説明

免震装置

【課題】コストを低減できる構造で、しかも、積層ゴムに作用する引張力を低減させることで免震機能を失うことなく、アスペクト比の大きな建物等に適用することができる。
【解決手段】免震装置1は、上部免震基礎2Aと下部免震基礎2Bの 間に配設され、上部鋼板31を上部免震基礎2Aに固定させてなる積層ゴム3と、下部免震基礎2Bの上面に固定させた下部ベースプレート22と、積層ゴム3の下部鋼板32の側面に接触させた状態で、下部ベースプレート22に一体に固定した水平拘束プレート4とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超高層ビルや塔状の構造物などにおいて、地震動を低減させる免震装置に関する。
【背景技術】
【0002】
最近では免震建物の急速な普及とともに免震構造が採用されている。この免震装置としては、ゴム材料などからなる弾性体と鋼板とを上下方向に交互に積層した構造のいわゆる積層ゴムが多用されている。積層ゴムは、例えば構造物の基礎と、この基礎上に構築される構造物本体との間に介装され、地震等によって水平方向の大きな外力が入力されたときには、弾性体が水平方向に変形することによってその外力の構造物本体への伝達を軽減し、構造物本体が揺れるのを抑えるようになっている。この積層ゴムは、これを構成する弾性体が、上下方向の圧縮力に対する強度は十分に大きいものの引張力に対する強度が小さい。したがって、積層ゴムに上下方向の引張力が過大に作用すると、弾性体が損傷して免震装置としての機能を果たすことができなくなることがあった。
上下方向に大きな引張力が作用するケースとしては、例えば、超高層ビルや塔状の構造物など、幅に対する高さの比(アスペクト比、塔状比)が大きなものである場合等である。この場合、積層ゴムに許容値以上の引張力が作用しないよう、アスペクト比を4〜5程度に抑えなければならず、これが免震構造の設計上の大きな制約となっていた。
一方、近年では、建物はより高層化し、アスペクト比が高くなる傾向となっており、このような超高層建物にも免震性能を適用したいとの要求が高まっている。
そこで、積層ゴムの引張制限に対する解決方法として、積層ゴムに引張力を生じさせないようにする技術が、例えば特許文献1に提案されている。
特許文献1は、上下方向に二段に重ねた状態で配設される積層ゴムを互いに非接合状態とし、上段の積層ゴムの下面中央および下段の積層ゴムの上面中央に夫々凹部が形成され、この両凹部にキー部材(伝達部材)を嵌合させ、両積層ゴムが上下方向に拘束されない構成をなし、地震時などではこの積層ゴムがキー部材の嵌合部で上下方向に移動可能としたものである。
【特許文献1】特許第3671317号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1は、キー部材が上下方向に重なって配置される両積層ゴムに挟持されるようにして非固着状態で設けられている構成であり、少なくとも2つの積層ゴムが必要となることから、免震装置としてのコストが高くなるといった問題があった。
【0004】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、コストを低減できる構造で、しかも、積層ゴムに作用する引張力を低減させることで免震機能を失うことなく、アスペクト比の大きな建物等に適用することができる免震装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明に係る免震装置では、上下方向に設けられる第一基礎及び第二基礎の間に配設され、上下両端部に端部鋼板を備え、一方の端部鋼板を第一基礎に固定させてなる積層ゴムと、積層ゴムの他方の端部鋼板の側面に接触させた状態で、第二基礎に設けた水平拘束部材とが設けられていることを特徴としている。
本発明では、地震などによって本免震装置を備えた建物に水平方向の外力が入力されると、第一基礎と第二基礎との間で水平方向の相対変位が発生すると同時に建物の隅角部や連層壁の直下では、積層ゴムに上下方向の引張力が作用する場合がある。このとき、積層ゴムの他方の端部鋼板と第二基礎とが上下方向に互いに拘束されていないため、積層ゴムが上下方向に移動可能とされ、積層ゴムには過大な引張力が作用することがなくなる。そのため、積層ゴムには主に水平方向のせん断力と上下方向の圧縮力が作用する。
【0006】
また、本発明に係る免震装置では、第二基礎の積層ゴム側の端面にベースプレートを固定させ、他方の端部鋼板とベースプレートとの間に緩衝部材が設けられていることが好ましい。
本発明では、地震時に、積層ゴムが浮き上がり、再び着地するときに生じる衝撃を抑制することができる。
【0007】
また、本発明に係る免震装置では、水平拘束部材には、他方の端部鋼板の上下方向への移動を規制する係止部が設けられていることが好ましい。
本発明では、係止部を設けることで、積層ゴムの浮き上がり量が水平拘束部材の厚さ寸法より大きくなることを防止でき、他方の端部鋼板における水平抵抗力が無くなることを防止することができる。
【0008】
また、本発明に係る免震装置では、水平拘束部材は、複数に分割されてなり、係止部は、隣り合う水平拘束部材同士に連結されていることが好ましい。
本発明では、複数の水平拘束部材同士が係止部によって連結されて互いに力を伝達させる構造となっているので、地震時における水平方向の一方向に作用する外力(せん断力)に対して複数の水平拘束部材で抵抗することができ、1つの水平拘束部材における外力に対する抵抗力を小さくすることができることから、水平拘束部材を固定する固定ボルトの本数を少なくしたり、水平拘束部材の大きさ(例えば外力が作用する方向の長さ寸法)を小さくすることができるため、部材コストの低減を図ることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の免震装置によれば、水平方向の外力を第二基礎に確実に伝達させる構成であることから、水平方向の振動に対しては従来の免震装置と同様に免震効果を発揮することができる。
そして、積層ゴムの他方の端部鋼板を第二基礎に固定せず、上下方向の移動を可能とした構成であることから、地震等によって免震装置に上下方向の引張力が作用するときに積層ゴムが上下方向に移動し、積層ゴムに作用する上下方向の引張力を低減することができる。そのため、積層ゴムは、引張力による大きな応力が発生せず、損傷を抑制することができ、免震機能の低下を防ぐことができる。したがって、積層ゴムには許容値以上の引張力を生じさせないようにすることができ、従来では免震構造とするのが困難であった、例えばアスペクト比が6以上となる塔状建物などに免震装置を適用することができる。
また、ベースプレートに水平拘束部材を配置させるだけの簡易な構造であるうえ、従来のように2段以上の積層ゴムを設ける構造でないことから、部材のコストを低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の第一の実施の形態による免震装置について、図1乃至図5に基づいて説明する。
図1は本発明の第一の実施の形態による免震装置を示す立断面図、図2は図1に示す免震装置のA−A線断面図、図3は水平拘束プレートと積層ゴムとの設置状態を示す拡大図、図4は地震時の免震装置の挙動を示す立断面図、図5は地震時の積層ゴムの挙動を示す拡大図であって、図3に対応する図である。
【0011】
図1に示すように、本第一の実施の形態による免震装置1は、例えば塔状建物2の基礎部に設けられるものである。図1において、2A、2Bはそれぞれ塔状建物2を支持するための上部免震基礎(第一基礎)、下部免震基礎(第二基礎)を示し、免震装置1は上下部免震基礎2A、2Bの間に設けられている。
上部免震基礎2Aの下面(凹部2a)には上部ベースプレート21が、下部免震基礎2Bの上面2bには下部ベースプレート22(本発明のベースプレートに相当する)が取り付けられている。
そして、本免震装置1は、上下部ベースプレート21、22の間に配設された角型の積層ゴム3と、積層ゴム3の側面周部に接触させた状態で下部ベースプレート22の上面22aに一体に固定された水平拘束プレート4(水平拘束部材)とからなる。
【0012】
上下部ベースプレート21、22は、夫々、平板形状をなし、平面視で積層ゴム3より大きな所定の外形寸法を有している。
上部免震基礎2Aの下端部には、凹形状をなす凹部2aが形成され、さらに凹部2aの所定位置に袋ナット53が埋め込まれている。そして、上部ベースプレート21は、凹部2aに嵌合され、取付ボルト52を袋ナット53に螺合させることで上部免震基礎2Aに固定されている。
一方、下部ベースプレート22は、その下面22bから下方に向けて突出するように所定の長さ寸法をなす複数のスタッドジベル51、51、…を固着させ、そのスタッドジベル51、51、…を下部免震基礎2Bに埋め込んだ状態で固定されている。
【0013】
積層ゴム3は、従来と同様の構造で、金属等から形成されていて例えば平面視で略正方形状の平板をなす上部鋼板31(一方の端部鋼板に相当)と下部鋼板32(他方の端部鋼板に相当)との間に、ゴム材料などからなる弾性体33が挟み込まれた構成となっている。弾性体33は、上部鋼板31及び下部鋼板32よりも所定寸法だけ小さな断面積をなしている。
【0014】
そして、上部鋼板31は、その外周縁部において所定本数の取付ボルト52によって、上部ベースプレート21と共に上部免震基礎2Aに固定されている。すなわち、これにより、積層ゴム3と上部免震基礎2Aは、上下方向に互いに拘束された状態とされる。
一方、下部鋼板32は、ボルト等によって下部ベースプレート22に接合されておらず、これらは互いに上下方向に拘束されず上下方向の相対移動を許容する構成となっている。
【0015】
図2に示すように、水平拘束プレート4(4A、4B、4C、4D)は、略長方形状の平板をなし、積層ゴム3の下部鋼板32における各辺(四辺)の側面32aに接触した状態でガタツキがないように配置されている。そして、図3に示すように、水平拘束プレート4の厚さ寸法D1(上下方向の高さ寸法)は、後述する図5に示す積層ゴム3の浮き上がり量D2(上下方向の移動高さ寸法)より大きい寸法とされる。
また、水平拘束プレート4は、固定ボルト5、5、…によって下部ベースプレート22に固定され、下部ベースプレート22に設けた複数のスタッドジベル51(図1参照)を介して下部免震基礎2Bに地震力(水平方向のせん断力)を伝達することができる。なお、この固定ボルト5としては、高張力ボルトを用いることが好ましい。
【0016】
そして、図3に示すように、水平拘束プレート4の一方の側面4aと下部鋼板32の側面32aとの接触面Tは、めっき処理をしたり、ポリ4フッ化エチレンなどの低摩擦材(図示省略)を貼り付けることにより上下方向に大きな抵抗力をもたせないように構成されている。これにより、積層ゴム3に地震時等に引張軸力が生じたときには、積層ゴム3の浮き上がりに対する抵抗を少なくすることができる。
【0017】
次に、このような構成からなる免震装置1の作用について図4、図5などを参照して説明する。
図4に示すように、本免震装置1では、地震によって塔状建物2に水平方向(矢印E方向)の外力が入力されると、上部免震基礎2Aと下部免震基礎2Bとの間で水平方向の相対変位が発生する。そして、積層ゴム3は下部免震基礎2Bに対して非固定状態であり、積層ゴム3の下部鋼板32と下部ベースプレート22とが上下方向(即ち下部鋼板32と下部ベースプレート22とが上下方向において互いに離間する方向)に互いに拘束されていない。そのため、図5に示すように、相対変位による弾性体33の変形と共に、免震装置1の積層ゴム3に上向きの引張力が作用した場合には浮き上がる。これにより、下部鋼板32の下面32bと、下部ベースプレート22の上面22aとの間に所定の浮き上がり量D2の隙間が形成されることになる。したがって、積層ゴム3には、過大な引張力が作用することがなくなる。
【0018】
また、図1に示すように、本免震装置1では、水平拘束プレート4が固定ボルト5によって下部ベースプレート22に一体に固定されると共に、スタッドジベル51によって下部ベースプレートと下部免震基礎2Bとが固定されているため、積層ゴム3に生じる水平方向の相対変位を確実に下部免震基礎2Bに伝達することができる。つまり、水平拘束プレート4が下部鋼板32の水平方向の抵抗となり、下部鋼板32の移動が規制されることになる。そのため、積層ゴム3は、免震効果を発揮することができる。
このように、上下方向の相対変位を許容する免震装置1とすることによって、積層ゴム3には、主に水平方向のせん断力と上下方向の圧縮力が作用し、上下方向に作用する引張力がほとんど生じない構成とすることができる。
【0019】
上述のように本第一の実施の形態による免震装置では、水平方向の外力を下部免震基礎2Bに確実に伝達させる構成であることから、水平方向の振動に対しては従来の免震装置と同様に積層ゴム3の免震効果を発揮することができる。
そして、積層ゴム3の下部鋼板32を下部免震基礎2Bに固定せず、上下方向の移動を可能とした構成であることから、地震等によって免震装置1に上下方向の引張力が作用するときに積層ゴム3が上下方向に移動し、積層ゴム3に作用する上下方向の引張力を低減することができる。そのため、積層ゴム3は、引張力による大きな応力が発生せず、損傷を抑制することができ、免震機能の低下を防ぐことができる。したがって、積層ゴム3には許容値以上の引張力を生じさせないようにすることができ、従来では免震構造とするのが困難であった、例えばアスペクト比が6以上となる塔状建物2に免震装置1を適用することができる。
また、下部ベースプレート22に水平拘束プレート4を配置させるだけの簡易な構造であるうえ、従来のように2段以上の積層ゴムを設ける構造でないことから、部材のコストを低減することができる。
さらに、このような免震装置1は、例えば耐震壁の下方に設置することにより、耐震壁の剛性をコントロールすることも可能とされる。
【0020】
次に、本発明の第一の実施の形態の第一及び第二の変形例、第二乃至第四の実施の形態の免震装置について、図6乃至図12に基づいて説明するが、上述の第一の実施の形態と同一又は同様な部材、部分には同一の符号を用いて説明を省略し、第一の実施の形態と異なる構成について説明する。
図6は第一の実施の形態の第一変形例による免震装置を示し、図2に対応する図である。
図6に示すように、第一変形例による免震装置11は、平面視で円形状の積層ゴム3Aを使用したものであり、その下部鋼板32A及び下部ベースプレート22Aは平面視で正八角形状に形成されている。そして、水平拘束プレート4A〜4Hが、下部鋼板32Aの各辺をなす側面32aに接触する状態で設けられている。本免震装置11では、積層ゴム3の下部鋼板32Aに作用する水平方向の外力は水平拘束プレート4A〜4H及び下部ベースプレート22Aを介して下部免震基礎2Bに伝達されると共に、積層ゴム3が上下方向に移動可能とされる構成であることから、第一の実施の形態と同様に積層ゴム3に作用する引張力を低減することができる
【0021】
また、図7は第一の実施の形態の第二変形例による免震装置を示し、図1に対応する図である。
図7に示すように、第二変形例による免震装置12では、積層ゴム3の下部鋼板32と下部ベースプレート22との間に、例えばゴム材から形成されているゴムシート6(緩衝部材)が設けられている。なお、このゴムシート6は、下部鋼板32の下面32b或いは下部ベースプレート22の上面22aに固着させておいてもかまわない。
このように、ゴムシート6を設けることで、地震時に、積層ゴム3が浮き上がり、再び着地するときに生じる衝撃を抑制することができる。
【0022】
次に、図8は本発明の第二の実施の形態による免震装置を示し、(a)はその立断面図、(b)はその拡大図である。
図8(a)に示すように、第二の実施の形態による免震装置13は、水平拘束プレート4の上部に、水平拘束プレート4の側面4aより積層ゴム3側に張り出したストッパ部材7(係止部)を設けたものである。
図8(b)に示すように、所定の地震動以上の大きな地震が発生して所定の地震動以上の揺れが生じて積層ゴム3に上向き(矢印F方向)の引張力が作用するとき、ストッパ部材7の積層ゴム側下面7aに下部鋼板32の周縁部上面32cが当接する。すなわち、このストッパ部材7を設けることで、上述した積層ゴム3の浮き上がり量D2が水平拘束プレートの厚さ寸法D1より大きくなることを防止でき、下部鋼板32の下面32bが水平拘束プレート4の上面4cより上方位置に変位し、下部鋼板32における水平抵抗力が無くなることを防ぐようにコントロールすることができる。
【0023】
また、図9は本発明の第三の実施の形態による免震装置を示し、(a)はその立断面図、(b)はその拡大図である。
図9(a)に示すように、第三の実施の形態による免震装置14では、第二の実施の形態のストッパ部材7(図8参照)に代えて、皿ばね8(本発明の係止部に相当する)によって下部鋼板32の上側に連結固定した張出し鋼板34の上下移動を規制するものである。
具体的には、下部鋼板32の上側に、水平拘束プレート4の上方を覆うようにして積層ゴム3から外方に向けて突出した張出し鋼板34が取付けボルト34aによって固定されている。図9(b)に示すように、張出し鋼板34には、水平拘束プレート4に固定される固定ボルト5Aと同軸となる位置に、固定ボルト5Aの径より大きな径で貫通した円孔34bが形成されている。そして、本免震装置14では、固定ボルト5Aを、下部ベースプレート22の下方より下部ベースプレート22と水平拘束プレート4とを挿通させ、さらに張出し鋼板34の円孔34bを通過させ、皿ばね8、座金9を介してナット5Bを締め込む構成となっている。
これにより、地震時に積層ゴム3が浮き上がったときに、張出し鋼板34は、皿ばね8に当接し、さらに皿ばね8を圧縮させた状態で係止される。そして、固定ボルト5Aに対するナット5Bの位置を任意に移動させることで、浮き上がり量D2を調整することができる。第三の実施の形態では、上述した第二の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0024】
また、図10は本発明の第四の実施の形態による免震装置の立断面図、図11は図10に示す免震装置のB−B線断面図、図12は同じくC−C線断面図である。
図10に示すように、第四の実施の形態による免震装置15は、第二の実施の形態と同様に水平拘束プレート41(水平拘束部材)の上部に、水平拘束プレート41の内側面41aから積層ゴム3側に張り出したストッパ部材71(係止部)を設けたものである。水平拘束プレート41とストッパ部材71とは固定ボルト5によって下部ベースプレート22に連結固定されている。なお、本第四の実施の形態では、図8に示すような積層ゴム3の下部鋼板32と下部ベースプレート22との間にゴムシート6が設けられていない構造とされる。
【0025】
図11に示すように、水平拘束プレート41は、平面視で積層ゴム3を囲うように四角形状をなすとともに、その各辺の略中間位置で分割されていて、その1つが平面視L型形状となっている。ここで、複数(本第四の実施の形態では4つ)に分割された個々の水平拘束プレート41を、符号41A、41B、41C、41Dで示す。
また、図12に示すように、ストッパ部材71は、水平拘束プレート41と略同形状の平面視四角形状をなし、その各辺の略角部で分割され、単体のストッパ部材71A、71B、71C、71Dが平面視略台形をなしている。つまり、隣り合う水平拘束プレート41(例えば符号41A、41B)同士がストッパ部材71(71A)によって連結されるため、4つに分割されたすべての水平拘束プレート41A〜41Dがストッパ部材71A〜71Dを介して連結された状態となっている。
【0026】
本第四の実施の形態では、水平拘束プレート41の四辺のうちいずれか一辺に地震による水平方向の外力(せん断力)が作用するとき、その一辺が二つの水平拘束プレート41(例えば符号41Aと41B)から構成されているので、二つの水平拘束プレート41A、41Bによってせん断力に抵抗することができる。具体的には、二つの水平拘束プレート41A、41Bを固定する固定ボルト5、5、…でせん断力に抵抗することになる。
そして、本免震装置15では、4つの水平拘束プレート41A〜41Dが、ストッパ部材71A〜71Dによって伝達可能に連結されているので、例えば二つの水平拘束プレート41A、41Bにせん断力が作用したときに、他の水平拘束プレート41C、41Dにもそのせん断力が伝達し、結果的にすべての水平拘束プレート41によってせん断力に抵抗できる構造となっている。そのため、1つの水平拘束プレート41におけるせん断力に対する抵抗力を小さくすることができることから、水平拘束プレート41を固定する固定ボルト5の本数を少なくすることができるうえ、水平拘束プレート41の幅寸法(せん断力が作用する方向の長さ寸法)を小さくすることができることから、部材コストの低減を図ることができる。さらに、第二の実施の形態と同様に積層ゴム3に上向きの引張力が作用するときの浮き上がりを、ストッパ部材71によって防止することができる。
【0027】
以上、本発明による免震装置の第一乃至第四の実施の形態、第一及び第二変形例について説明したが、本発明は上記の実施の形態、第一及び第二変形例に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、本第一乃至第三の実施の形態では下部ベースプレート22の上面22aに水平拘束プレート4を固定ボルト5で固定させた構成としているが、これに限らず、例えば固定ボルト5を使用せず、溶接などの固着手段によって下部ベースプレート22と水平拘束プレート4とが一体化されたものであってもかまわない。
また、本第一乃至第四の実施の形態の免震装置では、積層ゴム3の下部鋼板32と下部ベースプレート22とを非固定状態とし、下部ベースプレート22に水平拘束プレート4を設けた構成としているが、図13に示すように、上下方向を反転させた構成、すなわち積層ゴム3の上部鋼板31(他方の端部鋼板に相当)と上部ベースプレート21とを非固定状態とし、上部ベースプレート21の下側21aに、上部鋼板31の側面31aに接触させた状態で水平拘束プレート4を固定させた構造としてもよい。この場合も第一の実施の形態と同様の効果が得られる。
さらに、本第一の実施の形態では積層ゴム3の下部鋼板32を平面視正方形状、第一変形例では八角形状としているが、この平面形状に限定されることはない。また、水平拘束プレート4の形状についても実施の形態のように平面視で四角形状であることに限らず、下部鋼板32の形状に応じて、例えば第四の実施の形態のようなL型や、コノ字型、半円、円弧状に分割させてもよい。要は、水平拘束プレート4を下部鋼板32の側面32aに接触させ、下部鋼板32に作用する水平方向の外力を下部免震基礎2Bに伝達できればよいのである。
また、積層ゴム3の弾性体33の材質については、高い減衰効果が得られるのであれば、粘弾性体等、適宜最適なものを採用すればよい。
さらにまた、上部免震基礎2Aや下部免震基礎2Bの構成については何ら限定するものではなく、いかなるものであっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の第一の実施の形態による免震装置を示す立断面図である。
【図2】図1に示す免震装置のA−A線断面図である。
【図3】水平拘束プレートと積層ゴムとの設置状態を示す拡大図である。
【図4】地震時の免震装置の挙動を示す立断面図である。
【図5】地震時の積層ゴムの挙動を示す拡大図であって、図3に対応する図である。
【図6】第一の実施の形態の第一変形例による免震装置を示し、図2に対応する図である。
【図7】第一の実施の形態の第二変形例による免震装置を示し、図1に対応する図である。
【図8】本発明の第二の実施の形態による免震装置を示し、(a)はその立断面図、(b)はその拡大図である。
【図9】本発明の第三の実施の形態による免震装置を示し、(a)はその立断面図、(b)はその拡大図である。
【図10】本発明の第四の実施の形態による免震装置の立断面図である。
【図11】図10に示す免震装置のB−B線断面図である。
【図12】図10に示す免震装置のC−C線断面図である。
【図13】本発明のほかの実施の形態による免震装置を示す立断面図である。
【符号の説明】
【0029】
1 免震装置
2 塔状建物(建物)
2A 上部免震基礎(第一基礎)
2B 下部免震基礎(第二基礎)
21 上部ベースプレート
22 下部ベースプレート(ベースプレート)
3 積層ゴム
31 上部鋼板(一方の端部鋼板)
32 下部鋼板(他方の端部鋼板)
33 弾性体
4、41 水平拘束プレート(水平拘束部材)
5 固定ボルト
6 ゴムシート(緩衝部材)
7、71 ストッパ部材(係止部)
8 皿ばね(係止部)
T 接触面



【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下方向に設けられる第一基礎及び第二基礎の間に配設され、上下両端部に端部鋼板を備え、一方の端部鋼板を前記第一基礎に固定させてなる積層ゴムと、
前記積層ゴムの他方の端部鋼板の側面に接触させた状態で、前記第二基礎に設けた水平拘束部材と、
が設けられていることを特徴とする免震装置。
【請求項2】
前記第二基礎の前記積層ゴム側の端面にベースプレートを固定させ、前記他方の端部鋼板と前記ベースプレートとの間に緩衝部材が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の免震装置。
【請求項3】
前記水平拘束部材には、前記他方の端部鋼板の上下方向への移動を規制する係止部が設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の免震装置。
【請求項4】
前記水平拘束部材は、複数に分割されてなり、
前記係止部は、隣り合う前記水平拘束部材同士に連結されていることを特徴とする請求項3に記載の免震装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2008−25830(P2008−25830A)
【公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−148041(P2007−148041)
【出願日】平成19年6月4日(2007.6.4)
【出願人】(000002299)清水建設株式会社 (2,433)
【Fターム(参考)】