説明

光電子フィルム構造体

【課題】効率的で安価な光電子フィルム構造体を提供する。
【解決手段】第一の平らな電極層(10)、第一の電極層に対する第二の平らな電極層(16)、両電極層の間の絶縁層、および絶縁層(14)に隣接し両電極層間に配置された、EL(電子蛍光)材料で出来た活性層(12)で構成される。第一および/または第二の電極層は、導電性の繊維でできた布帛を使うことにより、光透過性でかつ、TCOフリー、特にITOフリーになる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前提部分に記載されるような、光電子フィルム構造体、特にエレクトロルミネセンス(EL)フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
このような装置は一般的に知られた先行技術であり、その有用な、平面的な発光特性と相まって、低い電力消費および発光寿命の長さ故に、様々な応用分野、特に照明、広告、デザインおよび建築の分野で、警報またはメッセージの表示ボードに実用されている。
【0003】
平面でフィルム状のEL(エレクトロルミネセンス)装置は、プレートコンデンサーの作動原理に基づき、2つの平らな電極の間に、いわゆる活性層(典型的にはEL材料として添加物を加えた硫化亜鉛で構成される)と、絶縁層が設けられている。この構造体は交流電圧信号(典型的には約200Hzから4kHzの周波数の)を加えて、冷たい、平面の無方向性の光を放射できる。加える交流電圧の振幅と周波数によって、放射光の輝度(および(一定の範囲で、色も)変えることができる。
【0004】
構造上の実施形態に関して、先行技術から知られる、請求項1の前提部分に基づいたELフィルム構造体には、第一の電極として、ポリマー基材がある。この基材は酸化インジウム錫(光透過し導電性のある酸化物(TCO)として、インジウム酸化錫ITO)を、一般的には、真空スパッタリングでコーティングして、導電性がありかつ、光透過性の電極層を作り出す。その上に、同じように、平面状であるが、通常光非透過性の、例えば回路基板で作られるようなEL材料から成る活性層を設けて、これを対向電極とする。この活性層には 金、銀、銅、ガリウム、あるいはマンガンのような金属を添加した硫化亜鉛を使用する。その上にコーティングされる絶縁層は、典型的にはチタン酸バリウムであり、これにより、(典型的には光非透過性の)対向電極が同種のフィルム構造体で構成される場合、電極間の短絡を防止する。
【0005】
先行技術から、さらに活性層、および/または絶縁層をスクリーン印刷の方法でコーティングする方法が知られている。スクリーン印刷用のペースト状の適切なコーティング材料は、例えばデュポンのような製造者から入手できる。
【0006】
とりわけこのような光電子フィルム構造体の大量生産の場合、透明なITO−PET-前面電極はコストが厳しく、かつ脆いことが、明らかになっている。さらにITOは、光学的に十分透明にするためには、非常に薄くコーティングする必要があるが、一方このため、導電性が損なわれる。(典型的には50Ω/sq以上で、無視できない電気抵抗特性となる)。この結果、多くの欠点が浮かび上がる。第一には、ITOベースの光学装置の部品が電気的な接続を確保するために、電力レールすなわち接続レール(典型的には銀または銀プリントで作られる)を必要とする。そのため、製品の寸法が制約され、(コストおよび量で有利な)連続的な製造工程が成り立たなくなる。また、このような形状特性から、均一な輝度を達成できる寸法に制約があるという問題があり、また前記の構造により、起動のための最大限界周波数が制限される。
【0007】
このため、代替の、機構的に優れた材料であって、価格優位になる可能性が高く(しかも、透明で平面状の電極を可能にする)、かつ、電気的特性、すなわち抵抗特性を改善し、接続時の電力消費をより少なくするような材料の需要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、本発明の目的は、ELフィルム実現する、代替のフィルム構造体を作製することである。とくに 製造費用と、透明な平面電極を作るために必要な高価な材料に関して、最適化する。さらに、EL-フィルム構造体を製造するための、新規で改良された方法を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的は請求項1の構成をもつ光電子式フィルム構造体、請求項27の構成を有する光電子式フィルム構造体を製造する方法、および、請求項36の構成を持つ使用により達成される。発明の有利な改良形態は、従属請求項に記載されている。
【0010】
発明の有利な構成では、2つの電極層の内の少なくとも1つ、または両方が導電性のある繊維で構成される布帛を有する。
【0011】
それにより、このような布帛は、効率的で、コスト的に有利な電極機能特性を実現する可能性を提供する。各々の繊維太さ、繊維間の隙間、および導電性の繊維の性質を適切に選んで、布帛の構成を適切にすることにより、極めて柔軟な方法によって、希望する特性の取得、および光電子フィルム構造体の様々な使用目的に対応することが可能になる。加えて、この構造体は可撓性があり、かつほぼ任意の形に成形することができる。
【0012】
湿度またはその他の環境因子に対する布帛の安定化および、保護のため、先ず第一に、好ましくは、布帛を透明で電気非伝導性のポリマー材に(少なくとも部分的に)埋め込む。この方法により、(適当にポリマー材を着色して)光の色に影響を与えることができるだけでなく、適当なポリマー材を選ぶことにより、電極(つまり構造体全体)の耐候性を実現できる。
【0013】
繊維のコーティングの実際的な方法として、発明の好ましい改良形態の枠内で、光硬化樹脂、およびこれを補完または代替する熱硬化樹脂の形で、コーティングを仕上げることが可能である。この場合、PU、PEN,PI、PET,PA,EVA またはそれらと同等な材料群から選んだポリマー、あるいは、アクリル樹脂、シリコン材、フッ素ポリマーが適当である。
【0014】
本発明にかかる繊維について、まず、本発明は、基本的には、布帛を非導電性の繊維から製作した後、電極動作を実現するための導電性を繊維に付与することを含んでいる。適切な繊維は、特には、PA,PP,PET,PEEK,PI,PPSまたはこれらと同様な素材の化学繊維の透明または半透明のモノフィラメントである。これらは、金属のみの繊維に比べて(同じような電気伝導特性の場合)極めてコスト的に有利である;とりわけ、一般的なITOコーティングと比べると、さらに劇的にコスト優位性がある。
【0015】
好ましくは、本発明にかかる布帛は、導電性を呈するよう、シート抵抗が50Ω/sq未満、好ましくは20Ω/sq未満、さらに好ましくは10Ω/sq未満とされる。本発明のさらなる改良形態では、布帛中に、金属で構成された繊維(金属繊維)または金属被覆された繊維が配される。金属繊維または金属被覆繊維を構成する適切な金属として、例えば、Ti、Ag、Al、Cu、Au、Pa、Pt、Ni、W、Mo、Nb、Ba、Sn、Zrなどがあげられる。なお、布帛の導電率(またはシート抵抗率)は、そのような金属糸または金属被覆された糸と非導電性の糸との織り配列ないし織り方によって、適宜、調整することができる。すなわち、本発明の好適な実施形態の枠組み内には、この種の伝導性を呈した糸が、非導電性の糸と適宜の割合で組み合わされ、全部の糸を導電性としたり、両者を1:1,1:2,1:3またはそれ以上の比率とすることができる。この比率の設定に加えて、またはこれに替えて金属繊維または金属被覆された繊維が、導電率が調整されるように織り込まれる方向(経糸、緯糸)を選択することが含まれる。(特に好ましくは、経糸方向および緯糸方向の両方に金属繊維または金属被覆された繊維が織り込まれる)。
【0016】
次に、本発明の実施形態の枠内で、導電率を、布帛(織り込み後)の金属被覆により希望する低い値のシートに設定することが可能である。布帛は一般的には、非伝導性のポリマー繊維から出来ている。(基本的には 織り込みの際、ここにも金属繊維を織込むことができる)。このような布帛の金属コーティングは一般にプラズマスパッタリング(例えば、Ag,Au,Ti,Mo,Cr,Cu,ITO,ZAO,等々の)で作る。あるいは代替の方法として、蒸着(Al,Ag,Cu等)や、Ag,Niなどの電解のような湿式の化学的方法がある。一般に、このような布帛の金属化により、シート抵抗が10Ω/sq未満の、極めて高い導電率を得ることができる。
【0017】
本発明の特別な利点は、本発明に基づき使用される布帛に、高い半透明性ないし透明性があることである。メッシュ目開き(mesh opening)を特別に調整することで、半透明性ないし透明性は、極めて有利な影響を受ける。精密布帛の生産のためのよく知られた方法をここでも、有効に使うことができる。本発明に従い、表面積の20%から85%の開口を有する目開きを実現するには、メッシュ幅を30μmから300μmの範囲に調整する、つまり各メッシュの目開き(好ましくは、表面にわたって均一である)の大きさを約800μmから約800.000μm2の範囲に調整するのが特に好ましいと分かった。
【0018】
なお、本発明では、有利なことに、本発明に従い製造された布帛の全体的な光透過率(%)が、原則的に表面の開口領域における光透過率(%)よりも高い。いわゆる正透過率(すなわち、目開きおよび透明な繊維を通過する光)に加えて、繊維上や繊維を介しての反射を考慮した拡散透過率(例えば、金属被覆された繊維の場合)もあるので、本発明に基づき表面の開口領域の面積を20%から85%とした場合、全体的な実効透過率は25%から95%に達する。
【0019】
本発明の好ましい改良形態では、絶縁体層も(これ自身も、好ましくは、連続的なコーティング、硬化または乾燥、さらに、最低もう一層のコーティングを連続的に行う方法で、必要に応じ、多層にコーティングしてよい)、活性層の場合と同様に、スクリーン印刷で製作する。ここにおいても、活性層をスクリーン印刷(または、他のコーティング方法)で、特に、連続した切れ目のない(リールからリールの)コーティングを可能にした方法で、連続的に生成することも、本発明の好ましい改良形態に含まれる。
【0020】
本発明の好ましい改良形態によって、非常に簡単で洗練された方法で、ELフィルム構造体を作る可能性を提示する。すなわち、この構造体は両面、つまり第一の電極層(前面電極)あるいは対向している第二の絶縁層(対向電極)で発光し、そのことにより、全く新しい、片面あるいは両面利用可能な警報信号ボードや、同様な応用を簡単な方法で実現する可能性がある。これらは、好ましい発明の改良形態の枠内で実現できるもので、両方の電極を、本発明に基づく布帛の形で実現できる。すなわち、電極層の内の少なくとも1つが、適切な材料に、絶縁層を(ペースト状で、未だ硬化していない状態で)埋め込む方法により、安全で信頼性のある結合を得る製造技術上の利点と、簡単でコスト的に有利な生産性とを組み合わせることを可能にする。
【0021】
このような手順も、本発明による方法と、その有利な実施形態の枠内に含まれる。
【0022】
本発明により、簡単で、洗練され、かつ大量生産向きのコスト的に有利な方法で、(ELとしての)多くのものに応用に向けた光電子フィルム構造体の製造が可能になる。光の特性を片面に使うか両面に使うかその必要性に応じて、本発明の応用の可能性が、照明、宣伝、建築、見本市、建設、保安企業用の、娯楽およびまたは家庭用電子機器から、航空輸送または軍用の輸送業での個々の応用まで広がりをもつ。
【0023】
本発明のさらなる利点、特徴および詳細は、図面を参照しながら行う、好ましい例示的な実施形態についての以下の説明から理解される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1a】本発明の好ましい第1実施形態の、光電子組のコーティング構造を模式に示す図面である。
【図1b】同コーティング構造の派生形態を模式的に示す図面である。
【図2】本発明の第2実施形態で、第1実施形態に比べて、コーティングの順番を逆にして実現したコーティング構造を模式的に示す図面である。
【図3a】本発明の第3実施形態を示すもので、第1の実施形態に対応するが、布帛は直接、活性層でコーティングされるという、相違点があるコーティング構造を模式的に示す図面である。
【図3b】第3実施形態の変形例を示すコーティング構造を模式的に示す図面である。
【0025】
図1aと1bで模式的に、第1実施形態のELフィルム構造体の構造を示す。PET布帛材料8(例えば、スイスのタールの製造者SefarのPET1000 120−23)と銀コーティングされたPET繊維(繊維120本/cm、繊維径23μm、銀コーティングの厚さ約500nm)に、透明なポリマー材9(ここでは、アクリル樹脂)が付与され、第一の平らで透明な電極層10を形成する。この電極層10は側部で接続可能であり、厚さは、一般に、30μmから200μmとする。この方法で、片面が非伝導性で、他の面が伝導性のある層が形成される。
【0026】
この第一電極層10は、ここに示した例では可視光の50%を透過できるが、その上に、スクリーン印刷で(または他の適当なコーティング方法で)活性層12が施される。特に好ましい方法として、この活性層は例えば、工具を用いた展着(squeeze spreading)、噴霧、浸漬コーティング、または同等の適当なコーティング方法による、連続的プロセスにより生成される。活性層は スクリーン印刷用のインキ/ペーストとして、銅、さらに追加の成分として Alを添加した硫化亜鉛で構成される。このインキ(製造業者モビケム(Mobikem)社の製品、E80−02SBとして一般に販売されている)は一層とされ、乾燥状態の活性層12が30μmから80μmになるようにコーティングされる。
【0027】
この活性層の上に、さらに、スクリーン印刷法で(または上記の他の代替のコーティング方法で)絶縁層(14)を塗布する。このコーティングは2段階で行われ、先ず、第一層がスクリーン印刷でコーティングされる。(代表的なペーストとしてTYPED80-01、モビケム製で通常のチタン酸バリウムペーストで、適当な、コーティングの仕様に適した、適当な溶剤で希釈されたスクリーン印刷用ペーストを使うことができる。一般に0から50%の希釈とする)。このコーティングにより、第一層が乾燥(110°から130°で最低20から30分)後に約5から40μmの厚みとなる。それから、この層の上に、同じ絶縁材料による第二の層が、スクリーン印刷法で(または他のコーティング方法で)コーティングされる。コーティング後、(同じような膜厚を得るため)第二の層の材料が未乾燥の状態で、(電極層10に使用されたタイプに応じて)銀で金属被覆された平らなPET布帛16aが重ねられて、布帛材料が、コーティングされた絶縁材料中に(局部的に)入り込む。それから、(必要に応じ、途中で第二の電極層16a用の布帛材料を挟圧して)温風で乾燥する。
【0028】
さらなる代替の実施形態においては、第一および第二の絶縁層を連続して形成するにあたり、第一の絶縁層が乾燥した後、第二の絶縁層を形成する。各絶縁層(14)は、上記のスクリーン印刷またはそれ以外の方法で、同じ処理条件により、コーティングされる。これにより、乾燥後の各層の平均厚さが約5μmから40μmの範囲となる。次に、金属被覆層(16b)が (第二の)絶縁層の上に、これが乾燥した後、コーティングされる。このような、多層構造の上の金属被覆層は、例えば、プラズマスパッタリング(例えば、Ag、Au、Ti、Mo、Cr、Cu、ITO、ZAO、または同等の材料を用いる)、または代替の方法として、蒸着(Al、Ag、Cu等)で行われる。典型的には、銀による金属被覆の厚さは、25から200nmの範囲である。この層のシート抵抗は、好ましくは、比較的小さく、5Ω/sq未満でなければならない。この追加の実施形態による利点は、均一な金属厚さが得られ、これにより最終製品の均一な輝度分布が得られることである。
【0029】
第一の電極層と第二の電極層は端部領域で電気的に適切に接続される。図1aと図1bは デバイスの交流電圧信号による作動を図式的に表わし、両方の電極面から光を放射している。
【0030】
図1aに示した第1実施形態では、コーティングは2段階で行われる。この場合、好ましくは、第二の金属被覆されたPET布帛16aを、透明な電極10との(光学的な)組み合わせを考慮して選択し、かつ配列を合わせて、(欠点である)モアレ効果をなくする。これは、通常、二つの布帛を、互いに定められた配列角度をなすように配置することで得られる。
【0031】
図1bは第1実施形態に対する、補足および代替の例を示す。すなわち、第二の絶縁層14は第一層と同じ方法でコーティングされる。ただし、第二の絶縁層の上に、これが乾燥した後、金属被覆16bがコーティングされる。このような金属層はプラズマスパッタリング(例えば、Ag、Au、Ti、Nu、Cr、Cu、ITO、ZAOまたは同等の材料を用いる)、または代替方法として、蒸着(Al、Ag、Cu等)で適切に生成できる。しかしながら、ITOはあまり好ましくはない。一般的に、銀の金属被覆では、プレート抵抗を、5Ω/sq未満の比較的低い値とし、厚さが20nmから200nmで実施する。利点は、均一な金属厚さが得られ、最終製品で輝度の均一性が得られることである。
【0032】
前述の第1実施形態の利点のひとつは、層間の比較的粗い接合面が形成されることにある。これは、層構造体の反射と光の分散に対して有利に作用し、光のトラップを防止する。
【0033】
次に、図2に基づいて本発明の第2実施形態を解説する。これは、“倒置”のバリエーションと理解してよく、前記第1実施形態に比べて、層の順番が逆になっている。正確に言うと、最初に、対向電極に絶縁体がコーティングされ、その後に活性層がコーティングされる。さらに、その上に透明な電極がコーティングされる。
【0034】
これに関して、図2で模式的に、どのように背後の電極(対向電極)が、伝導性フィルム20(一般的には、所望の伝導率を得られるように金属化されたフィルム材料)により形成されるかを示す。このフィルムは、(乾燥後)その上にコーティングするペーストに対してフィルムが安定となるように加熱安定化される。このような加熱安定化は130℃から180℃の温度範囲で起きる。フィルム20は、薄くて柔軟性があるので、いわゆるバックフィルム構造ランプ(foilback structured lamp)に具現化することができる。この具現化は一般に、平均的な厚さが40μmから100μm(望ましくは厚さ約50μm)のPETフィルムによって達成できる。適切な金属化により、一般的には50Ω/sq未満、好ましくは20Ω/sq未満、さらに好ましくは、10Ω/sq未満のプレート抵抗を示す。
【0035】
その上に(単層または2層の)絶縁層14をコーティングする。絶縁層のコーティングは、前記の第1実施形態に関連して述べたのと同じ方法で生成される。すなわち、ここでも、適切な方法で、スクリーン印刷用のペーストを薄め、上記方法で、乾燥させる。
【0036】
絶縁層が乾燥した後、活性層12をコーティングする。これは、第1実施形態に関連する前記方法と、(スクリーン印刷、製造者、製造および乾燥のステップ、コーティングに関して)同じである。この層の上に、銀で金属被覆されたPET布帛8(電極層に対応する)が、最後の層が未だ完全に乾燥していない状態で、コーティングして、布帛の材料を(部分的に)活性材料に浸透させる。その後、構造体を(必要に応じ、第二の電極層が活性材料に圧着した後に)乾燥する。この実施形態において、布帛を入れることにより、有利に達成できる点は、活性層のEL粒子を、布帛を越えて染み込むことなしに、布帛に極めて良好に密着させることができることである。(染み込んだ場合、活性層のEL粒子は、二つの電極層の間になく、光を放射できず、従って、黒い染み、あるいは分散光の不均一性といった欠点を示す)
【0037】
また、この第2実施形態の有利な点は、(夫々の)層のコーティングを連続的な形で実施し、量産に適した、効率的な生産が可能になる点である。特に、この観点から、前記第2の実施形態例が有利である。
【0038】
最後に、図3aと3bを用いて第3実施形態を説明するにあたり、第1実施形態の変化形態を説明する。ここでは、第1実施形態の場合と同じ積層順序が選ばれるが、異なる点は、布帛に透明なコーティングを施し、この透明なコーティングの上に活性層をコーティングする代わりに、第3実施形態の場合、(ELの)活性層で直接布帛をコーティングすることである。
【0039】
これは、図3aと3bにより模式的に示される。PET布帛材料8(これも、代表的にはPET1000 100−23、スイスのタールにある、SEFER社製)は銀コーティングしたPET繊維(ここでは、繊維120本/cm、繊維直径23μm、銀コーティングの厚み約500nm)を持ち、(直接)活性層が付与され、布帛が活性層に、片面では部分的に、他の面では完全に入り込む。
【0040】
その後、前記の図1aと1bとの関連で記述したのと同じ方法で、絶縁層をコーティングする。この場合も、この二つの例は、対向電極の生成に適している。
【0041】
前記の実施形態は、固定的なものではなく、むしろ、発明の枠内で、パラメータ、材料、処理条件を、種々変えることができる。
【0042】
コーティング、乾燥等々の、特にEL(電子蛍光)材料から成る絶縁層および活性層を多層に成形する各製法工程を調整して実用に適したものにすることも、本発明の実施形態の枠内である。説明の序文で説明したように、光の色、輝度/透過性、機械的な耐久性、その他のパラメータを調整し、適切な布帛の特性を選択して決めることで、多くの可能性が開ける。そのため、適切なコーティングの選択、ならびに適切な繊維径とメッシュ幅の選択には、特に、第一電極層用のポリマー材料を有効に選び出し、調整すること、および/または、絶縁層および/または活性層の生成のための前記のパラメータの調整が必要である。
【0043】
さらに好ましい前述の改良形態の枠内で、また、発明に基づく光電子フィルム構造体の代替生成方法の実現のために有効なのは、固定することにより(例えば、枠の中で、第二の電極層の布帛を引っ張る)、布帛をフレーム内に入れる前に布帛の相対位置、および/または、布帛の予張力を制御することである。例えば、もし対向電極として金属被覆したPET布帛(16a)が選択された場合、電極層10に関連して、布帛の特性をよく吟味して決定しおよび/または測定し、モアレ効果のような欠点を回避しなければならない。代表的な生成方法では、第二の金属被覆した布帛を、第一の電極層に対して所定の角度で取り付ける。
【0044】
以上のとおり、本発明により驚くほど簡単で洗練された方法で、様々な、柔軟性があり、コスト的に有利に製造可能なELフィルム構造体ができ、これにより、ELの技術の応用範囲をさらに広げる可能性が開かれる。さらにまた、このフィルム構造体は連続的(リールからリールへ)に製造でき、高い輝度と均一な放射性のある大きな発光面を有利に実現する。また付加的な利点は、比較的高いカットオフ周波数と交流電圧が使用できることである。
【符号の説明】
【0045】
8 PET布帛
9 ポリマー材
10 第一電極層
12 活性層
14 絶縁層
16 第二電極層
20 導電性フィルム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平らな第一電極層(10)、それに対する平らな第二電極層(16)、これら両電極層の間の絶縁層(14)、前記絶縁層(14)に隣接し,両絶縁層間に配置されたエレクトロルミネセンス材料からできた活性層とを備えた光電子フィルム構造体において、
第一および第二の電極が、導電性の繊維をもつ布帛により、透明で、TCOまたはITOフリーに形成されていることを特徴とするフィルム構造体。
【請求項2】
請求項1において、前記布帛には、透明な非導電性のポリマー材のコーティングが設けられ、前記繊維が、少なくとも部分的にポリマー材によって取り囲まれていることを特徴とする、フィルム構造体。
【請求項3】
請求項2において、前記ポリマー材のコーティングが、耐候性、特に耐UV性があり基材の耐候性を高めるように、設定および/または選定されていることを特徴とする、フィルム構造体。
【請求項4】
請求項2または3において、前記ポリマー材が、光硬化性、特にUV硬化性の、または熱硬化性のポリマー材であることを特徴とする、フィルム構造体。
【請求項5】
請求項2から4のいずれか一項において、前記ポリマー材が、アクリル樹脂、シリコン、フッ素ポリマ―、PU、PEN、PI、PET、PA、EVAおよびこれらの混合物、特にSiOx、ORMOCER、あるいはその他の無機材料から選ばれていることを特徴とする、フィルム構造体。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項において、前記繊維が PA、PP、PET、PEEK、PI、PPS、PBT、PENのグループから選ばれていることを特徴とする、フィルム構造体。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項において、前記繊維が18μmから100μm、好ましくは、18μmから80μm、さらに好ましくは18μmから32μmの直径を有し、および/または布帛の目開きにより、表面積の20%から95%、好ましくは、40%から60%に開口が形成されていること特徴とする、フィルム構造体。
【請求項8】
請求項7において、メッシュの目開きのメッシュ幅が30μmから300μm、好ましくは、50μmから70μmの範囲にあり、および/またはメッシュの目開きの面積が、800μmから80,000μmの範囲内であることを特徴とする、フィルム構造体。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項において、前記導電性の繊維が、ポリマー芯の上に、金属被覆をコーティングした繊維を含むことを特徴とする、フィルム構造体。
【請求項10】
請求項9において、前記金属被覆がNi、Ti、Mo、W、Cr、Cu、Ag、Al、Auの金属グループから選択されていることを特徴とするフィルム構造体。
【請求項11】
請求項9または10において、前記金属被覆の厚さが、100nmから10μmの範囲、とりわけ、200nmから3μmの範囲にあることを特徴とする、フィルム構造体。
【請求項12】
請求項1から8のいずれか一項において、前記布帛が、金属被覆でコーティングされていることを特徴とする、フィルム構造体。
【請求項13】
請求項12において、前記金属被覆が、スパッタリング、特に、プラズマスパッタリング、蒸着、および/または、湿式化学法、特に、電解により、布帛の上にコーティングされていることを特徴とする、フィルム構造体。
【請求項14】
請求項1から13のいずれか一項において、前記布帛のシート抵抗が50Ω/sq未満、好ましくは20Ω/sq未満、さらに好ましくは10Ω/sq未満であることを特徴とする、フィルム構造体。
【請求項15】
請求項1から14のいずれか一項において、前記絶縁層および/または活性層がスクリーン印刷により、または薄い層として、あるいはその他の方法でコーティングされていることを特徴とする、フィルム構造体。
【請求項16】
請求項15において、前記絶縁層および/または活性層が多層にコーティングされていることを特徴とする、フィルム構造体。
【請求項17】
請求項1から16のいずれか一項において、両面で光を出すELフィルム構造体になる様、前記第一および第二の電極層が、半透明の布帛層として構成されていることを特徴とする、フィルム構造体。
【請求項18】
請求項1から16のいずれか一項において、前記対向電極がポリマーフィルム材を有していることを特徴とする、フィルム構造体。
【請求項19】
請求項18において、前記ポリマーフィルム材が、厚さ30μmから100μm、好ましくは、40μmから80μm、さらに好ましくは、40μmから600μmの範囲に設定されていることを特徴とする、フィルム構造体。
【請求項20】
請求項18または19において、前記のポリマーフィルム材から構成された対向電極が140℃から180℃の温度範囲で安定となるように加熱安定化されていることを特徴とする、フィルム構造体。
【請求項21】
請求項18から20のいずれか一項において、前記ポリマーフィルム材から構成された対向電極が金属被覆を有することを特徴とする、フィルム構造体。
【請求項22】
請求項21において、前記対向電極の金属被覆がNi、Ti、Mo、W、Cr、Cu、Ag、Al、Auの金属群から選択されていることを特徴とする、フィルム構造体。
【請求項23】
請求項22において、前記金属被覆層の厚さが100nmから10μmの範囲、特に、200nmから3μmの範囲であることを特徴とする、フィルム構造体。
【請求項24】
請求項22または23において、前記金属被覆がスパッタリング、特に、プラズスパッタリングで、蒸着、および/または、電解を含めた湿式化学プロセスにより形成されていることを特徴とする、フィルム構造体。
【請求項25】
請求項18から24のいずれか一項において、金属被覆され、加熱安定化したポリマーフィルムである前記対向電極が、20Ω/sq未満、好ましくは、5Ω/sq未満、さらに好ましくは、2Ω/sq未満の表面を構成することを特徴とする、フィルム構造体。
【請求項26】
請求項1から25のいずれか一項において、前記第一と第二の電極層が、ITOフィリーであることを特徴とする、フィルム構造体。
【請求項27】
光電子フィルム構造体を製造する方法、特に、請求項1から26のいずれか一項に記載の光電子フィルム構造体を製造する方法であって
―少なくとも部分的に、透明で非導電性のポリマー層に、導電性の繊維を含む布帛を埋め込み、TCOフリー、とりわけ、ITOフリーの第一電極層を形成し、
―この第一電極層の上に、特にスクリーン印刷により、EL材の活性層を形成し、
―活性層の上に、特にスクリーン印刷により、絶縁層を形成し、
―絶縁層の上に、第一の電極層に対する対向電極となる第二の電極層を形成することを特徴とする方法。
【請求項28】
請求項27において、前記第2の電極層を形成するにあたり、導電性の繊維を含む布帛を絶縁層に少なくとも部分的に入れて、第二の電極層の繊維を、絶縁層の材料が未だ固まっていない、または乾燥していない絶縁層の材料内に入り込ませることを特徴とする、方法。
【請求項29】
請求項27において、前記第二の電極層が、金属被覆工程、特に,プラズマスパッタリング、または蒸着により、乾燥した絶縁層の上に形成することを特徴とする、方法。
【請求項30】
請求項27から29のいずれか一項において、前記活性層および/または絶縁層を、特に個々の層のコーティングと硬化および/または乾燥とを連続的に行うことにより、多層にコーティングすることを特徴とする、方法。
【請求項31】
請求項27から30のいずれか一項において、前記第一の電極層を成形する、特に第一の電極層を、平らでない面に合わせて成形することを特徴とする、方法。
【請求項32】
請求項27から31のいずれか一項において、前記第一および/または第二の電極層の電気伝導率および/または透過性および/または色を調整することを特徴とする、方法。
【請求項33】
請求項27または29において、前記第一及び第二の絶縁層を、対向電極となるよう、加熱安定化および金属被覆されたポリマーフィルムの上に、特に、連続的で切れ目のないコーティング工程により形成し、さらに、その上に、活性層と導電性の繊維を含む布帛層を形成することを特徴とする、方法。
【請求項34】
請求項33において、導電性の繊維を含む布帛層を形成するにあたり、繊維を、少なくとも部分的に、硬化または乾燥前の活性層中に埋め込むことを特徴とする方法。
【請求項35】
請求項33または34において、前記活性層を、特に、個々の層のコーティングと、硬化および/または乾燥工程とを連続的に実施して、多層にコーティングすることを特徴とする、方法。
【請求項36】
請求項1から35のいずれか一項に記載の光電子フィルム構造体の使用であって、消費者用および/または家庭用電子機器、ならびに建物、見本市、建築業、保安用および/または航空輸送を含む輸送業務用の光および/またはメッセージ装置の生産のための使用。

【図1a】
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【図1b】
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【図2】
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【図3a】
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【図3b】
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【公表番号】特表2012−524384(P2012−524384A)
【公表日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−506386(P2012−506386)
【出願日】平成22年4月20日(2010.4.20)
【国際出願番号】PCT/EP2010/002410
【国際公開番号】WO2010/121785
【国際公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【出願人】(502369414)ゼファー・アクチエンゲゼルシャフト (7)
【氏名又は名称原語表記】SEFAR AG
【Fターム(参考)】