説明

免震フリーアクセスフロア用スライドパネル及びその設置構造

【課題】免震部パネルとボーダー部パネルとスライドパネルとが同一の構造形式で構成されかつ同一レベルに設置され、スライドパネルの床強度が強く、地震時に飛び跳ねがない免震フリーアクセスフロアのスライドパネル設置構造を提供すること。
【解決手段】免震部パネル11とボーダー部パネル12とスライドパネル13とを同一の厚みとし、基礎床14上に立設したスライドパネル支持手段19の上に固定した下床板21でボーダー部パネル12の端部下面12aを受承し、下床板21上に楔ブロック22をボーダー部パネル12に隣接固定し、スライドパネル13の端部13aに楔ピース23を接続固定し、下向き傾斜面23aを上向き傾斜面22aに面対偶させてスライドパネル13を下床板21上に載置しスライドパネル13の端部13bを免震部パネル支持手段16に支持した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、免震フリーアクセスフロア用スライドパネル及びその設置構造に関し、詳しくは、建屋の基礎床に免震装置を設置しこの免震装置上に敷設される免震部パネルを地震時に前記免震装置の働きにより上下・水平方向に免震させる免震フリーアクセスフロアにおいて、免震部パネルと、基礎床のボーダー部に立設されたボーダー部パネル支持手段に支持されたボーダー部パネルとの間の免震用隙間を閉塞して設けられ地震時にスライドする免震フリーアクセスフロア用スライドパネル及びその設置構造に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1〜5に示す免震フリーアクセスフロアにおけるスライドパネルは、板厚が薄いものが使用されているため、強度が弱いという問題点がある。詳しくは、スライドパネルが、免震部パネルやボーダー部パネルの構造形式や寸法仕様とは全く異なり、スライドパネルを鋼製の平板としたものでは重く、撓みやすく、ローリングに弱い。また、スライドパネルを薄いアルミニウム板等で構成したものでは、他のパネル部分に比して強度がかなり低く、供用時に不用意に重いものを載せたり、強い地震を受けると破損したり変形する不都合があった。
【0003】
そこで、特許文献6に示す免震フリーアクセスフロアにおけるスライドパネルは、免震部パネルと寸法仕様が同じ構造形式として必要十分な強度を確保している。
【0004】
【特許文献1】実開平5−32572号公報
【特許文献2】特開平5−79172号公報
【特許文献3】特開平5−79173号公報
【特許文献4】特開平8−209911号公報
【特許文献5】実開平7−42835号公報
【特許文献6】特開平11−62195号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献6の免震フリーアクセスフロアのスライドパネル設置構造は以下のような問題点がある。
(1)スライドパネルは、地震時にボーダー部パネル上に載置するレベルプレートの下側に潜り込む構成になっているが、この時点で上下方向の大きな揺れがあると、ボーダー部パネルが免震部パネルよりも高く変化すると、スライドパネルが瞬間に大きく傾斜し、これによりレベルプレートが勢いよく跳ね上がる危険がある。
(2)スライドパネルのリアエッジに備えるリア金具と、免震部支柱の台プレート上に立つ受け金物とはガタつきを有して係合しているので、地震時にレベルプレートの下側にスライドパネルが潜り込んだ後で戻っても、スライドパネルのリアエッジと免震部パネルとの突き合わせ間隔(目地)が大きく開くことがある。
(3)スライドパネルのリアエッジにリア金具を備え、さらにリアエッジの全長に、緩衝用のゴムシートを付設する構成であり、部品点数・組み付け工数が多くなり、コスト高になる。
(4)ボーダー部パネルの下側空間の高さが小さいので、ここに、配線等を行う際の寸法的条件が厳しいものとなっている。
(5)スライドパネルのフロントエッジに備えるフロント金具と、レベルプレートに備える傾斜金具が意匠的美観を損ねる。
【0006】
本発明は、上述した点に鑑み案出したもので、スライドパネルを免震部パネルと同一構造形式とすることができて、スライドパネルの強度を免震部パネルと同一の高い強度にすることができる免震フリーアクセスフロア用スライドパネルを提供すること、及び、免震部パネルとボーダー部パネルとスライドパネルとが同一の構造形式で構成されかつ同一レベルに設置され、スライドパネルの床強度が強く、地震時に飛び跳ねがなく、ボーダー部パネル及びスライドパネルの下側空間の高さを大きく確保できる免震フリーアクセスフロア用スライドパネルの設置構造を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明は、建屋の基礎床に免震装置を設置しこの免震装置上に敷設される免震部パネルを地震時に前記免震装置の働きにより上下・水平方向に免震させる免震フリーアクセスフロアにおいて、前記免震部パネルと、基礎床のボーダー部に立設されたボーダー部パネル支持手段に支持されたボーダー部パネルとの間の免震用隙間を閉塞して設けられ地震時にスライドするアルミダイキャスト製のスライドパネルであって、矩形状に薄肉な上面部と、前記上面部の下面周端部より垂下する外周壁と、前記外周壁の少なくとも前記免震部パネル側の一側に所要寸法離隔して前記上面部の下面周端部より垂下する単数又は複数の内周壁と、前記上面部の下面適宜位置に垂下する補強用リブと、を備えてダイキャスト製造され、ボーダー部パネル寄りの端部には、該端部に向かって下面より傾斜上昇する下向き傾斜面を有する楔ピースが接続固定され、免震部パネル寄りの下面コーナー部には、前記外周壁と前記内周壁とで囲まれて形成され、免震部パネル支持手段のパネル受承板の係止用立ち上がり片部が侵入する係止用凹部を備えている、免震フリーアクセスフロア用スライドパネルとしたことを特徴とする。この発明において、前記ボーダー部パネルは、前記スライドパネルと建物側壁までの間にあるパネルをいうものとする。
【0008】
また、本発明は、いずれも同一の厚みとなるようにダイキャスト製造される、免震部パネルと、ボーダー部パネルと、前記免震部パネルと前記ボーダー部パネルとの間の免震用隙間を閉じる前記発明の免震フリーアクセスフロア用スライドパネルとを備え、前記免震部パネルが建屋の基礎床の中央部に設置される免震装置上に立設される免震部パネル支持手段で支持され、前記ボーダー部パネルの建屋壁面寄りの下面が前記基礎床のボーダー部に立設するボーダー部パネル支持手段で支持され、前記基礎床上の前記免震用隙間のスライドパネル寄り及び隙間中程に対応しスライドパネル支持手段が立設され、両スライドパネル支持手段の上に下床板が固定され、前記下床板で前記ボーダー部パネルのスライドパネル寄りの端部下面が支持されると共に、スライドパネル側に向かって傾斜下降する上向き傾斜面を有する楔ブロックが前記ボーダー部パネルに隣接載置され固定され、前記スライドパネルのボーダー部パネル寄りの端部に接続固定された前記楔ピースの下向き傾斜面と前記楔ブロックの上向き傾斜面とを面対偶させて該スライドパネルの楔ブロック寄りの略半部が前記下床板上に載置され、かつ該スライドパネルの免震部パネル寄りの端部が前記免震部パネル支持手段に支持される、免震フリーアクセスフロアのスライドパネル設置構造としたことを特徴とする。
【0009】
また、本発明は、前記スライドパネルが、下面コーナー部に係止用凹部を有し、前記免震部パネル支持手段が、上端に備えるパネル受承板に、垂直に立ち上がり前記係止用凹部に深く入り込んでから該スライドパネルのコーナー方向にほぼ水平に折れ曲がる係止用立ち上がり片部を延在一体に備えていることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、スライドパネルを免震部パネルと同一構造形式とすることができて、スライドパネルの強度を免震部パネルと同一の高い強度にすることができる免震フリーアクセスフロア用スライドパネルを提供することができる。
また、本発明によれば、以下の優れた効果を奏する。
(1)スライドパネルを免震部パネルと同一構造形式とすることができて、スライドパネルの強度を免震部パネルと同一の高い強度にすることができる。
(2)地震時に水平移動するスライドパネルは、ボーダー部パネルの上に乗り上げるか、又は、楔ブロックとの隙間を開けて下床板上にスライドし、このとき、地震の縦揺れが起きても、スライドパネルが突き上がったり、スライドパネルがボーダー部パネルを突き上げることがなく、またスライドパネルの免震部パネル寄りの端部が免震部パネル支持手段から浮き上がって脱落する惧れが少ない。
(3)ボーダー部パネルの下面を免震部パネルの下面と合わせられ、下床板の板厚寸法は、パネルよりも大幅に小さくなるから、ボーダー部パネルの下側空間の高さを従来よりも大きく取ることができる。
(4)ボーダー部パネルの上に、従来のレベルプレートを設けないからコストを低減できる。
(5)スライドパネルは、免震部パネルと同一パネルの一端を加工し、楔ピースを接続固定して構成できるので、免震部パネルと同一の金型で製造でき、大きな金型を一つ省くことができから、楔ブロックと楔ピースと金型を新たに必要とするが、全体として金型コストを低減できる。
(6)免震部パネルとボーダー部パネルとスライドパネルのいずれもパネル支持手段上に載置するだけで設置できるので施工が容易迅速に行える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に、本発明の実施の形態に係る免震フリーアクセスフロア用スライドパネル及びその設置構造を図面を参照して説明する。
【0012】
〔実施の形態1〕
まず、実施の形態1の構成について説明する。
図1、図2に示すように、この免震フリーアクセスフロアのスライドパネル設置構造10は、免震部パネル11とボーダー部パネル12とスライドパネル13とを同一の厚みのアルミダイキャスト成形体としかつ同一のレベルに設置する構成である。そして、免震部パネル11とボーダー部パネル12とスライドパネル13を支持する手段として、免震装置15上に設けられる免震部パネル支持手段16と、建屋の基礎床14上に設けられるボーダー部パネル支持手段17及びスライドパネル支持手段19,20と、該スライドパネル支持手段19,20上に設けられる下床板21を備えている。
【0013】
下床板21の支持手段であるスライドパネル支持手段19,20は、建屋の基礎床14上の免震用隙間のスライドパネル寄り及び隙間中程に対応して立設される。下床板21は、パネル11〜13の下面のレベルに合わせて設けられる。スライドパネル13は、下床板21で受承され免震用隙間を閉じるようになっている。もって、免震部パネル11とボーダー部パネル12とスライドパネル13とが同一の厚みとされかつ同一のレベルに設置される。
【0014】
さらに、地震時に免震部パネル11がボーダー部パネル12の方向に接近移動する際に、スライドパネル13がボーダー部パネル12上に乗り上げられるようにするために、下床板21上にボーダー部パネル12に隣接して楔ブロック22が載置固定され、一方、スライドパネル13の楔ブロック寄りの端部13aには、楔ブロック22に向かって傾斜上昇する下向き傾斜面を有する楔ピース23が接続固定され、楔ピース23の下向き傾斜面23aと楔ブロック22の上向き傾斜面22aとを面対偶させ、地震時に下向き傾斜面23aと上向き傾斜面22aとの間で楔作用を生起してスライドパネル13がボーダー部パネル12上に乗り上げる構成である(図5参照)。
【0015】
以下、さらに詳述する。
図3(a)に示す免震部パネル11と図3(b)に示すボーダー部パネル12と図3(c)に示すスライドパネル13について説明する。免震部パネル11は、着座面(下端面)を一平面となるように機械加工し、上面及び側面のバリを取り除いたパネルである。ボーダー部パネル12は、免震部パネル11とするアルミダイキャスト成形体又は別の大きさのアルミダイキャスト成形体の着座面の機械加工し、上面及び側面のバリを取り除いてから、ボーダー部の設置スペースに合わせ一側をカットしたものである。スライドパネル13は、免震部パネル11又はボーダー部パネル12とするアルミダイキャスト成形体の一側の上下面を削り加工して、該先端部に、別途のアルミニウム製の楔ピース23を嵌合しビスねじ24a,24b,24cで連結固定したものである。この楔ピース23は、アルミニウムの押出成形体又は他の成形体である。なお、パネル11〜13は、それぞれ別の金型を用いて製造される場合を排除するものではない。
【0016】
さらに図4を用いてパネル11〜13の構造形式の具体例を説明する。なお、図4は、パネル11〜13の下面図を示す。なお、図3と図4とは構造を完全に対応させて描かれていない。
パネル11〜13は、上面部aと、矩形外周壁部bと、「井」形内壁部cと、補強用リブdと、補強用小リブeとを備えている。上面部aは、方形かつ薄板状である。上面部aには複数のスリット(貫通孔)が設けられる場合がある。矩形外周壁部bは、上面部aの周囲より一体に垂下する。「井」形内壁部cは、矩形外周壁部bに「井」形状に内接するように前記上面部より一体に垂下する。矩形外周壁部bと「井」形内壁部cは、垂下方向の寸法が等しい。補強用リブdは、矩形外周壁部bに囲まれるエリアに設けられ縦方向及び横方向に適宜ピッチで上面部aより一体に垂下する。補強用リブdは、図示例では、矩形外周壁部b及び「井」形内壁部cよりも垂下方向の寸法が小さい(一般的には寸法が同一)。補強用小リブeは、補強用リブdと「井」形内壁部cとの間に設けられ適宜ピッチで上面部aより一体に垂下する。補強用小リブeは、補強用リブdよりも垂下方向の寸法がさらに小さい。パネル11〜13の下面の四隅コーナー部の凹部fは、支持脚の支持キャップが入り込んで係合するための係止用凹部となっている。
【0017】
上記構造形式のアルミダイキャスト成形体のパネル11〜13は、上面部aが肉薄であるが十分な強度を有し、軽い。すなわち、スライドパネル13を免震部パネル11と同一構造形式とすることができて、スライドパネル13の強度を免震部パネル11と同一の高い強度にすることができる。
【0018】
上記構成により、図3(a)に示す免震部パネル11と図3(b)に示すボーダー部パネル12と図3(c)に示すスライドパネル13は、同一の構造形式のアルミダイキャスト成形体であり、上面部aの上面から下面着座面(矩形外周壁部bと「井」形内壁部cの下面)までの高さ寸法が同一である。
【0019】
免震部パネル支持手段16は、基礎床14の中央部に設置される免震装置15の免震構造部材15a上に立設される。該免震部パネル支持手段16は、支持脚本体16aと、さらに支持脚本体16a上に立ち上げられる免震部パネル用支持キャップ16bとからなる。免震部パネル用支持キャップ16bは、上端にパネル受承板16b’を備えている。パネル受承板16b’は、免震部パネル11の端部(コーナー部)を受承するとともに、スライドパネル13の免震部パネル寄りの端部(コーナー部)13bを受承する。パネル受承板16b’は、四隅に係止用立ち上がり片部16b”を有する。
【0020】
係止用立ち上がり片部16b”は、上端がスライドパネル13のコーナー方向にほぼ水平となるようにL形に折れ曲がっている。係止用立ち上がり片部16b”は、スライドパネル13の下面コーナーの係止用凹部fへ深く入り込み非接触状態に位置する。この係止用立ち上がり片部16b”の係止用凹部fへの入り込みは、従来と変わらないが、従来技術との相違点として、係止用立ち上がり片部16b”の上端がスライドパネル13のコーナー方向にほぼ水平となるようにL形に折れ曲がっている点を挙げることができる。
係止用立ち上がり片部16b”がL形であるので、地震時に地震の縦揺れが起きても、スライドパネル13の免震部パネル寄りの端部が免震部パネル支持手段から浮き上がると、係止用立ち上がり片部16b”の水平部の先端がスライドパネル13を係止し、スライドパネル13が完全な浮き上がり状態になりにくく、スライドパネル13が免震部パネル支持手段16のパネル受承板16b’から脱落する惧れが少ない。また、係止用立ち上がり片部16b”がL形であるので、地震が収まった後、スライドパネル13のずれを戻す働きをして、スライドパネル13と免震部パネル11との隙間が大きく開かないように抑制し、スライドパネル13が元の位置に戻り易い。従って、地震が収まった後のスライドパネル13の位置修正が容易になる。なお、係止用立ち上がり片部16b”の内側にばね(不図示)を付設することにより、地震が収まった後、該ばね(不図示)がスライドパネル13のずれを戻す働きをして、スライドパネル13と免震部パネル11との隙間を閉じるようにすることもできる。
【0021】
ボーダー部パネル支持手段17は、基礎床14に立設される。ボーダー部パネル支持手段17は、支持脚本体17aと、さらに支持脚本体17a上に立ち上げられるボーダー部パネル用支持キャップ17bとからなる。ボーダー部パネル用支持キャップ17bの上端には、パネル受承板17b’が備えられ、該パネル受承板17b’でボーダー部パネル12の建屋壁面18寄りの下面を受承する。この支持構造部分は、従来と変わらずに設けることができる。
【0022】
下床板21は、薄肉鋼板(ステンレス鋼板等を含む)よりなり、免震部パネル11とボーダー部パネル12との免震用隙間に設けられ、ボーダー部パネル12とスライドパネル13を受承する。
下床板21は、ボーダー部パネル12のスライドパネル寄りの端部下面12aを受承すると共に、スライドパネル13のボーダー部パネル寄りの略半部を受承する。楔ブロック22は、アルミニウムの押出成形体又は他の成形体であり、ボーダー部パネル12とスライドパネル13との間に位置され、下床板21にねじ25で固定されている。楔ブロック22は、スライドパネル13側に向かって傾斜下降する上向き傾斜面22aを有する。楔ブロック22の上向き傾斜面22aは、スライドパネル13に設けた楔ピース23の楔ブロック22に向かって傾斜上昇する下向き傾斜面23aと面対偶している。
【0023】
下床板21を支持するために、基礎床14上の免震用隙間のスライドパネル寄り位置及び中程に対応しスライドパネル支持手段19,20が立設されている。スライドパネル支持手段19,20は、それぞれ、支持脚本体19a又は20aと、さらに支持脚本体19a又は20a上に立ち上げられるスライドパネル用支持キャップ19b又は20bと、スライドパネル用支持キャップ19b及び20bによって横架されるC形チャンネル材を用いてなる下地フレーム19c又は20cとからなる。そして、下地フレーム19c,20c上に上述した下床板21が横架され、該下床板21が楔ブロック22と共にねじ25により下地フレーム20cに固定されている。下床板21の免震部パネル側の端部は、下方へ垂直に折れ曲がっている。
従って、スライドパネル13は、震部パネル支持手段16とスライドパネル支持手段19,20により支持されるので、必要十分な支持脚強度を備える。
【0024】
楔ブロック22とボーダー部パネル12との間、及び免震部パネル11とスライドパネル13との間に隙間閉塞用ゴム26,27が挟設されている。このゴム26,27は、地震時におけるスライドパネル13の揺動容易性を向上する役目を果し、また地震後にスライドパネル13の元位置への復元性を向上する役目を果たす。
【0025】
〔地震時の作用〕
地震時に水平方向の大きな横揺れが起こると、図2において、免震部パネル支持手段16が、ボーダー部パネル支持手段17及びスライドパネル支持手段19,20に対して相対的に接近する状態が生じる。このとき、横揺れが大きいと、図5(a)に示すように、楔ブロック22の上向き傾斜面22aと、楔ピース23の下向き傾斜面23aとの密着面において楔作用によりスライドして、スライドパネル13のボーダー部パネル側が持ち上がり変動する。さらに横揺れの大きいときは、図5(b)に示すように、スライドパネル13が、ボーダー部パネル12の上に乗り上げる。
【0026】
そして、図5(b)に示す状態で、垂直方向の大きな縦揺れを伴なうと、免震部パネル支持手段16が、ボーダー部パネル支持手段17及びスライドパネル支持手段19,20に対して相対的に低くなる状態が生じる(図5(c)の)状態に示すように、スライドパネル支持手段20によりスライドパネル13のボーダー部パネル側が持ち上げられるが、飛び跳ねは起こらない。このとき、スライドパネル13が下床板21と密着しない(隙間Sがある)ので、該下床板21によりスライドパネル13が突き上げられる事態が起こらない。
【0027】
さらに大きな縦揺れが起こり、免震部パネル支持手段16が、ボーダー部パネル支持手段17及びスライドパネル支持手段19,20に対してさらに相対的に低くなり、スライドパネル13がスライドパネル支持手段20と密着する場合がありうるが、高さ変動は、スライドパネル13が免震部パネル支持手段16の係止用立ち上がり片部16b”よりも高く持ち上がるまでには至らないとともに、免震部パネル支持手段16の係止用立ち上がり片部16b”がスライドパネル13の係止用凹部fの壁面に当接し摩擦作用により浮き上がりを防止する。
【0028】
また地震時に水平方向の大きな横揺れが起きて、図2に示す状態から、免震部パネル支持手段16が、ボーダー部パネル支持手段17及びスライドパネル支持手段19,20に対して相対的に離隔する状態が生じる。このときは、図6に示すように、スライドパネル13がボーダー部パネル12から離隔するように下床板21上を相対的にスライドするが、外れて脱落するまでは変動しない。図6に示すように、スライドパネル13がボーダー部パネル12から離隔した状態で大きな縦揺れが起きても、スライドパネル13が免震部パネル支持手段16の係止用立ち上がり片部16b”よりも高く持ち上がるまでには至らない。地震が収まると、図2に示す状態に戻る。
【0029】
上記構成の実施の形態によれば、ボーダー部パネル12の下面を免震部パネル11の下面と合わせられ、下床板の板厚寸法は、パネルよりも大幅に小さくなるから、ボーダー部パネル12の下側空間の高さを従来よりも大きく取ることができる。また、ボーダー部パネル12の上に、特許文献6のようにレベルプレートを設けることはしないからコストを低減できる。スライドパネル13は、免震部パネル11と同一パネルの一端を加工し、楔ピース23を接続固定して構成できるので、免震部パネル11と同一の金型で製造でき、大きな金型を一つ省くことができるから、楔ブロック22と楔ピース23と金型を新たに必要とするが、全体として金型コストを低減できる。免震部パネル11とボーダー部パネル12とスライドパネル13のいずれもパネル支持手段に載置するだけで設置できるので施工が容易迅速に行える。
【0030】
〔その他の実施の形態〕
本発明は上記実施の形態にこれに限定されるものでなく、特許請求の範囲に記載された発明の要旨を逸脱しない範囲内での種々、設計変更した形態を技術的範囲に含むものである。上述した実施の形態1では、ボーダー部パネル12は建屋壁面18とスライドパネル13との間の1つ有する場合を示したが、免震部パネル11から建屋壁面18までの距離が大きくて免震部パネル11に隣接してスライドパネル13を設けても、スライドパネル13から建屋壁面18までの距離がまだ大きくて、スライドパネル13から建屋壁面18までの間に複数のパネルを敷き詰めて、その中、建屋壁面18に接するパネルをボーダー部パネル12と称し、他のパネルを固定部パネルと称する場合も、本発明の技術的範囲に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】実施の形態1に係る免震フリーアクセスフロアのスライドパネル及びその設置構造を説明するための正面図である。
【図2】図1の要部拡大図である。
【図3】(a)は免震部パネルの断面図、(b)はボーダー部パネルの断面図、(c)はスライドパネルの断面図である。
【図4】スライドパネルの一例を示す下面図である。
【図5】地震時のスライドパネルの変動を説明するための図である。
【図6】地震時のスライドパネルの他の変動を説明するための図である。
【符号の説明】
【0032】
10 免震フリーアクセスフロアのスライドパネル設置構造
11 免震部パネル
12 ボーダー部パネル
12a スライドパネル寄りの端部下面
13 スライドパネル(免震フリーアクセスフロア用スライドパネル)
13a 楔ブロック寄りの端部
13b 免震部パネル寄りの端部
f 係止用凹部
14 基礎床
15 免震装置
16 免震部パネル支持手段
16a 支持脚本体
16b’ パネル受承板
16b” 係止用立ち上がり片部
17 ボーダー部パネル支持手段
18 建屋壁面
19 スライドパネル支持手段
20 スライドパネル支持手段
21 下床板
22a 上向き傾斜面
22 楔ブロック
23 楔ピース
23a 下向き傾斜面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建屋の基礎床に免震装置を設置しこの免震装置上に敷設される免震部パネルを地震時に前記免震装置の働きにより上下・水平方向に免震させる免震フリーアクセスフロアにおいて、前記免震部パネルと、基礎床のボーダー部に立設されたボーダー部パネル支持手段に支持されたボーダー部パネルとの間の免震用隙間を閉塞して設けられ地震時にスライドするアルミダイキャスト製のスライドパネルであって、
矩形状に薄肉な上面部と、前記上面部の下面周端部より垂下する外周壁と、前記外周壁の少なくとも前記免震部パネル側の一側に所要寸法離隔して前記上面部の下面周端部より垂下する単数又は複数の内周壁と、前記上面部の下面適宜位置に垂下する補強用リブと、を備えてダイキャスト製造され、
ボーダー部パネル寄りの端部には、該端部に向かって下面より傾斜上昇する下向き傾斜面を有する楔ピースが接続固定され、
免震部パネル寄りの下面コーナー部には、前記外周壁と前記内周壁とで囲まれて形成され、免震部パネル支持手段のパネル受承板の係止用立ち上がり片部が侵入する係止用凹部を備えている、
ことを特徴とする免震フリーアクセスフロア用スライドパネル。
【請求項2】
いずれも同一の厚みとなるようにダイキャスト製造される、免震部パネルと、ボーダー部パネルと、前記免震部パネルと前記ボーダー部パネルとの間の免震用隙間を閉じる請求項1の免震フリーアクセスフロア用スライドパネルとを備え、
前記免震部パネルが建屋の基礎床の中央部に設置される免震装置上に立設される免震部パネル支持手段で支持され、
前記ボーダー部パネルの建屋壁面寄りの下面が前記基礎床のボーダー部に立設するボーダー部パネル支持手段で支持され、
前記基礎床上の前記免震用隙間のスライドパネル寄り及び隙間中程に対応しスライドパネル支持手段が立設され、両スライドパネル支持手段の上に下床板が固定され、
前記下床板で前記ボーダー部パネルのスライドパネル寄りの端部下面が支持されると共に、スライドパネル側に向かって傾斜下降する上向き傾斜面を有する楔ブロックが前記ボーダー部パネルに隣接載置され固定され、
前記スライドパネルのボーダー部パネル寄りの端部に接続固定された前記楔ピースの下向き傾斜面と前記楔ブロックの上向き傾斜面とを面対偶させて該スライドパネルの楔ブロック寄りの略半部が前記下床板上に載置され、かつ該スライドパネルの免震部パネル寄りの端部が前記免震部パネル支持手段に支持される、
ことを特徴とする免震フリーアクセスフロアのスライドパネル設置構造。
【請求項3】
前記スライドパネルが、下面コーナー部に係止用凹部を有し、
前記免震部パネル支持手段が、上端に備えるパネル受承板に、垂直に立ち上がり前記係止用凹部に深く入り込んでから該スライドパネルのコーナー方向にほぼ水平に折れ曲がる係止用立ち上がり片部を延在一体に備えている、
ことを特徴とする請求項2に記載の免震フリーアクセスフロアのスライドパネル設置構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−108487(P2009−108487A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−278849(P2007−278849)
【出願日】平成19年10月26日(2007.10.26)
【出願人】(000005256)株式会社アーレスティ (44)
【Fターム(参考)】