説明

免震装置

【課題】簡単な構成にして建築物の免震機能を向上させることができる免震装置を提供する。
【解決手段】免震装置は、基礎2と木造家屋の土台4との間に介装され、基礎2に対してアンカーシャフト6を介して固定され、その上面に凹状の受け面16を有する固定受け台10と、土台4の受け枠として機能し、その下面に受け面16に受け止められる凸状の可動面38を有する可動受け台24と、可動受け台24とアンカーシャフト6との間に架け渡され、可動受け台24のための減衰ばね機構45とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は建築物のための免震装置、特に木造家屋に好適した免震装置に関する。
【背景技術】
【0002】
阪神淡路大地震や新潟地震等の事例からも明らかなように、近年、その震度が5を超えるような大地震が多数発生する傾向がある。このような大地震に対処するため、高層ビル等の新たな建築物には種々の免震装置が組み込まれ、これら免震装置は大地震に対しても優れた耐震性を発揮するものと考えられている。
しかしながら、一般の木造家屋への免震装置の組込み率、即ち、その普及率は低い。これは、高層ビル用の免震装置を木造家屋に適用すれば、木造家屋の基礎構造に大幅な変更が要求されることに因る。
【0003】
このような事情から木造家屋に適した免震装置が開発され、この種の免震装置は木造家屋の基礎とその木製の土台との間に介装された弾性円筒を備えている(例えば、特許文献1参照)。このような弾性円筒は、地震の発生時、基礎から土台に伝達される水平力(地震の横波)に関し、その免震機能を有効に発揮するものと考えられる(特許文献1の図4参照)。
【特許文献1】特開平11-62309号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の免震装置の場合、弾性円筒内にはその中央に棒状体が配置されているため、このような棒状体は弾性円筒の上下の弾性圧縮を拘束し、地震の発生時、基礎から土台に伝達される垂直力(地震の縦波)に関し、その免震機能を有効に発揮することができない。
本発明は上述の事情に基づいてなされたもので、その目的とするところは、地震に起因した水平力及び垂直力の両方に関して、簡単な構成により免震機能を効果的に発揮し、しかも、耐久性の点でも優れた免震装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するため、本発明は固定ベースと建築物の支持台との間に設けられる免震装置に適用され、本発明の免震装置は、固定ベースから立設され、上方に向けて延びる軸部を有したアンカー部材と、このアンカー部材に支持され、その上面に凹状の受け面を有し、この受け面からアンカー部材の軸部を上方に突出させた固定部材と、支持台に取付けられ、その下面にアンカーシャフトを遊挿させた状態で、固定部材の受け面に受け止められる凸状の可動面を有し、この可動面が前記受け面に案内されることで、固定部に対する水平方向及び上下方向の相対変位が許容された可動部材と、アンカー部材の軸部と可動部材との間に架け渡して設けられ、前記可動部材が相対変位するとき、受け面に対する可動面の接触の維持し且つ可動部材の相対変位を減衰させる減衰ばね機構とを備える(請求項1)。
【0006】
上述の免震装置によれば、地震の振動を受け、固定部材に対して可動部材が水平方向及び上下方向の少なくとも一方に相対変位するとき、ここでの相対変位は減衰ばね機構のばね力に抗してもたらされる。ここでの付勢力は固定部材の受け面と可動部材の可動面との接触を維持し、また、可動部材を介して建築物の支持台に伝達されるようとする地震の振動エネルギは受け面と可動面との摩擦抵抗により消費される一方、減衰ばね機構に吸収される。この結果、建築物への実際の振動入力が低減される。
【0007】
具体的には、固定部材の受け面及び可動部材の可動面は球面の一部(請求項2)、テーパ面(請求項3)、又は、環状をなす断面円弧面(請求項4)から形成することができる。
好ましくは、減衰ばね機構は、アンカー部材の軸部の回りに上下に重ね合わして配置された複数の皿ばねを含むことができる(請求項5)。この場合、上下に隣接する皿ばねは同一の向き又は互いに逆向きに配置することができる。
【0008】
更に、減衰ばね機構はアンカー部材の軸部に上下方向位置を調整可能にして取付けられ、最上位に位置する皿ばねのためのばね座を含んでいるのが好ましい(請求項6)。
減衰ばね機構を構成する複数の皿ばねは、上下方向の振動エネルギを吸収するのみならず、アンカーシャフトの径方向への相対変位により水平方向の振動エネルギもまた吸収する。また、ばね座の上下方向位置は、減衰ばね機構、即ち、皿ばねのセット荷重を設定する。
【0009】
具体的には、固定ベースはコンクリート製の基礎であり、支持台は建築物としての木造家屋の木製土台である(請求項7)。
【発明の効果】
【0010】
請求項1〜7の免震装置は、固定部材の凹状の受け面にて可動部材の凸状の可動面を受け止める一方、固定部材に対し減衰ばね機構を介して可動部材を押し付けるだけで簡単な構成で、地震の振動エネルギを効果的に消費及び吸収し、建築物への優れた免震機能を発揮する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1は、木造家屋に適用した第1実施例の免震装置1を示し、この免震装置1は、木造家屋におけるコンクリート製の基礎2と木製の土台4との間に複数介装されている。免震装置1はアンカー部材としてのアンカーシャフト6を備え、このアンカーシャフト6は基礎2から上方に向けて鉛直に立設され、その上端部に螺子部8を有する。
基礎2上には固定部材として円盤状の固定受け台10が配置されているが、本実施例の場合、固定受け台10と基礎2との間にはレベル調整器12が挟み込まれている。このレベル調整器12は固定受け台10の上下レベルを微少に調整するものであり、具体的には、レベル調整器12には本出願と同一の発明者により開発された可変スペーサ(特開2006-291712号公報)を使用することができる。
【0012】
固定受け台10はポリプロピレン等の合成樹脂からなる一体成形品であり、その中央に挿通孔14を有する。この挿通孔14はアンカーシャフト6を挿通させるために使用され、図2から明らかなよう長円形をなしている。固定受け台10の上面は凹状且つ円形の受け面16として形成されており、本実施例の場合、受け面16は球面の一部から形成され、浅い丸皿の底面形状なす。更に、受け面16の中央には挿通孔14に連なる円形の有底穴18が形成され、この有底穴18に共に金属製の締結ナット20及び座金21が配置されている。締結ナット20はアンカーシャフト6に螺着され、座金21を介して基礎2に固定受け台10を締付けており、これにより、固定受け台10は基礎2上に固定されている。
【0013】
更に、固定受け台10はその下部に複数の脚22を有し、これら脚22は固定受け台10の周方向に等間隔を存して配置されている。なお、脚22は必ずしも必要ではないが、脚22は地震の発生時に弾性変形し、固定受け台10に上下及び水平方向の変位を許容し、固定受け台10に加わる衝撃を緩和するうえで有用である。
固定受け台10上には可動部材として可動受け台24が載置されており、この可動受け台24はその上部にて土台4と結合されている。詳しくは、可動受け台24もまた固定受け台10と同様にポリプロピレン等の合成樹脂からなる一体成形品であり、一対の側壁26を有する。これら側壁26は図1でみて土台4の幅方向に離間し、側壁26の高さ及び側壁26間の間隔はそれぞれ土台4の高さ寸法及び幅寸法にほぼ等しい。
【0014】
一対の側壁26間には矩形の中間仕切壁28が設けられ、この中間仕切壁28は側壁26の高さ方向でみて中央よりも下側に位置付けら、一対の側壁26を相互に連結する。中間仕切壁28は一対の側壁26と協働し、図1から明らかなように土台4のための受け枠を形成している。
各側壁26には複数の差込み孔30が形成されており、これら差込み孔30を通じて止め螺子32が土台4内にそれぞれねじ込まれ、これにより、可動受け台24は土台4に対して固定されている。
【0015】
なお、図1中、止め螺子32は各側壁26に1本ずつしか示されていない。また、図3に示されるように差込み孔30は一対の側壁26間でみたとき、非対称に分布されているのが好ましく、一方の側壁26の差込み孔30と他方の側壁26の差込み孔30とが同一の線上に位置付けられてしまうことはない。
更に、一対の側壁26間には中間仕切壁28の下方に底壁34が設けられている。この底壁34は中間仕切壁28と同様な矩形形状をなし、図4に示されるように一対の側壁26の下端を互いに連結している。それ故、図1から明らかなように可動受け台24はその下部に左右が側壁26により区画され、そして、上下が中間仕切壁28及び底壁34により区画されたばね収容室36を有する。なお、土台4の長手方向に離間したばね収容室36の両端はそれぞれ開口されている。
【0016】
底壁34の下面には凸状且つ円形の可動面38が形成されており、この可動面38は下方に向けて突出している。可動面38は前述した固定受け台10の受け面16と同様な球面の一部から形成され、受け面16に密着可能である。図4から明らかなように、可動面38は、一対の側壁26間の距離にほぼ等しい最大外径を有するが、この最大外径は固定受け台10における受け面16の最大外径よりも所定の寸法だけ小さい。
【0017】
また、可動面38の中央、つまり、その下部には円孔40が貫通して形成されており、この円孔40は可動面38と同心に配置され、固定受け台10における有底穴18の外径よりも大きな内径を有する。それ故、図1から明らかなようにアンカーシャフト6は遊びを存して円孔40を貫通し、ばね収容室36内に延びている。
更に、底壁34の内面には複数のリブ42が設けられている。これらリブ42は可動面38に対応した環状領域に位置付けられ、可動面38の周方向に等間隔を存して配置されている。各リブ42は円孔40側を向いた内端面を有し、この内端面にその上側の角部を切り欠いたステップ44が形成されている。各リブ42のステップ44は同一の水平な円上に配置された支持座を形成しており、この支持座は水平面及び垂直面を有する。なお、上述したリブ42は、これらリブ42が凸面38の周方向に連続するような環状の台座に置き換えることも可能である。
【0018】
可動受け台24とアンカーシャフト6の間、即ち、前述したばね収容室36内に減衰ばね機構45が収容されており、この減衰ばね機構45について以下に詳述する。
各リブ42のステップ44には環状の座金46が載置されており、この座金46はステップ44の段差(ステップ44の垂直面の長さ)よりも薄い厚みを有し、その内径は円孔40の内径よりも小さいが、アンカーシャフト6の外径よりも十分に大きい。それ故、図1に示されるようにアンカーシャフト6は遊びを存して座金46を貫通し、座金46の内周とアンカーシャフト6の外周との間には環状の隙間が確保されている。このような隙間はアンカーシャフト6及び可動受け台24に関し、これらアンカーシャフト6及び可動受け台24の水平方向の相対変位を許容し、このような相対変位の最大量を規制する。
【0019】
更に、アンカーシャフト6の周囲には減衰ばねとしての小径皿ばね48及び大径皿ばね50が配置され、これら小径皿ばね48及び大径皿ばね50は同一の向きにして上下に重ね合わされている。大径皿ばね50はその外周縁が前述したステップ44の垂直面に当接する外径を有し、その内径は座金46の内径に等しい。これに対し、小径皿ばね48は大径皿ばね50の内径よりも大きな内径を有し、その内径はアンカーシャフト6の外径よりも若干大きい。
【0020】
それ故、図1から明らかなように大径皿ばね50はその外周縁がステップ44の垂直面に当接した状態で座金46上に配置され、この座金46は大径皿ばね50のためのばね座となっている。一方、小径皿ばね48はその外周縁部が大径皿ばね50の内周縁部とオーバラップした状態で大径皿ばね50上に重ね合わされている。
更に、アンカーシャフト6の螺子部8にはその上端部に調整ナット52が螺着され、この調整ナット52の下面に小径皿ばね50の内周端が当接されている。それ故、調整ナット52は小径皿ばね48のためのばね座となり、このような調整ボルト52がアンカーシャフト6の軸線方向に進退されることで、小径及び大径皿ばね48,50からなる減衰ばねのセット荷重が調整可能となっている。
【0021】
上述の説明から明らかなように可動受け台24はアンカーシャフト6に対し、上述の減衰ばねを介して接続されているだけであるから、減衰ばねはその上下方向の伸縮により、アンカーシャフト6の軸線方向、即ち、上下方向に関して固定受け台10と可動受け台24との相対変位を許容する。また、上下の皿ばね48,50からなる減衰ばねは、アンカーシャフト6に対して、その径方向に相対移動可能であるから、固定受け台10及び可動受け台24は水平方向にも、相対変位が許容されている。
【0022】
なお、可動受け台24の中間仕切壁28には円孔40と同軸にして開口54が形成されており、この開口54は座金46の内径とほぼ同一の内径を有する。それ故、アンカーシャフト6の上端と中間仕切壁28との干渉が開口54によって避けられることから、これにより、可動受け台24の高さ寸法を低く抑えることができ、また、アンカーシャフト6への調整ボルト52の組み付けを容易にすることができる。
【0023】
上述した免震装置1が基礎2と土台4との間に介装されていれば、地震の発生時、図5に示されるように可動受け台24は土台4とともに、減衰ばね(皿ばね48,50)の付勢力に抗しながら固定受け台10、即ち、基礎2のアンカーシャフト6に対して、水平方向及び上下方向への相対変位が許容される。
それ故、可動受け台24が水平方向に相対変位する際、可動受け台24の可動面38と固定受け台10の受け面16との接触は減衰ばねにより維持され、地震の振動エネルギのうち、その水平方向の成分は可動面38と受け面16との摩擦抵抗により効果的に消費され、また、図5から明らかなように小径皿ばね48及び大径皿ばね50がその径方向に相対的に摺動することで、これら上下の皿ばね48,50が上下方向に圧縮され、これら皿ばね48,50に吸収される。
【0024】
一方、地震の振動エネルギを受け、固定受け台10に対し、可動受け台24が相対的に浮き上がる際には小径及び大径皿ばね48,50が共に圧縮されることで、これら皿ばね48,50は振動エネルギの上下方向の成分をも吸収することができる。
この結果、第1実施例の免震装置1は地震に起因した振動エネルギを効果的に消費且つ吸収し、木造家屋に対する免震機能を効果的に発揮する。
【0025】
なお、地震が終息すれば、減衰ばね(皿ばね48,50)の復元力により可動受け台24はその可動面38が固定受け台10の受け面16に案内され、図1に示す元の位置まで自動的に復帰する。
本発明は上述の第1実施例に制約されるものではなく、種々の変形が可能であり、本発明の他の実施例について、以下に説明する。なお、他の実施例を説明するにあたり、第1実施例及び既に説明した実施例の部材及び部位と同様な機能をなす部材及び部位には同一の参照符号を付し、それらの説明は省略する。
【0026】
図6は、第2実施例の免震装置1を示す。
図6の免震装置1の場合、固定受け台10の上面は、球面の一部からなる受け面16ではなく、雌テーパ状の浅い受け面56として形成され、そして、可動受け台24の下面は受け面56に対応した雄テーパ状の可動面58として形成されている。このような受け面56及び可動58の組み合わせにあっても、第2実施例の免震装置1は第1実施例と同様な免震機能を発揮することができる。
【0027】
また、図6に示されるように受け面56は環状の油溝60を有することができる。このような油溝60は、受け面56と可動面58との間に潤滑油を供給し、受け面56に対する可動面58の滑りを円滑にする。
更に、第1及び第2実施例の何れにあっても、減衰ばね機構45は上下の皿ばね48,50から構成されているが、これら皿ばね48,50に代えて円錐コイルばねを使用でき、また、アンカーシャフトの回りに配置された複数のコイルばね等から構成されていてもよい。
【0028】
図7は、第3実施例の免震装置1を示す。
第3実施例の場合、減衰ばね機構45は、上下の小径皿ばね48と大径皿ばね50との間に中径皿ばね49を更に含んでおり、この第3実施例から明らかなように減衰ばねを構成する皿ばねの枚数は2個に限られるものではない。
また、第3実施例の場合、前述したリブ42が減衰ばねのための下側のばね座となっており、座金46は必要不可欠なものではない。
【0029】
更に、第3実施例の場合、固定受け台10は上下の締結ナット62a,62b及び座金64を介してアンカーシャフト6に締結されている。この場合、座金64は固定受け台10の下側に配置され、固定受け台10を受け止めるための支持台として機能する。
従って、前述した可変スペーサ12の働きにより固定受け台10のレベル位置が上下に調整されても、固定受け台10は上下の締結ナット62a,62b間に座金64を介して締結されるから、アンカーシャフト6に対して安定して支持されることになる。
【0030】
図8は、第4実施例の免震装置1を示す。
第4実施例の場合、固定受け台10の中央にはねじ孔66が形成され、このねじ孔66にアンカーシャフト6が螺合されている。即ち、固定受け台10はアンカーシャフト6に直接に支持され、固定受け台10がアンカーシャフト6の回りに回転されることで、固定受け台10のレベル位置を上下に調整可能となっている。
【0031】
また、固定受け台10はねじ孔66の周囲に複数の差込み孔68を有することができ、これ差込み孔68に工具を差し込むことで、固定受け台10の回転操作を容易に行うことができる。
なお、図8に示されるように、第4実施例の固定受け台10は前述した脚22を有しておらず、その上面及び底面の双方ともに球面の一部からなり、固定受け台10の底面が可変スペーサ12に直接に支持されている。この場合、可変スペーサ12はその上面が固定受け台10の底に合致する凹状の支持面として形成されている。
【0032】
図9は、第5実施例の免震装置の可動受け台24を示す。
第5実施例の場合、側壁26の少なくとも一方には切欠70が形成されており、この切欠70は可動受け台24の上縁から下方に向けて延びている。このような切欠70が備えられていれば、第5実施例の免震装置1が土台4の交差部に配置されるとき、可動受け台10の存在に拘わらず、土台4での蟻継が可能となる。
【0033】
なお、図10に示されるように本発明の免震装置1は、基礎2と土台4との間に加えて、地中に埋設したアンカーシャフト6と基礎2との間にも設置することができる。
図11〜図19は第6実施例の免震装置を示す。
第6実施例の免震装置は、図1から明らかなように前述したアンカーシャフト6に代えてアンカー部材72を備えており、このアンカー部材72は基礎2の上面に配置される円形のベース板74と、このベース板74の中央から鉛直に立設された中空の螺子軸76とからなる。螺子軸76の外周面にはその全長に亘って螺子が切られ、螺子軸76はその下端にてベース板74に溶接されている。
【0034】
図12から明らかなようにベース板74は一対の貫通孔78a,78bを有し、これら貫通孔78を通じて基礎2内に固定ボルト(図示しない)をねじ込むことで、基礎2に固定することができる。
また、貫通孔78aはベース板74の径方向に延びる長孔に形成され、これに対し、貫通孔78bはベース板74の周方向に延びる長孔に形成される。
【0035】
更に、上述した固定ボルトはアンカーシャフト6と同様に基礎2に予め埋設されたアンカーシャフトであってもよく、この場合、ベース板74は固定ナット(図示しない)を介してアンカーシャフトに締結される。
一方、固定受け台10は円形形状をなす金属の皿形状をなし、その中央にはアンカー部材72の螺子軸76に対応した螺子孔80が貫通して形成され、更に、この螺子孔80にはその上側にパイプ82が同軸にして連なっている。このパイプ82は上方に向け鉛直に延び、アンカー部材72の螺子軸76よりも若干大きな内径を有する。それ故、固定受け台10はそのバイブ82に螺子軸76を挿通させ、螺子軸76と螺子孔80とを互いに螺合させることで、アンカー部材72に直接的に支持されている。なお、パイプ82はその下端にて固定受け台10に固定され、また、螺子軸76の上端はパイプ82から突出した状態にある。
【0036】
固定受け台10はその上面にプレス加工により形成された環状の凹所84を有する。この凹所84はその上面がパイプ82を囲む断面円弧状の受け面86として形成され、この受け面86にはテフロン(登録商標)又はグリスによる表面加工が施されている。
更に、図13に示されているように、受け面86にはその外周縁部に複数の固定孔88が貫通して形成されており、これら固定孔88は、固定受け台10の回転止めに使用される。即ち、固定受け台10とアンカー部材82のベース板74との間にはスペーサ(図示しない)が配置され、このスペーサに固定孔88を通じて固定ピン(図示しない)を打ち込むことで、固定受け台10の回転は阻止される。
【0037】
更に、受け面86にはその最深部に一対の水抜き孔90が形成され、これら水抜き孔90は固定受け台10の直交方向に互いに離間している。
一方、可動受け台24もまた固定受け台10と同様に金属製であって、上側台部分92及び下側台部分94から構成されている。図14から明らかなように上側台部分92は矩形形状の上側板96と、この上側板96の中央から上方に向けて立設された螺子軸98とからなり、この螺子軸98はその上部に螺子100を有する。なお、螺子軸98はその下端にて上側板96に溶接されている。
【0038】
それ故、図11に示されるように土台4にその下面から上側板96の螺子軸98をねじ込み、土台4の下面に上側板96を宛うことで、土台4に対する上側台部分92の結合が可能となっている。
更に、上側板96の各角部には貫通孔102がそれぞれ形成されており、これら貫通孔102は図15に示されるように、下側が小径となるテーパ孔である。
【0039】
一方、図16から明らかなように下側台部分94は中空の円筒形状をなし、その外径は前述した受け面86の外径よりも小さい。下側台部分94の内部は前述したばね収容室36として形成され、そして、下側台部分94はその上端に矩形状のアウタフランジ104を有する。このアウタフランジ104は上側板96と同一のサイズを有し、上側板96の下面に重ね合わされた状態で上側板96に結合される。即ち、アウタフランジ104の各角部には貫通孔102に合致する螺子孔106がそれぞれ形成され、これら螺子孔106はその上部に貫通孔102の延長部を形成するテーパ孔部、このテーパ孔部の下側に形成された雌螺子部とからなる。それ故、互いに合致した貫通孔102及び螺子孔106に皿螺子(図示しない)をねじ込むことにより、下側台部分94はアウタフランジ104を介して上側板96に結合されている。
【0040】
更に、下側台部分94はその下端に環状のインナフランジ108を有する。このインナフランジ108は下側台部分94内に突出し、固定受け台10のパイプ82よりも十分に大きな内径を有する。それ故、図1から明らかなように、固定受け台10のパイプ82はインナフランジ108との間に十分な遊びを存してばね収容室36内に配置されている。
上述したインナフランジ108は例えばプレス加工により、図16及び図17から明らかなように、その下面が凸状をなし且つ断面円弧形状の可動面110に形成され、下側台部分94、即ち、可動受け台24は可動面110にて、固定受け台10の受け面86上に支持されている。このような可動面110にも受け面86と同様にテフロン(登録商標)又はグリスによる表面加工が施されている。
【0041】
可動面110の曲率半径は受け面86の曲率半径よりも小さく、そして、最下位となる中央部での直径は受け面86における最深部での直径にほぼ一致する。
第6実施例での減衰ばね機構45は、アンカー部材72における螺子軸76の上端に螺合された調整ナット52と前述したインナフランジ108との間に配置されている。より詳しくは、減衰ばね機構45はインナフランジ108上に順次積み重ねられ、且つ、固定受け台10のパイプ82を囲む大、中,小の座金112,114,116を備え、大座金112は下側台部分94の内径にほぼ等しい外径を有する。そして、座金112,114,116はこの順序にて段階的に減少する内径を有し、また、各座金の表面にはテフロン(登録商標)又はグリースによる表面加工が施されている。
【0042】
更に、最上位置の小座金116上には例えば3枚の皿ばね118が固定受け台10のパイプ82を囲み、且つ、その上下の向きを交互にして積み重ねられている。これら皿ばね118は同一のサイズであって、小座金116の外径よりも小さい外径を有し、その内径はパイプ10の外径にほぼ等しい。
更にまた、最上位の皿ばね118と調整ナット52との間には座金120及び皿ばね122が配置されており、これら座金120及び皿ばね122は皿ばね118よりも小径である。
【0043】
上述した第6実施例の免震装置にあっても、地震が発生したとき、図18に示されるように固定受け台10に対して可動受け台24が水平方向及び上下方向の少なくとも一方に相対変位し、また、減衰ばねを構成する皿ばね118,122が収縮することで、地震の振動エネルギを効果的に減衰且つ吸収することができる。
また、第6実施例の場合、固定受け台10の受け面86は断面円弧形状の環状溝からなる凹所であり、そして、可動受け台24の可動面110は断面円弧形状の環状凸部であるので、可動受け台24が水平方向に相対変位する際、可動受け台24はアンカー部材72における螺子軸76の両側にて固定受け台10に案内されることから、安定した相対変位が可能となる。また、この際には、3枚の座金112,114,116が互いに摺動することから、振動エネルギをより効率良く消費でき、免震装置の免震効果は更に高められる。
【0044】
なお、第6実施例の座金112,114,116は第1〜第5実施例の免震装置にも組込可能であり、また、第6実施例の場合、固定受け台10及び可動受け台24は前述した受け面86及び可動面110を免震装置の径方向に二重化した受け面及び可動面を有することもでき、更に、第1及び第2実施例の場合には、その受け面及び可動面を免震装置の周方向に多重化することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】第1実施例の免震装置を示した断面図である。
【図2】図1の免震装置における固定受け台の平面図である。
【図3】図1の免震装置における可動受け台の一部側面図である。
【図4】図1の免震装置における可動受け台の下面図である。
【図5】図1の免震装置が作動した状態を示す断面図である。
【図6】第2実施例の免震装置を示した断面図である。
【図7】第3実施例の免震装置を示した断面図である。
【図8】第4実施例の免震装置を示した断面図である。
【図9】第5実施例における免震装置の可動受け台を示した側面図である。
【図10】本発明の免震装置の他の適用例を示した図である。
【図11】第6実施例の免震装置を示した断面図である。
【図12】図11のアンカー部材を示した平面図である。
【図13】図11の固定受け台を示した平面図である。
【図14】図11の可動受け台を示した平面図である。
【図15】図14中、XV-XV線に沿う断面図である。
【図16】図11の可動受け台の断面図である。
【図17】図16の可動受け台の底面図である。
【図18】図11の免震装置が作動した状態を示すその一部の断面図である。
【符号の説明】
【0046】
2 基礎(固定ベース)
4 土台(支持台)
6 アンカーシャフト
10 固定受け台(固定部材)
16,56,86 受け面
24 可動受け台(可動部材)
38,110 可動面
42 リブ(ばね座)
44 ステップ(ばね座)
46 座金(ばね座)
45 減衰ばね機構
48,49,50 皿ばね(減衰ばね)
52 調整ナット(ばね座)
62 締結ナット
64 座金
66 ねじ孔
70 切欠
72 アンカー部材
76 螺子軸
112,14,116 座金
118,122 皿ばね(減衰ばね)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定ベースと建築物の支持台との間に設けられる免震装置において、
前記固定ベースから立設され、上方に向けて延びる軸部を有したアンカー部材と、
前記アンカー部材に支持され、その上面に凹状の受け面を有し、この受け面から前記アンカー部材の前記軸部を上方に突出させた固定部材と、
前記支持台に取付けられ、その下面に前記アンカー部材の前記軸部を遊挿させた状態で、前記固定部材の前記受け面に受け止められる凸状の可動面を有し、この可動面が前記受け面に案内されることで、前記固定部材に対する水平方向及び上下方向の相対変位が許容された可動部材と、
前記アンカー部材の前記軸部と前記可動部材との間に架け渡して設けられ、前記可動部材が相対変位するとき、前記受け面に対する前記可動面の接触を維持し且つ前記可動部材の相対変位を減衰させる減衰ばね機構と
を具備したことを特徴とする免震装置。
【請求項2】
前記受け面及び前記可動面は、球面の一部から形成されていることを特徴とする請求項1に記載の免震装置。
【請求項3】
前記受け面及び前記可動面はテーパ面から形成されていることを特徴とする請求項1に記載の免震装置。
【請求項4】
前記受け面及び前記可動面は環状をなす断面円弧面から形成されていることを特徴とする請求項1に記載の免震装置。
【請求項5】
前記減衰ばね機構は、前記アンカー部材の前記軸部の回りに上下に重ね合わして配置された複数の皿ばねを含むことを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の免震装置。
【請求項6】
前記減衰ばね機構は、前記アンカー部材の前記軸部に上下方向位置を調整可能にして取付けられ、前記皿ばねのためのばね座を更に含むことを特徴とする請求項5に記載の免震装置。
【請求項7】
前記固定ベースはコンクリート製の基礎であり、前記支持台は前記建築物としての木造家屋の木製土台であることを特徴とする請求項1〜6の何れかに記載の免震装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2008−2263(P2008−2263A)
【公開日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−135647(P2007−135647)
【出願日】平成19年5月22日(2007.5.22)
【出願人】(506144282)
【Fターム(参考)】