説明

光電変換装置、光電変換アレイおよび撮像装置

【課題】光電変換機能を有するpn接合の逆方向電流がショットキ接合の逆方向電流ほど大きくならない技術を提供をする。
【解決手段】光電変換機能を有するpn接合と電界効果トランジスタとから少なくとも構成され、電界効果トランジスタのソースが接続されているpn接合の1方の半導体領域が他方の半導体領域に対してゼロまたは逆バイスとなる電位となった場合に、電界効果トランジスタが導通するゲート電位を供給することにより、2つの異なる導電型の半導体領域のいずれかに光が照射されても、pn接合が深い順方向電圧にバイアスされないよう飽和制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光強度、光波長などの光情報、光学像を、電流、電荷若しくは電圧又はデジタルデータを含む電子情報に変換する光電変換装置に関し、特に、性能が改善された光電変換装置に関する。本発明は更に、本発明を適用した光電変換セル、それをアレイ構成とした光電変換アレイ及びそれから構成される撮像装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
本発明は光電変換機能を有する第1pn接合の一端を電気的に浮遊状態として該第1pn接合を流れる光電流を一定時間電荷として蓄積してまたは後述のように光電流で蓄積電荷を放電した結果を電気信号として検出する場合、光強度が該蓄積時間(積分時間ともいう)に対して大きいと該pn接合の一端に接続されている電気容量の充放電が過剰に進行し、該第1pn接合には該光電流が順方向に流れるようになり、深い順方向電圧にバイアスされ、該第1pn接合を構成する互いに逆導電型の2つの半導体領域の中にそれぞれ過剰少数キャリアが蓄積されるため、該第1pn接合を逆バイアス方向へスイッチングしようとすると、少数キャリアの寿命(lifetime)に関連した「飽和時間」と呼ばれる時間の間は逆バイアスにスイッチングされる時間が遅れて応答速度が損なわれるという問題があった。この現象を飽和現象という。
【0003】
pn接合が深い順方向電圧にバイアスされるのを防ぐ技術としては、該pn接合にショットキ(Schottky)接合を並列接続する技術が知られていた(特許文献1参照)。同じ電流がpn接合に流れる場合とショットキ接合に流れる場合とで、順方向電圧がショットキ接合のほうが小さいのでほとんどの電流がpn接合でなく、並列に接続されているショットキ接合に流れて、pn接合が深くバイアスされるのを防ぐことができる。しかし、ショットキ接合の逆方向電流がpn接合と桁違いに大きいので光電変換素子としての総合的な暗電流が増加し高感度光電変換装置には使用できなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特公昭47−18561号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明では上記のように光電変換機能を有する第1pn接合が「深い順方向電圧にバイアスされる」いわゆる飽和状態を防止するが、該第1pn接合の逆方向電流にショットキ接合の逆方向電流ほど大きくならない技術の提供を課題とする。
【0006】
なお本発明では「深い順方向電圧にバイアスされる」とは該光電流がすべて該第1pn接合へ流れたときの該第1pn接合の順方向電圧状態を指し、たとえば光電流の1/10以下しか流れない状態では、上記飽和時間も1/10程度に改善されるので、問題が改善されたとみなす。その場合の該第1pn接合の順方向電圧は該「深い順方向電圧にバイアスされた」状態より2.3kT/q(=室温では約60mV)だけ小さい。放置しておけばpn接合が深い順方向電圧にバイアスされる環境で、pn接合をこの深い順方向電圧よりも2.3kT/qだけ小さく順方向バイアスされた状態、および、pn接合をゼロバイアスまたは逆バイアス状態に保つことを「飽和制御」と本発明では呼ぶ。ここでkはボルツマン(Boltzman)定数、Tは該光電変換装置の絶対温度、qは電子の電荷素量である。
【0007】
また第1導電型の第1半導体領域に接して逆導電型の第2半導体領域を設けることでこの第1pn接合を形成した場合、この蓄積された過剰少数キャリアは該第1pn接合の位置から該第1半導体領域の中に少数キャリアの拡散長の範囲に広がる。同様に第2半導体領域の中にもこの蓄積された過剰少数キャリアは該第1pn接合から少数キャリアの拡散長の範囲に広がる。なお、少数キャリアの拡散長はキャリアの種類(電子または正孔)、半導体領域の電気特性によって異なる。したがって第1半導体領域と第2半導体領域では拡散長の値は異なる。
【0008】
更に、この拡散長の距離に光電変換機能を有する別の第2pn接合を設けると、該別の第2pn接合近傍に光が当たっていなくても該別の第2pn接合に電流が流れ、あたかも該第2pn接合の位置にも光が当たっているかのような誤動作を生ずる。この問題は第1半導体領域中に光電変換機能を有する複数のpn接合など光電変換素子を配列して光電変換素子アレイを形成し、撮像装置を作った場合に、映像のボケを生じ、等価的に解像度が落ちた結果となる。
【0009】
本発明ではこの映像のボケ、解像度の等価的な劣化を改善することも課題とする。
【0010】
更に具体例で上記課題を説明する。フォトダイオードを具体例とした光電変換素子により、光情報(光強度、波長成分など)を電子情報へ変換して出力する方法を図1に示す。図に示すように上記第1pn接合に相当するフォトダイオード1000のアノード1002を、スイッチとして動作する電界効果トランジスタ3000のソースまたはドレインへ接続した具体例を用いて説明する。該スイッチとして動作する電界効果トランジスタ3000(以後「スイッチ電界効果トランジスタ」と略称)は、光照射時の光電流を該光電変換素子に付随する電気容量(この場合はアノード・カソード間電気容量Canc)へ一時蓄積する目的で、該フォトダイオードのアノード1002を蓄積時間の間浮遊状態にするためにオフとし、該蓄積された電荷を電流または電荷として取り出しのためにオンとする。
【0011】
まずスイッチ電界効果トランジスタ3000をオンとしてフォトダイオードの一端(図の場合はアノード1002)をVref電位とする。このとき、フォトダイオード1000のアノード・カソード間電気容量はVdd−Vrefの電圧が充電される。ここで、Vddは電源電圧、Vrefは読み出し時参照電圧である。
【0012】
次にスイッチ電界効果トランジスタ3000をオフにして光電変換素子に光を照射すると、フォトダイオード1000のpn接合で分離生成された光電流がフォトダイオード1000のアノード1002からフォトダイオードのアノード・カソード間電気容量Cancへ流れ込み、Vdd−Vrefだけ充電されていた初期状態から放電され、カソード電位はVddに向けて上昇してゆく。このように実際はアノード・カソード間電気容量Cancは該光電流により放電されるが、本発明では便宜上「光電流を電荷として蓄積する」と表現する場合がある。
【0013】
オフ時間が長いか、光電流が大きいと、フォトダイオード1000のアノード1002はVddを越えカソード1001と順方向電位となる。該光電流がすべてフォトダイオード1000のアノード・カソード間に流れたとき最高値に達し、順方向電位の増加は停止する。本発明ではこの状態を深い順方向電圧にバイアスされたと称する。この状態ではフォトダイオード1000を構成する半導体領域に過剰な少数キャリアが蓄積され、フォトダイオード1000を逆バイアス方向へスイッチするとき動作の遅れが生ずる。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明では上記課題を解決するために次の各技術を提供する。
【0015】
(1)光電変換機能を有する第1pn接合と
第1ソース、第1ドレイン、第1絶縁ゲートを有する第1電界効果トランジスタとから少なくとも構成され、
該第1pn接合は少なくとも2つの異なる導電型の半導体領域から構成され、その1方の半導体領域と、該第1電界効果トランジスタの第1ソースとが接続され、
該2つの異なる導電型の半導体領域のいずれかに光が照射され、第1pn接合に光電流が流れる光電変換装置において、
該第1電界効果トランジスタは該2つの異なる導電型の半導体領域の該1方の領域と同一導電型のチャネルを有し、
該第1電界効果トランジスタの第1ドレインに、該2つの異なる導電型の半導体領域の該他方の半導体領域の電位に対して該第1pn接合がゼロバイアスまたは逆バイスとなる第2電位を供給し、
該第1電界効果トランジスタの第1ソースが接続されている該1方の半導体領域が該他方の半導体領域に対してゼロまたは逆バイスとなる第1電位となった場合に該第1電界効果トランジスタが導通する第1ゲート電位を第1絶縁ゲートへ供給することにより、
該2つの異なる導電型の半導体領域のいずれかに光が照射されても、該第1pn接合が深い順方向電圧にバイアスされないよう飽和制御することを特徴とする光電変換装置。
【0016】
上記2つの異なる導電型の半導体領域の一方から前記第1電界効果トランジスタのソースを通して上記光電流の大部分(たとえば9割以上)をドレインへ流し、上記2つの異なる導電型の半導体領域の他方の半導体領域との間が深い順方向電圧にバイアスされないよう制御するためには前記第1ゲート電位は下記の電位条件に予め設定される必要がある。
【0017】
(2)(1)において前記第1ゲート電位と前記2つの異なる導電型の半導体領域の他方の半導体領域の電位との差の絶対値は前記第1電界効果トランジスタのゲート閾値電圧の絶対値と等しいかそれ以上であることを特徴とする光電変換装置。
【0018】
本発明の光電変換装置の光電変換を行う素子がフォトトランジスタである場合は、下記の構成をとる。
【0019】
(3)(1)において前記第1pn接合は第1バイポーラトランジスタのベース・コレクタ接合であり、前記第1バイポーラトランジスタのベースと該第1電界効果トランジスタのソースとが接続されていることを特徴とする光電変換装置。
【0020】
本発明の光電変換装置を選択、光電荷蓄積、電子情報読み出しのための第2電界効果トランジスタを設けた構成が下記(4)、(5)、(6)に提供される。
【0021】
(4)(1)記載の光電変換装置において、さらに第2ソース、第2ドレイン、第2ゲートを備えた第2電界効果トランジスタを設け、該第2ソース・ドレインの一方は前記アノードに接続され、該第2ゲートに導通信号を供給することにより、該第2ソースまたはドレインの他方から(電荷または電流の)電子情報を得ることを特徴とする光電変換装置
【0022】
(5)(3)記載の光電変換装置において、さらに第2ソース、第2ドレイン、第2ゲートを備えた第2電界効果トランジスタを設け、該第2ソース・ドレインの一方は前記第1バイポーラトランジスタのエミッタに接続され、該第2ゲートに導通信号を供給することにより、該第2ソースまたはドレインの他方から(電荷または電流の)電子情報を得ることを特徴とする光電変換装置。
【0023】
(6)(3)記載の光電変換装置において、さらに第2ソース、第2ドレイン、第2ゲートを備えた第2電界効果トランジスタと1つまたは複数のバイポーラトランジスタを設け、前記第1バイポーラトランジスタのエミッタは該1つまたは複数の第2バイポーラトランジスタの内の一つのベースに接続され、第2バイポーラトランジスタが複数の場合は更にベースとエミッタが相互接続され、ベースに接続されない残余のエミッタは第2ソース・ドレインの一方に接続され、該第2ゲートに導通信号を供給することにより、該第2ソースまたはドレインの他方から(電荷または電流の)電子情報を得ることを特徴とする光電変換装置。
【0024】
本発明の(1)記載の光電変換装置の構造として下記の構造例が提供される。
【0025】
(7)第1導電型を有する第1半導体領域と、
該第1半導体領域に接して設けられた逆導電型(opposite conductivity)を有する第2半導体領域と、該第2半導体領域と離間して該第1半導体に接して設けられた逆導電型を有する第3半導体領域と、
少なくとも該第2、第3半導体領域に挟まれる該第1領域表面に設けられた第1絶縁膜と、該第1絶縁膜上に該第2、第3半導体領域を橋渡すごとく設けた第1ゲートから成り、
該第2半導体領域または該第2半導体領域近傍の第1半導体領域に光が照射され、該第2半導体領域と該第1半導体領域間に光電流が流れる光電変換装置において、
該第3半導体領域に該第1半導体領域に対してゼロまたは逆バイアスとなる第2電位を供給し、該第2半導体領域が第1半導体領域に対してゼロまたは逆バイスとなる第1電位となった場合に該第1、第2半導体領域間の該第1ゲート下の該第1半導体表面にチャネルまたは電流路が誘起される第1ゲート電位を第1ゲートへ供給することにより、該第2半導体領域または該第2半導体領域近傍の第1半導体領域に光が照射されても、該第2半導体領域が該第1半導体領域に対して深い順方向電圧にバイアスされないよう飽和制御することを特徴とする光電変換装置。
【0026】
前記第1半導体領域と第2半導体領域間の暗電流を削減するために、下記の構造をとることができる。
【0027】
(8)(7)において前記第2半導体領域の上部を覆うようにかつ前記第1ゲートとはセルフアライン状態で第1導電型の該第4半導体領域を設けたことを特徴とする光電変換装置。通常、前記第4半導体領域は前記第1半導体領域と接続される。
【0028】
本発明の光電変換装置の光電変換を行う素子がフォトトランジスタのように増幅機能を併せ持つ構造例が下記に提供される。
【0029】
(9)(7)において、更に前記第2半導体領域に接して第1導電型の第5半導体領域を設け、前記第2半導体領域に流れた電流が、該第5半導体領域または第1半導体領域から増幅して得られることを特徴とする光電変換装置。
【0030】
本発明の光電変換装置をアレイ化した構成例、撮像装置へ応用した例を下記に提供する。
【0031】
(10)交差する第1方向と第2方向に複数個配列された前記(4)または(5)または(6)記載の光電変換装置と、
第1方向へ延在する複数の第1配線と、
第2方向へ延在する複数の第2配線と、
前記第1ゲート電位を供給する少なくとも1つの第3配線と、
前記第2電位を供給する少なくとも1つの第4配線と、
該第1、第2、第3、第4配線は相互に絶縁され、
前記第2電界効果トランジスタのゲートは該第1方向へ延在する複数の第1配線の一つに接続され、前記第2電界効果トランジスタのソース・ドレインの他方は該第2方向へ延在する複数の第2配線の一つに接続されたことを特徴とする光電変換アレイ。
【0032】
(11)(10)記載の第2ドレインは隣接する光電変換装置で共通部分を有することを特徴とする光電変換アレイ
【0033】
(12)(10)記載の光電変換アレイと、
前記第1配線をスキャンするXドライブ回路と、
前記第2配線に接続された(複数の)電流または電荷センス回路と、
前記第2配線にソース・ドレインの一方が接続された(複数の)参照電位設定電界効果トランジスタと、
該参照電位設定電界効果トランジスタのソース・ドレインの他方に接続された参照電位供給手段と、
第3配線に接続された第1ゲート電位供給手段と
第4配線に接続された第2電位供給手段と、
から構成され、
該電流または電荷センス回路は前記第2配線に接続された第1入力端子と第2入力端子を有する差動型であり、該第2入力端子には参照電位が供給されたことを特徴とする撮像装置。
【0034】
(13)(12)記載の参照電位設定電界効果トランジスタは前記センス回路のセンス終了後、前記複数の第1配線の一つに接続された第2電界効果トランジスタがオフになる前に前記第2配線に参照電位を供給する、要すれば前記センス回路のセンス前のすべての第2電界効果トランジスタがオフのときに参照電位を供給することを特徴とする撮像装置。
【発明の効果】
【0035】
本発明によれば、光電変換を行う素子での過剰少数キャリアの蓄積が少なくなるように制御されるので、光電変換装置のスイッチング遅延が小さくなり、読み出しの高速化が期待できる。また光電変換素子で構成される複数のセルをアレイ化した場合に隣接セルからの光電流の漏洩を防ぎ、そのアレイを用いた撮像装置から得られる画像のボケ、等価的な解像度の劣化を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】従来のスイッチつきフォトダイオード。
【図2】図1のフォトダイオードに飽和制御電界効果トランジスタを備えた本発明の回路例。
【図3】飽和制御電界効果トランジスタの本発明の動作説明グラフ。
【図4】図2からスイッチ電界効果トランジスタを除いた部分の断面構造例。
【図5a】本発明図4に対応する断面構造に第4半導体領域を設けた本発明の実施例の平面図。
【図5b】本発明図4に対応する断面構造に第4半導体領域を設けた本発明の実施例の断面図。
【図6】本発明をフォトトランジスタに適用した実施例の等価回路図。
【図7】図6からスイッチ電界効果トランジスタを除いた部分の断面構造例。
【図8】本発明の光電変換装置を光電変換アレイ化する場合のセル構造例。
【図9】図8のセルの等価回路。
【図10】本発明の光電変換アレイを用いた撮像装置。
【発明を実施するための形態】
【0037】
本発明の第1pn接合をフォトダイオード1000として実施した例を図2に示す。図1と同じ数字は同じ機能を示す。図2ではフォトダイオード1000のアノード1002に前記スイッチ(第2)電界効果トランジスタ3000のドレイン・ソースの一方に加えて、さらに飽和制御(第1)電界効果トランジスタ3010の第1ソース3012が接続されている。該第1電界効果トランジスタ3010は第1ソース3012、第1ドレイン3011、第1ゲート3013を有し、この実施例ではpチャネル型である。
【0038】
図においてカソード電位Vddは読出参照電位Vrefより正側の電位である。該第1電界効果トランジスタの第1ゲート3013へは第1ゲート電位Vg1が与えられている。該第1電界効果トランジスタの第1ドレイン3011へはVddと等しいかVddよりVref側の電位Vsinkが供給されている。すなわち、Vsinkは前記第1pn接合をゼロバイアスか逆バイアスする前記第2電位である。第1ゲート電位Vg1はVdd+Vthと等しいかそれより負側の電位である。これにより、前記第1pn接合のアノードが前記第1pn接合がゼロまたは逆バイアスする第1電位となったとき第1電界効果トランジスタが導通する。この例では第1電位はVg1-Vthである。この例では第1電界効果トランジスタがエンハンスメント型の場合はVthは負の値である。なお、フォトダイオードのカソード1001が飽和制御第1電界効果トランジスタに接続される場合には、前記スイッチ電界効果トランジスタのソース・ドレインの一方もフォトダイオードのカソード1001へ接続され、アノード電位VddはVrefより負側の電位であり、第1電界効果トランジスタがエンハンスメント型の場合はVthは正の値である。
【0039】
まず、スイッチ(第2)電界効果トランジスタ3000をオンとしてフォトダイオード1000のカソード1002を読出参照電位Vrefとした後、スイッチ電界効果トランジスタをオフとする。この状態で、フォトダイオードのアノード・カソード間の電気容量(主として接合容量)CancはVdd−Vrefに充電されている。またフォトダイオードのアノードと接地間の浮遊容量CanstはVrefに充電されている。
【0040】
次に光照射されたフォトダイオードからの光電流iphによりCancは放電され、Canstはさらに充電され、アノード電位VanはVrefからVddに向かって増加する。蓄積時間tstr後に再度スイッチ電界効果トランジスタをオンすることによりスイッチ電界効果トランジスタのドレインまたはソースのフォトダイオードに接続されていない他方から電荷(Canc+Canst)*(Van−Vref)を読み出すことができる。スイッチ時間をtonとすれば、その間に平均して電流iout=(Canc+Canst)*(Van−Vref)/tonが読み出される。ここでは(Canc+Canst)*(Van−Vref)を蓄積光電荷と呼んで、過剰少数キャリア蓄積電荷と区別する。
【0041】
蓄積時間tstrが長いか、光電流iphが大きいと、VanはVddを超えてアノードがカソードに対して順バイアス関係になりiphの一部がフォトダイオードに流れはじめる。光電流iphがすべてフォトダイオードに流れると、それ以上フォトダイオードの電圧は変化しなくなる。本発明ではこの電圧を「深い順方向電圧」と呼ぶ。太陽電池ではこの電圧を開放電圧と呼んでいる。
【0042】
この状態では、フォトダイオードを構成する半導体領域(フォトダイオードは少なくとも2つの異なる導電型の半導体領域から構成される)の中に過剰少数キャリアが蓄積される。その量はフォトダイオードに流し込まれる順方向電流にほぼ比例し、この過剰少数キャリアを引き抜くために、スイッチ電界効果トランジスタをオンとしてもVanがVdd以下になる、すなわちフォトダイオードが逆バイアスされるまでに時間遅れが生ずる。この過剰少数キャリアをゼロにすることは望ましいが、フォトダイオードに流れ込む順方向電流を光電流iphの1/10程度以下に抑えても効果は十分ある。すなわちフォトダイオードが順バイアスされたとしてもその順方向電圧が深い順方向電圧より60mV程度以上小さく制御できればよい。もちろんフォトダイオードのアノード・カソード間電圧をゼロから逆バイアス電圧に制御できれば申し分ない。
【0043】
次に飽和制御用に設けられた第1電界効果トランジスタ3010の動作を説明する。説明を簡単にするために第1ゲート電位Vg1をVdd+Vthとする。Vthは通常負の電圧であるから、|Vth|だけVddよりVref側の電位である。フォトダイオードのアノード1002が光電流で放電され、VanがVrefからVddへ変化すると、アノード1002と第1ソース3012とは接続されているから、第1電界効果トラジスタ3010はオンとなり、光電流をソース3012からドレイン3011へバイパスし始める。そのためVanはVddを超えてさらに大きく正の電位にはならない。すなわち、フォトダイオード1000のカソード1001はVddであるからVan−Vddで計算されるフォトダイオード1000のアノード・カソード間電圧は深く順方向電圧にバイアスされることはない。
【0044】
該第1電界効果トランジスタのVthをソース・ドレイン間にたとえば1μA(の飽和電流)が流れるゲート・ソース間電圧と定義すれば、50μm□以下の受光面積を有するフォトダイオードであれば、昼間の外光にたいしてもアノード・カソード電圧は0V近傍にクランプされる。第1電界効果トランジスタによりバイパスされる電流Isinkは図3に示すようにVanがVrefからVg1−Vthに近くなると指数関数的に増加して、Vg1−VthではIth(たとえば1μA)となる。いわゆる第1電界効果トランジスタのオフ電流値IoffはpAレベルに設計できるから、ショットキダイオードを並列接続したときに比べてフォトダイオードの等価暗電流に加算される電流は小さい。VanがVg1−Vth−0.4〜0.5VからVg1−Vthまで変化する間にIsinkはIoffのレベルからIthまで増加する。このVanの変化幅0.4〜0.5Vはs*log(Ith/Ioff)で与えられる。ここでsはいわゆるsub-threshold slopeと呼ばれるデバイスパラメータである。
【0045】
アノード・カソード間電圧を逆バイアス範囲に止めるためには前記第1ゲート電位Vg1をVdd+VthよりVref側に設定すればよい。フォトダイオード1000の受光面積が50μm□より大きく真夏の直射太陽光を受ける場合の光電流iphに対しても飽和制御するためには、同様な第1ゲート電位Vg1の設定と、第1電界効果トランジスタ3010のチャネル幅を、光電流を流すことができる幅Wに設定する。すなわち、iphがIthより大きいときは、Vg1<Vdd+Vthとして、
W=(iph−Ith)*2L/(μCox(Vg1−Vdd−Vth)
ここでLはチャネル長、Coxはゲート絶縁膜単位面積電気容量である。
【0046】
図2の本発明の光電変換装置のフォトダイオード1000と第1電界効果トランジスタ3010部分のもっとも簡単な断面図例を図4に示す。101は第1導電型第1半導体領域、102は逆導電型第2半導体領域である。該第1半導体領域101と該第2半導体領域102の接合面で前記第1pn接合を形成する。該第2半導体領域102と該第1半導体領域の該第2半導体領域近傍(少数キャリア拡散長以内)部分とで該フォトダイオード1000を形成する。
【0047】
311は前記第2半導体領域102と離間して設けられた逆導電型の第3半導体領域で、前記第1電界効果トランジスタ3010の第1ドレインである。314は前記第1電界効果トランジスタの第1ゲート絶縁膜であり、少なくとも前記第2半導体領域と第3半導体領域の一部とその間に挟まれている前記第1半導体領域表面に接して設けられている。313は前記第1電界効果トランジスタの第1ゲートで前記第2半導体領域と第3半導体領域を橋渡すように該第1ゲート絶縁膜に接して設けられている。前記第1電界効果トランジスタの第1ソースはこの実施例ではフォトダイオードと第2半導体領域102を共有している。第1電界効果トランジスタのチャネルは該第2半導体領域と該第3半導体領域にはさまれた該第1半導体領域表面に該第1ゲートからの電界で誘起・消滅する。
【0048】
該第1半導体領域は半導体基板そのものでも良いし、半導体基板または絶縁基板表面に電気的に分離されて設けられた領域でもよい。
【0049】
図2と同じバイアスを与えるためには、前記第1半導体領域101へVdd、該第3半導体領域311へVdd+Vth以下たとえばVref、0Vなどの電位Vsinkを、第1ゲート313へVg1を供給する。
【0050】
図5a、図5bは図4の構造にさらに前記第2半導体領域表面上に設けた第1導電型の第4半導体領域104とスイッチ電界効果トランジスタ(第2電界効果トラジスタ)3000を追加した平面図(図5a)と断面図(図5b)である。図5bは図5aの平面図の1−1’線に沿って切断した断面図である。図5a、図5bで、301は前記第2半導体領域と離間して第1半導体領域表面に接して設けられた逆導電型の第5半導体領域で、前記スイッチ電界効果トランジスタ3000の第2ドレインである。304は前記スイッチ電界効果トランジスタの第2ゲート絶縁膜であり、少なくとも前記第2半導体領域と該第5半導体領域の一部とその間に挟まれている前記第1半導体領域表面に接して設けられている。303は前記スイッチ電界効果トランジスタの第2ゲートで前記第2半導体領域と該第5半導体領域を橋渡すように該第2ゲート絶縁膜304に接して設けられている。該スイッチ電界効果トランジスタのソースはこの実施例では前記フォトダイオード1000と前記第2半導体領域102を共有している。該スイッチ電界効果トランジスタ3000のチャネルは前記第2半導体領域と該第5半導体領域にはさまれた該第1半導体領域表面に該第2ゲート303からの電界で誘起・消滅する。
【0051】
図5a、図5bでは、前記第4半導体領域104は前記第2半導体領域上から第1半導体領域まで延在させることができる。前記第2半導体領域端部に第1ゲート313、第2ゲート303が位置する部分では、該ゲートと絶縁層を介してセルフアライン(self-align)させて形成することができる。前記第4半導体領域はフォトダイオード1000の暗電流を小さく、安定化させる効果がある。さらにフォトダイオードのアノード・カソード間容量Cancを増加させ、光蓄積電荷の蓄積上限を増加させる効果がある。
【0052】
図5a、図5bでスイッチ電界効果トランジスタの第2ドレイン301である第5半導体領域には、電位Vrefが供給されており、第2ゲート303(電位Vg0)にはスイッチ電界効果トランジスタ3000をオフとするときにはVddを、オンとするときにはVref+Vthより負側の電位を供給する(スイッチ電界効果トランジスタ3000がpチャネルの場合)。光蓄積電荷を読み出すときは、スイッチ電界効果トランジスタ3000の第2ドレイン301から電荷またはスイッチ時間に流れる電流として読み出すことができる。同様にフォトダイオード1000のカソード101からも読み出すことができる。
【0053】
なお、上記飽和制御電界効果トランジスタ3010と上記スイッチ電界効果トランジスタ3000を1つの電界効果トランジスタで共用することができる。まず、図2において、上記スイッチ電界効果トランジスタ3000を取り外す。この回路の断面図例は図4そのものである。最初にフォトダイオードのアノード・カソード間電気容量CancをVdd−Vrefに充電するときは第1電界効果トランジスタの第1ドレイン311へVref、第1ゲート313へVref+Vthより負側の電位を供給する。次に光電荷蓄積フェーズのときは、第1ドレイン311の電位は変える必要がなく、第1ゲートへ電位Vg1(≦Vdd+Vth)を供給する。光蓄積電荷をまたはそれを電流として読み出すときは再び、第1ゲート313へVref+Vthより負側の電位を供給する。この第1ゲート313への電位切り替えに同期して(センスアンプを電界効果トランジスタスイッチで接続または活性化して)、電荷または電流を第1ドレイン311から読み出すか、フォトダイオードのカソード101から読み出すことができる。フォトダイオードのカソードから読み出す場合は第1ゲートと同期したセンスアンプ接続または活性化作業は不要である。なお、活性化とはセンスアンプ入力をVref電位に接続しておき読み出すフェーズで接続手段をオフにすることをさす。
【0054】
図6は本発明の第1pn接合をフォトトランジスタのベース・コレクタ接合に適用した実施例である。フォトトランジスタ1010のベース1012へ第1電界効果トランジスタ3010のソース3012を接続し、ベース・コレクタ接合の飽和を制御する。第1ゲートへは前記Vg1を供給し、第1ドレイン3011へはVdd+Vth以下たとえばVref、0Vなどの第2電位Vsinkを供給する。該フォトトランジスタのコレクタ1011へはVddを供給する。この場合、第1電位はVg1-Vthであり、コレクタ電位(この場合はVdd)と等しいか負側(npnトランジスタの場合、pnpトランジスタの場合は等しいか正側)となるようにVg1を設定する。エミッタ1013へはスイッチ電界効果トランジスタ3000のソース・ドレインの一方を接続し、スイッチ電界効果トランジスタ3000のソース・ドレインの他方へはVrefを供給する。
【0055】
まず、スイッチ電界効果トランジスタ3000をオンとしてフォトトランジスタ1010のエミッタ1013を読出参照電位Vrefとした後、スイッチ電界効果トランジスタ3000をオフとする。この状態で、フォトトランジスタ1010のベース・コレクタ間の電気容量(主として接合容量)CbcはVdd−Vref−Vbeに充電されている。またフォトトランジスタ1010のベースとエミッタ間の電気容量CbeはVbeに、ベースと接地間の浮遊容量CbstはVref+Vbeに充電されている。ここでVbeはベースからエミッタへ光電流が流れたときのベース・エミッタ間順方向電圧である。光電流はフォトトランジスタ1010のコレクタまたはベースへの光照射により発生し、フォトトランジスタ1010のエミッタ、コレクタから増幅されて出力する。
【0056】
次に光照射されたフォトトランジスタ1010のベース1012からの光電流iphによりCbcは放電され、Cbstはさらに充電され、ベース電位VbはVref+VbeからVddに向かって増加する。蓄積時間tstr後に再度スイッチ電界効果トランジスタ3000をオンすることによりスイッチ電界効果トランジスタのドレイン・ソースの他方から増幅された電荷(hFE+1)(Cbc+Cbst)*(Vb−Vref−Vbe)を読み出すことができる。スイッチ時間をtonとすれば、その間に平均して増幅された電流iout=(hFE+1)(Cbc+Cbst)*(Vb−Vref−Vbe)/tonが読み出される。ここでは(Cbc+Cbst)*(Vb−Vref−Vbe)を蓄積光電荷と呼んで、過剰少数キャリア蓄積電荷と区別する。hFEはフォトトランジスタ1010の増幅率である。なお、フォトトランジスタ1010のベースとエミッタ間の電気容量Cbeの電圧はほぼVbeのままであるので、ここでは読み出しに考慮していない。
【0057】
飽和の制御は第1電界効果トランジスタ3010の第1ゲート3013へVg1(第1ソースが第1電位となったときに第1電界効果とランジスタがオンとなるための第1ゲート電位)を供給し、第1ドレインへVdd+Vth以下のVref、0V等の第2電位Vsinkを供給することにより、フォトダイオードのときと同様に達成される。
【0058】
図6の本発明の光電変換装置のフォトトランジスタ1010と第1電界効果トランジスタ3010部分の断面図例を図7に示す。101は第1導電型第1半導体領域で本実施例ではこの一部がフォトトランジスタ1010のコレクタとして機能する。102は該第1半導体領域に接して設けられた逆導電型第2半導体領域であり本実施例ではフォトトランジスタ1010のベースとして機能する。103は該第2半導体領域と接して設けられた第1導電型の第6半導体領域でフォトトランジスタ1010のエミッタとして機能する。該第1半導体領域101と該第2半導体領域202の接合面で前記第1pn接合を形成する。該第2半導体領域102と該第1半導体領域の該第2半導体領域近傍(少数キャリア拡散長以内)部分とで光照射によって発生した電流が該第2半導体領域(本実施例ではベース)から光電流として得られる。
【0059】
第1導電型の第4半導体領域104は第1ゲートとセルフアライン状態で前記第2半導体領域102表面に設けられており、第2半導体領域102が第1半導体領域101と接する表面部分では第4半導体領域104は第1半導体領域101へ延在して設けられている。また該第4半導体領域104は前記第6半導体領域103と離間して設けられている。該第4半導体領域104と前記第6半導体領域103との間のリーク電流路を防ぐためと電流増幅率の一定性を確保するために第7半導体領域107を該第4半導体領域104は前記第6半導体領域103との間の前記第2半導体領域の表面に設けることができる。第7半導体領域は逆導電型で、第2半導体領域よりも高不純物濃度を有する。
【0060】
311は前記第2半導体領域102と離間して設けられた逆導電型の第3半導体領域で、前記第1電界効果トランジスタ3010の第1ドレインである。314は前記第1電界効果トランジスタの第1ゲート絶縁膜であり、少なくとも前記第2半導体領域と第3半導体領域の一部とその間に挟まれている前記第1半導体領域表面に接して設けられている。313は前記第1電界効果トランジスタの第1ゲートで前記第2半導体領域と第3半導体領域を橋渡すように該第1ゲート絶縁膜に接して設けられている。前記第1電界効果トランジスタの第1ソースはこの実施例ではフォトトランジスタと第2半導体領域102を共有している。第1電界効果トランジスタのチャネルは該第2半導体領域と該第3半導体領域にはさまれた該第1半導体領域表面に該第1ゲートからの電界で誘起・消滅する。該第1半導体領域は半導体基板そのものでも良いし、半導体基板または絶縁基板表面に電気的に分離されて設けられた領域でもよい。
【0061】
なお、上記スイッチ第2電界効果トランジスタ3000がない場合でも本発明の技術はフォトトランジスタに対しても実施できる。まず、図6において、上記スイッチ第2電界効果トランジスタ3000を取り外す。この回路の断面図例は図7そのものである。最初にフォトトランジスタ1010のベース・コレクタ間電気容量CbcをVdd−Vref−Vbeに充電、CbstへVrefを充電するときはコレクタ1011へVddを供給し、エミッタ1013へVrefを供給する。次に光電荷をCbc+Cbstへ蓄積するためには、エミッタ1013をVddまたはVdd以上電位にスイッチする。このときベース・エミッタ接合は逆バイアスされ、ベース1012が浮遊状態となるので、ベースから流れ出す光電流によりCbcの放電、Cbstの充電が始まる。第1電界効果トランジスタの第1ドレイン311へVsink、第1ゲートへ電位Vg1(≦Vdd+Vth)を供給することにより飽和の制御が可能となる。
【0062】
光蓄積電荷を読み出すときは再び、エミッタ1013をVrefに戻す。このエミッタ1013の電位切り替えに同期して(センスアンプを電界効果トランジスタスイッチで接続または活性化して)、光蓄積電荷またはそれを変換した電流をエミッタ1013から読み出すか、コレクタ1011から読み出すことができる。コレクタから読み出す場合はセンスアンプのスイッチ接続または活性化は不要である。
【0063】
以上の説明で電位関係の大小、極性は電界効果トランジスタがpチャネルの場合であったが、nチャネルの場合は大小関係、極性が逆になる。
【0064】
本発明の光電変換装置をアレイ状に展開するにあたって、ユニットセルを図8に例を示すようにC1、C2、C3、C4で示される4種類を一組として、横、縦に配置することによって面積効率のよいアレイを構成することが出来る。飽和制御作用を司る第1電界効果トランジスタ3010の第1ドレイン311の引き出し配線M2311、第1ゲート313の引き出し配線M1313を隣接するセルと共用することにより面積効率を得ている。図8ではM2311とM1313は平面的には交差しているが、2層配線構造を適用し、2つの配線間は層間絶縁膜で絶縁されているので、電気的に短絡(electrically short-circuited)することはない。
【0065】
図8では1つのセル内にフォトトランジスタの他に、更に増幅用の第2バイポーラトランジスタ2010を加えている。フォトトランジスタ1010のエミッタとして機能する第5半導体領域103が、逆導電型の領域217を介して該第2バイポーラトランジスタ2010のベースとして機能する逆導電型の半導体領域212に接続されている。該第2バイポーラトランジスタ2010のエミッタとして機能する第1導電型の半導体領域213が前記第2電界効果トランジスタのソース・ドレインの一方302に接続されている。図8の1つのセルの等価回路を図9に示す。
【0066】
本発明を用いた撮像装置の例として、上記セルを展開したアレイと、該アレイのスイッチ第2電界効果トランジスタの第2ゲート303をX方向へ接続した複数の第1配線M1303−1、M1303−2、M1303−3、・・・、M1303−nをスキャンするYドライブ回路9010、スイッチ第2電界効果トランジスタのソース・ドレインの他方301をY方向へ接続した複数の出力線(第2配線)M2301−1、M2301−2、M2301−3、・・・、M2301−mに前記第1入力端子が接続された電流または電荷センス回路9020(複数、単数の場合は切替用電界効果とランジスタを介して接続)および参照電位設定電界効果トランジスタ3090(複数、単数の場合は切り替え用電界効果とランジスタを介して接続)からなる図10に例を示す構成が提供される。該電流または電荷センス回路9020は前記第2入力端子(参照電位入力端子)922を有する差動型である。
【0067】
前記センス回路9020の参照電位入力端子922へは参照電位供給手段6001から参照電位Vrefが供給される。参照電位設定電界効果トランジスタ3090−1、3090−2、3090−3、・・・、3090−mのソース・ドレインの一方はそれぞれ、出力線(第2配線)M2301−1、M2301−2、M2301−3、・・・、M2301−mに接続され、該ソース・ドレインの他方へは該参照電位供給手段6001から参照電位Vrefが供給される。前記センス回路9020−1、9020−2、9020−3、・・・、9020−mの出力は並列直列変換回路9030によりシリアル(serial)信号に変換される。
【0068】
該出力線はセンス後、必要に応じてセンス前のすべてのスイッチ電界効果トランジスタがオフのときに参照電位設定電界効果トランジスタ3090により参照電位Vrefに充電される。前記飽和制御用第1電界効果トランジスタ3010のゲートの引き出し配線(第3配線)M2313には第1ゲート電位Vg1がチップ外からまたはチップ内でVdd+Vthと等しいか負側の電位発生回路により与えられる。前記飽和制御用第1電界効果トランジスタ3010のドレイン311の引き出し配線(第4配線)M2311には第2電位Vsinkが与えられる。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明は光電変換を利用する、センサー、事務機器、科学機器の応用分野を広げる目的で利用される。高感度の光電変換装置、撮像装置を部分的に光強度、光照度の大きい環境で使う時のスイッチ遅れ、像の滲みを軽減して、利用範囲を拡大する。
【符号の説明】
【0070】
101 :第1半導体領域
102 :第2半導体領域
104 :第4半導体領域
107 :第7半導体領域
212 :第2バイポーラトランジスタ2010のベースとして機能する逆導電型の半導体領域
217 :第2バイポーラトランジスタ2010の逆導電型領域
301 :第2ドレイン
303 :第2ゲート
304 :第2ゲート絶縁膜
311 :第3半導体領域、第1ドレイン
313 :第1ゲート
314 :第1ゲート絶縁膜
1000 :フォトダイオード
1001 :フォトダイオードのカソード
1002 :フォトダイオードのアノード
1010 :フォトトランジスタ
1011 :フォトトランジスタのコレクタ
1012 :フォトトランジスタのベース
1013 :フォトトランジスタのエミッタ
2010 :第2バイポーラトランジスタ
3000 :(スイッチ)第2電界効果トランジスタ
3010 :(飽和制御)第1電界効果トランジスタ
3011 :第1ドレイン
3012 :第1ソース
3013 :第1ゲート
1001−i−j(i=1〜m、j=1〜n) :本発明の撮像装置用アレイを構成するセル
3090 :参照電位設定電界効果トランジスタ
6001 :参照電位供給手段
9010 :Yドライブ回路
9020 :電流または電荷センス回路
9030 :並列直列変換回路
M1313 :第1ドレイン311の引き出し配線(第4配線)
M1303 :第2ゲート303をX方向へ接続した複数の第1配線
M2301 :スイッチ第2電界効果トランジスタ3000のソース・ドレインの他方301をY方向へ接続した複数の出力線(第2配線)
M2311 :第1ゲート313の引き出し配線(第3配線)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光電変換機能を有する第1pn接合と
第1ソース、第1ドレイン、第1絶縁ゲートを有する第1電界効果トランジスタとから少なくとも構成され、
該第1pn接合は少なくとも2つの異なる導電型の半導体領域から構成され、その1方の半導体領域と、該第1電界効果トランジスタの第1ソースとが接続され、
該2つの異なる導電型の半導体領域のいずれかに光が照射され、該第1pn接合に光電流が流れる光電変換装置において、
該第1電界効果トランジスタは該2つの異なる導電型の半導体領域の該1方の領域と同一導電型のチャネルを有し、
該第1電界効果トランジスタの第1ドレインに、該2つの異なる導電型の半導体領域の他方の半導体領域の電位に対して該第1pn接合がゼロバイアスまたは逆バイスである第2電位を供給し、
該第1電界効果トランジスタの第1ソースが接続されている該1方の半導体領域が該他方の半導体領域に対してゼロまたは逆バイスとなる第1電位となった場合に該第1電界効果トランジスタが導通する第1ゲート電位を第1絶縁ゲートへ供給することにより、
該2つの異なる導電型の半導体領域のいずれかに光が照射されても、該第1pn接合が深い順方向電圧にバイアスされないよう飽和制御することを特徴とする光電変換装置。
【請求項2】
前記第1ゲート電位と前記2つの異なる導電型の半導体領域の他方の半導体領域の電位との差の絶対値は前記第1電界効果トランジスタのゲート閾値電圧の絶対値と等しいかそれ以上であることを特徴とする請求項1記載の光電変換装置。
【請求項3】
前記第1pn接合は第1バイポーラトランジスタのベース・コレクタ接合であり、該第1バイポーラトランジスタのベースと前記第1電界効果トランジスタのソースとが接続されていることを特徴とする請求項1記載の光電変換装置。
【請求項4】
請求項1記載の光電変換装置において、さらに第2ソース、第2ドレイン、第2ゲートを備えた第2電界効果トランジスタを設け、該第2ソース・ドレインの一方は前記アノードに接続され、該第2ゲートに導通信号を供給することにより、該第2ソースまたはドレインの他方から電子情報を得ることを特徴とする光電変換装置。
【請求項5】
請求項3記載の光電変換装置において、さらに第2ソース、第2ドレイン、第2ゲートを備えた第2電界効果トランジスタを設け、該第2ソース・ドレインの一方は前記第1バイポーラトランジスタのエミッタに接続され、該第2ゲートに導通信号を供給することにより、該第2ソースまたはドレインの他方から電子情報を得ることを特徴とする光電変換装置。
【請求項6】
請求項3記載の光電変換装置において、さらに第2ソース、第2ドレイン、第2ゲートを備えた第2電界効果トランジスタと1つまたは複数のバイポーラトランジスタを設け、前記第1バイポーラトランジスタのエミッタは該1つまたは複数の第2バイポーラトランジスタの内の一つのベースに接続され、第2バイポーラトランジスタが複数の場合は更にベースとエミッタが相互接続され、ベースに接続されない残余のエミッタを第2ソース・ドレインの一方に接続され、該第2ゲートに導通信号を供給することにより、該第2ソースまたはドレインの他方から電子情報を得ることを特徴とする光電変換装置。
【請求項7】
第1導電型を有する第1半導体領域と、
該第1半導体領域に接して設けられた逆導電型を有する第2半導体領域と、該第2半導体領域と離間して該第1半導体に接して設けられた逆導電型を有する第3半導体領域と、
少なくとも該第2、第3半導体領域に挟まれる該第1半導体領域表面に設けられた第1絶縁膜と該第1絶縁膜上に該第2、第3半導体領域を橋渡すごとく設けた第1ゲートから成り、
該第2半導体領域または該第2半導体領域近傍の第1半導体領域に光が照射され、該第2半導体領域と該第1半導体領域間に光電流が流れる光電変換装置において、
該第3半導体領域に該第1半導体領域に対してゼロまたは逆バイアスとなる第2電位を供給し、該第2半導体領域が第1半導体領域に対してゼロまたは逆バイスとなる第1電位となった場合に該第1、第2半導体領域間の該第1ゲート下の該第1半導体表面にチャネルまたは電流路が誘起される第1ゲート電位を第1ゲートへ供給することにより、該第2半導体領域または該第2半導体領域近傍の第1半導体領域に光が照射されても、該第2半導体領域が該第1半導体領域に対して深い順方向電圧にバイアスされないよう飽和制御することを特徴とする光電変換装置。
【請求項8】
請求項7記載の光電変換装置において、前記第2半導体領域の上部を覆うようにかつ前記第1ゲートとはセルフアライン状態で第1導電型の第4半導体領域を設けたことを特徴とする光電変換装置。
【請求項9】
請求項7記載の光電変換装置において、更に前記第2半導体領域に接して第1導電型の第5半導体領域を設け、前記第2半導体領域に流れた電流が、該第5半導体領域または第1半導体領域から増幅して得られることを特徴とする光電変換装置。
【請求項10】
交差する第1方向と第2方向に複数個配列された前記請求項4〜6のいずれかに記載の光電変換装置と、
第1方向へ延在する複数の第1配線と、
第2方向へ延在する複数の第2配線と、
前記第1ゲート電位を供給する少なくとも1つの第3配線と
前記第2電位を供給する少なくとも1つの第4配線と
該第1、第2、第3、第4配線は相互に絶縁され、
前記第2電界効果トランジスタのゲートは該第1方向へ延在する複数の第1配線の一つに接続され、前記第2電界効果トランジスタのソース・ドレインの他方は該第2方向へ延在する複数の第2配線の一つに接続されたことを特徴とする光電変換アレイ。
【請求項11】
前記第2ドレインは隣接する光電変換装置で共通部分を有することを特徴とする請求項10記載の光電変換アレイ
【請求項12】
請求項10記載の光電変換アレイと、
前記第1配線をスキャンするXドライブ回路と、
前記第2配線に接続された電流または電荷センス回路と、
前記第2配線にソース・ドレインの一方が接続された参照電位設定電界効果トランジスタと、
該参照電位設定電界効果トランジスタのソース・ドレインの他方に接続された参照電位供給手段と、
第3配線に接続された第1ゲート電位供給手段と
第4配線に接続された第2電位供給手段と、
から構成され、
該電流または電荷センス回路は前記第2配線に接続された第1入力端子と第2入力端子を有する差動型であり、該第2入力端子には参照電位が供給されたことを特徴とする撮像装置。
【請求項13】
前記参照電位設定電界効果トランジスタは前記センス回路のセンス終了後、前記複数の第1配線の一つに接続された第2電界効果トランジスタがオフになる前に前記第2配線に参照電位を供給する、要すれば前記センス回路のセンス前のすべての第2電界効果トランジスタがオフのときに参照電位を供給することを特徴とする請求項12記載の撮像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5a】
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【図5b】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−85030(P2013−85030A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−222020(P2011−222020)
【出願日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】