説明

免疫原性のポリペプチドおよびモノクローナル抗体

肺炎連鎖球菌に対する免疫応答を発現させるための組成物および方法を提供する。さらに詳細には、本組成物および方法は、PhtDのフラグメントおよびそれらの変異体、ならびに、ポリペプチドをコードまたは発現する、核酸、ベクター、およびトランスフェクト細胞を含む、免疫原性のポリペプチドに関する。免疫原性のポリペプチドの作製および使用方法についても記載する。

【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本願は、参照することによりその全体が本明細書に援用される、2007年7月23日に出願した米国仮特許出願第60/961,723号の利益を主張する。
【技術分野】
【0002】
本発明は免疫学に関し、さらに詳細には、細菌に対する免疫応答の誘発に関する。
【背景技術】
【0003】
肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)は、肺、中枢神経系(CNS)、中耳、および鼻道を含む、幾つかの臓器に感染しうる、どこにでもある普遍的なヒト病原体である。感染は、気管支炎、肺炎、髄膜炎、副鼻腔感染症、および敗血症などのさまざまな症状をもたらす。 肺炎連鎖球菌はヒトにおける細菌性の髄膜炎の主な原因であり、抗生物質による治療にもかかわらず、著しく高い死亡率および罹患率と関わりがある(非特許文献1)。
【0004】
現在、利用可能な肺炎球菌のワクチンは2種類存在する。1つは、肺炎球菌の感染を引き起こす莢膜型の菌株の約90%を代表する、23種類の異なる莢膜多糖類からなる成人用のワクチンである。しかしながら、このワクチンは、肺炎球菌の感染の影響を受けやすい年齢層である子供には免疫原性がない。成人では、ワクチンは、菌血症の肺炎に対して約60%の有効性を示したが、年齢または内在する病状が原因で、肺炎球菌の感染の危険性の高い成人では有効性が低くなる(非特許文献2;非特許文献3)。このワクチンは、感染の最も一般的な病型である、非菌血症の肺炎球菌の肺炎に対しては効果を示さなかった。
【0005】
2つ目の利用可能なワクチンは、2歳未満の子供における菌血症の肺炎球菌感染に対して有効な、7価結合型ワクチンである。該ワクチンの肺炎に対する効果も実証されている(非特許文献4)。このワクチンの生産は、7種類の異なる複合体の生産を必要とするため複雑であり、ワクチンが高価であることの原因となる(約200米ドル/子供)。さらには、ワクチンは、非ワクチン型の肺炎連鎖球菌が非常に一般的である発展途上国世界における感染には上手く対処していない(非特許文献5;非特許文献6)。このワクチンは、感染病と同様、中耳炎およびコロニー形成に対しても効果がない。7価結合型ワクチンの使用は、ワクチンに含まれる7種類の多糖類によっては代表されない、コロニー形成の増大および莢膜型の菌株を伴う疾患の増大を引き起こすことが示されている(非特許文献7;非特許文献8;非特許文献9)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Quagliarelloらの(1992) N. Eng. J. Med. 327: 869-872
【非特許文献2】Fedson,およびMusher. 2004. “肺炎球菌の多糖 Vaccine”, pp. 529-588. In Vaccine. S. A. PlotkinおよびW. A. Orenstein(eds.)、W. B. SaundersおよびCo., Philadelphia, PA;
【非特許文献3】ShapiroらのN. Engl. J. Med. 325:1453-1460(1991)
【非特許文献4】BlackらのArch. Pediatr. 11(7):485-489(2004)
【非特許文献5】Di FabioらのPediatr. Infect. Dis. J. 20:959-967(2001)
【非特許文献6】Mulholland, Trop. Med. Int. Health 10:497-500(2005)
【非特許文献7】BogaertらのLancet Infect. Dis. 4:144-154(2004)
【非特許文献8】EskolaらのN. Engl. J. Med. 344:403-409(2001)
【非特許文献9】MbelleらのJ. Infect. Dis. 180:1171-1176(1999)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、肺炎連鎖球菌のための有効な治療が依然として必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
肺炎連鎖球菌に対する免疫応答を誘発するための組成物および方法について記載する。免疫原性のPhtDポリペプチド、特に、それらのフラグメント、誘導体、および変異体、ならびにそれらをコードする核酸が提供される。このようなポリペプチド、フラグメント、誘導体、または変異体について特異性を有するモノクローナル抗体(およびそれらを産生するハイブリドーマ)も提供する。さらには、免疫原性のポリペプチド、誘導体、変異体、およびモノクローナル抗体の生産および使用方法も提供する。
【0009】
本発明は、
a)配列番号:2に対して少なくとも90%の同一性を有する肺炎連鎖球菌(S. pneumoniae)のポリペプチドをコードする核酸;
b)配列番号:2に対して少なくとも90%の同一性を有する肺炎連鎖球菌(S. pneumoniae)のポリペプチドをコードする核酸に対して完全に相補的な核酸;および
c)TがUで置換された、(a)または(b)のRNA
からなる群より選択される単離された核酸を提供する。
【0010】
本発明の好ましい実施の形態によれば、配列の同一性は、少なくとも85%、90%、および、さらに好ましくは95〜100%である。
【0011】
本発明は、配列番号:2に対して、少なくとも 80%、85%、90%、95%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列と、配列番号:2に対して、少なくとも80%、85%、90%、95%、または100%の同一性 を有するポリペプチドに特異的に結合するモノクローナル抗体とを含む単離されたポリペプチドも提供する。
【0012】
本発明の別の態様によれば、
a)配列番号:3に対して少なくとも80%の同一性を有する肺炎連鎖球菌(S. pneumoniae)のポリペプチドをコードする核酸;
b)配列番号:3に対して少なくとも80%の同一性を有する肺炎連鎖球菌(S. pneumoniae)のポリペプチドをコードする核酸に対して完全に相補的な核酸;および
c)TがUで置換された、(a)または(b)のRNA
からなる群より選択される単離された核酸が提供される。
【0013】
本発明の好ましい実施の形態によれば、配列の同一性は、少なくとも85%、90%、およびさらに好ましくは95〜100%である。
【0014】
本発明は、配列番号:3に対して、少なくとも 80%、85%、90%、95%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列と、配列番号:3に対して、少なくとも 80%、85%、90%、95%、または100%の同一性を有するポリペプチドに特異的に結合するモノクローナル抗体とを含む、単離されたポリペプチドも提供する。
【0015】
本発明の別の態様によれば、
a)配列番号:4に対して少なくとも80%の同一性を有する肺炎連鎖球菌(S. pneumoniae)のポリペプチドをコードする核酸;
b)配列番号:4に対して少なくとも80%の同一性を有する肺炎連鎖球菌(S. pneumoniae)のポリペプチドをコードする核酸に対して完全に相補的な核酸;および
c)TがUで置換された(a)または(b)のRNA
からなる群より選択される単離された核酸が提供される。
【0016】
本発明の好ましい実施の形態によれば、配列の同一性は、少なくとも85%、90%、およびさらに好ましくは95〜100%である。
【0017】
本発明は、配列番号:4に対して、少なくとも 80%、85%、90%、95%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列と、配列番号:4に対して、少なくとも 80%、85%、90%、95%、または100%の同一性を有するポリペプチドに特異的に結合するモノクローナル抗体と、を含む単離されたポリペプチドも提供する。
【0018】
本発明のさらなる態様によれば、配列番号:4に示されたアミノ酸配列を有するペプチドの抗原決定基に特異的に結合するモノクローナル抗体も提供する。
【0019】
本発明の好ましい実施の形態によれば、モノクローナル抗体が特異的に結合する抗原決定基は、アミノ酸1およびアミノ酸101にわたる領域において配列番号:4に示されるアミノ酸配列を有するペプチドに配置される。
【0020】
本発明は、配列番号:2、配列番号:3、および配列番号:4、または、配列番号:15、配列番号:16、および配列番号:17からなる群より選択されるそれらの変異体からなる群より選択される免疫原性のフラグメントも提供する。
【0021】
本発明の別の態様によれば、配列番号:2、配列番号:3、および配列番号:4、または、配列番号:15、配列番号:16、および配列番号:17からなる群より選択されるそれらの変異体からなる群より選択されるPhtDの少なくとも1種類のポリペプチドを宿主に投与することを含む、ストレプトコッカス(Streptococcus)属の細菌に対して宿主に免疫性を与える方法、およびストレプトコッカス(Streptococcus)属の細菌による感染を治療する方法も提供する。
【0022】
本発明のさらなる態様によれば、ATCC指定番号XXXXを有するハイブリドーマによって産生される抗体と同一の抗原結合特異性を有するモノクローナル抗体を提供する。
【0023】
本発明の好ましい実施の形態では、モノクローナル抗体は、ATCC指定番号XXXXを有するマウスのハイブリドーマによって産生される1B12、ATCC指定番号XXXXを有するマウスのハイブリドーマによって産生される4D5、およびATCC指定番号XXXXを有するマウスのハイブリドーマによって産生される9E11からなる群より選択される。
【0024】
本発明は、宿主におけるストレプトコッカス(Streptococcus)属の細菌による感染を予防する方法および治療する方法であって、ATCC指定番号XXXXを有するマウスのハイブリドーマによって産生される1B12、ATCC指定番号XXXXを有するマウスのハイブリドーマによって産生される4D5、およびATCC指定番号XXXXを有するマウスのハイブリドーマによって産生される9E11からなる群より選択される少なくとも1つのモノクローナル抗体を、宿主に投与することを含む方法についても提供する。
【0025】
本発明の好ましい実施の形態では、ストレプトコッカス(Streptococcus)属の細菌による感染の予防および/または治療するため、少なくとも2種類のモノクローナル抗体が投与される。
【0026】
本発明の別の態様によれば、生物学的サンプルにおけるタンパク質の量を決定する方法であって、
生物学的試験サンプルを、ATCC指定番号XXXXを有するマウスのハイブリドーマによって産生される1B12、ATCC指定番号XXXXを有するマウスのハイブリドーマによって産生される4D5、およびATCC指定番号XXXXを有するマウスのハイブリドーマによって産生される9E11、またはそれらの誘導体からなる群より選択されるモノクローナル抗体に曝露し、
サンプルに結合する抗体または誘導体の量を測定し、
生物学的試験サンプルに結合している量を対照の生物学的サンプルに観察される結合量と比較する、
各工程を有してなり、
対照の生物学的サンプルに対する生物学的試験サンプルにおける結合の増加が、その中のタンパク質の存在を示唆することを特徴とする方法を提供する。
【0027】
本発明のさらなる態様によれば、生物学的サンプルにおけるストレプトコッカス(Streptococcus)属の細菌またはそれらのタンパク質を検出する方法が提供され、本方法は、
(a)特異性を有するサンプルの成分に対する抗体を考慮する条件下で、生物学的試験サンプルを、ATCC指定番号XXXXを有するマウスのハイブリドーマによって産生される1B12、ATCC指定番号XXXXを有するマウスのハイブリドーマによって産生される4D5、およびATCC指定番号XXXXを有するマウスのハイブリドーマによって産生される9E11、またはそれらの誘導体からなる群より選択される少なくとも1つのモノクローナル抗体に曝露し、
(b)生物学的試験サンプルの成分に結合する抗体の量を決定し、
(c)対照サンプルへの結合量に対する生物学的試験サンプルに結合する抗体の量を比較する、
各工程を有してなり、
対照の生物学的サンプルと比較して、生物学的試験サンプル成分への抗体の結合量が顕著に多いことにより、サンプル中にストレプトコッカス(Streptococcus)属の細菌またはそれらのタンパク質の存在が示唆されることを特徴とする。
【0028】
生物学的サンプルにおけるストレプトコッカス(Streptococcus)属の細菌またはそれらのタンパク質を検出するためのキットも本発明によって提供され、前記キットは、
ATCC指定番号XXXXを有するマウスのハイブリドーマによって産生される1B12、ATCC指定番号XXXXを有するマウスのハイブリドーマによって産生される4D5、およびATCC指定番号XXXXを有するマウスのハイブリドーマによって産生される9E11、またはそれらの誘導体からなる群より選択される少なくとも1つのモノクローナル抗体と、
使用説明書と、
を有してなる。
【0029】
さらなる態様および実施の形態は、上述の典型的な態様および実施の形態に加えて、以下の詳細な説明を参照することによって明らかになるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0030】
モノクローナル抗体の結合部位を特定し、ポリクローナル血清に由来する交差反応性の抗体を吸収し、防御エピトープを取り囲むPhtDの領域を画成し、完全長タンパク質によって提供されるもの、および、製造の間に利点を提供しうるものよりも高い解像度で、ヒト免疫応答(臨床試験において)を特徴づける、免疫学的薬剤または手段として有用なポリペプチドおよび核酸を提供する。試験試薬としてのこのトランケート型のタンパク質の回収は、多価ワクチンに対してPhtDの個人の寄与の特徴付けを可能にするであろう。
【0031】
1つの実施の形態では、PhtDに対する免疫応答を刺激し、それによって有機体を治療することによる、ストレプトコッカス(Streptococcus)属の細菌などのPhtDを発現する有機体の存在に関係する病状の治療および/または予防に有用な組成物および方法を提供する。免疫応答は、PhtD、それらの免疫原性のフラグメント、またはそれらの変異体、またはそれらのいずれかをコードする核酸の宿主への投与後に起こることが示されている。このような事例では、PhtD、それらの免疫原性のフラグメント、またはそれらの変異体は、免疫原として作用する。本明細書では「免疫原」は、ポリペプチド、ペプチド、フラグメント、またはそれらの変異体であり、それぞれ、免疫原が投与される宿主において免疫応答を生じるPhtDに由来する。免疫応答は、免疫原の少なくとも1つのエピトープに結合する交代の産生、および/または、免疫原のエピトープを発現する細胞に対する細胞の免疫応答の発生を含みうる。反応は、例えば、抗体反応の増大(例えば 抗体の量、親和性/親和力(avidity)の増大)、または、細胞の反応の増大(例えば、T細胞の活性化数の増大、T細胞受容体の親和性/親和力の増大)を検出することによる、免疫原に対して存在する免疫応答の増強として検出されうる。免疫応答の他の測定は、当技術分野で既知であり、宿主における免疫応答の存在の決定に利用することができるであろう。これらを決定するための標準的な方法は、当技術分野で利用可能である。特定の実施の形態では、免疫応答は検出可能であるが、必ずしも防御的である必要はない。このような事例では、免疫原を含む組成物は、免疫学的組成物とみなされうる。特定の実施の形態では、免疫応答は防御的であり、PhtDの発現生物(例えばストレプトコッカス(Streptococcus)属)の増殖を妨げるか、あるいは、PhtDの発現生物を宿主から排除する能力を有することを特徴とすることを意味する。このような事例では、免疫原を含む組成物は、依然として免疫学的組成物とみなされる一方で、さらにワクチンと称される場合がある。特定の実施の形態では、複数の免疫原が、単一の組成物に用いられる。
【0032】
PhtDの免疫原性のフラグメント(例えば免疫原)は、フラグメントの作製および使用方法と共に、本明細書に記載されている。本明細書に記載される免疫原は、完全長のPhtD(シグナル配列の有無に関わらず)、それらのPhtDフラグメント、およびそれらの変異体を含めたポリペプチドを含む。用いられるアミノ酸配列は、肺炎連鎖球菌のPhtDに由来し(GenBank取得番号 AF318955; AdamouらのInfect. Immun. 69 (2), 949-958 (2001))、下記のアミノ酸配列を有することが好ましい:

好ましい免疫原性の組成物は、例えば、配列番号:2、3、4、15、16、または17のアミノ酸配列を有する、1種類以上のポリペプチドを含む。これらのポリペプチドは、1種類以上のミノ酸の同類置換および/またはシグナル配列および/または、Hisなどの検出可能な「タグ」(例えば、MGHHHHHH(配列番号:18);例えば、配列番号:15〜17参照)を含みうる。 典型的には、好ましい免疫原性のフラグメントは、下記を含む:
トランケーション1

トランケーション2

および、
トランケーション3

上述のように、本明細書が提供する免疫原性のポリペプチドは、免疫原性のPhtDのポリペプチド(例えば 配列番号:2、3、および/または4)への1種類以上のアミノ酸の同類置換を含みうる。例えば、本明細書が提供する免疫原は、1種類以上のアミノ酸配列が改変された、天然のPhtDのC−末端部分を含んでいて差し支えなく、それによって約60〜約99%の配列の同一性、または天然のPhtDとの類似性が維持されうる。 典型的な変異体は、配列番号:2、3、4、15、16、および/または17と、約60〜約99%、約60〜約65%、約65〜約70%、約70〜約75%、約80〜約85%、約85〜約90%、約90〜約99%、または約95〜約99%が類似または同一のアミノ酸配列、および/または、フラグメントまたはそれらの誘導体を有する。変異体は、本明細書に教示される方法または当分野で使用可能なものを用いて、免疫原として機能する能力に関して選択することが好ましい。
【0033】
適切なアミノ酸配列の改変としては、本明細書で述べるPhtDポリペプチドのアミノ酸に対して、置換、挿入、欠失または他の変化が挙げられる。置換、欠失、挿入、またはそれらの任意の組合せは、変異体が免疫原性のポリペプチドであるかぎり、単一の変異体に組み込まれて差し支えない。 挿入は、アミノおよび/またはカルボキシル末端の融合、および単一または複数のアミノ酸残基の配列内挿入を含む。挿入は、通常、アミノまたはカルボキシル末端の融合の場合よりも小さい挿入であり、例えば、約1〜4残基である。欠失は、タンパク質の配列からの1種類以上のアミノ酸残基の除去によって特徴付けられる。典型的には、タンパク質分子内の1つの部位で、わずか約2〜6残基が削除される。これらの変異体は、通常、タンパク質をコードするDNAにおけるヌクレオチドの部位特異的な変異誘発によって調製され、それによって変異体をコードするDNAを産生し、その後、組換え細胞培養液にDNAを発現する。既知の配列を有するDNAにおける所定の部位に置換変異を作製するための技術は周知であり、限定はしないが、M13プライマー変異誘発およびPCR変異誘発が挙げられる。アミノ酸置換は、典型的には単一の残基であるが、一度に多くの異なる位置に生じさせることができる。置換型の変異体は、少なくとも1つの残基が除去され、異なる残基がその場所に挿入されたものである。このような置換は、一般に、下記表1に従って作製され、これらは同類置換と称され、一般に、その位置におけるアミノ酸残基の大きさ、極性、電荷、疎水性、または親水性にはほとんどあるいは全く影響せず、特に、免疫原性の低下を生じさせない。しかしながら、他についても当業者によく知られている。
【表1】

【0034】
本明細書で用いられる変異体には、同族のPhtD遺伝子内の1つ以上の部位で多型を発現する別の連鎖球菌(Streptococcus)株に由来する天然のPhtD対立遺伝子も含みうる。変異体は、従来の分子生物学の技術によって産生させることができる。変異体は、天然の遺伝子と比較して同様または同一の配列に関連して、本明細書に記載されている。2つのポリペプチドまたは核酸の配列の類似性および同一性の決定方法は、当業者に容易に理解される。例えば、配列の類似性は、2つの配列を、同一性が最大レベルになるように位置合わせした後に計算することができる。アラインメント(位置合わせ)は、ある程度、アラインメントプログラムにおいて特定のアルゴリズムを使用することによって決まる。例えば、SmithおよびWatermanのAdv. Appl. Math. 2: 482 (1981)に記載される局所的相同性アルゴリズム;NeedlemanおよびWunschのJ. MoL Biol. 48: 443 (1970)に記載される相同性アラインメントアルゴリズム;PearsonおよびLipmanのPNAS USA 85: 2444 (1988) に記載される類似法の探求;これらのアルゴリズムのコンピュータによる実行(GAP、BESTFIT、FASTA、およびTFASTA(Wisconsin Genetics Software Package社のGenetics Computer Group, 575 Science所属のマディソン博士(米国ウィスコンシン州所在));およびAltschulらのNucleic Acids Res. 25:3389-3402, 1977に記載されるBLASTおよびBLAST2.0およびアルゴリズム;AltschulらのJ. Mol. Biol. 215:403-410, 1990;ZukerのM. Science 244:48-52, 1989;JaegerらのPNAS USA 86:7706-7710, 1989;およびJaegerらのMethods Enzymol. 183:281-306, 1989が挙げられる。複数の配列アラインメント法の最近の検討は、NuinらのBMC Bioinformatics 7:471, 2006に提供されている。これらの参照文献の各々は、少なくとも
、配列の類似性のアラインメントおよび計算に関する材料について、参照することにより本明細書に取り込まれる。配列の類似性または同一性を決定する方法は、典型的には使用可能であり、また、場合によっては、これらさまざまな方法の結果が異なりうるものと理解されよう。例えば95%の配列類似性がもたらされる場合、これらの類似性は、計算に許容される方法の少なくとも1つを用いて探知可能でなければならない。
【0035】
本明細書に記載される免疫原性のポリペプチドは、1種類以上のアミノ酸類似体または非天然の立体異性体を含みうる。これらのアミノ酸の類似体および立体異性体は、部位特異的な方法でペプチド鎖に類似のアミノ酸を挿入するため、選択するアミノ酸を有するtRNA分子を帯電させること、および、例えばアンバー・コドンを活用する遺伝子構築物を設計することにより、ポリペプチド鎖に容易に取り込むことができる(少なくともアミノ酸の類似体に関する材料について、参照することによりそのすべてが本明細書に取り込まれる、ThorsonらのMethods in Molec. Biol. 77:43-73 (1991);ZollerのCurrent Opinion in Biotechnology, 3:348-354 (1992);IbbaのBiotechnology & Genetic Engineering Reviews 13:197-216 (1995);CahillらのTIBS, 14(10):400-403 (1989);BennerのTIB Tech, 12:158-163 (1994);IbbaおよびHenneckeのBio/technology, 12:678-682 (1994)を参照)。ペプチドと似ているが、天然のペプチド結合を介した結合ではない、免疫原性のフラグメントを産生することができる。例えば、アミノ酸またはアミノ酸類似体の結合としては、CH2NH--、--CH2S--、--CH2-CH2--、--CH=CH--(シスおよびトランス)、--COCH2--、--CH(OH)CH2--、および-CHH2SO-- が挙げられる(これらおよび/または他のものは、少なくとも結合に関する材料に関して、参照することによりそれぞれが本明細書に取り込まれる、Spatola, A. F.の“Peptide backbone modifications: A structure-activity analysis of Peptides containing amide bond surrogates, conformational constraints, and related backbone modifications.” In Chemistry and Biochemistry of Amino Acids, Peptides, and Proteins, pp. 267-357. Weinstein, B. editor, Marcel Dekker, New York, N.Y. (1983);Morley, TrendsのPharm. Sci. 1(2):463-468 (1980);HudsonらのInt J Pept Prot Res 14:177-185 (1979)(--CH2NH--、CH2CH2--);SpatolaらのLife Sci 38:1243-1249 (1986)(--CH H2-S);HannのJournal of the Chemical Society: Perkin Transactioins 1 pp.307-314 (1982)(--CH-CH--、シスおよびトランス);AlmquistらのJ. Med. Chem. 23:1392-1398 (1980)(--COCH2--);Jennings-WhiteらのTetrahedron Lett 23:2533 (1982)(--COCH2--);Szelkeらの欧州特許出願公開第0045665号明細書(1982)(--CH(OH)CH2--);HolladayらのTetrahedron. Lett 24:4401-3404 (1983)(--C(OH)CH2--);およびHrubyのLife Sci 31:189-199 (1982)(--CH2-S--);に記載されている)。
【0036】
アミノ酸 類似体および立体異性体は、しばしば、さらに経済的な生産、より大きい化学安定性、増強された薬理学的特性(半減期、吸収、効能、有効性など)、特異性の変化(例えば物活性の広域スペクトル)などの促進された、または望ましい特性を有する。例えばD−アミノ酸は、天然のペプチダーゼによって認識されないことから、さらに安定なペプチドを生成するために使用することができる。同型のD−アミノ酸を有する共通配列の1種類以上のアミノ酸の組織的置換(例えば、L−リジンに代えてD−リジン)を使用して、さらに安定なペプチドを生成することができる。システイン残基を使用して、2種類以上のペプチドを一緒に環化または付加することもできる。これは、ペプチドを特定の構造内に拘束するために有益でありうる(参照することにより本明細書に取り込まれる、RizoおよびGieraschのAnn. Rev. Biochem. 61:387 (1992))。
【0037】
他の変異体には、1種類以上の免疫標的配列(例えば、GYGRKKRRQRRR(TAT;配列番号:19)、RQIKIWFQNRRMKWKK(AntP;配列番号:20)、SRRHHCRSKAKRSRHH(PER1−1;配列番号:21)、またはGRRHHRRSKAKRSR(PER1−2;配列番号:22))が免疫原性のPhtDポリペプチドに連結しているものが含まれる。よって、免疫原性の融合タンパク質は、本発明の実施において、生成し、利用して差し支えない。
【0038】
1つの実施の形態では、配列番号:2、3、または4などのPhtDポリペプチドをコードする核酸、もしくはそれらの変異体が提供される(例えば、配列番号:5〜10)。縮重変異体(degenerate variants)を含む、これらの配列の変異体も提供される。特定の実施の形態では、ぺプチド配列をコードする核酸分子は、下記にさらに詳しく述べるように、発現ベクターに導入されて差し支えない。このような実施の形態では、ペプチド配列は、アミノ酸配列に対応するヌクレオチドによってコードされる。下記表2に示すように、さまざまなアミノ酸をコードするヌクレオチドの特定の組合せは、当業者が用いるさまざまな参照文献に記載される通り、当技術分野で周知である(例えば、Lewinの B. Genes V, Oxford University Press, 1994参照)。核酸変異体は、対象とするポリペプチドをコードするヌクレオチドの任意の組合せを使用して差し支えない。
【表2】

【0039】
配列番号:2、3、4、15、16、および17のポリペプチドをコードする典型的な核酸(例えば、Hisタグの存在下および不存在下で)を以下に示す:
トランケーション1(Hisタグなし):

【0040】
トランケーション1(His−タグ化):

【0041】
トランケーション2(Hisタグなし):

【0042】
トランケーション2(His−タグ化):

【0043】
トランケーション3(Hisタグなし):

【0044】
トランケーション3(His−タグ化):

【0045】
非常にストリンジェントな条件下で、配列番号:2、3、4、15、16、および/または17のいずれか、または配列番号:5〜10のいずれかをコードするヌクレオチド配列に対応するハイブリッド形成プローブの任意の部分にハイブリッドする単離された核酸も提供する。ハイブリッドする核酸のハイブリッド部位は、典型的には、少なくとも15残基(例えば、15、20、25、30、40、またはそれ以上)の長さのヌクレオチドである。ハイブリッド部位は、それがハイブリッドする配列の部位と、少なくとも65%、80%、90%、95%、または99%一致している。ハイブリッドする核酸は、例えば、クローニング・プローブ、プライマー(例えばPCRプライマー)、または診断用プローブとして有用である。核酸二重鎖またはハイブリッド安定性は、プローブが標的DNAから解離する温度である、融解温度Tmとして表される。この融解温度は、必要とされるストリンジェンシー条件を定義するために用いられる。配列が関係し、プローブに対して、同一というよりはむしろ、実質的に同一であると判断される場合、最初に、同族のハイブリッド形成のみが特定の濃度の塩と共に生じる最低温度を確立するのに有用である(例えば、さまざまな濃度のSSCまたはSSPE緩衝剤を使用する)。1%の不適合によりTmが1℃低下すると仮定すると、ハイブリッド形成反応における最終的な洗浄温度はそれに応じて低下する(例えば、95%を超える同一性を有する配列を探す場合、最終的な洗浄温度は5℃低下する)。実際には、Tmの変化は、1%の不適合あたり、0.5〜1.5℃でありうる。非常にストリンジェントな条件は、5×SSC/5×デンハート液/1.0%SDS中、68℃でハイブリッドし、0.2×SSC/0.1% SDS中、室温で洗浄することを含む。「適度にストリンジェントな条件」は、3×SSC中、42℃で洗浄することを含む。塩の濃度および温度は、プローブおよび標的核酸の同一性の最適レベルを達成するために変化させうる。このようなストリンジェンシー条件に関するさらなる指導は、当技術分野において容易に入手することができ、例えば、Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Third Edition by Sambrooket al. Cold Spring Harbor Press, 2001を参照のこと。
【0046】
発現ベクターも、本発明の実施における用途に適しているであろう。発現ベクターは、典型的には、ポリペプチドをコードする非相同の核酸配列(「コード配列」)に機能的に結合するフランキング配列からなる。他の実施の形態では、またはこのような実施の形態と組み合わせて、フランキング配列はコード配列の複製、転写、および/または翻訳をもたらす能力を有することが好ましく、コード配列に機能的に結合する。「機能的に結合」されるとは、核酸配列がそれらの通常の機能を行うように構成されることを示している。例えば、プロモーターがコード配列の転写を導く能力がある場合、プロモーターは、コード配列に機能的に結合する。フランキング配列は、正確に機能するために、コード配列と接触する必要はない。よって、例えば、介在する、翻訳されていない、すでに転写された配列は、プロモーター配列とコード配列の間に存在し、プロモーター配列はコード配列に機能的に結合されているとみなされうる。フランキング配列は、同族の(例えば宿主細胞における同一の種および/または株から)、非相同の(例えば宿主細胞種または株以外の種から)、ハイブリッドの(例えば2つ以上の起源に由来するフランキング配列の組合せ)、または合成のものであって差し支えない。フランキング配列はまた、宿主のゲノムにおいてポリペプチドをコードする、ヌクレオチド配列の発現を制御する機能をする配列でありうる。
【0047】
特定の実施の形態では、フランキング配列は、標的細胞において高水準に遺伝子を発現させる転写調節領域であることが好ましい。転写調節領域は、例えば、プロモーター、エンハンサー、サイレンサー、リプレッサー要素、またはそれらの組合せを含みうる。転写調節領域は、構造特異的であるか、あるいは、組織または細胞型特異的でありうる(例えば、領域は、別の型と比較して、組織また細胞の1つの型において高水準に転写する)。このようにして、転写調節領域の起源は、任意の原核生物または真核生物、任意の脊椎動物または無脊椎動物、または任意の植物であって差し支えなく、フランキング配列は宿主細胞機構において機能し、宿主細胞機構によって活性化されうる。本発明の実施では、広範な転写調節領域が利用されうる。
【0048】
適切な転写調節領域としては、とりわけ、CMVプロモーター(例えばCMV−前初期プロモーター);真核細胞遺伝子に由来するプロモーター(例えばエストロゲン誘発性のニワトリ卵白アルブミン遺伝子、インターフェロン遺伝子、グルココルチコイド誘発性チロシンアミノトランスフェラーゼ遺伝子、およびチミジンキナーゼ遺伝子);主要な早期および晩期のアデノウイルス遺伝子プロモーター;SV40早期プロモーター領域(BernoistおよびChambonの1981, Nature 290:304-10);ラウス肉腫ウイルス(RSV)の3’−長端末反復(LTR)に含まれるプロモーター(Yamamotoらの1980, Cell 22:787-97);単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(HSV−TK)・プロモーター(Wagnerらの1981, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 78:1444-45);メタロチオニン遺伝子の制御配列(Brinsterらの1982, Nature 296:39-42);またはβ−ラクタマーゼ・プロモーターなどの原核生物発現ベクターに認められる制御配列において(Villa-Kamaroffらの1978, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 75:3727-31)、tacプロモーター(DeBoerらの1983, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 80:21-25)、またはT7 RNAポリメラーゼ・プロモーター、pBADアラビノースプロモーター、またはpTrcプロモーターにおけるものなどが挙げられる。組織および/または細胞型特異的転写調節領域としては、例えば、膵腺房細胞において活性なエラスターゼI遺伝子調節領域(Swiftらの1984, Cell 38:639-46;Ornitzらの1986, Cold Spring Harbor Symp. Quant. Biol. 50:399-409 (1986);MacDonaldの1987, Hepatology 7:425-515);膵β細胞において活性なインスリン遺伝子調節領域(Hanahan, 1985, Nature 315:115-22);リンパ球様細胞において活性な免疫グロブリン遺伝子調節領域(Grosschedlらの1984, Cell 38:647-58;Adamesらの1985, Nature 318:533-38;Alexanderらの1987, Mol. Cell. Biol., 7:1436-44);睾丸細胞、乳腺細胞、リンパ球様細胞、および肥満細胞におけるマウス乳癌ウイルス調節領域(Lederらの1986, Cell 45:485-95);肝臓におけるアルブミン遺伝子調節領域(Pinkertらの1987, GenesおよびDevel. 1:268-76);肝臓におけるα−フェト−タンパク質遺伝子調節領域(Krumlaufらの1985, Mol. Cell. Biol., 5:1639-48;Hammerらの1987, Science 235:53-58);肝臓におけるα1−アンチトリプシン遺伝子調節領域(Kelseyらの1987, GenesおよびDevel. 1:161-71);骨髄性細胞におけるβ−グロブリン遺伝子調節領域(Mogramらの1985, Nature 315:338-40;Kolliasらの1986, Cell 46:89-94);脳の乏突起膠細胞におけるミエリン塩基性タンパク質遺伝子調節領域(Readheadらの1987, Cell 48:703-12);骨格筋におけるミオシン軽鎖−2遺伝子調節領域(Sani, 1985, Nature 314:283-86);および、視床下部における性腺刺激ホルモン放出ホルモン遺伝子調節領域(Masonらの1986, Science 234:1372-78)、およびメラノーマ細胞におけるチロシナーゼプロモーター(HartのI. Semin Oncol 1996 Feb;23(1):154-8;SidersらのCancer 遺伝子Ther 1998 Sep-Oct;5(5):281-91)が挙げられる。他の適切なプロモーターは、当技術分野で既知である。
【0049】
標的とする免疫原をコードする核酸分子は、ウイルスまたは非ウイルスのベクターの一部として投与されうる。1つの実施の形態では、DNAベクターは、標的とする免疫原および/または関連する分子(例えば、同時刺激分子、サイトカインまたはケモカイン)をコードする核酸を患者に送達するために利用される。こうすることで、さまざまな戦略を用いて、このような機構の効率性を改善することができ、例えば、自己複製するウイルスレプリコン(Caleyらの1999. Vaccine, 17: 3124-2135;Dubenskyらの2000. Mol. Med. 6: 723-732;Leitnerらの2000. Cancer Res. 60: 51-55)、コドンの最適化(Liuらの2000. Mol. Ther., 1: 497-500;Dubensky, 上記参照;Huangらの2001. J. Virol. 75: 4947-4951)、インビボにおけるエレクトロポレーション(Wideraらの2000. J. Immunol. 164: 4635-3640)、同時刺激分子、サイトカインおよび/またはケモカインをコードする核酸の取り込み(Xiangらの1995. Immunity, 2: 129-135;Kimらの1998. Eur. J. Immunol., 28: 1089-1103;Iwasakiらの1997. J. Immunol. 158: 4591-3601;Sheerlinckらの2001. Vaccine, 19: 2647-2656)、CpGなどの促進モチーフの取り込み(Gurunathan、上記参照;Leitner、上記参照)、環内のまたはユビキチン処理経路を標的とする配列(Thomsonらの1998. J. Virol. 72: 2246-2252;Veldersらの2001. J. Immunol. 166: 5366-5373)、プライム‐ブースト法(Gurunathan、上記参照;Sullivanらの2000. Nature, 408: 605-609;Hankeらの1998. Vaccine, 16: 439-445;Amaraらの2001. Science, 292: 69-74)、プロテアソーム感受性の切断部位、および、サルモネラ属などの粘膜送達ベクターの使用(Darjiらの1997. Cell, 91: 765-775;Wooらの2001. Vaccine, 19: 2945-2954)の使用が挙げられる。他の方法は当技術分野で既知であり、その一部を下記に記載する。
【0050】
核酸を宿主へ導入するために使用が成功しているさまざまなウイルスベクターとしては、とりわけ、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス(AAV)、ヘルペスウイルス、およびポックスウイルスが挙げられる。このようなウイルスベクターの多くは当分野で入手可能であることが、当分野で理解されよう。本発明のベクターは、当業者に広く利用可能である標準的な組換え技術を用いて構築されうる。このような技術は、下記のような一般的な分子生物学の参考文献に見出すことができる:Molecular Cloning: A Laboratory Manual(Sambrookらの1989, Cold Spring Harbor Laboratory Press);Gene Expression Technology(Methods in Enzymology, Vol. 185, edited by D. Goeddel, 1991. Academic Press, San Diego, CA);およびPCR Protocols: A Guide to Methods and Applications(Innisらの1990. Academic Press, San Diego, CA)。
【0051】
好ましいレトロウイルスベクターは、レンチウイルスの誘導体、およびマウスまたは鳥レトロウイルスの誘導体である。適当なレトロウイルスベクターの例としては、例えば、モロニーマウス白血病ウイルス(MoMuLV)、ハーベイマウス肉腫ウイルス(HaMuSV)、マウス乳癌ウイルス(MuMTV)、SIV、BIV、HIVおよびラウス肉腫ウイルス(RSV)が挙げられる。いくつかのレトロウイルスベクターは、複数の外因性の核酸配列を組み込むことができる。組換えレトロウイルスは不完全であるため、それらは感染性ベクター粒子を生じるためには補助を必要とする。この補助は、例えば、レトロウイルス構造遺伝子をコードするヘルパー細胞系によって提供することができる。適当なヘルパー細胞系としては、とりわけ、Ψ2、PA317およびPA12が挙げられる。そのような細胞系を用いて産生したベクターウイルス粒子を、次いで、NIH3T3細胞のような組織細胞系を感染させるのに使用し、大量のキメラレトロウイルス粒子を生成することができる。レトロウイルスベクターは、従来の方法(例えば注入)によって、または標的細胞集団の近傍への「産生細胞系」を移植することによって投与されうる(Culver, K.らの1994, Hum. Gene Ther., 5 (3): 343-79;Culver, K.らのCold Spring Harb. Symp. Quant. Biol., 59: 685-90);Oldfield, E., 1993, Hum. Gene Ther., 4 (1): 39-69)。産生細胞系は、ウイルスベクターを産生し、ウイルス粒子を標的細胞付近に放出するように操作されている。放出されたウイルス粒子の一部は標的細胞と接触し、それらの細胞に感染し、そのようにして本発明の核酸を標的細胞に送達する。標的細胞の感染後、ベクターの核酸の発現が起こる。
【0052】
アデノウイルスベクターは、真核細胞中への遺伝子運搬(Rosenfeld, M.らの1991, Science, 252 (5004): 431-3;Crystal, R.らの1994, Nat. Genet., 8 (1): 42-51)、真核細胞の遺伝子発現研究(Levrero, M.らの1991, Gene, 101 (2): 195-202)、ワクチン開発(Graham, F.およびPrevec, L.の1992, Biotechnology, 20: 363-90)、および動物モデルにおいて(Stratford-Perricaudet, L.らの1992, Bone Marrow Transplant., 9 (Suppl. 1): 151-2 ;Rich, D.らの1993, Hum. Gene Ther., 4 (4): 461-76)、特に有用であることが証明されている。組換えAdをインビボにおけるさまざまな組織に投与するための実験的経路は、とりわけ、気管内導入(Rosenfeld, M.らの1992, Cell, 68 (1): 143-55)、筋肉内注射(Quantin, B.らの1992, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 89 (7): 2581-3)、末梢静脈注射(Herz, J.およびGerard, R.の1993, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 90 (7): 2812-6)および脳への定位接種(Le Gal La Salle, G.らの1993, Science, 259 (5097): 988-90)が挙げられる。
【0053】
アデノ随伴ウイルス(AAV)は、宿主細胞ゲノムへの一体化において、高レベルの感染性、広い宿主域および特異性を示す(Hermonat, P.らの1984, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 81 (20): 6466-70)。また、単純ヘルペスウイルス1型(HSV−1) は、その神経親和性に起因して、特に神経系における使用にとって、さらに別の魅力的なベクター系である(Geller, A.らの1991, Trends Neurosci., 14 (10): 428-32; Gloriosoらの1995, Mol. Biotechnol., 4 (1): 87-99;Gloriosoらの1995, Annu. Rev. Microbiol., 49: 675-710)。
【0054】
ポックスウイルスは別の有用な発現ベクターである(Smithらの1983, Gene, 25 (1): 21-8;Moss, et al, 1992, Biotechnology, 20: 345-62;Moss, et al, 1992, Curr. Top. Microbiol. Immunol., 158: 25-38;Mossらの1991. Science, 252: 1662-1667)。有用であることが分かっているポックスウイルスとしては、とりわけ、ワクシニア、NYVAC、アビポックス、鶏痘、カナリヤポックス、ALVAC、およびALVAC(2)が挙げられる。
【0055】
NYVAC(vP866)は、既知のまたは可能性のある病原性因子をコードするゲノムの必須ではない6つの領域を欠失することによって、ワクシニアウイルスのコペンハーゲンワクチン株から得られた(たとえば、米国特許第5,364,773号および第5,494,807号明細書を参照)。欠失した遺伝子座はまた、外来遺伝子の挿入のための受容体遺伝子座として設計された。欠失した領域は、チミジンキナーゼ遺伝子(TK;J2R)vP410;出血性領域(u;B13R+B14R)vP553;A型封入体領域(ATI;A26L)vP618;血球凝集素遺伝子(HA;A56R)vP723;宿主域遺伝子領域(C7L−K1L)vP804;および、大サブユニットであるリボヌクレオチド還元酵素の(I4L)vP866である。NYVACは、病原性および宿主域に関連する遺伝子産物をコードする、18個のオープンリーディングフレームの特異的欠失によって作製された、遺伝子操作されたワクシニアウイルス株である。NYVACはTAを発現するために有用であることが示されている(例えば、米国特許第6,265,189号明細書を参照)。NYVAC(vP866)、vP994、vCP205、vCP1433、placZH6H4Lreverse、pMPC6H6K3E3およびpC3H6FHVBもまたブダペスト条約の条項に従ってATCCに寄託されており、登録番号はそれぞれVR−2559、VR−2558、VR−2557、VR−2556、ATCC−97913、ATCC−97912、およびATCC−97914である。
【0056】
ALVAC系組換えウイルス(例えば、ALVAC−1およびALVAC−2)もまた、本発明の実施における使用に適している(例えば、米国特許第5,756,103号明細書を参照)。ALVAC(2)は、ALVAC(2)ゲノムがワクシニアプロモーターの制御下にあるワクシニアE3LおよびK3L遺伝子を含む以外は、ALVAC(1)と同一である(米国特許第6,130,066号明細書;Beattieらの1995a,1995b,1991; Changらの1992; Daviesらの1993)。ALVAC(1)およびALVAC(2)の両方が、TAなどの外来DNA配列の発現に有用であることが実証されている(Tartagliaらの1993 a,b; 米国特許第5,833,975号明細書)。ALVACはブダペスト条約の条項に従ってAmerican Type Culture Collection(ATCC)(米国20110−2209,バージニア州マナサス、ユニバーシティ・ブルバード10801所在)に寄託されており、ATCC登録番号はVR−2547であった。
【0057】
別の有用なポックスウイルスベクターはTROVACである。TROVACとは、1日齢の雛のワクチン接種用に認可されている鶏痘ウイルスのFP−1ワクチン株に由来する、プラーククローニングされた単離株である、弱毒化鶏痘をいう。TROVACは同様に、ブダペスト条約の条項に従ってATCCに寄託され、登録番号は2553であった。
【0058】
「非ウイルス」プラスミドベクターもまた、特定の実施の形態において適切でありうる。好ましいプラスミドベクターは、細菌、昆虫、および/または哺乳類宿主細胞に適合する。そのようなベクターとしては、例えば、PCR−II、pCR3、およびpcDNA3.1(Invitrogen社製(米国カリフォルニア州サンディエゴ所在))、pBSII(Stratagene社製(米国カリフォルニア州ラ・ホーヤ所在))、pET15(Novagene社製(米国ウィスコンシン州マディソン所在))、pGEX(PharmaciaBiotech社製(米国ニュージャージー州ピスカタウェイ所在))、pEGFP−N2(Clontech社製(米国カリフォルニア州パロアルト所在))、pETL(BlueBacii(Invitrogen社製))、pDSR−α(国際公開第90/14363号パンフレット)およびpFastBacDual(Gibco−BRL社製(米国ニューヨーク州グランドアイランド所在))、ならびにBluescript(登録商標)プラスミド誘導体(高コピー数のCOLE1系ファージミド、Stratagene Cloning Systems社製(米国カリフォルニア州ラ・ホーヤ所在))、Taq増幅PCR産物のクローニング用に設計されたPCRクローニングプラスミド(例えば、TOPO(商標)TAクローニング(登録商標)キット、PCR2.1(登録商標)プラスミド誘導体(Invitrogen社製(米国カリフォルニア州カールズバッド所在)))が挙げられる。細菌性のベクターもまた本発明と共に用いることができる。これらのベクターとしては、例えば、赤痢菌(Shigella)、サルモネラ菌(Salmonella)、コレラ菌(Vibrio cholerae)、乳酸桿菌属(Lactobacillus)、カルメット・ゲラン桿菌(Bacille calmette guerin)(BCG)、および連鎖球菌(Streptococcus)(例えば、国際公開第88/6626号;同第90/0594号;同第91/13157号;同第92/1796号;および同第92/21376号の各パンフレット参照)が挙げられる。他の多くの非ウイルス性のプラスミド発現ベクターおよび系が当技術分野で既知であり、本発明と共に用いることができる。
【0059】
例えば、DNA−リガンド複合体、アデノウイルス−リガンド−DNA複合体、DNAの直接注入、CaPO4沈殿物、遺伝子銃の技術、エレクトロポレーション、およびコロイド分散系などの他の送達技術もまた本発明の実施に十分であろう。コロイド分散系としては、高分子複合体、ナノカプセル、ミクロスフィア、ビーズ、および、水中油型乳剤、ミセル、混合ミセル、およびリポソームを含む脂質ベ−ス系が挙げられる。本発明の好ましいコロイド系は、インビトロおよびインビボにおける送達媒体として有用な人工膜小胞である、リポソームである。RNA、DNAおよびインタクト(無傷)なビリオンは、水溶液(aqueous)内部にカプセル化され、生物学的に活性な形態で細胞に送達することができる(Fraley, R.らの1981, Trends Biochem. Sci., 6: 77)。リポソームの組成物は、通常、リン脂質、特に相転移温度が高いリン脂質の組合せであり、通常、ステロイド、特に、コレステロールとの組合せである。他のリン脂質または他の脂質も使用して差し支えない。リポソームの物理的特性は、pH、イオン強度、および二価陽イオンの存在に応じて決まる。リポソーム産生において有用な脂質の例としては、ホスファチジル化合物、例えば、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルコリン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルエタノールアミン、スフィンゴ脂質、セレブロシドおよびガングリオシドが挙げられる。特に有用なのは、ジアシルホスファチジルグリセロールであり、ここで脂質部分は、14〜18個の炭素原子、特には16〜18個の炭素原子を含み、飽和している。例示的なリン脂質としては、卵ホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルコリンおよびジステアロイルホスファチジルコリンが挙げられる。
【0060】
ベクターを含む培養細胞も提供される。培養細胞は、ベクターをトランスフェクトされた培養細胞、またはその細胞の子孫であって差し支えなく、ここで、細胞は免疫原性のポリペプチドを発現する。適切な細胞系は当業者に既知であり、例えば、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(American Type Culture Collection)(ATCC)を通じて市販されている。トランスフェクト細胞は、免疫原性のポリペプチドの産生方法に使用することができる。その方法は、免疫原性のポリペプチドを発現させる条件下、随意的に発現配列の制御下で、ベクターを含む細胞を培養する工程を含む。免疫原性のポリペプチドは、標準的なタンパク質精製方法を用いて、細胞または培地から単離することができる。
【0061】
免疫原性のポリペプチドは、より大きいポリペプチドまたはタンパク質の標準的な酵素的開裂を使用して作出することができ、または、タンパク質の化学的技術によって、2種類以上のペプチドまたはポリペプチドを連結させることにより作出することができる。例えば、ペプチドまたはポリペプチドは、今日利用可能な実験装置を使用し、Fmoc(9−フルオレニルメチルオキシカルボニル)またはBoc(tert−ブチルオキシカルボニル)の化学(Applied Biosystems, Inc.社製(米国カリフォルニア州フォスターシティ所在))のいずれかを用いて、化学合成することができる。ペプチドの縮合反応、ネイティブケミカルライゲーション、固相化学、または酵素的ライゲーションによって、2つのフラグメントを、それらのカルボキシル末端およびアミノ末端において、ペプチド結合を介して共有結合させて、免疫原性のPhtDポリペプチドを形成することができる(そこに記載される方法を参照することにより、そのすべてが本明細書に取り込まれる、Synthetic Peptides: A User Guide., Grant, ed., W.H. Freeman and Co., New York, N.Y. (1992);Principles of Peptide Synthesis., Bodansky and Trost, eds. Springer-Verlag Inc., New York, N.Y. (1993);Abrahmsen LらのBiochemistry, 30:4151 (1991);DawsonらのScience, 266:776-779 (1994);Solid Phase Peptide Synthesis, 2nd Edition, Stewart, ed., Pierce Chemical Company, Rockford, IL, (1984))。
【0062】
免疫原性のポリペプチド、および1種類以上のポリペプチドを含む組成物を用いて、抗体を産生させてもよい。よって、被験体においてPhtDに特異的な抗体を産生させる方法は、該被験体に本明細書に記載される免疫原性のPhtDフラグメントを投与することを含む。PhtDポリペプチドと結合する抗体(あるいはフラグメントまたはそれらの誘導体)も本明細書で提供する。
【0063】
抗体は、ポリクローナルまたはモノクローナル抗体であって差し支えなく、完全ヒトまたはヒト化抗体であって差し支えなく、天然の抗体および一本鎖抗体が挙げられる。抗体は、免疫原性のPhtDポリペプチドまたはフラグメント、またはそれらの誘導体を、被験体に投与することによって、インビボにおいて作製することができる。インビトロにおける抗体産生は、ハイブリドーマ法を用いてモノクローナル抗体を作製することを含む。ハイブリドーマ法は当技術分野で周知であり、are described by そこに記載される方法を参照することにより、そのすべてが本明細書に取り込まれる、KohlerおよびMilsteinのNature, 256:495 (1975)、およびHarlowおよびLaneのAntibodies, A Laboratory Manual. Cold Spring Harbor Publications, New York, (1988)に記載されている。
【0064】
一本鎖抗体の産生方法は、当業者に周知である。例えば、米国特許第5,359,046号明細書参照(参照することによりこれらの方法の全体を本明細書に援用する)。一本鎖抗体は、短いペプチドリンカーを使用し、重鎖および軽鎖の可変領域を一緒に融合させることにより作出され、それによって単一分子上に抗原結合部位が再構成される。1つの可変領域のC末端が15〜25のアミノ酸ペプチドまたはリンカーを介して他の可変領域のN末端につながれている、一本鎖抗体の可変フラグメント(scFvs)は、抗原の結合または結合の特異性を顕著に崩壊させることなく、開発されてきた。リンカーは、それらの適切な立体構造の配向性(conformational orientation)において、重鎖および軽鎖が互いに結合するように選択される。例えば、リンカーに関する材料について参照することにより本明細書に取り込まれる、Huston, J. S.らのMethods in Enzym. 203:46-121 (1991)を参照されたい。
【0065】
PhtDポリペプチドに対する完全ヒトおよびヒト化抗体は、本明細書に記載される方法に使用されうる。ヒト化抗体はヒト免疫グロブリン(受容体抗体)を含み、ここで 、受容体の相補性決定領域(CDR)由来の残基は、所望の特異性、親和性、および受容能力を有するマウス、ラット、またはウサギなどの非ヒト種(ドナー抗体)のCDRに由来する残基で置換される。一部の事例では、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク残基は、対応する非ヒト残基で置換される。免疫を付与する際に、ヒト抗体のすべて(full repertoire)(例えば 完全ヒト抗体)を産生する能力のある、トランスジェニック動物(例えばマウス)が用いられうる。キメラおよび生殖細胞系変異マウスにおける抗体の重鎖の連結領域(J(H))遺伝子のホモ接合性欠失は、内因性抗体産生の完全阻害をもたらす。生殖細胞系変異マウスなどにおけるヒト生殖細胞系免疫グロブリン遺伝子アレイの転移は、抗原チャレンジの際にヒト抗体の産生を生じさせる(例えば、JakobovitsらのPNAS USA, 90:2551-255 (1993);JakobovitsらのNature, 362:255-258 (1993);BruggemannらのYear in Immuno., 7:33 (1993))。ヒト抗体 can also be produced in phage display libraries(HoogenboomらのJ. Mol. Biol., 227:381 (1991);MarksらのJ. Mol. Biol., 222:581 (1991))。CoteらおよびBoernerらの技術も、ヒトモノクローナル抗体の調製方法について記載している(Coleらの“The EBV-hybridoma technique and its application to human lung cancer”, Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy, Volume 27, Reisfeld and Sell, eds., pp. 77-96, Alan R. Liss, Inc., New York, N.Y., (1985);BoernerらのJ. Immunol., 147 (1):86-95 (1991))。これらの参照文献は、そこに記載される方法について参照することによりその全体が本明細書に援用される。
【0066】
本明細書では、抗体フラグメントは、ハイブリッドフラグメントを含む、F(ab')2、Fab'、およびFabフラグメントを含む。抗体のこのようなフラグメントは特定のPhtDポリペプチドを結合する能力を保持する。方法を用いて、(ab)発現ライブラリーを構築し(例えば、Huseらの1989 Science 246: 1275-1281参照)、PhtDポリペプチドについて所望の特異性を有するモノクローナルF(ab)フラグメントの迅速かつ効果的な同定を可能にすることができる。ポリペプチドに対するイディオタイプを含む抗体フラグメントは、限定はしないが、(i)抗体分子のペプシン消化によって産生されるF(ab’)2フラグメント;(ii)F(ab’)2フラグメントのジスルフィド架橋を低減することによって生じるFabフラグメント;(iii)抗体分子をパパインおよび還元剤で処理することによって生じるF(ab)フラグメント、および(iv)F(v)フラグメントを含む、当技術分野で既知の技術によって産生されうる。
【0067】
PhtDの免疫原性のポリペプチドを含む組成物、および薬学的に許容される担体についてここに述べる。随意的に、組成物はさらにアジュバントを含む。免疫原性のポリペプチドを含む組成物は、他の免疫原性のポリペプチドの組合せを含んでもよく、例えば、免疫原性の連鎖球菌(Streptococcus)ポリペプチドまたは、PspA、NanA、PsaA、ニューモリシン、PspC、またはそれらの任意の組合せの免疫原性のフラグメントが挙げられる。
【0068】
随意的に、本明細書に記載される組成物は粘膜面への投与に適している。組成物は、例えば、スプレー式点鼻薬、ネブライザー溶液、または噴霧吸入用エアロゾルでありうる。したがって、組成物は容器内に存在して差し支えなく、その容器はスプレー式噴霧器、ネブライザー、または吸入器であって構わない。
【0069】
薬学的に許容される担体とは、生物学的に、またはその他の望ましくないものではない材料のことをいい、すなわち、材料は、望ましくない生物学的作用を生じることなく、またはそれが含まれる医薬組成物の他の成分のいずれかと有害な方法で相互に作用することなく、PhtDの免疫原性のフラグメントと共に、被験体に投与されうる。担体は、当然ながら、 当業者に周知のように、活性成分の分解を最小限に抑え、かつ、被験体における有害副作用を最小限に抑えるように選択されよう。
【0070】
適切な担体およびそれらの製剤は、Remington: The Science and Practice of Pharmacy, 21st Edition, David B. Troy, ed., Lippicott Williams & Wilkins (2005) に記載されている。典型的には、適切な量の薬学的に許容される塩を製剤に用いて、その製剤を等張にする。薬学的に許容される担体の例としては、限定はしないが、滅菌水、生理食塩水、リンガー溶液のような緩衝液、およびデキストロース溶液が挙げられる。溶液のpHは、一般に約5〜約8、または約7〜約7.5である。 他の担体としては、免疫原性のPhtDポリペプチドを含む、固体疎水性ポリマーの半透性マトリックスなどの持続放出製剤が挙げられる。マトリックスは、例えば、フィルム、リポソーム、または微粒子など、成形品の形態をしている。例えば、投与経路および投与される組成物の濃度などに応じて、特定の担体がさらに好ましくなりうることは、当業者にとって明らかであろう。担体はヒトまたは他の被験体へのPhtD免疫原性のフラグメントの投与に適したものである。
【0071】
医薬組成物は、免疫原性のポリペプチドに加えて、担体、増粘剤、希釈剤、緩衝剤、保存料、表面活性剤、アジュバント、免疫賦活剤を含みうる。医薬組成物はまた、抗菌剤、抗炎症薬、および麻酔剤などの1種類以上の活性成分を含みうる。アジュバントも、PhtDに対する免疫応答を刺激または促進するために含めてもよい。適切な種類のアジュバントの 非限定的な例としては、とりわけ、ゲル型(例えば 水酸化アルミニウム/リン酸アルミニウム(「ミョウバン・アジュバント」)、リン酸カルシウム、微生物起源(ムラミルジペプチド(MDP))、細菌性の外毒素(コレラ毒素(CT)、天然コレラトキシンサブユニットB(CTB)、大腸菌(E. coli)不安定毒素(LT)、百日咳毒素(PT)、CpGオリゴヌクレオチド、BCG配列、破傷風トキソイド、例えば、大腸菌(E. coli)、 サルモネラ菌(Salmonella minnesota)、ネズミチフス菌(Salmonella typhimurium)、または赤痢菌(Shigella exseri))などのモノホスホリル脂質A(MPL))、微粒子アジュバント(生体分解性の高分子ミクロスフィア)、免疫賦活性の複合体(ISCOM))、油性エマルション、および界面活性剤系のアジュバント(フロイント不完全アジュバント (FIA)、流動体状エマルション(MF59、SAF)、サポニン(QS−21))、合成(ムラミルペプチド誘導体(ムラブチド、トレオニル−MDP)、非イオン性ブロック共重合体(L121)、ポリホスファゼン(PCCP)、合成ポリヌクレオチド(ポリA:U、ポリI:C)、サリドマイド誘導体(CC−4407/ACTIMID))、RH3−リガンド、またはポリ乳酸−グリコール酸(PLGA)ミクロスフィアが挙げられる。これらの毒素のいずれかのフラグメント、同族体、誘導体、および融合体もまた、それらがアジュバント活性を保持することを条件として、適している。アジュバントの適切な突然変異体または変異体は、例えば、国際公開第95/17211号パンフレット(Arg−7− Lys CT突然変異体)、国際公開第96/6627号パンフレット(Arg−192−Gly LT突然変異体)、および国際公開第95/34323号パンフレット(Arg−9−LysおよびGlu−129−Gly PT突然変異体)に記載されている。本発明の方法および組成物に利用可能なさらなるLT突然変異体としては、例えば、Ser−63−Lys、Ala−69−Gly、Glu−110−Asp、およびGlu−112−Asp突然変異体が挙げられる。
【0072】
ミョウバン・アジュバントなどの金属塩アジュバントは、アジュバント活性を有する安全な賦形剤を提供するものとして、当技術分野で周知である。これらのアジュバントの活性の機構は、抗原が投与後3週間に至るまで、注入部位に留まりうる、抗原デポーの形成、および、細胞に存在する抗原によってさらに容易に吸収される、抗原/金属塩の複合体の形成をも含むと考えられている。アルミニウムに加えて、亜鉛、カルシウム、セリウム、クロム、鉄、およびベリリウムの塩を含む、他の金属塩も、抗原の吸収に使用されている。アルミニウムの水酸化物塩およびリン酸塩が最も一般的である。アルミニウム塩、抗原、および、追加の免疫賦活剤を含む製剤または組成物は、当技術分野で既知である。免疫賦活剤の1つの例は、3−O−脱アシル化(3-de-O-acylated)モノホスホリル脂質A(3D−MPL)である。
【0073】
ポリペプチドとして、または本発明の組成物内に含まれる核酸によってコードされた、1種類以上のサイトカインもまた、本発明の実施に適した同時刺激成分でありうる(ParmianiらのImmunol Lett 2000 Sep 15;74 (1): 41-3;BerzofskyらのNature Immunol. 1: 209-219)。適切なサイトカインとしては、例えば、インターロイキン−2(IL−2)(RosenbergらのNature Med. 4: 321-327 (1998))、IL−4、IL−7、IL−12(Pardoll, 1992;HarriesらのJ. Gene Med. 2000 Jul-Aug;2 (4):243-9;RaoらのJ. Immunol. 156: 3357-3365 (1996)参照)、IL−15(XinらのVaccine, 17:858-866, 1999)、IL−16(CruikshankらのJ. Leuk Biol. 67 (6): 757-66, 2000)、IL−18(J. Cancer Res. Clin. Oncol. 2001. 127 (12): 718-726)、GM−CSF(CSF(DisisらのBlood, 88: 202-210 (1996))、腫瘍壊死因子−α(TNF−α)、またはインターフェロン−γ(INF−γ)が挙げられる。当技術分野で周知のように、他のサイトカインも本発明の実施に適しているであろう。
【0074】
ケモカインもまた、免疫応答の誘発または促進を補助するために使用されうる。例えば、腫瘍自己抗原と融合させるCXCL10(IP−10)およびCCL7(MCP−3)を含む融合タンパク質は、抗腫瘍免疫を誘発することが示されている(BiragynらのNature Biotech. 1999, 17: 253-258)。ケモカインCCL3(MIP−1α)およびCCL5(RANTES)(BoyerらのVaccine, 1999, 17 (Supp. 2): S53-S64)もまた、本発明の実施に役立つであろう。他の適切なケモカインは当技術分野で既知である。
【0075】
特定の実施の形態では、標的とする免疫原は、核酸分子として、単独で、またはウイルスベクターなどの送達媒体の一部として、用いられうる。このような事例では、標的とする免疫原を、本発明の組成物における細胞表面タンパク質、サイトカインまたはケモカインなどの1種類以上の同時刺激成分と組み合わせることが有利であろう。同時刺激成分は、例えば、ポリペプチドまたはポリペプチドをコードする核酸として組成物中に含まれうる。適切な同時刺激分子としては、例えば、CD28結合ポリペプチドB7.1(CD80;Schwartz, 1992;Chen et al, 1992;EllisらのJ. Immunol., 156(8): 2700-9)およびB7.2(CD86;EllisらのJ. Immunol., 156 (8): 2700-9)など、CD28ファミリーと結合するポリペプチド(例えばCD28、ICOS;HutloffらのNature 1999, 397: 263-265;PeachらのJ Exp Med 1994, 180: 2049-2058);ICAMファミリー(例えばICAM−1、−2または−3)を含む、インテグリンファミリーと結合するポリペプチド(例えばLFA−1(CD11a/CD18);SedwickらのJ Immunol 1999, 162: 1367-1375;WuelfingらのScience 1998, 282: 2266-2269;LubらのImmunol Today 1995, 16: 479-483);CD58(LFA−3;CD2リガンド;DavisらのImmunol Today 1996, 17: 177-187)またはSLAMリガンド(SayosらのNature 1998, 395: 462-469)など、CD2ファミリーと結合するポリペプチド(例えばCD2、シグナル伝達リンパ球活性化分子(CDw150または「SLAM」;AversaらのJ Immunol 1997, 158: 4036-4044);熱安定性の抗原と結合するポリペプチド(HSAまたはCD24;ZhouらのEur J Immunol 1997, 27: 2524-2528);4−1BBL(4−1BBリガンド;VinayらのSemin Immunol 1998, 10: 481-48;DeBenedetteらのJ Immunol 1997, 158: 551-559)、TNFR関連因子−1(TRAF−1;4−1BBリガンド;SaoulliらのJ Exp Med 1998, 187: 1849-1862, ArchらのMol Cell Biol 1998, 18: 558-565)、TRAF−2(4−1BBおよびOX40リガンド;SaoulliらのJ Exp Med 1998, 187: 1849-1862;OshimaらのInt Immunol 1998, 10: 517-526, KawamataらのJ Biol Chem 1998, 273: 5808-5814)、TRAF−3(4−1BBおよびOX40リガンド;ArchらのMol Cell Biol 1998, 18: 558-565;JangらのBiochem Biophys Res Commun 1998, 242: 613-620;Kawamata SらのJ Biol Chem 1998, 273: 5808-5814)、OX40L(OX40リガンド;GramagliaらのJ Immunol 1998, 161: 6510-6517)、TRAF−5(OX40リガンド;ArchらのMol Cell Biol 1998, 18: 558-565;KawamataらのJ Biol Chem 1998, 273: 5808-5814)、およびCD70(CD27リガンド;CoudercらのCancer Gene Ther., 5 (3): 163-75)など、TNF受容体(TNFR)ファミリーと結合するポリペプチド(例えば 4−1BB(CD137;VinayらのSemin Immunol 1998, 10: 481-489)、OX40(CD134;WeinbergらのSemin Immunol 1998, 10: 471-480;HigginsらのJ Immunol 1999, 162: 486-493)、およびCD27(LensらのSemin Immunol 1998, 10: 491-499))が挙げられる。CD154(CD40リガンドまたは「CD40L」;GurunathanらのJ. Immunol., 1998, 161: 4563-4571;SineらのHum. Gene Ther., 2001, 12: 1091-1102)もまた適しているであろう。CpGモチーフなどの同時刺激分子自体以外の刺激モチーフを、TAをコードする核酸に取り込ませてもよい(GurunathanらのAnn. Rev. Immunol., 2000, 18: 927-974)。これらの試薬および方法は、当業者に周知の他のものと同様、本発明の実施に利用して差し支えない。
【0076】
本発明の実質的に毒性のない生物活性のあるアジュバントの他の例としては、ホルモン、酵素、増殖因子、またはそれらの生物活性のある部位が挙げられる。このようなホルモン、酵素、増殖因子、またはそれらの生物活性のある部位は、例えば、ヒト、ウシ、ブタ、ヒツジ、イヌ、ネコ、ウマ、または鳥類起源であってよく、腫瘍壊死因子(TNF)、プロラクチン、上皮細胞増殖因子(EGF)、顆粒球コロニー刺激因子(GCSF)、インスリン様増殖因子(IGF−1)、ソマトトロピン(成長ホルモン)またはインスリン、またはその受容体が免疫系の細胞に発現される任意の他のホルモンまたは増殖因子でありうる。
【0077】
本明細書に記載される免疫原性のポリペプチドの調製方法および使用方法、ならびにそのような方法に有用な組成物を提供する。ポリペプチドは、標準的な分子生物学の技術および発現系を用いて生成することができる(例えば、Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Third Edition by Sambrook et al., Cold Spring Harbor Press, 2001を参照のこと)。例えば、免疫原性のポリペプチドをコードする遺伝子のフラグメントを同定し、免疫原性のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを任意の市販されている発現ベクター(pBR322およびpUC ベクターなど(New England Biolabs, Inc.社製(米国マサチューセッツ州イプスウィッチ所在)))、または発現/精製ベクター(融合ベクターなど(Pfizer, Inc.社製(米国ニュージャージー州ピスカタウェイ所在)))にクローン化し、その後、適切な原核生物、ウイルス、または真核生物の宿主において発現させて構わない。次いで、従来の手段によって、または、市販の発現/精製系の場合には、メーカーの使用説明書に従って、精製を達成して差し支えない。
【0078】
肺炎球菌の肺炎を他の形態の肺炎と区別するため、PhtDの発現を検出する方法を提供する。世界中において、肺炎球菌の主な保有宿主は、鼻腔内保菌である。感染は、一般に担体から獲得し、常に鼻腔内保菌が先行する。鼻咽頭のコロニー形成は、より低い気道、副鼻腔、および中耳への肺炎球菌の蔓延のための必須条件と見られている。
【0079】
肺炎球菌のワクチンの有効性を判断するためには、どの被験体が肺炎球菌の肺炎を有し、どの被験体が有していないかを知ることが必要である。肺炎を診断するための標準的な手順は、X線または他の診断、および、肺炎連鎖球菌の陽性の血液培養液によるものである。これらの基準を満たす被験体は、肺炎球菌の肺炎を有すると仮定される。残念なことに、この方法は、肺炎を患う患者のわずか15〜25%が菌血症も有すると推定されていることから、肺炎球菌の肺炎を患う患者の75〜85%を見過ごしてしまう(FedsonらのVaccine 17:Suppl. 1:S11-18 (1999);Ostergaard and Andersen, Chest 104:1400-1407 (1993))。この問題を解決するための1つの試みは、尿中の細胞壁の多糖を検出する抗原検出法を用いることであった。このアッセイはさらに感受性であるが、残念なことに、12%の成人、および最大で60%に上る子どもにおいて偽陽性を有する。これは、肺または血液に肺炎球菌による疾患を有しない患者では、肺炎球菌を伴う鼻のコロニー形成が原因で、時折尿中に検査標的が存在することによる。よって、被験体から得られたサンプルについて、PhtDの存在を検出することを含む、被験体における肺炎球菌による肺炎を検出する方法についても提供し、ここでPhtDの存在は、被験体における肺炎球菌を示唆する。PhtD濃度は、当業者に周知の方法によって、体液などの生物学的サンプルについて検査することができる。本方法の用途に適切な体液としては、血液、血清、粘膜、および尿が挙げられるが、これらに限定されない。
【0080】
PhtDの免疫原性のフラグメント、もしくはそれらの誘導体または変異体を、被験体に投与することを含む、被験体における肺炎球菌の感染の危険性を低減する方法についても開示する。肺炎球菌の感染としては、例えば、髄膜炎、中耳炎、肺炎、敗血症、または溶血性の尿毒症が挙げられる。よって、これらの感染のうち任意の1種類以上の危険性は、本明細書に記載される方法によって低減されうる。
【0081】
PhtDポリペプチドを含む組成物は、経鼻投与または呼吸器系の任意の部分への投与を含めて、経口的に、非経口的に(例えば静脈注射で)、筋肉内、腹腔内、経皮、または局所的に、投与されうる。本明細書では、呼吸器系への投与は、エアゾール適用または挿管を通じた噴霧装置または滴下装置による送達を含む、鼻孔の一方または両方を通じた、または口を介した、組成物の鼻内および鼻孔への送達を意味する。
【0082】
必要とされる組成物およびPhtDポリペプチドの正確な量は、被験体の種、年齢、体重、および一般条件、用いるポリペプチド、およびその投与方法に応じて、被験体それぞれによって変化するであろう。したがって、組成物ごとに正確な量を特定することはできない。しかしながら、適切な量は、本明細書の記載を所与として、当業者によって決定されうる。さらには、例えばプライム・ブースト法を含めた、PhtDポリペプチドの複数回投与が用いられうる。
【0083】
「抗体」という用語は、未精製またはある程度精製された形態(例えば、ハイブリドーマ上清、腹水、ポリクローナル抗血清)、または精製された形態の抗体の全体またはフラグメントを含む。「精製された」抗体とは、最初に見られるタンパク質の少なくとも約50%から分離されるものである(例えばハイブリドーマの上清または腹水調製物の一部として)。精製抗体は、それが最初に認められるタンパク質の少なくとも約60%、75%、90%、または95%から分離されることが好ましい。適切な誘導体は、当技術分野で既知のように、フラグメントを含みうる(例えば、Fab、Fab2または一本鎖抗体(例えばFv))。抗体は、任意の適切な起源であるか、または、例えばマウス(例えばマウスのハイブリドーマ細胞によって生成する)を含む、あるいはヒト化抗体、キメラ抗体、ヒト抗体などとして発現される、形態でありうる。
【0084】
さまざまな種類の抗体の調製および使用方法は当業者に周知であり、本発明の実施に適しているであろう(例えば、HarlowらのAntibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, 1988;HarlowらのUsing Antibodies: A Laboratory Manual, Portable Protocol No. 1, 1998;KohlerおよびMilsteinのNature, 256:495 (1975);JonesらのNature, 321:522-525 (1986);RiechmannらのNature, 332:323-329 (1988);PrestaのCurr. Op. Struct. Biol., 2:593-596 (1992);VerhoeyenらのScience, 239:1534-1536 (1988);HoogenboomらのJ. Mol. Biol., 227:381 (1991);MarksらのJ. Mol. Biol., 222:581 (1991);ColeらのMonoclonal Antibodiesand Cancer Therapy, Alan R. Liss, p. 77 (1985);BoernerらのJ. Immunol., 147 (1):86-95 (1991);MarksらのBio/Technology 10, 779-783 (1992);LonbergらのNature 368 856-859 (1994);MorrisonのNature 368 812-13 (1994);FishwildらのNature Biotechnology 14, 845-51 (1996);NeubergerのNature Biotechnology 14, 826 (1996);LonbergおよびHuszarのIntern. Rev. Immunol. 13 65-93 (1995);ならびに米国特許第4,816,567号;同第5,545,807号;同第5,545,806号;同第5,569,825号;同第5,625,126号;同第5,633,425号;および同第5,661,016号の各明細書参照)。特定の用途では、抗体は、ハイブリドーマの上清または腹水内に含まれ、それを直接利用するか、あるいはその後に標準的な技術を使用して濃縮して利用されうる。他の用途では、抗体は、例えば、塩分別(salt fractionation)および、アガロースビーズなどの固相担体に共有結合する、タンパク質A、タンパク質G、タンパク質A/G、および/またはタンパク質Lリガンドを使用したイオン交換クロマトグラフィーまたはアフィニティークロマトグラフィーまたはこれらの技術の組合せを使用して、さらに精製されうる。抗体は、冷凍調製物(例えば−20℃または−70℃)として、凍結乾燥の形態で、または通常の冷蔵条件(例えば4℃)下を含む、任意の適切な形式で貯蔵されうる。液体の形態で貯蔵される場合は、トリス緩衝生理食塩水(TBS)またはリン酸緩衝生理食塩水(PBS)などの適切な緩衝剤が用いられることが好ましい。
【0085】
典型的な抗体としては、特許手続上の微生物の寄託の国際承認に関するブダペスト条約(the Budapest Treaty for the International Recognition of the Deposit of Microorganism for the Purposes of Patent Procedure)の規定の下、特許寄託指定番号(Patent Deposit Designation)XXXXXに従い、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(American Type Culture Collection)(ATCC)(米国20110−2209,バージニア州マナサス、ユニバーシティ・ブルバード10801所在) にXXXXXで寄託されたマウスのハイブリドーマから産生されるモノクローナル抗体1B12;特許手続上の微生物の寄託の国際承認に関するブダペスト条約(the Budapest Treaty for the International Recognition of the Deposit of Microorganism for the Purposes of Patent Procedure)の規定の下、特許寄託指定番号(Patent Deposit Designation)XXXXXに従い、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(American Type Culture Collection)(ATCC)(米国20110−2209,バージニア州マナサス、ユニバーシティ・ブルバード10801所在)にXXXXXで寄託されたマウスのハイブリドーマによって産生される4D5;および、特許手続上の微生物の寄託の国際承認に関するブダペスト条約(the Budapest Treaty for the International Recognition of the Deposit of Microorganism for the Purposes of Patent Procedure)の規定の下、特許寄託指定番号(Patent Deposit Designation)XXXXXに従い、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(American Type Culture Collection)(ATCC)(米国20110−2209,バージニア州マナサス、ユニバーシティ・ブルバード10801所在)にXXXXXで寄託されたマウスのハイブリドーマによって産生される9E11が挙げられる。例えばこれらの抗体を含有する、腹水、ポリクローナル抗血清または他の調製物を含む他の抗体もまた意図されている。
【0086】
これらの抗体を含む調製物としてはハイブリドーマ上清または腹水調製物に見られるような未精製の抗体、ある程度精製された調製物、または精製された調製物が挙げられよう。よって、本明細書では、約50%、60%、75%、90%、または95%純度に生成された抗体を含む抗体調製物を提供する。典型的には、このような調製物は、リン酸またはトリス緩衝生理食塩水(それぞれ、PBSまたはTBS)などの緩衝液を含む。フラグメント(Fab、Fab2または一本鎖抗体(例えばFv))、ヒト化抗体、キメラ 抗体、ヒト抗体などを含む、このような抗体の誘導体も提供する。抗体の可変および超可変部分をコードする遺伝子は、発現ベクター内でクローン化された同一物を発現するハイブリドーマから単離されて、特定の抗体調製物(例えばヒト化抗体)を産生しうる。このような調製物の産生方法は当技術分野で周知である。
【0087】
当分野の熟練者は、本明細書に記載される抗体を使用して、それに結合するタンパク質を含む生物学的サンプルを同定する、多くの適切な技術を有する。例えば、抗体を使用して、例えば免疫沈降または他の捕捉型のアッセイを用いて、PhtDタンパク質を同定して差し支えない。この周知の技術は、抗体を、固相担体またはクロマトグラフ材料(例えば、タンパク質A、タンパク質G、および/またはタンパク質Lでコーティングされたビーズ)に取り付けることによって行われる。結合した抗体を、次に、PhtDタンパク質を含む、または含むと考えられる溶液に導入する。次いで、PhtDタンパク質を抗体に結合し、PhtDタンパク質が抗体に結合されたまま維持される条件下で、結合していない材料を洗浄する。その後、結合タンパク質を抗体から分離し、所望の通りに分析する。抗体を使用してタンパク質を単離する同様の方法は、当技術分野で周知である。
【0088】
抗体はまた、生物学的サンプル内のPhtDタンパク質を検出するために用いられうる。例えば、抗体は、例えば、流動細胞分析法、ELISA、免疫ブロット法(例えば ウェスタンブロット)、その場(in situ)検出、免疫細胞化学、および/または免疫組織化学などのアッセイに使用されうる。このようなアッセイを行う方法は、当技術分野で周知である。
【0089】
抗体の使用において、熟練者を補助するため、同一のものを、キットの形式で提供してもよい。1B12、4D5、および/または9E11を含み、随意的に、抗体を使用してPhtDを発現する細胞を検出するために必要な他の成分を含む、キットが提供される。キットの抗体は、冷凍、凍結乾燥、または、TBSまたはPBSなどの薬学的に許容される緩衝剤を含む、任意の適切な形態で提供されうる。キットはまた、緩衝剤(例えばTBS、PBS)、遮断薬(脱脂粉乳、正常血清、Tween−20界面活性剤、BSA、またはカゼインを含む溶液)、および/または検出試薬(例えば、ヤギ抗マウスIgGビオチン、ストレプトアビジン−HRP複合体、アロフィコシアニン、B−フィコエリトリン、R−フィコエリトリン、ペルオキシダーゼ、蛍光検出試薬(fluors)(例えばDyLight、Cy3、Cy5、FITC、HiLyte Fluor 555、HiLyte Fluor 647)、および/または染色キット(例えばABC染色キット(Pierce社製))など、インビトロまたはインビボにおいて抗体を使用するために必要とされる他の試薬を含みうる。キットはまた、他の試薬、および/または、例えば、流動細胞分析法、ELISA、免疫ブロット法(例えばウェスタンブロット)、その場(in situ)検出、免疫細胞化学、免疫組織化学など、上述した一般に用いられるアッセイにおける、抗体を使用するための説明書を含みうる。
【0090】
1つの実施の形態では、キットは、精製した形態の抗体を提供する。別の実施の形態では、抗体は、単独で、またはアビジン複合化検出試薬(例えば抗体)と共に、ビオチン化された形態で提供される。別の実施の形態では、キットは、PhtDタンパク質を直接検出するために用いられうる、蛍光標識化された抗体を含む。これらの系のいずれかを用いるのに必要とされる緩衝剤などは当技術分野で周知であり、末端利用者によって調製されるか、またはキットの成分として提供されうる。キットはまた、陽性対照および陰性対照のタンパク質および/または組織サンプルを含む、固相担体を含みうる。例えば、スポット・アッセイまたはウェスタンブロット型のアッセイを行うためのキットは、SDS−PAGEに使用するための対照の細胞または組織溶解物、または、実験サンプル用の追加のスペースを有する前固定した対照サンプルを含む、ナイロンまたは他の膜を含みうる。スライド上の細胞のPhtDを視覚化するためのキットは、実験サンプル用の追加のスペースを有する、対照の細胞または組織サンプルを含む、フォーマット済みのスライドを含みうる。
【0091】
抗体および/またはそれらの誘導体はまた、インビトロまたはインビボにおいて使用するため、本発明の組成物内に取り込まれうる。抗体またはそれらの誘導体はまた、とりわけ、ジフテリアA鎖、外毒素A鎖、リシンA鎖、アブリンA鎖、クルシン、クロチン、フェノマイシン、エノマイシンなど、細胞毒性薬または毒素、もしくはそれらの活性フラグメントなどの官能基に結合しうる。官能基は放射化学物質を含みうる。
【0092】
本明細書に記載される抗体を、薬剤スクリーニングにおける試薬として使用することも可能である。試薬は、例えば、患者の生物学的サンプルにおいて、ストレプトコッカス(Streptococcus)属の細菌の存在下における薬剤候補の効果を解明するために用いられうる。発現解析技術は、ハイスループット・スクリーニング技術と組み合わせて、有用な化合物を迅速同定し、薬剤候補での治療の有効性をモニタすることができる(例えば、ZlokarnikらのScience 279, 84-8 (1998)参照)。医薬品候補は、天然または合成に由来する、化合物、核酸、タンパク質、抗体、またはそれらの誘導体でありうる。したがって、同定される医薬品候補は、他の用途の中でもとりわけ、患者に投与するため、またはさらなるスクリーニングに使用するための医薬組成物として用いられうる。
【0093】
本明細書に記載される抗体は、毒性のない、非経口投与が許容される希釈剤または溶媒における懸濁液など、注入可能な調製物として調製されうる。用いられうる適切な賦形剤および溶媒としては、とりわけ、水、リンガー溶液、および生理食塩水、TBSおよびPBSが挙げられる。特定の用途では、抗体は、インビトロにおける使用に適している。他の用途では、抗体はインビボにおける使用に適している。いずれかの場合における使用に適している調製物は、当技術分野で周知であり、特定の用途に応じて変化するであろう。
【0094】
明細書および添付の特許請求の範囲では、単数形の「a」、「an」、および「the」は、文脈がそうでないことを明確に指示しない限り、複数の指示対象を含むことに留意しなければならない。よって、例えば、抗原性のフラグメントへの言及は、抗原性のフラグメントの混合物を含み、医薬担体またはアジュバントへの言及は、そのような担体またはアジュバントの2種類以上の混合物を含む。
【0095】
本明細書では、被験体または宿主は、個体であることを意味する。被験体としては、ネコおよびイヌ、家畜(例えば、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、およびヤギ)などの飼育動物、実験動物(例えば、マウス、ウサギ、ラット、モルモット)および鳥類が挙げられる。1つの態様では、被験体は、霊長類またはヒトなどの哺乳動物である。
【0096】
随意的な、または随意的に、とは、実質的に記載した事象または状況が生じ得るか、または生じ得ないこと、および、その記載が、前記事象または状況が生じる場合、および生じない場合の両方を含むことを意味する。例えば、その語句が、随意的に、組成物が、その記載が組合せおよび組合せの不存在の両方を含むように、組成物が異なる分子の組合せを含むか、または組合せを含まない、組合せ手段を含みうる(例えば、組合せの個々のメンバー)。
【0097】
範囲は、本明細書では、約1つの特定の値から、および/または、約別の特定の値までとして表されうる。このような値が表される場合、別の態様は、その1つの特定の値から、および/または、他の特定の値までを含む。同様に、値が近似値として表される場合、先行詞である約を用いて、特定の値が別の態様を形成することもさらに理解されよう。さらには、その範囲のそれぞれの終点は、他の終点に関して、および、他の終点とは別に、有意であるものと理解されよう。
【0098】
防ぐ、という用語は、本明細書では、所定の状態についての所定の処置(例えば、ストレプトコッカス(Streptococcus)属による感染を防ぐ)に関して用いられ、処置される患者が、病状の臨床的に観察されるレベルをまったく発現しないか、またはさらにゆっくりと、および/または、彼/彼女がその処置をされていない場合より少ない程度に発現することを意味する。これらの用語は、単に、患者がいかなる病状の態様も経験しない状況に限定されない。例えば、処置は、患者が病状の所定の徴候を生じることが予想されるであろう刺激に曝露される間に行われる場合、その病状を防ぐといい、患者は、別の方法で予想されるよりも少ない、および/または、穏やかな病状を体験することになる。処置は、患者が感染の穏やかな明らかな症状のみを表すことにより、感染を「防ぐ」ことができる;感染微生物による任意の細胞への侵入が無かったに違いないということを意味するのではない。
【0099】
同様に、本明細書では、所定の治療を伴う感染の危険性に関して、低減(例えば、肺炎球菌の感染の危険性の低減)とは、感染をさらにゆっくり、または、対照、または処置をしない場合における感染の発現する基礎レベルと比較してより少ない程度に、発現する被験体のことをいう(例えば、免疫原性のポリペプチドの投与)。感染の危険性の低減は、患者が感染の穏やかな明らかな症状または感染の遅延された症状のみを表す結果となりうる;感染微生物による任意の細胞への侵入が無いに違いないことを意味するのではない。
【0100】
本発明のさらなる実施の形態および特徴を、次の非限定的な例において提供する。
【実施例】
【0101】
上記開示は、一般に、本発明を説明するものである。次の特定の実施例を参照することにより、完全な理解を提供することができる。これらの実施例は、単に説明の目的で記載されるのであって、本発明の範囲を限定することは意図されていない。等価物の形態および置換における変化は、状況が示唆するか、あるいは好都合になるように意図されている。
【0102】
形態の変化および等価物の置換は、状況が好都合であることを示唆するか、好都合になるであろうことが意図されている。本明細書では特定の用語が用いられるが、このような用語は、記述的意味で意図されているのであって、限定の目的ではない。
【0103】
本発明の1つの実施の形態では、1997年6月27日に、ATCC55987として寄託された、肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneuomoniae)血清型6株14453に由来する、および/または、配列番号:1に記載する配列を有する、単離され、トランケートされたPhtDポリペプチドを提供する。本発明に記載されるPhtDのトランケーションは、PhtBの領域と同様の領域および異なる領域の両方である、タンパク質の領域を包含し、よって、それぞれ、可能な交差反応性および独特のエピトープを含む。トランケート型のタンパク質は、精製を促進するため、組換えHis−タグ化誘導体として大腸菌において発現され、次いで、Ni2+−NTAアフィニティークロマトグラフィーを用いて精製される。
【0104】
実施例1:組換えPhtDトランケート型のタンパク質のクローニングおよび産生
この実施例は、発現産物がN末端6×His−タグを有するように、肺炎連鎖球菌・血清型6株14453からプラスミドpET28a(+)へのトランケート型のPhtDのクローニングについて記載する。トランケート型のPhtDはまた、配列番号:2、3および4(タンパク質)、ならびに 配列番号:5、7および9(DNA)に示されるように、N末端6×His−タグなしに発現されうる。
【0105】
本明細書に記載される配列の増幅に用いられるプライマーを表3に示す:
【表3】

【0106】
トランケーション番号:1
簡潔にいえば、PhtD T1遺伝子は、High Fidelity Advantage 2 ポリメラーゼ(BD社製)を用いて、肺炎連鎖球菌の血清型6株14453ゲノムから増幅されたPCRであった。PCRプライマーSpn0215およびSpn0176により、NcoIおよびXhoI制限酵素認識部位を、それぞれ5’および3’末端に導入した(表3参照)。5’プライマーSpn0215は、N末端His−タグも導入した。QIAquick PCR精製キット(Qiagen社製)を用いてPCR産物を精製した後、QIAEXゲル抽出キット(Qiagen社製)を用いて精製するため、アガロース・ゲルに負荷した。PCR産物およびpET28a(+)ベクター(Novagen社製)をNcoIおよびXhoIで消化させた後、QIAEXゲル抽出キット(Qiagen社製)を用いてアガロース・ゲルから精製した。次に、T4 DNAリガーゼ(Invitrogen社製)を用いて、消化されたベクターと遺伝子をライゲーションさせた。ライゲーション混合物を化学的コンピテントな大腸菌(E. coli)DH5αに転換し、50μg/mlのカナマイシンを含むルリア寒天上に塗布することによって陽性クローンを選択した。構築物あたり4つのコロニーを選択し、QIAprep Spin Miniprepキット(Qiagen社製)を用いて、選択されたクローンからプラスミドDNAを単離した。NcoI/XhoI消化を行い、どのクローンが正確な大きさのフラグメントを有しているかを決定した。4つのコロニーのすべてを限定解析に従って修正し、QIAフィルタプラスミドMidiキット(Qiagen社製)を用いて、MidiprepDNAを陽性クローン(#1)の1つから単離し、クローニングされた人工物が導入されないことを確保した。このクローンはpBAC30に指定されていた。
【0107】
SDS−PAGEゲルにおいて、およそ56.1kDaの正確な大きさの強いバンドが示すように、大腸菌(E. coli)BL21(DE3)において、PhtD T1タンパク質を高濃度で発現した。1mMのIPTGで2時間、タンパク質の発現を誘発した。
【0108】
トランケーション番号:2
PhtD T2遺伝子は、High Fidelity Advantage 2 ポリメラーゼ(BD社製)を使用して、肺炎連鎖球菌の血清型6株の14453ゲノムから増幅されたPCRであった。PCRプライマーSpn0216およびSpn0176により、NcoIおよびXhoI制限酵素認識部位を、それぞれ5’および3’末端に導入した(表3参照)。5’プライマーSpn0216は、N末端His−タグも導入した。QIAquick PCR精製キット(Qiagen社製)を用いてPCR産物を精製した後、QIAEXゲル抽出キット(Qiagen社製)を用いて精製するため、アガロース・ゲルに負荷した。PCR産物およびpET28a(+)ベクター(Novagen社製)をNcoIおよびXhoIで消化させた後、QIAEXゲル抽出キット(Qiagen社製)を用いてアガロース・ゲルから精製した。次に、T4 DNAリガーゼ(Invitrogen社製)を用いて、消化されたベクターと遺伝子をライゲーションさせた。ライゲーション混合物を化学的コンピテントな大腸菌(E. coli)DH5αに転換し、50μg/mlのカナマイシンを含むルリア寒天上に塗布することによって陽性クローンを選択した。QIAprep Spin Miniprepキット(Qiagen社製)を用いて、選択されたクローンからプラスミドDNAを単離した。NcoI/XhoI消化を行い、どのクローンが正確な大きさのフラグメントを有しているかを決定した。QIAフィルタプラスミドMidiキット(Qiagen社製)を用いて、MidiprepDNAを陽性クローンの1つから単離し、クローニングされた人工物が導入されないことを確保した。このクローンはpBAC31に指定されていた。
【0109】
SDS−PAGEゲルにおいて、およそ19.3kDaに走る強いバンドが示すように、大腸菌(E. coli)BL21(DE3)において、PhtD T2タンパク質を高濃度で発現した。1mMのIPTGで2時間、タンパク質の発現を誘発した。
【0110】
トランケーション番号:3
PhtD T3遺伝子は、High Fidelity Advantage 2 ポリメラーゼ(BD社製)を使用して、肺炎連鎖球菌の血清型6株の14453ゲノムから増幅されたPCRであった。Spn0217およびSpn0176により、NcoIおよびXhoI制限酵素認識部位を、それぞれ5’および3’末端に導入した(表3参照)。5’プライマーSpn0217は、N末端6×His−タグも導入した。QIAquick PCR精製キット(Qiagen社製)を用いてPCR産物を精製した後、QIAEXゲル抽出キット(Qiagen社製)を用いて精製するため、アガロース・ゲルに負荷した。PCR産物およびpET28a(+)ベクター(Novagen社製)をNcoIおよびXhoIで消化させた後、QIAEXゲル抽出キット(Qiagen社製)を用いてアガロース・ゲルから精製した。次に、T4 DNAリガーゼ(Invitrogen社製)を用いて、消化されたベクターと遺伝子をライゲーションさせた。ライゲーション混合物を化学的コンピテントな大腸菌(E. coli)DH5αに転換し、50μg/mlのカナマイシンを含むルリア寒天上に塗布することによって陽性クローンを選択した。コロニーを選択し、QIAprep Spin Miniprepキット(Qiagen社製)を用いてプラスミドDNAを単離した。NcoI/XhoI消化を行い、どのクローンが正確な大きさのフラグメントを有していたかを決定した。QIAフィルタプラスミドMidiキット(Qiagen社製)を用いて、MidiprepDNAを陽性クローンの1つから単離し、クローニングされた人工物が導入されないことを確保した。このクローンはpBAC32に指定されていた。
【0111】
SDS−PAGEゲルにおいて、およそ16.7kDaに走る強いバンドが示すように、大腸菌(E. coli)BL21(DE3)において、PhtD T3タンパク質を高濃度で発現した。1mMのIPTGで2時間、タンパク質の発現を誘発した。
【0112】
トランケートしたポリペプチドのアミノ酸配列を以下に示す:
pBAC30から発現されたHisタグ(下線部)を含む、PhtDのトランケーション1:

【0113】
pBAC31から発現されたHisタグ(下線部)を含む、PhtDのトランケーション2:

【0114】
pBAC32から発現されたHisタグ(下線部)を含む、PhtDのトランケーション3:

【0115】
PhtDのトランケーションの構造解析および完全長PhtDとの比較
精製したPhtDのトランケーション1、2、および3を生物学的および生物物理学的手段によって特徴づけ、得られた結果を完全長PhtDタンパク質(シグナル配列が欠けている)のロットの分析から得られた特徴データと比較した。次のアッセイを行った:円二色性(CD)分光法、真性蛍光分光法、分析的超遠心分離(AUC)、多角光散乱検出(SEC−MALS)を伴うサイズ排除クロマトグラフィー、および示差走査熱量測定法(DSC)。これらの分析結果を下記表4にまとめた。
【表4】

【0116】
表4にまとめた分析結果に基づくと、PhtDのトランケーション1は、完全長PhtDに似ているが同一ではない全体的な溶液構造を有する一方、PhtDのトランケーション2および3の構造は異なっている。PhtDのDSC分析に観察される複数の温度遷移 は、複数の(すなわち3つの)ドメインの存在を示唆する。PhtDのトランケーション1のDSC結果は、トランケーションがこれらのドメインの1つを除去したことを示唆する、2つの遷移を示している。PhtDのトランケーション2および3は同様の全体的な構造を有し、DSCの結果は、非常に熱的に安定な単一のドメインの存在を示している。これらの結果は、トランケーションが折り畳み構造をしていることを示している。
【0117】
実施例2:モノクローナル抗体
モノクローナル抗体は、標準的な手法を用いて、ImmunoPrecise社(カナダ国ブリティッシュコロンビア州ビクトリア所在)製の多くのPhtタンパク質(すなわちPhtD、PhtA、PhtB、PhtE)に対して、産生される。モノクローナルを産生させるため、さまざまなタンパク質を用いてマウスに免疫性を付与し、標準的な手法を用いて、特異性を有するハイブリドーマ分泌抗体を単離した。PhtD、PhtA、PhtB、およびPhtEのそれぞれについて、多くのハイブリドーマ・クローンを産生させた。
【0118】
PhtDに関しては、組換え産生したPhtD完全長タンパク質(His−タグ化され、シグナル配列を欠いている)を用いて、マウスに免疫性を付与した。肺炎連鎖球菌株 TIGR4(アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(American Type Culture Collection)に寄託、ATCC BAA−334)から組換え産生したPhtDタンパク質を誘導した。マウスに免疫性を付与するために用いられるPhtDタンパク質のアミノ酸配列、配列番号:24は下記に記載されており、対応するヌクレオチド配列は配列番号:23である。
【0119】
組換えPhtDタンパク質の配列

【0120】
a.交差反応
ハイブリドーマから得られた上清を用いて、異なるPhtタンパク質に産生されるモノクローナル抗体の交差反応をELISAによって評価した。ELISAの結果を下記表5に示す。産生されたモノクローナル抗体のそれぞれ(例えばPhtD)を、惹起させた(表5に「Self」として分類される)、および、Phtタンパク質と組合せた(例えば、表5に「A、E」として分類される、PhtAおよびPhtE)、特定のPhtタンパク質に対する反応性について、ELISAでスクリーニングした。各Phtタンパク質について産生されるハイブリドーマ・クローンの総数を、表5の「免疫タンパク質」の列の適切なPhtタンパク質の下の大括弧内に記載する(例えば、PhtDに対して、14のハイブリドーマ・クローンが産生された)。スクリーニングに用いられたPhtタンパク質は、組換え全タンパク質であった。
【表5】

【0121】
交差反応スクリーニング(ELISAによる)から得られた結果に基づいて、ハイブリドーマ・クローン9E11、4D5、およびIB12を含む複数の抗体を、さらなる分析用に選択した。PhtDに対して、クローン9E11、4D5、およびIB12のそれぞれが産生されたが、交差反応スクリーニングではPhtDのみに特異性を有するものとしてクローン9E11を決定したのに対し、クローン4D5およびIB12のそれぞれは、PhtA、B、およびDに特異性を有することが判明した。
【0122】
b.エピトープマッピング
変性SDS−PAGE/ウェスタンブロットを用いて、エピトープマッピングを行った。クローン4D5および9E11のそれぞれが、PhtDのトランケーション3フラグメントの線形エピトープに結合する、mAbsを産生することが判定された。PhtDのトランケーション3フラグメントのタンパク分解の後、ウェスタンブロットは、mAb 9E11によって認識される線形エピトープがトランケーション3フラグメントのアミノ酸1〜101(配列番号:26)に対応する配列(および、完全長PhtDタンパク質の対応するアミノ酸配列)内に存在することを示した。PhtDのトランケーション1、2、および3を用いた、各クローン(すなわちクローン9E11, 4D5およびIB12)のmAbsのELISAによるさらなる試験は、各クローンについて判明したウェスタンブロットによる特異性を立証し、mAbクローン(1B12)がT3トランケーションについて特異性を有するものと確認された。
【0123】
c.消極防護
本発明のさらなる実施の形態では、各クローン9E11、4D5、およびIB12によって産生されたmAbsを、肺炎連鎖球菌を用いたチャレンジから動物を保護する能力について評価した。
【0124】
肺炎連鎖球菌の感染に対する消極防護を提供する、完全長PspA、PhtBまたはPhtDのいずれかに対する、ウサギにおけるそれぞれ向上した抗体の能力を試験するため、最初の実験を行った。この研究では、CBA/nマウスの群を、肺炎連鎖球菌株A66.1の50cfuの静脈内投与の前に、ウサギ非PspA、抗PhtB、または抗PhtD血清(1:10に希釈)の1時間の腹腔内投与で前処理した。抗体(すなわちPspA、PhtBまたはPhtDのいずれか)で前処理した各群について、動物の生存率は100%であった。それと対照的に、前採血したウサギPspA血清で前処理した動物の1/20が生存し、前採血したウサギPhtB血清で前処理した動物の0/10が生存し、および前採血したウサギPhtD血清で前処理した動物の1/25が生存した。
【0125】
以前に開発した消極防護モデルを用いて、消極防護研究を行った。モデルは、肺炎連鎖球菌による感染に対して非常に感受性の高いことが知られている、CBA/CaHN−Btkxid/Jマウスを用い、50cfuの肺炎連鎖球菌(S. pneumoniae)株A66.1の静脈内投与の1時間前に、研究下、抗体の腹腔内投与を行った。投与されるチャレンジ用量は、チャレンジ前後に検証した。死亡率を14日間モニタし、生存マウスから得た血液を塗布して細菌性のクリアランスを確認した。
【0126】
1つの実験では、クローン4D5および9E11によって産生されたmAbsを、受動免疫モデルを用いてそれぞれ試験した。5つのマウス群を用いた。3つの群には、リン酸−緩衝生理食塩水(PBS)中の4D5 mAbまたはPBS中9E11 mAbのいずれかを400μg、またはPBS(すなわち陰性対照群)を腹腔内投与した。陽性対照群にはウサギ抗PhtDを投与した。各群に、50cfuのチャレンジ用量の肺炎連鎖球菌株A66.1を投与した。クローン4D5によって産生されたmAbで免疫性を与えられた動物の80%がチャレンジ用量を生き延び、mAb 9E11で免疫性付与された動物の100%がチャレンジ用量を生き延びた。PBSで「免疫付与」された後に生存した動物はいなかったのに対し、ウサギ抗PhtDで免疫性を与えられた動物の100%がチャレンジ用量を生き延びた。
【0127】
別の実験では、受動免疫モデルを用いて、mAb IB12を試験した。PBS中の1B12 mAb400μgを、腹腔内経路を通じて投与した後、50cfuのチャレンジ用量の肺炎連鎖球菌株A66.1を投与した。mAb IB12で免疫付与された群に関しては、100%の動物が、3日目の終わりまでチャレンジ用量を生き延び、80%の動物が14日目の終わりまで(すなわち試験終了まで)チャレンジ用量を生き延びた。PBSで「免疫性を与えられた」群では1日目を生き延びた動物はいなかったのに対し、陽性対照群における(すなわちウサギ抗PhtD血清で免疫性を与えられた)動物の各々は、14日目の終わりまでチャレンジ用量を生き延びた。
【0128】
用量研究も行った。同一のチャレンジモデルを用いて、50cfuのチャレンジ用量の肺炎連鎖球菌株A66.1を投与する1時間前に、動物に、PBS中、400μg、200μg、100μg、または50μgのmAb 9E11で免疫性を付与した。陰性対照群には、チャレンジの前にPBSを投与し、陽性対照群には、チャレンジの前にウサギ抗PhtD血清(1:10の希釈で)を投与した。14日間の後、400μg用量ではマウスの60%が生存し;200μg用量では20%が生存し;100μgまたは50μg用量では生存した動物はいなかった。400μg用量を投与した群に関しては、生存率は6日目には80%に落ち、9日目には60%に落ちた。200μg用量を投与した群に関しては、生存率は3日目には60%に落ち、5日目には20%に落ちた。100μg用量を投与した群に関しては、生存率は2日目には20%に落ち、3日目には0%に落ちた。よって、 14日目の生存率の上昇は、400μg(60%生存)用量を投与した群、および200μg用量(20%生存)を投与した群の両方について観察された。
【0129】
mAb 4D5を用いて、同様の用量研究を行った。50cfuのチャレンジ用量の肺炎連鎖球菌株A66.1の投与1時間前に、動物に、400μg、200μg、100μg、または50μgのPBS中mAb 4D5を投与し、免疫性を与えた。14日間の後、400μg用量では100%のマウスが生存し、より低い用量または対照(PBS)の群では生存したマウスはいなかった。200μg用量では、100%の動物が2日目まで生存し、60%が2日目まで生存し、20%が3日目まで生存した。よって、14日目の生存率の上昇は、400μg用量を投与した群(100%生存)、および200μg用量を投与した群(20%が3日目まで生存)の両方で見られた。
【0130】
d.mAbsの相乗効果
mAbsの相乗的に作用する能力を試験する研究を行った。左記の研究におけるものと同一の消極防護モデルを用いた。8つのマウス群(各5匹ずつ)を用い、チャレンジ用量の投与前に、100μgの4D5mAbs、200μgの4D5mAbs、100μgの9E11mAbs、200μgの9E11mAbs、各100μgの9E11および4D5で構成される200μgのプール、PBS(すなわち陰性対照)、ウサギ非PspA血清(すなわち陽性対照)、または400μgのIB12mAbsのいずれかを投与した。4D5および9E11抗体をそれぞれ100μgずつ含む200μgの総投与量では、14日目(すなわち試験終了まで)まで100%の保護をもたらすことが判明した。対照的に、200μgのmAbs 4D5または9E11単独では、14日目には、それぞれ、わずかに20%および40%の生存率しか得られなかった。100μg用量の4D5では、1日目の終わりには100%の生存率が得られ(PBSがそうだったように)、2日目の終わりには60%の生存率が得られたが、3日目には生存率は20%まで落ちた(これは14日目の終わりまで継続した)。100μg用量のmAb 9E11は、1日目の終わりには100%の生存率をもたらし(PBSがそうだったように)、2日目の終わりには80%の生存率をもたらし、3日目の終わりには60%の生存率をもたらし、4〜6日目には20%の生存率をもたらし、次いで生存率は0まで落ちた。その後の実験では、下記表6に記載されたデータは、この相乗効果を追認した。この研究では、動物群に、さまざまな濃度のmAbのプール(すなわち9E11と4D5mAbsの等量のプール)用量を投与した。
【表6】

【0131】
表6に示すように、各用量について相乗効果を観察した。25μg用量は予備試験しなかったが、25μgのプール用量は、20%の3日目までの生存率をもたらした。予備実験では、50μg用量のmAb 4D5または9E11は、用量(すなわち陰性対照)のものと実質的に同一の結果を有した。
【0132】
これらの実験は、4D5および9E11mAbsのそれぞれの使用が、肺炎連鎖球菌による感染からの保護をもたらしうることを実証している。これらの実験はまた、個別の抗体の組合せ効果の期待される相加効果を超える、4D5と9E11の併用投与によって生じる驚くべき相乗効果を実証している。本明細書に記載されるモノクローナル抗体は、別々に、または組み合わせて使用して差し支えない。
【0133】
本発明を、好ましい実施の形態に関して説明してきたが、当業者には、変形および変更が想起されよう。したがって、添付の特許請求の範囲が、特許請求する本発明の範囲内にあるこれらの等価の変形のすべてを包含することが意図されている。
【参考文献】
【0134】
Adamou JE, Heinrichs JH, Erwin AL, Walsh W, Gayle T, Dormitzer M, Dagan R, Brewah YA, Barren P, Lathigra R, Langermann S, Koenig S, Johnson S. 2001. “Identification and Characterization of a Novel Family of Pneumococcal Proteins That Are Protective against Sepsis.” Infect Immun. 69:949-958.

Hamel J, Charland N, Pineau I, Ouellet C, Rioux S, Martin D, Brodeur BR. 2004. “Prevention of Pneumococcal Disease in Mice Immunized with Conserved Surface-Accessible Proteins.” Infect Immun. 72:2659-2670.

Ogunniyi AD, Grabowicz M, Briles DE, Cook J, Paton JC. 2007. “Development of a vaccine against invasive pneumococcal disease based on combinations of virulence proteins of Streptococcus pneumoniae.” Infect Immun. 75:350-357.

Zhang Y, Masi AW, Barniak V, Mountzouros K, Hostetter MK, Green BA. 2001. “Recombinant PhpA protein, a unique histidine motif-containing protein from Streptococcus pneumoniae, protects mice against intranasal pneumococcal disease.” Infect Immun. 69: 3827-3836.

Guilmi, et al. New approaches towards the identification of antibiotic and vaccine targets in Streptococcus pneumoniae. EMBO reports 3, 8, 728-734 (2002)

米国特許第7,122,194号明細書:Johnsonら、2006年10月17日
発明の名称:Vaccine compositions comprising Streptococcus pneumoniae polypeptides having selected structural motifs

米国特許第6,582,706号明細書:Johnsonら、2003年6月24日
発明の名称:Vaccine compositions comprising Streptococcus pneumoniae polypeptides having selected structural motifs

米国特許出願公開第2005/0214329号明細書:Laferriere, Craig Anthony Josephら、2005年9月29日
発明の名称:Vaccine

米国特許出願公開第2004/0081662号明細書:Hermand, Philippe ら、2004年4月29日
発明の名称:Vaccine

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号:2に対して少なくとも90%の同一性を有する 肺炎連鎖球菌(S. pneumoniae)のポリペプチドをコードする単離された核酸。
【請求項2】
転写制御要素に機能的に結合した請求項1記載の核酸を包含する組換え発現ベクター。
【請求項3】
請求項2記載の組換え発現ベクターを包含する細胞。
【請求項4】
前記肺炎連鎖球菌(S. pneumoniae)のポリペプチドが免疫応答を誘発することを特徴とする請求項1記載の単離された核酸。
【請求項5】
a)配列番号:2に対して少なくとも90%の同一性を有する肺炎連鎖球菌(S. pneumoniae)のポリペプチドをコードする核酸、
b)配列番号:2に対して少なくとも90%の同一性を有する肺炎連鎖球菌(S. pneumoniae)のポリペプチドをコードする核酸に対して完全に相補的な核酸、および
c)TがUで置換されている、(a)または(b)のRNA
からなる群より選択される単離された核酸。
【請求項6】
転写制御要素に機能的に結合した請求項5記載の核酸を包含する組換え発現ベクター。
【請求項7】
請求項6記載の組換え発現ベクターを包含する細胞。
【請求項8】
肺炎連鎖球菌(S. pneumoniae)のポリペプチドが免疫応答を誘発することを特徴とする請求項5記載の単離された核酸。
【請求項9】
配列番号:2に対して少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を包含する単離されたポリペプチド。
【請求項10】
配列番号:2に対して少なくとも90%の同一性を有するポリペプチドに特異的に結合するモノクローナル抗体。
【請求項11】
配列番号:3に対して少なくとも90%の同一性を有する肺炎連鎖球菌(S. pneumoniae)のポリペプチドをコードする単離された核酸。
【請求項12】
転写制御要素に機能的に結合した請求項11記載の核酸を包含する組換え発現ベクター。
【請求項13】
請求項12記載の組換え発現ベクターを包含する細胞。
【請求項14】
肺炎連鎖球菌(S. pneumoniae)のポリペプチドが免疫応答を誘発することを特徴とする請求項11記載の単離された核酸。
【請求項15】
a)配列番号:3に対して少なくとも90%の同一性を有する肺炎連鎖球菌(S. pneumoniae)のポリペプチドをコードする核酸、
b)配列番号:3に対して少なくとも90%の同一性を有する肺炎連鎖球菌(S. pneumoniae)のポリペプチドをコードする核酸に対して完全に相補的な核酸、
c)TがUで置換されている、(a)または(b)のRNA
からなる群より選択される単離された核酸。
【請求項16】
転写制御要素に機能的に結合した請求項15記載の核酸を包含する組換え発現ベクター。
【請求項17】
請求項16記載の組換え発現ベクターを包含する細胞。
【請求項18】
肺炎連鎖球菌(S. pneumoniae)のポリペプチドが免疫応答を誘発することを特徴とする請求項15記載の単離された核酸。
【請求項19】
配列番号:3に対して少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を包含する単離されたポリペプチド。
【請求項20】
配列番号:3に対して少なくとも90%の同一性を有するポリペプチドに特異的に結合するモノクローナル抗体。
【請求項21】
配列番号:4に対して少なくとも90%の同一性を有する肺炎連鎖球菌(S. pneumoniae)のポリペプチドをコードする単離された核酸。
【請求項22】
転写制御要素に機能的に結合した請求項21記載の核酸を包含する組換え発現ベクター。
【請求項23】
請求項22記載の組換え発現ベクターを包含する細胞。
【請求項24】
肺炎連鎖球菌(S. pneumoniae)のポリペプチドが免疫応答を誘発することを特徴とする請求項21記載の単離された核酸。
【請求項25】
a)配列番号:4に対して少なくとも90%の同一性を有する肺炎連鎖球菌(S. pneumoniae)のポリペプチドをコードする核酸、
b)配列番号:4に対して少なくとも90%の同一性を有する肺炎連鎖球菌(S. pneumoniae)のポリペプチドをコードする核酸に対して完全に相補的な核酸、および
c)TがUで置換されている、(a)または(b)のRNA
からなる群より選択される単離された核酸。
【請求項26】
転写制御要素に機能的に結合した請求項25記載の核酸を包含する組換え発現ベクター。
【請求項27】
請求項26記載の組換え発現ベクターを包含する細胞。
【請求項28】
肺炎連鎖球菌(S. pneumoniae)のポリペプチドが免疫応答を誘発することを特徴とする請求項25記載の単離された核酸。
【請求項29】
配列番号:4に対して少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を包含する単離されたポリペプチド。
【請求項30】
配列番号:4に対して少なくとも90%の同一性を有するポリペプチドに特異的に結合するモノクローナル抗体。
【請求項31】
アミノ酸1およびアミノ酸101にわたる領域において配列番号:4に示されるアミノ酸配列を有するペプチドに配置される抗原決定基に特異的に結合するモノクローナル抗体。
【請求項32】
請求項30記載の抗体を包含する組成物を宿主に投与することを含む、宿主における連鎖球菌感染を阻害する方法。
【請求項33】
配列番号:2、配列番号:3、および配列番号:4、または、配列番号:15、配列番号:16、および配列番号:17からなる群より選択されるそれらの変異体からなる群より選択される、免疫原性のフラグメント。
【請求項34】
請求項33記載の免疫原性のフラグメントを少なくとも1種類と、薬学的に許容される担体とを含んでなる組成物。
【請求項35】
アジュバントをさらに含むことを特徴とする請求項33記載の組成物。
【請求項36】
少なくとも1つの他の免疫原性の連鎖球菌タンパク質またはそれらのフラグメントをさらに含むことを特徴とする請求項33記載の組成物。
【請求項37】
前記組成物が、粘膜面への投与に適していることを特徴とする請求項33記載の組成物。
【請求項38】
前記組成物がスプレー式点鼻薬であることを特徴とする請求項37記載の組成物。
【請求項39】
前記組成物がネブライザー溶液であることを特徴とする請求項37記載の組成物。
【請求項40】
前記組成物が噴霧吸入用エアロゾルであることを特徴とする請求項37記載の組成物。
【請求項41】
請求項33〜40いずれか1項記載の免疫原性のフラグメントまたは組成物を被験体に投与することを含む、被験体におけるPhtDに特異的な抗体を産生する方法。
【請求項42】
請求項33〜40いずれか1項記載の免疫原性のフラグメントまたは組成物を被験体に投与することを含む、被験体における肺炎球菌の鼻腔内保菌を低減する方法。
【請求項43】
請求項33〜40いずれか1項記載の免疫原性のフラグメントまたは組成物を被験体に投与することを含む、被験体における肺炎球菌の感染の危険性を低減する方法。
【請求項44】
前記肺炎球菌の感染が髄膜炎であることを特徴とする請求項43記載の方法。
【請求項45】
前記肺炎球菌の感染が中耳炎であることを特徴とする請求項43記載の方法。
【請求項46】
前記肺炎球菌の感染が肺炎であることを特徴とする請求項43記載の方法。
【請求項47】
前記肺炎球菌の感染が溶血性の尿毒症であることを特徴とする請求項43記載の方法。
【請求項48】
前記免疫原性のフラグメントの投与が、肺炎球菌の鼻腔内保菌を排除しないことを特徴とする請求項43記載の方法。
【請求項49】
配列番号:2、配列番号:3、および配列番号:4、または、配列番号:15、配列番号:16、および配列番号:17からなる群より選択されるそれらの変異体からなる群より選択されるPhtDの少なくとも1つのフラグメントを宿主に投与することを含む、ストレプトコッカス(Streptococcus)属の細菌による感染に対して宿主に免疫性を与える方法。
【請求項50】
2つ以上のフラグメントが前記宿主に投与されることを特徴とする請求項49記載の方法。
【請求項51】
配列番号:2、配列番号:3、および配列番号:4、または配列番号:15、配列番号:16、および、配列番号:17からなる群より選択されるそれらの変異体からなる群より選択される少なくとも1種類のポリペプチドを含む組成物を宿主に投与することを含む、ストレプトコッカス(Streptococcus)属の細菌による宿主の感染を治療する方法。
【請求項52】
2つ以上のポリペプチドが前記宿主に投与されることを特徴とする請求項51記載の方法。
【請求項53】
ATCC指定番号XXXXを有するマウスのハイブリドーマによって産生される1B12、ATCC指定番号XXXXを有するマウスのハイブリドーマによって産生される4D5、およびATCC指定番号XXXXを有するマウスのハイブリドーマによって産生される9E11からなる群より選択されるモノクローナル抗体。
【請求項54】
固定可能に取り付けられた検出可能なラベルをさらに含むことを特徴とする請求項53記載のモノクローナル抗体。
【請求項55】
請求項53記載のモノクローナル抗体の誘導体。
【請求項56】
固定可能に取り付けられた検出可能なラベルをさらに含むことを特徴とする請求項55記載の誘導体。
【請求項57】
ATCC指定番号XXXXを有するハイブリドーマによって産生される抗体と同一の抗原結合特異性を有するモノクローナル抗体。
【請求項58】
前記モノクローナル抗体が、配列番号:4に示されるアミノ酸配列を有するポリペプチドに特異的に結合することを特徴とする請求項57記載のモノクローナル抗体。
【請求項59】
請求項57記載のモノクローナル抗体の誘導体。
【請求項60】
固定可能に取り付けられた検出可能なラベルをさらに含む請求項59記載のモノクローナル抗体の誘導体。
【請求項61】
請求項53〜60いずれか1項記載のモノクローナル抗体を含む組成物。
【請求項62】
前記抗体が、少なくとも約60%、75%、90%、または95%の純度に精製されることを特徴とする請求項61記載の組成物。
【請求項63】
ATCC指定番号XXXXを有するマウスのハイブリドーマによって産生される1B12、ATCC指定番号XXXXを有するマウスのハイブリドーマによって産生される4D5、およびATCC指定番号XXXXを有するマウスのハイブリドーマによって産生される9E11からなる群より選択される少なくとも1種類のモノクローナル抗体を宿主に投与することを含む、宿主におけるストレプトコッカス(Streptococcus)属の細菌による感染を防ぐ方法。
【請求項64】
2つ以上のモノクローナル抗体を前記宿主に投与することを特徴とする請求項63記載の方法。
【請求項65】
TCC指定番号XXXXを有するマウスのハイブリドーマによって産生される1B12、ATCC指定番号XXXXを有するマウスのハイブリドーマによって産生される4D5、およびATCC指定番号XXXXを有するマウスのハイブリドーマによって産生される9E11からなる群より選択される少なくとも1つのモノクローナル抗体を宿主に投与することを含む、宿主におけるストレプトコッカス(Streptococcus)属の細菌による感染を治療する方法。
【請求項66】
2つ以上のモノクローナル抗体を前記宿主に投与することを特徴とする請求項65記載の方法。
【請求項67】
生物学的サンプルにおけるタンパク質の量を決定する方法であって、
前記生物学的試験サンプルを、ATCC指定番号XXXXを有するマウスのハイブリドーマによって産生される1B12、ATCC指定番号XXXXを有するマウスのハイブリドーマによって産生される4D5、およびATCC指定番号XXXXを有するマウスのハイブリドーマによって産生される9E11、またはそれらの誘導体からなる群より選択されるモノクローナル抗体に曝露し、
前記サンプルに結合する抗体または誘導体の量を測定し、
前記生物学的試験サンプルにおける結合量を、対照の生物学的サンプルに見られる結合量と比較する、
各工程を有してなり、
前記対照の生物学的サンプルと比較した前記生物学的試験サンプルにおける結合の増大が、その中の前記タンパク質の存在を示唆することを特徴とする方法。
【請求項68】
前記生物学的試験サンプルが哺乳動物の組織であることを特徴とする請求項67記載の方法。
【請求項69】
前記組織が血液であることを特徴とする請求項68記載の方法。
【請求項70】
生物学的サンプルにおけるタンパク質の存在の有無を判断する方法であって、
前記サンプルにおいて、ATCC指定番号XXXXを有するマウスのハイブリドーマによって産生される1B12、ATCC指定番号XXXXを有するマウスのハイブリドーマによって産生される4D5、および、ATCC指定番号XXXXを有するマウスのハイブリドーマによって産生される9E11、またはそれらの誘導体からなる群より選択されるモノクローナル抗体と反応するタンパク質を検出する工程を含む、方法。
【請求項71】
生物学的サンプルにおけるストレプトコッカス(Streptococcus)属の細菌またはそれらのタンパク質を検出する方法であって、前記方法が:
(a)生物学的試験サンプルを、特異性を有する前記サンプルの成分に対する前記抗体を考慮した条件下で、ATCC指定番号XXXXを有するマウスのハイブリドーマによって産生される1B12、ATCC指定番号XXXXを有するマウスのハイブリドーマによって産生される4D5、およびATCC指定番号XXXXを有するマウスのハイブリドーマによって産生される9E11、またはそれらの誘導体からなる群より選択される、少なくとも1種類のモノクローナル抗体に曝露し、

(b)前記生物学的試験サンプルの成分に結合する前記抗体の量を決定し、
(c)前記生物学的試験サンプル前記抗体の量を、対照サンプルに結合する量と比較する、
各工程を有してなり、
前記対照生物学的サンプルと比較して、前記生物学的試験サンプルの成分への顕著に多い結合量が、前記サンプルにおけるストレプトコッカス(Streptococcus)属の細菌またはそれらのタンパク質の存在を示唆することを特徴とする方法。
【請求項72】
前記生物学的サンプルが哺乳動物の組織であることを特徴とする請求項71記載の方法。
【請求項73】
前記生物学的サンプルが哺乳動物の血液であることを特徴とする請求項72記載の方法。
【請求項74】
前記生物学的サンプルがヒトの血液であることを特徴とする請求項73記載の方法。
【請求項75】
生物学的サンプルにおけるストレプトコッカス(Streptococcus)属の細菌またはそれらのタンパク質を検出するためのキットであって、前記キットが、
ATCC指定番号XXXXを有するマウスのハイブリドーマによって産生される1B12、ATCC指定番号XXXXを有するマウスのハイブリドーマによって産生される4D5、およびATCC指定番号XXXXを有するマウスのハイブリドーマによって産生される9E11、またはそれらの誘導体からなる群より選択される少なくとも1つのモノクローナル抗体と、
使用説明書と
を含んでなるキット。
【請求項76】
前記モノクローナル抗体が凍結乾燥の形態であることを特徴とする請求項75記載のキット。
【請求項77】
ATCC指定番号XXXXを有するマウスのハイブリドーマによって産生される1B12、ATCC指定番号XXXXを有するマウスのハイブリドーマによって産生される4D5、およびATCC指定番号XXXXを有するマウスのハイブリドーマによって産生される9E11からなる群より選択される少なくとも2種類のモノクローナル抗体を宿主に投与することを含む、宿主におけるストレプトコッカス(Streptococcus)属の細菌による感染を防ぐ方法。
【請求項78】
前記モノクローナル抗体が4D5および9E11であることを特徴とする請求項77記載の方法。
【請求項79】
ATCC指定番号XXXXを有するマウスのハイブリドーマによって産生される1B12、ATCC指定番号XXXXを有するマウスのハイブリドーマによって産生される4D5、およびATCC指定番号XXXXを有するマウスのハイブリドーマによって産生される9E11からなる群より選択される少なくとも2種類のモノクローナル抗体を宿主に投与することを含む、宿主におけるストレプトコッカス(Streptococcus)属の細菌による感染を治療する方法。
【請求項80】
前記モノクローナル抗体が4D5および9E11であることを特徴とする請求項79記載の方法。
【請求項81】
配列番号:24に対して少なくとも90%の同一性を有するポリペプチドに特異的に結合するモノクローナル抗体。
【請求項82】
前記モノクローナル抗体が配列番号:26からなるペプチドに特異的に結合することを特徴とする請求項81記載のモノクローナル抗体。
【請求項83】
配列番号:26に対して少なくとも90%の同一性を有するペプチドに特異的に結合するモノクローナル抗体。

【公表番号】特表2010−535015(P2010−535015A)
【公表日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−517242(P2010−517242)
【出願日】平成20年7月23日(2008.7.23)
【国際出願番号】PCT/CA2008/001353
【国際公開番号】WO2009/012588
【国際公開日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【出願人】(506076695)サノフィ パストゥール リミテッド (12)
【氏名又は名称原語表記】SANOFI PASTEUR LIMITED
【Fターム(参考)】