説明

免震装置

【課題】 地震の方向にかかわらず揺れを吸収するとともにし、後揺れを早期に減衰する免震装置の提供。
【解決手段】免震装置1は、ピストン状のダンパー2を上下方向に配置するとともに、当該ダンパー2の上下端部に夫々自在継手3を介して支持板4,5を連結し、且つ、前記ダンパー2を中心としてそのダンパー2を囲むように、縦方向及び横方向からの力により変形する弾性部材6を、前記両支持板4,5に亘って連結して構成している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の免震装置に関し、特に、一般の家屋に好適な免震装置に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明に関連する先行技術文献情報として、例えば、下記の特許文献1がある。
【特許文献1】特公昭61−17984号公報
【特許文献2】特開2006−22965号公報
【0003】
特許文献1及び特許文献2に開示されている免震装置は、環状の弾性体の中空部にせん断力を加えることで塑性変形する振動エネルギ吸収体である円柱状鉛が配された構造のものであり、この構成により地震による揺れを吸収するとともに、地震後の後揺れも早期に減衰することができる。
ところで、例示した特許文献1及び特許文献2の免震装置は、横揺れに対してのみ揺れの吸収及び後揺れの減衰という免震効果を有するものであり、縦揺れに対しての免震については想定されていない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、地震の方向にかかわらず揺れを吸収するとともに、後揺れを早期に減衰することを課題とし、この課題を解決した免震装置の移送方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的を達成するため、本発明が採用した技術的手段は、ピストン状のダンパーを上下方向に配置するとともに、当該ダンパーの上下端部に夫々自在継手を介して支持板を連結し、且つ、前記ダンパーを中心としてそのダンパーを囲むように、縦方向及び横方向からの力により変形する弾性部材を、前記両支持板に亘って連結してなる免震装置にしたことである。
【0006】
本発明でいうダンパーの形態は、当該ダンパーの軸線方向に対して作用する力を減衰できる形態であればよく、例えば、流体によるオイルダンパーや気体によるエアダンパー又はガスダンパー等を挙げることができる。
又、本発明でいう弾性部材の形態は、縦方向及び横方向からの力により変形する形態であればよく、例えば、金属の丸棒材を屈曲形成してなる複数のばね材を、平面視交差状に、且つダンパーを中心とする周方向に隣り合うばね材間の角度が同角度になるように配置してなる形態、コイルスプリングを前記ダンパーに対して嵌合状に配置した形態、複数のコイルスプリングを、前記ダンパーを中心とする周方向に沿って、隣り合うコイルスプリング間の角度が同角度となるように配置した形態、ゴム材又は軟質の合成樹脂材からなる筒体を前記ダンパーに対して嵌合状に配置した形態を挙げることができる。
【発明の効果】
【0007】
本発明の免震装置によれば、地震の方向にかかわらず揺れの吸収ができ、しかも後揺れを早期に減衰することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の免震装置を実施するための最良の形態を図面に基づいて説明する。
本形態で例示する免震装置1は、ピストン状のダンパー2を上下方向に配置するとともに、当該ダンパー2の上下端部に夫々自在継手3を介して支持板4,5を連結し、且つ、前記ダンパー2を中心としてそのダンパー2を囲むように、縦方向及び横方向からの力により変形する弾性部材6を、前記両支持板4,5に亘って連結して構成している。
【0009】
自在継手3は、一般にユニバーサルジョイントと称されるものと同様に、ダンパー2を360度の範囲でどの方向にも傾倒可能に連結する構造のものである。
【0010】
支持板4,5は、金属材を平面視正方形状に形成したものである。
支持板4は、上側にあって家屋(図示せず)に、例えば周知のボルト・ナット(図示せず)により固着され、支持板5は、下側にあって家屋の基礎(図示せず)に、支持板4と同様に周知のボルト・ナットにより固着される。
符号41,51は、前記ボルト・ナットにおけるボルトが貫通する貫通孔であり、支持板4,5のコーナー部に開孔されている。
【0011】
本形態の弾性部材6は、金属の丸棒材を略横向きU字状に屈曲形成してなる4本のばね材61,62,63,64を、ダンパー2を中心とする周方向に隣り合うばね材7,8間の角度が平面視90度になるように配置し、ばね材61,62,63,64の上端部を前記支持板4の辺部に周知のボルト・ナットや溶接等(図示せず)によって固定状に連結する一方、下端部を前記支持板5に周知のボルト・ナットや溶接等(図示せず)固定状に連結して構成されている。
すなわち、本形態の弾性部材6は、金属の丸棒材を略横向きU字状に屈曲形成してなる4本のばね材61,62,63,64の横方向及び縦方向の変形が自在であり、この変形によって、横揺れ及び縦揺れのいずれの方向の揺れを吸収することができる(図3及び図4参照)。
尚、本形態の弾性部材6は、4本のばね材を用いた形態として例示しているが、本発明では、5本以上のばね材を用いた形態としてもよく、隣り合うばね材間の角度が同角度であればよい(図示せず)。
【0012】
本形態の免震装置1によれば、通常時において、前記弾性部材6におけるばね材61,62,63,64に作用する荷重を、当該ばね材61,62,63,64のダンパー2の弾性力により支持する(図1参照)。
地震発生時においては、ばね材61,62,63,64の変形により揺れを吸収し、揺れが伝達される家屋に対する揺れの大きさ減少させる(図3及び図4参照)。
このとき、ダンパー2は、自在継手3により、ばね材61,62,63,64の変形や変形からの復帰に追従するように傾倒状態と直立状態を交互に繰り返している。
そして、ダンパー2は、後揺れによって繰り返されるばね材61,62,63,64の変形及び変形からの復帰の力を減衰し、家屋に対する揺れの伝達を早期に止めることができる。
したがって、本形態の免震装置1は、地震の揺れ方向にかかわらず揺れの吸収することができるとともに後揺れの減衰を早期に行うことができる。
【0013】
前記で例示した形態の免震装置1と同等の効果を有する他の形態として、例えば、図5に示すように、4本のコイルスプリング6A,6B,6C,6Dを、ダンパー2を中心とする周方向に沿って、隣り合うコイルスプリング6A,6B,6C,6D間の角度が90度となるように配置した形態の弾性部材6を備えた形態、又、図6に示すように、一本のコイルスプリング6Eを、ダンパー2に対して同軸となるように嵌合状に配置した形態の弾性部材6を備えた形態、更に、図7に示すように、ゴム材又は軟質の合成樹脂材からなる筒体6Fを前記ダンパーに対して同軸となるように嵌合状に配置した形態の弾性部材6を備えた形態を挙げることができる
【0014】
尚、本発明は、例示した実施の形態に限定するものでは無く、特許請求の範囲に記載した内容から逸脱しない範囲の構成による実施が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る免震装置の1形態を示す断面図。
【図2】図1の平面図。
【図3】横揺れ吸収状態を示す。
【図4】縦揺れ吸収状態を示す。
【図5】本発明に係る免震装置の他の形態を示し、(a)は断面図、(B)は平面図。
【図6】本発明に係る免震装置の他の形態を示し、(a)は断面図、(B)は平面図。
【図7】本発明に係る免震装置の他の形態を示し、(a)は断面図、(B)は平面図。
【符号の説明】
【0016】
1:免震装置
2:ダンパー
3:自在継手
4,5:支持板
6:弾性部材
61,62,63,64:ばね材
6A,6B,6C,6D:コイルスプリング
6E:コイルスプリング
6F:筒体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピストン状のダンパーを上下方向に配置するとともに、当該ダンパーの上下端部に夫々自在継手を介して支持板を連結し、且つ、前記ダンパーを中心としてそのダンパーを囲むように、縦方向及び横方向からの力により変形する弾性部材を、前記両支持板に亘って連結してなる免震装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−50800(P2008−50800A)
【公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−226513(P2006−226513)
【出願日】平成18年8月23日(2006.8.23)
【出願人】(390032001)株式会社大滝油圧 (9)
【Fターム(参考)】