説明

全自動苗移植システム

【課題】本発明では、野菜苗等を自律走行しながら畝に植え付ける苗移植機で、この苗移植機に搭載した移植苗が無くなると自動で苗トレイを補給しながら移植作業を継続できるようにする全自動苗移植システムを提供することが課題である。
【解決手段】走行機体13の前側或は後側に苗トレイTを受け取る苗補給装置18を設けた自律走行の自動苗移植機1と苗トレイTを多数搭載する自律走行の自動苗搬送機40を設けると共に、これら自動苗移植機1と自動苗搬送機40を制御する統合制御装置55を設け、自動苗移植機1に搭載の苗が無くなるか少なくなると自動苗移植機1と自動苗搬送機40を互いに接近させて前記苗補給装置18で自動苗搬送機40から苗トレイTを受け取り、苗の移植走行を続行すべく前記統合制御装置55で制御した全自動苗移植制御システムとした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、野菜苗等を収容した苗トレイを自給しながら自律走行して、広い圃場を自動的に移植作業する全自動苗移植システムに関する。
【背景技術】
【0002】
圃場を自律走行しながら農作業を行う自動農作業車として、トラクタやスピードスプレヤーや田植機等が特許文献に記載されている。例えば、特開2008−131880号公報にGPSを利用して圃場の走行作業位置を確認しながら自律走行する田植機が記載されている。
【特許文献1】特開2008−131880号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明では、野菜苗等を自律走行しながら畝に植え付ける苗移植機で、この苗移植機に搭載した移植苗が無くなると自動で苗トレイを補給しながら移植作業を継続できるようにする全自動苗移植システムを提供することが課題である。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記本発明の課題は、次の技術手段により解決される。
請求項1に記載の発明は、走行機体13の前側或は後側に苗トレイTを受け取る苗補給装置18を設けた自律走行の自動苗移植機1と苗トレイTを多数搭載する自律走行の自動苗搬送機40を設けると共に、これら自動苗移植機1と自動苗搬送機40を制御する統合制御装置55を設け、自動苗移植機1に搭載の苗が無くなるか少なくなると自動苗移植機1と自動苗搬送機40を互いに接近させて前記苗補給装置18で自動苗搬送機40から苗トレイTを受け取り、苗の移植走行を続行すべく前記統合制御装置55で制御した全自動苗移植制御システムとした。
【0005】
この構成で、自動苗移植機1に搭載した苗が無くなるか少なくなると自動苗移植機1と自動苗搬送機40が接近して自動苗搬送機40に搭載する苗トレイTを自動苗移植機1に移動して自動苗移植機1が移植作業に復帰する。自動苗搬送機40に搭載の苗トレイTが無くなれば、自動苗搬送機40が供給位置に戻って人手或は自動で苗トレイTを自動苗搬送機40に積載する。
【発明の効果】
【0006】
請求項1に記載の発明では、自動苗移植機1と自動苗搬送機40が接近して、自動苗搬送機40が苗トレイTを自動苗移植機1に補給しながら移植作業を続行するので、作業者が圃場へ入って作業することが無くなり、苗の移植作業の省力化が図られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
この発明の一実施例として自動苗移植機1の一例である野菜移植機1を図面に基づき詳細に説明する。
【0008】
この野菜移植機1は、前輪3と後輪2からなる四輪の走行部1aによって畝Uを跨いだ状態で走行機体(メインフレーム)13を走行させながら、苗供給装置4と苗植付装置5等からなる植付部1bで苗トレイT内の野菜のポット苗を畝Uの上面に植付ける構成となっている。自動制御を解除して作業する場合には、作業者は、畝U間を歩きながら走行機体13の後方に設けた操縦ハンドル6で適宜機体を操向操作する。以下、各部の構成について説明する。
【0009】
走行部1aは、走行機体13の後部に装着するミッションケース7の上部にエンジン9が配置されて直接動力が伝動されている。エンジン9の左側面部には該エンジンの動力で駆動する油圧ポンプ10が設けられている。また、エンジン9の上側には燃料タンク11等が設けられ、その上部をボンネット12が覆っている。
【0010】
前輪3と後輪2を装着する走行機体13の後部から後斜め後方に向けて後部フレーム14を設け、この後部フレーム14の上端に操縦ハンドル6を前端部が回動調節自在になるように取り付けられており、操縦ハンドル6の左右グリップ6aは高さ調節できるようになっている。
【0011】
後輪2は走行部ミッションケース7の左右側面から突出する左右後輪駆動軸15に装着され、前輪3はメインフレーム13の前端に操向可能に装着する左右前輪従動軸16に軸支されている。
【0012】
苗供給装置4は、メインフレーム13から前上方に向けて設ける前フレーム17に設けられ、前輪3よりも前方へ略水平に張り出す搬送ベルトからなる苗補給装置18とこの苗補給装置18の後部から後下方に張った苗送り装置19で構成され、苗補給装置18上の苗トレイTが苗送り装置19で後下方へ送られる。苗供給装置4の下方には空箱収納ケース33を設けて、苗送り装置19で苗取り装置24に苗が取り出されて空になった苗トレイTが落下収納する。
【0013】
苗送り装置19の上端に前照灯31を設けて夜間に前を照らすようにしている。
植付部1bは、前側が前フレーム17に枢支され後側が後部フレーム14から前方へと突設したブラケット21に枢着の昇降シリンダ22に取り付けられた植付け昇降台20に植付伝動ケース23を装着し、この植付伝動ケース23の上側に苗取り装置24が装着され、下側に苗植付装置25が装着されている。そして、苗送り装置19から苗取り装置24で苗を取り出し、苗植付装置25へ供給して、この苗植付装置25が畝Uへ降下して苗を植え付ける。
【0014】
前記のブラケット21上には補助苗載せ台26を設け、この補助苗載せ台26の荷枠先端で前記苗植付装置25の真上位置にGPSアンテナ27を設けている。この補助苗載せ台26は作業者が手動で植え付け作業を行う際に補給苗トレイを載せ置く。
【0015】
メインフレーム13の前後略中央に下方へ向けて付勢した畝センサ28と鎮圧ローラ29を設けている。畝センサ28は畝高さを検出して植付け昇降台20を昇降制御して苗の植付深さを一定にし、鎮圧ローラ29は植え付けた苗の左右地面を押しつけて苗を安定すりと共に、鎮圧ローラ29が畝Uの終端で外れて落下すると畝Uが終了したことを感知する畝終了センサとしても機能し、畝Uが終了すると隣の畝UへUターンし畝センサ28が畝Uを検出すると苗の植え付けを再開する。
【0016】
以上の如き野菜移植機1の構成で、自動制御のためのセンサ類が次の如く設けられている。
苗補給装置18の先端には前方へ向けて後述する自動苗搬送機40との位置合わせをする位置確認センサ30を設け、苗送り装置19には苗トレイTが無くなったことを検出する苗切れセンサ32を設け、苗取り装置24には苗の状態と苗を取ったことを検出する苗確認センサ38を設ける。苗確認センサ38は苗取り装置24が取る2、3株前を監視し、欠株であればその株を苗取り装置24が取らないように苗送り装置19を早送りする。苗送り装置19を早送りしても植付位置までに苗を取れない場合には走行速度を遅くしたり停止したりして調整する。
【0017】
なお、苗の欠株は、苗補給装置18から苗送り装置19へ引き継ぐ位置に設けて、早めに欠株を発見するようにしても良い。
燃料タンク11には燃料が少なくなったことを検出する燃料センサ34を設け、操縦ハンドル6にはスロットルレバー36の動きを検出するスロットルセンサ37を設けている。
【0018】
苗切れセンサ32からの苗切れ信号によって、この苗切れセンサ32の取付位置と植付間隔から苗が無くなる位置を算出して苗切れ位置として後述する統合制御装置60へ送信する。なお、植付間隔によって苗切れセンサ32の取付位置を変更して苗切れ位置送信タイミングに合わせても良い。
【0019】
さらに、植付け昇降台20の後端には下方に向けてライト付きカメラ35を設けて植え付けた苗の状態を映している。
次に、自動苗搬送機40を図2で説明する。
【0020】
この自動苗搬送機40は、左右の前輪41と後輪42を設けた走行車体43に五段の棚45を形成した棚枠48を設け、バッテリ43と車軸駆動モータ44で移動可能にしている。棚45は左右方向に開放し、各段に三列の苗トレイTを載置可能にしている。
【0021】
棚枠48の上枠54にカメラ付き抜き取り装置50を前後左右に移動可能に設け、発育不良等の不良苗を苗トレイTから抜き取って所定位置へ廃棄し、別の補給用苗を苗トレイTの抜き取り位置へ補給するようにしている。また、水噴射ノズル51と薬剤或は肥料の散布ノズル52を前後左右に移動可能に設け、植え付け待機中に灌水し薬剤或は肥料を散布するようにしている。さらに、棚枠48の上中央に位置してGPSアンテナ49を設けている。
【0022】
棚枠48の左右片側に、昇降シリンダ46を前後移動可能に設け、この昇降シリンダ46の上に苗トレイTの取出し装置47を設けて、棚枠48上の苗トレイT位置に移動して苗トレイTを引き出すようにしている。取出し装置47を設けた側では前輪41と後輪42の棚枠48との間を広くして取出し装置47が前後に支障なく動けるようにし、反対側は前輪41と後輪42の棚枠48との間を接近させて作業者が近づいて苗トレイTを補充し易くしている。取出し装置47は搬送ベルトで構成し、棚45上の苗トレイTを載せて引き出すのである。
【0023】
図3で、自動苗移植機1と自動苗搬送機40の動きを制御する統合制御装置60による連携制御状態を説明する。統合制御装置60は、畦際等に設置したり作業者が持参したりしている。
【0024】
自動苗移植機1と自動苗搬送機40は、GPSによって圃場内の位置を統合制御装置60によって把握されている。
自動苗移植機1は、畝Uに沿って走行しながら苗を植え付け、一列の畝Uへの植え付けが終わるとUターンして次の列の畝に移動して植付を続行するのであるが、苗切れセンサ32で苗送り装置19上の苗が終了し或は減少したことを検出すると、統合制御装置60で自動苗移植機1が植え付け作業を中断して畝Uの端まで移動するように指令し、同時に自動苗搬送機40を自動苗移植機1が移動してくる位置に移動するように指令する。
【0025】
畝Uの端で出会った自動苗移植機1と自動苗搬送機40は、まず、自動苗搬送機40が棚45から取出し装置47上に移動し、次に自動苗移植機1の苗補給装置18を位置確認センサ30で取出し装置47を確認しながら位置合わせして、自動苗搬送機40の取出し装置47が苗補給装置18上に苗トレイTを送り出す。空箱収納ケース33の空苗トレイTは、人手で取り出す。
【0026】
このようにして、苗補給装置18と苗送り装置19に苗トレイTを満載すると、自動苗移植機1が植え付けを中断した位置に戻って苗の植え付け作業を再開する。
図4は歩行型野菜移植機60の実施例を示している。
【0027】
この野菜移植機60は、前輪61と後輪62からなる四輪の走行部によって畝Uを跨いだ状態で走行機体を進行させながら、苗供給装置63と苗植付装置64等からなる植付部65で苗トレイT内の野菜のポット苗を畝Uの上面に植付ける構成となっている。作業者は、畝U間を歩きながら走行機体の後方に設けた操縦ハンドル66で適宜機体を操向操作する。
【0028】
走行機体の前部にミッションケース67が搭載され、そのミッションケース67の前部にエンジン68が配置されている。エンジン68の上側には燃料タンクが設けられ、その上部をボンネット69が覆っている。
【0029】
苗供給装置63は、走行機体の上方後方側に配置されており複数個のソイルブロック苗を縦方向と横方向とに多数収容した苗トレイTを後側が高くなるように傾斜して載置支持する苗タンク72を設け、この苗トレイ移動装置の前方側に配置されていて苗取出爪70によって前記苗トレイTから苗を一つずつ取出して植付部65へと搬送する苗取装置71とから構成されている。
【0030】
苗タンク72は左右に往復移動し、この苗タンク72に対して、苗タンク72が左右中央位置に在る時は苗取出爪70が苗タンク72の左右幅だけ左右に動いて苗を抜き取り、苗タンク72が左右に在る時は苗取出爪70が苗タンク72の左右幅の半分を動き残り半分は苗タンク72が中央側に動いて苗の抜き取りを行う。このような苗取出爪70と苗タンク72の動きで、機体の左右バランスが安定する。
【0031】
植付部65の前側に、育苗トレイが載せられる予備苗載台73が取り付けられている。
図5に示す歩行型野菜移植機60は、前記図4の歩行型野菜移植機60における駆動輪である後輪62をクローラ走行装置75に変更した実施例である。
【0032】
このクローラ走行装置75は、ミッションケース67から左右に突出した駆動軸に固着の駆動輪76と前後に移動調節する第一従動輪77と上下に移動調節する第二従動輪78にクローラベルト79を巻きかけて構成している。
【0033】
そして、軟らかい圃場を走行する場合は、第一従動輪77を後方へ移動すると共に第二従動輪78を上方へ移動してクローラベルト79の接地面積を広げて沈み難くする。また、畦道などの硬い路面を走行する場合は、第一従動輪77を前方へ移動すると共に第二従動輪78を下方へ移動してクローラベルト79の接地面積を狭くして旋回し易くする。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】自動苗移植機の全体側面図である。
【図2】自動苗搬送機の全体側面図である。
【図3】走行部と植付部の制御状態を示す平面図である。
【図4】歩行型苗移植機の全体側面図である。
【図5】別実施例の歩行型苗移植機の全体側面図である。
【符号の説明】
【0035】
1 自動苗移植機
13 走行機体(メインフレーム)
18 苗補給装置
40 自動苗搬送機
55 統合制御装置
T 苗トレイ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行機体(13)の前側或は後側に苗トレイ(T)を受け取る苗補給装置(18)を設けた自律走行の自動苗移植機(1)と苗トレイ(T)を多数搭載する自律走行の自動苗搬送機(40)を設けると共に、これら自動苗移植機(1)と自動苗搬送機(40)を制御する統合制御装置(55)を設け、自動苗移植機(1)に搭載の苗が無くなるか少なくなると自動苗移植機(1)と自動苗搬送機(40)を互いに接近させて前記苗補給装置(18)で自動苗搬送機(40)から苗トレイ(T)を受け取り、苗の移植走行を続行すべく前記統合制御装置(55)で制御した全自動苗移植制御システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−124729(P2010−124729A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−301148(P2008−301148)
【出願日】平成20年11月26日(2008.11.26)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】