説明

免震装置

【課題】地震の振動エネルギーの家屋本体への伝達を軽減乃至は遮断すると共に、その後に発生する津波に対しても、屋内の人の安全性を向上することの出来る、新規な構造の免震装置を提供すること。
【解決手段】基礎18と家屋本体14の一方に取り付けられる第一嵌合部材22と、該基礎18と該家屋本体14の他方に取り付けられる支持ゴム弾性体32を含んで構成された第二嵌合部材24を有しており、前記第一嵌合部材22と前記第二嵌合部材24が、上下方向で分離可能に嵌合されることにより、前記家屋本体14を前記基礎18に対して免震支持するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物に配設される免震装置に係り、特に、地震後の津波等による浸水時に、家屋本体が浮力により水に浮上する建築物に対して用いられる免震装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、地震の激しい振動による建築物の倒壊を防止する目的から、建築物に免震装置を取り付けることが提案されている。例えば、一般住宅等の小型建築物では、地盤に敷設された基礎に対して家屋本体が載置された構造とされている。そこで、特開2008−63720号公報(特許文献1)等に記載されているように、基礎と家屋本体の間に免震装置を介在させて、基礎から家屋本体への地震振動の伝達を軽減乃至は遮断して、家屋の倒壊防止を図る構造が提案されている。
【0003】
ところで、地震発生時には、地震の振動エネルギーによる建築物の倒壊等の被害に加えて、地震後に発生する津波によって甚大な被害が発生することがある。すなわち、東日本大震災の如き海底を震源とする巨大地震の発生時には、数十メートルを超える津波が防潮堤を乗り越え或いは破壊して陸上に押し寄せてくることとなる。
【0004】
ところが、従来の建築物においては、このような津波に対する具体的な対策が、殆どとられていないのが現状である。具体的には、特許文献1に記載の免震装置では、地震の振動を免震ゴムにより減衰することはできるものの、免震ゴムが基礎と家屋本体の土台の両方に固定されている。従って、津波の襲来時には、家屋本体が基礎に固定された状態で、家屋の大部分が水没したり、水流や瓦礫の衝突で家屋本体が水中で倒壊するおそれがあり、屋内の人の安全性を確保することが困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−63720号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上述の事情を背景に為されたものであって、その解決課題は、地震の振動エネルギーの家屋本体への伝達を軽減乃至は遮断すると共に、その後に発生する津波に対しても、屋内の人の安全性を向上することの出来る、新規な構造の免震装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第一の態様は、地盤に敷設された基礎に対して家屋本体が載置されており、該家屋本体が浸水時に及ぼされる浮力により水に浮くものである建築物に用いられると共に、該基礎と該家屋本体の間に配設される免震装置であって、前記基礎と前記家屋本体の一方に取り付けられる第一嵌合部材と、前記基礎と前記家屋本体の他方に取り付けられる支持ゴム弾性体を含んで構成された第二嵌合部材を有しており、前記第一嵌合部材と前記第二嵌合部材が、上下方向で分離可能に嵌合されることにより、前記家屋本体が前記基礎に対して免震支持されるようになっていることを、特徴とする。
【0008】
本発明によれば、第一嵌合部材と第二嵌合部材が嵌合することにより、家屋本体が、支持ゴム弾性体を介して基礎上に弾性支持される。これにより、地震で家屋本体に過大な影響を及ぼす横方向(水平方向)の振動が入力された場合には、支持ゴム弾性体自身のせん断変形により、振動を減衰して家屋本体への振動の入力を軽減することが出来る。その結果、地震振動による家屋の損傷を可及的に防止することが出来る。
【0009】
さらに、地震の後に津波が発生して、家屋本体の床下に水が浸入した場合には、第一嵌合部材と第二嵌合部材が上下方向に離脱可能とされていることから、水位の上昇に伴い家屋本体に浮力が及ぼされると、第一嵌合部材と第二嵌合部材の連結が速やかに解消されて、基礎との連結による歪等が加えられることを回避しつつ家屋本体を水に浮上させることができる。これにより、家屋が濁流に呑み込まれて水没するおそれを軽減して、屋内の人を水面上に浮上させることによって安全性を向上することが出来る。
【0010】
なお、家屋本体が浸水時に及ぼされる浮力により水に浮くものである建築物とは、木造家屋など、家屋本体が水よりも比重の小さい木材や発泡剤等を主な材料として構成されていることにより、浸水時に及ぼされる浮力により水に浮くものを全て含む概念であり、一般の木造家屋の他、支柱は軽量鉄骨を使用して構成しつつ、壁材や内装を水よりも比重の小さな材料を使用して水に浮上するもの等も含む。
【0011】
本発明の第二の態様は、前記第一の態様に記載のものにおいて、前記第一嵌合部材と前記第二嵌合部材の一方に凸状部が形成されていると共に、前記第一嵌合部材と前記第二嵌合部材の他方に前記凸状部が嵌合する凹状部が形成されているものである。
【0012】
本態様によれば、第一嵌合部材と第二嵌合部材の嵌合を容易に行なうことが出来る。そして、凹状部に凸状部が入り込むことにより、第一嵌合部材と第二嵌合部材が凹凸係合して、相互の横方向(水平方向)の位置ずれが軽減される。その結果、家屋本体を基礎に安定して位置決めすることが出来る。また、第一嵌合部材と第二嵌合部材との相互の横ずれを阻止することによって、支持ゴム弾性体の横方向のせん断変形を安定して生ぜしめることが出来て、支持ゴム弾性体による振動減衰効果をより安定的に発揮することが出来る。
【0013】
本発明の第三の態様は、前記第二の態様に記載のものにおいて、前記凸状部と前記凹状部との間に緩衝ゴムが配設されているものである。
【0014】
このようにすれば、凸状部と凹状部の相互の打ち当たりによる衝撃を軽減することが出来る。これにより、打ち当たりに起因する異音の発生や、第一嵌合部材と第二嵌合部材の損傷のおそれを軽減することが出来る。また、緩衝ゴムを介在することにより、凸状部を凹状部に対して位置決めして、相互の位置ずれをより確実に低減して支持ゴム弾性体のせん断変形に基づく振動減衰効果をより効果的に得ることが出来る。
【0015】
本発明の第四の態様は、前記第一〜第三の何れか1つの態様に記載のものにおいて、前記第一嵌合部材が、凸状部を有する取付板金具によって構成されている一方、前記第二嵌合部材が、前記支持ゴム弾性体の一方の端部に固定された取付板部と、前記支持ゴム弾性体の他方の端部に固定されて外方に開口する凹状金具を含んで構成されており、前記第二嵌合部材の前記凹状金具に前記第一嵌合部の前記凸状部が嵌め入れられるようになっているものである。
【0016】
本態様によれば、支持ゴム弾性体の一方の端部に固定された取付板部を用いて、第二嵌合部材を家屋本体又は基礎に容易に取り付けることが出来る。そして、取付板金具の凸状部を凹状金具に嵌め入れることによって、第一嵌合部材と第二嵌合部材を容易に連結することが出来る。
【0017】
本発明の第五の態様は、前記第一〜第三の何れか1つの態様に記載のものにおいて、前記第一嵌合部材が、凹状部を有する取付板金具によって構成される一方、
前記第二嵌合部材が、前記支持ゴム弾性体の一方の端部に固定された取付板部と、前記支持ゴム弾性体の他方の端部に埋設状態で固定された補強金具とを含んで構成されており、前記第二嵌合部材の前記支持ゴム弾性体の他方の端部が前記第一嵌合部材の前記凹状部に嵌め入れられるようになっているものである。
【0018】
本態様によれば、支持ゴム弾性体の一方の端部に固定された取付板部を用いて、第二嵌合部材を家屋本体又は基礎に容易に取り付けることが出来る。また、補強金具が支持ゴム弾性体に埋設されていることから、補強金具が支持ゴム弾性体から外れるおそれが軽減されている。それと共に、補強金具の回りに支持ゴム弾性体が設けられて、補強金具と第一嵌合部材の凹状部との間に支持ゴム弾性体が介在されることから、部品点数を増加することなく、第一嵌合部材と第二嵌合部材の間の緩衝ゴムを構成することが出来る。
【0019】
本発明の第六の態様は、前記第一〜第五の何れか1つの態様に記載のものにおいて、前記支持ゴム弾性体に、水平方向に広がるリテーナプレートが設けられているものである。
【0020】
本態様によれば、支持ゴム弾性体の弾性変形がリテーナプレートで制限的に拘束されて、リテーナプレートによる拘束力が圧縮方向の弾性変形に対して大きく作用する一方、それに直交するせん断方向の弾性変形に対してはそれ程作用し得ないこととなる。これにより、圧縮方向で大きなばね剛性を発揮して家屋本体を安定的に支持すると共に免震装置の耐久性を向上しつつ、せん断方向で小さなばね剛性を発揮して優れた免震効果を得ることが出来る。
【発明の効果】
【0021】
本発明に従う構造とされた免震装置においては、基礎と家屋本体の一方に取り付けられる第一嵌合部材と、他方に取り付けられる支持ゴム弾性体を含んで構成された第二嵌合部材とを備え、これら第一嵌合部材と第二嵌合部材を上下方向で分離可能に嵌合した。これにより、地震によって横方向の振動が家屋本体に入力された場合には、支持ゴム弾性体のせん断変形に基づいて振動を低減することにより、家屋の倒壊を阻止することが出来る。更に、地震の後に津波が発生して、浸水により家屋本体に浮力が及ぼされた場合には、第一嵌合部材と第二嵌合部材を分離することによって、家屋本体を基礎から切り離して、水面に浮上させることが出来る。これにより、家屋本体内の人を家屋本体と共に水面上に浮き上がらせて、安全性を向上することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の第一の実施形態としての免震装置を備えた建築物の説明図。
【図2】本発明の第一の実施形態としての免震装置の断面説明図。
【図3】本発明の第二の実施形態としての免震装置の断面説明図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0024】
先ず、図1に、本発明の第一の実施形態としての免震装置10を備えた建築物12を示す。建築物12は一般住宅等の小型建築物であり、家屋本体14が、地盤16に敷設された基礎18の上に、複数の免震装置10を介して載置された構造とされている。なお、図1においては、免震装置10の大きさを誇張して示している。
【0025】
家屋本体14は例えば木造軸組構法や木造枠組壁構法で建築された木造建築家屋であり、詳細な図示は省略するが、木材からなる土台20に柱などが組み立てられて建築されている。家屋本体14は、部分的に鉄骨が用いられているなどしても良いが、大部分が木材等の、比重が小さく水に浮く材料を用いて構成されている。一方、基礎18は、コンクリートで地盤16上に敷設された従来公知の例えば布基礎やベタ基礎等である。
【0026】
これら基礎18と家屋本体14の土台20の間に、免震装置10が配設されている。図2に示すように、免震装置10は、家屋本体14側に取り付けられた第一嵌合部材22と、基礎18側に取り付けられた第二嵌合部材24を含んで構成されている。
【0027】
本実施形態における第一嵌合部材22は、取付板金具26によって構成されている。取付板金具26は、略円板状の金属板の中央部分が突出されることにより、中央部分に略円柱状の凸状部28を有すると共に、凸状部28の突出基端縁部から全周に亘って径方向外方に広がる外周板部30とを有している。図示は省略するが、取付板金具26は、例えば外周板部30に貫設されたボルト穴を通じて、土台20にボルト等で固定される。これにより、取付板金具26は、凸状部28を土台20から突出させた状態で土台20に固定されている。
【0028】
一方、第二嵌合部材24は、支持ゴム弾性体32の一方の端部に取付板部34が固定されていると共に、他方の端部に凹状金具36が固定された構造とされている。取付板部34は、円形や矩形の平面形状を有する金属板とされている。取付板部34は、支持ゴム弾性体32の全周から外方に突出される大きさをもって形成されている。また、凹状金具36は、略円板状の金属板の中央部分が窪まされることにより、中央部分に凹状部38を有すると共に、凹状部38の開口端縁部から全周に亘って径方向外方に広がるフランジ状部40とを有する略カップ形状とされている。
【0029】
そして、取付板部34と凹状金具36が略同一中心軸上で離隔配置されており、これら取付板部34と凹状金具36の対向面間が、支持ゴム弾性体32によって弾性的に連結されている。支持ゴム弾性体32は、取付板部34から凹状金具36に行くに連れて径寸法が次第に小さくなる略円錐台形状とされている。また、支持ゴム弾性体32において、取付板部34と凹状金具36に被着される軸方向(図2中、上下方向)の両端縁部は、僅かに拡径されている。なお、支持ゴム弾性体32の全体形状は、設置形態等に応じて適宜の形状が採用され、断面形状において正方形や長方形等の矩形状断面や、六角形等の多角形状断面、楕円形状断面等としても良い。
【0030】
凹状金具36は、凹状部38の開口方向を取付板部34の反対側に向けた状態で支持ゴム弾性体32に連結されている。これにより、凹状部38は、第二嵌合部材24の外方に開口されている。そして、凹状部38の内面には、緩衝ゴム42が被着されている。緩衝ゴム42は薄肉のシールゴムとされており、凹状部38の内面を形成する内周面44と内底面の全面に亘って被着されていると共に、凹状部38の開口縁部から延び出してフランジ状部40の上面にまで回り込まされている。緩衝ゴム42には、凹状部38の内周面44から凹状部38の径方向内方に突出して、内周面44を全周に亘って連続して延びるシールリップ状の突条部46が一体形成されている。
【0031】
なお、第二嵌合部材24は、従来公知の各種の方法を用いて形成することが可能である。例えば、加硫成形金型を用いて、該金型内に取付板部34と凹状金具36をセットした状態でゴム組成物を注入することにより、支持ゴム弾性体32を加硫成形して取付板部34および凹状金具36に加硫接着すると共に、緩衝ゴム42を加硫成形して凹状金具36に加硫接着しても良い。或いは、適当な接着剤を用いて、別途に成形された支持ゴム弾性体32と緩衝ゴム42を取付板部34および凹状金具36にそれぞれ接着する等しても良い。
【0032】
このような第二嵌合部材24は、詳細な図示は省略するが、例えば取付板部34が基礎18の上面に重ね合わされて、取付板部34に貫設されたボルト穴に基礎18上に突設されたアンカーボルトが挿通されて固定される。これにより、第二嵌合部材24は、凹状金具36の凹状部38の開口方向を上方(図2中、上方)に向けた状態で、基礎18に取り付けられる。
【0033】
そして、第一嵌合部材22が取り付けられた土台20が、第二嵌合部材24が取り付けられた基礎18に重ね合わされて、取付板金具26の凸状部28が、凹状金具36の凹状部38に上方(図2中、上方)から嵌め入れられて嵌合される。なお、凹状部38への嵌合状態で、凸状部28は、全周に亘って凹状部38の内周面44で囲まれている。これにより、図2(a)に示したように、第一嵌合部材22と第二嵌合部材24が上下方向で嵌合されて、土台20が免震装置10を介して、基礎18上に敷設される。その後、従来公知の構法に従って、土台20に柱などが組み付けられて、家屋本体14が建築される。
【0034】
このような構造とされた免震装置10を用いた建築物12によれば、家屋本体14が、免震装置10の支持ゴム弾性体32を介して、基礎18上に弾性支持される。これにより、地震で横方向(図2中、左右方向)の振動が入力された場合には、支持ゴム弾性体32がせん断方向(図2中、左右方向)に変形して振動を減衰することにより、地盤16の揺れの家屋本体14への伝達を軽減して、家屋本体14を免震支持することが出来る。その結果、地震振動による家屋の倒壊のおそれを軽減することが出来る。
【0035】
特に本実施形態においては、第二嵌合部材24における凹状金具36の凹状部38に、第一嵌合部材22を構成する取付板金具26の凸状部28が入り込んで嵌合することにより、第一嵌合部材22と第二嵌合部材24が連結されている。これにより、地震による横方向の振動入力時に、取付板金具26の凸状部28を凹状金具36の内周面44で係止して、取付板金具26と凹状金具36の相互の横方向の位置ずれを軽減することが出来る。その結果、支持ゴム弾性体32の横方向のせん断変形を安定して生ぜしめることが出来て、せん断変形に基づく免震効果をより確実且つ効果的に発揮することが出来る。
【0036】
さらに、取付板金具26と凹状金具36の間に、緩衝ゴム42が介在されている。これにより、取付板金具26が凹状金具36に打ち当たることに起因する異音の発生を抑えることが出来る。また、取付板金具26を凹状金具36により精度良く位置決めすることが出来て、支持ゴム弾性体32による振動減衰効果をより効果的に得ることが出来る。
【0037】
そして、地震の後に津波が発生して、家屋本体14の床下に水が浸入して水位が上昇すると、家屋本体14は木材などの比重の小さな材料で構成されていることから、浮力で水に浮き上げられる。これにより、図2(b)に示したように、第一嵌合部材22の取付板金具26が上方(図2中、上方)に浮き上げられて、第二嵌合部材24の凹状金具36との嵌合状態が解除される。その結果、第一嵌合部材22が第二嵌合部材24から分離されて、家屋本体14を基礎18から切り離して水上に浮上させることが可能とされており、家屋本体14内の人を家屋本体14と共に水上に浮き上がらせて、安全性を向上することが出来る。特に本実施形態においては、緩衝ゴム42に突条部46が形成されていることにより、緩衝ゴム42が取付板金具26と凹状金具36との隙間の全体を埋めることなく介在されていることから、取付板金具26の凹状金具36からの離脱が容易に行えるようにされている。
【0038】
次に、図3に、本発明の第二の実施形態としての免震装置50を示す。なお、以下の説明において、前記第一の実施形態と同様の構造とされた部材および部位には、図中に前記第一の実施形態と同一の符号を付することにより、その説明を適宜に省略する。
【0039】
本実施形態において第一嵌合部材52を構成する取付板金具54は、略円板状の金属板の中央部分が窪まされることにより、中央部分に凹状部56を有すると共に、凹状部56の開口端縁部から全周に亘って径方向外方に広がるフランジ状部58を有する略逆カップ形状とされている。図示は省略するが、取付板金具54は、例えば凹状部56の上底部に貫設されたねじ穴を通じて、土台20にねじ等で固定される。これにより、取付板金具54は、凹状部56を基礎18側に開口させた状態で土台20に固定されている。
【0040】
一方、第二嵌合部材60は、支持ゴム弾性体62の一方の端部に取付板部34が固定されていると共に、他方の端部63に補強金具64が埋設状態で固定された構造とされている。
【0041】
補強金具64は略円板形状とされている。補強金具64の外周縁部には、立壁部66が全周に亘って立ち上げられて形成されており、地震発生時の横方向(図3中、左右方向)荷重に対する強度が確保されている。また、補強金具64の中央部分には、立壁部66の立ち上がり方向(図3中、上方)と同方向に突出する台地状突部68が形成されている。
【0042】
また、本実施形態における支持ゴム弾性体62は、複数(本実施形態においては、4つ)のゴム層70a〜70dと、複数(本実施形態においては、3つ)のリテーナプレート72が交互に積層された積層構造体とされている。ゴム層70aには、補強金具64が埋設されている。これにより、補強金具64の上面および外周面には、ゴム層70aが回り込まされてなるシールゴム74が被着されている。特に、シールゴム74において、補強金具64における立壁部66の外周面に被着された部分には、補強金具64の径方向(図3中、左右方向)で外方に突出して、全周に亘って連続して延びるシールリップ状の突条部76が一体形成されている。また、ゴム層70b,70c,70dは、それぞれ、略一定の円形断面をもって延びる円柱形状とされており、互いに略同じ大きさとされている。
【0043】
一方、リテーナプレート72は、それぞれ、ゴム層70a〜70dよりも大きな剛性を有する金属板や硬質樹脂板等によって形成されている。リテーナプレート72は、突条部76を除くゴム層70aおよびゴム層70b〜70dよりも大きな外径寸法を有する円板形状とされており、補強金具64の外径寸法と略等しい大きさに設定されている。そして、各ゴム層70a〜70dの間にリテーナプレート72がそれぞれ介在されて、各ゴム層70a〜70dに固着されている。これにより、複数のリテーナプレート72が、支持ゴム弾性体62の軸方向(図3中、上下方向)で所定距離を隔てて、支持ゴム弾性体62の軸方向に直交して広がるようにして、相互に平行に配設されている。また、ゴム層70dにおいてリテーナプレート72と反対側の端面には、取付板部34が固着されている。
【0044】
なお、本実施形態における第二嵌合部材60も、前記第一の実施形態としての第二嵌合部材24と同様に、従来公知の各種の方法を用いて形成することが可能である。即ち、加硫成形金型に補強金具64と取付板部34、および複数のリテーナプレート72をセットした状態でゴム組成物を注入して、ゴム層70a〜70dの成形と同時に加硫接着を行っても良いし、補強金具64を埋設したゴム層70aと、残りのゴム層70b〜70dを各別に形成したのちに、適当な接着剤を用いて取付板部34およびリテーナプレート72を接着する等しても良い。なお、リテーナプレート72は、必ずしも支持ゴム弾性体62の外部に露出して設けられている必要はなく、例えば、ゴム層70a〜70dを一体成形品として、複数のリテーナプレート72を支持ゴム弾性体62内に埋設しても良い。
【0045】
このような第二嵌合部材60は、前記第一の実施形態と同様に、取付板部34が図示しないアンカーボルト等を用いて、補強金具64が埋設された支持ゴム弾性体62の端部63を上方(図3中、上方)に突出した状態で、基礎18に固定される。これにより、本実施形態においては、支持ゴム弾性体62の端部63が凸状部とされている。そして、第一嵌合部材52が取り付けられた土台20が上方から重ね合わされて、補強金具64が埋設された支持ゴム弾性体62の端部63が、第一嵌合部材52の凹状部56に嵌め入れられる。これにより、第一嵌合部材52と第二嵌合部材60が上下方向で嵌合されて、土台20が免震装置50を介して、基礎18上に敷設される。
【0046】
本実施形態に従う構造とされた免震装置50によれば、第二嵌合部材60において、補強金具64が支持ゴム弾性体62の端部63に埋設されている。これにより、補強金具64が支持ゴム弾性体62から外れるおそれが回避されている。更に、補強金具64の周囲にシールゴム74が被着形成されることにより、第一嵌合部材52との嵌合状態において、取付板金具54と補強金具64との間にシールゴム74を介在させることが出来る。その結果、シールゴム74によって、部品点数の増加を招くことなしに緩衝ゴムを形成することが出来て、補強金具64と取付板金具54が直接に打ち当たることに起因する異音の発生や免震装置50の損傷のおそれを回避することが出来る。特に、シールゴム74に突条部76が形成されていることにより、シールゴム74が支持ゴム弾性体62の端部63と取付板金具54との隙間の全体を埋めることなく介在されていることから、第二嵌合部材60からの第一嵌合部材52の離脱も容易に行うことが出来る。
【0047】
また、支持ゴム弾性体62の軸方向(図3中、上下方向)で、複数のリテーナプレート72が、水平方向(図3中、左右方向)に広がるようにして設けられている。これにより、支持ゴム弾性体62の圧縮方向(図3中、上下方向)の弾性変形をリテーナプレート72で制限的に拘束して高いばね剛性を発揮することにより、家屋本体14を安定的に支持すると共に家屋本体14の荷重に対する免震装置50の耐久性を向上することが出来ると共に、水平方向(図3中、左右方向)の弾性変形は比較的容易に許容して低いばね剛性を発揮することにより、地震による水平方向の揺れに対して有効な免震効果を得ることが出来る。
【0048】
以上、本発明の実施形態について詳述してきたが、本発明はその具体的な記載によって限定されない。例えば、前記各実施形態においては、第一嵌合部材が家屋本体側、第二嵌合部材が基礎側に設けられていたが、第一嵌合部材を基礎側、第二嵌合部材を家屋本体側に設けても良い。
【0049】
また、第一嵌合部材と第二嵌合部材の間に介在する緩衝ゴムは必ずしも必要ではないが、例えば、前記第一の実施形態(図2参照)において、緩衝ゴム42を取付板金具26の凸状部28の外周面に被着形成する等しても良い。
【符号の説明】
【0050】
10,50:免震装置、12:建築物、14:家屋本体、16:地盤、18:基礎、20:土台、22,52:第一嵌合部材、24,60:第二嵌合部材、26,54:取付板金具、28:凸状部、32:支持ゴム弾性体、34:取付板部、36:凹状金具、38,56:凹状部、42:緩衝ゴム、60:第二嵌合部材、62:支持ゴム弾性体、63:端部(凸状部)、64:補強金具、70a〜d:ゴム層、72:リテーナプレート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤に敷設された基礎に対して家屋本体が載置されており、該家屋本体が浸水時に及ぼされる浮力により水に浮くものである建築物に用いられると共に、該基礎と該家屋本体の間に配設される免震装置であって、
前記基礎と前記家屋本体の一方に取り付けられる第一嵌合部材と、
前記基礎と前記家屋本体の他方に取り付けられる支持ゴム弾性体を含んで構成された第二嵌合部材を有しており、
前記第一嵌合部材と前記第二嵌合部材が、上下方向で分離可能に嵌合されることにより、前記家屋本体が前記基礎に対して免震支持されるようになっている
ことを特徴とする免震装置。
【請求項2】
前記第一嵌合部材と前記第二嵌合部材の一方に凸状部が形成されていると共に、前記第一嵌合部材と前記第二嵌合部材の他方に前記凸状部が嵌合する凹状部が形成されている
請求項1に記載の免震装置。
【請求項3】
前記凸状部と前記凹状部との間に緩衝ゴムが配設されている
請求項2に記載の免震装置。
【請求項4】
前記第一嵌合部材が、凸状部を有する取付板金具によって構成されている一方、前記第二嵌合部材が、前記支持ゴム弾性体の一方の端部に固定された取付板部と、前記支持ゴム弾性体の他方の端部に固定されて外方に開口する凹状金具を含んで構成されており、
前記第二嵌合部材の前記凹状金具に前記第一嵌合部の前記凸状部が嵌め入れられるようになっている
請求項1〜3の何れか1項に記載の免震装置。
【請求項5】
前記第一嵌合部材が、凹状部を有する取付板金具によって構成される一方、
前記第二嵌合部材が、前記支持ゴム弾性体の一方の端部に固定された取付板部と、前記支持ゴム弾性体の他方の端部に埋設状態で固定された補強金具を含んで構成されており、
前記第二嵌合部材の前記支持ゴム弾性体の他方の端部が前記第一嵌合部材の前記凹状部に嵌め入れられるようになっている
請求項1〜3の何れか1項に記載の免震装置。
【請求項6】
前記支持ゴム弾性体に、水平方向に広がるリテーナプレートが設けられている
請求項1〜5の何れか1項に記載の免震装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−246643(P2012−246643A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−117590(P2011−117590)
【出願日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【出願人】(000219602)東海ゴム工業株式会社 (1,983)
【Fターム(参考)】