説明

全グルカン粒子および抗体を用いた癌治療

本発明は、抗腫瘍治療のために全グルカン粒子および補体活性化抗体を用いる方法に関する。全グルカン粒子は、C3補体タンパク質レセプターCR3に結合することにより先天性免疫系の殺腫瘍活性を増強する。この結合は、先天性免疫系細胞傷害性を増強し、活性化サイトカインの放出を刺激する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
関連出願
本願は、2002年9月4日に出願された米国仮出願第60/408,126号の利益を請求する。上記出願の全教示が参考として本明細書中に援用される。
【0002】
政府支援
本発明は、National Institute for Health/National Cancer Instituteからの助成金Ro1CA86412およびDepartment of Defense, U.S. Armyからの助成金BC010287により全てまたは一部支援された。政府は本発明に所定の権利を有する。
【0003】
発明の背景
βグルカンは、酵母、細菌、真菌および植物(穀物)を含むいくつかの供給源に一般に由来する複雑な糖質である。これらの供給源は、種々の混合物、純粋物および構造物としてβ-グルカンを提供する。β-グルカンの構造的多様性はグルコース分子が結合できる種々の様式から生じ、種々の物理的特性および生物学的特性を有する化合物を生じる。例えば、細菌および藻類に由来するβ(1,3)グルカンは直鎖であり、食物増粘剤として有用になる。レンチナン(lentinan)(Lentinus edodes, 担子菌綱ファミリー由来)は、3残基毎に(1,3)骨格のβ(1,6)分枝を有する高いMWのβ-グルカンである。シゾフィラン(Schizophyllan)(Schizophyllum commune, 担子菌綱ファミリー由来)は類似するが、β(1,6)側鎖が短い。大麦、オート麦、小麦に由来するβ-グルカンは、骨格に混合された(1,3)-および(1,4)-β-結合を有するが、(1,6)-β分枝は有さず、一般に高分子量である。置換または分枝の頻度の程度として知られる側鎖頻度(frequency of side chains)は、二次構造および溶解度を調節する。酵母に由来するβグルカンは、β(1-6)結合による低度の分子間および分子内分枝を有するβ(1-3)結合グルコース単位の骨格鎖を有する。多数の公開された研究に基づき、パン酵母(Saccharomyces cerevisiae)は、得られる生成物の純度および活性に基づきβ(1,3)-グルカンの好ましい供給源であることが広く認められている。
【0004】
S.cerevisiaeの細胞壁は、主としてβ-グルカンからなり、これはその形状および機械的強度を担う。食品用生物としての使用が最もよく知られているが、酵母は、ザイモサン(非特異的免疫応答を刺激するために使用される不溶性の粗抽出物)の供給源としても使用される。酵母ザイモサンは、β(1,3)グルカンの豊富な供給源として働く。酵母由来β1,3グルカンは、真菌感染に対する身体の基本的防御の一部として先天性免疫系を活性化することにより、部分的に免疫系を刺激するようである。酵母β(1,3)グルカンは、β(1-6)-結合により連結された周期的β(1-3)分岐を有する、主としてβ(1-3)-結合グルコース分子からなるポリサッカリドであり、より正式にはポリ-(1-6)-β-D-グルコピラノシル-(1-3)-β-D-グルコピラノースとして知られる。グルカンは、供給源および単離方法により構造的および機能的に異なる。
【0005】
βグルカンは様々な範囲の活性を有する。β-グルカンの非特異的免疫を増大する能力および感染に対する抵抗性はエンドトキシンに類似する。免疫アジュバントおよび造血刺激物としてのβグルカンの活性は、bacillus Calmette-GuerinおよびCorynebacterium parvum等のより複雑な生物学的応答修飾物質に匹敵する。酵母β-グルカンの機能的活性はまた、真菌および植物から単離された構造的に類似する糖質ポリマーに匹敵する。シゾフィラン、レンチナン、レスチン、グリフォラン(grifolan)、およびパキマン(pachyman)等のこれらのより高い分子量の(1-3)-β-D-グルカンは類似の免疫調節活性を示す。粒子状および可溶性β-グルカンの両方の種々の調製物が、生物学的な活性を解明するために動物モデルで試験されている。可溶性および不溶性β-グルカン単独またはウイルスおよび細菌抗原に対するワクチンアジュバントとしての使用は、様々な細菌、真菌、原生生物およびウイルス感染に対する耐性を顕著に増大することが示された。βグルカンの造血効果は、末梢血白血球数および骨髄および脾性細胞質の増大を含み、これは顆粒球マクロファージ前駆細胞、脾性多能性幹細胞、および赤血球前駆細胞の数の増大、ならびに顆粒球-単球コロニー刺激因子(GM-CSF)の血清レベルの増大を反映する。
【0006】
β-グルカンの作用の分子機構は、好中球およびマクロファージ等の免疫細胞の細胞膜上の特異的β-グルカンレセプター結合部位を含むようである。マンナン、ガラクタン、α(1-4)-結合グルコースポリマーおよびβ(1-4)-結合グルコースポリマーがこのレセプターの結合活性を有さない。最近のデータは、C3補体タンパク質のレセプターであるCR3は、β-グルカンの主要なレセプターとして働くことを示唆する。β-グルカンレセプターに結合したリガンドは、補体活性、ファーゴサイトーシス、リソソーム酵素放出、およびプロスタグランジン、トロンボキサンおよびロイコトリエン産生を生じる。先行技術に記載された大抵のβ-グルカン調製物は、IL-1およびTNF等のサイトカインの産生を刺激し、これは抗腫瘍活性を有することが知られている。
【0007】
β-グルカンの潜在的な抗腫瘍活性は、日本の薬学文献に最初に開示されてから約30年間調査中である。例えば、レンチナンは、進行性または反復性の悪性リンパ腫および結腸直腸癌、乳癌、肺癌および胃癌について1970年代後期から1mg/kgで10日間の動物モデルおよび臨床試験の両方で広範に研究されている。最近の総説は、この研究の多くを記載しており、これはマッシュルールから単離されたβ-グルカンに焦点が当てられている(Borchers, ATら、Mushrooms and Immunity, 221(4), 281 (1999))。この研究は、マッシュルールから単離されたポリサッカリドの抗腫瘍活性が、β-グルカンにより活性化されるT細胞およびマクロファージにより大きく媒介されることを示す。粗酵母および穀物調製から単離された経口β−グルカンが同様に抗腫瘍活性を示した。これらの研究は、β(1,3)グルカンとβ-グルカン、マンナン、キチン/キトサン、β(1,4)グルカン、核酸、タンパク質、および脂質等の他のポリサッカリドとの混合物であるβ(1,3)グルカン調製物を使用した。これらの調製物のβ(1,3)グルカン含量は典型的には、50重量%未満である。種々のグルカンの有効性は、種々の細胞性応答、特にサイトカイン発現および産生を引き起こす能力、および特定の腫瘍に対する活性により異なる。これは、β-グルカンの作用の抗腫瘍機序は、マクロファージ刺激および続くIL-1、TNF、およびプロスタグランジンE2等の炎症媒介物質の放出を含むと提案されている(Sveinbjornssonら、Biochem.Biophys.Res.Commun.223(3), 643(1996))。
【0008】
癌発生に関連する微妙な変化は、表面タンパク質の種々の発現を導き、これは、適応的免疫系による弱い応答を刺激しうる。表面抗原発現におけるこれらの変化はまた、選択的なモノクローナル抗体(mAb)または抗腫瘍ワクチンを用いる治療の標的を提供する。モノクローナル抗体は、例えば、結腸癌、リンパ腫、乳癌および急性白血病において発現される種々のタンパク質を標的するように開発された。mAbに対する臨床性腫瘍応答の免疫基礎は、直接的細胞傷害および誘導免疫を含み、ここで抗体依存性細胞媒介性細胞傷害性および補体媒介性細胞傷害は、腫瘍細胞の直接的死滅を担う。しかし、天然の抗体またはモノクローナル抗体により媒介される増大した補体活性化は、腫瘍抗原に対するmAbまたはワクチンを頻繁に治療的に無効にした要因である補体媒介細胞傷害に対する腫瘍の生来の耐性のために腫瘍増殖に殆ど効果を示さないことがしばしばあることが注目されてきた。
【0009】
免疫系による腫瘍の破壊はエフェクター機構の組み合わせを必要とし、単一のワクチン、サイトカイン、生物学的応答修飾物質は患者の大部分において効を奏しないようであるという認識が高まっている。例えば、ワクチンは、免疫細胞傷害性Tリンパ球および/または体液性抗体応答を引き起こしうるが、これらの応答は両方とも欠点を有する。抗体は、DAF、MCP、およびCD59等の正常な宿主細胞タンパク質が補体媒介細胞傷害性を阻害し、腫瘍のiC3b-オプソニン化がそれ自身において食細胞またはNK細胞を補充しないために頻繁に無効である。抗体依存性細胞媒介性免疫は、腫瘍において達成されるIgG濃度が低すぎ、抗体Fc断片媒介性細胞傷害が腫瘍細胞MHCクラスIのNK細胞認識により抑圧されるために働かなくなると考えられている。細胞傷害性Tリンパ球を利用する細胞媒介性免疫は、転移プロセスの一部として腫瘍が抗原提示に必要とされる主要な組織適合複合体分子をしばしば喪失するので同様に欠点を有する。これらの欠点を解消する組み合わせ抗腫瘍免疫学的アプローチが必要とされている。
【0010】
発明の要旨
本発明は、抗腫瘍効果を提供するために、不溶性β-グルカンが腫瘍抗原に対する補体活性化抗体と共に使用される抗腫瘍治療の方法を開示する。不溶性β(1,3)グルカン(本明細書中では全グルカン粒子(whole glucan particle)、WGPとも呼ばれる)は、C3補体タンパク質レセプター、CR3に結合することにより免疫系の殺腫瘍性活性を増大する。好ましい態様では、本方法は相乗効果を提供する。この相乗作用は、腫瘍細胞を選択的に標的する抗体の能力に一部由来し、一方、β-グルカンは、β-グルカンプライム(prime)CR3を有する生来の免疫細胞による認識のための標的腫瘍細胞に対する抗体により誘導されるC3沈着物(depostion)を使用することにより正常な弱いまたは無効な体液性応答を増幅する。
【0011】
本出願は、腫瘍抗原指向性モノクローナル抗体治療および抗腫瘍ワクチンにより刺激される抗癌免疫活性が全グルカン粒子により増強されることを開示する。細胞表面モノクローナル抗体および腫瘍ワクチンは、非特異的および特異的免疫応答を含む複雑な抗腫瘍免疫応答を刺激する。非特異的免疫応答は、生来の免疫細胞因子(例えば、補体系)および細胞(樹状細胞、単球、マクロファージ、好中球およびNK細胞)を含む。腫瘍抗原指向性モノクローナル抗体および腫瘍ワクチンにより刺激される抗体は、標的細胞の表面に結合し、直接的補体作用および補体媒介細胞傷害性のためにこれらの細胞を標的する。
【0012】
抗体媒介腫瘍細胞死滅の機構のキーとなる部分は、C3補体タンパク質による抗体-腫瘍抗原複合体の認識を含み、C3-抗体-腫瘍抗原複合体を形成する。この複合体は、CR3を介して生来の免疫細胞により認識される。CR3レセプターを有する生来の免疫細胞は、CR3とC3-抗体-腫瘍細胞抗原複合体との間の特異的な相互作用により腫瘍細胞に結合するが、腫瘍を外来として認識せず、結果として殺腫瘍性活性を誘導しない。βグルカンがCR3に結合する場合、生来の免疫細胞は、殺腫瘍性活性を発揮するように刺激される。本発明では、これらの生来の免疫細胞はまた、癌治療におけるWGPにより刺激される。単球、マクロファージ、好中球およびNK細胞は、その細胞表面上のCR3にβ(1,3)-グルカンが結合した際に活性になる。β(1,3)-グルカン-CR3相互作用によるこれらの細胞の活性化は、これらの細胞のC3-抗体-腫瘍細胞抗原複合体-標的殺腫瘍性活性を増強し、相乗的に増強された腫瘍細胞死滅を生じる。
【0013】
本発明の新たな局面は、WGPと細胞表面モノクローナル抗体および/または腫瘍ワクチン治療との相乗的な抗腫瘍活性である。WPGの形態のβ(1,3)グルカンはβ(1,3)-グルカンの任意の供給源から高純度で容易に調製されるという利点を有する。さらに、WGPが標的部位に経口により生物学的利用可能であることが見出された。抗腫瘍剤としてのWPGの使用は多数の重要な局面を有する。第一に、高度に純粋なWPGの使用は、より副作用が少ないより高い活性を導く。第二に、一旦分解したWGPは、CR3のレクチン結合ドメインに結合することができ、それにより生来の免疫細胞の殺腫瘍性活性を活性化する。補体沈着により生じる標的活性化を利用することにより、β-グルカンは、直接的細胞傷害効果および局在化されたサイトカイン媒介性漸増の両方により、免疫系による増強された腫瘍クリアランスを導く。
【0014】
本願はまた、治療有効量の全グルカン粒子および腫瘍細胞の抗原に標的化された抗体を、治療を必要とする被験体に投与することにより腫瘍細胞を抑制または排除する方法を開示する。抗体は補体活性化抗体である。所定の態様では、抗体はIgGサブクラスIまたはIgGサブクラスIIIである。抗体はまた、適切なワクチンを投与することにより患者において誘導されうるか、またはモノクローナル抗体の静脈内投与による等のモノクローナルまたはポリクローナル抗体を投与することにより直接提供されうる。あるいは、抗体は個体中に天然に存在しうる。所定の態様では、全グルカン粒子および抗体は相乗的抗腫瘍効果を提供する。不溶性β(1,3)グルカン(全グルカン粒子)は経口、非経口により、または当該分野で公知の他の方法により投与される。
【0015】
所定の態様では、腫瘍細胞を抑制または排除する方法は、治療有効量の全グルカン粒子および少なくとも1つの補体活性化抗腫瘍抗体を、治療を必要とする被験体に投与することを含み、ここでグルカンおよび抗体の組み合わせは腫瘍細胞を抑制または排除する。抗体は、ワクチンにより、またはモノクローナルもしくはポリクローナル抗体の直接投与により導入されうる。特定の態様では、抗体は、トラスツマブ(trastuzumab)、リタキシマブ、セタキシマブセタキシマブ(cetuxiamb)およびその組み合わせからなる群より選ばれる。全グルカン粒子は経口または非経口で投与され得る。所定の態様では、全グルカン粒子は、酵母、真菌供給源(例えば、マッシュルーム)、または穀物、例えば、大麦等の植物供給源に由来しうる。
【0016】
他の態様では、全グルカン粒子および抗体は相乗的抗腫瘍効果を提供する。
【0017】
新生物細胞の治療に使用するための医薬の製造における全グルカン粒子および補体活性化抗腫瘍抗体の使用もまた記載され、ここでグルカンおよび抗体の組み合わせは細胞の増殖を遅らせる。
【0018】
別の態様では、新生物細胞の治療方法は、該細胞に治療有効量の全グルカン粒子の投与を含み、新生物細胞に特異的な補体活性化抗体が記載される。所定の態様では、グルカンおよび抗体の組み合わせは、新生物細胞の宿主を保護し、新生物細胞の増殖の速度を遅らせ、および/または新生物細胞の増殖を阻害するか、および/または新生物細胞の宿主の生存時間を延長することによって作用する。
【0019】
他の態様では、腫瘍細胞を抑制または排除する方法は、治療有効量の全グルカン粒子および少なくとも1つの補体活性化抗腫瘍抗体を、治療を必要とする被験体に投与することを含み;ここでグルカンおよび抗体の組み合わせは、腫瘍細胞を抑制または排除し、補体活性化抗体は腫瘍細胞上に被覆され、腫瘍細胞上のiC3b沈着を介して補体を活性化する。全グルカン粒子は、マクロファージにより取り込まれ、分解され、分解した断片は骨髄中の好中球に結合し、走化性により抗体被覆腫瘍細胞に遊走および結合し、そこで補体は腫瘍細胞に沈着したiC3bを介して活性化されている。
【0020】
治療有効量の不溶性全グルカン粒子を、治療を必要とする被験体に投与することを含み、ここで全グルカン粒子はマクロファージにより取り込まれ、分解され、分解した断片は骨髄中の好中球に結合し、走化性により抗体被覆腫瘍細胞に遊走および結合し、ここで補体は天然に存在する補体活性化抗体によりiC3b沈着腫瘍細胞を介して活性化され、ここでiC3b腫瘍細胞へのグルカンの結合は腫瘍細胞の抑制または排除を生じる、腫瘍細胞を抑制または排除する方法も記載される。
【0021】
本発明の前述および他の目的、特徴、および利点は、付随する図面に示されるように、以下の本発明の好ましい態様のより詳細な説明から明らかになる。
【0022】
好ましい態様の詳細な説明
本出願は、β-グルカンが腫瘍抗原に対する抗体と共に使用されて、新生物細胞に抗腫瘍効果を提供する抗腫瘍治療方法を開示する。新生物細胞の治療のための抗体と組み合わせたこれらのグルカンの調製および使用方法が下記に記載される。
【0023】
本明細書中に記載されるように、経口投与した不溶性β-グルカンが殺腫瘍性活性を引き起こすことが示された。グルカンは、モノクローナル抗体(mAb)を介してiC3bでオプソニン化された腫瘍を死滅させるために循環好中球のCR3(iC3b-レセプター;CD11b/CD18)をプライム(prime)することができた。本明細書中に記載されるように、経口の大麦β(1->3)(1->4)および全グルカン粒子は、抗腫瘍mAbによって媒介される腫瘍退行および生存を有意に増強した。経口β-グルカンにより媒介される腫瘍緩解は、CR3-(CD11b-/-)またはC3-欠損マウスでは起こらず、腫瘍結合iC3bを認識するために白血球CR3が必要であることを強調した。経口全グルカン粒子(WGP-F)のインビボ運命は、WGP-フルオレセイン(WGP-F)を用いて研究された。胃腸管マクロファージは、経口吸収されたWGP-Fをリンパ組織に運搬(shuttle)し、WGP-Fは、脾臓マクロファージ内に経口投与3日後に、骨髄(BM)マクロファージ内に5日後に現れた。CR3は、WPG-Fのマクロファージ取り込みに必要ではない。なぜなら野生型およびCD11b-/-マウスに由来するBMマクロファージがいずれもWGP-Fを含んでいたからである。BMマクロファージはWGP-Fを消化し、CR3を介してBM好中球により取り込まれた可溶性β-グルカン-Fを分泌した。経口WGPを与えたマウスから引き出された好中球のみが、iC3b-オプソニン化腫瘍細胞を死滅させることができた。マクロファージは、経口β-グルカンを骨髄に運搬し、ここでそれらは殺腫瘍活性のために好中球CR3をプライム(prime)する。
【0024】
全グルカン粒子(WGP)は、精製された酵母細胞壁調製物である。全グルカン粒子は、グルカンのインビボ形態学を保持しつつマンナンタンパク質外層を除去し、β-グルカンを露出させることにより製造される。所定の態様では、全グルカン粒子は1ミクロン以上の粒子サイズを有する。
【0025】
β-グルカンの別の形態は、全グルカン粒子(WGP)として知られる不溶性粒子である。全グルカン粒子は、増殖する酵母を増殖培地から分離し、酵母の完全な細胞壁をアルカリに供し、従って不要なタンパク質および核酸物質を除去することにより調製される酵母細胞壁の残余物である。ある態様において、外側のマンナンタンパク質が除去された球状βグルカンが残る。全グルカン粒子は、任意のグルカン含有真菌細胞壁供給源から得られうるが、好ましい供給源はS.cerevisiaeの株である。所定の態様では、調製物のグルカン含量は50%グルカンより高い。所定の態様では、残余物は、細胞内脂質および/またはグリコーゲンからなりうる。これらの不溶性粒子は、広範な感染に対する宿主耐性を増強することが示されており、抗体産生(アジュバント活性)を増大し、白血球動因を増大し、創傷治癒を増強する。WGPの産生方法は当該分野で公知であり、米国特許第4,810,646号、第4,492,540号、第5,037,972号、第5,082,936号、第5,250,436号および第5,506,124号に開示されており、その内容はその全体が参考として本明細書中に援用される。
【0026】
微粒子状グルカン粒子は、酵母細胞壁β(1-3;1-6)グルカンを約1ミクロン以下の粒子サイズに微細に粉砕することから生じる全グルカン粒子の一部であると本明細書中に規定される。
【0027】
粒子状β-グルカンの種々の形態が調製された。一例は、微粒子状全グルカン粒子であり、これは、酵母細胞壁β(1-3;1-6)グルカンを約1ミクロン以下の粒子サイズに微細に粉砕することにより形成されうる。この形態のβグルカンは、Donzisによる米国特許第5,702,719号に開示されるような栄養補助剤および皮膚修復剤としての使用が記載されている。本明細書中に記載される方法に有用な他の粒子状グルカンは、Biopolymer Engineering, Inc., Eagan, MNから得られるWGPTMβグルカンおよびBetaRightTMである。微粒子状β-グルカンはまた宿主の免疫系を増強することが示されている。米国特許第5,223,491号および第5,576,015号参照、これらの教示はその全体が参考として本明細書中に援用される。
【0028】
所定の態様では、本明細書中に記載される方法で使用するための全グルカン粒子は経口生物学的利用可能(bioavailable)製剤である。本明細書中で使用される「生物学的利用能」は、全グルカン粒子が作用の標的に達することが可能であることを意味する。換言すれば、全グルカン粒子は、グルカンのパイアー斑取り込みに供される十分なβ(1,3;1,6)グルカンを有する。グルカンは、パイアー斑において取り込まれ、マクロファージに飲み込まれ、分解され、骨髄に輸送され、ここで分解した断片が放出される。分解した断片は骨髄中の好中球に結合し、走化性により抗体被覆腫瘍に遊走および結合し、ここで補体は腫瘍に沈着したiC3bを介して活性化されている。例えば、WGPはまた、腫瘍細胞に到達し、抗体と組み合わさって作用する。作用の部位で、グルカンは、次いで作用のためにCR3をプライム(prime)またはプロモートする(promote)CR3レセプターへのグルカンの結合または会合の結果として細胞を刺激するように作用する。経口WGPの生物学的利用能は、粒子を分解する胃腸管マクロファージによる骨髄へのWGPの輸送により媒介される。次いで、分解された粒子は、好中球が腫瘍細胞に遊走し、腫瘍上のiC3bに結合する場合、CR3活性化を介して好中球の刺激物質として骨髄で機能する。
【0029】
WGPグルカンの調製
手短には、全グルカン粒子を製造する方法は、酵母または真菌細胞壁からのアルカリ不溶性全グルカン粒子の抽出および精製を含む。この方法は、全グルカン、または全グルカン粒子と呼ばれるように、インビボで見出されるようなグルカンの形態学的および構造的特性を維持する生成物を生じる。
【0030】
全グルカン調製物の構造-機能特性は、それが得られる供給源およびさらに最終生成物の純度に直接依存する。全グルカンの供給源は酵母もしくは他の真菌、または本明細書中に記載される特性を有するグルカンを含有する他の任意の供給源でありうる。所定の態様では、酵母細胞はグルカンの好ましい供給源である。本方法で使用される酵母株は、例えば、S.cerevisiae、S.delbrueckii、S.rosei、S.microellipsodes、S.carlsbergensis、S.bisporus、S.fermentati、S.rouxii、Schizosaccharomyces pombe、Kluyveromyces polysporus、Candida albicans、C.cloacae、C.tropicalis、C.utilis、Hansenula wingei、H.arni、H.henricii、H.americana、H.canadiensis、H.capsulata、H.polymorpha、Pichia kluyveri、P.pastoris、P.polymorpha、P.rhodanensis、P ohmeri、Torulopsis bovin、およびT.glabrataを含む酵母の任意の株でありうる。
【0031】
一般に、上記手順は、出発物質として他の親株を用いて他の変異酵母株を調製および単離するために使用されうる。さらに、変異原、例えば、化学的変異原、放射線照射、または他のDNAおよび組換え操作が変異を誘発するために使用され得る。他の選択またはスクリーニング技術も同様に使用されうる。
【0032】
酵母細胞は当該分野で公知の方法により作製されうる。典型的な増殖培地は、例えば、グルコース、ペプトンおよび酵母抽出物を含む。酵母細胞は、液体培地から生物資源を分離するのに典型的に適用される方法により増殖培地から収集され、分離されうる。かかる方法は典型的には濾過または遠心分離等の固体-液体分離方法を使用する。本方法では、細胞は、好ましくは、増殖の対数期の中期〜後期に収穫され、酵母細胞中のグリコーゲンおよびキチンの量を最小化する。グリコーゲン、キチンおよびタンパク質は、全グルカン粒子の生物学的および流体力学的特性に影響する不要な汚染物質である。
【0033】
全グルカン粒子の調製は、酵母の一部を可溶化し、主としてβ(1-6)およびβ(1-3)結合を有するアルカリ-水酸化物不溶性全グルカン粒子を形成するのに適切な濃度のアルカリ水溶液で酵母を処理することを含む。一般に使用されるアルカリは、水酸化ナトリウムもしくはカリウムまたは等価物等のアルカリ金属水酸化物である。出発物質は、増殖培地から分離された酵母を含みうる。濃縮度が低い酵母組成物で開始した場合、水性水酸化物反応物の消費および試薬の濃度を好ましい範囲に調節することはより困難である。本発明の全グルカンの粒子の好ましい特性は完全な細胞壁に依存するので酵母は、完全な破裂していない細胞壁を有するべきである。
【0034】
酵母は水酸化物水溶液中で処理される。酵母細胞の細胞内成分およびマンノタンパク質部分は、水酸化物水溶液に可溶化されており、タンパク質を実質的に含まず、β(1-6)およびβ(1-3)結合グルカンの実質的に変化していない三次元マトリックスを有する不溶性細胞壁物質が残存する。この工程を行うのに好ましい条件は、水酸化物水溶液中に溶解した細胞壁のマンナン成分を生じる。細胞内成分は加水分解され、可溶性相に放出される。消化の条件は、少なくとも細胞の主要部分において細胞壁の三次元マトリックス構造が破壊されない条件である。特定の環境では、実質的に全ての細胞壁グルカンが変化せず完全なままである。
【0035】
所定の態様では、水性水酸化物消化工程は、約0.1〜約10.0の初期規定度を有する水酸化物溶液中で行われる。典型的な水酸化物溶液としては、周期表のアルカリ金属グループおよびアルカリ土類金属の水酸化物が挙げられる。好ましい水酸化物水溶液は、その入手可能性のために、ナトリウムおよびカリウムの溶液である。消化は約20℃〜約121℃の温度で行われ得、温度が低くなると消化時間は長くなる。水酸化ナトリウムが水性水和物として使用される場合、温度は約80℃〜約100℃であり得、溶液は約0.75〜約1.5の初期規定度を有する。添加される水酸化物は必要量の過剰であり、従ってその後の添加は必要ではない。
【0036】
一般に水酸化物溶液1リットル当たり約10〜約500グラムの乾燥酵母が使用される。所定の態様では、水性水酸化物消化工程は、接触工程が一度だけ利用される場合よりもタンパク質等の残存する汚染物の量はより少ないように一連の接触工程により行われる。所定の態様では、細胞から実質的に全てのタンパク質物質を除去することが好ましい。かかる除去は、1パーセント未満のタンパク質が不溶性細胞壁グルカン粒子と共に残存するような程度まで行われる。さらなる抽出工程は、好ましくは、約2.0〜約6.0のpHを有する弱酸溶液中で行われる。典型的な弱酸溶液としては、塩酸および酢酸バッファーで必要なpHに調整された塩酸、塩化ナトリウムが挙げられる。他の典型的な弱酸溶液は、適切なバッファー中の硫酸および酢酸である。この抽出工程は、好ましくは、約20℃〜約100℃の温度で行われる。消化されたグルカン粒子は、必要であるか、または所望される場合、タンパク質および汚染物質レベルを下げるためにさらに洗浄および抽出に供されうる。処理後、生成物pHは約6.0〜約7.8の範囲に調整されうる。
【0037】
細胞壁を崩壊させる工程を伴わないこの方法を行うことにより、抽出は、細胞壁を崩壊させる工程を含む先行技術の手順で考えられうるよりもpHおよび温度のより厳格な条件で行われうる。すなわち、本発明のプロセスは、時間のかかる複数回の抽出工程の排除を可能にするこれらの厳格な抽出条件を使用しながら生成物分解を回避する。
【0038】
上記の水性水和物処理工程後、最終的な全グルカン生成物は、初期重量の約5〜約30パーセントの酵母細胞を含み、好ましくは、約7〜約15重量パーセントである。
【0039】
製造される水性水和物不溶性の全グルカン粒子は本発明の要旨に示される通りである。全グルカン粒子は、所望される場合、さらに処理および/またはさらに精製されうる。例えば、グルカンは、(例えば、オーブンでの乾燥により)微細な粉体に乾燥されうる;または有機溶媒(例えば、アルコール、エーテル、アセトン、メチルエチルケトン、クロロホルム)で処理されて、任意の微量物質または有機溶媒溶解性物質が除去されるか、または水酸化物溶液で再処理されて存在しうるさらなるタンパク質または他の不純物が除去されうる。
【0040】
所定の態様では、本発明の方法から得られる全グルカン粒子は、純粋なグルカンからなり、これは本質的にβ(1-6)およびβ(1-3)結合グルカンからなる。全グルカン粒子は、タンパク質およびグリコーゲンからの汚染物質を殆ど含まない。所定の態様では、全グルカン粒子は、約2〜約10ミクロンの直径を有する球状形態であり、約85重量%より高いヘキソース糖、(または他の態様では約60%より高いヘキソース糖)、約1重量%のタンパク質、および単糖分析または他の適切な分析により測定されるような1%未満の検出可能な量のマンナンを含む。先行技術の方法により得られるグルカンは、本発明のグルカンよりも実質的に多い量のキチンおよびグリコーゲンを含む。
【0041】
上記に示される第2の工程は、グルカンの特性を変化させるための化学的処理による、上記で製造された全グルカン粒子の修飾を含む。本明細書中に記載された特定の株に加えて、任意の酵母株に由来する全グルカン粒子が使用されうることが意図される。上記のように、非常に広範な多種多様な酵母または変異酵母株が使用されうる。上記の処理条件はまた、一般に真菌からのグルカン抽出にも適用可能である。これらのグルカンの特性はまた、それらが由来する供給源に依存する。
【0042】
第1の化学的処理により、全グルカン粒子は、β(1-6)結合の量を減少させるために酸で処理され、従って、これらの修飾グルカンの水溶液の粘度の増大により証明されるように上記グルカンの流体力学特性が変化しうる。
【0043】
グルカン粒子を酸でβ(1-6)結合を変化させるのに適切な期間処理することにより変化した全グルカン粒子を調製する方法も使用されうる。弱酸性、扱いの容易さ、低毒性、低コストおよび入手可能性のために酢酸が好ましいが他の酸も使用されうる。一般にこれらの酸は、β(1-3)結合の加水分解を制限するのに十分に弱いべきである。処理は、実質的にβ(1-6)結合グルカンのみに影響するする条件下で行われる。所定の態様では、酸処理は、本質的に酢酸からなる液体、またはその任意の希釈物(典型的な希釈剤は有機溶媒または無機酸溶液でありうる)を用いて行われる。処理は約20℃〜約100℃の温度で行われる。所定の態様では、処理は、処理前の全グルカン粒子の総重量に基づいて約3〜約20重量パーセントの酸溶解性物質を除去する程度まで行われる。他の態様では、除去の程度は、約3〜約4重量パーセントである。形成される所定の組成物は、処理後に流体力学特性の変化および粘度の増大を示す。
【0044】
第2の化学的処理により、全グルカン粒子は酵素または酸で処理され、β(1-3)結合の量が変化する。いくつかの酵母株に由来する全グルカン粒子について、酵素処理は、粘度の減少を引き起こし、その他については、粘土の増大を引き起こすが、一般には、得られるグルカンの化学的および流体力学的特性が変化する。この処理は、β(1-3)結合を変化させるためにラミナリナーゼ等のβ(1-3)グルカナーゼ酵素を用い、水性懸濁物中の全グルカン粒子の流体力学的特性が変化する。
【0045】
酵素処理は、1リットル当たり約0.1〜約10.0グラムのグルカンの濃度を有する水溶液中で行われうる。ラミナリナーゼ等の任意の加水分解グルカナーゼ酵素が使用され得、これは有効であり、容易に入手可能である。インキュベーションの時間は、全グルカン粒子およびグルカナーゼ酵素の濃度に応じて変化しうる。β(1-3)結合は、酢酸等の弱酸による加水分解に耐性である。塩酸(HCl)、硫酸(H2SO4)または蟻酸等の強酸または濃縮酸での処理は、β(1-3)結合を加水分解し、それによりβ(1-3)結合の量を減少させる。酸処理は、1リットル当たり約0.1〜約10.0グラムのグルカンの濃度を有する水溶液において行われうる。酸処理の時間は、全グルカン粒子および酸の濃度に応じて変化しうる。酸加水分解は、約20℃〜約100℃の温度で行われうる。形成される好ましい組成物は変化した流体力学特性を示す。
【0046】
インキュベーション時間を調節することにより、得られる生成物の化学的および流体力学的特性を調節することができる。例えば、生成物の粘度は、例えば、種々の食品等の特定の使用のために正確に調節されうる。
【0047】
変化した結合を有する最終処理生成物の流体力学的パラメーター(K1)は、最後の式:
K1=-0.0021(時間)+0.26
式中、時間は分の単位である;および
式中、時間は1時間未満である、
に従って処理時間に依存する。
【0048】
パラメーターK1は相対粘度に直接関係(比例)する。水性懸濁物の場合には、実際の粘度がセンチポアズで測定される場合、相対粘度は実際の粘度に等しい。
【0049】
予め決められた所望の粘度を有するグルカンの水性スラリーを調製する方法が提供される。スラリーは、以下の近似式:
1/濃度=K1 x (1/log(相対粘度))+K2
式中、
K1=(形状係数) x (流体力学的体積);および
K2=(流体力学的体積)/(最大パッキングフラクション)
に従って予め決定された粘度の関数である濃度でグルカンを含む。
【0050】
形状係数は、水性環境でのグルカンマトリックスの形状を記載する経験的に決定された値である。形状係数は、長さの関数である;粒子の幅の比率は、顕微鏡によって決定されうる。流体力学的体積は、懸濁物中での粒子が占める体積の目安である。これは、グルカンマトリックスの高い水保持能力を示す点でグルカン懸濁物の重要なパラメーターである。最大パッキングフラクションは、懸濁物の単位体積に詰め込まれうるグルカンの最も高い達成可能な体積分率として記載されうる。
【0051】
微粒子状β-グルカン粒子の調製
β(1,3)グルカン出発物質は、当業者に公知な従来の方法によって、酵母細胞壁から単離され得る。酵母からグルカンを生成する一般的な方法は、アルカリを用いた抽出とそれに続く酸による抽出(Hassidら、Journal of the American Chemical Society, 63:295-298, 1941)を含む。精製水溶性β(1,3)グルカン抽出液を単離する改良された方法は、米国特許第5,223,491号に開示されており、その全体は参考として本明細書中に援用されている。全グルカン粒子を生成する別の方法は、米国特許第4,992,540号に開示されており、その全体は参考として本明細書中に援用されている。微粒子状β-グルカン粒子を調製する方法は、米国特許第5,702,719号に開示されており、その全体は参考として本明細書中に援用されている。微粒子状グルカン生成物はまた、平均粒子サイズ約1.0ミクロン以下または約0.20ミクロン以下で得ることができる。
【0052】
βグルカン粒子は、例えば混合機、マイクロフルイダイザーまたはボールミルの使用等の機械的な方法でサイズを低下され得る。例えば、粒子のサイズはブラントブレードを有する混合機によって減少され得、この場合グルカン混合物は十分な時間、好ましくは数分間混ぜられ、混合物を過熱することなく所望のサイズまで完全に粉砕する。別の粉砕方法は、10 mmのステンレス鋼グラインディングボールを有するボールミル中でグルカン混合物を粉砕する工程を含む。この後者の粉砕方法は、約0.20ミクロン以下の粒子サイズが望まれる場合、特に好ましい。
【0053】
粉砕に先立ち、グルカン混合物は、好ましくは一連の篩を通され、連続する各篩は、メッシュサイズが一つ前のものよりも小さく、最終的なメッシュサイズは約80である。混合物を篩い分ける目的は、より大きく、より粗い(course)グルカン粒子を、より小さい粒子と分離させることである(80メッシュ篩の孔サイズは約0.007インチまたは0.178 mmである)。分離された、より大きい粒子は、次いで上述のように粉砕され、最終的なメッシュサイズ80まで、再度篩い分けられる。篩い分けおよび粉砕の工程は、最終的なメッシュサイズ80が得られるまで繰り返される。篩い分けられた粒子は合わされ、好ましくは約1.0ミクロン以下、さらに好ましくは約0.20ミクロン以下の所望の粒径が得られるまで、好ましくは少なくとも1時間、さらに粉砕される。粉砕工程の間、細かく粉砕された(fine grind)グルカンの定期的な試料をとり、顕微鏡上でマイクロメーターを用いて測定する。
【0054】
補体活性化抗体
補体活性化抗体(自然界に見られるものまたは当該分野で公知の方法によって生成されるものの両方)は、補体カスケードの一つ以上のメンバーを活性化し得る腫瘍または腫瘍抗原に対する抗体である。言い換えれば、腫瘍細胞上にiC3を沈着させるのに十分な程補体を活性化する抗体が必要である。ある態様において、該抗体はIgGサブクラスIまたはIgGサブクラスIIである。
【0055】
本発明は、感染に応答して天然に産生される抗体、ワクチンの投与に応答して産生される抗体、およびβ-グルカンの使用を含む治療の一部として直接投与されるモノクローナル抗体を含む、本質的に任意の供給源由来の抗体を有するNSGの使用を開示する。βグルカンの殺腫瘍活性を促進するために、補体活性化の特性を有する任意の抗体が本明細書中に記載される方法に用いられ得る。該抗体はまた、腫瘍細胞上にiC3を沈着させるのに十分な程補体を活性化し得る、被験体に見られる自然に生じる抗体であり得る。マウス抗体は、当該分野で公知の技術を用いて、新生(腫瘍)細胞に関連する任意の抗原に対して惹起され得る。この点で、腫瘍細胞が発現する、自身の増殖を増大させ得る分子に対する様々な受容体の数が増加し、その多くは癌遺伝子の産物である。したがって、多数のモノクローナル抗体が調製されており、それらはトランスフェリン(transferring)、IL-2、および上皮成長因子等のタンパク質に対する受容体に対するものである。あえて言うなら、抗原を選択的に標識し得る任意の抗体(つまり任意の抗体)はβ-グルカンの同時投与によって活性を促進され得る。これは、IgA、IgD、IgEおよびIgM等の様々なクラスの抗体、ならびにFab等の抗体断片を含む。
【0056】
本明細書中で使用される用語「抗体」は、免疫グロブリン分子、および免疫グロブリン分子の免疫学的活性部分、すなわち腫瘍抗原に特異的に結合する抗原結合部位を含む分子をいう。腫瘍に特異的に結合する分子は、ポリペプチドまたはその断片に結合する分子であるが、実質的に、天然にポリペプチドを含有する生物学的試料等の試料中の他の分子に結合しない。免疫グロブリン分子の生物学的に活性のある部分の例としては、抗体をペプシン等の酵素で処理して産生され得るF(ab)およびF(ab′)2断片が挙げられる。本明細書中で使用される用語「モノクローナル抗体」または「モノクローナル抗体組成物」は、標的腫瘍の特定のエピトープと免疫反応し得る一種の抗体結合部位のみを含む抗体分子の集団をいう。したがってモノクローナル抗体組成物は、典型的には、それが免疫反応する本発明の特定のポリペプチドに対する単一の結合親和性を示す。
【0057】
ポリクローナル抗体は、上述のように、適切な被験体に所望の免疫原、例えば本発明のポリペプチドまたはその断片を免疫することによって調製され得る。免疫された被験体の抗体価は、固定化ポリペプチドを用いた酵素結合免疫吸着定量法(ELISA)等の標準的な技術によって、時間経過とともに(over time)観察し得る。必要に応じて、ポリペプチドに対する抗体分子は哺乳類から(例えば血液から)単離され得、IgG断片を得るためにタンパク質Aクロマトグラフィー等の周知の技術によってさらに精製され得る。免疫後の適切な時間、例えば抗体価が最高のときに、抗体産生細胞が被験体から得られ得、初めにKohlerおよびMilstein (1975) Nature, 256:495-497によって記載されたハイブリドーマ技術、ヒトB細胞ハイブリドーマ技術(Kozborら (1983) Immunol. Today, 4:72)、EBV-ハイブリドーマ技術(Coleら (1985), Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy, Alan R. Liss, Inc., pp. 77-96)またはトリオーマ技術等の標準的な技術によってモノクローナル抗体を調製するのに用いられ得る。ハイブリドーマを生成する技術は周知である(一般的にはCurrent Protocols in Immunology (1994) Coliganら(編) John Wiley & Sons, New York, NY参照)。手短に言えば、不死の細胞系(典型的には骨髄腫)が、上述のように免疫原で免疫された哺乳類由来のリンパ球(典型的には脾細胞)と融合され、得られたハイブリドーマ細胞の培養液上清が選別されて本発明のポリペプチドに結合するモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマが同定される。
【0058】
リンパ球と免疫された細胞系を融合させる任意の多くの周知のプロトコールが、本発明のポリペプチドに対するモノクローナル抗体を生成する目的に適用され得る(例えば上記Current Protocols in Immunology; Galfreら(1977) Nature, 266:55052; Monoclonal Antibodies中のR.H. Kenneth: A New Dimension In Biological Analyses, Plenum Publishing Corp., New York, New York (1980); およびLerner (1981) Yale J. Biol. Med., 54:387-402参照。さらに、多種多様な有用な方法があることは当業者に理解されよう。
【0059】
ポリペプチドを用いて組み換え組み合わせ免疫グロブリンライブラリー(recombinant combinatorial immunoglobulin library)(例えば抗体ファージ提示ライブラリー)を選別することによって、モノクローナル抗体分泌ハイブリドーマを調製する代わりに本発明のポリペプチドに対するモノクローナル抗体を同定し、単離し得、それによってポリペプチドに結合する免疫グロブリンライブラリーメンバーを単離する。ファージ提示ライブラリーを生成および選別するキットは市販されている(例えばPharmacia Recombinant Phage Antibody System, カタログ番号27-9400-01;およびStratagene SurfZAP(商標)Phage Display Kit, カタログ番号240612)。また、抗原提示ライブラリーの生成および選別に特に好ましい方法および試薬の例は、例えば米国特許第5,223,409号; PCT刊行物第WO 92/18619号; PCT刊行物第WO 91/17271号; PCT刊行物第WO 92/20791号; PCT刊行物第WO 92/15679号; PCT刊行物第WO 93/01288; PCT刊行物第WO 92/01047号; PCT刊行物第WO 92/09690号; PCT刊行物第WO 90/02809; Fuchsら(1991) Bio/Technology, 9:1370-1372; Hayら (1992) Hum. Antibod. Hybridomas, 3:81-85; Huseら (1989) Science, 246:1275-1281; Griffithsら(1993) EMBO J., 12:725-734に見られる。
【0060】
また、ヒトおよび非ヒト部分の両方を含有し、標準的な組み換えDNA技術を用いて生成され得るキメラまたはヒト化モノクローナル抗体等の組み換え抗体は、本発明の範囲内である。かかるキメラまたはヒト化モノクローナル抗体は、当該分野で公知の組み換えDNA技術によって生成され得る。
【0061】
本発明は、感染に応答して天然に産生される抗体、ワクチンの投与に応答して産生される抗体、およびβ-グルカンの使用を含む治療の一部として直接投与されるモノクローナル抗体を含む、本質的に任意の供給源由来の抗体を有する全グルカン粒子の使用を開示する。ヒトIgG1 Fc領域を含むヒト化mAbの多くは、Herceptin(商標)(トラスツマブ(trastuzumab))、Rituxan(商標)(リタキシマブ(rituximab))、およびErbitux(商標) (セツキシマブ(cetuximab))等の補体を活性化することが示されている(Spiridon, C. I.ら, Clin. Cancer Res., 8: 1720-1730 (2002), Idusogie, E. E. ら, J. Immunol., 164: 4178-4184 (2000), Cragg, M. S.ら, Blood, 101: 1045-1052 (2003), Herbst, R. S.およびHong, W. K., Semin. Oncol., 29: 18-30 (2002)。ある態様において、全グルカン粒子および抗体は相乗的に作用する。
【0062】
本発明の概念の例証として、全グルカン粒子等のβ-グルカンは、投与されて、乳癌の免疫治療における使用のためにGenentechにより販売されているモノクローナル抗体であるHerceptin(商標)と相乗的に作用し得る。Herceptin(商標)は、乳癌細胞の種類の20%に存在する、her2細胞表面抗原を認識するmAbである。臨床試験により、Herceptin(商標)は生命を救うことが示されたが、その効果はβ-グルカンの同時投与によってかなり促進され得る。Herceptin(商標)治療を伴うNSG治療によって、Herceptin(商標)治療に反応して乳癌の長期的軽減を示す女性の割合がかなり増加し得る。現在のところ、Herceptin(商標)治療を受ける女性の15%のみが長期的な軽減を示している。
【0063】
全グルカン粒子によって活性を促進される別のmAbは、免疫系の癌である一種の非ホジキンリンパ腫(NHL)を治療するために用いられるモノクローナル抗体であるリタキシマブである。Rituxan(商標)(リタキシマブ)は、標準的な治療に好ましい反応を示さなかった、低級なB細胞NHLを有する患者に効果的である。これは、癌の成長をもたらす形質転換された白血球(B-細胞)を標的として破壊する。リタキシマブは、ヒトおよびマウス成分の両方を含むマウス抗体の、遺伝子組み換えされたものである。進行性の低級NHLまたは成長が遅いNHLの166人の患者の主要な臨床試験において、これは米国の240,000人のNHL患者の約50%を代表するが、リタキシマブによる治療を完了した患者の48%で腫瘍が少なくとも2分の1に小さくなり、6%で完全に軽減した。βグルカンは、抗体標識腫瘍細胞の破壊を促進することでこの治療の効果をかなり増加させることが期待できる。
【0064】
製剤化および投与
全グルカン粒子および補体活性化抗体の投与は、段階的に投与され得、共投与され得、または複数回投与され得る。さらに、投与の順番は交換でき、抗体は天然に存在し得る。
【0065】
本発明の実施における使用に適切な経口製剤には、カプセル、ゲル、カシェ剤(cache)、錠剤、発泡性もしくは非発泡性(non-effervescent)の粉末もしくは錠剤、粉末または顆粒を;水性または非水性の液体の溶液または懸濁液として;または水中油型液体乳剤または水中油型乳剤として含む。本発明の化合物はまた、ボーラス、舐剤またはペーストとして提供され得る。
【0066】
一般的に、製剤は、有効成分を液体をキャリアもしくは細かく分割された固体キャリア、またはその両方と均一に混合し、次いで必要に応じて生成物を成形することによって調製される。医薬用キャリアは、選択された投与経路および標準的な薬学的業務に基づいて選択される。各キャリアは、製剤の他の成分と混合可能であり、被験体に有害でないという意味で「許容され得る」必要がある。このキャリアは固体または液体であり得、その種類は一般的に、用いられる投与の種類に基づいて選択される。適切な固体キャリアの例としては、ラクトース、ショ糖、ゼラチン、寒天および原末が挙げられる。適切な液体キャリアの例としては、水、薬学的に許容され得る油脂、アルコールまたは他の有機溶媒が挙げられ、エステル、乳液、シロップまたはエリキシル、懸濁液、溶液および/または懸濁液、ならびに非発泡顆粒(non-effervescent granules)を戻した溶液およびまたは(and or)懸濁液、および発泡顆粒を戻した発泡性製剤が挙げられる。かかる液体キャリアは、例えば適切な溶媒、防腐剤、乳化剤、懸濁剤、希釈剤、甘味料、増粘剤および融解剤を含み得る。好ましいキャリアは、トウモロコシ油または菜種油等の食用油である。PEG等のポリエチレングリコールもまた好ましいキャリアである。
【0067】
経口投与のための製剤は、ラクトース、デンプン、ショ糖、グルコース、メチルセルロース、ステアリン酸マグネシウム、第二リン酸カルシウム、硫酸カルシウム、マンニトール、ソルビトール、シクロデキストリン、シクロデキストリン誘導体等の非毒性の、薬学的に許容され得る不活性なキャリアを含み得る。
【0068】
カプセルまたは錠剤は容易に製剤化され得、嚥下または咀嚼しやすくされ得る。錠剤は、適切なキャリア、結合剤、滑剤、希釈剤、崩壊剤、着色剤、着香料、流動励起剤(flow-inducing agent)または融解剤を含み得る。錠剤は、圧縮または成形によって、任意に一つ以上のさらなる成分とともに製造され得る。圧縮錠は、有効成分を自由流動形態(free flowing form)(例えば粉末、細粒)で圧縮することによって調製され得、任意に結合剤(例えばゼラチン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース)、滑剤、不活性な賦形剤、防腐剤、錠剤分解物質(例えばショ糖グリコール酸ナトリウム、架橋カルボキシメチルセルロース)、界面活性剤または分散剤と混合され得る。適切な結合剤としては、デンプン、ゼラチン、グルコースまたはβラクトース等の天然の糖、トウモロコシ甘味料、アカシア、トラガカントまたはアルギン酸ナトリウム等の天然または合成ゴム、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレングリコール、ロウ等が挙げられる。これらの投薬形態に用いられる滑剤としては、オレイン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム等が挙げられる。分解剤としては、例えばデンプン、メチルセルロース、寒天、ベントナイト、キサンタンガム等が挙げられる。成形錠は、不活性な液体賦形剤で湿らせた粉末の有効成分の混合物を適切な機械中で成形することによって製造され得る。
【0069】
錠剤は、任意に被覆されるか、または溝を刻まれ得、有効成分の徐放または制御放出を提供するように製剤化され得る。錠剤はまた、消化管の胃以外の部分で放出されるために任意に腸溶コーティングを施され得る。
【0070】
本発明の経口投薬形態の製剤化に用いられ得る、典型的な薬学的に許容され得るキャリアおよび賦形剤は、1975年9月2日発行のRobertの米国特許第3,903,297号に記載されており、その全体は参考として本明細書中に援用されている。本発明において有用な投薬形態を作るための技術および組成は、以下の参考文献に記載されている:7 Modem Pharmaceutics, 第9章および第10章 (Banker & Rhodes, Editors, 1979); Liebermanら, Pharmaceutical Dosage Forms: Tablets (1981); およびAnsel, Introduction to Pharmaceutical Dosage Forms 第2版 (1976)。
【0071】
非経口投与に適切な製剤としては、対象とする受容者の血液と等張な水性または非水性製剤;および化合物を血液成分または一つ以上の臓器に標的化させるように設計された懸濁系を含み得る水性または非水性の無菌懸濁液が挙げられる。製剤は、投薬単位または複数投薬単位(multi-dose)シール容器中、例えばアンプルまたはバイアル中で提供され得る。即席の注射溶液および懸濁液は、前述の種類の無菌の粉末、細粒および錠剤から調製され得る。非経口および静脈内の形態はまた、選択された注射または送達機構の型と適合し得るようにするための無機物または他の物質を含み得る。
【0072】
引用した全ての刊行物は、その全体が参考として本明細書中に援用されている。ここで、以下の実施例により本発明を説明するが、この実施例に限定されることはない。
【実施例】
【0073】
CR3は、全グルカン粒子の抗腫瘍活性において非常に重要な役割を果たす。全グルカン粒子に対する応答の仲介におけるCR3の役割は、iC3bオプソニン化酵母の好中球食作用の機構の研究によって示された。補体C3bが自身を表面に接着させると、それが血清タンパク質によって短縮され、より小さい断片、iC3bを生成し得る。iC3bは「不活性」であって、かつ細胞膜障害複合体を形成するために機能できないが、標識(「オプソニン化」)細胞を食菌するか、そうでなければ破壊することができる好中球およびマクロファージを引き付ける働きを持つ表面に結合し続ける。iC3bに結合する補体受容体(CR3)は、好中球およびマクロファージの表面上にある。免疫機構によって酵母が排除される過程を図1で説明する。
【0074】
CR3依存食作用または脱顆粒のプライムには、CR3中の2つの異なる部位(一方はiC3bに対して特異的であり、2つめの部位は酵母細胞壁全グルカン粒子に対して特異的である)の同時の連結が必要である。図2で説明されているように、それらは細胞表面CR3結合全グルカン粒子を欠いているため、iC3bでオプソニン化された細菌(bacterial)はCR3によって好中球と結合するが、食作用または脱顆粒をプライムしない。しかしながら、図3に説明されているように、分解されて腫瘍部位にもたらされた全グルカン粒子を添加すると、CR3のレクチン部位に結合して受容体を有する免疫細胞を活性化し、外来性物質の脱顆粒およびまたは(and or)食作用を引き起こし得る。マンナンおよびβ-グルカンに富んだ可溶性ザイモサン由来多糖は、高い親和性でCR3に結合し、受容体がプライムを受けた状態(primed receptor state)を誘導することが示されている。
【0075】
マウス好中球CR3の全グルカン粒子プライムの、それに続くiC3bオプソニン化乳癌細胞による細胞毒性誘発に対する影響を、図4に示す。正常な好中球を用いた場合、β-グルカンの添加によってiC3bオプソニン化乳癌細胞に対する高いレベルの細胞毒性が引き起こされた。しかしながら、CD11b(マウスCR3相当物)に対する抗体を加えた場合、iC3bに結合する受容体の能力を妨げるので、この活性は消失する。グラフの右側に、β-グルカンでプライムした場合でもCD11b欠損マウス由来好中球がiC3bオプソニン化マウスの細胞毒性を仲介できないことを示しており、このこともこの受容体の大きな重要性を示している。予想通り、CD11bに対する抗体を添加しても、CD11b欠損好中球に対する影響は殆どなかった。
【0076】
図5は、腫瘍細胞がIgG、IgMおよびC3で被覆されていることを図解している。これらの腫瘍細胞に対して弱い適応的免疫反応が起こっていること、および細胞毒性応答を引き起こすためにこの標識が用いられ得た場合に腫瘍の成長が阻害または解消されることが示されているため、これは興味深い。乳癌細胞と正常な乳腺上皮細胞を区別し、次いで殆どの腫瘍細胞がIgG、IgMおよびC3を有することを示すために二色フローサイトメトリーを用いた。2人の患者由来の新たに摘出された腫瘍の単一の細胞懸濁液を分析した。図5に、一方の患者の腫瘍から得られた結果を示す。悪性の細胞は、ビオチン化抗ムチン(MUC1)-ビオチンmAb BrE-3で染色し、次いでストレプトアビジンフィコエリトリンで染色することによって正常な乳腺上皮細胞と区別した。次いで、二色分析を用い、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)と結合した抗体を用いて二重染色することによって悪性のMUC1陽性細胞上のIgG、IgMおよびC3の存在を測定した。これまでで分かるように、殆どのMUC1陽性細胞はIgG、IgMおよびC3を有した。ごく一部のMUC1陽性細胞だけがC3を用いたオプソニン化に対して陰性のようであった。正常な乳腺上皮細胞を表すMUC1陰性細胞上では、C3またはIg染色は、あるとしても少ししか検出されなかった。
【0077】
一方、全グルカン粒子はCR3に結合し、好中球脱顆粒をプライムし、かつマクロファージをプライムしてTh1型T細胞応答および腫瘍または微生物に対する持続的免疫を促進するいくつかのサイトカインを分泌させる。特別なβ-グルカンはまた、CR3の細胞毒性をインビトロまたはインビボでプライムし得る。
【0078】
NK細胞は先天性免疫系の重要な成分であり、Fasリガンドを通してまたはMAC複合体の形成を通してアポトーシスを促進することおよびアポトーシス誘導酵素を挿入することによって、腫瘍細胞を殺すことができる。NK細胞は、腫瘍またはウイルスの作用の間にMHCタンパク質を失った細胞を標的化することによってマクロファージの活性を補足する。標的細胞結合C3もまた、NK細胞CR3依存細胞毒性に必要である。図6に示されるように、12人の患者由来の新たに摘出した腫瘍を用いて試験を行い、腫瘍細胞が可溶性ザイモサン多糖(SZP)プライムCR3を有するNK細胞による認識および細胞毒性に十分な量のC3を有しているかどうかを確定した。新鮮で生存能力のある腫瘍細胞懸濁液を51Crで標識し、正常な、血縁でない提供者から単離されたNK細胞の細胞毒性に対する感受性に関して、37℃、4時間の培養時間中に試験した。このことからも、SZPの形態でβ-グルカンを添加することによりNK細胞活性が著しく増大することが示される。プライムされなかったNK細胞では有意な細胞毒性は観察されなかったが、2.0μg/mlのSZPを用いたプライムでは細胞毒性が32〜54%になった。腫瘍とともに外科的に除去されたC3陰性正常乳腺上皮細胞の存在が示されているよりも高いレベルの細胞毒性を防いだ可能性が高い。
【0079】
β-グルカン治療の有効性を図7に示す。この図はBalb/cマウスにおけるPtas64乳癌のβ-グルカン治療の結果を示す。SZPm(β-マンナンに富んだ可溶性ザイモサン多糖)をこの実験のβ-グルカン供給源として用いた。Ptas64乳癌をBalb/cマウスに移植した。6つの実験のそれぞれについて、6匹のマウス2群に200μgのSZPmの腹腔内または静脈内注射を毎日施した。6匹のマウスの対照群に毎日静脈内にリン酸緩衝生理食塩水(PBS)を与えた。SZPmを用い、30匹のマウスを用いて3つの実験を行い、次いでさらに90匹のマウスを用い、LPSを含まないSZPmを用いて同じ実験をもう3回行った。各実験に対して、治療群の平均腫瘍重量を測定し、PBS対照群から除去された腫瘍の平均重量と比較した。図7の各棒は、各治療群の平均±標準偏差を表す。分かるように、腫瘍重量はβ-グルカンの腹腔内および静脈内投与でそれぞれ40%および10%まで格段に減少した。さらに、LPSを含まないSZPmを用いた実験から、この活性は周知の免疫賦活剤であるLPSによるものでないことが示される。
【0080】
図8は、β-グルカン治療に腫瘍細胞上のC3および白血球上のCR3の両方が必要であることを示す。β-グルカン治療におけるC3の必要性は、MMT乳癌を移植されたC3欠損129/Jマウスを用いた実験で確かめられた。12匹の正常(C3+/+)マウスおよび12匹のC3欠損(C3-/-)129/JマウスにMMT乳癌腫瘍細胞系を移植し、マウス6匹ずつの群の、PBSまたはβ-グルカンを用いた毎日の静脈内治療を開始する前に、蝕知可能な腫瘍を形成させた。Ptas64乳腺腫瘍を移植した正常(CD+/+)およびCR3欠損(CD11bノックアウト;CD11b-/-)BALB/cマウスに対して同様のプロトコールを用いた。正常129/Jマウスのβ-グルカン治療は、図に示されるように、正常BALB/cマウスと同様に、79%腫瘍減少をもたらした。腫瘍のフローサイトメトリーから、80%未満の細胞上にC3の豊富な沈着が見られた。これに対して、C3欠損129/Jマウスでは、有意な腫瘍減少は見られず、腫瘍上にC3は存在しなかった。腫瘍上に存在するIgGの相対的な量は、染色によって示されるように、正常マウスとC3欠損マウスの間で違いはなかった。
【0081】
次の工程で、β-グルカンがmAb治療を促進させるために用いられ得ることを証明した。これらの実験の結果を図9に示す。この図は肝臓EL-4リンパ腫の、β-グルカンを用いた抗腫瘍mAb治療の促進を示す。他の腫瘍と異なり同系の宿主(C57BL/6)は腫瘍細胞をC3でオプソニン化した天然のAbを発現しないので、EL-4リンパ腫を、グルカン治療に対する応答について試験した。マウスにEL-4細胞を、肝転移をもたらすとして公知のプロトコールである静脈内注射した。10日後、マウスに毎日β-グルカンのみ、GD2ガングリオシド(EL-4細胞の顕著な腫瘍抗原)に対する3F8 mAb、または3F8 mAbを加えたβ-グルカンの静脈内投薬を施した。3F8 mAbはIgG3であり、補体の潜在的な活性剤であり、ADCCの仲介もする。他で示されているように、3F8は単独でEL-4肝臓腫瘍の有意な減少(73.5%)をもたらす。予想通り、腫瘍はiC3を殆ど持たないか全く持たないために、β-グルカンは単独で殆ど影響を及ぼさなかった。しかしながら、β-グルカンと3F8を組み合わせると、3F8単独と比較して肝臓腫瘍のかなり大きい減少が生じた。
【0082】
図10は、大麦由来β-グルカン(例外的な(1,3),(1,4)-β-D-グルカンを形成する)もまたmAbの抗腫瘍活性を促進し得ることを示す。神経芽細胞腫細胞を胸腺欠損BALB/cマウスの皮下に異種移植した。腫瘍移植の2週間後、目に見える腫瘍が直径0.7〜0.8 cmに達した時に5匹のマウスの群で治療を開始した。β-グルカン群を毎日400μg、強制飼養によって、合計21〜29日治療した。モノクローナル抗体(3F8)を週2回200μgの投薬量で静脈内に投与した。治療の1日目から腫瘍のサイズを測り始め、直径が最も大きい産物を0日目のサイズのパーセンテージで表した。分かるように、β-グルカンまたはmAb単独のいずれもあまり効果を示さなかった。しかしながら、この2つを組み合わせた場合、腫瘍の成長は明らかに抑制される。
【0083】
【表1】

【0084】
表1は、様々な由来の(from various)β-グルカンの糖特異性を示し、かつ様々な純粋なβ-グルカン-FITC調製物のフローサイトメトリーの結果を示す。デキストラン-FITCまたはα-マンナン-FITCでは、特異的な染色は見られなかった。各多糖-FITC調製物がSZP-FITCよりも強度の低い好中球染色を生じたとしても、各多糖-FITCの蛍光は過剰な非標識相同β-グルカン、非標識SZP、または抗CR3によって同様に阻害された。最高の染色のために必要な多糖の濃度の比較から、どちらか一方の飽和には2μg ヘキソース/mlが必要であったので、SZPまたはMP β-グルカン(Molecular Probesから入手した可溶性β-グルカン)が最も高い親和性を有することが示唆された。個々の多糖-FITCコンジュゲートから得られた蛍光強度値は、多糖に対するFITCのモル比が異なるようで容易に計算できないので、比較できない。
【0085】
SZP-FITC染色の50%阻害に必要なβ-グルカンの濃度の比較から、CR3はβ-グルカンに対してよりもSZPに対して少々高い親和性を有することが示唆された。好中球を、段階的な濃度のβ-グルカン(SZP、ラミナリン、MP β-グルカン、大麦β-グルカンおよびレンチナン)、α-マンナンまたはデキストランを用いて4℃で15分培養し、次いで1.0 mg/mlのSZP-FITCの添加によって染色し、さらに15分、4℃で培養した。次いで%阻害を多糖濃度と比較した。SZP-FITC染色の50%阻害に0.2μgのヘキソース/mlの非標識SZPが必要だったのに対し、非標識β-グルカンによるSZP-FITCの50%阻害には5 mgのヘキソース/ml(MP β-グルカンまたはラミナリン)から75μgヘキソース/ml(レンチナン)が必要であった。同じ非標識多糖をラミナリンβ-グルカン-FITC染色の阻害に関して調べた場合にも、同様の結果が得られた。両方の実験の阻害活性の順位は、SZP>ラミナリン>MP β-グルカンであった。しかしながら、CM β-グルカン(酵母由来のカルボキシメチルβ-グルカン)、大麦β-グルカン、およびレンチナンは、SZP-FITC染色を阻害するよりもラミナリン-FITC染色をより効率的に阻害した。つまり、これらの結果から、大麦β-グルカンは、可溶性酵母MP β-グルカンまたはSZPに対してよりもCR3に比較的低い親和性を有することが示される。
【0086】
次いでBalb/c乳癌は様々な濃度の静脈内mAbおよび経口WGPまたは静脈内NSGによって治療され、図11に示されるように、これらの組み合わせのインビボ活性の関係物(relative)を決定した。これにより、β-グルカンのNSGおよびWGP形態の両方、ならびに経口および静脈内投与経路の効果が示された。NSGおよびWPG形態は適合可能な効果を示し、WGPの他の投薬と比較して、400μgの経口WGPが最も強い活性を提供した。マウスの外観検査により、これらの結果が再確認された。mAb 11C1のみを静脈内で投与される対照群のマウスでは、直径約9 mmの腫瘍が見られた。mAb 11C1の静脈投与に加えて可溶性β-グルカン(NSG)を静脈に投与されたマウスにおいては、5匹中4匹で目に見える腫瘍が見られなかった。mAb 11C1の静脈内投与に加えてWPGを200μg/日で経口投与されたマウスにおいて、腫瘍は対照のサイズの20%であり、5匹中2匹は辛うじて見える腫瘍しか持たなかった。
【0087】
本発明は、粒子化β-グルカンの、感染に応答して天然に産生される抗体、ワクチンの投与に応答して産生される抗体およびβ-グルカンの使用を含む治療の一部として直接投与されるモノクローナル抗体を含む本質的に任意の供給源由来の抗体との同時使用を開示する。
【0088】
ある態様において、腫瘍細胞上にiC3bを沈着させるのに十分な程補体を活性化する抗体が必要である。殆どの場合、抗体は補体単独によって癌細胞を直接殺すことを仲介する能力に関して評価される。Rituxanを用いた場合を除き、殆どの治療用抗体は補体を活性化するが、補体は腫瘍細胞を殺すことができない。これはグルカン治療には無関係である。補体が腫瘍を殺す必要はなく、必要なのは、表面がiC3bに結合した腫瘍を補体の標的とさせることである。腫瘍上のiC3bの沈着には、補体によって腫瘍を殺すよりもかなり少ない補体活性が必要である。したがって、補体によって直接殺すのに十分な補体活性を阻害する腫瘍上の補体阻害剤の存在は、腫瘍をiC3bで標識するのに十分な補体活性を可能にする。
【0089】
図12は、ロイコトリエンB4受容体(BLTR)を介した白血球の補充がどのように経口WGPとmAb治療の組み合わせの殺腫瘍活性に関与するかを図解している。このグラフは、NK細胞に加えて単球および好中球が抗腫瘍応答に関与することを示している。LTB4は化学誘引物質であり、主に好中球およびマクロファージによって産生される。これは以下のものを含む多くのイベントに関与する:血流からの白血球の遊走のプライム;好中球の活性化;炎症性疼痛;感染に対する宿主防御;インターロイキン産生および転写の増加。LTB4の存在はβ-グルカンの抗腫瘍活性に重要なので、NK細胞に加えてマクロファージおよび好中球が免疫応答に関与することは明らかである。
【0090】
宿主防御の仲介におけるNK細胞の機能は、腫瘍細胞の直接の細胞毒性、ならびに免疫応答を潜在的に調節し、殺腫瘍マクロファージを補充し得るTNF-αおよびIFN-γ等のサイトカインの分泌の両方を含む。NK細胞による腫瘍の直接の細胞毒性はCR3の活性化によって仲介されることが示されているが、さらなる研究によって、この同CR3活性化イベントは、サイトカイン分泌も引き起こすことが示された。この点を確かめる実験を行った。結果を図13に示す。この図は、NK細胞によるTNF-α分泌のβ-グルカンCR3依存プライムを示す。ヒトNK細胞を、粒子化酵母β-グルカンまたは可溶性CR3結合多糖のいずれかとともに、37℃で18時間培養した。次いでELISAによって、培養液上清をTNF-αについて分析した。粒子化酵母β-グルカン(2μg/ml)およびグリフォラン(Grifola Frondosa由来の500 kDa可溶性β-グルカン、2μg/ml)は、表面CR3分子のレクチン部位に結合し、架橋することができ、細胞活性化およびTNF-αおよびIL-6の両方の分泌を引き起こす(図示せず)。これに対して、小さい(20 kDa)可溶性酵母β-グルカン(MP β-グルカン;2.0μg/ml)およびSZP(β-オリゴマンナンおよび/またはβ-グルカンを含有する可溶性ザイモサン多糖調製物;2.0μg/ml)は個々のCR3分子にのみ結合し、標的細胞がない場合はサイトカイン放出を引き起こさない。NK細胞CR3依存細胞毒性と同様、小さいβ-グルカンのCR3への結合によって、iC3bオプソニン化標的細胞(iC3bでオプソニン化されたヒツジ赤血球 ― 「+EC3b」)との連結によって引き起こされる、それに続くサイトカイン放出の受容体プライムがもたらされる。中間の対照に示されるように、かかる多糖プライムがない場合は、EC3bi標的はNK細胞サイトカイン放出を引き起こさなかった。CR3の多糖プライムの後、iC3b標的細胞への連結によってTNF-α、IFN-γ、IFN-αおよびIL-6の分泌がもたらされる。5 mg/mlの抗CD11b mAb(OKM1)の添加により、NK細胞からの、4つ全てのサイトカインの分泌が阻害された。抗CR3はβ-グルカンのCR3への結合を阻害し、またプライムされたCR3の、EC3bi標的細胞上のiC3bへの結合も阻害する。
【0091】
図13に示される結果から、NK細胞のサイトカインの分泌は、CR3の細胞毒性の活性化と平行して起こったことが示される。活発なCR3依存好中球超酸化物バーストを引き起こす粒子化β-グルカンは、同様にNK細胞CR3依存サイトカイン放出を引き起こした。サイトカイン分泌は、小さい可溶性β-グルカンのCR3への結合によって起こる始めのCR3プライム段階によって起こらず、β-グルカンプライムCR3のiC3bオプソニン化標的細胞への架橋によって引き起こされるCR3活性化段階によって二次的にのみ起こる。NK細胞を培地中でEC3biとともに単独で培養すると、EC3biのNK細胞溶解をプライムせず、またサイトカイン分泌も引き起こさない。しかしながら、NK細胞CR3を可溶性(または粒子化)β-グルカンでプライムした後にEC3biを添加した場合、TNF-α、IFN-α、IFN-γおよびIL-6の分泌がELISAによって検出された。これは標的EC3biと同時に抗CD121b mAbを添加した場合に阻害されるので、かかるサイトカイン放出はCR3依存性である。
【0092】
このデータから、癌免疫治療におけるβ-グルカンの好結果の使用についてのさらなる説明が示唆される。β-グルカンプライムNK細胞がiC3bでオプソニン化された腫瘍に入ると引き起こされる細胞毒性に加えて、iC3bオプソニン化腫瘍細胞によってプライムされる同じ局在細胞毒性が、全身というよりは局在のサイトカインの放出に伴うであろう。
【0093】
実施例2
材料および方法
抗体および他の試薬
11C1 IgG2a抗MMTVを産生するハイブリドーマ(Raychaudhuri, S.ら, J. Immunol., 137: 1743-1749 (1986))は、Hiroshi Fugi博士(Department of Molecular Immunology, Roswell Park Cancer Institute, Buffalo, NY)の厚意により提供された。3F8 IgG3抗GD2ガングリオシドmAb(Saito, M., Yu, R. K.およびCheung, N.-K. V., Biochem. Biophys. Res. Commun., 127: 1-7, 1985; Cheung, N.-K. V., J. Nucl. Med., 28: 1577-1583 (1987)は精製されて無菌のクエン酸緩衝生理食塩水中にあり、Nai-Kong V. Cheung博士(Memorial Sloan-Kettering Cancer Center, New York, NY)の厚意により提供された。精製された14.G2a IgG2a抗GD2 mAb(Hank, J. A.ら, Cancer Res., 50: 5234-5239, 1990; Uttenreuther-Fischer, M. M., Haungら, Cancer Immunol. Immunother., 41: 29-36, 1995。)、およびハイブリドーマはRalph A. Reisfeld博士(Research Institute of Scripps Clinic, La Jolla, CA)の厚意により提供された。IgG2b抗ヒトMUC1 mAbを産生するBCP8ハイブリドーマ(Xing, P. X.ら, Cancer Res., 52: 2310-2317 (1992)はIan F. C. McKenzie博士(Austin Research Institute, Heidleberg, Australia)の厚意により提供された。ラット抗マウス顆粒球mAb RB6-8C5(Ly-6G;抗Gr-1)を産生するハイブリドーマ(Hestdal, K.ら, J. Immunol., 147: 22-28, (1991)は、Emil Unanue博士(Washington University School of Medicine, St. Louis, MO)の厚意により提供された。ヒト高分子量メラノーマ抗原特異的マウスIgG2a mAbを分泌するB5ハイブリドーマは、ATCC(Manassas, VA)より入手し、単離されたIgGは、マウス腫瘍治療プロトコールの「非特異的」mAb対照として用いた。各ハイブリドーマを1〜2% FCSおよびBDハイブリドーマ培地中で成長するように適応させ、次いでバイオリアクターフラスコ(BD Biosciences, San Jose, CA)中で成長させてmAbに富んだ使用済み培地を生成し、続いてこれを硫安分画、Mono-Q FPLCクロマトグラフィーおよびMono-S FPLCクロマトグラフィーの段階的工程を用いて精製した。精製されたmAbを限外ろ過で滅菌し、Triton X-114(Aida, Y.およびPabst, M. J.ら, J. Immunol. Methods, 132: 191-195 (1990))を用いた抽出によって、検出可能なあらゆるLPSを除去した。
【0094】
フルオレセインイソチオシアネート(FITC)で標識した、IgM、IgGおよびC3に対するヤギ抗マウス抗体はICN Biomedicals/Cappell (Aurora, CA)より購入し、フローサイトメトリー(BD FACScan, BD Biosciences Immunocytometry Systems, San Jose, CA)を用いた腫瘍細胞懸濁液のIgおよびC3オプソニン化の分析に用いた。抗マウスCD45-PerCP-Cy5.5、抗マウスCD80-FITCおよび抗Gr-1-PE、抗マウスCD11c-FITC、ならびに適切に標識をされたアイソタイプ対照はBD Biosciences Phamingenより購入した。ラット抗F4/80-FITCおよびアイソタイプ対照はCaltag Laboratories(Burlingame, CA)より入手した。
【0095】
治療用β-グルカン
全グルカン粒子の調製物は、Biopolymer Engineering, Eagan Mnより入手した。大麦グルカンは、Sigma Chemical Co.等の任意の商業的供給源より入手し得、Xia, Y.ら, J. Immunol., 162: 2281-2290 (1999)およびThornton, B. P.ら, J. Immunol., 156: 1235-1246 (1996)に開示されている方法等の当該分野で公知の方法を用いて処理され、可溶性グルカンを生成し得る。
【0096】
マウスおよび腫瘍モデル
正常なBALB/cおよびC57B1/6マウスはthe Jackson Laboratory(Bar Harbor, ME)またはNCI-Frederick(Frederick, MD)より購入した。ヘテロ結合性C3欠損(C3+/-)マウス(31)はThe Jackson Laboratoryより購入し、ホモ結合性欠損(C3-/-)およびその野生型(C3+/+)C57B1/6同腹子の両方に由来する繁殖コロニーを樹立するのに用いた。C57B1/6 CR3欠損(CD11b-/-)マウス(Coxon, A., Rieuら, Immunity, 5: 653-666, 1996)およびその野生型(CD11b+/+)C57B1/6同腹子の繁殖コロニーはTanya Mayadas-Norton博士(Brigham & Women′s Hospital and Harvard Medical School, Boston, MA)より入手した。C3-/-およびCR3-/-マウスならびにその同腹子の表現型を、定量的放射性免疫拡散法を用いた血清C3についての分析、ならびに免疫蛍光染色およびフローサイトメトリー分析を用いた血液好中球CD11b発現の分析によってそれぞれ確かめた。
【0097】
Ptas64(または64PT)として知られるBALB/c乳癌は、Wei-Zen Wei博士(Karmonos Cancer Center and Wayne State University, Detroit, MI)より入手した。この腫瘍系は、11C1 mAbによって検出可能なMMTV(マウス乳癌ウイルス)膜抗原を発現する。前の研究から、正常なBALB/c血清が、インビボで成長している腫瘍細胞をIgM、IgGおよびC3でオプソニン化するPtas64と反応性のある自然に発生する抗体を含んでいること、ならびに11C1 mAbの更なる静脈内注射によってIgGおよびC3の表面取り込みが増加することが示された(Yan, J.ら, J. Immunol., 163: 3045-3052 (1999))。マウスの4つの群に、乳腺脂肪体に0.5〜1.0×106細胞を皮下注射し、7〜10日間に渡って腫瘍を形成させた。測径器で腫瘍の長さと幅の平均として測定した腫瘍の直径が3〜4 mmに達した時に治療を開始した。腫瘍直径は3日目ごとに測定し、腫瘍直径が15 mmに達した時にマウスを殺した。
【0098】
膜GD2ガングリオシドを高度に発現するC57B1/6リンパ腫EL-4は、Nai-Kong V. Cheung博士より入手した。正常なC57B1/6マウスに、3×105個のEL-4細胞を静脈内注射し、肝臓腫瘍を生じさせた(Zhang, H.ら, Cancer Res., 58: 2844-2849(1998))。2週間の治療の後マウスを殺し、その肝臓を除去して正常な、腫瘍のないマウスの群の肝臓と比較して重量を量った。肝臓腫瘍の純量を、腫瘍を有するマウスの肝臓の重量から正常な肝臓の重量(1.0 g)を引くことによって計算した。同様にGD2ガングリオシドを発現するがMHCクラスIのペプチド荷重が不完全であるC57B1/6リンパ腫RMA-S(Olivera J. Finn博士, Pittsburgh Cancer Institute, Pittsburgh, PAの厚意により提供された)をGD2ガングリオシドに対する14.G2a mAbと組み合わせて(100μg、3日目ごとに静脈内投与)用いて同様の肝臓腫瘍モデルを行った。3週間治療を継続し、次いでマウスを長期の無腫瘍生存について観察した。
【0099】
ヒトMUC1をトランスフェクションされたRMA-S細胞もまた、Finn博士より提供され(Soares, M. M.ら, J. Immunol., 166: 6555-6563 (2001))、C57B1/6マウスの皮下または乳腺脂肪体の近くに1×106細胞を移植した。8〜10日後、3〜4 mmの腫瘍が現れた時に、β-グルカンありまたはなしで、14.G2a抗GD2またはBCP8抗MUC1 mAbのいずれかから治療を開始した。治療を2週間または3週間継続し(示されているように)、前のように腫瘍を測定し、腫瘍の直径が15 mmに達した時にマウスを殺した。マウスを、無腫瘍生存について合計90〜120日間に渡って観察した。
【0100】
もともとはC57B1/6マウス由来のLewis肺癌細胞(LL/2、CRL-1642)はATCCから入手し、Olivera Finn博士より提供されたヒトMUC1に対するcDNAを含むプラスミドでトランスフェクションした(Soares, M. M.ら, J. Immunol., 166: 6555-6563, 2001)。BCP-FITC mAbで染色された細胞のFACS挿入(MoFlo High Speed Cell Sorter, Dako-Cytomation, Fort Collins, CO)によって一様に高い表面密度のMUC1を発現するLL/2系を選択した。細胞系を皮下に投与されたC57B1/6マウス中で細胞系を2回植え継ぎして、さらなる選択を行った。腫瘍系の、一様に高レベルの表面MUC1を発現し、かつ5×105個のみを注射したC57B1/6で皮下に腫瘍を生じることのできるものを選択した。これらの皮下腫瘍を有するマウスの治療は、7日後の、腫瘍が直径1〜2 mmでしかない時に開始した。3日目ごとに腫瘍直径を測定しながら3週間治療を施し、腫瘍が大きさ15 mmに達した時にマウスを殺した。マウスを、合計90日間に渡って無腫瘍生存について観察した。
【0101】
データのグラフ化および統計的分析
マウス腫瘍治療プロトコールで得られた全てのデータをPrism 3.0(Graph Pad Software, San Diego, CA)に入力し、腫瘍の緩解または生存のグラフを作成した。次にPrism 3.0内でスチューデントT検定を行い、異なるデータセットの有意性を確定した。
【0102】
結果
経口投与された酵母全β-グルカン粒子(WGP)は、静脈内酵母β-グルカンと同様に腫瘍緩解および生存を促進する。材料および方法に記載したように、BALB/cマウスの群にPtas64乳癌を移植し、7日間腫瘍を形成させた後、静脈内へのNSG酵母β-グルカンまたは経口でのWGPの同時投与ありまたはなしで、静脈内11C1抗MMTVで2週間処理した。平均値±標準偏差を図14に示す。
【0103】
経口投与された可溶性大麦または粒子化酵母β-グルカンの腫瘍緩解には、白血球CR3が必要である。材料および方法に記載したように、野生型またはCR3欠損C57B1/6マウスにRMA-S-MUC1を皮下移植し、10日間腫瘍を形成させた後、大麦または酵母β-グルカン(WGP)の同時経口投与ありまたはなしで、静脈内14.G2a抗GD2ガングリオシドで処理した。静脈mAbと同じ日(10日目)にマウスのいくつかの群に経口でβ-グルカンを与え、一方他の群のマウスには経口でβ-グルカンをmAbの3日前(7日目)に与えた。平均値±標準偏差を図15に示す。
【0104】
可溶性大麦または粒子化酵母β-グルカン治療を用いた長期の無腫瘍生存には、白血球CR3が必要である。結果を図16に示す。これは図15に記された実験の生存分析である。
【0105】
経口投与された可溶性大麦または粒子化酵母β-グルカンを用いた腫瘍緩解には、血清C3が必要である。材料と方法に記載したように、野生型またはC3欠損C57B1/6マウスにLL/2-MUC1を皮下移植し、7日間腫瘍を形成させた後、大麦または酵母β-グルカン(WGP)の同時経口投与ありまたはなしで、静脈内BCP8抗MUC1で処理した。平均値±標準偏差を図17に示す。経口投与された可溶性大麦または粒子化酵母β-グルカンを用いた無腫瘍生存には、血清C3が必要である。結果を図18に示す。これは図17に記された実験の生存分析である。
【0106】
経口投与されたフルオレセイン標識粒子化β-グルカン(WGP-F)は、脾臓、リンパ節および骨髄に遊走するマクロファージによって取り込まれる。材料および方法に記載したように、野生型またはCR3欠損C57B1/6マウスに、経口強制飼養で毎日WGP-Fを与え、次いで蛍光顕微鏡でWGP-Fを含む細胞のリンパ器官分布を分析するためにマウスの群を殺した。結果は、WGP-Fの毎日の経口投与3日後に野生型マウスから単離された脾臓マクロファージを示す。野生型およびCR3欠損に、WGP-Fの毎日の経口投与の7日後にフィブロネクチン被覆ディッシュから吸収および溶出によって単離された骨髄マクロファージが見られた。WGP-Fを含む細胞の割合において、または1細胞あたりのWGP-Fのサイズおよび数において野生型とCR3欠損骨髄マクロファージの間に、検出可能な違いはなかった。F4/80-Cy5を用いた骨髄マクロファージの二重染色により、摂取されたWGP-Fを含む全ての細胞がマクロファージであることが確かめられた。WGP-Fの毎日の経口投与後7日目から12日目に、CR-3欠損でない野生型骨髄マクロファージが膜表面のフルオレセイン染色を示しているのが観察された。
【0107】
辺縁(marginated)顆粒球プールの可溶性β-グルカンの取り込みには、膜表面CR3が必要である。材料および方法に記載したように、野生型マウス10匹およびCR3欠損C57B1/6マウス10匹に経口強制飼養によって12日間WGP-Fを毎日投薬し、次いで腹膜顆粒球をチオグリコレートで誘発し、フローサイトメトリーによって表面フルオレセイン染色について分析した。この分析に関して、抗Gr-1-Cy5を用いた二重染色によって顆粒球を同定した。結果を図19に示す。
【0108】
別の実験において、野生型およびCR3欠損マウスに経口強制飼養によって7日間WGP-Fを毎日与える。野生型またはCR3欠損マウスをチオグリコレートで一晩処理することによって辺縁好中球を誘発し、iC3bでオプソニン化された51Cr標識Ptas64乳腺腫瘍細胞の細胞毒性を仲介する能力について試験する。経口WGP投与されていなかったマウス由来好中球は、経口WGPの効果の対照となる。結果から、経口WGPを投与された、CR3欠損マウスではなく野生型マウス由来チオグリコレート誘発顆粒球がインビボでiC3bオプソニン化乳腺腫瘍細胞の細胞毒性を仲介できることが示される。12日間のWGPの経口投与後に野生型およびCR3欠損マウスから得られた顆粒球は、iC3bオプソニン化Ptas64腫瘍細胞の細胞毒性を仲介する能力について、51Crの放出の測定によって試験される。
【0109】
本明細書中に具体的に記載された本発明の特定の態様の多くの相当物が当業者に理解されるか、または通常の実験しか用いないで確かめられることができよう。かかる相当物は、以下の請求項の範囲に含まれるよう意図されている。
【図面の簡単な説明】
【0110】
【図1】図1は、C3-オプソニン化した酵母によるCR3の活性化がiC3b連結およびレクチン部位へのβ-グルカン付着を必要とすることを示す図である。
【図2】図2は、β-グルカンを欠失した細菌がCR3を介する食作用または脱顆粒を引き起こさないことを示す図である。
【図3】図3は、可溶性グルカンに分解された全グルカン粒子がCR3に結合し、iC3bにより標的化された細菌または腫瘍細胞の脱顆粒および破壊を誘発するようにレセプターをプライム(prime)することを示す図面である。
【図4】図4は、マウス好中球CR3のβ-グルカンプライミングが、iC3b-オプソニン化した胸部腫瘍細胞による引き続く細胞傷害性誘発を可能にすることを示すグラフである。
【図5】図5A〜5Dは、乳癌を有する患者に由来する腫瘍細胞のIgM、IgG、またはC3についての2色フローサイトメトリー分析を示す一連のグラフである。図5Aは、抗マウス-IgG-PE対M1g-FITCのグラフである。図5Bは、抗MUC1-PE対抗-IgM-FITCのグラフである。図5Cは、抗MUC1-PE対抗-IgG-FITCのグラフである。図5Dは、抗MUC1対抗C3-FITCのグラフである。
【図6】図6は、新たに切り出された初代乳房腫瘍細胞の懸濁物がβ-グルカンプライムCR3を生じる異質遺伝子型NK細胞による細胞傷害性認識に十分なC3を生じることを示すグラフである。
【図7】図7は、Balb/cマウスにおけるPtas64乳癌のβ-グルカン治療の結果を示すグラフである。
【図8】図8は、血清C3または白血球CR3が欠失したマウスにおけるβ-グルカン腫瘍治療の不全を示すグラフである。
【図9】図9は、β-グルカンを用いた肝臓EL-4リンパ腫の抗腫瘍mAb治療の増強を示すグラフである。
【図10】図10は、ヌードマウスにおけるヒトLAN-1神経芽細胞腫に対する抗体を伴う経口可溶性大麦β-グルカン治療の相乗効果を示すグラフである。
【図11】図11は、i.v. mAb+経口酵母不溶性β-グルカン粒子(WGP)を用いるBalb/c乳癌の治療の結果を示すグラフである。
【図12】図12は、ロイコトリエンB4レセプターを介する白血球補充がmAb+経口WGP治療の殺腫瘍性活性に必要とされることを示すグラフである。
【図13】図13は、TNF-αのNK細胞分泌のβ-グルカンおよびCR3-依存性刺激を示すグラフである。
【図14】図14Aおよび14Bは、経口投与された酵母全β-グルカン粒子(WGP)が、腫瘍直径対i.v. 酵母β-グルカンと同様の様式での腫瘍移植後の日数および生存(図14B)により測定される腫瘍緩解(図14A)を増強することを示すグラフである。
【図15】図15A〜15Dは、経口投与される可溶性大麦または粒子状酵母β-グルカンを用いた腫瘍緩解が白血球CR3を必要とすることを示す一連のグラフである。図15Aは、野生型マウスにおける腫瘍直径(mm)対治療の日数のグラフである。図15Bは、野生型マウスにおける生存パーセント対治療の日数のグラフである。図15Cは、CD3-欠損マウスにおける腫瘍直径(mm)対治療の日数のグラフである。図15Dは、CR3欠損マウスにおける生存対治療の日数のグラフである。
【図16】図16A〜16Dは、可溶性大麦または粒子状の酵母β-グルカン治療を用いる長期腫瘍非含有生存が白血球CR3を必要とすることを示す一連のグラフである。図16Aは、野生型マウスにおける腫瘍直径(mm)対治療の日数を示すグラフである。図16Bは、野生型マウスにおける生存パーセント対治療の日数のグラフを示す。図16Cは、C3欠損マウスにおける腫瘍直径対治療の日数のグラフである。図16Dは、CR3欠損マウスにおける生存対治療の日数のグラフである。
【図17】図17A〜17Dは、可溶性大麦または粒子状の酵母β-グルカンの経口投与を用いる腫瘍退行が血清C3を必要とすることを示す一連のグラフである。図17Aは、野生型マウスにおける腫瘍直径(mm)対治療の日数のグラフである。図17Bは、野生型マウスにおける生存パーセント対治療の日数のグラフである。図17Cは、CR3-欠損マウスにおける腫瘍直径(mm)対治療の日数のグラフである。図17Dは、CR3欠損マウスにおける生存対治療の日数のグラフである。
【図18】図18A〜18Dは、可溶性大麦または粒子状の酵母β-グルカンの経口投与を用いる腫瘍非含有生存が血清C3を必要とすることを示す一連のグラフである。図18A〜18Bは、野生型マウスに関する、生存パーセント対腫瘍移植後の日数を示すグラフである。図18C〜18Dは、CR3欠損マウスに関する生存パーセント対腫瘍移植後の日数を示すグラフである。
【図19】図19は、辺縁に置かれた(marginated)顆粒球プールによる可溶性β-グルカンの取り込みが膜表面CR3を必要とすることを示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療有効量の不溶性全グルカン粒子および少なくとも1つの補体活性化抗-腫瘍抗体を、治療を必要とする被験体に投与することを含み;ここでグルカンおよび抗体は腫瘍細胞を抑制または排除する、腫瘍細胞を抑制または排除する方法。
【請求項2】
抗体がモノクローナルまたはポリクローナル抗体の直接投与により導入されるか、または癌ワクチンにより産生される請求項1記載の方法。
【請求項3】
抗体が、トラスツマブ、リタキシマブ、セタキシマブおよびその組み合わせから選ばれる請求項1記載の方法。
【請求項4】
全グルカン粒子および抗体が相乗的な抗腫瘍効果を提供する請求項1記載の方法。
【請求項5】
全グルカン粒子が経口投与される請求項1記載の方法。
【請求項6】
全グルカン粒子が非経口投与される請求項1記載の方法。
【請求項7】
全グルカン粒子が酵母に由来する請求項1記載の方法。
【請求項8】
全グルカン粒子が植物供給源または真菌供給源に由来する請求項1記載の方法。
【請求項9】
植物供給源が大麦である請求項8記載の方法。
【請求項10】
真菌供給源がマッシュルームである請求項8記載の方法。
【請求項11】
新生物細胞の治療に使用するための医薬の製造における全グルカン粒子および補体活性化抗腫瘍抗体の使用であって、グルカンおよび抗体の組み合わせが細胞の増殖を遅らせる、使用。
【請求項12】
治療有効量の全グルカン粒子および新生物細胞に対して特異的な補体活性化抗体を新生物細胞に投与することを含む新生物細胞の治療方法。
【請求項13】
グルカンおよび抗体の組み合わせが細胞の増殖速度を遅らせる請求項12記載の方法。
【請求項14】
グルカンおよび抗体の組み合わせが新生物細胞の増殖を阻害する請求項12記載の方法。
【請求項15】
グルカンおよび抗体の組み合わせが新生物細胞の宿主の生存時間を延長する請求項12記載の方法。
【請求項16】
補体活性化抗体が腫瘍細胞に被覆され、腫瘍細胞上のiC3b沈着を介して補体を活性化する請求項1記載の方法。
【請求項17】
全グルカン粒子がマクロファージにより取り込まれ、分解され、分解した断片が骨髄中の好中球に結合し、走化性により抗体被覆腫瘍細胞に遊走および結合し、そこで補体が腫瘍細胞に沈着したiC3bを介して活性化されている請求項16記載の方法。
【請求項18】
治療有効量の不溶性全グルカン粒子を、治療を必要とする被験体に投与することを含み、ここで全グルカン粒子はマクロファージにより取り込まれ、分解し、分解した断片は骨髄中の好中球に結合し、走化性により抗体被覆腫瘍細胞に遊走および結合し、ここで補体が腫瘍細胞に沈着したiC3bを介して天然に存在する補体により活性化されており、ここでiC3b腫瘍細胞へのグルカン結合が腫瘍細胞の抑制または排除を生じる、腫瘍細胞を抑制または排除する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公表番号】特表2006−502167(P2006−502167A)
【公表日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−534637(P2004−534637)
【出願日】平成15年9月4日(2003.9.4)
【国際出願番号】PCT/US2003/027841
【国際公開番号】WO2004/021994
【国際公開日】平成16年3月18日(2004.3.18)
【出願人】(502436565)バイオポリマー エンジニアリング,インコーポレイテッド (2)
【出願人】(305045793)ユニバーシティ オブ ルーイビル リサーチ ファウンデーション,インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】