説明

全芳香族サーモトロピック液晶ポリエステル樹脂組成物、その射出成形体および該成形体を使用した光学装置

【課題】白色顔料と全芳香族サーモトロピック液晶ポリエステルとを溶融混練して樹脂組成物を得る際に、全芳香族サーモトロピック液晶ポリエステルの優れた耐熱性、成形性を保持しつつ良好な白色光反射率を達成すること。
【解決手段】焙焼工程を含む製法で得られた白色顔料97〜85質量%を酸化アルミニウム3〜15質量%(両者を合わせて100質量%とする。)で表面処理してなる白色顔料粒子35〜100質量部と全芳香族サーモトロピック液晶ポリエステル100質量部とを含む樹脂組成物を溶融混練工程を含む工程で得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定波長光の反射率に優れた全芳香族サーモトロピック液晶ポリエステル樹脂組成物、その射出成形体および該成形体を使用した光学装置に関するものである。特に、該光学装置が白色発光ダイオード(以下「LED」という。)を使用したものに関するものである。
【背景技術】
【0002】
LEDを使用した照明装置または表示装置等の光学装置は広範な分野で使用されているが、これらは基板上の回路パターンに導電性接着剤、ハンダ等でLED素子が実装されており、ワイヤボンディングで必要な結線がされ、LEDの光利用率を上げるためにLED素子の周囲にリフレクター(反射枠)が設けられ、リフレクター内に位置するLED素子は透光性樹脂で封止されているものが使用されている。白色LEDは各種のものが知られているが、例えば一般的には、緑(G)、青(B)、赤(R)等の複数のLEDを組み合わせて白色を得るようにしたもの、封止樹脂中に蛍光物質を配合して波長変換の作用を利用しているものもある。波長変換をする場合は紫外線発光LEDも光源として使用できる。リフレクターとしては、金属酸化物からなる白色顔料粒子等を充填した樹脂組成物の成形品が使用されることがある。
【0003】
樹脂組成物を含むリフレクターは、LED素子を基板に実装する際のハンダ等の加熱工程、封止樹脂の熱硬化時の発熱、LED装置を他の部材に結合する場合の加熱、LED装置を使用する環境における加熱等への耐熱性と、その後使用を含めた期間中の高反射率の維持とが要求される。さらに、白色LEDにおいては、特に500nm以下の領域での良好な反射率の維持が要求される。この点から、耐熱性に優れたサーモトロピック液晶ポリエステル、特に融点が320℃を超える全芳香族サーモトロピック液晶ポリエステルと白色顔料からなる樹脂組成物は、LEDリフレクター用として使用されるようになった。(例えば、特許文献1〜3参照。)
【特許文献1】特公平6−38520号公報
【特許文献2】特開2004−256673号公報
【特許文献3】特開2005−232210号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、これら全芳香族サーモトロピック液晶ポリエステルからなるLEDリフレクターは従前から使用されていたポリアミド系樹脂組成物からなるものに比較して、白色光の反射率指標としての、480nm波の反射率が不足気味との問題がある。
【0005】
全芳香族液晶ポリエステルに添加する白色顔料としては、その高い加工温度における耐熱性を有し、かつ、隠蔽力の高い、金属酸化物からなる白色顔料粒子を使用することが公知である。これら顔料の添加は一般に溶融混練により添加して使用する。
【0006】
白色顔料粒子を構成する金属酸化物は酸性化合物であるので、溶融混練工程において、溶融状態にある全芳香族サーモトロピック液晶ポリエステルに酸性化合物を共存させ、かつ継続して大きな剪断力を加えることにより、全芳香族液晶ポリエステルが分解し分子量の低下、低分子量成分の生成等が生じる。この現象は得られた樹脂組成物を射出成形するときの可塑化工程においても同様に生じる。なお、このような現象は、高温でより顕著になることが予想されるから、全芳香族サーモトロピック液晶ポリエステルの融点が高いほど影響は大きいと考えられる。
【0007】
白色顔料と全芳香族サーモトロピック液晶ポリエステルとの樹脂組成物の製造時の射出成形品の表面反射率、特に白色LED装置のリフレクター部品として使用された場合の反射率、に与える溶融混練工程の影響については充分な解明および対策はなされていなかった。
【0008】
よって、本発明は、白色顔料粒子と全芳香族サーモトロピック液晶ポリエステルとから溶融混練工程を経て得られる樹脂組成物について、全芳香族サーモトロピック液晶ポリエステルの優れた耐熱性、成形性を保持しつつ良好な白色光反射率を達成することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1は、焼成工程を含む製法で得られた白色顔料97〜85質量%を酸化アルミニウム3〜15質量%(両者を合わせて100質量%とする。)で表面処理してなる白色顔料粒子35〜100質量部および全芳香族サーモトロピック液晶ポリエステル100質量部とを含み、溶融混練工程を経て得られる樹脂組成物に関するものである。
【0010】
本発明の第2は、本発明の第1において、前記白色顔料が硫酸法により得られた酸化チタン(TiO)であることを特徴とする樹脂組成物に関するものである。
【0011】
また、本発明の第3は、本発明の第1または第2の樹脂組成物から射出成形して得られた480nm波の反射率が80%以上の成形表面を有する成形体に関するものである。
【0012】
さらに、本発明の第4は、本発明の第3の成形体が発光装置部材および/またはリフレクターとして使用されている光学装置に関するものである。
【0013】
またさらに、本発明の第5は、本発明の第4の発光装置が白色LEDを使用したものであることを特徴とする光学装置に関するものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明の樹脂組成物を使用すれば、通常の溶融混練工程により、全芳香族サーモトロピック液晶ポリエステルの優れた耐熱性、成形性を損なわずに、白色光反射率に優れた成形品を与える樹脂組成物が得られる。よって、該樹脂組成物の射出成形品の表面を反射面としたリフレクター、特に白色LEDに適するリフレクター、が得られ、優れた性能を有する発光装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
(全芳香族サーモトロピック液晶ポリエステル)
本発明に係る全芳香族サーモトロピック液晶ポリエステルに関しては特に制限はないが、LDEリフレクターとして使用するためには、耐ハンダ耐熱性が要求されるので融点が320℃以上であることが好ましい。
【0016】
融点が320℃以上の全芳香族サーモトロピック液晶ポリエステルを得るには、原料モノマーとしてp−ヒドロキシ安息香酸を40モル%以上使用するとよい。この他に、公知の他の芳香族ヒドロキシカルボン酸、芳香族ジカルボン、芳香族ジヒドロキシ化合物を適宜組み合わせて使用することができる。例えば、p−ヒドロキシ安息香酸や2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸などの芳香族ヒドロキシカルボン酸のみから得られるポリエステル、さらにこれらとテレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸、および/またはハイドロキノン、レゾルシン、4,4’−ジヒドロキシジフェニル、2,6−ジヒドロキシナフタレンなどの芳香族ジヒドロキシ化合物とから得られる液晶性ポリエステルなどが好ましいものとして挙げられる。
【0017】
特に好ましくは、p−ヒドロキシ安息香酸(I)、テレフタル酸(II)、4,4’−ジヒドロキシビフェニル(III)(これらの誘導体を含む。)を80〜100モル%(但し、(I)と(II)の合計を60モル%以上とする。)、および、(I)(II)(III)のいずれかと重縮合反応可能な他の芳香族化合物0〜20モル%を重縮合して得られる全芳香族サーモトロピック液晶ポリエステルである。
【0018】
全芳香族サーモトロピック液晶ポリエステルの製造に当たっては、溶融重縮合時間を短縮し工程中の熱履歴の影響を低減させるため、上記のモノマーの水酸基を予めアセチル化した後に溶融重縮合を行うことが好ましい。さらに、工程を簡略化するためには、アセチル化は反応槽中のモノマーに無水酢酸を供給して行うのが好ましい。このアセチル化工程を溶融重縮合工程と同じ反応槽を用いて行うのが好ましい。すなわち、反応槽中で原料モノマーと無水酢酸でアセチル化反応を行い、反応終了後昇温して重縮合反応に移行するのが好ましい。
【0019】
アセチル化されたモノマーの脱酢酸反応を伴いながら溶融重縮合反応を行う。反応槽はモノマー供給手段、酢酸排出手段、溶融ポリエステル取り出し手段および攪拌手段を備えた反応槽を用いて行うのが好ましい。このような反応槽(重縮合装置)は公知のものから適宜選択することができる。重合温度は好ましくは150℃〜350℃である。アセチル化反応終了後、重合開始温度まで昇温して重縮合を開始し、0.1℃/分〜2℃/分の範囲で昇温して、最終温度として280〜350℃まで上昇させるのが好ましい。重縮合反応の触媒として、Ge,Sn,Ti、Sb、Co,Mn、Mg 等の化合物を使用することができる。重縮合の進行により生成重合体の溶融温度が上昇するのに対応して重縮合温度も上昇する。
【0020】
溶融重縮合において、その流動点が200℃以上、好ましくは220℃〜330℃に達したら、低重合度の全芳香族サーモトロピック液晶ポリエステルを溶融状態のまま重合槽から抜出し、スチールベルトやドラムクーラー等の冷却機へ供給し、冷却して固化させる。
【0021】
ついで、固化した低重合度の全芳香族サーモトロピック液晶ポリエステルを、後続の固相重縮合に適した大きさに粉砕する。粉砕方法は特に限定されないが、例えば、ホソカワミクロン社製のフェザーミル、ビクトミル、コロプレックス、パルベラーザー、コントラプレックス、スクロールミル、ACMパルベラ-ザー等の衝撃式粉砕機、マツボー社製の架砕式粉砕機であるロールグラニュレーター等が挙げられる。特に好ましくは、ホソカワミクロン社製のフェザーミルである。本発明においては、粉砕物の粒径に特に制限はないが、工業フルイ(タイラーメッシュ)で4メッシュ通過〜2000メッシュ不通の範囲が好ましく、5メッシュ〜2000メッシュ(0.01〜4mm)にあればさらに好ましく、9メッシュ〜1450メッシュ(0.02〜2mm)にあれば最も好ましい。
【0022】
ついで、粉砕工程で得られた粉砕物を固相重縮合工程に供して固相重縮合を行う。固相重縮合工程に使用する装置、運転条件には特に制限はなく、公知の装置および方法を用いることができる。LEDリフレクターとして使用するためには、融点が320℃以上のものが得られるまで固相重縮合反応を行うことが好ましい。
【0023】
白色顔料粒子として、白色顔料97〜85質量%を酸化アルミニウム3〜15質量%(両者を合わせて100質量%とする。)で表面処理してなるものを使用する。なお、本発明においては白色顔料は酸化アルミニウムを除くものを意味する。白色顔料には、全芳香族サーモトロピック液晶ポリエステルとの溶融混練工程および射出成形温度ならびにハンダ実装工程等における加熱に対して耐熱性を有する限り特に制限はない。
【0024】
焙焼工程を含む製法で得られた白色顔料としては、酸化チタン(TiO)、酸化亜鉛(ZnO)、鉛白(2PbCO3・Pb(OH))等が使用できる。耐熱性に優れる金属酸化物系白色顔料が好ましい。この中でも隠蔽力の大きいルチル型酸化チタンの平均粒子径0.1〜0.5μmの範囲にあるものを使用することがもっとも好ましい。色相の好みによっては酸化亜鉛を使用することもできる。
【0025】
金属酸化物系白色顔料の内、焙焼工程を含む硫酸法で製造された酸化チタンが特に好ましい。本発明者らは、全芳香族サーモトロピック液晶ポリエステル樹脂に配合して溶融混練して得られる組成物の成形品の白色光反射率に好ましくない影響を与える成分が焙焼工程で除去されると考えている。
【0026】
酸化アルミニウムにより白色顔料を表面処理する方法は、公知の方法を用いることができる。例えば、特開平5−286721号記載の方法あるいは該特許文献中に従来方法として記載されている方法のいずれでもよい。該特許文献は、主に酸化チタンの表面処理に係るものであるが、他の白色顔料についても同様に表面処理を行うことができる。酸化アルミニウムで表面処理した白色顔料は、市場からも入手できる。例えば、堺化学(株)製「SR−1」(ルチル型酸化チタン、平均平均粒径0.25μm、表面処理剤AlO、処理量5%)が挙げられる。
【0027】
白色顔料を酸化アルミニウム(Al)(水和物を含む。)で表面処理した白色顔料粒子を全芳香族サーモトロピック液晶ポリエステルと溶融混練することにより得られる効果について、本発明者らは、酸化アルミニウムが有している両性(酸性およびアルカリ性)および吸着剤としての機能が関与しているものと考えている。
すなわち、ポリマー中の不純物を吸着する機能および金属酸化物系白色顔料の表面を被覆して、酸性化合物としての金属酸化物が全芳香族サーモトロピック液晶ポリエステルの加水分解を促進する等の影響を緩和する機能である。
【0028】
特に前者の機能の中でも注目すべきは、アセチル誘導体をモノマーとして重縮合を行った場合にポリマー中に残存する酢酸系化合物を吸着する機能である。したがって、モノマーのアセチル化誘導体を使用して溶融重縮合を実施する工程を含む場合、さらに、モノマーのアセチル化とその結果得られるアセチル化誘導体を使用する溶融重縮合が同一反応槽で行われる場合等の、系内に酢酸系化合物が残存する可能性が高い場合にその効果がもっとも発揮される。
【0029】
酸化アルミウムが3質量%以下であると、白色顔料の表面を被覆する効果およびポリマー中の不純物の吸着効果が十分に発揮できず、15質量%を超えると白色顔料粒子の凝集等により取り扱いに問題が生じることがある。よって、白色顔料粒子として、白色顔料97〜85質量%を酸化アルミニウム3〜15質量%(両者を合わせて100質量%とする。)で表面処理してなるものを使用する。酸化アルミニウムの特に好ましい範囲は5〜10質量%である。
【0030】
全芳香族サーモトロピック液晶ポリエステルと、酸化アルミニウムで表面処理された白色顔料からなる白色顔料粒子と、を溶融混練する方法および装置は、公知の溶融混練に使用されているものが好適に使用できる。単軸混練機、2軸混練機、バンバリーミキサー、加圧式ニーダー等が使用可能であるが、白色顔料粒子の分散を好適にする点から2軸混練機が特に好ましい。
【0031】
白色顔料粒子の添加量は、全芳香族サーモトロピック液晶ポリエステル100質量部に対して、35質量部〜100質量部の範囲である。35質量部未満では十分な白色度が得られず、100重量部を超えると成形性が著しく低下して、白色光反射率が80%以上の成形表面を得ることが困難となる。
【0032】
本発明の樹脂組成物には、公知の無機充填材、有機充填材を本発明の効果を損なわない範囲で添加することができる。これらは、単独で使用しても2種類以上使用してもよい。
【実施例】
【0033】
(サーモトロピック液晶ポリエステルの製造:溶融重縮合)
ダブルヘリカル型攪拌翼を有し、内容積が1.7m3の、SUS316L(ステンレス鋼)製の反応槽に、p−ヒドロキシ安息香酸(上野製薬株式会社製)298.3kg(2.16キロモル)、4,4’−ジヒドロキシジフェニル(本州化学工業株式会社製)134.1kg(0.72キロモル)、テレフタル酸(三井化学株式会社製)89.7kg(0.54キロモル)、イソフタル酸(エイジーインターナショナル社製)29.9kg(0.18キロモル)、触媒として酢酸マグネシウム(キシダ化学株式会社製)0.11kg、酢酸カリウム(キシダ化学株式会社製)0.04kgを仕込んだ。そして、重合槽の減圧−窒素注入を2回行って窒素置換した後、無水酢酸377.7kg(3.7キロモル)を添加し、攪拌翼の回転数45rpmで150℃まで1.5時間で昇温して還流状態で2時間アセチル化反応を行った。アセチル化終了後、酢酸留出状態にして0.5℃/分で昇温して310℃まで昇温し、発生する酢酸を除去しながら重合反応を5時間20分行った。
【0034】
ついで、反応槽系を密閉し、その系内を窒素で14.7N/cm2(1.5kgf/cm2)に加圧し、反応槽内の溶融重縮合反応生成物である低重合度全芳香族サーモトロピック液晶ポリエステル約480kgを、反応槽の底部の抜出し口から抜出し後述の冷却固化装置に供給した。このときの溶融重縮合反応生成物の温度は310℃であった。
【0035】
(冷却固化工程)
冷却固化装置として、特開2002−179979に従い、直径630mmの一対の冷却ロール、ロール間距離2mm、距離1800mmの一対の堰を有する装置を用いた。該一対の冷却ロールを18rpmの回転数で対向回転させ、該一対の冷却ロールと該一対の堰とで形成された凹部に、重縮合反応槽から抜出された流動状態の溶融重縮合反応生成物を徐々に供給し、該凹部内に保持させつつ、該一対の冷却ロール内の冷却水の流量を調整してロール表面温度を調整し、ロール間を通過直後に冷却固化した低重合度全芳香族サーモトロピック液晶ポリエステルの表面温度は220℃であった。得られた厚み2mmのシート状の固化物を解砕機(日空工業株式会社製)により、おおよそ50mm角に解砕した。
【0036】
(粉砕工程および固相重縮合工程)
この解砕物を、ホソカワミクロン株式会社製のフェザーミルを用いて粉砕して固相重縮合用原料を得た。粉砕物は、目開き1mmのメッシュを通過するものであった。該粉砕物をロータリーキルンに収納し、窒素雰囲気中で、窒素流通下、室温から170℃まで3時間かけて昇温した後、280℃まで5時間かけて昇温し、さらに、300℃まで3時間かけて昇温して固相重縮合を行い、全芳香族サーモトロピック液晶ポリエステル約480Kgを得た。
【0037】
(白色顔料粒子および他の充填材)
白色顔料粒子1
堺化学(株)製:商品名「SR−1」:焙焼工程を含む硫酸法により得られたルチル型酸化チタンを酸化アルミニウムで表面処理したもの。平均粒子径0.25μm。酸化チタンと酸化アルミニウムとの質量%構成=95:5。
白色顔料粒子2:
石原産業(株)製:商品名「CR−60」:焙焼工程を含まない塩素法により得られたルチル型酸化チタンを酸化アルミニウムで表面処理したもの。平均粒子径0.21μm。酸化チタンと酸化アルミニウムとの質量%構成=95:5。
白色顔料粒子3:
堺化学(株):商品名「R−310」:焙焼工程を含む硫酸法により得られたルチル型酸化チタン。表面処理をしていない。平均粒子径0.20μm。
ガラス繊維:
旭ファイバーグラス(株)製「PX−1」(平均長さ3mm、平均系10μ)
【0038】
(樹脂組成物の製造)
表1に示す量の全芳香族サーモトロピック液晶ポリエステルに白色顔料粒子1〜3、ガラス繊維、タルクをそれぞれ別個に混合し、2軸押出機(池貝鉄鋼(株)製)によりシリンダーの最高温度430℃で溶融混練してペレットを得た。
【0039】
(射出成形品の製造)
得られたペレットを射出成形機(住友重機械工業(株)製SG−25)を用いて、シリンダー温度420℃、射出速度100mm/sec、金型温度80℃で、30mm(幅)×60mm(長さ)×(3.0mm/0.5mm)の2段厚み(各厚み部分の長さは30mmずつ)の射出成形品を得て、白色光反射率の試験片とした。
【0040】
(白色光反射率の測定)
各試験片の表面について、自記分光光度計(U−3500:(株)日立製作所製)を用いて480nmの光に対する拡散反射率の測定を行った。なお、反射率は硫酸バリウムの標準白板の拡散反射率を100%とした時の相対値である。結果を表1に示す。
【0041】
【表1】

【0042】
実施例1と比較例1〜2とは、含有する酸化チタンが前者では白色顔料粒子1(本発明に係る要件を充足する。)、後者では白色顔料粒子2(本発明に係る要件を充足しない。)であることが異なるが、反射率の値は、試験片厚み3.0mm、0.5mmいずれの条件においても高い値を示すことがわかる。
実施例4は比較例1の含有する白色顔料粒子2(本発明に係る要件を充足しない。)75質量部のうち50質量部を白色顔料粒子1(本発明に係る要件を充足する。)に置換したものであるが、反射率の値は、試験片厚み3.0mm、0.5mmいずれの条件においても高い値を示すことがわかる。
実施例1〜4は、本発明の要件を満たす範囲にある組成物であるが、すべて、良好な成形を示すこと、試験片厚み3.0mm、0.5mmいずれの条件においても高い値を示すことがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明は、液晶ポリエステル樹脂組成物が有する優れた耐熱性、主出成形性を有することに加え、優れた反射率を備えたものであり、発光装置部材および/またはリフレクター等中の高い反射率が要求される部材、特に、発光装置が白色LEDを使用場合の部材として使用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
焙焼工程を含む製法で得られた白色顔料97〜85質量%を酸化アルミニウム(水和物を含む)3〜15質量%(両者を合わせて100質量%とする。)で表面処理してなる白色顔料粒子35〜100質量部および全芳香族サーモトロピック液晶ポリエステル100質量部とを含み、溶融混練工程を経て得られる樹脂組成物。
【請求項2】
前記白色顔料が硫酸法により得られた酸化チタン(TiO)であることを特徴とする請求項1記載の樹脂組成物。
【請求項3】
請求項1〜2いずれかに記載の樹脂組成物から射出成形して得られた480nm波の反射率が80%以上の成形表面を有する成形体。
【請求項4】
請求項3に記載の成形体が発光装置部材および/またはリフレクターとして使用されている光学装置。
【請求項5】
発光装置が白色LEDを使用したものであることを特徴とする請求項4に記載の光学装置。

【公開番号】特開2007−254669(P2007−254669A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−83306(P2006−83306)
【出願日】平成18年3月24日(2006.3.24)
【出願人】(000004444)新日本石油株式会社 (1,898)
【Fターム(参考)】