説明

入力装置及び電子機器

【課題】好適な操作が可能な入力装置を提供すること。
【解決手段】操作方向(+X方向、−X方向)に移動可能な入力操作を行うための操作部材(ボタン21)と、前記操作部材に前記操作方向の力を与え、前記操作部材を前記操作方向に移動させるアクチュエータ(電動シリンダ30)と、前記入力操作部材の状態を検出するセンサ(ロードセル40、変位センサ41)と、前記センサの出力に応じて前記アクチュエータを制御する制御部(コントローラ50)とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、好適な操作が可能な入力装置及びこの入力装置を備えた電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、電子鍵盤楽器に装備した鍵盤の場合、通常のピアノの鍵盤のように、鍵盤の裏側に弦を叩くためのハンマーのような機構を設ける必要がなく、単に各鍵盤に対応して鍵スイッチを設け、この鍵スイッチを駆動するだけで足りるため、鍵盤をタッチしたときの感触は通常のピアノの鍵盤の場合とは大きくかけ離れている。
【0003】
このため、鍵盤などの演奏操作子や指により入力操作を行う入力操作子の操作感覚を制御し、通常のピアノの鍵盤のタッチ感覚に近づけるようにした操作装置が提案されている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3191327号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は好適な操作が可能な入力装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の請求項1に記載の入力装置は、操作方向に移動可能な入力操作を行うための操作部材と、前記操作部材に前記操作方向の力を与え、前記操作部材を前記操作方向に移動させるアクチュエータと、前記入力操作部材の状態を検出するセンサと、前記センサの出力に応じて前記アクチュエータを制御する制御部とを含むことを特徴とする。
【0007】
本発明の請求項8に記載の入力装置は、操作方向に移動可能な入力操作を行うための操作部材と、前記操作部材に前記操作方向の力を与え、前記操作部材を前記操作方向に移動させるアクチュエータと、前記操作部材の状態を検出するセンサと、前記センサの出力に応じて前記アクチュエータを制御する制御部と、を含み、前記制御部は、使用者により前記操作部材を用いた入力操作が行われたとき、該操作部材を介して前記使用者に複数の操作感を与えるように前記アクチュエータを制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、好適な操作が可能な入力装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の入力装置を備えた電子機器の概要を示すブロック図である。
【図2】図1に示す入力装置のコントローラに入力する荷重量を示すグラフである。
【図3】図1に示す入力装置の変位センサで計測した実測値を示すグラフである。
【図4】図1に示す入力装置のロードセルで計測した実測値を示すグラフである。
【図5】図1に示す入力装置の動作を示すフローチャートである。
【図6】本発明の他の実施例の入力装置を備えた電子機器の概要を示すブロック図である。
【図7】図6に示す入力装置のコントローラに入力する荷重量を示すグラフである。
【図8】図6に示す入力装置のコントローラに入力する別の荷重量を示すグラフである。
【図9】図6に示す入力装置の変位センサで計測した実測値を示すグラフである。
【図10】図6に示す入力装置のロードセルで計測した実測値を示すグラフである。
【図11】図6に示す入力装置の動作の一部を示すフローチャートである。
【図12】図6に示す入力装置の動作の残りの部分を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0010】
図1は本発明の入力装置の一実施形態を示している。
【0011】
この図1に示すように、電子機器(例えばスチルカメラ、ビデオカメラ、レンズ鏡筒、カメラボディ、携帯電話、乗用車など)のパネル10の所要箇所に穴11が形成され、この穴11に操作方向(+X方向、−X方向)に移動可能な、入力操作を行うための、押しボタン、タクトスイッチ(登録商標 小型プッシュスイッチ)、カメラのレリーズスイッチなどの操作部材としてのボタン部材20が配置される。
【0012】
ボタン部材20は、穴11からパネル10の表側に突出するボタン21と、穴11周辺のパネル10裏面に接触してボタン21が穴11からパネル10の表側に抜け出るのを防止する鍔部22とを備える。
【0013】
パネル10の裏面側には、ボタン部材20に操作方向(+X方向、−X方向)の力を与え、ボタン部材20をこの操作方向で移動させるアクチュエータとしての電動シリンダ30が配置される。
【0014】
電動シリンダ30は、荷重と位置の制御が行える荷重・位置制御型式で、コイル、永久磁石などを備えた筒状の駆動部31と、この駆動部31を貫通して配置されたロッド32とを有する。
【0015】
本実施形態では電動シリンダ30を採用しているが、アクチュエータとしてはこの電動シリンダの代わりにステッピングモータ、ACモータ、DCモータなどを使用することが可能ある。
【0016】
ロッド32の一端は、ボタン21に常時接触しており、図1に示す場合ではボタン21を−X方向に押して鍔部22がパネル10の裏面に接触した状態を維持する。また、ロッド32の一端側には、ボタン部材20からロッド32に作用する荷重とロッド32からボタン部材20に作用する荷重とを検出する荷重検出センサとしてのロードセル40が配置される。ロッド32の他端側であってロッド32の軸線上には、ロッド32と間隔をあけてロッド32(ボタン21)の変位量を検出する変位検出センサとしての変位センサ41が配置される。
【0017】
ロードセル40は、例えば歪みゲージからなり、荷重により電気抵抗値が変化することを利用して荷重を検出する。
【0018】
変位センサ41は、非接触式で、例えば光学式変位センサ(正反射方式の変位センサ)からなり、ロッド32からの正反射光を受光してロッド32の他端と変位センサ41との間の距離の変化を検出する。ロッド32の他端と変位センサ41との間の距離の変化はボタン21の変位に相当し、変位センサ41の出力からボタン21の変位量が検出できる。
【0019】
ロードセル40は入力ポート51を介して、変位センサ41は入力ポート52を介してそれぞれ制御部としてのコントローラ50に接続され、検出結果をそれぞれコントローラ50に出力する。
【0020】
コントローラ50は、電動シリンダ30の駆動を制御するもので、上述した入力ポート51,52の他に出力ポート53が装備され、この出力ポート53を介して制御信号(制御電圧)が電動シリンダ30の駆動部31に出力される。
【0021】
コントローラ50による電動シリンダ30の制御は、使用者が指をボタン21にタッチしてから所定時間経過する時まで(初期抵抗時)に行われる第1制御と、この第1制御後の僅かな時間帯(脱抵抗時)に行われるボタン21からの抵抗が減少したように使用者に感じさせる第2制御と、この第2制御後に瞬間的にボタン21から使用者にクリック感を感じさせる第3制御と、この第3制御後に使用者が指をボタン21から離したとき、ボタン21を元の位置(鍔部22がパネル11の裏面に接触する位置)に復帰させる第4制御とに区分される。
【0022】
なお、第3制御でのクリック感発生時では、第2制御の脱抵抗時とボタン21の変位量が変化することなくロードセル40で計測した荷重と同じ大きさで反対方向(−X方向)の抵抗力量を発生させるように電動シリンダ30を制御する。また、第4制御でのボタン21を元の位置に復帰させる時では、第2制御の脱抵抗時と同じ力量を発生させるように電動シリンダ30を制御する。
【0023】
コントローラ50には、入力機器60が接続されていて、この入力機器60を介して初期抵抗時と脱抵抗時に電動シリンダ30からボタン部材20に付与する目標値としての荷重量と変位量に関するデータ(荷重量情報、変位量情報)が入力される。
【0024】
図2は、入力機器60を介してコントローラ50に入力される初期抵抗時と脱抵抗時の荷重量情報を示すグラフである。
【0025】
同図に示すように、初期抵抗時では電動シリンダ30からボタン部材20に付与される抵抗力が一定に制御され(第1制御 図2の初期抵抗時を参照)、脱抵抗時では初期抵抗時よりも抵抗力が小さくなるように制御(第2制御 図2の脱抵抗時を参照)されるように、荷重量情報がコントローラ50に入力される。使用者の指にボタン21からクリック感を与える制御(第3制御 図2のクリック感発生時を参照)では、電動シリンダ30が瞬間的に荷重(ロードセル40で計測した荷重と同じ大きさでボタン21の押圧方向と反対方向の力)を発生させ、その後、急速に減衰する。瞬間的に発生した荷重はクリック感としてボタン21を介して使用者の指に伝わる。
【0026】
クリック感は、初期抵抗時と脱抵抗時での電動シリンダ30からの抵抗力量とボタン21の変位量によって決まり、この初期抵抗時と脱抵抗時での抵抗力量と変位量を変更することによってクリック感を種々設定することが出来る。
【0027】
したがって、単独のボタン部材20に対してコントローラ50による電動シリンダ30の制御によって種々のクリック感を発生させることが可能となる。
【0028】
図3は、第1制御、第2制御及び第3制御を実行したときの変位センサ41の計測結果を示す。同図に示すように、第1制御が実行される初期抵抗時ではボタン21は電動シリンダ30からの抵抗力を受けてボタン21は変位しない。第2制御が実行される脱抵抗時では電動シリンダ30からの抵抗力が減り、ボタン21は操作方向(+X方向)に略1mmほど変位する。クリック感発生時ではボタン21は脱抵抗時から変位することなく、脱抵抗時に変位したボタン21の位置のままである。
【0029】
図4は第1制御、第2制御及び第3制御を実行したときのロードセル40の計測結果を示す。同図に示すように、第1制御が実行される初期抵抗時ではボタン21の操作に伴って計測荷重が増加し、計測荷重が初期抵抗時の抵抗力量(荷重量)を超えると、脱抵抗時の第2制御に移行し、電動シリンダ30からの抵抗力が減少するに伴って計測荷重が減少し、次いでクリック感発生時の第3制御に移行し、瞬間的に計測荷重が増大した後、急速に減衰する。
【0030】
コントローラ50には例えば図5示すフローチャートの内容を実行する駆動プログラムを記憶したROMからなるメモリ部54の他に、入力機器60を介して入力した複数の荷重量情報及び変位量情報を記憶した書き換え可能なRAMからなるメモリ部55が設けられる。
【0031】
コントローラ50は、電動シリンダ30の駆動制御に際し、メモリ部54から駆動プログラムを読み出して電動シリンダ30を駆動制御し、この駆動制御の過程でロードセル40によって計測した計測荷重と変位センサ41によって計測した計測変位とを入力し、これら計測荷重、計測変位と入力機器60から入力した目標値としての荷重量情報、変位量情報又はメモリ部55から選択して読み出した目標値としての荷重量情報、変位量情報と比較してフィードバック制御を実行する。
【0032】
次に、図5を参照して電動シリンダ30の駆動制御の内容を説明する。
【0033】
図5は初期抵抗時と脱抵抗時での電動シリンダ30の制御内容(第1制御、第2制御)を示すフローチャートで、このフローチャートの左の列のステップS13乃至S18において初期抵抗時での第1制御の内容を示し、中央の列のステップS19乃至S23において脱抵抗時での第2制御の内容を示している。また、フローチャートの右の列のステップS24乃至S28においてボタン21が押し切られたときの制御内容を示し、中央の列のステップS29乃至S32においてボタン21を押すことを止めてボタン21が元の位置に復帰するときの制御内容を示している。
【0034】
予め、ステップS10で表現したいボタン21の変位量(目標値)と、初期抵抗時と脱抵抗時の抵抗力量(目標値)を決定する。
【0035】
次いで、ステップS11でステップS10において設定した変位量と抵抗力量を入力機器60からコントローラ50に入力する。
【0036】
ステップS12で入力した抵抗力量についてエラーチェックを実行する。すなわち、初期抵抗時の抵抗力量が脱抵抗時の抵抗力量よりも小さいとき、これを入力エラーとしてとらえ、ステップS10に戻る。
【0037】
初期抵抗時の抵抗力量が脱抵抗時の抵抗力量よりも大きいときは、入力エラーなしと判断されてステップS13に移行して電動シリンダ30の制御を開始する。
【0038】
ステップS13で初期抵抗時と脱抵抗時の抵抗力量と変位量の関係を入力(抵抗力量と変位量を調整)する。具体的には、初期抵抗時ではボタン21を押してもこれによりボタン21が変位しない(変位量ゼロにする)ようにする抵抗力量とし、また脱抵抗時ではボタン21を押した方向(+X方向)に例えば略1mm程度変位するように初期抵抗時よりも小さい抵抗力量となるように、抵抗力量と変位量を調整する。これは脱抵抗時後のクリック感発生時においてボタン21を介して操作者の指にはっきりとクリック感触が伝わるようにするためである。初期抵抗時には変位量がゼロで、このまま同じく変位量がゼロであるクリック感触発生時に移行してもクリック感触が十分得られないからである。
【0039】
ステップS14でボタン部材20(ボタン21)が指で押されることによってロードセル40が荷重を測定し始めると同時に電動シリンダ30が動作を開始する。
【0040】
ステップS15でボタン部材20(ボタン21)が指で押されることによって生じる荷重をロードセル40で計測し、また変位を変位センサ41で計測する。
【0041】
ステップS16でロードセル40と変位センサ41の計測結果をコントローラ50に送る。
【0042】
ステップS17でロードセル40による計測荷重と入力された初期抵抗時の抵抗力量(目標値)とを比較する。
【0043】
ステップS18で計測荷重が初期抵抗時の抵抗力量を超えていないと判断したときにはステップS15に戻り、ステップS15、16、17を繰り返す(フィードバック制御を実行する)。一方、計測荷重が初期抵抗時の抵抗力量を超えたと判断したときにはステップS19に移行する。
【0044】
ステップS19で電動シリンダ30によって発生する抵抗力量を脱抵抗時の抵抗力量へ切り替える(第1制御から第2制御に切り替える)。
【0045】
ステップS20でボタン部材20(ボタン21)が指で押されることによって生じる荷重をロードセル40で計測し、また変位を変位センサ41で計測する。
【0046】
ステップS21でロードセル40と変位センサ41の計測結果をコントローラ50に送る。
【0047】
ステップS22で計測変位量と入力された脱抵抗時の変位量(目標値)とを比較する。
【0048】
ステップS23で計測変位量が入力された脱抵抗時の変位量と一致するか否かが判断される。一致すると判断された場合にはステップS24に移行する。
【0049】
ステップS24で電動シリンダ30が発生する抵抗力量を、指によって押される荷重量に切り替える。すなわち、指でボタン21を押した荷重と同じ大きさで方向が反対の荷重を抵抗力として電動シリンダ30からボタン21に作用するように電動シリンダ30の制御を切り替える。
【0050】
ステップS25でボタン部材20(ボタン21)が指で押されることによって生じる荷重をロードセル40で計測し、また変位を変位センサ41で計測する。
【0051】
ステップS26でロードセル40と変位センサ41の計測結果をコントローラ50に送る。
【0052】
ステップS27で計測変位量と入力された脱抵抗時の変位量(目標値)とを比較する。
【0053】
ステップS28で計測変位量が入力された変位量を超えていないと判断された場合にはステップS19に戻り、また計測変位量が入力された変位量とまだ一致していると判断された場合にはステップS25に戻る。
【0054】
上述したステップS24乃至S28は、ボタン21が押し切られた場合の制御内容で、この場合には脱抵抗時の第2制御を開始するステップS19に戻る。
【0055】
ステップS23で計測変位量が入力された脱抵抗時の変位量と一致しないと判断された場合にはステップS29に移行し、ステップS29で測定荷重と入力された脱抵抗時の抵抗力量(目標値)を比較する。
【0056】
ステップS30で計測荷重が脱抵抗時の抵抗力量よりも大きいと判断された場合はステップS20に戻り、小さいと判断された場合はステップS31に移行する。
【0057】
ステップS31で計測変位量と入力された変位量(目標値)を比較する。
【0058】
ステップS32で計測変位量がゼロの場合は駆動制御を終了し、ゼロでない場合はステップS20に戻る。
【0059】
上述したステップS29乃至S32は、ボタン21を押すことを終了又は中断した場合の制御内容を示し、この場合にはボタン21を元の位置(図1に示すように鍔部22がパネル10の裏面に接触した状態)に戻すように電動シリンダ30を制御する。
【0060】
本実施形態によれば、好適な操作が可能な入力装置を提供することができる。具体的には、初期抵抗時における第1制御と脱抵抗時における第2制御で電動シリンダ30からボタン部材20に作用する荷重量と電動シリンダ30によるボタン部材20の変位量を制御することにより、脱抵抗時後に発生するクリック感を種々変更することが可能である。すなわち、単独のボタン部材20に対して種々のクリック感を与えることが可能である。
【実施例2】
【0061】
図6乃至図11は本発明の入力装置の第2の実施形態を示している。
【0062】
本第2の実施形態の入力装置は、上述した図1乃至図5に示す第1の実施形態の入力装置とメモリ部56に記憶されている駆動プログラムの内容(図11、図12参照)が相違するだけで、構造上は何ら変わらない。図6中、図1に示す部分と同一部分には同一符号を付してその説明を省略する。
【0063】
本第2の実施形態の入力装置では、使用者により操作部材としてのボタン部材20(ボタン21)を用いた入力操作が行われたとき、入力操作の過程(ボタン21に触れてから全押しが完了する迄の過程)でボタン21を介して使用者に複数の操作感(例えば複数のクリック感)を与えるようにアクチュエータとしての電動シリンダ30を制御するようにしている。
【0064】
例えば、コントローラ50による電動シリンダ30の制御には、上述した第1実施形態で行われた制御、すなわち使用者が指をボタン21にタッチしてから所定時間経過する時まで(初期抵抗時)に行われる第1制御と、この第1制御後の僅かな時間帯(脱抵抗時)に行われるボタン21からの抵抗が減少したように使用者に感じさせる第2制御と、この第2制御後に瞬間的にボタン21から使用者にクリック感を感じさせる第3制御と、この第3制御後に使用者が指をボタン21から離したとき、ボタン21を元の位置(鍔部22がパネル11の裏面に接触する位置)に復帰させる第4制御の他に、第1制御と第2制御との間で半押し操作のためのクリック感を与える第5制御が含まれる。
【0065】
第5制御では、使用者が指をボタン21にタッチし、ボタン21を押し続ける過程で、第1制御の時にボタン21から受ける抵抗を減少させ、次いでボタン21からクリック感を受け、この後、ボタン21から抵抗を受けるように、電動シリンダ30を制御する。
【0066】
すなわち、第5制御は、ボタン21の全押しが完了するまでの半押しの過程において、使用者に対してクリック感を与えるようにする、電動シリンダ30の制御で、クリック感の大きさを異にすることによりクリック感を複数設定することが出来る。
【0067】
例えば、入力装置をカメラのレリーズスイッチ装置とした場合、ボタン21の最初の半押しでオートフォーカス操作を行うと、クリック感が発生し、続いての半押しでカメラの液晶ディスプレイに前画像を表示させる操作を行うと、別のクリック感が発生し、さらに続いての半押しでオートフォーカスのロック操作を行うと、また別のクリック感が発生するように、電動シリンダ30を制御して使用者に半押しの過程で複数のクリック感を与えるようにすることが出来る。
【0068】
クリック感発生時では、全押し時、半押し時の何れの場合でも、上述したように、ボタン21の変位量が変化することなくロードセル40で計測した荷重と同じ大きさでボタン21の押圧方向(+X方向)と反対方向(−X方向)の抵抗力量を発生させるように電動シリンダ30を制御する。
【0069】
なお、全押しクリック感発生時では、半押しクリック感発生時の場合よりもロードセル40で計測した荷重が大きいことから(ロードセル40での計測結果を示す図9参照)、電動シリンダ30からの−X方向の抵抗力量は半押しクリック感発生時のそれよりも大きく、全押し時のクリック感は半押し時のクリック感よりも大きく感じられる。そのためボタン21の押し込み操作が完了したことを使用者に対して確実に伝えることが出来る。
【0070】
図7は、入力機器60を介してコントローラ50に入力される初期抵抗時と半押し抵抗時と脱抵抗時の荷重量情報を示すグラフである。同グラフで、縦軸は荷重[N]を、横軸は時間をそれぞれ示す。
【0071】
同図に示すように、使用者によりボタン21を用いた入力操作が開始される、初期抵抗時では、電動シリンダ30からボタン部材20に付与される抵抗力が一定である(第1制御 図7の初期抵抗時の箇所を参照)。入力操作の開始後、半押しの脱抵抗時に移行するが、この半押しの脱抵抗時では、初期抵抗時よりも抵抗力が小さくなる(第5制御 図7の半押し脱抵抗時の箇所を参照)。半押しのクリック感発生時では、電動シリンダ30が瞬間的に荷重(ロードセル40で計測した荷重と同じ大きさで反対方向の力)を発生させる(第5制御 図7の半押しクリック感発生時の箇所を参照)。瞬間的に発生した荷重はクリック感としてボタン21を介して使用者の指に伝わる。半押しの抵抗時では、この発生した荷重を維持する(第5制御 図7の半押し抵抗時の箇所を参照)。全押し脱抵抗時では半押し抵抗時よりも抵抗力が瞬間的に小さくなる(第2制御 図7の全押し脱抵抗時の箇所を参照)。全押しクリック感発生時では、電動シリンダ30が瞬間的に荷重を発生させ、その後、発生した荷重が急速に減衰する(第3制御 図7の全押しクリック感発生時の箇所を参照)。電動シリンダ30が発生するこの全押しクリック感発生時での荷重は半押しクリック感発生時での荷重よりも大きく、これにより使用者は全押し操作が完了したことを、ボタン21を介して確実に知ることが出来る。
【0072】
なお、図7では、1回の半押し時クリック感と1回の全押し時クリック感を発生させる場合を示したが、図8に示すように半押し時クリック感を複数回(図8では3回)発生させるようにしてもよい。同図において、例えば、半押し第1クリック感発生時を上述したオートフォーカス操作が完了(図8の“AF”の箇所を参照)した際とし、また半押し第2クリック感発生時を上述したカメラの液晶ディスプレイに前画像を表示させる操作が完了(図8の“再生”の箇所を参照)した際とし、さらに半押し第3クリック感発生時を上述したオートフォーカスのロック操作が完了(図8の“AF−L”の箇所を参照)した際としてもよい。
【0073】
図9は、第1制御、第5制御、第2制御及び第3制御を実行したときの変位センサ41の計測結果を示す。同グラフで、縦軸は変位[m]を、横軸は時間を示す。
【0074】
同図に示すように、第1制御が実行される初期抵抗時ではボタン21を操作方向(+X方向)に変位させようとしても、ボタン21は電動シリンダ30からの抵抗力を受けるので、ボタン21が操作方向(+X方向)に変位するものの、その変位は緩やかである(図9の初期抵抗時の箇所を参照)。第5制御が行われる半押し時では、先ず電動シリンダ30からの抵抗力が初期抵抗時よりも減ることから、ボタン21は操作方向(+X方向)に急速に変位し(図9の半押し脱抵抗時の箇所を参照)、次いで電動シリンダ30からボタン21を介して瞬間的に力が作用してクリック感を与えるが(図9の半押しクリック感発生時の箇所を参照)、ボタン21は殆ど変位しない。この後、電動シリンダ30からボタン21を介して抵抗力を受け、ボタン21は操作方向(−X方向)に僅かに変位する(図9の半押し抵抗時の箇所を参照)。そして、第2制御が実行される全押し脱抵抗時では電動シリンダ30からの抵抗力が減り、ボタン21は半押し脱抵抗時よりもさらに操作方向(+X方向)に変位する(図9の全押し脱抵抗時の箇所を参照)。第3制御が実行される全押しクリック感発生時ではボタン21は全押し脱抵抗時から殆ど変位しない(図9の全押しクリック感発生時の箇所を参照)。最後に、図9には図示していないが、ボタン21は第4制御の実行によって第1制御が実行される前の元の位置に戻る。
【0075】
図10は第1制御、第5制御、第2制御及び第3制御を実行したときのロードセル40の計測結果を示す。同グラフで、縦軸は荷重[N]を、横軸は時間を示す。
同図に示すように、第1制御が実行される初期抵抗時ではボタン21の+X方向の操作に伴って計測荷重が増加し(図10の初期抵抗時の箇所を参照)、計測荷重が初期抵抗時の抵抗力量(荷重量)を超えると、第5制御に移行する。この第5制御では、まず電動シリンダ30からの抵抗力が減少するに伴って計測荷重が減少し(図10の半押し脱抵抗時の箇所を参照)、次いで半押しクリック感発生時に移行し、瞬間的に計測荷重が増加して減少する(図10の半押しクリック感発生時の箇所を参照)。この後、半押し抵抗時に移行し、電動シリンダ30からの抵抗力が増加するに伴って計測荷重が増加する(図10の半押し抵抗時の箇所を参照)。そして、第2制御が実行される全押し脱抵抗時では、電動シリンダ30からの抵抗力が減少するに伴って計測荷重が減少する(図10の全押し脱抵抗時の箇所を参照)。第3制御が実行される全押しクリック感発生時では瞬間的に計測荷重が増加して減少する(図10の全押しクリック感発生時の箇所を参照)。
【0076】
本第2の実施形態では、上述したように、メモリ部56には図5のフローチャートではなく、図11、図12に示すフローチャートの内容を実行する駆動プログラムが記憶させてある。
【0077】
コントローラ50は、上述した第1の実施形態の場合と同様に、電動シリンダ30の駆動制御に際し、メモリ部56から駆動プログラムを読み出して電動シリンダ30を駆動制御し、この駆動制御の過程でロードセル40によって計測した計測荷重と変位センサ41によって計測した計測変位とを入力し、これら計測荷重、計測変位と入力機器60から入力した目標値としての荷重量情報、変位量情報又はメモリ部55から選択して読み出した目標値としての荷重量情報、変位量情報と比較してフィードバック制御を実行する。
【0078】
次に、図11、図12を参照して電動シリンダ30の駆動制御の内容を説明する。
【0079】
先ずステップS40(パラメータ入力ステップ)で各種パラメータの入力操作を行う。この各種パラメータは、初期時における抵抗値(初期抵抗値)及び脱抵抗値と、半押し時における半押し箇所数、各箇所での抵抗値と脱抵抗値及び各位置と、全押し時における脱抵抗値及び位置であり、これらを入力機器60にそれぞれ入力して行う。
【0080】
次いでステップS41(動作開始ステップ)に移行し動作を開始する。先ずステップS40で入力機器60に予め入力した各種パラメータをコントローラ50に送信する。次いでボタン21が使用者の指で押されることによりロードセル40が荷重測定を開始する。同時に電動シリンダ30が動作を開始する。ボタン21に作用する荷重をロードセル40で計測し、またボタン21の位置を変位センサ41で計測して、コントローラ50にそれぞれ送信する。
【0081】
次いでステップS42(初期抵抗ステップ)に移行する。先ず測定荷重と入力された初期抵抗時の抵抗値とを比較する。測定荷重が初期抵抗時の抵抗値を超えた場合、電動シリンダ30によって発生する抵抗力量を半押し時における脱抵抗値に切り替える。
【0082】
次いでステップS43(半押し移行ステップ)に移行する。先ずボタン21に作用する荷重をロードセル40で計測し、ボタン21の位置を変位センサ41で計測して、コントローラ50にそれぞれ送信する。次いで測定変位量と入力変位量(ステップS40で入力した、半押し時クリック感が発生する位置)とを比較する。
【0083】
次いでステップS44で計測変位が入力変位量と一致するか否かを判断する。一致した場合にはステップS45に移行し、一致せずに入力変位量を超えない場合にはステップS46に移行する。
【0084】
ステップS45で電動シリンダ30によって発生する力量を使用者の指によって押される荷重値(指からボタン21に作用する荷重値で、ロードセル40によって計測される荷重値)に切り替え、電動シリンダ30はロードセル40での計測荷重と同じ大きさで且つ指からボタン21への荷重の作用方向(+X方向)と反対の方向(−X方向)の抵抗力量を発生させる。使用者はこの抵抗力量を、ボタン21を介してクリック感(半押し時クリック感)として感じ取る。次いで電動シリンダ30によって発生する抵抗力量をボタン21が位置する半押し時の抵抗力量に切り替える。次いでボタン21に作用する荷重をロードセル40で計測し、ボタン21の位置を変位センサ41で計測して、計測結果をコントローラ50にそれぞれ送信する。次いで測定荷重とボタン21が位置する箇所での入力抵抗力量(抵抗荷重)とを比較する。入力抵抗力量(抵抗荷重)を超えた場合、電動シリンダ30が発生する抵抗力量を全押し時の脱抵抗時における脱抵抗力量に切り替える。
【0085】
一方、ステップS46で計測変位が半押し時の最初のクリック箇所を超えたか否かを判断する。最初のクリック箇所を超えた場合にはステップS43に戻り、超えていない場合にはステップS47の計測終了ステップに移行する。
【0086】
ステップS47(計測終了ステップ)で測定荷重と入力された脱抵抗時の抵抗力量とを比較し、測定荷重が小さい場合(脱抵抗時の抵抗力量に至っていない場合)、測定変位量と入力された変位量とを比較する。最初のクリック箇所を超えていない場合には、ボタン21が操作する前の位置にあることを示しているので、計測を終了させる。
【0087】
ステップS48で予め入力した半押し箇所数に至ったか否かを判断する。残っている場合にはステップS43に戻り、ステップS43、ステップS44、ステップS45を繰り返す。すなわち、予め入力した半押し箇所(位置)を全て通過したか否かを判断する。半押し箇所がもう残っていない場合(半押し箇所を全て通過した場合)にはステップS49に移行する。
【0088】
ステップS49(全押し移行ステップ)でボタン21に作用する荷重をロードセル40で計測し、ボタン21の位置を変位センサ41で計測して、計測結果をコントローラ50にそれぞれ送信する。次いで測定変位量と入力変位量(ステップS40で入力した全押し時クリック感が発生する位置)とを比較する。
【0089】
ステップS50で計測変位が入力変位量と一致するか否かを判断する。一致した場合にはステップS51に移行し、一致せずに入力変位量を超えない場合にはステップS49に戻る。
【0090】
ステップS51で電動シリンダ30によって発生する力量を使用者の指によって押される荷重値(指からボタン21に作用する荷重値で、ロードセル40によって計測される荷重値)に切り替え、電動シリンダ30はロードセル40での計測荷重と同じ大きさで且つ指からボタン21への荷重の作用方向(+X方向)と反対の方向(−X方向)の抵抗力量を発生させる。使用者はこの抵抗力量を、ボタン21を介してクリック感(全押し時クリック感)として感じ取る。次いでボタン21に作用する荷重をロードセル40で計測し、ボタン21の位置を変位センサ41で計測して、計測結果をコントローラ50にそれぞれ送信する。次いで測定荷重とボタン21が位置する箇所での入力抵抗力量(抵抗荷重)とを比較する。
【0091】
ステップS52で測定変位量が入力された変位量を超えていないかを判断する。入力された変位量を超えていない場合にはステップS48に戻る。入力された変位量とまだ一致している場合にはステップS51に戻る。
【0092】
本第2の実施形態によれば、上述した第1の実施形態と同様の効果を奏する他に、ボタン21を押圧操作する過程で複数のクリック感を発生させることができ、種々の電子機器への適用が可能となる。
【0093】
なお、全押し時クリック感と半押し時クリック感は、電動シリンダ30からの抵抗力量とボタン21の変位量の双方を変更することによってクリック感を種々設定しているが、少なくとも抵抗力量と変位量の何れか一方を変更することによりクリック感を種々設定するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0094】
単独の押しボタンスイッチなどに対して複数のクリック感を持たせる必要があるときに適用される。
【符号の説明】
【0095】
10 電子機器のパネル
11 穴
20 ボタン部材(操作部材)
30 電動シリンダ(アクチュエータ)
40 ロードセル(荷重検出センサ)
41 変位センサ(変位検出センサ)
50 コントローラ(制御部)
54 メモリ部(記憶部)
55 メモリ部(記憶部)
56 メモリ部(記憶部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作方向に移動可能な入力操作を行うための操作部材と、
前記操作部材に前記操作方向の力を与え、前記操作部材を前記操作方向に移動させるアクチュエータと、
前記操作部材の状態を検出するセンサと、
前記センサの出力に応じて前記アクチュエータを制御する制御部と、を含むことを特徴とする入力装置。
【請求項2】
請求項1に記載の入力装置であって、
前記センサは、前記操作部材の変位を検出する変位検出センサと、前記操作部材に印加される荷重を検出する荷重検出センサとを有し、
前記制御部は、前記変位検出センサの出力及び前記荷重検出センサの出力を用いて、前記アクチュエータを制御することを特徴とする入力装置。
【請求項3】
請求項2に記載の入力装置であって、
前記制御部は、使用者により前記操作部材を用いた入力操作が行われたとき、前記使用者が前記操作部材から抵抗を感じるように第1制御を行った後、前記使用者が前記操作部材からの抵抗が減少したように感じるように第2制御を行うことを特徴とする入力装置。
【請求項4】
請求項3に記載の入力装置であって、
前記制御部は、前記第1制御において前記荷重検出センサの出力が目標値になるように制御することを特徴とする入力装置。
【請求項5】
請求項4に記載の入力装置であって、
前記制御部は、前記第2制御において前記荷重検出センサの出力及び前記変位検出センサの出力が目標値になるように制御することを特徴とする入力装置。
【請求項6】
請求項3乃至請求項5までの何れか一項に記載の入力装置であって、
前記制御部は、前記第2制御を行った後、前記使用者が前記操作部材からクリック感を感じるように第3制御を行うことを特徴とする入力装置。
【請求項7】
請求項1乃至6の何れか一項に記載の入力装置であって、
前記制御部の制御に用いられる複数の情報が記憶された記憶部を有し、
前記制御部は、前記複数の情報から選択された情報を用いて制御を行うことを特徴とする入力装置。
【請求項8】
操作方向に移動可能な入力操作を行うための操作部材と、
前記操作部材に前記操作方向の力を与え、前記操作部材を前記操作方向に移動させるアクチュエータと、
前記操作部材の状態を検出するセンサと、
前記センサの出力に応じて前記アクチュエータを制御する制御部と、を含み、
前記制御部は、使用者により前記操作部材を用いた入力操作が行われたとき、該操作部材を介して前記使用者に複数の操作感を与えるように前記アクチュエータを制御することを特徴とする入力装置。
【請求項9】
請求項8に記載の入力装置であって、
前記複数の操作感は、前記操作部材を半押しした時の操作感と、全押しした時の操作感と、を含むことを特徴とする入力装置。
【請求項10】
請求項9に記載の入力装置であって、
前記半押しした時の操作感は、複数有することを特徴とする入力装置。
【請求項11】
請求項8乃至請求項10の何れか一項に記載の入力装置であって、
前記制御部は、前記操作部材の操作方向におけるストローク又は前記アクチュエータから前記操作部材に付与する力の少なくとも何れか一方を変えることにより、前記操作部材を介して前記複数の操作感を使用者に与えることを特徴とする入力装置。
【請求項12】
請求項9に記載の入力装置であって、
前記操作部材を全押しした時の操作感が、前記半押しした時の操作感よりも大きいことを特徴とする入力装置。
【請求項13】
請求項8乃至12の何れか一項に記載の入力装置であって、
前記センサは、前記操作部材の変位を検出する変位検出センサと、前記操作部材に印加される荷重を検出する荷重検出センサとを有し、
前記制御部は、前記変位検出センサの出力及び前記荷重検出センサの出力を用いて、前記アクチュエータを制御することを特徴とする入力装置。
【請求項14】
請求項1乃至請求項13の何れか一項に記載の入力装置を含むことを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−81774(P2011−81774A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−161395(P2010−161395)
【出願日】平成22年7月16日(2010.7.16)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】