発生するクラックは、画素電極の段差の上方に集中している。このため、有機層のクラックが生じた部分において、漏れ電流が生じることによってノイズが発生すると考えられる。
【0008】
また、対向電極は、直下の有機層の凹部に反映された形状となり、その形状は下方の有機層に一部が食い込んだものとなる。すると、対向電極が有機層に食い込んだ部位と画素電極との間で、電流のショートが生じやすくなるため、暗時出力画像のノイズが増加すると考えられる。
【0009】
特許文献1の光電変換素子は、上部電極と下部電極からなる一対の電極のうち一方の電極と光電変換層との間に、電極表面の凹凸を緩和するための凹凸緩和層を備えている。この光電変換素子によれば、凹凸緩和層によって、電極表面の微細な凹凸が光電変換層に与える影響を小さくすることでクラックの発生を抑えられる。しかし、画素電極の段差に起因するクラックの発生を抑える対策については記載されていない。
【0010】
本発明は、画素電極の段差に起因するクラックが抑えられ、ノイズが少ない光電変換素子、光電変換素子の製造方法、及び撮像素子を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
基板の上方に設けられた一対の電極と、
前記一対の電極間に配された複数の有機層と、を備え、
前記複数の有機層が光電変換層を含み、
前記一対の電極のうち一方の電極の上に有機層が形成され、
前記一方の電極が、2次元に複数配列された画素電極の一つである光電変換素子であって、
前記有機層が、並び合う前記画素電極間の段差の上方に対応する位置に形成された凹部を有し、前記凹部は、その表面の任意の点における接触平面と前記基板の表面とがなす傾斜角度をθとしたとき、傾斜角度θが50度以下である光電変換素子。
【0012】
基板の上方に設けられた一対の電極と、
前記一対の電極間に配された複数の有機層と、を備え、
前記複数の有機層が光電変換層を含み、
前記一対の電極のうち一方の電極の上に有機層が形成され、
前記一方の電極が、2次元に複数配列された画素電極の一つである光電変換素子の製造方法であって、
前記基板の上に絶縁層を形成し、
前記絶縁層上に前記複数の画素電極をパターン形成し、
前記複数の画素電極を覆うように前記有機層を蒸着し、
前記有機層上に他の層を形成する前に、加熱することによって該有機層における前記画素電極間の段差の上方に対応する位置に形成された凹部の形状がなだらかになるようにアニールする光電変換素子の製造方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、クラックの発生を抑え、画像表示の際にノイズを低減することができる光電変換素子、及び、光電変換素子の製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】撮像素子の断面を模式的に示した図である。
【図2】図1の画素電極同士の隙間の段差と第1有機層の構成を説明する図である。
【図3】光電変換素子の製造方法の手順を説明する図である。
【図4】光電変換素子において画素電極の間の段差と第1有機層の凹部の形状を示す模式的な断面図である。
【図5】傾斜角度θ2と白傷画素数の割合の関係を示すグラフである。
【図6】分子量と傾斜角度θ2の関係を示すグラフである。
【図7】分子量と白傷画素数の割合の関係を示すグラフである。
【図8】分子量500以上1300以下の範囲で白傷画素数の割合の詳細な変化を示すグラフである。
【図9】アニール温度と傾斜角度θ2の関係を示すグラフである。
【図10】アニール温度と白傷画素数の割合の関係を示すグラフである。
【図11】基板温度と傾斜角度θ2の関係を示すグラフである。
【図12】基板温度と白傷画素数の割合の関係を示すグラフである。
【図13】撮像素子の構成の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は、本発明の一実施形態を説明するための撮像素子の断面を模式的に示した図である。撮像素子1は、基板11と、絶縁層12と、中間層20と、対向電極14と、複数の画素電極16と、接続部18と、信号読出し部17と、を備える。
【0016】
基板11は、ガラス基板、又は、シリコン等の半導体基板である。基板11上には絶縁層12が形成されている。絶縁層12の上には複数の画素電極16が形成されている。
【0017】
複数の画素電極16は、絶縁層12表面の水平方向とこれに直交する垂直方向に二次元状に、一定の間隔をあけて配列されている。
【0018】
中間層20は、第1有機層21と第2有機層22とをこの順に積層させてなる。第1有機層21は、電子ブロッキング層であり、画素電極16を覆うように設けられている。第2有機層22は、受光した光に応じて電荷を発生する有機の光電変換材料からなる光電変換層である。なお、中間層20は、2つの有機層21,22とからなる構成に限定されず、少なくとも光電変換層を含む複数の有機層で構成されていればよい。
【0019】
対向電極14は、各画素電極16と対向する電極であり、中間層20上に設けられている。対向電極14は、中間層20に光を入射させるため、入射光に対して透明な導電性材料で構成されている。対向電極14には、図示しない配線を介して所定の電圧を印加することができるようになっている。これにより、対向電極14と、複数の画素電極16との間に電界を加えることが可能となっている。なお、所定の電圧としては、−30V〜30Vの範囲とすることが本発明の効果が顕著で好ましい。
【0020】
各画素電極16とその上方の対向電極14とでなる一対の電極と、これら電極と間に配された第1有機層21及び第2有機層22が光電変換素子として機能する。
【0021】
撮像素子1は、アレイ状に配列された画素部10を有する。画素部10は、図1に示される破線で区画されたブロックの1つとして定義される。画素部10は、光電変換素子を含む。
【0022】
画素電極16は、画素部10に含まれる中間層20内の光電変換層で発生した電荷を捕集するための電荷捕集用の電極である。信号読出し部17は、複数の画素電極16の各々に対応して設けられており、対応する画素電極16で捕集された電荷に応じた信号を出力するものである。信号読出し部17は、例えばCCD、MOSトランジスタ回路(MOS回路)、又はTFT回路等で構成されている。接続部18は、画素電極16とそれに対応する信号読出し部17とを電気的に接続するものであり、絶縁層12に埋設されている。接続部18は、タングステン(W)等の導電性材料で構成されている。
【0023】
例えば、信号読出し部17は、MOS回路である場合には、図示しない、フローティングディフュージョン、リセットトランジスタ、出力トランジス、選択トランジスタを備える。リセットトランジスタ、出力トランジスタ、及び選択トランジスタは、それぞれnチャネルMOSトランジスタ(以下、nMOSトランジスタ)で構成される。
【0024】
信号読出し部17は、このような回路構成により、画素電極16で捕集された電荷に応じた信号を読み出す。
【0025】
図2は、図1の画素電極同士の隙間の段差と第1有機層の構成を説明する図である。
複数の画素電極16は、絶縁層12の上に真空蒸着法(例えばスパッタリング)によって成膜された後、マスクを介してエッチングされ、所定のパターンで形成されたものである。このとき、エッチングによって画素電極16を除去した際に、画素電極16の間に下層である絶縁層12の表面12Aが表れる。また、複数の画素電極16の断面視における両端部には、画素電極16の表面16Aと、画素電極16の間の絶縁層12の表面12Aとの段差16Gが形成される。以下、この段差16Gを、画素電極間の段差16Gともいう。ここで、画素電極間の段差16Gに囲まれた凹部の底面12Aが絶縁層12の面に相当する。画素電極16の凹部の底面に接する絶縁層12の部位の面より該絶縁層12内に入り込んでいる。これは、画素電極16をパターニングする際にオーバーエッチングしたためである。
【0026】
なお、画素電極16のサイズは3μm以下が本発明の効果が顕著で好ましい。より好ましくは2μm以下である。更に好ましくは1.5μm以下である。画素電極16間ギャップは0.3μm以下が本発明の効果が顕著で好ましく、より好ましくは0.25μm以下であり、更に好ましくは0.2μm以下である。
画素サイズが小さい方が画素電極16の凹部に対応する面積が相対的に大きくなり、本発明の効果が顕著になる。また画素電極16間のギャップが小さいほど後述する第1有機層21の成膜が不均一となるために本発明の効果が顕著になる。
【0027】
第1有機層21は、複数の画素電極16、及び、画素電極間の段差16Gを覆うように形成されている。第1有機層21は、蒸着によって形成されたものである。第1有機層21は、複数の画素電極16及び画素電極16の間の段差16Gの表面の形状が反映され、段差16Gの上方に対応する位置に凹部21Gが形成される。第1有機層21の凹部21Gは、第1有機層の表面21Bから画素電極16の間の段差16G側へ窪んでいる。凹部21Gのその底部21Aと他の第1有機層21の部位の表面21Bとが傾斜した面によって連なっている。
【0028】
一般的に、パターン形成(パターニング)された複数の画素電極16上に第1有機層21を形成すると、画素電極16間の段差16Gの影響によって、第1有機層21の凹部21Gは、その形状が底部21Aから表面21Bの傾斜が大きくなる傾向がある。この撮像素子においては、第1有機層21は、蒸着によって形成された後で、なだらかな形状の凹部21Gを形成するための後処理が行われている。後処理については後述する。
【0029】
ここで、第1有機層21の凹部21Gのなだらかさを、凹部21Gの表面の任意の点における接触平面と基板11の表面とのなす傾斜角度によって表すことができる。図2において、第1有機層21の凹部21Gの任意の点をP1,P2,P3で示している。また、任意の点P1における接触平面をF1で示し、任意の点P2における接触平面をF2で示し、任意の点P3における接触平面をF3で示している。更に、接触平面の傾斜角度を示すための基準となる面は、撮像素子1の基板11の表面11Aとする。図2の線F0は、傾斜角度を説明するために描画したものであり、基板11の表面11Aに対して平行な面を仮想的に示している。
【0030】
図2では、第1有機層21の凹部21Gにおける点P1の接触平面F1の線F0に対する傾斜角度をθとする。また、この点P1における接触平面が、他の点P2,P3における接触平面に比べ、線F0に対する傾斜角度が最も大きい。このとき、傾斜角度θが小さいほど、第1有機層21の凹部21Gの形状がなだらかであり、第1有機層21が平坦面に近いことを意味する。そして、固体撮像素子1は、この傾斜角度θが50度以下であれば、暗時出力時のノイズを低減することができる。理由は次のとおりである。すなわち、作成された固体撮像素子において、第1有機層21の凹部21Gの形状をなだらかにすることによって、第1有機層21上の第2有機層22に凹部が形成されない、又は、形成されたとしてもその形状がなだらかになる。すると、中間層20を構成する第1有機層21及び第2有機層22内においてクラックの発生が抑制される。よって、固体撮像素子1で暗時出力画像を表示したときに白傷等のノイズを低減されることになる。
【0031】
また、第2有機層22の対向電極14側の表面に形成される凹部の形状もなだらかになるため、対向電極14の一部が第2有機層内へ食い込むことを抑えることができる。よって、対向電極14と画素電極16との間で、電流のショートが生じることを抑えられ、固体撮像素子1で画像表示を行った際のノイズを低減することができる。
【0032】
次に、中間層20、画素電極16、対向電極14について説明する。
【0033】
中間層20のうち第1有機層21は、電子ブロッキング層である。電子ブロッキング層は、画素電極16と対向電極14との間に電圧を印加したとき、正孔捕集電極である画素電極16に電子が輸送されることを抑えることによって、暗電流を抑制する機能を有する。
【0034】
中間層20のうち第2有機層22は、光電変換層である。光電変換層は、p型有機半導体とn型有機半導体とを含む。p型有機半導体とn型有機半導体を接合させてドナ‐アクセプタ界面を形成することにより励起子解離効率を増加させることができる。このために、p型有機半導体とn型有機半導体を接合させた構成の光電変換層は高い光電変換効率を発現する。特に、p型有機半導体とn型有機半導体を混合した光電変換層は、接合界面が増大して光電変換効率が向上するので好ましい。
【0035】
p型有機半導体(化合物)は、ドナ性有機半導体であり、主に正孔輸送性有機化合物に代表され、電子を供与しやすい性質がある有機化合物をいう。更に詳しくは2つの有機材料を接触させて用いたときにイオン化ポテンシャルの小さい方の有機化合物をいう。したがって、ドナ性有機化合物は、電子供与性のある有機化合物であればいずれの有機化合物も使用可能である。例えば、トリアリールアミン化合物、ベンジジン化合物、ピラゾリン化合物、スチリルアミン化合物、ヒドラゾン化合物、トリフェニルメタン化合物、カルバゾール化合物、ポリシラン化合物、チオフェン化合物、フタロシアニン化合物、シアニン化合物、メロシアニン化合物、オキソノール化合物、ポリアミン化合物、インドール化合物、ピロール化合物、ピラゾール化合物、ポリアリーレン化合物、縮合芳香族炭素環化合物(ナフタレン誘導体、アントラセン誘導体、フェナントレン誘導体、テトラセン誘導体、ピレン誘導体、ペリレン誘導体、フルオランテン誘導体)、含窒素ヘテロ環化合物を配位子として有する金属錯体等を用いることができる。なお、これに限らず、上記したように、n型(アクセプタ性)化合物として用いた有機化合物よりもイオン化ポテンシャルの小さい有機化合物であればドナ性有機半導体として用いてよい。
【0036】
n型有機半導体(化合物)は、アクセプタ性有機半導体であり、主に電子輸送性有機化合物に代表され、電子を受容しやすい性質がある有機化合物をいう。更に詳しくは、n型有機半導体とは、2つの有機化合物を接触させて用いたときに電子親和力の大きい方の有機化合物をいう。したがって、アクセプタ性有機化合物は、電子受容性のある有機化合物であればいずれの有機化合物も使用可能である。例えば、縮合芳香族炭素環化合物(ナフタレン誘導体、アントラセン誘導体、フェナントレン誘導体、テトラセン誘導体、ピレン誘導体、ペリレン誘導体、フルオランテン誘導体)、窒素原子、酸素原子、硫黄原子を含有する5〜7員のヘテロ環化合物(例えばピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、トリアジン、キノリン、キノキサリン、キナゾリン、フタラジン、シンノリン、イソキノリン、プテリジン、アクリジン、フェナジン、フェナントロリン、テトラゾール、ピラゾール、イミダゾール、チアゾール、オキサゾール、インダゾール、ベンズイミダゾール、ベンゾトリアゾール、ベンゾオキサゾール、ベンゾチアゾール、カルバゾール、プリン、トリアゾロピリダジン、トリアゾロピリミジン、テトラザインデン、オキサジアゾール、イミダゾピリジン、ピラリジン、ピロロピリジン、チアジアゾロピリジン、ジベンズアゼピン、トリベンズアゼピン等)、ポリアリーレン化合物、フルオレン化合物、シクロペンタジエン化合物、シリル化合物、含窒素ヘテロ環化合物を配位子として有する金属錯体などが挙げられる。なお、これに限らず、上記したように、p型(ドナ性)化合物として用いた有機化合物よりも電子親和力の大きな有機化合物であればアクセプタ性有機半導体として用いてよい。
【0037】
p型有機半導体、又はn型有機半導体としては、いかなる有機色素を用いても良いが、好ましくは、シアニン色素、スチリル色素、ヘミシアニン色素、メロシアニン色素(ゼロメチンメロシアニン(シンプルメロシアニン)を含む)、3核メロシアニン色素、4核メロシアニン色素、ロダシアニン色素、コンプレックスシアニン色素、コンプレックスメロシアニン色素、アロポーラー色素、オキソノール色素、ヘミオキソノール色素、スクアリウム色素、クロコニウム色素、アザメチン色素、クマリン色素、アリーリデン色素、アントラキノン色素、トリフェニルメタン色素、アゾ色素、アゾメチン色素、スピロ化合物、メタロセン色素、フルオレノン色素、フルギド色素、ペリレン色素、ペリノン色素、フェナジン色素、フェノチアジン色素、キノン色素、ジフェニルメタン色素、ポリエン色素、アクリジン色素、アクリジノン色素、ジフェニルアミン色素、キナクリドン色素、キノフタロン色素、フェノキサジン色素、フタロペリレン色素、ジケトピロロピロール色素、ジオキサン色素、ポルフィリン色素、クロロフィル色素、フタロシアニン色素、金属錯体色素、縮合芳香族炭素環系色素(ナフタレン誘導体、アントラセン誘導体、フェナントレン誘導体、テトラセン誘導体、ピレン誘導体、ペリレン誘導体、フルオランテン誘導体)が挙げられる。
【0038】
n型有機半導体として、電子輸送性に優れた、フラーレン又はフラーレン誘導体を用いることが特に好ましい。フラーレンとは、フラーレンC60、フラーレンC70、フラーレンC76、フラーレンC78、フラーレンC80、フラーレンC82、フラーレンC84、フラーレンC90、フラーレンC96、フラーレンC240、フラーレンC540、ミックスドフラーレン、フラーレンナノチューブを表し、フラーレン誘導体とはこれらに置換基が付加された化合物のことを表す。
【0039】
フラーレン誘導体の置換基として好ましくは、アルキル基、アリール基、又は複素環基である。アルキル基として更に好ましくは、炭素数1〜12までのアルキル基であり、アリール基、及び複素環基として好ましくは、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、フルオレン環、トリフェニレン環、ナフタセン環、ビフェニル環、ピロール環、フラン環、チオフェン環、イミダゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、インドリジン環、インドール環、ベンゾフラン環、ベンゾチオフェン環、イソベンゾフラン環、ベンズイミダゾール環、イミダゾピリジン環、キノリジン環、キノリン環、フタラジン環、ナフチリジン環、キノキサリン環、キノキサゾリン環、イソキノリン環、カルバゾール環、フェナントリジン環、アクリジン環、フェナントロリン環、チアントレン環、クロメン環、キサンテン環、フェノキサチイン環、フェノチアジン環、又はフェナジン環であり、更に好ましくは、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ピリジン環、イミダゾール環、オキサゾール環、又はチアゾール環であり、特に好ましくはベンゼン環、ナフタレン環、又はピリジン環である。これらは更に置換基を有していてもよく、その置換基は可能な限り結合して環を形成してもよい。なお、複数の置換基を有しても良く、それらは同一であっても異なっていても良い。また、複数の置換基は可能な限り結合して環を形成してもよい。
【0040】
光電変換層がフラーレン又はフラーレン誘導体を含むことで、フラーレン分子又はフラーレン誘導体分子を経由して、光電変換により発生した電子を画素電極16又は対向電極14まで早く輸送できる。フラーレン分子又はフラーレン誘導体分子が連なった状態になって電子の経路が形成されていると、電子輸送性が向上して光電変換素子の高速応答性が実現可能となる。このためにはフラーレン又はフラーレン誘導体が光電変換層に40%以上含まれていることが好ましい。もっとも、フラーレン又はフラーレン誘導体が多すぎるとp型有機半導体が少なくなって接合界面が小さくなり励起子解離効率が低下してしまう。
【0041】
光電変換層において、フラーレン又はフラーレン誘導体と共に混合されるp型有機半導体としては、特許第4213832号公報等に記載されたトリアリールアミン化合物を用いると光電変換素子の高SN比が発現可能になり、特に好ましい。光電変換層内のフラーレン又はフラーレン誘導体の比率が大きすぎると該トリアリールアミン化合物が少なくなって入射光の吸収量が低下する。これにより光電変換効率が減少するので、光電変換層に含まれるフラーレン又はフラーレン誘導体は85%以下の組成であることが好ましい。
【0042】
電子ブロッキング層には、電子供与性有機材料を用いることができる。また、該材料は物理的気相成膜法に適した低分子材料であることが好ましい。具体的には、低分子材料では、N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−(1,1’−ビフェニル)−4,4’−ジアミン(TPD)や4,4’−ビス[N−(ナフチル)−N−フェニル−アミノ]ビフェニル(α−NPD)等の芳香族ジアミン化合物、オキサゾール、オキサジアゾール、トリアゾール、イミダゾール、イミダゾロン、スチルベン誘導体、ピラゾリン誘導体、テトラヒドロイミダゾール、ポリアリールアルカン、ブタジエン、4,4’,4”−トリス(N−(3−メチルフェニル)N−フェニルアミノ)トリフェニルアミン(m−MTDATA)、ポルフィン、テトラフェニルポルフィン銅、フタロシアニン、銅フタロシアニン、チタニウムフタロシアニンオキサイド等のポリフィリン化合物、トリアゾール誘導体、オキサジザゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アニールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、オキサゾール誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、シラザン誘導体などを用いることができ、高分子材料では、フェニレンビニレン、フルオレン、カルバゾール、インドール、ピレン、ピロール、ピコリン、チオフェン、アセチレン、ジアセチレン等の重合体や、その誘導体を用いることができる。電子供与性化合物でなくとも、充分な正孔輸送性を有する化合物であれば用いることは可能である。特に電子供与性有機材料で下記構造が好ましい。なお、R1、R2、R3は任意の置換基、原子群、原子であり、互いに縮環していてもよい。
【0043】
【化1】
【0044】
複数の画素電極16はそれぞれ、各画素電極16上の光電変換層を含む中間層20で発生した正孔の電荷を捕集する。各画素電極16で捕集された電荷が、対応する各画素部10の信号読出し部17で信号となり、複数の画素部から取得した信号に基づいて画像が合成される。
【0045】
対向電極14は、光電変換層を含む中間層20を、画素電極16との間で挟込むことで中間層20に電界を印加し、光電変換層で発生した電荷のうち、電子を捕集する。対向電極14は、画素電極16が捕集する電荷に対して逆極性電荷を捕集すればよく、画素部10毎に分割する必要がないため、対向電極14は複数の画素で共通にすることができる。このため、対向電極14は共通電極(コモン電極)と呼ばれることもある。
【0046】
対向電極14は、光電変換層を含む中間層20に光を入射させるため、透明導電膜で構成されることが好ましく、例えば、金属、金属酸化物、金属窒化物、金属硼化物、有機導電性化合物、これらの混合物等が挙げられる。具体例としては、酸化錫、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化インジウム錫(ITO)、酸化インジウム亜鉛(IZO)、酸化インジウムタングステン(IWO)、酸化チタン等の導電性金属酸化物、TiN等の金属窒化物、金(Au)、白金(Pt)、銀(Ag)、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)、アルミニウム(Al)等の金属、更にこれらの金属と導電性金属酸化物との混合物又は積層物、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロール等の有機導電性化合物、これらとITOとの積層物、などが挙げられる。透明導電膜の材料として特に好ましいのは、ITO、IZO、酸化錫、アンチモンドープ酸化錫(ATO)、弗素ドープ酸化錫(FTO)、酸化亜鉛、アンチモンドープ酸化亜鉛(AZO)、ガリウムドープ酸化亜鉛(GZO)のいずれかの材料である。
【0047】
対向電極14の面抵抗は、信号読み出し部17がCMOS型の場合は10kΩ/□以下が好ましく、より好ましくは、1kΩ/□以下である。信号読み出し部17がCCD型の場合には1kΩ/□以下が好ましく、より好ましくは、0.1kΩ/□以下である。
【0048】
次に、光電変換素子の製造方法について説明する。図3は、光電変換素子の製造手順の一部を示す断面図である。光電変換素子の構成は、図1に示すものと同じである。以下、光電変換素子の構成の説明は、図1の参照番号を適宜参照することで説明を簡略化又は省略する。
【0049】
先ず、汎用的な半導体製造工程を用いて、シリコン等の基板11に信号読み出し部17を形成する。その後、基板11の光入射側の表面上に絶縁層12を成膜し、絶縁層12の表面をCMPなどで研磨し平坦化する。そして、絶縁層12には、接続部18を形成するための孔がフォトリソグラフィ工程及びドライエッチング工程で形成される。孔は、絶縁層12において画素電極16が形成される領域の下方に位置する部分に形成される。形成された孔に、導電性材料を用いて接続部18を形成する。
【0050】
画素電極16の材料を絶縁層12上に化学的気相成膜(CVD)法等で成膜し、一般的な多層配線技術で利用するフォトリソグラフィ工程とドライエッチング工程により一定の間隔で複数配列される配置となるようにパターニングすることで画素電極16が形成される。こうして、図3Aに示すように、絶縁層12上に複数の画素電極16が形成される。並び合う画素電極16の間には、段差16Gが形成される。このような製造方法の場合、段差16Gは急峻な角度をもつ段差となりやすい。このような状況下でも、本発明の製造方法により、ノイズの少ない光電変換素子及び撮像素子の作製が可能となる。
段差16Gの傾斜角度θ1が、50°<θ1≦90°の場合、本発明の効果が顕著である。θ1が50°より大きくなった場合、後述する第1有機層21及び第2有機層22内にクラックの発生、及び対向電極14の一部が第2有機層内へ食い込むことの発生が顕著となる。一方、θ1が90°を超える場合、画素電極端部の影となって蒸着されない部分が増加してしまい、この場合、段差16Gをなだらかにするのは困難となる。
【0051】
次いで、図3Bに示すように、複数の画素電極16、及び、それらの間の段差16Gを覆うように、第1有機層21を蒸着する。第1有機層21の蒸着には、物理的気相成膜(PVD)法が用いられ、例えば、真空加熱蒸着法等が用いられる。蒸着された第1有機層21は、画素電極16の間の段差16Gの上方に対応する位置に凹部21Gが形成される。このとき、第1有機層21の凹部21Gは、画素電極16の間の段差16Gの形状に反映された形状を有し、つまり、凹部21Gの深さは段差16Gの深さが大きいほど大きく、凹部21Gの幅(図3中左右方向の寸法)は段差16Gの幅が大きいほど大きくなる。
【0052】
第1有機層21を蒸着した後、アニール処理を行う。アニール処理は、第1有機層21を高温雰囲気に晒すことで加熱し、凹部21Gの形状をなだらかにするために行われる。そして、図3Cに示すように、アニール処理によって、第1有機層21の凹部21Gの形状がなだらかになる。
【0053】
アニール処理する第1有機層21の好ましい条件を説明する。
第1有機層21の材料は、物理的気相成膜に適した低分子材料で、かつ分子量が550〜1250となる材料が好ましい。更に好ましくは630〜1150である。分子量が550未満となると、結晶化が起こりやすく、凹部21Gの形状がなだらかになりにくい傾向がある。また分子量が1250以上になると、分子が動きにくくなり、その場合も凹部21Gの形状がなだらかになりにくくなる傾向がある。
【0054】
アニール処理する第1有機層は電荷ブロッキング層(図3の例では電子ブロッキング層)であることが好ましい。光電変換材料からなる有機層の場合にはアニールにより光電変換機能、特に光に対する応答速度が著しく劣化する等の性能変化が大きいために制御することが困難となる。好ましくは後に詳述する電子ブロッキング材料が本発明の効果が最も顕著で好ましい。
【0055】
第1有機層21の厚みは、段差16Gの深さD1以上とするのが好ましい。第1有機層21の厚みが深さD1未満の場合、凹部21Gの形状がなだらかになりにくい。第1有機層21の厚みは好ましくはD1×1.2以上、更に好ましくはD1×1.4以上である。
【0056】
アニール処理の好ましい条件を説明する。
第1有機層21をアニールする温度は、第1有機層21を構成する材料のガラス転移温度(Tg)以下であることが好ましい。Tg以上の温度でアニールすると第1有機層21が不均一膜となってしまうことにより、素子として本来の光電変換特性が得られない。
また、Tg以下であり、かつTgに近い温度でアニールすることで、凹部21Gの形状をなだらかにすることができる。
アニール温度はTg×0.72以上Tg以下が好ましい。更に好ましくはTg×0.75以上Tg以下である。
なお、Tgの測定にはAnasys Instruments社製局所加熱システムnano−TA2を用い、第1有機層21の材料のガラス板上蒸着膜(膜厚100nm)に対し、昇温速度は10℃/s、室温〜300℃まで探針を加熱し、軟化針入に伴う変曲点をガラス転移温度とした。
【0057】
第1有機層21のアニール処理後に、該第1有機層21上に第2有機層22を同様に蒸着で形成し、対向電極14を形成する。また、対向電極14上には、後述する緩衝層、封止層、封止補助層、カラーフィルタ、オーバーコート層が形成される。これらの部材及び層の形成方法や手順は特に制限されない。
【0058】
上述のような製造方法によれば、複数の画素電極16を覆うように第1有機層21を蒸着した後、第1有機層21を加熱することでアニールし、凹部21Gの形状をなだらかにする。こうすれば、作成された固体撮像素子において、第1有機層21の凹部21Gの形状がなだらかなため、第1有機層21上に形成される第2有機層22の凹部が形成されない、又は、形成されたとしてもその形状がなだらかになる。すると、中間層20を構成する第1有機層21及び第2有機層22内においてクラックの発生が抑制できる。また、第2有機層22の対向電極14側の表面に凹部の形状がなだらかになるため、対向電極14の一部が第2有機層内へ食い込むことを抑えることができる。よって、対向電極14と画素電極16との間で、電流のショートが生じることを抑えられる。よって、ノイズの少ない固体撮像素子を得ることができる。
【0059】
上述の例の固体撮像素子では、第1有機層21を電子ブロッキング層としている。そして、画素電極16上に、電子ブロッキング層を構成するための有機材料を蒸着して第1有機層21を形成し、この第1有機層21をアニールした後で、光電変換層である第2有機層22を形成する。こうすれば、クラックの発生を抑えた電子ブロッキング層を形成することができ、より確実に暗電流を抑制することが可能になる。仮に、第1有機層21及び第2有機層22を順次に積層させた後でアニールを行っても、第1有機層21の凹部の形状をなだらかにすることができないため、第2有機層22の表面に凹部の形状が反映され、更に第2有機層22上に形成する対向電極14が第2有機層22の凹部に食い込む現象が生じ、固体撮像素子のノイズを確実に低減させることができない。
換言すると、前述と同様に対向電極に対しても傾斜角度θ3を定義すると、θ3とθ1の関係もθ2とθ1の関係に等しいことが最も好ましい。対向電極の食い込み現象は対向電極がスパッタ成膜された場合に顕著に観察され本発明の効果が大きい。
【0060】
次に、光電変換素子の製造方法の他の態様を説明する。説明のために図3を参照する。この態様では、絶縁層12上に画素電極16をパターン形成した後、画素電極16上に第1有機層21を蒸着する際に、基板11を加熱する。このとき、基板11を加熱することで、第1有機層21が蒸着される画素電極16及びその段差16Gの絶縁層12の表面12Aの温度を150度から第1有機層21のガラス転移温度までの範囲とする。このように、第1有機層21を構成するための有機材料が蒸着される処理と同時に、基板11を加熱する処理を行い、第1有機層21のアニールを行う。こうすることで、第1有機層21を蒸着する工程と、第1有機層21をアニールする工程を、1つの工程で行うことができ、光電変換素子の製造にかかる時間を短縮することが可能である。この場合も前述と同様に第1有機層は電荷ブロッキング層(図3の例では電子ブロッキング層)であることが最も好ましい。
【0061】
次に、画素電極の間の段差と、第1有機層の凹部の好ましい形状について説明する。
【0062】
図4は、光電変換素子において画素電極の間の段差と第1有機層の凹部の形状を示す模式的な断面図である。
【0063】
図4において、線F0は、基板11の表面11Aに対して平行な面を仮想的に示している。画素電極16の間の段差16Gの任意の点における接触平面と基板11の表面11Aとがなす傾斜角度をθ1とし、第1有機層21の凹部21Gの任意の点における接触平面と基板11の表面とがなす傾斜角度をθ2とする。接触平面及び傾斜角度の定義は上述したものと同じである。
【0064】
次に、傾斜角度θ2に対する白傷画素数の割合を測定した。
【0065】
本測定において、白傷画素数の割合とは、撮像素子で画像表示した際の、全画素部の数に対する白傷が発生した画素部の数の割合である。測定に用いる撮像素子は、図1及び図2に示す光電変換素子と同じ構成のものを備えている。このため、以下の説明においては、図1及び図2に示した光電変換素子の構成を適宜参照する。
【0066】
また、光電変換素子の製造工程は、以下の説明で特に説明しない限りにおいて、上述した図3で述べた手順と同じ手順に基づいて行う。すなわち、光電変換素子の製造手順としては、基板11上に形成された絶縁層12に、複数の画素電極16をパターン形成し、その後、複数の画素電極16及び画素電極16間の段差16Gを覆うように、第1有機層21を構成する有機材料を蒸着した。蒸着した第1有機層21を加熱によりアニールした後、画素電極16間の段差16の形状、及び、第1有機層21の凹部21Gの形状を測定した。そして、第1有機層21上に、第2有機層22及び、対向電極14やその他の部材を全て同じ条件で作成し、撮像素子を得た。得られた撮像素子を用いて白傷画素数の測定を行った。
【0067】
画素電極16は、基板11上に、画素サイズ3μm、画素間ギャップ0.3μm、厚み30nmとなるように形成される。画素電極16の材料としては、TiNを用いた。画素電極16の間の段差16Gにはオーバーエッチングが10nmの深さで形成される。よって、段差16Gの深さD1は、30nmである。また、傾斜角度θ1は90°である。
【0068】
なお、画素電極16の段差16Gの深さD1、及び、段差16Gの傾斜角度θ1は、画素電極16を形成する際に、次に一例を示す手段により、適宜設定することができる。画素電極16の段差16Gの深さD1は電極成膜時の膜厚により調整することができる。段差16Gの傾斜角度θ1はエッチング時のバイアス強度により調整することができる。
【0069】
第1有機層21を形成する際には、基板11上に、真空蒸着法によって蒸着した。
【0070】
第1有機層21は、下記式(1)の化合物を厚さ100nmで蒸着して形成した。下記式(1)の化合物のガラス転移温度は、上述のようにAnasys Instruments社製局所加熱システムnano−TA2を用いて測定した結果、161℃であった。第1有機層21を形成後、イナート雰囲気下で、温度90℃〜135℃、時間3min〜2hの範囲でアニールすることで、所定の傾斜角度(θ2)、になるように調整した。又、下記式(2)の化合物とフラーレンC60を、該C60組成が80%になるように共蒸着することで、第2有機層22(光電変換層)を厚さ400nmで形成した。
【0071】
【化2】
【0072】
【化3】
【0073】
また、第2有機層22上に、対向電極14を厚み10nmで形成した。
【0074】
本測定の結果を下記表にまとめる。
【0075】
【表1】
【0076】
測定結果の判定としては、白傷画素数の割合が0.01%以下のものを良好であるとして「○」とし、白傷画素数の割合が0.01%より大きいものを良好ではないとして「×」とした。傾斜角度は、断面TEM像より評価した。
【0077】
図5は、傾斜角度θ2と白傷画、素数の割合の関係を示すグラフである。光電変換素子の傾斜角度θ2が50度以下であれば白傷画素数を低減することができ、ノイズが抑制できることがわかった。
【0078】
次に、本発明の光電変換素子において、有機層の好ましい分子量の範囲を確かめるため、次の測定を行った。本測定では、第1有機層21として、式(1)に加え下記式(3)〜(14)の化合物を用いて上述と同様に撮像素子を作製し、傾斜角度θ2がほぼ0度になるようにアニール温度を調整して、その時の傾斜角度と白傷画素数の割合を測定した。
【0079】
【化4】
【0080】
【化5】
【0081】
【化6】
【0082】
【化7】
【0083】
【化8】
【0084】
【化9】
【0085】
【化10】
【0086】
【化11】
【0087】
【化12】
【0088】
【化13】
【0089】
【化14】
【0090】
【化15】
【0091】
本測定の結果を下記表に示す。
【0092】
【表2】
【0093】
図6は第1有機層21の材料の分子量と傾斜角度(θ2)の関係を示すグラフである。図7は第1有機層21の材料の分子量と白傷画素数の割合の関係を示すグラフである。図8は第1有機層21の材料の分子量と白傷画素数の割合の関係を示すグラフで、分子量が500から1300の場合の白傷画素数の割合の変化を詳細に示したグラフである。
【0094】
下記表に結果をまとめる。
【0095】
【表3】
【0096】
測定結果の判定としては、白傷画素数の割合が0.01%以下のものを良好であるとして「○」とし、白傷画素数の割合が0.01%より大きいものを良好ではないとして「×」とした。
【0097】
(実施例1)
分子量が550以上630未満では、傾斜角度を50度以下にすることができ、白傷画素数を0.01未満にすることができた。しかしながら、傾斜角度をほぼ0度にすることはできなかった。これは、傾斜角度が50度から0度になる途中で結晶化してしまったためと考えられる。
【0098】
(実施例2)
分子量が630以上1150未満では、傾斜角度をほぼ0度にすることができ、白傷画素数を0.01未満にすることができた。
【0099】
(実施例3)
分子量が1100以上1250未満では、傾斜角度を50度以下にすることができ、白傷画素数を0.01未満にすることができた。しかしながら、傾斜角度をほぼ0度にすることはできなかった。これは分子量が大きいことで、動きにくくなったためと考えられる。
【0100】
(比較例1)
分子量が550未満では、傾斜角度を50度以下にすることができず、白傷画素数を0.01%未満にすることができなかった。これは、傾斜角度が50度以下になる前に、結晶化してしまったためと考えられる。
【0101】
(比較例2)
分子量が1250以上では、傾斜角度を50度以下にすることができず、白傷画素数を0.01%未満にすることができなかった。これは分子量が大きいことで、動きにくくなったためと考えられる
【0102】
以上より、第1有機層21の材料の分子量は550以上1250未満とするのが好ましいことがわかった。より好ましくは630以上1150未満である。
【0103】
次に、本発明の光電変換素子において、好ましいアニール温度の範囲を確かめるため、次の測定を行った。本測定では、第1有機層21の材料の分子量は化合物(1)及び化合物(3)〜(14)のうち、630以上1150未満のものを選択して撮像素子を作製し、アニール温度を変化させた時の傾斜角度と白傷画素数の割合を測定した。アニール時間は30分とした。
【0104】
本測定の結果を下記表に示す。
【0105】
【表4】
【0106】
測定結果の判定としては、白傷画素数の割合が0.01%以下のものを良好であるとして「○」とし、白傷画素数の割合が0.01%より大きいものを良好ではないとして「×」とした。
【0107】
図9はアニール温度/Tgと傾斜角度(θ2)の関係を示すグラフである。図10はアニール温度/Tgと白傷画素数の割合の関係を示すグラフである。アニール温度がTg×0.72以上であれば、光電変換素子の傾斜角度を50度以下にでき、白傷画素数を低減することができ、ノイズが抑制できることがわかった。
【0108】
次に、本発明の光電変換素子において、第1有機層21を基板加熱蒸着で作製した際の好ましい基板温度の範囲を確かめるため、次の測定を行った。本測定では、第1有機層21の材料の分子量は630以上1150未満として撮像素子を作製し、基板温度を変化させた時の傾斜角度と白傷画素数の割合を測定した。
【0109】
本測定の結果を下記表に示す。
【0110】
【表5】
【0111】
測定結果の判定としては、白傷画素数の割合が0.01%以下のものを良好であるとして「○」とし、白傷画素数の割合が0.01%より大きいものを良好ではないとして「×」とした。
【0112】
図11は基板温度/Tgと傾斜角度(θ2)の関係を示すグラフである。図12は基板温度/Tgと白傷画素数の割合の関係を示すグラフである。基板温度がTg×0.72以上であれば、光電変換素子の傾斜角度を50度以下にでき、白傷画素数を低減することができ、ノイズが抑制できることがわかった。
【0113】
次に、撮像素子の構成の一例を説明する。図13は、撮像素子の構成の一例を示す模式的な断面図である。図13の撮像素子は、基板11,信号読み出し部17,絶縁層12,接続部18,画素電極16,第1有機層21及び第2有機層22を備える中間層20,対向電極14を備え、これらは上述したものと同じである。
【0114】
また、撮像素子は、対向電極14上に、緩衝層109,封止層110,封止補助層110aがこの順に積層されている。また、封止補助層110a上には各画素部の上方に配置されたカラーフィルタCFと、隣り合うカラーフィルタCF同士を隔離する隔壁112と、画素部が形成されていない領域の上方を覆うように形成された周辺遮光層113とが形成されている。カラーフィルタCF、隔壁112、周辺遮光層113はそれぞれ、基板11の上方において同じ層を構成するものとして形成されている。更に、カラーフィルタCF、隔壁112、周辺遮光層113を覆うようにオーバーコート層114が形成される。オーバーコート層114上に、更にマイクロレンズが形成されていてもよい。
【0115】
緩衝層109は、製造工程中に水分子等の因子が光電変換層に侵入して光電変換層に含まれる光電変換材料を劣化させることを防止するため、因子を吸着又は反応することで、光電変換材料の劣化を防止する機能を有する。
【0116】
封止層110は、水分子等の光電変換材料を劣化させる因子が侵入することを防止する。封止補助層110aは封止層110で防止することができない因子が光電変換材料に侵入することを防止する。
【0117】
オーバーコート層114は、カラーフィルタCFを、後工程から保護するものである。オーバーコート層114は保護層ともいう。
【0118】
本明細書は次の事項を開示するものである。
(1)基板の上方に設けられた一対の電極と、
前記一対の電極間に配された複数の有機層と、を備え、
前記複数の有機層が光電変換層を含み、
前記一対の電極のうち一方の電極の上に有機層が形成され、
前記一方の電極が、2次元に複数配列された画素電極の一つである光電変換素子であって、
前記有機層が、並び合う前記画素電極間の段差の上方に対応する位置に形成された凹部を有し、前記凹部は、その表面の任意の点における接触平面と前記基板の表面とがなす傾斜角度をθとしたとき、角度θが50度以下である光電変換素子。
(2)(1)に記載の光電変換素子であって、
前記有機層は、物理的気相成膜法で成膜され、成膜された後、アニールされたものである光電変換素子。
(3)(1)又は(2)に記載の光電変換素子であって、
前記有機層は、真空加熱蒸着法で成膜され、成膜された後、アニールされたものである光電変換素子。
(4)(1)から(3)のいずれか1つに記載の光電変換素子であって、
前記有機層の分子量が550以上1250未満である光電変換素子。
(5)基板の上方に設けられた一対の電極と、
前記一対の電極間に配された複数の有機層と、を備え、
前記複数の有機層が光電変換層を含み、
前記一対の電極のうち一方の電極の上に有機層が形成され、
前記一方の電極が、2次元に複数配列された画素電極の一つである光電変換素子の製造方法であって、
前記基板の上に絶縁層を形成し、
前記絶縁層上に前記複数の画素電極をパターン形成し、
前記複数の画素電極を覆うように前記有機層を成膜し、
前記有機層上に他の層を形成する前に、加熱することによって該有機層における前記画素電極間の段差の上方に対応する位置に形成された凹部の形状がなだらかになるようにアニールする光電変換素子の製造方法。
(6)(5)に記載の光電変換素子の製造方法であって、
前記有機層を物理的気相成膜法で成膜し、成膜後、アニールする光電変換素子の製造方法。
(7)(5)又は(6)に記載の光電変換素子の製造方法であって、
前記有機層を真空加熱蒸着法で成膜し、成膜後、アニールする光電変換素子の製造方法。
(8)(5)から(7)のいずれか1つに記載の光電変換素子の製造方法であって、
前記有機層を形成するときに、前記基板を加熱する光電変換素子の製造方法。
(9)(5)から(8)のいずれか1つに記載の光電変換素子の製造方法であって、前記有機層をアニールする温度が、前記有機層のガラス転移温度×0.72以上であって、かつ、前記有機層のガラス転移温度以下である光電変換素子の製造方法。
(10)アレイ状に配列された複数の画素部を有する撮像素子であって、
各画素部が(1)から(4)のいずれか1つに記載の光電変換素子を含み、
前記光電変換素子で発生した電荷に応じた信号を読み出す信号読出し部を備える撮像素子。
【符号の説明】
【0119】
1 撮像素子
11 基板
12 絶縁層
14 対向電極
16 画素電極
20 中間層
21 第1有機層
22 第2有機層
【技術分野】
【0001】
本発明は、光電変換素子、光電変換素子の製造方法、及び撮像素子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、基板上に、一対の電極と、この一対の電極の間に配された光電変換層とを備える積層型の光電変換素子が知られている。また、この光電変換素子を備えた撮像素子が知られている。積層型の光電変換素子としては、特許文献1に示すものがある。
【0003】
特許文献1には、基板上方に複数の画素電極と、光電変換層と、対向電極とがこの順に形成された光電変換素子が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−273555号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、積層型の光電変換素子においては、光電変換層にクラックが生じてしまう場合がある。すると、光電変換素子を備える撮像素子においては、暗時出力画像を表示させた際に白傷等のノイズが増加してしまう。
【0006】
クラックの発生の要因としては、画素電極の端部の段差が影響していると考えられる。
【0007】
積層型の光電変換素子を作製する場合、複数の画素電極が基板上方に形成される。このとき、各画素電極は、端部に切り立った段差が形成される。続いて、複数の画素電極上に、光電変換層を含む複数の有機層を順次に蒸着し、更に、複数の有機層の上方にITO等からなる対向電極を形成する。こうして作製された光電変換素子には、画素電極の上方に蒸着した各有機層において、段差の形状に反映されて窪んでなる凹部が形成される。そして、このような光電変換素子においては、複数の有機層全体にわたってクラックが発生してしまう場合がある。発生するクラックは、画素電極の段差の上方に集中している。このため、有機層のクラックが生じた部分において、漏れ電流が生じることによってノイズが発生すると考えられる。
【0008】
また、対向電極は、直下の有機層の凹部に反映された形状となり、その形状は下方の有機層に一部が食い込んだものとなる。すると、対向電極が有機層に食い込んだ部位と画素電極との間で、電流のショートが生じやすくなるため、暗時出力画像のノイズが増加すると考えられる。
【0009】
特許文献1の光電変換素子は、上部電極と下部電極からなる一対の電極のうち一方の電極と光電変換層との間に、電極表面の凹凸を緩和するための凹凸緩和層を備えている。この光電変換素子によれば、凹凸緩和層によって、電極表面の微細な凹凸が光電変換層に与える影響を小さくすることでクラックの発生を抑えられる。しかし、画素電極の段差に起因するクラックの発生を抑える対策については記載されていない。
【0010】
本発明は、画素電極の段差に起因するクラックが抑えられ、ノイズが少ない光電変換素子、光電変換素子の製造方法、及び撮像素子を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
基板の上方に設けられた一対の電極と、
前記一対の電極間に配された複数の有機層と、を備え、
前記複数の有機層が光電変換層を含み、
前記一対の電極のうち一方の電極の上に有機層が形成され、
前記一方の電極が、2次元に複数配列された画素電極の一つである光電変換素子であって、
前記有機層が、並び合う前記画素電極間の段差の上方に対応する位置に形成された凹部を有し、前記凹部は、その表面の任意の点における接触平面と前記基板の表面とがなす傾斜角度をθとしたとき、傾斜角度θが50度以下である光電変換素子。
【0012】
基板の上方に設けられた一対の電極と、
前記一対の電極間に配された複数の有機層と、を備え、
前記複数の有機層が光電変換層を含み、
前記一対の電極のうち一方の電極の上に有機層が形成され、
前記一方の電極が、2次元に複数配列された画素電極の一つである光電変換素子の製造方法であって、
前記基板の上に絶縁層を形成し、
前記絶縁層上に前記複数の画素電極をパターン形成し、
前記複数の画素電極を覆うように前記有機層を蒸着し、
前記有機層上に他の層を形成する前に、加熱することによって該有機層における前記画素電極間の段差の上方に対応する位置に形成された凹部の形状がなだらかになるようにアニールする光電変換素子の製造方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、クラックの発生を抑え、画像表示の際にノイズを低減することができる光電変換素子、及び、光電変換素子の製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】撮像素子の断面を模式的に示した図である。
【図2】図1の画素電極同士の隙間の段差と第1有機層の構成を説明する図である。
【図3】光電変換素子の製造方法の手順を説明する図である。
【図4】光電変換素子において画素電極の間の段差と第1有機層の凹部の形状を示す模式的な断面図である。
【図5】傾斜角度θ2と白傷画素数の割合の関係を示すグラフである。
【図6】分子量と傾斜角度θ2の関係を示すグラフである。
【図7】分子量と白傷画素数の割合の関係を示すグラフである。
【図8】分子量500以上1300以下の範囲で白傷画素数の割合の詳細な変化を示すグラフである。
【図9】アニール温度と傾斜角度θ2の関係を示すグラフである。
【図10】アニール温度と白傷画素数の割合の関係を示すグラフである。
【図11】基板温度と傾斜角度θ2の関係を示すグラフである。
【図12】基板温度と白傷画素数の割合の関係を示すグラフである。
【図13】撮像素子の構成の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は、本発明の一実施形態を説明するための撮像素子の断面を模式的に示した図である。撮像素子1は、基板11と、絶縁層12と、中間層20と、対向電極14と、複数の画素電極16と、接続部18と、信号読出し部17と、を備える。
【0016】
基板11は、ガラス基板、又は、シリコン等の半導体基板である。基板11上には絶縁層12が形成されている。絶縁層12の上には複数の画素電極16が形成されている。
【0017】
複数の画素電極16は、絶縁層12表面の水平方向とこれに直交する垂直方向に二次元状に、一定の間隔をあけて配列されている。
【0018】
中間層20は、第1有機層21と第2有機層22とをこの順に積層させてなる。第1有機層21は、電子ブロッキング層であり、画素電極16を覆うように設けられている。第2有機層22は、受光した光に応じて電荷を発生する有機の光電変換材料からなる光電変換層である。なお、中間層20は、2つの有機層21,22とからなる構成に限定されず、少なくとも光電変換層を含む複数の有機層で構成されていればよい。
【0019】
対向電極14は、各画素電極16と対向する電極であり、中間層20上に設けられている。対向電極14は、中間層20に光を入射させるため、入射光に対して透明な導電性材料で構成されている。対向電極14には、図示しない配線を介して所定の電圧を印加することができるようになっている。これにより、対向電極14と、複数の画素電極16との間に電界を加えることが可能となっている。なお、所定の電圧としては、−30V〜30Vの範囲とすることが本発明の効果が顕著で好ましい。
【0020】
各画素電極16とその上方の対向電極14とでなる一対の電極と、これら電極と間に配された第1有機層21及び第2有機層22が光電変換素子として機能する。
【0021】
撮像素子1は、アレイ状に配列された画素部10を有する。画素部10は、図1に示される破線で区画されたブロックの1つとして定義される。画素部10は、光電変換素子を含む。
【0022】
画素電極16は、画素部10に含まれる中間層20内の光電変換層で発生した電荷を捕集するための電荷捕集用の電極である。信号読出し部17は、複数の画素電極16の各々に対応して設けられており、対応する画素電極16で捕集された電荷に応じた信号を出力するものである。信号読出し部17は、例えばCCD、MOSトランジスタ回路(MOS回路)、又はTFT回路等で構成されている。接続部18は、画素電極16とそれに対応する信号読出し部17とを電気的に接続するものであり、絶縁層12に埋設されている。接続部18は、タングステン(W)等の導電性材料で構成されている。
【0023】
例えば、信号読出し部17は、MOS回路である場合には、図示しない、フローティングディフュージョン、リセットトランジスタ、出力トランジス、選択トランジスタを備える。リセットトランジスタ、出力トランジスタ、及び選択トランジスタは、それぞれnチャネルMOSトランジスタ(以下、nMOSトランジスタ)で構成される。
【0024】
信号読出し部17は、このような回路構成により、画素電極16で捕集された電荷に応じた信号を読み出す。
【0025】
図2は、図1の画素電極同士の隙間の段差と第1有機層の構成を説明する図である。
複数の画素電極16は、絶縁層12の上に真空蒸着法(例えばスパッタリング)によって成膜された後、マスクを介してエッチングされ、所定のパターンで形成されたものである。このとき、エッチングによって画素電極16を除去した際に、画素電極16の間に下層である絶縁層12の表面12Aが表れる。また、複数の画素電極16の断面視における両端部には、画素電極16の表面16Aと、画素電極16の間の絶縁層12の表面12Aとの段差16Gが形成される。以下、この段差16Gを、画素電極間の段差16Gともいう。ここで、画素電極間の段差16Gに囲まれた凹部の底面12Aが絶縁層12の面に相当する。画素電極16の凹部の底面に接する絶縁層12の部位の面より該絶縁層12内に入り込んでいる。これは、画素電極16をパターニングする際にオーバーエッチングしたためである。
【0026】
なお、画素電極16のサイズは3μm以下が本発明の効果が顕著で好ましい。より好ましくは2μm以下である。更に好ましくは1.5μm以下である。画素電極16間ギャップは0.3μm以下が本発明の効果が顕著で好ましく、より好ましくは0.25μm以下であり、更に好ましくは0.2μm以下である。
画素サイズが小さい方が画素電極16の凹部に対応する面積が相対的に大きくなり、本発明の効果が顕著になる。また画素電極16間のギャップが小さいほど後述する第1有機層21の成膜が不均一となるために本発明の効果が顕著になる。
【0027】
第1有機層21は、複数の画素電極16、及び、画素電極間の段差16Gを覆うように形成されている。第1有機層21は、蒸着によって形成されたものである。第1有機層21は、複数の画素電極16及び画素電極16の間の段差16Gの表面の形状が反映され、段差16Gの上方に対応する位置に凹部21Gが形成される。第1有機層21の凹部21Gは、第1有機層の表面21Bから画素電極16の間の段差16G側へ窪んでいる。凹部21Gのその底部21Aと他の第1有機層21の部位の表面21Bとが傾斜した面によって連なっている。
【0028】
一般的に、パターン形成(パターニング)された複数の画素電極16上に第1有機層21を形成すると、画素電極16間の段差16Gの影響によって、第1有機層21の凹部21Gは、その形状が底部21Aから表面21Bの傾斜が大きくなる傾向がある。この撮像素子においては、第1有機層21は、蒸着によって形成された後で、なだらかな形状の凹部21Gを形成するための後処理が行われている。後処理については後述する。
【0029】
ここで、第1有機層21の凹部21Gのなだらかさを、凹部21Gの表面の任意の点における接触平面と基板11の表面とのなす傾斜角度によって表すことができる。図2において、第1有機層21の凹部21Gの任意の点をP1,P2,P3で示している。また、任意の点P1における接触平面をF1で示し、任意の点P2における接触平面をF2で示し、任意の点P3における接触平面をF3で示している。更に、接触平面の傾斜角度を示すための基準となる面は、撮像素子1の基板11の表面11Aとする。図2の線F0は、傾斜角度を説明するために描画したものであり、基板11の表面11Aに対して平行な面を仮想的に示している。
【0030】
図2では、第1有機層21の凹部21Gにおける点P1の接触平面F1の線F0に対する傾斜角度をθとする。また、この点P1における接触平面が、他の点P2,P3における接触平面に比べ、線F0に対する傾斜角度が最も大きい。このとき、傾斜角度θが小さいほど、第1有機層21の凹部21Gの形状がなだらかであり、第1有機層21が平坦面に近いことを意味する。そして、固体撮像素子1は、この傾斜角度θが50度以下であれば、暗時出力時のノイズを低減することができる。理由は次のとおりである。すなわち、作成された固体撮像素子において、第1有機層21の凹部21Gの形状をなだらかにすることによって、第1有機層21上の第2有機層22に凹部が形成されない、又は、形成されたとしてもその形状がなだらかになる。すると、中間層20を構成する第1有機層21及び第2有機層22内においてクラックの発生が抑制される。よって、固体撮像素子1で暗時出力画像を表示したときに白傷等のノイズを低減されることになる。
【0031】
また、第2有機層22の対向電極14側の表面に形成される凹部の形状もなだらかになるため、対向電極14の一部が第2有機層内へ食い込むことを抑えることができる。よって、対向電極14と画素電極16との間で、電流のショートが生じることを抑えられ、固体撮像素子1で画像表示を行った際のノイズを低減することができる。
【0032】
次に、中間層20、画素電極16、対向電極14について説明する。
【0033】
中間層20のうち第1有機層21は、電子ブロッキング層である。電子ブロッキング層は、画素電極16と対向電極14との間に電圧を印加したとき、正孔捕集電極である画素電極16に電子が輸送されることを抑えることによって、暗電流を抑制する機能を有する。
【0034】
中間層20のうち第2有機層22は、光電変換層である。光電変換層は、p型有機半導体とn型有機半導体とを含む。p型有機半導体とn型有機半導体を接合させてドナ‐アクセプタ界面を形成することにより励起子解離効率を増加させることができる。このために、p型有機半導体とn型有機半導体を接合させた構成の光電変換層は高い光電変換効率を発現する。特に、p型有機半導体とn型有機半導体を混合した光電変換層は、接合界面が増大して光電変換効率が向上するので好ましい。
【0035】
p型有機半導体(化合物)は、ドナ性有機半導体であり、主に正孔輸送性有機化合物に代表され、電子を供与しやすい性質がある有機化合物をいう。更に詳しくは2つの有機材料を接触させて用いたときにイオン化ポテンシャルの小さい方の有機化合物をいう。したがって、ドナ性有機化合物は、電子供与性のある有機化合物であればいずれの有機化合物も使用可能である。例えば、トリアリールアミン化合物、ベンジジン化合物、ピラゾリン化合物、スチリルアミン化合物、ヒドラゾン化合物、トリフェニルメタン化合物、カルバゾール化合物、ポリシラン化合物、チオフェン化合物、フタロシアニン化合物、シアニン化合物、メロシアニン化合物、オキソノール化合物、ポリアミン化合物、インドール化合物、ピロール化合物、ピラゾール化合物、ポリアリーレン化合物、縮合芳香族炭素環化合物(ナフタレン誘導体、アントラセン誘導体、フェナントレン誘導体、テトラセン誘導体、ピレン誘導体、ペリレン誘導体、フルオランテン誘導体)、含窒素ヘテロ環化合物を配位子として有する金属錯体等を用いることができる。なお、これに限らず、上記したように、n型(アクセプタ性)化合物として用いた有機化合物よりもイオン化ポテンシャルの小さい有機化合物であればドナ性有機半導体として用いてよい。
【0036】
n型有機半導体(化合物)は、アクセプタ性有機半導体であり、主に電子輸送性有機化合物に代表され、電子を受容しやすい性質がある有機化合物をいう。更に詳しくは、n型有機半導体とは、2つの有機化合物を接触させて用いたときに電子親和力の大きい方の有機化合物をいう。したがって、アクセプタ性有機化合物は、電子受容性のある有機化合物であればいずれの有機化合物も使用可能である。例えば、縮合芳香族炭素環化合物(ナフタレン誘導体、アントラセン誘導体、フェナントレン誘導体、テトラセン誘導体、ピレン誘導体、ペリレン誘導体、フルオランテン誘導体)、窒素原子、酸素原子、硫黄原子を含有する5〜7員のヘテロ環化合物(例えばピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、トリアジン、キノリン、キノキサリン、キナゾリン、フタラジン、シンノリン、イソキノリン、プテリジン、アクリジン、フェナジン、フェナントロリン、テトラゾール、ピラゾール、イミダゾール、チアゾール、オキサゾール、インダゾール、ベンズイミダゾール、ベンゾトリアゾール、ベンゾオキサゾール、ベンゾチアゾール、カルバゾール、プリン、トリアゾロピリダジン、トリアゾロピリミジン、テトラザインデン、オキサジアゾール、イミダゾピリジン、ピラリジン、ピロロピリジン、チアジアゾロピリジン、ジベンズアゼピン、トリベンズアゼピン等)、ポリアリーレン化合物、フルオレン化合物、シクロペンタジエン化合物、シリル化合物、含窒素ヘテロ環化合物を配位子として有する金属錯体などが挙げられる。なお、これに限らず、上記したように、p型(ドナ性)化合物として用いた有機化合物よりも電子親和力の大きな有機化合物であればアクセプタ性有機半導体として用いてよい。
【0037】
p型有機半導体、又はn型有機半導体としては、いかなる有機色素を用いても良いが、好ましくは、シアニン色素、スチリル色素、ヘミシアニン色素、メロシアニン色素(ゼロメチンメロシアニン(シンプルメロシアニン)を含む)、3核メロシアニン色素、4核メロシアニン色素、ロダシアニン色素、コンプレックスシアニン色素、コンプレックスメロシアニン色素、アロポーラー色素、オキソノール色素、ヘミオキソノール色素、スクアリウム色素、クロコニウム色素、アザメチン色素、クマリン色素、アリーリデン色素、アントラキノン色素、トリフェニルメタン色素、アゾ色素、アゾメチン色素、スピロ化合物、メタロセン色素、フルオレノン色素、フルギド色素、ペリレン色素、ペリノン色素、フェナジン色素、フェノチアジン色素、キノン色素、ジフェニルメタン色素、ポリエン色素、アクリジン色素、アクリジノン色素、ジフェニルアミン色素、キナクリドン色素、キノフタロン色素、フェノキサジン色素、フタロペリレン色素、ジケトピロロピロール色素、ジオキサン色素、ポルフィリン色素、クロロフィル色素、フタロシアニン色素、金属錯体色素、縮合芳香族炭素環系色素(ナフタレン誘導体、アントラセン誘導体、フェナントレン誘導体、テトラセン誘導体、ピレン誘導体、ペリレン誘導体、フルオランテン誘導体)が挙げられる。
【0038】
n型有機半導体として、電子輸送性に優れた、フラーレン又はフラーレン誘導体を用いることが特に好ましい。フラーレンとは、フラーレンC60、フラーレンC70、フラーレンC76、フラーレンC78、フラーレンC80、フラーレンC82、フラーレンC84、フラーレンC90、フラーレンC96、フラーレンC240、フラーレンC540、ミックスドフラーレン、フラーレンナノチューブを表し、フラーレン誘導体とはこれらに置換基が付加された化合物のことを表す。
【0039】
フラーレン誘導体の置換基として好ましくは、アルキル基、アリール基、又は複素環基である。アルキル基として更に好ましくは、炭素数1〜12までのアルキル基であり、アリール基、及び複素環基として好ましくは、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、フルオレン環、トリフェニレン環、ナフタセン環、ビフェニル環、ピロール環、フラン環、チオフェン環、イミダゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、インドリジン環、インドール環、ベンゾフラン環、ベンゾチオフェン環、イソベンゾフラン環、ベンズイミダゾール環、イミダゾピリジン環、キノリジン環、キノリン環、フタラジン環、ナフチリジン環、キノキサリン環、キノキサゾリン環、イソキノリン環、カルバゾール環、フェナントリジン環、アクリジン環、フェナントロリン環、チアントレン環、クロメン環、キサンテン環、フェノキサチイン環、フェノチアジン環、又はフェナジン環であり、更に好ましくは、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ピリジン環、イミダゾール環、オキサゾール環、又はチアゾール環であり、特に好ましくはベンゼン環、ナフタレン環、又はピリジン環である。これらは更に置換基を有していてもよく、その置換基は可能な限り結合して環を形成してもよい。なお、複数の置換基を有しても良く、それらは同一であっても異なっていても良い。また、複数の置換基は可能な限り結合して環を形成してもよい。
【0040】
光電変換層がフラーレン又はフラーレン誘導体を含むことで、フラーレン分子又はフラーレン誘導体分子を経由して、光電変換により発生した電子を画素電極16又は対向電極14まで早く輸送できる。フラーレン分子又はフラーレン誘導体分子が連なった状態になって電子の経路が形成されていると、電子輸送性が向上して光電変換素子の高速応答性が実現可能となる。このためにはフラーレン又はフラーレン誘導体が光電変換層に40%以上含まれていることが好ましい。もっとも、フラーレン又はフラーレン誘導体が多すぎるとp型有機半導体が少なくなって接合界面が小さくなり励起子解離効率が低下してしまう。
【0041】
光電変換層において、フラーレン又はフラーレン誘導体と共に混合されるp型有機半導体としては、特許第4213832号公報等に記載されたトリアリールアミン化合物を用いると光電変換素子の高SN比が発現可能になり、特に好ましい。光電変換層内のフラーレン又はフラーレン誘導体の比率が大きすぎると該トリアリールアミン化合物が少なくなって入射光の吸収量が低下する。これにより光電変換効率が減少するので、光電変換層に含まれるフラーレン又はフラーレン誘導体は85%以下の組成であることが好ましい。
【0042】
電子ブロッキング層には、電子供与性有機材料を用いることができる。また、該材料は物理的気相成膜法に適した低分子材料であることが好ましい。具体的には、低分子材料では、N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−(1,1’−ビフェニル)−4,4’−ジアミン(TPD)や4,4’−ビス[N−(ナフチル)−N−フェニル−アミノ]ビフェニル(α−NPD)等の芳香族ジアミン化合物、オキサゾール、オキサジアゾール、トリアゾール、イミダゾール、イミダゾロン、スチルベン誘導体、ピラゾリン誘導体、テトラヒドロイミダゾール、ポリアリールアルカン、ブタジエン、4,4’,4”−トリス(N−(3−メチルフェニル)N−フェニルアミノ)トリフェニルアミン(m−MTDATA)、ポルフィン、テトラフェニルポルフィン銅、フタロシアニン、銅フタロシアニン、チタニウムフタロシアニンオキサイド等のポリフィリン化合物、トリアゾール誘導体、オキサジザゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アニールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、オキサゾール誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、シラザン誘導体などを用いることができ、高分子材料では、フェニレンビニレン、フルオレン、カルバゾール、インドール、ピレン、ピロール、ピコリン、チオフェン、アセチレン、ジアセチレン等の重合体や、その誘導体を用いることができる。電子供与性化合物でなくとも、充分な正孔輸送性を有する化合物であれば用いることは可能である。特に電子供与性有機材料で下記構造が好ましい。なお、R1、R2、R3は任意の置換基、原子群、原子であり、互いに縮環していてもよい。
【0043】
【化1】
【0044】
複数の画素電極16はそれぞれ、各画素電極16上の光電変換層を含む中間層20で発生した正孔の電荷を捕集する。各画素電極16で捕集された電荷が、対応する各画素部10の信号読出し部17で信号となり、複数の画素部から取得した信号に基づいて画像が合成される。
【0045】
対向電極14は、光電変換層を含む中間層20を、画素電極16との間で挟込むことで中間層20に電界を印加し、光電変換層で発生した電荷のうち、電子を捕集する。対向電極14は、画素電極16が捕集する電荷に対して逆極性電荷を捕集すればよく、画素部10毎に分割する必要がないため、対向電極14は複数の画素で共通にすることができる。このため、対向電極14は共通電極(コモン電極)と呼ばれることもある。
【0046】
対向電極14は、光電変換層を含む中間層20に光を入射させるため、透明導電膜で構成されることが好ましく、例えば、金属、金属酸化物、金属窒化物、金属硼化物、有機導電性化合物、これらの混合物等が挙げられる。具体例としては、酸化錫、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化インジウム錫(ITO)、酸化インジウム亜鉛(IZO)、酸化インジウムタングステン(IWO)、酸化チタン等の導電性金属酸化物、TiN等の金属窒化物、金(Au)、白金(Pt)、銀(Ag)、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)、アルミニウム(Al)等の金属、更にこれらの金属と導電性金属酸化物との混合物又は積層物、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロール等の有機導電性化合物、これらとITOとの積層物、などが挙げられる。透明導電膜の材料として特に好ましいのは、ITO、IZO、酸化錫、アンチモンドープ酸化錫(ATO)、弗素ドープ酸化錫(FTO)、酸化亜鉛、アンチモンドープ酸化亜鉛(AZO)、ガリウムドープ酸化亜鉛(GZO)のいずれかの材料である。
【0047】
対向電極14の面抵抗は、信号読み出し部17がCMOS型の場合は10kΩ/□以下が好ましく、より好ましくは、1kΩ/□以下である。信号読み出し部17がCCD型の場合には1kΩ/□以下が好ましく、より好ましくは、0.1kΩ/□以下である。
【0048】
次に、光電変換素子の製造方法について説明する。図3は、光電変換素子の製造手順の一部を示す断面図である。光電変換素子の構成は、図1に示すものと同じである。以下、光電変換素子の構成の説明は、図1の参照番号を適宜参照することで説明を簡略化又は省略する。
【0049】
先ず、汎用的な半導体製造工程を用いて、シリコン等の基板11に信号読み出し部17を形成する。その後、基板11の光入射側の表面上に絶縁層12を成膜し、絶縁層12の表面をCMPなどで研磨し平坦化する。そして、絶縁層12には、接続部18を形成するための孔がフォトリソグラフィ工程及びドライエッチング工程で形成される。孔は、絶縁層12において画素電極16が形成される領域の下方に位置する部分に形成される。形成された孔に、導電性材料を用いて接続部18を形成する。
【0050】
画素電極16の材料を絶縁層12上に化学的気相成膜(CVD)法等で成膜し、一般的な多層配線技術で利用するフォトリソグラフィ工程とドライエッチング工程により一定の間隔で複数配列される配置となるようにパターニングすることで画素電極16が形成される。こうして、図3Aに示すように、絶縁層12上に複数の画素電極16が形成される。並び合う画素電極16の間には、段差16Gが形成される。このような製造方法の場合、段差16Gは急峻な角度をもつ段差となりやすい。このような状況下でも、本発明の製造方法により、ノイズの少ない光電変換素子及び撮像素子の作製が可能となる。
段差16Gの傾斜角度θ1が、50°<θ1≦90°の場合、本発明の効果が顕著である。θ1が50°より大きくなった場合、後述する第1有機層21及び第2有機層22内にクラックの発生、及び対向電極14の一部が第2有機層内へ食い込むことの発生が顕著となる。一方、θ1が90°を超える場合、画素電極端部の影となって蒸着されない部分が増加してしまい、この場合、段差16Gをなだらかにするのは困難となる。
【0051】
次いで、図3Bに示すように、複数の画素電極16、及び、それらの間の段差16Gを覆うように、第1有機層21を蒸着する。第1有機層21の蒸着には、物理的気相成膜(PVD)法が用いられ、例えば、真空加熱蒸着法等が用いられる。蒸着された第1有機層21は、画素電極16の間の段差16Gの上方に対応する位置に凹部21Gが形成される。このとき、第1有機層21の凹部21Gは、画素電極16の間の段差16Gの形状に反映された形状を有し、つまり、凹部21Gの深さは段差16Gの深さが大きいほど大きく、凹部21Gの幅(図3中左右方向の寸法)は段差16Gの幅が大きいほど大きくなる。
【0052】
第1有機層21を蒸着した後、アニール処理を行う。アニール処理は、第1有機層21を高温雰囲気に晒すことで加熱し、凹部21Gの形状をなだらかにするために行われる。そして、図3Cに示すように、アニール処理によって、第1有機層21の凹部21Gの形状がなだらかになる。
【0053】
アニール処理する第1有機層21の好ましい条件を説明する。
第1有機層21の材料は、物理的気相成膜に適した低分子材料で、かつ分子量が550〜1250となる材料が好ましい。更に好ましくは630〜1150である。分子量が550未満となると、結晶化が起こりやすく、凹部21Gの形状がなだらかになりにくい傾向がある。また分子量が1250以上になると、分子が動きにくくなり、その場合も凹部21Gの形状がなだらかになりにくくなる傾向がある。
【0054】
アニール処理する第1有機層は電荷ブロッキング層(図3の例では電子ブロッキング層)であることが好ましい。光電変換材料からなる有機層の場合にはアニールにより光電変換機能、特に光に対する応答速度が著しく劣化する等の性能変化が大きいために制御することが困難となる。好ましくは後に詳述する電子ブロッキング材料が本発明の効果が最も顕著で好ましい。
【0055】
第1有機層21の厚みは、段差16Gの深さD1以上とするのが好ましい。第1有機層21の厚みが深さD1未満の場合、凹部21Gの形状がなだらかになりにくい。第1有機層21の厚みは好ましくはD1×1.2以上、更に好ましくはD1×1.4以上である。
【0056】
アニール処理の好ましい条件を説明する。
第1有機層21をアニールする温度は、第1有機層21を構成する材料のガラス転移温度(Tg)以下であることが好ましい。Tg以上の温度でアニールすると第1有機層21が不均一膜となってしまうことにより、素子として本来の光電変換特性が得られない。
また、Tg以下であり、かつTgに近い温度でアニールすることで、凹部21Gの形状をなだらかにすることができる。
アニール温度はTg×0.72以上Tg以下が好ましい。更に好ましくはTg×0.75以上Tg以下である。
なお、Tgの測定にはAnasys Instruments社製局所加熱システムnano−TA2を用い、第1有機層21の材料のガラス板上蒸着膜(膜厚100nm)に対し、昇温速度は10℃/s、室温〜300℃まで探針を加熱し、軟化針入に伴う変曲点をガラス転移温度とした。
【0057】
第1有機層21のアニール処理後に、該第1有機層21上に第2有機層22を同様に蒸着で形成し、対向電極14を形成する。また、対向電極14上には、後述する緩衝層、封止層、封止補助層、カラーフィルタ、オーバーコート層が形成される。これらの部材及び層の形成方法や手順は特に制限されない。
【0058】
上述のような製造方法によれば、複数の画素電極16を覆うように第1有機層21を蒸着した後、第1有機層21を加熱することでアニールし、凹部21Gの形状をなだらかにする。こうすれば、作成された固体撮像素子において、第1有機層21の凹部21Gの形状がなだらかなため、第1有機層21上に形成される第2有機層22の凹部が形成されない、又は、形成されたとしてもその形状がなだらかになる。すると、中間層20を構成する第1有機層21及び第2有機層22内においてクラックの発生が抑制できる。また、第2有機層22の対向電極14側の表面に凹部の形状がなだらかになるため、対向電極14の一部が第2有機層内へ食い込むことを抑えることができる。よって、対向電極14と画素電極16との間で、電流のショートが生じることを抑えられる。よって、ノイズの少ない固体撮像素子を得ることができる。
【0059】
上述の例の固体撮像素子では、第1有機層21を電子ブロッキング層としている。そして、画素電極16上に、電子ブロッキング層を構成するための有機材料を蒸着して第1有機層21を形成し、この第1有機層21をアニールした後で、光電変換層である第2有機層22を形成する。こうすれば、クラックの発生を抑えた電子ブロッキング層を形成することができ、より確実に暗電流を抑制することが可能になる。仮に、第1有機層21及び第2有機層22を順次に積層させた後でアニールを行っても、第1有機層21の凹部の形状をなだらかにすることができないため、第2有機層22の表面に凹部の形状が反映され、更に第2有機層22上に形成する対向電極14が第2有機層22の凹部に食い込む現象が生じ、固体撮像素子のノイズを確実に低減させることができない。
換言すると、前述と同様に対向電極に対しても傾斜角度θ3を定義すると、θ3とθ1の関係もθ2とθ1の関係に等しいことが最も好ましい。対向電極の食い込み現象は対向電極がスパッタ成膜された場合に顕著に観察され本発明の効果が大きい。
【0060】
次に、光電変換素子の製造方法の他の態様を説明する。説明のために図3を参照する。この態様では、絶縁層12上に画素電極16をパターン形成した後、画素電極16上に第1有機層21を蒸着する際に、基板11を加熱する。このとき、基板11を加熱することで、第1有機層21が蒸着される画素電極16及びその段差16Gの絶縁層12の表面12Aの温度を150度から第1有機層21のガラス転移温度までの範囲とする。このように、第1有機層21を構成するための有機材料が蒸着される処理と同時に、基板11を加熱する処理を行い、第1有機層21のアニールを行う。こうすることで、第1有機層21を蒸着する工程と、第1有機層21をアニールする工程を、1つの工程で行うことができ、光電変換素子の製造にかかる時間を短縮することが可能である。この場合も前述と同様に第1有機層は電荷ブロッキング層(図3の例では電子ブロッキング層)であることが最も好ましい。
【0061】
次に、画素電極の間の段差と、第1有機層の凹部の好ましい形状について説明する。
【0062】
図4は、光電変換素子において画素電極の間の段差と第1有機層の凹部の形状を示す模式的な断面図である。
【0063】
図4において、線F0は、基板11の表面11Aに対して平行な面を仮想的に示している。画素電極16の間の段差16Gの任意の点における接触平面と基板11の表面11Aとがなす傾斜角度をθ1とし、第1有機層21の凹部21Gの任意の点における接触平面と基板11の表面とがなす傾斜角度をθ2とする。接触平面及び傾斜角度の定義は上述したものと同じである。
【0064】
次に、傾斜角度θ2に対する白傷画素数の割合を測定した。
【0065】
本測定において、白傷画素数の割合とは、撮像素子で画像表示した際の、全画素部の数に対する白傷が発生した画素部の数の割合である。測定に用いる撮像素子は、図1及び図2に示す光電変換素子と同じ構成のものを備えている。このため、以下の説明においては、図1及び図2に示した光電変換素子の構成を適宜参照する。
【0066】
また、光電変換素子の製造工程は、以下の説明で特に説明しない限りにおいて、上述した図3で述べた手順と同じ手順に基づいて行う。すなわち、光電変換素子の製造手順としては、基板11上に形成された絶縁層12に、複数の画素電極16をパターン形成し、その後、複数の画素電極16及び画素電極16間の段差16Gを覆うように、第1有機層21を構成する有機材料を蒸着した。蒸着した第1有機層21を加熱によりアニールした後、画素電極16間の段差16の形状、及び、第1有機層21の凹部21Gの形状を測定した。そして、第1有機層21上に、第2有機層22及び、対向電極14やその他の部材を全て同じ条件で作成し、撮像素子を得た。得られた撮像素子を用いて白傷画素数の測定を行った。
【0067】
画素電極16は、基板11上に、画素サイズ3μm、画素間ギャップ0.3μm、厚み30nmとなるように形成される。画素電極16の材料としては、TiNを用いた。画素電極16の間の段差16Gにはオーバーエッチングが10nmの深さで形成される。よって、段差16Gの深さD1は、30nmである。また、傾斜角度θ1は90°である。
【0068】
なお、画素電極16の段差16Gの深さD1、及び、段差16Gの傾斜角度θ1は、画素電極16を形成する際に、次に一例を示す手段により、適宜設定することができる。画素電極16の段差16Gの深さD1は電極成膜時の膜厚により調整することができる。段差16Gの傾斜角度θ1はエッチング時のバイアス強度により調整することができる。
【0069】
第1有機層21を形成する際には、基板11上に、真空蒸着法によって蒸着した。
【0070】
第1有機層21は、下記式(1)の化合物を厚さ100nmで蒸着して形成した。下記式(1)の化合物のガラス転移温度は、上述のようにAnasys Instruments社製局所加熱システムnano−TA2を用いて測定した結果、161℃であった。第1有機層21を形成後、イナート雰囲気下で、温度90℃〜135℃、時間3min〜2hの範囲でアニールすることで、所定の傾斜角度(θ2)、になるように調整した。又、下記式(2)の化合物とフラーレンC60を、該C60組成が80%になるように共蒸着することで、第2有機層22(光電変換層)を厚さ400nmで形成した。
【0071】
【化2】
【0072】
【化3】
【0073】
また、第2有機層22上に、対向電極14を厚み10nmで形成した。
【0074】
本測定の結果を下記表にまとめる。
【0075】
【表1】
【0076】
測定結果の判定としては、白傷画素数の割合が0.01%以下のものを良好であるとして「○」とし、白傷画素数の割合が0.01%より大きいものを良好ではないとして「×」とした。傾斜角度は、断面TEM像より評価した。
【0077】
図5は、傾斜角度θ2と白傷画、素数の割合の関係を示すグラフである。光電変換素子の傾斜角度θ2が50度以下であれば白傷画素数を低減することができ、ノイズが抑制できることがわかった。
【0078】
次に、本発明の光電変換素子において、有機層の好ましい分子量の範囲を確かめるため、次の測定を行った。本測定では、第1有機層21として、式(1)に加え下記式(3)〜(14)の化合物を用いて上述と同様に撮像素子を作製し、傾斜角度θ2がほぼ0度になるようにアニール温度を調整して、その時の傾斜角度と白傷画素数の割合を測定した。
【0079】
【化4】
【0080】
【化5】
【0081】
【化6】
【0082】
【化7】
【0083】
【化8】
【0084】
【化9】
【0085】
【化10】
【0086】
【化11】
【0087】
【化12】
【0088】
【化13】
【0089】
【化14】
【0090】
【化15】
【0091】
本測定の結果を下記表に示す。
【0092】
【表2】
【0093】
図6は第1有機層21の材料の分子量と傾斜角度(θ2)の関係を示すグラフである。図7は第1有機層21の材料の分子量と白傷画素数の割合の関係を示すグラフである。図8は第1有機層21の材料の分子量と白傷画素数の割合の関係を示すグラフで、分子量が500から1300の場合の白傷画素数の割合の変化を詳細に示したグラフである。
【0094】
下記表に結果をまとめる。
【0095】
【表3】
【0096】
測定結果の判定としては、白傷画素数の割合が0.01%以下のものを良好であるとして「○」とし、白傷画素数の割合が0.01%より大きいものを良好ではないとして「×」とした。
【0097】
(実施例1)
分子量が550以上630未満では、傾斜角度を50度以下にすることができ、白傷画素数を0.01未満にすることができた。しかしながら、傾斜角度をほぼ0度にすることはできなかった。これは、傾斜角度が50度から0度になる途中で結晶化してしまったためと考えられる。
【0098】
(実施例2)
分子量が630以上1150未満では、傾斜角度をほぼ0度にすることができ、白傷画素数を0.01未満にすることができた。
【0099】
(実施例3)
分子量が1100以上1250未満では、傾斜角度を50度以下にすることができ、白傷画素数を0.01未満にすることができた。しかしながら、傾斜角度をほぼ0度にすることはできなかった。これは分子量が大きいことで、動きにくくなったためと考えられる。
【0100】
(比較例1)
分子量が550未満では、傾斜角度を50度以下にすることができず、白傷画素数を0.01%未満にすることができなかった。これは、傾斜角度が50度以下になる前に、結晶化してしまったためと考えられる。
【0101】
(比較例2)
分子量が1250以上では、傾斜角度を50度以下にすることができず、白傷画素数を0.01%未満にすることができなかった。これは分子量が大きいことで、動きにくくなったためと考えられる
【0102】
以上より、第1有機層21の材料の分子量は550以上1250未満とするのが好ましいことがわかった。より好ましくは630以上1150未満である。
【0103】
次に、本発明の光電変換素子において、好ましいアニール温度の範囲を確かめるため、次の測定を行った。本測定では、第1有機層21の材料の分子量は化合物(1)及び化合物(3)〜(14)のうち、630以上1150未満のものを選択して撮像素子を作製し、アニール温度を変化させた時の傾斜角度と白傷画素数の割合を測定した。アニール時間は30分とした。
【0104】
本測定の結果を下記表に示す。
【0105】
【表4】
【0106】
測定結果の判定としては、白傷画素数の割合が0.01%以下のものを良好であるとして「○」とし、白傷画素数の割合が0.01%より大きいものを良好ではないとして「×」とした。
【0107】
図9はアニール温度/Tgと傾斜角度(θ2)の関係を示すグラフである。図10はアニール温度/Tgと白傷画素数の割合の関係を示すグラフである。アニール温度がTg×0.72以上であれば、光電変換素子の傾斜角度を50度以下にでき、白傷画素数を低減することができ、ノイズが抑制できることがわかった。
【0108】
次に、本発明の光電変換素子において、第1有機層21を基板加熱蒸着で作製した際の好ましい基板温度の範囲を確かめるため、次の測定を行った。本測定では、第1有機層21の材料の分子量は630以上1150未満として撮像素子を作製し、基板温度を変化させた時の傾斜角度と白傷画素数の割合を測定した。
【0109】
本測定の結果を下記表に示す。
【0110】
【表5】
【0111】
測定結果の判定としては、白傷画素数の割合が0.01%以下のものを良好であるとして「○」とし、白傷画素数の割合が0.01%より大きいものを良好ではないとして「×」とした。
【0112】
図11は基板温度/Tgと傾斜角度(θ2)の関係を示すグラフである。図12は基板温度/Tgと白傷画素数の割合の関係を示すグラフである。基板温度がTg×0.72以上であれば、光電変換素子の傾斜角度を50度以下にでき、白傷画素数を低減することができ、ノイズが抑制できることがわかった。
【0113】
次に、撮像素子の構成の一例を説明する。図13は、撮像素子の構成の一例を示す模式的な断面図である。図13の撮像素子は、基板11,信号読み出し部17,絶縁層12,接続部18,画素電極16,第1有機層21及び第2有機層22を備える中間層20,対向電極14を備え、これらは上述したものと同じである。
【0114】
また、撮像素子は、対向電極14上に、緩衝層109,封止層110,封止補助層110aがこの順に積層されている。また、封止補助層110a上には各画素部の上方に配置されたカラーフィルタCFと、隣り合うカラーフィルタCF同士を隔離する隔壁112と、画素部が形成されていない領域の上方を覆うように形成された周辺遮光層113とが形成されている。カラーフィルタCF、隔壁112、周辺遮光層113はそれぞれ、基板11の上方において同じ層を構成するものとして形成されている。更に、カラーフィルタCF、隔壁112、周辺遮光層113を覆うようにオーバーコート層114が形成される。オーバーコート層114上に、更にマイクロレンズが形成されていてもよい。
【0115】
緩衝層109は、製造工程中に水分子等の因子が光電変換層に侵入して光電変換層に含まれる光電変換材料を劣化させることを防止するため、因子を吸着又は反応することで、光電変換材料の劣化を防止する機能を有する。
【0116】
封止層110は、水分子等の光電変換材料を劣化させる因子が侵入することを防止する。封止補助層110aは封止層110で防止することができない因子が光電変換材料に侵入することを防止する。
【0117】
オーバーコート層114は、カラーフィルタCFを、後工程から保護するものである。オーバーコート層114は保護層ともいう。
【0118】
本明細書は次の事項を開示するものである。
(1)基板の上方に設けられた一対の電極と、
前記一対の電極間に配された複数の有機層と、を備え、
前記複数の有機層が光電変換層を含み、
前記一対の電極のうち一方の電極の上に有機層が形成され、
前記一方の電極が、2次元に複数配列された画素電極の一つである光電変換素子であって、
前記有機層が、並び合う前記画素電極間の段差の上方に対応する位置に形成された凹部を有し、前記凹部は、その表面の任意の点における接触平面と前記基板の表面とがなす傾斜角度をθとしたとき、角度θが50度以下である光電変換素子。
(2)(1)に記載の光電変換素子であって、
前記有機層は、物理的気相成膜法で成膜され、成膜された後、アニールされたものである光電変換素子。
(3)(1)又は(2)に記載の光電変換素子であって、
前記有機層は、真空加熱蒸着法で成膜され、成膜された後、アニールされたものである光電変換素子。
(4)(1)から(3)のいずれか1つに記載の光電変換素子であって、
前記有機層の分子量が550以上1250未満である光電変換素子。
(5)基板の上方に設けられた一対の電極と、
前記一対の電極間に配された複数の有機層と、を備え、
前記複数の有機層が光電変換層を含み、
前記一対の電極のうち一方の電極の上に有機層が形成され、
前記一方の電極が、2次元に複数配列された画素電極の一つである光電変換素子の製造方法であって、
前記基板の上に絶縁層を形成し、
前記絶縁層上に前記複数の画素電極をパターン形成し、
前記複数の画素電極を覆うように前記有機層を成膜し、
前記有機層上に他の層を形成する前に、加熱することによって該有機層における前記画素電極間の段差の上方に対応する位置に形成された凹部の形状がなだらかになるようにアニールする光電変換素子の製造方法。
(6)(5)に記載の光電変換素子の製造方法であって、
前記有機層を物理的気相成膜法で成膜し、成膜後、アニールする光電変換素子の製造方法。
(7)(5)又は(6)に記載の光電変換素子の製造方法であって、
前記有機層を真空加熱蒸着法で成膜し、成膜後、アニールする光電変換素子の製造方法。
(8)(5)から(7)のいずれか1つに記載の光電変換素子の製造方法であって、
前記有機層を形成するときに、前記基板を加熱する光電変換素子の製造方法。
(9)(5)から(8)のいずれか1つに記載の光電変換素子の製造方法であって、前記有機層をアニールする温度が、前記有機層のガラス転移温度×0.72以上であって、かつ、前記有機層のガラス転移温度以下である光電変換素子の製造方法。
(10)アレイ状に配列された複数の画素部を有する撮像素子であって、
各画素部が(1)から(4)のいずれか1つに記載の光電変換素子を含み、
前記光電変換素子で発生した電荷に応じた信号を読み出す信号読出し部を備える撮像素子。
【符号の説明】
【0119】
1 撮像素子
11 基板
12 絶縁層
14 対向電極
16 画素電極
20 中間層
21 第1有機層
22 第2有機層
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の上方に設けられた一対の電極と、
前記一対の電極間に配された複数の有機層と、を備え、
前記複数の有機層が光電変換層を含み、
前記一対の電極のうち一方の電極の上に有機層が形成され、
前記一方の電極が、2次元に複数配列された画素電極の一つである光電変換素子であって、
前記有機層が、並び合う前記画素電極間の段差の上方に対応する位置に形成された凹部を有し、前記凹部は、その表面の任意の点における接触平面と前記基板の表面とがなす傾斜角度をθとしたとき、角度θが50度以下である光電変換素子。
【請求項2】
請求項1に記載の光電変換素子であって、
前記有機層は、物理的気相成膜法で成膜され、成膜された後、アニールされたものである光電変換素子。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の光電変換素子であって、
前記有機層は、真空加熱蒸着法で成膜され、成膜された後、アニールされたものである光電変換素子。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の光電変換素子であって、
前記有機層の分子量が550〜1250の範囲内である光電変換素子。
【請求項5】
基板の上方に設けられた一対の電極と、
前記一対の電極間に配された複数の有機層と、を備え、
前記複数の有機層が光電変換層を含み、
前記一対の電極のうち一方の電極の上に有機層が形成され、
前記一方の電極が、2次元に複数配列された画素電極の一つである光電変換素子の製造方法であって、
前記基板の上に絶縁層を形成し、
前記絶縁層上に前記複数の画素電極をパターン形成し、
前記複数の画素電極を覆うように前記有機層を成膜し、
前記有機層上に他の層を形成する前に、加熱することによって該有機層における前記画素電極間の段差の上方に対応する位置に形成された凹部の形状がなだらかになるようにアニールする光電変換素子の製造方法。
【請求項6】
請求項5に記載の光電変換素子の製造方法であって、
前記有機層を物理的気相成膜法で成膜し、成膜後、アニールする光電変換素子の製造方法。
【請求項7】
請求項5又は6に記載の光電変換素子の製造方法であって、
前記有機層を真空加熱蒸着法で成膜し、成膜後、アニールする光電変換素子の製造方法。
【請求項8】
請求項5から7のいずれか1項に記載の光電変換素子の製造方法であって、
前記有機層を形成するときに、前記基板を加熱する光電変換素子の製造方法。
【請求項9】
請求項5から8いずれか1項に記載の光電変換素子の製造方法であって、前記有機層をアニールする温度が、前記有機層のガラス転移温度×0.72以上であって、且つ、前記有機層のガラス転移温度以下である光電変換素子の製造方法。
【請求項10】
アレイ状に配列された複数の画素部を有する撮像素子であって、
各画素部が請求項1から4のいずれか1項に記載の光電変換素子を含み、
前記光電変換素子で発生した電荷に応じた信号を読み出す信号読出し部を備える撮像素子。
【請求項1】
基板の上方に設けられた一対の電極と、
前記一対の電極間に配された複数の有機層と、を備え、
前記複数の有機層が光電変換層を含み、
前記一対の電極のうち一方の電極の上に有機層が形成され、
前記一方の電極が、2次元に複数配列された画素電極の一つである光電変換素子であって、
前記有機層が、並び合う前記画素電極間の段差の上方に対応する位置に形成された凹部を有し、前記凹部は、その表面の任意の点における接触平面と前記基板の表面とがなす傾斜角度をθとしたとき、角度θが50度以下である光電変換素子。
【請求項2】
請求項1に記載の光電変換素子であって、
前記有機層は、物理的気相成膜法で成膜され、成膜された後、アニールされたものである光電変換素子。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の光電変換素子であって、
前記有機層は、真空加熱蒸着法で成膜され、成膜された後、アニールされたものである光電変換素子。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の光電変換素子であって、
前記有機層の分子量が550〜1250の範囲内である光電変換素子。
【請求項5】
基板の上方に設けられた一対の電極と、
前記一対の電極間に配された複数の有機層と、を備え、
前記複数の有機層が光電変換層を含み、
前記一対の電極のうち一方の電極の上に有機層が形成され、
前記一方の電極が、2次元に複数配列された画素電極の一つである光電変換素子の製造方法であって、
前記基板の上に絶縁層を形成し、
前記絶縁層上に前記複数の画素電極をパターン形成し、
前記複数の画素電極を覆うように前記有機層を成膜し、
前記有機層上に他の層を形成する前に、加熱することによって該有機層における前記画素電極間の段差の上方に対応する位置に形成された凹部の形状がなだらかになるようにアニールする光電変換素子の製造方法。
【請求項6】
請求項5に記載の光電変換素子の製造方法であって、
前記有機層を物理的気相成膜法で成膜し、成膜後、アニールする光電変換素子の製造方法。
【請求項7】
請求項5又は6に記載の光電変換素子の製造方法であって、
前記有機層を真空加熱蒸着法で成膜し、成膜後、アニールする光電変換素子の製造方法。
【請求項8】
請求項5から7のいずれか1項に記載の光電変換素子の製造方法であって、
前記有機層を形成するときに、前記基板を加熱する光電変換素子の製造方法。
【請求項9】
請求項5から8いずれか1項に記載の光電変換素子の製造方法であって、前記有機層をアニールする温度が、前記有機層のガラス転移温度×0.72以上であって、且つ、前記有機層のガラス転移温度以下である光電変換素子の製造方法。
【請求項10】
アレイ状に配列された複数の画素部を有する撮像素子であって、
各画素部が請求項1から4のいずれか1項に記載の光電変換素子を含み、
前記光電変換素子で発生した電荷に応じた信号を読み出す信号読出し部を備える撮像素子。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−94810(P2012−94810A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−102256(P2011−102256)
【出願日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
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