説明

光電気複合配線板の製造方法、及び光電気複合配線板

【課題】製造効率の高い光電気複合配線板の製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】基板11上に形成された第1クラッド層12の表面に、コア部13を形成して、積層体を形成するコア部形成工程と、光を反射させるための傾斜面15aを、コア部13に形成する傾斜面形成工程と、積層体の、コア部13が形成された側の表面のうち、少なくとも傾斜面15a上及び電気回路を形成する箇所に金属層16を形成する金属層形成工程と、傾斜面15a上及び電気回路を形成する箇所に金属層16を残存させるように、金属層16を除去することによって、電気回路16bの形成と同時に、傾斜面15a上に金属層からなるミラー部16aを形成する金属層除去工程と、第1クラッド層12上に形成されたコア部13を埋設するように第2クラッド層17を形成するクラッド層形成工程とを備える光導波路の製造方法を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光電気複合配線板の製造方法、及び前記製造方法により製造された光電気複合配線板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
昨今の各種情報処理機器内における信号高速化に付随する高周波ノイズや、伝送帯域不足の問題を解決するものとして、光を内部に導波させる光導波路を内蔵した、プリント基板やフレキシブル配線板である光電気複合配線板が注目されている。
【0003】
このような光電気複合配線板においては、光を所望の角度に曲げて、例えば、光導波路から光を入出力すること等を目的として、光導波路のコア部等に、光を反射可能な傾斜面が形成されている。また、光電気複合配線板は、垂直共振器面発光レーザ(VCSEL)等の発光素子、フォトダイオード(PD)等の受光素子、及び集積回路(IC)等の半導体素子等を駆動させるために、電気回路が設けられている必要がある。
【0004】
このような光電気複合配線板の製造方法としては、例えば、特許文献1及び特許文献2に記載の方法が挙げられる。
【0005】
特許文献1には、基板表面にプレス型を押し付けて前記基板表面に溝を形成し、前記溝内に光導波路を形成し、前記溝を形成した後に前記基板表面に金属層を形成し、前記金属層をパターニングすることによって電気配線を形成する回路モジュールの製造方法が記載されている。
【0006】
また、特許文献2には、基板上に、互いにミラー面が対向したミラー部材を配置し、それらのミラー部材の対向するミラー面間に光導波路を配置し、ミラー部材上の上面を含んで光導波路上に電気配線を形成することによって、光電気配線基板を製造する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−208527号公報
【特許文献2】特開2006−292852号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
光電気複合配線板において、光導波路のコア部等に形成される傾斜面上には、光の反射性を高めるために、金属層からなるミラー部を設けることが一般的である。このミラー部は、例えば、以下の方法等によって形成される。まず、光導波路のコア部に対して、ダイシングブレードで切り込む方法やレーザアブレーションによる方法を適用することによって、傾斜面を形成させる。その後、蒸着法やスパッタ法により、前記傾斜面上に金属層からなるミラー部を形成させる。
【0009】
また、電気回路の形成に関しては、光導波路の形成とは別に行うことが一般的であった。具体的には、まず、光導波路を形成させる前に、基板に予め電気回路を形成させておく方法、すなわち、電気回路を形成したプリント配線板に対して、光導波路を形成して、光電気複合配線板を形成する方法が挙げられる。その他の方法としては、光導波路を形成した基板に、電気回路を形成したプリント配線板を接着させる方法等が挙げられる。また、光導波路を形成した基板に、電気回路を形成させる方法等も挙げられる。
【0010】
このような電気回路を形成する方法とは別に、光導波路の形成、特にミラー部の形成を行うことは、同様のプロセスを複数回行うことになり、無駄が多かった。
【0011】
また、特許文献1によれば、製造方法を簡略化できることが開示されている。しかしながら、特許文献1に記載の方法では、まず、基板表面にプレス型を押し付けて前記基板表面に溝を形成する必要があるので、基板の種類等によっては、この方法を適用できない場合があった。
【0012】
また、特許文献2には、上述したように、光導波路を形成する前に、ミラー部材を予め形成して配置しておく方法が記載されている。そして、特許文献2には、そのミラー部材の形成の際に、電気配線も同時に作製できることが開示されている。しかしながら、このような方法は、光導波路の形成の際に、その光導波路にミラー部を形成する方法とは異なる。また、光導波路を形成する前に、ミラー部材を予め形成する必要があり、製造工程が複雑になったり、基板の種類等によっては、この方法を適用できない場合があった。
【0013】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであって、電気回路の形成と同時に、コア部の傾斜面上に金属層からなるミラー部を形成することができる等の、製造効率の高い光電気複合配線板の製造方法を提供することを目的とする。また、前記製造方法により製造された光電気複合配線板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の一態様に係る光導波路の製造方法は、基板上に形成された第1クラッド層の表面に、コア部を形成して、積層体を形成するコア部形成工程と、前記コア部の前記第1クラッド層と接触している側とは反対側から入射される光を前記コア部内に誘導又は前記コア部から出射される光を前記第1クラッド層と接触している側とは反対側に導出するように、光を反射させるための傾斜面を、前記コア部に形成する傾斜面形成工程と、前記積層体の、前記コア部が形成された側の表面のうち、少なくとも前記傾斜面上及び電気回路を形成する箇所に金属層を形成する金属層形成工程と、前記傾斜面上及び前記電気回路を形成する箇所に前記金属層を残存させるように、前記金属層を除去することによって、前記電気回路の形成と同時に、前記傾斜面上に前記金属層からなるミラー部を形成する金属層除去工程と、前記第1クラッド層上に形成されたコア部を埋設するように第2クラッド層を形成するクラッド層形成工程とを備えることを特徴とする。
【0015】
また、本発明の他の一態様に係る光導波路の製造方法は、第1クラッド層上に形成されたコア部を埋設するように第2クラッド層を形成して、積層体を形成するクラッド層形成工程と、前記コア部の前記第1クラッド層と接触している側とは反対側から入射される光を前記コア部内に誘導又は前記コア部から出射される光を前記第1クラッド層と接触している側とは反対側に導出するように、光を反射させるための傾斜面を、前記コア部に形成する傾斜面形成工程と、前記積層体の、前記第2クラッド層が形成された側の表面のうち、少なくとも前記傾斜面上及び電気回路を形成する箇所に金属層を形成する金属層形成工程と、前記傾斜面上及び前記電気回路を形成する箇所に前記金属層を残存させるように、前記金属層を除去することによって、前記電気回路の形成と同時に、前記傾斜面上に前記金属層からなるミラー部を形成する金属層除去工程とを備えることを特徴とする。
【0016】
また、前記各光電気配線板の製造方法において、前記金属層除去工程の後に、少なくとも前記ミラー部上に、前記ミラー部を構成する金属より腐食しにくい耐腐食性金属からなる耐腐食性金属層を形成する工程を備えることが好ましい。
【0017】
また、前記各光電気配線板の製造方法において、前記金属層形成工程の前に、前記積層体の、前記金属層形成工程で金属層を形成させる側の表面を粗化する工程を備えることが好ましい。
【0018】
本発明の他の一態様に係る光電気複合配線板は、前記光電気複合配線板の製造方法によって得られたことを特徴とする。
【0019】
また、前記光電気複合配線板において、前記ミラー部が、銅からなり、前記耐腐食性金属層が、金からなることが好ましい。
【0020】
また、前記光電気複合配線板において、前記ミラー部と前記電気回路とが、同組成からなり、前記ミラー部と前記電気回路との厚みが、同一であることが好ましい。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、電気回路の形成と同時に、コア部の傾斜面上に金属層からなるミラー部を形成することができる等の、製造効率の高い光電気複合配線板の製造方法を提供することができる。また、前記製造方法により製造された光電気複合配線板が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の第1実施形態に係る光電気複合配線板の製造方法を説明するための概略図である。
【図2】本発明の第2実施形態に係る光電気複合配線板の製造方法を説明するための概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係る実施形態について説明するが、本発明は、これらに限定されるものではない。
【0024】
[第1実施形態]
本発明の第1実施形態に係る光導波路の製造方法は、基板上に形成された第1クラッド層の表面に、コア部を形成して、積層体を形成するコア部形成工程と、前記コア部の前記第1クラッド層と接触している側とは反対側から入射される光を前記コア部内に誘導又は前記コア部から出射される光を前記第1クラッド層と接触している側とは反対側に導出するように、光を反射させるための傾斜面を、前記コア部に形成する傾斜面形成工程と、前記積層体の、前記コア部が形成された側の表面のうち、少なくとも前記傾斜面上及び電気回路を形成する箇所に金属層を形成する金属層形成工程と、前記傾斜面上及び前記電気回路を形成する箇所に前記金属層を残存させるように、前記金属層を除去することによって、前記電気回路の形成と同時に、前記傾斜面上に前記金属層からなるミラー部を形成する金属層除去工程と、前記第1クラッド層上に形成されたコア部を埋設するように第2クラッド層を形成するクラッド層形成工程とを備えることを特徴とする。
【0025】
そうすることによって、電気回路の形成と同時に、コア部の傾斜面上に金属層からなるミラー部を形成することができる。よって、製造効率の高く光電気複合配線板を製造することができる。
【0026】
具体的には、まず、傾斜面形成工程で、コア部に傾斜面を形成し、金属層形成工程で、少なくとも前記傾斜面及び電気回路を形成する箇所を覆うように金属層を形成する。その金属層を形成された積層体に対して、前記傾斜面上及び前記電気回路を形成する箇所に前記金属層を残存させるように、前記金属層を除去する金属層除去工程を施す。そうすることによって、前記電気回路の形成と同時に、前記傾斜面上に前記金属層からなるミラー部を形成することができる。よって、前記電気回路の形成と前記ミラー部の形成とを別に行う場合と比較して、光電気複合配線板の製造効率が高くなると考えられる。
【0027】
図1は、本発明の第1実施形態に係る光電気複合配線板の製造方法を説明するための概略図である。図1(a)は、第1実施形態におけるコア部形成工程を説明するための概略断面図である。図1(b)は、第1実施形態における傾斜面形成工程を説明するための概略断面図である。図1(c)は、第1実施形態における金属層形成工程を説明するための概略図である。図1(d)は、図1(c)に示す積層体の、切断面線d−dから見た概略断面図である。図1(e)は、第1実施形態における金属層除去工程を説明するための概略図である。図1(f)は、図1(e)に示す積層体の、切断面線f−fから見た概略断面図である。図1(g)は、第1実施形態におけるクラッド層形成工程を説明するための概略図である。
【0028】
本発明の第1実施形態に係る光導波路の製造方法としては、まず、図1(a)に示すように、第1クラッド層(下部クラッド層)12を備えた基板11の、第1クラッド層12上にコア部13を形成する。なお、この工程が、コア部形成工程に相当する。
【0029】
具体的には、まず、基板11の表面に第1クラッド層12を形成する。
【0030】
本実施形態で用いる基板11としては、光電気複合配線板の基板として用いられるものであれば、特に限定されない。具体的には、この基板11としては、有機基板であってもよく、無機基板であってもよい。有機基板の具体例としては、例えば、エポキシ基板、アクリル基板、ポリカーボネート基板、及びポリイミド基板等が挙げられる。また、無機基板の具体例としては、例えば、シリコン基板やガラス基板等が挙げられる。また、基板上に予め回路が形成されたプリント回路基板のようなものであってもよい。
【0031】
本実施形態のおける第1クラッド層12の形成方法としては、基板11の表面上に第1クラッド層12を形成できる方法であれば、特に限定されない。具体的には、例えば、以下の方法が挙げられる。第1の例としては、基板11の表面に、第1クラッド層12を形成するための所定の屈折率を有する硬化性樹脂材料からなる樹脂フィルムを貼り合せた後、硬化させる方法が挙げられる。また、第2の例としては、第1クラッド層12を形成するための液状の硬化性樹脂材料を塗布した後、硬化させる方法が挙げられる。また、第3の例としては、第1クラッド層12を形成するための硬化性樹脂材料のワニスを塗布した後、硬化させる方法が挙げられる。なお、第1クラッド層12を形成させる際には、密着性を高めるために、予め、基板11の表面にプラズマ処理等を施しておくことが好ましい。
【0032】
また、第1クラッド層12を形成するために樹脂フィルムを貼り合せた後、硬化させるより具体的な方法としては、例えば、以下のような方法が用いられる。まず、基板11表面に硬化性樹脂からなる樹脂フィルムを重ねるように載置した後、加熱プレスにより貼り合せる、又は、基板11表面に硬化性樹脂からなる樹脂フィルムを、透明性の接着剤により貼り合わせる。そして、貼り合せられた樹脂フィルムに、光等のエネルギ線を照射すること、又は、加熱することにより硬化させる。
【0033】
また、第1クラッド層12を形成するための、液状の硬化性樹脂材料、または、硬化性樹脂材料のワニスを塗布した後、硬化させるより具体的な方法としては、例えば、以下のような方法が用いられる。まず、基板11表面に液状の硬化性樹脂材料又は硬化性樹脂材料のワニスを、スピンコート法、バーコート法、又は、ディップコート法等を用いて塗布させる。そして、塗布された液状の硬化性樹脂材料又は硬化性樹脂材料のワニスに、光等のエネルギ線を照射すること、又は、加熱することにより硬化させる。
【0034】
第1クラッド層12を形成するための硬化性樹脂材料としては、後に形成されるコア部13の材料よりも導波光の伝送波長における屈折率が低くなるようなものが用いられる。具体的には、その伝送波長における屈折率として、例えば、1.5〜1.55程度であるものが挙げられる。このような硬化性樹脂材料の種類としては、このような屈折率を有する、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリイミド系樹脂等が挙げられる。
【0035】
また、第1クラッド層12を形成する際に用いられる硬化性樹脂材料としては、硬化後、上記屈折率を満たす等のクラッド層として使用可能なものとなるものであれば、特に限定されない。具体的には、例えば、上述したように、光等のエネルギ線や熱によって硬化するもの等が挙げられる。より具体的には、例えば、感光性材料等が挙げられる。また、前記硬化性樹脂材料からなる樹脂フィルムとしては、具体的には、例えば、半硬化状態の感光性高分子材料をポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム等に塗布して得られるドライフィルム、いわゆるドライフィルムフォトレジスト(単に、「感光性フィルム」とも称する。)等が挙げられる。
【0036】
第1クラッド層12の厚みは、特に限定されない。具体的には、例えば、5〜15μm程度であることが好ましい。
【0037】
次に、形成された第1クラッド層12の外表面に、感光性材料からなるコア材料層を形成する。
【0038】
ここで、感光性材料とは、エネルギ線が照射された部分の、後述する現像で用いる液体に対する溶解性が変化する材料である。具体的には、例えば、エネルギ線を照射する前には、後述する現像で用いる液体に対して溶解しにくいが、エネルギ線を照射した後には、溶解しやすくなる材料が挙げられる。また、他の例としては、エネルギ線を照射する前には、後述する現像で用いる液体に対して溶解しやすいが、エネルギ線を照射した後には、溶解しにくくなる材料が挙げられる。感光性材料とは、具体的には、例えば、感光性高分子材料等が挙げられる。また、エネルギ線とは、溶解性を変化させることができるものであれば、特に限定されない。具体的には、取扱の容易さ等から、紫外線が好ましく用いられる。感光性材料としては、一般的に、紫外線が照射された部分の、溶解性が変化する感光性高分子材料が好ましく用いられる。より具体的には、紫外線が照射された部分が硬化されて、後述する現像で用いる液体に対して溶解しにくくなる感光性高分子材料が好ましく用いられる。
【0039】
コア材料層の形成方法としては、コア材料層を形成することができれば、特に限定されない。具体的には、例えば、以下の方法が挙げられる。第1の例としては、第1クラッド層12の外表面に、コア材料層を形成するための所定の屈折率を有する感光性高分子材料からなる樹脂フィルム(感光性フィルム)を貼り合せる方法が挙げられる。第2の例としては、コア材料層を形成するための液状の感光性高分子材料を塗布する方法が挙げられる。第3の例としては、コア材料層を形成するための感光性高分子材料のワニスを塗布した後、乾燥させる方法が挙げられる。なお、コア材料層を形成させる際にも、第1クラッド層12の外表面を活性化させて密着性を高めるために、予め、プラズマ処理等を施しておくことが好ましい。
【0040】
コア材料層を形成するために樹脂フィルムを貼り合せるより具体的な方法としては、例えば、以下のような方法が用いられる。第1クラッド層12の外表面に硬化性樹脂からなる樹脂フィルムを重ねるように載置した後、加熱プレスにより貼り合せる。
【0041】
また、コア材料層を形成するための液状の硬化性樹脂材料、又は、硬化性樹脂材料のワニスを塗布する方法のより具体的な方法としては、例えば、以下のような方法が用いられる。第1クラッド層12の外表面に液状の硬化性樹脂材料又は硬化性樹脂材料のワニスを、スピンコート法、バーコート法、又は、ディップコート法等を用いて塗布した後、必要に応じて乾燥させる。
【0042】
感光性高分子材料からなる樹脂フィルム(感光性フィルム)としては、半硬化状態の感光性高分子材料をポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム等に塗布して得られるドライフィルム等が挙げられる。なお、このようなドライフィルムは、通常、保護フィルムにより保護されている。
【0043】
コア材料層を形成するための感光性高分子材料としては、第1クラッド層12の材料よりも導波光の伝送波長における屈折率が高いものが用いられる。具体的には、その伝送波長における屈折率として、例えば、1.55〜1.6程度であるものが挙げられる。コア材料層を形成するための感光性高分子材料の種類としては、このような屈折率を有する、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリイミド系樹脂等を樹脂成分とする感光性材料が挙げられる。これらの中でも特に、ビスフェノール型エポキシ樹脂が好ましい。よって、コア材料層を形成するための感光性高分子材料としては、ビスフェノール型エポキシ樹脂と光カチオン硬化剤とを含有する樹脂組成物が、耐熱性の高い導波路が得られ、また、プリント基板等と複合化することができる点から好ましい。なお、コア材料層と第1クラッド層12との接着性の観点から、コア材料層を形成するための感光性高分子材料は、第1クラッド層12を形成するための硬化性樹脂材料と同系統のものであることが好ましい。
【0044】
コア材料層の厚みは、特に限定されない。具体的には、例えば、20〜100μm程度であることが好ましい。
【0045】
コア材料層を露光して硬化等させる前に、コア材料層に熱処理を施してもよい。そうすることにより、コア材料層の表面の凹凸、気泡、ボイド等を消失させて平滑になる。熱処理温度は、コア材料層の表面の凹凸、気泡、ボイド等が消失して平滑になるような粘度になる温度が好ましく、コア材料層を形成する硬化性樹脂材料の種類によって適宜選択される。また、熱処理時間としては、10〜30分間程度であることが、コア材料層の表面の凹凸、気泡、ボイド等を消失させて平滑になるという効果が充分に得られる点から好ましい。なお、熱処理の手段は特に限定されず、所定の温度に設定したオーブン中で処理する方法やホットプレートで加熱する等の方法が用いられる。
【0046】
次に、コア材料層に対して、フォトマスクを介して露光光を照射して、コア材料層に対して所定形状のパターン露光を行う。また、このような露光は、感光性材料を光により変質(硬化等)させうる波長の光を必要な光量で露光する方法であれば、特に限定なく用いることができる。具体的には、例えば、ここで用いる露光光として、紫外線等のエネルギ線を用いる方法等が挙げられる。そして、取扱の容易さ等から、紫外線が好ましく用いられる。また、フォトマスクをコア材料層の表面に接触するように載置して露光するコンタクト露光や、コア材料層の外表面に接触しないように所定の間隔を保持した状態で露光する投影型露光等の、何れの露光方法を用いてもよい。
【0047】
また、露光条件としては、感光性材料の種類に応じて適宜選択されるが、例えば、超高圧水銀灯を用い、500〜3500mJ/cmとなるように露光する条件等が選ばれる。
【0048】
そして、かかる露光をした後に、熱による後キュアを行うことも硬化を確実にする点から有効である。後キュアの条件としては、温度80〜160℃程度、時間20〜120分間程度が好ましい。しかしながら、特にこの範囲に限られるものでは無く、感光性材料によって最適化することが重要であることは言うまでもない。
【0049】
次に、現像処理を行うことにより、図1(a)に示すような、コア部13を形成する。
【0050】
コア部13を形成させるための現像処理としては、コア材料層の感光性材料がポジ型の場合には、露光されなかった部分、ネガ型の場合には、露光された部分を現像液で洗い流すことにより、不要な部分を除去する工程である。また、ここで用いる現像液としては、例えば、アセトンやイソプロピルアルコール、トルエン、エチレングリコール、又は、これらを所定割合で混合させたもの等が挙げられる。さらに、例えば、特開2007−292964号公報で開示されているような水系の現像液も好ましく用いられうる。現像方法としてはスプレーにより現像液を噴射する方法や超音波洗浄を利用する方法等が挙げられる。
【0051】
次に、コア部13に、光を反射させるための傾斜面15aを形成する。なお、この工程が、傾斜面形成工程に相当する。その方法としては、後述する傾斜面を形成することができれば、特に限定されない。ここでの傾斜面とは、コア部13の第1クラッド層12と接触している側とは反対側から入射される光をコア部13内に誘導又はコア部13から出射される光を第1クラッド層12と接触している側とは反対側に導出するように、光を反射させるための傾斜面である。そして、傾斜面の形成方法としては、具体的には、例えば、ダイシングブレードで切り込む方法やレーザアブレーションによる方法等が挙げられる。より具体的には、例えば、以下の方法が挙げられる。
【0052】
図1(b)に示すように、刃先の一方の面が、刃の面方向に平行な面で、他方の面が、刃の面方向に対する角度が所定の角度、例えば、45°である面である刃14を用いて、コア部13を切り込んで、凹部15を形成する。すなわち、刃14を、コア部13に対して略垂直となるように回転させながら、コア部13に垂下させる。その際、凹部15が、第1クラッド層12の反対側から入射される光をコア部13内に誘導又はコア部13から出射される光を第1クラッド層12の反対側に導出するように、光を反射させるための傾斜面15aを有する凹部15となるように、コア部13を切り込む。また、凹部15は、第1クラッド層12に平行な断面積が第1クラッド層12に近づくほど徐々に小さくなるように、傾斜面15aが形成されている。なお、刃14は、円盤状の回転刃物であって、円周部に刃先があるもの、例えば、ダイシングブレード等が用いられる。また、凹部15の形状は、傾斜面15aが形成されるものであれば、特に限定されず、例えば、溝状等が挙げられる。
【0053】
コア部13を刃14で切り込む際、必要に応じて、基板11や刃14等を加熱することにより、コア部13を軟化させながら切り込んでもよい。また、刃14の刃先が、第1クラッド層12に達するように切り込んでも、達しないように切り込んでもよい。
【0054】
次に、図1(c)に示すように、上記のように、凹部15が形成された後、コア部13と第1クラッド層12と基板11との積層体の、コア部13が形成されている側の表面のうち、少なくとも傾斜面15a上及び電気回路を形成する箇所に、金属層16を形成させる。なお、この工程が、金属層形成工程に相当する。この金属層16を形成させる方法としては、特に限定されず、公知の方法を用いることができる。具体的には、例えば、無電解めっき法や電解めっき法等のめっき法、真空蒸着法等の蒸着法、スパッタ法、及びナノペースト法等が挙げられる。
【0055】
この金属層16の厚みとしては、光を反射させることができれば、特に限定されない。具体的には、例えば、1000Å程度の厚みが挙げられる。
【0056】
また、金属層16を形成する箇所としては、コア部13と第1クラッド層12と基板11との積層板の、コア部13が形成されている側の表面の全面であってもよいが、コア部13と第1クラッド層12と基板11との積層体表面の、少なくとも傾斜面15a上及び電気回路を形成する箇所に金属層16を形成すればよい。そして、この積層体表面の、少なくとも傾斜面15a上及び電気回路を形成する箇所に金属層を形成することが、光電気複合配線板の製造効率を高める点から好ましい。このことは、この金属層16の形成において、コア部13と第1クラッド層12と基板11との積層体の、コア部13が形成された側の表面全面に金属層を形成する必要はないことによる。すなわち、この積層体表面の、少なくとも傾斜面15a上及び電気回路を形成する箇所に金属層を形成すれば、所望の光電気複合配線板が得られることによると考えられる。
【0057】
なお、金属層16は、上述したように、コア部13の表面だけではなく、電気回路を形成する箇所にも形成する。具体的には、図1(c)及び図1(d)に示すように、コア部13が形成されていない箇所にも、金属層16が形成される。
【0058】
また、金属層16を形成させる前に、コア部13と第1クラッド層12と基板11との積層体の、金属層16を形成させる側の表面を粗化する粗化処理を施してもよい。そうすることによって、光電気複合配線板の製造効率を高めることができる。このことは、コア部13と第1クラッド層12と基板11との積層体の表面上に容易に金属層16を形成させることができることによると考えられる。さらに、ここで形成された金属層16が、積層体の表面から剥離しにくくなると考えられる。すなわち、後述する、この金属層16から形成されるミラー部16aが傾斜面15aから剥離しにくくなると考えられる。また、後述する、この金属層16から形成される電気回路16bが積層体から剥離にくくなると考えられる。また、粗化処理方法としては、特に限定されない。具体的には、例えば、過マンガン酸処理液を用いたマイクロエッチング処理等の、マイクロエッチング処理等が挙げられる。
【0059】
次に、図1(e)及び図1(f)に示すように、傾斜面15a上及び電気回路を形成する箇所に金属層16を残存させるように、その他の部分の金属層16を除去する。そうすることによって、電気回路16bの形成と同時に、傾斜面15a上に金属層からなるミラー部16aを形成することができる。なお、この工程が、金属層除去工程に相当する。金属層の除去方法としては、傾斜面15a上及び電気回路を形成する箇所に金属層16を残存させた状態で、その他の部分の金属層16を除去できる方法であれば、特に限定されない。具体的には、例えば、以下の方法が挙げられる。まず、金属層16全面に、レジストを塗布する。その後、傾斜面15a上及び電気回路を形成する箇所の上のレジストのみが、現像処理によって除去されないように、フォトマスク等を介してUV照射する。そして、現像処理を施すことによって、傾斜面15a上及び電気回路を形成する箇所の上のレジストのみを残存させる。その後、エッチング処理を施した後、レジストを剥離する。そうすることによって、電気回路16bの形成と同時に、傾斜面15a上に金属層からなるミラー部16aを形成することができる。
【0060】
また、このような方法により、電気回路16b及びミラー部16aを形成させると、電気回路16b及びミラー部16aとを同時に形成できる。さらに、ミラー部16aと電気回路16bとが、同組成からなり、ミラー部16aと電気回路16bとの厚みが、同一である。このことは、得られた光電気複合配線板の、受光素子や発光素子等の実装精度が優れたものとなる。
【0061】
このことは、以下のことによると考えられる。
【0062】
まず、ミラー部と電気回路との厚みの差が大きくなると、光電気複合配線板のミラー部が形成されている面を、光電気複合配線板の面方向に垂直な方向から見たときの、電気回路に対するミラー部の位置が、ミラー部が傾斜していることから、ずれる傾向がある。このため、基板に設けたアライメントマーク等に基づいて受光素子や発光素子等を実装する際、その受光素子や発光素子等が、ミラー部が形成されている位置にあわせて実装しようとしても、所定の位置からずれる傾向がある。このとき、ミラー部と電気回路との厚みが、同一であれば、このようなずれの発生を抑制でき、受光素子や発光素子等の実装精度の優れた光電気複合配線板が得られると考えられる。
【0063】
また、電気回路16b及びミラー部16aを形成した後に、少なくともミラー部16a上に、ミラー部16aを構成する金属より腐食しにくい耐腐食性金属からなる耐腐食性金属層を形成することが好ましい。そうすることによって、信頼性の高い光電気配線板を製造することができる。さらに、得られた光電気配線板において、耐腐食性金属層の密着性の高いものが得られる。
【0064】
具体的には、以下のように考えられる。
【0065】
まず、前記ミラー部上に、前記ミラー部を構成する金属より腐食しにくい耐腐食性金属からなる耐腐食性金属層を形成することによって、前記耐腐食性金属層がさび等の腐食の発生を抑制することができると考えられる。このことから、前記耐腐食性金属層の腐食による、前記耐腐食性金属層での光の反射率の低下が発生することを抑制することができると考えられる。よって、得られた光電気配線板の信頼性が高いものになると考えられる。また、前記耐腐食性金属層として、例えば、金からなる層等を用いることによって、光に対して、高い反射率を実現でき、さらに、前記耐腐食性金属層の腐食による、反射率の低下を抑制できる。
【0066】
次に、傾斜面に直接、耐腐食性金属層、例えば、金からなる層を形成する場合より、電気配線と同時に形成させたミラー部を構成する金属層、例えば、銅からなる層を介在させて、耐腐食性金属層を形成させた場合のほうが、耐腐食性金属層の密着性が高まると考えられる。よって、このような方法によれば、光電気配線板の信頼性を高めることができる耐腐食性金属層を、密着性の高い状態で傾斜面に形成できると考えられる。
【0067】
また、ミラー部16aが、銅からなり、耐腐食性金属層が、金からなることが好ましい。そうすることによって、傾斜面15a上に、ミラー部16aを介して形成される耐腐食性金属層が金からなるので、信頼性の高い光電気複合配線板が得られる。また、金からなる耐腐食性金属層が、銅からなるミラー部を介して形成されるので、金からなる耐腐食性金属層が傾斜面に直接形成される場合より、密着性の高い光電気複合配線板が得られる。
【0068】
そして、最後に、図1(g)に示すように、上記のように形成されたコア部13を埋設するように、第2クラッド層(上部クラッド層)17を形成することにより、光導波路を備える光電気複合配線板18が形成される。なお、この工程が、クラッド層形成工程に相当する。
【0069】
第2クラッド層17の形成方法としては、特に限定されない。具体的には、例えば、以下のような方法が挙げられる。第1の例としては、コア部13を埋設するように、第2クラッド層17を形成するための液状の硬化性樹脂材料を塗布した後、光等のエネルギ線、熱等で硬化させる方法が挙げられる。第2の方法としては、第2クラッド層17を形成するための硬化性樹脂材料のワニスを塗布した後、光等のエネルギ線、熱等で硬化させる方法が挙げられる。第3の例としては、第2クラッド層17を形成するための硬化性樹脂材料からなる樹脂フィルムを貼り合せた後、光等のエネルギ線、熱等で硬化させる方法が挙げられる。
【0070】
第2クラッド層17を形成するための硬化性樹脂材料としては、コア部13の材料よりも導波光の伝送波長における屈折率が低くなるような硬化性樹脂材料であれば、特に限定なく用いられ、通常は、第1クラッド層12を形成した材料と同様の種類の硬化性樹脂材料が用いられる。
【0071】
また、第2クラッド層17の厚みとしては、特に限定されないが、コア部13の上に第1クラッド層12と同程度の厚みであることが好ましい。
【0072】
上記のような工程を経て、図1(g)に示すような光導波路を備える光電気複合配線板18が形成される。なお、図1(g)中の矢符は、光導波路に入射して出射される導波光の光路を示す。
【0073】
形成された光導波路は、コア部13とこれを被覆するクラッド層(第1クラッド層12及び第2クラッド層17)によって形成されたものであり、コア部13はクラッド層よりも屈折率が高く、内部を伝搬する光を全反射によってコア内に閉じこめるものである。このような光導波路は、主としてマルチモード導波路として形成される。光導波路のコア部13のサイズは、例えば、20〜100μmの矩形形状、コア部を含む層の厚みを除いた下部の第1クラッド層12及び上部の第2クラッド層17の厚みはそれぞれ5〜15μm、コア部とクラッド層との屈折率差は0.5〜3%程度が適当であるがこれに限られるものではない。
【0074】
以上のように、このような製造方法は、ミラー部と電気回路とを同時に形成でき、光電気複合配線板の製造効率の高いものである。
【0075】
[第2実施形態]
本発明の第2実施形態に係る光導波路の製造方法は、第1クラッド層上に形成されたコア部を埋設するように第2クラッド層を形成して、積層体を形成するクラッド層形成工程と、前記コア部の前記第1クラッド層と接触している側とは反対側から入射される光を前記コア部内に誘導又は前記コア部から出射される光を前記第1クラッド層と接触している側とは反対側に導出するように、光を反射させるための傾斜面を、前記コア部に形成する傾斜面形成工程と、前記積層体の、前記第2クラッド層が形成された側の表面のうち、少なくとも前記傾斜面上及び電気回路を形成する箇所に金属層を形成する金属層形成工程と、前記傾斜面上及び電気回路を形成する箇所に前記金属層を残存させるように、前記金属層を除去することによって、前記電気回路の形成と同時に、前記傾斜面上に前記金属層からなるミラー部を形成する金属層除去工程とを備えることを特徴とする。
【0076】
そうすることによって、電気回路の形成と同時に、コア部の傾斜面上に金属層からなるミラー部を形成することができる。よって、製造効率の高く光電気複合配線板を製造することができる。
【0077】
具体的には、まず、傾斜面形成工程で、コア部に傾斜面を形成し、金属層形成工程で、少なくとも前記傾斜面及び電気回路を形成する箇所を覆うように金属層を形成する。その金属層を形成された積層体に対して、前記傾斜面上及び前記電気回路を形成する箇所に前記金属層を残存させるように、前記金属層を除去する金属層除去工程を施す。そうすることによって、前記電気回路の形成と同時に、前記傾斜面上に前記金属層からなるミラー部を形成することができる。よって、前記電気回路の形成と前記ミラー部の形成とを別に行う場合と比較して、光電気複合配線板の製造効率が高くなると考えられる。
【0078】
また、前記クラッド層形成工程で、第1クラッド層上に形成されたコア部を埋設するように第2クラッド層を形成した後に、前記傾斜面形成工程、前記金属層形成工程、及び前記金属層除去工程を施すので、前記コア部の表面に、金属やレジスト等が残留することがほとんどなくなると考えられる。
【0079】
図2は、本発明の第2実施形態に係る光電気複合配線板の製造方法を説明するための概略図である。図2(a)は、第2実施形態における、第1クラッド層上に形成されたコア部を説明するための概略断面図である。図2(b)は、第2実施形態におけるクラッド層形成工程を説明するための概略断面図である。図2(c)は、第2実施形態における傾斜面形成工程を説明するための概略断面図である。図2(d)は、第2実施形態における金属層形成工程を説明するための概略図である。図2(e)は、第2実施形態における金属層除去工程を説明するための概略図である。
【0080】
本発明の第2実施形態に係る光導波路の製造方法としては、まず、図2(a)に示すように、第1クラッド層(下部クラッド層)12を備えた基板11の、第1クラッド層12上にコア部13を形成する。この形成方法としては、第1の実施形態でのコア部13の形成と同様の方法が挙げられる。
【0081】
次に、図2(b)に示すように、第1クラッド層12上に形成されたコア部13を埋設するように第2クラッド層17を形成して、積層体を形成する。この形成方法は、第1の実施形態での第2クラッド層17の形成と同様の方法が挙げられる。第1実施形態と異なる点は、埋設させるコア部13に、傾斜面等を形成する前に、第2クラッド層17を形成させる点である。
【0082】
次に、第1クラッド層12とコア部13と第2クラッド層17と基板11との積層体に、光を反射させるための傾斜面を形成する。なお、この工程が、傾斜面形成工程に相当する。その方法としては、第1の実施形態での傾斜面の形成と同様の方法が挙げられる。具体的には、第1実施形態と同様、図2(c)に示すように、刃先の一方の面が、刃の面方向に平行な面で、他方の面が、刃の面方向に対する角度が所定の角度、例えば、45°である面である刃14を用いて、第1クラッド層12とコア部13と第2クラッド層17と基板11との積層体を切り込んで、凹部15を形成する方法が挙げられる。第1実施形態と異なる点は、コア部13だけではなく、第2クラッド層17をも切り込む点である。
【0083】
次に、図2(d)に示すように、上記のように、凹部15が形成された後、第1クラッド層12とコア部13と第2クラッド層17と基板11との積層体の、第2クラッド層17が形成されている側の表面のうち、少なくとも傾斜面15a上及び電気回路を形成する箇所に、金属層16を形成させる。なお、この工程が、金属層形成工程に相当する。その方法としては、第1の実施形態での金属層の形成と同様の方法が挙げられる。
【0084】
次に、図2(e)に示すように、傾斜面15a上及び電気回路を形成する箇所に金属層16を残存させるように、その他の部分の金属層を除去する。そうすることによって、電気回路16bの形成と同時に、傾斜面15a上に金属層からなるミラー部16aを形成することができる。なお、この工程が、金属層除去工程に相当する。金属層の除去方法としては、第1の実施形態での金属層の除去方法と同様の方法が挙げられる。
【0085】
上記のような工程を経て、図2(e)に示すような光導波路を備える光電気複合配線板18が形成される。なお、図2(e)中の矢符は、光導波路に入射して出射される導波光の光路を示す。
【0086】
以上のように、このような製造方法は、ミラー部と電気回路とを同時に形成でき、光電気複合配線板の製造効率の高いものである。
【0087】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明する。なお、本発明の範囲は実施例により何ら限定されるものではない。
【実施例】
【0088】
はじめに、本実施例で用いた樹脂フィルムの製造方法について説明する。
【0089】
(下部クラッド層用樹脂フィルムの製造)
エポキシ樹脂(ダイセル化学工業株式会社製のEHPE3150、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)−1−ブタノールの1,2−エポキシ−4−(2−オキシラニル)シクロセキサン付加物)62質量部、液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂(DIC株式会社製のエピクロン850s)12質量部、フェノキシ樹脂(新日鐵化学株式会社製のYP50)18質量部、トリメチロールプロパン型エポキシ樹脂(新日鐵化学株式会社製のエポトートYH300)8質量部、光カチオン硬化開始剤(株式会社アデカ製のSP−170)0.5質量部、熱カチオン硬化開始剤(三新化学工業株式会社製のSI−150L)0.5質量部、表面調整剤(DIC株式会社製のF470)0.1質量部の各配合成分を、トルエン30質量部とMEK70質量部との混合溶剤に溶解させた。そして、その溶液を、孔径1μmのメンブランフィルタで濾過した後、減圧脱泡した。そうすることによって、エポキシ樹脂ワニスを調製した。この調製したワニスを、株式会社ヒラノテクシード製のコンマコータヘッドのマルチコータを用いて、PETフィルム(東洋紡績株式会社製のA4100)に塗布、乾燥させ、所定厚みの樹脂層とした。その樹脂層の上に、離型フィルムとして、王子特殊紙株式会社製のOPP−MA420を熱ラミネートした。そうすることによって、下部クラッド層用樹脂フィルムを得た。得られた下部クラッド層用樹脂フィルムの厚みは、10μmであった。
【0090】
(コア部用樹脂フィルムの製造)
3、4−エポキシシクロヘキセニルメチル−3’、4’−エポキシシクロヘキセンカルボキシレート(ダイセル化学工業株式会社製のセロキサイド2021P(CEL2021Pとも称する))8質量部、エポキシ樹脂(ダイセル化学工業株式会社製のEHPE3150、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)−1−ブタノールの1,2−エポキシ−4−(2−オキシラニル)シクロセキサン付加物)12質量部、固形ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学株式会社製のエピコート1006FS)37質量部、3官能エポキシ樹脂(三井化学株式会社製のVG−3101)15質量部、固形ノボラック型エポキシ樹脂(日本化薬株式会社製のEPPN201)18質量部、液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂(DIC株式会社製のエピクロン850s)10質量部、光カチオン硬化開始剤(株式会社アデカ製のSP−170)1質量部、表面調整剤(DIC株式会社製のF470)0.1質量部の各配合成分を、トルエン30質量部とMEK70質量部との混合溶剤に溶解させた。そして、その溶液を、孔径1μmのメンブランフィルタで濾過した後、減圧脱泡した。そうすることによって、エポキシ樹脂ワニスを調製した。この調製したワニスを、株式会社ヒラノテクシード製のコンマコータヘッドのマルチコータを用いて、PETフィルム(東洋紡績株式会社製のA4100)に塗布、乾燥させ、所定厚みの樹脂層とした。その樹脂層の上に、離型フィルムとして、王子特殊紙株式会社製のOPP−MA420を熱ラミネートした。そうすることによって、コア部用樹脂フィルムを得た。得られたコア部用樹脂フィルムの厚みは、40μmであった。
【0091】
(上部クラッド層用樹脂フィルムの製造)
厚みが50μmとなるように変更したこと以外、上部クラッド層用樹脂フィルムと同様にして、上部クラッド層用樹脂フィルムを製造した。
【0092】
(実施例1)
実施例1は、第1実施形態に係る実施例である。
【0093】
まず、パナソニック電工株式会社製のR1766の、両面の銅をエッチングにより除去した。このエッチオフしたものを基板として用いた。この基板の表面に、上述の方法により製造した、厚み10μmの下部クラッド層用樹脂フィルムを、真空ラミネーター(V−130)を用いて、60℃、0.2MPaの条件でラミネートした。そして、超高圧水銀灯を用いて、2J/cmの条件で紫外光を下部クラッド層用樹脂フィルムに照射した。その後、下部クラッド層用樹脂フィルムの離型フィルムを剥離した。その後、150℃で30分間熱処理し、さらに、酸素プラズマ処理を施した。そうすることによって、基板上に、下部クラッド層用樹脂フィルムが硬化した第1クラッド層(下部クラッド層)が形成された。
【0094】
次に、下部クラッド層の表面に、上述の方法により製造した、厚み40μmのコア部用樹脂フィルムを、真空ラミネーター(V−130)を用いて、60℃、0.2MPaの条件でラミネートした。
【0095】
そして、幅40μm、長さ120mmの直線パターンのスリットを形成したネガマスクを、コア部用樹脂フィルムの表面に載置した。その後、照射光が略平行光になるように調整された超高圧水銀灯で3J/cmの光量で紫外光を、コア部用樹脂フィルムの、スリットに対応する部分を光硬化させた。
【0096】
次に、コア部用樹脂フィルムの離型フィルムを剥離した。その後、140℃で2分間熱処理を行なった。そして、現像液として55℃に調整した水系フラックス洗浄剤(荒川化学工業株式会社製のパインアルファST−100SX)を用いて現像処理した。そうすることによって、コア部用樹脂フィルムの未露光部分が溶解除去される。そして、さらに、水で仕上げ洗浄した後エアブローした。その後、100℃で10分間乾燥させた。そうすることによって、図1(a)に示すようなコア部が形成された。
【0097】
次に、図1(b)に示すように、刃先の一方の面が、刃の面方向に平行な面であって、他方の面が、刃の面方向に対する角度(頂角)が45°である面である刃(株式会社ディスコ製のダイシングブレード(粒度5000番))を用い、回転数10000rpm、移動速度0.1mm/秒の条件で、コア部の両端部から10mmの位置を、2カ所切り込んだ。そうすることによって、図1(b)に示すように、45°傾斜面を有する凹部が、コア部を完全に切断するように形成された。
【0098】
次に、下部クラッド層用樹脂フィルムの製造する際に用いた樹脂ワニスを、トルエンとMEKとを、質量比で3:7で混合した混合溶剤で50倍に希釈した溶液を、45°傾斜面にブラシで薄く塗布した。その後、100℃で30分間乾燥した後に、超高圧水銀灯で1J/cmの条件で紫外光を照射して露光した。その後、さらに120℃で10分間熱処理を行なった。そうすることによって、45°傾斜面が平滑化された。
【0099】
次に、コア部や下部クラッド層に対して、膨潤工程、過マンガン酸処理工程、及び還元処理工程を施した。そうすることによって、コア部や下部クラッド層の表面がエッチングされ、その表面に凹凸が形成された。その後、さらに、クリーナーコンディショニング工程、ソフトエッティング工程、プリディップ工程、キャタリスト工程、アクセレレーター工程、及び無電解銅めっき工程を施した。そうすることで、無電解銅めっきからなる金属の薄層が形成された。その後、脱脂工程、酸活性工程、電解銅めっき工程、及び防錆工程を施した。そうすることによって、図1(c)及び図1(d)に示すように、約30μmの銅からなる金属層が形成された。
【0100】
次に、金属層に、レジストを塗布し、電気回路を形成する箇所とミラー部を形成する箇所である45°傾斜面上にレジストが残るように、紫外線(UV)処理を施した。その後、レジスト現像工程を施すことによりレジストを現像した。そうすることによって、電気回路を形成する箇所とミラー部を形成する箇所である45°傾斜面上にレジストが残存した。この状態で、銅をエッチングするエッチング工程を施した後、レジスト剥離工程を施した。そうすることによって、電気回路が形成されると同時に、45°傾斜面上に銅からなるミラー部が形成された。さらに、ソルダーレジストを形成させた後、金めっき処理を行った。そうすることによって、ミラー部上に、反射効率の高い金からなる層が形成された。その際、必要に応じて、電気回路上にも金からなる層を配置させた。
【0101】
次に、図1(g)に示すように、下部クラッド層及びコア部を被覆するようにして、上述の方法により製造した、厚み50μmの上部クラッド層用樹脂フィルムを、真空ラミネーター(V−130)を用いて、80℃、0.3MPaの条件でラミネートした。そして、超高圧水銀灯を用いて、2J/cmの条件で紫外光を上部クラッド層用樹脂フィルムに照射した。その後、上部クラッド層用樹脂フィルムの離型フィルムを剥離した。その後、150℃で60分間熱処理した。そうすることによって、下部クラッド層及びコア部を被覆するように、第2クラッド層(上部クラッド層)を形成した。すなわち、図1(g)に示すように、下部クラッド層とコア部と上部クラッド層とからなる光導波路が形成された光電気複合配線板が形成された。なお、上部クラッド層は、コア部と、コア部の周辺の下部クラッド層とを被覆していればよい。
【0102】
形成された光導波路について、以下に示す評価を行った。
【0103】
(導波路損失測定)
入力側端部、具体的には、一方のミラーが形成されている位置の、第2クラッド層に対して垂直の方向の、第2クラッド層の表面、(又は、光導波路の端部が露出している場合は、そのコア部の一方の端面)に、コア径10μmのNA0.21の光ファイバの端部を、マッチングオイル(シリコーンオイル)を介して、接続した。そして、出力側端部、具体的には、他方のミラーが形成されている位置の、第2クラッド層に対して垂直の方向の、第2クラッド層の表面、(又は、光導波路の端部が露出している場合は、そのコア部の他方の端面)に、コア径200μmのNA0.4の光ファイバの端部を、マッチングオイルを介して、接続した。850nmのVCSEL光源からの光を、入力側端部に接続された光ファイバを介して、光導波路に入射させた。そして、光導波路からの出射光を、出力側端部に接続された光ファイバを介してパワーメータに入射させ、その出射光の光量P1を測定した。
【0104】
一方、入力側端部に接続された光ファイバと出力側端部に接続された光ファイバとを光導波路を介さずに直接接続した場合における、出力側端部に接続された光ファイバからの出射光の光量P0を、上記と同様、測定した。
【0105】
そして、下記式(1)により、光導波路の挿入損失L1を求め、この挿入損失L1を導波路損失とした。
【0106】
L1=−10log(P1/P0) (1)
実施例1で得られた光導波路について、上記評価を行うと、導波路損失が2.7dBであった。このことから、実用可能な光電気複合配線板が製造されたことがわかった。
【0107】
以上のことから、実施例1に係る製造方法によれば、電気回路の形成と同時に、ミラー部を形成することができ、さらに、実用可能な光電気複合配線板が製造されたことがわかった。このことから、実用可能な光電気複合配線板を製造効率高く製造できることがわかった。
【0108】
(実施例2)
実施例2は、第2実施形態に係る実施例である。
【0109】
まず、パナソニック電工株式会社製のR1766の、両面の銅をエッチングにより除去した。このエッチオフしたものを基板として用いた。この基板の表面に、上述の方法により製造した、厚み10μmの下部クラッド層用樹脂フィルムを、真空ラミネーター(V−130)を用いて、60℃、0.2MPaの条件でラミネートした。そして、超高圧水銀灯を用いて、2J/cmの条件で紫外光を下部クラッド層用樹脂フィルムに照射した。その後、下部クラッド層用樹脂フィルムの離型フィルムを剥離した。その後、150℃で30分間熱処理し、さらに、酸素プラズマ処理を施した。そうすることによって、基板上に、下部クラッド層用樹脂フィルムが硬化した第1クラッド層(下部クラッド層)が形成された。
【0110】
次に、下部クラッド層の表面に、上述の方法により製造した、厚み40μmのコア部用樹脂フィルムを、真空ラミネーター(V−130)を用いて、60℃、0.2MPaの条件でラミネートした。
【0111】
そして、幅40μm、長さ120mmの直線パターンのスリットを形成したネガマスクを、コア部用樹脂フィルムの表面に載置した。その後、照射光が略平行光になるように調整された超高圧水銀灯で3J/cmの光量で紫外光を、コア部用樹脂フィルムの、スリットに対応する部分を光硬化させた。
【0112】
次に、コア部用樹脂フィルムの離型フィルムを剥離した。その後、140℃で2分間熱処理を行なった。そして、現像液として55℃に調整した水系フラックス洗浄剤(荒川化学工業株式会社製のパインアルファST−100SX)を用いて現像処理した。そうすることによって、コア部用樹脂フィルムの未露光部分が溶解除去される。そして、さらに、水で仕上げ洗浄した後エアブローした。その後、100℃で10分間乾燥させた。そうすることによって、図2(a)に示すようなコア部が形成された。
【0113】
次に、図2(b)に示すように、下部クラッド層及びコア部を被覆するようにして、上述の方法により製造した、厚み50μmの上部クラッド層用樹脂フィルムを、真空ラミネーター(V−130)を用いて、80℃、0.3MPaの条件でラミネートした。そして、超高圧水銀灯を用いて、2J/cmの条件で紫外光を上部クラッド層用樹脂フィルムに照射した。その後、上部クラッド層用樹脂フィルムの離型フィルムを剥離した。その後、150℃で60分間熱処理した。なお、上部クラッド層は、コア部と、コア部の周辺の下部クラッド層とを被覆していればよい。
【0114】
次に、図2(c)に示すように、刃先の一方の面が、刃の面方向に平行な面であって、他方の面が、刃の面方向に対する角度(頂角)が45°である面である刃(株式会社ディスコ製のダイシングブレード(粒度5000番))を用い、回転数10000rpm、移動速度0.1mm/秒の条件で、コア部の両端部から10mmの位置を、2カ所切り込んだ。そうすることによって、図2(c)に示すように、45°傾斜面を有する凹部が、コア部を完全に切断するように形成された。なお、この際、コア部とともに、上部クラッド層も切断される。
【0115】
次に、下部クラッド層用樹脂フィルムの製造する際に用いた樹脂ワニスを、トルエンとMEKとを、質量比で3:7で混合した混合溶剤で50倍に希釈した溶液を、45°傾斜面にブラシで薄く塗布した。その後、100℃で30分間乾燥した後に、超高圧水銀灯で1J/cmの条件で紫外光を照射して露光した。その後、さらに120℃で10分間熱処理を行なった。そうすることによって、45°傾斜面が平滑化された。
【0116】
次に、コア部の傾斜面や上部クラッド層に対して、膨潤工程、過マンガン酸処理工程、及び還元処理工程を施した。そうすることによって、コア部の傾斜面や上部クラッド層の表面がエッチングされ、その表面に凹凸が形成された。その後、さらに、クリーナーコンディショニング工程、ソフトエッティング工程、プリディップ工程、キャタリスト工程、アクセレレーター工程、及び無電解銅めっき工程を施した。そうすることで、無電解銅めっきからなる金属の薄層が形成された。その後、脱脂工程、酸活性工程、電解銅めっき工程、及び防錆工程を施した。そうすることによって、図2(d)に示すように、約30μmの銅からなる金属層が形成された。
【0117】
次に、金属層に、レジストを塗布し、電気回路を形成する箇所とミラー部を形成する箇所である45°傾斜面上にレジストが残るように、紫外線(UV)処理を施した。その後、レジスト現像工程を施すことによりレジストを現像した。そうすることによって、電気回路を形成する箇所とミラー部を形成する箇所である45°傾斜面上にレジストが残存した。この状態で、銅をエッチングするエッチング工程を施した後、レジスト剥離工程を施した。そうすることによって、電気回路が形成されると同時に、45°傾斜面上に銅からなるミラー部が形成された。さらに、ソルダーレジストを形成させた後、金めっき処理を行った。そうすることによって、ミラー部上に、反射効率の高い金からなる層が形成された。その際、必要に応じて、電気回路上にも金からなる層を配置させた。
【0118】
以上の工程により、図2(e)に示すように、下部クラッド層とコア部と上部クラッド層とからなる光導波路が形成された光電気複合配線板が形成された。
【0119】
形成された光導波路について、実施例1と同様の、導波路損失測定を行った。その結果、実施例2で得られた光導波路の導波路損失が2.7dBであった。このことから、実用可能な光電気複合配線板が製造されたことがわかった。
【0120】
以上のことから、実施例2に係る製造方法によれば、電気回路の形成と同時に、ミラー部を形成することができ、さらに、実用可能な光電気複合配線板が製造されたことがわかった。このことから、実用可能な光電気複合配線板を製造効率高く製造できることがわかった。
【0121】
本明細書は、上述したように様々な態様の技術を開示しているが、そのうち主な技術を以下に纏める。
【0122】
本発明の一態様に係る光導波路の製造方法は、基板上に形成された第1クラッド層の表面に、コア部を形成して、積層体を形成するコア部形成工程と、前記コア部の前記第1クラッド層と接触している側とは反対側から入射される光を前記コア部内に誘導又は前記コア部から出射される光を前記第1クラッド層と接触している側とは反対側に導出するように、光を反射させるための傾斜面を、前記コア部に形成する傾斜面形成工程と、前記積層体の、前記コア部が形成された側の表面のうち、少なくとも前記傾斜面上及び電気回路を形成する箇所に金属層を形成する金属層形成工程と、前記傾斜面上及び前記電気回路を形成する箇所に前記金属層を残存させるように、前記金属層を除去することによって、前記電気回路の形成と同時に、前記傾斜面上に前記金属層からなるミラー部を形成する金属層除去工程と、前記第1クラッド層上に形成されたコア部を埋設するように第2クラッド層を形成するクラッド層形成工程とを備えることを特徴とする。
【0123】
このような構成によれば、電気回路の形成と同時に、コア部の傾斜面上に金属層からなるミラー部を形成することができる等の、製造効率の高い光電気複合配線板の製造方法を提供することができる。
【0124】
具体的には、まず、傾斜面形成工程で、コア部に傾斜面を形成し、金属層形成工程で、少なくとも前記傾斜面及び電気回路を形成する箇所を覆うように金属層を形成する。その金属層を形成された積層体に対して、前記傾斜面上及び前記電気回路を形成する箇所に前記金属層を残存させるように、前記金属層を除去する金属層除去工程を施す。そうすることによって、前記電気回路の形成と同時に、前記傾斜面上に前記金属層からなるミラー部を形成することができる。よって、前記電気回路の形成と前記ミラー部の形成とを別に行う場合と比較して、光電気複合配線板の製造効率が高くなると考えられる。
【0125】
また、本発明の他の一態様に係る光導波路の製造方法は、第1クラッド層上に形成されたコア部を埋設するように第2クラッド層を形成して、積層体を形成するクラッド層形成工程と、前記コア部の前記第1クラッド層と接触している側とは反対側から入射される光を前記コア部内に誘導又は前記コア部から出射される光を前記第1クラッド層と接触している側とは反対側に導出するように、光を反射させるための傾斜面を、前記コア部に形成する傾斜面形成工程と、前記積層体の、前記第2クラッド層が形成された側の表面のうち、少なくとも前記傾斜面上及び電気回路を形成する箇所に金属層を形成する金属層形成工程と、前記傾斜面上及び前記電気回路を形成する箇所に前記金属層を残存させるように、前記金属層を除去することによって、前記電気回路の形成と同時に、前記傾斜面上に前記金属層からなるミラー部を形成する金属層除去工程とを備えることを特徴とする。
【0126】
このような構成によれば、電気回路の形成と同時に、コア部の傾斜面上に金属層からなるミラー部を形成することができる等の、製造効率の高い光電気複合配線板の製造方法を提供することができる。
【0127】
具体的には、まず、傾斜面形成工程で、コア部に傾斜面を形成し、金属層形成工程で、少なくとも前記傾斜面及び電気回路を形成する箇所を覆うように金属層を形成する。その金属層を形成された積層体に対して、前記傾斜面上及び前記電気回路を形成する箇所に前記金属層を残存させるように、前記金属層を除去する金属層除去工程を施す。そうすることによって、前記電気回路の形成と同時に、前記傾斜面上に前記金属層からなるミラー部を形成することができる。よって、前記電気回路の形成と前記ミラー部の形成とを別に行う場合と比較して、光電気複合配線板の製造効率が高くなると考えられる。
【0128】
また、前記クラッド層形成工程で、第1クラッド層上に形成されたコア部を埋設するように第2クラッド層を形成した後に、前記傾斜面形成工程、前記金属層形成工程、及び前記金属層除去工程を施すので、前記コア部の表面に、金属やレジスト等が残留することがほとんどなくなると考えられる。
【0129】
また、前記各光電気配線板の製造方法において、前記金属層除去工程の後に、少なくとも前記ミラー部上に、前記ミラー部を構成する金属より腐食しにくい耐腐食性金属からなる耐腐食性金属層を形成する工程を備えることが好ましい。
【0130】
このような構成によれば、信頼性の高い光電気配線板を製造することができる。また、得られた光電気配線板において、前記耐腐食性金属層の密着性の高いものが得られる。
【0131】
具体的には、以下のように考えられる。
【0132】
まず、前記ミラー部上に、前記ミラー部を構成する金属より腐食しにくい耐腐食性金属からなる耐腐食性金属層を形成することによって、前記耐腐食性金属層がさび等の腐食の発生を抑制することができると考えられる。このことから、前記耐腐食性金属層の腐食による、前記耐腐食性金属層での光の反射率の低下が発生することを抑制することができると考えられる。よって、得られた光電気配線板の信頼性が高いものになると考えられる。また、前記耐腐食性金属層として、例えば、金からなる層等を用いることによって、光に対して、高い反射率を実現でき、さらに、前記耐腐食性金属層の腐食による、反射率の低下を抑制できる。
【0133】
次に、傾斜面に直接、耐腐食性金属層、例えば、金からなる層を形成する場合より、電気配線と同時に形成させたミラー部を構成する金属層、例えば、銅からなる層を介在させて、耐腐食性金属層を形成させた場合のほうが、耐腐食性金属層の密着性が高まると考えられる。よって、このような方法によれば、光電気配線板の信頼性を高めることができる耐腐食性金属層を、密着性の高い状態で傾斜面に形成できると考えられる。
【0134】
また、前記各光電気配線板の製造方法において、前記金属層形成工程の前に、前記積層体の、前記金属層形成工程で金属層を形成させる側の表面を粗化する工程を備えることが好ましい。
【0135】
このような構成によれば、製造効率のより高い光電気複合配線板の製造方法を提供することができる。このことは、前記積層体の表面上に容易に金属層を形成させることができることによると考えられる。さらに、前記金属層が前記積層体の表面から剥離しにくくなると考えられる。すなわち、前記ミラー部が傾斜面から剥離しにくく、また、前記電気回路が前記積層体から剥離にくくなると考えられる。
【0136】
本発明の他の一態様に係る光電気複合配線板は、前記光電気複合配線板の製造方法によって得られたことを特徴とする。
【0137】
このような構成によれば、所定の角度をなす傾斜面上にミラー部が形成された光導波路と、電気回路とを備える光電気複合配線板が得られる。なお、前記傾斜面として、前記第1クラッド層の反対側(第2クラッド層側)から入射される光を前記コア部内に誘導又は前記コア部から出射される光を前記第1クラッド層の反対側(第2クラッド層側)に導出するように、光を反射させることができる傾斜面が形成された光導波路を備える光電気複合配線板が得られる。
【0138】
また、前記光電気複合配線板において、前記ミラー部が、銅からなり、前記耐腐食性金属層が、金からなることが好ましい。
【0139】
このような構成によれば、前記傾斜面上に、前記ミラー部を介して形成される前記耐腐食性金属層が金からなるので、信頼性の高い光電気複合配線板が得られる。また、金からなる耐腐食性金属層が、銅からなるミラー部を介して形成されるので、金からなる耐腐食性金属層が傾斜面に直接形成される場合より、密着性の高い光電気複合配線板が得られる。
【0140】
また、前記光電気複合配線板において、前記ミラー部と前記電気回路とが、同組成からなり、前記ミラー部と前記電気回路との厚みが、同一であることが好ましい。
【0141】
このような構成によれば、受光素子や発光素子等の実装精度の優れた光電気複合配線板が得られる。
【0142】
このことは、以下のことによると考えられる。
【0143】
まず、前記ミラー部と前記電気回路との厚みの差が大きくなると、前記光電気複合配線板の前記ミラー部が形成されている面を、前記光電気複合配線板の面方向に垂直な方向から見たときの、前記電気回路に対する前記ミラー部の位置が、前記ミラー部が傾斜していることから、ずれる傾向がある。このため、基板に設けたアライメントマーク等に基づいて受光素子や発光素子等を実装する際、その受光素子や発光素子等が、前記ミラー部が形成されている位置にあわせて実装しようとしても、所定の位置からずれる傾向がある。このとき、前記ミラー部と前記電気回路との厚みが、同一であれば、このようなずれの発生を抑制でき、受光素子や発光素子等の実装精度の優れた光電気複合配線板が得られると考えられる。
【符号の説明】
【0144】
11 基板
12 第1クラッド層(下部クラッド層)
13 コア部
14 刃(ダイシングブレード)
15 凹部
15a 傾斜面
16 金属層
16a ミラー部
17 第2クラッド層(上部クラッド層)
18 光電気複合配線板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に形成された第1クラッド層の表面に、コア部を形成して、積層体を形成するコア部形成工程と、
前記コア部の前記第1クラッド層と接触している側とは反対側から入射される光を前記コア部内に誘導又は前記コア部から出射される光を前記第1クラッド層と接触している側とは反対側に導出するように、光を反射させるための傾斜面を、前記コア部に形成する傾斜面形成工程と、
前記積層体の、前記コア部が形成された側の表面のうち、少なくとも前記傾斜面上及び電気回路を形成する箇所に金属層を形成する金属層形成工程と、
前記傾斜面上及び前記電気回路を形成する箇所に前記金属層を残存させるように、前記金属層を除去することによって、前記電気回路の形成と同時に、前記傾斜面上に前記金属層からなるミラー部を形成する金属層除去工程と、
前記第1クラッド層上に形成されたコア部を埋設するように第2クラッド層を形成するクラッド層形成工程とを備えることを特徴とする光電気複合配線板の製造方法。
【請求項2】
第1クラッド層上に形成されたコア部を埋設するように第2クラッド層を形成して、積層体を形成するクラッド層形成工程と、
前記コア部の前記第1クラッド層と接触している側とは反対側から入射される光を前記コア部内に誘導又は前記コア部から出射される光を前記第1クラッド層と接触している側とは反対側に導出するように、光を反射させるための傾斜面を、前記コア部に形成する傾斜面形成工程と、
前記積層体の、前記第2クラッド層が形成された側の表面のうち、少なくとも前記傾斜面上及び電気回路を形成する箇所に金属層を形成する金属層形成工程と、
前記傾斜面上及び前記電気回路を形成する箇所に前記金属層を残存させるように、前記金属層を除去することによって、前記電気回路の形成と同時に、前記傾斜面上に前記金属層からなるミラー部を形成する金属層除去工程とを備えることを特徴とする光電気複合配線板の製造方法。
【請求項3】
前記金属層除去工程の後に、少なくとも前記ミラー部上に、前記ミラー部を構成する金属より腐食しにくい耐腐食性金属からなる耐腐食性金属層を形成する工程を備える請求項1又は請求項2に記載の光電気複合配線板の製造方法。
【請求項4】
前記金属層形成工程の前に、前記積層体の、前記金属層形成工程で金属層を形成させる側の表面を粗化する工程を備える請求項1〜3のいずれか1項に記載の光電気複合配線板の製造方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の光電気複合配線板の製造方法によって得られたことを特徴とする光電気複合配線板。
【請求項6】
前記ミラー部が、銅からなり、
前記耐腐食性金属層が、金からなる請求項5に記載の光電気複合配線板。
【請求項7】
前記ミラー部と前記電気回路とが、同組成からなり、
前記ミラー部と前記電気回路との厚みが、同一である請求項5又は請求項6に記載の光電気複合配線板。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−98332(P2012−98332A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−243437(P2010−243437)
【出願日】平成22年10月29日(2010.10.29)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】