説明

免震装置

【課題】 柱頭免震などの中間階免震建物に適用でき、火災に対する防護性能を有するすべり支承を提供する。
【解決手段】 すべり支承のすべり板を、平常時にスライダーが接触している平面中央部とその外側の平面外周部に分割し、更に平面外周部は2部分以上に分割する。分割されたすべり板は、共通の固定用フレームに取り付けることによりすべり板表面のレベルを同一面に揃える。耐火被覆はスライダーおよびすべり板の平面中央部のみに施し、平面外周部は露出させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地震から構造物を安全に守ることのできる免震装置の中で、特にすべり型の免震装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
免震構造は、大地震時の強い地震動に対して構造物の揺れそのものを低減できるので、建物の構造骨組みだけでなく、家具や設備備品などの内部収容物を含めた建物全体の耐震安全性を高めることができる。
【0003】
免震構造を可能にしたものは、構造物の重量を支持しながら大きく水平変位できる免震装置が実用化されたためであり、これまでに積層ゴム系免震装置、すべり型免震装置、転がり型免震装置など、各種の免震装置が開発されている。
【0004】
免震構造の普及に伴い、免震構造建物の形式も多様化しており、当初は基礎と構造物の間に免震装置を配置する「基礎免震」タイプのみであったが、地下階と地上階の間に免震層を配置するもの、地上階の途中に免震層を配置するもの、あるいは建物の途中階の柱の中間や柱頭等に免震装置を配置する免震構造建物が出現している。以下、基礎免震以外の免震建物タイプを「中間階免震」と呼ぶことにする。
【0005】
建築物において中間階免震を採用する場合には、建物内における万一の火災発生に対して免震装置を保護する必要があり、以下に示す特許文献にみられるとおり、これまでに積層ゴムを対象にした幾つかの耐火被覆工法が開発されている(特許文献1〜5参照)。
【特許文献1】特開平10−227152号公報
【特許文献2】特開平11−071938号公報
【特許文献3】特開2000−336799号公報
【特許文献4】特開2001−262735号公報
【特許文献5】特開2005−320744号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
免震層を積層ゴムだけで構成すると免震周期を4秒以上に伸ばすことは困難な場合が多く、特に中低層建物のように免震建物の重量が軽量になってくるほど、積層ゴムだけでは効果的な免震構造を構成することは困難になってくる。
【0007】
この問題は、積層ゴムの他に、すべり型免震装置(以下、「すべり支承」と表現する場合もあるが、両者は同じものを意味する)や転がり型免震装置(以下、「転がり支承」と表現する場合もあるが、両者は同じものを意味する)を混用することで解決できるので、近年では積層ゴム系免震装置とすべり支承などを混ぜて使うハイブリッド型の免震システムが一般化しつつある。
【0008】
このハイブリッド型免震システムを中間階免震建物に適用しようとすると、免震装置は耐火被覆を必要とすることになる。積層ゴムの耐火被覆方法は既に開発されており大きな困難はないが、すべり支承の耐火被覆方法には大きな困難を伴うのが現状である。
【0009】
すべり支承の耐火被覆方法の課題と問題点は以下のとおりである。
(1)スライダーとすべり板が大きな水平相対変位を生じるので、その変位を許容できる耐火被覆であること。
(2)すべり板の平面寸法が非常に大きいため、耐火被覆によって非常に大きな面積を被覆する必要が生じ、しかも地震時にはスライダーがすべり板表面に接触しながら移動するため、そのスライダーの移動を許容しながらすべり板表面を耐火被覆する必要があること。
(3)すべり板全面を覆う耐火被覆を珪酸カルシューム板のような成型板で構成すると、スライダーの移動に伴って耐火被覆も移動するため、その周囲に非常に大きな空間が必要になること。
(4)地震発生の後に火災に遭遇する可能性が高いので、地震時の震動およびスライダーの移動によって耐火被覆が脱落したり破損しないように、地震後にも耐火被覆が正常に保持される必要があること。
(5)火災によってすべり板やスライダーが損傷した場合には、建物重量を支持した状態のままで、免震装置(スライダーやすべり板)の交換を行う必要があること。
【0010】
以上の課題を解消することは技術的に大変困難であるので、すべり支承に対する効果的な耐火被覆方法はこれまで開発されていない。
【0011】
そこで本発明は、中間階免震建物に適用でき、火災遭遇後も免震構造建物として継続使用が可能となる耐火性能を備えた合理的な「すべり型免震装置」を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は以上の点を解決するため次の構成を採用する。
〈構成1〉
平滑な表面を有するすべり板と、前記すべり板に接触して水平方向に相対すべり移動できるスライダーとを備えたすべり型の免震装置であって、前記すべり板は、平常時において前記スライダーが接触しているすべり板の平面中央部とその外側の平面外周部に分割されており、前記平面外周部は少なくとも2部分に分割されており、前記すべり板の前記平面中央部と前記平面外周部とは接触していないことを特徴とする免震装置。
【0013】
すべり支承は、通常「すべり板」と「スライダー」の2部分より構成されるが、本発明はすべり板を「平面中央部」と「平面外周部」に分割し、且つ平面外周部を2以上に分割することを本課題を解決する基本原理とする。
【0014】
すべり支承では、スライダーがすべり板上を円滑に滑動できることが第一条件であるから、これまではすべり板は継ぎ目のない大きな一枚の平板であることが基本と考えられてきたが、本発明はこの常識を否定することによって問題解決を可能としたものである。
【0015】
本発明では、すべり板を3部分以上(平面中央部と外周部2分割以上)に分割するが、分割されたすべり板表面を同一レベルに揃えることが必要となる。この条件を満足するために、構成2を導入する。
【0016】
〈構成2〉
構成1の免震装置において、3部分以上に分割されている前記すべり板を受ける分割されていない固定用プレートもしくは固定用アンカーフレームを含む固定部材を設け、前記固定部材は上部構造体もしくは下部構造体のコンクリート躯体内に表面が露出する状態で打ち込まれており、分割された前記すべり板を前記固定部材に取り付けることにより分割されている各前記すべり板の表面が同一レベルに調整されることを特徴とする免震装置。
【0017】
即ち、分割されたすべり板を固定するために「固定用フレーム」を用意する。固定用フレームは1枚の固定用アンカープレートとしてもよいが、標準的にはすべり板取り付け部のアンカーボルトを受けるアンカーフレームを基本とする。ここで、固定用のアンカープレートおよびアンカーフレームの両者を含めて「固定部材」と称する。
【0018】
この固定部材は、取り付け部表面を露出させた状態で上部構造体もしくは下部構造体の躯体コンクリ−ト内に打ち込まれている。この固定部材は分割なしの一体に構成されているので、この固定部材に分割されたすべり板をアンカーボルトで締め付けて取り付けることにより、すべり板表面のレベルを同一面に揃えることができる。
尚、最初の新築工事時には、固定部材とすべり板をアンカーボルトで予め一体に組み上げた状態として、コンクリート躯体に同時に打ち込むことができる。
【0019】
〈構成3〉
構成1又は構成2に記載の免震装置において、分割されている前記すべり板間の分割隙間に面する前記すべり板の断面コーナー部に面取りもしくはテーパーを設けていることを特徴とするすべり型の免震装置。
【0020】
スライダーのすべり材が、分割されているすべり板上を円滑にすべり移動できるためには、分割隙間の部分ですべり材がひっかからないことが重要である。そのために、分割隙間の断面コーナー部に面取りを行うか、もしくは分割隙間に向かって斜めのテーパーを設けることにより、すべり材が無理なく分割隙間を乗り越えられ、且つ分割隙間を通過する際にすべり材が傷付かないようにする。
【0021】
〈構成4〉
構成1乃至構成3のいずれかに記載の免震装置において、前記すべり板の分割隙間に耐火断熱材料を充填していることを特徴とする免震装置。
【0022】
構成1に示したとおり、平面中央部と平面外周部のすべり板間の分割隙間は分離されており、両者は接触していないので、火災時に直接火炎に晒されて温度が上昇した平面外周部すべり板の熱は、その分割隙間の存在により遮断され、平面中央部のすべり板には伝わりにくい。
【0023】
構成4は、この断熱効果を更に確実にするための措置であり、その分割隙間に耐火耐熱性能の高い断熱材料を充填しておく。この耐火断熱材料の存在により、平面外周部の熱が平面中央部のすべり板に伝達されるのを遮断してくれるので、下記構成5に示す方法で耐火被覆されている平面中央部のすべり板およびスライダーを火災およびその熱から確実に守ってくれることになる。
【0024】
〈構成5〉
構成1乃至構成4のいずれかに記載の免震装置において、前記スライダーおよび前記すべり板の平面中央部を耐火被覆していることを特徴とする免震装置。
【0025】
本発明におけるすべり支承の耐火被覆はスライダー本体およびすべり板の平面中央部のみを被覆すればよいことに特徴がある。通常、スライダー本体は剛すべり支承、弾性すべり支承のいずれにおいても一つの塊になっているので、その周囲側面を耐火被覆で覆うことは容易であり、且つすべり板の平面中央部はスライダーによって殆どが覆われているので、スライダーの周囲側面の耐火被覆をすべり板に接触するまで伸長することによってすべり板の平面中央部は容易に耐火被覆でカバーすることができる。
【0026】
すべり板の平面中央部を確実に耐火被覆で防護するためには、すべり板の平面中央部と平面外周部の間の分割隙間部分まで耐火被覆で覆うことが望ましい。従って、スライダーの耐火被覆はこの分割隙間を超えて、すべり板の平面外周部に届いていることになる。
【0027】
本発明は、大きな面積になるすべり板の平面外周部は耐火被覆しないでよいことが大きな特徴であり、メリットである。火災が発生した場合、すべり板の平面外周部は火炎に直接晒され、熱により曲がるなどの損傷を受ける可能性が高いが、火災後にすべり板の平面外周部のみを取り替えればよい。建物重量はスライダーによって支持されているので、平面外周部すべり板の固定ボルトを外し、新しい平面外周部のすべり板に交換する作業は容易に行うことができる。
【0028】
〈構成6〉
構成5に記載の免震装置において、前記耐火被覆のスライダー側面には耐火断熱性成型体を配置しており、その先端の前記すべり板に接触する境界部分には繊維型断熱材料による弾力性のある耐火断熱性パッドにより、前記すべり板に密着し且つすべり移動可能な耐火被覆を構成しているか、もしくはスライダー側面の耐火断熱性成型体先端の前記すべり板との隙間に、加熱を受けると発泡して耐火断熱層シールを形成する発泡型耐火断熱性材料を配置していることを特徴とする免震装置。
【0029】
スライダーを耐火被覆するにはその側面を耐火被覆材料で囲めばよいが、そのスライダー側面の耐火被覆材料の先端がすべり板に接触する部分の処理が重要である。即ち、地震時にはスライダーとすべり板が水平移動するので、この水平移動を許容でき、且つ火災時には防耐火性能を発揮する必要がある。
【0030】
そのために本発明では、スライダー側面の耐火被覆材の先端部のすべり板に接触する境界部分にできる僅かな隙間に対して、セラミックファイバー等の弾力性のある繊維型断熱材料をパッド形状の耐火被覆材として構成する方法、もしくはその先端のすべり板との僅かな隙間に加熱を受けると発泡・膨張して耐火断熱層のシールを形成する発泡性耐火断熱材料を配置し、平常時は僅かな隙間で地震時移動を妨げず、且つ火災時には加熱発泡して耐火被覆シール部を構成する方法により、スライダーとすべり板の平面中央部に対する耐火被覆を構成する。
【0031】
次ぎに、大きな面積になるすべり板全体を耐火被覆で防護する場合の方法として、構成7〜構成10を示す。
【0032】
〈構成7〉
平滑な表面を有するすべり板とそのすべり板に接触して水平方向に相対すべり移動できるスライダーにより構成されるすべり型の免震装置において、前記すべり板を構造物の基礎以外の途中階の床下底面に下向きに取り付け、前記スライダーをその直下の柱の柱頭部もしくは柱に代わる突出型構造躯体の上部(以下、「支持柱等」と言う)に取り付け、前記スライダー直下の前記支持柱等の上部と前記すべり板の外周部外側の構造躯体とに跨って耐火断熱部材を配置して前記スライダーおよび前記すべり板全面を耐火被覆していることを特徴とする免震装置。
【0033】
構成7は、スライダーおよび大面積のすべり板全体を耐火被覆する場合の基本戦略を示したものである。即ち、スライダー自体を耐火被覆しようとすると耐火被覆取り付け部の形状が複雑なるので、スライダー側はスライダーを支持している直下の支持柱等の下部構造体自体に耐火被覆を取り付け、すべり板側もすべり板外側の上部構造躯体に耐火被覆を取り付けることを特徴としている。
【0034】
〈構成8〉
構成7に記載の免震装置において、前記支持柱等の上部に鉄骨フレームを固定し、当該鉄骨フレームの外側に珪酸カルシウム成型板等の耐火断熱性成型体を取り付けており、その上部の前記すべり板に接触する境界部分にはセラミックファイバー等の繊維型断熱材料による弾力性のある耐火断熱性パッドにより前記すべり板に密着し且つすべり移動可能な耐火被覆を配置しているか、もしくは前記鉄骨フレームに固定された耐火断熱性成型体上部の前記すべり板との隙間に、加熱発泡されて耐火断熱層のシール部を形成する発泡型耐火断熱性材料を配置して耐火被覆を構成していることを特徴とする免震装置。
【0035】
〈構成9〉
構成7に記載の免震装置において、前記支持柱等の上部に珪酸カルシウム成型板、ALC板、鉄筋コンクリート成型板などの耐火断熱性成型体を取り付けており、その上部の前記すべり板に接触する境界部分にはセラミックファイバー等の繊維型断熱材料による弾力性のある耐火断熱性パッドにより前記すべり板に密着し且つすべり移動可能な耐火被覆を配置しているか、もしくは前記耐火断熱性成型体上部の前記すべり板との隙間に、加熱により発泡して耐火断熱層のシール部を形成する発泡型耐火断熱性材料を配置して耐火被覆を構成していることを特徴とする免震装置。
【0036】
〈構成10〉
構成7に記載の免震装置において、前記支持柱等の上部と前記すべり板の外周部外側の構造躯体とに跨って、セラミックファイバーブランケット等の繊維型断熱材料等による屈曲、伸縮性のある耐火断熱材料により耐火被覆を構成していることを特徴とする免震装置。
【0037】
構成8、構成9、構成10は、構成7の耐火被覆を具体的に実現する形体を示したものである。構成8および構成9ではスライダー側面およびすべり板下面の耐火被覆材料が固体であるため、耐火被覆材料と上部のすべり板もしくは上部構造体下面との間に水平相対移動を許容するために若干の隙間を設け、この隙間を耐火被覆シールするために、セラミックファイバー等による弾力性のある耐火シールパッド成型体を作り、これをすべり板に密着させる方法か、すべり板との隙間に、加熱により発泡して耐火断熱層のシール部を形成する発泡型の耐火断熱材料を配置して火災時に熱を受けると耐火被覆シール部を形成する方法を採用している。
【0038】
構成10では、屈曲、伸縮性のある耐火断熱材料によりスライダーおよびすべり板全体を完全に包み込むことができるので、上記の構成8、9のような隙間に対する耐火被覆は不要である。
【0039】
構成7〜構成10では、すべり支承全体を耐火被覆しているので、すべり材全体が火災から首尾よく防護された場合は問題ないが、万一、スベリ支承が部分的に損傷を受けたり、熱によりすべり板が変形したり、あるいはすべり摩擦性能に変化が生じた場合等には、装置の交換が必要になる。この場合、装置交換は不可能ではないが、大がかりな工事が必要になり、かなりの困難を伴うという課題が残っている。
この問題を完全に解決している方法が、構成11〜構成15である。
【0040】
〈構成11〉
平滑な表面を有するすべり板とそのすべり板に接触して水平方向に相対すべり移動できるスライダーにより構成されるすべり型の免震装置において、前記スライダーはその直下の支持柱等に、前記すべり板は上部構造体に取り付けられており、前記すべり板をその表面のすべり面を構成する「表面すべり板」とその表面すべり板を受ける「裏板」との組合せとして構成し、前記表面すべり板はその表面すべり面に頭部が突出しない皿ボルトもしくは皿ビスで前記裏板に着脱可能に固定してあり、前記表面すべり板が、平常時において前記スライダーと接触している平面中央部とその外側の平面外周部に分割されており、且つ前記表面すべり板の平面外周部は少なくとも2部分以上に分割されており、前記すべり板全体が上部構造体の鉄筋コンクリート躯体内に打ち込まれており、前記すべり板の外周部外側の上部構造体の表面と前記表面すべり板の表面が同一レベルで仕上げられていることを特徴とするすべり型の免震装置。
【0041】
構成11では、すべり板をすべり面を構成する「表面すべり板」と「裏板」の組合せとして構成し、表面すべり板を裏板に皿ボルトもしくは皿ビスによって、ボルト頭部がすべり面に突出しないように固定する。表面すべり板は、平面中央部と2枚以上の平面外周部に分割する。裏板は分割せず、表面すべり板を固定する共通の取り付け部材であり且つ補強板としている。そして、すべり板表面と周囲の上部構造体コンクリート躯体との表面が同一面となるようにすべり板全体を上部コンクリート躯体内に打ち込んでいる。
【0042】
従って、すべり板全体が上部躯体のコンクリートで保護されており、この上に下記に示す構成12〜構成15の方法ですべり板表面に耐火被覆を施せば、火災に対する防護対策としては完璧となる。しかも、万一、火災の熱によってすべり板表面が影響を受けた場合には、平面外周部の表面すべり板を交換することが可能であるので、すべり支承の火災対策としては完璧となっている。
【0043】
〈構成12〉
構成11に記載の免震装置において、前記スライダー直下の前記支持柱等の上部と前記すべり板の外周部外側の構造躯体とに跨って耐火断熱部材を配置して前記スライダーおよび前記すべり板全面を耐火被覆していることを特徴とする免震装置。
【0044】
〈構成13〉
構成12に記載の免震装置において、前記支持柱等の上部に鉄骨フレームを固定し、当該鉄骨フレームの外側に珪酸カルシウム成型板等の耐火断熱性成型体を取り付けており、その上部の前記すべり板に接触する境界部分にはセラミックファイバー等の繊維型断熱材料による弾力性のある耐火断熱性パッドにより前記すべり板に密着し且つすべり移動可能な耐火被覆を配置しているか、もしくは前記鉄骨フレームに固定された耐火断熱性成型体上部の前記すべり板との隙間に、加熱により発泡して耐火断熱層のシール部を形成する発泡型耐火断熱性材料を配置して耐火被覆を構成していることを特徴とする免震装置。
【0045】
〈構成14〉
構成12に記載の免震装置において、前記支持柱等の上部に珪酸カルシウム成型板、ALC板、鉄筋コンクリート成型板などの耐火断熱性成型体を取り付けており、その上部の前記すべり板に接触する境界部分にはセラミックファイバーの繊維型断熱材料等による弾力性のある耐火断熱性成型体により前記すべり板に密着し且つすべり移動可能な耐火被覆を配置しているか、もしくは前記耐火断熱性成型体上部の前記すべり板との隙間に、加熱により発泡して耐火断熱層のシール部を形成する発泡型耐火断熱性材料を配置して耐火被覆を構成していることを特徴とする免震装置。
【0046】
〈構成15〉
構成12に記載の免震装置において、前記支持柱等の上部と前記すべり板の外周外側の構造躯体とに跨って、セラミックファイバーブランケット等の繊維型断熱材料による屈曲、伸縮性のある耐火断熱材料により耐火被覆を構成していることを特徴とする免震装置。
【0047】
構成12は、構成11のすべり支承に対する耐火被覆の基本戦略を示したものであり、構成13〜構成15は、その具体的な耐火被覆の実現方法を示したものである。耐火被覆の構成方法は、基本的には構成13は構成8と、構成14は構成9と、構成15は構成10とそれぞれ同じであるが、すべり板表面とその周囲の上部構造体表面とが同一レベルで構成されているので、より合理的な納まりが構成できる。
【0048】
〈構成16〉
構成11に記載の免震装置において、前記支持柱等の上部より耐火断熱材料を立ち上げ、前記スライダーおよび前記表面すべり板の平面中央部を耐火被覆していることを特徴とする免震装置。
【0049】
構成16は、構成12〜構成15に示した耐火被覆を簡略化したものであり、構成5〜構成6と同様の方法を適用したものである。これにより、構成11の免震装置に対する火災防護方法が更に現実的なものになっている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0050】
以下、本発明を、実施例を示す図面に基づいて説明する。なお、共通する部分には同一符号を付している。
【実施例1】
【0051】
図1は、本発明の構成1を弾性すべり支承に対して適用した実施例を示す図で、図1(1)はすべり板の平面図(見上げ図)、図1(2)は断面図である。
図1はすべり板4がスライダー3の上側に配置された柱頭免震の場合を示している。柱頭部もしくは支持柱上に弾性すべり支承のスライダー3が取り付けられており、その上にすべり板4が下向きに置かれ、上部のコンクリートフーチング2に固定されている。
【0052】
すべり板4は、円形の平面中央部41とその外側にある2枚の平面外周部42より構成されており、すべり板4は全体で3部分に分割されている。3枚のすべり板の間には若干の隙間5が設けられているが、特に平面中央部と平面外周部の間の分割隙間5には、火災時における平面外周部すべり板42から平面中央部すべり板41への熱の伝達を遮断するために平面外周部どうしの分割隙間よりも大きな隙間を確保している。
尚、「弾性すべり支承」とは、スライダーが水平変形できる弾性体部分を有しているすべり支承のことであり、図1(2)の32が積層ゴム部を構成しており、ここが弾性変形を受け持つ部分である。これに対して、弾性支承部分を有さず、スライダーが弾性変形しない剛体で構成されているすべり支承が「剛すべり支承」と呼んでいる。
【実施例2】
【0053】
図2は、本発明の構成1を剛すべり支承の代表である回転機構付きすべり支承に対して適用した実施例を示す図で、図2(1)はすべり板の平面図(見上げ図)、図2(2)は断面図である。図2は実施例1と同じく、すべり板4がスライダーの上側に配置された柱頭免震等の場合を示している。
柱頭部コンクリート内に回転機構付きすべり支承のスライダー33が埋め込まれた状態で取り付けられており、その上にすべり板4が下向きに置かれ、上部のコンクリートフーチング2に固定されている。
【0054】
すべり板4は、平面中央部41とその外側にある2枚の平面外周部42の3部分に分割されているが、平面中央部41の形状を正方形としている。平面中央部41と平面外周部42の間の分割隙間5には、火災時における平面外周部すべり板42から平面中央部すべり板41への熱の伝達を遮断するための隙間を確保している。平面外周部42どおし間の分割隙間5は大きくなくてもよいが、火災時の加熱による膨張変形を考慮してその逃げ代分の隙間を確保している。
【実施例3】
【0055】
図3は、すべり板の取り付け、固定方法を説明した構成2の実施例を示す図で、図3(1)はすべり板の平面図(見上げ図)であり、図3(2)は断面図である。図3(2)の右肩に、同(2)の一部を拡大したものを示している。
【0056】
固定用フレーム43は上部構造体2のコンクリート内に打ち込まれている。平面中央部41と平面外周部42とに分割されているすべり板4は、皿ボルト44によって固定用フレーム43に取り付けられている。
固定用フレーム43には袋ナット45が取り付けられている。袋ナット45を取り外すことにより、建物竣工後においてもすべり板の平面外周部42の交換が可能である。
尚、本図では、固定用フレーム43のみがコンクリート躯体内に打ち込まれており、すべり板4は露出した状態になっているが、すべり板4までコンクリート躯体内に打ち込むんでもよい。
【実施例4】
【0057】
図4は、本発明の構成3および構成4の実施例を示す図で、図4(A)〜(D)はすべり板の一部を拡大して示す断面図である。
分割されているすべり板4は、共通の固定用フレーム43に固定されているので、すべり面表面は同一レベルになっている。
図4(A)および(B)は構成3の実施例を示している。構成3は、スライダーに固定されているすべり材が分割されているすべり板上を円滑に移動できる対策を行ったものである。図4(A)はすべり板端部の分割隙間5に面する境界部に「テ−パー」52を設けた場合、図4(B)は構成3のコーナー部に「面取り」51を設けた場合をそれぞれ示している。テ−パー52あるいは面取り51を設けたことにより、すべり材は、すべり板の境界部を傷つくことなく円滑に通過することができる。
【0058】
図4(C)および(D)は構成4の実施例を示している。分割隙間5によって分離されたすべり板の平面外周部42から平面中央部41への火災時の熱の伝達を遮断するために、分割隙間5に耐火断熱材料53を充填している。
【実施例5】
【0059】
図5は、本発明の構成5の実施例を示す図で、図5(1)は弾性すべり支承に対して本発明の構成5を適用したものを示す断面図である。この実施例ではスライダー3およびすべり板の平面中央部41を耐火被覆しており、すべり板の平面外周部42は耐火被覆せずに露出させている。
尚、弾性すべり支承のスライダー3は、地震時に水平せん断変形を生じるため、スライダー側面の耐火被覆とスライダー3との間にはスライダーの変形吸収用の隙間54が確保されている。
【0060】
図5(2)は、剛すべり支承(本例では回転機構付きすべり支承)に対して本発明の構成5を適用したものを示す断面図である。スライダー本体33は殆どが下部構造体の支持柱コンウリート内に埋め込まれているので、スライダー側面とすべり板の平面中央部41を耐火被覆で囲っている。
本発明では、図5(1)(2)からわかるように、僅かの耐火被覆ですべり支承を防護することが可能であり、経済的にも施工上も極めて有利で合理的な免震装置となっている。また、万一、火災に遭遇した場合には、火災後、すべり板の平面外周部42および耐火被覆を容易に新品に交換することができる。
【実施例6】
【0061】
図6は、本発明の構成6の実施例を示す図であり、耐火被覆の具体的構成方法を示している。図6(1)は弾性すべり支承に対する耐火被覆の構成を示す断面図、図6(2)は剛すべり支承に対する耐火被覆の構成を示す断面図である。いずれもスライダーの周囲側面に珪酸カルシウム板などの固体の耐火断熱成型板61で耐火被覆側面を構成し、その上部のすべり板4との接触部に伸縮性のある耐火シールパッド62を配置している。
この耐火シールパッド62により、すべり板に密着して耐火被覆機能を保持しながら地震時にはすべり板に対して水平移動可能となっている。
【実施例7】
【0062】
図7の(1)〜(3)は、大面積のすべり板を含めてすべり支承全体を耐火被覆で防護する構成7〜構成10の実施例を示す断面図である。
【0063】
図7(1)は構成8の実施例を示している。この実施例では、支持柱等の上部に鉄骨フレーム63aを固定し、その外側に珪酸カルシウム成型板等の耐火断熱性成型体63bを取り付けて耐火被覆63を構成しており、免震装置と共に耐火被覆の構成自体も火災で崩れないように保護している。
【0064】
図7(2)は構成9の実施例を示している。この実施例では、支持柱等の上部に珪酸カルシウム成型板、ALC板、鉄筋コンクリート成型板などの耐火断熱性成型体を取り付けて耐火被覆64を構成している。
【0065】
構成8および構成9では、スライダー側面およびすべり板下面の耐火被覆材料が固体であるため、耐火被覆材料と上部のすべり板もしくは上部構造体下面との間に水平相対移動を許容するために若干の隙間を設け、この隙間を耐火被覆するために、セラミックファイバー等による弾力性のある耐火シールパッド成型体を介在させてすべり板に密着させる方法か、すべり板との隙間に、加熱発泡されて耐火断熱層を形成する発泡型の耐火断熱性材料を配置して火災時には加熱により発泡して耐火シールを形成する方法を採用している。
【0066】
図7(3)は構成10の実施例を示している。この実施例ではセラミックファイバーブランケット等の繊維型断熱材料等による屈曲、伸縮性のある耐火断熱材料により耐火被覆65を構成している。
【実施例8】
【0067】
図8は、本発明の構成11の実施例を示す図で、図8(1)はすべり板の平面図(見上げ図)、図8(2)はその断面図をそれぞれ示している。
構成11の実施例では、すべり板4のすべり面を構成する「表面すべり板4a」と「裏板4b」の組合せとして構成している。裏板4bには複数本の袋ナット45が溶接されており、表面すべり板4aの上(外側)から皿ボルト44をねじこむことにより表面すべり板4aを裏板4bに固定することができる。裏板4bにはスタットボルト46が溶接されており、このスタッドボルトにより上部構造体のコンクリート2内に裏板4bが固定され、その結果としてすべり板4全体が上部構造体2に固定される。
【0068】
表面すべり板4aは、平面中央部41と2枚以上の平面外周部42に分割されているが、裏板4bは分割されていないので、表面すべり板4aの表面レベルは同一になり、且つすべり板表面と周囲の上部構造体コンクリート躯体21との表面が同一面となるように上部コンクリート躯体内に打ち込まれている。
【0069】
本実施例の免震装置は、すべり板全体がコンクリート躯体内に打ち込まれているので、耐火性能の観点からも有利であり、すべり板表面と周囲コンクリート面が同一レベルであるため、万一、設計想定以上の地震入力によりすべり板範囲を超えるすべり変位が発生した場合でも異常が発生せず、耐震安全性能の観点からも安全性能の高い免震装置になっている。
また、表面すべり板の平面外周部42は、ジャッキアップなしでそのままの状態で交換可能であり、耐火性や耐久性能、維持保全の観点からも優れた免震装置である。
【実施例9】
【0070】
図9の(1)〜(3)は、構成11の免震装置を対象として、すべり板を含めてすべり支承全体を耐火被覆で防護する構成12〜構成15の実施例を示す断面図である。
【0071】
図9(1)は、構成13の実施例を示している。この実施例では支持柱等の上部に鉄骨フレームを固定し、その外側に珪酸カルシウム成型板等の耐火断熱性成型体を取り付けて耐火被覆63を構成している。
耐火被覆63の上端と上部躯体21の底面(すべり面と同一レベル)との隙間には、発泡型耐火断熱性材料の薄膜体67を配置して耐火シール部を構成している。発泡型耐火断熱性材料の薄膜体67は地震時には非接触で水平移動可能で、且つ火災時には熱を受けて発泡することにより耐火シール部を構成し、装置全体の耐火被覆を完全なものにする。
【0072】
図9(2)は、構成14の実施例を示している。この実施例では支持柱等の上部に珪酸カルシウム成型板、ALC板、鉄筋コンクリート成型板などの耐火断熱性成型体を取り付けて耐火被覆64を構成している。
耐火被覆64の上端と上部躯体21の底面(すべり面と同一レベル)との隙間には、セラミックファイバー等による弾力性のある耐火シールパッド62を配置している。耐火シールパッド62は、地震時にすべり板に接触した状態のまま水平すべり移動できる耐火被覆方法を採用している。
【0073】
図9(3)は、構成15の実施例を示している。この実施例ではセラミックファイバーブランケット等の繊維型断熱材料等による屈曲、伸縮性のある耐火断熱材料により耐火被覆65を構成している。この耐火被覆65は、地震時には耐火被覆材料の変形により、支持柱等と上部構造体間との水平相対移動を許容できる。
【0074】
以上、図9の(1)〜(3)に示した構成11〜構成15のすべり型免震装置では、火災に対して極めて防護性能が高いと同時に、万一、火災によって損傷や影響が生じた場合の取り替えまでもジャッキアップなしで行えるもので、耐火安全性能、耐震安全性能の両観点においてこれまでにない優れた性能と特性を実現している。
【0075】
構成11の免震装置に対して構成12〜構成15の耐火被覆は完全であるが、かなりの重装備であるので、この火災防護対策を簡便にしたものが構成16である。その実施例は省略しているが、図5および図6においてすべり板4が表面が同一レベルになるように上部躯体内に打ち込まれた状態と同様になると考えればよい。
【0076】
これまでの免震構造では、耐火防護上の制約のために、中間階免震構造、柱頭免震構造では、免震装置として積層ゴムしか使用できない状況にあったが、本発明によって、すべり支承の実用的な耐火防護方法が可能となった。従って、積層ゴム支承とすべり支承の両方を自由に使用することにより、今後は、中間階免震建物、柱頭免震建物の設計自由度が飛躍的に高まり、免震構造の普及、発展に大きく貢献するものと期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】実施例1を示す図で、本発明の構成1を弾性すべり支承に適用した場合の構成を示し、 (1)分割されたすべり板の平面図(見上げ図)、 (2)免震装置の取り付け状態と構成を示す断面図である。
【図2】実施例2を示す図で、本発明の構成1を剛すべり支承に適用した場合の構成を示し、 (1)分割されたすべり板の平面図(見上げ図)、 (2)免震装置の取り付け状態と構成を示す断面図である。
【図3】実施例3、本発明の構成2を示す図で、分割されたすべり板の表面レベルを同一に保ち且つすべり板の着脱自在を可能にした取り付け方法を示し、 (1)分割されたすべり板およびその固定用フレームの平面図(見上げ図)、 (2)免震装置、特にすべり板の取り付け方法、着脱方法を示す断面図である。
【図4】実施例4,本発明の構成3および構成4を示す断面図と各部の部分拡大図とを示し、 (A)は構成3の分割隙間に面するすべり板コーナーにテーパーを設けた部分拡大断面図、 (B)は構成3の分割隙間に面するすべり板コーナーに面取りを設けた部分拡大断面図、 (C)は構成4のテーパーを有する分割隙間に耐火断熱材料を充填した部分拡大断面図、 (D)は構成4の面取りを有する分割隙間に耐火断熱材料を充填した部分拡大断面図である。
【図5】実施例5、本発明の構成5を示す断面図で、 (1)弾性すべり支承に耐火被覆を行った場合の断面図、 (2)剛すべり支承に耐火被覆を行った場合の断面図である。
【図6】実施例6、本発明の構成6を示す断面図で、 (1)弾性すべり支承に行う耐火被覆の断面構成を示す断面図、 (2)剛すべり支承に行う耐火被覆の断面構成を示す断面図である。
【図7】実施例7、本発明の構成7〜構成10のすべり支承全体を耐火被覆する方法を示す断面図で、スライダーが弾性すべり支承の場合を図示しているが、剛すべり支承の場合も全く同様であり、 (1)鉄骨フレーム+固体成型板型耐火被覆で耐火被覆を構成する場合の例を示す断面図、 (2)ALC板やRC板など固体の耐火断熱材料で耐火被覆を構成する場合の例を示す断面図、 (3)屈曲可能の繊維型断熱材料で耐火被覆を構成する場合の例を示す断面図である。
【図8】実施例8、本発明の構成11を示す図で、すべり板を表面すべり板と裏板の組合せで構成し、表面すべり板のすべり面と周囲のコンクリート躯体表面を同一レベルで構成するものであり、 (1)分割されたすべり板およびその周囲を示す平面図(見上げ図)、 (2)免震装置の断面構成、特に周囲躯体との位置関係を示す断面図である。
【図9】実施例9、本発明の構成11の免震装置に対して、構成12〜構成15のすべり支承全体を耐火被覆する方法を示す断面図であり、 (1)鉄骨フレームに固体成型板型耐火被覆を組み合わせて耐火被覆を構成し、耐火被覆の上端部の上部躯体との隙間部分に発泡型材料による耐火断熱シールを組み合わせた例を示す断面図、 (2)ALC板やRC板など固体の耐火断熱材料で耐火被覆を構成し、耐火被覆の上端部の上部躯体との隙間部分にセラミックファイバー等による弾力性のある耐火断熱シールパッドを組み合わせた例を示す断面図、 (3)屈曲可能の繊維型断熱材料で耐火被覆を構成する場合の例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0078】
1 :支持柱等(すべり支承スライダーを取り付ける下側の柱もしくは支持構造躯体)
2 :上部構造体(すべり板を固定する上部構造体の基礎フーチング躯体)
21:すべり板表面と同一面レベルですべり板を囲む上部構造体の基礎フーチング躯体
3 :すべり支承のスライダー
31:すべり材
32:弾性すべり支承スライダーの弾性支承部分
33:剛すべり支承(本例は回転機構付きすべり支承)の支持体部分
4 :すべり板
4a:表面すべり板
4b:裏板
41:すべり板の平面中央部
42:すべり板の平面外周部
43:固定用フレーム(すべり受材を取り付けるための固定用プレートもしくは固定用アンカフレーム)
44:皿ビスもしくは皿ボルト(すべり板と裏板を一体化する固定ボルト。すべり板表面にボルト頭部が突出しない。)
45:袋ナット
46:スタッドボルト
5 :分割隙間
51:すべり板の分割隙間との境界部の面取り
52:すべり板の分割隙間との境界部のテーパー
53:分割隙間に充填された耐火断熱材料
54:耐火被覆と弾性すべり支承スライダーとの間のクアランス
6 :耐火被覆
61:スライダー周囲の耐火被覆本体(珪酸カルシウム板など)
62:耐火シールパッド:耐火被覆のすべり板との接触部に配置する柔軟性(伸縮弾力性)のある耐火シール材料
63:すべり支承全体を囲む耐火被覆(1)(耐火被覆材を受ける鉄骨フレーム+耐火被覆成型板(珪酸カルシウム板など)の場合)
64:すべり支承全体を囲む耐火被覆(2)(単一の耐火被覆材(ALC板やコンクリート板など)+すべり板との接触部の耐火シールパッドの場合)
65:すべり支承全体を囲む耐火被覆(3)(伸縮性、可撓性のある耐火被覆材料(セラミックファイバ−ブランケットなどを用いる場合)
66:すべり板全体を耐火被覆で囲む場合の範囲
67:発泡型耐火断熱性材料の薄膜体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平滑な表面を有するすべり板と、
前記すべり板に接触して水平方向に相対すべり移動できるスライダーとを備えたすべり型の免震装置であって、
前記すべり板は、平常時において前記スライダーが接触しているすべり板の平面中央部とその外側の平面外周部に分割されており、
前記平面外周部は少なくとも2部分に分割されており、
前記すべり板の前記平面中央部と前記平面外周部とは接触していないことを特徴とする免震装置。
【請求項2】
請求項1の免震装置において、
3部分以上に分割されている前記すべり板を受ける分割されていない固定用プレートもしくは固定用アンカーフレームを含む固定部材を設け、
前記固定部材は上部構造体もしくは下部構造体のコンクリート躯体内に表面が露出する状態で打ち込まれており、
分割された前記すべり板を前記固定部材に取り付けることにより分割されている各前記すべり板の表面が同一レベルに調整されることを特徴とする免震装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の免震装置において、
分割されている前記すべり板間の隙間(以下「分割隙間」と言う)に面する前記すべり板の断面コーナー部に面取りもしくはテーパーを設けていることを特徴とする免震装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の免震装置において、
前記すべり板の分割隙間に耐火断熱材料を充填していることを特徴とする免震装置。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の免震装置において、
前記スライダーおよび前記すべり板の平面中央部を耐火被覆していることを特徴とする免震装置。
【請求項6】
請求項5に記載の免震装置において、
前記耐火被覆のスライダー側面には耐火断熱性成型体を配置しており、
その先端の前記すべり板に接触する境界部分には繊維型断熱材料による弾力性のある耐火断熱性パッドにより、前記すべり板に密着し且つすべり移動可能な耐火被覆を構成しているか、
もしくはスライダー側面の耐火断熱性成型体先端の前記すべり板との隙間に、加熱を受けると発泡して耐火断熱層シールを形成する発泡型耐火断熱性材料を配置していることを特徴とする免震装置。
【請求項7】
平滑な表面を有するすべり板とそのすべり板に接触して水平方向に相対すべり移動できるスライダーにより構成されるすべり型の免震装置において、
前記すべり板を構造物の基礎以外の途中階の床下底面に下向きに取り付け、
前記スライダーをその直下の柱の柱頭部もしくは柱に代わる突出型構造躯体の上部(以下、「支持柱等」と言う)に取り付け、
前記スライダー直下の前記支持柱等の上部と前記すべり板の外周部外側の構造躯体とに跨って耐火断熱部材を配置して前記スライダーおよび前記すべり板全面を耐火被覆していることを特徴とする免震装置。
【請求項8】
請求項7に記載の免震装置において、
前記支持柱等の上部に鉄骨フレームを固定し、
当該鉄骨フレームの外側に耐火断熱性成型体を取り付けており、
その上部の前記すべり板に接触する境界部分には繊維型断熱材料による弾力性のある耐火断熱性パッドにより前記すべり板に密着し且つすべり移動可能な耐火被覆を配置しているか、
もしくは前記鉄骨フレームに固定された耐火断熱性成型体上部の前記すべり板との隙間に、加熱により発泡して耐火断熱層のシール部を形成する発泡型耐火断熱性材料を配置して耐火被覆を構成していることを特徴とする免震装置。
【請求項9】
請求項7に記載の免震装置において、
前記支持柱等の上部に、珪酸カルシウム成型板、ALC板、鉄筋コンクリート成型板のいずれかの耐火断熱性成型体を取り付けており、
その上部の前記すべり板に接触する境界部分には繊維型断熱材料による弾力性のある耐火断熱性パッドにより前記すべり板に密着し且つすべり移動可能な耐火被覆を配置しているか、
もしくは前記耐火断熱性成型体上部の前記すべり板との隙間に、加熱により発泡して耐火断熱層のシール部を形成する発泡型耐火断熱性材料を配置して耐火被覆を構成していることを特徴とする免震装置。
【請求項10】
請求項7に記載の免震装置において、
前記支持柱等の上部と前記すべり板の外周部外側の構造躯体とに跨って、繊維型断熱材料等による屈曲、伸縮性のある耐火断熱材料により耐火被覆を構成していることを特徴とする免震装置。
【請求項11】
平滑な表面を有するすべり板とそのすべり板に接触して水平方向に相対すべり移動できるスライダーにより構成されるすべり型の免震装置において、
前記すべり板は上部構造体に、前記スライダーはその直下の支持柱等に取り付けられており、
前記すべり板をその表面のすべり面を構成する「表面すべり板」とその表面すべり板を受ける「裏板」との組合せとして構成し、
前記表面すべり板はその表面すべり面に頭部が突出しない皿ボルトもしくは皿ビスで前記裏板に着脱可能に固定してあり、
前記表面すべり板が、平常時において前記スライダーと接触している平面中央部とその外側の平面外周部に分割され且つ接触しないように分離されており、
且つ前記表面すべり板の平面外周部は少なくとも2部分以上に分割されており、
前記すべり板全体が上部構造体の鉄筋コンクリート躯体内に打ち込まれており、
前記すべり板の外周部外側の上部構造体の表面と前記表面すべり板の表面が同一レベルで仕上げられていることを特徴とする免震装置。
【請求項12】
請求項11に記載の免震装置において、
前記スライダー直下の前記支持柱等の上部と前記すべり板の外周部外側の構造躯体とに跨って耐火断熱部材を配置して前記スライダーおよび前記すべり板全面を耐火被覆していることを特徴とする免震装置。
【請求項13】
請求項12に記載の免震装置において、
前記支持柱等の上部に鉄骨フレームを固定し、
当該鉄骨フレームの外側に耐火断熱性成型体を取り付けており、
その上部の前記すべり板に接触する境界部分には繊維型断熱材料による弾力性のある耐火断熱性パッドにより前記すべり板に密着し且つすべり移動可能な耐火被覆を配置しているか、
もしくは前記鉄骨フレームに固定された耐火断熱性成型体上部の前記すべり板との隙間に、加熱により発泡して耐火断熱層のシール部を形成する発泡型耐火断熱性材料を配置して耐火被覆を構成していることを特徴とする免震装置。
【請求項14】
請求項12に記載の免震装置において、
前記支持柱等の上部に、珪酸カルシウム成型板、ALC板、鉄筋コンクリート成型板のいずれかの耐火断熱性成型体を取り付けており、
その上部の前記すべり板に接触する境界部分には弾力性のある耐火断熱性パッドにより前記すべり板に密着し且つすべり移動可能な耐火被覆を配置しているか、
もしくは前記耐火断熱性成型体上部の前記すべり板との隙間に、加熱により発泡して耐火断熱層のシール部を形成する発泡型耐火断熱性材料を配置して耐火被覆を構成していることを特徴とする免震装置。
【請求項15】
請求項12に記載の免震装置において、
前記支持柱等の上部と前記すべり板の外周外側の構造躯体とに跨って繊維型断熱材料による屈曲、伸縮性のある耐火断熱材料により耐火被覆を構成していることを特徴とする免震装置。
【請求項16】
請求項11に記載の免震装置において、
前記支持柱等の上部より耐火断熱材料を立ち上げ、
前記スライダーおよび前記表面すべり板の平面中央部を耐火被覆していることを特徴とする免震装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2008−280718(P2008−280718A)
【公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−124919(P2007−124919)
【出願日】平成19年5月9日(2007.5.9)
【特許番号】特許第4047915号(P4047915)
【特許公報発行日】平成20年2月13日(2008.2.13)
【出願人】(596129352)株式会社ダイナミックデザイン (14)
【出願人】(596129363)
【Fターム(参考)】