説明

光電気素子の導電性ポリマー組成物

【解決手段】 −5.7eV以上のHOMO準位を有するポリマーと、−4.3eV未満のLUMO準位を有するドーパントとを含有する導電性ポリマー組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性ポリマー組成物、及び導電性ポリマー組成物を含有する光電気素子に関する。
【背景技術】
【0002】
ある種の光電気素子では、光を発する又は検知するために有機材料を用いる。このような素子は、ポリ(p−フェニレンビニレン)(PPV)又はポリフルオレンのフィルム等からなる有機発光層が、該有機層に負電荷担体(電子)を注入するカソードと正電荷担体(正孔)を注入するアノードとの間に挟まれた基本構造を有する。これら電子と正孔が有機層中で結合して光子が発生する。WO90/13148(特許文献1)では有機発光材料としてポリマーを用いている。米国特許第4539507号(特許文献2)では有機発光材料として(8−ヒドロキシキノリン)アルミニウム(Alq3)等の公知の小分子材料を用いている。実用的な素子では電極の一方が透明であり、そこから光子が素子外部に放出される。
【0003】
典型的な有機発光素子(OLED)は、ガラス又はプラスチックの基板をインジウムスズ酸化物(ITO)等の透明アノードで被覆し、この第1電極を少なくとも1種の有機電界発光材料からなる薄膜層で被覆し、最後にこの有機電界発光材料層をカソードで被覆して得られる。カソードは通常は金属又は合金からなり、アルミニウム等の単層や、カルシウムとアルミニウム等の複数層からなるものであってよい。
【0004】
素子を駆動すると、アノードから素子に正孔が注入され、カソードから素子に電子が注入される。正孔と電子が有機電界発光層中で結合して励起子を形成し、該励起子が放射崩壊し光を発する。
【0005】
このような素子はディスプレイでの利用に非常に有望であるが、幾つか重要な課題がある。課題の一つは、素子の高効率化、特に外部電力効率及び外部量子効率として測定される効率の向上である。更には、ピーク効率が得られる電圧の最適化(例えば低減)、素子の電圧特性の長期安定化、素子の長寿命化が課題となっている。
【0006】
そのため、これら課題の1以上を解決する目的で、上述した素子の基本構造に多くの改良が加えられてきた。
【0007】
改良の1つとして、導電性ポリマー層を有機発光層と一方の電極との間に形成する方法がある。この導電性ポリマー層を形成することにより、素子のターンオン電圧、低電圧での輝度、効率、寿命、及び安定性を改善できることが見出されている。これらの利益を得るために、通常、導電性ポリマー層は10オーム/スクエア未満のシート抵抗を有してよく、該ポリマー層にドープすることで導電率を制御できる。素子の配置によっては、導電率が高すぎないほうが有利な場合がある。例えば、素子に複数の電極を形成し、全ての電極上に連続した導電性ポリマー層が1層のみ延在する場合は、導電率が高すぎると電極間で側方伝導や短絡が起こり得る。
【0008】
適当な仕事関数を示し、正孔や電子の注入を促進し、且つ/或いは正孔や電子を遮蔽するように、導電性ポリマー層を選択してもよい。ここで2つの鍵となる電気的特徴がある。ポリマー組成物の全体導電率と仕事関数である。実用素子として十分な寿命を得るためには、組成物の安定性及び素子内の他の成分との反応性も重要である。製造の容易さの点では組成物の加工性が重要である。
【0009】
アノードと有機発光層の間の正孔注入層に好適に用いられる導電性ポリマーの一例として、ポリスチレンスルホン酸をドープしたポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT−PSS)がある(欧州特許第0686662号(特許文献3)参照)。この組成物は4.8eVを僅かに超える中間的なイオン化ポテンシャル(アノードのイオン化ポテンシャルと発光体のイオン化ポテンシャルとの中間)を有し、光電気素子の隣接層中で、アノードから注入された正孔が材料(有機発光材料、正孔輸送材料等)のHOMO準位に到達するよう作用する。より堅牢な層を得るために、PEDOT−PSSはエポキシ−シランを含有し、架橋構造を形成してもよい。通常、素子内でのPEDOT/PSS層の厚さは50nm程度である。この層の伝導性は厚さによって変化する。
【0010】
PEDOT:PSSは水溶性であり、そのため溶解処理可能である。ITOアノードと発光層の間にPEDOT:PSSを配置すると、ITOから発光層への正孔の注入が増加し、ITOアノード表面が平坦化されて局所的な短絡電流が抑制され、アノードの全表面に渡って電荷注入のエネルギー差が効果的に均一化される。
【0011】
実用に際しては、過剰のPSSを用いることで素子性能(特に寿命)を改善できることが分かっている。更に、過剰のPSSを用いるとインクジェット印刷が容易な組成物が得られる。「過剰のPSS」は、溶液からPEDOTが放出されてしまうのを防ぐのに必要な量よりも多い量のPSSを意味する。即ち、素子を容易に製造するため、及びより優れた性能及び寿命を有する素子を製造するために、過剰のPSSの使用が有利なのは明白である。しかしながら、素子の性能及び寿命を更に改善すること、並びに製造工程を更に容易且つ安価にすることが常に望まれている。従って、過剰のPSSを含むPEDOT−PSS系の代替物が求められている。
【0012】
理論に拘束されるものではないが、大過剰のPSSを添加すると組成物が非常に強い酸性を示すため、上記PEDOT−PSS系を用いた素子の寿命は限られる。これにより幾つかの問題が生じる。例えば、高濃度の強酸をITOに接触させると、ITOが食刻され、インジウム、スズ、及び酸素成分がPEDOTへと放出され、上を覆う発光ポリマーが劣化する場合がある。更に、この酸は発光ポリマーと相互作用し、素子性能に有害な電荷分離を引き起こすことがある。
【0013】
更に、PEDOT−PSS系は水溶液系であるという問題がある。素子の全ての有機層を有機溶媒から形成できるよう、有機溶媒系が開発できれば有益である。
【0014】
幾つかの先行技術文献が、小分子正孔輸送体をテトラシアノキノジメタン(TCNQ)又はテトラフルオロテトラシアノキノジメタン(F4TCNQ)と同時蒸着し、導電性正孔輸送層を形成する可能性について開示している。例えば、Appl. Phys. Lett., vol 82, no 26, p 4815、Appl. Phys. Lett., vol 79, no 24, p 4040、Appl. Phys. Lett., vol 73, no 22, p 3202、Organic Electronics, 3 (2002), p 53、Organic Electronics, 2 (2001), p 97、J. Appl. Phys., vol 94, no 1, p 359、J. Appl. Phys., vol 87, no 9, p 4340、J. Org. Chem. 2002, 67, p 8114(非特許文献1〜8)参照。しかしながら、特に大面積の蒸着が必要な場合は、これら材料の蒸着には多大な時間と費用を要する。加えて、このような方法では、パターン層を形成するためにフォトリソグラフィー等の更なる工程が必要となり、更に時間と費用を要する。
【0015】
米国特許第6835803号(特許文献4)は、ドーパント部分と誘導体化した半導体ポリマーを含有する組成物の可能性について開示している。
【0016】
J. Appl. Phys. 97, 103705 (2005)(非特許文献9)は、テトラフルオロテトラシアノキノジメタンをポリ(9,9−ジオクチルフルオレニル−2,7−ジイル)に電気的にドープする溶液法を開示している。
【0017】
上記の観点から、上述した系の代替物、好ましくはより優れた素子性能、寿命、及び製造容易性が得られる代替物の開発が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】WO90/13148
【特許文献2】米国特許第4539507号
【特許文献3】欧州特許第0686662号
【特許文献4】米国特許第6835803号
【非特許文献】
【0019】
【非特許文献1】Appl. Phys. Lett., vol 82, no 26, p 4815
【非特許文献2】Appl. Phys. Lett., vol 79, no 24, p 4040
【非特許文献3】Appl. Phys. Lett., vol 73, no 22, p 3202
【非特許文献4】Organic Electronics, 3 (2002), p 53
【非特許文献5】Organic Electronics, 2 (2001), p 97
【非特許文献6】J. Appl. Phys., vol 94, no 1, p 359
【非特許文献7】J. Appl. Phys., vol 87, no 9, p 4340
【非特許文献8】J. Org. Chem. 2002, 67, p 8114
【非特許文献9】J. Appl. Phys. 97, 103705 (2005)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
本発明の目的は、上記概説した問題のうち1つ以上を解決することである。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明の第1の態様によれば、−5.7eV以上のHOMO準位を有するポリマーと、−4.3eV未満のLUMO準位を有するドーパントとを含有する導電性ポリマー組成物が提供される。
【0022】
これら負の数に関して誤解を避けるために説明すると、「−5.7eV以上」の範囲は−5.6eVを包含し、−5.8eVを包含しない。「−4.3eV未満」の範囲は−4.4eVを包含し、−4.2eVを包含しない。
【0023】
上記ポリマーのHOMOは−5.5eV以上、−5.3eV以上、又は−5.0eV以上であるのが好ましい。
【0024】
HOMO準位が−5.7eV以上のポリマーとLUMO準位が−4.3eV未満のドーパントとの組み合わせを用いることで、先行技術の組成物よりも優れた正孔輸送特性及び正孔注入特性を有する導電性組成物が得られることを発見した。理論に拘束されるものではないが、−5.7eV以上のHOMO準位を有するポリマーは優れた正孔輸送特性及び正孔注入特性を提供し、一方ドーパントはこのようなポリマーからの電子を迅速に受容し、ポリマー中にフリーの正孔を形成するために−4.3eV未満のLUMO準位を有する必要があると考えられる。従って、良好な正孔輸送及び正孔注入を達成するためには、−5.7eV以上のHOMO準位を有するポリマーと−4.3eV未満のLUMO準位を有するドーパントとの組み合わせが必要である。これは、例えば、HOMO準位が−5.8eVのポリ(9,9−ジオクチルフルオレニル−2,7−ジイル)を含有するJ. Appl. Phys. 97, 103705 (2005)に記載の組成物とは対照的である。更に、上記機能の組み合わせは米国特許第6835803号には開示されていない。
【0025】
ポリマーのHOMOは、好ましくは上記ドーパントのLUMOよりも高い(即ちより負ではない(less negative))。この場合、ポリマーのHOMOからドーパントのLUMOへの電子移動がより改善される。しかしながら、ポリマーのHOMOがドーパントのLUMOよりも僅かだけ低い場合も、電荷移動は観察される。
【0026】
ポリマーのHOMOは、好ましくは4.6〜5.7eV、より好ましくは4.6〜5.5eVである。この場合、アノードから隣接する半導電正孔輸送体及び/又は発光体への正孔注入が良好となる。
【0027】
ドーパントは、特許文献4で言及されているプロトン酸ドープ剤等のイオン種ではなく、電荷中性ドーパントであることが好ましく、任意に置換されたテトラシアノキノジメタン(TCNQ)が最も好ましい。既に述べたとおり、高濃度の酸をITOに接触させると、ITOが食刻され、インジウム、スズ、及び酸素成分が放出され、上を覆う発光ポリマーが劣化する場合がある。更に、この酸は発光ポリマーと相互作用し、素子性能に有害な電荷分離を引き起こすことがある。従ってTCNQ等の電荷中性ドーパントが好ましい。
【0028】
導電性正孔輸送層を形成するためにTCNQを小分子正孔輸送体と同時蒸着できること、並びにTCNQに基づく酸化還元基で誘導体化して半導体ポリマーが得られることは以前から知られているが、本発明者らは、意外にも、−5.7eV以上のHOMO準位を有するポリマーにTCNQ(又は−4.3eV未満のLUMO準位を有する他のドーパント)をドープすることで、有機発光素子で優れた正孔注入層として使用できる導電性ポリマー組成物が得られることを発見した。ポリマーは酸化され、正孔輸送体として作用するポリマーラジカルカチオンを生成する。TCNQはイオン化し、対イオンとしてポリマーの電荷を安定化するアニオンを生成する。このようなポリマー組成物は、特許文献4に開示のイオン種をドープしたポリマーとは異なる。更に、本発明の組成物は溶解処理可能であり、そのため安価で使用が容易であり、インクジェット印刷等で直接書き込んでパターン層を形成することができ、公知の同時蒸着小分子層よりも有利である。
【0029】
上記任意に置換されたTCNQは、好ましくはテトラフルオロテトラシアノキノジメタン(F4TCNQ)等のフッ素化誘導体である。この誘導体は、ポリマーにドープして導電性を改善するために、特にポリマーからの電子の受容に優れていることを発見した。TCNQ及びF4TCNQのLUMO準位は、それぞれ−5.07eV及び−5.46eVである。これらは以下の例で詳細に説明する方法で測定した。この点において、出願人は異なる測定方法を用いると異なるドーパントLUMO準位が得られると指摘するが、誤解を避けるために、本願で用いるドーパントLUMO準位は以下の例で説明する方法によって得たものである。
【0030】
ドーパントのLUMOが深いほど、p−ドーピングの駆動力が大きくなると考えられる。好ましい一実施形態においては、ドーパントのLUMO準位は−5.0eV未満、より好ましくは−5.2eV未満、最も好ましくは−5.3eV未満である。
【0031】
本発明において、他の適当なドーパントとしては、ヘキサクロロアンチモン酸トリス(4−ブロモフェニル)アミニウム(TBAHA)、遷移金属塩化物p−ドーパント(FeCl、SbCl等)、ヨウ素等が挙げられる。
【0032】
好ましい一実施形態において、ドーパントのLUMO準位は、測定方法に関わらず、TCNQのLUMO準位よりも0.2eV以上(好ましくは0.3eV以上)小さい。
【0033】
ドーパントは1つ以上の可溶性置換基を有するのが好ましい。この場合、ポリマーと共にドーパントをより容易に溶解処理できる。可溶性置換基は、ドーパントの有機溶媒への溶解性を向上させるC1−20のアルキル又はアルコキシ等の基であってよい。
【0034】
ポリマー自体が電荷輸送ポリマーであることが好ましく、正孔輸送ポリマーであることが最も好ましい。ポリマーにドープする場合、組成物は導電性である必要がある。組成物の導電率は、好ましくは10−8〜10−1S/cmであり、より好ましくは10−6〜10−2S/cmである。しかしながら、ドーパントに対するポリマーの比率を変えたり、異なるポリマー及び/又はドーパントを用いることによって、特定の使用に適した導電率の値に応じて、組成物の導電率を容易に変えることが可能である。
【0035】
ポリマーは共役しているのが好ましい。該ポリマーはトリアリールアミン繰り返し単位及び/又はチオフェン繰り返し単位を含んでよい。トリアリールアミン繰り返し単位を含むポリマーは良好な正孔輸送体であることを発見した。ポリマーは、例えばトリアリールアミン繰り返し単位及び他の繰り返し単位(フルオレン誘導体等)を含むコポリマーであってもよい。
【0036】
トリアリールアミン含有共役ポリマーにTCNQを完全にドープすることで、優れた材料特性が得られる。これら材料は溶解処理可能であり、素子内で優れた伝導及び電荷注入を示し、素子性能を改善する。
【0037】
トリアリールアミン繰り返し単位は、下記式1〜6:
【化1】

(式中、X、Y、A、B、C、及びDはそれぞれ独立にH及び置換基から選ばれる。)により表される任意に置換された繰り返し単位から選ばれるのが特に好ましい。より好ましくは、X、Y、A、B、C、及びDのうち1つ以上が、それぞれ独立に、任意に置換された分岐状又は直鎖状のアルキル基、アリール基、パーフルオロアルキル基、チオアルキル基、シアノ基、アルコキシ基、ヘテロアリール基、アルキルアリール基、及びアリールアルキル基からなる群から選ばれる。最も好ましくは、X、Y、A、及びBがC1−10アルキルである。このポリマーの骨格鎖中、芳香環は直接結合又は架橋原子(特に酸素等の架橋ヘテロ原子)によって連結されてよい。
【0038】
トリアリールアミン繰り返し単位は、下記式6a:
【化2】

(式中、Hetはヘテロアリール基を表す。)により表される任意に置換された繰り返し単位であることも特に好ましい。
【0039】
他の好ましい繰り返し単位は、下記一般式(6aa):
【化3】

(式中、Ar、Ar、Ar、Ar、及びArはそれぞれ独立にアリール環、ヘテロアリール環、又はその縮合誘導体を表し、Xは任意のスペーサー基を表す。)により表される。
【0040】
ポリマーはチオフェン単位を含んでよく、該チオフェン単位は縮合チオフェン又は非縮合チオフェンからなる単位であってよい。チオフェン単位は置換されていても無置換であってもよい。置換基としては可溶性置換基、特にアルキル基又はアルコキシ基が好ましい。チオフェン単位は縮合していても非縮合であってもよい。チオフェン単位は好ましくは非縮合である。チオフェン単位を含むポリマーは、ポリ(3−ヘキシルチオフェン)(P3HT)等のホモポリマー、又はポリ(9,9’−ジオクチルフルオレン−alt−ビチオフェン)(F8T2)等のコポリマーであってよい。このようなポリマーは−5.0eVを超えるHOMO準位を示し得る。
【0041】
アミン繰り返し単位1〜6、6a、及び6aaのうち1以上を含むコポリマーは、更にアリーレン繰り返し単位(特に、J. Appl. Phys. 1996, 79, 934に開示されているような1,4−フェニレン繰り返し単位、欧州特許第0842208号に開示されているようなフルオレン繰り返し単位、Macromolecules 2000, 33(6), 2016-2020等に開示されているようなインデノフルオレン繰り返し単位、及び欧州特許第0707020号等に開示されているようなスピロフルオレン繰り返し単位)から選ばれる第1繰り返し単位を含むのが好ましい。これら繰り返し単位はそれぞれ任意に置換されていてよい。置換基の例としては、C1−20アルキル又はアルコキシ等の可溶性基;フッ素、ニトロ、シアノ等の電子吸引基;ポリマーのガラス転移温度(Tg)を上昇させる置換基等が挙げられる。
【0042】
特に好ましいコポリマーは、下記式6b:
【化4】

(式中、R及びRはそれぞれ独立に水素、並びに任意に置換されたアルキル、アルコキシ、アリール、アリールアルキル、ヘテロアリール、及びヘテロアリールアルキルから選ばれる。)により表される第1繰り返し単位を含む。R及びRの少なくとも1つが任意に置換されたC−C20アルキル又はアリール基を含むのがより好ましい。
【0043】
任意に置換されたTCNQドーパントをポリマーと混合して混合物としてもよい。一実施形態においては、ポリマーを形成する重合に先立って、ドーパントをモノマーと混合する。他の実施形態では、ポリマーを合成し、その後ドーパントを混合する。
【0044】
このような方法では、TCNQドーパントがポリマー中に十分に分散した良好な混合物を得る際に問題が生じる。特に、ポリマーと任意に置換されたTCNQドーパントの両方に適した溶媒を見出すのが困難である。本発明者らは、ハロゲン化溶媒(塩素化ベンゼン誘導体、クロロホルム等)、シアノ誘導体、モノ−又はポリ−アルキル化ベンゼン誘導体(トルエン、キシレン等)、複素芳香族溶媒(チオフェン等)等の溶媒が適していることを発見した。
【0045】
任意に置換されたTCNQドーパントとポリマーの混合物を調製する方法の代案として、任意に置換されたTCNQドーパントをポリマーに化学結合させてよい。この場合、両方の成分に適した溶媒を見出す必要があるという問題を回避でき、ポリマー中でのドーパントの分散をより制御しやすい。これにより組成物は容易に溶解処理できる。更に、ポリマーとドーパントがより密に関与し、ポリマーとドーパントとの間の電荷移動が増加し、そのため導電率を改善することができる。加えて、ドーパントをポリマーに結合させると、素子の使用中にドーパントの拡散が抑えられる。ドーパント対イオンが導電性ポリマーイオンを安定化する位置に残存すると有利である。これが伝導を補助する。
【0046】
ドーパントはポリマー骨格鎖よりもペンダント基に存在するのが好ましい。このような配置を用いると、優れた電荷輸送及び正孔注入が得られるような適当な電子エネルギー準位を有するポリマーを選ぶことができるため、有利である。ドーパントをポリマー骨格鎖に導入すると、ポリマーの電子エネルギー準位が過度に変化して電荷輸送が妨げられたり電荷注入が低下したりするが、対してドーパントをペンダント基中に供すると、これらエネルギー準位に過度に影響を及ぼすことがないと考えられる。
【0047】
ポリマーは、好ましくは架橋してマトリクスを形成し得る。架橋マトリクスは、素子内での好ましくない化学種の拡散を抑制する点で有利である。更に、架橋マトリクスは混合物中でのドーパントの拡散を抑制する点でも有利である。架橋することによって上記材料の層をより堅牢にすることができ、この層の上には他の層を層同士が溶解したり混合することなく積層させることができる。
【0048】
本発明の他の態様によれば、上記導電性ポリマー組成物を含む電気素子(好ましくは光電子素子)が提供される。この電気素子は、アノード及びカソードを有し、更に該アノードとカソードの間に有機半導電層を有するのが好ましい。導電性ポリマー組成物をアノードと有機半導電層の間の層に導入してよい。有機半導電層は好ましくは発光性である。アノードはITOを含有するのが好ましい。
【0049】
有機半導電層は、正孔輸送体、電子輸送体、及び発光材料のうち1つ以上を含有してよい。アノードとカソードの間に1層以上の更なる有機半導電層を配置してもよい。例えば、導電性ポリマーの層と発光層の間に正孔輸送層を配置するのが有利である。特に好ましい構造では、発光層中の正孔輸送材料及び/又は正孔輸送層が、導電性ポリマー層に用いたものと同一のポリマーを含有する。この場合、導電層から半導電領域への電荷注入を改善するのに適した、良好な電子エネルギー準位調和が得られる。
【0050】
上記のとおり、本発明の導電性ポリマー組成物を含む層は、溶液から組成物を積層させて形成するのが好ましい。素子が複数の層(特に複数の有機層)を有し、且つその一層以上を溶解処理で形成する場合は、(a)溶解処理層の形成に用いる溶媒が下層を溶解しないこと、及び(b)溶解処理層自体が次の層の形成時に溶解しないことを確実にする必要がある。
【0051】
下層の溶解を防ぐ方法としては、下層を架橋して不溶化する方法、下層をアニール処理して溶解しにくくする方法(架橋する必要はない)、下層を溶解しないように次層の溶媒を選択する方法等が挙げられる。即ち、例えば、本発明の導電性ポリマー組成物を含む層は架橋性基を有してよく、組成物を含む溶液を積層した後に該架橋性基を架橋してよい。架橋性基を組成物に混合してもよく、或いはポリマーの側基として導入してもよい。
【0052】
或いは、溶解を避けるために、多層素子の1以上の層を非溶媒法で形成してもよい。このような方法の例としては、加熱蒸着、材料を担持するドナーシートからの熱転写、ラミネーション等が挙げられる。例えば、本発明の導電性ポリマー組成物で正孔注入層を形成した場合、基板上に正孔輸送材料又は電界発光材料をスピンコートしてその次の正孔輸送層又は電界発光層を形成し、得られたフィルムから溶媒を蒸発させ、基板からフィルムを剥離し、このフィルムを正孔注入層上に重ねてよい。
【0053】
本発明の他の態様によれば、電荷中性ドーパントをドープした共役有機材料からなる導電層を有する電子素子(OLED、光起電力(PV)素子、電界効果トランジスタ(FET)等)が提供される。この電子素子は、好ましくは該導電層が正孔輸送層として機能するOLEDである。
【0054】
本発明の他の態様によれば、アノード及びカソード、アノードとカソードの間にポリマーを含む有機半導電層を有し、更にアノードとカソードの間にポリマー及びドーパントを含有する導電性ポリマー組成物の層を有し、導電性ポリマー組成物中のポリマーと有機半導電層中のポリマーとが同じ繰り返し単位を含む電気素子(好ましくは光電子素子)が提供される。
【0055】
導電性ポリマー組成物層では、ドーパントが組成物バルク中に均一に分布していてよい。しかしながら、濃度勾配を有する層や、表面のドーパント濃度を高くしその反対側の表面のドーパント濃度を低くした層のように、ドーパントを不均一に分布することも好都合である。例えば、アノードからの正孔注入を改善するために、この層のアノードとの接触面でのドーパント濃度を高くしてよい。更に、その反対側の表面でのドーパント濃度が十分に低い場合、この表面からの発光の消光が最小限に抑えられる。従って、単層が、効果的な正孔注入/輸送と電界発光の機能を共に有していてよい。
【0056】
半導電層中のポリマーと導電層中のポリマーとは、実質的に同じものであることが好ましい。これらはそれ自体が電荷輸送性を示すポリマー(例えば、半導電層に正孔を注入するための導電性ポリマー層をアノードと半導電層の間に形成する場合は、正孔輸送ポリマー)であるのが最も好ましい。導電層及び半導電層に類似のポリマーを用いることによって、良好な電子エネルギー準位の調和が得られ、導電層から半導電層への電荷注入が改善される。これらポリマー及びドーパントは、好ましくは本発明の第1の態様に関して述べたものである。ドーパントは、本発明の第1の態様に関して述べたもののように、電子受容能を有するのが好ましい。
【0057】
本発明の他の態様によれば、上記電気素子を製造する方法であって、例えばスピンコーティング又はインクジェット印刷によって、上記導電性ポリマー組成物を溶液から積層させる方法が提供される。この組成物を積層させた後、ポリマーを架橋するために組成物を加熱してもよい。この加熱ステップは上層の積層に先立って行ってよい。導電性ポリマー層上に半導体ポリマーを積層させる際には、導電性ポリマーの積層に用いた溶媒と同じ溶媒から、該半導体ポリマーを積層させるのが好ましい。素子の異なる有機層に同じ溶媒を用いることで、製造工程を簡略化できる。これらの層には非水溶媒を用いることができる。
【0058】
本発明の他の態様によれば、上記組成物を溶液から積層させるステップを含む、フィルム(好ましくは電子素子の層としてのフィルム)の形成方法が提供される。
【0059】
公知の導電性ポリマー組成物には過剰の強酸が用いられてきたが、本発明はそれに替わる方法を提供する。特に本発明の実施形態では、先行技術で公知である過剰量PSSを用いたPEDOT−PSS組成の代替物を提供する。
【0060】
本発明の導電性ポリマー組成物は、高導電化することで、電気素子(特に光電子素子)の正孔注入材料又はアノードとして使用できると考えられる。好ましい光電子素子は有機発光素子(OLED)を含む。本発明の導電性ポリマー組成物はコンデンサにも使用でき、またレンズの帯電防止被膜としても利用できると予想される。
【0061】
以下、本発明の実施形態を添付図面を参照して説明するが、下記説明は単なる例示にすぎない。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の一実施形態による有機発光素子を示す図である。
【図2】F4TCNQをドープしたP3HT薄膜の吸収スペクトルを示す図である。
【図3】本発明の組成物の導電率を示す図である。
【図4a】ダイオード構造におけるドープP3HT薄膜及び非ドープP3HT薄膜の正孔電流を示す図である。
【図4b】ダイオード構造におけるドープPFB薄膜及び非ドープPFB薄膜の正孔電流を示す図である。
【図4c】ダイオード構造におけるドープTFB薄膜及び非ドープTFB薄膜の正孔電流を示す図である。
【図4d】ダイオード構造におけるドープF8BT薄膜及び非ドープF8BT薄膜の正孔電流を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0063】
図1に示す素子は、透明なガラス又はプラスチックからなる基板1、インジウムスズ酸化物からなるアノード2、及びカソード4を有する。アノード2とカソード4の間には電界発光層3が形成される。
【0064】
アノード2とカソード3の間に、電荷輸送層、電荷注入層、電荷ブロック層等の更なる層を配置してもよい。
【0065】
本発明の一実施形態によれば、アノード2と電界発光層3の間に導電性ポリマー組成物からなる導電性正孔注入層を配置し、アノードから該層又は半導体ポリマー層への正孔注入を補助する。
【0066】
正孔注入層は、適当な溶媒(トルエン等)中、フルオレンとトリアリールアミン又はチオフェンとのコポリマーをF4TCNQと混合して形成できる。得られた組成物をスピンコート又はインクジェット印刷して、アノード上に層を形成してよい。
【0067】
アノード2と電界発光層3の間に配置される正孔注入層のHOMO準位は5.7eV以下、より好ましくは4.6〜5.5eV程度である。
【0068】
電界発光層3とカソード4の間に電子輸送層を配置する場合は、電子輸送層のLUMO準位は好ましくは3〜3.5eV程度である。
【0069】
電界発光層3は電界発光材料のみからなるものであっても、電界発光材料と1以上の更なる材料の組み合わせからなるものであってもよい。特に、WO99/48160等に開示されているように、電界発光材料を正孔輸送材料及び/又は電子輸送材料と混合してもよい。或いは電界発光材料を電荷輸送材料に共有結合させてもよい。
【0070】
カソード4の材料は、電界発光層に電子を注入し得る仕事関数を有する材料から選択される。カソード材料を選択する際には、カソードと電界発光材料が不都合な相互作用を起こす可能性といった他の要因も考慮する。カソードはアルミニウム層のような単一材料からなるものであってよい。或いは、カソードは複数の金属を含有してもよく、例えばWO98/10621に開示されているようなカルシウムとアルミニウムの二層、WO98/57381、Appl. Phys. Lett. 2002, 81(4), 634、及びWO02/84759に開示されているバリウム元素、又は電子注入を補助する誘電材料(WO00/48258に開示されているフッ化リチウム、Appl. Phys. Lett. 2001, 79(5), 2001に開示されているフッ化バリウム等)の薄層等を含んでよい。効果的に電子を素子に注入するために、カソードの仕事関数は、好ましくは3.5eV未満、より好ましくは3.2eV未満、最も好ましくは3eV未満である。
【0071】
光学的素子は水分及び酸素の影響を受けやすい傾向がある。従って、水分及び酸素が素子内部に侵入するのを防ぐために、基板は良好な遮断特性を有することが好ましい。基板は通常はガラスからなるが、特に柔軟な素子を所望する場合等は代替基板を用いてよい。例えば、基板は米国特許第6268695号に記載されているようにプラスチックを含有してよく、該文献はプラスチックと障壁層を交互に用いた基板を開示している。また、欧州特許第0949850号に開示されているように、基板は薄ガラスとプラスチックの積層物であってもよい。
【0072】
水分及び酸素の侵入を防ぐために、カプセル材料(図示せず)を用いて素子を封入するのが好ましい。適当なカプセル材料としては、ガラス板や適当な遮断特性を有するフィルム(WO01/81649に開示されているようなポリマーと誘電体の交互積層物、WO01/19142に開示されているような密閉容器等)が挙げられる。基板やカプセル材料を透過して侵入する大気中の水分及び/又は酸素を吸収するために、基板とカプセル材料の間にゲッタ材料を配置してもよい。
【0073】
実用素子においては、光が吸収(光応答性素子の場合)又は放出(OLEDの場合)されるように、電極のうち少なくとも一方を半透明とする。アノードが透明である場合、典型的にはインジウムスズ酸化物を含有する。透明カソードの例はGB2348316等に開示されている。図1の実施形態に示す素子は、まずアノードを基板上に形成し、その上に電界発光層及びカソードを設置して得られる。しかしながら、本発明の素子は、まずカソードを基板上に形成し、その上に電界発光層及びアノードを設置しても得られる。
【0074】
発光体及び/又は電荷輸送体として、様々なポリマーが有用である。その例について以下に述べる。以下の繰り返し単位は、ホモポリマー、ポリマーブレンド、及び/又はコポリマーに使用できる。本発明の実施形態による導電性ポリマー組成物には、それらのいかなる組み合わせも使用できると考えられる。特に、所望の導電率、HOMO、及びLUMOを得るために、素子に用いる特定の発光層及び電荷輸送層に関連して、本発明の導電性ポリマー層を調整してよい。
【0075】
ポリマーは、アリーレン繰り返し単位、特にJ. Appl. Phys. 1996, 79, 934に開示されているような1,4−フェニレン繰り返し単位;欧州特許第0842208号に開示されているようなフルオレン繰り返し単位;Macromolecules 2000, 33(6), 2016-2020等に開示されているようなインデノフルオレン繰り返し単位;及び欧州特許第0707020号等に開示されているようなスピロフルオレン繰り返し単位から選ばれる第1繰り返し単位を含有してよい。これら繰り返し単位はそれぞれ任意に置換されていてよい。置換基の例としては、C1−20アルキル又はアルコキシ等の可溶性基;フッ素、ニトロ、シアノ等の電子吸引基;ポリマーのガラス転移温度(Tg)を上昇させる置換基;等が挙げられる。
【0076】
ポリマーは、特に好ましくは任意に置換された2,7−結合フルオレンを含むポリマーであり、最も好ましくは下記式(8):
【化5】

により表される繰り返し単位を含む。式中、R及びRはそれぞれ独立に、水素、並びに任意に置換されたアルキル、アルコキシ、アリール、アリールアルキル、ヘテロアリール、及びヘテロアリールアルキルから選ばれる。R及びRの少なくとも1つが任意に置換されたC−C20アルキル又はアリール基を含むのがより好ましい。
【0077】
第1繰り返し単位を含むポリマーは、それを用いる素子の層及び組み合わせる繰り返し単位の特性に応じて、正孔輸送、電子輸送、及び発光のうち1以上の機能を有してよい。
【0078】
第1繰り返し単位のホモポリマー(9,9−ジアルキルフルオレン−2,7−ジイルのホモポリマー等)は、電子輸送の目的で使用できる。
【0079】
第1繰り返し単位とトリアリールアミン繰り返し単位を含むコポリマーは、正孔輸送及び/又は発光の目的で使用できる。
【0080】
特に好ましいこの種の正孔輸送ポリマーは、第1繰り返し単位とトリアリールアミン繰り返し単位のABコポリマーである。
【0081】
第1繰り返し単位とヘテロアリーレン繰り返し単位を含むコポリマーは、電荷輸送又は発光の目的で使用できる。好ましいヘテロアリーレン繰り返し単位は下記式9〜23から選ばれる。
【0082】
【化6】

【0083】
式中、R及びRは同じであっても異なっていてもよく、それぞれ独立に水素又は置換基であり、好ましくはアルキル、アリール、パーフルオロアルキル、チオアルキル、シアノ、アルコキシ、ヘテロアリール、アルキルアリール、又はアリールアルキルである。容易に製造するためには、R及びRは同じであるのが好ましい。R及びRは同じものであり、かつフェニル基であるのがより好ましい。
【0084】
【化7】



【0085】
例えばWO00/55927及び米国特許第6353083号に開示されているように、電界発光コポリマーは、電界発光領域と、正孔輸送領域及び電子輸送領域のうち少なくとも1つとを有してよい。正孔輸送領域と電子輸送領域のうち一方のみを有する場合は、電界発光領域が他方の正孔輸送又は電子輸送の機能を有していてよい。
【0086】
このようなポリマー中の異なる領域は、米国特許第6353083号のようにポリマー骨格鎖に沿って存在してよく、或いはWO01/62869のようにポリマー骨格鎖から延びる基に存在してもよい。
【0087】
ポリマーの調製方法としては、WO00/53656等に記載の鈴木重合、及びT. Yamamoto, "Electrically Conducting And Thermally Stable π-Conjugated Poly(arylene)s Prepared by Organometallic Processes", Progress in Polymer Science 1993, 17, 1153-1205等に記載の山本重合が好ましい。これら重合法は共に「金属挿入」によって重合を行うものであり、金属錯体触媒の金属原子がモノマーのアリール基と脱離基の間に挿入される。山本重合ではニッケル錯体触媒を使用し、鈴木重合ではパラジウム錯体触媒を使用する。
【0088】
例えば山本重合によって直鎖状ポリマーを合成する際には、2つの反応性ハロゲン基を有するモノマーを用いる。同様に、鈴木重合による方法においては、少なくとも1つの反応性基がボロン酸やボロン酸エステル等のホウ素誘導体基であり、他の反応性基がハロゲンである。ハロゲンは好ましくは塩素、臭素、又はヨウ素であり、最も好ましくは臭素である。
【0089】
従って、本願で述べるアリール基を含む繰り返し単位及び末端基は、適当な脱離基を有するモノマーから誘導されるものであってよいと解される。
【0090】
鈴木重合を用いて位置規則的コポリマー、ブロックコポリマー、又はランダムコポリマーを調製してよい。特に、一方の反応性基がハロゲンであり、他方の反応性基がホウ素誘導体基であるとき、ホモポリマー又はランダムコポリマーを調製できる。また、第1モノマーの反応性基が共にホウ素であり、第2モノマーの反応性基が共にハロゲンであるときは、ブロックコポリマー又は位置規則的コポリマー(特にABコポリマー)を調製できる。
【0091】
ハロゲン化物の代替物として金属挿入に利用可能な他の脱離基を用いてもよく、その例としては、トシレート、メシレート、フェニルスルホネート、及びトリフレートが挙げられる。
【0092】
単一のポリマー又は複数のポリマーを溶液から積層させて層5を形成してよい。ポリアリーレン(特にポリフルオレン)に適した溶媒としては、トルエンやキシレン等のモノ−又はポリ−アルキルベンゼン類が挙げられる。特に好ましい溶液積層法はスピンコーティング及びインクジェット印刷である。
【0093】
スピンコーティングは、電界発光材料のパターニングが不要な素子(例えば照明や単純なモノクロ分割ディスプレイ)に特に適している。
【0094】
インクジェット印刷は、高情報量ディスプレイ、特にフルカラーディスプレイに特に適している。OLEDのインクジェット印刷については、例えば欧州特許第0880303号に記載されている。
【0095】
素子の多層構造を溶解処理によって形成する場合、隣接する層の混合を防ぐ方法は当業者に自明であろう。例えば、次の層を形成する前にある層を架橋する方法、第1層に用いる材料が第2層の形成に用いる溶媒に溶解しないように隣接層の材料を選択する方法等が挙げられる。
【0096】
燐光材料も有用であり、用途によっては蛍光材料よりも好ましい場合がある。ある種の燐光材料は、ホスト及びその中に存在する燐光発光体を含有する。この発光体はホストに結合していてもよく、またホストとは別個の成分として混合物中に存在していてもよい。
【0097】
先行技術において多くの燐光発光体用ホストが述べられている。その例としては、CBPとして知られる4,4’−ビス(カルバゾール−9−イル)ビフェニル)やTCTAとして知られる(4,4’,4’’−トリス(カルバゾール−9−イル)トリフェニルアミン等の「小分子」ホスト(Ikai et al., Appl. Phys. Lett., 79, no. 2, 2001, 156に開示)、並びにMTDATAとして知られるトリス−4−(N−3−メチルフェニル−N−フェニル)フェニルアミン等のトリアリールアミンが挙げられる。ホモポリマー、特にポリ(ビニルカルバゾール)(Appl. Phys. Lett. 2000, 77(15), 2280等に開示)、ポリフルオレン(Synth. Met. 2001, 116, 379、Phys. Rev. B 2001, 63, 235206、及びAppl. Phys. Lett. 2003, 82(7), 1006)、ポリ[4−(N−4−ビニルベンジルオキシエチル−N−メチルアミノ)−N−(2,5−ジ−tert−ブチルフェニルナフタルイミド](Adv. Mater. 1999, 11(4), 285)、及びポリ(パラフェニレン)(J. Mater. Chem. 2003, 13, 50-55)もホストとして公知である。
【0098】
好ましい燐光発光金属錯体は、下記式(24)で表される任意に置換可能な錯体を含む。
【0099】
【化8】

【0100】
式中、Mは金属であり、L、L、及びLはそれぞれ配位基であり、qは整数であり、r及びsはそれぞれ独立に0又は整数である。(a.q)+(b.r)+(c.s)の合計はM上の配位可能部位の数に等しく、ここでaはL上の配位部位の数、bはL上の配位部位の数、cはL上の配位部位の数である。
【0101】
重元素Mは強いスピン軌道結合を形成し、迅速な項間交差及び三重項状態からの発光(燐光発光)を可能とする。適当な重金属Mとしては、ランタニド金属(セリウム、サマリウム、ユーロピウム、テルビウム、ジスプロシウム、ツリウム、エルビウム、ネオジム等)、並びにdブロック金属(特に第2周期及び第3周期の元素、即ち39〜48及び72〜80の元素、特にルテニウム、ロジウム、パラジウム、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金、及び金)が挙げられる。
【0102】
fブロック金属に適した配位基としては、カルボン酸、1,3−ジケトネート、ヒドロキシカルボン酸、シッフ塩基(アシルフェノール、イミノアシル基等)等の酸素又は窒素のドナー系が挙げられる。既に知られているとおり、発光性ランタニド金属錯体は増感基を必要とする。増感基は金属イオンの第1励起状態よりも高い三重項励起エネルギー準位を有する。金属のf−f遷移により発光が起こり、そのため金属の選択によって発光色が決まる。一般に鋭い発光は狭く、ディスプレイ用途に有用な純粋色の発光が得られる。
【0103】
dブロック金属は、ポルフィリンや下記式(25)により表される二座配位子等の炭素又は窒素のドナーと共に有機金属錯体を形成する。
【0104】
【化9】

【0105】
式中、Ar及びArは同じであっても異なっていてもよく、それぞれ独立に任意に置換されたアリール及びヘテロアリールから選ばれ、X及びYは同じであっても異なっていてもよく、それぞれ独立に炭素及び窒素から選ばれる。Ar及びArは互いに縮合していてもよい。Xが炭素であり、且つYが窒素である配位子が特に好ましい。
【0106】
二座配位子の例を以下に示す。
【0107】
【化10】

【0108】
Ar及びArはそれぞれ1つ以上の置換基を有してよい。特に好ましい置換基としては、WO02/45466、WO02/44189、US2002−117662、及びUS2002−182441に開示されているような、錯体の発光を青色側にシフトさせるために使用できるフッ素及びトリフルオロメチル;JP2002−324679に開示されているようなアルキル基及びアルコキシ基;WO02/81448に開示されているような、発光材料として用いた際に錯体への正孔輸送を補助することができるカルバゾール;WO02/68435及び欧州特許第1245659号に開示されているような、更なる基を付加させるために配位子を官能化する際に有用な臭素、塩素、及びヨウ素;並びにWO02/66552に開示されているような、金属錯体に溶解処理特性を付与する又は該特性を向上させるために有用なデンドロンが挙げられる。
【0109】
dブロック元素との使用に適した他の配位子としては、ジケトネート類、特にアセチルアセトネート(acac)、トリアリールホスフィン類、及びピリジンが挙げられる。これらは置換されていてもよい。
【0110】
主族金属錯体は配位子又は電荷輸送に基づく発光を示す。このような錯体では、金属の選択のほか、配位子の選択によって発光色が決まる。
【0111】
ホスト材料及び金属錯体を物理的ブレンドの形態で組み合わせて使用してよい。或いは、金属錯体をホスト材料に化学的に結合させてもよい。ポリマー状のホストの場合、欧州特許第1245659号、WO02/31896、WO03/18653、及びWO03/22908等に開示されているように、金属錯体を置換基としてポリマー骨格鎖に化学結合させてよく、繰り返し単位としてポリマー骨格鎖に組み込んでもよく、或いはポリマーの末端基として付与してもよい。
【0112】
このようなホスト−発光体系は燐光発光素子に限定されない。様々な蛍光性低分子量金属錯体が知られており、実際に有機発光素子に使用されている(例えば、Macromol. Sym. 125 (1997) 1-48、US−A5150006、US−A6083634、及びUS−A5432014参照)。
【0113】
本発明では様々な蛍光性低分子量金属錯体を使用できる。好ましい一例としてトリス−(8−ヒドロキシキノリン)アルミニウムが挙げられる。2価又は3価の金属に対する適当な配位子としては、例えば酸素−窒素又は酸素−酸素を供与するオキシノイド(oxinoid)(通常は環窒素原子と置換基酸素原子、或いは置換基窒素原子又は置換基酸素原子と置換基酸素原子を有し、例えば8−ヒドロキシキノレート、ヒドロキシキノキサリノール−10−ヒドロキシベンゾ(h)キノリナト(II)等)、ベンザゾール(III)、シッフ塩基、アゾインドール、クロモン誘導体、3−ヒドロキシフラボン、カルボン酸類(サリチラトアミノカルボキシレート、エステルカルボキシレート等)等が挙げられる。発光色を変化させ得る(ヘテロ)芳香族環上の任意の置換基としては、ハロゲン、アルキル、アルコキシ、ハロアルキル、シアノ、アミノ、アミド、スルホニル、カルボニル、アリール、ヘテロアリール等が挙げられる。
【0114】
本発明は、上述した光電気素子の成分を劣化させることのない導電性ポリマー組成物を提供する。本発明の導電性ポリマー組成物及び素子の所望の特性に応じて、組成物を調整することができる。特に、素子性能を最適化するための成分の選択に応じて導電性ポリマー組成物を調整できる。
【0115】
以上、本発明を詳述し、その好ましい実施形態について説明したが、添付の特許請求の範囲で定義される本発明の範囲から逸脱することなく、形態や細部において様々な変更が可能であることを当該分野の当業者は理解するであろう。
【実施例】
【0116】
F4TCNQドープ:実験の詳細
共役ポリマーとして、ポリ(3−ヘキシルチオフェン)(P3HT、シグマアルドリッチ製)、ポリ(9,9−ジオクチルフルオレン−co−ビス−N,N−(4−ブチルフェニル)−ビス−N,N−フェニル−1,4−フェニレンジアミン)(PFB、M=54kg/mol)、ポリ(9,9−ジ−n−オクチルフルオレン−alt−(1,4−フェニレン−((4−sec−ブチルフェニル)イミノ)−1,4−フェニレン)(TFB、M=66kg/mol)、及びポリ(9,9−ジ−n−オクチルフルオレン−alt−ベンゾチアジアゾール)(F8BT、M=62kg/mol)を詳細に調べた。−5.9eVのHOMOを有するF8BTは、本発明の組成物と比較する目的で調査した。F8BT、TFB、及びPFBは、ケンブリッジ・ディスプレイ・テクノロジー・リミテッドから得た。
【0117】
ドーパントとしては、テトラフルオロテトラシアノキノジメタン(F4TCNQ、シグマアルドリッチ製、更なる精製を行うことなく使用)を用いた。上記材料の化学構造及び電子特性を表1に併せて示す。
【0118】
TCNQ及びF4TCNQ材料の酸化還元電位をサイクリックボルタンメトリーで測定したところ(対飽和カロメル電極(SCE)、アセトニトリル中、支持電解質として過塩素酸テトラエチルアンモニウムを使用)、それぞれ0.17V及び0.53Vであった(R. C. Wheland, J. L. Gillson, J. Am. Chem. Soc. 1976, 98, 3916)。この測定から、SCEのLUMO準位を4.94eVとすると、TCNQ及びF4TCNQのLUMO準位はそれぞれ5.11eV及び5.47eVということになる。TCNQ及びF4TCNQに対して類似の測定法を用いたところ(アセトニトリル中、対SCE)、酸化還元電位はそれぞれ0.13V及び0.52Vであった(A. F. Garito, A. J. Heeger, Acc. Chem. Res. 1974, 7, 232)。この結果では、LUMO準位はそれぞれ5.07eV及び5.46eVということになる。
【0119】
【表1】

【0120】
F4TCNQ材料は、種々の有機溶媒(トルエン、クロロホルム、クロロベンゼン、チオフェン、キシレン等)に≦0.2%w/vの濃度で可溶であった。各材料をそれぞれ溶解してポリマー溶液を調製した。PFB、TFB、及びF8BTの濃度はトルエン中1.6%w/vとし、P3HTの濃度はチオフェン中1.0%w/vとした。
【0121】
適量のF4TCNQ溶液(一般的な溶媒を使用)をポリマー溶液に加え、5%、10%、15%、又は20%w/w(ポリマーに対するドーパントの重量比)のドープを行い、ドープ溶液を得た。このとき、フィルムの厚さを容易に制御できるように、溶液のポリマー濃度を同じ値(1.6%又は1.0%w/v)に維持した。酸素プラズマ処理した石英基板にこれら溶液をスピンコートして、約70〜100nmのポリマーフィルムを形成した。
【0122】
ヒューレットパッカード8453ダイオードアレイ分光計を用いて、ポリマー薄膜の吸収スペクトルを得た。F4TCNQドープの重量百分率が異なるP3HT薄膜の対UV吸収スペクトルを図2に示す。これらのスペクトルでは、P3HTの約260nmの吸収肩(absorption shoulder)を基準とした。ドープフィルムの約400nm(円で示す)の吸収肩は、F4TCNQ分子の主吸収ピークに対応する。ドープ濃度が増加すると、π−π遷移(約530nm)に対応するP3HTの主吸収ピークが低下することが分かる。ドープP3HTフィルムは約750nm及び約875nmのサブギャップ吸収ピークを示す(P3HTフィルム及びF4TCNQフィルムはいずれも単独では示さない)。ドープ濃度が増加するにつれてこのサブギャップ吸収ピークも上昇することが分かる。これらの観測結果により、ポリマーからF4TCNQ分子への基底状態電荷移動が起こったことが分かる。
【0123】
フォトルミネッセンス(PL)のスペクトル及び効率を、TFB及びPFBは355/365nm、F8BTは457nm、P3HTは488nmのアルゴンイオンレーザーから励起して、室温下、窒素パージ積分球で測定した。デメロ及び共同研究者の文献(J. C. de Mello, H. F. Wittmann, R. H. Friend, Adv. Mater. 9, 230 (1997))に記載されているようにPL効率を算出した。
【0124】
初期状態のフィルム及びドープしたフィルムのPL効率を表2に示す。いずれのポリマーフィルムにおいても、少量のF4TCNQドーパントを添加すると有意なPL消光が観測された。これより、ポリマーからF4TCNQ分子への電荷移動が効果的に起こっていること、並びにF4TCNQ分子がポリマーマトリクス中で良好に分散していることが示された。PFB及びTFBのドープ試料をN雰囲気下200℃で1時間アニール処理すると、PLが部分的に回復した。これは、高温処理によってF4TCNQ分子がポリマーマトリクスから離れたために起こったと考えられる。
【0125】
【表2】

【0126】
F4TCNQドープ濃度を変えて測定した各共役ポリマーの導電率を図3に示す。ポリマーフィルムは櫛型ITO構造を有する基板上に形成した。ITO接点の間隔は10μm、15μm、又は20μmとした。フィルムの電流電圧特性は、窒素雰囲気中、4Vから1Vずつのバイアスで測定した。印加電場は≦0.4V/μmとした。F4TCNQドープの有効性はドープ濃度の増加に伴うポリマー導電率の向上によって示され、ポリマーのHOMO準位(絶対値)が低いほど導電率は向上することが分かる。比較のために、有機素子によく使われるPEDOT:PSSの導電率も図3に示す。比較用ポリマーF8BTはドープすると本発明の組成物よりも非常に低い導電率を示し、一方で特にドープP3HTは金属に近い特性を示すことが分かる。
【0127】
ITOをアノードに、NiCrをカソードに用い、且つ(a)P3HT、(b)PFB、(c)TFB、及び(d)F8BTを活性層として用いて、正孔オンリーダイオードを製造した。ポリマーフィルム(約70〜100nm)を形成する前に、まず、酸素プラズマ処理したITO被覆ガラス基板に厚さ60nmの正孔注入性/正孔輸送性のPEDOT:PSS層をスピンコートし、続いてN気流下200℃で1時間焼成した。最後に、約10−6mbarのベース圧力で約50nmのNiCr層を熱蒸着した。素子の電流電圧特性を、コンピューター制御HP4145半導体パラメーター分析器を用いて真空下(約10−1mbar)で測定した。素子試験中に発光が見られず、更にNiCrが高い仕事関数(約5.1eV)を有しているため、素子駆動中の正孔電流の存在(電子電流の不在)が示された。
【0128】
結果を図4に示す。どの場合も、ドープによって(特に低電圧下での)正孔電流が有意に増加した。
【0129】
図4に示す素子に0.01V/nmの電場を印加して観測した正孔電流を以下の表3に併せて示す。P3HT(5%ドープ)は線形のJ−V特性を示し、正孔電流の絶対値が約1のオーダーで増加した。これはバルク導電率が金属に類似の伝導性まで増加したことを示唆している。PFB(5%ドープ)及びTFB(20%ドープ)では、正孔電流の絶対値が約4のオーダーで増加した。これは、半導体界面で正孔注入障壁が有意に減少したことを示している。一方、F8BT(5%ドープ)では正孔電流が実質的に増加したが、本発明の組成物に比べて、深いHOMO準位(大きな正孔注入障壁)を有するためその正孔伝導はやはり非常に乏しい。ドープの有効性はP3HT、PFB、TFB、F8BTの順で減少する。これはポリマーのHOMO準位(絶対値)が徐々に増加することに対応している(表1)。
【0130】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
−5.7eV以上のHOMO準位を有するポリマーと、−4.3eV未満のLUMO準位を有するドーパントとを含有することを特徴とする導電性ポリマー組成物。
【請求項2】
前記ドーパントが電荷中性ドーパントであることを特徴とする請求項1に記載の導電性ポリマー組成物。
【請求項3】
前記ドーパントが任意に置換されたテトラシアノキノジメタン(TCNQ)であることを特徴とする請求項2に記載の導電性ポリマー組成物。
【請求項4】
前記ドーパントがTCNQのフッ素化誘導体を含むことを特徴とする請求項3に記載の導電性ポリマー組成物。
【請求項5】
前記ドーパントが1つ以上の可溶性置換基を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の導電性ポリマー組成物。
【請求項6】
前記ポリマーのHOMOが前記ドーパントのLUMOよりも高いことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の導電性ポリマー組成物。
【請求項7】
前記ポリマーのHOMOが4.6〜5.5eVであることを特徴とする請求項6に記載の導電性ポリマー組成物。
【請求項8】
前記ポリマーが共役していることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の導電性ポリマー組成物。
【請求項9】
前記ポリマーが、トリアリールアミン繰り返し単位又は任意に縮合したチオフェン繰り返し単位を含むことを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の導電性ポリマー組成物。
【請求項10】
前記トリアリールアミン繰り返し単位が、下記式1〜6:
【化1】

(式中、X、Y、A、B、C、及びDはそれぞれ独立にH及び置換基から選ばれる。)により表される任意に置換された繰り返し単位から選ばれることを特徴とする請求項9に記載の導電性ポリマー組成物。
【請求項11】
前記X、Y、A、B、C、及びDのうち1つ以上が、それぞれ独立に、任意に置換された分岐状又は直鎖状のアルキル基、アリール基、パーフルオロアルキル基、チオアルキル基、シアノ基、アルコキシ基、ヘテロアリール基、アルキルアリール基、及びアリールアルキル基からなる群から選ばれることを特徴とする請求項10に記載の導電性ポリマー組成物。
【請求項12】
前記X、Y、A、及びBのうち1つ以上がC1−10アルキルであることを特徴とする請求項11に記載の導電性ポリマー組成物。
【請求項13】
前記ポリマーの骨格鎖中の芳香環が、直接結合又は架橋原子によって連結されていることを特徴とする請求項10〜12のいずれか1項に記載の導電性ポリマー組成物。
【請求項14】
前記トリアリールアミン繰り返し単位が、下記式6a:
【化2】

(式中、Hetはヘテロアリール基を表す。)により表される任意に置換された繰り返し単位であることを特徴とする請求項9に記載の導電性ポリマー組成物。
【請求項15】
前記トリアリールアミン繰り返し単位が、下記一般式(6aa):
【化3】

(式中、Ar、Ar、Ar、Ar、及びArはそれぞれ独立にアリール環、ヘテロアリール環、又はその縮合誘導体を表し、Xは任意のスペーサー基を表す。)により表される繰り返し単位であることを特徴とする請求項9に記載の導電性ポリマー組成物。
【請求項16】
前記ポリマーがコポリマーであることを特徴とする請求項1〜15のいずれか1項に記載の導電性ポリマー組成物。
【請求項17】
前記コポリマーが、アリーレン繰り返し単位、フルオレン繰り返し単位、インデノフルオレン繰り返し単位、及びスピロビフルオレン繰り返し単位から選ばれる、任意に置換された第1繰り返し単位を含むことを特徴とする請求項16に記載の導電性ポリマー組成物。
【請求項18】
前記第1繰り返し単位が可溶性置換基を有することを特徴とする請求項17に記載の導電性ポリマー組成物。
【請求項19】
前記第1繰り返し単位が、下記式6b:
【化4】

(式中、R及びRはそれぞれ独立に水素、並びに任意に置換されたアルキル、アルコキシ、アリール、アリールアルキル、ヘテロアリール、及びヘテロアリールアルキルから選ばれる。)により表されることを特徴とする請求項17又は18に記載の導電性ポリマー組成物。
【請求項20】
前記ドーパントが混合物中で前記ポリマーと混合されることを特徴とする請求項1〜19のいずれか1項に記載の導電性ポリマー組成物。
【請求項21】
前記組成物が、ハロゲン化溶媒及びシアノ誘導体から選ばれる溶媒を含有することを特徴とする請求項1〜20のいずれか1項に記載の導電性ポリマー組成物。
【請求項22】
前記溶媒が、塩素化ベンゼン誘導体、塩素化メタン誘導体、ベンゾニトリル、モノ−又はポリ−アルキル化ベンゼン誘導体、及び複素芳香族溶媒のいずれかであることを特徴とする請求項21に記載の導電性ポリマー組成物。
【請求項23】
前記ドーパントが前記ポリマーに化学結合していることを特徴とする請求項1〜19のいずれか1項に記載の導電性ポリマー組成物。
【請求項24】
前記ドーパントが前記ポリマーのペンダント基中に存在することを特徴とする請求項23に記載の導電性ポリマー組成物。
【請求項25】
前記組成物の導電率が10−8〜10−1S/cmであることを特徴とする請求項1〜24のいずれか1項に記載の導電性ポリマー組成物。
【請求項26】
前記ポリマーが架橋してマトリクスを形成し得ることを特徴とする請求項1〜25のいずれか1項に記載の導電性ポリマー組成物。
【請求項27】
請求項1〜26のいずれか1項に記載の導電性ポリマー組成物を含むことを特徴とする電気素子。
【請求項28】
前記電気素子がアノード及びカソードを有し、更に前記アノードとカソードの間に有機半導電層を有することを特徴とする請求項27に記載の電気素子。
【請求項29】
前記導電性ポリマー組成物が、前記アノードと前記有機半導電層の間の層中に供されることを特徴とする請求項28に記載の電気素子。
【請求項30】
前記アノードがITOを含有することを特徴とする請求項28又は29に記載の電気素子。
【請求項31】
前記アノードが前記導電性ポリマー組成物を含有することを特徴とする請求項28に記載の電気素子。
【請求項32】
前記有機半導電層が、正孔輸送体、電子輸送体、及び発光材料のうち1つ以上を含有することを特徴とする請求項28〜31のいずれか1項に記載の電気素子。
【請求項33】
前記有機半導電層が発光性であることを特徴とする請求項32に記載の電気素子。
【請求項34】
前記導電性ポリマーの層と発光層の間に、正孔輸送層が配置されることを特徴とする請求項32に記載の電気素子。
【請求項35】
前記正孔輸送層が、前記導電性ポリマー組成物に用いられる前記ポリマーを含有することを特徴とする請求項34に記載の電気素子。
【請求項36】
請求項27〜35のいずれか1項に記載の電気素子を製造する方法であって、前記導電性ポリマー組成物を溶液から積層させることを特徴とする方法。
【請求項37】
前記組成物を積層させた後、前記ポリマーを架橋するために前記組成物を加熱することを特徴とする請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記導電性ポリマーの層上に、前記導電性ポリマーの積層に用いた溶媒と同じ溶媒から半導体ポリマーを積層させることを特徴とする請求項37又は38に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4a】
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【図4b】
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【図4c】
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【図4d】
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【公表番号】特表2010−502807(P2010−502807A)
【公表日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−527203(P2009−527203)
【出願日】平成19年9月7日(2007.9.7)
【国際出願番号】PCT/GB2007/003383
【国際公開番号】WO2008/029155
【国際公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【出願人】(597063048)ケンブリッジ ディスプレイ テクノロジー リミテッド (152)
【出願人】(501308812)ケンブリッジ エンタープライズ リミテッド (10)
【Fターム(参考)】