説明

入力装置

【課題】主に各種電子機器の操作に使用される入力装置に関し、誤検出がなく、確実な操作が可能なものを提供することを目的とする。
【解決手段】ボール11と所定の間隙を空けて対向配置された磁気検出素子21を、ボール11を回転可能に収納した下ケース16下面に弾接させることによって、ボール11を押圧した際、下ケース16に押圧されて磁気検出素子21もボール11と同じ方向へ上下動し、ボール11と磁気検出素子21の所定の間隙は変化せず常に一定に保たれるため、ボール11の回転方向や回転角度の検出のばらつきを防ぎ、誤検出がなく、確実な操作が可能な入力装置を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に各種電子機器の操作に用いられる入力装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話やパーソナルコンピュータ等の各種電子機器の高機能化や小型化が進むに伴い、これらの操作に用いられる入力装置にも、良好な操作感触で確実な操作を行えるものが求められている。
【0003】
このような従来の入力装置について、図7及び図8を用いて説明する。
【0004】
図7は従来の入力装置の断面図であり、同図において、1は絶縁樹脂製のボール、2は略円盤状でフェライト等の磁石で、複数の磁石2が所定間隔でボール1外周に埋設されている。
【0005】
また、3は金属薄板製の上ケース、4は同じく下ケース、5は同じく枠体で、上ケース3と下ケース4が枠体5に上下動可能に装着されると共に、上ケース3と下ケース4内にボール1が回転可能に収納され、ボール1上部が上ケース3上面の開口孔から突出している。
【0006】
そして、6は上下面に複数の配線パターン(図示せず)が形成された配線基板で、この配線基板6に枠体5下端が固着されると共に、配線基板6上面にはホール素子等の複数の磁気検出素子7が実装され、ボール1と所定の間隙を空けて対向配置されている。
【0007】
さらに、8はプッシュスイッチ等のスイッチ接点で、配線基板6上面に実装されてボール1の下方に配置されると共に、上方へ突出した押釦部8A上面が下ケース4下面に当接して、入力装置が構成されている。
【0008】
そして、このように構成された入力装置が、携帯電話やパーソナルコンピュータ等の電子機器の操作部(図示せず)に、ボール1上部を突出させて装着されると共に、複数の磁気検出素子7やスイッチ接点8が配線パターン等を介して、機器の電子回路(図示せず)に電気的に接続される。
【0009】
以上の構成において、例えば機器の液晶表示素子等の表示手段(図示せず)に、氏名や曲名等の複数のメニューやカーソル(図示せず)等が表示された状態で、ボール1上部を指で前後左右方向へ回転操作すると、ボール1外周に埋設された複数の磁石2も回転し、例えば、右方向へ回転した場合には、先ず磁石2Aが磁気検出素子7に近づき、次に磁石2Bが磁気検出素子7に近づく。
【0010】
そして、磁気検出素子7がこの交互に接近し離れる複数の磁石2の磁気を検出して、所定のパルス信号を機器の電子回路に出力し、機器の電子回路がこのパルス信号から、ボール1の回転方向と回転角度を検出し、機器の表示手段に表示されたメニュー上のカーソル等を、例えば、右方向へ移動させる。
【0011】
なお、ボール1を左方向や前後方向、あるいはこれらとは中間の斜め方向へ回転操作した場合も、同様に、磁気検出素子7からパルス信号が出力され、電子回路がボール1の回転方向と回転角度を検出して、カーソル等が左方向や上下方向、あるいは斜め方向へ移動する。
【0012】
また、カーソル等が所望のメニュー上に位置した状態で、ボール1上部を押圧操作すると、図8の断面図に示すように、ボール1を収納した上ケース3や下ケース4が枠体5にガイドされて下方へ移動し、下ケース4下面が押釦部8Aを押圧してスイッチ接点8の電気的接離が行われ、これを電子回路が検出して、例えば、メニューの確定や次メニューの表示等が行われる。
【0013】
つまり、機器の表示手段を見ながら、ボール1を所定方向へ回転操作することによって、表示手段に表示されたカーソル等を所定方向へ移動させて、メニューの選択を行うと共に、ボール1を押圧操作することによって、メニューの確定や次メニューの表示等が行えるように構成されているものであった。
【0014】
なお、この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1が知られている。
【特許文献1】特開2004−5091号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかしながら、上記従来の入力装置においては、ボール1の回転操作中に、誤ってボール1を押圧操作してしまった場合、ボール1が上ケース3や下ケース4と共に下方へ移動し、ボール1と磁気検出素子7との間隙が変化してしまうため、磁気検出素子7から出力されるパルス信号にばらつきが発生し、ボール1の回転方向や回転角度の検出に誤差が生じてしまう場合があるという課題があった。
【0016】
本発明は、このような従来の課題を解決するものであり、誤検出がなく、確実な操作が可能な入力装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記目的を達成するために本発明は、ボールと所定の間隙を空けて対向配置された磁気検出素子を、ボールを回転可能に収納したケース下面に弾接させて入力装置を構成したものであり、ボールを押圧した際、ケース下面に押圧された磁気検出素子もボールと同じ方向へ上下動し、ボールと磁気検出素子の所定の間隙は変化せず常に一定に保たれるため、ボールの回転方向や回転角度の検出のばらつきを防ぎ、誤検出がなく、確実な操作が可能な入力装置を得ることができるという作用を有するものである。
【発明の効果】
【0018】
以上のように本発明によれば、誤検出がなく、確実な操作が可能な入力装置を実現することができるという有利な効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について、図1〜図6を用いて説明する。
【0020】
(実施の形態)
図1は本発明の一実施の形態による入力装置の断面図、図2は同分解斜視図であり、同図において、11はABSやポリカーボネート、ウレタン等の絶縁樹脂製のボール、12はパーマロイや鉄、Ni−Fe合金等の磁性体で、略球状の中核部13から略円柱状の複数の、例えば24個の突起部14が外周に向けて放射状に突出して、磁性体12が形成されると共に、この磁性体12がボール11内に埋設されている。
【0021】
また、15は鋼等の金属薄板製の上ケース、16は同じく下ケースで、上ケース15と下ケース16内にボール11が回転可能に収納されると共に、ボール11上部が上ケース15上面の開口孔から突出している。
【0022】
そして、17は略板状でゴムやエラストマー等のカバー、18はポリブチレンテレフタレートやポリスチレン等の絶縁樹脂製の揺動体で、ボール11を収納した上ケース15と下ケース16が、カバー17を介して揺動体18上面に載置されている。
【0023】
また、19はポリエチレンテレフタレートやポリカーボネート等のフィルム状のフレキ基板で、上下面にはカーボンや銀、銅箔等によって複数の配線パターン(図示せず)が形成されると共に、ボール11下方のフレキ基板19上面には、略円筒状でフェライトやNd−Fe−B合金等の磁石20が、例えばN極を上方向、S極を下方向にして載置されている。
【0024】
さらに、磁石20内周のフレキ基板19上面には、水平方向の磁気を検出するGMR素子や、垂直方向の磁気を検出するホール素子等の複数の磁気検出素子21が実装され、この複数の磁気検出素子21がボール11と所定の間隙を空けて対向配置されると共に、磁気検出素子21周囲のフレキ基板19には、略U字状の切欠部19Aが形成されている。
【0025】
そして、22はプッシュスイッチ等のスイッチ接点で、フレキ基板19上面の右方に実装されてボール11の下方に配置されると共に、上方へ突出した押釦部22A上面には揺動体18右端の押圧部18A下面が当接している。
【0026】
また、23は鋼や銅合金等の金属薄板製の枠体で、この枠体23が上ケース15と固着されて、下ケース16に収納されたボール11や揺動体18等が所定位置に保持されると共に、上面に載置されたフレキ基板19と同様に、磁気検出素子21周囲の枠体23には、略U字状の切欠部23Aが形成され、磁気検出素子21上面が下ケース16下面に弾接している。
【0027】
さらに、24は紙フェノールやガラス入りエポキシ等の配線基板で、上下面にはカーボンや銅箔等によって複数の配線パターン(図示せず)が形成されると共に、この配線基板24上面に揺動体18左端の支点部18B下面が揺動可能に当接して、入力装置が構成されている。
【0028】
そして、このように構成された入力装置が、携帯電話やパーソナルコンピュータ等の電子機器の操作部(図示せず)に、ボール11上部を突出させて装着されると共に、複数の磁気検出素子21やスイッチ接点22が配線パターン等を介して、機器の電子回路(図示せず)に電気的に接続される。
【0029】
以上の構成において、例えば機器の液晶表示素子の表示手段(図示せず)に、氏名や曲名等の複数のメニューやカーソル(図示せず)が表示された状態で、ボール11上部を指で前後左右方向へ回転操作すると、ボール11内に埋設された磁性体12も回転し、例えば、図3(a)の部分正面図に示すように、ボール11を右方向へ回転した場合には、先ず磁性体12の突起部14Aが磁気検出素子21Aに近づく。
【0030】
そして、図3(b)に示すように、突起部14Aが磁気検出素子21Aに最接近した状態では、ボール11下方に配置された略円筒状の磁石20の、右方及び左方からのN極の磁気を、磁石20に最も近い突起部14Bと14Cから中核部13、突起部14Aを介して磁気検出素子21Aが検出する。
【0031】
また、このままボール11を右方向へ回転操作し続けると、突起部14Aは磁気検出素子21Aから離れて、磁気検出素子21Bに近づくと共に、磁気検出素子21Aには突起部14Bが近づき、この突起部14Bの磁気を磁気検出素子21Aが検出する。
【0032】
つまり、磁気検出素子21Aは、N極の磁気を突起部14Aが最接近した時に1回検出し、この後、一旦磁気が弱まり、次に突起部14Bが最接近すると、N極の磁気をもう1回検出して、この都度、磁気検出素子21Aからパルス信号が機器の電子回路に出力される。
【0033】
さらに、この時、磁気検出素子21Aと並列に配置された磁気検出素子21Bも、同様に突起部14Aや14Bの磁気を検出するが、磁気検出素子21Bは磁気検出素子21Aに対し、所定間隔でややずれた位置に配置されているため、磁気検出素子21Bから出力されるパルス信号は、磁気検出素子21Aのパルス信号に対し所定時間ずれた、いわゆる位相差のあるものとなる。
【0034】
そして、機器の電子回路がこの位相差のある二つのパルス信号から、パルス信号のどちらかが先に立ち上ったかによってボール11の回転方向を、そのパルス数によってボール11の回転角度を各々検出し、機器の表示手段に表示されたメニュー上のカーソル等を、例えば右方向へ回転角度分だけ移動させる。
【0035】
なお、ボール11を左方向や前後方向、あるいはこれらとは中間の斜め方向へ回転操作した場合も、同様に、複数の磁気検出素子21からパルス信号が出力され、電子回路がボール11の回転方向と回転角度を検出して、カーソル等が左方向や上下方向、あるいは斜め方向へ移動する。
【0036】
また、カーソル等が所望のメニュー上に位置した状態で、ボール11上部を押圧操作すると、図4の断面図に示すように、揺動体18が配線基板24上面に当接した支点部18Bを支点として揺動し、右端の押圧部18A下面が押釦部22Aを押圧してスイッチ接点22の電気的接離が行われ、これを電子回路が検出して、例えば、メニューの確定や次メニューの表示等が行われる。
【0037】
つまり、機器の表示手段を見ながら、ボール11を所定方向へ回転操作することによって、表示手段に表示されたカーソル等を所定方向へ移動させて、メニューの選択を行うと共に、ボール11を押圧操作することによって、メニューの確定や次メニューの表示等が行えるように構成されている。
【0038】
そして、このボール11の押圧操作時には、上ケース15と枠体23によって揺動体18に一体化された、ボール11や下ケース16、フレキ基板19や磁気検出素子21等も、同じ位置関係のままで揺動体18と一緒に揺動すると共に、磁気検出素子21上面が下ケース16下面に弾接しているため、押圧操作時にもボール11と磁気検出素子21の位置関係は変わらず、常に所定の間隙が保たれるようになっている。
【0039】
すなわち、ボール11と磁気検出素子21の間に揺動体18を設け、押圧操作時には揺動体21を揺動させて、押圧部18Aによってボール11下方のスイッチ接点22の電気的接離を行うと共に、磁気検出素子21を下ケース16下面に弾接させることによって、押圧操作時にも、ボール11と磁気検出素子21の所定の間隙は変化せず、磁気検出素子21から出力されるパルス信号にばらつきや誤差が生じないように構成されている。
【0040】
また、上記のようなボール11の回転操作中に、誤ってボール11を押圧操作してしまった場合や、揺動体18を揺動した後、さらにボール11に押圧力が加わった場合等には、図5の断面図に示すように、下ケース16下面によって複数の磁気検出素子21が押圧されるが、この時にも、磁気検出素子21周囲のフレキ基板19や枠体23が下方へ撓むことによって、ボール11と磁気検出素子21間の間隙は変化せず、一定の間隙が保たれるようになっている。
【0041】
つまり、磁気検出素子21周囲のフレキ基板19と枠体23には、略U字状の切欠部19Aと23Aが各々形成されると共に、これらの載置された磁気検出素子21が下ケース16下面に弾接しているため、上記のように誤ってボール11を押圧操作してしまった場合には、この押圧力によって磁気検出素子21周囲のフレキ基板19と枠体23が下方へ撓み、また、押圧力が取除かれた場合には、元の状態に弾性復帰するように形成されている。
【0042】
すなわち、下ケース16下面によって磁気検出素子21が押圧された場合には、磁気検出素子21周囲のフレキ基板19と枠体23を弾性変形させることによって、磁気検出素子21がボール11と同じ方向へ上下動して、ボール11と磁気検出素子21との間隙を常に一定に保つことができるため、ボール11の回転方向や回転角度のばらつきを防ぎ、誤検出がなく、確実な操作が行えるように構成されている。
【0043】
なお、以上の説明では、ボール11内に磁性体12を埋設し、この磁性体12から略円筒状の磁石20の磁気を磁気検出素子21が検出して、ボール11の回転方向と回転角度を検出する構成について説明したが、図6の部分断面図に示すように、磁性体12に代えて、ボール11内に略円柱状の複数の磁石20Aを放射状に埋設し、この複数の磁石20Aの磁気を磁気検出素子21が検出する構成とすれば、略円筒状の磁石20が不要となり、より簡易な構成で、安価に入力装置を形成することができる。
【0044】
このように本実施の形態によれば、ボール11と所定の間隙を空けて対向配置された磁気検出素子21を、ボール11を回転可能に収納した下ケース16下面に弾接させることによって、ボール11を押圧した際、下ケース16に押圧されて磁気検出素子21もボール11と同じ方向へ上下動し、ボール11と磁気検出素子21の所定の間隙は変化せず常に一定に保たれるため、ボール11の回転方向や回転角度の検出のばらつきを防ぎ、誤検出がなく、確実な操作が可能な入力装置を得ることができるものである。
【0045】
なお、以上の説明では、ボール11内に配設された磁性体12を、略球状の中核部13から略円柱状の複数の突起部14が外周に向けて放射状に突出した構成について説明したが、中核部13を中空とした構成や、あるいは中核部13に代えて、複数の突起部14をボール11の中心方向へ延出させ、中心部で連結した構成等、複数の突起部14を連結するものであれば、中核部を様々な形状に形成した構成のものとしても、本発明の実施は可能である。
【0046】
さらに、磁性体12の複数の突起部14を略円柱状のものとして説明したが、四角柱や多角柱、あるいは円錐状や角錐状のもの等を用いた構成としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明による入力装置は、誤検出がなく、確実な操作が可能なものを実現できるという有利な効果を有し、主に各種電子機器の操作用として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の一実施の形態による入力装置の断面図
【図2】同分解斜視図
【図3】同部分正面図
【図4】同押圧操作時の断面図
【図5】同誤操作時の断面図
【図6】同他の実施の形態による部分断面図
【図7】従来の入力装置の断面図
【図8】同押圧操作時の断面図
【符号の説明】
【0049】
11 ボール
12 磁性体
13 中核部
14、14A、14B、14C 突起部
15 上ケース
16 下ケース
17 カバー
18 揺動体
18A 押圧部
18B 支点部
19 フレキ基板
19A、23A 切欠部
20、20A 磁石
21、21A、21B 磁気検出素子
22 スイッチ接点
22A 押釦部
23 枠体
24 配線基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下動可能なケースと、このケースに回転可能に収納されると共に、磁性体または磁石が埋設されたボールと、このボールと所定の間隙を空けて対向配置された磁気検出素子と、上記ボールの下方に配置されたスイッチ接点からなり、上記磁気検出素子を上記ケース下面に弾接させた入力装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−259024(P2009−259024A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−107660(P2008−107660)
【出願日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】