説明

光電変換素子及び太陽電池

【課題】光電変換効率の初期特性および光照射に対する耐久性の高い光電変換素子並びにそれを用いた太陽電池を提供すること。
【解決手段】基板、第1電極、半導体および増感色素を有する光電変換層、電荷輸送層、並びに、第2電極を、順に設置して成る光電変換素子において、前記半導体に下記一般式(1)で表される化合物が吸着されていることを特徴とする光電変換素子。
一般式(1)
−X−R−B
(RはC(R)(R)(R)を表わし、R、RおよびRは水素原子、メチル基またはエチル基を表し、R、RおよびRが同時に水素原子であることはなく、Xはシクロヘキサン環、ベンゼン環、またはピリミジン環を表し、Rはメチレン基、エチレン基、または単結合を表わし、Bはカルボキシル基、スルホ基、またはホスホノ基を表わす。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光電変換素子及び太陽電池に関し、詳しくは光電変換効率および光照射に対する耐久性の高い光電変換素子及び太陽電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、無限で有害物質を発生しない太陽光の利用が精力的に検討されている。このクリーンエネルギー源である太陽光利用として現在実用化されているものは、住宅用の単結晶シリコン、多結晶シリコン、アモルファスシリコン及びテルル化カドミウムやセレン化インジウム銅等の無機系太陽電池が挙げられる。
【0003】
しかしながら、これらの無機系太陽電池の欠点としては、例えば、シリコン系では、非常に純度の高いものが要求され、当然精製の工程は複雑でプロセス数が多く、製造コストが高いことが挙げられる。
【0004】
その一方で、有機材料を使う太陽電池も多く提案されている。有機太陽電池としては、p型有機半導体と仕事関数の小さい金属を接合させるショットキー型光電変換素子、p型有機半導体とn型無機半導体、あるいはp型有機半導体と電子受容性有機化合物を接合させるヘテロ接合型光電変換素子等があり、利用される有機半導体は、クロロフィル、ペリレン等の合成色素や顔料、ポリアセチレン等の導電性高分子材料、またはそれらの複合材料等である。これらを真空蒸着法、キャスト法、またはディッピング法等により、薄膜化し電池材料が構成されている。有機材料は低コスト、大面積化が容易等の長所もあるが、変換効率は1%以下と低いものが多く、また耐久性も悪いという問題もあった。
【0005】
こうした状況の中で、良好な特性を示す太陽電池がスイスのグレッツェル博士らによって報告された(非特許文献1参照)。提案された電池は色素増感型太陽電池であり、第1電極、作用電極層および第2電極を順に有し、作用電極と第2電極との間に電解質液が満たされた構成になっている。ここで、作用電極層は、酸化チタンなどの半導体多孔質に色素を吸着させた層を用いている。
【0006】
しかし、半導体多孔質に吸着している色素が半導体多孔質を完全に覆いきれず、電荷輸送層が色素層を介さずに半導体多孔質と接触し、部分的な短絡を生じるためか、光電変換効率が向上しないという問題があった。
【0007】
短絡による逆電子移動を防止し、光電変換効率の経時劣化を改善するために、色素を半導体多孔質に吸着させた後、半導体多孔質に吸着する官能基(イミダゾリル基、カルボキシル基、ホスホン基等)を有する添加剤を吸着させ、色素の吸着していない半導体多孔質の表面を添加剤で覆う方法が提案されている(特許文献1参照)。
【0008】
上記特許文献1において、半導体の表面に色素を吸着させた後、前記添加剤として、tert−ブチルピリジンを吸着させる例が記載されており、逆電子移動を防止しつつ光電変換効率の経時劣化を防止している。
【0009】
しかし、特許文献1には、単なる放置による耐久性の向上については記載されているが、光を照射し続けたときの耐久性は記載されておらず、我々が光照射による耐久性を評価した結果は不満足なレベルであった。また、逆電子移動防止(短絡の防止による)による光電変換効率の初期特性の向上もいまだ不十分であり、大きな改善が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2006−134631号公報
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】B.O’Regan and M.Gratzel,Nature,353,737(1991)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、光電変換効率の初期特性および光照射に対する耐久性の高い光電変換素子並びにそれを用いた太陽電池を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記本発明の課題は以下の手段により解決された。
【0014】
固体の電荷輸送層を用いた光電変換素子で、光電変換効率が低いのは、電荷輸送層から半導体への電荷の逆電子移動が発生するためであることが分かってきた。我々は逆電子移動を防止するために、電荷輸送層が半導体表面と接触して短絡することを防止する方法を検討してきたが、光電変換層に一般式(1)の化合物を保持し、裸の半導体表面を保護することにより、半導体中の電子と電荷輸送層のホールの再結合を防止し、良好な変換効率がえられた。
【0015】
1.基板、第1電極、半導体および増感色素を有する光電変換層、電荷輸送層、並びに、第2電極を有する光電変換素子において、前記光電変換層が下記一般式(1)で表される化合物を含有することを特徴とする光電変換素子。
【0016】
一般式(1)
−X−R−B
(RはC(R)(R)(R)を表わし、R、RおよびRは水素原子、メチル基またはエチル基を表し、R、RおよびRが同時に水素原子であることはなく、Xは2価のシクロヘキサン環、2価のベンゼン環、または2価のピリミジン環を表し、Rはメチレン基、エチレン基、または単結合を表わし、Bはカルボキシル基、スルホ基、またはホスホノ基を表わす。)
一般式(1)のR−X−R−Bの構造は、それぞれ以下の機能により効果を発現していると推定している。
【0017】
:嵩高い構造部分で、半導体表面に電荷輸送物質が近接することを防止する
X:比較的剛直な環状構造部分で、分子を密に表面を覆うのを助ける
:スペーサー的に働き、吸着基を動かしやすくし、吸着しやすくする部分
B:吸着基
具体的には、本願の一般式(1)の化合物は、色素とともに、半導体に吸着する能力を有する共吸着化合物と推定され、その為には、半導体に吸着する能力有する、カルボキシル基、スルホ基、またはホスホノ基のいずれかの基を有し、電荷輸送剤が半導体に接近することを抑制するとともに広範囲に半導体表面を覆う為に、嵩高い置換基を有する環状構造のシクロヘキサン環、ベンゼン環、またはピリミジン環を有している。さらに、これらの化合物が、うまく、半導体表面に吸着するために、吸着基部分がある程度の可動性を有するスペーサー構造を有していてもよく、該スペーサーとしてはメチレン基、エチレン基が挙げられる。
【0018】
2.前記一般式(1)のRがt−ブチル基、i−プロピル基、またはトリエチルメチル基であることを特徴とする前記1に記載の光電変換素子。
【0019】
3.前記半導体が酸化チタンであることを特徴とする前記1または2に記載の光電変換素子。
【0020】
4.前記光電変換層は、前記半導体に前記化合物が吸着された後に、色素が吸着されて形成されたものであることを特徴とする前記1〜3のいずれか1項に記載の光電変換素子。
【0021】
5.前記電荷輸送層がp型化合物半導体を含有することを特徴とする前記1〜4のいずれか1項に記載の光電変換素子。
【0022】
6.前記1〜5のいずれか1項に記載の光電変換素子を有することを特徴とする太陽電池。
【発明の効果】
【0023】
本発明により、光電変換効率の初期特性および光照射に対する耐久性の高い光電変換素子並びにそれを用いた太陽電池を提供できた。特に電荷輸送層が導電性の高い固体の場合、その効果が大きい事を確認した。
【発明を実施するための形態】
【0024】
(光電変換素子)
本発明の光電変換素子は、基板上に第1電極、光電変換層、電荷輸送層、第2電極を順に有し、該光電変換層は前記化合物と増感色素が吸着した半導体を含有する。第1電極と第2電極の一方は透明であり、透明な電極の側に光が照射される。第1電極が透明な場合は基板も透明であり、光は基板側に照射される。第2電極が透明で光が第2電極側に照射される場合、基板は不透明でもよいが、透明な電極の製造の容易性や耐久性の点から第1電極と支持体が透明である形態が好ましい。
【0025】
前記光電変換素子の第1電極と第2電極に端子を付けて、透明な電極側に光を照射することにより、光電流を取り出すことが出来る。
【0026】
(光電変換層)
(半導体)
光電変換層に用いられる半導体としては、シリコン、ゲルマニウムのような単体、周期表(元素周期表ともいう)の第3族〜第5族、第13族〜第15族系の元素を有する化合物、金属のカルコゲニド(例えば、酸化物、硫化物、セレン化物等)、金属窒化物等を使用することができる。
【0027】
好ましい金属のカルコゲニドとして、チタン、スズ、亜鉛、鉄、タングステン、ジルコニウム、ハフニウム、ストロンチウム、インジウム、セリウム、イットリウム、ランタン、バナジウム、ニオブ、またはタンタルの酸化物、カドミウム、亜鉛、鉛、銀、アンチモンまたはビスマスの硫化物、カドミウムまたは鉛のセレン化物、カドミウムのテルル化物等が挙げられる。他の化合物半導体としては、亜鉛、ガリウム、インジウム、カドミウム等のリン化物、ガリウム−ヒ素または銅−インジウムのセレン化物、銅−インジウムの硫化物、チタンの窒化物等が挙げられる。
【0028】
具体例としては、TiO、SnO、Fe、WO、ZnO、Nb、CdS、ZnS、PbS、Bi、CdSe、CdTe、GaP、InP、GaAs、CuInS、CuInSe、Ti等が挙げられるが、好ましく用いられるのは、TiO、ZnO、SnO、Fe、WO、Nb、CdS、PbSであり、好ましく用いられるのは、TiOまたはNbであるが、中でも特に好ましく用いられるのはTiO(酸化チタン)である。
【0029】
光電変換層に用いる半導体は、上述した複数の半導体を併用して用いてもよい。例えば、上述した金属酸化物もしくは金属硫化物の数種類を併用することもできるし、また酸化チタン半導体に20質量%の窒化チタン(Ti)を混合して使用してもよい。また、J.Chem.Soc.Chem.Commun.,15(1999)に記載の酸化亜鉛/酸化錫複合としてもよい。このとき、半導体として金属酸化物もしくは金属硫化物以外に成分を加える場合、追加成分の金属酸化物もしくは金属硫化物半導体に対する質量比は30%以下であることが好ましい。
【0030】
《半導体層の作製》
第1電極を設けた基板上に、前記半導体からなる半導体層を形成する方法について説明する。
【0031】
前記半導体が粒子状の場合には、半導体を導電性支持体に塗布あるいは吹き付けて、半導体層を作製するのがよい。また、本発明に係る半導体が膜状であって、導電性支持体上に保持されていない場合には、半導体を導電性支持体上に貼合して半導体層を作製することが好ましい。
【0032】
本発明に係る半導体層の好ましい態様としては、上記導電性支持体上に半導体の微粒子を用いて焼成により形成する方法が挙げられる。
【0033】
本発明に係る半導体が焼成により作製される場合には、色素を用いての該半導体の増感(吸着、多孔質層への充填等)処理は、焼成後に実施することが好ましい。焼成後、半導体に水が吸着する前に素早く化合物の吸着処理を実施することが特に好ましい。
【0034】
以下、本発明に好ましく用いられる半導体層を、半導体微粉末を用いて焼成により形成する方法について詳細に説明する。
【0035】
(半導体微粉末含有塗布液の調製)
まず、半導体の微粉末を含む塗布液を調製する。この半導体微粉末はその1次粒子径が微細な程好ましく、その1次粒子径は1〜5000nmが好ましく、さらに好ましくは2〜50nmである。半導体微粉末を含む塗布液は、半導体微粉末を溶媒中に分散させることによって調製することができる。溶媒中に分散された半導体微粉末は、その1次粒子状で分散する。溶媒としては半導体微粉末を分散し得るものであればよく、特に制約されない。
【0036】
前記溶媒としては、水、有機溶媒、水と有機溶媒との混合液が包含される。有機溶媒としては、メタノールやエタノール等のアルコール、メチルエチルケトン、アセトン、アセチルアセトン等のケトン、ヘキサン、シクロヘキサン等の炭化水素等が用いられる。塗布液中には、必要に応じ、界面活性剤や粘度調節剤(ポリエチレングリコール等の多価アルコール等)を加えることができる。溶媒中の半導体微粉末濃度の範囲は0.1〜70質量%が好ましく、さらに好ましくは0.1〜30質量%である。
【0037】
(半導体微粉末含有塗布液の塗布と形成された半導体層の焼成処理)
上記のようにして得られた半導体微粉末含有塗布液を、導電性支持体上に塗布または吹き付け、乾燥等を行った後、空気中または不活性ガス中で焼成して、導電性支持体上に半導体層(半導体膜とも言う)が形成される。
【0038】
導電性支持体上に半導体微粉末含有塗布液を塗布、乾燥して得られる皮膜は、半導体微粒子の集合体からなるもので、その微粒子の粒径は使用した半導体微粉末の1次粒子径に対応するものである。
【0039】
このようにして導電性支持体等の導電層上に形成された半導体微粒子層は、導電性支持体との結合力や微粒子相互の結合力が弱く、機械的強度の弱いものであることから、機械的強度を高め、基板に強く固着した半導体層とするため前記半導体微粒子層の焼成処理が行われる。
【0040】
本発明においては、この半導体層はどのような構造を有していてもよいが、多孔質構造膜(空隙を有する、ポーラスな層ともいう)であることが好ましい。
【0041】
ここで、本発明に係る半導体層の空隙率は10体積%以下が好ましく、さらに好ましくは8体積%以下であり、特に好ましくは0.01〜5体積%である。なお、半導体層の空隙率は誘電体の厚み方向に貫通性のある空隙率を意味し、水銀ポロシメーター(島津ポアライザー9220型)等の市販の装置を用いて測定することができる。
【0042】
多孔質構造を有する焼成物膜になった半導体層の膜厚は、少なくとも10nm以上が好ましく、さらに好ましくは500〜30000nmである。
【0043】
焼成処理時、焼成膜の実表面積を適切に調製し、上記の空隙率を有する焼成膜を得る観点から、焼成温度は1000℃より低いことが好ましく、さらに好ましくは200〜800℃の範囲であり、特に好ましくは300〜800℃の範囲である。
【0044】
また、見かけ表面積に対する実表面積の比は、半導体微粒子の粒径及び比表面積や焼成温度等によりコントロールすることができる。また、加熱処理後、半導体粒子の表面積を増大させたり、半導体粒子近傍の純度を高めたりして、色素から半導体粒子への電子注入効率を高める目的で、例えば、四塩化チタン水溶液を用いた化学メッキや三塩化チタン水溶液を用いた電気化学的メッキ処理を行ってもよい。
【0045】
(増感色素)
本発明では、半導体に増感色素を担持させている。電荷の半導体への効率的な注入の観点から、上記増感色素はカルボキシル基を有することが好ましい。以下に、増感色素の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0046】
【化1】

【0047】
【化2】

【0048】
(半導体の増感処理)
本発明では、半導体に増感色素を担持させる前に、前記吸着化合物を該半導体に吸着させることが好ましい。該吸着化合物を適切な溶媒に溶解した溶液に、半導体層を有する積層体(基板上に第1電極と半導体層を順に設けた積層体)を浸漬することによって、該吸着化合物を半導体に吸着させ、積層体1を作製する。
【0049】
その際には、半導体層を焼成により形成し、基板を予め減圧処理や加熱処理して膜中の気泡を除去し、前記吸着化合物が半導体層の内部深くに進入できるようにしておくことが好ましく、半導体層(半導体膜)が多孔質構造膜である場合には特に好ましい。
【0050】
半導体の増感処理は前記増感色素を適切な溶媒に溶解し、その溶液に前記積層体1を浸漬することによって行われることが好ましい。
【0051】
増感色素を溶解するのに用いる溶媒は、溶解することができ、かつ半導体を溶解したり半導体と反応したりすることのないものであれば格別の制限はないが、溶媒に溶解している水分及び気体が半導体膜に進入して、前記増感色素の吸着等の増感処理を妨げることを防ぐために、予め脱気及び蒸留精製しておくことが好ましい。
【0052】
好ましく用いられる溶媒は、メタノール、エタノール、n−プロパノール、t−ブチルアルコール等のアルコール系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル系溶媒、アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル系溶媒、塩化メチレン、1,1,2−トリクロロエタン等のハロゲン化炭化水素溶媒であり、混合溶媒を用いてもよい。特に好ましくはエタノール、t−ブチルアルコール、アセトニトリルである。
【0053】
半導体を焼成した基板を、増感色素を含む溶液に浸漬する時間は、半導体層(半導体膜)に前記増感色素が深く進入して吸着等を十分に進行させ、半導体を十分に増感させ、かつ溶液中で前記増感色素の分解等により生成した分解物が増感色素の吸着を妨害することを抑制する観点から、25℃では1〜48時間が好ましく、さらに好ましくは3〜24時間である。この温度、時間は、特に半導体膜が多孔質構造膜である場合に好ましい。ただし、浸漬時間については25℃での値であり、温度条件を変化させて場合にはこの限りではない。
【0054】
浸漬しておくに当たり、増感色素を含む溶液は、増感色素が分解しない限り、沸騰しない温度にまで加熱して用いてもよい。好ましい温度範囲は10〜100℃であり、さらに好ましくは25〜80℃であるが、前記の通り溶媒が前記温度範囲で沸騰する場合はこの限りでない。
【0055】
増感色素を用いて増感処理を行う場合、増感色素を単独で用いてもよいし、複数を併用することもできる。
【0056】
また、本発明に好ましいカルボキシル基を有する増感色素と他の増感色素を併用して用いることもできる。併用して用いることのできる増感色素としては、本発明に係る半導体層を分光増感しうるものならばいずれの増感色素も用いることができる。光電変換の波長域をできるだけ広くし、かつ光電変換効率を上げるため2種類以上の増感色素を混合することが好ましい。また、目的とする光源の波長域と強度分布に合わせるように混合する増感色素とその割合を選ぶことができる。
【0057】
特に、本発明の光電変換素子の用途が後述する太陽電池である場合には、光電変換の波長域をできるだけ広くして太陽光を有効に利用できるように、吸収波長の異なる二種類以上の増感色素を混合して用いることが好ましい。
【0058】
併用して用いる増感色素の中では、光電子移動反応活性、光耐久性、光化学的安定性等の総合的な観点から、金属錯体色素、フタロシアニン系色素、ポルフィリン系色素、ポリメチン系色素が好ましく用いられる。
【0059】
本発明に好ましいカルボキシル基を有する増感色素と併用して用いることのできる増感色素としては、例えば、米国特許第4,684,537号明細書、同4,927,721号明細書、同5,084,365号明細書、同5,350,644号明細書、同5,463,057号明細書、同5,525,440号明細書、特開平7−249790号公報、特開2000−150007号公報等に記載の増感色素を挙げることができる。
【0060】
半導体層に増感色素を含ませるには、前記増感色素を適切な溶媒(エタノール等)に溶解し、その溶液中によく乾燥した半導体を長時間浸漬する方法が一般的である。
【0061】
増感色素を複数種類併用したり、本発明に好ましいカルボキシル基を有する増感色素以外の他の増感色素を併用したりして増感処理する際には、各々の増感色素の混合溶液を調製して用いてもよいし、それぞれの増感色素について溶液を用意して、各溶液に順に浸漬して作製することもできる。各増感色素について別々の溶液を用意し、各溶液に順に浸漬して作製する場合は、半導体層に前記増感色素を含ませる順序がどのようであっても、本発明に記載の効果を得ることができる。また、増感色素を単独で吸着させた半導体微粒子を混合する等により作製してもよい。
【0062】
また、空隙率の高い半導体薄膜を有する半導体層の場合には、空隙に水分、水蒸気等により水が半導体薄膜上、及び半導体薄膜内部の空隙に吸着する前に、前記増感色素の吸着処理(半導体層の増感処理)を完了することが好ましい。
【0063】
(本発明の化合物)
前記化合物は、一般式(1)により表される。
【0064】
一般式(1)
−X−R−B
ただし、RはC(R)(R)(R)を表わし、R、RおよびRは水素原子、メチル基またはエチル基を表し、R、RおよびRが同時に水素原子であることはなく、Xはシクロヘキサン環、ベンゼン環、またはピリミジン環を表し、Rはメチレン基、エチレン基、または単結合を表わし、Bはカルボキシル基、スルホ基、またはホスホノ基を表わす。中でも、カルボキシル基は吸着性能と、耐久安定性が高く好ましい。
【0065】
は好ましくは、t−ブチル基、i−プロピル基、またはトリエチルメチル基である。中でも、t−ブチル基は電荷輸送化合物の近接を効果的に防止でき、かつ吸着安定性も良好となり安定に性能を維持でき特に好ましい。
【0066】
一般式(1)の化合物は、色素を吸着させる溶液に同時に溶解させるか、色素吸着後に色素と同様の方法で吸着させても良いが、特に色素吸着前に吸着させることが好ましい。
【0067】
前記化合物の具体例としては下記の化合物が挙げられる。
【0068】
【化3】

【0069】
上記に具体例として挙げた化合物は試薬メーカーより購入できるか、または一般的な方法により方法により合成できる。
【0070】
前記化合物を溶解するのに用いる溶媒は、溶解することができ、かつ半導体を溶解したり半導体と反応したりすることのないものであれば格別の制限はないが、溶媒に溶解している水分及び気体が半導体膜に進入して、前記化合物の吸着を妨げることを防ぐために、予め脱気及び蒸留精製しておくことが好ましい。
【0071】
好ましく用いられる溶媒は、メタノール、エタノール、n−プロパノール、t−ブチルアルコール等のアルコール系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル系溶媒、アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル系溶媒、塩化メチレン、1,1,2−トリクロロエタン等のハロゲン化炭化水素溶媒であり、混合溶媒を用いてもよい。特に好ましくはエタノール、t−ブチルアルコール、アセトニトリルである。
【0072】
半導体層を設け焼成した基板を、化合物を含む溶液に浸漬する時間は、半導体層に化合物が深く進入して吸着等を十分に進行させ、化合物の分解等により生成した分解物が増感色素の吸着を妨害することを抑制する観点から、25℃では1〜48時間が好ましく、さらに好ましくは3〜24時間である。この温度、時間は、特に半導体層が多孔質構造膜である場合に好ましい。ただし、浸漬時間については25℃での値であり、温度条件を変化させて場合にはこの限りではない。
【0073】
浸漬しておくに当たり、化合物を含む溶液は、化合物が分解しない限り、沸騰しない温度にまで加熱して用いてもよい。好ましい温度範囲は10〜100℃であり、さらに好ましくは25〜80℃であるが、前記の通り溶媒が前記温度範囲で沸騰する場合はこの限りでない。
【0074】
(基板)
前記基板としては、ガラス、プラスチックフィルムなどの透明な材料で形成された透明な基板が好ましく用いられる。
【0075】
(第1電極、第2電極)
第1電極と第2電極の少なくとも一方は透明導電層であるが、第1電極が透明電極であることが好ましい。透明電極と対向する電極は不透明導電層であっても良い。
【0076】
透明導電層とは、前記の導電層のうち実質的に透明であるものを指し、実質的に透明であるとは光の透過率が10%以上であることを意味し、50%以上であることがさらに好ましく、80%以上であることが最も好ましい。該透明導電層を形成する材料としては、例えばITO、FTO、SnO、ZnOが挙げられるが、高い生産性と高い透明性の点からFTOが好ましい。
【0077】
不透明導電層に用いられる材料の例としては、金属(例えば、白金、金、銀、銅、アルミニウム、ロジウム、インジウム、チタン)あるいは導電性金属酸化物(例えば、インジウム、スズ、亜鉛、ガリウム等の酸化物、及びこれらの元素の複合酸化物)や炭素を挙げることができる。酸化スズを用いる時はフッ素ドーピングをしたものを用いるのが好ましい。不透明導電層は表面抵抗が50Ω/cm以下であることが好ましく、10Ω/cm以下であることがさらに好ましい。
【0078】
不透明導電層は、Iイオン等の酸化や他のレドックスイオンの還元反応を十分な速さで行わせる触媒能を持った物質であることが好ましい。このようなものとしては、白金電極、導電材料表面に白金メッキや白金蒸着を施したもの、ロジウム金属、ルテニウム金属、カーボン、ポリピロール等が挙げられる。
【0079】
(電荷輸送層)
本発明に用いられる電荷輸送層について説明する。
【0080】
電荷輸送層は、色素の酸化体を迅速に還元し、色素との界面で注入された正孔を対極に輸送する機能を担う層である。
【0081】
本発明に係る電荷輸送層は、レドックス電解質の分散物や正孔輸送材料としてのp型化合物半導体(電荷輸送剤)を主成分として構成されているが、電荷輸送層を固体化できることから、p型化合物半導体を主成分とすることが好ましい。
【0082】
レドックス電解質としては、I/I系や、Br/Br系、キノン/ハイドロキノン系等が挙げられる。このようなレドックス電解質は従来公知の方法によって得ることができ、例えば、I/I系の電解質は、ヨウ素のアンモニウム塩とヨウ素を混合することによって得ることができる。これらの分散物は溶液である場合に液体電解質、常温において固体である高分子中に分散させた場合に固体高分子電解質、ゲル状物質に分散された場合にゲル電解質と呼ばれる。電荷輸送層として液体電解質が用いられる場合、その溶媒としては電気化学的に不活性なものが用いられ、例えば、アセトニトリル、炭酸プロピレン、エチレンカーボネート等が用いられる。固体高分子電解質の例としては特開2001−160427号公報記載の電解質が、ゲル電解質の例としては「表面科学」21巻、第5号288〜293頁に記載の電解質が挙げられる。
【0083】
p型化合物半導体としては、色素吸収を妨げないために大きいバンドギャップを持つことが好ましい。本発明で使用するp型化合物半導体のバンドギャップは、2eV以上であることが好ましく、さらに2.5eV以上であることが好ましい。また、p型化合物半導体のイオン化ポテンシャルは色素ホールを還元するためには、色素吸着電極イオン化ポテンシャルより小さいことが必要である。使用する色素によって電荷輸送層に使用するp型化合物半導体のイオン化ポテンシャルの好ましい範囲は異なってくるが、一般に4.5eV以上5.5eV以下が好ましく、さらに4.7eV以上5.3eV以下が好ましい。
【0084】
p型化合物半導体としては、正孔の輸送能力が優れている芳香族アミン誘導体が好ましい。このため、電荷輸送層を主として芳香族アミン誘導体で構成することにより、光電変換効率をより向上させることができる。芳香族アミン誘導体としては、特に、トリフェニルジアミン誘導体を用いるのが好ましい。トリフェニルジアミン誘導体は、芳香族アミン誘導体の中でも、特に正孔の輸送能力が優れている。また、このような芳香族アミン誘導体は、モノマー、オリゴマー、プレポリマー、ポリマーのいずれを用いてもよく、これらを混合して用いてもよい。また、モノマー、オリゴマーやプレポリマーは、比較的低分子量であることから、有機溶媒等の溶媒への溶解性が高い。このため、電荷輸送層を塗布法により形成する場合に、電荷輸送層材料の調製をより容易に行うことができるという利点がある。このうち、オリゴマーとしては、ダイマーまたはトリマーを用いるのが好ましい。
【0085】
具体的な芳香族第3級アミン化合物としては、N,N,N′,N′−テトラフェニル−4,4′−ジアミノフェニル;N,N′−ジフェニル−N,N′−ビス(3−メチルフェニル)−〔1,1′−ビフェニル〕−4,4′−ジアミン(TPD);2,2−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)プロパン;1,1−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)シクロヘキサン;N,N,N′,N′−テトラ−p−トリル−4,4′−ジアミノビフェニル;1,1−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)−4−フェニルシクロヘキサン;ビス(4−ジメチルアミノ−2−メチルフェニル)フェニルメタン;ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)フェニルメタン;N,N′−ジフェニル−N,N′−ジ(4−メトキシフェニル)−4,4′−ジアミノビフェニル;N,N,N′,N′−テトラフェニル−4,4′−ジアミノジフェニルエーテル;4,4′−ビス(ジフェニルアミノ)クオードリフェニル;N,N,N−トリ(p−トリル)アミン;4−(ジ−p−トリルアミノ)−4′−〔4−(ジ−p−トリルアミノ)スチリル〕スチルベン;4−N,N−ジフェニルアミノ−(2−ジフェニルビニル)ベンゼン;3−メトキシ−4′−N,N−ジフェニルアミノスチルベンゼン;N−フェニルカルバゾール、さらには米国特許第5,061,569号明細書に記載されている2個の縮合芳香族環を分子内に有するもの、例えば、4,4′−ビス〔N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ〕ビフェニル(NPD)、特開平4−308688号公報に記載されているトリフェニルアミンユニットが3つスターバースト型に連結された4,4′,4″−トリス〔N−(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ〕トリフェニルアミン(MTDATA)等が挙げられる。
【0086】
さらにこれらの材料を高分子鎖に導入した、またはこれらの材料を高分子の主鎖とした高分子材料を用いることもできる。
【0087】
芳香族アミン誘導体以外のp型化合物半導体としては、チオフェン誘導体、ピロール誘導体、スチルベン誘導体等が挙げられる。
【0088】
以下に、芳香族アミン誘導体のp型化合物半導体(電荷輸送剤)の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0089】
【化4】

【0090】
【化5】

【0091】
【化6】

【実施例】
【0092】
次に、本発明の具体的実施例について説明する。
【0093】
実施例1(光電変換素子 SC−1の作製)
次のようにして、太陽電池(光電変換素子)を製造した。
【0094】
(バリヤ層の形成)
シート抵抗20Ω/□のフッ素ドープ酸化スズ(FTO)導電性ガラス基板(15mm×25mm)を第1電極とした。この基板上にテトラキスイソポロポキシチタン1.2mlおよびアセチルアセトン0.8mlをエタノール18mlに希釈した溶液を滴下して、スピンコート法により製膜後、450℃で8分間加熱して、透明導電膜(FTO)上に、厚み30〜50nmの酸化チタン薄膜からなるバリヤ層を形成した。
【0095】
(光電変換層の形成)
酸化チタンペースト(アナターゼ型、1次平均粒径(顕微鏡観察平均)18nm、エチルセルロース、を10%アセチルアセトン水に分散)を、上記バリヤ層を形成したFTOガラス基板へスクリーン印刷法(塗布面積25mm(5mm×5mm))により塗布した。200℃で10分間および500℃で15分間焼成を行い、厚さ2.5μmの酸化チタン薄膜を得た。
【0096】
次に化合物B−1をアセトニトリル:t−ブチルアルコール=1:1の混合溶媒に溶解し、5×10−4mol/lの溶液を調製した。上記酸化チタンを塗布焼結したFTOガラス基板を、この溶液に室温で3時間浸漬して化合物B−1の吸着処理を行った。
【0097】
次に増感色素の例示化合物A−7をアセトニトリル:t−ブチルアルコール=1:1の混合溶媒に溶解し、5×10−4mol/lの溶液を調製した。上記の化合物B−1を吸着させた酸化チタン付のFTOガラス基板を、この溶液に室温で3時間浸漬して色素の吸着処理を行い、光電変換層を形成し、半導体電極1を得た。
【0098】
(電荷輸送層の形成)
前記半導体電極1の光電変換層上に、電荷輸送剤の例示化合物D−15(170mM)、Li[(CFSON](15mM)、t−ブチルピリジン(50mM)のクロロベンゼン溶液をスピンコート(塗布法)により塗布し、乾燥膜厚10μmの電荷輸送層を設けた。なお、スピンコートは、回転数を500rpmで行った。
【0099】
その後、半導体電極/電荷輸送層を自然乾燥後、さらに真空蒸着法により金を60nm蒸着し、第2電極を作製し、光電変換素子SC−1を得た。
【0100】
実施例2(光電変換素子 SC−2の作製)
実施例1と同様に光電変換層まで作製した半導体電極2に、チオフェン系モノマーであるEDOT(エチレンジオキシチオフェン)の二量体(K192;KaironKem社製)を1×10−3(モル/l)の濃度で含有し、Li[(CFSON]を0.1(モル/l)の濃度で含有するアセトニトリル溶液(電解重合溶液)に浸漬した。作用極を前記半導体電極2、対極を白金線、参照電極をAg/Ag(AgNO 0.01M)、保持電圧を−0.16Vとした。半導体層方向から光を照射しながら(キセノンランプ使用、半導体表面での光強度22mW/cm、430nm以下の波長をカット)積算電荷量4mCになるまで保持してEDOTの二量体を重合し、電荷輸送剤であるPEDOTを有する電荷輸送層を前記半導体電極2の表面に形成した。得られた半導体電極/電荷輸送層の積層体をアセトニトリルで洗浄、乾燥した。
【0101】
なお、ここで得られた電荷輸送層は、溶媒には不溶の重合膜になっている。
【0102】
その後、Li[(CFSON]を15×10−3(モル/l)、tert−ブチルピリジンを50×10−3(モル/l)の割合で含有するアセトニトリル溶液に10分間浸漬した。
【0103】
その後、半導体電極/電荷輸送層の積層体を自然乾燥後、さらに真空蒸着法により金を60nm蒸着し、第2電極を作製し、光電変換素子SC−2を得た。
【0104】
(光電変換素子 SC−3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47の作製)
光電変換素子SC−1の作製において、増感色素および化合物を表1,表2の化合物に変更した以外は同様にして光電変換素子 SC−3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47を作製した。
【0105】
なお、SC−45、47の作製においては、前記クロロベンゼン溶液にt−ブチルピリジン(C−2)を添加せずに電荷輸送層を形成した。
【0106】
また、表2の化合物C−1とC−2を以下に示す。
【0107】
【化7】

【0108】
(光電変換素子 SC−4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48の作製)
光電変換素子SC−2の作製において、増感色素および化合物を表1,表2の化合物に変更した以外は同様にして光電変換素子 SC−4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48を作製した。
【0109】
(光電変換素子の評価)
得られた各光電変換素子について下記の評価を行った。
【0110】
(光電変換効率の測定)
作製した光電変換素子を、ソーラーシミュレータ(英弘精機製)を用い、AMフィルタ(AM−1.5)を通したキセノンランプから100mW/cmの擬似太陽光を照射することにより行った。半導体層上に5×5mmのマスクをかけた条件下で光電変換特性の測定を行った。即ち、I−Vテスターを用いて室温にて電流−電圧特性を測定し、短絡電流密度(Jsc)、開放電圧(Voc)、及び形状因子(FF)を求め、これらから光電変換効率(η(%))を求めた。
【0111】
なお、光電変換素子の光電変換効率(η(%))は下記式(A)に基づいて算出した。
【0112】
式(A) η=100×(Voc×Jsc×FF)/P
ここで、Pは入射光強度[mW・cm−2]、Vocは開放電圧[V]、Jscは短絡電流密度[mA・cm−2]、FFは形状因子を示す。
【0113】
(耐久性評価)
上記により光電変換効率を測定した光電変換素子を短絡させた上で、120mW/cmの擬似太陽光を720時間照射した後に、上記と同様に電流−電圧特性を測定し、光劣化後の短絡電流密度(JSC1)、開放電圧(VOC1)、光電変換効率(η(%))を求め、下記式により耐久率を求めた。
【0114】
耐久率=η/η
前記光電変換素子の評価結果を表1,表2に記す。
【0115】
【表1】

【0116】
【表2】

【0117】
表1,表2より、色素吸着の前に化合物を吸着させない光電変換素子、一般式(1)においてRがメチル基であるC−1(本発明外の化合物)を吸着させた場合、およびC−2(本発明外の化合物)を吸着させた場合に対し、本発明の化合物を半導体に吸着させた光電変換素子は、初期特性の光電変換効率が高く、光照射に対する耐久性も高いことが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板、第1電極、半導体および増感色素を有する光電変換層、電荷輸送層、並びに、第2電極を有する光電変換素子において、前記光電変換層が下記一般式(1)で表される化合物を含有することを特徴とする光電変換素子。
一般式(1)
−X−R−B
(RはC(R)(R)(R)を表わし、R、RおよびRは水素原子、メチル基またはエチル基を表し、R、RおよびRが同時に水素原子であることはなく、Xは2価のシクロヘキサン環、2価のベンゼン環、または2価のピリミジン環を表し、Rはメチレン基、エチレン基、または単結合を表わし、Bはカルボキシル基、スルホ基、またはホスホノ基を表わす。)
【請求項2】
前記一般式(1)のRがt−ブチル基、i−プロピル基、またはトリエチルメチル基であることを特徴とする請求項1に記載の光電変換素子。
【請求項3】
前記半導体が酸化チタンであることを特徴とする請求項1または2に記載の光電変換素子。
【請求項4】
前記光電変換層は、前記半導体に前記化合物が吸着された後に、色素が吸着されて形成されたものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の光電変換素子。
【請求項5】
前記電荷輸送層がp型化合物半導体を含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の光電変換素子。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の光電変換素子を有することを特徴とする太陽電池。

【公開番号】特開2012−69444(P2012−69444A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−214597(P2010−214597)
【出願日】平成22年9月25日(2010.9.25)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】