説明

入力装置

【課題】より快適な操作感で操作することが可能な入力装置を提供することである。
【解決手段】入力装置は、接触部、光源、受光素子及び情報処理部を備える。接触部は身体の一部を接触させる部位である。光源は、前記接触部を経由して前記接触部の外部に向けて光を照射する。受光素子は、前記接触部に接触した前記身体の一部内における脂肪組織において反射した前記光の反射光又は前記脂肪組織を透過した前記光の透過光を受光し、前記反射光又は前記透過光のエネルギに応じた出力信号を出力する。情報処理部は、前記受光素子からの出力信号に対して閾値処理を施し、前記閾値処理の結果に応じて制御対象となる被制御系に対して制御信号を出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入力装置及び情報入力方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、指で操作する入力装置として、キーボード等に使用されるプッシュスイッチやタッチパネル等のデバイスが知られている。一般的なプッシュスイッチは、スプリングを連結させた突起部を押すことによって接点が通電するように構成されたスイッチである。また、タッチパネルには、静電容量式や抵抗膜方式等の様々な種類があるが、いずれも構成部品や構造に応じた所定の力で指をパネルに接触させることによって情報を入力するデバイスである(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−42724号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のスイッチは、スイッチを構成する部品の剛性等の特性に依存して操作に必要な力が定まる。このため、操作者の操作感が実際の操作に対応しているとは限らない。また、操作者の力が弱い場合には、スイッチの切換えが困難となる恐れがある。逆に、操作者の力が強い場合には、スイッチの操作感が十分に得られず、快適なスイッチ操作を実現できない恐れがある。更に、物の接触により操作者が意図しない誤動作を誘発する恐れもある。
【0005】
本発明は、より快適な操作感で操作することが可能な入力装置及び情報入力方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る入力装置は、接触部、光源、受光素子及び情報処理部を備える。接触部は身体の一部を接触させる部位である。光源は、前記接触部を経由して前記接触部の外部に向けて光を照射する。受光素子は、前記接触部に接触した前記身体の一部内における脂肪組織において反射した前記光の反射光又は前記脂肪組織を透過した前記光の透過光を受光し、前記反射光又は前記透過光のエネルギに応じた出力信号を出力する。情報処理部は、前記受光素子からの出力信号に対して閾値処理を施し、前記閾値処理の結果に応じて制御対象となる被制御系に対して制御信号を出力する。
【0007】
また、本発明に係る入力装置は、接触部、振動子及び情報処理部を備える。接触部は身体の一部を接触させる部位である。振動子は、前記接触部を経由して前記接触部の外部に向けて振動を発生させる一方、前記接触部に接触した前記身体の一部内において反射又は前記身体の一部内を透過した振動を受信し、受信した振動のエネルギに応じた出力信号を出力する送受共通又は送受個別の振動子である。情報処理部は、前記振動子からの出力信号に対して閾値処理を施し、前記閾値処理の結果に応じて制御対象となる被制御系に対して制御信号を出力する。
【0008】
また、本発明に係る情報入力方法は、身体の一部を接触させる接触部を経由して前記接触部の外部に向けて光を照射するステップと、前記接触部に接触した前記身体の一部内における脂肪組織において反射した前記光の反射光又は前記脂肪組織を透過した前記光の透過光を受光し、前記反射光又は前記透過光のエネルギに応じた出力信号を出力するステップと、前記出力信号に対して閾値処理を施し、前記閾値処理の結果に応じて制御対象となる被制御系に対して制御信号を出力するステップとを有する。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る入力装置及び情報入力方法によれば、より快適な操作感で操作することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る入力装置の構成図。
【図2】図1に示す閾値処理部における閾値処理の方法を説明するためのグラフ。
【図3】本発明の第2の実施形態に係る入力装置の構成図。
【図4】本発明の第3の実施形態に係る入力装置の構成図。
【図5】図4に示すコンピュータにおける閾値処理の方法を説明するためのグラフ。
【図6】本発明の第4の実施形態に係る入力装置の構成図。
【図7】本発明の第5の実施形態に係る入力装置の構成図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の入力装置及び情報入力方法に係る発明名称について添付図面を参照して説明する。
【0012】
(第1の実施形態)
(構成及び機能)
図1は本発明の第1の実施形態に係る入力装置の構成図である。
【0013】
入力装置1は、装置本体2、A/D (analog to digital)変換器3及びコンピュータ4を備える。装置本体2は、接触部5を形成した基体6に光源7及び受光素子8を設けて構成される。
【0014】
コンピュータ4は、受光素子8の出力側とA/D変換器3を介して接続される。コンピュータ4は、プログラムを読み込むことにより閾値処理部4A及び制御信号生成部4Bを含む情報処理部として機能する。また、コンピュータ4の出力側には、入力装置1による制御対象となる被制御系9が接続される。尚、情報処理部の構成要素として回路を用いてもよい。
【0015】
光源7は、接触部5を経由して接触部5の外部に向けて可視光、赤外線、近赤外線等の任意の波長の光を照射する機能を有する。例えば、発光ダイオード(LED: Light Emitting Diode)で光源7を構成し、観測に適切な850nm程度の波長の近赤外光を発生させることができる。実用性の高い光の波長は、750nmから1000nm程度であると考えられる。
【0016】
接触部5は、光源7からの光を外部に伝達させることが可能な光学素子で構成される。接触部5は、人体の身体の一部を接触させる部位である。このため、接触部5は、入力装置1を操作する身体の部分を圧迫することが可能な形状を有する。入力装置1を操作する身体の部分としては、指の他、足、掌、耳等の所望の人体の部分とすることができる。
【0017】
このため、接触部5の形状は、凸形状、凹形状或いは平面状など所望の操作感を操作者に与えるために様々な形状とすることができる。接触部5を凸形状とする場合には、半球体形状、多角柱形状、円柱形状、多角錐形状、円錐形状或いはこれらの複合形状など様々な形状が可能である。図1は、指の指尖部の性質及び形状に合わせて接触部5を球の一部の形状とした例を示している。
【0018】
受光素子8は、接触部5に接触又は圧迫させた指等の身体の一部内の脂肪組織に反射した光源7からの光の反射光を受光して、受光した反射光のエネルギに応じた電流の出力信号を光検知信号として出力させる機能を有する。このため、受光素子8は、接触部5内を透過する反射光を受光可能な基体6上の位置に配置される。図1は、光源7及び受光素子8を平板状の基体6の同一平面上に配置した例を示している。
【0019】
閾値処理部4Aは、A/D変換器3を通じて取得した受光素子8からの出力信号に対する閾値処理を行う機能を有する。具体的には、閾値処理部4Aは、受光素子8からの出力信号の振幅に対して予め設定された閾値と出力信号とを比較して出力信号の強度が閾値以下であるか否かを判定する機能と、判定結果を制御信号生成部4Bに通知する機能を有する。
【0020】
制御信号生成部4Bは、閾値処理部4Aにおける閾値処理の結果に応じて制御信号を生成し、生成した制御信号を被制御系9に出力することによって被制御系9を制御する機能を有する。具体的には、制御信号生成部4Bは、受光素子8からの出力信号が閾値以下であると判定された場合に制御信号を被制御系9に出力するように構成される。
【0021】
制御信号は、被制御系9の機能及び動作に応じて所望のアルゴリズムに従って生成することができる。例えば、オン状態又はオフ状態への切換えを指示するパルス信号を制御信号として生成することができる。或いは、閾値以下の出力信号が受光素子8から閾値処理部4Aに出力されている間は、所定の動作を指示する制御信号が連続的又は断続的に制御信号生成部4Bから被制御系9に出力されるようにしてもよい。また、制御信号は、0と1の2値の信号に限らず、受光素子8から閾値処理部4Aに出力される出力信号の強度に対応する強度を有する多値の信号としもよい。
【0022】
(動作及び作用)
次に入力装置1の動作および作用について説明する。ここでは、入力装置1を指で操作する場合を例に説明する。
【0023】
光源7から光が照射されている状態で、指の指尖部を接触部5に力をかけずに接触させると、光の一部は指尖部を透過し、一部は指尖部内にて反射する。血液中のヘモグロビンは、近赤外光等の光に対して高い吸光度を示すことが知られている。このため、指尖部内に進入した光は、主として脂肪組織において反射する。脂肪組織において反射した反射光は受光素子8によって受光され、受光素子8は受光した反射光のエネルギに応じた電流の出力信号をコンピュータ4に出力させる。
【0024】
次に、指に力を加え、接触部5で指尖部を圧迫すると指尖部内に存在する脂肪組織が接触部5の周囲に流動する。これにより、接触部5近傍における脂肪組織の体積が減少する。脂肪組織の体積が減少すると、反射光の光量は低下する。従って、受光素子8から出力される出力信号の強度は低下する。
【0025】
つまり、指尖部に加える力の強さに応じて指尖部内における脂肪組織の厚さが変化し、脂肪組織の厚さに応じた強度の出力信号が受光素子8から出力されることとなる。換言すれば、脂肪組織の厚さの変化を反射光及び出力信号の強度変化に変換することができる。
【0026】
コンピュータ4では、閾値処理部4Aにおいて受光素子8から出力される出力信号に対する閾値処理が実行される。
【0027】
図2は図1に示す閾値処理部4Aにおける閾値処理の方法を説明するためのグラフである。
【0028】
図2において横軸は接触部5に指尖部を押し付ける力の強さを示し、縦軸は受光素子8から出力される出力信号の強度を示す。
【0029】
押し付け力ゼロで接触部5に指尖部を接触させると、指尖部の変形はなく、脂肪組織の厚さは最大となる。従って、反射光の光量は最大となり、図2に示すように、受光素子8から出力される出力信号の強度は最大値を示す。
【0030】
一方、押し付け力を増加させると押し付け力に応じて脂肪組織の厚さが減少し、反射光の光量も減少する。従って、押し付け力を増加させると受光素子8から出力される出力信号の強度は減少する。尚、接触部5から指尖部を十分に離した場合には、反射光が受光素子8によって受光されない。このため、受光素子8から出力される出力信号の強度はゼロとなる。
【0031】
そこで、図2に示すように出力信号の強度に対して第1の閾値TH1及び第2の閾値TH2が設定される。第1の閾値TH1は、指尖部内における脂肪組織の厚さが接触部5への押し付け力によって所望の厚さに変形した場合における出力信号の強度として経験的に決定することができる。一方、第2の閾値TH2は、例えば指尖部内における脂肪組織の厚さに応じて取り得る出力信号の下限値より小さい値に経験的に決定することができる。尚、第2の閾値TH2は省略してもよい。
【0032】
そして、閾値処理部4Aは、受光素子8から出力される出力信号の強度が第1の閾値TH1及び第2の閾値TH2で定まる範囲内にあるか否かを判定する。出力信号の強度が第1の閾値TH1及び第2の閾値TH2で定まる範囲内にあると判定された場合には、閾値処理部4Aから制御信号生成部4Bに出力信号の強度が第1の閾値TH1及び第2の閾値TH2で定まる範囲内にあることを示す情報又は出力信号の強度が通知される。
【0033】
そうすると、制御信号生成部4Bは被制御系9の機能及び動作に応じて予め決定されたアルゴリズムに従って制御信号を生成し、生成した制御信号を被制御系9に出力する。例えば、入力装置1が被制御系9のオンオフ動作の切換スイッチとして用いられる場合には、被制御系9の動作の開始又は停止を指示するオン状態又はオフ状態への切換制御信号を被制御系9に出力することができる。
【0034】
また、受光素子8からの出力信号の強度に応じた強度の制御信号を出力して被制御系9を動的に制御することもできる。例えば、被制御系9がスピーカであれば、受光素子8からの出力信号の強度に応じた音量で音がスピーカから出力されるように連続的な多値の値を有する制御信号をスピーカに出力することができる。同様に被制御系9が照明機器であれば、照明機器の明るさを受光素子8からの出力信号の強度に応じて制御することができる。
【0035】
このため、操作者は、指尖部に所定の強さの押し付け力を付加することによって被制御系9を操作することが可能となる。すなわち、入力装置1の接触部5に所定の強さの押し付け力で指尖部が圧迫された場合にのみ被制御系9を操作することができる。
【0036】
つまり以上のような入力装置1は身体の一部を圧迫した場合に生じる脂肪組織の変形を利用して、接触部5への押し付け力を反射光及び信号の強度変化に変換して被制御系9を操作するようにしたものである。
尚、閾値を受光素子8の出力信号の最大値又は初期値からの変化量、つまり身体の一部を接触部5に接触させた後の出力信号の変化量に対して設定してもよい。すなわち、身体の一部を接触部5に接触させた後の受光素子8からの出力信号の変化量が閾値を超えた場合に制御信号生成部4Bが被制御系9に制御信号を出力するようにしてもよい。この場合、操作者の力の絶対的な強さに依らず、操作者の意思に対応する押し付け力の変化量に応じて被制御系9を操作することが可能となる。
【0037】
(効果)
入力装置1によれば、構成部品の変形ではなく操作者の人体の一部の変形に応じて情報の入力を行うことができる。このため、操作者の操作感が実際の操作に対応し、操作者は、より快適な操作感で入力装置1を操作することができる。また、人体は柔らかいため、力が弱い操作者であっても容易に入力装置1を操作することができる。
【0038】
更に、身体以外の物や操作されることを想定していない身体の部位が入力装置1の接触部5に接触した場合でも、操作主体となる身体の部位における脂肪組織の変形量に対応する反射光が受光素子8により受光されなければ被制御系9には制御信号が出力されない。このため、操作者が意図しない誤動作を防止することができる。特に第2の閾値TH2を受光素子8からの出力信号の下限値として適切に設定することによって、ノイズを除去できる他、操作されることを想定していない身体の部位や人体以外の物体が接触部5に接触して低強度の出力信号が受光素子8から出力された場合に入力装置1の誤動作を防止することができる。
【0039】
指尖部における脂肪組織の流動量は他の部位に比べて大きい。このため、波長が800nm〜880nmの近赤外光を利用して指尖部から反射光を受光する方式は、感度上好適である。一方、指以外の人体の部分を用いて、体重計、ヘッドホン、補聴器等の被制御系9の用途に応じて入力装置1をスイッチなどに適用することができる。
【0040】
(第2の実施形態)
図3は本発明の第2の実施形態に係る入力装置の構成図である。
【0041】
図3に示された入力装置1Aは、接触部5を弾性体10で覆った構成が図1に示す入力装置1と相違する。他の構成および作用については図1に示す入力装置1と実質的に異ならないため同一の構成については同符号を付して構成要素の一部の図示及び詳細な説明を省略する。
【0042】
すなわち入力装置1Aの接触部5は、弾性体10で覆われる。弾性体10は、光源7からの光を外部に伝達させ、かつ受光素子8で検知できる反射光を反射させることが可能な材料で構成される。また、弾性体10は、操作主体となる身体の部位を押し付けることによって容易に変形させることが可能な弾性係数を有する材料で構成される。
【0043】
このように入力装置1Aを構成すると、受光素子8では主として脂肪組織及び弾性体10のいずれかにおいて反射した光が重ね合わさった状態で受光される。従って、受光素子8からの出力信号は、脂肪組織及び弾性体10の厚みに応じた強度となる。このため、弾性体10の弾性係数及び厚みを調節することによって受光素子8からの出力信号の強度を表すカーブの曲率を所望の値に調整することができる。
【0044】
このような構成の入力装置1Aによれば、身体の部位の押し付け力に対して高い分解能を得ることができる。このため、より精密に閾値を設定し、詳細な条件で被制御系9を操作することが可能となる。
【0045】
(第3の実施形態)
図4は本発明の第3の実施形態に係る入力装置の構成図である。
【0046】
図4に示された入力装置1Bは、受光素子8を光源7に対して対向配置した構成が図1に示す入力装置1と相違する。他の構成および作用については図1に示す入力装置1と実質的に異ならないため同一の構成については同符号を付して詳細な説明を省略する。尚、図4は、接触部5を、円錐を底面に平行な面で切断した形状とした例を示している。
【0047】
図4に示すように構成された入力装置1Bでは、脂肪組織を透過した透過光が受光素子8において受光され、受光素子8からは透過光のエネルギに応じた出力信号が出力される。
【0048】
図5は図4に示すコンピュータ4における閾値処理の方法を説明するためのグラフである。
【0049】
図5において横軸は接触部5に指尖部を押し付ける力の強さを示し、縦軸は受光素子8から出力される出力信号の強度を示す。図5に示すように、受光素子8が脂肪組織を透過した透過光を受光する場合には、反射光を受光する場合と極性が逆の出力信号が受光素子8から出力される。すなわち、指等の操作する部位が光源7と受光素子8との間を遮らない場合には、受光素子8では最大の光量の光が受光されるため、最大の出力信号が受光素子8から出力される。
【0050】
そして、身体の部位が押し付け力ゼロで接触部5に接触すると、脂肪組織の厚さは最大となる。このため、脂肪組織を透過する透過光の光量は最小となり、受光素子8からの出力信号は最小値となる。更に、押し付け力を増加させると押し付け力に応じて脂肪組織の厚さが減少し、脂肪組織を透過する透過光の光量は増加する。従って、押し付け力を増加させると受光素子8から出力される出力信号の強度は増加する。
【0051】
そこで、図5に示すように出力信号の強度に対して第1の閾値TH1及び第2の閾値TH2を設定し、受光素子8からの出力信号の強度が第1の閾値TH1及び第2の閾値TH2で定まる範囲内にある場合に被制御系9に制御信号を出力するようにすれば、第1の実施形態と同様に接触部5への身体の部位の押し付け力に応じて被制御系9を操作することが可能となる。尚、第1の閾値TH1及び第2の閾値TH2は経験的に決定することができるまた、第2の閾値TH2は省略してもよい。
【0052】
以上のような図4に示す入力装置1Bによれば、図1に示す第1の実施形態における入力装置1と同様の効果を得ることができる。加えて、図4に示す入力装置1Bによれば、基体6及び接触部5に垂直な方向に光源7から照射された光を受光することができる。このため、より確実に身体の部位を透過光として検知することができる。
【0053】
また、第2及び第3の実施形態を組み合わせてもよい。すなわち、接触部5を弾性体10で覆えば、脂肪組織及び弾性体10の双方を透過した透過光が受光素子8において受光される。このため、身体の部位の押し付け力に対して高い分解能を得ることができる。
【0054】
(第4の実施形態)
図6は本発明の第4の実施形態に係る入力装置の構成図である。
【0055】
図6に示された入力装置1Cは、光源7及び光源7に対応する受光素子8をそれぞれ2次元状に複数配置した構成が図1に示す入力装置1と相違する。他の構成および作用については図1に示す入力装置1と実質的に異ならないため同一の構成については同符号を付して装置本体2以外の図示及び詳細な説明を省略する。
【0056】
図6に示すように光源7及び光源7に対応する受光素子8で構成される光計測ユニットを2次元状に配列し、平板状の接触部5で被覆することによって装置本体2を構成することができる。この場合、コンピュータ4では、2次元的な位置に対応する受光素子8からの出力信号を取得することができる。このため、各受光素子8からの出力信号に対して閾値処理を施して受光素子8ごとに制御信号を生成すれば、2次元情報を含む制御信号を被制御系9に出力することができる。
【0057】
従って、入力装置1Cを2次元位置及び押し付け力の強度を入力する2次元入力装置として用いることができる。例えば、被制御系9がモニタを備える場合には、接触部5に接触させた身体の部位における脂肪成分の分布形状や押し付け力による脂肪成分の流動の様子を画像として描出することが可能となる。
【0058】
第4の実施形態においても、第2の実施形態及び第3の実施形態の一方又は双方と組み合わせることができる。すなわち、入力装置1Cに弾性体10を設けたり、受光素子8で脂肪成分を透過した透過光を受光するように入力装置1Cを構成することができる。
【0059】
(第5の実施形態)
図7は本発明の第5の実施形態に係る入力装置の構成図である。
【0060】
図7に示された入力装置1Dは、光源7及び受光素子8に変えて振動子20を設けた構成が図1に示す入力装置1と相違する。他の構成および作用については図1に示す入力装置1と実質的に異ならないため同一の構成については同符号を付して詳細な説明を省略する。
【0061】
図7に示すように、基体6に振動子20を設けて入力装置1Dを構成することができる。振動子20は、印加された電流に応じて任意の周波数で振動し、接触部5を経由して接触部5の外部に向けて振動を発生させる機能を有する。振動子20として超音波振動子を用いてもよい。
【0062】
振動子20から接触部5を介して振動を伝達させると、接触部5に接触した身体の一部内の骨や各組織等の音響インピーダンスの不連続部位において反射した振動を送受共通の振動子20又は送受個別の振動子を用いて受信することができる。そして、受信される振動の大きさは、接触部5に接触した身体の部分の押し付け力に応じた変形量に対応する大きさとなる。
【0063】
図7は、振動を発生させる振動子と振動を受信する振動子を共通にした例を示している。このため、振動子20に振動を発生させるための電流を印加する送信回路21が分岐して接続されている。但し、受信専用の振動子を基体6に設けてもよい。また、振動発生用の振動子と振動受信用の振動子とを対向配置させ、身体の一部内を透過した振動を受信用の振動子で受信するように入力装置1Dを構成してもよい。
【0064】
受信用の振動子20は、受信した振動のエネルギに応じた出力信号をコンピュータ4に出力する機能を有する。このため、接触部5への身体の部分の押し付け力に応じた出力信号がコンピュータ4に出力される。
【0065】
コンピュータ4は、振動子20からの出力信号に対して閾値処理を施し、閾値処理の結果に応じて制御対象となる被制御系9に対して制御信号を出力する情報処理部として機能する。コンピュータ4における情報処理の内容は、上述した各実施形態における情報処理と同様である。
【0066】
以上のような構成を有する入力装置1Dによれば、図1に示す第1の実施形態における入力装置1と同様の効果を得ることができる。加えて、振動の送受用の振動子を共通にできる。また、脂肪組織以外の組織を透過又は反射する振動に基づいて被制御系9を操作することが可能である。
【0067】
図7に示す入力装置1Dも他の実施形態と組み合わせることができる。すなわち、入力装置1Dに弾性体10を設けたり、振動子20を2次元状に多数配列して入力装置1Dを構成することができる。
【0068】
(他の実施形態)
以上、特定の実施形態について記載したが、記載された実施形態は一例に過ぎず、発明の範囲を限定するものではない。ここに記載された新規な方法及び装置は、様々な他の様式で具現化することができる。また、ここに記載された方法及び装置の様式において、発明の要旨から逸脱しない範囲で、種々の省略、置換及び変更を行うことができる。添付された請求の範囲及びその均等物は、発明の範囲及び要旨に包含されているものとして、そのような種々の様式及び変形例を含んでいる。
【符号の説明】
【0069】
1 入力装置
2 装置本体
3 A/D変換器
4 コンピュータ
4A 閾値処理部
4B 制御信号生成部
5 接触部
6 基体
7 光源
8 受光素子
9 被制御系
10 弾性体
20 振動子
21 送信回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
身体の一部を接触させる接触部と、
前記接触部を経由して前記接触部の外部に向けて光を照射する光源と、
前記接触部に接触した前記身体の一部内における脂肪組織において反射した前記光の反射光又は前記脂肪組織を透過した前記光の透過光を受光し、前記反射光又は前記透過光のエネルギに応じた出力信号を出力する受光素子と、
前記受光素子からの出力信号に対して閾値処理を施し、前記閾値処理の結果に応じて制御対象となる被制御系に対して制御信号を出力する情報処理部と、
を備える入力装置。
【請求項2】
前記接触部に弾性体を設け、
前記受光素子は、前記脂肪組織及び前記弾性体のいずれかにおいて反射した前記光の反射光又は前記脂肪組織及び前記弾性体の双方を透過した前記光の透過光を受光するように構成される請求項1記載の入力装置。
【請求項3】
前記光源及び前記光源に対応する前記受光素子がそれぞれ2次元状に複数配置され、
前記情報処理部は、2次元情報を含む制御信号を出力するように構成される請求項1記載の入力装置。
【請求項4】
前記情報処理部は、前記閾値処理の結果に応じて前記出力信号の強度に対応する強度を有する制御信号を出力するように構成される請求項1記載の入力装置。
【請求項5】
身体の一部を接触させる接触部と、
前記接触部を経由して前記接触部の外部に向けて振動を発生させる一方、前記接触部に接触した前記身体の一部内において反射又は前記身体の一部内を透過した振動を受信し、受信した振動のエネルギに応じた出力信号を出力する送受共通又は送受個別の振動子と、
前記振動子からの出力信号に対して閾値処理を施し、前記閾値処理の結果に応じて制御対象となる被制御系に対して制御信号を出力する情報処理部と、
を備える入力装置。
【請求項6】
身体の一部を接触させる接触部を経由して前記接触部の外部に向けて光を照射するステップと、
前記接触部に接触した前記身体の一部内における脂肪組織において反射した前記光の反射光又は前記脂肪組織を透過した前記光の透過光を受光し、前記反射光又は前記透過光のエネルギに応じた出力信号を出力するステップと、
前記出力信号に対して閾値処理を施し、前記閾値処理の結果に応じて制御対象となる被制御系に対して制御信号を出力するステップと、
を有する情報入力方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−129128(P2012−129128A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−281159(P2010−281159)
【出願日】平成22年12月17日(2010.12.17)
【出願人】(304036743)国立大学法人宇都宮大学 (209)
【Fターム(参考)】