説明

免疫原性構築物

本発明は、MAPに対する治療的または予防的な免疫応答を誘発するために使用できる分子に関する。特に、本発明は、ahpCポリペプチド配列、gsdポリペプチド配列、p12ポリペプチド配列およびmpaポリペプチド配列を含むポリペプチドであって、該ahpCポリペプチドは、配列番号2の配列、配列番号2の全長にわたって配列番号2に対して70%を超えるアミノ酸配列同一性を有するその変異体、またはエピトープを含む配列番号2の少なくとも8アミノ酸の断片を含み;該gsdポリペプチドは、配列番号6の配列、配列番号6の全長にわたって配列番号6に対して70%を超えるアミノ酸配列同一性を有するその変異体、またはエピトープを含む配列番号6の少なくとも8アミノ酸の断片を含み;該p12ポリペプチドは、配列番号10の配列、配列番号10の全長にわたって配列番号10に対して70%を超えるアミノ酸配列同一性を有するその変異体、またはエピトープを含む配列番号10の少なくとも8アミノ酸の断片を含み; ならびに、該mpaポリペプチドは、配列番号14の配列、配列番号14の全長にわたって配列番号14に対して70%を超えるアミノ酸配列同一性を有するその変異体、またはエピトープを含む配列番号14の少なくとも8アミノ酸の断片を含む、ポリペプチドに関する。好ましくは、そのような変異体は、未改変ポリペプチドに対する免疫応答を生じさせる能力を維持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の属する分野
本発明は、マイコバクテリウム・アビウム亜種パラツベルクローシス(Mycobacterium avium subspecies paratuberculosis) (MAP)の感染の治療または予防、およびそのような感染と関連している障害の治療または予防に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
マイコバクテリウム・アビウム亜種パラツベルクローシス(MAP)はマイコバクテリウム・アビウムコンプレックス(Mycobacterium avium complex) MACのメンバーである。他の環境中MACと異なり、MAPは、霊長類を含む多数の動物において、ある範囲の組織病理学的タイプの腸の慢性炎症を生じさせる特別な能力を有する。その広い病原性にもかからわず、MAPは動物中で、臨床疾患を引き起こすことなく、何年も生存しうる。MAPはウシ型結核菌(M. bovis)より耐熱性であり、UK、チェコ共和国およびUSAにおいて小売殺菌乳から培養されている。したがって、この経路による家畜からヒトへの伝染が起こりうる。環境汚染源、例えば国内供給に使用される河川水および地表水からの伝染についての高いリスクも存在する。
【0003】
MAPは、ヒト、特に遺伝性または後天性の感受性を有するヒトにおいてクローン病を引き起こしうる。最近の研究では、クローン病を有するほとんどのヒトの炎症した腸がこれらの慢性腸内病原体に感染していることが確認されている。別の研究では、動物の場合と同様に、該感染が全身性であることが多いことが示されているクローン病患者の50%の血液からMAPが培養できることが報告されている。さらにまた、過敏性腸症候群を有するヒトは、高い割合で、MAPにも感染している。
【0004】
ヒト中の該生物は非常にゆっくり増殖し、慣用の培養において単離および継代することが非常に困難である。それらは低量で存在し、また通常の光学顕微鏡によって組織中で観察できないチール・ネールゼン(ZN)染色での陰性形態を取る。それらは免疫認識を最低限にすることができるようであり、また、従来のスフェロプラストと異なり、それらのZN陰性形態は、PCRによる信頼性のある検出に必須の化学的溶解および酵素的溶解の手法に非常に耐性である。
【0005】
MAP感染は根絶が非常に困難である。ZN陰性細胞内MAPはin vivoで標準的な抗TB薬物に対し高度に耐性である。しかし、MAPがより高感受性であるリファブチン/クラリスロマイシンの組み合わせを摂取できるクローン病患者のうちかなりの割合が、時々劇的に治癒する。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明の要旨
本発明は、ヒトおよび動物においてMAPに対する治療的または予防的免疫応答を誘導するために使用できる、分子、特にポリペプチドおよび、それらの発現に使用できるポリヌクレオチドに関する。
【0007】
特に、本発明は、ahpCポリペプチド配列、gsdポリペプチド配列、p12ポリペプチド配列およびmpaポリペプチド配列を含むポリペプチドであって:
該ahpCポリペプチドは、配列番号2の配列、配列番号2の全長にわたって配列番号2に対して70%を超えるアミノ酸配列同一性を有するその変異体、またはエピトープを含む配列番号2の少なくとも8アミノ酸の断片を含み;
該gsdポリペプチドは、配列番号6の配列、配列番号6の全長にわたって配列番号6に対して70%を超えるアミノ酸配列同一性を有するその変異体、またはエピトープを含む配列番号6の少なくとも8アミノ酸の断片を含み;
該p12ポリペプチドは、配列番号10の配列、配列番号10の全長にわたって配列番号10に対して70%を超えるアミノ酸配列同一性を有するその変異体、またはエピトープを含む配列番号10の少なくとも8アミノ酸の断片を含み; ならびに
該mpaポリペプチドは、配列番号14の配列、配列番号14の全長にわたって配列番号14に対して70%を超えるアミノ酸配列同一性を有するその変異体、またはエピトープを含む配列番号14の少なくとも8アミノ酸の断片を含む、
ポリペプチドを提供する。
【0008】
好ましくは、そのような変異体は、未改変ポリペプチドに対する免疫応答を生じさせる能力を維持する。好ましい変異体ahpCポリペプチドは配列番号4に記載のアミノ酸配列を有する。好ましい変異体gsdポリペプチドは配列番号8に記載のアミノ酸配列を有する。好ましい変異体p12ポリペプチドは配列番号12に記載のアミノ酸配列を有する。好ましい変異体mpaポリペプチドは配列番号16に記載のアミノ酸配列を有する。本発明の好ましいポリペプチドは配列番号4、8、12および16のアミノ酸配列を含む。特に好ましいアミノ酸配列は配列番号24に記載される。
【0009】
本発明はまた、そのようなポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを提供する。本発明のポリヌクレオチドは以下のポリヌクレオチドを含んでよい:
(a) 配列番号1のahpCポリヌクレオチドまたは配列番号1の全長にわたって配列番号1に対して少なくとも70%のホモロジーを有するその変異体、またはエピトープをコードする配列番号1の少なくとも24ヌクレオチドの断片;
(b) 配列番号5のgsdポリヌクレオチドまたは配列番号5の全長にわたって配列番号5に対して少なくとも70%のホモロジーを有するその変異体、またはエピトープをコードする配列番号5の少なくとも24ヌクレオチドの断片;
(c) 配列番号9のp12ポリヌクレオチドまたは配列番号9の全長にわたって配列番号1に対して少なくとも70%のホモロジーを有するその変異体、またはエピトープをコードする配列番号9の少なくとも24ヌクレオチドの断片; ならびに
(d) 配列番号13のmpaポリヌクレオチドまたは配列番号13の全長にわたって配列番号1に対して少なくとも70%のホモロジーを有するその変異体、またはエピトープをコードする配列番号13の少なくとも24ヌクレオチドの断片。
【0010】
本発明のポリヌクレオチドは本発明のポリペプチドをコードする。一実施形態では、上で規定されるポリヌクレオチド変異体は、遺伝暗号の縮重のせいで、記載の配列番号と異なる。一実施形態では、ポリヌクレオチド変異体は、その治療することが望まれる生物種に対してコドンが最適化される。
【0011】
本発明はまた、以下のものを提供する:
- 本発明のポリヌクレオチドを含むベクター、または上で規定されるahpCポリペプチド、gsdポリペプチド、p12ポリペプチドおよびmpaポリペプチドを発現可能なベクター。好ましいベクタータイプには、ポックスウイルスベクター、アデノウイルスベクターおよびプラスミドが含まれる。
【0012】
- 本発明のポリペプチド、ポリヌクレオチドまたはベクターを含む宿主細胞または本発明のポリペプチドを発現可能な宿主細胞。
【0013】
- 治療に使用するための本発明のポリペプチド、ポリヌクレオチド、ベクターまたは宿主細胞。特に、MAP感染またはMAP感染と関連している状態または症状を治療または予防するための医薬の製造における、そのようなポリペプチド、ポリヌクレオチド、ベクターまたは宿主細胞の使用。
【0014】
- MAP感染またはMAP感染と関連している状態または症状を治療または予防する方法であって、その必要がある被験体に、本発明のポリペプチド、ポリヌクレオチド、ベクターまたは宿主細胞の有効量を投与するステップを含む方法。該被験体には、追加の治療物質を投与してもよい。
【0015】
- MAP感染またはMAP感染と関連している状態または症状の治療または予防に使用するためのキットであって、(i) 少なくとも1つの、本発明のポリペプチド、ポリヌクレオチド、ベクターまたは宿主細胞および(ii) 同時に、連続して、あるいは別々に使用するための少なくとも1つの他の治療物質、を含むキット。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
配列の簡単な説明
配列番号1および2は、それぞれ、MAP ahpC遺伝子のポリヌクレオチド配列およびポリペプチド配列である。
【0017】
配列番号3および4はMAP ahpC遺伝子の改変型であり、該ポリヌクレオチド配列ではヒトでの使用に対してコドンが最適化されている。
【0018】
配列番号5および6は、それぞれ、MAP gsd遺伝子のポリヌクレオチド配列およびポリペプチド配列である。
【0019】
配列番号7および8はMAP gsd遺伝子の改変型であり、該ポリヌクレオチド配列ではヒトでの使用に対してコドンが最適化され、また22位のシステイン残基を除去するためにN末端でトランケート(末端切断)されている。
【0020】
配列番号9および10は、それぞれ、MAP p12遺伝子のポリヌクレオチド配列およびポリペプチド配列である。
【0021】
配列番号11および12はMAP p12遺伝子の改変型であり、該ポリヌクレオチド配列ではヒトでの使用に対してコドンが最適化されている。
【0022】
配列番号13および14は、それぞれ、MAP mpa遺伝子のポリヌクレオチド配列およびポリペプチド配列である。
【0023】
配列番号15および16はMAP mpa遺伝子の改変型であり、該ポリヌクレオチド配列ではヒトでの使用に対してコドンが最適化され、またいくつかの膜貫通領域は除去されている。
【0024】
配列番号17はユビキチンリーダー配列である。
【0025】
配列番号18はpKタグ配列である。
【0026】
配列番号19および20は、上記改変型ahpC、gsd、p12およびmpa配列からなるポリヌクレオチド構築物およびそのコード化ペプチドである。
【0027】
配列番号21および22は、ユビキチンリーダー配列およびpKタグをともに有する上記改変型ahpC、gsd、p12およびmpa配列からなる、ポリヌクレオチド構築物およびそのコード化ペプチドである。
【0028】
配列番号23はHavilah構築物のポリヌクレオチド配列であり、配列番号24はHavilahによってコードされるポリペプチド配列である。
【0029】
配列番号25は、図3および4にて特定されるmpaポリペプチド配列由来のT細胞エピトープである。
【0030】
発明の詳細な説明
本発明は、ヒトまたは動物におけるMAP感染またはMAPの存在と関連している状態の治療または予防において、MAPに由来する4種のタンパク質の組み合わせの使用に関する。該4種のタンパク質は、ahpC、gsd、p12およびmpaである。ahpCおよびp12は分泌成分であり、gsdおよびmpaはともにMAP中の膜結合分子である。
【0031】
ahpCは分泌成分であり、多数の病原性マイコバクテリアによって共有される。ahpCはMAPがマクロファージ内で生存する能力に関与し、微生物が休眠状態に入ると上方制御される。MAP ahpC遺伝子およびタンパク質の核酸配列およびアミノ酸配列はそれぞれ配列番号1および2に記載される。本発明での使用では、この配列、または後述されるその変異体を使用してよい。例えば、さらに下記で後述されるように、MAP ahpC遺伝子配列のコドンを最適化して、哺乳類、特にヒトでの使用により好適になるようにしてもよい。好適な改変型ahpC配列およびコード化タンパク質はそれぞれ配列番号3および4に記載される。
【0032】
gsdは、予測シグナル配列および脂質アシル化部位を伴った、GS病原性要素によってコードされるグリコシルトランスフェラーゼである。マイクロアレイ解析では、それが細胞内環境において上方制御されることが示される。それは微生物の細胞表面で発現され、GDP-フコースを末端近くのラムノースに転移させてMAPの表面糖ペプチド脂質を誘導体化フコースでキャップし、それにより、ZN陰性状態の病原体に、不活性で、疎水性で、かつ高度に耐性を有する細胞表面を与えることが予測される。MAP gsd遺伝子およびタンパク質の核酸配列およびアミノ酸配列はそれぞれ配列番号5および6に記載される。本発明での使用では、この配列、または後述されるその変異体を使用してよい。例えば、さらに後述されるようにMAP gsd遺伝子配列のコドンを最適化して、哺乳類、特にヒトでの使用により好適になるようにしてよい。他の改変を施してよく、例えば潜在的アシル化部位を除去してよい。1つの好適な改変型gsd配列およびそのコード化タンパク質はそれぞれ配列番号7および8に記載される。
【0033】
p12は、IS900によってコードされるp43のカルボキシ末端の17 kDa断片であり、それもまた細胞内で上方制御される。細胞表面で、およびMAPおよびp43.rec.E.coliの両者において、それが特異的タンパク質分解切断およびエキソドメイン放出の基質であることが強く予測される。MAP p12遺伝子およびタンパク質の核酸配列およびアミノ酸配列はそれぞれ配列番号9および10に記載される。本発明での使用では、この配列、または後述されるその変異体を使用してよい。例えば、さらに後述されるようにMAP p12遺伝子配列のコドンを最適化して、哺乳類、特にヒトでの使用により好適になるようにしてよい。1つの好適な改変型p12配列およびそのコード化タンパク質はそれぞれ配列番号11および12に記載される。
【0034】
mpaもまたMAPの表面で発現され、該病原体に特有であると考えられる。それはアセチラーゼであって、かつ予測上の孔分子(predicted pore molecule)であり、10個の膜貫通領域および大きな細胞外ペプチドループを有する。MAP mpa遺伝子およびタンパク質の核酸配列およびアミノ酸配列はそれぞれ配列番号13および14に記載される。本発明での使用では、この配列、または後述されるその変異体を使用してよい。例えば、さらに後述されるようにMAP mpa遺伝子配列のコドンを最適化して、哺乳類、特にヒトでの使用により好適になるようにしてよい。他の改変を施してよく、例えば膜貫通領域を除去してタンパク質の疎水性を減少させてよい。1つの好適な改変型mpa配列およびそのコード化タンパク質はそれぞれ配列番号15および16に記載される。
【0035】
本発明では、これらの4種のタンパク質の各々、またはそのいずれかの変異体を組み合わせて提供する。
【0036】
ポリペプチド
本発明は、ahpCポリペプチド、gsdポリペプチド、p12ポリペプチドおよびmpaポリペプチドを組み合わせて提供することに関する。
【0037】
「ポリペプチド」は、本明細書中では、その最も広義の意味で使用され、2つ以上のサブユニットのアミノ酸、アミノ酸アナログ、または他のペプチド模倣物(peptidomimetic)の化合物を表す。ゆえに用語「ポリペプチド」には、短いペプチド配列に加えて、より長いポリペプチドおよびタンパク質も含まれる。本明細書中で使用される用語「アミノ酸」とは、天然および/または非天然または合成アミノ酸を表し、それには、グリシンおよびDまたはL光学異性体の両者、およびアミノ酸アナログおよびペプチド模倣物が含まれる。
【0038】
好適なahpCポリペプチドは配列番号2または配列番号4のアミノ酸配列を有してよい。好適なgsdポリペプチドは配列番号6または配列番号8のアミノ酸配列を有してよい。好適なp12ポリペプチドは配列番号10または配列番号12のアミノ酸配列を有してよい。好適なmpaポリペプチドは配列番号14または配列番号16のアミノ酸配列を有してよい。好適なahpC、gsd、p12またはmpa配列は、あるいは、これらの具体的配列の1つの変異体であってよい。例えば、変異体は、上記アミノ酸配列のいずれかの置換、欠失または付加変異体であってよく、あるいは下記でさらに説明されるそのいずれかの断片であってよい。
【0039】
該4種のポリペプチドのうちの1つの変異体は、配列表に記載の配列から出発して、1、2、3、4、5、10まで、20まで、30まで、またはそれ以上のアミノ酸置換および/または欠失を含んでよい。「欠失」変異体は、個々のアミノ酸の欠失、少数の群のアミノ酸の、例えば2、3、4または5アミノ酸等の欠失、または、より大きいアミノ酸領域の欠失、例えば特定のアミノ酸ドメインまたは他の特徴の欠失を含んでよい。「置換」変異体は、好ましくは、1以上のアミノ酸を、同数のアミノ酸で置き換えて、保存的アミノ酸置換を作り出すことを含む。例えば、アミノ酸を、類似の特性を有する代替のアミノ酸、例えば別の塩基性アミノ酸、別の酸性アミノ酸、別の中性アミノ酸、別の荷電アミノ酸、別の親水性アミノ酸、別の疎水性アミノ酸、別の極性アミノ酸、別の芳香族アミノ酸または別の脂肪族アミノ酸で置換してよい。好適な置換基を選択するために使用できる20種の主要アミノ酸のいくつかの特性は以下の通りである:
【表1】

【0040】
好ましい「誘導体」または「変異体」には、天然に存在するアミノ酸の代わりに、その配列中に見られるアミノ酸がその構造アナログであるものが含まれる。配列中で使用されるアミノ酸は、該ペプチドの機能が重大な悪影響を受けないならば、誘導体化または改変、例えば標識されていてもよい。
【0041】
上記誘導体および変異体は、ペプチドの合成中に、または生産後修飾によって、またはペプチドが組換え型である場合には、核酸の部位特異的突然変異誘発、ランダム突然変異誘発、または酵素的切断および/またはライゲーションの公知の技術を使用して、調製してよい。
【0042】
好適な変異体は、MAP以外のマイコバクテリア由来の天然に存在するポリペプチドであってもよい。例えば、変異体ahpCポリペプチド配列は、MAPと異なるマイコバクテリア株に由来してよい。そのような天然に存在する変異体は、好ましくは、MAPに対して作用可能な免疫応答を誘発する能力を維持する。すなわち、該変異体ポリペプチドに対する免疫応答は、MAPポリペプチドならびに使用される変異体ポリペプチドに対して反応する。
【0043】
好ましくは、本発明に記載の変異体は、例えば、配列番号2、4、6、8、10、12、14または16に対して60%を超える、または70%を超える、例えば75または80%、好ましくは85%を超える、例えば90または95%を超えるアミノ酸同一性(本明細書に後述する試験に従う)を有するアミノ酸配列を有する。このアミノ酸同一性のレベルは、該配列の全長にわたって、または、該全長ポリペプチドのサイズに応じて、該配列の一部分、例えば20、30、50、75、100、150、200またはそれ以上のアミノ酸について認められる。
【0044】
アミノ酸配列に関連して、「配列同一性」とは、ClustalW (Thompson et al., 1994, 上記) を以下のパラメータを用いて使用して評価した場合に表示された値を示す配列をいう:
ペアワイズ・アライメントパラメータ-メソッド: 精密(accurate), マトリックス: PAM, ギャップオープンペナルティ: 10.00, ギャップ伸長ペナルティ: 0.10;
マルチプル・アライメントパラメータ-マトリックス: PAM, ギャップオープンペナルティ: 10.00, 遅延に関する同一性%: 30, 末端ギャップに対するペナルティ付加: あり, ギャップ分離距離: 0, 陰性マトリックス: なし, ギャップ伸長ペナルティ: 0.20, 残基特異的ギャップペナルティ: あり, 親水性ギャップペナルティ: あり, 親水性残基: GPSNDQEKR。特定の残基での配列同一性は、単純に誘導体化されている同一残基を含むことを意図する。
【0045】
配列番号2、6、10および14に記載の野生型MAPタンパク質配列のいずれかに特定の改変を施すことができる。例えば、免疫原としての変異体タンパク質の全体的特性を改善しようとするために改変を施すことができる。
【0046】
一実施形態では、野生型タンパク質を欠失または置換によって改変して、アシル化部位を除去してよい。そのようなアシル化部位は該タンパク質の全体的コンフォメーションに影響するかもしれない。アシル化部位を除去することによって、例えばシステイン残基を排除または置換することによって、該タンパク質内の有効なエピトープの提示を最適化してよい。例えば、配列番号6に記載の野生型MAP gsd配列は22位にシステイン残基を含む。配列番号8の変異体では、N末端でのトランケーションによってアミノ酸配列が改変されていて、このシステイン残基がもはや存在しないようになっている。そのような改変は、野生型タンパク質または、本明細書中に記載のコドン最適化配列等の変異体または断片配列のいずれかに対して施されてもよい。
【0047】
別の実施形態では、野生型MAPタンパク質を改変して、潜在的な交差反応性エピトープを無効にするか、あるいは除去してよい。例えば、本発明のポリペプチドがヒトにおける使用が意図されているする場合、該ポリペプチド配列を改変して、潜在的な交差反応性ヒトエピトープ、例えばヒト患者においてヒトタンパク質中の類似の配列と交差反応する可能性がある抗体を生成する配列を無効にするかあるいは除去してよい。ゆえに、MAP配列に改変を施して、そのような交差反応性を回避し、一方で、抗MAP免疫応答を生じさせる能力を維持してよい。
【0048】
例えば野生型MAP gsd配列内で、239および241位のリシン残基(配列番号6を参照のこと)をアスパラギンでそれぞれ置換してよい。本明細書中に記載の変異体または断片gsd配列のいずれかにおいて同等の置換を施してよい。例えば配列番号8の変異体配列において、216および218位のリシン残基をアスパラギンで置換してよい。この置換は、gsdポリペプチドをコードする核酸配列を改変することによって達成されうる。例えば、配列番号7のgsdポリヌクレオチド配列において、646〜648位および651〜654位のAAGコドンをAATによって置換してよい。この置換によって、配列番号7の最適化されたヒトコドン使用が維持され、さらに潜在的な交差反応性ヒトエピトープが除去される。
【0049】
同様に、MAP ahpC配列に改変を施してよい。配列番号2の野生型ahpC配列では、29位のリシンをスレオニンで置換してよく、31位のプロリンをロイシンで置換してよい。本明細書中に記載の変異体または断片ahpC配列のいずれかにおいて同等の置換を施してよい。例えば、配列番号4の改変型変異体配列において、28位のリシンおよび30位のプロリンにおいて同じ置換を施してよい。この置換は、ahpCポリペプチドをコードする核酸配列を改変することによって達成してよい。例えば、配列番号3のahpCポリヌクレオチド配列において、82〜84位のAAAコドンをACAによって置換してよく、88〜90位のCCCコドンをCTCによって置換してよい。この置換によって、配列番号3の最適化されたヒトコドン使用が維持され、さらに潜在的な交差反応性ヒトエピトープが除去される。
【0050】
同様に、該タンパク質の疎水性を減少させ、したがってエピトープの表面提示の最適化を支援するために改変を施してよい。例えば、配列番号14の野生型mpa配列は10個の膜貫通領域を含む。該タンパク質の疎水性を減少させるために、1以上のこれらの領域、またはこれらの領域の一部分を除去または置換してよい。例えば、1以上またはすべての膜貫通領域を欠失させてよい。そのような領域を、完全に、または部分的に欠失させてよく、場合により、該タンパク質中の膜貫通配列の末端由来の0、1、2またはそれ以上のアミノ酸残基を残してよい。ゆえに1つの改変は1以上の疎水性アミノ酸の欠失または置換であってよい。その例は配列番号16に認められ、該配列はMAP mpaの変異体であり、該変異体では、ほとんどの膜貫通配列が欠失していて、該変異体ポリペプチド中の膜貫通領域由来の1または2アミノ酸しか残っていない。
【0051】
本発明のポリペプチド「断片」は、トランケーションによって、例えばポリペプチドのNおよび/またはC末端から1以上のアミノ酸を除去することによって、作製してよい。このように、10まで、20まで、30まで、40まで、またはそれ以上のアミノ酸をNおよび/またはC末端から除去してよい。1以上の内部欠失によって断片を作製してもよい。例えば、本発明の変異体は、非エピトープ性アミノ酸の不存在下で、該領域の全長ポリペプチド由来の2以上のエピトープ領域からなるか、あるいはそれを含んでよい。好ましくはahpC、gsd、p12またはmpaポリペプチドの断片は、未改変のMAPポリペプチドに対する免疫応答を誘発可能な少なくとも1つのエピトープを含む。そのような断片は、配列番号2、4、6、8、10、12、14または16の配列から誘導してよく、あるいは本明細書中に記載の変異体ペプチドから誘導してよい。好ましくはそのような断片は8〜150残基の範囲の長さであり、例えば8〜50または8〜30残基である。あるいは、本発明の断片はさらに長い配列であってよく、例えば本発明の全長ポリペプチドの少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%または少なくとも90%を含む。
【0052】
好ましくは、上記4種のポリペプチドのうちの1つの変異体はその機能的変異体である。特に、変異体ポリペプチドは、未改変のMAPポリペプチドに対する免疫応答を誘発する能力を維持すべきであろう。一実施形態では、機能的変異体ポリペプチドは抗原として機能可能であるべきであり、元のポリペプチド由来の少なくとも1つの機能的エピトープを含むべきであろう。
【0053】
「抗原」とは、個体において免疫学的応答を誘発できる任意の物質、概して巨大分子をいう。本明細書中で使用される「抗原」は、概して、1以上のエピトープを含有するポリペプチド分子またはその部分をいうために使用される。さらにまた、本発明の目的で、「抗原」には、天然配列に対して欠失、付加および置換等の改変(通常は性質が保存的なもの)を有するポリペプチドが、該ポリペプチドが十分な免疫原性を維持する限りにおいて、含まれる。これらの改変は、例えば部位特異的突然変異誘発による、意図的な改変であってよく、あるいは、例えば該抗原を生産する宿主の突然変異による、偶発的な改変であってよい。
【0054】
目的の抗原に対する「免疫応答」とは、個体内での該抗原に対する体液性および/または細胞性免疫応答の生起である。本発明の目的では、「体液性免疫応答」とは、抗体分子によって媒介される免疫応答をいい、「細胞性免疫応答」は、Tリンパ球および/または他の白血球によって媒介される免疫応答である。
【0055】
本明細書中で使用される用語「エピトープ」とは、概して、免疫受容体、例えばT細胞受容体および/または抗体によって認識される標的抗原上の部位をいう。好ましくはそれは、タンパク質に由来するか、あるいはその部分である短いペプチドである。しかし該用語はまた、糖ペプチドおよび糖鎖エピトープを有するペプチドを含むものとする。単一抗原分子、例えば本明細書中に記載の4種のタンパク質の1つは、複数の異なるエピトープを含んでよい。用語「エピトープ」はまた、生物全体を認識する応答を刺激するアミノ酸または炭水化物の改変配列を含む。
【0056】
選択したエピトープがMAPに特異的であるか、あるいはMAPの病原性に関与する場合にはそれは有益である。例えば、該エピトープを認識する免疫受容体および/または抗体がMAP由来のこのエピトープのみを認識し、他の無関係のタンパク質、特に無関係の生物由来のタンパク質または宿主タンパク質中のエピトープを認識しない場合には有益である。該エピトープがMAPの病原性に関与する場合、そのようなエピトープに対する免疫応答を、病原性MAP感染をターゲティングするために使用してよい。
【0057】
エピトープは他のマイコバクテリアの同等のエピトープに関連していてもよい。例えば、MAP感染を患っている多くの個体は二次共病原体(secondary co-pathogen)であるマイコバクテリウム・アビウム(M. avium)にも感染している。他のマイコバクテリウム・アビウムコンプレックスはクローン病において存在するか、あるいはそれに関与しているかもしれない。AhpC等のMAP中で発現されるタンパク質の多くは、マイコバクテリウム・アビウム中で発現されるタンパク質と非常に類似している。本発明のポリペプチドが、MAPに加えてマイコバクテリウム・アビウムに対抗して機能する免疫応答を誘発可能な1以上のエピトープを含む場合には、追加の二次的な治療効果が達成されうる。
【0058】
エピトープは、ペプチドまたはポリペプチドのアミノ酸および対応するDNA配列についての知識から、ならびに特定のアミノ酸の性質(例えばサイズ、電荷等)およびコドン辞書(codon dictionary)から特定することができ、過度の実験を要しない。例えばIvan Roitt, Essential Immunology, 1988; Janis Kuby, Immunology, 1992 例えばpp. 79-81を参照のこと。目的のタンパク質またはエピトープが応答を誘発するかどうかを決定する上でのいくつかの指針には、ペプチドの長さが含まれる。すなわち、該ペプチドは、MHCクラスI複合体に適合するために、少なくとも8または9アミノ酸長であるべきであり、クラスII MHC複合体に適合するために、少なくとも8-25、例えば少なくとも13-25アミノ酸長であるべきである。これらの長さは、該ペプチドがそれぞれのMHC複合体に結合するための最小の長さである。細胞がペプチドを切断しうることから、該ペプチドはこれらの長さより長いことが好ましい。該ペプチドは、免疫応答を生じさせるために十分に高い特異性で種々のクラスIまたはクラスII分子に自身が結合することを可能にする適切なアンカーモチーフを含有すべきであろう。このことは、過度の実験を要することなく、MHC分子と関連しているペプチドの公表されている構造と目的のタンパク質の配列を比較することによって行うことができる。つまり、当業者は、タンパク質データベースに挙げられている配列とタンパク質配列を比較することによって目的のエピトープを突き止めることができる。
【0059】
ゆえに、好適なエピトープは、通常使用される方法、例えば図3および4で実証された、mpaの第5の細胞外ループ中の強力なT細胞エピトープGFAEINPIA (ペプチド9.1)を特定するための方法によって、特定してよい。そのような方法では、目的のポリペプチド配列の断片である短いペプチドのライブラリーを作成し、これらのペプチドの各々を、全長ポリペプチドに対する免疫応答を特定するその能力に関して別々に評価する。該ライブラリーのメンバーは、グループまたはプール内でスクリーニングしてよく、あるいは該ライブラリーの個々のメンバー、例えば単一プールの個々のメンバーを別々に評価してよい。
【0060】
別の例では、配列番号4、8、12および16の個々のタンパク質のエピトープを走査することによって、いくつかの予測上のクラスIおよびクラスIIエピトープが示された。
【0061】
配列番号4のahpC変異体配列では、アミノ酸48〜56、90〜101および161〜169に、予測される強力なクラスIIエピトープが特定された。本発明のahpCポリペプチド、例えばahpC変異体または断片ポリペプチドは、好ましくは、これらのエピトープのうち少なくとも1つ、例えば1、2または3個全部を含む。
【0062】
配列番号8のgsd変異体配列では、アミノ酸1〜32、58〜68、99〜119、123〜147、159〜169、180〜194および200〜231に、予測上のクラスIエピトープが特定され、アミノ酸64〜76、95〜110、192〜206および223〜240に、予測される強力なクラスIIエピトープが特定された。本発明のgsdポリペプチド、例えばgsd変異体または断片ポリペプチドは、好ましくは、これらのエピトープのうち少なくとも1つ、例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、10またはその全部を含む。
【0063】
配列番号12のp12変異体配列では、アミノ酸33〜56および98〜117に予測上のクラスIエピトープが特定され、アミノ酸3〜10に、予測される強力なクラスIIエピトープが特定された。本発明のp12ポリペプチド、例えばp12変異体または断片ポリペプチドは、好ましくは、これらのエピトープのうち少なくとも1つ、例えば1、2または3個全部を含む。
【0064】
配列番号16のmpa変異体配列では、アミノ酸130〜160に予測上のクラスIエピトープが特定され、アミノ酸56〜64および150〜160に、予測される強力なクラスIIエピトープが特定された。本発明のmpaポリペプチド、例えばmpa変異体または断片ポリペプチドは、好ましくは、これらのエピトープのうち少なくとも1つ、例えば1、2または3個全部を含む。
【0065】
実施例で示されるように、mpaポリペプチド配列中で特に強力なT細胞エピトープが特定されている。このエピトープはアミノ酸配列GFAEINPIA (配列番号25)を有し、配列番号14のアミノ酸357〜365および配列番号16のアミノ酸177〜185に位置する。この配列は配列番号24の構築物中のアミノ酸761〜769に認められる。好ましいmpaポリペプチド配列はGFAEINPIAを含む配列である。そのような配列は、上述の予測上のクラスIおよびクラスIIエピトープのうち1、2または3個全部を含んでもよい。
【0066】
このエピトープはmpaの第5の細胞外ループに位置すると考えられる(図5A)。したがって、好ましいmpaポリペプチドは第5の細胞外ループの配列を維持してよい。したがってmpaポリペプチドは、アミノ酸配列GFAEINPIAとともに、mpaの第5の細胞外ループ由来の隣接するアミノ酸を含んでよい。好ましくは、この第5の細胞外ループは、本発明のポリペプチド中に、免疫系によって認識されるのに好適な形態およびコンフォメーションで存在する。
【0067】
好ましくは、上記4つのポリペプチドahpC、gsd、p12およびmpaは単一の融合タンパク質として一緒に提供される。そのような融合タンパク質中の4つのポリペプチド配列は、本明細書中に記載のポリペプチドまたは変異体の任意のものであってよい。該4つのポリペプチドは融合タンパク質中で任意の順序で提供されてよい。一実施形態では、ahpC - gsd - p12 - mpaの順序でそれらを提供する。
【0068】
一実施形態では、融合タンパク質中に存在する該4つのポリペプチドは配列番号4、8、12および16に記載のポリペプチドである。例えば、配列番号20に示される融合タンパク質中では、これらの4つのタンパク質がその順序で提供されうる。
【0069】
代替の実施形態では、2以上の別々のポリペプチド分子中に該ポリペプチドを存在させてよく、該別々のポリペプチド分子は非共有結合によって連結されていてもいなくてもよい。例えば、上記4つのポリペプチドを別々に提供してよく、あるいは2または3つの別々の融合タンパク質ポリペプチド分子中で提供してよい。例えば、該ポリペプチドのうち3つのポリペプチドを単一ポリペプチド分子中で提供し、かつ第4のポリペプチドを別に提供してもよいし、また2つのポリペプチドを1分子中で提供し、かつ他の2つのポリペプチドを別々に提供してもよいし、あるいは該4つのポリペプチドを2つのポリペプチド分子中で提供し、その各ポリペプチドが該4つのポリペプチドのうち2つのポリペプチドを含んでいてもよい。
【0070】
本発明の融合タンパク質では、必要なポリペプチド配列がリンカー配列で分離されていてもよく、ならびに/あるいは該ペプチドのN末端またはC末端に追加の配列が存在しても、存在しなくてもよい。典型的に該融合タンパク質は1、2、3、またはそれ以上のそのようなリンカーを含む。該リンカーは典型的に1、2、3、4またはそれ以上のアミノ酸長である。ゆえに、該ペプチドでは、それらのポリペプチド配列のうち1、2、3または全部が互いに隣接していてよく、あるいは例えばそのようなリンカーによって互いに分離されていてもよい。
【0071】
本発明のポリペプチドは、さらに追加の配列を含んでよく、該追加の配列は、例えば下記ポリヌクレオチドおよびベクターによってコードされる配列である。例えば、それには、追加のエピトープ、治療用ポリペプチド、アジュバントまたは免疫調節分子が含まれる。
【0072】
該ポリペプチドは、リーダー配列、すなわち該ポリペプチドのターゲティングまたは調節に機能する該ポリペプチドのアミノ末端またはその付近の配列を、含んでよい。例えば、該ポリペプチド中に、該ポリペプチドを身体中の特定の組織にターゲティングする配列、または発現時の該ポリペプチドのプロセシングまたはフォールディングを支援する配列を、含ませてよい。そのような種々の配列は当技術分野において周知であり、当業者(skilled reader)であれば、例えば該ポリペプチドの所望の特性および生産方法に応じて選択することができる。そのようなリーダーの一例は配列番号17に記載のユビキチンリーダー配列である。
【0073】
ポリペプチドは、該ポリペプチドを特定またはスクリーニングするために、あるいは該ポリペプチドの発現用に、タグまたは標識をさらに含んでよい。好適な標識には、放射性同位体、例えば125I、32Pまたは35S、蛍光標識、酵素標識、または他のタンパク質標識、例えばビオチンが含まれる。好適なタグは、通常のスクリーニング方法によって同定できる短いアミノ酸配列であってよい。例えば、特定のモノクローナル抗体によって認識される短いアミノ酸配列を含めてよい。そのようなタグの1つは配列番号18に記載のpKタグである。
【0074】
一実施形態では、本発明のポリペプチドは配列番号24に記載の配列を有する。このポリペプチドは本明細書中でHavilahポリペプチド配列と称され、配列番号4、8、12および16の4種の改変ポリペプチド、および追加の配列、例えばユビキチンリーダー配列およびpKタグを含む。
【0075】
本明細書中で規定される本発明のペプチドは、化学的に修飾されていてよく、例えば翻訳後修飾されていてよい。例えばそれらはグリコシル化されていてよく、あるいは修飾アミノ酸残基を含んでいてもよい。それらは種々の形態のポリペプチド誘導体でありうる。該誘導体には、アミド、およびポリペプチドとのコンジュゲートが含まれる。
【0076】
化学的に修飾されたペプチドには、さらに、機能的側鎖基との反応によって化学的に誘導体化された1以上の残基を有するペプチドが含まれる。そのような誘導体化側鎖基には、アミン塩酸、p-トルエンスルホニル基、カルボベンゾキシ基、t-ブチルオキシカルボニル基、クロロアセチル基およびホルミル基を形成するように誘導体化されている側鎖基が含まれる。遊離カルボキシル基を誘導体化して、塩、メチルエステルおよびエチルエステルまたは他のタイプのエステルまたはヒドラジドを形成させてよい。遊離ヒドロキシル基を誘導体化してO-アシルまたはO-アルキル誘導体を形成させてよい。ヒスチジンのイミダゾール窒素を誘導体化して、N-im-ベンジルヒスチジンを形成させてよい。リン酸化、例えば3アミノリン酸化によって、またグリコシル化、例えばマンノシル化によって、ペプチドを修飾してもよい。
【0077】
さらに、化学的に修飾されたペプチドとして、20種の標準的なアミノ酸の1以上の天然に存在するアミノ酸誘導体を含有するペプチドが含まれる。例えば、4-ヒドロキシプロリンをプロリンに代用してよく、あるいはホモセリンをセリンに代用してよい。
【0078】
ポリヌクレオチド
本発明はまた、上記4種のポリペプチドまたはその変異体をコードする核酸配列を含むポリヌクレオチド構築物に関する。例えば、ahpCポリペプチド、gsdポリペプチド、p12ポリペプチドおよびmpaポリペプチドをコードする単一核酸分子を提供してよい。これらの4つのポリペプチドを、任意の順序で、該核酸分子中にコードさせてよいが、好ましくは以下の順序: ahpC - gsd - p12 - mpaで提供する。例えば、本発明のポリヌクレオチドは上記ポリペプチドまたは融合タンパク質のいずれかをコードしてよい。
【0079】
用語「核酸分子」および「ポリヌクレオチド」は本明細書中で互換的に使用され、任意の長さのポリマー形態のヌクレオチド、デオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチド、またはそのアナログをいう。ポリヌクレオチドの非限定的な例には、遺伝子、遺伝子断片、メッセンジャーRNA (mRNA)、cDNA、組換えポリヌクレオチド、プラスミド、ベクター、任意の配列の単離DNA、任意の配列の単離RNA、核酸プローブ、およびプライマーが含まれる。本発明のポリヌクレオチドは単離または精製された形態で提供してよい。
【0080】
選択されたポリペプチドを「コードする」核酸配列は、適切な調節配列の制御下に配置されるとin vivoで転写(DNAの場合)および翻訳(mRNAの場合)されてポリペプチドになる核酸分子である。該コード配列の境界は5' (アミノ)末端の開始コドンおよび3' (カルボキシ)末端の翻訳終止コドンによって決定される。本発明の目的では、そのような核酸配列には、非限定的に、ウイルス、原核生物または真核生物のmRNA由来のcDNA、ウイルスまたは原核生物のDNAもしくはRNA由来のゲノム配列、および合成DNA配列さえ含まれうる。転写終結配列が該コード配列の3'側に位置してもよい。
【0081】
したがって一実施形態では、本発明のポリヌクレオチドは、ahpC遺伝子配列、gsd遺伝子配列、p12遺伝子配列およびmpa遺伝子配列を含む。好適な遺伝子配列は配列番号1、3、5、7、9、11、13および15に提供される。好適なahpC、gsd、p12またはmpa配列は、あるいは、これらの具体的配列の1つの変異体であってよい。例えば、変異体は、上記核酸配列のいずれかの置換、欠失または付加変異体であってよい。該4種の遺伝子の1つの変異体は、配列表に記載の配列から出発して、1、2、3、4、5、10まで、20まで、30まで、40まで、50まで、75まで、またはそれ以上の核酸置換および/または欠失を含んでよい。
【0082】
好適な変異体は本発明のMAPポリヌクレオチドに対して少なくとも70%相同であってよく、本発明のMAPポリヌクレオチドに対して好ましくは少なくとも80または90%およびさらに好ましくは少なくとも95%、97%または99%相同である。ホモロジー(相同性)を測定する方法は当技術分野において周知であり、本発明の関連では、ホモロジーが核酸同一性に基づいて算出されることは当業者に理解されよう。そのようなホモロジーが、少なくとも15、好ましくは少なくとも30、例えば少なくとも40、60、100、200またはそれ以上連続したヌクレオチドの領域にわたって存在してよい。そのようなホモロジーは未改変のMAPポリヌクレオチド配列の全長にわたって存在してよい。
【0083】
ポリヌクレオチドのホモロジーまたは同一性を測定する方法は当技術分野において公知である。例えばUWGCGパッケージは、ホモロジーの算出に使用できるBESTFITプログラムを提供する(例えば、そのデフォルト設定で使用) (Devereux et al (1984) Nucleic Acids Research 12, p387-395)。
【0084】
PILEUPおよびBLASTアルゴリズムを使用して、ホモロジーを算出するか、あるいは配列を並べることもできる(典型的にそのデフォルト設定で使用)。例えばAltschul S.F. (1993) J Mol Evol 36:290-300; Altschul, S, F et al (1990) J Mol Biol 215:403-10に記載の通りである。
【0085】
BLAST解析を実施するためのソフトウェアは米国立バイオテクノロジー情報センター(National Centre for Biotechnology Information)(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)で公的に利用可能である。このアルゴリズムは、まず、データベース配列中の同じ長さのワードとアライメントされた場合に、ある正の値の閾値スコアTと合致するか、あるいはそれを満たすクエリ配列中の長さWのショートワードを特定することによって高スコア配列ペア(HSP)を特定するステップを含む。Tは隣接ワードスコア閾値と称される(Altschul et al, 上記)。これらの最初の隣接ワードヒットは、それらを含有するHSPを見出すための検索を開始するための種(seed)として働く。該ワードヒットは、累積アライメントスコアが増加しうる限り、各配列に沿って両方向に伸長される。該ワードヒットの各方向の伸長は、1以上の負のスコアの残基アライメントの蓄積によって累積アライメントスコアがゼロまたはそれ以下になった時点; またはいずれかの配列の末端に到達した時点で停止される。BLASTアルゴリズムのパラメータW、TおよびXはアライメントの感度および速度を決定する。BLASTプログラムでは、デフォルトとして、ワード長(W)に11、BLOSUM62スコア付けマトリックス(Henikoff and Henikoff (1992) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:10915-10919を参照のこと)アライメント(B)に50、期待値(E)に10、M=5、N=4、および両鎖の比較を使用する。
【0086】
BLASTアルゴリズムは、2つの配列間の類似度についての統計解析を実施する; 例えばKarlin and Altschul (1993) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:5873-5787を参照のこと。BLASTアルゴリズムによって提供される類似度の1つの尺度は最小合計確率(smallest sum probability) (P(N))であり、それは2つのヌクレオチド配列またはアミノ酸配列間の一致が偶然に生じる確率の表示を提供する。例えば、ある配列が別の配列と類似しているとされるのは、第一の配列の第二の配列に対する比較において最小合計確率が約1未満、好ましくは約0.1未満、より好ましくは約0.01未満、および最も好ましくは約0.001未満である場合である。
【0087】
ホモログは、通常、バックグラウンドをかなり上回るレベルで関連ポリヌクレオチドとハイブリダイズする。ホモログと当該ポリヌクレオチドとの間の相互作用によって生じるシグナルレベルは、通常は、「バックグラウンドハイブリダイゼーション」の少なくとも10倍、好ましくは少なくとも100倍の強度である。相互作用の強度は、例えば、プローブを例えば32Pで放射性標識することによって測定してよい。選択的ハイブリダイゼーションは、典型的に、中〜高ストリンジェンシーの条件(例えば、0.03M塩化ナトリウムおよび0.003Mクエン酸ナトリウム、約50℃〜約60℃)を使用して達成される。
【0088】
ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件には、50%ホルムアミド、5xデンハルト液、5x SSC、0.1% SDSおよび100μg/ml変性サケ精子DNAを含ませることができ、洗浄条件には、2x SSC、0.1% SDS (37℃)、次いで1x SSC、0.1% SDS (68℃)を含ませることができる。適切なハイブリダイゼーション条件の決定は当技術分野の技能の範囲内である。例えばSambrook et al.(上記)を参照のこと。
【0089】
ホモログは、3、5、10、15、20またはそれ以上の突然変異(その各々は置換、欠失または挿入であってよい)を下回る数の突然変異によって、関連ポリヌクレオチドの配列と異なってよい。これらの突然変異は、該ホモログの少なくとも30、例えば少なくとも40、60または100またはそれ以上連続したヌクレオチドの領域にわたって測定してよい。
【0090】
一実施形態では、変異体配列は、遺伝暗号の重複(redundancy)のせいで、配列表に記載の特定配列から変化してもよい。DNAコードは、一次的な4種の核酸残基(A、T、CおよびG)を有し、これらを使用して、生物の遺伝子によってコードされるタンパク質のアミノ酸を表す3文字コドンを「つづる」。DNA分子に沿ったコドンの線状配列は、それらの遺伝子によってコードされるタンパク質(群)中のアミノ酸の線状配列に翻訳される。該コードは高度に縮重していて、20種の天然アミノ酸を61種のコドンがコードし、また「終止」シグナルを表す3種のコドンがある。ゆえに、ほとんどのアミノ酸は2種以上のコドンによってコードされる。実際、いくつかのアミノ酸は4種以上の異なるコドンによってコードされる。したがって、本発明の変異体ポリヌクレオチドは本発明の別のポリヌクレオチドと同一のポリペプチド配列をコードしてよいが、同一のアミノ酸をコードする異なるコドンの使用のために異なる核酸配列を有してもよい。
【0091】
一実施形態では、ポリヌクレオチド構築物のコード配列を最適化して、哺乳類細胞中で高度に発現される遺伝子のコドン使用にさらに厳密に近づけてよい。特定のアミノ酸をコードする2種以上のコドンが利用可能である場合、生物のコドン使用パターンは高度に非ランダムであることが観察されている。生物種が異なれば、それらのコドン選択における異なるバイアスが示され、さらにまたコドンの利用は、単一種においても、高レベルおよび低レベルで発現される遺伝子間で顕著に異なることがある。このバイアスはウイルス、植物、細菌および哺乳類細胞で異なり、いくつかの種は、ランダムなコドン選択からかけ離れて、他の種より強いバイアスを示す。
【0092】
例えば、ヒトおよび他の哺乳類は特定の細菌またはウイルスほどバイアスが強くない。これらの理由によって、例えば哺乳類細胞中で発現されるマイコバクテリア遺伝子は効率的発現のために不適切なコドンの分布を有することがありうる。発現を生じさせるべき宿主中でめったに観察されないコドンのクラスターが異種性DNA配列中に存在すると、該宿主での異種性発現レベルは低いことが予測されると考えられる。
【0093】
したがって本発明のポリヌクレオチドでは、コドン使用パターンを、MAPにおいて天然に認められるパターンから改変して、標的生物、例えば哺乳類、特にヒトのコドンバイアスをより厳密に表すようにさせてよい。「コドン使用係数(codon usage coefficient)」とは、特定のポリヌクレオチド配列のコドンパターンが標的種のパターンにどれだけ厳密に似ているかの尺度である。コドン頻度は、多数の生物種の高度に発現される遺伝子に関して、文献情報源から得ることができる(例えばNakamura et.al. Nucleic Acids Research 1996, 24:214-215を参照のこと)。61種の各コドンに関するコドン頻度(選択した遺伝子クラスの1000コドンあたりの出現数として表される)は、20種の天然アミノ酸の各々に関して標準化され、それにより、各アミノ酸に関して最も頻繁に使用されるコドンの値が1に設定され、より一般性の低いコドンの頻度が0〜1の範囲であるようにスケーリングされる。ゆえに61種の各コドンは、標的種の高度に発現される遺伝子に関して1以下の値を割り当てられる。特定のポリヌクレオチドに関するコドン使用係数を算出するために、該種の高度に発現される遺伝子と比較して、該特定のポリヌクレオチドの各コドンのスケーリングされた値を記録し、これらのすべての値の幾何平均をとる(これらの値の自然対数の合計をコドンの総数によって除算し、その真数をとることによる)。該係数は0〜1の範囲の値を有し、該係数が高いほど、該ポリヌクレオチド中のより多数のコドンが「頻繁に使用されるコドン」である。ポリヌクレオチド配列がコドン使用係数1を有する場合には、該コドンのすべてが標的種の高度に発現される遺伝子に関して「最も高頻度の」コドンである。
【0094】
本発明では、本発明のポリヌクレオチドのコドン使用パターンは、好ましくは、標的生物の高度に発現される遺伝子において0.2未満の相対同義コドン使用(RSCU)値を有するコドンを排除する。RSCU値は、観察されるコドンの数を、該アミノ酸に関するすべてのコドンが等しい頻度で使用される場合に予測される数で除算したものである。本発明のポリヌクレオチドは、概して、高度に発現されるヒト遺伝子に関して、0.3を超える、好ましくは0.4を超える、最も好ましくは0.5を超えるコドン使用係数を有する。ヒトのコドン使用表はGenBankにおいて見出すこともできる。
【0095】
ゆえに、本発明のポリペプチドをコードする特定のポリヌクレオチド配列を改変して、治療対象の生物種に基づいてコドンを最適化してもよいことがわかるであろう。その例として、配列番号1、5、9および13に記載のMAP配列は、配列番号3、7、11および17のポリヌクレオチドにおいてヒトでの使用に合わせてコドンが最適化されている。そのような改変によって、そのようなポリヌクレオチドがそのコード化タンパク質をヒト細胞において発現する能力が向上するであろう。
【0096】
ポリペプチドに関して上で説明されるように、そのコード化ポリペプチド中の潜在的な交差反応性エピトープを無効にするか、あるいは除去するために本発明のポリヌクレオチドを改変してもよい。
【0097】
本発明のポリヌクレオチド「断片」は、トランケーションによって、例えばポリヌクレオチドの一方または両方の末端から1以上のヌクレオチドを除去することによって、作製してよい。そのように、ポリヌクレオチドの3'および/または5'末端から、10まで、20まで、30まで、40まで、50まで、75まで、100まで、200まで、またはそれ以上のアミノ酸を除去してよい。1以上の内部欠失によって断片を作製してもよい。例えば、本発明の変異体は、非エピトープ性アミノ酸の不存在下で、本発明の全長ポリペプチド由来の2以上のエピトープ領域からなるか、あるいはそれを含むポリペプチドをコードしてよい。好ましくはahpC、gsd、p12またはmpaポリヌクレオチド配列の断片は、未改変のMAPポリペプチドに対する免疫応答を誘発可能なエピトープをコードする少なくとも1つの領域を含む。そのような断片は配列番号1、3、5、7、9、11、13または15の配列から誘導してよく、あるいは本明細書中に記載の変異体ポリヌクレオチドから誘導してもよい。好ましくはそのような断片は、24〜500残基の範囲の長さであり、例えば24〜400、24〜300、24〜100、100〜200または200〜400残基である。あるいは、本発明の断片はさらに長い配列であってよく、例えば本発明の全長ポリヌクレオチドの少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%または少なくとも90%を含む。
【0098】
ゆえに本発明のペプチドは、それをコードし、かつ発現可能なポリヌクレオチドから生産するか、あるいは該ポリヌクレオチドの形態で送達してもよい。本発明のポリヌクレオチドは、当技術分野において周知の方法にしたがって合成することができる。該方法の例はSambrook et al (1989, Molecular Cloning - a laboratory manual; Cold Spring Harbor Press)に記載されている。実質的に純粋な抗原調製物は標準的な分子生物学的ツールを使用して取得することができる。すなわち、上記部分をコードするポリヌクレオチド配列は、組換え法を使用して、例えば抗原を発現している細胞由来のcDNAおよびゲノムライブラリーをスクリーニングすることによって、あるいはポリペプチドのコード配列を、同配列を含むことが知られているベクターから得ることによって、取得することができる。さらにまた、所望の配列は、標準的技術、例えばフェノール抽出およびcDNAまたはゲノムDNAのPCRを使用して、同配列を含有する細胞および組織から直接単離することができる。DNAの取得および単離に使用される技術の説明に関しては、例えばSambrook et al., 上記を参照のこと。ポリヌクレオチド配列はまた、クローニングではなく、合成によって製造することができる。
【0099】
特定の核酸分子を単離するためのさらに別の好都合な方法は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)による方法である。Mullis et al. (1987) Methods Enzymol. 155:335-350。この技術では、DNAポリメラーゼ、通常は熱安定性DNAポリメラーゼを使用してDNAの所望の領域を複製する。複製対象のDNAの領域は、複製反応を惹起させるための、所望のDNAの正反対の末端かつ正反対の鎖に相補的な特定配列のオリゴヌクレオチドによって特定される。複製の第一ラウンドの生成物は、それ自体が以後の複製の鋳型であり、次いで複製の反復連続サイクルによって、使用されるプライマーペアによって範囲を規定されるDNA断片が相乗的に増幅される。
【0100】
配列が取得されたら、標準的クローニングまたは分子生物学的技術を使用してそれらを1つに連結して核酸分子を提供してよい。あるいは、クローニングではなく、合成によって該配列を作製することができる。所望の特定のアミノ酸配列に対して適切なコドンを用いるようにヌクレオチド配列を設計することができる。本明細書中で説明されるように、概して、配列が発現される目的の宿主にとって好ましいコドンが選択される。そして配列全体は、標準的方法によって調製されたオーバーラップするオリゴヌクレオチドから組み立てられ、完全なコード配列に組み立てることができる。
【0101】
ベクター
本発明の核酸分子は発現カセットの形態で提供してよく、該カセットには、該挿入配列に作動可能に連結されている制御配列が含まれ、それにより標的の被験体生物種においてin vivoでの本発明のポリペプチドの発現が可能になる。次にこれらの発現カセットは、通常は、核酸による免疫化のための試薬として使用するために適したベクター(例えばプラスミドまたは組換えウイルスベクター)内で提供される。そのような発現カセットを宿主被験体に直接投与してよい。あるいは、本発明のポリヌクレオチドを含むベクターを宿主被験体に投与してよい。好ましくは該ポリヌクレオチドは、遺伝的ベクターを使用して調製および/または投与される。好適なベクターは、十分な量の遺伝情報を保持することができ、かつ本発明のポリペプチドを発現を可能にする任意のベクターであってよい。
【0102】
ゆえに本発明には、そのようなポリヌクレオチド配列を含む発現ベクターが含まれる。そのような発現ベクターは、分子生物学の技術分野で常法により構築され、例えば、プラスミドDNAおよび、本発明のペプチドの発現を可能にするために、正しい方向性で配置される、適切なイニシエーター、プロモーター、エンハンサーおよび必要でありうる他のエレメント、例えばポリアデニル化シグナルの使用を伴う。他の好適なベクターは当業者に自明である。この関連での追加の例として、発明者らはSambrook et al.を参照する。
【0103】
ゆえに、本発明のポリペプチドは、そのようなベクターを細胞に送達し、かつ該ベクターからの転写を生じさせることによって提供してよい。好ましくは、ベクター中の本発明のポリヌクレオチドまたは本発明で使用するためのポリヌクレオチドは、宿主細胞によるコード配列の発現を提供できる制御配列に作動可能に連結されている。すなわち該ベクターは発現ベクターである。
【0104】
「作動可能に連結」とは、そのように記載されている成分がそれらの通常の機能を実行するように構成されているエレメントの配置をいう。ゆえに、核酸配列に作動可能に連結されている特定の調節配列、例えばプロモーターは、適正な酵素が存在する場合、該配列の発現を実行可能である。該プロモーターは、配列の発現を誘導するように機能する限り、該配列と隣接している必要はない。ゆえに、例えば、介在性の、翻訳されないが転写される配列をプロモーター配列と核酸配列の間に存在させることができ、該プロモーター配列は依然として該コード配列に「作動可能に連結されている」とされうる。
【0105】
多数の発現系が当技術分野において報告されている。その各々は、典型的に、発現制御配列に作動可能に連結されている目的の遺伝子またはヌクレオチド配列を含有するベクターからなる。これらの制御配列には、転写プロモーター配列および転写開始および終結配列が含まれる。本発明のベクターは、例えば、プラスミド、ウイルスまたはファージベクターであってよく、複製開始点、場合により該ポリヌクレオチドを発現するためのプロモーターおよび場合により該プロモーターの調節因子とともに提供される。「プラスミド」は染色体外遺伝的エレメントの形態のベクターである。該ベクターは、1以上の選択マーカー遺伝子、例えば細菌プラスミドの場合のアンピシリン耐性遺伝子または真菌ベクターに関する耐性遺伝子を含有してよい。ベクターは、in vitroで、例えばDNAまたはRNA製造のために使用してもよいし、あるいは宿主細胞、例えば哺乳類宿主細胞をトランスフェクトまたは形質転換するために使用してよい。該ベクターは、in vivoで使用するように、例えば該ポリペプチドをin vivoで発現させるように適合させてもよい。
【0106】
「プロモーター」は、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの転写を開始させ、調節するヌクレオチド配列である。プロモーターには、誘導性プロモーター(該プロモーターに作動可能に連結されているポリヌクレオチド配列の発現が、アナライト、補因子、調節タンパク質等によって誘発される)、抑制性プロモーター(repressible promoters) (該プロモーターに作動可能に連結されているポリヌクレオチド配列の発現が、アナライト、補因子、調節タンパク質等によって抑制される)、および構成的プロモーターが含まれうる。用語「プロモーター」または「制御エレメント」には、全長プロモーター領域およびこれらの領域の機能的(例えば転写または翻訳を制御する)セグメントが含まれるものとする。
【0107】
発現が計画されている宿主細胞と適合性であるプロモーターおよび他の発現調節シグナルを選択することができる。例えば、酵母プロモーターには、S.セレビシエ(S. cerevisiae) GAL4およびADHプロモーター、S.ポンベ(S. pombe) nmt1およびadhプロモーターが含まれる。哺乳類プロモーター、例えばβ-アクチンプロモーターを使用してよい。組織特異的プロモーターは特に好ましい。哺乳類プロモーターには、重金属、例えばカドミウムに応答して誘発できるメタロチオネインプロモーターが含まれる。
【0108】
一実施形態では、ウイルスプロモーターを使用して、ポリヌクレオチドからの発現を駆動する。哺乳類細胞での発現のための典型的なウイルスプロモーターには、SV40ラージT抗原プロモーター、アデノウイルスプロモーター、モロニーマウス白血病ウイルス長末端反復配列(MMLV LTR)、マウス乳癌ウイルスLTRプロモーター、ラウス肉腫ウイルス(RSV) LTRプロモーター、SV40初期プロモーター、ヒトサイトメガロウイルス(CMV) IEプロモーター、アデノウイルス、例えばアデノウイルス主要後期プロモーター(Ad MLP)、HSVプロモーター(例えばHSV IEプロモーター)、またはHPVプロモーター、特にHPV上流調節領域(URR)が含まれる。すべてのこれらのプロモーターは当技術分野において容易に入手可能である。
【0109】
一実施形態では、プロモーターはサイトメガロウイルス(CMV)プロモーターである。好ましいプロモーターエレメントは、イントロンAを欠いているがエキソン1を含むCMV前初期(IE)プロモーターである。ゆえに該ポリヌクレオチドからの発現はhCMV IE初期プロモーターの制御下であってよい。hCMV前初期プロモーターを使用する発現ベクターには、例えば、pWRG7128、およびpBC12/CMVおよびpJW4303が含まれる。hCMV前初期プロモーター配列は、公知の方法を使用して取得することができる。天然hCMV前初期プロモーターは、標準的技術を使用して、該ウイルスのサンプルから直接単離することができる。例えばUS 5385839では、hCMVプロモーター領域のクローニングが記載されている。hCMV前初期プロモーターの配列はGenbank番号M60321 (hCMV Towne株)およびX17403 (hCMV Ad169株)で入手可能である。したがって天然配列は、公知の配列に基づくPCRプライマーを使用するPCRによって単離することができる。DNAの取得および単離に使用される技術の説明に関しては、例えばSambrook et al, 上記を参照のこと。好適なhCMVプロモーター配列はまた、既存のプラスミドベクターから単離することができる。プロモーター配列はまた、合成によって生産することができる。
【0110】
本発明のポリヌクレオチド、発現カセットまたはベクターは非翻訳リーダー配列を含んでよい。一般に、非翻訳リーダー配列は、約10〜約200ヌクレオチド、例えば約15〜150ヌクレオチド、好ましくは15〜約130ヌクレオチドの長さを有する。例えば15、50、75または100ヌクレオチドを含むリーダー配列を使用してよい。一般に、機能的非翻訳リーダー配列は、該リーダー配列と作動可能に連結されているコード配列を発現するための翻訳開始部位を提供できる配列である。
【0111】
典型的には、翻訳終止コドンの3'側に位置する転写終結およびポリアデニル化配列がさらに存在する。好ましくは、コード配列の5'側に位置する翻訳の開始を最適化するための配列がさらに存在する。転写ターミネーター/ポリアデニル化シグナルの例には、Sambrook et al., 上記に記載のSV40由来のもの、ならびにウシ成長ホルモンターミネーター配列が含まれる。スプライスドナーおよびアクセプター部位を含有するイントロンが発現カセットまたはベクター内に存在するように設計してもよい。
【0112】
発現系は、「エンハンサー」と称される転写モジュレーターエレメントを含むことが多い。エンハンサーはシス作用物質として広く定義され、プロモーター/遺伝子配列に作動可能に連結されると、該遺伝子配列の転写を増加させる。エンハンサーは、他の発現制御エレメント(例えばプロモーター)よりも目的の配列からずっと遠く離れた位置から機能することができ、目的の配列に対していずれかの方向性で位置する場合に作動する。エンハンサーは多数のウイルス供給源から同定されていて、該ウイルスには、ポリオーマウイルス、BKウイルス、サイトメガロウイルス(CMV)、アデノウイルス、シミアンウイルス40 (SV40)、モロニー肉腫ウイルス、ウシパピローマウイルスおよびラウス肉腫ウイルスが含まれる。好適なエンハンサーの例には、SV40初期遺伝子エンハンサー、ラウス肉腫ウイルスの長末端反復配列(LTR)由来のエンハンサー/プロモーター、およびヒトまたはマウスCMV由来のエレメント、例えばCMVイントロンA配列に含まれるエレメントが含まれる。
【0113】
本発明のポリヌクレオチド、発現カセットまたはベクターは、さらに、シグナルペプチド配列を含んでよい。該シグナルペプチド配列は、概して、プロモーターと作動可能に連結された状態で挿入され、したがって、該シグナルペプチドが発現されて、やはり該プロモーターと作動可能に連結されているコード配列によってコードされるポリペプチドの分泌を促進する。
【0114】
典型的にシグナルペプチド配列は、10〜30アミノ酸、例えば15〜20アミノ酸のペプチドをコードする。該アミノ酸は主に疎水性であることが多い。典型的状況では、シグナルペプチドは、該シグナルペプチドを保持する成長中のポリペプチド鎖を発現細胞の小胞体にターゲティングする。該シグナルペプチドは小胞体中で切断され、ゴルジ装置による該ポリペプチドの分泌が可能になる。
【0115】
抗ウイルスまたは抗菌活性を示すことが知られているポリペプチド、免疫調節分子、例えばサイトカイン(例えばTNF-アルファ、インターフェロン、例えばIL-6、およびIL-2、インターフェロン、コロニー刺激因子、例えばGM-CSF)、アジュバントおよび共刺激およびアクセサリー分子(B7-1、B7-2)をコードする核酸を、本発明のポリヌクレオチド、発現カセットまたはベクターに含ませてよい。あるいは、そのようなポリペプチドを、例えば本発明の分子を含む製剤中で、別々に提供してよく、あるいは本発明の組成物と同時に、連続して、または別々に投与してよい。免疫調節分子および本発明のポリペプチドをin vivoである部位に同時に提供すると、免疫応答の増強を支援する特定のエフェクターの生成が増強されうる。免疫応答の増強の程度は、使用される具体的な免疫刺激分子および/またはアジュバントに依存する可能性がある。その理由は、異なる免疫刺激分子は、免疫応答を増強させ、および/またはモジュレートするための異なる機構を誘発しうるからである。一例として、異なるエフェクター機構/免疫調節分子には、非限定的に、支援シグナルの増大(IL-2)、専門(professional)APCの動員(GM-CSF)、T細胞頻度の増加(IL-2)、抗原プロセシング経路およびMHC発現に対する効果(IFN-ガンマおよびTNF-アルファ)、およびTh1応答からTh2応答への免疫応答の転換が含まれる。オリゴヌクレオチドを含有する非メチル化CpGはまた、Th1応答の優先的誘導物質であり、本発明での使用に適している。
【0116】
いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチド、発現カセットまたはベクターがアジュバントをコードするか、あるいはアジュバントが別に提供される。本明細書中で使用される用語「アジュバント」とは、抗原特異的免疫応答を特異的または非特異的に改変したり、増強させたり、誘導したり、再誘導したり、強化したり、あるいは開始させたりすることが可能な任意の物質または組成物をいう。
【0117】
好適なアジュバントはADP-リボシル化細菌毒素であってよい。これらには、ジフテリア毒素(DT)、百日咳毒素(PT)、コレラ毒素(CT)、大腸菌(E.coli)熱不安定毒素(LT1およびLT2)、シュードモナス(Pseudomonas)内毒素A、シュードモナス外毒素S、バシラス・セレウス(B. cereus)外酵素、バシラス・スフェリカス(B. sphaericus)毒素、ボツリヌス菌(C. botulinum) C2およびC3毒素、クロストリジウム・リモサム(C. limosum)外酵素、ならびにクロストリジウム・パーフリンジェンス(C. perfringens)、クロストリジウム・スピリフォルマ(C. spiriforma)およびクロストリジウム・ディフィシレ(C. difficile)由来の毒素およびスタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus) EDINが含まれる。ほとんどのADP-リボシル化細菌毒素はAおよびBサブユニットを含有する。
【0118】
目的のポリヌクレオチドは、本発明のペプチドの生産にin vitroまたはin vivoで使用してよい。そのようなポリヌクレオチドは、クローン病またはMAPの発現を特徴とする別の疾患または状態を治療するために投与してよく、あるいはその治療のための医薬の製造に使用してよい。
【0119】
遺伝子治療および核酸免疫化は、1以上の選択抗原をコードする核酸分子を、該抗原または抗原群をin vivoで発現させるために宿主細胞内に導入することを提供する方法である。遺伝子送達のための方法は当技術分野において公知である。例えば米国特許第5,399,346号、第5,580,859号および第5,589,466号を参照のこと。該核酸分子は、例えば標準的筋肉内または皮内注射; 経皮粒子送達; 吸入により、局所的に、あるいは経口、鼻腔内または粘膜での投与様式によって、レシピエント被験体に直接導入することができる。あるいは、被験体から取り出された細胞内にex vivoで該分子を導入することができる。その後者の場合、目的の核酸分子を含有する細胞を該被験体内に再導入して、該核酸分子によってコードされる抗原に対する免疫応答が開始されうるようにする。そのような免疫化に使用される核酸分子は、本明細書中では、概して、「核酸ワクチン」と称される。
【0120】
これらの各送達技術は、十分な量の治療的または抗原性遺伝子産物を提供するために、トランスフェクト細胞における核酸の効率的発現を必要とする。いくつかの要因は、達成される発現のレベルに影響することが知られている。該要因には、トランスフェクション効率、および目的の遺伝子または配列が転写され、該mRNAが翻訳される効率が含まれる。
【0121】
使用されるポリヌクレオチドおよび/またはベクターに応じて、宿主細胞によって生産される物質は分泌されるか、あるいは細胞内に含有される。当業者に理解されるように、本発明のポリヌクレオチドを含有する発現ベクターは、該ベクターから発現されたポリペプチドを特定の原核細胞または真核細胞膜を通って分泌させるシグナル配列を伴うように設計することができる。
【0122】
本発明のベクターおよび発現カセットを、好ましくは宿主細胞ゲノムに相同なフランキング配列をさらに含む「裸の核酸構築物」として直接投与してよい。本明細書中で使用される用語「裸のDNA」とは、本発明のポリヌクレオチドを、その生産を制御する短いプロモーター領域とともに含むベクター、例えばプラスミドをいう。「裸の」DNAと称されるのは、該ベクターがいずれの送達ビヒクル中にも保持されないからである。そのようなベクターが宿主細胞、例えば真核細胞に入ると、それがコードするタンパク質が該細胞内で転写および翻訳される。
【0123】
ゆえに本発明のベクターはプラスミドベクターであってよく、すなわち自律複製する染色体外の環状または直線状DNA分子であってよい。プラスミドには、追加のエレメント、例えば複製開始点、またはセレクター遺伝子を含ませてよい。そのようなエレメントは当技術分野において公知であり、標準的技術を使用して含ませることができる。多数の好適な発現プラスミドが当技術分野において公知である。例えば、好適なプラスミドの1つはpSG2である。このプラスミドは、元々、ストレプトマイセス・ガネンシス(Streptomyces ghanaensis)から単離された。長さ13.8 kb、HindIII、EcoRVおよびPvuIIの単一制限部位および該プラスミドの非必須領域の欠失の可能性により、pSG2はベクター開発に好適な基本レプリコンになる。
【0124】
あるいは、当技術分野において公知の種々のウイルス技術、例えばレトロウイルス、単純ヘルペスウイルスおよびアデノウイルス等の組換えウイルスベクターでの感染を使用して、本発明のベクターを好適な宿主細胞に導入してよい。
【0125】
一実施形態では、該ベクター自体が組換えウイルスベクターであってよい。好適な組換えウイルスベクターには、非限定的に、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター、ヘルペスウイルスベクター、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、バキュロウイルスベクター、ポックスウイルスベクターまたはパルボウイルスベクターが含まれる。ウイルスベクターの場合、ポリヌクレオチドの投与は標的細胞のウイルス感染によって媒介される。
【0126】
哺乳類細胞をトランスフェクトするために多くのウイルスベースの系が開発されている。
【0127】
例えば、当技術分野において公知の技術を使用して、選択した組換え核酸分子をベクターに挿入し、レトロウイルス粒子としてパッケージングすることができる。そして該組換えウイルスを単離し、in vivoまたはex vivoで被験体の細胞に送達することができる。レトロウイルスベクターはモロニーマウス白血病ウイルス(Mo-MLV)に基づくものであってよい。レトロウイルスベクターでは、概して、1以上のウイルス遺伝子(gag、pol & env)を目的の遺伝子によって置き換える。
【0128】
多くのアデノウイルスベクターが公知である。アデノウイルス亜群C血清型2および5がベクターとして一般的に使用されている。野生型アデノウイルスゲノムは約35kbであり、そのうち30kbまでを外来DNAで置き換えることができる。調節機能を有する4種の初期転写単位(E1、E2、E3 & E4)が存在し、かつ構造タンパク質をコードする後期転写物が存在する。アデノウイルスベクターは不活性化されたE1および/またはE3遺伝子を有してよい。そして失われている遺伝子(群)はヘルパーウイルス、プラスミドによってトランスに供給してよく、あるいはヘルパー細胞ゲノムに組み込んでよい。アデノウイルスベクターはE2a温度感受性突然変異体またはE4欠失を使用してよい。最小アデノウイルスベクターは、逆方向末端反復(ITR)および導入遺伝子周囲のパッケージング配列しか含有しなくてよく、すべての必要なウイルス遺伝子はヘルパーウイルスによってトランスに提供すればよい。ゆえに、好適なアデノウイルスベクターにはAd5ベクターおよびサルアデノウイルスベクターが含まれる。
【0129】
ウイルスベクターはまた、ポックスウイルス科のウイルス由来であってよく、それには、ワクシニアウイルスおよびトリポックスウイルス、例えば鶏痘ワクチンが含まれる。例えば、改変ワクシニアウイルスAnkara (MVA)は、正常なヒト組織を含めたほとんどの細胞タイプ中で複製しないワクシニアウイルス株である。したがって、組換えMVAベクターを使用して本発明のポリペプチドを送達してよい。
【0130】
追加のタイプのウイルス、例えばアデノ随伴ウイルス(AAV)および単純ヘルペスウイルス(HSV)を使用して好適なベクター系を開発してもよい。
【0131】
ウイルスベクターの代替物として、別法ではリポソーム調製物を使用して本発明の核酸分子を送達することができる。有用なリポソーム調製物には、カチオン性(正に荷電)、アニオン性(負に荷電)および中性調製物が含まれ、カチオン性リポソームが特に好ましい。カチオン性リポソームはプラスミドDNAおよびmRNAの細胞内送達を媒介する。
【0132】
ウイルスベクター系の別の代替物として、本発明の核酸分子を微粒子担体にカプセル化するか、吸着させるか、あるいは結合させてよい。好適な微粒子担体には、ポリメチルメタクリラートポリマーから誘導されたもの、ならびにポリラクチドおよびポリラクチド-コ-グリコリドから誘導されたPLG微粒子が含まれる。他の微粒子系およびポリマー、例えばポリリシン、ポリアルギニン、ポリオルニチン、スペルミン、スペルミジン等のポリマー、ならびにこれらの分子のコンジュゲートを使用することもできる。
【0133】
一実施形態では、ベクターはターゲティングベクターであってよく、すなわち細胞に感染するか、または細胞をトランスフェクトするか、または細胞に形質導入する能力、または宿主および/または標的細胞中で発現される能力が、宿主被験体内の特定の細胞タイプ、通常は共通または類似の表現型を有する細胞に、限定されているベクターであってよい。
【0134】
好ましくは、本発明のベクターはahpC、gsd、p12およびmpaポリペプチドをコードする。上で説明されるように、これらの4種のポリペプチドは単一の融合タンパク質分子として一緒に発現させてよく、あるいは2以上の別々のポリペプチド中で発現させてよく、その場合、各ポリペプチドは1以上の個々の成分を含む。ゆえに本発明のベクターは単一の発現カセットを含んでよく、該発現カセットから単一のポリペプチド配列が発現されうる。あるいは、本発明のベクターは、該ベクターが、全体として、4種全部の必要なポリペプチドを発現可能であるように、それぞれ異なるポリペプチドを発現可能な2以上の発現カセットを含んでよい。一実施形態では、本発明のベクターは、4種全部の必要なポリペプチドを別々のポリペプチド分子として別々に発現させてよい。該ポリペプチドがベクター中の2以上の遺伝子座から発現されるか、あるいは複数の別々の分子として発現される場合、該複数の配列の発現を、好ましくは、4種全部のポリペプチドが一緒に発現されるように協調させる。例えば、同一または類似のプロモーターを使用して、該種々の成分の発現を制御してよい。誘導性プロモーターを使用して、該種々のポリペプチド成分の発現が協調されうるようにしてよい。
【0135】
細胞系統
本発明はまた、本発明のペプチドを発現するように改変されている細胞を含む。そのような細胞には、一時的な、または好ましくは安定な高等真核細胞系統、例えば哺乳類細胞または昆虫細胞、下等真核細胞、例えば酵母、または原核細胞、例えば細菌細胞が含まれる。本発明のペプチドをコードするベクターまたは発現カセットの挿入によって改変しうる細胞の具体例には、哺乳類HEK293T、CHO、HeLaおよびCOS細胞が含まれる。好ましくは選択される細胞系統は、安定であるだけでなく、ポリペプチドの成熟グリコシル化および細胞表面発現を可能にするものである。形質転換卵母細胞で発現を達成してよい。好適なペプチドはトランスジェニック非ヒト動物、好ましくはマウスの細胞で発現させてよい。本発明のペプチドを発現するトランスジェニック非ヒト動物は本発明の範囲内に含まれる。アフリカツメガエル(Xenopus laevis)卵母細胞またはメラニン保有細胞で本発明のペプチドを発現させてもよい。
【0136】
そのような本発明の細胞系統は、本発明のポリペプチドを製造するために慣用の方法を使用して培養してよく、あるいは治療的または予防的に使用して、本発明のポリペプチドを被験体に送達してよい。例えば、本発明のポリペプチドを分泌可能な細胞系統を被験体に投与してよい。あるいは、本発明のポリヌクレオチド、発現カセットまたはベクターを被験体由来の細胞にex vivoで投与し、そして該細胞を該被験体の体内に戻してよい。
【0137】
例えば、ex vivo送達および被験体内への形質転換細胞の再移植のための方法は公知である(例えば、デキストラン媒介トランスフェクション、リン酸カルシウム沈殿、エレクトロポレーション、および核内への直接マイクロインジェクション)。
【0138】
抗体
本発明はまた、上で規定されるペプチドに対する抗体(モノクローナルまたはポリクローナル)およびその抗原結合性断片(例えばF(ab)2、FabおよびFv断片すなわち抗体の「可変」領域の断片(抗原結合部位を含む))、すなわち該ペプチド上に存在するエピトープに結合し、ゆえにそのようなペプチドに選択的かつ特異的に結合し、本発明の方法において使用してよい上記抗体およびその断片におよぶ。例えば、本発明のポリペプチド上の種々のエピトープに対して広範囲の効果を有するポリクローナル抗体を作製してよい。
【0139】
医薬組成物
本発明の分子、例えば上記ポリヌクレオチド、発現カセット、ベクター、ポリペプチド、細胞または抗体を含む組成物の製剤化は、標準的医薬製剤化学および方法論を使用して実行することができる。該化学および方法論はすべて、通常の当業者に容易に利用可能である。例えば、1以上の本発明の分子を含有する組成物を1以上の製薬的に許容しうる賦形剤またはビヒクルと組み合わせることができる。補助物質、例えば湿潤剤または乳化剤、pH緩衝剤等を該賦形剤またはビヒクル中に存在させてよい。これらの賦形剤、ビヒクルおよび補助物質は、概して、該組成物を与えられる個体において免疫応答を誘発せず、過度の毒性を伴わずに投与される医薬品である。製薬的に許容しうる賦形剤には、非限定的に、液体、例えば水、生理食塩水、ポリエチレングリコール、ヒアルロン酸、グリセロールおよびエタノールが含まれる。製薬的に許容しうる塩を含ませることもできる。該塩は、例えば、鉱酸塩、例えば塩酸塩、臭化水素酸塩、リン酸塩、硫酸塩等; および有機酸の塩、例えば酢酸塩、プロピオン酸塩、マロン酸塩、安息香酸塩等である。製薬的に許容しうる賦形剤、ビヒクルおよび補助物質についての詳細な考察は、Remington's Pharmaceutical Sciences (Mack Pub. Co., N.J. 1991)において得られる。
【0140】
そのような組成物は、ボーラス投与または連続投与に好適な形態で調製し、包装し、あるいは販売してよい。単位投与剤形で、例えば保存剤を含有するアンプル中または複数回投与容器中で、注射用組成物を調製し、包装し、あるいは販売してよい。組成物には、非限定的に、懸濁液、溶液、油性または水性ビヒクル中のエマルジョン、ペースト、および移植可能な徐放性または生分解性製剤が含まれる。そのような組成物は1以上の追加の成分をさらに含んでよく、該成分には、非限定的に、懸濁化剤、安定化剤、または分散剤が含まれる。非経口投与用組成物の一実施形態では、好適なビヒクル(例えば発熱物質不含滅菌水)で再構成した後に該再構成済み組成物を非経口投与するための乾燥(例えば粉末または顆粒の)形態で活性成分を提供する。該医薬組成物は、滅菌注射用水性または油性懸濁液または溶液の剤形で調製し、包装し、あるいは販売してよい。この懸濁液または溶液は公知技術にしたがって製剤化してよく、それには、活性成分に加えて、本明細書中に記載の追加の成分、例えば分散剤、湿潤剤、または懸濁化剤を含ませてよい。そのような滅菌注射用製剤は、無毒の非経口的に許容しうる希釈剤または溶媒、例えば水または1,3-ブタンジオールを使用して調製してよい。他の許容しうる希釈剤および溶媒には、非限定的に、リンガー液、等張塩化ナトリウム溶液、および固定油、例えば合成モノ-またはジ-グリセリド、が含まれる。
【0141】
有用な他の非経口投与可能な組成物には、微結晶形態で、リポソーム調製物中に、あるいは生分解性ポリマー系の成分として、活性成分を含む組成物が含まれる。徐放または移植用の組成物は、製薬的に許容しうるポリマー物質または疎水性物質、例えばエマルジョン、イオン交換樹脂、やや難溶性のポリマー、またはやや難溶性の塩を含んでよい。
【0142】
核酸取り込みおよび/または発現についての特定の促進剤(「トランスフェクション促進剤」)を該組成物に含ませることもできる。該促進剤は、例えば、ブピバカイン、心臓毒およびショ糖等の促進剤、および核酸分子の送達に慣用的に使用されるリポソーム調製物または脂質調製物等のトランスフェクション促進ビヒクルである。アニオン性および中性リポソームは広く利用可能であり、核酸分子を送達するために周知である(例えばLiposomes: A Practical Approach, (1990) RPC New Ed., IRL Pressを参照のこと)。カチオン性脂質調製物もまた、核酸分子の送達に使用される周知のビヒクルである。好適な脂質調製物には、DOTMA (N-[1-(2,3-ジオレイルオキシ)プロピル]-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロライド)(商品名LipofectinTMの下に入手可能)、およびDOTAP (1,2-ビス(オレイルオキシ)-3-(トリメチルアンモニオ)プロパン)が含まれる。例えばFelgner et al. (1987) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 84:7413-7416; Malone et al. (1989) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86:6077-6081; 米国特許第5,283,185号および第5,527,928号, および国際公開第WO 90/11092号, 第WO 91/15501号および第WO 95/26356号を参照のこと。これらのカチオン性脂質は、好ましくは、中性脂質、例えばDOPE(ジオレイルホスファチジルエタノールアミン)と併用してよい。上記脂質またはリポソーム調製物に加えることができるさらに別のトランスフェクション促進組成物には、スペルミン誘導体(例えば国際公開第WO 93/18759号を参照のこと)および膜透過性化合物、例えばGALA、グラミシジンSおよびカチオン性胆汁酸塩(例えば国際公開第WO 93/19768号を参照のこと)が含まれる。
【0143】
あるいは、本発明の核酸分子は、微粒子担体にカプセル化し、吸着させ、あるいは結合させてよい。好適な微粒子担体には、ポリメチルメタクリラートポリマーから誘導された微粒子、ならびにポリラクチドおよびポリラクチド-コ-グリコリドから誘導されたPLG微粒子が含まれる。例えばJeffery et al. (1993) Pharm. Res. 10:362-368を参照のこと。他の微粒子系およびポリマー、例えばポリリシン、ポリアルギニン、ポリオルニチン、スペルミン、スペルミジン等のポリマー、ならびにこれらの分子のコンジュゲートを使用することもできる。
【0144】
製剤化された組成物は、免疫学的応答を開始させるのに十分な量の目的の分子(例えばベクター)を含む。当業者は、適切な有効量を容易に決定することができる。そのような量は、通常の試験によって決定できる比較的広い範囲に入る。該組成物は約0.1%〜約99.9%のベクターを含有してよく、当業者に公知の方法を使用して、被験体に直接投与するか、あるいは別法では、被験体由来の細胞にex vivoで送達することができる。
【0145】
治療方法
本発明は、MAPに対する免疫応答を誘導することを意図した免疫原性分子に関する。ゆえに本発明の組成物は、MAPによる感染の治療または予防、またはMAP感染と関連している任意の疾患、状態または症状の治療または予防に使用することができる。該MAP感染と関連している任意の疾患、状態または症状は、MAP感染の直接的または間接的結果であるか、あるいはMAPの存在が寄与する疾患または状態に起因する任意の疾患状態または症状である。MAPは、腸の慢性炎症、例えば炎症性腸疾患ならびに過敏性腸症候群等の多数の特定の医学的状態と関連していることが知られている。例えば、MAP感染は、慢性腸炎、例えば家畜のヨーネ病(パラ結核)およびヒトのクローン病および過敏性腸症候群を引き起こしうる。したがって、本発明の組成物は任意のこれらの特定の状態の予防または治療に使用してよい。
【0146】
したがって、本発明は、治療方法、特にMAP感染と関連しているか、あるいはMAP感染によって引き起こされる疾患、障害または症状を治療または予防する方法に使用するための本発明のポリペプチド、ポリヌクレオチド、発現カセット、ベクター、細胞、抗体または組成物に関する。ゆえに本発明のこれらの分子は、そのような疾患、障害または状態を治療または予防するための医薬の製造に使用してもよい。特に、本発明の分子は、好ましくは哺乳類、例えばヒト、ウシ(cow)、ヒツジまたはヤギの腸の慢性炎症の治療または予防に提案される。ゆえに本発明はまた、任意のそのような疾患、障害または症状を治療または予防する方法であって、その必要がある被験体に本発明のポリペプチド、ポリヌクレオチド、発現カセット、ベクター、細胞、抗体または組成物を投与するステップを含む方法を提供する。
【0147】
本発明はワクチン接種法に広く適用可能であり、予防および/または治療用ワクチン(免疫療法ワクチンを含む)の開発に関連している。本明細書中の治療へのすべての言及は、治療的、緩和的および予防的処置を含むことが理解されるべきである。
【0148】
本発明にしたがって、本発明のポリヌクレオチド、ベクター、ポリペプチドまたは他の分子を、MAP感染と関連している状態を予防および/または治療するために、組成物、例えば非限定的に、医薬組成物またはワクチン組成物または免疫療法組成物の一部分として単独で使用してよい。該組成物の投与は「予防」または「治療」目的の投与であってよい。本明細書中で使用される用語「治療的(therapeutic)」または「治療(処置)(treatment)」には、感染または再感染の予防; 症状の低減または排除; および病原体の低減または完全な排除の、如何なるものも含まれる。治療は予防的(感染前)または治療的(感染後)に実行してよい。
【0149】
予防または治療には、非限定的に、本発明のポリペプチドに対する有効な免疫応答の誘発、および/またはMAP感染に起因するかもしくはMAP感染と関連している症状および/または合併症の軽減、低減、治癒または少なくとも部分的な停止が含まれる。予防的に提供される場合、本発明の組成物は通常は任意の症状に先立って提供される。本発明の組成物の予防的な投与は、以後の任意の感染または疾患を防止または改善しようとするものである。治療的に提供される場合、本発明の組成物は、通常は、感染または疾患の症状の発症時または発症後すぐに提供される。ゆえに本発明の組成物は、予測されるMAPへの曝露または関連する疾患状態の発症前または感染または疾患の開始後に提供してもよい。
【0150】
治療対象の被験体
本発明は、特に、MAPによる感染と関連している疾患または他の状態の治療または予防に関する。これらの治療は、MAPによる感染に感受性である任意の動物に対して使用してよい。
【0151】
治療対象の被験体はコルダタ(cordata)亜門の任意のメンバーであってよく、それには、非限定的に、ヒトおよび他の霊長類、例えばチンパンジーおよび他の類人猿(ape)およびサル(monkey)種等の非ヒト霊長類; ウシ(cattle)、ヒツジ、ブタ、ヤギおよびウマ等の家畜; イヌおよびネコ等の家畜哺乳類; 実験動物、例えばマウス、ラットおよびモルモット等のげっ歯類; 鳥類、例えばニワトリ、シチメンチョウおよび他の家禽鳥類、アヒル、ガン等の家畜、野生および狩猟鳥類等が含まれる。該用語は特定の年齢を示さない。ゆえに、成体および新生児個体の両方が含まれるものとする。本明細書中に記載の方法は任意の上記脊椎動物種での使用が意図される。その理由は、すべてのこれらの脊椎動物の免疫系が同様に機能するからである。哺乳類である場合、被験体は好ましくはヒトであるが、家畜、実験室被験体またはペット動物であってもよい。
【0152】
ゆえに治療対象の被験体はMAPによる感染に感受性の任意の脊椎動物であってよい。多くの動物がそのような感染を起こしうることが当技術分野において示されており、例えば、ウシ、ヤギおよびヒツジ等の家畜、マカクザルおよびヒト等の霊長類、他の哺乳類、例えばアルパカ、アンテロープ、ロバ、エルク、ウマ、シカ、イヌ、スナネズミおよびウサギ、および鳥類、例えばニワトリが含まれる。ゆえに本発明の組成物はそのような任意の生物種の治療に使用してよい。
【0153】
併用療法
一事例では、本発明の分子を別の分子、例えば別のポリヌクレオチド、ベクターまたはポリペプチド、好ましくは別の治療物質と組み合わせて使用してよい。該治療物質は、例えば、MAPに対抗する活性を有する物質、またはMAP感染と関連している状態の治療に使用される物質であってよい。本発明の分子は、好ましくは、該他の治療物質の抗MAP効果を増大させるか、あるいはその逆のために十分な量で投与される。MAPまたはMAP感染と関連している状態の治療に多くの他の物質を使用できる。これらには、リファマイシン、例えばリファブチンおよびリファキシミン、クラリスロマイシンおよび他のマクロライドが含まれる。種々の抗結核薬を使用してもよい。
【0154】
他の治療物質は本発明の分子の効果を強化する物質であってよい。例えば、該他の物質は、本発明のポリペプチドに対する免疫応答を増強する免疫調節分子またはアジュバントであってよい。あるいは、該他の分子は、攻撃、例えば免疫系からの攻撃に対して、被験体中に存在するMAPの感受性を増加させる。
【0155】
したがって一実施形態では、本発明の分子を1以上の他の治療物質と組み合わせて治療に使用する。
【0156】
該2種の分子は、別々に、同時に、または連続して投与してよい。該2種の分子は同じ組成物または異なる組成物中で投与してよい。したがって、本発明の方法では、被験体を追加の治療物質で治療してもよい。
【0157】
したがって、本発明の分子と1以上の他の治療用分子を含む組成物を製剤化してよい。例えば、本発明のベクターを、1以上の他の抗原または治療用分子をコードする別のベクターとともに製剤化してよい。あるいは本発明のベクターを1以上の治療用タンパク質とともに製剤化してよい。
【0158】
あるいは本発明の組成物は、併用治療の一部として、1以上の他の治療条件と、同時に、連続して、または別々に使用してよい。ゆえに本発明はまた、上記MAP感染またはMAP感染と関連している疾患、状態または症状を治療または予防するための1以上の医薬(群)の製造における、本発明の分子、例えばポリペプチド、ポリヌクレオチド、ベクターまたは宿主細胞の使用を提供する。
【0159】
送達方法
製剤化後、種々の公知の経路および技術を使用して、該組成物をin vivoで被験体に送達することができる。例えば、組成物は、注射用溶液、懸濁液またはエマルジョンとして提供することができ、慣用の針およびシリンジを使用するか、あるいは液体ジェット注射系を使用して、非経口的に、または皮下、表皮、皮内、筋肉内、動脈内、腹腔内、静脈内注射によって投与することができる。組成物は、皮膚または粘膜組織に局所的に、例えば鼻腔内、気管内、経腸、経直腸または経膣で投与することもでき、あるいは呼吸器または肺投与に好適な微粉化スプレーとして提供することもできる。他の投与様式には、経口投与、坐剤、および能動的または受動的経皮送達技術が含まれる。特に本発明に関して、組成物を消化管に直接投与してよい。
【0160】
あるいは、該組成物をex vivoで投与することができる。例えば被験体内への形質転換細胞の送達および再移植は公知である(例えば、デキストラン媒介トランスフェクション、リン酸カルシウム沈殿、エレクトロポレーション、および核内への直接マイクロインジェクション)。
【0161】
送達計画
該組成物は、投与製剤と適合し、予防的および/または治療的に有効である量で被験体に投与される。適切な有効量は比較的広範囲であるが、当業者は通常の試験によって容易に決定することができる。「Physicians Desk Reference」および「Goodman and Gilman's The Pharmacological Basis of Therapeutics」は必要量を決定するために有用である。
【0162】
本明細書中で使用される用語「予防的または治療的に有効な量」とは、本発明のポリペプチドの1以上のエピトープに対する免疫応答を誘発し、かつ/または、MAP感染と関連している炎症性腸障害等の疾患から生じる症状および/または合併症を軽減し、低減し、治癒し、または少なくとも部分的に停止させるために十分な量の用量を意味する。
【0163】
予防または治療は、単一時点での1回の直接投与または、場合により複数の時点での、複数回投与によって、達成することができる。投与は単一または複数の部位に送達することもできる。当業者は、特定の送達経路に適するように用量および濃度を調節することができる。一実施形態では、単一の機会に一回量を投与する。別の実施形態では、同一の機会に、例えば異なる部位で、複数の用量を被験体に投与する。別の実施形態では、複数の用量を複数の機会に投与する。そのような複数の用量は、バッチで、すなわち同じ機会に異なる部位での複数回の投与で投与してよく、あるいは、複数の各機会に1回の投与で(場合により複数の部位で)、個別に投与してよい。そのような投与計画の任意の組み合わせを使用してよい。
【0164】
一実施形態では、本発明の異なる組成物を、同じ治療計画の一部として、異なる部位で、または異なる機会に投与してよい。抗原を送達するために使用されるベクターを変更することによって、該抗原に対する改善された免疫応答が生じることが知られている。いくつかの場合、「初回免疫」および「追加免疫」として逐次的に投与される2種の異なるベクターを使用することによって、抗体および/または細胞の免疫応答が改善される証拠が存在する。
【0165】
例えば、本発明の同一ポリヌクレオチドを、一組成物中で「初回免疫」として投与し、次いで異なる組成物中で「追加免疫」として投与してよい。該2種のワクチン組成物は、ポリヌクレオチドを含むベクターの選択が異なってよい。例えば、プラスミドベクター、ポックスウイルスベクター、アデノウイルスベクターまたは本明細書中に記載の他のベクターからそれぞれ選択される2種以上の異なるベクターを逐次的に投与してよい。
【0166】
一実施形態では、プラスミドベクター、例えばpSG2中で本発明のポリヌクレオチド、例えば配列番号23のHavilahポリヌクレオチドを投与することによって「初回免疫」を達成する。そして後の時点で、ポックスウイルスベクター、例えばMVA中で本発明のポリヌクレオチド、例えば配列番号23のHavilahポリヌクレオチドを使用して「追加免疫」を達成する。
【0167】
別の実施形態では、アデノウイルスベクター、例えばAd5中で本発明のポリヌクレオチド、例えば配列番号23のHavilahポリヌクレオチドを投与することによって「初回免疫」を達成する。そして後の時点で、ポックスウイルスベクター、例えばMVA中で本発明のポリヌクレオチド、例えば配列番号23のHavilahポリヌクレオチドを使用して「追加免疫」を達成する。
【0168】
そのような初回免疫-追加免疫プロトコルでは、初回免疫および/または追加免疫の1回以上の投与を実施してよい。例えば、1回の投与を使用して、あるいは2回以上の投与を使用して異なる部位で、および/または異なる機会に、初回免疫および/または追加免疫ステップを達成してよい。一実施形態では、初回免疫ステップとして異なる機会に2回の投与を行い、かつ後の機会に追加免疫ステップとして1回の投与を行う。
【0169】
同じ機会に、同じ日に、1、2、3、4、5または6日間隔で、1、2、3、4週またはそれ以上の間隔で、異なる投与を実施してよい。好ましくは、投与は、1〜5週間隔、より好ましくは2〜4週間隔、例えば2週、3週または4週間隔である。当業者は通常の試験によって、そのような複数回投与のスケジュールおよびタイミングを特定の組成物または組成物群について最適化することができる。
【0170】
投与の用量はいくつかの要因に依存する。該要因には、組成物の性質、投与経路および投与計画のスケジュールおよびタイミングが含まれる。本発明の分子についての好適な用量は、投与あたり15μgまで、20μgまで、25μgまで、30μgまで、50μgまで、100μgまで、500μgまで、またはそれ以上のオーダーであってよい。本発明のいくつかの分子、例えばプラスミドでは、使用される用量はさらに多くてよく、例えば、1 mgまで、2 mgまで、3 mgまで、4 mgまで、5 mgまで、またはそれ以上である。そのような用量は、液体製剤中で、選択した経路による投与に適切な容量を提供するために好適な濃度で提供してよい。ウイルスベクターの場合、投与あたり約106、107、108、109、1010またはそれ以上のpfuの用量を与えてよい。例えば、109 pfuの用量または25μgの本発明のベクターを50μl用量中で複数の部位で、かつ/または複数の機会に投与してよい。
【0171】
キット
本発明はまた、本発明の治療での使用に好適な本明細書中に記載の成分の組み合わせであって、容器中でキットの形式でパッケージングされているものに関する。そのようなキットは、本発明の治療を可能にするための一連の成分を含んでよい。例えば、キットは、2以上の異なる本発明のベクター、または1以上の本発明のベクター、および初回免疫および追加免疫プロトコルを使用するなどの同時投与または逐次的もしくは別々の投与に好適な1以上の追加の治療物質を、含みうる。該キットは、場合により、他の適切な試薬(群)、コントロール(群)または使用説明書等を含有してよい。
【実施例】
【0172】
1. Havilah (HAV)構築物およびHAVを発現する組換えベクターの作製
MAPゲノムの標的化バイオインフォマティクス解析を実行し、それぞれ病原性表現型に関連している2つの分泌成分および2つの膜結合成分を選択した。これらは、AhpC、gsd、p12およびmpaである。これらの4成分のうち3成分は、クローン病患者由来の血清中の抗体によって、ならびにMAP感染C57/BL6マウス由来の血清によって「見出され」る。利用可能なデータベースを使用して詳細にエピトープを走査すると、選択したワクチン成分中に複数の予測ヒトクラスIおよびクラスIIエピトープが示された。これらのエピトープを含むペプチドは、入手可能なヒトゲノム配列に対して照らし合わせた場合、自己免疫の潜在的な標的である潜在的な交差反応性抗原をまったく示さなかった。
【0173】
最適な哺乳類コドン使用を用いて合成された複数の40量体オリゴヌクレオチド前駆体から、これらの4つの抗原の融合物からなる構築物を組み立てた。潜在的な交差反応性ヒトエピトープ、脂質アシル化部位および疎水性膜貫通領域を含む機能的ドメインは排除した。モノクローナル抗体認識ペプチドをC末端に付加し、短いヒトユビキチンリーダー配列をN末端に付加した。本明細書中では、この構築物をHavilahと称する。該構築物は配列番号23に記載の核酸配列を有する。
【0174】
Havilah (HAV)構築物をpSG2発現ベクター中にクローニングし、さらに、蛍光マーカーを保持する改変ワクシニアAnkara (MVA)ベクターpMVA-GFP2に相同組換えによって挿入した。pMVA-GFP2を使用して、挿入の標的部位に赤色マーカーを保持するMVAを形質転換した。その結果、うまく形質転換した組換え体は赤色から緑色に変化し、それにより蛍光活性化細胞分取器を使用してそれらを単離することを可能にした。さらに複製欠陥ヒトアデノウイルス5を含むベクターにHAVを挿入した。そのrec.pSG2.HAVプラスミド、rec.MVA.HAV、およびrec.Ad5.havはすべて、予測される95 kDa HAVコード化ポリタンパク質を発現することが示された。うまくいったrec.pSG2.HAV、rec.MVA.HAVおよびrec.Ad5.HAVならびに対応するコントロールベクターを大量調製し、精製し、in vivo試験に備えて保存した。HAVの上流末端および下流末端に相当するAhpCおよびmpaの個々の成分で大腸菌を形質転換し、Hisタグ付き組換えタンパク質を精製した。Havilahのアミノ酸配列全体にわたる合成15残基ペプチドのライブラリーを得た(図4)。該組換えタンパク質および合成ペプチドのプールを使用して、該ワクチンに対する免疫応答をモニターするために必要なELISPOTおよびELISAアッセイを開発した。
【0175】
2. pSG2.HAV、次いでMVA.HAVを使用するワクチン接種の安全性および免疫原性
2群の6匹のナイーブ5週齢C57/BL6雌マウスをアイソレーターで飼育した。それらの身体状態を毎日モニターし、週2回および研究の終了時に体重を記録した。7日間の最初の馴化(settle-in)期間の後、50μl滅菌緩衝生理食塩水中の25μgのpSG2発現プラスミドを用いて、コントロール群1のマウスの各大腿にi.m.で初回免疫ワクチン接種を行った。実験群は、Havilah構築物を発現する組換えpSG2.Havプラスミドを使用して同一のワクチン接種を受けた。10日後、106 pfuの改変ワクシニアAnkara.GFP (MVA)ベクターを単独で用いて群1のマウスにi.v.で追加免疫ワクチン接種を行った。群2のマウスは、同用量の、Havilah構築物を発現する組換えMVA.Havのi.v.投与を受けた。10日後の研究の終了時に、人道的手法を使用してマウスを犠牲にした。脾臓重量を記録し、脾臓細胞を得た。
【0176】
脾細胞の刺激およびELISPOTアッセイ
2mMグルタミン、1x ペニシリン-ストレプトマイシン(100x原液由来, Life Technologies, UK)および10% FCS (Life Technologies, UK)を補充した5 mlのRPMI (Sigma, UK)中に脾臓細胞を回収した。70μM細胞漉し器(BD biosciences)を使用して細胞を漉し、4℃で200gで5分間の遠心分離によってペレットにした。1 mlの赤血球溶解バッファー(Sigma, UK)を使用して、室温で1分間、赤血球を溶解し、14 mlのRPMIで中和した。上記のような遠心分離によってRPMIで2回細胞を洗浄し、補充物質を含む2mlのRPMIに再懸濁した。RPMIおよび補充物質中に希釈された、50μlの各プールのあらかじめ調製された組換えAhpCまたはMPA抗原を96ウェルPVDF膜フィルタープレート(cat # S2EM04M99, Millipore, UK)のウェルに加えた。該プレートはあらかじめ捕獲抗体でコーティングしておいた。2.5 x 107細胞/mlの濃度に調節された50μlの脾細胞を、抗原を含有するウェルに加えて、インキュベートした。各ウェル中の抗原の終濃度は組換えタンパク質2.5μg/mlであった。以下の材料はBD Biosciences Pharmingen, UKから入手した。BDTM ELISPOTセイヨウワサビペルオキシダーゼ、BDTM AEC基質セット、およびBDTMマウスガンマインターフェロンサイトカインELISPOTペア(捕獲および検出抗体からなる)。BD Pharmingen テクニカルデータシートTDS 03/24/03に記載のELISPOT手順にしたがった。スポットは手動で計数した。統計解析はマン・ホイットニー(両側)検定を使用して実施した。
【0177】
結果
コントロール群1のマウスまたは実験群2のマウスのいずれにおいても、研究の経過中または剖検時に有害な影響は観察されなかった。2つの群間で脾臓重量に有意差は認められなかった。精製rec.AhpC抗原に対する脾臓細胞による平均ELISPOT応答(図3A)は、偽ワクチン接種群1では83.3であり、試験ワクチン接種群2では903.8であった(p < 0.015)。精製rec.MPA抗原に対する脾臓細胞による平均ELISPOT応答は、偽ワクチン接種群1では91.0であり、試験ワクチン接種群2では900.7であった(p < 0.004) (図3A)。またペプチド群BおよびFを用いた場合に、ベクターのみのコントロールと比較して顕著に高いELISPOT応答が観察された(図3A)。別の実験(図3B)では、プールF内の個々のペプチドに関してELISPOT応答を測定した。全体の応答はペプチド9.1の顕著な認識に起因していることがわかる。これは配列GFAEINPIA (図4)を有し、mpaの第5の細胞外ループ(図5A)に相当する強力なT細胞エピトープを含み、Havilahの配列番号24の残基761-769および図1に含まれる。
【0178】
結論
Havilahを発現するプラスミドおよびMVAベクターを使用する雌C57/BL6マウスの初回免疫追加免疫ワクチン接種は高度に免疫原性であり、アミノ末端のAhpCおよびカルボキシ末端のMPAの両者に対して、およびHavilahポリタンパク質の合成ペプチドエピトープを用いた場合に、大量集団の抗原特異的脾臓細胞を生じさせる。上記ワクチン接種後のHavilahポリタンパク質およびペプチドエピトープに対する高レベルの抗原特異的免疫は、いかなる有害な影響をも伴わない。
【0179】
3. pSG2.HAV、次いでMVA.HAVを使用した、MAPのゆっくり増殖する実験室株に対する治療的および防御的ワクチン接種の安全性および効力
動物のヨーネ病およびヒトのクローン病および過敏性腸症候群において生じる既存のマイコバクテリウム・アビウム(Mycobacterium avium)亜種パラツベルクローシス(paratuberculosis)(MAP)の感染の治療法としてのHavilahワクチンを試験するための第一の研究を実行した。8匹のナイーブ4〜6週齢C57/BL6雌マウスの群4つをアイソレーターで飼育した。それらの身体状態を毎日モニターし、週2回および研究の終了時に体重を記録した。7日間の最初の馴化期間の後、ウシMAPのゆっくり増殖する弱毒化実験室株の4 x 107個を含む200μl滅菌生理食塩水を用いて全部で32匹のマウスにi.p.感染させた。4週間後、50μlの内毒素不含滅菌TEバッファー中の25μgのpSG2発現プラスミドを、コントロール群1のマウスの各大腿にi.m.で投与した。実験群2のマウスには、50μlの内毒素不含滅菌TEバッファー中の25μgのrec.pSG2.Havを用いて、各大腿にi.m.で初回免疫ワクチン接種を行った。コントロール群3のマウスには、50μlの内毒素不含滅菌TEバッファーを各大腿にi.m.で投与した。この初回免疫手順を1週間後に繰り返した。9日後、100μlの内毒素不含滅菌TEバッファー中の5 x 106 pfuの改変ワクシニアAnkara.GFP (MVA)ベクター単独を用いて、コントロール群1のマウスの尾静脈内にi.v.投与した。実験群2のマウスには、同用量のHavilah構築物を発現する組換えMVA.Havを用いてi.v.で追加免疫ワクチン接種を行った。コントロール群3のマウスには、100μlの内毒素不含滅菌TEバッファーをi.v.で尾静脈内に投与した。群4由来のナイーブマウスのペアを研究の間を通して間隔をおいて剖検して、MAP感染の進行をモニターした。最初のMAP感染の26週間後に研究を終えた。高感度で特異的な定量的リアルタイムIS900 PCRを使用して、すべてのマウスの脾臓および肝臓中のMAP生物の感染存在量を測定した。
【0180】
後のMAP感染に対して何らかの防御をもたらすHavilahワクチンの能力を試験するための第二の研究を実行した。8匹のナイーブ4〜6週齢C57/BL6雌マウスの群3つをアイソレーターで飼育した。それらの身体状態を毎日モニターし、週2回および研究の終了時に体重を記録した。7日間の最初の馴化期間の後、50μlの内毒素不含滅菌TEバッファー中の25μgのpSG2発現プラスミドを、コントロール群1のマウスの各大腿にi.m.で投与した。実験群2のマウスには、50μlの内毒素不含滅菌TEバッファー中の25μgのrec.pSG2.Havを用いて各大腿にi.m.で初回免疫ワクチン接種を行った。コントロール群3のマウスには、50μlの内毒素不含滅菌TEバッファーを各大腿にi.m.で投与した。この初回免疫手順を1週間後に繰り返した。10日後、100μlの内毒素不含滅菌TEバッファー中の5 x 106 pfuの改変ワクシニアAnkara.GFP (MVA)ベクター単独をi.v.でコントロール群1のマウスの尾静脈内に投与した。実験群2のマウスには、同用量の、Havilah構築物を発現する組換えMVA.Havを用いてi.v.で追加免疫ワクチン接種を行った。コントロール群3のマウスには、100μlの内毒素不含滅菌TEバッファーをi.v.で尾静脈内に投与した。8日後、200μl滅菌生理食塩水中のMAPウシK10株の4 x 107個をi.p.ですべてのマウスに感染させた。24週間半後に研究を終え、上記のように定量的リアルタイムIS900 PCRを使用してすべてのマウスの脾臓および肝臓中のMAP生物の感染存在量を測定した。
【0181】
結果
Havilahワクチン接種マウスまたはコントロールマウスのいずれにおいても、研究の間を通してまたは剖検時に該ワクチンの有害な影響は観察されなかった。治療的ワクチン接種研究では、コントロール群1および3のマウスの脾臓中のMAP生物の数は、全体的には、組織1グラムあたり10〜10,000の範囲であった。ワクチン処置群2では、8匹のマウスのうち6匹の脾臓においてMAP生物がまったく検出できなかった(図5B)。この群の他の2匹の動物では、MAPの数はqRT-PCRの検出下限付近であり、組織1グラムあたり1〜10の範囲であった(群2について、コントロールに対してp=0.003)。また群2のHavilahワクチン処置マウスの肝臓中のMAPの感染存在量は有意に減少した(p=0.019)。防御的ワクチン接種の研究では、該ワクチンの効力は治療的ワクチン接種ほど劇的ではなかったが、肝臓中のMAPの感染存在量はコントロールマウスより有意に低かった(p=0.0074)。
【0182】
結論
Havilah構築物を発現するプラスミドおよびMVAベクターを使用したMAPに対する治療的ワクチン接種は、MAP感染を非常に顕著に減弱させる。Havilah構築物を発現するこれらのベクターを使用するワクチン接種は、後のMAP感染に対して、それよりは弱いがかなりの防御効果を有する。MAP感染が予め存在することは、その治療的役割のために使用されるワクチンに対する応答を惹起させることにより利点をもたらすと考えられる。Havilah含有ベクターを使用するMAP感染の存在下でのワクチン接種は安全であり、いかなる有害な影響をも伴わない。
【0183】
4. Ad5.HAV、次いでMVA.HAVを使用するワクチン接種の安全性および免疫原性
既に記載した方式にしたがって、6匹のナイーブ4〜6週齢雌C57/BL6マウスの群3つで、別の研究を実行した。群1には、50μlバッファー中の108 pfuのAd5ベクターを皮内投与(i.d)で耳介に投与し; 群2には同用量のAd5.HAVをi.d投与し、群3には50μl緩衝化生理食塩水のみを投与した。2週間後、108 pfuのMVAベクターのみ、108 pfuのMVA.HAV、またはバッファーを、i.dでそれぞれ群1〜3にワクチン接種した。4週後の時点で動物を犠牲にし、臨床および剖検状態および体重を記録した。ワクチン抗原に対する免疫学的応答を定量するために脾臓細胞および血清を得た。
【0184】
結果
いずれの動物においても、該ワクチン接種に起因する有害な影響は観察されなかった。コントロールと比較して、ELISPOTアッセイにおけるrec.AhpC、rec.gsdおよびrec.mpaの顕著な認識、ならびにプールされたペプチド抗原、特にペプチド9.1 GFAEINPIAおよびプールJの顕著な認識が、同様に生じた。さらに、ワクチン接種群では、コントロール群と比較して、抗体による組換え抗原AhpCおよびmpaの顕著な認識が存在した。
【0185】
これらの知見の再現性を調べるために、同様の8匹のマウスの群3つを使用し、かつ50μl中の、2 x 107 pfuのウイルスベクター単独、または2 x 107 pfuのAd5.HAVとそれに続く2 x 107 pfuのMVA.HAVのi.dでの耳介への投与を用いて、研究を繰り返した。4週間後に動物を犠牲にした。
【0186】
これらの動物のいずれにおいても、有害な影響の証拠は存在しなかった。図6AおよびBに示された免疫応答は、以前に観察されたものと同じであった。ベクターのみのコントロールと比較して、ペプチド9.1の強いELISPOT認識および組換え抗原およびペプチドプールJに対する顕著な応答が、同様に存在した。対照的に、抗体によるペプチド9.1または該ペプチドプール中の任意のものの認識、および組換え抗原AhpCおよびmpaの実質的な抗体認識は認められなかった。
【0187】
結論
Havilahを発現するAd5.HAV、次いでMVA.HAVを使用する未感染雌C57/BL6マウスのワクチン接種は高度に免疫原性であり、組換え抗原および合成ペプチドエピトーププールをともに認識する大量集団の抗原特異的脾臓細胞を生じさせる。特に留意すべきは、mpaの第5の細胞外ループを含む強力な特異的T細胞エピトープGFAEINPIAがワクチン接種マウス中で認められることが繰り返し実証されていることである。ワクチン接種後のHavilahポリタンパク質に対する抗原特異的免疫は、再現性よく、いずれの有害な影響をも伴わない。
【0188】
5. Ad5.HAV、次いでMVA.HAVを使用した、MAPの最近の病原性疾患単離体に対する治療的および防御的ワクチン接種の安全性および効力
ウシMAPの増殖が速い最近の病原性疾患単離体に対するワクチン接種の安全性および効力を決定するために、それぞれ8匹の4〜6週齢雌C57/BL6マウスの群2つまたは3つを使用して別の2研究を実行した。該研究は、既に記載した方式にしたがって、ベクターのみまたは緩衝化生理食塩水単独を投与されたコントロール群と比較して、2 x 107 pfuのAd5.HAV、次いで2 x 107 pfuのMVA.HAVを使用して行った。高用量の研究では、動物に107 MAPをi.p投与し、低用量の研究では105 MAPをi.p投与した。MAP感染の8週間後に研究を終え、高感度で特異的な定量的リアルタイムIS900 PCRを使用して、すべてのマウスの脾臓および肝臓におけるMAP生物の感染存在量を測定した。
【0189】
結果
どの動物もワクチン接種の有害な影響をまったく示さなかった。治療的または予防的にワクチン接種されたマウスの脾臓組織中のMAP生物の数は、低用量および高用量の研究の両方において、コントロール群と比較して顕著に減少した(図7)。高用量の研究を除き、治療的または予防的にワクチン接種されたマウスの肝臓組織中のMAP生物の数もまた、コントロール群と比較して顕著に減少した(図8)。図9は、ペプチド9.1中の強力なT細胞エピトープGFAEINPIAが、病原性MAP感染の存在にもかかわらず、やはり顕著に認識されることを示す。ペプチドプールJは予防的および治療的ワクチン接種の両者において顕著に認識される。ペプチドプールLは、すでにMAPに感染している動物にワクチン接種が行われた場合に、やはり顕著に認識されるが、そのことは、以前の感染が、治療的に使用されるワクチンに対する応答を「惹起」させることと一致する。
【0190】
結論
異なる投与量で異なる免疫化経路によって投与されたプラスミド、アデノウイルスおよびMVAポックスウイルスベクター中で発現されるHavilahを使用したワクチン接種は、マウスにおいて、有害な影響を伴わずに、再現性のある高度に顕著な抗原特異的T細胞免疫原性を示す。ワクチン接種によって、組換えHavilahタンパク質、およびHavilah配列内の合成ペプチドエピトープ、特にmpa部分の第5の細胞外ループに相当する強力なT細胞エピトープGRAEINPIAの両方についての顕著なT細胞による認識が誘発された。組換えAhpCおよびmpaに対する顕著な抗体応答も生じた。異なるベクターの組み合わせを、MAPの異なる株に対する投与において、異なる用量および異なる投与経路で使用すると、Havilah構築物を使用するワクチン接種によって、既存のMAP感染の顕著な治療的減弱および後のMAP感染に対する防御が繰り返し生じる。さらにまた、既存のMAP感染の「惹起」作用によって、治療的ワクチン接種に対する応答が向上しうる。Havilahをワクチンとして使用して、MAP感染に対する防御をもたらすことができ、また動物およびヒトのMAP感染、例えばヨーネ病およびクローン病および過敏性腸症候群を治療することができ、ならびに抗MAP薬を用いた治療に対する臨床応答を増強することができる。
【図面の簡単な説明】
【0191】
【図1】図1はHavilah構築物のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列を示す。該アミノ酸配列は、ユビキチンリーダー配列、それに続くahpC配列(斜体)、gsd配列(太字)、p12配列(標準書体)およびmpa配列(太字斜体)を含む。該アミノ酸配列はpKタグで終っている。
【図2】図2は、Havilah構築物に含まれるahpC (A)、gsd (B)、p12 (C)およびmpa (D)ポリペプチドを示す。太字斜体=予測される強力なクラスIIヒトエピトープ。下線=予測されるクラスIエピトープ。
【図3】図3。Aは、ナイーブ非感染性C57/BL6マウスに対する組換えプラスミドpSG2.HAV、次いでMVA.HAVを用いたワクチン接種に起因する、ベクターのみのコントロールと比較した場合の、rec.AhpCおよびrec.Mpaに対する、ならびにプールBおよびF中のHavilahポリタンパク質由来の合成ペプチドに対する抗原特異的ELISPOT応答の非常に顕著な増加を示す。Bは、pSG2.HAV/MVA.HAVでワクチン接種された動物におけるプールF(図4にも示す)中の合成ペプチドに対するELISPOT応答に由来するエピトープ同定の例を示す。ワクチン接種されていない動物とは異なり、ワクチン接種された動物における該応答は、特異的T細胞エピトープを構成するアミノ酸配列GFAEINPIAを有するペプチド9.1の強力な認識によるものと考えられる。
【図4】図4は、エピトープ領域の検出に使用されるHavilahポリタンパク質全体にわたる合成ペプチド抗原の配列の概要を示す。AhpCペプチドは斜体で、Mpaペプチドは太字斜体で、p12ペプチドは標準書体で、gsdペプチドは太字で示す。
【図5】図5。AはMAPの細胞表面膜中のmpa抗原の構造図であり、細胞内ドメイン、膜貫通ドメインおよび細胞外ドメインを示す。ペプチド9.1中の強力なT細胞エピトープGFAEINPIAは該タンパク質の第5の最小の細胞外ループを含むと考えられる。Bは、MAPのゆっくり増殖する実験室株を用いた感染の26週間後に、ベクターのみおよび偽ワクチン接種された動物と比較して、治療的ワクチン接種に応答してMAP感染C57/BL6マウスの脾臓組織中のMAP生物の2〜3対数単位という非常に顕著な減少および排除が生じることを示す。* 8匹のマウスのうち6匹の脾臓ではMAPは高感度qPCRによっても検出されなかった。
【図6】図6は、C57/BL6マウスにおける初回免疫のためのAd5.HAV、次いで追加免疫のためのMVA.HAVを使用するワクチン接種に対する、非常に顕著な抗原特異的T細胞応答(A. ELISPOT)および抗体応答(B. ELISA)を示す。ベクター単独を使用してワクチン接種された動物と比較して、ペプチド9.1中の強力なエピトープのT細胞による顕著な認識が、rec.Gsdおよびrec.Mpaタンパク質およびペプチドプールJおよびLの顕著な認識とともに同様に観察される。対照的に、9.1を含む該ペプチドはいずれも、ワクチン接種に応答したELISAアッセイでは抗体によって認識されないが、rec.AhpCおよびrec.Mpaの実質的認識は存在する。
【図7】図7は、MAPチャレンジ前(予防的)またはチャレンジ後(治療的)に投与されたAd5.HAV、次いでMVA.HAVを使用するワクチン接種に応答して、ベクターのみのコントロールと比較して、低用量または高用量MAPでi.pチャレンジされたC57/BL6マウスの脾臓組織中のMAP生物の感染存在量が非常に顕著に減少することを示す。A=予防的処置(E1 + G1)。低用量ベクター 対 ワクチン: p = 0.0207; 高用量ベクター 対 ワクチン: p = 0.0205。B=治療的処置(E2 + G2)。低用量ベクター 対 ワクチン: p = 0.0207; 高用量ベクター 対 ワクチン: p = 0.0023。
【図8】図8は、図7と同じ実験であり、上記のようにAd5.HAV、次いでMVA.HAVでワクチン接種されたマウスの肝臓組織におけるMAP感染存在量の顕著な減少を同様にさらに示す。A=予防的処置(E1 + G1)。低用量ベクター 対 ワクチン: p = 0.0379; 高用量ベクター 対 ワクチン: p = 0.0003。B=治療的処置(E2 + G2)。低用量ベクター 対 ワクチン: p = 0.0499。
【図9】図9は、上記図7に記載のように予防的(A)または治療的(B)に投与されたワクチン接種に応答して、C57/BL6マウス中のMAP感染の存在下で、ベクターのみのコントロールと比較して、mpa(ペプチド9.1)中の強力なT細胞エピトープGFAEINPIAが顕著に認識されること、およびペプチドプールJが顕著に認識されることを示す。確立したMAP感染の存在下(治療パネルB)では、ベクターのみのコントロールと比較して、ペプチドプールLの顕著な認識が同様に存在し、したがって、既存のMAP感染がワクチン接種に対する応答を惹起可能であった。A=プールJ (p = 0.0006); ペプチド9.1 (p = <0.0001)。B=プールJ (p = <0.0001); プールL (p = 0.0032); ペプチド9.1 (p = <0.0001)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ahpCポリペプチド配列、gsdポリペプチド配列、p12ポリペプチド配列およびmpaポリペプチド配列を含むポリペプチドであって、
該ahpCポリペプチドは、配列番号2の配列、配列番号2の全長にわたって配列番号2に対して70%を超えるアミノ酸配列同一性を有するその変異体、またはエピトープを含む配列番号2の少なくとも8アミノ酸の断片、を含み;
該gsdポリペプチドは、配列番号6の配列、配列番号6の全長にわたって配列番号6に対して70%を超えるアミノ酸配列同一性を有するその変異体、またはエピトープを含む配列番号6の少なくとも8アミノ酸の断片、を含み;
該p12ポリペプチドは、配列番号10の配列、配列番号10の全長にわたって配列番号10に対して70%を超えるアミノ酸配列同一性を有するその変異体、またはエピトープを含む配列番号10の少なくとも8アミノ酸の断片、を含み; ならびに
該mpaポリペプチドは、配列番号14の配列、配列番号14の全長にわたって配列番号14に対して70%を超えるアミノ酸配列同一性を有するその変異体、またはエピトープを含む配列番号14の少なくとも8アミノ酸の断片、を含む、
前記ポリペプチド。
【請求項2】
該ahpCポリペプチドが配列番号4に記載のアミノ酸配列を有する、請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項3】
該gsdポリペプチドが配列番号8に記載のアミノ酸配列を有する、請求項1または2に記載のポリペプチド。
【請求項4】
該p12ポリペプチドが配列番号12に記載のアミノ酸配列を有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項5】
該mpaポリペプチドが配列番号16に記載のアミノ酸配列を有する、請求項1〜4のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項6】
該mpaポリペプチドがアミノ酸配列GFAEINPIAを含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項7】
配列番号4、8、12および16のアミノ酸配列を含む、請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項8】
配列番号24に記載のアミノ酸配列を含む、請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項に記載のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド。
【請求項10】
以下のものを含む、請求項9に記載のポリヌクレオチド:
(a) 配列番号1のahpCポリヌクレオチドまたは配列番号1の全長にわたって配列番号1に対して少なくとも70%のホモロジーを有するその変異体、またはエピトープをコードする配列番号1の少なくとも24ヌクレオチドの断片;
(b) 配列番号5のgsdポリヌクレオチドまたは配列番号5の全長にわたって配列番号5に対して少なくとも70%のホモロジーを有するその変異体、またはエピトープをコードする配列番号5の少なくとも24ヌクレオチドの断片;
(c) 配列番号9のp12ポリヌクレオチドまたは配列番号9の全長にわたって配列番号1に対して少なくとも70%のホモロジーを有するその変異体、またはエピトープをコードする配列番号9の少なくとも24ヌクレオチドの断片; ならびに
(d) 配列番号13のmpaポリヌクレオチドまたは配列番号13の全長にわたって配列番号1に対して少なくとも70%のホモロジーを有するその変異体、またはエピトープをコードする配列番号13の少なくとも24ヌクレオチドの断片。
【請求項11】
該ahpCポリヌクレオチドが配列番号3に記載の配列を有する、請求項10に記載のポリヌクレオチド。
【請求項12】
該gsdポリヌクレオチドが配列番号7に記載の配列を有する、請求項10または11に記載のポリヌクレオチド。
【請求項13】
該p12ポリヌクレオチドが配列番号11に記載の配列を有する、請求項10〜12のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド。
【請求項14】
該mpaポリヌクレオチドが配列番号15に記載の配列を有する、請求項10〜13のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド。
【請求項15】
配列番号3、7、11および15の核酸配列を含む、請求項10に記載のポリヌクレオチド。
【請求項16】
配列番号24に記載の核酸配列を含む、請求項10に記載のポリヌクレオチド。
【請求項17】
請求項9〜16のいずれか一項に記載のポリヌクレオチドを含むベクター。
【請求項18】
請求項1〜8のいずれか一項で規定されるahpCポリペプチド、gsdポリペプチド、p12ポリペプチドおよびmpaポリペプチドを発現可能なベクター。
【請求項19】
ポックスウイルスベクター、アデノウイルスベクターまたはプラスミドである、請求項17または18に記載のベクター。
【請求項20】
請求項1〜8のいずれか一項に記載のポリペプチド、請求項9〜16のいずれか一項に記載のポリヌクレオチドまたは請求項17〜19のいずれか一項に記載のベクターを含む宿主細胞。
【請求項21】
請求項1〜8のいずれか一項に記載のポリペプチドを発現可能な宿主細胞。
【請求項22】
治療に使用するための、請求項1〜8のいずれか一項に記載のポリペプチド、請求項9〜16のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド、請求項17〜19のいずれか一項に記載のベクターまたは請求項20もしくは21に記載の宿主細胞。
【請求項23】
MAP感染またはMAP感染と関連している状態もしくは症状を治療または予防するための医薬の製造における、請求項1〜8のいずれか一項に記載のポリペプチド、請求項9〜16のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド、請求項17〜19のいずれか一項に記載のベクターまたは請求項20もしくは21に記載の宿主細胞の使用。
【請求項24】
該医薬が、腸の慢性炎症、炎症性腸疾患、過敏性腸症候群、慢性腸炎、ヨーネ病またはクローン病を治療または予防するための医薬である、請求項23に記載の使用。
【請求項25】
治療対象の個体に、MAPに対抗する活性を有する追加の治療物質または、MAP感染と関連している状態の治療に使用される追加の治療物質をさらに投与する、請求項23または24に記載の使用。
【請求項26】
MAP感染またはMAP感染と関連している状態もしくは症状を治療または予防する方法であって、それを必要としている被験体に、請求項1〜8のいずれか一項に記載のポリペプチド、請求項9〜16のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド、請求項17〜19のいずれか一項に記載のベクターまたは請求項20もしくは21に記載の宿主細胞の有効量を投与するステップを含む方法。
【請求項27】
MAP感染またはMAP感染と関連している状態もしくは症状の治療または予防に使用するためのキットであって、(i) 少なくとも1つの、請求項1〜8のいずれか一項に記載のポリペプチド、請求項9〜16のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド、請求項17〜19のいずれか一項に記載のベクターまたは請求項20もしくは21に記載の宿主細胞および(ii) 同時に、連続して、あるいは別々に使用するための少なくとも1つの他の治療物質、を含むキット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2009−504149(P2009−504149A)
【公表日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−525615(P2008−525615)
【出願日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【国際出願番号】PCT/GB2006/002893
【国際公開番号】WO2007/017635
【国際公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【出願人】(508039803)セント ジョージズ エンタープライジーズ リミテッド (1)
【Fターム(参考)】